(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】環状リン部分を含有する修飾イオン液体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20220428BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20220428BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20220428BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20220428BHJP
H01G 9/20 20060101ALI20220428BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220428BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20220428BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20220428BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0525
H01M6/16 A
H01M12/06 G
H01G9/20 107A
H01G9/20 107B
H01G9/20 107C
H01M10/0569
H01M10/0567
H01G11/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550199
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 US2020023547
(87)【国際公開番号】W WO2020191149
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518343040
【氏名又は名称】ノームズ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モガンティー、シュリヤ、エス.
(72)【発明者】
【氏名】シニクロピ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ユエ
(72)【発明者】
【氏名】スティール、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】トーレス、ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディヤ、ルトヴィク
【テーマコード(参考)】
5E078
5H024
5H029
5H032
【Fターム(参考)】
5E078AA04
5E078AB02
5E078BA18
5E078BA27
5E078DA03
5E078DA05
5E078DA06
5E078DA13
5H024AA03
5H024AA06
5H024AA12
5H024FF11
5H024FF14
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM06
5H029AM07
5H029AM09
5H029HJ02
5H032AA01
5H032AA02
5H032CC17
(57)【要約】
本開示は、リン修飾イオン液体化合物、その合成、及び環状リン修飾イオン液体化合物を含む電気化学電池電解質に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体化合物であって、
アニオン;及び
式A又はBに従って環状リン部分に結合したカチオン
を含み、
【化1】
式中、
CAT
+は、ピロリジニウム、ピペルジニウム、アゼパニウム、オニウム、イミダゾリウム、ピリジン、又は環員として窒素、酸素、ケイ素若しくは硫黄を含む1~3個のヘテロ原子を有する5員又は6員の複素環式環であり、
R及びR
1は、独立して、水素、C
1~C
8アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルキニル、アルキルシロキシ、フェニル、ベンジル、シリル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ、アミノ又はシラン基であり、その中の炭素又は水素原子のいずれかは、任意でハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルキニル、アルキルシロキシ、フェニル、ベンジル、シリル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ、アミノ又はシランでさらに置換され、
Xは、(a)リンカーであって、C
1~C
8アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アルキレンオキシ、エステル、カルボニル、フェニル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ又はアリール基を含み、その中の炭素又は水素原子のいずれかは、任意でハロゲン化物でさらに置換されるリンカー;(b)O若しくはS;又は(c)前記リンカーに結合されたO若しくはSであり、
A
-は、ハロゲン化物、ニトラート、ホスファート、イミド、ボラート、アルミナート、ヒ化物、シアン化物、チオシアナート、ニトライト、ベンゾアート、カルボナート、クロラート、クロライト、クロマート、サルファート、サルファイト、シリカート、チオサルファート、カルコゲニド、プニクトゲニド、クリスタルロジニド(crystallogenide)、オキサラート、アセタート、ホルマート又は水酸化物を含むアニオンである、
