(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】ナルトレキソン及びカンナビノイドを含む癌の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20220427BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20220427BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220427BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220427BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/485
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555609
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 GB2020050638
(87)【国際公開番号】W WO2020188255
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519353064
【氏名又は名称】エルディーエヌ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ダルグレイス,アンガス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
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4C086ZC75
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4C206AA02
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4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、カンナビノイドによる癌細胞増殖の阻害が、低用量ナルトレキソン(LDN)又はナルトレキソンの代謝産物である6-β-ナルトレキソン(6BN)での併用治療によってより効果的にもたらされるという知見に基づく。対象の体内の癌の治療における使用のためのナルトレキソン又はその代謝産物又はその類似体を含む医薬組成物が提供され、ナルトレキソン又はその代謝産物又はどちらかの類似体の治療有効量が、第一の治療相で対象に投与されることになり、第一に治療相の後、対象は、第二の治療相でカンナビノイドの治療有効量を投与されることになり、対象は、治療の前、治療の間又は治療に続いて化学療法剤を投与されることになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌の治療における使用のための、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体を含む医薬組成物であって、前記対象は、前記治療の前に、前記治療の間に、又は前記治療に続いて化学療法剤が投与され、前記ナルトレキソン、その代謝産物又はいずれかの類似体の治療有効量が、第一の治療相で前記対象に投与され、前記第一の治療相の後、前記対象が、第二の治療相でカンナビノイドの治療有効量を投与される、医薬組成物。
【請求項2】
対象の癌の治療における使用のための、カンナビノイドを含む医薬組成物であって、前記対象が、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体の治療有効量を投与される第一の治療相を受け終わっていることを特徴とし、前記第一の治療相に続いて、前記カンナビノイドの治療量が、前記対象に投与され、前記対象が、前記治療の前に、前記治療の間に、又は前記治療に続いて化学療法剤を投与される、医薬組成物。
【請求項3】
対象の癌の治療における使用のための、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体と、カンナビノイドと、化学療法剤と、を含む調製物であって、前記ナルトレキソン又はその代謝産物又はいずれかの類似体が、治療有効量で提供されて第一の治療相で投与され、前記カンナビノイドが、治療有効量で提供されて前記第一の治療相に続く第二の治療相で投与され、前記対象が、前記治療の前に、前記治療の間に、又は前記治療に続いて化学療法剤を提供される、調製物。
【請求項4】
前記第一の治療相が、少なくとも2日間の投与のためである、請求項1~3のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記第一の治療相及び第二の治療相が、回復相により分離されて、前記回復相が、前記ナルトレキソン、代謝産物又は類似体と、前記カンナビノイドと、前記化学療法剤と、の投与の非存在を特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項6】
前記回復相が、少なくとも1日間、好ましくは1~7日の範囲内である、請求項5に記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項7】
前記第二の治療相が、少なくとも1日間の投与のためである、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項8】
ナルトレキソンを含む、請求項1~7のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項9】
6-β-ナルトレキソールを含む、請求項1~8のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項10】
前記カンナビノイドが、カンナビジオール、カンナビジオール酸、カンナビノール、カンナビゲロール、カンナビバリン、テトラヒドロカンナビバリン、カンナビジバリン、カンナビクロメン、アラキドノイルエタノールアミン、2-アラキドノイルグリセロール、2-アラキドノイルグリセリルエーテル、N-アラキドノイルドーパミン、ビローダミン、ドロナビノール、ナビロン、リモナバント、又はそれらの組み合わせからなるリストから選択される、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項11】
