(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】複数の溝を生成する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/364 20140101AFI20220428BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220428BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B23K26/364
B23K26/064 Z
B23K26/067
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550017
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020057615
(87)【国際公開番号】W WO2020193366
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】202019101652.3
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521227779
【氏名又は名称】4ジェット マイクロテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディック、トビアス
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168CA13
4E168CB03
4E168DA23
4E168EA05
4E168EA06
4E168EA25
(57)【要約】
表面(110)内に複数の溝を生成するためのレーザ加工装置(100)は、レーザ放射(104)を受け取り、引き続き出力放射(106)を生成するように取り付けられている光学回折装置(102)を備え、この出力放射(106)は、複数の強度極大を有する。アクチュエータ装置(108)が、出力放射(106)と表面(110)との間の相対運動を生成するために設けられていて、各々の強度極大が、複数の溝のうちの一つの溝を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面内に複数の溝を生成するレーザ加工装置において、前記レーザ加工装置は、
レーザ放射を受け取り、引き続き出力放射を生成するように取り付けられている光学回折装置と、
前記出力放射と前記表面との間に相対運動を生成するアクチュエータ装置と
を備え、前記出力放射は、複数の強度極大を有し、各々の強度極大は、前記複数の溝のうちの一つの溝を生成する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記光学回折装置は、少なくとも一つの光学素子を有し、特に、前記少なくとも一つの光学素子は、前記出力放射の複数の部分の間に位相差を生成するように取り付けられている、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの光学素子は、反射で動作するように取り付けられている、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの光学素子は、金属又は半導体材料からなる本体を有する、請求項2又は3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記本体は、少なくとも部分的に、金属、特に耐腐食性金属、例えば耐腐食性合金又は貴金属で被覆されている、請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの光学素子は、回折光学素子である、請求項2から5までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記複数の強度極大は、少なくとも10の強度極大、特に少なくとも50の強度極大又は少なくとも200の強度極大を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記出力放射が前記表面に向かうように取り付けられている放射経路をさらに備え、
前記相対運動は、直線的運動であり、
前記光学回折装置及び/又は前記放射経路は、前記複数の溝のうちのそれぞれ二つの溝がそれ自体の間に一つのリブを形成するように取り付けられている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記レーザ放射は、CO2レーザ放射である、請求項1から8までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記レーザ放射の平均出力は、少なくとも500W、特に少なくとも1kWである、請求項1から9までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記レーザ放射を生成するレーザ源をさらに備える、請求項1から10までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記光学回折装置を冷却する冷却剤流路、特に液状冷却剤用の冷却剤流路をさらに備える、請求項1から11までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
表面内に複数の溝を生成する方法において、前記方法は、
レーザ放射を、出力放射を生成する光学回折装置に向けるステップと、
前記出力放射を前記表面に向けるステップと、
前記出力放射と前記表面との間に相対運動を生成するステップと
を含み、前記出力放射は、複数の強度極大を有し、各々の強度極大は、複数の溝のうちの一つの溝を生成する、表面内に複数の溝を生成する方法。
【請求項14】
前記出力放射の生成は、前記光学回折装置でのレーザ放射の反射を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面上に複数の平行のリブ、特にリブレットを製造するための、請求項1から12までのいずれか一項に記載のレーザ加工装置又は請求項13若しくは14に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された主題は、表面のレーザ加工の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2018/197555号明細書は、リブレットを製造する方法及び装置を開示しており、このリブレットは、レーザ干渉構造化(DLIP-直接レーザ干渉パターニング)により、表面内へ、特に既に塗装及び硬化された表面内へ導入される。この様式で製造されたリブレットを備える部材は、航空機、船舶及び風力発電装置を比較的低い流体抵抗で運転することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の状況の観点から、改善された特性を備える表面のレーザ加工を可能にする技術についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この必要性は、独立請求項の主題により考慮される。好ましい実施形態は、従属請求項に示されている。
