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特表2022-524941生理活性液を投与するための携帯型装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】生理活性液を投与するための携帯型装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220428BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61M11/00 D
A61M11/00 K
A61M15/06 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547592
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2020053782
(87)【国際公開番号】W WO2020165356
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】202019000718.0
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】202019004067.6
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358659
【氏名又は名称】ヴェルタ ゲーエムベーハー デューゼン-ウント ツェルストイブンクステヒニク
【氏名又は名称原語表記】WERRTA GmbH Dusen- und Zerstaubungstechnik
【住所又は居所原語表記】Hochwaldsteig 6, 14089 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンチュ,リューディガー
(72)【発明者】
【氏名】エトツォルト,マティアス
(57)【要約】
本発明によれば、衝突素子(24)は、噴出口から距離dに配置される。設計実験により、容器の圧力と、ノズルプレート(14a)の中央噴出口の直径と、衝突素子(24)までの距離dとは、噴出口から発射された液体噴流が衝突素子(24)に衝突する前に自由落下分裂するように、整合される。アトマイザ/アプリケータ部(6a、6b)のアプリケータには、当該ユニットの下面に溝(25)が設けられており、この溝はストッパー(23)に近づくほど深い。この溝は、衝突素子(24)から滴下した液体を回収するための回収用貯留部として使用される。液室(4)は、内側ハウジング(31)と、気体ピストン(24)に頑強に接続された液体ピストン(32)とによって画定される。気体ピストン(24)と液体ピストン(32)とで構成されるユニットは、吸入液を射出するために移動可能である。液室(4)を塞ぐ液体ピストン(32)の表面は、気室(3)を塞ぐ気体ピストン(24)の表面の約半分の面積しかないため、液室(4)内の液体圧力は、同時に気室(3)内の気体圧力の約2倍となる。吸入液の最大射出可能量の射出に成功して液体ピストン(32)が最終位置に到達する直前には、設計上前もって定義された残留圧力が液室(4)内に存在する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性液を投与するための携帯型装置であって、
前記生理活性液を保持するための容器と、
前記生理活性液に圧力を加えるための加圧手段と、
前記生理活性液を微粒化するためのアトマイザと、
微粒化された生理活性液を投与するためのアプリケータと、
を備え、
前記アトマイザは、前記容器から生理活性液を射出可能な少なくとも1つのノズルと、当該ノズルの出口側に設けられ、前記ノズルと機能的に組み合わされた衝突素子とを備えており、
前記アトマイザは、前記加圧手段が生成可能な圧力範囲において、前記ノズルから吐出された生理活性液が前記衝突素子に衝突する前に液滴に分裂するように構成される、
携帯型装置。
【請求項2】
前記衝突素子から滴下または流出する余剰液を回収するための回収装置を備える、
請求項1に記載の携帯型装置。
【請求項3】
前記回収装置と前記アプリケータとが共通の部品に一体化されている、
請求項2に記載の携帯型装置。
【請求項4】
前記回収装置と前記衝突素子とが共通の部品に一体化されている、
請求項2または請求項3に記載の携帯型装置。
【請求項5】
前記回収装置は回収用貯留部を備える、
請求項2から請求項4のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項6】
前記回収用貯留部は吸収性材料を備える、
請求項5に記載の携帯型装置。
【請求項7】
前記余剰液の少なくとも一部を再微粒化のために前記アトマイザに供給するように構成される、
請求項2から請求項5のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項8】
前記容器は、圧縮ガスが充填された、前記加圧手段としての気室と、生理活性液が充填された液室とを有する圧力タンクであり、
前記アトマイザはバルブを有しており、当該バルブが開いているときに前記液室から前記ノズルを介して生理活性液を射出可能であり、
前記気室の特定の初期充填状態と比較した前記気室の最大可変容積、または、前記液室の特定の初期充填状態と比較した前記液室の最大可変容積がそれぞれ、前記特定の初期充填状態についての液体の最大射出量を画定するように、前記気室は、前記圧縮ガスの膨張によって射出される生理活性液の量に比例して拡大し、前記液室は、前記放出される生理活性液の体積だけ縮小する、
先行する請求項のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項9】
前記バルブは、射出される生理活性液の体積流量を調整可能な調整バルブとして構成される、
請求項8に記載の携帯型装置。
【請求項10】
前記初期充填状態における前記圧縮ガスは、圧力が、前記最大射出量の吸入液が正常に射出されるまで前記液室の圧力が13バール(1.3MPa)を下回らないような高さである、
請求項8または請求項9に記載の携帯型装置。
【請求項11】
前記初期充填状態における前記圧縮ガスの圧力が、少なくとも18バール(1.8MPa)、好ましくは少なくとも20バール(2MPa)、特に好ましくは少なくとも25バール(2.5MPa)であることを特徴とする、
請求項8から請求項10のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項12】
前記気室内の圧力に比べて前記液室内の圧力を増加させるトランスミッションを有する、
請求項8から請求項11のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項13】
前記トランスミッションは、
前記気室側に気室ピストン面を備え、前記気室を一方の側で区切る気体ピストンと、