前記カンナビノイドが、カンナビジオールである、請求項1~10のいずれかに記載の
医薬組成物又は調製物。
【請求項12】
前記化学療法剤が、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、タキサン、代謝抑制剤、アルキル化剤、細胞周期阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤及び細胞障害性抗体からなる群から選択される、請求項1~11のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項13】
前記化学療法剤が、前記第一の治療相の間に投与される、請求項1~12のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項14】
前記化学療法剤が、前記第二の治療相の間に投与される、請求項1~13のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項15】
前記化学療法剤が、前記第二の治療相に続いて投与される、請求項1~14のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項16】
前記癌が、乳癌である、請求項1~15のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項17】
前記癌が、肺癌又は結腸癌である、請求項1~15のいずれかに記載の医薬組成物又は調製物。
【請求項18】
第二の治療相におけるカンナビノイドでの治療のための、癌の対象の適合性を決定するための方法であって、前記対象が、請求項1~17のいずれかに記載の第一の治療相を受け終わっていることを特徴とし、
i.回復相の後又はその間に前記対象から得られた試料を、CB2に特異的なプローブと接触させるステップと;
ii.前記試料中のCB2の濃度を決定するステップと;
iii.前記試料中のCB2の前記濃度を、前記第一の治療相の前に前記対象から得られた試料から決定されたCB2の濃度と比較するステップと、
を含み、
前記CB2濃度が、第一の治療相後に少なくとも2倍増加していれば、前記対象が、前記第二の治療相に適しており、前記対象が、化学療法剤を投与されているか、又は化学療法剤の投与が終わっている、方法。
【請求項19】
前記試料が、前記患者から得られた腫瘍生検である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、乳癌を有する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、肺癌又は結腸癌を有する、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療における使用のための薬物投与及び薬物併用の投与計画に関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイドは、アサ属の植物中で豊富に生成されるフェノール性化合物の一分類である。様々なカンナビノイド化合物が、長い間、ヒトにおける向精神性効果を呈することが知られており、そのような使用が多くの管轄区で違法であるにもかかわらず、娯楽として広く使用されている。
【0003】
しかし近年の検査は、特定のカンナビノイドが炎症性障害、神経変性障害及び精神障害、慢性疼痛、不安症及びPTSDなどの多種多様な病態への治療的価値があることを示した。カンナビノイドは現在、癌治療に関連する消耗、嘔吐及び吐き気を克服するために用いられているが、特定のカンナビノイド化合物が癌の根底的病態を治療する上で効果的になり得ることを示唆するエビデンスが存在する。目下入手可能なエビデンスは、それらが癌細胞遊走、接着、及び腫瘍血管新生の崩壊を通してこれを実行することを示唆している。
【0004】
内因性カンナビノイドを介したシグナル伝達系は、哺乳動物において、そしてエビデンスを考慮するとおそらくほとんどの他の脊椎動物においても機能する。ヒトにおいては、2つのカンナビノイド受容体が同定されて、CB1及びCB2と命名されており、両者とも、Gタンパク質共役型受容体スーパーファミリーの一部である。
【0005】
今日までの薬理学的エビデンスは、CB1の活性化がカンナビノイド摂取の向精神性効果の大部分を担うが、治療効果の多くがCB2により媒介されることを示唆している。そのため理想的な治療分子は、CB1よりむしろCB2を活性化して、望まない向精神性副作用を軽減するであろう。アサ抽出物の成分であるカンナビジオール(CBD)は、1種のカンナビノイドであり、この結合プロファイルは近年、少なからぬ関心が寄せられたが、その完全な作用機序は、依然として解明されていない。
【0006】
しかし一般的には、天然カンナビノイドは、1種又は他の受容体に対して高い特異性を示す傾向がないが、例えばJWH-133及びSR141716など、より特異的に結合する新たに開発された合成カンナビノイドが、入手可能である(Cridge & Rosengren 2013)。これらの化合物は、インビトロ及び様々な腫瘍移植マウスモデルの両方において、腫瘍成長及び癌細胞生存性を阻害することが示された。
【0007】
特有のリガンドに応答する一シグナル伝達経路の受容体が、別の外見上離れたシグナル伝達経路のシグナル伝達産物の変化により改変される発現レベル又は下流効果を有し得るというのは、時には事実である。そのような相互変調が、例えば成長ホルモン活性化に続くシグナル伝達経路とインスリン受容体活性化に続くシグナル伝達経路との間で実証されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カンナビノイド及び化学療法剤での治療による癌細胞増殖の阻害が低用量ナルトレキソン(LDN)又はナルトレキソンの代謝産物である6-β-ナルトレキソール(6BN)との併用治療によってより効果的にもたらされることが、本発明者らにより見出された。本発明者らはまた、そのような治療の有効性が驚くべきことにLDN又は6BN、及びカ