イオン液体化合物。
【請求項2】
前記アニオンが、ハロゲン化物、アルミナート、ヒ化物、シアン化物、チオシアナート、ニトライト、ベンゾアート、クロラート、クロライト、クロマート、サルファート、サルファイト、シリカート、チオサルファート、オキサラート、アセタート、ホルマート、水酸化物、ニトラート、ホスファート、イミド、又はボラートを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記オニウムがスルホニウム又はホスホニウムである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
電気エネルギー貯蔵装置の電解質であって、
a)非プロトン性有機溶媒系;
b)金属塩;
c)不動態化添加剤;及び
d)請求項1に記載のイオン液体化合物
を含む、電気エネルギー貯蔵装置の電解質。
【請求項5】
前記アニオンが、ハロゲン化物、アルミナート、ヒ化物、シアン化物、チオシアナート、ニトライト、ベンゾアート、クロラート、クロライト、クロマート、サルファート、サルファイト、シリカート、チオサルファート、オキサラート、アセタート、ホルマート、水酸化物、ニトラート、ホスファート、イミド、又はボラートを含む、請求項4に記載の電解質。
【請求項6】
前記非プロトン性有機溶媒が、開鎖又は環状カルボナート、カルボン酸エステル、ニトライト、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファイト、モノ若しくはポリホスファゼン又はそれらの混合物を含む、請求項4に記載の電解質。
【請求項7】
前記金属塩がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む、請求項4に記載の電解質。
【請求項8】
前記アルカリ金属塩の前記カチオンがリチウム又はナトリウムを含む、請求項7に記載の電解質。
【請求項9】
前記金属塩の前記カチオンがアルミニウム又はマグネシウムを含む、請求項4に記載の電解質。
【請求項10】
前記不動態化添加剤が、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含む、請求項4に記載の電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月19日に出願され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/820,609号の出願日の利益を主張する。
【0002】
本開示は、カチオンが環状リン部分を含むイオン液体、及びイオン液体を含む電気化学電池用電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
室温イオン液体(IL)の合成及び電気化学分析における最近の進歩は、この独特な種類の材料の、次世代リチウムイオン電池用の電解質としての将来性を確立した。ILは、100℃未満の融点を有する有機塩であり、一般に、嵩高いカチオン及び無機アニオンからなる。大きなカチオンサイズは、電荷の非局在化及びスクリーニングをもたらし、その結果、格子エネルギーが減少し、それによって融点又はガラス転移温度が低下する。ILは、無視できる蒸気圧、非燃焼性、良好な室温イオン伝導性、広い電気化学窓、並びに好ましい化学的及び熱的安定性などの固有の物理化学的特性を有する。これらの特性は、リチウム電池用のILベース電解質を提供するために望ましい。
【0004】
しかしながら、誤用条件下又は通常条件下でさえ、リチウムイオン電池の可燃性などの安全上の課題が依然として存在する。Chi-Cheung Suらは、環状リン化合物を含む電解質組成物の使用を教示しているが、イオン液体、又は環状リン部分を含む部分に共有結合したイオン液体の使用については言及していない。したがって、リチウムイオン電池に難燃性能を付与するために、新規なイオン液体を組み込む必要がある。また、Liイオンカソードからより多くの容量を引き出すために、動作電圧を上げる必要がある。しかしながら、現世代の電解質は、4.2Vを超えると安定しない。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、アニオン及びカチオンを含み、カチオンが少なくとも1つの環状リン部分を有する、イオン液体に関する。
【0006】
本開示の一態様によれば、蓄電装置で使用するための電解質であって、非プロトン性有機溶媒と、金属塩と、不動態化添加剤と、少なくとも1つの環状リン部分を含むイオン液体化合物とを含む電解質が提供される。
【0007】
本開示の別の態様によれば、電気エネルギー貯蔵装置内の電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒と、金属塩と、不動態化添加剤と、少なくとも1つの環状リン部分を含むイオン液体化合物とを含み、有機溶媒は、開鎖又は環状カルボナート、カルボン酸エステル、ニトライト、エーテル、スルホン、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファート、ホスファイト、モノ若しくはポリホスファゼン、又はそれらの混合物である。
【0008】
本開示の別の態様によれば、電気エネルギー貯蔵装置内の電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒と、金属塩と、不動態化添加剤と、少なくとも1つの環状リン部分を含むイオン液体化合物とを含み、金属塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、アルミニウム又はマグネシウムである。金属塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり得る。
