(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】散乱媒質を介したイメージングシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544739
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IL2020050116
(87)【国際公開番号】W WO2020157759
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504154333
【氏名又は名称】バー‐イラン、ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】BAR-ILAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ザレブスキー,ゼーブ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG01
2G059HH02
2G059JJ19
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
拡散性媒質を通じたイメージングに用いられるシステムが提示される。システムは、(a)選択された波長範囲のコヒーレントの照明を提供する少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの光源により生成される光の波面の空間パターンを選択的に変化させるように構成された空間光変調器を含む光源ユニットと、(b)少なくとも1つの検出器アレイを含み、前記光源ユニットの隣に配置された、前記光源ユニットにより照明された試料から反射された光を集光する集光ユニットと、を含むイメージングユニットを含む。また、制御システムは、少なくとも1つの処理ユニットを含み、前記光源ユニット及び前記集光ユニットに接続され、前記制御システムは、集光ユニットの前記少なくとも1つの検出器アレイにより集光された光の空間パターンにしたがって少なくとも1つの光源により生成される光の波面の空間パターンを選択的に変化させて、波面の空間パターンと集光された光の空間パターンとの間の関係を示す反射率条件を満たすように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散性媒質を通じたイメージングに使用するためのシステムにおいて:イメージングユニットであって、
(a)選択された波長範囲のコヒーレント照明を提供する少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光源により生成された光の波面の空間パターンを選択的に変化させるように構成された空間光変調器を含む光源ユニット、並びに
(b)少なくとも1つの検出器アレイを含み、前記光源ユニットの隣に配置された、前記光源ユニットによって照明された試料から反射された光を集光する集光ユニット
を含むイメージングユニットと、
少なくとも1つの処理ユニットを含み、前記光源ユニット及び前記集光ユニットに接続された制御システムであって、前記少なくとも1つの光源により生成された光の波面の空間パターンを前記集光ユニットの前記少なくとも1つの検出器アレイにより集光された光の空間パターンに応じて選択的に変化させて、前記波面の空間パターンと集光された光の空間パターンとの間の関係を示す反射率条件を満たすように構成される制御システムと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記反射率条件は、集光された光の強度パターンが、一定の損失及び所定の閾値変化まで、前記少なくとも1つの光源により生成された光の波面の空間強度パターンと空間的に類似するという条件である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記反射率条件は
【数1】
に対応し、式中、I
in(x)は生成された光の前記波面空間パターンにより形成される強度パターンであり、I
out(x)は集光された強度パターンであり、kは前記試料内の特定の深さにおける焦点領域からの損失及び反射を示す測定値である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記イメージングユニットは移動式プラットフォーム上に位置付けられ、前記制御システムは前記プラットフォームに接続されて、前記試料に関する前記イメージングユニットの横方向の位置を選択的に変化させる、請求項1~3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御システムは、前記試料に関する前記イメージングユニットの横方向の位置を変化させ、選択された数の異なる位置における前記反射率条件を検証するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記試料に関する前記イメージングユニットの横方向の位置を選択的に変化させ、それによって前記試料の選択された領域をスキャニングするように構成され、集光された光パターンの全体的強度の変化は、前記試料中の特定の深さの集束スポットからの反射を示し、前記スキャニングはそれによって、前記試料中の前記特定の深さを示す画像データを提供する、請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理ユニットは、前記反射率条件を満たすのに適した光の波面の空間パターンのデータを使って、前記試料に関する推定散乱行列を特定するように構成された散乱行列モジュールを含む、請求項1~6の何れか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理ユニットはパターン特定モジュールをさらに含み、前記パターン特定モジュールは、前記推定散乱行列に関するデータを受信し、前記推定散乱行列を使って、前記散乱媒質中の選択された深さにおける焦点領域を生成するのに適した1つ又は複数の波面パターンを特定するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
散乱媒質を通じたイメージングの方法において:
(a)選択された波長範囲と選択された空間パターンを有するコヒーレントな照明波面を試料へと方向付けることと、
(b)前記試料から戻った光を集光して、集光された光の空間パターンを特定することと、
(c)前記コヒーレントな照明波面の前記選択された空間パターンと集光された光の空間パターンとの間の関係を特定することと、
(d)前記関係が所定の反射率条件内に入るまで前記コヒーレントな照明波面の空間パターンを変化させることと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記所定の反射率条件は、集光された光の空間パターンが、一定の損失及び所定の閾値変化まで、前記コヒーレントな照明波面の空間パターンと空間的に類似する条件を満たすように選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の反射率条件は
【数2】
に対応し、式中、I
in(x)は生成された光の前記波面空間パターンにより形成される強度パターンであり、I
out(x)は集光された空間強度パターンであり、kは前記試料内の特定の深さにおける焦点領域からの損失及び反射を示す測定値である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料に関する照明の相対的な横方向の位置を変化させることをさらに含む、請求項9~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料上の選択された数の異なる横方向の位置における前記反射率条件を特定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料の選択された領域をスキャニングすることと、前記試料上の各測定位置について、前記コヒーレントな照明波面の全体的強度に関する集光された光のパターンの全体的強度における変化を特定することと、前記試料中の特定の深さにおける集束スポットから到来した反射レベルに関するデータを特定することと、前記スキャニングに応じて前記試料内の前記特定の深さを示す画像データを生成することと、をさらに含む、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、イメージング技術の分野に属し、散乱媒質の内部又は背後の関心対象領域を画像化するためのイメージング方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
本願で開示される主旨の背景として関係があると考えられる参考文献を以下に挙げる:
[1]. D. Huang, E. A Swanson, C. P. Lin, J. S. Schuman, W. G. Stinson, W. Chang, J. G. Fujimoto, “Optical coherence tomography,” Science, 254(5035), 1178-1181 (1991).