ンナビノイドが投与される順序に依存し、最も効果的な投与計画がLDN又は6BNでの治療相に続くカンナビノイドでの治療相であることを見出した。
【0009】
本発明者らはまた、LDN又は6BNでの治療が癌細胞中のCB2受容体のレベルの有意な上昇をもたらし、これによりカンナビノイドをより効果的にすることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の形態によれば、対象の癌の治療における使用のための、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体を含む医薬組成物が提供され、対象は、治療の前に、治療の間に、又は治療に続いて化学療法剤が投与され、ナルトレキソン、その代謝産物又は類似体の治療有効量は、第一の治療相で対象に投与され、第一の治療相の後、対象は、第二の治療相でカンナビノイドの治療有効量を投与される。
【0011】
本発明の第二の形態によれば、対象の癌の治療における使用のための、カンナビノイドを含む医薬組成物が提供され、対象がナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体の治療有効量を投与される第一の治療相を受け終わっていることを特徴とし、第一の治療相に続いて、前記カンナビノイドの治療有効量が対象に投与され、対象は、治療の前に、治療の間に、又は治療に続いて化学療法剤を投与される。
【0012】
本発明の第三の形態によれば、対象の癌の治療における使用のための、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体と、カンナビノイドと、化学療法剤と、を含む調製物が提供され、ナルトレキソン、その代謝産物又は類似体は、治療有効量で提供されて第一の治療相で投与され、カンナビノイドは、治療有効量で提供されて第一の治療相に続く第二の治療相で投与され、化学療法剤は、治療の前に、治療の間に、又は治療に続いて治療有効量で提供される。
【0013】
本発明の第四の形態によれば、第二の治療相におけるカンナビノイドでの治療のための、癌の対象の適合性を決定するための方法が提供され、前記対象は、先に定義された第一の治療相を受け終わっていることを特徴とし、この方法は、
i.回復相の後又はその間に対象から得られた試料を、CB2に特異的なプローブと接触させるステップと;
ii.試料中のCB2の濃度を決定するステップと;
iii.試料中のCB2の濃度を、第一の治療相の前に対象から得られた試料から決定されたCB2の濃度と比較するステップと、
を含み、
CB2濃度が、第一の治療相後に少なくとも2倍増加していれば、対象は、第二の治療相に適しており、対象は、化学療法剤を投与されているか、又は化学療法剤の投与が終わっている。
【0014】
本発明の第五の形態によれば、対象の癌の治療のための医薬の製造における、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体の使用が提供され、医薬は、併用治療レジメンの第一の治療相で対象に投与され、前記治療レジメンは、第一の治療相に続いて第二の治療相を含み、対象は、第二の治療相でカンナビノイドを投与され、対象は、治療レジメンの前に、その間に、又はそれに続いて化学療法剤を投与される。
【0015】
本発明の第六の形態によれば、対象における癌の治療のための医薬の製造におけるカン
ナビノイドの使用が提供され、前記医薬は、併用治療レジメンの第二の治療相で投与され、前記治療レジメンは、第一の治療相に続いて第二の治療相を含み、対象は、第一の治療相でナルトレキソン、又はその代謝産物あるいはメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体を投与され、対象は、治療レジメンの前に、その間に、又はそれに続いて化学療法剤を投与される。
【0016】
本発明の第七の形態によれば、第一の医薬の製造におけるナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体の使用と、第二の医薬の製造にけるカンナビノイドの使用と、が提供され、両方の医薬は、癌の治療のためであり、第一及び第二の医薬は、併用治療レジメンにおいて癌の対象に投与され、前記治療レジメンは、第一の治療相に続いて第二の治療相を含み、第一の医薬は、第一の治療相の間に対象に投与され、第二の医薬は、第二の治療相で対象に投与され、対象は、治療レジメンの前に、その間に、又はそれに続いて化学療法剤を投与される。
【0017】
本発明の第八の形態によれば、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体の治療有効量を第一の治療相で対象に投与することに続いて、カンナビノイドの治療有効量を第二の治療相で対象に投与することを含む、対象の癌の治療のための方法が提供され、対象は、治療の前に、治療の間に、又は治療に続いて化学療法剤を投与される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】MCF7乳癌細胞株の培養物での10nMのナルトレキソン(LDN)、1μMの6-β-ナルトレキソール(6-1)、又は10μMの6-β-ナルトレキソール(6-2)での2日間の治療の効果を示す。Bcl2関連死プロモーター(BAD)、p21タンパク質、オピオイド受容体カッパ1(OPRK1)及びミュー1(OPRM1)、並びにカンナビノイド受容体CBR1(CB1)及びCBR2(CB2)のレベルが、ローディング対照としてのGAPDHに対するウェスタンブロットにより視覚化されて(左)、GAPDHに比べた密度分析を介して定量される(右)。
【
図2】MCF7細胞の増殖及び生存に及ぼす様々な二段階治療の効果を示す。各治療は、4日間継続し、2日間の第一の薬剤(UN=対照、LDN=10nMの低用量ナルトレキソン、CBD=カンナビジオール、6BN=6-β-ナルトレキソール)での治療と、後のさらなる2日間に二番目に言及された薬剤が導入されることからなった。
【
図3A】実施例3によるA549細胞の増殖(3A)及び生存(3B)に及ぼす様々な二段階治療の効果を示す(0=投与なし;LC=LDN及びCBD;G=ゲムシタミン;P=オキサリプラチン)。