【0009】
本開示の別の態様によれば、電気エネルギー貯蔵装置内の電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒と、金属塩と、不動態化添加剤と、少なくとも1つの環状リン部分を含むイオン液体化合物とを含み、不動態化添加剤は、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含む化合物、カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含む。
【0010】
本開示のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を検討することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つのアニオンを含み、少なくとも1つのカチオンは、少なくとも1つの環状リン部分に共有結合しているイオン液体化合物に関する。
【0012】
一実施形態では、電気エネルギー貯蔵装置の電解質は、a)非プロトン性有機溶媒系;b)金属塩;c)不動態化添加剤;及びd)少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つのアニオンを含むイオン液体化合物を含み、ここで少なくとも1つのカチオンは、少なくとも1つの環状リン部分に共有結合している。
【0013】
一実施形態では、イオン液体化合物はアニオン;及び式A又はBに従って環状リン部分に結合したカチオンを含み、
【化1】
式中、
CAT
+は、ピロリジニウム、ピペルジニウム、アゼパニウム、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジン、又は環員として窒素、酸素、ケイ素若しくは硫黄を含む1~3個のヘテロ原子を有する5員又は6員の複素環式環であり、
R及びR
1は、独立して、水素、C
1~C
8アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルキニル、アルキルシロキシ、フェニル、ベンジル、シリル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ、アミノ又はシラン基であり、その中の炭素又は水素原子のいずれかは、任意でハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルキニル、アルキルシロキシ、フェニル、ベンジル、シリル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ、アミノ又はシランでさらに置換され、
Xは、(a)リンカーであって、C
1~C
8アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、エステル、カルボニル、フェニル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ又はアリール基を含み、その中の炭素又は水素原子のいずれかは、任意でハロゲン化物でさらに置換されるリンカー;(b)O、S、N、若しくはC;又は(c)リンカーに結合されたO、S、N、若しくはCである。
【0014】
本開示による適切なアニオン(A-)としては、ハロゲン化物(例えば、Cl、Br)、ニトラート(例えば、NO3)、ホスファート(例えば、PF6、TFOP)、イミド(例えば、TFSI、BETI)、ボラート(例えば、BOB、BF4)、アルミナート、ヒ化物、シアン化物、チオシアナート、ニトライト、ベンゾアート、カルボナート、クロラート、クロライト、クロマート、サルファート、サルファイト、シリカート、チオサルファート、カルコゲニド、プニクトゲニド、クリスタルロジニド(crystallogenide)、オキサラート、アセタート、ホルマート、又は水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本開示は、環状リン部分ベースのカチオンを合成する方法、及びそのような官能化カチオンの、電気化学電池用のイオン液体中での使用をさらに含む。これらの化合物は、より大きな熱安定性を電解質にもたらす。
【0016】
好適な電解質金属塩としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。一実施形態では、アルカリ金属塩のカチオンは、リチウム又はナトリウムを含む。一実施形態では、金属塩のカチオンは、アルミニウム又はマグネシウムを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、電解質は、イオン液体に加えてリチウム塩を含む。例えば、Li[CF3CO2];Li[C2F5CO2];Li[ClO4];Li[BF4];Li[AsF6];Li[PF6];Li[PF2(C2O4)2];Li[PF4C2O4];Li[CF3SO3];Li[N(CP3SO2)2];Li[C(CF3SO2)3];Li[N(SO2C2F5)2];アルキルフルオロリン酸リチウム;Li[B(C2O4)2];Li[BF2C2O4];Li2[B12Z12-jHj];Li2[B10X10-j’Hj’];又はそれらの任意の2種以上の混合物を含む、多様なリチウム塩を使用することができ、式中、Zは、それぞれの発生時に独立したハロゲンであり、jは0~12の整数であり、j’は1~10の整数である。
【0018】
本電解質のいくつかの用途、例えばリチウムイオン電池への配合では、非プロトン性溶媒を本イオン液体と組み合わせて、電解質の粘度を低下させ、導電率を向上させる。最も適切な非プロトン性溶媒は、交換可能なプロトンを欠き、環状炭酸エステル、線状炭酸エステル、リン酸エステル、オリゴエーテル置換シロキサン/シラン、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物、シロキサン、リン酸エステル、ホスファート、ホスファイト、モノ又はポリホスファゼンなどを含む。これらの溶媒は、単独で、又は少なくとも2つ以上を混合して使用され得る。
