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特表2022-524976GPF下流における炭化水素トラップの利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】GPF下流における炭化水素トラップの利用
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20220428BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20220428BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220428BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
F01N3/28 301B
F01N3/022
B01J35/04 301J
B01J35/04 301E
B01D53/94 280
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552187
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2020025109
(87)【国際公開番号】W WO2020205462
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/825,904
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、エリック
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AB03
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3G091AB13
3G091BA14
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4G169EA27
4G169ZA11A
4G169ZA19A
4G169ZC04
4G169ZF07A
(57)【要約】
【解決手段】 内燃機関の排気システム、及びその使用方法であって、該システムは、炭化水素トラップと、該炭化水素トラップの下流に位置するガソリン微粒子フィルタと、を含む、排気システム、及びその使用方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気システムであって、
a.炭化水素トラップと、
b.前記炭化水素トラップの下流に位置するガソリン微粒子フィルタと、を含む、排気システム。
【請求項2】
前記システムが、三元触媒を含まない、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記システムが、前記炭化水素トラップの下流に三元触媒を含まない、請求項1に記載の排気システム。
【請求項4】
前記システムが、密結合位置にある前記炭化水素トラップの上流に三元触媒を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項5】
前記炭化水素トラップが、最高約350℃の温度で、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着するように設計されている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項6】
前記炭化水素トラップが、約350℃以上の温度で、炭化水素を脱着するように設計されている、請求項5に記載の排気システム。
【請求項7】
前記ガソリン微粒子フィルタが、排気ガスに含まれる前記炭化水素を酸化するように設計されている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項8】
前記炭化水素トラップ及び前記ガソリン微粒子フィルタが、別個の基材を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項9】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを、
a.炭化水素トラップ及び
b.前記炭化水素トラップの下流に位置するガソリン微粒子フィルタと、接触させることを含む、方法。
【請求項10】
前記炭化水素トラップが、最高約350℃の温度で、前記排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記炭化水素トラップが、約350℃以上の温度で、前記排気ガスに含まれる炭化水素の一部を脱着する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ガソリン微粒子フィルタが、排気ガスに含まれる前記炭化水素を酸化する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記排気ガスが、三元触媒と接触しない、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記排気ガスが、前記炭化水素トラップの下流の三元触媒に接触しない、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記排気ガスが、前記炭化水素トラップの上流の密結合位置にある三元触媒と接触する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炭化水素トラップ(HCトラップ)は、エンジンのコールドスタートからの炭化水素排出を改善する方法として、ガソリン排出制御システムにおいて長い間関心を集めてきた。コールドスタートの炭化水素排出物は、三元触媒(TWC)がそのライトオフ温度に達する前に、エンジンから排気ガス中に放出される。HCトラップは、低温で炭化水素を吸着し、その後、TWCがそのライトオフ温度を上回ると炭化水素を脱着するため、排気システムから大気中へ放出される炭化水素排出量を低減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
