(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】脳血管系を保護するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
A61F2/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552536
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020020796
(87)【国際公開番号】W WO2020180866
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フィールズ、アントニー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、シー-ション アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ハミル、ホイッテーカー イアン
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー、ダニエル ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160MM37
(57)【要約】
体液をろ過するための血管フィルタ及びディフレクタ並びに方法。血液ろ過アセンブリは、血管内処置中に脱落又は発生した塞栓物質を捕捉して、塞栓物質が脳血管系に進入するのを阻止又は防止することができる。単一の血管フィルタが、4つの脳動脈のすべてを保護するように大動脈内に配置可能であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳血管系を隔離するための塞栓保護システムであって、前記システムは、
体外に残るように構成された近位部分と、遠位部分とを有する保護装置を備え、前記遠位部分は、
外側シースと、
直径可変フレーム及びフィルタ要素を含む拡張可能なフィルタアセンブリとを備える、塞栓保護システム。
【請求項2】
前記直径可変フレームは、膨張可能なチューブを備える、請求項1に記載の塞栓保護システム。
【請求項3】
前記膨張可能なチューブは、膨張空洞及び弁を備える、請求項2に記載の塞栓保護システム。
【請求項4】
前記膨張可能なチューブは、前記拡張可能なフィルタアセンブリから前記保護装置の近位部分まで近位に延在するように構成された膨張管腔に流体結合されている、請求項2又は3に記載の塞栓保護システム。
【請求項5】
前記直径可変フレームは、複数の巻回部を有した、間隔が空いたコイルを備える、請求項1に記載の塞栓保護システム。
【請求項6】
前記直径可変フレームは、複数の開口部を有したレーザーカットチューブを備える、請求項1に記載の塞栓保護システム。
【請求項7】
前記直径可変フレームは、形状記憶材料を含んでいる、請求項1に記載の塞栓保護システム。
【請求項8】
前記直径可変フレームの中央管腔を通って延在する張力要素をさらに備える、請求項5~7のいずれか1項に記載の塞栓保護システム。
【請求項9】
前記張力要素の遠位端部は前記直径可変フレームに固定して結合されており、近位端部は前記直径可変フレームから近位に延在する、請求項8に記載の塞栓保護システム。
【請求項10】
前記張力要素の近位端部に及ぼされる近位方向の力は、前記直径可変フレームの直径を縮小させるように構成されている、請求項9に記載の塞栓保護システム。
【請求項11】
前記拡張可能なフィルタアセンブリは、遠位に向いた開口部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の塞栓保護システム。
【請求項12】
前記拡張可能なフィルタアセンブリは、支持要素をさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の塞栓保護システム。
【請求項13】
前記支持要素は、1つ以上の、長手方向に延在するタインである、請求項12に記載の塞栓保護システム。
【請求項14】
前記支持要素は、前記直径可変フレームと前記フィルタ要素の基部との間に配置された細長いフープである、請求項12に記載の塞栓保護システム。
【請求項15】
前記拡張可能なフィルタアセンブリは、前記フィルタ要素の端部に結合されたテザーをさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の塞栓保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液をろ過するのための医療装置一般に関し、より詳細には、特定の実施形態において、血管内処置又は心臓処置の間に脱落した栓子、デブリなどから脳動脈を保護するための方法並びにフィルタ及びディフレクタのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳に酸素化された血液を運ぶのは、4本の動脈、すなわち、左右の椎骨動脈及び左右の総頸動脈である。人体に対して行われる様々な処置、例えば、経カテーテル大動脈弁置換(transcatheter aortic valve replacement :TAVR)、大動脈弁形成、頸動脈ステント留置、左心耳閉鎖、僧帽弁形成、僧帽弁修復又は僧帽弁置換によって、物質が(天然のものであるか異物であるかに関わりなく)発生及び/又は脱落する可能性があり、これらの脱落物は脳動脈の1つ以上に進行して、とりわけ脳卒中を生じる可能性がある。さらに、TAVRカテーテルが病変した大動脈弁に向かって進められ、続いて移植完了後に抜去される際に、大動脈及び大動脈弓に沿った内部の粥腫が脱落する可能性がある。加えて、送達及び移植中にカテーテル自身の破片が剥離する可能性がある。これらの様々な形態の血管内デブリ(vascular debris)は、天然のものであるか異物であるかに関わりなく、次に1つ以上の脳動脈内に進行して、塞栓を生じさせ、とりわけ脳卒中を引き起こす可能がある。
【0003】
デブリを収集すること(フィルタ)、またはデブリを偏向させること(ディフレクタ)により、1つ以上の脳動脈を保護するための装置が存在する。既知の医療装置、送達システム及び方法のそれぞれに特定の効果及び不都合がある。別の医療装置及び方法、並びに医療装置を製造及び使用するための別の方法を提供することが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願では、体液をろ過するための血管フィルタ及びディフレクタ並びに方法が開示される。血液ろ過アセンブリは、血管内処置中に脱落又は発生した塞栓物質を捕捉して、そのような物質が脳血管系に進入するのを阻止又は防止することができる。血液偏向アセンブリは、血管内処置中に脱落又は発生した塞栓物質を偏向させて、そのような物質が脳血管系に進入するのを阻止又は防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の例において、脳血管系を隔離するための塞栓保護システムは、体外に残るように構成された近位部分と、遠位部分とを有する保護装置を備え得る。遠位部分は、外側シースと、直径可変フレーム及びフィルタ要素を含む拡張可能なフィルタアセンブリとを備え得る。
【0006】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、直径可変フレームは膨張可能なチューブを備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、膨張可能なチューブは膨張空洞及び弁を備え得る。
【0007】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、膨張可能なチューブは、拡張可能なフィルタアセンブリから保護装置の近位部分まで近位に延在するように構成された膨張管腔に、流体が流れるように結合(以下「流体結合」と記載)され得る。
【0008】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、直径可変フレームは、複数の巻回部を有した、間隔が空いたコイル(open spaced coil)を備え得る。
【0009】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、直径可変フレームは、複数の開口部を有したレーザーカットチューブを備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、直径可変フレームは、形状記憶材料を含み得る。
【0010】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、塞栓保護システムは、直径可変フレームの中央管腔を通って延在する張力要素をさらに備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、張力要素の遠位端部は直径可変フレームに固定して結合され得、近位端部は直径可変フレームから近位に延在し得る。
【0011】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、張力要素の近位端部に及ぼされる近位方向の力は、直径可変フレームの直径を縮小させるように構成され得る。
【0012】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、拡張可能なフィルタアセンブリは、遠位に向いた開口部を備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、拡張可能なフィルタアセンブリは、支持要素をさらに備え得る。
【0013】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、支持要素は、1つ以上の、長手方向に延在するタイン(tine)であってもよい。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、支持要素は、直径可変フレームとフィルタ要素の基部との間に配置された細長いフープ(輪)であってもよい。
【0014】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、拡張可能なフィルタアセンブリは、フィルタ要素の端部に結合されたテザーをさらに備え得る。
別の例では、塞栓物質が脳血管系に進入するのを阻止する方法は、ガイドワイヤを、右鎖骨下動脈を介して大動脈弓に配置することと、保護装置の遠位部分をガイドワイヤに追従させることとを含み得る。保護装置の遠位部分は、近位シースと、近位シースの半径方向内部に近位自己拡張型フィルタアセンブリと、遠位シースと、遠位シースの半径方向内部に遠位自己拡張型フィルタアセンブリとを備え得る。近位シースを近位に後退させること、及び近位自己拡張型フィルタアセンブリを遠位に進めることの少なくとも一方により、近位自己拡張型フィルタアセンブリが近位シースから無名動脈に留置され得る。この方法は、遠位シースを大動脈弓内へ操舵することと、遠位シースを近位に後退させること及び遠位自己拡張型フィルタアセンブリを遠位に進めることのうちの少なくとも一方を行って、遠位自己拡張型フィルタアセンブリを遠位シースから大動脈弓に留置することとをさらに含み得る。近位自己拡張型フィルタアセンブリ及び遠位自己拡張型フィルタアセンブリを留置した後に、この方法は、近位シース及び遠位シースを引っ込めることをさらに含み得る。
【0015】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、遠位自己拡張型フィルタアセンブリの開口部は、左総頸動脈の開口部の上流の大動脈弓に配置され得る。
【0016】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、開口部は、遠位に向いた開口部であってもよい。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、遠位自己拡張型フィルタアセンブリは、フレーム、フィルタ要素及び支持要素を備え得る。
【0017】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、支持要素は、1つ以上の、長手方向に延在するタインであってもよい。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、支持要素は、フレームとフィルタ要素の基部との間に配置された細長いフープであってもよい。
【0018】
別の例では、塞栓物質が脳血管系に進入するのを阻止する方法は、ガイドワイヤを、右鎖骨下動脈を介して上行大動脈に配置することと、保護装置の遠位部分をガイドワイヤに追従させることとを含み得る。保護装置の遠位部分は、外側シースと、外側シースの半径方向内部に自己拡張型フィルタアセンブリとを備え得る。外側シースを近位に後退させること、及び自己拡張型フィルタアセンブリを遠位に進めることの少なくとも一方により、自己拡張型フィルタアセンブリが外側シースから上行大動脈に留置され得る。
【0019】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、自己拡張型フィルタアセンブリは、フレーム、フィルタ要素及び支持要素を備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、支持要素は、1つ以上の、長手方向に延在するタインであってもよい。
【0020】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、支持要素は、フレームとフィルタ要素の基部との間に配置された細長いフープであってもよい。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、自己拡張型フィルタアセンブリは、フィルタ要素の基部に結合されたテザーをさらに備え得る。
【0021】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、テザーの近位方向の作動により、フィルタ要素の基部が外側シースに引き込まれ得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、自己拡張型フィルタアセンブリは、細長い管状本体を備え得る。
【0022】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、細長い管状本体は、1本以上の、織られたフィラメント、編組されたフィラメント、又は編まれたフィラメントを含み得る。
【0023】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、細長い管状本体の遠位端部は、縁部を備え得る。
別の例では、塞栓物質が脳血管系に進入するのを阻止する方法は、ガイドワイヤを、右鎖骨下動脈を介して上行大動脈に配置することと、保護装置の遠位部分をガイドワイヤに追従させることとを含み得る。保護装置の遠位部分は、外側シースと、外側シースの半径方向内部に膨張可能なフィルタアセンブリとを備え得る。この方法は、外側シースを近位に後退させること及び自己拡張型フィルタアセンブリを遠位に進めることの少なくとも一方を行って、自己拡張型フィルタアセンブリを外側シースから上行大動脈に留置することと、膨張可能なフィルタアセンブリに膨張流体を送達して、膨張可能なフィルタアセンブリのフレームを拡張させることとをさらに含む。
【0024】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、膨張可能なフィルタアセンブリのフレームは、膨張空洞及び弁を備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、膨張空洞は、膨張管腔に流体結合され得る。
【0025】
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、膨張可能なフィルタアセンブリは、フレームに結合されたフィルタ要素をさらに備え得る。
上記の例のうちのいずれかに代わって、又はそれに加えて、別の例では、この方法は、膨張流体を除去することをさらに含み得る。
【0026】
例示的な実施形態の上記の概要は、本開示の開示される実施形態の各々又はすべての実施について説明するようには意図されていない。