[2]. A. P. Gibson, J. C. Hebden, and S. R. Arridge, “Recent advances in diffuse optical imaging,” Physics in Medicine and Biology 50(4) (2005).
[3]. O. Katz, P. Heidmann, M. Fink, and S. Gigan, “Non-invasive single-shot imaging through scattering layers and around corners via speckle correlations,” Nat. Photonics 8, 784 (2014).
[4]. E. Edrei and G. Scarcelli, “Optical imaging through dynamic turbid media using the Fourier-domain shower-curtain effect,” Conference on Lasers and Electro-Optics (2016).
[5]. P. Wu, Z. Liang, X. Zhao, L. Su, L. Song, “Lensless wide-field single-shot imaging through turbid media based on object-modulated speckles,” Applied Optics 56(12), 3335 (2017).
[6]. Y. Shechtman, Y. C. Eldar, O. Cohen, H. N. Chapman, J. Miao, M. Segev, “Phase Retrieval with Application to Optical Imaging: A contemporary overview,” IEEE Signal Processing Magazine 32(3), 87-109 (2015).
[7]. L. A. Wu, B. K. Hartline, R. K. Horton, C. M. Kaicher, “Lensless ‘Ghost’ Imaging with Thermal Light Sources (abstract),” AIP Conference Proceedings (2009).
[8]. Y. Shih, “The Physics of Turbulence-Free Ghost Imaging,” Technologies 4(4), 39 (2016).
[9]. Y. K. Xu, W. T. Liu, E. F. Zhang, Q. Li, H. Y. Dai, P. X. Chen, “Is ghost imaging intrinsically more powerful against scattering?,” Optics Express 23(26), 32993 (2015).
[10]. A. -X. Zhang, Y.-H. He, L.-A. Wu, L.-M Chen, B.-B. Wang, “Tabletop x-ray ghost imaging with ultra-low radiation,” Optica 5(4), 374 (2018).
[11]. I. M. Vellekoop, A. P. Mosk, “Focusing coherent light through opaque strongly scattering media,” Optics Letters 32(16), 2309 (2007)
[12]. S. M. Popoff, G. Lerosey, R. Carminati, M. Fink, A. C. Boccara, S. Gigan, “Measuring the Transmission Matrix in Optics: An Approach to the Study and Control of Light Propagation in Disordered Media,” Physical Review Letters 104(10) (2010).
[13]. A. P. Mosk, A. Lagendijk, G. Lerosey, M. Fink, “Controlling waves in space and time for imaging and focusing in complex media,” Nature Photonics 6(5), 283-292 (2012).
[14]. I. M. Vellekoop, A. Lagendijk, A. P. Mosk, “Exploiting disorder for perfect focusing,” Nature Photonics 4(5), 320-322 (2010).
[15]. H. He, Y. Guan, J. Zhou, “Image restoration through thin turbid layers by correlation with a known object,” Optics Express 21(10), 12539 (2013).
[16]. J. Kennedy, R. Eberhart, “Particle swarm optimization,” Proceedings of ICNN95 - International Conference on Neural Networks.
【0003】
本明細書における上記の参考文献の認知は、これらが本願で開示される主旨の特許可能性に何らかの関係があることを意味していると推測されるべきではない。
【0004】
背景
