(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】改良された唇および頬拡張器
(51)【国際特許分類】
A61C 5/90 20170101AFI20220428BHJP
【FI】
A61C5/90
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549823
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020057755
(87)【国際公開番号】W WO2020193398
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019203970.7
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019203954.5
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019213802.0
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ホルヴァート,ドモンコス
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052FF07
(57)【要約】
この発明は、唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇と頬と口角を歯列から離間させるための被覆装置に係り、特に口の開口部に対して外側で接合させるための弾力性の唇引張り要素と、特に患者の口の前庭内に挿入するための少なくとも1個の弾力性の前庭引張り要素と、前記の各引張り要素を結合する柔軟なフィルムとを備えていて、装着された被覆装置が口腔に向かって開くように、前記各引張り要素が前記フィルムの対向する2つの末端領域に沿って配置され、その際前記前庭引張り要素が、被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する少なくとも1つのセクションを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇、頬、および口角を歯列から離間させるためのものであって、弾力性の唇引張り要素(110,210,310)と、少なくとも1個の弾力性の前庭引張り要素(120,220,320)と、各引張り要素を結合するフィルム(130,230,330)とを備えていて、前記各引張り要素が前記フィルムの対向する2つの末端領域に沿って配置され、その際前記各引張り要素(110,210,310;120,220,320)が弾力的に変形可能であるとともに解放された状態において前記フィルム(130,230,330)を引張、特にリング状あるいは管状に引張する被覆装置であり、前記前庭引張り要素(120,220,320)が前記唇引張り要素に向かって、すなわち特に前方に向かって湾曲する少なくとも1つのセクション(121,221,321)を有し、特に被覆装置が装着された際に前記湾曲するセクションが前庭ヒダの前方に延在することを特徴とする被覆装置。
【請求項2】
フィルム(130,230,330)が湾曲するセクション(121,221,321)の領域において他の領域と比較して短縮されることを特徴とする請求項1に記載の被覆装置。
【請求項3】
湾曲するセクション(121,221,321)は、その湾曲するセクション(121,221,321)の中央で他の領域に比べてフィルム(130,230,330)を30ないし70%まで、特に約50%まで短縮させ、および/または前庭引張り要素(120,220,320)が、特に被覆装置が装着された際に、前方に向かって湾曲する少なくとも1つのセクション(121,221,321)の領域内において0mmないし30mm唇引張り要素(110,210,310)から離間することを特徴とする請求項2に記載の被覆装置。
【請求項4】
被覆装置が装着された際に湾曲するセクション(121,221,321)が矢状面に交差することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項5】
湾曲するセクション(121,221,321)が前庭引張り要素(120,220,320)の周囲の10%ないし60%を占めることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項6】
湾曲するセクション(121,221,321)が実質的に正弦波形状あるいは二重S字形状に湾曲することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項7】
特に唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇と頬と口角を歯列から離間させるためのものであって、特に口の開口部に対して外側で接合させるための弾力性の唇引張り要素(110,210,310)と、特に患者の口の前庭内に挿入するための少なくとも1個の弾力性の前庭引張り要素(120,220,320)と、前記の各引張り要素を結合する柔軟なフィルム(130,230,330)とを備えていて、前記各引張り要素が前記フィルムの対向する2つの末端領域に沿って配置され、その際:
前記前庭引張り要素(120,220,320)の少なくとも引張りセクション(123,223,323)が弾力的に変形可能で、解放された状態においてフィルム(130)を引張し、さらに特に変形された状態において患者の口腔前庭の一領域内に挿入されて前記フィルム(130,230,330)を口腔内に固定するために適する、被覆装置であり、
前記前庭引張り要素(120,220,320)が前記唇引張り要素に向かって、すなわち特に前方に向かって湾曲する少なくとも1つのセクション(121,221,321)を有し、特に被覆装置が装着された際に前記湾曲するセクションが矢状方向において前庭ヒダの前方に延在することを特徴とする被覆装置。
【請求項8】
被覆装置が装着された際に唇引張り要素(110,210,310)と前庭引張り要素(120,220,320)との間でフィルム(130,230,330)が唇と口角に接触しながらそれらの唇と口角の周りに延在し、また前記フィルムは実質的に均等に平面状に分配された圧力を唇と口角に付加するために適していて、その圧力が唇と頬と口角を歯と歯槽骨から離間させるとともに口の開口部を円形に開いた位置に予荷重し、その際前記被覆装置が口を閉じることを許容することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項9】
被覆装置が装着された際に前庭引張り要素(120,220,320)の少なくとも1つの前方に向かって湾曲するセクション(121,221,321)が唇上あるいは唇の外に位置するか、および/または下顎の切歯の領域内に延在する請求項1ないし8のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項10】
被覆装置が装着された際に前庭引張り要素(120,220,320)の2つの前方に向かって湾曲するセクション(121,221,321,122,222,322)が矢状方向において前庭ヒダの前方に延在し、特に矢状面の両側に延伸する請求項1ないし9のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項11】
被覆装置が装着された際に前方に向かって湾曲する第1のセクション(121,221,321)が下顎の犬歯および切歯の領域内に延在し、前方に向かって湾曲する第2のセクション(122,222,322)は上顎の犬歯および切歯の領域内に延在する請求項10に記載の被覆装置。
【請求項12】
前庭引張り要素(120,220,320)が柔軟で三次元に塑形された引張りフレーム、特に引張りリングとして構成される請求項1ないし11のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項13】