本発明は、添付図面に関連する様々な実施形態の以下の詳細な説明を参酌してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリを示す図。
【
図2】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの代替実施形態を示す図。
【
図3】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの別の代替実施形態を示す図。
【
図4】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの別の代替実施形態を示す図。
【
図5】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの別の代替実施形態を示す図。
【
図6】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの別の代替実施形態を示す図。
【
図7】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの別の代替実施形態を示す図。
【
図8】脳の血管構造を保護するためのフィルタアセンブリの別の代替実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は様々な変更及び代替形態が可能であるが、それらのうちの特定のものを例として図面に示し、詳細に説明する。しかしながら、本発明は本発明の態様を記載する特定の実施形態に限定するものではないことが理解されるべきである。むしろ、本発明は、本発明の趣旨及び範囲内にあるすべての変更、均等物、及び代替物を網羅するものである。
【0029】
以下の定義された用語について、特許請求の範囲又は本明細書中の他の箇所において異なる定義がなされていない限り、これらの定義が適用されるものとする。
すべての数値は、明確に示されているか否かに関わらず、本願では「約」という用語によって修飾されるものと考えられる。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等であると考える(すなわち、同じ機能又は結果を有する)数の範囲を指す。多くの場合において、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められる数を含むことを示し得る。
【0030】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内の数をすべて含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
様々な構成要素、特徴及び/又は仕様に関するいくつかの適当な寸法、範囲及び/又は値が開示されるが、本開示によって触発される当業者は、所望の寸法、範囲及び/又は値が明らかに開示されたものから逸脱する可能性があることを理解するであろう。
【0031】
本明細書及び添付された特許請求の範囲に用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに他に規定していない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付された特許請求の範囲に用いられる場合、「又は」という用語は、一般に、内容が明らかに他に規定していない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0032】
以下の詳細な説明は図面を参照して読まれるべきであり、図面では異なる図面中の類似した要素には同一の番号が付されている。これらの詳細な説明、及び必ずしも一定の縮尺ではない図面は、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定するようには意図されない。示された例示的な実施形態は、単に例示として意図されている。明らかに反対の記載がない限り、任意の例示的な実施形態の選択された特徴は、付加的な実施形態に組み込まれてもよい。
【0033】
現在市販されているクラレット メディカル(Claret Medica)製のセンチネル(Sentinel)システムは、その実施形態が上述した米国特許第9,492,264号に記載されており、典型的には右椎骨動脈及び右総頸動脈が生じる右腕頭動脈を保護する第1のフィルタと、左総頸動脈に位置する第2のフィルタとの2つのフィルタを有している。典型的な患者において、脳への潅流のおよそ7パーセントを提供する左椎骨動脈は保護されないままである。
【0034】
左椎骨動脈(left vertebral)の保護に対する1つの開示された解決策は、例えば左橈骨動脈を通って左腕に配置されるように意図された第2の装置を使用することであり、この装置は、典型的には左椎骨動脈(left vertebral)が生じる左鎖骨下動脈に配置されるフィルタを有する。そのような解決策の実施形態は米国特許第9,566,144号に見られ、この特許文献の全容は、参照により本願に援用される。
【0035】
経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)処置のための脳塞栓保護は、塞栓保護装置が処置カテーテル及び処置装置による大動脈弓の通過を許容することを必要とする場合があるが、処置カテーテルが、右心を介して又は直接、心尖内に導入される処置は、塞栓保護装置が大動脈内又は大動脈弓内に配置されることを許容し得る。例えば、左心耳閉塞(left atrial appendage occlusion:LAAO)、経カテーテル僧帽弁修復(transcatheter mitral valve repair:TMVR)、経カテーテル僧帽弁置換、心尖アクセスによるTAVR、細動(afibrillation)のためのアブレーション、心室頻拍のためのアブレーション等のような、しかしこれらに限定されない処置は、1つ以上の塞栓保護装置が4本の脳動脈の上流に配置されることを許容し得る。本出願は、完全な脳の保護を提供することができる単一のフィルタ、並びに/又はフィルタ及び/若しくはディフレクタの複合型システムを含み得るいつかの実施形態を開示する。
【0036】
本開示は、概して、流体をろ過するため及び/又は血液などの体液を含む流体中に含まれたデブリを偏向させるための装置並びに方法に関する。ろ過装置又は偏向装置は、血管内処置(例えば、経カテーテル大動脈弁移植(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)又は経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)、経カテーテル僧帽弁移植(transcatheter mitral valve implantation:TAMI)又は経カテーテル僧帽弁置換(transcatheter mitral valve replacement:TAMR)、外科的大動脈弁置換(surgical aortic valve replacement:SAVR)、他の外科的な弁の修復、移植、又は置換、様々なエネルギー形態(例えば、高周波(radio frequency:RF)、エネルギー、クライオ、マイクロ波、超音波)を用いた心臓アブレーション(例えば、心房細動を治療するための肺静脈のアブレーション)、心臓バイパス手術(例えば、開心、経皮的)、大動脈弓周囲における経胸腔的グラフト配置(transthoracic graft placement)、弁形成、等)の前及び/又は間に動脈内に配置されて、生じたデブリ、栓子、血栓、等のような塞栓物質が脳血管系に進入するのを阻止又は防止することができる。
【0037】
装置は、対象内の他の血管において粒子を捕捉するため及び/又は偏向させるために使用されてもよく、また装置は上記血管系の外部で使用されることも可能である。本願に記載する装置は、一般に対象内の標的位置に経皮的に送達されるように適合されているが、任意の適当な方法で送達されることが可能であり、低侵襲性処置に限定される必要はない。
【0038】
図1は、保護システム40を含んだ大動脈10の一部の概略図である。大動脈は、上行大動脈26、下行大動脈28、及び大動脈弓30を備える。大動脈弓30は左右冠動脈(明確には図示せず)の上流にある。大動脈10は、典型的には、3本の大きな分岐動脈、すなわち、腕頭動脈又は無名動脈12、左総頸動脈14、及び左鎖骨下動脈16を含む。無名動脈12は、右頸動脈18に分岐し、次いで右椎骨動脈20に分岐し、その後右鎖骨下動脈22となる。右鎖骨下動脈22は、血液を右腕に供給しており、右腕から直接アクセスすることができる(右橈骨アクセスと呼ばれる)。左鎖骨下動脈16は、通常、肩領域において左椎骨動脈24に分岐する。左鎖骨下動脈16は、血液を左腕に供給しており、左腕から直接アクセスすることができる(左橈骨アクセス(left radial axis)と呼ばれる)。
図1に示した動脈のうちの4本、すなわち、(1)左総頸動脈14(脳の血液供給の約40%)、(2)右総頸動脈18(脳の血液供給の約40%)、(3)右椎骨動脈20(脳の血液供給の約10%)、及び(4)左椎骨動脈24(脳の血液供給の約10%)が脳血管系に血液を供給する。
【0039】
脳に血液を供給する4本の動脈14,18,20,24すべてに対する血流をろ過すること、及び/又は粒子状物質を脳に供給する動脈14、18、20、24に進入しないように偏向させることが望ましい場合がある。またシステムを留置するのに必要とされる切開部位又は切断部の数を制限することが望ましい場合もある。
図1は右橈骨アクセス切開部を用いて、保護システム40を留置することを示している。しかしながら、保護システム40は、所望により、左橈骨アクセス切開部、大腿切開部又は他の位置を用いて留置されてもよいことが考えられる。
【0040】
保護システム40は、近位部分42と遠位部分44とを備え得る。近位部分42は、患者の体外で保持され、かつ医師などの使用者によって操作されるように構成されている。遠位部分44は、フィルタアセンブリ66が上行大動脈26(又は4本の脳動脈14,18,20,24の上流の他の位置)などの標的位置に位置して、デブリを脳及び他の遠位器官に到達する前に除去するように、配置されるように構成されている。いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ66は、大動脈起始部(明確には図示せず)と無名動脈12の開口部と間の上行大動脈26内に配置され得る。
【0041】
近位部分42は、ハンドル54、スライダなどの制御部56、外側シース52、ポート58、任意選択でノブなどの内側部材並進移動制御部60、及び任意選択でノブなどの止血弁制御部62を備える。近位部分42はまた、外側シース52の半径方向内側に内側部材64も備え得る。近位部分42はまた、外側シース52の半径方向内側にフィルタワイヤ48も備え得る。フィルタワイヤ48は、遠位部分44においてフィルタアセンブリ66に結合されている。外側シース52は、約4フレンチ(Fr)(およそ1.33ミリメートル(mm))~約6Fr(およそ2mm)の直径を有し得る。外側シース52は、用途に応じて、4Fr未満の直径又は6Frを超える直径を有してもよい。外側シース52は傷を与えない遠位先端部を備え得る。保護システム40及び本願に記載する他の保護システムの他の特徴は、可撓性であること、及び/又は傷を与えないことであり得る。外側シース52は、例えば意図した配置位置(例えば上行大動脈26)に基づいて、湾曲を有してもよい。
【0042】
スライダ56は、外側シース52及び/又はフィルタアセンブリ66(例えば、これらはフィルタワイヤ48に結合されている)を並進移動させるために用いることができる。例えば、スライダ56は外側シース52を近位に後退させてもよいし、スライダ56はフィルタアセンブリ66を外側シース52から遠位に進めてもよいし、又はスライダ56は外側シース52を近位に後退させ、(例えば、同時に又は連続して)フィルタアセンブリ66を遠位に進めてもよく、これらによりフィルタアセンブリ66を半径方向に拡張させることができる。スライダ56はまた、反対の並進移動効果を有するように構成されてもよく、これにより、フィルタアセンブリ66が外側シース52に引き込まれるにつれて(例えば外側シース52による圧縮により)フィルタアセンブリ66が半径方向に折り畳まれるようにすることができる。他の留置システムも可能である。例えば、フィルタアセンブリ66を開放及び/又は閉鎖するための他の留置システムは、歯車又はらせん状トラックなどの他の形状構成(例えば、フィルタアセンブリ66の短縮による任意の異なる伸延を補償するように構成されたもの及び/又は回転運動を長手方向運動に変換するように構成されたもの)、機械的要素、空気式要素、液圧式要素、等を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0043】
ポート58は、内側部材64と(例えばハンドル54におけるY形コネクタを通じて)流体が流れるように連通(以下、「流体連通」と記載)し得る。ポート58は、使用前、使用中、及び/又は使用後に装置を(例えば、生理食塩水で)洗い流して、例えば空気を除去するために用いることができる。ポート58はまた、又はこれに代わって、例えば外側シース52の管腔68と流体連通した動脈圧監視装置を接続することにより、標的位置における血圧を監視するために用いることができる。ポート58はまた、又はこれに代わって、造影剤、色素、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などの血栓溶解剤等を注入するために用いることができる。スライダ56は、内側部材64がフィルタアセンブリ66及び/又は外側シース52とは独立して長手方向に可動となるように、内側部材64とは相互作用しない場合がある。内側部材並進移動制御部60は、例えばフィルタアセンブリ66の留置前、留置中及び/又は留置後に、内側部材64を長手方向に並進移動させるために用いることができる。内側部材並進移動制御部60は、ハンドル54において(例えば、スライダ56とは別の)スライダを備えてもよい。
【0044】
回転可能な止血弁制御部62は、使用中に保護装置40を介した流体喪失を低減又は最小限にするために用いることができる。例えば、上行大動脈26に配置された場合、装置40に対する血流の方向は遠位から近位へとなり、従って、血液は、他の場合には、装置40からの圧力降下に従う傾向にあり得る。止血弁制御部62は回転可能なものとして示されているが、他の構成も可能である(例えば、長手方向に変位可能)。止血弁制御部62は、例えば米国特許第8,876,796号において止血弁に関して記載されているように、外側シース52とフィルタアセンブリ66との相対位置を固定するように構成され得る。止血弁62は、例えば、エラストマーシール及び止血弁ナットを備え得る。
【0045】
遠位部分44は、外側シース52と、(送達構成において)外側シース52の半径方向内側にフィルタアセンブリ66と、任意選択で内側部材64とを備え得る。フィルタアセンブリ66は、送達状態又は送達位置では、半径方向において外側シース52と内側部材64との間に存在し(例えば、外側シース52の半径方向内側に存在し、内側部材64はフィルタアセンブリ66の半径方向内側に存在し)得る。
【0046】
フィルタアセンブリ66は、支持要素又はフレーム46、及びフィルタ要素50を備え得る。フレーム46は、フィルタアセンブリ66が(
図1に示すような)拡張状態にあるときに、フィルタ要素50に拡張支持を一般に提供するように構成されたフープ状構造物であり得る。拡張状態において、フィルタ要素50は、フィルタ要素50を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素50内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素50を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。
【0047】