【0019】
好適な非プロトン性有機溶媒には、開鎖又は環状カルボナート、カルボン酸エステル、ニトライト、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファイト、モノ若しくはポリホスファゼン又はそれらの混合物が含まれる。
【0020】
電解質システムを形成するための非プロトン性溶媒又は担体の例には、限定されないが、ジメチルカルボナート、エチルメチルカルボナート、ジエチルカルボナート、メチルプロピルカルボナート、エチルプロピルカルボナート、ジプロピルカルボナート、ビス(トリフルオロエチル)カルボナート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カルボナート、トリフルオロエチルメチルカルボナート、ペンタフルオロエチルメチルカルボナート、ヘプタフルオロプロピルメチルカルボナート、パーフルオロブチルメチルカルボナート、トリフルオロエチルエチルカルボナート、ペンタフルオロエチルエチルカルボナート、ヘプタフルオロプロピルエチルカルボナート、パーフルオロブチルエチルカルボナート他、フッ素化オリゴマー、メチルプロピオナート、エチルプロピオナート、ブチルプロピオナート、ジメトキシエタン、トリグライム、ジメチルビニレンカルボナート、テトラエチレングリコール、ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、トリフェニルホスファート、トリブチルホスファート、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、2-エトキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2-5,4-5,6-5トリアザトリホスフィニン、トリフェニルホスファイト、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルビニルスルホン、アリルメチルスルホン、ジビニルスルホン、フルオロフィネルメチルスルホン、及びガンマ-ブチロラクトンが含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態では、電解質は、電極を劣化から保護するための添加剤をさらに含む。したがって、本技術の電解質は、負極の表面上で還元又は重合されて、負極の表面上に不動態化膜を形成する添加剤を含んでもよい。同様に、電解質は、正極の表面上で酸化又は重合されて、正極の表面上に不動態化膜を形成することができる添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、本技術の電解質は、2種類の添加剤の混合物をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、添加剤は、少なくとも1つの酸素原子及び少なくとも1つのアリール、アルケニル又はアルキニル基を含む置換又は非置換の直鎖、分岐又は環状炭化水素である。このような添加剤から形成される不動態化膜はまた、添加剤が少なくとも1つの酸素原子を含む、置換アリール化合物又は置換若しくは非置換ヘテロアリール化合物から形成されてもよい。あるいは、2つの添加剤を組み合わせて使用してもよい。いくつかのそのような実施形態では、1つのイオン及び他の添加剤は、アノード表面を不動態化して、アノードでの金属イオンの還元を防止又は低減するために選択され得る。
【0023】
好適な不動態化添加剤としては、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物又はそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
代表的な添加剤には、グリオキサールビス(ジアリルアセタール)、テトラ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、1,2-ジビニルフロアート、1,3-ブタジエンカルボナート、1-ビニルアゼチジン-2-オン、1-ビニルアジリジン-2-オン、1-ビニルピペリジン-2-オン、1-ビニルピロリジン-2-オン、2,4-ジビニル-1,3-ジオキサン、2-アミノ-3-ビニルシクロヘキサノン、2-アミノ-3-ビニルシクロプロパノン、2アミノ-4-ビニルシクロブタノン、2-アミノ-5-ビニルシクロペンタノン、2-アリールオキシ-シクロプロパノン、2-ビニル-[1,2]オキサゼチジン、2ビニルアミノシクロヘキサノール、2-ビニルアミノシクロプロパノン、2-ビニルオキセタン、2-ビニルオキシ-シクロプロパノン、3-(N-ビニルアミノ)シクロヘキサノン、3,5-ジビニルフロアート、3-ビニルアゼチジン-2-オン、3ビニルアジリジン-2-オン、3-ビニルシクロブタノン、3-ビニルシクロペンタノン、3-ビニルオキサジリジン、3-ビニルオキセタン、3-ビニルピロリジン-2-オン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、アクロレインジエチルアセタール、アクロレインジメチルアセタール、4,4-ジビニル-3-ジオキソラン-2-オン、4-ビニルテトラヒドロピラン、5-ビニルピペリジン-3-オン、アリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノオキシド、ブチル-ビニル-エーテル、ジヒドロピラン-3-オン、ジビニルブチルカルボナート、ジビニルカルボナート、ジビニルクロトナート、ジビニルエーテル、ジビニルエチレンカルボナート、ジビニルエチレンシリカート、ジビニルエチレンサルファート、ジビニルエチレンサルファイト、ジビニルメトキシピラジン、ジビニルメチルホスファート、ジビニルプロピレンカルボナート、エチルホスファート、メトキシ-o-テルフェニル、メチルホスファート、オキセタン-2-イル-ビニルアミン、オキシラニルビニルアミン、ビニルカルボナート、ビニルクロトナート、ビニルシクロペンタノン、ビニルエチル-2-フロアート、ビニルエチレンカルボナート、ビニルエチレンシリカート、ビニルエチレンサルファート、ビニルエチレンサルファイト、ビニルメタクリラート、ビニルホスファート、ビニル-2-フロアート、ビニルシクロプロパノン、ビニルエチレンオキシド、β-ビニル-γ-ブチロラクトン、又はそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、添加剤は、F、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メトキシ、アリルオキシ基又はそれらの組み合わせで置換されたシクロトリホスファゼンであり得る。例えば、添加剤は、(ジビニル)-(メトキシ)(トリフルオロ)シクロトリホスファゼン、(トリビニル)(ジフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン、(ビニル)(メトキシ)(テトラフルオロ)シクロトリホスファゼン、(アリールオキシ)(テトラフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン、又は(ジアリールオキシ)(トリフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン化合物、又はそのような化合物の2つ以上の混合物であり得る。いくつかの実施形態では、添加剤は、ビニルエチレンカルボナート、ビニルカルボナート、又は1,2-ジフェニルエーテル、又はそのような化合物の任意の2つ以上の混合物である。
【0025】
他の代表的な添加剤としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピロリル、オキサゾリル、フラニル、インドリル、カルバゾリル、イミダゾリル、チオフェニル、フッ素化カルボナート、スルトン、スルフィド、無水物、シラン、シロキシ、ホスファート又はホスファイト基を有する化合物が挙げられる。例えば、添加剤は、フェニルトリフルオロメチルスルフィド、フルオロエチレンカルボナート、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1-プロペン1,3-スルトン、1,3-プロパンスルトン、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-[(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル]、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-[[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ]メチル]-、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカルボナート、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、オクタメチルトリシロキサン、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、トリス(1H.1H-ヘプタフルオロブチル)ホスファート、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(3,3,3-トリフルオロプロピルジメチルシロキシ)シラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリス(トリメチルシリル)ボラート、トリプロピルホスファート、ビス(トリメチルシリルメチル)ベンジルアミン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,3-ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスファート、トリス(トリメチルシリル)ホスファート、トリス(1H.1H,5H-オクタフルオロペンチル)ホスファート、トリフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリ-p-トリルホスファイト、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)ホスファート、無水コハク酸、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、トリプロピルトリチオホスファート、アリールオキシピロール、アリールオキシエチレンサルファート、アリールオキシピラジン、アリールオキシ-カルバゾールトリビニルホスファート、アリールオキシ-エチル-2-フロアート、アリールオキシ-o-テルフェニル、アリールオキシ-ピリダジン、ブチル-アリールオキシ-エーテル、ジビニルジフェニルエーテル、(テトラヒドロフラン-2-イル)-ビニルアミン、ジビニルメトキシビピリジン、メトキシ-4-ビニルビフェニル、ビニルメトキシカルバゾール、ビニルメトキシピペリジン、ビニルメトキシピラジン、ビニルメチルカルボナート-アリラニソール、ビニルピリダジン、1-ジビニルイミダゾール、3-ビニルテトラヒドロフラン、ジビニルフラン、ジビニルメトキシフラン、ジビニルピラジン、ビニルメトキシイミダゾール、ビニルメトキシピロール、ビニル-テトラヒドロフラン、2,4-ジビニルイソオキサゾール