脱着した炭化水素をHCトラップに変換して、炭化水素排出全体にかなりの影響を与えるには、活性触媒が存在する必要がある。多くの技術では、HCトラップの上部にTWC層がコーティングされている。あるいは、TWCは、HCトラップの下流に配置されて、脱着する炭化水素を変換する。しかし、追加のブリック又は触媒層を含めると、必然的にシステム内の背圧が増加することになる。システム内の背圧を最小限に抑えながら、炭化水素排出を効率的に低減することが望ましい。
【0003】
本発明の態様によれば、内燃機関の排気システムは、炭化水素トラップと、炭化水素トラップの下流に位置するガソリン微粒子フィルタと、を含み得る。いくつかの態様では、システムは、三元触媒を含まない。いくつかの態様では、システムは、炭化水素トラップの下流に三元触媒を含まない。いくつかの態様では、システムは、密結合位置にある炭化水素トラップの上流に三元触媒を含む。
【0004】
炭化水素トラップは、最高約350℃の温度で、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着するように設計され得る。炭化水素トラップはまた、約350℃以上の温度で、炭化水素を脱着するように設計され得る。いくつかの態様では、ガソリン微粒子フィルタは、排気ガスに含まれる炭化水素を酸化するように設計されている。いくつかの態様では、炭化水素トラップ及びガソリン微粒子フィルタは、別個の基材を含む。
【0005】
本発明の態様によれば、内燃機関からの排気ガスを処理する方法は、排気ガスを、炭化水素トラップ及び炭化水素トラップの下流に位置するガソリン微粒子フィルタと、接触させることを含む。炭化水素トラップは、最高約350℃の温度で、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着し得る。炭化水素トラップは、約350℃以上の温度で、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を脱着し得る。ガソリン微粒子フィルタは、排気ガスに含まれる炭化水素を酸化し得る。一部の態様では、排気ガスは、三元触媒と接触しない。いくつかの態様では、排気ガスは、炭化水素トラップの下流の三元触媒に接触しない。いくつかの態様では、排気ガスは、炭化水素トラップの上流の密結合位置にある三元触媒と接触する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のシステム及び方法は、内燃機関からの排気ガスの浄化に関する。本発明は、特に、ガソリンエンジンからの排気ガスの清浄に関する。
【0007】
本発明のシステム及び方法は、炭化水素トラップ(HCトラップ)と、それに続くガソリン微粒子フィルタ(GPF)を含み得る。以下により詳細に記載されるように、本発明の態様のシステムは、不必要に背圧を増加させることなく、不要な排出を効率的に低減するために、構成され、設計され、有利に操作され得る。GPFとHCトラップ技術との相乗効果を特定することにより、これらの効果は、システム内に従来含まれていた追加のブリック又は触媒層を必要とせずに、GPFを使用してHCトラップからの脱着する炭化水素を変換することによって達成され得ることが明らかになった。
【0008】
炭化水素トラップ
本発明のシステムは、1つ以上のHCトラップを含み得る。HCトラップは、エンジンのコールドスタートからの炭化水素排出を改善するツールとして使用され得、より低温で排気ガスからの炭化水素を吸着又は「トラップ」し、次いで、三元触媒(TWC)などの触媒がそのライトオフ温度に到達すると、それらを脱着するようにデザインされている。
【0009】
HCトラップは、低温で排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着するように設計され得る。いくつかの態様では、HCトラップは、下流のGPFのライトオフ温度未満の温度で、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着するように設計され得る。いくつかの態様では、HCトラップは、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を、最高約350℃、約20℃~約350℃、又は約25℃~約350℃の温度で、吸着するように設計され得る。いくつかの態様では、HCトラップは、次に、約350℃以上、約350℃超、又は約350℃~約500℃の温度で、炭化水素の一部を脱着するように設計され得る。
【0010】