【
図4A】実施例3によるHCT116細胞の増殖(4A)及び生存(4B)に及ぼす様々な二段階治療の効果を示す(0=投与なし;LC=LDN及びCBD;G=ゲムシタミン;P=オキサリプラチン)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、対象における癌を治療するための特異的治療レジメンを提供し、カンナビノイドは、低用量ナルトレキソン(LDN)、ナルトレキソンの代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択されるその類似体の投与後に投与され、対象は、治療レジメンの前に、その間に、又はそれに続いて化学療法剤を投与される。
【0020】
LDN及びその後のカンナビノイドの段階的投与は、身体の免疫細胞及び癌細胞に及ぼ
すプライミング効果を有し、化学療法剤との併用で結果的に、別々若しくは同時投与、又はカンナビノイドとその後のLDNの段階的投与、又は化学療法剤のみの継続的投与より効果的に癌細胞増殖を阻害することが、本発明者らにより見出された。
【0021】
CB2受容体のレベルが、LDNでの治療後にMCF7細胞中で有意に上昇することも見出された。理論に結び付けるのを望むものではないが、CBDなどのカンナビノイドの治療ターゲットであるCB2のこの増加は、実行可能な方法で、CBDでの治療の有効性上昇の寄与因子になる。
【0022】
当業者は、記載された治療薬の段階的投与を実行することが可能であろう。本発明はさらに、以下の定義を参照すれば理解され得る:
本明細書で用いられる「ナルトレキソン」は、化合物17-シクロプロピルメチル-4,5α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン(IUPAC名((4R,4aS,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-4a,9-ジヒドロキシ-2,4,5,6,7a,13-ヘキサヒドロ-1H-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-7-オン))、並びにその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、ラセミ体、立体異性体、包摂体、多形及びプロドラッグをいう。その類似体もまた、本発明による使用に想定される。適切な類似体としては、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、及びナロルフィンが挙げられる。
【0023】
ナルトレキソンは、典型的には塩酸塩形態である。
【0024】
「低用量ナルトレキソン」(LDN)は、0.5mg/kg未満、好ましくは0.2mg/kg未満、より好ましくは0.01mg/kg~0.08mg/kgの間、さらにより好ましくは0.03mg/kg~0.06mg/kgの間、最も好ましくは0.04mg/kg~0.05mg/kgの間の「低」用量で投与されるナルトレキソンをいう。典型的には低用量は、患者あたりに総量で最大3mg/日である。
【0025】
ナルトレキソンの代謝産物としては、6-β-ナルトレキソール、2-ヒドロキシ-3-メトキシ-6β-ナルトレキソール及び2-ヒドロキシ-3-メトキシナルトレキソンが挙げられる。
【0026】
ナルトレキソンの好ましい代謝産物は、6-β-ナルトレキソール(6BN)であり、それは本明細書で用いられる通り、化合物N-シクロプロピルメチル-7,8-ジヒドロ-14-ヒドロキシノルイソモルフィン(IUPAC名(4R,4aS,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-1,2,4,5,6,7,7a,13-オクタヒドロ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-4a,7,9-トリオール)、並びにその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、ラセミ体、立体異性体、包摂体、多形及びプロドラッグをいう。
【0027】
6BN又は類似体などもまた、「低用量」で投与されてもよい。この状況において「低用量」は、ナルトレキソンについて先に概説されたものと同一であり得る。
【0028】
カンナビノイドは、アサ属の植物により豊富に作製されるそれらのものと、動物の体内で合成されるエンドカンナビノイドと、を含む、当業者に理解された化合物の一分類である。CB受容体に対して活性である合成化合物もまた、想定される。本明細書で用いられるこの用語は、任意のカンナビノイドをいう可能性があるが、好ましくはカンナビジオール、カンナビジオール酸、カンナビノール、カンナビゲロール、カンナビバリン、テトラヒドロカンナビバリン、カンナビジバリン、カンナビクロメン、アラキドノイルエタノールアミン、2-アラキドノイルグリセロール、2-アラキドノイルグリセリルエーテル、
N-アラキドノイルドーパミン、ビローダミン、ドロナビノール、ナビロン、リモナバント、R-(+)-メタ-アナンダミド、WIN-55,212-2、HU-210、JWH-133、SR141716、SR144528若しくはそれらの組み合わせ、又は同等の効果をもたらすそれらの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、ラセミ体、立体異性体、包摂体、多形、プロドラッグ及び類似体を含有するリストから選択される。
【0029】
本明細書で用いられる「化学療法」及び「化学療法の」は、当該技術分野における従来の意味を有する。用語「抗癌剤」は、「化学療法剤」と同義で用いられている。疑念を避けるために、この例では、カンナビノイドは、抗癌剤ではない。
【0030】
特定の態様において、化学療法は、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、タキサン、代謝抑制剤、アルキル化剤、細胞周期阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤及び細胞障害性抗体からなる群から選択される抗癌剤を投与することを含む。