散乱媒質を通じたイメージングには、特に生体組織のイメージングをはじめとして、おそらく幅広い用途がある。散乱媒質を通る際の光のランダムな散乱によって、その背後にある物体のイメージングが困難となり、このような散乱媒質は典型的に不透明に見える。拡散媒質を通じたイメージングについては幾つかの方法が提案されており、これには光干渉断層撮影法(OCT: Optical Coherence Tomography)、拡散断層撮影法、X線及び超音波、並びに他の幾つかの技術が含まれる。
【0005】
逆散乱の問題の位相回復ツールとして、スペックルの光メモリ効果が使用された。しかしながら、位相回復アルゴリズムは典型的にノイズの影響を受けやすく、その結果、イメージング対象物の再構成において数多くのエラーが生じる。ゴーストイメージングも、未知の物体の情報を回復するためのツールとして使用することができる。しかしながら、この技術は参照ビームの使用を必要とし、様々な用途において限定的となる。
【0006】
最近開発された技術は、ランダム媒質を通じた光散乱の決定的性質を利用して、それを通る光を集光する。散乱媒質を通る光を集光するための有効なツールの1つとして、波形制御法が考案された。
【0007】
一般的説明
業界では、散乱媒質の内部及び背後の高解像度イメージングのための新規なアプローチが求められている。このような技術は、生体散乱媒質を通じたイメージングを提供する可能性があり、他方で散乱媒質や媒質の他の面への直接アクセスを必要としない。さらに、この技術により、媒質の散乱特性を事前に知らなくてもイメージングを行うことができる。
【0008】
前述のように、波形制御は散乱媒質を通る光の集光のために有効なツールの1つであることが知られている。幾つかの既知の技術は、散乱媒質に向けられた光の波形制御及びカメラユニットによる媒質の反対側の光成分の収集を実行する。波形制御は、空間光変調器(SLM: spatial light modulation)により変調された光位相を使って行われ、この場合、位相パターンはカメラからのフィードバックを用いて変調されて、散乱媒質の背後に集束スポットを提供する。波面は、集束スポットがカメラ上で得られるまで最適化することによって変形される。他の技術では、散乱媒質の等価行列の測定を利用し、測定された行列を使い、SLMを用いて波面に逆位相を導入し、散乱媒質の背後の集束スポットを得る。このような技術には、完全な透過行列を見出すために、初期較正が必要となる。
【0009】
それゆえ、これらの既知の技術では、散乱媒質の事前知識が必要であるか、又はその裏にアクセスできなければならない。これらの限界により、既知の技術は最適ではなく、生体組織の背後に光を非侵襲的に集束することに関わる問題にとって適当ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、照明と検出の両方が散乱媒質の同じ側で行われ、イメージングされる関心対象領域が散乱媒質の内部又は背後の何れかの場所にある光学スキームで照明波形制御を利用する、新規なイメージング技術を提供する。一般に、本願の技術は媒質の散乱特性が概して同様であるとの発明者の理解に基づく。したがって、本願の技術は、散乱媒質の中へと向けられた時に媒質中の特定の深さで集束スポットを生成する波面パターンの選択を利用する。集束スポットから反射した一部の光成分は、照明の方向に戻り、媒質の実質的に同様の散乱特性を通過する。また、本発明は有利な点として、複数の画像を捕捉し、処理する必要のない、関心対象領域のイメージングを提供する。
【0011】
より具体的には、本発明は、散乱媒質中の光の伝搬は、入射波面に作用する第一の散乱演算子によって表すことができるという発明者の理解に基づいており、光は同じ媒質中を通過した後に戻り、それゆえ、第二の散乱演算子により表されてよく、これは第一の散乱演算子との特定の対応を有する(例えば、その逆数)。したがって、散乱媒質で作られる試料に向かって送られる入射波面を符号化することにより、試料内の特定の深さの集束スポットは、試料から戻る(反射した)光の測定パターンを測定し、入射波形の符号化を、入射波面の空間パターンと試料から戻る(反射した)光の空間パターンとの間の関係に関連する条件を満たすように変化させることによって特定されてよい。一般に、このような反射率条件は、入射光と集光された試料からの反射光の類似性に、特定の損失スカラ及び変動閾値まで関連付けられ得る。一般に、このような条件を満たす入射波面は、試料中の特定の深さに集束スポットを生じさせる。したがって、本願の技術により、散乱媒質を通じた(又はその中の)物体のイメージングを可能にし、その際、媒質の反対側に到達する必要がない。
【0012】
さらに、試料の散乱特性は試料全体を通じて比較的似通っているため、同様に符号化された入射波面を試料上の異なる位置に向けた場合、典型的には、特定の深さにおける実質的に同様の集束が提供され、入射位置に応じた位置のシフトが生じる。それゆえ、試料上の1つ又は複数の位置に向けられる適当な波面符号化を識別した後、本願の技術では、試料中の特定の深さの画像データを得るための試料のスキャニングが可能となる。一般に、画像データは入射強度波面と、集束スポットにおける反射を示す集光された射出強度との間のスカラ関係にしたがって特定されてよい。したがって、本願の技術は、試料のスキャニングを利用して散乱媒質の背後の特定の深さのイメージングを提供する。本願の技術では、適当な入射波面符号化を特定するために最適化プロセスが利用され、波面符号化を繰り返し最適化せずに、試料のスキャニングが可能となる。これは一般に特定限度範囲及び媒質特性まで当てはまり、散乱媒質がそのマクロな特性においては概して均一であるとの前提に基づく。
【0013】
それゆえ、1つの広い態様によれば、本発明は拡散性媒質を通じたイメージングに使用するためのシステムを提供し、このシステムは:イメージングユニットであって、
選択された波長範囲のコヒーレント照明を提供する少なくとも1つの光源及びこの少なくとも1つの光源により生成された光の波面の空間パターンを選択的に変化させるように構成された空間光変調器を含む光源ユニット、並びに