いくつかの態様では、HCトラップは、1つ以上の適切なHC吸着剤で層状にされたベース基材を含むブリック又はモノリス(例えば、押出モノリス)の形態であり得る。いくつかの態様では、HCトラップは、適切な吸着剤のペレットを含み得る。追加的に又は代替的に、HCトラップは、炭化水素を酸化するように構成された触媒部分を含み得る。したがって、HCトラップは、HCトラップ材料(例えば、ゼオライト)でコーティングされた触媒基材と、触媒材料でコーティングされたHCトラップ材料とを含み得る。HCトラップ吸着剤は、トラップをエージングさせることなく十分に低い温度でのHCパージ中にHCの最大脱着を可能にしながら、HC吸蔵中に最大量のHCが吸着され得るように選択され得る。選択された吸着剤はまた、熱又は排気ガスからの被毒による変質を防ぐために高い耐久性を有し得る。例えば、HCトラップは、活性炭及びゼオライトなどの触媒モレキュラーシーブのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0011】
モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩ゼオライト又はSAPOなどのアイソタイプであり得る。HCトラップは、2つ以上の異なるSAPO及び/又は2つ以上の異なるアルミノケイ酸塩ゼオライトのブレンド、2つ以上の異なるアルミノケイ酸塩ゼオライトのブレンド、及び/又は2つ以上の異なるSAPOのブレンドを含む、1つ以上の異なるモレキュラーシーブの混合物を含み得る。
【0012】
HCトラップで使用するのに好適なモレキュラーシーブとしては、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)の骨格型コード(Framework Type Code)MFI、BEA、FAU、MOR、FER、ERI、LTL、AEI、及びCHAのモレキュラーシーブが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、配置は、アルミノケイ酸塩ゼオライトZSM-5(MFI)及びベータ(BEA)を組み合わせる。ゼオライトY(FAU)も使用することができる。
【0013】
モレキュラーシーブのシリカ対アルミナ比(SAR)は、対象の温度範囲におけるHCトラップのエージングを必要に応じて反映するように、また酸素吸蔵能の低下にも反映されるように選択することができ、OBDに対する反応性を高めることができる。例えば、ZSM-5の好適なSARは、約80であるが、ゼオライトベータの好ましいSARは約150である。
【0014】
ゼオライトなどの好適な触媒モレキュラーシーブとしては、銅交換ゼオライト及び鉄交換ゼオライトなどの様々なイオン交換モレキュラーシーブを挙げることができる。
【0015】
吸着剤の組み合わせはまた、所望又は期待されるHCトラップ入口温度の範囲に基づいて設計され得る。例えば、活性炭ベースのトラップは、より低い入口温度(例えば、350℃を超えない)に使用され得、一方、触媒されたゼオライトベースのトラップは、より高い入口温度(例えば、最高600℃)に使用され得る。
【0016】
HCトラップは、TWCと比較して、影響を受けやすい遷移金属及び/又は貴金属(例えば、Pdと比較したPt)から構成され得る。更に、HCトラップは、TWCと比較してより少量の貴金属を含み得る。例えば、HCトラップはPt種及びPd種を含み得、TWCはPd種のみを含み、Pt種を含まない場合がある。Pt及びPdは、異なるHCを酸化するのに効率的であり得る。例えば、Ptは、Pdよりも効率的にアルカンと反応し得る一方で、Pdは、Ptよりも効率的に芳香族と反応し得る。したがって、Pd及びPt種のブレンド及び/又は混合物は、Pdのみ又はPtのみを有する触媒よりも排出量を減少させることができる。このようにして、HCトラップの触媒部分は、HCを処理するように最適化され得る。いくつかの例では、触媒部分は、炭素上にPdを含み得、その場合、炭素は活性化され(細孔径が減少する)、ガスに曝露される表面積を増加させる。いくつかの例では、Pt及びPdを事前調整して、Ptコートがリーンになり、Pdコートがリッチになるようにする。これにより、触媒とHCとの反応性を高めることができる。
【0017】
一例では、HCトラップの触媒部分には、Pd/Ptの1:1比が使用される。これにより、リーン、リッチ、及び化学量論的動作中に炭化水素を処理することができる最適化された合金をもたらし得る。一例として、Pdは、リーン曝露中にPtを安定化させることができ、Ptは、リッチ曝露中にPdを安定化させることができる。Pd/Ptの他の比が使用され得ることが理解されるであろう。例えば、2:1以上のPd/Ptの比を用いてもよい。あるいは、1:2以上のPd/Ptの比を用いてもよい。いくつかの例では、車両がリッチよりリーンで動作する傾向がある場合には、より多くのPdが含まれ得るように、比率は車両の動作に基づくことができる。したがって、車両がリーンよりもリッチで動作する傾向がある場合、より多くのPtが含まれ得る。追加的に又は代替的に、Pd層及びPt層は、HCトラップの触媒部分内で分離され得る。これは、異なる触媒ブリックゾーン及び/又はウォッシュコートの異なる層が含まれ得る(例えば、一方の側のウォッシュコートはPdであり、もう一方の異なる側のウォッシュコートはPtである)。このようにして、第1の金属(例えば、Pt)が、炭化水素(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)を酸化し得、その後、炭化水素が、第2の金属(例えば、Pd)の性能を低下させる。
【0018】
