(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】微粒子を濾過するための触媒物品及びその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220428BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20220428BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220428BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20220428BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220428BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220428BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 220
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
F01N3/28 301Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551902
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 IB2020052916
(87)【国際公開番号】W WO2020201953
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】グッドウィン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン、サラ
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が提供される。触媒物品は、入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、複数の入口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、出口端又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合い、第1及び第2の触媒組成物は、それぞれ独立して、第1のD90を有する粒子状酸素吸蔵成分(OSC)と、第2のD90を有する粒子状無機酸化物と、を含み、i)第1のD90は1ミクロン未満であり、第2のD90は1~20ミクロンである、又はii)第2のD90は1ミクロン未満であり、第1のD90は1~20ミクロンである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理する触媒物品であって、
入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、前記入口端から延びる複数の入口チャネルと、前記出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、
前記複数の入口チャネルは、Lの少なくとも50%にわたり、前記入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、前記複数の出口チャネルは、Lの少なくとも50%にわたり、前記出口端又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、前記第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合い、
前記第1及び第2の触媒組成物は、それぞれ独立して、第1のD90を有する粒子状酸素吸蔵成分(OSC)と、第2のD90を有する粒子状無機酸化物と、を含み、
i)前記第1のD90は1ミクロン未満であり、前記第2のD90は1~20ミクロンである、
又は
ii)前記第2のD90は1ミクロン未満であり、前記第1のD90は1~20ミクロンである、触媒物品。
【請求項2】
前記粒子状OSCは第1のD10を有し、前記粒子状無機酸化物は第2のD10を有し、
i)前記第1のD90が1ミクロン未満であり、前記第2のD90が1~20ミクロンである場合、前記第1のD10は少なくとも100nmであり、前記第2のD10は少なくとも500nmである、
又は
ii)前記第2のD90が1ミクロン未満であり、前記第1のD90が1~20ミクロンである場合、前記第2のD10は少なくとも100nmであり、前記第1のD10は少なくとも500nmである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
i)前記第1のD90は1ミクロン未満であり、前記第2のD90は5~20ミクロンである、又は
ii)前記第2のD90は1ミクロン未満であり、前記第1のD90は5~20ミクロンである、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大20%、最も好ましくはLの最大10%と重なり合う、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記粒子状OSCは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記粒子状無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物は、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される第1の白金族金属(PGM)成分を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物は、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含み、好ましくは、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属がバリウム又はストロンチウムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第1及び第2の触媒組成物は同じである、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物の粒子状OSC対粒子状無機酸化物の重量比は、10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3である、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物は、基材上に直接提供される、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