少なくとも1つの検出器アレイを含み、前記光源の隣に配置された、前記光源ユニットによって照明された試料から反射された光を集光する集光ユニット
を含むイメージングユニットと、
少なくとも1つの処理ユニットを含み、前記光源ユニット及び前記集光ユニットに接続された制御システムであって、少なくとも1つの光源により生成された光の波面の空間パターンを前記集光ユニットの少なくとも1つの検出器アレイにより集光された光の空間パターンに応じて選択的に変化させて、波面の空間パターンと集光された光の空間パターンとの間の関係を示す反射率条件を満たすように構成される制御システムと、
を含む。
【0014】
幾つかの実施形態によれば、反射率条件は、集光された光の強度パターンが、一定の損失及び所定の閾値変化まで、少なくとも1つの光源により生成された光の波面の空間強度パターンと空間的に類似するという条件であってよい。
【0015】
幾つかの実施形態によれば、反射率条件は
【数1】
に対応してよく、式中、I
in(x)は生成された光の前記波面空間パターンにより形成される強度パターンであり、I
out(x)は集光された強度パターンであり、kは試料内の特定の深さにおける焦点領域からの損失及び反射を示す測定値である。
【0016】
幾つかの実施形態によれば、イメージングユニットは移動式プラットフォーム上に位置付けられてよく、前記制御システムは前記プラットフォームに接続されて、前記試料に関するイメージングユニットの横方向の位置を選択的に変化させる。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、制御システムは試料に関するイメージングユニットの横方向の位置を変化させ、選択された数の異なる位置における前記反射率条件を検証するように構成されてよい。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、制御ユニットは、試料に関するイメージングユニットの横方向の位置を選択的に変化させ、それによって試料の選択された領域をスキャニングするように構成されてよく、集光された光パターンの全体的強度の変化は、試料中の特定の深さの集束スポットからの反射を示し、前記スキャニングはそれによって、試料中の前記特定の深さを示す画像データを提供する。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、処理ユニットは、前記反射率条件を満たすのに適した光の波面の空間パターンのデータを使って、前記試料に関する推定散乱行列を特定するように構成された散乱行列モジュールを含んでいてよい。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、処理ユニットは、パターン特定モジュールをさらに含んでいてよく、前記パターン特定モジュールは、推定散乱行列に関するデータを受信し、前記推定散乱行列を使って、散乱媒質中の選択された深さにおける焦点領域を生成するのに適した1つ又は複数の波面パターンを特定するように構成される。
【0021】
他の広い態様によれば、本発明は、散乱媒質を通じたイメージングの方法を提供し、方法は:選択された波長範囲と選択された空間パターンを有するコヒーレントな照明波面を試料へと方向付けることと、試料から戻った光を集光して、集光された光の空間パターンを特定することと、コヒーレントな照明波面の前記選択された空間パターンと集光された光の空間パターンとの間の関係を特定することと、前記関係が所定の反射率条件内に入るまでコヒーレントな照明波面の空間パターンを変化させることと、を含む。
【0022】
幾つかの実施形態によれば、所定の反射率条件は、集光された光の空間パターンが、一定の損失及び所定の閾値変化まで、コヒーレントな照明波面の空間パターンと空間的に類似する条件を満たすように選択される。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、所定の反射率条件は
【数2】
に対応し、式中、I
in(x)は生成された光の前記波面空間パターンにより形成される強度パターンであり、I
out(x)は集光された空間強度パターンであり、kは試料内の特定の深さにおける焦点領域からの損失及び反射を示す測定値である。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、方法は、試料に関する照明の相対的な横方向の位置を変化させることをさらに含んでいてよい。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、方法は、試料上の選択された数の異なる横方向の位置における前記反射率条件を特定することをさらに含んでいてよい。
【0026】
幾つかの実施形態によれば、方法は、試料の選択された領域をスキャニングすることと、試料上の各測定位置について、前記コヒーレントな照明波面の全体的強度に関する集光された光のパターンの全体的強度における変化を特定することと、試料中の特定の深さにおける集束スポットから到来した反射レベルに関するデータを特定することと、前記スキャニングに応じて試料内の前記特定の深さを示す画像データを生成することと、をさらに含んでいてよい。
【0027】
図面の簡単な説明
本願で開示される主旨をよりよく理解するために、及びそれが現実にどのように実行されてよいかを例示するために、あくまでも非限定的な例として、下記のような添付の図面を参照しながら実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の幾つかの実施形態によるシステムを概略的に示す。
【
図2】本発明の幾つかの実施形態による、最適化による入射波面パターンの選択を例示するフローチャートを示す。
【