唇引張り要素(210,310)が、被覆装置が装着された際に、特に矢状方向において、前庭引張り要素(220,320)の少なくとも1つのセクションの方向に湾曲する少なくとも1つのセクション(211,311)を有する請求項1ないし12のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項14】
前庭引張り要素(120,220,320)の少なくとも1つの前方に向かって湾曲するセクション(121,221,321)が凹型の窪み(124,224,324)を形成し、前記凹型の窪みが少なくとも部分的にフィルム(231,331)によって覆われ、および/または唇引張り要素(210)が、後方に向かって、すなわち前庭引張り要素に向かって湾曲して延在する少なくとも1つの窪み(211,212)を有する請求項1ないし13のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項15】
被覆装置が2つの端部(141,142)を備えた管(101)の形式を有し、その際前記管(101)の少なくとも第2の端部(142)が2つの凹型の窪み(151,152)を有する請求項1ないし14のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項16】
弾力性の前庭引張り要素(120,220,320)が少なくとも1本のブリッジ(171,271,571)、好適には2本のブリッジ(171,271,571,172,272,572)を介して弾力性の唇引張り要素(110,210,310)と相互に結合され、その際特にブリッジ(271,272)が前方に向かって湾曲するセクション(121,122,221,222,321,322)の領域内に配置され、および/または少なくとも1本のブリッジ(271)がフィルム材料あるいはフィルム材料と別の材料から形成される請求項1ないし15のいずれかに記載の被覆装置。
【請求項17】
特に唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇と頬と口角を歯列から離間させるためのものであって、弾力性の唇引張り要素(110,210,310)と、少なくとも1個の弾力性の前庭引張り要素(120,220,320)と、前記の各引張り要素を結合するフィルム(130,230,330)とを備えていて、前記各引張り要素が前記フィルムの対向する2つの末端領域に沿って配置され、その際前記各引張り要素(110,210,310;120,220,320)が弾力的に変形可能であるとともに解放された状態において前記フィルム(130,230,330)を引張、特にリング状あるいは管状に引張する被覆装置であり、前記前庭引張り要素(120,220,320)が特に先が尖った楕円(505)あるいは楕円と比べて凸型に外方向に突出する少なくとも2個、特に4個の突出部あるいは突出角部(512,514,516,518)を有し、また前記前庭引張り要素(520)の形状は前記先が尖った楕円(505)あるいは楕円に対して不一致あるいは幾何学的に近似しないことを特徴とする被覆装置。
【請求項18】
前庭引張り要素(520)が平面図で見て丸み付けられた角を備えた実質的に四角形の形状を有し、その際特に角の径が0.1cmないし7cm、特に0.2ないし4cmであることを特徴とする請求項17に記載の被覆装置。
【請求項19】
唇引張り要素(510)が前庭引張り要素(520)と合同あるいは幾何学的に近似であるか、20%未満の形状差違しか有さないことを特徴とする請求項17または18に記載の被覆装置。
【請求項20】
被覆装置が請求項1ないし16のいずれか1つあるいは複数に記載の特徴をさらに備えることを特徴とする請求項17ないし19のいずれかに記載の被覆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇、頬、および口角を歯列から離間させるための被覆装置の形式の改良された唇および頬拡張器に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の口内で歯列から唇、頬、および口角を離間させるための被覆装置は、頬リトラクタ、リトラクタフック、あるいはスプレッダークランプとして知られている。加えて、特許文献1ならびに特許文献2には、患者の口内で唇、頬、および口角を歯列から離間させるばかりでなく、同時に唇および口角を被覆する装置が開示されている。その種の装置は例えばオプトラゲートの商標でイボクラール・ビバデントAGから市販されており、それは被覆フィルムを介して相互に結合された2本の柔軟なリングを引張りフレームとして備えるものである。引張りフレームの片方は、被覆フィルムを口腔内に固定するために完全に口腔前庭内に挿入される。
【0003】
その種の被覆装置は特に歯科医師の口腔内へのアクセスを容易にするよう機能する。(リング状の)各引張り要素とそれらの引張り要素の間に延在するフィルムの複合的な効果によって患者の唇が拡げられて相互に引き離され、従って患者が口を大きく開けることを強いることなく開口が著しく拡大される。
【0004】
前記の被覆装置において、口腔内に設置された引張り要素が強力な口唇圧力によって歯槽骨に押圧されるため、従来の技術においてはしばしば特に犬歯の領域内の歯槽骨の粘膜上に痛みを伴う圧迫箇所を発生させる。そのことは特に下顎に該当するが、勿論そのような圧迫箇所は上顎においても発生し得る。
【0005】
唇および頬拡張器、すなわち先行技術における被覆装置の製造に際しての別の問題点は、多様な患者の口の大きさに応じて用意しなければならない多数のサイズである。「オプトラゲート」はシュリンク包装して出荷される。フィルムに対しての特殊な要求(伸張性、弾力性、材料強度、破裂耐性)のため、保存性はシュリンク包装された状態においても制限され、例えば数か月である。
【0006】
そのことによって、適正に調達して貯蔵されたオプトラゲートが最大貯蔵期間の経過後に使用不可能になって廃棄しなければならなくなることにつながる。また、僅か3あるいは4種類のサイズを製造した場合でも不要なコストと過剰な廃棄の問題につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/051185号(A1)パンフレット
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第102014109023号(A1)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、歯槽骨の粘膜上の圧迫箇所を防止あるいは少なくとも顕著に削減して装置の装着感を顕著に改善しその結果被覆装置の受容性を高め、および/または貯蔵コストを最小化する、改善された請求項1、7および17の前文の記載と同種の被覆装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の本発明に係る技術的な課題は、請求項1、7、あるいは17に記載の被覆装置によって解決される。
【0010】
本発明によれば、唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇、頬、および口角を歯列から離間させるための被覆装置が、口の開口部に対して外側で接合させるための弾力性の唇引張り要素と、患者の口腔前庭に挿入するための少なくとも1個の弾力性の前庭引張り要素と、前記の各引張り要素を結合するフィルムとを備えていて、装着された被覆装置が口腔に向かって開くように前記各引張り要素が前記フィルムの対向する2つの末端領域に沿って配置される。フィルムは、伸張に対する場合とは逆に屈曲に対しては実質的に抵抗を示さないものとすることが好適である。前庭引張り要素の少なくとも口腔内の一セクションが弾力的に変形された状態において患者の口腔前庭の一領域内に挿入されてフィルムを口腔内に固定するために適しており、従って被覆装置が装着された際に口外の唇引張り要素と実質的に口腔内の前庭引張り要素との間でフィルムが唇と口角に接触しながらそれらの唇と口角の周りに延在し、またフィルムは実質的に均等に平面状に分配された圧力を唇と口角に付加するよう作用し、その圧力が唇と頬と口角を歯と歯槽骨から離間させるとともに口の開口部を円形に開いた位置に予荷重する。前記被覆装置は装着された状態において口を閉じることも許容する。前庭引張り要素は、本発明に従って被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭の前方、特に前庭ヒダの前方、またはさらに唇小帯の前方にも延在する少なくとも1つのセクションを有する。ここで「前庭の前方」と記載する場合、勿論前庭の最深点、すなわちヒダを意味する。