【0005】
本明細書に開示された主題の第一の態様によると、装置、特に表面内に複数の溝を生成するレーザ加工装置が開示される。
【0006】
第一の態様の実施形態によると、表面内に複数の溝を生成するレーザ加工装置が開示され、このレーザ加工装置は、レーザ放射を受け取り、引き続き出力放射を生成するように取り付けられている光学回折装置と、出力放射と表面との間の相対運動を生成するアクチュエータ装置とを備え、この出力放射は、複数の強度極大を有し、(複数の強度極大の)各々の強度極大は、複数の溝のうちの一つの溝を生成する。
【0007】
本明細書に開示された主題の第二の態様によると、方法、特に表面内に複数の溝を生成する方法が開示される。
【0008】
第二の態様の実施形態によると、表面内に複数の溝を生成する方法が開示され、この方法は、レーザビームを、出力放射を生成する光学回折装置に向けるステップと、出力放射を表面に向けるステップと、出力放射と表面との間に相対運動を生成するステップとを含み、この出力放射は、複数の強度極大を有し、(複数の強度極大の)各々の強度極大は、複数の溝のうちの一つの溝を生成する。
【0009】
本明細書に開示された主題の多様な態様及び実施形態は、レーザビーム(又はレーザ放射)から光学回折装置(例えば回折光学素子又は複数の位相板)により直接複数の強度極大を生成し、この複数の強度極大の各々の強度極大を、複数の溝のうちの一つの溝を生成するために使用することにより、改善された特性を有する表面のレーザ加工を提供することができるという思想に基づく。
【0010】
第一の態様の実施形態によると、レーザ加工装置は、本明細書に開示された実施形態のうちの一つ若しくは複数の機能性を提供するように及び/又は本明細書に開示された実施形態、特に第一若しくは第二の態様の実施形態のうちの一つ若しくは複数のために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0011】
第二の態様の実施形態によると、方法は、本明細書に開示された実施形態のうちの一つ若しくは複数の機能性を提供するように及び/又は本明細書に開示された実施形態、特に第一若しくは第二の態様の実施形態のうちの一つ若しくは複数のために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0012】
本明細書に開示された主題の更なる利点及び特徴は、目下の好ましい実施形態の以下の例示的な説明から明らかになるが、本開示は、この好ましい実施形態に限定されるものではない。本出願の図面の個々の図は、概略的に示されているだけであり、必ずしも縮尺どおりで示されていない。むしろ、本明細書に開示された主題のいくつかの実施形態を明確にするために、相対的な寸法及び角度は縮尺どおりに表示することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置を概略的に示す。
【
図2】
図1中の線II-IIから見た、
図1の物体の表面を示す。
【
図3】
図2中の複数の溝の一部を、
図2中の線III-IIIに沿った断面図で示す。
【
図4】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置を示す。
【
図5】本明細書に開示された主題の実施形態による回折装置の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本明細書に開示された主題の例示的な実施形態を説明し、この場合、例えば、レーザ加工装置又は方法が参照される。もちろん、多様な態様、実施形態及び例の特徴の各々の組合せが可能であることが強調されるべきである。特に、いくつかの実施形態は、方法を参照して説明され、他の実施形態は、レーザ加工装置を参照して説明される。しかしながら、当業者は、上述及び後述の説明、特許請求の範囲及び図面から、他に明記されていない限り、異なる態様、実施形態及び例の特徴が組合せ可能であり、このような特徴の組合せは、本出願により開示されていると見なされることを推知する。例えば、方法に関連する特徴でさえ、レーザ加工装置に関連する特徴と組合せ可能であり、またその逆も同様である。さらに、レーザ加工装置に関連する実施形態の特徴は、方法に関連する相応する特徴と組合せ可能である。さらに、方法、方法の実施形態又は機能の開示により、一つ又は複数の構成要素(例えば光学素子)及び/又はアクチュエータ(例えばアクチュエータ装置の形態)並びにこのアクチュエータと相互作用する、方法又は機能の実施のために形成されている制御装置の機能性が開示されているものと見なされる。さらに、装置の機能の開示によって、装置の特徴なしで機能を定義する相応する方法が開示されているものと見なされる。
【0015】
他に明記されていない限り、数値は、±5%の拡張範囲を含むものと理解すべきであり、すなわち例えば、100の溝の数の表示は、一実施形態によると、(100±5%)=[95、105]の区間の間の溝の数を含み、50%のパーセンテージは、一実施形態によると、50%±5%=[47.5%、52.5%]の区間の間のパーセンテージを含む。別の実施形態によると、数値は、±10%の拡張範囲を含むものと理解すべきである。
【0016】
一実施形態によると、表面内に複数の溝を生成するように取り付けられているレーザ加工装置が開示される。別の実施形態によると、レーザ加工装置は、レーザ放射を受け取り、引き続き出力放射を生成するように取り付けられた光学回折装置を備える。別の実施形態によると、レーザ加工装置は、出力放射と表面との間の相対運動を生成するアクチュエータ装置を備える。それにより、出力放射は(表面からの材料の除去により)、表面内に複数の溝を生成する。一実施形態によると、出力放射は、複数の強度極大を有し、これら複数の強度極大の各々の強度極大が、複数の溝のうちの一つの溝を生成する。
【0017】
本明細書に開示された主題の実施形態によると、レーザ加工装置は、出力放射が表面に向かうように取り付けられている放射経路を有する。この放射経路は、例えば回折装置からの出力放射が表面にまで伝播する自由空間であってよい。他の実施形態によると、放射経路は、一つ又は複数の偏向素子、例えばミラーを有していてよい。例えば、アクチュエータ装置は、少なくとも一つの偏向素子を動かし、それにより出力放射と表面との間に相対運動を生成するように取り付けられていてよい。別の実施形態によると、アクチュエータ装置は、表面及び/又はレーザ加工装置若しくはその一部を動かすように取り付けられている。
【0018】
別の実施形態によると、放射経路は、一つ若しくは複数の集束する光学素子及び/又は一つ若しくは複数の発散する光学素子、例えば光学レンズを有していてよい。
【0019】