図3A】本発明の幾つかの実施形態による技術のシミュレーションの1Dコンセプトを示す。
【
図3B】本発明の幾つかの実施形態による技術のシミュレーションの1Dコンセプトを示す。
【
図4】本願の技術のシミュレーションに使用される、反復回数に対してプロットされたメリット関数の値を示す。
【
図5A】最適化前のI
out測定に関するシミュレーション結果を示す。
【
図5B】最適化後のI
out測定に関するシミュレーション結果を示す。
【
図5C】最適化前の標的平面上の強度に関するシミュレーション結果を示す。
【
図5D】本発明の幾つかの実施形態による鮮鋭な焦点と散乱の軽減を示す、最適化後の標的平面上の強度に関するシミュレーション結果を示す。
【
図7】本願の技術を検証するために使用される実験的システム構成を示す。
【
図8A】散乱試料を2回通過した後に使用して捕捉された収集画像を示す。
【
図8B】散乱試料を1回通過した後に使用して捕捉された収集画像を示す。
【
図9】本願の技術による、入射波面の最適化のために使用される入射及び射出強度パターン間の相関関係を示す。
【
図10A】本願の技術の幾つかの実施形態による最適化の前を示す。
【
図10B】本願の技術の幾つかの実施形態による最適化の後、散乱試料を通過した後に実現される、焦点領域(
図10C)を含む結果を示す。
【
図10D】本願の技術の幾つかの実施形態による最適化の前の強度曲線の1次元プロットを示す。
【
図10E】本願の技術の幾つかの実施形態による最適化の後の強度曲線の1次元プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態の詳細な説明
前述のように、本願の技術は、散乱媒質を通じた、又はその背後のイメージングが可能なイメージングシステムを提供する。
図1は、本発明の幾つかの実施形態によるイメージングシステム10を示す。イメージングシステム10は、散乱媒質16の背後(又はその内部の何れかの場所)にある関心対象領域ROI: region of interest)のイメージングに使用するために構成され、動作可能である。一般に、後でより詳しく説明するように、システム10は、関心対象領域の各点をスキャニングし、スキャニングの出力に基づいて完全な画像を再構成することによって関心対象領域ROIをイメージングするように構成されてよい。システム10は、これは光源(例えば、レーザ光源)122空間光変調器124(例えば、空間位相変調器SLM、又はデジタルミラー変調器DMD等)を含む光源システム12と、集光ユニット14、例えばカメラユニットと、を含む。光源システム12は、所定の波長範囲と選択的空間パターンを有し、散乱媒質16のある領域に向けられる光を生成するように構成される。一般に、光源システム12と集光ユニット14は、イメージングユニット150を画定し、イメージングユニット150は、散乱媒質16のある領域をスキャニングするために、1つ又は複数の軸155に沿って選択的に移動可能とすることのできる移動プラットフォーム上に取り付けられてよい。
【0030】
イメージングユニット150は制御ユニット500に接続可能であり、これは光源システム12と集光ユニット14のほか、移動プラットフォーム155を動作させて、散乱媒質16内のある深さにおける集束スポットを生成する光の空間パターンを選択し、媒質16から戻る光を集光するように構成される。制御ユニットは、散乱媒質の1つ又は複数の領域からの集光された光に関するデータを利用して、媒質16内の特定の深さにおける関心対象領域ROIの画像を特定する。制御ユニット500は、少なくとも1つの処理ユニット(プロセッサ)とメモリユニットを含み、また、ここでは具体的に図示されていないユーザインタフェースモジュール及び通信モジュール(入力/出力モジュール)も含んでいてよい。メモリユニットは一般に、散乱媒質16内のある深さにおける関心対象領域を示す画像データを取得するためにイメージングユニットを動作させる命令を保持する。一般に、画像データを取得するために適した照明パターンを選択すること、散乱動作を特定し、散乱演算子を利用して1つまた複数の選択された深さに関する追加の照明パターンを特定すること、及び関心対象領域ROIの画像データを取得するためにプラットフォーム155及びイメージングユニット150を動作させることを含む1つ又は複数の動作を実行するように構成される制御ユニット500。幾つかの構成において、制御ユニット500はまた、後でさらに説明するように、集光ユニットにより集められたデータを使って再構成された画像データを特定してもよい。
【0031】
制御ユニットは典型的に、関心対象領域ROIに関するデータの取得を可能にするような適当な照明符号化を選択するように構成される。このために、制御ユニットは光源122によって生成される光の波面の空間パターンを選択的に変化させるために空間光変調器124を制御することによって、1つ又は複数の最適化技術を利用する。このために、制御ユニットは、照明符号化パターンを選択し、選択された空間パターンを有する光を散乱媒質へと向け、集光ユニットからのデータに応答するように動作する。集光ユニットは、散乱媒質16から戻る光を集光し、集光された光パターンを制御ユニット500に送信する。それゆえ、制御ユニットは、照明の空間符号化パターンを、照明符号化と集光された光のパターンとの間の関係に関する所定の反射率条件を満たすように変化させるように構成される。一般に、幾つかの実施形態において、反射率条件は、集光された光の強度パターンが、一定の損失及び所定の閾値変動まで、少なくとも1つの光源により生成される光の波面の空間強度パターンと空間的に同様であることに関する。例えば、反射率条件は、
【数3】
の形であってよく、式中、I
in(x)は照明の空間符号化によって形成される強度パターンであり、I
out(x)は集光された強度パターンであり、kは試料内の特定の深さにおける焦点領域からの損失及び反射を示す測定値である。