【0031】
化学療法剤が、PI3キナーゼ阻害剤である場合、適切な例としては、ウォルトマンニン、LY294002、デメトキシビリジン、IC87114、NVP-BEZ235、BAY80-6946、BKM120、GDC-0941、GDC-9080;それらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
抗癌剤が、AKT阻害剤である場合、適切な例としては、MK-2206、GSK690693、ペリフォシン、PHT-427、AT7867、ホノキオール、PF-04691502;それらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
抗癌剤が、タキサンである場合、適切な例としては、パクリタキセル及びドセタキセル;それらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
抗癌剤が、代謝抑制剤である場合、適切な例としては、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シトシンアラビノシド(シタラビン)、ゲムシタビン、6-チオグアニン、ペントスタチン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、フルダラビン及びクラドリビン;それらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
抗癌剤が、アルキル化剤である場合、適切な例としては、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、トロフォスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)テモゾロミド及びオキサリプラチン;それらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
抗癌剤が、細胞周期阻害剤である場合、適切な例としては、エポチロン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、UCN-01、17AAG、XL844、CHIR-124、PF-00477736、CEP-3891、フラボピリドール、ベルベリン、P276-00、テラメプロコール、イソフラボン、ダイゼイン、BI2536、BI6727、GSK461364、シクラポリン、ON-01910、NMS-P937、TAK-960
、イスピネシブ、モナストロール、AZD4877、LY2523355、ARRY-520、MK-0731、SB743921、GSK923295、ロナファルニブ、proTAME、ボルテゾミブ、MLN9708、ONX0912、CEP-18770;それらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されず;細胞周期阻害剤の特に適する例としては、ヘスペラジン、ZM447439、VX-680、MLN-8054、PHA-739358、AT-9283、AZD1152、MLN8237、ENMD2076、SU6668;それらの組み合わせ;及びオーロラキナーゼの他の阻害剤;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂体及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
抗癌剤は、チェックポイント阻害剤であってもよい。チェックポイント阻害剤は、分子CTLA4、PD-1及びPD-L1を標的とする現在認可されている阻害剤での癌免疫療法の一形態である。
【0038】
本明細書で定義される「同時」投与は、互いに約2時間以内、又は約1時間以内、又はより短時間以内の、より好ましくは同時での物質の投与を包含する。
【0039】
本明細書で定義された「別個の」投与は、約12時間より長く、又は約8時間、又は約6時間、又は約4時間又は約2時間離した物質の投与を包含する。
【0040】
本明細書で定義される「連続」投与は、それぞれ複数のアリコット及び/若しくは用量で、並びに/又は別個の機会での物質の投与を包含する。
【0041】
抗癌剤は、治療レジメンの前に、その間に、又はそれに続いて対象に投与されてもよい。治療レジメンの間、抗癌剤は、第一の治療相の間又は第二の治療相の間など、いつでも対象に投与されてよい。
【0042】
第一の治療相の間、抗癌剤は、ナルトレキソン、その代謝産物又はその類似体の投与の前及び/又は後に患者に投与されてもよい。抗癌剤及びナルトレキソン、その代謝産物又はその類似体は、同時に、連続で、又は別個に、好ましくは同時に投与されてもよい。同じくナルトレキソンでの治療が停止した後に、抗癌剤が患者に引き続き投与されてもよく、そのため抗癌剤は、第一及び第二の治療相で投与される。
【0043】
第二の治療相の間、抗癌剤は、カンナビノイドの投与前及び/又は後に患者に投与されてもよい。抗癌剤及びカンナビノイドは、同時に、連続で、又は別個に、好ましくは同時に投与されてもよい。抗癌剤はまた、カンナビノイドでの治療が停止した後に患者に引き続き投与されてもよく、それにより抗癌剤はまた、治療レジメンに続いて投与される。
【0044】
別の態様において、治療はまた、対象にビタミンDを投与することを含んでいてもよい。ビタミンDは、治療レジメンの前に、その間に、又はそれに続いて対象に投与されてもよい。治療レジメンの間、ビタミンDは、第一の治療相の間又は第二の治療相の間などいつでも対象に投与されてよい。好ましくは患者におけるビタミンDの投与は、開示された治療レジメンが開始する前に行われるべきである。
【0045】
第一の治療相の間、ビタミンDは、ナルトレキソン、その代謝産物又はその類似体の投与前及び/又は後に患者に投与されてもよい。ビタミンD及びナルトレキソン、その代謝産物又はその類似体は、同時に、連続で又は別個に、好ましくは同時に投与されてもよい。ビタミンDは、ナルトレキソンでの治療が停止した後に患者に引き続き投与されてもよく、それによりビタミンDは、第一及び第二の治療相で投与される。
【0046】