一実施形態によると、複数の強度極大は、放射経路に沿って、出力放射の放射経路の狭く限られた範囲内に存在するだけである。この場合、表面は、放射経路のこの範囲内に位置決めされることが自明である。換言すると、一実施形態によると、表面及び放射経路は相互に、表面が放射経路の、出力放射が複数の強度極大を有する範囲内にあるように位置決めされている。
【0020】
相応して、一実施形態によると、表面内に複数の溝を生成する方法は、以下の実施形態のうちの一つ又は複数を有する。一実施形態によると、この方法は、レーザ放射を、複数の強度極大を有する出力放射を生成する光学回折装置に向けるステップを含む。別の実施形態によると、この方法は、出力放射を表面に向けるステップを含む。別の実施形態によると、この方法は、出力放射と表面との間の相対運動を生成するステップを含む(例えば出力放射は相対運動の間に生成される)。出力放射と表面との間の相対運動により複数の溝が生成され、この場合、各々の強度極大が、複数の溝のうちの一つの溝を生成する。
【0021】
一実施形態によると、出力放射を表面に向けるステップは、表面が放射経路の範囲内にあり、その範囲内で出力放射が複数の強度極大を有するように、表面と出力放射とを互いに位置決めすることを含む。
【0022】
一実施形態によると、光学素子及び/又は放射経路及び/又はアクチュエータ装置は、出力放射により生成される複数の溝が平行の溝であるように取り付けられている。
【0023】
一実施形態によると、複数の強度極大により生成される溝の80%の断面寸法(例えば深さ)は、断面寸法の平均値の付近で、断面寸法の±10%の許容範囲内にある。一実施形態によると、この場合、平均値は、複数の溝の関連する断面寸法に関する算術平均である。断面寸法は、一実施形態によると、溝の幅又は溝の深さであってよい。
【0024】
一実施形態によると、表面内のこれらの溝は、リブレット、すなわち平滑な表面と比べて表面の流動抵抗を低下させる構造を形成する。特に、リブレットの用途、機能、形状、寸法、特性などに関して、国際公開第2018/197555号を明確に参照し、その全体の開示、特にリブレットの寸法及び用途は、参照により本明細書に含まれる。
【0025】
リブレットにとって通常であるように、一実施形態では、溝は、それぞれ側方の壁を有する。したがって、それぞれ二つの互いに隣り合う溝の隣接する壁は、これらの二つの溝の間のリブの互いに反対側の二つの側面を形成する。換言すると、一実施形態によると、複数の溝により、表面上に複数のリブが生成され、このリブは、例えば先に引用された国際公開第2018/197555号に記載されているような適切な寸法の場合にリブレットとして作用する(すなわち、表面全体にわたり流動抵抗を低減する)。一実施形態によると、リブの側面は鋭角をなしている。特に、リブは、一実施形態によると、先細に構成されている。
【0026】
一実施形態によると、リブは、実質的に互いに平行に、特に表面上で期待される流動の流動方向に対して平行に延びる。
【0027】
一実施形態によると、回折装置は、少なくとも一つの光学素子を有する。以下に光学素子について言及する限り、一実施形態により、二つ又はそれ以上の光学素子の場合、これらの光学素子の各々は、本明細書に開示された実施形態のうちの一つ又は複数により構成されていてよいことが理解されるべきである。
【0028】
一実施形態によると、少なくとも一つの光学素子(例えば、回折装置の各々の光学素子)は、出力放射の複数の部分の間に多数の位相差を生成するように取り付けられている。別の実施形態によると、少なくとも一つの光学素子は、多数の位相差の生成により、出力放射中に複数の強度極大を生成するように取り付けられている。出力放射のそれぞれ二つの部分の間の位相差は、出力放射の別の部分に対して一般的に異なることは自明である。
【0029】
例えば、一実施形態によると、光学素子は、回折光学素子である。例えば、一実施形態による回折光学素子は、多数の位相差を生成する構造を有する。別の実施形態によると、回折装置は、二つ又はそれ以上の回折光学素子を有する。例えば、一実施形態において、回折装置は、二つ又はそれ以上の(回折)光学装置を有し(これは例えば位相マスクとも言われる)、それにより、複数の平面内での位相差の生成が行われる(多面光変換、MPLC)。別の実施形態によると、回折装置は、ホログラムである。出力放射の所望の強度分布から出発して、回折光学素子、MPLC素子又はホログラムは、自体公知の製造方法により製造されていてよい。本明細書では単に例示的に、以下の文献、すなわち欧州特許第1591805号明細書、米国特許5073007号明細書に記載されている技術が挙げられる。
【0030】
一実施形態によると、回折装置の少なくとも一つの光学素子の少なくとも一つは、出力放射の断面内に複数の強度極大を生成するように構成されていて、この断面は、回折装置に入射するレーザ放射の断面よりも小さい。換言すると、回折装置の少なくとも一つの光学素子の少なくとも一つは、回折装置に入射するレーザ放射の集束を達成するように構成されている。例えば、一実施形態によると、回折装置の(レーザ放射の伝播方向で見て)最後の光学素子(すなわち、出力放射を生成する光学素子)が、この様式で形成されている。一実施形態によると、断面(本明細書ではビームダイヤゴナルとも言う)は、放射方向に対して垂直な放射の最大の拡がりにより規定される。
【0031】
他に記載がない限り、出力放射の断面は、出力放射が表面上に有する断面に関する。換言すると、一実施形態による出力放射の断面は、出力放射が表面上で(すなわち回折装置からの規定された距離で)生成される全体の照明箇所(スポット)の断面に相応する。したがって、スポット(すなわち、出力放射が表面上に生成する全体の照明箇所)は、複数の強度極大を含む。
【0032】
一実施形態によると、回折装置と表面との間に(すなわち放射経路内に)少なくとも一つの別の光学素子、例えば少なくとも一つの集束する光学素子及び/又は少なくとも発散する光学素子、例えばレンズなどが配置されていてよい。例えば、少なくとも一つの別の光学素子は、以下の、出力放射を集束又は拡張するための機能、複数の強度極大をスケーリングするための機能、回折装置が少なくとも別の光学素子で所望の形態で複数の強度極大を生成するように構成された場合に、所望な形態で強度極大を生成するための機能等の少なくとも一つを予定していてよい。一実施形態によると、回折装置は、場合により少なくとも一つの別の光学素子を考慮しながら、所定の間隔で複数の強度極大(特に複数の強度極大を有するスポット)を生成するように取り付けられ(計算され)ている。一実施形態によると、表面は、回折装置から所定の間隔で配置されている。
【0033】
一実施形態によると、複数の強度極大(すなわち、複数の溝のそれぞれ一つの溝を生成する複数の強度極大)は、少なくとも10の強度極大を含む。例えば、複数の強度極大は、少なくとも50の強度極大を含むか、他の実施形態によると、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500又は少なくとも1000の強度極大を含む。例えば複数の強度極大は、500~1500の強度極大を含む。