【0032】
これに関連して、制御ユニットは一般に、具体的には図示されていない入力及び出力接続、メモリユーティリティ、並びに1つ又は複数のプロセッサを含むコンピュータシステムとして構成されてよい。1つ又は複数のプロセッサは、スキャンコントローラ510、符号化コントローラ522、入射コントローラ514、波面最適化装置520、散乱行列モジュール530、及び画像スキャンアグリケータ540を含む1つ又は複数のモジュールにより表される動作のための命令を含むコンピュータ可読コードに基づいて動作するように構成される。初期符号化が選択されると、符号化コントローラ522は符号化データを生成して空間光変調器124に送信し、散乱媒質16へと向けられる入射波面E
in(x)が符号化されるようにする。集光ユニット14により収集された光パターンデータが送信されて、入射コントローラ514で受信され、集光された光I
out(x)のパターンに関するデータが特定される。波面最適化装置520は、符号化パターンE
in(x)に関するデータを受信して、入射強度パターンI
in(x)に関するデータのほか、集光された光パターンI
out(x)に関するデータを特定し、一般には
【数4】
の形の所望の反射率条件を満たすI
in(x)とI
out(x)との間の関係が得られる適当な符号化を選択するための、1つ又は複数の最適化技術を利用する。留意すべき点として、符号化パターンE
in(x)と入射強度パターンI
in(x)との間の関係は、I
in(x)=|E
in(x)|
2により特定されてよい。
【0033】
入射光の空間パテントと集光された光のそれとの間の関係に関する条件が満たされると、入射光の少なくとも一部は散乱媒質16内の特定の深さに焦点領域を生成し、素材の焦点領域から反射される光は集光ユニット14に向かって戻る途中に実質的に同様の散乱特性を経ることが仮定される。この仮定を検証するために、スキャンコントローラ510は典型的に、イメージングユニット150の位置を変化させて、散乱素材をシフトした位置で照明してよい。後でさらに説明する散乱モデルによれば、反射率条件は散乱媒質16上の位置がシフトしても保持される。より具体的には、波面符号化の結果、焦点領域が散乱媒質16内の深さの中にない場合は、位置がシフトすると、その結果、集光された光のパターンが変化する。そのため、波面符号化により素材内に焦点領域が提供されるならば、散乱媒質の散乱特性の等方性によって、集光された光の実質的に同様のパターンが得られる。
【0034】
適当な波面符号化を選択したら、スキャンコントローラ510は、照明の位置を変化させ、それによって散乱媒質16のある領域をスキャンするために、移動プラットフォーム155を動作させてよい。各位置について、集光された光のパターンが入射波面の強度パターンと比較されて、反射率パラメータkが特定される。反射率パラメータは散乱による損失を示し、また、焦点領域にある素材の反射率も示す。画像スキャンアグリケータ540は、各位置の反射率パラメータkに関するデータを収集して、散乱媒質16内の深さの範囲内にある領域を示す画像データを構成する。
【0035】
幾つかの実施形態において、散乱行列モジュール530は、適当な波面符号化パターンEin(x)に関するデータを利用して、推定される散乱行列演算子Aを特定してよく、所望の焦点領域を提供する。より具体的には、散乱行列演算子Aは、A・Ein(x)が散乱によるエネルギ損失まで焦点領域のみに到達する照明を表す基底ベクトルを提供するという要求事項にしたがって特定される。幾つかの構成において、散乱行列演算子は、一般的に波面符号化パターンが最適化によって特定される特定の深さとは異なる、選択された深さにおいて焦点領域を生成するのに適した波面符号化パターンを特定するために使用されてよい。このために、制御ユニットの処理ユニットは、推定された散乱行列Aに関するデータを受け取り、前記推定された散乱行列を使って、散乱媒質内の選択された深さにおいて焦点領域を生成するのに適した、1つ又は複数の波面パターンを特定するように構成される。さらに、パターン特定モジュール535もまた、共通の照明波面パターンを使って形成される追加の焦点領域を生成することによって、散乱行列のスキャニングを可能にする波面パターンの特定に使用されてよい。
【0036】
一般的に前述したように、本発明は照明及び検出を媒質の同じ側で利用する。これは、入射光が同じ媒質を2回通過することを示唆しており、それが後述のモデリングの基礎を形成する。さらに、波面符号化は空間光変調器、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)又は他の何れかの光変調器システムにより提供される。SLMのDMDという用語は本明細書中、以下では互換的に使用され、何れの種類の空間光変調ユニットにも関するものとして広く理解されるべきである。一般に、幾つかの実施形態において、本願の技術は、散乱関数を推定し、照明レーザ光源の波面を散乱媒質の逆散乱関数で選択的に符号化する(DMDを用いる)ことを試みてよく、それによってその散乱関数を経た後、集束ビームが得られる。この波面は同じ散乱媒質を2回(前進時と戻る時)通過した後に得られる。上述の散乱を経た後に集束される、符号化された逆の波面を推定するために、以下のモデリングを使用する:散乱媒質は演算子の乗算のシーケンスによりモデル化でき、その中で、第一はランダム位相の演算子であり、第二がdzの短い自由空間伝搬の演算子であり、dzは検査対象組織(散乱媒質)の平均散乱長であると仮定する。これら2つの演算子は、反復回数がM=L/dzと等しく(又はそれより大きく)なるまで繰り返され、Lは媒質の背後の標的の、照明点からの距離である。それゆえ、散乱行列Aは:
【数5】
と書くことができ、式中、[F
ij]と[F
ij]
*はフーリエ及び逆フーリエ演算子(行列)である。
【0037】
これによって、
【数6】
が得られる。留意すべき点として、行列Aはユニタリであり(散乱によるエネルギ損失を省略)、これは、それが2つのユニタリ行列の乗算の積であるからである。
【0038】
演算子行列Aは、このモデルでは散乱媒質を2回通過する(前進する時と戻る時)ため、2回適用される。戻る時には散乱は逆の順序となり、したがって、行列Aに転置の計算が適用された。そこで、1回通過した後に焦点が得られる、すなわち演算子Aが空間軸の中央でデルタ関数を生成するような入射位相ベクトルE
in(x)を求めたい:
【数7】
【0039】
【0040】
したがって、
【数9】
となる。式中、Nは、射出軸に沿った空間サンプリング点の数、すなわち波面符号化の幾何学的分解能である。式2から、E
inは行列演算子の逆Aの中央の列と等しい:
【数10】
【0041】
Aはユニタリ行列であるため、A転置(A1)と逆A(A-1)との間に既知の関係がある。
A-1=A*(式6)
式中、*は行列Aの共役転置を示す。
【0042】
式4、5、及び6を結合することにより、
【数11】
であることが示される。したがって、媒質の1回目の通過の後の集束スポットを得るためにSLMに適用すべき所望の
【数12】
及び、収集された、媒質から戻る光パターンを使って、E
inを特定するための条件が得られる。
【0043】
明らかに、上述のモデルは概算であり、それゆえ得られた分析結果はSLMに表示されることになる分布の最初の反復点にすぎず、1回目の通過の後の実際の焦点を求めるためには、その周囲の閉ループ収束プロセスを適用する必要がある。それを扱う最も適切な方法は、射出野の位相を使用捕捉して、入射光の位相変調を用いた最適化を行うことである。しかしながら、この概念を証明するために、振幅変調を行うことを選択する。粒子群最適化法(PSO: Particle Swarm Optimization)の手法に沿って、閉ループ最適化を行った。PSOに関連する動作を説明するフローチャートを示す
図2を参照する。PSOの目的関数は、この例では射出ビームの強度
【数13】
と入射ビームのそれ
【数14】
との間の相関関係によって定義される。したがって、
【数15】
である。
図2に示されているように、PSO手法を始め2010(開始)、解の初期ランダム集団を特定する2020。この手法の概念は、解に関わる特定の初期速度ベクトルを有する粒子としての解に関係する。解集合の適合度を、適合度関数のための値を計算することによって特定する2030。解をその速度と位置に基づいて更新し2040(解の特性と適合度の値に関連付けられてよい)、適合度関数の値を再計算する2050。個々の解の光学値を更新して、大域的最適値を特定し2060、終了条件をチェックする2070。終了条件は、サイクル数、最適値等に関連付けられてよい。終了条件が満たされたと判断されると2080、アルゴリズムは終了し2085、最適値とそれに対応する解の形態の出力が提供される。終了条件が満たされない場合2090、手法は解の速度と位置を更新し2040、適合度の値を計算する2050ことによってこの手法を繰り返す。
【0044】
シミュレーション結果
発明者らは、シミュレーションのために100×100ピクセルを使って数値シミュレーションを行った。モデルは一般に1Dとして説明されるため、散乱媒質上の照明有効面積を最小限に保持し、すなわち線照明を選択した。留意すべき点として、モデルは、領域のベクトル表現を整列させることによって2Dで示されてもよい。垂直軸に沿って100のピクセルがあり、その振幅値は0~255で変化させることができる。水平方向に沿って3つのピクセルの列を線照明のために選択した。ピクセルサイズは8μに設定した。理想的には、その振幅が垂直方向に沿って変調される光の線を散乱媒質に入射させることになる。散乱試料のその他の領域からの散乱への寄与が望まれないため、散乱物体上の領域のうち、照明領域以外の残りを遮蔽した。
図3A及び3Bは、本願でのシミュレーションの使用のための散乱領域の限定を示す。
図3Aは、全面散乱面を例示し、
図3Bは散乱物体上の領域のうち、照明領域以外の残りに遮蔽マスクを使用した後に残された散乱領域を例示する。黒色は、他の領域からの寄与を最小限にするために遮蔽された領域を示す。
【0045】
粒子群最適化法では、150の粒子の大きさの群を考慮し、これはランダム解として知られる。また、これらの粒子の各々が特定の速度で初期化される。この場合の解は100×3のピクセルラインであり、その垂直軸に沿った振幅は0~255で変化する。これらの解は、散乱試料を照明する入射波面符号化強度
【数16】
の候補を提供する。散乱試料の5mm背後に設置されると仮定される標的。散乱物体から標的までの伝搬は、角スペクトル伝搬を用いて行われる。2度通過した後に散乱媒質から出た光の強度を捕捉する。この強度を平均して、集光された光のパターン
【数17】
を求める。その後、式7にしたがって、メリット関数/目的関数をこれら2つの強度パターン間の相関関係として計算する。これらのランダム解の中に、メリット関数の値がより高いであろう1つの解があることになる。これは、グローバルベスト解と呼ばれ、各粒子についての最良解は粒子ベスト解と呼ばれる。グローバルベストと粒子ベストに基づいて、粒子の位置と速度が変化される。これが1反復である。同様に、250回の反復を実行し、メリット関数のより高い相関関係係数値0.99に到達した。
図4は、反復回数に対してプロットされたメリット関数の値を示す。
【0046】
図5A~5Dは、最適化前(
図5A)、最適化後(
図5B)、のI
outの測定値、最適化前の標的平面上の強度(
図5C)、及び鮮鋭な焦点と散乱の軽減を示す最適化後の標的平面上の強度(
図5D)を示す。
【0047】
標的平面(散乱媒質の背後の、スポットを集束させることになる平面)からの情報にはアクセスしないため、非侵襲的な方法での最適化を行う。