フレーム46は、フィルタアセンブリ66が血管の壁に対して密封されて、大動脈弁を退出する、すべてでないにしても、ほとんどの血流がフィルタ膜50を通って流れるのを保証するように、フィルタアセンブリ66が拡張される管腔(例えば血管)の内壁に係合するか、又は並置されるように構成され得る。フレーム46は、例えば、ニッケルチタン(例えばニチノール)、ニッケルチタンニオブ、クロムコバルト(例えばMP35N、35NLT)、銅アルミニウムニッケル、鉄マンガンケイ素、銀カドミウム、金カドミウム、銅錫、銅亜鉛、銅亜鉛ケイ素、銅亜鉛アルミニウム、銅亜鉛錫、鉄白金、マンガン銅、白金合金、コバルトニッケルアルミニウム、コバルトニッケルガリウム、ニッケル鉄ガリウム、チタンパラジウム、ニッケルマンガンガリウム、ステンレス鋼、及びそれらの組み合わせなどを含むか、又はこれらから構成され得る。フレーム46は、ワイヤ(例えば、丸い(例えば、円形、楕円形)又は多角形(例えば正方形、矩形)の断面を有するもの)を備え得る。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム46は、フィルタアセンブリ66の長手軸線に沿って又は同長手軸線に対して角度をなして長手方向に延びる1本又は2本の直線状脚部を有する円形又は長円形のフープ若しくはフープに形状設定されたニチノールワイヤの直線状部品を備える。直線状脚部の少なくとも1本は、フィルタワイヤ48の一部に結合されるか、又はフィルタワイヤ48の一部を形成し得る。直線状脚部は、フィルタアセンブリ66の長辺上及び/又はフィルタアセンブリ66の短辺上に存在し得る。他の実施形態では、フレーム46はレーザーカットニチノール(又は他の適当な材料)から形成されてもよい。フレーム46は、フィルタアセンブリ66の開口部70の形状を形成し得る。開口部70は、円形、楕円形、又は、上行大動脈26、大動脈弓30、無名動脈12、等のような血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。フィルタアセンブリ66は、概して遠位に向いた開口部70を有し得る。他の実施形態では、開口部70は近位に向いていてもよい。システム40に関する開口部70の向き(例えば近位向き、又は遠位向き)は、アクセス切開部が位置する場所に応じて変化する可能性がある。
【0048】
フレーム46は、所望のように他の形状をとってもよい。いくつかの実施形態では、フレーム46は、拡張可能な又は自己拡張型のステントフレームの一般的な形状をとってもよい。例えば、フレーム46は、近位フープ及び遠位フープを備えてもよい。近位フープ及び遠位フープは、1本以上の略長手方向に延在する支柱で相互接続され得る。いくつかの例示的なフレームは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第9,566,144号に記載されており、この特許文献の全容は、参照により本願に援用される。
【0049】
フレーム46は、蛍光透視法下における可視化を支援するために、フープのまわりに巻き付けられた、又はフープに結合された小さなコイルなどの放射線不透過性マーカを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、フレーム46は、蛍光透視法下でフープを可視化するために、タンタル、白金イリジウム又は他の適当な物質などの放射線不透過性物質から形成されるか、又はそのような放射線不透過性物質で被覆され得る。いくつかの実施形態では、フレームは、例えばらせんなどの、フープ以外の形状を備えてもよい。いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ66は、フレームを備えないか、又は実質的にフレームがない場合がある。
【0050】
いくつかの実施形態では、フレーム46及びフィルタ要素50は、フィルタアセンブリ66のまわりでフィルタアセンブリ66の長さに沿って不均一又は不均等な長さを有する斜円錐台(oblique truncated cone)を形成する。そのような構成では、吹き流しの線に沿って、フィルタアセンブリ66は、より大きな開口部70(上流側)の直径と、縮小した末端(下流側)の直径とを有する。
【0051】
フィルタ要素50は、血液がフィルタ要素50を通って流れるのを許容するように構成されているが、塞栓物質などの粒子がフィルタ要素50を通過するのは阻止及び/又は防止するほど小さい細孔を含み得る。フィルタ要素50は、フレーム46に取り付けられたポリマー(例えばポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)フィルムなどのフィルタ膜を備え得る。いくつかの実施形態では、フィルタ要素50は、ニチノールメッシュ、ステンレス鋼メッシュ、ポリマーメッシュ(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(poly ether ether ketone:PEEK)、又は他の適当な材料若しくは構造で作られていてもよい。例えば、フィルタ要素50は、編物又は織物材料から形成されていてもよい。フィルタ要素50は、約0.0001インチ(0.0025mm)~約0.03インチ(0.76mm)(例えば、わずか約0.0001インチ(0.0025mm)、約0.001インチ(0.025mm)、約0.005インチ(0.13mm)、約0.01インチ(0.25mm)、約0.015インチ(0.38mm)、約0.02インチ(0.51mm)、約0.025インチ(0.63mm)、約0.03インチ(0.76mm)、そのような値の間の範囲、等)の厚さを有し得る。
【0052】
フィルタ要素50は、フィルムを通って延在する複数の細孔又は孔又は開口部を含み得る。フィルムは、製織若しくは編組フィラメント、又は製織若しくは編組膜によって形成されてもよく、細孔はフィラメント間又は膜間の空間であってもよい。フィラメント又は膜は、同一の材料を含んでいてもよいし、又は他の材料(例えばポリマー、金属などの非ポリマー材料、ニチノール、ステンレス鋼などの合金、等)を含んでいてもよい。フィルタ要素50の細孔は、流体(例えば血液)がフィルタ要素50を通過するのを許容し、かつ流体によって運ばれる塞栓物質の通過には抵抗するように構成されている。細孔は、円形、楕円形、正方形、三角形、他の幾何学的形状とすることができる。正三角形、正方形、及びスロットなどの特定の形状は、幾何学的な利点を与える可能性があり、例えば内接円より大きな部分を制限するが、流体流に対して2倍近く大きな面積を提供することで、その形状は流量に対するろ過においてより効率的なものとなる。細孔は、フィルタ要素50内に、又はフィルタ要素50を通って、レーザー穿孔され得るが、他の方法も可能である(例えば、極微針による孔あけ、緩い編組又は製織)。細孔は、約10ミクロン(μm)~約1mm(例えば、わずか約10μm、約50μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約400μm、約500μm、約750μm、約1mm、このような値の間の範囲、等)の側方寸法(例えば直径)を有し得る。例えば捕捉されるべき物質の望ましい最小サイズに応じて、他の細孔サイズも可能である。
【0053】
フィルタ要素50の材料は、管腔内への引張り又は圧縮によって送達状態に折り重ねられるか、または収縮させられる滑らかな表面及び/又はテクスチャ表面を備えてもよい。例えば、フィルタ要素50及びフレーム46は、送達のために外側管状部材52の管腔68内に折り畳まれ得る。圧縮中にフィルタ要素50にかかる応力に対応するために、補強ファブリックをフィルタ要素50に追加又は埋設してもよい。補強ファブリックは、フィルタアセンブリ66の留置及び/又は後退の間に生じる伸張を低減し得る。埋設されたファブリックは、フィルタ要素50の折り重ねを促進して、塞栓デブリの捕捉を容易にし、またエラストマー膜の再捕捉を可能にし得る。補強材は、例えば、ポリマー及び/又は金属の織物(weave)を含み、局所的な強度を加えることができる。補強材をフィルタ要素50内に埋設して、厚さを低減することができる。例えば、埋設された補強材は、フレーム46の長手方向要素付近のフィルタ要素50の部分に取り付けられたポリエステル織物を含むことができ、この部分は、外側シース52から/外側シース52内へのフィルタアセンブリ66の留置及び後退の間にフレーム46及びフィルタ要素50に張力が作用するところである。
【0054】
一部の場合には、フィルタアセンブリ66は、自己拡張型フィルタアセンブリ(例えば、外側シース52内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)を備え得る。フィルタアセンブリ66、又はその一部は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ66、又はその一部は、例えば、米国特許第8,876,796号に記載されたフィルタアセンブリに類似して、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端フープを備えたもの)と、そのフレームに結合された微細孔材料(例えばレーザードリル孔を有したポリマーを含むもの)とを備え得る。
【0055】
フィルタアセンブリ66は、支柱又はワイヤによって、留置ワイヤ又はフィルタワイヤ48の遠位端部に結合(例えば、圧着(crimped)、溶接、はんだ付け、等)され得るが、これは必須ではない。フィルタワイヤ48及び支柱の双方又はすべてが設けられる場合、フィルタワイヤ48及び支柱は、圧着機構を用いて、フィルタアセンブリ66の近位にある外側シース52内で結合され得る。他の実施形態では、フィルタワイヤ48及び支柱は、単一の一体構造であってもよい。フィルタワイヤ48及び/又は支柱は、矩形のリボン、丸い(例えば、円形、楕円形の)フィラメント、ハイポチューブの一部、編組構造物(例えば本願に記載したようなもの)、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フィルタワイヤ48は、ハンドル54及び/又はスライダに結合されて、矢印72によって示されるように、外側シース52に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ66を、外側シース52に収納したり、外側シース52から露出させたりすることができる。本願に記載したように、外側シース52の作動によって、フィルタアセンブリを露出させてもよい。
【0056】
拡張した非拘束状態にあるフィルタアセンブリ66は、フィルタアセンブリ66が留置される所望の血管及び/又は患者に合わせたサイズの最大直径又は有効直径(例えば口部が楕円形状である場合)を有し得る。例えば、大動脈10に留置されたフィルタアセンブリ66は、無名動脈12に留置されたフィルタアセンブリ66より大きな直径を有し得る。異なる直径により、異なる血管サイズを有する選択した対象の治療が可能となり得る。フィルタアセンブリ66は、フィルタアセンブリ66によって引き起こされる圧力降下を最小限にするように選択された最大長さを有し得る。例えば、血液をフィルタに通過させることにより、フィルタを通過する血液の流量は低減され、よってフィルタアセンブリ66の開口部70からフィルタアセンブリ66の尾部への圧力降下が導入され得る。フィルタ要素50の長さは、フィルタアセンブリ66にわたる圧力降下を低減する、又は最小限にするように選択され得る。異なるフィルタ長により、異なる血管サイズを有する選択した対象の治療を可能にし得ることがさらに考えられる。
【0057】
上行大動脈26内に配置されるように構成されたフィルタアセンブリ66は、無名動脈12に配置されるように構成されたフィルタアセンブリ66よりも大きい可能性があることが考えられる。例えば、上行大動脈26は約30~40mmの範囲にある直径を有する可能性があり、一方、無名動脈12は約9~15mmの範囲にある直径を有する可能性がある。よって、上行大動脈内に配置されるように構成されたフィルタアセンブリ66は、フィルタアセンブリ66が血管壁と並置される(in apposition with)ように、より大きな直径を必要とし得る。しかしながら、血液がフィルタ膜50を通って流れるときに生じる圧力降下によりフィルタに高い負荷をもたらすフィルタを通る血液の高い流量により、より大きなフィルタアセンブリ66ほど、フィルタフレーム又はフープ46がそれ自体の上に折れ曲がり得る危険性を増大する可能性がある。例えば、フレーム46が、外側シャフト52に向かって後屈することがある。一部の場合には、フレーム46がフィルタワイヤ48に移行及び/又は接続する地点のフレーム46を補剛することによって、フィルタアセンブリ66がそれ自体の上に折れ曲がるのを防止することを助けることができる。これに代わって、又は加えて、例えばフィルタ要素50の長さを増大することによって、フィルタ要素50の表面積を増大させてもよい。これは、フィルタ要素50における孔又は細孔の数を増大させ、よってより多くの血液が流れることを可能にし、それによりフィルタ要素50に対する圧力を低減することができる。また、フィルタ要素50の表面積(従って細孔の数又は面積)を増大させる他の方法を用いて、圧力降下を低減してもよい。例えば、フィルタ要素50に材料のひだ又は折り目を追加して、表面積を増大させてもよい。
【0058】
いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ66は、フィルタアセンブリ66を折り畳むために、最初に外側シース52内に引き込まれ得る。ガイドワイヤ74は、内側部材64の管腔(明確には図示せず)内にその近位端部又は遠位端部を介して挿入され得る。ガイドワイヤ74を内側部材64の管腔内に配置することによって、ガイドワイヤ74の自由運動を可能にすることができ、フィルタアセンブリ66が外側シース52に収納されるときにガイドワイヤ74の圧縮を防止することができる。フィルタシステム40は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められる。これに代わって、フィルタシステム40は、左橈骨アクセスを用いて進められてもよい。様々な医療処置において、医療器具は、右橈骨動脈より大きな、対象の大腿動脈を通って進められる。大腿動脈アクセス処置に用いられる送達カテーテルは、橈骨動脈を通って進められるフィルタシステムで許容されるよりもより大きな外径を有する。加えて、いくつかの使用において、フィルタシステム40は右橈骨動脈から腕頭動脈を経由して大動脈内に進められる。橈骨動脈は、システムが進められる血管の中で最小の直径を有する。従って、橈骨動脈は、橈骨動脈がアクセスポイントである場合に対象内に進めることができるシステムのサイズを制限する。従って、本願に記載するシステムの外径は、橈骨動脈経由で対象内に進められる場合、典型的には大腿動脈を介してアクセスが得られる場合に用いられるガイディングカテーテル(又はシース)の外径よりも小さい。
【0059】
ガイドワイヤが用いられる場合、システム40は、ガイドワイヤ74と共に進められることができ、ガイドワイヤ74はシステム40の遠位端部を越えて遠位に延在して、外側シース52の先端部による損傷から血管を保護する。システム40は、外側シース52の遠位端部が大動脈弁(明確には図示せず)の上方に又は大動脈弁に隣接して配置されるまで、進められ得る。これに代わって、ガイドワイヤ74が望ましい位置へ進められ、ガイドワイヤ74の遠位端部が標的位置に配置された後に、システム40がガイドワイヤ74上に進められてもよい。
【0060】
特定の解剖学的構造において、外側シース52が無名動脈12を通って、大動脈10内へ進められるとき、外側シース52は、上行大動脈26ではなく、下行大動脈28を下って進められる傾向にある場合がある。これを防止するため、又はこれに合わせて調節するために、外側シース52は、操作者が外側シース52の先端部を上行大動脈26内へ、そして大動脈弁に向かって案内することができるように操舵可能にされ得る。一実施形態において、外側シース52は、装置ハンドル54において制御されるプルワイヤによって作動される偏向可能な先端部を備え得る。これに代わって、加えて、外側シース52は、操作者が外側シース52を回転させて外側シース52の先端部を上行大動脈26の方に向けることを可能にする、予め賦形された偏向した先端部(例えば、ガイドワイヤにおけるJ-先端部に類似したもの)を備えてもよい。予め賦形された先端部は、半硬質又は硬質のスタイレットを外側シース52(及び/又は内側部材64)の管腔に挿入することによって直線状にされ得ることがさらに考えられる。これにより、外側シース52は直線状のまま挿入されることが可能となり、次に外側シース52の先端部が大動脈10に位置したときに、スタイレットを抜去し、よって外側シース52の予め賦形された先端部を上行大動脈26の方向に偏向させることができる。先端部を偏向させる他の方法も用いられてもよい。