第二の治療相の間、ビタミンDは、カンナビノイドの投与前及び/又は後に患者に投与されてもよい。ビタミンD及びカンナビノイドは、同時に、連続で又は別個に、好ましくは同時に投与されてもよい。ビタミンDはまた、カンナビノイドでの治療が停止した後に患者に引き続き投与されてもよく、それによりビタミンDはまた、治療レジメンに続いて投与される。
【0047】
好ましくは治療レジメンの間、ビタミンDは、連日ベースで対象に投与されて、治療の全ての相で正しいビタミンDレベルを保持するべきである。
【0048】
本明細書で用いられる「ビタミンD」は、活性物質の細胞増殖抑制効果を増幅することが可能な代謝産物をもたらすビタミンD、及びビタミンDの代謝経路の任意の中間体又は生成物をいう。代謝産物は、本発明の治療を受ける対象の体内の天然由来のビタミンD合成経路に組み込まれ得るビタミンD前駆体をいう場合がある。或いは代謝産物は、ビタミンDを利用する同化又は異化工程に由来する分子をいう場合がある。ビタミンD代謝産物の非限定的例としては、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、カルシジオール及びカルシトリオール、1a-ヒドロキシコレカルシフェロール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、1a,25-ヒドロキシコレカルシフェロール、24,25-ヒドロキシコレカルシフェロールが挙げられる。「活性」代謝産物は、本発明の状況で用いられ得る代謝産物である。ビタミンD又はその活性代謝産物の薬剤投与計画は、当業者に周知であろう。ビタミンDという用語は、上記のいずれかの医薬的に許容できる塩も包含する。本発明での使用のためのビタミンDの特に適する代謝産物は、カルシトリオールである。
【0049】
特定の態様において、薬剤が、6-β-ナルトレキソールである場合、6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿濃度を少なくとも0.34ng/mlに、好ましくは少なくとも3.4ng/mlに、より好ましくは少なくとも34ng/mlに、又は最も好ましくは少なくとも340ng/mlに上昇させるのに効果的な量で投与されることになる。特定の態様において、6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿濃度を0.3ng/ml~3,400ng/mlの範囲内に、好ましくは34ng/ml~3,400ng/mlの範囲内に、より好ましくは340ng/ml~3,400ng/mlの範囲内に上昇させるのに効果的な量で投与されることになる。そのような量を実現するのに効果的な量は、当業者に知られる任意の数の従来技術を利用して決定され得る。例えば当業者は、ある量の6-β-ナルトレキソールの投与後の試料中の6-β-ナルトレキソールの濃度上昇を決定するために、対象から得られた血漿試料で質量分析を実施することができる。効果的量は、血漿濃度の所望の上昇をもたらすために決定された量である。典型的にはナルトレキソールは、最大3mg/日/患者の量で投与されるであろう。
【0050】
カンナビノイドは、特有のカンナビノイド及び患者の詳細に基づいて従来の量で投与され得る。特定の態様において、カンナビノイドは、10mg~1000mgの間、好ましくは200~800mgの間、より好ましくは300~500mgの間の用量で日ごとに投与されることになる。
【0051】
化学療法剤は、特有の化学療法剤及び患者の詳細に基づいて従来の量で投与され得る。特定の態様において、化学療法剤は、標準の実践で用いられる用量で日ごとに投与されることになる。
【0052】
特定の態様において、ビタミンD製品は、対象の血中ビタミンD濃度を少なくとも40ng/ml、より好ましくは少なくとも50ng/mlにするのに充分な量で患者に投与
されることになる。好ましくは血中ビタミンD濃度は、40~220ng/mlの範囲内に上昇され、より好ましくは血中ビタミンD濃度は、40~90ng/mlの範囲内に上昇される。
【0053】
充分な量は、非限定的に年齢、体重、性別、病歴、並びに/又は喫煙、アルコール消費及び運動量をはじめとする他のライフスタイル因子など、投与を受ける患者の特定のパラメータの日常的評価を行うことにより、当業者により決定され得る。さらに当業者は、対象から得られた生体試料で日常的生化学及び分析アッセイを実施することにより、用量がビタミンD血中濃度を充分量に上昇させるのに充分であったかどうかを確定することができる。好ましくは前記分析が実施されるべき試料は、血液である。そのような周知のアッセイの例としては、ビタミンD又はその活性代謝産物のレベルが定量的に測定され得る質量分析が挙げられるが、これに限定されない。それゆえ充分量は、所望の血中ビタミンD濃度を実現する量である。所望の濃度は、ビタミンD又はその活性代謝産物の用量の単回投与の後、又は反復投与の後に実現され得る。ビタミンD製品又はナルトレキソン製品が、同時に投与されることになる場合、ビタミンD製品が血中ビタミンD濃度を所望の濃度範囲内に上昇させるのに充分な量で投与されれば、ビタミンD血中濃度がナルトレキソン製品の投与前に所望の範囲内であるかどうかは重要でない。患者から得られた生体試料中のビタミンD又はその活性代謝産物の濃度を決定するための他の方法は、当業者に周知であろう。特定の態様において、血中ビタミンD濃度を、特定レベルを超えるまで上昇させるのに充分なビタミンDの量は、ビタミンD製品の「治療有効量」と称される。
【0054】
本明細書で用いられる「調製物」は、同時又は非同時のどちらかでの使用が予定される1種又は複数の組成物の形態の物質又は物質の収集物をいうことができる。
【0055】
投与方法は、任意の治療剤に特に限定されず、本発明の様々な態様において、LDN、カンナビノイド及び化学療法剤は、経口、口腔、舌下、鼻腔、肺、静脈内、直腸、局所、及び経皮経路を介して投与される。LDNの場合、投与は、好ましくは経口であり、カンナビノイドの場合、それは好ましくは舌下であり、化学療法剤の場合、それは好ましくは経口又は静脈内である。
【0056】
想定される治療レジメンは、「第一の治療相」及び「第二の治療相」を含む。第一の治療相では、治療有効量のLDN、その代謝産物、又はどちらかの類似体が、投与される。第二の治療相では、1種又は複数のカンナビノイドの有効量が、投与される。化学療法剤は、治療レジメンの前に、その間に、そして/又はそれに続いて投与されてもよい。