前記液室側に液室ピストン面を備え、前記液室を一方の側で区切る液体ピストンと、
を有し、
前記液室ピストン面の表面積が、前記気室ピストン面の表面積よりも小さい、
請求項12に記載の携帯型装置。
【請求項14】
前記液室ピストン面の前記表面積は、前記気室ピストン面の前記表面積の半分以下である、
請求項13に記載の携帯型装置。
【請求項15】
前記加圧手段は、ハンドポンプまたは電動ポンプである、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項16】
前記加圧手段がバネ式である、
請求項1から7のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのノズルは、リソグラフィーで製造される、
先行する請求項のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つのノズルは、セラミックまたはプラスチックの焼結によって製造される、
請求項1から請求項16のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのノズルは、放電加工によって製造される、
請求項1から請求項16のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのノズルは、レーザー作用によって製造される、
請求項1から請求項16のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項21】
ノズル材料を局所的にレーザー作用に露出させて前記ノズルを形成し、前記レーザー作用に露出させた前記ノズル材料は続いてエッチング除去される、
請求項20に記載の携帯型装置。
【請求項22】
前記携帯型装置は吸入器であり、
前記生理活性液は吸入液であり、
前記アプリケータはマウスピースまたは、口用および/または鼻用マスクを有する、
先行する請求項のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項23】
前記アプリケータはマウスピースを有し、
前記吸入液はニコチンを含む、
請求項22に記載の携帯型装置。
【請求項24】
前記携帯型装置は、眼科用ネブライザであり、
前記アプリケータは、アイマスクである、
請求項1から請求項21のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項25】
前記ノズル入口側の前記少なくとも1つのノズルの上流にスクリーン配列が配置されている、
先行する請求項のいずれかに記載の携帯型装置。
【請求項26】
複数のノズルが設けられており、
前記複数のノズルは、個別にまたは群ごとに、吸入液の供給対象から除外可能である、
先行する請求項のいずれかに記載の携帯型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性液を、特にエアロゾルとして投与するための携帯型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルを投与するための吸入器は、例えば医療用の吸入器や禁煙用器具として、また、電子タバコのようなタバコ製品の代替品として、従来技術から知られている。
【0003】
液体を霧状にし、霧状になったエアロゾルを吸入する装置として、吸入器が知られている。吸入用の流体としては、主に水に1種類以上の薬剤成分を添加したものが使用される。
【0004】
従来の吸入器は、吸入液の貯留部と、吸入液が微粒化されるアトマイザと、微粒化により生成されたエアロゾルを、ほぼ標的を定めた方法で、ユーザの気道に供給可能なアプリケータとを備える。例えば、アプリケータは、鼻および/または口を覆って装着するマスク、または、一端を口で塞ぐことができるチューブ(通常、円形または楕円形の断面形状を有する)でもよい。
【0005】
アトマイザの主要部は、通常、1以上のノズル開口部を有するノズル配列である。これらの開口部から吸入液が吐出されて液滴を形成し、周囲の気体(通常は空気)と一緒になってエアロゾルを形成する。吸入液がノズル配列を通過するのに必要なエネルギーに加えて、液滴の表面を形成するための表面エネルギーも必要となる。得られた液滴が小さいほど、エアロゾルの総表面積が大きくなり、それに応じて必要なエネルギー量も大きくなる。
【0006】
吸入器は、圧縮空気などの圧縮された噴射剤により作動可能である。技術的により複雑な吸入器では、圧縮された噴射剤とは異なるエネルギー源によりと動作するか、あるいは、圧縮された噴射剤に他のエネルギー源を追加して、例えば、電気機械的に、または超音波による微粒化などで動作する場合が多い。技術的に複雑である点と、それに伴うコストのため、かかる吸入器の適用範囲は限られている。特に、運動中や、旅行中、日常生活の中で、必要なときに吸入器を単純に差し込んで即座に利用することができない。
【0007】
ベンチュリの原理で動作する吸入器は、液体を二重フローノズルに取り込む気体流を利用する。衝突板に衝突することで、2系統のストリームの液体がさらに霧状になる。このような吸入器では、高い気体処理量が必要とされるため、吸入時間の長い携帯用には適さない。
【0008】
国際公開2016/184761号からは、持ち運び可能な吸入器が知られている。持ち運び可能な吸入器は、吸入液用の液体貯留部を備えており、この液体貯留部は、推進用ガス、圧縮空気、またはプレテンション式バネ装置を適用することで加圧される。この場合、液体貯留部は、液体の発射に応じて空気が流入するように容積が定められてもよいし、あるいは、通気ではなく、バッグやドラッグピストンによって容積を変化させてもよい。手動ポンプ装置のように、推進剤としての気体を液体貯留部に貯留することは、適用可能な変形例として国際公開第2016/184761号に記載されている。使用する圧力レベルまたは、液体貯蔵庫の容積と過圧空気貯蔵庫の容積の大きさについては記載がない。液体は、多数の平行なノズル開口部を持つノズルプレートを通って吐出される。これは、可能な限り単分散の液滴粒径分布を実現するためである。
【0009】
公開独国特許発明102014207657号明細書には、液体スプレーを生成する方法が開示される。この方法では、連続する液体噴流と液滴噴流が交互に衝突する隆起部を有する衝突素子が備えられている。液滴噴流は、ピエゾ素子を用いて振動を導入することで生成される。振動が導入されない場合は、連続噴流が得られることになる。
【0010】
吸入器での微粒化中に生成される液滴径と液滴の粒径分布は非常に重要である。何故ならば、液滴径次第で、吸入したエアロゾルの液滴が上気道または気管支までしか到達しない可能性があるからである。エアロゾルの液滴は、その液滴直径が約10μmを下回れば、呼吸可能である。ターゲットの体質に応じて、2~5μmの液滴径が理想的であると考え得る。
【0011】