【0061】
システム40を配置するときに、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤(contrast)を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのために大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ66の留置後に、外側シース52の内部管腔68及び/又は内側部材64を通って、フィルタアセンブリ66内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、内側部材64のガイドワイヤ管腔又は外側シース52の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ66は、経食道心エコー法(transesophageal echocardiography:TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0062】
システム40が所望位置に位置したら、次にガイドワイヤ74を近位へ後退させることができる。システム40は、送達構成で上行大動脈26に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ66がシステム40内(例えば外側シース52内)において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース52を近位に後退させて、フィルタフレーム46が、
図1に示すように、無名動脈12の開口部の上流の上行大動脈26の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。フィルタ要素50は、支持フレーム46に直接的又は間接的に固定されており、従ってフレーム46の留置により
図1に示す構成に再構成される。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ66は、フィルタワイヤ48の遠位方向の作動により、外側シース52から遠位に進められてもよい。拡張すると、フィルタアセンブリ66は、上行大動脈26を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈12、右総頸動脈18、右椎骨動脈20、左総頸動脈14、左鎖骨下動脈16、左椎骨動脈24、及び下行大動脈28に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ66は、異物粒子が4本の脳動脈14,18,20,24のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。内側部材64は、フィルタアセンブリ66の留置の後に除去可能であってもよいことが考えられるが、これは必須ではない。
【0063】
フィルタアセンブリ66を外側シース52内に再収納(re-sheathe)又は配置して、フィルタアセンブリの再配置を容易にし、フィルタアセンブリ66の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ66を再収納するためには、外側シース52をフィルタアセンブリ66上に遠位に進めてもよいし、フィルタアセンブリ66をフィルタワイヤ48によって外側シース52内へ近位に後退させてもよいし、又はそれらの組み合わせも考えられる。次に、システム40は再配置され、フィルタアセンブリ66が再留置され得る。フィルタアセンブリ66は、フィルタアセンブリ66の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0064】
フィルタアセンブリ66が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ66を再収納して(例えば、外側シース52内に折り畳んで)、システム40を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ66と共に除去される。
【0065】
図2は、遠位フィルタアセンブリ102及び近位フィルタアセンブリ104を備え、右橈骨アクセス切開部を用いて配置された別の保護装置100を示している。保護装置100は、遠位端領域106及び近位端領域(明確には図示せず)を備え得る。近位端領域は、医師などの使用者によって保持及び操作されるように構成され得る。遠位端領域106は、無名動脈12及び/又は大動脈弓30などの、しかしこれらに限定されない標的位置に配置されるように構成され得る。遠位端領域106がそのように留置された場合、血液は、左総頸動脈14、左鎖骨下動脈16、左椎骨動脈24、右総頸動脈18及び右椎骨動脈20に進入する前にろ過される。
【0066】
近位端領域は、本願に記載した近位端領域42に形態及び機能が類似し得る。明確に図示していないが、近位端領域は、ハンドル、スライダなどの制御部、外側シース、ポート、ノブなどの内側部材並進移動制御部、及びノブなどの止血弁制御部を備え得る。いくつかの実施形態では、近位端領域は、
図1に関して示し記載したものよりも少数又は多数の制御要素を備えてもよい。近位端領域はまた、外側シース108の半径方向内側に内側部材を備え得る。明確に図示していないが、近位端領域はまた、外側シースの半径方向内側(かつ時には内側部材の半径方向外側)にフィルタワイヤを備え得る。いくつかの例示的なフィルタワイヤは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第9,566,144号に記載されており、この特許文献の全容は、参照により本願に援用される。
【0067】
遠位端領域106は、(左総頸動脈14の開口部の上流の)大動脈弓30内に留置されるように構成された第1の又は遠位フィルタアセンブリ102と、無名動脈12内に留置されるように構成された第2の又は近位フィルタアセンブリ104とを備え得る。遠位端領域106は、近位(又は外側)シース108、拡張可能な近位フィルタアセンブリ104に結合された近位シャフト110、遠位関節運動可能シース114に結合された遠位シャフト112、遠位フィルタアセンブリ102、及び案内部材116をさらに備え得る。
【0068】
近位シャフト110は、近位シース108と同軸をなし、近位フィルタアセンブリ104の近位領域118は近位シャフト110に固定されている。近位フィルタアセンブリ104は、その折り畳まれた構成(明確には図示せず)で、近位シース108内に配置されることができ、近位シャフト110に対して遠位に配置されている。近位シース108は、近位シャフト110及び近位フィルタアセンブリ104に対して軸線方向に(例えば遠位及び近位に)移動可能であり得る。システム100はまた、遠位シャフト112の遠位領域に固定された遠位シース114も備え得る。遠位シャフト112は、近位シャフト110及び近位シース108と同軸をなし得る。遠位シース114及び遠位シャフト112は互いに固定されて、近位シース108、近位シャフト110及び近位フィルタアセンブリ104に対して軸線方向に移動可能であり得る。システム100はまた、案内部材116によって運ばれる遠位フィルタアセンブリ102も備え得る。明確に図示していないが、遠位フィルタアセンブリ102は、遠位シース114内において折り畳まれた構成に維持され得る。案内部材116は、遠位シース114及び遠位シャフト112、並びに近位シース108及び近位シャフト110と同軸をなし得る。案内部材116は、遠位シース114及び遠位シャフト112、並びに近位シース108及び近位シャフト110に対して軸線方向に移動可能であり得る。近位シース108、遠位シース114及び案内部材116はそれぞれ、互いに対して独立して軸線方向に移動されるように適合され得る。すなわち、近位シース108、遠位シース114及び案内部材116は、他の2つの構成要素の各々に対して独立して軸線方向に並進移動するように適合されている。本願に記載したハンドル54に形態及び機能が類似し得るハンドルは、近位シース108、遠位シース114及び案内部材116を個々に作動させるように構成された制御要素(例えば、スライド、スイッチ、ボタン、ダイヤル、等などであるが、これらに限定されるものではない)を備え得ることが考えられる。
【0069】
近位フィルタアセンブリ104は、支持要素又はフレーム120、及びフィルタ要素122を備え得る。同様に、遠位フィルタアセンブリ102は、支持要素124及びフィルタ要素126を備える。フレーム120,124は、拡張状態にあるフィルタ要素122,126に拡張支持を一般に提供し得る。拡張状態において、フィルタ要素122,126は、フィルタ要素122,126を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素122,126内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素122,126を通って流れるのを阻止又は防止するように構成されている。フレーム120,124は、フィルタアセンブリ102,104が拡張される管腔(例えば血管)の内壁に係合又は対向するように構成されている。フレーム120,124は、本願に記載したフレーム46に形態及び機能が類似し得る。フィルタ要素122,126は、本願に記載したフィルタ要素50に形態及び機能が類似し得る。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム120,124は、フィルタアセンブリ102,104の長手軸線に沿って又は同長手軸線に対して角度をなして長手方向に延びる1本又は2本の直線状脚部を有した円形又は長円形の1つ以上のフープに形状設定されたニチノールワイヤの直線状部品を備え得る。直線状脚部の少なくとも1本は、遠位フィルタアセンブリ102に関して示すように、フィルタワイヤ130又は支柱128に結合され得る。直線状脚部は、フィルタアセンブリ102,104の長辺上及び/又はフィルタアセンブリ102,104の短辺上に存在し得る。フレーム120,124は、フィルタアセンブリ102,104の開口部132,134の形状を形成し得る。開口部132,134は、円形、楕円形、又は血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。遠位フィルタアセンブリ102は、概して近位に向いた開口部134を有し得る。近位フィルタアセンブリ104は、概して遠位に向いた開口部132を有し得る。開口部132,134の向きは、アクセス切開部が位置する場所に応じて変化する可能性がある。例えば、
図2に示すように、右半身を通る挿入のためのシステム100に対して、近位フィルタアセンブリ104は概して遠位に向いた開口部132を有し、遠位フィルタアセンブリ102は概して近位に向いた開口部134を有する。開口部132,134の構成は、左半身を通る挿入のために逆転されてもよいことが考えられる。フィルタアセンブリ102,104は、反対方向に向いていると考えられる。
【0070】
一部の場合には、フィルタアセンブリ102,104は、自己拡張型フィルタアセンブリ(例えば、外側シース108内及び/又は遠位シース114内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)を備え得る。フィルタアセンブリ102,104は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ102,104は、例えば、米国特許第8,876,796号に記載されたフィルタアセンブリに類似して、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端フープを備えたもの)と、そのフレームに結合された微細孔材料(例えばレーザードリル孔を有したポリマーを含むもの)とを備え得る。
【0071】
遠位フィルタアセンブリ102は、支柱又はワイヤ128によって、留置ワイヤ又はフィルタワイヤ130の遠位端部に結合(例えば、圧着、溶接、はんだ付け、等)され得るが、これは必須ではない。いくつかの実施形態では、近位フィルタアセンブリ104もまたフィルタワイヤ又は支柱(明確には図示せず)に結合され得る。フィルタワイヤ130及び支柱128の双方又はすべてが設けられる場合、フィルタワイヤ130及び支柱128は、圧着機構を用いて、フィルタアセンブリ102の近位にある案内部材116内で結合され得る。他の実施形態では、フィルタワイヤ130及び支柱128は、単一の一体構造であってもよい。フィルタワイヤ130及び/又は支柱128は、矩形のリボン、丸い(例えば、円形、楕円形の)フィラメント、ハイポチューブの一部、編組構造物(例えば本願に記載したようなもの)、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フィルタワイヤ130は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース108に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、遠位フィルタアセンブリ102を、遠位シース114に収納したり、遠位シース114から露出させたりすることができる。同様に、近位フィルタアセンブリ104を、ハンドル上の機構の作動によって、又はハンドル自体の動きによって、露出させてもよい。
【0072】
拡張した非拘束状態にあるフィルタアセンブリ102,104は、最大直径又は有効直径(例えば口部が楕円形状である場合)を有し得る。上記直径は約1mm~約40mm、又はそれ以上とすることができる。他の直径又は他の種類の側方寸法も可能である。異なる直径により、異なる血管サイズを有する選択した対象の治療を可能にすることができる。フィルタアセンブリ102,104は最大長さを有し得る。この長さは約7mm~約50mm、又はそれ以上とすることができる。また、例えば直径又は有効直径に基づいて、他の長さも可能である。例えば、フィルタアセンブリ102,104の長さは、直径が拡大するにつれて増大してもよく、またフィルタアセンブリ102,104の長さは、直径が縮小するにつれて減少してもよい。フィルタアセンブリ102,104の口部の頂点からフレームにおけるひじ部までの距離は、約35mmであり得る。異なる長さにより、異なる血管サイズを有する選択した対象の治療を可能にすることができる。
【0073】
本願においてより詳細に記載するように、遠位シース114は、近位シース108及び近位フィルタアセンブリ104に対して、操舵されるか、又は曲げられるように適合され得る。遠位シース114が操舵されると、開口部が向く相対方向が調節されるであろう。遠位シース114が操舵される度合いに関わらず、フィルタアセンブリ102,104は、反対方向に向いた開口部を有するものと依然として考えられる。例えば、およそ90度の屈曲を有するように遠位シース114を操舵することができ、その場合、フィルタアセンブリ102,104は、
図2に示すように、ほぼ直交角度に向いた開口部132,134を有することになる。従って、システムが実質的に直線状になった構成をとった場合(明確には図示せず)の、フィルタ開口部132,134の方向が説明される。近位フィルタ要素122は、支持要素120から近位方向に先細になっていてもよく、一方、遠位フィルタ要素126は、支持要素124から遠位方向に先細になっていてもよい。フィルタ要素122,126は、異物粒子を内部に捕捉し、異物粒子がフィルタアセンブリの下流の位置に通過するのを防止するように適合されているが、血液などの流体は開口部を通って流れ、フィルタ要素122,126の細孔を通過する。
【0074】
フィルタアセンブリ102,104は、別個のシステム構成要素に固定され得る。例えば、近位フィルタアセンブリ104は近位シャフト110に固定されており、一方、遠位フィルタアセンブリ102は案内部材116に固定されている。
図2では、フィルタアセンブリ102,104は、独立して作動可能な構成要素に固定されている。これにより、フィルタアセンブリ102,104を独立して配置及び制御することが可能となる。加えて、フィルタアセンブリ102,104は、それらの折り畳まれた構成では、2つの異なる管状部材内に折り畳まれ得る。例えば、近位フィルタアセンブリ104は近位シース108内に折り畳まれ、一方、遠位フィルタアセンブリ102は遠位シース114内に折り畳まれる。システムの送達構成では、フィルタアセンブリ102,104は、互いから軸線方向に離間されている。例えば、