火花点火式エンジンの排気マニホルドと流体連絡する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品を含む排気ガス処理システム。
【請求項13】
火花点火式内燃機関から放出された排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項14】
23nm未満の粒子の放出を低減するための、特に10~23nmの粒子の放出を低減するための、排気ガス処理システムにおける請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品の使用。
【請求項15】
前記使用により、23nm未満の粒子の放出の数が少なくとも20%が減少される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガソリンエンジンからの排気ガス放出を処理するための触媒物品、特に23nm未満のサイズを有する粒子状物質放出を処理するのに好適なウォールフローフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式エンジンは、火花点火を用いて炭化水素及び空気混合物の燃焼を引き起こす。これとは異なり、圧縮着火式エンジンは、炭化水素を圧縮空気中に噴射することによって炭化水素の燃焼を引き起こす。火花点火式エンジンは、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノールを含む含酸素添加剤とブレンドされたガソリン燃料、液体石油ガス、又は圧縮天然ガスを燃料とすることができる。火花点火式エンジンは、化学量論的に運転されるエンジン又はリーンバーン運転エンジンであることができる。
【0003】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、典型的には、1つ以上の白金族金属、特に白金、パラジウム、及びロジウムからなる群から選択されるものを含有する。
TWCは、3つの反応を同時に触媒することを意図している:
(i)一酸化炭素の二酸化炭素への酸化、
(ii)未燃炭化水素の二酸化炭素及び水への酸化、並びに
(iii)窒素酸化物の窒素及び酸素への単体化。
【0004】
これらの3つの反応は、TWCが化学量論的点で又はその付近で作動するエンジンから排気ガスを受け取ると、最も効率的に生じる。当該技術分野において周知のように、火花点火式(例えば火花点火)内燃機関においてガソリン燃料が燃焼したときに放出される一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)の量は、主に燃焼筒内の空燃比に影響を受ける。化学量論的にバランスのとれた組成を有する排気ガスは、酸化性ガス(NOx及びO2)及び還元性ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に一致しているものである。この化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成を生じる空燃比は、典型的には14.7:1として与えられる。
【0005】
理論的には、化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成において、O2、NOx、CO、及びHCを、CO2、H2O、及びN2(及び残留O2)に完全に変換できる必要があり、これがTWCの役割である。したがって、理想的には、燃焼混合物の空燃比が化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成を生成するような方法でエンジンを動作させる必要がある。
【0006】
排気ガスの酸化性ガスと還元性ガスとの間の組成バランスを定義する方法は、排気ガスのラムダ(λ)値であり、式(1)に従って定義することができる:
実際のエンジン空燃比/化学量論的エンジン空燃比、(1)
ラムダ値が1の場合、化学量論的にバランスのとれた(又は化学量論的)排気ガス組成を表し、ラムダ値が>1の場合、過剰のO2及びNOxを表し、組成は「リーン」と表現され、ラムダ値が<1の場合、過剰のHC及びCOを表し、組成は「リッチ」と表現される。これは、空燃比を生じる排気ガス組成に応じて、「化学量論的」、「リーン」又は「リッチ」としてエンジンが動作する空燃比:したがって、化学量論的に動作するガソリンエンジン又はリーンバーンガソリンエンジンでの空燃比を指すこともまた、当該技術分野において一般的である。
【0007】
TWCを使用したNOxのN2への還元は、排気ガス組成が化学量論的にリーンであるときは効率が低下することを理解されたい。同様に、TWCは、排気ガス組成がリッチであるとき、CO及びHCを酸化する能力が低くなる。したがって、課題は、TWCに流入する排気ガスの組成を、可能な限り化学量論的組成に近いまま維持することである。
【0008】
当然のことながら、エンジンが定常状態にあるとき、空燃比が化学量論的であることを保証することは比較的容易である。しかしながら、エンジンが車両を推進するために使用される場合、必要とされる燃料量は、運転者がエンジンにかける負荷要求に応じて一時的に変化する。これにより、三元変換のために化学量論的な排気ガスが生成されるように空燃比を制御することが特に困難になる。実際には、排気ガス酸素(EGO)(又はラムダ)センサから排気ガス組成に関する情報を受け取るエンジン制御ユニット、いわゆる、閉ループフィードバックシステムによって、空燃比を制御する。このようなシステムの特徴は、空燃比の調節に関連するタイムラグがあるため、わずかにリッチな化学量論的(又は制御セット)点とわずかにリーンとの間で、空燃比が振動する(又は摂動する)ことである。この摂動は、空燃比の振れ幅及び応答周波数(Hz)によって特徴付けられる。
【0009】
典型的なTWC中の活性成分は、高表面積酸化物上に担持されたロジウムと組み合わせた白金及びパラジウム、又は更にはパラジウムのみ(ロジウムなし)の一方又は両方、並びに酸素吸蔵成分を含む。
【0010】
排気ガス組成が設定点よりわずかにリッチな場合、未反応CO及びHCを消費するため、すなわち反応をより化学量論的にするために少量の酸素が必要とされる。逆に、排気ガスがわずかにリーンになると、過剰な酸素を消費する必要がある。これは、摂動中に酸素を放出又は吸収する酸素吸蔵成分の開発によって達成された。最新のTWCにおける最も一般的に使用される酸素吸蔵成分(oxygen storage component、OSC)は、酸化セリウム(CeO2)又はセリウムを含有する混合酸化物、例えば、Ce/Zr混合酸化物である。