【0011】
本発明によれば、前庭引張り要素が唇引張り要素に向かって、すなわち特に前方に向かって湾曲する少なくとも1つのセクションを有し、特に被覆装置が装着された際に前記湾曲するセクションが前庭ヒダの前方および/または唇小帯の前方に延在する。
【0012】
装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションが、前方に湾曲する、すなわち唇引張り要素に近づくように延在するセクションであることが好適である。
【0013】
意外なことに、前庭引張り要素の一セクションが矢状方向において前庭ヒダの前方あるいは唇小帯の前方に延在してその際に好適には前方に湾曲するように形成される前庭引張り要素の適宜な構成によって、前記湾曲するセクションが歯槽骨の粘膜を圧迫せず、その結果当該位置における押し傷および刺激が防止され、それにも関わらず同時に口腔内に延在する反対側のセクションが前庭引張り要素の引張りセクションに到達して被覆装置を口腔内に適正に固定することにつながることが明らかになった。このことは口を開いた際ばかりでなく閉じた際にも該当する。
【0014】
好適な実施形態において、被覆装置が装着された際に前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションがさらに丁度口腔内あるいは口腔外あるいはその中間、例えば患者の唇上の口腔内と口腔外の移行領域に位置する。
【0015】
従って好適な実施形態において装置が装着された際に前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションが唇上あるいは唇の外側に位置する。
【0016】
特に別の呼び方をしない場合、前記の「前庭引張り要素の少なくとも1つのセクション」としては被覆装置が装着された際に前庭ヒダの前方で矢状面内に延在してその際好適には前方方向に湾曲する前庭引張り要素のセクションが理解される。すなわちその前庭引張り要素のセクションは前庭の最深の領域内に延在するのではなく、むしろ前庭引張り要素の柔軟な構成によって前庭の軌道からずれて、例えば唇沿いあるいは唇の外に延在する。
【0017】
すなわちそのセクションは窪みとして形成され、前庭の最深領域には延在しないものの唇の内側領域には接合し、従って口腔内に位置するように構成することができる。他方、前記少なくとも1つのセクションが口外に延在することも好適であり得る。すなわちその実施形態において前庭引張り要素が口腔内に延在する少なくとも1つのセクションと口腔外に延在する少なくとも1つのセクションを有する。従ってこの実施形態において前庭引張り要素の軌道が唇を横断するかあるいは少なくとも大面積で唇上に被さる。
【0018】
特に口を大きく開いた際は、前庭引張り要素と顎粘膜との間の接触の危険が生じる。
【0019】
また例えばこの状態において唇の粘膜(前庭の腹面境界)、ヒダ、ならびに顎骨の粘膜(前庭の背面境界)が相互に近接して存在するとしても、前庭引張り要素の突出部である窪みとさらに特に請求項16に係るブリッジが、前庭引張り要素が前方領域において顎骨の粘膜に接触することを防止する。従って如何なる場合もその位置での圧迫部の原因とはなり得ない。
【0020】
前庭引張り要素の突出部がその位置で柔軟な唇を変形させて前方方向においても抑制するようにする。
【0021】
加えて特別な利点が、先行技術に係る被覆装置がヒダの中に進入あるいはそこに接触する位置における窪みの形成から得られる:窪みによって該当する引張り要素のセクションが斜め上方あるいは口の開口部/前方に向かって移動する。その位置で唇粘膜は極めて柔軟であり、従ってその粘膜は前方に向かって極めて変形しやすく、そのため引張り要素が歯槽突起粘膜からさらに押し離される。
【0022】
本発明に関して「前方に湾曲したセクション」の概念として軌道が唇引張り要素の方向を延在することが理解され、その理由は被覆装置が装着された状態において唇引張り要素が完全に口腔外にあり従って前庭引張り要素の前方に存在するためである。
【0023】
本発明に関して「唇引張り要素」として、完全に口腔外に位置する引張り要素が理解される。本発明に関して「前庭引張り要素」として、少なくとも部分的に口腔内に位置する引張り要素が理解される。
【0024】
前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションは、被覆装置が装着された際に切歯の領域に延在することが好適である。前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションが、被覆装置が装着された際に犬歯と切歯の領域に延在することが特に好適である。
【0025】
従来の技術に係る引張り要素の圧力が犬歯と切歯の領域で極めて大きく、極めて急速かつ極めて強度に粘膜上の圧迫傷が形成されることが知られている。従って、被覆装置が装着された際に実質的に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションは、そのセクションが切歯の領域内、特に好適には切歯と犬歯の領域内に延在し、従ってそうでない場合は特に強力に負荷がかかる歯槽骨に接触する粘膜の圧力点上の圧力解放が促進されるように配置することが好適である。
【0026】
従って、前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションならびに結果として好適には被覆装置全体が、有効な方式によって前歯領域内で顎骨を覆う粘膜に接触しないようになることが好適である。
【0027】
意外なことに、前記の有効な圧力解放にもかかわらず前庭引張り要素の他の領域の圧力増加にはつながらず、特に前庭に近接する領域の圧力増加につながらないことが判明した。
【0028】
骨に支えられていない粘膜領域はより強力に本発明に係る被覆装置の支承機能に利用されるが、それは患者にとって全く不快に感じることではない。そのことは特に請求項17に係る実施形態に該当する。
【0029】
そのため本発明に係る被覆装置の受容性が著しく高められ、そのことによって歯科医師における治療領域への改善された接近性とより少ない時間消費が可能になる。
【0030】
被覆装置が装着された際に実質的に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在、すなわち唇引張り要素に近接して延在する前庭引張り要素のセクションが1つのみである場合、そのセクションは下顎領域内あるいは上顎領域内のいずれか一方に位置することができる。好適にはその1つのセクションは下顎領域内に位置し、その理由は従来の被覆装置の使用に際しての圧迫傷の発生が下顎領域内において上顎領域内よりも頻繁であるためである。勿論、上顎領域内への配置も選択によって可能である。
【0031】
好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションが下顎の切歯の領域に延在する。
【0032】
好適な実施形態によれば、前庭引張り要素は、被覆装置が装着された際に特に矢状方向に見て前庭ヒダの前方に延在する2つのセクションを有する。
【0033】
好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションが下顎の犬歯および切歯の領域に延在する。