以上のように、従来の吸入器は、据え置き型の圧縮空気源で作動させるか、電気的に作動するユニットとして設計されていれば、十分に長い時間にわたって十分に小さな液滴を生成できるに過ぎない。特に、13.2バール(1.32MPa)の標準的な充填圧力が適用される従来のスプレー缶は、特に吸入液中の有効成分を直接肺に到達させるべき場合には、これまでのところ、吸入器としての使用には適さない。
【0012】
電子タバコとして知られる少量のニコチンを投与する吸入器では、通常、ニコチンを含む液体を純粋に機械的に発射することはせず、凝縮された液滴の蒸気が吸入されるように液体を加熱する。ところが、加熱した場合、望ましくない化学処理が開始されて、その結果、液滴凝縮物中に望ましくない、しかも毒性を有する化合物が発生する場合がある。
【発明の概要】
【0013】
このような背景に対して、本発明は、生理活性液を投与するための携帯型装置であって、移動しながら使用可能であり、全投与期間にわたって十分に小さいエアロゾル液滴を供給することが可能な携帯型装置を創出することを目的とする。
【0014】
本発明の一態様によれば、生理活性液を投与するための携帯型装置が提供される。前記携帯型装置は、生理活性液を保持するための容器と、生理活性液に圧力を加えるための加圧手段と、生理活性液を微粒化するためのアトマイザと、微粒化された生理活性液を投与するためのアプリケータとを備える。アトマイザは、容器から生理活性液を射出可能な少なくとも1つのノズルと、前記ノズルの出口側に設けられた衝突素子(例えば衝突板)とを有し、前記衝突素子は、前記ノズルと機能的に組み合わされており、前記加圧手段が生成可能な圧力範囲において、前記ノズルから吐出された生理活性液が前記衝突素子に衝突する前に液滴に分裂するように構成されることを特徴とする。
【0015】
したがって、ノズルから吐出される液体噴射は、有利には、自由分裂して液滴となり、その液滴が衝突板に衝突し、より小さな液滴に微粒化される。したがって、本発明によれば、噴流への振動付与、噴流の中断、あるいはノズルを用いた液体射出の変調を行う必要はない。このような設計は、単純な設計実験を用いて経験的に実行可能である。当業者であれば、噴流分裂長Zについての以下の関係に適応可能である。
【数1】
ここで、
【数2】
は、ウェーバー数を表し、
【数3】
は、オーネソージ数を表す。
ここで、
Z 噴流分裂距離(m)
D 最小ノズル径(m)
C 噴流分裂の初期摂動(m)
ρ 生理活性液の濃度(kg/m
σ 生理活性液の表面張力(N/m)
η 生理活性流体の粘度(Pa s)
U ノズルからの液体噴流の出口速度
である。
【0016】
噴流分裂の初期摂動Cは通常未知であるが、本発明では、無次元因子の値
【数4】
が通常、10から15の間、大体において12から13の間であると想定可能であることが分かっている。本発明にかかる装置における自由な噴流分裂により形成された液滴の衝撃微粒化の場合、実験値によれば、例えば、
ノズル径がD=15μm、圧力が15~25バールの場合、
v90≒10μm
v50≒5~7μm
v10≒3μm
ノズル径がD=10μm、圧力が約25バールの場合、
v90≒4μm
v50≒1~2μm
v10≒1μm
となる。
上記の例において直径の仕様は、以下のように理解される。
v10 エアロゾルの液量の10%は、Dv10より小さい液滴で構成される。
v50 エアロゾルの液量の50%はDv50より小さい液滴で構成される。
v90 エアロゾルの液量の90%は、Dv90より小さい液滴で構成される。
【0017】
特に有利な発展形態によれば、携帯型装置は、衝突素子から滴下または流出する余剰液を回収するための回収装置を備える。本発明による衝突素子を使用すると、常に一定の割合で衝突素子から未使用の液体が滴下することになる。エアロゾルを投与するための携帯用吸入器または他の携帯用装置を取り扱う際に、装置から制御不能に滴り落ちる液体によってユーザが煩わされることなく、むしろ生理活性液の回収を制御できるため、非常に有利である。
【0018】
有利な実施形態によれば、回収装置とアプリケータとが接続されて1つの部品に一体化されてもよい。
【0019】
さらに有利な実施形態によれば、回収装置と衝突素子とが接続されて1つの部品に一体化されてもよい。
【0020】
さらに有利な実施形態によれば、回収装置は貯留部を備えてもよい。有利には、貯留部は、例えばフリース、スポンジ、ゼオライト、またはその他の、交換可能または交換不能な一体化された吸収材を備えてもよい。
【0021】
さらに有利な実施形態によれば、携帯型装置は、回収装置からの余剰液の少なくとも一部を、再微粒化のためにアトマイザに供給するように構成してもよい。このような再循環により、容器内に供給された生理活性液のうち、より大きな割合を使用することができ、1回の容器充填あたりの最長使用可能時間を長時間化することができる。
【0022】
特に有利な発展形態によれば、容器は、圧縮ガスが充填された、加圧手段としての気室と、生理活性液が充填された液室とを有する圧力タンクでもよく、アトマイザはバルブを備え、バルブが開いているときに液室からノズルを介して生理活性液を射出してもよい。ここで、気室の特定の初期充填状態と比較した気室の最大可変容積、または、液室の特定の初期充填状態と比較した液室の最大可変容積がそれぞれ、特定の初期充填状態についての液体の最大射出量を画定するように、前記気室は、前記圧縮ガスの膨張によって射出される生理活性液の量に比例して拡大し、前記液室は、前記放出される生理活性液の体積だけ縮小する。
【0023】
有利な実施形態によれば、初期充填状態における圧縮ガスは、圧力が、最大射出量の吸入液が射出される前に液室内の圧力が13バール(1.3MPa)を下回らないような高さでもよい。有利な実施形態によれば、初期充填状態における圧縮ガスの圧力が、少なくとも18バール(1.8MPa)、好ましくは少なくとも20バール(2MPa)、特に好ましくは少なくとも25バール(2.5MPa)である。
【0024】
当業者にとって驚くべきことに、液室内の圧力が射出工程中に13バール(1.3MPa)を下回るか、射出工程全体を通して13バール(1.3MPa)未満となるような実施形態であっても、衝突素子との関連における液滴の自由分裂により、吸入可能な液滴の生成に適した微粒化パラメータを使用期間全体にわたって維持することが可能である。このような実施形態では、圧力が低いため、圧力タンクおよびバルブの製造に対する要求度が低減され、特に有利となる。容器内の液体の初期圧力が13バール(1.3MPa)以下である実施形態も、噴口圧力が対応して低いために液滴への自由な分裂を促進することができるので、特に有利であるとみなすことができる。
【0025】
ディメンショニングに際しては、最大射出量の吸入液を射出した後に残る残留圧力を、一般的な気体法則を用いて求めることができる。本発明によれば、液室の最大(初期)容積および気室の最小(初期)容積Vが、液室における生理活性液の最大充填量によって規定されるように、気室の容積と液室の容積とが(例えば、2つの室を隔てる可動ピストンを介して)相互に連動する。この連動により、最大射出量の吸入液が射出された後の、液室の最小(最終)容積と、気室の最大(最終)容積Vもまた(例えばストッパーによって)規定される。気室の最終圧力pは、最大射出量の吸入液が射出されるまで液室の最小圧力に対応するとともに、気室の最終容積と初期容積との差は、変換なしで、液室の初期容積と最終容積との差に対応する。