【0057】
1つの好ましい態様において、化学療法剤は、治療レジメンに続いて投与される。このことは、治療レジメンが免疫細胞及び癌細胞をプライミング(活性化)させ、これにより化学療法剤がその後に投与された時に癌の低減をより効果的にすることから、有利になり得る。
【0058】
第一の治療相の開始から1~7日、より好ましくは1~4日、最も好ましくは1~2日が経過して初めて、第二の治療相が開始することが好ましく、「日」は、24時間の継続期間である。
【0059】
本発明のさらに好ましい態様において、第一の治療相の終了~第二の治療相の開始の間に「回復相」が存在する。回復相の間、LDN、カンナビノイド又は化学療法剤は、投与されない。一態様において、回復相は、少なくとも2日の持続期間を有し、好ましくは1週間以内離し、最も好ましくはこの持続期間は2日である。
【0060】
本明細書で用いられる用語「治療すること」及び「治療」及び「治療するために」は、
診断された病気若しくは障害を治癒する、緩徐にする、および/又は病気若しくは障害の進行を停止させる治療手段と、標的となる病気又は障害の発症を予防する、および/又は緩徐にする防護的又は予防的手段の両方をいう。それゆえ、治療を必要とするものとしては、障害を既に有するもの、障害を有し易いもの、及び障害が予防されるべきものが挙げられる。幾つかの例では、対象が、以下のものの1つ又は複数を示す場合、対象は、本発明に従って腫瘍/癌がうまく「治療されている」:癌細胞の数の低減若しくは完全な非存在;腫瘍サイズの低減;例えば軟組織及び骨への癌の伝播など、周囲臓器への癌細胞浸潤の阻害若しくは非存在;腫瘍転移の阻害若しくは非存在;腫瘍成長の阻害若しくは非存在;罹患率及び死亡率の低減;腫瘍発生率、腫瘍発生頻度、若しくは腫瘍の腫瘍発生能力の低減;腫瘍中の癌幹細胞の数若しくは頻度の低減;腫瘍発生細胞から非腫瘍発生状態への分化;又は効果の幾つかの組み合わせ。
【0061】
本明細書で用いられる用語「対象」は、非限定的に、癌の治療のレシピエントになるはずのヒト、非ヒト霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類、及び他の脊椎動物をはじめとする任意の動物をいう。用語「対象」及び「患者」は、本明細書では互換的に用いられる。
【0062】
本明細書で用いられる用語「腫瘍/癌」は、前癌病変を含む良性(非癌性)又は悪性(癌性)のどちらかの過剰な細胞成長、増殖及び/又は生存から生じる任意の組織塊をいう。
【0063】
本発明により治療可能な癌のタイプは、決して限定されず、例えば癌腫、肉腫、腺癌、黒色腫、神経(芽腫、膠芽腫)、中皮腫、及び細網内皮系、リンパ系又は造血系新生物障害(例えば、骨髄腫、リンパ腫又は白血病)が挙げられる。特有の態様において、腫瘍は、肺腺癌、肺癌、びまん性若しくは間質性胃癌、結腸腺癌、前立腺腺癌、食道癌、乳癌、膵臓腺癌、卵巣腺癌、副腎の腺癌、子宮内膜の腺癌又は子宮腺癌を挙げることができるが、癌のタイプは、好ましくは乳癌である。
【0064】
好ましい態様において、治療される癌は、脳癌、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌及び膵臓癌、並びに白血病から選択される。治療される癌は、好ましくは乳癌、肺癌、又は結腸癌である。治療される癌は、最も好ましくは乳癌である。
【0065】
「乳癌」の定義は、医学において周知である。当業者は、乳癌が例えば癌腫及び肉腫をはじめとする男性又は女性の乳房組織の任意の悪性腫瘍をいうことを察知するであろう。乳癌の特有の態様としては、非浸潤性乳管癌(DCIS)、非浸潤性小葉癌(LCIS)、又は粘液癌が挙げられる。乳癌はまた、浸潤性乳管癌(IDC)、小葉新生物又は浸潤性小葉癌(ILC)をいう。
【0066】
同様に「肺癌」及び「結腸癌」の定義は、医学において周知である。当業者は、肺癌及び結腸癌が例えば癌腫及び肉腫をはじめとする男性又は女性のそれぞれ肺及び結腸組織の任意の悪性腫瘍をいうことを察知するであろう。
【0067】
本明細書で用いられる用語「癌細胞」は、腫瘍又は癌に由来する細胞又は不死化細胞株をいう。
【0068】
本発明の一形態において、癌を有し、カンナビノイドでの治療のために既にLDNで治療された対象の適合性を決定するための方法が、提供される。対象は、既に化学療法剤で治療されていてもよい。この形態において試料は、対象から得られ、CB2特異性プローブと接触されることになる。試料中のCB2の濃度は、それにより決定され、第一の治療相の前に行われた参照測定と比較される。
【0069】
本明細書で用いられる「適合性」は、テストにより不適合と見なされたそれらの対象に比較して、先に定義された治療が成功する確率が高いという特性をいう。本発明の一形態において想定される方法によるテストを受ける対象の一部の集団は、第二の治療相に不適合であると見なされるであろう。本発明のいずれの部分も、そのような対象での使用を決して禁じない。適合性を決定する方法は、当業者に知られる他のテストと共に、彼らの直感及び判断力を鍛えることで、当業者により判断されるものとする。
【0070】
特定の態様において、本発明の方法での使用のために対象から得られる生体「試料」は、血液、血清、リンパ液、組織又は組織試料に由来する細胞である。しかし好ましくは試料は、対象から得られた腫瘍生検である。
【0071】
本明細書で用いられる「プローブ」は、対象から得られた試料と接触されると、何らかの方法で試料中のCB2の濃度の測定を可能にする任意の部分である。一態様において、このプローブは、分光光度法で分析され得るCB2のより純粋な溶液を提供して用いられる抗体又は他のCB2結合分子であり、当業者に知られる方法を用いた較正を通して、元の試料中のCB2の濃度が決定され得る。
【0072】
別の形態において、本明細書で用いられる通り、先に定義された第一の治療相、好ましくは回復相、及び第二の治療相からなるレジメンをいう「併用治療レジメン」の一部として投与される医薬の製造における、ナルトレキソン、その代謝産物、又はメチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン及びナロルフィンからなる群から選択される類似体と、カンナビノイドと、の使用が提供され、併用治療レジメンは、上記の手法で化学療法剤を投与することを含む。