図2において、遠位フィルタアセンブリ102は、近位フィルタアセンブリ104に対して遠位に離間されている。しかしながら、代替実施形態では、フィルタアセンブリ102,104は、第1のフィルタが第2のフィルタ内に位置するように配置されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、遠位シース114及び近位シース108は実質的に同一の外径を有する。フィルタアセンブリ102,104が各シース114,108内に折り畳まれると、システム100のシース部分は、従って実質的に一定の外径を有し、これにより、患者の体を通るシステム100の送達を容易にし、送達の安全性を高めることができる。遠位シース及び近位シース114,108は、実質的に同一の外径を有することができ、それらの外径は双方とも近位シャフト110よりも大きな外径を有する。近位シャフト110は遠位シャフト112より大きな外径を有することができ、遠位シャフト112は近位シャフト110内に配置されている。案内部材116は遠位シャフト112より小さな直径を有し得る。いくつかの実施形態では、近位シース及び遠位シース108,114は、約3フレンチ(F)~14Fの外径を有する。特定の実施形態では、この外径は約4F~8Fである。さらに別の実施形態では、この外径は4F~6Fである。いくつかの実施形態では、シース108,114は異なる外径を有する。例えば、近位シース108は6Fのサイズを有することができ、一方、遠位シース114は5Fのサイズを有する。代替実施形態において、近位シース108は約5Fであり、遠位シース114は約4Fである。これらは例に過ぎず、シース108,114を特定のサイズに限定することは意図していない。近位シース108より小さな外径を有した遠位シース114は、システム100の送達外形を縮小する可能性があり、送達を容易にすることができる。
【0076】
いくつかの使用方法において、フィルタシステム100は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められる。様々な医療処置において、医療器具は、右橈骨動脈より大きな、対象の大腿動脈を通って進められる。大腿動脈アクセス処置に用いられる送達カテーテルは、橈骨動脈を通って進められるフィルタシステムで許容されるよりもより大きな外径を有し得る。加えて、いくつかの使用において、フィルタシステムは右橈骨動脈から腕頭動脈を経由して大動脈内に進められる。橈骨動脈は、システムが進められる血管の中で最小の直径を有する。従って、橈骨動脈は、橈骨動脈がアクセスポイントである場合に対象内に進めることができるシステムのサイズを制限する。従って、本願に記載するシステムの外径は、橈骨動脈経由で対象内に進められる場合、典型的には大腿動脈を介してアクセスが得られる場合に用いられるガイディングカテーテル(又はシース)の外径よりも小さい。いくつかの実施形態では、システム100はガイドワイヤ136上で進められ得るが、これは必須ではない。
【0077】
システム100は、送達構成で、大動脈弓30及び無名動脈12に送達され得る。システムの送達構成とは、双方のフィルタアセンブリ102,104がシステム内(例えば遠位シース及び近位シース114,108内)において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。遠位関節式シース114は、近位シース108及び近位フィルタアセンブリ104に対して3自由度で独立して可動であり得る。いくつかの実施形態では、近位シース108及び遠位シース114は解放可能に共に結合され得る。例えば、締り嵌め、摩擦適合、スプライン嵌合、端と端との突き合わせ嵌合(end to end butt fit)、又は2つのシース108,114の間に適当な他の種類の結合を用いて、近位シース108を遠位シース114に結合させることができる。共に結合されると、構成要素は一体として動く。例えば、近位シース108、近位シャフト110、近位フィルタアセンブリ104、遠位シャフト112及び遠位フィルタアセンブリ102は、一体として、回転し、軸線方向に(近位方向又は遠位方向に)並進移動するであろう。近位シース108を後退させて、近位フィルタアセンブリ104が拡張できるようにするとき、遠位シース114は、独立して、回転され、操舵され、又は軸線方向に(近位方向又は遠位方向のいずれかに)並進移動され得る。従って、遠位シース114は、軸線方向の並進移動、回転、及び操舵の3つの独立した自由度を有する。3つの独立した自由度を有するように適合させることは、遠位シース114を標的位置に配置する場合に有益であり、その詳細をここで説明する。
【0078】
システム100は、右腕の切開部を通じて、又は代わりに右上腕動脈を通って、対象の右橈骨動脈内に進められる。システムは、右鎖骨下動脈22を通って、腕頭動脈又は無名動脈12内に進められ、システムの一部は大動脈弓30内に配置される。近位シース108を近位に後退させて、近位フィルタ支持要素120が、
図2に示すように、無名動脈12の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。近位フィルタ要素122は、支持要素120に直接的又は間接的に固定されており、従って
図2に示す構成に再構成される。近位シース108を近位に後退させている間、遠位シース114の位置は実質的に維持され得る。拡張されると、近位フィルタアセンブリ104は、無名動脈12を通って進行する血液をろ過し、従って、右総頸動脈18及び右椎骨動脈20に進行する血液をろ過する。従って、拡張した近位フィルタアセンブリ104は、異物粒子が右総頸動脈18及び右椎骨動脈20に、並びに脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0079】
次に、遠位シース114が操舵されるか、又は曲げられて、遠位フィルタ支持要素124が左総頸動脈14の開口部の上流(かつ無名動脈12の開口部の下流)に留置されるように構成されるように、遠位シース114の遠位端部が大動脈弓30内に配置される。その後、案内部材116が遠位シース114に対して遠位に進められて、遠位支持要素124が、
図2に示すように、折り畳まれた構成から大動脈弓30の壁に対して留置構成に拡張することが可能となる。遠位フィルタ要素126もまた
図2に示す構成に再構成される。拡張されると、遠位フィルタアセンブリ102は、大動脈弓30を通って進行する血液、よって左総頸動脈14及び左鎖骨下動脈16を通って進行する血液をろ過する。従って、遠位フィルタアセンブリ102は、異物粒子を捕捉し、それらの異物粒子が脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。いくつかの実施形態では、遠位フィルタアセンブリ102は、近位フィルタアセンブリ104の留置の前に留置されてもよい。
【0080】
図3は、別の例示的なフィルタアセンブリ200の部分斜視図である。フィルタアセンブリ200は、
図1に関して記載した外側シース52に形態及び機能が類似し得る外側シース202内の標的位置に進められるように構成され得る。フィルタアセンブリ200は、支持要素又はフレーム204及びフィルタ要素206を備え得る。フレーム204は、拡張状態にあるフィルタ要素206に拡張支持を一般に提供するように構成されたフープ状構造物であり得る。拡張状態において、フィルタ要素206は、フィルタ要素206を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素206内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素206を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。
【0081】
フレーム204は本願に記載したフレーム46に形態及び機能が類似し得る。フィルタ要素206は本願に記載したフィルタ要素50に形態及び機能が類似し得る。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム204は、フィルタアセンブリ200の長手軸線に沿って又は同長手軸線に対して角度をなして長手方向に延びる1本又は2本の直線状脚部208を有する円形又は長円形のフープ若しくはフープに形状設定されたニチノールワイヤの直線状部品を備える。直線状脚部の少なくとも1本は、フィルタワイヤ210又は支柱に結合され得る。直線状脚部は、フィルタアセンブリ200の長辺上及び/又はフィルタアセンブリ200の短辺上に存在し得る。フレーム204は、フィルタアセンブリ200の開口部212の形状を形成し得る。開口部212は、円形、楕円形、又は血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。フィルタアセンブリ200は、概して遠位に向いた開口部212を有し得る。他の実施形態では、開口部212は近位に向いていてもよい。開口部212の向きは、アクセス切開部が位置する場所及び/又はフィルタアセンブリ200が配置される血管に応じて、変化する可能性がある。
【0082】
一部の場合には、フィルタアセンブリ200は、自己拡張型フィルタアセンブリ(例えば、外側シース202内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)を備え得る。フィルタアセンブリ200は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ200は、例えば、米国特許第8,876,796号に記載されたフィルタアセンブリに類似して、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端フープを備えたもの)と、そのフレームに結合された微細孔材料(例えばレーザードリル孔を有したポリマーを含むもの)とを備え得る。
【0083】
フィルタアセンブリ200は、脚部208などの、しかしこれに限定されない支柱又はワイヤによって、留置ワイヤ又はフィルタワイヤ210の遠位端部に結合(例えば、圧着、溶接、はんだ付け、等)され得るが、これは必須ではない。フィルタワイヤ210及び支柱208の双方又はすべてが設けられる場合、フィルタワイヤ210及び支柱は、圧着機構を用いて、フィルタアセンブリ200の近位で結合され得る。他の実施形態では、フィルタワイヤ210及び支柱208は、単一の一体構造であってもよい。フィルタワイヤ210及び/又は支柱208は、矩形のリボン、丸い(例えば、円形、楕円形の)フィラメント、ハイポチューブの一部、編組構造物(例えば本願に記載したようなもの)、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フィルタワイヤ210は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース202に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ200を、外側シース202に収納したり、外側シース202から露出させたりすることができる。
【0084】
フィルタアセンブリ200は、1つ以上の支持要素又はタイン214a,214b,214c,214d(まとめて214)をさらに備え得ることが考えられる。1本以上のタイン214は、フィルタワイヤ210からフィルタフレーム204に向かって遠位に延在し得る。近位に向いたフィルタについては、1本以上のタイン214は、フィルタの遠位端部からフィルタフレームに向かって近位に延在し得る。1本以上のタイン214は、フィルタワイヤ210からフィルタフレーム204までのフィルタアセンブリ200の全長又はフィルタワイヤ210とフィルタフレーム204との間の全長未満に延在し得ることが考えられる。いくつかの実施形態では、1本以上のタイン214は、フィルタワイヤ210とフィルタフレーム204との間の長さの99%以下、90%以下、70%以下、50%以下、30%以下に延在し得る。これらは一部の例に過ぎない。1本以上のタイン214は、所望により、フィルタワイヤ210とフィルタフレーム204との間の任意の長さに延在してもよい。いくつかの実施形態では、タイン214は、フィルタ膜206のまわりにほぼ等間隔で一様に離間されていてもよい。他の実施形態では、タイン214は、所望により、偏心的にて配置されていてもよい。フィルタアセンブリ200は、ゼロ、1、2、3、4、5、6、又はそれ以上などの、しかしこれらに限定されない任意の数のタイン214を備えてもよいことがさらに考えられる。タイン214は、タイン214がフィルタアセンブリ200に付加的な構造的支持を提供するように、フィルタ要素206よりも剛性の高い材料から形成され得る。
【0085】
フィルタアセンブリ200の送達は、本願に記載したフィルタアセンブリ66の送達に類似し得る。いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ200は、フィルタアセンブリ200を折り畳むために(明確には図示せず)、最初に外側シース202内に引き込まれ得る。外側シース202は、所望により、ガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで、標的位置へ進められ得る。フィルタシステム220(例えば、フィルタアセンブリ200、外側シース202及び他の送達構成要素)は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められ得る。しかしながら、システム220は、左橈骨アクセス、左上腕アクセス、大腿部アクセス、等を含むが、これらに限定されない、所望のアクセス位置を用いて進められてもよい。
【0086】
システム220を配置するとき、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのための大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ200の留置の前又は後に、外側シース202の内部管腔を通って、フィルタアセンブリ200内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、(提供されている場合には)内側部材のガイドワイヤ管腔を介して、又は内側部材が除去されている場合には外側シース202の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ200は、経食道心エコー法(TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0087】
システム220が所望位置に位置したら、次に(使用されている場合には)ガイドワイヤを近位へ後退させることができる。システム220は、送達構成で上行大動脈(例えば
図1参照)に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ200が外側シース202内において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース202を近位に後退させて、フィルタフレーム204が、無名動脈の開口部の上流の上行大動脈の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。フィルタ要素206は、支持フレーム204に直接的又は間接的に固定されており、従って
図3に示す構成に再構成される。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ200は、フィルタワイヤ210の遠位方向の作動により、外側シース202から遠位に進められてもよい。拡張されると、フィルタアセンブリ200は、上行大動脈を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈、右総頸動脈、右椎骨動脈20、左総頸動脈14、左鎖骨下動脈16、左椎骨動脈、及び下行大動脈に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ200は、異物粒子が4本の脳動脈のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0088】