図5A及び5Bは、最適化の前と後に測定された射出強度を示す。しかしながら、焦点に実現したか否かを検証するために、標的平面上の強度の観察も試みた。(
図5C及び5Dに示される)。
図6A及び6Bは、それぞれ
図5C及び5Dの対応する強度プロファイルプロットを示す。
【0048】
図5D及び6Bから、入射光に対する適当な振幅変調の後に標的平面上の集束スポットを得る。次の反復セットで、この手法では他の集束スポットをマッピングできる。そこで、このような最適化サイクルを何度も行うことにより、標的平面全体をマッピングできる。
【0049】
発明者らは、本願の技術の効率を波形制御のための振幅変調を通じて示す予備実験を行った。実験装置は
図7に示されており、光源710(例えば、532nmのレーザユニット)とその光射出部の偏光板712及び、射出光をコリメートするように構成された光学装置720と選択された偏光(例えば、円偏光)を提供するために位置付けられた半波長板722を含む。光は、選択された照明パターンE
inを提供するように動作する空間変調コントローラ732に関連付けられる空間光変調器730(例えば、DMDユニット)を透過するか、そこから反射される。パターニングされた光はさらに偏光板740によって偏光され、ピンホール/絞り750によってフィルタ処理されて、空間変調に関係する高次回折光が除去される。この例におけるシステムは、円柱レンズ760を利用して異なる振幅パターンを有する集束線をそこに沿って生成し、集束ラインを試料800へと向ける。試料から戻る光は、ビームスプリッタ770を使ってカメラユニット780へと向けられ(典型的に、偏光アナライザ782を介する)、戻った光のパターンが収集される。追加のカメラユニット790及びイメージングレンズユニット792は、試料800の下流に位置付けられて、集束スポットが作られたことを検証する。この実験装置は、振幅モードのLCOS SLM 730を使用して、入射波面に空間ビームコード化を提供した。試料800は、拡散媒質として使用され、システムからの適正な応答を得るために下流2mmの距離に反射面を含む、ごく薄い鶏胸肉片の試料で形成されている。試料800は、円柱レンズによって各ピクセルに沿って異なる振幅の線で照明される。光は同じ媒質を2回通過し、したがって、
【数18】
となる。
【0050】
Aは前方散乱行列である。前述のモデルに関して、振幅スキームの中で、集束スポットのためには:
【数19】
でなければならない。
【数20】
は、CCD1(THORCAM)カメラユニットを使って強度画像として測定された。E
inはSLM 730に適用した振幅マスクである。最適化を行うために、粒子群アルゴリズム(PSO)を選択する。費用関数又は適合度関数はE
outとE
inとの間の相関関係である。したがって、これは最大化問題となる。CCD2(THORCAM)を使って、最適化後の集束スポットが完全であることがチェックされた。
【0051】
使用されたSLMはHEO 1080P SC-1(HoloEyeが販売)であり、これはピクセルサイズ8μmの1080×1920のピクセルを含む。それゆえ、計算負荷を最小にするために、108×108のピクセルについて最適化を行った。これは、SLM上の10のピクセルをまとめることによって行った。すなわち、1つにまとめられた10のピクセルは同じグレイレベル値を有することになる。線(その中で各ピクセルの振幅が異なる)を得るために、SLMに適用されるマスクは格子の形態であり、これは後に円柱レンズを使って線に変形される。
【0052】
散乱組織は鶏胸肉であった。鶏肉の表面は、光の線だけが通過するように覆われた。これは、散乱をより1次元(1D)に近付けるために行った。
図8A及び8Bは、入射光に変調を行わなかった場合にカメラ780とカメラ790を使って捕捉された画像としての結果を例示している。
図8Aに示される散乱光は散乱媒質を2回通過しており、
図8Bの画像は媒質を1回通過した後の光散乱を示す。
【0053】
捕捉したEoutは145×36ピクセルであった。これを108×36ピクセルにリサイズした。しかしながら、数学的公式にフィットさせるために、発明者らは、1D射出強度を使用し、それについてy軸に沿った強度を36ピクセルについて平均した。我々の組織はy軸に沿って非常に薄い組織を有しているため、これは合理的な前提であった。
【0054】
PSOアルゴリズムを実行した。当初、150のランダム振幅マスクの集団を作り、それについて100回の反復を行った。各反復において、さらに150回の反復を有する。25回の反復後、相関係数は0.82の値に到達したことがわかった(
図9)。
【0055】
散乱組織の背後に焦点が生成されたことをチェックするために、発明者らは、第二のカメラユニット790を使って、散乱媒質(試料800)を1回通過した後の強度を捕捉した。
図10A~10Eは、初期強度(
図10A)と1回の通過における最適化後の強度(
図10B)との間の比較を示す。
図10Cは、
図10Bの集束スポットの拡大図を示す。最適化後に、
図10Bは
図10Aの初期スポットに関して散乱が減少した集束スポットを示している。
図10D及び10Eは、それぞれ
図10A及び10Bのスポットに対応する、集光された光のピークに沿った強度曲線をプロットしたものである。
図10Eで実現されるピーク強度(集束後)は、
図10Dで実現されるピーク強度(集束前)より(少なくとも周囲に関して)高い。
【0056】
それゆえ、本発明は、散乱媒質の背後にある物質の、例えばスキャニングによるイメージングを可能にするシステムと技術を提供する。本願の技術は、限定的な回数の最適化ステップで動作されてよく、散乱媒質の異なる領域からのイメージングを可能とすることができ、そのために最適化を繰り返す必要がない。さらに、本発明によれば、特定の初期深さからのイメージングに関するデータを収集した後に、散乱媒質の中の選択された深さからの画像データを取得するための波面符号化を特定できる。
【国際調査報告】