【0011】
ガソリン燃料を火花点火式で燃焼させたときに放出される一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)に加えて(これらは全てTWC触媒で処理できる)、粒子状物質の排出を考慮する必要がある。
【0012】
環境PMは、ほとんどの著者によって、空気力学的直径に基づいて次のカテゴリに分類される(空気力学的直径は、測定された粒子と同じ空気中の沈降速度の1g/cm3密度球の直径として定義される):
(i)PM-10-空気力学的直径が10μm未満の粒子、
(ii)直径2.5μm未満の微粒子(PM-2.5)、
(iii)直径0.1μm(又は100nm)未満の超微粒子、と、
(iv)直径50nm未満であることを特徴とするナノ粒子。
【0013】
1990年代半ば以降、内燃機関から排出される粒子状物質の粒子サイズ分布は、微粒子及び超微粒子の健康への悪影響の可能性があるため、ますます注目を集めている。環境空気中のPM-10粒子状物質の濃度は、米国の法律によって規制されている。PM-2.5の新しい追加の環境空気品質基準は、人間の死亡率と2.5μm未満の微粒子の濃度との間に強い相関関係があることを示した健康調査の結果として、1997年に米国で導入された。
【0014】
ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンで生成されたナノ粒子は、より大きなサイズの粒子状物質よりも人間の肺に深く浸透すると理解されおり、その結果、2.5~10.0μmの範囲の粒子状物質に関する研究結果から推定されるように、それらはより大きな粒子よりも有害であると考えられているため、関心は今やナノ粒子に移行している。
【0015】
ディーゼル粒子状物質のサイズ分布は、粒子の核形成及び凝集のメカニズムに対応する確立されたバイモーダル特性を有する。ディーゼルPMは、質量をほとんど保持しない多数の小さな粒子で構成されている。ほぼ全てのディーゼル粒子状物質のサイズは1μmを大幅に下回る。すなわち、微粒子(すなわち、1997年の米国法に該当する)、超微粒子、及びナノ粒子の混合物が含まれる。
【0016】
セラミックウォールフローモノリスなどのディーゼル粒子状物質フィルタは、深層濾過及び表面濾過の組み合わせで機能し得ることが理解されており、深層濾過能力が飽和し、粒子状物質層が濾過表面を覆い始めると、より高い煤担持量で濾過ケーキが発生する。深層濾過は、ケーキ濾過よりも濾過効率がやや低く、圧力損失が少ないという特徴がある。
【0017】
火花点火式エンジンによって生成されたPMは、ディーゼル(圧縮着火式)エンジンによって生成されたものと比較して、ごくわずかな蓄積及び粗いモードで、超微細が非常に高い割合であり、これは、大気への放出を防ぐために、火花点火式エンジンの排気ガスからそれを除去することへの課題を提示する。特に、火花点火式エンジンに由来するPMの大部分は、ディーゼルPMのサイズ分布と比較して比較的小さいため、火花点火PM表面タイプのケーキ濾過を促進するフィルタ基材を使用することは実際には不可能であり、これは、必要となるフィルタ基材の平均細孔サイズが比較的小さいと、システム内で非実用的に高い背圧が発生するためである。
【0018】
更に、一般に、一般に火花点火排気ガス中のPMが少ない(そのため、煤ケーキが形成される可能性は低い)ため、関連する排出基準を満たすために、ディーゼルPMをトラップするために設計された従来のウォールフローフィルタを使用して、火花点火式エンジンからのPMの表面型濾過を促進することはできず、火花点火排気ガス温度は一般に高く、酸化によるPMの除去が速くなり得るため、ケーキ濾過によるPM除去の増加が防止される。従来のディーゼルウォールフローフィルタでの火花点火PMの深層濾過も、PMが濾材の細孔径よりも大幅に小さいため困難である。したがって、通常の操作では、コーティングされていない従来のディーゼルウォールフローフィルタは、圧縮着火式エンジンよりも火花点火式エンジンで使用した場合の濾過効率が低くなる。
【0019】
2014年9月1日からのヨーロッパの排出規制(Euro 6)では、ディーゼルとガソリン(火花点火式)との両方の乗用車から排出される粒子の数を制御する必要がある。ガソリンEU小型車の場合、許容限度は次のとおりである:1000mg/kmの一酸化炭素;60mg/kmの窒素酸化物(NOx);100mg/kmの総炭化水素(うち≦68mg/kmは非メタン炭化水素);及び4.5mg/kmの粒子状物質(直接噴射エンジンの場合のみの(PM))。Euro 6には、PM数の標準制限である1kmあたり6.0×1011が設定されているが、相手先ブランド供給業者は2017年まで6×1012km-1の制限を要求し得る。実用的な意味で、法制化されている粒子状物質の範囲は、23nm~3μmである。
【0020】
米国では、2012年3月22日、カリフォルニア州大気資源局(CARB)が、2017年以降のモデルイヤーから、3mg/マイル排出制限を含み、様々な中間レビューがそれを実行可能であるとみなす限り、1mg/マイルの後での導入が可能である、「LEV III」の乗用車、小型トラック、及び中型車に新しい排気基準を採用した。
【0021】
新しいEuro6排出基準は、ガソリン排出基準を満たすための多くの困難な設計上の問題を提示する。特に、全て許容可能な背圧で(例えば、EUドライブサイクルの最大オンサイクル背圧で測定)、PMガソリン(火花点火)排出量を削減し、更に同時に、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び未燃炭化水素(HC)の1つ以上などの非PM汚染物質の排出基準を満たすためのフィルタ、又はフィルタを含む排気システムの設計方法。
【0022】
Euro 6排出基準を満たすために、TWCとフィルタとを組み合わせるための最近の取り組みが数多くある。
【0023】
国際公開第2014125296号は、車両の火花点火式内燃機関用の排気システムを含む火花点火式エンジンを開示している。排気システムは、三方触媒ウォッシュコートでコーティングされた車両の火花点火式内燃機関から放出される排気ガスから粒子状物質を濾過するためのフィルタを含む。ウォッシュコートは、白金族金属及び複数の固体粒子を含み、複数の固体粒子は、少なくとも1つのベース金属酸化物と、セリウムを含む混合酸化物又は複合酸化物である少なくとも1つの酸素吸蔵成分とを含む。セリウム及び/又は少なくとも1つのベース金属酸化物を含む混合酸化物又は複合酸化物は、1μm未満の中央値粒子サイズ(D50)を有する。