使用される吸着剤は、多孔性が異なる場合があり、一部の態様では、排気条件に基づいて選択され得る。例えば、トラップアセンブリの入口付近のHCトラップは、多孔性が大きい方の吸着剤(例えば、より大きな鎖HCをトラップするための吸着剤)を含み得、一方、トラップアセンブリの出口付近のHCトラップは、多孔性が小さい方の吸着剤(例えば、より小さい鎖HCをトラップするための吸着剤)を含み得る。追加的又は任意選択で、使用される吸着剤は、化学的特性が異なる場合がある。例えば、トラップアセンブリの入口付近のHCトラップは、より長い鎖HCに対してより高い親和性を有する吸着剤を含み得、一方、トラップアセンブリの出口付近のHCトラップは、より短い鎖HCに対してより高い親和性を有する吸着剤を含み得る。一例では、多孔性が大きい方のトラップを、多孔性が小さい方のトラップの前に、吸蔵動作中の排気流の方向に位置付けることによって、トラップの詰まりに関連する潜在的な問題を低減することができる。
【0019】
一例では、第1のHCトラップは、マクロ多孔性活性炭(例えば、モノリス形態又はペレット形態)を含み得、一方、第2のHCトラップは、ミクロ多孔性活性炭(例えば、モノリス形態又はペレット形態)を含み得る。別の例では、第1のHCトラップは、マクロ多孔性触媒ゼオライト(例えば、モノリス形態又はペレット形態)を含み得、一方、第2のHCトラップは、ミクロ多孔性触媒ゼオライト(例えば、モノリス形態又はペレット形態)を含み得る。更に他の例では、活性炭ベースのトラップとゼオライトベースのトラップとの組み合わせ、例えば、マクロ多孔性活性炭の第1のHCトラップ及びミクロ多孔性ゼオライトの第2のHCトラップを使用することができる。
【0020】
ガソリン微粒子フィルタ
本発明のシステムは、1つ以上のGPFを含み得る。いくつかの態様では、GPFはHCトラップの下流に位置する。本発明のシステムは、1つ以上の触媒コーティングを含み得る1つ以上の追加のGPFを含み得る。
【0021】
GPFは、排気ガスに含まれる炭化水素を酸化するように設計され得る。GPFは、ガソリンエンジンの排気ガス流、特に直接噴射ガソリンエンジンから発生する排気ガス流の処理に適合したウォールフロー微粒子フィルタを含み得る。GPFは、ガソリンエンジンにおける燃焼反応によって生成される粒子状物質をトラップするために使用され得る。
【0022】
GPF基材は、ウォールフローモノリス又はウォールフローフィルタ、例えばハニカム構造を有するウォールフローフィルタであり得る。好適なウォールフロー基材としては、基材の長手方向軸に沿って延びる複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するものを挙げることができる。好ましくは、各通路は、基材本体の一端で遮断され、別の通路は、反対側の端面で遮断される。米国特許第4,329,162号は、本発明の態様で使用され得る好適なウォールフロー基材の開示に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
GPF基材は、GPFと流体連通するガソリンエンジンの機能を妨げることなく、ガソリンエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質のフィルタリングを可能にする任意の好適な材料又は材料の組み合わせであり得る。この目的のために、好ましくは多孔質材料は、基材材料、特にセラミック様材料(例えば、コーディエライト、アルファアルミナ、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア及びケイ酸ジルコニウム)、並びに多孔性耐火金属及びその酸化物として使用される。「耐火金属」とは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、及びReからなる群から選択される1種以上の金属を指す。GPF基材はまた、セラミック繊維複合材料から形成され得る。いくつかの態様では、GPF基材は、好ましくは、コーディエライト、炭化ケイ素、及び/又はチタン酸アルミニウムから形成される。概ね、ガソリンエンジンの排気ガスの処理に使用される場合にGPFが曝される高温に耐えることができる材料が好ましい。
【0024】
いくつかの態様では、GPFは、微粒子フィルタ基材と、フィルタ基材の一方の表面上又はその中に配置された第1の触媒層と、任意選択で、フィルタ基材の1つの表面上又はその中に配置された第2の触媒層とを含む。一部の態様では、触媒コーティングは、ウォールフローフィルタ基材の多孔質壁内に全体的に、又は少なくとも主に配置される。触媒層は、条件及び所望の機能に基づいて好適に設計され得、例えば、既知のGPF触媒コーティング、TWCコーティング、又はアルミナ上におけるPtなどの酸化触媒のうちの1つ以上を含み得る。
【0025】
三元触媒
本発明のシステムはTWCを含み得る。いくつかの態様では、システムは、HCトラップの上流にTWCを含む。いくつかの態様では、システムは、密結合位置にあるHCトラップの上流にTWCを含む。TWC及びHCトラップが密結合している場合、HCトラップがTWCに近接して、及び/又はTWCから直接下流に位置付けられることを意味すると理解される。
【0026】
三元触媒システムは、当該技術分野において周知である。TWCは、典型的には、次の3つの主な機能、すなわち、(1)COのCOへの酸化、(2)未燃燃料のCO及びHOへの酸化、及び(3)NOのNへの還元を果たす。三元触媒は、好ましくは、1つ以上の白金族金属及び1つ以上の無機酸化物担体を含む。白金族金属(PGM)は、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム、又はこれらの混合物である。
【0027】