【0034】
一実施形態によると、強度極大の間隔は、名目上で、40μm~160μm、例えば100μmである。溝が表面内でリブレットを生成する場合に、強度極大の間隔は、リブの所望の間隔を達成するように適合されることは自明である。説明されたように、リブの所望の間隔(ひいては強度極大の所望の間隔)は、例えば流動速度に依存することができ、この流動速度のために、リブレットは、流動抵抗の所望の低減を生成する。複数の溝の隣接する溝の間隔は、実際に、強度極大の名目上の間隔から、例えば±5%だけ、逸脱してもよいことは自明である。例えば、一実施形態によると、100μmの強度極大の名目上の間隔について、隣接する溝の間隔は90μm~110μmであってよい。
【0035】
一実施形態によると、スポットサイズは15mm~500mm、例えば30mm~200mmである。例えば、5kWレーザに対してスポットサイズは120mmであってよい。さらに、例えば2kWレーザに対して、例えばスポットサイズは70mmであってよい。一実施形態によると、スポットは、相対運動に対して垂直の方向でこのスポットサイズを有する。
【0036】
一実施形態によると、スポットは、最小寸法の方向と、最大寸法の方向とを有し、最大寸法dmaxは、一実施形態によると、最小寸法dminの数倍である。例えば、最大寸法dmaxは、最小寸法dminのF倍、つまりdmax=F・dminであり、因数Fは、一実施形態によると、5~100、例えば40である(dmax=40・dmin)。例えば、最小寸法が3mmであり、最大寸法が120mmであることができる。例えば、一実施形態によると、スポットは、dmin・dmaxの寸法を有する、すなわち例えば3mm・120mmの寸法を有する、本質的に矩形又は楕円形のスポットである。スポットは複数の強度極大を有するので、(例えば、「本質的に矩形の」スポットの)スポットサイズは、スポットの周り(又は複数の強度極大の周り)に外接可能である矩形の寸法(例えばdmin、dmax)を表す。一実施形態によると、本明細書で示されたスポットサイズは、スポットの最大寸法dmaxである。
【0037】
一実施形態によると、出力放射と表面との間の相対運動は、最小寸法の方向に行われる。それにより、比較的小さな最小寸法により、相対運動の所与の速度で、表面の比較的短い照明時間が実現される。出力放射による表面の照明時間は、一実施形態によると、40ms未満、例えば10ms未満である。特に、出力放射による表面の照明時間は、2ms未満である。一実施形態によると、最小寸法と相対運動の速度とは、示された照明時間を実現するように適合されている。一実施形態によると、相対運動の速度は、少なくとも100mm/s、例えば100mm/s~2m/sの間の間隔、300mm/s~1m/sの間の間隔である。例えば、相対運動の速度は、名目上で500mm/s又はそれ以上である。一実施形態によると、強度極大は、周期的に、例えば周期的に一列に配置されている。一実施形態によると、各々の強度極大は、円形から逸脱した形状を有する。例えば、複数の強度極大の各々の強度極大は、長く伸びた形状を有する。強度極大の形状は、この場合、通常のように例えば同じ強度の線の形状により規定される。
【0038】
一実施形態によると、光学素子は、反射で動作するように取り付けられている。換言すると、一実施形態による光学素子は、反射光学素子である。反射で動作する光学素子により、光学素子の熱的負荷を低減することができる。反射で動作する光学素子の場合、位相差を生成する構造は、一実施形態によると、表面構造であってよい。
【0039】
別の実施形態によると、光学素子は、金属又は半導体材料からなる本体を有する。一実施形態によると、本体は、高い電気伝導率を有する金属及び/又は高い熱伝導率を有する金属、例えば銅又は金から形成されている。別の実施形態によると、本体は、耐食性金属(すなわち、腐食に対して耐性の金属)、例えば適切な金属合金又は貴金属から形成されている。別の実施形態によると、本体は、ケイ素から形成されている。一実施形態によると、本体は、単結晶から形成されている。この様式で、光学素子の特性に関する粒界の影響を回避することができる。
【0040】
別の実施形態によると、本体は、少なくとも部分的に、金属、特に耐食性金属で被覆されている。一実施形態によると、耐食性金属は、耐食性合金又は貴金属、例えば金である。耐食性金属により、持続的に光学素子の高い反射率を達成することができる。例えば、光学素子は、金属(例えば金)で被覆されているケイ素からなる本体を有していてよい。
【0041】
一実施形態によると、本体は1mm~200mm、例えば5mm~50mmの範囲内の厚さを有する。比較的大きな厚さは、本体の比較的高い剛性、ひいては光学素子の比較的高い精度を可能にすることができる。
【0042】
別の実施形態によると、光学素子(例えば、本体、又は本体上に被覆が配置されている場合には、被覆)は、20mm~500mmの範囲内の断面(例えば直径)、例えば70mm~200mmの直径を有する第一の平面を有する。一実施形態によると、断面(例えば直径)は、第一の平面(例えば光学素子の主面)の最大の拡がりにより規定される。
【0043】
一実施形態によると、光学素子は、第一の平面上が構造化されていて、別の実施形態によると、構造化された平面は、構造化されていない縁部により取り囲まれている。一実施形態によると、光学素子の構造化された平面は、本体の構造化(例えば、彫刻、エッチングなど)により形成されていてよく、それにより得られた本体の構造は、一実施形態によると、被覆が施され、それにより(存在する場合に)被覆は、対応する構造(すなわち、光学素子の構造化された平面)を有する。一実施形態によると、構造化されていない縁部の幅は、第一の平面の断面の2%~20%である。一実施形態によると、構造化された平面は、レーザ放射により完全に照明される。このため、一実施形態によると、レーザ放射は、相応して、例えば、例えばレンズ群の形態又はDOEの形態のビームエキスパンダの使用下で、拡張されていてよい。
【0044】
一実施形態によると、レーザ加工装置は、光学回折装置を冷却するため(特に光学素子を冷却するため)の冷却剤流路、特に液状冷却剤用の冷却剤流路を有する。例えば、光学素子は、冷却剤流路の少なくとも一部を形成する中空部を有する。別の実施形態によると、冷却剤流路は、光学素子と熱伝達するように結合されている別個の構成部材により形成されていてよい。一実施形態によると、冷却剤流路は、本体の裏側で、すなわち、本体の、構造化された第一の平面とは反対側に配置されている第二の平面(例えば第二の主面)に配置されている。
【0045】
一実施形態によると、出力放射は、本体の構造化された(第一の)平面の(平均)平面法線に対して0度~50度の角度、例えば10度の角度を形成する。
【0046】
一実施形態によると、レーザ放射は、光学素子の構造化された(第一の)平面の平面法線に対して1度~70度、例えば45度~60度の角度を形成する。