【0024】
米国特許出願公開第20090193796号は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む排気ガスを処理するためのガソリン直噴エンジンの下流にある排出処理システムを開示しており、排出処理システムは、粒子状物質トラップ上又は粒子状物質トラップ内にコーティングされた三元変換(TWC)触媒を含む触媒粒子状物質トラップを含む。提供される説明及び実施例では、触媒コーティング(層状又は層状触媒複合体とも呼ばれる)は、所望の貴金属化合物の溶液と少なくとも1つの担体材料(細かく分割された高表面積、高融点金属酸化物など)とのスラリー混合物から調製される。スラリー混合物は、例えば、ボールミル又は他の同様の装置において粉砕され、粒子サイズが約20μm未満、すなわち平均直径[「D50」として知られる]が約0.1~15μmの間である実質的に全ての固体をもたらす。実施例では、アルミナのミリングによる粉砕は、粒子の90%[「D90」として知られる]の粒子サイズが8~10μmになるように行われた。セリア-ジルコニア複合材料の粉砕は、<5μmのD90粒子サイズにミリングすることによって行われた。
【0025】
英国特許第2514875号において、発明者らは、低背圧用途のために、米国特許出願公開第20090193796号に開示されているものなどのコーティングフィルタ用の三元触媒で使用するためのミリングされたセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含むウォッシュコート組成物の使用を検討した。ここで、セリウム/ジルコニウム混合酸化物をミリングすることにより、セリウム/ジルコニウム混合酸化物のD50の減少とともに背圧は減少したが、同時に、特にCO及びNOx排出について、三元触媒活性が大幅に減少したことがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、従来技術の欠点を解決する改善されたTWC触媒フィルタを提供すること、又は少なくともそれに対する商業的に有用な代替物を提供することが目的である。より具体的には、排気ガスの処理を可能にして、微細な23nm未満の粒子状物質の放出に対処することを可能にする触媒物品を提供することが目的である。
【0027】
したがって、第1の実施形態では、火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理する触媒物品であって、
入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、
複数の入口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、出口又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合い、
第1及び第2の触媒組成物は、それぞれ独立して、第1のD90を有する粒子状酸素吸蔵成分(OSC)と、第2のD90を有する粒子状無機酸化物と、を含み、
i)第1のD90は1ミクロン未満であり、第2のD90は1~20ミクロンである、又は
ii)第2のD90は1ミクロン未満であり、第1のD90は1~20ミクロンである、触媒物品を提供する。
【0028】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0029】
本発明者らは、英国特許第2514875号で観察された三元触媒活性の低下の問題は、セリウム/ジルコニウム混合酸化物をミリングする代わりにゾル材料によって提供できるような、セリウム/ジルコニウムの非常に微細な供給源を使用することによって対処できることを見出した。彼らはまた、セリウム/ジルコニウム混合酸化物成分及びアルミナなどの無機酸化物材料の粒子サイズを注意深く選択することにより、背圧を望ましいレベルまで低減できることも発見した。
【0030】
コーティングされたフィルタのより低い背圧を達成し、全体的に良好な濾過効率を維持するために、更なる組成物の研究を行っている間、発明者らは驚くべきことに、粒子サイズD90が<1μmのセリウム/ジルコニウム混合酸化物(OSC材料)のナノ溶液と、D90が1μm~20μm又は「その逆」の第1の無機酸化物との組み合わせは、23nm未満の範囲(10~23nmなど)で排気管の粒子状物質数を減らすという優れた利点を実現することを発見した。
【0031】
この発見の利点は、上記の超微細煤粒子に関連する健康リスクに対処することで明らかであり、最近、International Journal of Environmental Research and Public Health (Int.J.Environ.Res.Public Health 2018,15,304)で十分に参照及び議論されている。確かに、超微粒子の世界的な受け入れ並びに心肺及び中枢神経系の健康問題への影響は、自動車用途の世界的な法規制の強化を推進している。今日の排出制限を超えて、立法者は大気質を更に改善することを目指しており、考慮すべき1つの領域は粒子状物質であり、現在ユーロ6d基準のPN又は粒子状物質数として測定されている。
【0032】
現在、PNの測定要件は23nm以上の粒子に対するものである。測定精度が向上するにつれて法律を厳しくすることを検討する1つの明白な側面は、23nm未満の粒子サイズを検討することである。したがって、記載された発明は、Euro6dを超える粒子状物質排出法の予想される厳格化の技術的課題を解決し、大気中の超微粒子を減少させるという望ましい健康上の利益をもたらすのに役立つ。
【0033】
本発明は、火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理する触媒物品を提供する。本明細書で使用するとき、触媒物品は、排気ガスシステムの成分、特に排気ガスの処理用のTWC触媒を指す。このような触媒物品は、触媒と接触させたガスを処理するための担持触媒を提供する。本明細書に記載の触媒物品は、本明細書に記載の複数の下位成分を含む。
【0034】
触媒物品は、エンジンに密接に結合されていてもよい。「密結合された」とは、触媒物品がエンジンのエキゾーストマニホールドに近接して設置されることを意味する。すなわち、好ましくは、触媒物品は、車両の床下ではなく、エンジンベイ内に設置される。好ましくは、触媒物品は、エンジンマニホールドの下流に設けられる第1の触媒物品である。密結合位置は、エンジンに近接しているため、非常に熱くなっている。
【0035】