、3,4ジビニル-1-メチルピロール、アリールオキシオキセタン、アリールオキシ-フェニルカルボナート、アリールオキシ-ピペリジン、アリールオキシ-テトラヒドロフラン、2-アリール-シクロプロパノン、2-ジアリールオキシ-フロアート、4-アリルアニソール、アリールオキシ-カルバゾール、アリールオキシ-2-フロアート、アリールオキシ-クロトナート、アリールオキシ-シクロブタン、アリールオキシ-シクロペンタノン、アリールオキシ-シクロプロパノン、アリールオキシ-シクロホスファゼン、アリールオキシ-エチレンシリカート、アリールオキシ-エチレンサルファート、アリールオキシ-エチレンサルファイト、アリールオキシ-イミダゾール、アリールオキシメタクリラート、アリールオキシホスファート、アリールオキシピロール、アリールオキシキノリン、ジアリールオキシシクロトリホスファゼン、ジアリールオキシエチレンカルボナート、ジアリールオキシフラン、ジアリールオキシメチルホスファート、ジアリールオキシ-ブチルカルボナート、ジアリールオキシ-クロトナート、ジアリールオキシ-ジフェニルエーテル、ジアリールオキシ-エチルシリカート、ジアリールオキシ-エチレンシリカート、ジアリールオキシ-エチレンサルファート、ジアリールオキシエチレンサルファイト、ジアリールオキシ-フェニルカルボナート、ジアリールオキシ-プロピレンカルボナート、ジフェニルカルボナート、ジフェニルジアリールオキシシリカート、ジフェニルジビニルシリカート、ジフェニルエーテル、ジフェニルシリカート、ジビニルメトキシジフェニルエーテル、ジビニルフェニルカルボナート、メトキシカルバゾール、又は2,4-ジメチル-6-ヒドロキシ-ピリミジン、ビニルメトキシキノリン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ピリジン、ビニルピリジン、インドール、ビニルインドール、トリエタノールアミン、1,3-ジメチルブタジエン、ブタジエン、ビニルエチレンカルボナート、ビニルカルボナート、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピペリジン、ビニルピペリジン、ピリミジン、ビニルピリミジン、ピラジン、ビニルピラジン、イソキノリン、ビニルイソキノリン、キノキサリン、ビニルキノキサリン、ビフェニル、1,2-ジフェニルエーテル、1,2-ジフェニルエタン、オテルフェニル、N-メチルピロール、ナフタレン、又はそのような化合物の任意の2つ以上の混合物であり得る。
【0026】
一実施形態では、本技術の電解質は、非プロトン性ゲルポリマー担体/溶媒を含む。好適なゲルポリマー担体/溶媒としては、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファジン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリエーテルグラフトポリシロキサン、前述したものの誘導体、前述したもののコポリマー、前述したものの架橋及び網目構造、前述したもののブレンドなどが挙げられ、これに好適なイオン性電解質塩が添加される。他のゲルポリマー担体/溶媒としては、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、スルホン化ポリイミド、過フッ素化膜(ナフィオン樹脂)、ジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ビス-(メチルアクリラート)、ポリエチレングリコール-ビス(メチルメタクリラート)、前述したものの誘導体、前述したもののコポリマー、並びに前述したものの架橋及び網目構造から誘導されるポリマーマトリックスから調製されるものが挙げられる。
【0027】
機能性イオン液体、及び塩含有電解液は、導電性及び有機溶媒への溶解性が高く、電気化学装置用の電解液としての使用に適している。電気化学装置の例は、電気二重層キャパシタ、二次電池、色素増感太陽電池、エレクトロクロミック装置及びコンデンサであり、このリストは限定するものではない。電気化学装置として特に適しているのは、電気二重層キャパシタ及び二次電池、例えばリチウムイオン電池である。
【0028】
さらに別の態様では、カソードと、アノードと、本明細書に記載のイオン液体を含む電解質とを含む電気化学装置が提供される。一実施形態では、電気化学装置はリチウム二次電池である。いくつかの実施形態では、二次電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、ナトリウムイオン電池又はマグネシウム電池である。いくつかの実施形態では、電気化学装置は、キャパシタなどの電気化学電池である。いくつかの実施形態では、キャパシタは、非対称キャパシタ又はスーパーキャパシタである。いくつかの実施形態では、電気化学電池は、一次電池である。いくつかの実施形態では、一次電池は、リチウム/MnO2電池又はLi/ポリ(一フッ化炭素)電池である。いくつかの実施形態では、電気化学電池は、太陽電池である。
【0029】