【0034】
好適には、被覆装置が装着された際に実質的に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在し、特に前方に湾曲する2つのセクションを有する前庭引張り要素を被覆装置が備える。その際矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する1つのセクションが下顎の切歯の領域、より好適には犬歯および切歯の領域に延在し、被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在するするもう一方のセクションは上顎領域の切歯の領域、より好適には犬歯と切歯の領域に延在する。
【0035】
好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に第1のセクションが下顎の犬歯および切歯の領域内に延在し、第2のセクションは上顎の犬歯および切歯の領域内に延在する。
【0036】
別の好適な実施形態によれば、前庭引張り要素は、柔軟で三次元に塑形された引張りフレーム、特に引張りリングとして構成される。
【0037】
前記の柔軟な三次元の形状によって、例えば選択的に唇引張り要素にも到達する、本発明に係る前庭引張り要素の軌道を達成することができ、その際引張り要素の弾力性の材料によってその引張り要素は被覆装置が口腔内および口の表面に使用可能になる程柔軟になる。
【0038】
好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域で0mmないし30mm唇引張り要素から離間する。
【0039】
好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が唇引張り要素から0mm離間し、すなわち両引張り要素が1点あるいは2点上で相互に接触するか、またはそれらの1点あるいは2点上で相互に結合される。
【0040】
好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域において0mm超で30mmまで唇引張り要素から離間する。好適な実施形態において、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域において0.1mmないし30mm唇引張り要素から離間する。好適な実施形態において、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域において最大で25mm唇引張り要素から離間する。好適な実施形態において、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域において最大で20mm唇引張り要素から離間する。好適な実施形態において、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域において最大で15mm唇引張り要素から離間する。
【0041】
好適な実施形態において、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素が前記少なくとも1つのセクションの領域において30mmまで唇引張り要素から離間する。
【0042】
好適な実施形態によれば、唇引張り要素が、被覆装置が装着された際に矢状方向において前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションの方向に湾曲する少なくとも1つのセクションを有する。
【0043】
その種の唇引張り要素の領域は、被覆装置が装着された際に上方あるいは下方、すなわち鼻あるいは顎の領域に位置することが好適である。そのことは、被覆装置が鼻あるいは顎を被覆しないという利点を有する。前記の唇引張り要素のセクションは、前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションの向かい側に位置することが好適である。
【0044】
好適な実施形態によれば、唇引張り要素が、被覆装置が装着された際に矢状方向において、好適には凹型の窪みになるように、実質的に前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションの方向に湾曲する2つのセクションを有する。
【0045】
前記の唇引張り要素の両方のセクションは、被覆装置が装着された際に上方あるいは下方、すなわち鼻あるいは顎の領域に位置することが好適である。そのことは、被覆装置が鼻および顎を被覆しないという利点を有する。それらの唇引張り要素のセクションは、前記前庭引張り要素の2つのセクションの向かい側に位置することが好適である。
【0046】
従って、好適には前記の前庭引張り要素のセクションと唇引張り要素のセクションが相互に接近する。好適な実施形態によれば、前記の両セクションが0mmないし30mmまで、特に0.5mmないし25mmまで接近する。好適な実施形態によれば、前記の両セクションが当接、すなわち0mmの距離になることもでき、その際極めて好適には結合、特に固定的に結合されることもでき、そのことが被覆装置の安定性を向上させる。それにもかかわらず、各引張り要素の弾力性のため被覆装置は使用のために充分な程柔軟に維持される。また、そのような引張り要素の結合にもかかわらず、被覆装置は省スペースに対応して梱包するために充分な程に柔軟に維持される。
【0047】
好適な実施形態によれば、前記前庭引張り要素の少なくとも1つのセクションが凹型の窪みを形成し、その際前記凹型の窪みが少なくとも部分的にフィルムによって覆われる。
【0048】
好適な実施形態によれば、前記唇引張り要素の少なくとも1つのセクションが凹型の窪みを形成し、その際前記凹型の窪みが少なくとも部分的にフィルムによって覆われる。
【0049】
各引張り要素の凹型の窪みが少なくとも部分的にフィルムによって覆われる場合、三次元に形成される引張り要素にもかかわらず被覆装置全体は従来の製品の基本形状を維持し、従って使用者が新しい形状に対応する必要が無くなるという利点を有する。
【0050】
好適な実施形態において、被覆装置が管の形状を有し、その管の少なくとも一端部が2つの凹型の窪みを備える。
【0051】
別の好適な実施形態によれば、被覆装置が2つの端部を有する管の形状であり、その際前記管の少なくとも第2の端部が2つの凹型の窪みを備える。
【0052】
引張り要素が引張りフレーム、特に引張りリングとして構成される場合、前庭引張り要素が唇引張り要素に比べて大きな直径を有することが好適である。
【0053】
「フィルム」と言う概念として、伸張に対する場合と異なって折り曲げに際しては実質的に抵抗を示さない平面状の構造体が広範に理解される。その種の構造体はフィルム状媒体と呼ぶこともできる。フィルム状媒体は弾力的に伸張可能にすることができるが、基本的には伸張不可能な材質から製造することができる。
【0054】
従来の技術とは異なって、本発明に係る唇および頬拡張器は、歯列から離間させるべき唇および頬に対してフィルム状媒体を介して大面積に圧力を分散させるように作用する。前記フィルム状媒体は、一端部が少なくとも部分的に口腔内に存在する前庭引張り要素と、他方の端部は唇あるいは頬の外側に接合する外側唇引張り要素と結合されることが好適である。
【0055】
また、例えば唇引張り要素および/または前庭引張り要素内の窪みを少なくとも部分的に遮蔽する追加的なフィルム状媒体を設けることもできる。
【0056】
フィルム状の遮蔽媒体は好適には薄くかつ弾力性に形成される。2個の引張り要素との共働作用において極めて簡便で非常に柔軟かつ広範に適用可能な唇および頬拡張器、すなわち被覆装置を提供することができる。拡張器を装着する際は、フィルム状媒体によって大面積に分散して口の開口部の周りに円形に構築される。それによって患者にとって容易な方式で口の開口部を円形に広く開けて保持し、同時に唇および頬を柔らかく歯列から離間させることができる。
【0057】