物品は、入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備える。ウォールフローフィルタは当技術分野で周知であり、典型的には、複数の入口チャネル及び複数の出口チャネルを有するセラミック多孔質フィルタ基材を含み、各入口チャネル及び各出口チャネルは、多孔質構造のセラミック壁によって部分的に定義され、各入口チャネルは、多孔質構造のセラミック壁によって出口チャネルから分離されている。
【0036】
典型的な長さは、長さ2~12インチ(5.1~30.5cm)、好ましくは長さ3~6インチ(7.6~15.2cm)である。断面は、好ましくは円形であり、典型的には、直径4.66及び5.66インチ(11.8cm及び14.4cm)のフィルタを有してもよい。しかしながら、断面はまた、フィルタを固定する必要がある車両上の空間によっても決定され得る。
【0037】
基材は、セラミック、例えば、炭化ケイ素、コーディエライト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、例えば、針状ムライト(例えば、国際公開第01/16050号を参照)、ポルサイト、Al2O3/Feなどのサーメット、又はその任意の2つ以上のセグメントを含む複合材料であり得る。本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0038】
本発明で使用するためのフィルタの利点は、基材の多孔性とは実質的に無関係であることが理解されよう。多孔率は、多孔質基材中の空隙空間の尺度の百分率であり、排気システム内の背圧に関連しており、概して、多孔率が低いほど、背圧が高くなる。しかしながら、本発明で使用するためのフィルタの多孔度は、典型的には>40%又は>50%であり、50~65%又は55~60%などの45~75%の多孔度を有利に使用することができる。
【0039】
ウォッシュコート多孔質基材の平均孔径は、濾過に重要である。したがって、平均細孔径も比較的大きいため、不十分なフィルタである比較的高い多孔度の多孔質基材を有することが可能である。多孔質フィルタ基材の多孔質構造の表面細孔の平均細孔径は、8~45μm、例えば、8~25μm、10~20μm、又は10~15μmであり得る。細孔サイズなどの基材の特性は当業者に周知であり、適切な測定技術は当業者に知られている。
【0040】
複数の入口チャネルは、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルは、Lの少なくとも50%にわたり、出口又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含む。第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合う。好ましくは、第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大20%、最も好ましくはLの最大10%と重なり合う。最大で80%重なり合っている場合、第1及び第2の組成物のうちの1つは、複数の入口又は出口チャネルの完全なコーティングを提供し得る。
【0041】
重なり合いが最大で20%である場合、第1の触媒組成物は、入口端から(Lの)少なくとも50%及び最大で70%の距離だけ延びる入口チャネル上に提供され得、一方、第2の触媒組成物は、出口端から少なくとも50%及び最大で70%の距離だけ延びる出口チャネル上に提供され得る。重なり合いは最大で20%であるため、第1の触媒組成が、例えば、70%である場合、第2の触媒組成は50%だけ延び得る。
【0042】
あるいは、重なり合いが最大で20%である場合、第1の触媒組成物は、出口端から(Lの)少なくとも50%及び最大で70%の距離だけ延びる入口チャネル上に提供され得、一方、第2の触媒組成物は、入口端から少なくとも50%及び最大で70%の距離だけ延びる出口チャネル上に提供され得る。重なり合いは最大で20%であるため、第1の触媒組成が、例えば、70%である場合、第2の触媒組成は50%だけ延び得る。
【0043】
基材上の第1及び第2の組成物の位置は、使用されるコーティング技術に依存するであろう。コーティングの少なくとも一部は、上記の領域の壁に提供される。例えば、基材をウォッシュコートに浸すだけで、入口端から入口チャネルをコーティングするのは簡単である。ウォッシュコートは、ウォッシュコートの粒子サイズ及び粘度に応じて、コーティング中に基材の細孔に少なくとも部分的に浸透し得る。したがって、この技術によるコーティングの一部が壁内にある場合でも、一部は壁上に残る。
【0044】
国際公開第99/47260号に記載されているジョンソン・マッセイの精密コーティングプロセスなどの技術でコーティングする場合(これは、基材へのウォッシュコートの真空又は圧力引き込みに依存する)、出口チャネルの入口端及び入口チャネルの出口端にコーティングを適用することが可能である。この技術は、基材の細孔内にウォッシュコートを提供するだけでなく、材料を引き抜いて、基材の適用された場所とは反対側の壁にコーティングを提供する。
【0045】
本発明者らはまた、本明細書に記載されるようなウォールフローフィルタへのTWC組成物のゾーン適用が、粒子状物質濾過を更に改善できることを発見した。特に、国際公開第99/47260号に開示されているような真空浸透法でコーティングする場合、ウォールフローフィルタ構造の壁の側面から、ウォッシュコート組成物が、最初に多孔質フィルタ壁を通して接触させられ、それらのいくつかが壁の反対側(2番目)の壁に載るようにする、ウォッシュコート内の粒子を「引っ張る」条件を使用する。
【0046】
非常に驚くべきことに、フィルタ上に配置されたサブミクロン粒子及びミクロンスケール粒子の組み合わせを含むウォッシュコートであり、ウォールフローフィルタの出口チャネルは、壁上にくさび形のプロファイルを有し、くさびの最も厚い端はチャネルのプラグ端にあり、ウォッシュコートも壁内に存在し、従来技術のフィルタよりも効果的に23マイクロメートル未満の範囲のガソリン粒子を濾過することができる。
【0047】
この配置は、申請者の国際公開第2017/056067号とは異なる。国際公開第2017/056067号は、ウォールフローフィルタを長手方向断面で見たときに「くさび」形状で壁上に配置された三方触媒ウォッシュコートを含む触媒ウォールフローフィルタを開示している。すなわち、壁のコーティングの厚さは、ウォールフローフィルタの開水路端の最も厚い端から先細りになる。
【0048】
第1及び第2の触媒組成物は、好ましくは両方ともTWC組成物である。TWC組成物は当該技術分野において周知であり、特定の成分は当業者によって容易に選択され得る。TWCは、典型的には、典型的にセリアを含む酸素吸蔵成分(OSC)と共に、高表面積支持体(すなわち、無機酸化物)上に提供される1つ以上の白金族金属(PGM)を含む。TWC組成物は、概ね、基材上にウォッシュコートで提供される。