【0047】
一実施形態によると、レーザ放射(すなわち、回折装置に当たる入力放射)と、出力放射との間の角度は、20度~100度、例えば50度である。
【0048】
一実施形態によると、光学素子(特に光学回折装置の放射方向で最後の光学素子)は、レーザ加工装置の光学構成要素と表面との具体的配置について(特に、レーザ放射と、光学素子と、表面との互いに相対的な具体的配置について)計算されている。レーザ加工装置の光学構成要素と表面との具体的な配置についての光学素子の計算は、光学回折装置が、単一の回折光学素子(DOE)からなる場合に特に有利である。
【0049】
一実施形態によると、レーザ放射は、1.5未満の回折指数M2を有する(M2<1.5)。別の実施形態によると、レーザ放射は、回折指数M2<1.3又はM2<1.1を有する。回折指数が小さければそれだけ、複数の強度極大を有する所望の強度パターンをより正確に実現することができる。
【0050】
一実施形態によると、レーザ放射は、CO2レーザのレーザ放射である。CO2レーザは、高い平均出力を利用可能であるという利点があり、これがまた、高い加工速度を可能にする。例えば、レーザ放射の平均出力は、少なくとも500ワット(W)である。別の実施形態によると、レーザ放射の平均出力は、少なくとも1キロワット(kW)であり、又はさらに別の実施形態によると、少なくとも3kWである。
【0051】
しかしながら、その高い平均出力は、それに対して、レーザ加工装置の確実でかつ安定した運転を可能にするために、レーザ加工装置及びその部分の適切な構成を必要とする。本明細書に開示された主題の実施形態は、高い平均出力でレーザ加工装置の確実でかつ安定した運転を可能にする。
【0052】
一実施形態によると、レーザ加工装置は、レーザ放射を生成するレーザ源を有する。しかしながら、別の実施形態によると、レーザ加工装置は、レーザ源と結合可能であることが予定されていてもよい。
【0053】
要約すると、本開示は、特に以下の実施形態及び実施形態の組合せを包含する。
1.表面内に複数の溝を生成するレーザ加工装置において、このレーザ加工装置は、
レーザ放射を受け取り、引き続き出力放射を生成するように取り付けられている光学回折装置と、
出力放射と表面との間に相対運動を生成するアクチュエータ装置と
を備え、この出力放射は、複数の強度極大を有し、各々の強度極大は、複数の溝のうちの一つの溝を生成する、レーザ加工装置。
【0054】
2.この回折装置は、少なくとも一つの光学素子を有し、特に、この少なくとも一つの光学素子は、出力放射の複数の部分の間に位相差を生成するように取り付けられている、実施形態1に記載のレーザ加工装置。
【0055】
3.この少なくとも一つの光学素子は、反射で動作するように取り付けられている、実施形態2に記載のレーザ加工装置。
【0056】
4.この少なくとも一つの光学素子は、金属又は半導体材料からなる本体を有する、実施形態2又は3に記載のレーザ加工装置。
【0057】
5.この本体は、少なくとも部分的に、金属、特に耐腐食性金属、例えば耐腐食性合金又は貴金属で被覆されている、実施形態4に記載のレーザ加工装置。
【0058】
6.この光学素子は、回折光学素子である、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0059】
7.この複数の強度極大は、少なくとも10の強度極大、特に少なくとも50の強度極大又は少なくとも200の強度極大を含む、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0060】
8.出力放射が表面に向かうように取り付けられている放射経路をさらに備え、
相対運動は、直線的運動であり、
回折装置及び/又は放射経路は、複数の溝のうちのそれぞれ二つの溝がそれ自体の間に一つのリブを形成するように取り付けられている、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0061】
9.このレーザ放射は、CO2レーザ放射である、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0062】
10.このレーザ放射の平均出力は、少なくとも500W、特に少なくとも1kWである、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0063】
11.レーザ放射を生成するレーザ源をさらに備える、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0064】
12.光学回折装置を冷却する冷却剤流路、特に液状冷却剤用の冷却剤流路をさらに備える、上述の実施形態のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【0065】
13.表面内に複数の溝を生成する方法において、この方法は、
レーザ放射を、出力放射を生成する光学回折装置に向けるステップと、
出力放射を表面に向けるステップと、
出力放射と表面との間に相対運動を生成するステップと
を含み、この出力放射は、複数の強度極大を有し、各々の強度極大は、複数の溝のうちの一つの溝を生成する、表面内に複数の溝を生成する方法。
【0066】
14.出力放射の生成は、光学回折装置でのレーザ放射の反射を含む、実施形態13に記載の方法。
【0067】
15.複数の強度極大は、少なくとも10の強度極大を含む、実施形態13又は14に記載の方法。
【0068】
16.表面上に複数の平行のリブ、特にリブレットを製造するための、請求項1から12までのいずれか一つに記載のレーザ加工装置又は請求項13から15までのいずれか一つに記載の方法の使用。
【0069】
本明細書に開示された主題の実施形態は、溝又は溝間のリブの自由な形状選択(単位セル内の、つまり例えばリブの先細の先端、平坦な溝底部)を可能にする。これに対して、従来の干渉加工は、少なくとも部分的に正弦波状に形成されているリブ及び溝が可能なだけである。
【0070】
さらに、本明細書に開示された主題の実施形態は、特に加工方向に対して横断する方向で、出力放射が表面上に生成するスポットの正確な境界付けを可能にする。これは、加工方向に対して横断する方向で、異なるスポットの加工トラックの改善された並列配置を可能にすることができる。これに対して、ガウス放射を用いた従来の干渉の場合には、ガウス状の包絡線が存在する。この包絡線は、一実施形態によると、回折装置を用いて矩形関数に形成されてよい(又は矩形関数に近似されてよい)。
【0071】