加えて、本発明に従って唇引張り要素も三次元に形成することによってフィルムが無用に鼻を覆うことを好適な方式で防止することができる。
【0058】
当業者においては例えば特許文献1あるいは特許文献2等から引張り要素とフィルムに適した材料が周知であり、それらの両文献はここで全体的に引用される。好適な材料は樹脂である。本発明に係る被覆装置は、射出成形あるいは三次元印刷によって好適に製造することができる。
【0059】
材料厚および材料形状、すなわち引張り要素、特に前庭引張り要素の断面は、当業者において任意に選択することができる。引張り要素、特に前庭引張り要素の材料厚および材料形状をそれの延長にわたって変化させることもできる。変化させることによって当業者が特定の領域内の柔軟性に影響を与え、すなわち強化あるいは低減することができる。
【0060】
別の実施形態において、前庭引張り要素を口腔内の吸引に使用することができる。その場合例えば前庭引張り要素を、口腔内に配置された領域内に開口部を有していてその開口部を介して口中の液体を吸引することができる中空の管として形成することができる。前記の液体は、例えば前庭引張り要素と唇引張り要素を結合するブリッジが同様に管状に形成されている場合そのブリッジを介して誘導することができる。その実施形態によって吸引装置の使用の必要性を有効に削減するか、あるいは吸引装置の使用を省略することができる。
【0061】
好適な実施形態によれば、少なくとも1本のブリッジ、特に1本のブリッジあるいは2本のブリッジを介して前庭引張り要素が唇引張り要素と結合される。好適には、前記少なくとも1本のブリッジが前庭引張り要素の少なくとも1つの凹型の窪み内を延在する。
【0062】
その際、前庭引張り要素の両方の凹型の窪みがブリッジを介して唇引張り要素と結合される実施形態が好適である。この好適な実施形態においては2本あるいはさらに多くのブリッジが設けられる。しかしながら、1本のブリッジのみを使用することも可能である。
【0063】
その種のブリッジはフィルム材料から形成するか、あるいはその他の適宜な材料から形成することができる。
【0064】
ブリッジとしてリブを形成することもできる。それは単純にリブ状のフィルム材料の膨張部によって形成することができる。そのリブが形成される位置におけるフィルムの引張強度ならびに剛性を有効に高めるために、前記リブが湾曲して延在するように形成することもできる。
【0065】
ブリッジは柔軟なことが好適であるが、フィルムと比べると伸張性は低い。ブリッジが、内側リングの歯肉上への滑落とそれに伴った圧迫痛を有効に防止する。唇引張り要素がより安定的であり、伸張不可能なブリッジによってその唇引張り要素を歯肉から有効に離間させることが好適である。ブリッジが唇の中央領域におけるフィルムの伸張を有効に防止し、従って側部領域において優先的に伸張が発生する。ブリッジの幅は当業者が任意に選択することができる。ブリッジに代えて溝あるいは帯を設けることもでき、また伸張あるいは収縮不可能なブリッジは正面領域における両方のリングの間隔を例えば18mmないし20mmに定義することができる。
【0066】
請求項17に定義された本発明の別の態様において、前庭引張り要素が少なくとも2個、好適には4個の外側を指向する突出部を備え、その突出部は先が尖った楕円に比べて外側に突出し、前庭引張り要素の形状は先が尖った楕円に対して不一致であるかまたは幾何学的に近似しないものとなる。意外なことに、この解決方式によって実質的により少ない数の被覆装置のサイズで充分になり、従って貯蔵が簡略化しそれに伴ったコストが削減される。
【0067】
患者の口は半開きの状態で先が尖った楕円、すなわち細い側部が鋭敏な先端になった楕円を形成する。前述した特徴によって前庭引張り要素は、極めて多様な口のサイズが被覆装置によって被覆可能になるような方式で、患者の口と異なった形状になる。
【0068】
それによって単に貯蔵コストが大きく削減されるばかりでなく、3個あるいは4個の射出成形型ではなく僅か1個の射出成形型のみを製造すれば充分であるため、製造コストも大きく削減される。
【0069】
本発明によれば、前庭引張り要素の突出部が円形に比べて半径方向外側に突出する。突出部はいずれも標準型前庭リングの半径よりも小さく、例えば0.1cmないし5cm、好適には2ないし3cmの半径を有する丸い外形を備えてなる。この半径はその他の任意の形式に選択することもでき、例えば0.3cmないし4cm、または0.8cmないし2.5cmに選択することもできる。
【0070】
従って、この本発明に係る特徴において設けられる前庭引張り要素は四角形に近似していて角が丸み付けられた四角形の外観を有することが好適である。
【0071】
口の楕円形に対向して延在する軌道が本発明の独自性を示すものである。分岐する領域、特に突出角部が前庭引張り要素を患者の口内に支承するように作用する。矢状面内の限界領域、すなわち唇小帯の領域と水平面内の限界領域が意図的に回避され、その部位に意図的に支承圧力が作用しないようにされる。
【0072】
本発明に係る突出角部上、すなわち左/上、左/下、右/上、および右/下の前庭引張り要素の「支承領域」が口の内部に接合し、患者の口に対して引張り要素のサイズが極めて大きいか極めて小さい場合でも固定を提供する。
【0073】
引張り要素が患者に対して極めて大きい場合、突出角部が内側で頬に沿って遠位方向に移動する。引張り要素が極めて小さい場合は、口の開口部の楕円あるいは先が尖った楕円に対する異形性あるいは不一致性のため、依然として突出角部が支承を成す。
【0074】
従ってオプトラゲートの複数のサイズに適応することができる。
【0075】
滑り落ちを防止するために4つの箇所、すなわち右上、右下、左下、および左上で接合するような方式で前庭引張り要素を形成することが好適である。しかしながら、その接合箇所の数は変更可能であり、例えば2,3,5あるいは6箇所設けることができる。
【0076】
また、上述された領域あるいは箇所以外での接合も考えられる。
【0077】
対応する唇引張り要素も同様な方式、すなわち前庭引張り要素と一致する形に形成することができるが、楕円形あるいは円形にすることも可能である。
【0078】
この突出角部を有する実施形態の独特な利点は、特に側方で外に向かって拡張効果が作用することでもある。それによって走査に際して重要な臼歯の位置の前庭領域が極めて接近し易くなる。
【0079】
その場合、臼歯の位置の前庭領域に充分に大きい空間が確保されるため、その領域を走査するために走査ヘッドを極めて良好に側部に導入することができる。
【0080】
突出部を丸型とすることが好適であり、最適な半径あるいは場合によって曲線軌道は必要に応じて広範囲に調節することができる。
【0081】
この解決方式は、請求項1に係る前方に湾曲するセクションを有する解決方式との間で内部相互作用を有する:湾曲したセクションによってその位置にある窪み上の拘束力が喪失される。本発明によれば、その喪失は別の箇所における突出部と、いわゆる「ウィング」あるいは「耳」、すなわち突出角部によって有効に補償される。
【0082】
この解決方式の好適な構成形態によれば、前庭引張り要素がその引張り要素の後方に位置する垂直軸周りで軽く湾曲する。小さく口を開けた場合は、突出角部が柔軟な頬の領域内へ遠位方向に偏倚する。しかしながら、より大きく口を開いた場合になお突出角部が固定を保持する。
【0083】
本発明はさらに、唇と口角を被覆するとともに患者の口内で唇と頬と口角を歯列から離間させるための被覆装置に係り、口の開口部に対して外側で接合させるための弾力性の唇引張り要素と、患者の口の前庭内に挿入するための少なくとも1個の弾力性の前庭引張り要素と、前記の各引張り要素を結合するフィルムとを備えていて、装着された被覆装置が口腔に向かって開くように前記各引張り要素が前記フィルムの対向する2つの末端領域に沿って配置され、その際:
【0084】
フィルムは、伸張に対する場合とは逆に屈曲に対しては実質的に抵抗を示さないものとし、
【0085】