無機酸化物担体には、最も通常的には、第2族、第3族、第4族、第5族、第6族、第13族、及び第14族、並びにランタニド元素の酸化物が含まれる。有用な無機酸化物担体は、好ましくは、10/g~700m/gの範囲の表面積、0.1mL/g~4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10Å~1000Åの細孔直径を有する。無機酸化物担体は、好ましくは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、又はこれらの任意の2つ以上の混合酸化物若しくは複合酸化物、例えば、シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、若しくはアルミナ-セリア-ジルコニアである。アルミナ及びセリアは特に好ましい。担体としての機能に加え、セリア(CeO)又はセリア-ジルコニアで混合されたものなどのセリア含有担体の酸化物は、TWC内の酸素吸蔵成分(OSC)としても機能し得る。無機酸化物担体はまた、ベータゼオライト、ZSMゼオライト、フェリエライト、又はチャバザイトなどのゼオライトであり得る。
【0028】
三元触媒は、好ましくは基材上にコーティングされる。基材は、好ましくはセラミック基材又は金属基材である。より好ましくは、基材は、より良好な熱交換及び構築の容易さのための金属基材である。セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、並びにメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメン(spodumene)など)、又はこれらの任意の2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0029】
金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びにその他の微量金属に加えて鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0030】
基材は、フィルタ基材又はフロースルー基材であり得るが、最も好ましくは、フロースルー基材、特にハニカムモノリスである。基材は、典型的には、車両排気が通過する多数のチャネルを提供するようにデザインされている。チャネルの表面には、三元触媒が担持されている。
【0031】
三元触媒は、任意の既知の手段によって基材に添加され得る。例えば、無機酸化物担体又はPGM含有担体材料は、ウォッシュコートとして基材に適用及び結合され得、ウォッシュコート中の多孔質で高表面積の層は、基材の表面に結合される。ウォッシュコートは、典型的には、水性スラリーから基材に適用され、その後、乾燥され、高温で焼成される。無機酸化物担体のみが基材上にウォッシュコートされている場合、PGM金属を、乾燥ウォッシュコート担体層上に(含浸、イオン交換などによって)担持し、次いで乾燥し、焼成することができる。基材上に担持されたPGMの好ましい担持量は、0.02g/リットル~1.7g/リットル(1g/ft~300g/ft)の触媒体積である。
【0032】
態様/システム
本発明のシステムは、HCトラップの下流に位置付けられたGPFを有するHCトラップを含む。いくつかの態様では、HCトラップ及びGPFは、別個の基材を含む。いくつかの態様では、システムはTWCを含まない。いくつかの態様では、システムは、HCトラップから下流にTWCを含まない。いくつかの態様では、システムは、HCトラップの上流に、例えば、HCトラップと密結合された位置にあるTWCを含む。TWC及びHCトラップが密結合されている場合、HCトラップがTWCに近接して、及び/又はTWCから直接下流に位置付けられることを意味すると理解される。
【0033】
用語「下流」及び「上流」は、排気ガスの流れが担体又は物品の入口端部から出口端部に向かう触媒又は基材の配置方向を説明する。本明細書で使用するとき、「上流」及び「下流」は、エンジンから大気への排気流の方向に対して相対的なものである。
【0034】
方法
内燃機関からの排気ガスの処理方法は、排気ガスをHCトラップと接触させ、次いで排気ガスをGPFと接触させることを含み得る。HCトラップは、低温で排気ガスに含まれる炭化水素の一部を吸着し得る。例えば、HCトラップは、排気ガスに含まれる炭化水素の一部を、最高約350℃、約20℃~約350℃、又は約25℃~約350℃の温度で、吸着し得る。次いで、HCトラップは、高温で炭化水素の一部を脱着し得る。このような高温は、GPFのライトオフ温度に対応し得るため、GPFは次に、炭化水素を酸化/変換することができる。例えば、HCトラップは次に、350℃超、又は350℃~500℃の温度で、炭化水素の一部を脱着し得る。
【0035】
効果
驚くべきことに、本発明のシステム及び方法は、背圧を増加させることなく、排気ガスからの炭化水素を効率的に除去することに関連する効果をもたらし得ることが見出された。このような効果は、GPFトラップ技術とHCトラップ技術との間で新たに特定された相乗効果を利用することにより、GPFの利用を可能にして、HCトラップから脱着した炭化水素を変換し、それによって、不必要に背圧を増加させるシステム内の余分なブリック又は触媒層を回避することにより達成され得る。例えば、従来の排気システムは、脱着した炭化水素を変換するために、別個のブリック上のTWC、又はHCトラップ上にコーティングされたTWCを含み得、これは、本発明のシステムから場合によっては除外することができる。本発明のいくつかの態様では、システムはTWCを含まない。いくつかの態様では、本発明のシステムは、HCトラップの下流にTWCを含まない。
【0036】
用語