【0026】
理想的な気体法則である、
【数5】
によれば、圧縮ガスの初期圧力は、次のような関係にしたがい決定される。
【数6】
【0027】
ここで、VFmaxは、最大射出可能な液体の体積である。
【0028】
ディメンショニングの際には、例えば、簡単な設計実験により、可能な限り低い圧力がpとして選択され、この選択により、アトマイザの所期の形状として、所望のパラメータ(例えば、ザウター平均粒径d32により定義、すなわち、エアロゾルの液滴の特定の表面積の逆数の6倍)内の粒径分布が得られる。そして、VFmaxに対応する吸入液の所望の投与量に対して、利用可能な気室の初期容積において充填圧力をどの程度高くする必要があるかを、上記の関係に応じて判定可能となる。
【0029】
逆に、特定の残留圧力を維持すべき場合には、必要な気室の最終容積ももちろん、最大利用可能気体充填圧力に基づいて決定することもできる。例えば、所定の投与量(=最大射出量)が150mlの液体で、液室の最小圧力が1.3MPa(最後の液滴が射出される直前)、かつ、気室の最大利用可能充填圧力が3MPaの場合、気室の最終容積は以下のように判断する必要がある。
=150ml/(1-1.3MPa/3MPa)=264.7ml
【0030】
上記の関係を変換したものである。
【0031】
有利な発展形態によれば、バルブを調整バルブとして設計してもよく、これにより、射出される生理活性液の体積流量を調整することができる。ここで、当業者は、従来の技術からそれ自体知られたバルブ構造を用いることができる。
【0032】
特に有利な発展形態によれば、携帯型装置は、気室内の圧力に比べて液室内の圧力を増加させるトランスミッションを有してもよい。この場合、上述の設計関係を適宜変更する必要があるが、気室の初期容積および最終容積、ならびに初期圧力および最終圧力は、一般的な気体法則に基づいて決定可能である。ただし、気室の容積変化と液室の容積変化との比例係数と、気室の圧力と液室の圧力とのトランスミッション比を考慮する必要がある。
【0033】
有利には、気室側に気室ピストン面を備え、気室を一方の側で区切る気体ピストンと、液室側に液室ピストン面を備え、液室を一方の側で区切る液体ピストンとを用いて、トランスミッションは実行される。ここで、液室ピストン面の表面積Aは気室ピストン面の表面積Aよりも小さく、液室内の圧力と気室内の圧力とのトランスミッション比kは、以下の通りである。
k=A:A
【0034】
気室の容積変化は、吸入液の各射出量のk倍となる。気室の設計においては、p≧1.3MPa/k、および、
=p・V/(V-k・VFmax
である。
【0035】
ここで、(上記のように)p:=気室内の最終圧力、p:=気室内の初期充填圧力、VFmax:=吸入液の最大射出可能量、V:=気室の最終容積である。
【0036】
これは、気体ピストンの経路と液体ピストンの経路とが、一方のピストンの特定の変位により他方のピストンが等しく変位するように接続する場合に適用される。もちろん、2つのピストンを、レバー機構やギアなどを介して他の方法で接続してもよい。また、スピンドルドライブなどを用いたトランスミッション機構も実現可能である。
【0037】
好ましい実施形態によれば、気体ピストンの経路と液体ピストンの経路とが、一方のピストンの特定の変位により他方のピストンが等しく変位するように接続されている場合に、液室の圧力と気室の圧力間のトランスミッション比がk≧2となるように、液室ピストン面の表面積は気室ピストン面の表面積の半分以下である。
【0038】
気室と液室間のトランスミッションにより、より低い気体圧力でより高い液体圧力を生成可能であるという利点がある。このため、圧力タンクを、低い気体圧力用に設計すればよく、安全性を高めることが可能である。なぜなら、高い液体圧力は最小限の膨張(例えば漏れによる)で既に低減されているのに対し、高い気体圧力により、安全上のリスク、しかも爆発リスクが生じる可能性があるからである。このようなトランスミッションは、生理活性液を投与するための装置、特に吸入器に対してだけでなく、あらゆる種類のスプレー缶に対しても有利に実施することができる。この場合、液室を多室構造に置き換えることも可能である。したがって、スプレー缶、特に独国実用新案第202017002851号明細書、独国実用新案第202017005165号明細書または欧州特許出願公開第3351172号明細書から知られる種類のスプレーヘッドを備えたスプレー缶も有利に提供することができ、前記スプレー缶は、噴霧液または噴霧の対象となる多成分混合物と圧縮ガスを受け入れるための圧力タンクと、噴霧液または噴霧の対象となる多成分混合物を微粒化するためのアトマイザとを備えている。ここで、圧力タンクは、圧縮ガスが充填された気室と、噴霧液が充填された液室または多成分混合物が充填された多成分室とを有し、アトマイザは、バルブと、バルブが開いているときに液室から噴霧液または多成分混合物を噴出可能な少なくとも1つのノズルとを有し、気体の膨張によって気室が拡大し、それによって液室または多成分室が、射出された噴霧液または射出された多成分混合物の体積分だけ縮小し、気室の圧力と比較して液室または多成分室の圧力を増加させるトランスミッションが設けられている。
【0039】
アトマイザは、容器から液体を射出可能な少なくとも1つのノズルと、ノズル出口側に設けられた衝突素子とを有し、前記衝突素子は、ノズルと機能的に組み合わされており、加圧手段により生成可能な圧力範囲において、ノズルから吐出された液体が衝突素子に衝突する前に液滴に分裂するように設計されている。このため、当該アトマイザによれば、低い圧力範囲においても特に良好な微粒化が可能になる。上述の設計基準によれば、初期充填状態における圧縮ガスの圧力が高いため、最大射出量の吸入液が射出される前に液室の圧力が13バール(1.3MPa)を下回らない。この設計基準を使用する場合、代替のアトマイザも特に有利となる。概して、吸入器を有利に提供することができる。前記吸入器は、吸入液および圧縮ガスを受け入れるための圧力タンクと、吸入液を微粒化するためのアトマイザと、微粒化された吸入液を投与するためのアプリケータとを有する。圧力タンクは、圧縮ガスが充填された気室と、吸入液が充填された液室とを有し、アトマイザは、バルブと、バルブが開いたときに液室から吸入液を射出可能な少なくとも1つのノズルとを有する。気室の特定の初期充填状態と比較した気室の最大可変容積、または、液室の特定の初期充填状態と比較した液室の最大可変容積が、特定の初期充填状態に対する最大射出量の吸入液を画定するように、気室は、気体の膨張によって射出された吸入液の量に比例して拡大し、液室は、射出された吸入液の体積だけ縮小する。この場合において、初期充填状態の圧縮ガスの圧力が高いため、最大射出量の吸入液が射出される前に液室の圧力が13バール(1.3MPa)を下回らない。当業者にとって驚くべきことに、気室および液室の充填量と気室の初期充填圧力とを適切に整合させることで、全使用期間にわたって吸入可能な液滴を生成するための適切な微粒化パラメータを得ることが可能である。