【0049】
第1及び第2の触媒組成物の各々は、独立して、粒子状酸素吸蔵成分(OSC)と、粒子状無機酸化物と、を含む。粒子状物質とは、成分が粒子サイズ分布を有することを意味する。粒子サイズ分布は、D10、D50、及びD90の測定値によって特徴付けることができる。いずれの場合も、数値は、記載されている値よりも小さい粒子のパーセンテージ量を示す。言い換えると、100ミクロンのD90は、粒子の90%が直径100ミクロンよりも小さいことを意味する。D10及びD90を知ることにより、粒子の分布における粒子の範囲を明確に定義することができる。
【0050】
D10、D50及びD90値を得るために必要な粒径測定値は、体積ベースの手法であるMalvern Mastersizer 2000を使用したレーザー回折粒径分析によって得られ(すなわち、D50及びD90は、DV50及びDV90(又はD(v,0.50)及びD(v,0.90)とも称され得る)、数学的Mie理論モデルを適用して粒径分布を求める。レーザー回折システムは、球近似に基づいて粒子の直径を求めることによって機能する。希釈されたウォッシュコート試料は、界面活性剤を含まない蒸留水中において、35ワットで30秒間、超音波処理することによって調製した。
【0051】
第1及び第2の触媒組成物は、それぞれ独立して、第1のD90を有する粒子状酸素吸蔵成分(OSC)と、第2のD90を有する粒子状無機酸化物と、を含み、
i)第1のD90は1ミクロン未満であり、第2のD90は1~20ミクロンである、又は
ii)第2のD90は1ミクロン未満であり、第1のD90は1~20ミクロンである。
【0052】
すなわち、TWC組成物に典型的に存在する2つの酸化物成分のうち、1つは、従来の粒子サイズよりもはるかに小さいものが提供される。このより細かいサイズは、非常に細かい粒子状物質と比較して、予想外に濾過特性を改善するようである。
【0053】
好ましくは、i)第1のD90が1ミクロン未満であり、第2のD90が5~20ミクロンである、又はii)第2のD90が1ミクロン未満であり、第1のD90が5~20ミクロンである。より好ましくは、より大きな粒子サイズ分布は、5~10ミクロンである。
【0054】
好ましくは、粒子状OSCが第1のD10を有し、粒子状無機酸化物が第2のD10を有し、
i)第1のD90が1ミクロン未満であり、第2のD90が1~20ミクロンである場合、第1のD10は少なくとも100nmであり、第2のD10は少なくとも500nmである(好ましくは少なくとも1ミクロン)、又は
ii)第2のD90が1ミクロン未満であり、第1のD90が1~20ミクロンである場合、第2のD10は少なくとも100nmであり、第1のD10は少なくとも500nmである(好ましくは少なくとも1ミクロン)。
【0055】
D10及びD90値による粒子サイズの定義は、粒子サイズ分布の幅を明確に定義する。これらの値が近いほど、サイズの分布は狭くなる。
【0056】
OSCは、多価状態を有し、酸化条件下で酸素若しくは亜酸化窒素などの酸化剤と能動的に反応することができ、又は還元条件下で一酸化炭素(CO)若しくは水素などの還元剤と反応するエンティティである。好適な酸素吸蔵成分の例としては、セリアが挙げられる。プラセオジムもまた、OSCとして含まれ得る。ウォッシュコート層へのOSCの送達は、例えば、混合酸化物を使用することによって達成することができる。例えば、セリアは、セリウム及びジルコニウムの混合酸化物、並びに/又はセリウム、ジルコニウム、及びネオジムの混合酸化物によって送達することができる。好ましくは、OSCは、1つ以上の混合酸化物を含むか、又はそれからなる。OSCは、セリア、又はセリアを含む混合酸化物であり得る。OSCは、セリア及びジルコニアの混合酸化物;セリウム、ジルコニウム、及びネオジムの混合酸化物;プラセオジム及びジルコニウムの混合酸化物;セリウム、ジルコニウム、及びプラセオジムの混合酸化物;又はプラセオジム、セリウム、ランタン、イットリウム、ジルコニウム、及びネオジムの混合酸化物を含んでもよい。好ましくは、第1及び第2の触媒組成物は各々独立して、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高くてもよい。
【0057】
好ましくは、粒子状無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。好ましくは、PGMの支持体として提供され得る粒子状無機酸化物は、アルミナ、シリカ-アルミナ、アルミノケイ酸塩、アルミナ-ジルコニア、及びアルミナ-セリアからなる群から独立して選択される。好ましくは、粒子状無機酸化物は、少なくとも80m2/g、より好ましくは、少なくとも150m2/g、及び最も好ましくは少なくとも200m2/gの表面積を有する。
【0058】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される第1の白金族金属(PGM)成分を更に含む。第1及び/又は第2の触媒組成物は、PGM成分の1~100g/ft3、好ましくは5~80g/ft3、より好ましくは10~50g/ft3であり得る。
【0059】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含み、好ましくは、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属がバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1及び/又は第2の触媒の総重量に基づいて、0.1~15重量パーセント、より好ましくは3~10重量パーセントバリウムの量で存在する。好ましくは、バリウムはBaCO3複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。あるいは、水酸化バリウムを触媒物品に使用することもできる。
【0060】
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
【0061】
好ましくは、第1及び第2の触媒組成物は実質的に同じである。組成は同じであり得るが、担持量が異なる場合がある。好ましくは、製造の複雑さを低減するために、第1及び第2の触媒組成物は同じであり得る。
【0062】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物の粒子状OSC対粒子状無機酸化物の重量比が、10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3である。好ましくは、各組成物におけるOSCの担持量は、0.5~4g/in3、好ましくは1~3g/in3である。