【0073】
ここに本発明が、以下の非限定的実施例を参照して記載される。
【実施例】
【0074】
実施例1
1つの例示的で非限定的な実験が、MCF7(乳癌)細胞の培養物で実行された。手短に述べると、10nMのLDN又は1μM若しくは10μMの6BNが、インビトロで培養物に2日間投与され、その後、BAD、p21、オピオイド受容体カッパ及びミュー、CB1、CB2、並びにGAPDH(ローディング対照として)の発現レベルが、ウェスタンブロットを介して分析され、次にバンドの密度測定を介して定量された。
【0075】
略さずに述べると、MCF7細胞が、1×105/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種され、一晩放置して接着された。ナルトレキソン(10nM)又は6-β-ナルトレキソール(1μM又は10μM)が細胞に添加された後、ウェスタンブロット分析のために細胞を回収した。BAD、p21、OPRK1、OPRK2、CBR-1及びCBR-2に対して作製された特異的抗体で、一次プロービングが実施された。BADは、癌細胞内で上方制御されると、種々の治療により殺傷される傾向が上昇するプロアポトーシス性タンパク質であるBlc2関連死プロモーター(Blc2-associate death promoter)である。抗GAPDHが、ローディング対照として用いられた。全ての抗体が、1:1000の希釈で使用され、続いて適当なHRPコンジュゲート化二次抗体もまた、1:1000の希釈で使用された。バンドは、SuperSignal化学発光検出システムにより視覚化され、バンド強度のデンシトメトリーが、Adobe
Photoshop CS3、v10.0を用いて決定され、ローディング対照に対して標準化された。
【0076】
全3種の治療への応答で、CB2及びBADのレベルが、薬物が投与されていない対照に比べて上昇した。CB2では、この上昇は、10μM 6BNの投与に応答して最高と
なった。これは、
図1で認められ得る。
【0077】
実施例2
別の例示的で非限定的な実験が、MCF7(乳癌)細胞の培養物で実行された。手短に述べると、培養物がLDN又は6BNで2日間治療され、その後、カンナビノイドがさらに2日間投与された。細胞数及び生存率が、4日目に評価された。各治療剤の投与順が逆転されて、実験が繰り返された。
【0078】
略さずに述べると、MCF7細胞が、1.5×104/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種され、放置され接着された。その後、細胞は、ナルトレキソン(10nM)、6-β-ナルトレキソール(10μM)又はカンナビジオール(10μM)と共に培養された。薬物含有培地が48時間後に除去され、細胞が薬物不含培地で穏やかにすすがれた。その後、新鮮な培養培地が、グラフに示された通り、ナルトレキソン(10nM)、6-β-ナルトレキソール(10μM)又はカンナビジオール(10μM)のどれかを補充された細胞に添加された。細胞数及び生存率が、さらなる48時間後に評価され、生存細胞及び死亡細胞のパーセント値が、トリパンブルー色素排除により識別された。その後、データが統合されて、全体的効果に及ぼす順序の効果を比較した。
【0079】
図2で認められ得る通り、LDN又は6BNがカンナビノイドの前に用いられるスケジュールが、癌の増殖を阻害することに及ぼすより大きな効果を有することが見出された。
【0080】
実施例3
・ A549(肺癌)及びHCT116(結腸癌)細胞が、表1のスケジュールに従って薬物と共に培養された。このスケジュールは、合計96時間継続した。
・ 治療が、2つのブロックに分割され、それぞれが48時間継続した。3種の異なる治療相で3種の異なる薬物を用いた細胞テストの複雑さにより、CBD及びLDNは1つの治療相で一緒に投与され、化学療法剤は他の治療相で投与された。
・ 2つのブロックの間に休薬期間があり、そこで薬物を含有する枯渇した培地が除去され、その後、細胞が洗浄された後、治療の次のブロックを含有する新鮮な培地が添加された。
・ 化学療法剤は、ゲムシタビン(GEM)又はオキサリプラチン(OXP)であり、およそIC20濃度(1μM)で使用された。低用量ナルトレキソン(LDN)が、10nMで用いられ、カンナビノイド(CBD)が、1μMで使用された。「0」は、何も投与されなかったことを意味し、対照として用いられる。
・ 細胞数及び細胞生存率のパーセント値が、96時間目に評価された。その後、データが統合されて、全体的効果に及ぼす順序の効果を比較した。
【0081】
【0082】
図3及び4に示された通り、化学療法前のCBD+LDNの使用は、効果的である。LDN+CBDに続いて化学療法剤を使用すると、96時間の期間にわたり連続で化学療法のみを使用すること(したがって併用治療より高い総量の化学療法剤を使用すること)に対してより改善された効果、又はそれと同様の効果をもたらす。これらの結果は、テストされた両方の細胞型(A549及びHCT116)及び両方の化学療法剤(GEM及びOXP)で観察された。細胞を化学療法の前にLDN+CBDで治療すると、前治療を受けなかった細胞に比較して、より少ない細胞数及び%細胞生存率の減少をもたらした。
【0083】
こうして実施例3は、前治療が96時間使用された化学療法と同様の効果をもたらした
ことを示している。これは、連続化学療法より良好な、又はそれと同等の全体的有効性を維持するが、有意に低減された量の化学療法を利用する効果的な治療レジメンを可能にし、それはその後、患者が受ける化学療法関連の毒性を低減し得るため有益である。
【0084】
参考資料
Cridge, B. & Rosengren, R (2013) Critical appraisal of the potential use of cannabinoids in cancer management. Cancer Management and Research 2013:5 301-313
【国際調査報告】