【0040】
代替のアトマイザを有する吸入器の好ましい実施形態によれば、上記少なくとも1つのノズルは、複数のレイリーノズル孔、例えばノズルプレートにおける複数の円形の孔として設計される。
【0041】
圧力が1.3MPaより高く、孔径(最小径)が1桁マイクロメートルの範囲内であれば、同じ大きさの複数のノズル孔を用いて、孔径の約1.89倍の平均粒径を有するほぼ単分散の液滴を生成できることが分かっている。
【0042】
これに対応して、レイリーノズル孔の各孔の最小直径は、有利には、6μm以下、好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μmから3μmの間である。
【0043】
本願においては、ノズルまたはノズル開口部の最小径とは、ノズル開口部を形成する流路(噴出路)の中心軸に直交する線と各噴出路の端部との2つの交点間の最短可能距離を意味すると解される。例えば、噴出路が本質的に円筒形であるにもかかわらず、噴出口の端部を形成する平坦面に直交して穿孔されていない場合、短い方の主軸が噴出路の最小直径に対応する楕円形の噴出口が形成される。
【0044】
原則として、ノズル孔の数は、孔の直径が所望の液滴径に基づいて固定されている場合には、所望の液体スループットに応じて有利に定められる。代替アトマイザを備えた吸入器の好ましい実施形態によれば、少なくとも20個のレイリーノズル孔が設けられる。
【0045】
代替アトマイザを有する吸入器のさらなる利点によれば、複数のノズルを設けてもよく、これらのノズルを個別にまたは群単位で吸入液の供給対象から除外してもよい。このようにして、微粒化に用いるノズル数を増減させることで、射出される吸入液の体積流量を制御することができる。例えば異なる出口直径を有するノズルのような、様々なノズルが使用される場合、一定のノズル(複数)または複数のノズル群を選択的に選択することによって、液滴径または粒径分布などの微粒化パラメータを設定してもよい。有利には、例えば、位置に応じて孔の重なり具合を異ならせて、互いに対する位置をずらすことが可能な複数の有孔円板や、個別のノズルまたはノズル群用の個別のバルブなど、各種の技術的な実装が可能である。また、複数のノズル開口部を有するノズルプレートを、バルブ板により異なる割合で覆うことで、例えば、大きいノズル開口部のみ、小さいノズル開口部のみ、または大きいノズル開口部と小さいノズル開口部が前記バルブ板上に流入可能とすることができる。
【0046】
代替アトマイザを備えた吸入器のさらに有利な実施形態によれば、ノズルは、少なくとも1つの多噴流ノズル配列として設計されており、特に、少なくとも2つの噴出路を備えており、これらの噴出路は、噴出路のうちの少なくとも2つの噴出路から吐出される噴霧流が、噴出口から間隔を空けて配置された各衝突点において中央で出会うように配置されている。このような多噴流ノズルの有利な設計は、本質的に欧州特許出願公開3351172号明細書に開示されているように、または同様の方法で設計することができる。
【0047】
上記に定義した圧力比(高残留圧力)のもと、少なくとも1つのノズルの最小直径(上述の噴出路の直径)が50μm以下、好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である代替アトマイザを備えた吸入器の実施形態は、特に有利に実施することができる。前述したタイプの多噴流ノズルでは、圧力を高め、かつ、噴出路の直径を小さくすることで、液滴径を小さくすることができる。
【0048】
代替アトマイザを備えた吸入器のさらに有利な実施形態によれば、ノズルは、少なくとも1つの中空コーンノズルとして設計される。この種の多噴流ノズルの有利な設計は、本質的に独国実用新案第202017005165号明細書に開示されているもの、または同様のもの(特に、本質的に軸流式の液体流入口等が異なるもの)として設計することができる。
【0049】
上記に定義した圧力比(高残留圧力)のもと、(上述のように)中空コーンノズルの出口の最小直径が100μm以下、好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である代替アトマイザを備えた吸入器の実施形態は、特に有利に実施することができる。接線流入式の液体流入口を有する中空コーンノズルの場合、本発明による圧力基準によれば、ノズル本体内において望ましくない所謂チューリップ形成を確実に回避することが可能である。
【0050】
圧縮ガスが充填された気室の代わりに、本発明による携帯型装置は、加圧手段として、ハンドポンプ、特に従来技術からそれ自体知られている電池式の電動ポンプまたはバネ式を有利に使用してもよい。このような代替的な加圧手段を用いて、回収装置からの余剰液の少なくとも一部を、再微粒化のためにアトマイザに供給することができるように、特に有利に携帯型装置を構成することができる。この構成に必要なのは、好ましくはスクリーンまたはフィルタ装置を備えた戻り流路だけである。この戻り流路を介して、滴下した余剰液が、例えばポンプに供給される。
【0051】
本発明では、代替のアトマイザを有する吸入器の場合と同様に、ノズルは、有利には、先行技術からそれ自体知られているリソグラフィー、放電加工、または、セラミックもしくはプラスチックの焼結手段によって製造することができる。リソグラフィー処理では、シリコン製のノズル本体に微細な流路がエッチング加工される。このような製造プロセスは、アトマイザポンプまたは対応する噴霧ヘッドに関連して例えば、欧州特許出願公開第1493492号明細書および欧州特許出願公開第1386670号明細書から知られている。
【0052】
本発明および代替アトマイザを備えた吸入器の特に有利な改良によれば、少なくとも1つのノズルは、レーザー作用によって製造することができる。この場合、ノズル材料(好ましくは石英ガラスまたは別の適切なガラス材料)を、好ましくは局所的にレーザー作用に露出させてノズルを形成し、レーザー作用に露出させたノズル材料は、続いてエッチング除去される。レーザー作用に露出させた石英ガラスは、フッ化水素酸(HF)または好ましくは水酸化カリウム(KOH)を用いてエッチング除去することができる。レーザーによる被削性を向上させるために石英ガラスを適切にドープしてもよい。このような製造プロセスは、それ自体がSLE(selective laser-induced etching:レーザー誘起選択的エッチング)という名称で知られており、Hermans, M. et al. “Selective, Laser-Induced Etching of Fused Silica at High Scan-Speeds Using KOH”, JLMN-Journal of Laser Micro/Nanoengineering, 2014, Vol.9, No.2に開示されている。SLE処理による製造に利用可能な製作機は、ライトファブマイクロスキャナー(LightFab Microscanner)の名称で市販されている。