前庭引張り要素の少なくとも口腔内の一セクションが弾力的に変形された状態において患者の前庭の一領域内に挿入されてフィルムを口腔内に固定するために適していて、
【0086】
従って被覆装置が装着された際に口外の前記唇引張り要素と前記前庭引張り要素との間でフィルムが唇と口角に接触しながらそれらの唇と口角の周りに延在し、またフィルムは実質的に均等に平面状に分配された圧力を唇と口角に付加するよう作用し、その圧力が唇と頬と口角を歯と歯槽骨から離間させるとともに口の開口部を円形に開いた位置に予荷重し、その際前記被覆装置は装着された状態において口を閉じることも許容し、
【0087】
さらに前記前庭引張り要素が少なくとも1本のブリッジを介して、特に1本あるいは2本のブリッジを介して唇引張り要素と結合される。
【0088】
本発明の第1の好適な実施形態によれば、唇引張り要素および/またはフィルムが前庭引張り要素に応力を付加し、その応力によって歯槽骨を被覆する粘膜への前庭引張り要素の圧接力が低減される。
【0089】
本発明の第2の好適な実施形態によれば、被覆装置が装着された際に前庭引張り要素は歯槽骨を被覆する粘膜に少なくとも部分的に平面状に接合する
【0090】
本発明の第3の好適な実施形態によれば、唇引張り要素が前庭引張り要素に比べてより大きな材料厚を有する。
【0091】
本発明の第4の好適な実施形態によれば、フィルムが少なくとも唇引張り要素と前庭引張り要素の間に延在するリブ状の隆起を有し、特にフルーティングを有する。
【0092】
本発明の第5の好適な実施形態によれば、フィルムが唇引張り要素の領域内において前庭引張り要素の領域内と比べてより大きな材料厚を有する。
【0093】
本発明の第6の好適な実施形態によれば、唇引張り要素が前庭引張り要素と比べて弾力性が少ないものである。
【0094】
本発明の第7の好適な実施形態によれば、引張されていない状態においてフィルムが唇引張り要素と前庭引張り要素の間に最大で2cmの長さを有す。
【0095】
本発明の第8の好適な実施形態によれば、前庭引張り要素上においてフィルムが、唇引張り要素の方向を指向する前庭引張り要素の領域あるいは面上に固定されるか、または最も大きな直径を有する前庭引張り要素の面上に固定されるか、またはそれらの中間に固定される。
【0096】
本発明の第9の好適な実施形態によれば、製造後の前庭引張り要素が、その前庭引張り要素を患者の口の前庭内に挿入した後に歯槽骨を被覆する粘膜上に当接する面上にスプルーを有さない。
【0097】
好適な実施形態は、従属請求項によっても定義される。
本発明は、添付図面および後述する実施例を参照しながら、それらに限定することなくより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】本発明に係る被覆装置の実施形態を示した説明図である。
【
図2】
図1の被覆装置の側面を示した説明図である。
【
図3】
図1の被覆装置の両方の引張り要素を示した説明図である。
【
図4】別の本発明に係る被覆装置を示した説明図である。
【
図5】
図4の被覆装置の側面を示した説明図である。
【
図6】
図4の被覆装置の両方の引張り要素を示した説明図である。
【
図7】さらに別の本発明に係る被覆装置を示した説明図である。
【
図8】
図7の被覆装置の側面を示した説明図である。
【
図9】
図7の被覆装置の両方の引張り要素を示した説明図である。
【
図10】別の実施形態における両方の引張り要素を示した説明図である。
【
図11】本発明に係る被覆装置と従来の技術に係る被覆装置を使用中において比較した説明図である。
【
図12】
図1の本発明に係る被覆装置をブリッジと共に示した説明図である。
【
図14】
図4の本発明に係る被覆装置をブリッジと共に示した説明図である。
【
図15】本発明に係るブリッジを有する被覆装置を使用中において示した説明図である。
【
図16】請求項17の構成の別の本発明に係る被覆装置を概略的に示した説明図である。
【
図17】
図16の実施形態を実用的な適用において示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、本発明に係る被覆装置を示す。
図1のaには、(引張りリングとして形成された)唇引張り要素(110)と前庭引張り要素(120)とフィルム(130)とからなる被覆装置(100)が示される。唇引張り要素(110)は柔軟な材料から形成され従って屈曲可能であるものの変形可能な形状設定において略平坦であり、前庭引張り要素(120)は唇引張り要素(110)の方向を指向する2つのセクション(121,122)を有する三次元の基本構造を有し、従って被覆装置がその領域で先細りになるかあるいはいずれも凹型の窪み(124,125)を形成する。湾曲するセクション(121,221,321)が前庭引張り要素(120,220,320)の周囲の10%ないし60%を占めることができるが、20ないし50%とすることも可能である。好適な数値は約40%であり得る。周囲を例えば30cm、両方の窪み124,125の合計の長さは14cmとすることがき、従って40ないし50%になる。
【0100】
被覆装置(100)が使用される場合、前庭引張り要素(120)が口内に挿入され、従って引張り要素(120)の両方の領域あるいは引張りセクション(123)が臼歯の領域で前庭内に導入され頬に当接する。他方、図示されたような形状設計によって他の領域(121,122)は前庭内に位置せず、むしろ矢状方向において前庭の前方に延在する。その際、前方に湾曲するセクション(121および122)の軌道は、形状設計に従って口腔内で唇に沿ってあるいは口腔外に設けることができる。そのような前庭外の軌道のため、前方領域、すなわち犬歯および切歯の領域において、顎骨に接合していてその顎骨によって支承される粘膜への圧迫とそれに従った圧迫傷が防止される。
【0101】
図1のbは同じ被覆装置(100)を示しており、その際注目すべきことは2つの端部(141,142)を有する管(101)の形式の基本構成であり、それらの端部は前述した引張り要素によって形成され、また管(101)の第2の端部(142)が2つの凹型の窪み(151,152)を有する。
【0102】
図2は
図1の被覆装置(100)の側面を示す。ここでも両方の引張り要素(110,120)とそれらの間に設けられたフィルム(130)が示されている。前庭引張り要素は両方の口腔内セクション(123)に加えて点Aと点Bの間に延在するセクション(121)を備え、それが凹型の窪み(124)を形成し従って前方に向かって湾曲するセクションを成し、そのセクションは被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する。
【0103】
図3は、
図1および
図2の被覆装置の両方の引張り要素(110,120)を示す。前庭引張り要素(120)は、2つの口腔内引張りセクション(123)と2つの前方に湾曲したセクション(121,122)の4つのセクションに分割される。
【0104】
その際「前方」と言う概念は、軌道が唇引張り要素(110)の方向に偏倚することと理解すべきであり、その理由は被覆装置が装着された状態において唇引張り要素が完全に口外に存在し従って前庭引張り要素(120)の前方に位置するためである。
【0105】
前庭引張り要素(120)のセクション(121,122)の最も前方に位置する点は、平面状であるが引張されていないフィルムの状態において唇引張り要素(110)に対して約20mmの距離を有する。
【0106】
図4は、唇引張り要素(210)と前庭引張り要素(220)とフィルム(230)を含む別の本発明に係る被覆装置(200)の実施形態を示す。ここでも前庭引張り要素(220)は、唇引張り要素(210)の方向を指向する2つのセクション(221,222)を有する三次元の基本構造を有し、従って被覆装置がその領域で先細りになるかあるいはいずれも凹型の窪み(224,225)を形成する。
【0107】