光学回折装置により(一実施態様によると、単一の光学素子、特に単一の回折光学素子により)出力放射内に複数の強度極大を生成することにより、従来の干渉構造化(特にビーム分割と引き続く分割ビームの合一とを含む)と比較して、かなりの簡素化を生じさせることが可能となる。というのも、本明細書に開示された主題の実施形態によると、ビームフォーミング(スポットの包絡線の形成)及び強度極大の形成は、僅かな光学素子(例えば単に単一の光学素子)により実現されるためである。特に、本明細書に開示された主題の実施形態による複数の強度極大の形成は、従来の干渉構造化に対して、互いに規定された間隔で位置決めされた単一の光学素子による経路差の生成に基づかない。それにより、特に僅かな光学素子を互いに規定された位置に保持する必要があるため、工業的環境でより高い安定性が生じる。
【0072】
詳細な説明
以下に、本明細書に開示された主題の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。異なる図において、類似の又は同一の素子又は構成要素は、部分的に同じ符号が付けられているか、又は最初の桁だけが異なる符号が付けられていることに留意されたい。別の図における対応する特徴又は構成要素と同じであるか又は少なくとも機能的に同じである特徴又は構成要素は、以下の本文中に最初に出現する場合にだけ詳細に説明され、この説明は、これらの特徴及び構成要素(又は相応する符号)が後に出現する際には繰り返されない。上述の定義は、一実施形態によると、以下の実施形態についても当てはまり、その逆も同様である。さらに、上述で説明された特徴及び実施形態は、以下に説明された特徴及び実施形態と組み合わせることが可能である。
【0073】
図1は、本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置100を概略的に示す。
【0074】
一実施形態によると、レーザ加工装置100は、光学回折装置102を備え、この光学回折装置は、レーザ放射104を受け取り、引き続き出力放射106を生成するように取り付けられている。一実施形態によると、レーザ放射104は、回折装置102の平均的平面法線に対して、1度~70度の角度103、例えば30又は45度の角度を形成する。一実施形態によると、平面法線の方向は、回折装置102の活性平面(例えば構造化された平面)に関して平均化され、特に(例えば、回折装置102が一つより多くの活性平面を有する場合)、回折装置102の、レーザ放射104により照明される外側の活性平面に関して平均化される。したがって、平面法線は、本明細書では平均平面法線とも言われる。一実施形態によると、出力放射106は、平均平面法線に対して、0度~70度の角度105、例えば30又は45度の角度を形成する。
【0075】
レーザ加工装置100はさらに、出力放射106と物体112の表面110との間に相対運動を生成するアクチュエータ装置108を備える。一実施形態によると、アクチュエータ装置108は、114に示すように、固定配置されている。別の実施形態によると、加工コンポーネント116が、キャリア118を介してアクチュエータ装置108と連結されている。一実施形態によると、アクチュエータ装置108及び/又はキャリア118は、ロボットアームによって形成されている。一実施形態によると、アクチュエータ装置108及び/又はキャリア118は、大まかな位置決めのために可動のリフトプラットフォーム上に立っていてよい(
図1には示されていない)。これは、特に、大きな物体、例えば、航空機部品の際に有利であることがある。一実施形態によると、リフトプラットフォームは、リフトプラットフォームを動かすために少なくとも一つのアクチュエータを有していてよい。リフトプラットフォームを動かすための少なくとも一つのアクチュエータは、一実施形態によると、アクチュエータ装置108の部分であってよい。アクチュエータ装置108を用いて、加工コンポーネント116は、物体112又は物体112の表面110に対して動かすことができ、出力放射106は表面に対して相対運動する。別の実施形態によると、物体112は、アクチュエータ装置108に対して付加的に又はそれに代わって、アクチュエータ装置を用いて可動に配置されていることが予定されていてよい。
【0076】
回折装置102と表面110との間の間隔を所定の間隔範囲に維持するため及び/又は回折装置102と表面110との間の配向を所定の配向範囲(旋回範囲)に維持するために、センサ装置119が設けられていてよい。一実施形態によると、センサ装置は、一つ又は複数のセンサ、例えば位置センサ、距離センサなどのうちの少なくとも一つを有する。
【0077】
一実施形態によると、物体112は、例えば航空機の一部、例えば航空機の翼又は胴である。別の実施形態によると、物体112は、例えば風力発電装置のロータブレードであってよい。一実施形態によると、物体112は、(114に示すように)例えばキャリア(
図1に示されていない)に固定配置されている。
【0078】
一実施形態によると、レーザ加工装置100は、レーザ放射104を放射するレーザ放射装置120を備える。一実施形態によると、レーザ放射装置120内に、レーザ放射を生成するレーザ源が配置されている。別の実施形態によると、レーザ源は、レーザ放射装置120の外部に配置されている。特に、レーザ加工装置100、又はレーザ加工装置100の一部が、例えば
図1に示すように、表面110に対してアクチュエータ装置108によって動かされる実施形態の場合、レーザ加工装置の外部にレーザ源を配置することが、(例えば重量の理由から)合目的であってよい。
【0079】
一実施形態によると、レーザ加工装置はさらに、光学回折装置102又は冷却剤流路126に冷却剤128を供給する冷却装置124を有する。
【0080】
さらに、一実施形態によると、レーザ加工装置100は、レーザ加工装置の別の構成要素、例えばレーザ放射装置120、冷却装置124及び/又はアクチュエータ装置108を制御する制御装置122を備える。制御装置122による別の構成要素の制御は、一実施形態によると、例えば
図1に示すように、別の構成要素と制御装置122との信号伝達する連結130を介して行われる。一実施形態によると、制御装置122は、センサ装置119と、信号伝達するように連結されている(130で示される)。別の実施形態によると、制御装置122は、センサ装置119からのセンサ信号123に反応して、レーザ加工装置100の一つ又は複数の構成要素を制御するように取り付けられている。一実施形態によると、レーザ加工装置の構成要素の制御(特に別の構成要素の制御、さらに特にアクチュエータ装置の制御)は、回折装置102と表面110との間の間隔を所定の間隔範囲内に維持するように及び/又は回折装置102と表面110との間の配向を所定の配向範囲に維持するように取り付けられていてよい。一実施形態によると、レーザ加工装置は、受動素子にすぎない。この場合、制御装置との信号伝達する連結は省かれてよい。
【0081】
一実施形態によると、加工コンポーネント116は、以下の構成要素、すなわちレーザ放射装置120、制御装置122、冷却装置124、光学回折装置102及びセンサ装置119のうちの一つ又は複数を含む。例えば、加工コンポーネント116は、例えば
図1に116で破線により概略的に示されているようにこれらの全ての構成要素を含む。
【0082】