【0063】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、上記のようなウォッシュコーティングなどによって、基材上に直接提供される。
【0064】
更なる態様によれば、火花点火式エンジンの排気マニホルドと流体通信する、本明細書に記載の触媒物品を含む、排気ガス処理システムが提供される。
【0065】
所望により、追加の構成要素を含むことができる。例えば、リーンバーンエンジンに特に適用可能な排気システムにおいて、NOxトラップは、記載される触媒物品の上流のいずれかに配置され得る。NOxトラップは、NOx吸収触媒(NAC)としても知られ、例えば米国特許第5,473,887号から既知であり、リーン作動モードでの動作中に、リーン(酸素リッチ)排気ガス(ラムダ>1)から窒素酸化物(NOx)を吸着し、排気ガス中の酸素濃度が低下したときNOxを脱着する(化学量論的又はリッチ作動モード)ように設計されている。脱着したNOxは、NAC自体の、又はNACの下流に位置する、ロジウム又はセリアなどの触媒成分によって促進される、好適な還元剤、例えばガソリン燃料でN2に還元することができる。
【0066】
希望するとおり、本明細書に記載の触媒物品を残した後、所望により、排気ガス流は、次いで、適切な排気管を介して下流のNOxトラップに搬送されて、排気ガス流中の残りのNOx排出汚染物質を吸着させることができる。更なる排気管を通してNOxトラップから、NOxトラップの出口を受容するSCR触媒を配置して、NOxトラップによって生成された任意のアンモニアを、還元剤としてアンモニアを使用して窒素及び水を形成するための窒素酸化物を還元する選択的触媒還元触媒で、更なる排出を処理することができる。SCR触媒から、排気管は、テールパイプ及びシステム外に導くことができる。
【0067】
更なる態様によれば、火花点火式内燃機関から放出された排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、本明細書に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法が提供される。好ましくは、エンジンはリーンバーンガソリンエンジンである。更に、本開示は、本明細書に記載されるエンジンを備える、乗用車などの車両を含むことができる。
【0068】
更なる態様によれば、23nm未満の粒子の放出を低減するための、特に10~23nmの粒子の放出を低減するための、排気ガス処理システムにおける本明細書に記載の触媒物品の使用が提供される。好ましくは、使用により、23nm未満の粒子の放出の数が少なくとも20パーセント減少し、より好ましくは、少なくとも30パーセント、更により好ましくは、少なくとも40パーセント減少する。
【0069】
更なる態様によれば、火花点火式内燃機関から放出された排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、本明細書に記載の触媒物品と接触させることを含み、本方法は、23nm未満の粒子の放出を低減するための、特に10~23nmの粒子の放出を低減するためのものである、方法が提供される。
【0070】
更なる態様によれば、23nm未満の粒子の放出を低減するための、特に10~23nmの粒子の放出を低減するための、排気ガス処理システムにおける触媒物品の使用が提供され、触媒物品は、火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理するためのものであって、
入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、
複数の入口チャネルは、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルは、Lの少なくとも50%にわたり、出口端又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、
第1及び第2の触媒組成物は、それぞれ独立して、第1のD90を有する粒子状酸素吸蔵成分(OSC)と、第2のD90を有する粒子状無機酸化物と、を含み、
i)第1のD90は1ミクロン未満であり、第2のD90は1~20ミクロンである、又は
ii)第2のD90は1ミクロン未満であり、第1のD90は1~20ミクロンである。
【0071】
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0072】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0073】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0074】
本明細書で使用される「本質的になる」という表現は、特定の材料、及び例えば微量不純物など、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0075】
材料に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0076】
材料に関して本明細書で使用される「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、材料が微量、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1%重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0077】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0078】
本明細書で使用される用語「担持量」は、他の単位が提供されていない限り、金属重量基準でのg/ft3の単位の測定値を指す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
これから、以下の非限定的な図に関連して本発明を説明する。
【
図1】
図1は、本明細書に記載するウォールフローフィルタの概略図を示す。
【
図2】
図2は、本明細書に記載するウォールフローフィルタの概略図を示す。
【
図3】