ここで被覆装置(200)が使用される場合、前庭引張り要素(220)が口内に挿入され、従って引張り要素(220)の両方の領域あるいは引張りセクション(223)が臼歯の領域で前庭内に導入され頬に当接する。他方、図示された形状設計によって他の領域(221,222)は前庭内に位置せず、むしろ矢状方向において前庭の前方に延在する。その際、前方に湾曲するセクション(221および222)の軌道は、形状設計に応じて口腔内で唇に沿ってあるいは口腔外に設けることができる。
【0108】
追加的に、唇引張り要素(210)も前庭引張り要素(220)の方向を指向する2つのセクション(211,212)を有する三次元の基本構造を有し、従って被覆装置がその領域で先細りになる。それによって鼻の穴および顎がフィルム(230)によって覆われないようになることが好適である。しかしながら、周知の基本構造を維持して改善された被覆を達成するために、両方の引張り要素(210,220)の凹型の窪みが追加的な薄いブレース(261,262,263)によって支持される追加的な遮蔽部材(231,232,233)を備える。前記のブレース(261,262,263)によって、前記追加的な遮蔽部材(231.232.233)が鼻の領域も顎の領域も妨害しないが唇を覆う位置に保持される。
【0109】
図5は、
図4の被覆装置(200)の側面を示す。ここでも両方の引張り要素(210,220)とそれらの間に設けられたフィルム(230)が示されている。前庭引張り要素(220)は、両方の口腔内の引張りセクション(223)に加えてセクション(221)を備え、それが凹型の窪みを形成し従って前方に向かって湾曲するセクションを成し、そのセクションは被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する。唇引張り要素(210)も前庭引張り要素(220)の窪み(221)の方向を指向する窪み(211)を有する。
【0110】
ここでも、適宜な支持ブレース(261,263)を有する2つの追加的な遮蔽部材(231,233)が示されている。
【0111】
図6は、
図4および
図5の被覆装置の両方の引張り要素(210,220)を示す。前庭引張り要素(220)は、2つの口腔内引張りセクション(223)と、支持ブレース(261,262)を備えた2つの前方に湾曲するセクション(221,222)を有する。唇引張り要素(210)も、支持ブレース(263,264)を備えていて前庭引張り要素(220)に向かって湾曲する2つのセクション(211,212)を有する。
【0112】
前庭引張り要素(220)のセクション(221,222)の最も前方に位置する点は、平面状であるが引張されていないフィルムの状態において唇引張り要素(210)に対して約12mmの距離を有する。
【0113】
図7は、唇引張り要素(310)と前庭引張り要素(320)とフィルム(330)を含んでなる本発明に係る被覆装置(300)の別の実施形態を示す。ここでも、前庭引張り要素(320)が唇引張り要素(310)の方向を指向する2つのセクション(321,322)を有する三次元の基本構造を有し、従って被覆装置がその領域で先細りになる。
【0114】
ここで被覆装置(300)が使用される場合、前庭引張り要素(320)が口内に挿入され、従って引張り要素(320)の両方の領域あるいは引張りセクション(323)が臼歯の領域で前庭内に導入され頬に当接する。他方、図示された形状設計によって他の領域(321,322)は前庭内に位置せず、むしろ矢状方向において前庭の前方に延在する。その際、前方に湾曲するセクション(321および322)の軌道は、形状設計に応じて口腔内で唇に沿ってあるいは口腔外に設けることができるが、本実施例においては口腔外の軌道が示されている。
【0115】
追加的に、唇引張り要素(310)も前庭引張り要素(320)の方向を指向する2つのセクション(311,312)を有する三次元の基本構造を有し、従って被覆装置がその領域で先細りになる。それによって鼻の穴および顎がフィルム(330)によって覆われないようになることが好適である。しかしながら、周知の基本構造を維持して追加的な被覆を達成するために、両方の引張り要素(310,320)の凹型の窪みが追加的な薄いブレース(361,362,363,364)によって支持される追加的な遮蔽部材(331,332,333,334)を備える。
【0116】
図8は、
図7の被覆装置(300)の側面を示す。ここでも両方の引張り要素(310,320)とそれらの間に設けられたフィルム(330)が示されている。前庭引張り要素(320)は、両方の口腔内の引張りセクション(323)に加えてセクション(321)を備え、それが凹型の窪みを形成し従って前方に向かって湾曲するセクションを成し、そのセクションは被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する。唇引張り要素(310)も前庭引張り要素(320)の窪み(321)の方向を指向する窪み(311)を有する。
【0117】
ここでも、適宜な支持ブレース(361,363)を有する2つの追加的な遮蔽部材(331,333)が示されている。
【0118】
図9は、
図7および
図8の被覆装置の両方の引張り要素(310,320)を示す。前庭引張り要素(320)は、2つの口腔内引張りセクション(323)と、支持ブレース(361,362)を備えた2つの前方に湾曲するセクション(321,322)を有する。唇引張り要素(310)も、支持ブレース(363,364)を備えていて前庭引張り要素(320)に向かって湾曲する2つのセクション(311,312)を有する。
【0119】
前庭引張り要素(320)のセクション(321,322)の最も前方に位置する点は、平面状であるが引張されていないフィルムの状態において唇引張り要素(310)に対して約4mmの距離を有する。
【0120】
図10は、別の実施形態における両方の引張り要素(410,420)を示し、それによれば両方の引張り要素(410,420)がいずれも凹型の窪み上で相互に結合され、両方の結合位置(450,451)は交差状に形成される。この実施形態においては両方の引張り要素(410,420)を好適に一体型に形成することができる。
【0121】
図11は、本発明に係る被覆装置(500)と従来の技術に係る被覆装置の使用中における比較を示す。被覆装置(500)は、唇引張り要素(510)と前庭引張り要素(520)とフィルム(530)とから形成される。従来の技術に係る被覆装置において両方の引張り要素がリング形状で、実質的に円環形である。そのため、内側の引張りリングが完全に前庭内に存在し、そこで圧迫部を生じさせ得る。外側の引張りリングは鼻と顎まで到達する。
【0122】
本発明に係る実施形態においては、外側の唇引張り要素(510)と前庭引張り要素(520)のいずれもが、上部および下部領域が接近するような方式で形成される。
【0123】
このことは2つの利点を有しており:第1に、前庭引張り要素(520)が前歯領域において顎骨を覆う粘膜に当接せず、むしろ前方方向の唇を介して外側に延在する。他方、唇引張り要素(510)の窪みのため、従来の技術に係る被覆装置と異なって、鼻下と顎領域(C,D)がフィルム(530)によって覆われず、従って鼻による容易な呼吸が可能であり、また唇引張り要素(510)が大きめに形成されている場合でも顎を圧迫することはない。
【0124】
図12は、
図1のaに示されたものと同様な本発明に係る被覆装置(100)を示す。ここでも、唇引張り要素(110)と前庭引張り要素(120)とフィルム(130)が示されている。前庭引張り要素(120)は4つのセクション(121,122,123)を有し、その際セクション(121,122)がいずれも凹型の窪み(124,125)を形成する。この凹型の窪み(124,125)の領域で前庭引張り要素(120)がブリッジあるいは帯部材(171,172)を介して唇引張り要素(110)と結合される。
【0125】