好適なカソードには、これらに限定されないが、リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素被覆カンラン石、LiFePO4、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCoyMetzO2、LiMn0.5Ni0.5O2、LiMn0.3Co0.3Ni0.3O2、LiMn2O4、LiFeO2、Li1+x’NiαMnβCoγMet’δO2-z’Fz’、An’B2(XO4)3(NASICON)、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、多硫化物、リチウム一フッ化炭素(LiCFxとしても知られる)又はそれらの任意の2つ以上の混合物などが含まれ、ここで、Metは、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn又はCoであり、Met’は、Mg、Zn、Al、Ga、B、Zr又はTiであり、Aは、Li、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnであり、Bは、Ti、V、Cr、Fe又はZrであり、Xは、P、S、Si、W又はMoであり、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x’≦0.4、0≦α≦1、0≦β≦1、0≦γ≦1、0≦δ≦0.4、0≦z’≦0.4、かつ0≦n’≦3である。いくつかの実施形態によれば、スピネルは、Li1+xMn2-zMet’’’yO4-mX’nの式を有するスピネルマンガン酸化物であり、式中、Met’’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni又はCoであり、X’は、S又はFであり、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、かつ0≦n≦0.5である。他の実施形態では、カンラン石は、Li1+xFe1zMet’’yPO4-mX’nの式を有し、式中、Met’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、Mn又はCoであり、X’は、S又はFであり、0≦x≦0.3、0 0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5かつ0≦n≦0.5である。
【0030】
好適なアノードには、リチウム金属、黒鉛材料、無定形炭素、Li4Ti5O12、スズ合金、ケイ素合金、金属間化合物、又はそのような材料の任意の2つ以上の混合物などが含まれる。好適な黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)及び黒鉛繊維、並びに任意の無定形炭素材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、アノード及びカソードは、多孔質セパレータによって互いから分離される。
【0031】
リチウム電池用セパレータは、多くの場合、マイクロポーラスポリマー膜である。膜を形成するためのポリマーの例としては、ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、又はそのようなポリマーの任意の2つ以上のコポリマー若しくはブレンドが挙げられる。いくつかの例では、セパレータは、電子ビーム処理されたマイクロポーラスポリオレフィンセパレータである。電子処理により、セパレータの変形温度を改善することができ、したがって、セパレータの高温での性能を向上させることができる。追加的又は代替的に、セパレータはシャットダウンセパレータであってもよい。シャットダウンセパレータは、電気化学電池が最大約130℃の温度で動作できるように、約130℃を超えるトリガー温度を有し得る。
【0032】
例-Pyr12O-DOP PF6の合成:
【化2】
工程1:
撹拌棒、熱電対、水冷コンデンサ及び窒素導入口を備えた100mLの三口丸底フラスコ(RBF)に、18mLのテトラヒドロフラン(THF)中の2-クロロ-1,3,2-ジオキサホスホラン2-オキシドを入れた。フラスコを氷水浴に入れ、フラスコの内部温度を4℃未満に保った。次いで、5mlのTHF中のトリエチルアミン(Et3N)をフラスコに加えた。氷水浴中で撹拌しながら、5mLのTHF中の1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジンを混合物に添加し、20℃までの発熱量を監視した。反応混合物を氷水浴中で30分間撹拌している間に、いくらかの白色固体が形成された。混合物を室温までゆっくり加温し、4時間撹拌した。生成された副生成物を濾別し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。
工程2:四級化
次いで、濾液を10mLのジクロロメタン(DCM)を含むRBFに添加した。4mLのDCM中のヨウ化メチルをピペットでこのフラスコに添加した。反応混合物が濁り、淡黄色の油が形成された。混合物を室温で一晩撹拌した。DCM層をデカントし、残りの黄色油をDCMで2回洗浄した。油をロータリーエバポレーターで濃縮した。
油では、以下のプロトンNMR(DMSO、500MHz)ピークが記録された。
【数1】
工程3:メタセシス
油を10mLの水を含有する100mLのRBFに加え、続いてヘキサフルオロリン酸カリウムの水溶液に加えた。2つの溶液を合わせると、白色の濁った懸濁液が急速に形成され、ボトルの底部に黄色の油塊が堆積した。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。水層をデカントした。粗製油をさらにDCMで2回洗浄し、高真空下で数時間乾燥させた。残ったものが、Pyr12O-DOP PF6である。
Pyr12O-DOP PF6では、以下のプロトン、フッ素及びリンNMR(DMSO、500MHz)ピークが記録された。
【数2】
以下のFTIRピークも記録された。
FTIR:3644.70;1265.18;1069.14,1022.90,986.34;825.11;555.23cm
-1
【0033】
本明細書では様々な実施形態を詳細に図示及び説明したが、本開示の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される開示の範囲内にあると見なされることは当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】