一実施形態によると、出力放射は、複数の強度極大を有し(
図1に示されていない)、出力放射106の断面132、特に複数の強度極大の全体の断面は、光学回折装置102に入射するレーザ放射104の断面134よりも小さい。例えば、一実施形態による光学回折装置102は、集束するように作用し、したがって、レーザ放射104の断面は、回折装置102でのレーザ放射104の断面134から、表面110での出力放射106の断面132に縮小する。一実施形態によると、断面132は、出力放射106のスポットサイズとも言われる。一実施形態によると、出力放射106内で干渉が起こり、それにより複数の強度極大が形成される。
【0083】
回折装置102は、複数の強度極大を有する出力放射106の他に、表面110の加工のために使用されない別の放射を生成することもあることが指摘される。この使用されない放射(
図1には示されていない)は、例えば、レーザ加工装置100又は加工コンポーネント116から放射されないように、例えば適切なシールドにより遮断されてよい。
【0084】
図2は、
図1内の線II-IIから見た
図1の物体112の表面110を示す。
【0085】
一実施形態によると、出力放射106は、
図2において136でいくつか示されている複数の強度極大を有する。
図2では138で示される、表面と出力放射106との相対運動により、強度極大136は、
図2では140でいくつか示されている複数の平行の溝を表面内に生成する。示された方向138は、表面110上での出力放射106の運動方向である。
【0086】
一実施形態によると、強度極大の形状は、円形から逸脱している。特に、一実施形態によると、強度極大は、第一の方向142に沿って第一の拡がり143を有し、この第一の方向に沿って、強度極大は、一実施形態により互いに並んで配置されていて、この第一の拡がりは、第二の方向146での第二の拡がり144よりも小さく、この第二の方向146は、第一の方向142に対して垂直に配置されている。一実施形態によると、出力放射106と表面110との間の相対運動138は、例えば
図2に示すように、第二の方向146に沿って行われる。
【0087】
複数の強度極大は、一実施態様によると、出力放射のスポットを形成するか、又は出力放射のスポットにより形成されている。一実施形態によると、スポットは、第二の方向146(すなわち、溝140の長手方向)での最小の拡がりを有し、それに対して垂直の方向で(第一の方向142に沿って)最大の拡がりを有する。第一の方向(溝140の長手方向に対して垂直の方向)でのスポットの最大の拡がりが大きくなればそれだけ、スポットにより所与の溝幅でより多くの溝を生成することができる。一つのスポットがより多くの溝を生成すればそれだけ、レーザ加工装置100の平面加工速度がより高くなることができる。
【0088】
図3は、
図2の複数の溝140の一部を、
図2における線III-IIIに沿った断面図で示す。
【0089】
一実施形態によると、溝140の寸法及び間隔は、溝140の間にリブ150が残留するように構成されている。したがって、リブ150は、表面110を形成し、出力放射106で照射されることにより溝140の範囲内で除去される材料148から形成されている。一実施形態によると、材料148は、例えば
図3に示すように、物体112のベース部分152上に配置されている被覆(例えば塗料)である。
【0090】
図4は、本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置200を示す。
【0091】
一実施形態によると、レーザ加工装置200は、回折装置102を冷却する冷却装置124を備える。一実施形態によると、冷却装置124は、例えば
図4に示すように、加工コンポーネント116の外部に配置されている。別の実施形態によると、レーザ加工装置は、冷却剤ライン127を備え、この冷却剤ラインを通して回折装置102用の冷却剤128が搬送可能である。一実施形態によると、レーザ加工装置200は、冷却剤流路126を有する熱交換器160(例えばヒートシンク)を備え、この熱交換器には、冷却剤128が貫流して、冷却剤128を用いて回折装置102から熱を搬出するために、(例えば
図4に示すように)回折装置102と熱的に接触している。一実施形態によると、温められた冷却剤128は、回折装置用の冷却剤を冷却しかつ改めて準備するために、冷却装置124に再び供給される。
【0092】
一実施形態によると、レーザ加工装置200は、レーザ源162を備え、このレーザ源は、レーザ放射104を生成し、適切な光導波路164を介してレーザ放射装置120に供給し、そのレーザ放出装置から、レーザ放射104は、例えば
図4に示すように、回折装置102に放射される。一実施形態によると、光導波路164は、レーザ放射104をレーザ放射装置120に供給する光導波体及び/又は適切なミラー装置を有する。例えば、レーザ放射104の高い出力及び/又は放射のコヒーレンスの維持に関する高い要求の場合、ミラー装置は光導波体と比べて好ましいことがある。一実施形態によると、レーザ源162は、例えば
図4に示すように、加工コンポーネント116の外部に配置されている。
【0093】
一実施形態によると、レーザ加工装置200は、一つ又は複数の別の光学素子166、例えば、
図4に破線で示されている位置に、出力放射106を表面(
図4に示されていない)に集束する集束する光学素子166及び/又はレーザ放射104を所望の断面134(
図1参照)に拡張する発散する光学素子167を備える。
【0094】
図4における光学素子166は、回折装置102と、溝が生成される表面との間の放射経路169内での光学素子の例である。例えば、光学素子166は、放射経路169が、出力放射106を表面に向けるように取り付けられていることに寄与することができる。
【0095】
例えば、少なくとも一つの光学素子166(この光学素子は、本明細書では別の光学素子とも言われる)は、表面全体に出力放射を動かすスキャナのミラーであってよい。この場合、アクチュエータ装置は、スキャナの少なくとも一つのアクチュエータを含むことになる。別の実施形態によると、出力放射106を表面に向けることは、もっぱら回折装置102によって行われる。換言すると、一実施形態によると、放射経路169は、光学素子、例えばミラー、レンズなどを含まない。
【0096】
一実施形態によると、レーザ加工装置200はさらに、制御装置122を備え、この制御装置は、レーザ加工装置200の構成要素と信号伝達するように連結されている(
図4では例示的にいくつかの構成要素が130で示されている)。
【0097】
一実施形態によると、レーザ加工装置200は、アクチュエータ装置108とキャリア118とを備える。一実施形態によると、アクチュエータ装置108とキャリア118とは、ロボットアームの少なくとも一つの部分を形成する。一実施形態によると、レーザ加工装置200の外部の構成要素(例えば、冷却装置124、レーザ源162及び制御装置122)と、レーザ加工装置の可動の構成要素(例えば、レーザ放射装置120、回折装置102及び任意の別の光学素子166、167、特に加工コンポーネント116の構成要素)との間の接続経路は、例えば