ブリッジ(171,172)はフィルム(130)と異なって伸張不可能であり、従ってブリッジ(171,172)が凹型の窪み(124,125)の領域内で前庭引張り要素(120)と唇引張り要素(110)の間に固定的な距離を定義する。ブリッジ(171,172)によって、被覆装置(100)の使用に際して唇引張り要素(110)と前庭引張り要素(120)を歯肉から離間させることができる。
【0126】
図13は、
図12の被覆装置(100)の側面を示す。ここでも両方の引張り要素(110,120)とそれらの間に設けられたフィルム(130)が示されている。前庭引張り要素は両方の口腔内セクション(123)に加えて点Aと点Bの間に延在するセクション(121)を備え、それが凹型の窪み(124)を形成し従って前方に向かって湾曲するセクションを成し、そのセクションは被覆装置が装着された際に矢状方向において前庭ヒダの前方に延在する。その領域内において、前庭引張り要素(120)がブリッジ(171)を介して唇引張り要素(110)と結合される。
【0127】
図14は、
図4の本発明に係る被覆装置(200)の変更された実施形態を示す。基本的な構造は
図4の説明と同様である。被覆装置(200)は、両方の引張り要素(210,220)を凹型の窪み(224,225)の領域内で相互に結合する2本のブリッジ(271,272)を追加的に有する。
【0128】
図15は、
図11と同様に、本発明に係る被覆装置(500)と従来の技術に係る被覆装置の使用中における比較を示す。被覆装置(500)は、引張り要素(510)と前庭引張り要素(520)とフィルム(530)とから形成される。両方の引張り要素(510,520)は、ブリッジ(571,572)を介して唇の中央領域、すなわち引張り要素(510,520)の凹型の窪みの領域内で相互に結合される。ブリッジ(571,572)によって、外側の引張り要素(510)と内側の引張り要素(520)が歯肉から離間して保持され、従って圧迫傷がさらに良好に防止される。
図11と同様に、鼻下と顎の領域(C,D)はフィルム(530)によって覆われない。
【0129】
請求項17に係る発明の構成が
図16に概略的に示されている。口の開口部505が、先が尖った楕円として概略的に示されている。この形状は、約1/3から半分開いた口に相当する。より大きく開いた口は、むしろ楕円形として示すことができる。その形状はむしろ
図11に示されたものに相当する。
【0130】
図面および形状の説明は極めて概略的であることが理解される。実用上において全くあるいは殆ど全く正確な自然歯の幾何学形状には一致しない。
【0131】
口の開口部505に重ね合わせて本発明に係る前庭引張り要素520が
図16に示されている。前庭引張り要素はこの形状において解放された状態である。
【0132】
中央、すなわち矢上面508の領域ならびにその幾らか右および左に、窪み224および225が設けられる。それらは相互に接近するように延在する。変更された構成形態において、それらは前方方向、すなわちここには図示されていない唇引張り要素に向かって延在する。
【0133】
窪み224のさらに側方に突出部512および514が形成され、また窪み225のさらに側方には突出部516および518が形成される。
図16に示されるように、引張り要素520が丸み付けられた角を有する略四角形を形成し、その際特に角の径(すなわち突出部512ないし518の径)が1cmないし7cm、特に2ないし4cmである。
【0134】
図16の引張り要素520は楕円形でなく、当然円環形でもない。むしろ、突出部512ないし518は口の楕円505の外側の領域に延在し、引張り要素520が口の楕円と非同形あるいは幾何学的に近似しないものになる。
【0135】
ここでは前庭引張り要素520に係るため、その引張り要素は装着された状態において突出部512ないし518を介して唇および頬の内側に当接し、すなわちそれらの突出部512ないし518が形成されている位置で唇および頬に当接する。
【0136】
ここでは比較的大きい口の開口部505が示されている。その大きさは勿論患者固有である。図示されているように、ここで口の内側と引張り要素520の間に大きな重なりも存在し、すなわち突出部512ないし518の位置に重なりが存在する。
【0137】
小さな口の開口部505に対して同じ被覆装置が使用される場合、むしろ突出部512ないし518が相対的に大きくなる。
【0138】
それにもかかわらず、引張り要素520の側方領域が突出部512ないし518と共に滑り動いて頬の内側で斜め外側と同時に後方、すなわち遠位あるいは後方に向かって当接するため、この実施形態においても被覆装置の著しい装着快適性が保持される。
【0139】
被覆装置の装着は、口の開口部が小さい場合でも快適に可能である。側方領域を先に中央に挿入し、その後側方に摺動させることが有効である。その際他方の側方領域が中央近くになり同様に挿入し得るようになるまで摺動させることが好適である。そこで初めて中央合わせが行われるが、それは基本的に弾力性のフィルム530の作用によって自動的に行われる。
【0140】
唇引張り要素510は、
図16の実施形態において任意の形状を有することができる。それに関して、
図1ないし
図15が引用される。しかしながら、前庭引張り要素520と同形あるいは合同とするか、または前庭引張り要素に対して例えば10%程度の僅かな形状差違を有することもできる。
【0141】
また、前庭引張り要素520の形状を専ら請求項17に従って、すなわち請求項1の特徴を伴わずに具現化することもできる。そのような実施形態においては、
図16の窪み224と225が存在しなくなる。前庭引張り要素520は、一方で上方の突出部512および514の間、他方で下方の突出部516と518の間の直線的あるいは実質的に直線的な水平のセクションをもって延在する。
【0142】
また、複合的な形態、すなわち直線状のセクションを窪み224あるいは225の一方と組み合わせる形態も可能である。
【0143】
図17は、本発明に係る被覆装置の別の実施形態を示す。この実施形態においては、図示された唇引張り要素510が、極一部のみが示されている前庭引張り要素520と合同あるいは幾何学的に近似である。
【0144】
フィルム530による半径方向外側に作用する引張によって口の開口部505が変形する。(請求項17の要件とされる)解放された状態において、口の開口部は楕円形を有する。
【0145】
図17の実施形態においても、前庭引張り要素520は、口の開口部505の楕円あるいは先が尖った楕円に対して不一致でかつ幾何学的に近似しない。
【0146】
本発明に従って、突出部512,514,516および518が弾力性の突出部612,614,616および618と同様に半径方向外側かつ凸状に延在し、また患者の頬の内側に沿って横方向に延在する。
【0147】
突出部512,514,516および518は、突出角部として4つの空間方向に相互に分散するように延在し、本例では左/上、右/上、左/下および右/下の方に延在する。それらは、痛みを伴わず極めて良好に弾力性である頬の内側の領域で、水平および垂直のいずれに対しても斜めの角度で延在する。
【0148】
好適には唇引張り要素の窪み624および635に対応して設けられる前庭引張り要素の窪み524および525(
図16)によって、さらに唇引張り要素と口腔前庭が圧力から解放されて保護され、従って総合的に本発明に係る被覆装置の装着快適性が従来の技術に比べて著しく改善される。
【0149】
図17の実施形態において、窪み624の領域内にブリッジ632の複数のリブが形成される。それらのリブは、フィルム530内あるいはその表面に相互に平行して延在するもので、唇引張り要素510から開始することができる。しかしながら、それらのリブは、前庭引張り要素の方向に向かって相互に分散するかあるいは収束することもできる。リブはフィルム材料から形成するか、あるいは別の材料から形成することもできる。リブは湾曲するか、相互に交差するか、または交差しないように延在することもできる。リブは直線的に延在することもできる。
【0150】
同様に複数のリブあるいはブリッジ628が窪み625上にも形成される。それらのリブに対しても上述と同様な構成可能性が有効である。
【国際調査報告】