図3は、粒子状物質の放出、具体的には、例示的な触媒製品の10~23nmの放出、特に10~23nmの粒子状物質数のシミュレートされたWLTCエンジンベンチデータを示す(#/km)。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、多孔質コーディエライト基材で作られたウォールフローフィルタ1の断面を示す。ウォールフローフィルタ1は、入口端5と出口端10との間に延びる長さLを有する。ウォールフローフィルタ1は、複数の入口チャネル15及び複数の出口チャネル20(1つのみが示される)を備える。複数の入口チャネル15及び出口チャネル20は、それぞれの端がプラグ21で塞がれている。
【0081】
入口チャネル15の内面25は、第1の触媒組成物を含む壁上コーティング30でコーティングされている。コーティング30は、入口端10からLの少なくとも50%に延びる。
【0082】
出口チャネル20の内面35は、第2の触媒組成物を含む壁上コーティング40でコーティングされている。コーティング40は、Lの少なくとも50%に延びる。
【0083】
コーティング30と40との間の重なり合い領域45は、Lの20%以下である。
【0084】
使用中、排気ガス流50(矢印で示される)は、ウォールフローフィルタ1の壁を通って入口チャネル15に入り、出口チャネル20から出る。
【0085】
図2は、多孔質コーディエライト基材で作られたウォールフローフィルタ1の断面を示す。ウォールフローフィルタ1は、入口端5と出口端10との間に延びる長さLを有する。ウォールフローフィルタ1は、複数の入口チャネル15及び複数の出口チャネル20(1つのみが示される)を備える。複数の入口チャネル15及び出口チャネル20は、それぞれの端がプラグ21で塞がれている。
【0086】
入口チャネル15の内面25は、第1の触媒組成物を含む壁上コーティング30でコーティングされている。コーティング30は、出口端10からLの少なくとも50%に延びる。コーティング30はくさび形であり、出口端10でより厚い量を有する。コーティング30は、国際公開第99/47260号の方法に従って適用される。
【0087】
出口チャネル20の内面35は、第2の触媒組成物を含む壁上コーティング40でコーティングされている。コーティング40は、入口端5からLの少なくとも50%に延びる。コーティング40はくさび形であり、入口端5でより厚い量を有する。コーティング40は、国際公開第99/47260号の方法に従って適用される。
【0088】
コーティング30と40との間の重なり合い領域45は、Lの20%以下である。
【0089】
使用中、排気ガス流50(矢印で示される)は、ウォールフローフィルタ1の壁を通って入口チャネル15に入り、出口チャネル20から出る。
【0090】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0091】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0092】
実施例1
三方触媒ウォッシュコートは、1.6g/in3のウォッシュコート担持量(1.2g/in3CeZr混合酸化物及び0.4g/in3アルミナ)及び22g/ft3のPGM担持量で調製された(Pt:Pd:Rh,0:20:2):D90が<1μmの希土類酸化物(REO)酸素吸蔵コンポーネント(OSC)(ZrO2とCeO2の重量比は約2:1)と、D90が12μmになるまで湿式粉砕されたLa安定化アルミナコンポーネントで構成されている。
【0093】
完成したウォッシュコートは、国際公開第99/47260号に記載されているジョンソン・マッセイの精密コーティングプロセスを使用してGPF基材にコーティングするために、適切な最終ウォッシュコート固形分に調整された。使用した基材は、公称63%の多孔度及び17.5μmの平均細孔サイズ、直径4.66インチ、長さ6インチ、300セル/平方インチ、チャネル壁厚1000分の8インチの市販のコーディエライトGPF基材であった。コーティングは基材の両端から適用され、各適用は50~65%の長さをカバーし、コーティングされていない領域のない完全にコーティングされた最終製品を実現した。次いで、コーティングされた部分を、当技術分野で知られている通常の方法で乾燥及びか焼した。
【0094】
実施例2.
実施例2は実施例1と同じ方法で調製されたが、アルミナ成分は更に5μmのD90まで湿式粉砕された。
【0095】
比較例3
参照コーティングされたGPFは、GPF基材用に開発された最新のTWCコーティングを適用することによって準備された。ウォッシュコート担持量は、1.6g/in3(1.2g/in3のCeZr混合酸化物及び0.4g/in3のアルミナ)であり、PGM担持量はで22g/ft3であった(Pt:Pd:Rh,0:20:2)。実施例1及び2とは対照的に、ここではOSC成分とアルミナ成分との両方のD90が約7μmである。
【0096】
コーティングされていない220/6参照GPF
本発明と更に比較するために、コーティングされていないGPF参照が使用された。これは市販のGPF基材であり、6×1011のEuro 6PN制限でこのような後処理システムでの使用を検討できる。同じ触媒の直径及び長さ、したがって触媒の体積を、実施例1~3、直径4.66インチ及び長さ6インチとして選択した。しかしながら、必要な濾過効率を達成するために、そのような裸のフィルタは、より低い公称気孔率及び平均孔径を必要とする。これは背圧の望ましくない増加を引き起こす可能性があるため、1平方インチあたりのセル及び壁の厚さは通常、ウォッシュコートでコーティングされるように設計された基材よりも薄くなる。コーティングされていない参照GPFは、1平方インチあたり220セルで、壁の厚さは1000分の6インチであった。
【0097】
濾過性能評価
上記の実施例は、粒子状物質の放出、特に10~23nmの放出について評価した。評価は、2.0Lガソリン直噴エンジンを搭載したエンジンベンチで実行されたシミュレートされたWLTCで実行された。粒子は、Combustion DMS500粒子分析装置を使用して測定した。
【0098】
結果を
図3に示し、これは、各実施例で完了した3つのWLTCテストの平均であった。結果は、コーティングされていない低気孔率220/6GPF及び比較例3と比較して、実施例1及び2の利点を明確に示す。特に、実施例1は、現在利用可能な代替案よりもはるかに改善された利点を示す。
【0099】
以下の表1は、実施例1及び実施例2と比較例3との追加の背圧低下の利点を示す。
【0100】
【0101】
特に明記しない限り、本明細書における全ての百分率は、重量によるものである。
【0102】
本発明の好ましい実施形態について本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、変形がなされ得ることが当業者には理解されるであろう。
【国際調査報告】