【0053】
本発明の有利な実施形態によれば、携帯型装置は吸入器であり、生理活性液は吸入液であり、アプリケータは、マウスピースまたは、口用および/または鼻用マスクを有している。
【0054】
禁煙のために、またはタバコ製品の代替として、アプリケータがマウスピースを備えてもよいし、吸入液にニコチンを含んでもよい。既知の電子タバコとは異なり、望ましくない化学処理を回避するために、加熱を伴わない純粋に機械的な微粒化が行われることが好ましい。
【0055】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、携帯型装置は眼科用ネブライザ装置として設計してもよく、アプリケータがアイマスクを有してもよい。このようにして、眼科用の有効成分を有利にエアロゾルとして投与することができ、あるいは、液体をエアロゾルとして加えることでドライアイの問題を緩和することができる。原理的には、従来の目薬の投与に比べて、エアゾールを用いれば、頭を後ろに傾ける必要がなく、投与がはるかに容易であるため、ユーザにとってはるかに快適である。
【0056】
本発明および代替アトマイザを備えた吸入器のさらに有利な実施形態によれば、ノズル入口側の少なくとも1つのノズルの上流にスクリーン配列が接続されている。さもなければ、特に小さな噴出路(ノズル開口部)では、これらの流路が完全にまたは部分的に閉塞してしまう危険性がある。スクリーン配列は、有利には、独国実用新案第202017002851号明細書などに開示されているように、ノズル本体と一体的に設計してもよいし、あるいは、別個に取り付けられるスクリーン本体を用いてもよい。
【0057】
さらに有利な改良によれば、本発明による携帯型装置に複数のノズルを設けてもよく、当該複数のノズルは個別にまたは群ごとに吸入液の供給対象から除外可能である。このようにして、微粒化に関与するノズル数を増減させることで、射出される吸入液の体積流量を制御することができる。
【0058】
以下、添付の概略図面を参照しつつ、例示的な方法で、本発明をより詳細に説明する。図面は原寸に比例した縮尺ではなく、特に、明確性の観点から、個々の寸法の互いの比率は、実際の技術的な態様における寸法関係に対応していない場合がある。いくつかの好ましい実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
原則として、本願の文脈で記載または示された本発明のすべての変形は、個々のケースにおける経済的条件、技術的条件、そして、場合によっては医療的条件に応じて、特に有利になり得る。別途記載のない限り、または原理的に技術的に可能な限り、記載した実施形態の個々の特徴は交換可能であり、あるいは、相互に組み合わせることも、先行技術からそれ自体が既知の特徴と組み合わせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図面では、
図1aは、本発明による装置の断面図であり、袋状の液室を備えたチューブ状アプリケータ付きの吸入器として設計されている。図1aの断面図は図1bにおいて破線B-B’で示されている。
図1bは、図1aに対して直角をなす方向から見た、図1aの吸入器の断面図の一部である。図1bの断面は、図1aにおいて破線A-A’で示されている。
図2は、図1bと同様の詳細断面図である。吸入器のアプリケータがマスクとして設計されている。
図3aは、本発明にかかる装置の概略構造を示す。衝突素子とノズルとが共通部品として一体化されており、回収用貯留部と吸入マスクはそれぞれ着脱可能である。
図3bは、図3aと同様の概略構造を示す。衝突素子と回収用貯留部とがノズルとは別の共通部品として一体化されており、吸入マスクが着脱可能である。
図4aは、図3aと同様の発明にかかる装置の概略構造を示す。衝突素子とノズルとが共通の部品として一体化されており、回収用貯留部とアイマスクも共通の部品として一体化されている。
図4bは、図4aと同様の概略構造を示す。衝突素子とアイマスクとがノズルとは別の共通部品として組み合わされており、回収用貯留部にはスポンジが含まれる。
図5は、図1と同様の発明にかかる吸入器の断面図である。ただし、気室の圧力よりも高い圧力を液室に加えるトランスミッションを備える。
図6は、袋状の液室を有する代替の吸入器の断面図である。
図7は、図2と同様の詳細断面図である。ただし、複数のノズル開口部を有する代替のアトマイザを備える。
図8は、図1bと同様の詳細な断面図である。ただし、複数のノズル開口部を有する代替のアトマイザと、さらに、ノズル開口部の一部を可変的に覆うスライダとが設置されている。
図9は、図6と同様の代替の吸入器の断面図である。ただし、液室が可動ピストンによって気室から分離されている。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図面上では、対応する要素は同じ参照符号で示される。
【0062】
図1aおよび図1bに示す吸入器は、圧力タンク1を備える。圧力タンク1は、圧縮ガスが充填された気室3と、例えば塩水などの吸入液が充填された液室4とに、軟質のバッグ2によって分割されている。バッグ2は、アトマイザ/アプリケータ部6a、6bの入口接続部5に、例えば溶接や接着などにより接続されている。バックの代わりに、例えば、別個のピストンによって気室3と液室4とを分離することもできる。
【0063】
アトマイザ6aのバルブは、従来のバルブと同様であり、ゴムまたはシリコンゴムなどのエラストマーからなる封止リング9によって封止されたバルブ筐体8を有する。バルブ筐体に挿入されたバネ10により、封止カプセル11は封止リング9に押し付けられる。中空プランジャー12と圧力容器1とを相対的に圧縮することで、底面が面取りされた中空プランジャー12は、吸入液がバルブ筐体8と中空プランジャー12を介してノズルユニット14の供給路13に進入可能なように、封止カプセル11を下方に押し下げる。
【0064】
アトマイザ/アプリケータ部6a、6bは、リングの周方向に等間隔に配置された掛止め突起部16を有するリング15によって、圧力容器1に保持される。掛止め突起部16は、鍔(カラー)17の下方にある、圧力容器1の周囲のくびれ部18に係合する。リング15は、中空プランジャー12に着座した供給路13の壁に、ネジ19を介して回転可能に接続される。ピン21は、供給路13の壁の止まり穴20に変位可能に係合し、圧力容器1に溶接される。ピン21を設けることで、供給路13の壁、ひいては当該壁に強固に接続されたアプリケータ6bは、圧力容器1に対して回転不能となる。リング15を回転させることで、供給路13の壁が中空プランジャー12とともに上下に移動するように制御することができ、これにより、中空プランジャー12と圧力容器1とを相互に押し付けることができる。