図4に概略的に示すように、キャリア118及び/又はアクチュエータ装置108(例えばロボットアームの少なくとも一部)に案内される。
【0098】
外部の構成要素、例えば外部の構成要素122、124、162を設けることにより、運動する質量(すなわち、アクチュエータ装置108により動かさなければならない質量)を低減することができる。外部の構成要素は、一実施形態によると、加工コンポーネント116に対して外部に配置されている構成要素である。外部の構成要素は、例えば、ロボットアームのベース、又はロボットアームに、特にロボットアームのベースに隣接して配置されているロボットアームの部分(例えば、ロボットアームの「下方」部分)に配置(固定)されていてよい。
【0099】
一般に、レーザ加工装置のいくつかの構成要素の本明細書に説明された配置は、特定の用途のために好ましいかもしれないが、この開示の範囲内で、レーザ加工装置の構成要素は任意の適切な箇所に配置することができることが強調されるべきである。例えば、一実施形態によると、回折装置102は、加工コンポーネント116から離して、例えばロボットアームに、又は外部の構成要素として配置されていてよい。
【0100】
図5は、本明細書に開示された主題の実施形態による回折装置102の上面図を示す。
【0101】
一実施形態によると、回折装置102は、回折光学素子168を有する(以後、略して光学素子とも言う)。一実施形態によると、回折光学素子168は、第一の平面172を有し、この第一の平面は、非構造化部分174と構造化部分176とを有する。一実施形態によると、非構造化部分174は、例えば
図5に示されたように構造化部分176の周囲に延在する(したがって、一実施形態では、構造化されていない縁部を形成する)。一実施形態によると、回折光学素子は、複数の(相対的な)強度極大の生成の他に、幾何光学機能、例えば集束機能、ビーム指向機能などのうちの少なくとも一つを有する。
【0102】
図6は、
図5の回折装置102の光学素子168を断面図で示す。
【0103】
一実施形態によると、第一の平面172の少なくとも構造化部分176は金属、例えば被覆178から形成されている。一実施形態によると、光学素子168は、本体170と、その本体170上の被覆178とを有する。一実施形態によると、本体170は、構造化されたシリコンウェハであり、一実施形態による光学素子168の表面構造180は、シリコンウェハの構造により規定されている。
図6内の表面構造180は、光学素子168の構造化された平面176とその反対側の平面182とを単に例示的にかつ概略的にわかりやすく説明するが、必ずしも本明細書に開示された主題の実施形態による回折装置102の光学素子168の実際の構造化を示すものではないことが指摘される。一実施形態によると、反対側の平面182は、平坦な平面により、例えば
図6に示すように、例えば本体170の平坦な平面により形成されている。平坦な反対側の平面182は、熱交換器、例えばヒートシンクに対する熱的な接触を改善することができる。構造化された平面176と反対側の平面182との間隔は、一実施形態によると、光学素子168の厚さを規定する。一実施形態によると、光学素子168の厚さは、構造化された平面176全体にわたり平均化される(光学素子の平均厚さ)。一実施形態によると、被覆178の層厚は、本体170の厚さの10%未満である。したがって、一実施形態による本体170は、本質的に光学素子168の厚さを規定する。
【0104】
一実施形態によると、表面構造180を形成する平面は湾曲されていてよいか又は湾曲することができ、別の実施形態では平坦であってよい。換言すると、表面構造180を生成する前の出発平面は湾曲されていてよいか、又は他の実施形態によると、平坦であってよい。例えば、光学素子168の幾何光学機能を、出発平面の湾曲により達成可能であってよい。
【0105】
一実施形態によると、回折装置102は、単一の回折光学素子168、例えば、例えば
図5及び
図6を参照して示されているような回折光学素子からなる。
【0106】
本明細書に開示された構成要素(例えば、制御装置、レーザ加工装置、レーザ放射装置、冷却装置、アクチュエータ装置、物体など)は、いくつかの実施形態において説明されたような決定的な実体に限定されるものではないことに留意すべきである。むしろ、本明細書に開示された主題は、開示された特別な機能性を相変わらず提供しつつ、多様な様式で実施することができる。
【0107】
本明細書に開示された各々の実体(例えば装置、素子、特徴及び方法工程)は、いくつかの実施形態で説明されたような決定的な実体に限定されるものではないことが指摘される。むしろ、本明細書で説明された主題は、示された機能性を相変わらず提供しつつ、多様な様式で、装置レベル又は方法レベルでの多様な細分性で提供されてよい。さらに、実施形態によると、本明細書に開示された機能の各々に対して個別の実体が提供されてよいことも留意すべきである。別の実施形態によると、本明細書に説明されている二つ又はそれ以上の機能を提供するために一つの実体が構築されていてよい。さらに別の実施形態によると、本明細書に説明されている一つの機能を一緒に提供するために、二つ又はそれ以上の実体が構築されていてよい。
【0108】
本明細書に説明された図面における具現化は、本明細書に開示された主題の可能な実施バリエーションに関する限定的な選択であるにすぎないことが指摘される。したがって、個々の実施形態の特徴を、適切な様式で、互いに組み合わせ、その結果、当業者にとって、本明細書で明示的な実施バリエーションによって、複数の異なる実施形態が開示されていると見なすことが可能である。さらに、「ein(一つ)」又は「eines(一つ)」のような概念は、複数を除外するものでないことに言及するべきである。「含む(enthaltend)」又は「有する(aufweisend)」のような概念は、別の特徴又は方法ステップを除外するものではない。「有する(aufweisend)」又は「含む(enthaltend)」の概念は、それぞれ、「とりわけ含む」及び「からなる」の両方の意味を包含する。
【0109】
さらに、図面における例示的なレーザ加工装置及び例示的な表面は、本明細書に開示された主題の複数の実施形態の所定の組合せを示し、実施形態の各々の別の組合せも同様に可能であり、この出願により開示されていると見なされることに留意すべきである。
【0110】
本明細書に開示された主題の実施形態の有利な組合せを、以下にまとめることができる。
表面内に複数の溝を生成するためのレーザ加工装置は、レーザ放射を受け取り、引き続き出力放射を生成するように取り付けられている光学回折装置を備え、この出力放射は、複数の強度極大を有する。アクチュエータ装置が、出力放射と表面との間の相対運動を生成するために設けられていて、各々の強度極大が、複数の溝のうちの一つの溝を生成する。
【国際調査報告】