本開示では、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に明示しない限り、複数の参照含み、特定の数値への参照は、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、そのような材料及び当業者に周知であるその均等物のうちの少なくとも1つへの言及である。
【0037】
値が記述語「約(about)」を使用することにより近似値として表現される場合、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。概して、用語「約」の使用は、開示された主題により得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきである。当業者は、これを日常的に行うこととして解釈できるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数が、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合、一連の値で使用される段階的な変化を使用して、各値について用語「約」に利用可能な意図された範囲を決定できる。存在する場合、全範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。すなわち、範囲内で提示されている値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。
【0038】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記載される本発明の特定の特色はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。すなわち、明らかに互換性がないか又は具体的に除外されない限り、個々の実施形態はそれぞれ、任意の他の実施形態と組み合わせることが可能であるとみなされ、そのような組み合わせは別の実施形態であると考えられる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特色はまた、個別に、又は任意の部分的な組み合わせで提供されてもよい。最後に、実施形態は、一連の工程の一部、又はより一般的な構造の一部として記載され得るが、その各工程はまた、それ自体が独立した実施形態であり、他の工程と組み合わせることができるとみなされ得る。
【0039】
移行語(transitional term)「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting)」は、それらの特許専門用語において一般に認められた意味を内包することを意図しており、すなわち、(i)「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「特徴づけられる(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであって、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。(ii)「からなる(consisting of)」は請求項で指定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外し、(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、指定された材料又は工程、及び特許請求された発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないもの」に限定する。語句「含む(comprising)」(又はその等価物)という用語で記載された実施形態はまた、実施形態として、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で独立して記載される実施形態を提供する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で提供されるこれらの実施形態では、基本的かつ斬新な特性は、燃料を効率的に燃焼させるシステムの能力であり、個別の点火装置を必要とせず、又は燃料混合物を触媒に導入する前に点火温度を超えて加熱する必要もない。このような動作性を損なわない材料又は工程は、このような実施形態の範囲内とみなされる。
【0040】
リストが提示される場合、別途記載のない限り、そのリストの各個別要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」、又は「A、B、若しくはC」を含むものと解釈されるべきである。
【0041】
関連技術の当業者により理解されるように、本明細書全体を通して、単語は、それらの通常の意味を与えられるべきである。しかし、誤解を避けるために、特定の用語の意味は具体的に定義又は明確化される。
【0042】
「任意選択の(optional)」又は「任意選択で(optionally)」は、その後に記載する状況が発生する場合としない場合があることを意味する。そのため、その記載には、その状況が発生する事例と発生しない事例が含まれる。同様に、成分又は工程を「任意選択で存在する(optionally present)」と称する実施形態は、それらの実施形態は、工程又は成分が存在する又は存在しない別個の独立した実施形態を含む。「任意選択の(optional)」という記載は、任意による条件の発生を可能とするが、必須ではない。
【国際調査報告】