【0065】
吸入液は、供給路13を閉じるノズル本体14のノズル開口部からアプリケータ6bの内部に噴霧される。図1bとの関係で理解されるように、アプリケータ6bは、吸入の際に開放端22をユーザが口で塞ぐように、本質的にチューブ状に設計されてもよい。
【0066】
選択的レーザー露光とそれに続く露光領域のエッチング(レーザー誘起選択的エッチング)により、円筒形の基本形状を有する石英ガラス製のノズル本体14には、中央に噴出口を有するノズルプレート14aと、噴出口に対向して配置された衝突素子24とが形成され、前記噴出口からの閉塞物を排除するために、多数のスクリーン開口部を有するスクリーン本体14bであって、直径が最大でも噴出口の直径に相当する、スクリーン本体14bが形成される。
【0067】
この例では、衝突素子24は、噴出口から距離dにおいてノズル本体に一体化された3本の支柱14cによって保持される(図1aおよび図1bでは支柱14cのうち2本のみが見えている)。もちろん、設計上異なる数の支柱を選択することも可能である。設計実験により、容器圧力(好ましくは、液室4内で13バール以下)と、ノズルプレート14aの噴出口の直径と、衝突素子24までの距離dとは、ノズルプレート14aの噴出口から発射された液体噴流が衝突素子24に衝突する前に自由落下分裂するように整合される。
【0068】
ノズル本体14は、供給路13の壁とアプリケータ6bとからなる一体のプラスチック鋳造部品として鋳造してもよいが、供給路13の壁とアプリケータ6bとが一体として一緒に製造されない場合には、前記ノズル本体を2つの部品の間で接着またはクランプしてもよい。
【0069】
射出可能な最大量の吸入液の射出に成功してバッグ2が完全につぶれた場合、その時点で最大の容積を有することになる気室3内の気体は、所望の設計に従って選択された残留圧力を有する。
【0070】
図1bは、図1aと直交する別の断面図で図1aの吸入器を示す。図1bの断面図は、図1aでは破線A-A’で示されており、観察者の視線は矢印で示される。これに対応して、図1aの断面図は、図1bでは破線B-B’で示され、観察者の視線はやはり矢印で示される。
【0071】
アプリケータ6bの開放端22は、吸入の際にユーザが口で塞ぐものであるが、開放端の反対側では、一方向弁または気体透過性プラグ23がアプリケータ6bの他方の端を塞ぐ。
【0072】
図1aと図1bを合わせて参照すると理解されるように、アプリケータは、その下面に、プラグ23に近づくほど深く、開放端22に近づくと平らになる溝25を有している。この溝25は、衝突素子24から滴下する液体の回収用貯留部として使用され、プラグ23の側で塞がれている。
【0073】
図2は、図1bと同様の吸入器を破断透視図で示す。吸入器の自由端にはマスク26として設計されたアプリケータ6bが設けられている。マスク26(破断透視図で示す)は、吸入の際にユーザの口および鼻を覆って装着することができ、好ましくは、全体的または部分的に軟質のプラスチックまたはシリコン材料で作られる。この構成においても、空気透過性プラグ23に近づくほど凹む溝25が、未使用の吸入液の回収用貯留部として提供される。
【0074】
図1aおよび図1bとは異なり、衝突素子24は、ノズル本体14と一体的に形成されておらず、アプリケータ6bの壁に一体化されている。さらに、ノズル本体14は、複数の、例えば図示のように2つの噴出口を含む。噴出口の数は、圧力損失および流体流量の調整に使用可能な追加のパラメータである。
【0075】
図3a、図3b、図4a、および図4bに、図2と同様に構成された発明による装置の異なる配置の変形例を示す。
【0076】
図3aでは、衝突素子24が、やはりノズル本体14と一体化されている。吸入マスク26(口と鼻のマスク)は、アプリケータチューブ6bに取り付けられるか、または、ネジ止め、接着、または溶接される。衝突素子24の下に配置された回収用貯留部25は、アプリケータチューブ6bに着脱可能に(例えばプラグ、ネジ、バヨネット結合によって)接続されるか、または恒久的に(例えば溶接または接着によって)接続される。とりわけ、アプリケータを再使用可能なように設計する場合、アプリケータチューブ6bと回収用貯留部25との間を着脱可能に接続すると有利であり得る。
【0077】
図3bの実施形態は、図3aの実施形態に対応する。ただし、衝突素子24がノズル本体14と一体化される代わりに、複数の支柱24cによってアプリケータチューブ6bに一体化されている。
【0078】
図4aの装置では、アイマスク27と回収用貯留部25とが共通の部品としてアプリケータチューブ6bと一体化されている。図3aの場合と同様に、ノズル本体14は、衝突素子24を保持する複数の支柱14cを有する。
【0079】
図4bの装置は、衝突素子24がノズル本体14と一体化される代わりに、複数の支柱24cによってアプリケータチューブ6bと一体化されている点で、図4aの装置とは異なる。取り外し可能な回収用貯留部25は、スポンジ28を含む。スポンジ28は、装置を斜めに持ったり、振ったりしても、余剰液が回収用貯留部内に確実に残るという利点がある。他の吸収性材料、例えばフリース、織布材料、綿球、粒子集合体などが、スポンジとして機能してもよい。
【0080】
図3a~図4bにおいて、供給路13の壁と、ノズル14およびアプリケータチューブ6bへの接続は、固定式でも着脱式でもよい。
【0081】
図5に示す吸入器では、アトマイザ/アプリケータ部6a、6bは、図1aと同様に構成されている。ここでは、液室4は、内側ハウジング31と、気体ピストン24に頑強に接続された液体ピストン32とによって画定されている。気体ピストン24と液体ピストン32とで構成されたユニットは、吸入液を射出するために変位可能である。
【0082】
液室4を塞ぐ液体ピストン32の表面積は、気室3を塞ぐ気体ピストン24の表面積の約半分しかないため、結果的に伝達率は約2となるが、同時に液室4の液体圧力は気室3の気体圧力の約2倍となる。
【0083】
射出可能な最大量の吸入液の射出に成功して液体ピストン32が最終位置に到達する直前には、液室4内は、設計上あらかじめ定められた残留圧力、例えば13バール(1.3MPa)となる。
【0084】
図6に示す吸入器は、圧力タンク1を有しており、この圧力タンク1は、圧縮ガスが充填された気室3と吸入液が入った液室4とに軟質のバッグ2によって分割される。バッグ2は、アトマイザ/アプリケータ部6a、6bの入口接続部5に、例えば溶接または接着で接続される(図1に示す原理の代替例)。
【0085】
アトマイザ6aのバルブは、従来型のバルブと同様であり、ゴムやシリコンゴムなどのエラストマーからなる封止リング9によって封止されたバルブ筐体8を有する。バルブ筐体に挿入されたバネ10により、封止カプセル11を封止リング9に押し付ける。中空プランジャー12と圧力容器1とを相対的に圧縮することで、底面が面取りされた中空プランジャー12は、バルブ筐体8と中空プランジャー12を介してノズルユニット14の供給路13に吸入液が進入可能なように、封止カプセル11を下方に押し下げる。