フィルタアセンブリ200を外側シース202内に再収納又は配置して、フィルタアセンブリの再配置を容易にし、フィルタアセンブリ200の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ200を再収納するためには、外側シース202をフィルタアセンブリ200上に遠位に進めてもよいし、フィルタアセンブリ200をフィルタワイヤ210によって外側シース内へ近位に後退させてもよいし、又はそれらの組み合わせも考えられる。次に、システム220は再配置され、フィルタアセンブリ200が再留置され得る。フィルタアセンブリ200は、フィルタアセンブリ200の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0089】
フィルタアセンブリ200が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ200を収納して(例えば、外側シース202内に折り畳んで)、システム220を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ200と共に除去される。
【0090】
図4は、別の例示的なフィルタアセンブリ300の部分斜視図である。フィルタアセンブリ300は、
図1に関して記載した外側シース52に形態及び機能が類似し得る外側シース302内の標的位置に進められるように構成され得る。フィルタアセンブリ300は、支持要素又はフレーム304、及びフィルタ要素308を備え得る。フレーム304は、拡張状態にあるフィルタ要素308に拡張支持を一般に提供するように構成されたフープ状構造物であり得る。拡張状態において、フィルタ要素308は、フィルタ要素308を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素308内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素308を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。
【0091】
フレーム304は本願に記載したフレーム46に形態及び機能が類似し得る。フィルタ要素308は本願に記載したフィルタ要素50に形態及び機能が類似し得る。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム304は、フィルタアセンブリ300の長手軸線に沿って又は同長手軸線に対して角度をなして長手方向に延びる1本又は2本の直線状脚部312を有する円形又は長円形のフープ若しくはフープに形状設定されたニチノールワイヤの直線状部品を備えるが、これは必須ではない。直線状脚部312の少なくとも1本は、フィルタワイヤ310又は支柱に結合され得る。直線状脚部312は、フィルタアセンブリ300の長辺上及び/又はフィルタアセンブリ300の短辺上に存在し得る。フレーム304は、フィルタアセンブリ300の開口部314の形状を形成し得る。開口部314は、円形、楕円形、又は血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。フィルタアセンブリ300は、概して遠位に向いた開口部314を有し得る。他の実施形態では、開口部314は近位に向いていてもよい。開口部314の向きは、アクセス切開部が位置する場所及び/又はフィルタアセンブリ300が配置される血管に応じて、変化する可能性がある。
【0092】
いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ300は、第2の、又は付加的なフープ状支持構造物306を備え得る。支持構造物306は、フィルタアセンブリ300の周囲の一部のまわりに延在する湾曲した遠位端領域316と、略長手方向に延在する近位部分318とを有し得る。近位部分318は、脚部320a,320b(まとめて320)の対を備え得る。脚部320の近位部分はフィルタワイヤ310に固定され得るが、脚部320の遠位端部は支持構造物306の遠位部分316によって相互接続されている。支持構造物306はフィルタフレーム304の近位に配置されて、フィルタ要素308を補剛し、フィルタアセンブリ300の良好な拡張及び並置を保証し得る。しかしながら、支持構造物306及び/又はフィルタフレーム304の他の構成も考えられる。例えば、一実施形態において、支持構造物306はフィルタフレーム304の遠位に配置されてもよい。これに代わって、又は加えて、支持構造物306は、らせん状又はばね状の形状を有してもよい。
【0093】
一部の場合には、フィルタアセンブリ300は、自己拡張型フィルタアセンブリ(例えば、外側シース302内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)を備え得る。フィルタアセンブリ300は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ300は、例えば、米国特許第8,876,796号に記載されたフィルタアセンブリに類似して、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端フープを備えたもの)と、そのフレームに結合された微細孔材料(例えばレーザードリル孔を有したポリマーを含むもの)とを備え得る。
【0094】
フィルタアセンブリ300は、脚部312及び/又は脚部320などの、しかしこれらに限定されない支柱又はワイヤによって、留置ワイヤ又はフィルタワイヤ310の遠位端部に結合(例えば、圧着、溶接、はんだ付け、等)され得るが、これは必須ではない。フィルタワイヤ310及び支柱の双方又はすべてが設けられる場合、フィルタワイヤ310及び支柱は、圧着機構を用いて、フィルタアセンブリ300の近位で結合され得る。他の実施形態では、フィルタワイヤ310及び支柱(又は脚部312)は、単一の一体構造であってもよい。フィルタワイヤ310及び/又は支柱は、矩形のリボン、丸い(例えば、円形、楕円形の)フィラメント、ハイポチューブの一部、編組構造物(例えば本願に記載したようなもの)、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フィルタワイヤ310は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース302に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ300を、外側シース302に収納したり、外側シース302から露出させたりすることができる。
【0095】
フィルタアセンブリ300の送達は、本願に記載したフィルタアセンブリ66の送達に類似し得る。いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ300は、フィルタアセンブリ300(明確には図示せず)を折り畳むために、最初に外側シース302内に引き込まれ得る。外側シース302は、所望により、ガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで、標的位置へ進められ得る。フィルタシステム330(例えば、フィルタアセンブリ300、外側シース302及び他の送達構成要素)は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められ得る。しかしながら、システム330は、左橈骨アクセス、左上腕アクセス、大腿部アクセス、等を含むが、これらに限定されない、所望のアクセス位置を用いて進められてもよい。
【0096】
システム330を配置するとき、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのための大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ300の留置の前又は後に、外側シース302の内部管腔を通って、フィルタアセンブリ300内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、(提供されている場合には)内側部材のガイドワイヤ管腔を介して、又は内側部材が除去されている場合には外側シース302の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ300は、経食道心エコー法(TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0097】
システム330が所望位置に位置したら、次に(使用されている場合には)ガイドワイヤを近位へ後退させることができる。システム330は、送達構成で上行大動脈(例えば
図1参照)に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ300が外側シース302内において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース302を近位に後退させて、フィルタフレーム304が、無名動脈の開口部の上流の上行大動脈の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。フィルタ要素308は、支持フレーム304に直接的又は間接的に固定されており、従って
図4に示す構成に再構成される。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ300は、フィルタワイヤ310の遠位方向の作動により、外側シース302から遠位に進められてもよい。拡張されると、フィルタアセンブリ300は、上行大動脈を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈、右総頸動脈18、右椎骨動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈、左椎骨動脈、及び下行大動脈に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ300は、異物粒子が4本の脳動脈のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0098】
フィルタアセンブリ300を外側シース302内に再収納又は配置して、フィルタアセンブリの再配置を容易にし、フィルタアセンブリ300の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ300を再収納するためには、外側シース302をフィルタアセンブリ300上に遠位に進めてもよいし、フィルタアセンブリ300をフィルタワイヤ310によって外側シース302内へ近位に後退させてもよいし、又はそれらの組み合わせも考えられる。次に、システム330は再配置され、フィルタアセンブリ300が再留置され得る。フィルタアセンブリ300は、フィルタアセンブリ300の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0099】
フィルタアセンブリ300が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ300を収納して(例えば、外側シース302内に折り畳んで)、システム330を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ300と共に除去される。
【0100】
図5は、フィルタアセンブリ400を含んだ大動脈10の一部の概略図である。フィルタアセンブリ400は、
図1に関して記載した外側シース52に形態及び機能が類似し得る外側シース402内の標的位置に進められるように構成され得る。フィルタアセンブリ400は、支持要素又はフレーム404及びフィルタ要素406を備え得る。フレーム404は、拡張状態にあるフィルタ要素406に拡張支持を一般に提供するように構成されたフープ状構造物であり得る。拡張状態において、フィルタ要素406は、フィルタ要素406を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素406内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素406を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。
【0101】
フレーム404は、本願に記載したフレーム46に形態及び機能が類似し得る。フィルタ要素406は、本願に記載したフィルタ要素50に形態及び機能が類似し得る。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム404は、フープとフィルタワイヤ412との間に延在する1本以上の支柱408を備えた円形又は長円形のフープ若しくはフープに形状設定されたニチノールワイヤの直線状部品を備える。支柱408が外側シース402内において作動機構(フィルタワイヤ412であり得る)に結合されたまま、フィルタ要素406の一部が大動脈弓30内及び場合により下行大動脈28内に自由に延在することができるように、支柱408はフィルタ要素406との結合から解放されている場合があるが、これは必須ではない。フレーム404は、フィルタアセンブリ400の開口部414の形状を形成し得る。開口部414は、円形、楕円形、又は血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。フィルタアセンブリ400は、概して遠位に向いた開口部414を有し得る。他の実施形態では、開口部414は近位に向いていてもよい。開口部414の向きは、アクセス切開部が位置する場所及び/又はフィルタアセンブリ400が配置される血管に応じて、変化する可能性がある。
【0102】
一部の場合には、フィルタアセンブリ400は、自己拡張型フィルタアセンブリ(例えば、外側シース402内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)を備え得る。フィルタアセンブリ400は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ400は、例えば、米国特許第8,876,796号に記載されたフィルタアセンブリに類似して、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端フープを備えたもの)と、そのフレームに結合された微細孔材料(例えばレーザードリル孔を有したポリマーを含むもの)とを備え得る。
【0103】
フィルタアセンブリ400は、脚部408などの、しかしこれに限定されない支柱又はワイヤによって、留置ワイヤ又はフィルタワイヤ412の遠位端部に結合(例えば、圧着、溶接、はんだ付け、等)され得るが、これは必須ではない。フィルタワイヤ412及び支柱の双方又はすべてが設けられる場合、フィルタワイヤ412及び支柱は、圧着機構を用いて、フィルタアセンブリ400の近位で結合され得る。他の実施形態では、フィルタワイヤ412及び支柱408は、単一の一体構造であってもよい。フィルタワイヤ412及び/又は支柱408は、矩形のリボン、丸い(例えば、円形、楕円形の)フィラメント、ハイポチューブの一部、編組構造物(例えば本願に記載したようなもの)、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フィルタワイヤ412は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース402に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ400を、外側シース402に収納したり、外側シース402から露出させたりすることができる。
【0104】
フィルタ要素406は、「吹き流し」形のフィルタバッグを備えることができ、このフィルタバッグの近位端領域416又は基部は、外側シース402及び/又はフィルタワイヤ412から離れて、大動脈弓30内に及び/又は大動脈弓30を横切って延在することができる。例えば、フィルタバック406は、閉鎖された近位端領域416を備えた略管状形状を有し得る。フィルタ要素406におけるフィルタ孔の数及び位置は、フィルタ要素406にわたる圧力勾配を最適化して、良好な壁への並置(wall apposition)及び密封を保証するために変更され得る。一実施形態では、テザー410が、外側シース402の近位端部から(例えばハンドルから)フィルタアセンブリ400まで遠位に延在し得る。テザー410の遠位端部は、フィルタ要素406の基部416に結合され得る。テザー410は、織った縫合材料などで形成され得る。テザー410の材料は、回収中にフィルタアセンブリ400を折り畳み、フィルタ要素406が一塊になるのを防止するために、フィルタアセンブリ400の回収中にテザー410に張力を作用させて、フィルタ要素406の基部416を外側シース402内に引き戻すことができるようなものとすることができる。