【0086】
アトマイザ/アプリケータ部6a、6bは、リングの周方向に等間隔で配置された掛止め突起部16を有するリング15によって、圧力タンク1に保持される。掛止め突起部16は、鍔17の下方にある、圧力容器の円周方向のくびれ部18に係合する。リング15は、中空プランジャー12に着座した供給路13の壁に、ネジ19を介して回転可能に接続される。ピン21は、供給路13の壁の止まり穴20に変位可能に係合し、圧力タンク1に溶接される。ピン21を設けることで、供給路13の壁、ひいてはその壁に強固に接続されたアプリケータ6bは、圧力タンク1に対して回転不能となる。リング15を回転させることで、供給路13の壁が中空プランジャー12とともに上下に移動するように制御することができ、これにより、中空プランジャー12と圧力容器1とを相対的に押し付けることができる。
【0087】
吸入液は、供給路13を閉じるノズル本体14のノズル開口部からアプリケータ6bの内部に噴霧される。図1bの場合のように、アプリケータ6bをチューブとして、吸入の際にユーザが口で開放端を塞ぐように設計してもよい。
【0088】
選択的なレーザー露光とそれに続く露光領域のエッチング(レーザー誘起選択的エッチング)により、円筒形の基本形状を有する石英ガラス製のノズル本体14には、複数の噴出口を有するノズルプレート14aが形成され、さらに、前記噴出口からの閉塞物を排除するために、複数のスクリーン開口部を有するスクリーン本体14bであって、直径が噴出口の直径とほぼ一致するスクリーン本体14bが形成される。
【0089】
また、ノズル本体14は、供給路13の壁とアプリケータ6bとからなる一体型のプラスチック鋳造部品として鋳造してもよいが、供給路13の壁とアプリケータ6bとが一体として製造されない場合には、当該ノズル本体を2つの部品の間に接着またはクランプしてもよい。
【0090】
射出可能な最大量の吸入液の射出に成功してバッグ2が完全につぶれた場合、その時点で最大の容積を有することになる気室3内の気体は、あらかじめ設計で定義された残留圧力、例えば13バール(1.3MPa)を有する。
【0091】
図7は、図2と同様の破断透視図において、図6と同様の吸入器を示す。ただし、アプリケータ6bはマスクとして設計されている。マスクは、吸入の際にユーザの口と鼻を覆って装着することができ、好ましくは、全体的または部分的に軟質のプラスチックまたはシリコン材料で作られる。
【0092】
図8は、図6と同様の吸入器を破断透視図で示す。しかしここでは、ノズルプレート14aおよびスクリーン本体14bは、別個の構成要素として設計されており、各構成要素は、供給路13の壁およびアプリケータ6bからなるユニットに対して、別々に鋳造、接着、あるいは挿入される。ここでも、ノズルプレート14aおよびスクリーン本体14bは、レーザー誘起選択的エッチングによって石英ガラスから製造してもよいが、より単純に設計することで、他の製造方法、例えば、レーザー(特にフェムト秒レーザー)、リソグラフィー製造などによる穿孔も可能である。
【0093】
さらに、ここでは、密閉ギャップ28内で変位可能なスライダ29が設けられる。スライド孔30の位置に応じて、ノズルプレート14aのノズル開口部の一部が覆われる。一方で、吐出される吸入液の体積流量をこのように制御することができる。他方で、複数のノズル開口部の大きさが異なっており、かつ、スライダ29の位置またはスライダ孔30の位置に応じて、異なる大きさのノズル開口部が覆われたり露出したりするように、複数のノズル開口部が配置されていれば、液滴径分布を変更可能である。
【0094】
図9は、代替の吸入器を図6と同様の断面図でさらに示す。図示の吸入器は、圧縮ガスが充填された気室3と吸入液を含む液室4とに、可動ピストン24によって分割される圧力容器1を有する。液室4は、アトマイザ/アプリケータ部6a、6bのバルブ筐体5に接続されており、このバルブ筐体には円錐形の弁座25が設けられている。
【0095】
中空プランジャー12を圧力容器1に対して上昇させると、中空プランジャー12の円錐形の端部と弁座25との間に隙間ができ、吸入液がバルブ筐体8および中空プランジャー12を介してノズルユニット14の供給路13に進入可能となる。
【0096】
アトマイザ/アプリケータ部6a、6bは、2つの部分からなるリング15a、15bの下部分15bの円周上に等間隔に配置された掛止め突起部16を有するリング15a、15bによって、圧力タンク1に保持される。掛止め突起部16は、鍔17の下方にある圧力タンク1の周囲のくびれ部18に係合する。リング15a、15bの上部分15aは、中空プランジャー12に着座した供給路13の壁に、ネジ19を介して回転可能に接続されている。ピン21は、供給路13の壁の止まり穴20に変位可能に係合し、圧力容器1に溶接される。ピン21を設けることで、供給路13の壁、ひいては当該壁に強固に接続されたアプリケータ6bは、圧力容器1に対して回転不能となる。リング15a、15bの上部分15aを回転させることにより、供給路13の壁が中空プランジャー12とともに上下に移動するように制御することができ、この結果、弁座25上のバルブの開閉を制御することができる。
【0097】
リング15a、15bの上部分15aを回転させて、弁座25と、中空プランジャー12の下端にある、合わせ円錐形のカウンター面との間の弁ギャップを調整することで、吐出される吸入液の体積流量を調整することができる。
【0098】
吸入液は、供給路13を閉じるノズル本体14のノズル開口部26を介してアプリケータ6bの内部に噴霧される。アプリケータ6bは、ここでも、図8のようにチューブとして設計することができ、その開放端は、吸入の際にユーザが口で塞ぐものである。
【0099】
選択的なレーザー露光とそれに続く露光部のエッチング(レーザー誘起選択的エッチング)により、円筒形の基本形状を持つ石英ガラス製のノズル本体14に、円筒-円錐形の空洞27が形成される。また、ノズル本体は、入口側に、複数のスクリーン開口部を有するスクリーン本体14bを備えており、その直径は、前記噴出口からの閉塞物を抑制するために、噴出口26の直径とほぼ一致している。ノズル本体14は、供給路13の壁とアプリケータ6bとからなる一体のプラスチック鋳造部品として鋳造することができるが、供給路13の壁とアプリケータ6bとが一体として一緒に製造されない場合には、前記ノズル本体を2つの部品の間で接着またはクランプすることもできる。
【0100】
ピストン24が、射出可能な最大量の吸入液の射出に成功して最終位置に到達した場合、その時点で最大容積を有する気室3内の気体は、あらかじめ設計で定められた残留圧力、例えば13バール(1.3MPa)を有する。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】