【0105】
フィルタアセンブリ400の送達は、本願に記載したフィルタアセンブリ66の送達に類似し得る。いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ400は、フィルタアセンブリ400(明確には図示せず)を折り畳むために、最初に外側シース402内に引き込まれ得る。外側シース402は、所望により、ガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで、標的位置へ進められ得る。フィルタシステム420(例えば、フィルタアセンブリ400、外側シース402及び他の送達要素)は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められ得る。しかしながら、システム420は、左橈骨アクセス、左上腕アクセス、大腿部アクセス、等を含むが、これらに限定されない、所望のアクセス位置を用いて進められてもよい。
【0106】
システム420を配置するとき、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのための大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ400の留置の前又は後に、外側シース402の内部管腔を通って、フィルタアセンブリ400内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、(提供されている場合には)内側部材のガイドワイヤ管腔を介して、又は内側部材が除去されている場合には外側シース402の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ400は、経食道心エコー法(TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0107】
システム420が所望位置に位置したら、次に(使用されている場合には)ガイドワイヤを近位へ後退させることができる。システム420は、送達構成で上行大動脈26に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ400が外側シース402内において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース402を近位に後退させて、フィルタフレーム404が、無名動脈12の開口部の上流の上行大動脈26の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。フィルタ要素406は、支持フレーム404に直接的又は間接的に固定されており、従って
図5に示す構成に再構成される。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ400は、フィルタワイヤ412の遠位方向の作動により、外側シース402から遠位に進められてもよい。拡張されると、フィルタアセンブリ400は、上行大動脈26を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈12、右総頸動脈18、右椎骨動脈20、左総頸動脈14、左鎖骨下動脈16、左椎骨動脈24、及び下行大動脈28に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ400は、異物粒子が4本の脳動脈14,18,20,24のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0108】
フィルタアセンブリ400を外側シース402内に再収納又は配置して、フィルタアセンブリの再配置を容易にし、フィルタアセンブリ400の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ400を再収納するためには、外側シース402をフィルタアセンブリ400上に遠位に進めてもよいし、フィルタアセンブリ400をフィルタワイヤ408によって外側シース内へ近位に後退させてもよいし、又はそれらの組み合わせも考えられる。次に、システム420は再配置され、フィルタアセンブリ400が再留置され得る。フィルタアセンブリ400は、フィルタアセンブリ400の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0109】
フィルタアセンブリ400が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ400を収納して(例えば、外側シース402内に折り畳んで)、システム420を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ400と共に除去される。
【0110】
図6は、別の例示的なフィルタアセンブリ500の部分斜視図である。フィルタアセンブリ500は、
図1に関して記載した外側シース52に形態及び機能が類似し得る外側シース502内の標的位置に進められるように構成され得る。フィルタアセンブリ500は細長い管状本体504を備え得る。フィルタアセンブリ500は略管状として描かれているが、フィルタアセンブリ500は、所望されるいかなる断面形状をとってもよいことが考えられる。フィルタアセンブリ500は、第1の又は近位端部506と、第2の又は遠位端部508と、第1の端部506と第2の端部508との間に配置された中間領域510とを有し得る。フィルタアセンブリ500は、遠位端部508に隣接した開口部から近位端部506まで延在する空洞512を含み得る。近位端部506は空洞512内に粒子を捕捉するために閉鎖され得る。
【0111】
フィルタアセンブリ500は、第1の半径方向に折り畳まれた構成(明確に図示せず)から第2の半径方向に拡張した構成に拡張可能であり得る。一部の場合には、フィルタアセンブリ500は、折り畳まれた構成と完全に拡張した構成との間の構成に展開されてもよい。拡張状態において、管状本体504は、管状本体504を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、管状本体504内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)が管状本体504を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。管状本体504は、多数のフィラメントから作製された織物構造を有し得る。いくつかの実施形態では、管状本体504は、1本のフィラメントで編組されていてもよい。他の実施形態では、管状本体504は、何本かのフィラメントで編組されていてもよい。別の実施形態では、管状本体504は編まれていてもよい。さらに別の実施形態では、管状本体504は有結節タイプのものであってもよい。また別の実施形態では、管状本体504はレーザーカットされていてもよい。
【0112】
一部の実施形態では、管状本体504は、自己拡張型(例えば、外側シース502内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)であり得る。フィルタアセンブリ500は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ500は、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端部フープを備えたもの)を備え得る。管状本体504は、隣り合うフィラメント間の空間(又は隣り合うフィラメント間に形成される他の開口部)が、管状本体504内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)が管状本体504を通って流れるのを阻止又は防止できるほど小さくなるように、織られている、編組されている、編まれている、結ばれている、レーザー穿孔されている、等とすることができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、遠位端部508は、中間領域510及び/又は近位端部506の外径より大きな外径を有し得る。これは、フィルタアセンブリ500が留置されるときに、壁との良好な並置を提供するのを助けることができる。しかしながら、これは必須ではない。他の実施形態では、遠位端部508及び中間領域510は、実質的に一様な外径を有してもよい。近位端部506は、粒子を捕捉するための閉鎖した端部を形成するために、管状本体504の残りの部分に対して縮小した直径を有してもよいことが考えられる。
【0114】
管状本体504を形成するためにワイヤフィラメントが用いられる場合、管状本体504の遠位端部508が鋭利になったり、又は鋸歯状になったりし得ることが考えられる。遠位端部508は、留置中に血管系への損傷を制限するために、ポリウレタン又はシリコーンなどの、しかしこれらに限定されないポリマーコーティングを備えることが考えられる。これに代わって、又は加えて、遠位端部508は、それ自体の上に折り返されて、縁部516を形成し得る。縁部516は、所望される場合には、縫合糸、接着剤などを用いて、機械的に固定されていてもよい。
【0115】
フィルタアセンブリ500は、留置ワイヤ又はフィルタワイヤ514の遠位端部に結合(例えば、圧着、溶接、はんだ付け、等)され得る。フィルタワイヤ514は、矩形のリボン、丸い(例えば、円形、楕円形の)フィラメント、ハイポチューブの一部、編組構造物(例えば本願に記載したようなもの)、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フィルタワイヤ514は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース502に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ500を、外側シース402に収納したり、外側シース502から露出させたりすることができる。
【0116】
フィルタアセンブリ500の送達は、本願に記載したフィルタアセンブリ66の送達に類似し得る。いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ500は、フィルタアセンブリ500(明確には図示せず)を折り畳むために、最初に外側シース502内に引き込まれ得る。外側シース502は、所望により、ガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで、標的位置へ進められ得る。フィルタシステム520(フィルタアセンブリ500、外側シース502及び他の送達構成要素)は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められ得る。しかしながら、システム520は、左橈骨アクセス、左上腕アクセス、大腿部アクセス、等を含むが、これらに限定されない、所望のアクセス位置を用いて進められてもよい。
【0117】
システム520を配置するとき、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのための大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ500の留置の前又は後に、外側シース502の内部管腔を通って、フィルタアセンブリ500内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、(提供されている場合には)内側部材のガイドワイヤ管腔を介して、又は内側部材が除去されている場合には外側シース502の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ500は、経食道心エコー法(TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0118】
システム520が所望位置に位置したら、次に(使用されている場合には)ガイドワイヤを近位へ後退させることができる。システム520は、送達構成で上行大動脈(例えば
図1参照)に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ500が外側シース502内において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース502を近位に後退させて、管状本体504が、無名動脈の開口部の上流の上行大動脈の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ500は、フィルタワイヤ514の遠位方向の作動により、外側シース502から遠位に進められてもよい。拡張されると、フィルタアセンブリ500は、上行大動脈を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈、右総頸動脈、右椎骨動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈、左椎骨動脈、及び下行大動脈に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ500は、異物粒子が4本の脳動脈のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0119】
フィルタアセンブリ500を外側シース502内に再収納又は配置して、フィルタアセンブリ500の再配置を容易にし、フィルタアセンブリ500の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ500を再収納するためには、外側シース502をフィルタアセンブリ500上に遠位に進めてもよいし、フィルタアセンブリ500をフィルタワイヤ514によって外側シース502内へ近位に後退させてもよいし、又はそれらの組み合わせも考えられる。次に、システム520は再配置され、フィルタアセンブリ500が再留置され得る。フィルタアセンブリ500は、フィルタアセンブリ500の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0120】
フィルタアセンブリ500が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ500を収納して(例えば、外側シース502内に折り畳んで)、システム520を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ500と共に除去される。
【0121】
図7は、上行大動脈26内に配置された、別の例示的なフィルタアセンブリ600の概略図である。フィルタアセンブリ600は、
図1に関して記載した外側シース52に形態及び機能が類似し得る外側シース602内の標的位置に進められるように構成され得る。フィルタアセンブリ600は、直径可変支持要素又はフレーム604、及びフィルタ要素606を備え得る。フレーム604は、拡張状態にあるフィルタ要素606に拡張支持を一般に提供するように構成された拡張可能な構造物であり得る。拡張状態において、フィルタ要素606は、フィルタ要素606を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素606内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素606を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。フィルタ要素606は本願に記載したフィルタ要素50に形態及び機能が類似し得る。明確に図示していないが、フィルタアセンブリ600は、1つ以上の、長手方向に延在するタイン、細長いフープ、縁曲げされた(hemmed)末端部、等のような、しかしこれらに限定されない、本願に記載した付加的な支持要素のうちのいずれを備えてもよい。フィルタアセンブリ600は、テザーの作動によりフィルタ要素606の基部が外側シース602内に引き込まれ得るように、フィルタ要素606の基部に結合されたテザーを備えてもよいことがさらに考えられる。
【0122】
フレーム604は、膨張可能なファブリック又はポリマーチューブから形成され得る。フレーム604は、フレーム604の直径が可変となるように、膨張媒体をフレーム604の密封可能で閉鎖された膨張空洞610に注入することによって、第1の折り畳まれた構成から第2の拡張した構成に拡張可能であり得る。例えば、直径は、膨張流体をより多く注入するほど増大させることができ、膨張流体を除去する(又はより少なく注入する)ことによって縮小させることができる。膨張空洞610は、膨張流体供給源から膨張ポート又は弁612を介して膨張流体を受容して、フレーム604を概して折り畳まれた送達構成(明確に図示せず)から拡張又は留置構成(
図7に示すようなもの)に拡張し得る。膨張流体は、生理食塩水、ENTERYX(登録商標)などの生体適合性液状ポリマー、空気又は他の適当な膨張流体であり得る。
【0123】
フレーム604は波状の構成を有するものとして例示されているが、他の構成も考えられる。例えば、フレーム604は、リング又はフープの形態をとってもよい。これに代わって、又は加えて、フレーム604は、長手方向に延在する部分を備えてもよい。いくつかの場合において、フレーム604は、第1の端部614から第2の端部616までフィルタアセンブリ600の周囲に巻き付いた、らせん状フレームであってもよい。複数の膨張チャンバを流体接続して、単一の膨張弁612がチャンバの各々に膨張流体を提供できるようにしてもよいことが考えられる。しかしながら、これは必須ではない。複数の膨張弁が、膨張チャンバの各々に対して、個々に又はグループで、膨張流体を供給するように設けられてもよい。これらは例に過ぎない。
【0124】
膨張弁612は、膨張空洞610と流体連通して、膨張流体がフレーム604の膨張空洞610に進入するための調節された通過をもたらし得る。膨張弁612は、手術及び医療用インプラントに適用可能な多くの広く適用されている弁のいずれであってもよく、また生体適合材料から製造され得る。いくつかの実施形態では、膨張弁612は、膨張可能なフレーム604の膨張空洞610への一定量の適当な流体の調節された通過をもたらす、単一方向、又は一方向の弁であり得る。例えば、膨張弁612は、ステントの膨張のためにフレーム604に導入されるカテーテル管腔又は膨張装置からの加圧により、そのような通過をもたらすことができる。加圧が除去されると、ダイヤフラム又は他の密封機構が膨張空洞610を密封して、フレーム604を膨張状態に維持し得る。しかしながら、これは必須ではない。いくつかの実施形態では、膨張流体を膨張空洞610に継続的に供給して、フレーム604を拡張した構成に維持してもよい。例えば、膨張流体は、定圧供給源によって膨張空洞610に連続的に送達されてもよい。例えば、膨張流体は、測定圧力を一定(又はほぼ一定値)に維持するように連続的に送達されてもよい。そのようなシステムは、処置の間にフレーム604にコンプライアンス及び/又は伸張がある場合に、フレーム604の血管壁との並置を維持するのを助けことができる。
【0125】
膨張空洞610及び/又は膨張弁612は、膨張管腔608を介して膨張流体供給源と流体連通し得る。膨張管腔608は、膨張流体を受容するために膨張空洞610からシステム630の近位端領域まで近位に延在する専用管腔であり得る。膨張流体が、ハンドルから膨張管腔608を通って膨張空洞610へ注入されて、フレーム604を拡張させ、フレーム604を血管壁に対して密封し得ることが考えられる。いくつかの実施形態では、膨張管腔608に吸引を加えて、膨張流体を膨張空洞610から除去し、フレーム604を折り畳んでもよい。これはフィルタアセンブリ600を再配置及び/又は除去するために実施され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ600は、フィルタアセンブリ600の第1の端部614に隣接した長尺状シャフト及び/又はフィルタワイヤ618に結合され得る。膨張管腔608は、所望により、長尺状シャフト618内に延在していてもよいし、又は長尺状シャフト618と並んで延在していてもよいことが考えられる。長尺状シャフト618は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース602に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ600を、外側シース602に収納したり、外側シース602から露出させたりすることができる。
【0127】
フレーム604は、フィルタアセンブリ600の開口部620の形状を形成し得る。開口部620は、円形、楕円形、又は血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。フィルタアセンブリ600は、概して遠位に向いた開口部620を有し得る。他の実施形態では、開口部620は近位に向いていてもよい。開口部620の向きは、アクセス切開部が位置する場所及び/又はフィルタアセンブリ600が配置される血管に応じて、変化する可能性がある。
【0128】
フィルタアセンブリ600の送達は、本願に記載したフィルタアセンブリ66の送達に類似し得る。いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ600は、送達のために、最初に外側シース52内に引き込まれ得る。外側シース602は、所望により、ガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで、標的位置へ進められ得る。フィルタシステム630(フィルタアセンブリ600、外側シース602及び他の送達構成要素)は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められ得る。しかしながら、システム630は、左橈骨アクセス、左上腕アクセス、大腿部アクセス、等を含むが、これらに限定されない、所望のアクセス位置を用いて進められてもよい。
【0129】
システム630を配置するとき、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのための大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ600の留置の前又は後に、外側シース602の内部管腔を通って、フィルタアセンブリ600内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、(提供されている場合には)内側部材のガイドワイヤ管腔を介して、又は内側部材が除去されている場合には外側シース602の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ600は、経食道心エコー法(TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0130】
システム630が所望位置に位置したら、次に(使用されている場合には)ガイドワイヤを近位へ後退させることができる。システム630は、送達構成で上行大動脈26に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ600が外側シース602内において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース602を近位に後退させ、膨張流体を膨張空洞610に注入して、フィルタフレーム604が、無名動脈12の開口部の上流の上行大動脈26の壁に対して、拡張した構成に拡張できるようにする。フィルタ要素606は、支持フレーム604に直接的又は間接的に固定されており、従って
図7に示す構成に再構成される。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ600は、長尺状シャフト618の遠位方向の作動及び膨張空洞610に送達された膨張流体により、外側シース602から遠位に進められてもよい。拡張されると、フィルタアセンブリ600は、上行大動脈26を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈12、右総頸動脈18、右椎骨動脈20、左総頸動脈14、左鎖骨下動脈16、左椎骨動脈24、及び下行大動脈28に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ600は、異物粒子が4本の脳動脈14,18,20,24のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0131】
フィルタアセンブリ600を外側シース602内に再収納又は配置して、フィルタアセンブリの再配置を容易にし、フィルタアセンブリ600の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ600を再収納するためには、膨張流体を膨張空洞610から除去して、外側シース602をフィルタアセンブリ600上に遠位に進めるか、フィルタアセンブリ600を長尺状シャフト618によって外側シース内へ近位に後退させるか、又はそれらの組み合わせが考えられる。次に、システム630は再配置され、フィルタアセンブリ600が再留置され得る。フィルタアセンブリ600は、フィルタアセンブリ600の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0132】
フィルタアセンブリ600が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ600を収納して(例えば、外側シース602内に折り畳んで)、システム630を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ600と共に除去される。
【0133】
図8は、別の例示的なフィルタアセンブリ700の部分概略図である。フィルタアセンブリ700は、
図1に関して記載した外側シース52に形態及び機能が類似し得る外側シース716内の標的位置に進められるように構成され得る。フィルタアセンブリ700は、支持要素又はフレーム702及びフィルタ要素704を備え得る。フレーム702は、拡張状態にあるフィルタ要素704に拡張支持を一般に提供するように構成された拡張可能な構造物であり得る。拡張状態において、フィルタ要素704は、フィルタ要素704を通って流れる流体(例えば血液)をろ過し、フィルタ要素704内に粒子を捕捉することにより、粒子(例えば塞栓物質)がフィルタ要素704を通って流れるのを阻止又は防止するように構成され得る。フィルタ要素704は本願に記載したフィルタ要素50に形態及び機能が類似し得る。明確に図示していないが、フィルタアセンブリ700は、1つ以上の、長手方向に延在するタイン、細長いフープ、縁曲げされた末端部、等のような、しかしこれらに限定されない、本願に記載した付加的な支持要素のうちのいずれを備えてもよい。フィルタアセンブリ700は、テザーの作動によりフィルタ要素704の基部が外側シース716内に引き込まれ得るように、フィルタ要素704の基部に結合されたテザーを備えてもよいことがさらに考えられる。
【0134】
一部の実施形態では、フレーム702は、自己拡張型(例えば、外側シース716内に閉じ込めることに基づく、応力誘起マルテンサイトを有した超弾性材料を含むもの)であり得る。フィルタアセンブリ700は、温度変化(例えば、体温への加温)時に自己拡張するように構成された形状記憶材料を含み得る。フィルタアセンブリ700は、形状記憶又は超弾性フレーム(例えば、ニチノールを含む遠位端部フープを備えたもの)を備え得る。フレーム702は、複数の巻回部708を有した間隔が空いたコイルから形成することができ、この間隔が空いたコイルは、フレーム702の直径が可変となるように、フレーム702の開口部712の直径710を変更するために拡張又は収縮され得る。これに代わって、フレーム702は複数の開口部を有したレーザーカットチューブから形成されてもよい。フレーム702は略円形の形状を有し得る。可撓性張力要素706は、フレーム702の中央管腔を通って延在するか、又は前記中央管腔に通され得る。例えば、フレーム702が複数の巻回部を備える場合、可撓性張力要素706は、複数の巻回部708の中央を通って延在するか、又は前記中央に通され得る。張力要素706の近位端部(この近位端部はフレーム702から近位に延在し、体外に残るように構成されている)に加えられる近位方向の力又は引く力714が、フレームの半径方向内向きの力を及ぼし、巻回部708を互いに引き寄せて、フレーム702の直径710を縮小させるように、可撓性張力要素706の遠位端部は、フレーム702に固定して結合され得る。フレーム702の直径710は、可撓性張力要素706に対する張力を弛緩させることによって増大され、フレーム702を拡張させることができる。コイル又はレーザーカット要素のピッチは、内部張力要素706が操作者によって調節される際に異なる領域が伸長又は短縮して、血管壁に対するより最適な密封をもたらするように、変化することができると考えられる。いくつかの実施形態では、内部張力要素706は、内部張力要素706に一定又はほぼ一定の圧力を及ぼすように構成された装置に結合され得る。例えば、内部張力要素706は、内部張力要素706に対するほぼ一定の圧力を達成するように構成された、ハンドル内のばね、又は他の機構に結合されていてもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ700は、張力要素706に結合され得る。張力要素706は、ハンドル(明確には図示せず)及び/又はスライダに結合されて、外側シース716に対する異なる長手方向の移動を提供し、この長手方向の移動により、フィルタアセンブリ700を、外側シース716に収納したり、外側シース716から露出させたりすることができる。他の実施形態では、フィルタワイヤ(明確に図示せず)がフィルタアセンブリ700に結合されて、張力要素706がフィルタフレーム702の直径710を制御するために作動される間に、フィルタアセンブリ700を近位方向及び/又は遠位方向に作動させてもよい。
【0136】
フレーム702は、フィルタアセンブリ700の開口部712の形状を形成し得る。開口部712は、円形、楕円形、又は血管の側壁に適切に並置することができる任意の形状であり得る。フィルタアセンブリ700は、概して遠位に向いた開口部712を有し得る。他の実施形態では、開口部712は近位に向いていてもよい。開口部712の向きは、アクセス切開部が位置する場所及び/又はフィルタアセンブリ700が配置される血管に応じて、変化する可能性がある。
【0137】
フィルタアセンブリ700の送達は、本願に記載したフィルタアセンブリ66の送達に類似し得る。いくつかの使用方法において、フィルタアセンブリ700は、送達のために、最初に外側シース52内に引き込まれ得る。外側シース716は、所望により、ガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで、標的位置へ進められ得る。フィルタシステム720(フィルタアセンブリ700、外側シース716及び他の送達構成要素)は、対象の右橈骨動脈又はこれに代わって右上腕動脈に形成された切開部を通じて対象内に進められ得る。しかしながら、システム720は、左橈骨アクセス、左上腕アクセス、大腿部アクセス、等を含むが、これらに限定されない、所望のアクセス位置を用いて進められてもよい。
【0138】
システム720を配置するとき、大動脈弁との接触を回避して、大動脈弁を損傷しないようにすることが望ましい場合がある。これは、大腿部アクセス又は左橈骨動脈アクセスのいずれかによって、ピッグテール血管造影用カテーテルを大動脈弓に挿入し、蛍光透視法を用いて大動脈弁の位置を特定し、大動脈弁を画像化することができるように、造影剤を注入することによって行われ得る。しかしながら、大腿部アクセスがすべてのインデックス処置カテーテルに必要とされるわけではなく、また大腿部アクセスはアクセス部位の血管合併症の増大に関係していることを考えると、血管造影用カテーテルのための大腿部アクセスの追加を必要としないことが望ましい場合もある。血管造影用カテーテル(一部の場合には4Frの血管造影用カテーテル)は、フィルタアセンブリ700の留置の前又は後に、外側シース716の内部管腔を通って、フィルタアセンブリ700内に進められてもよいことが考えられる。次に血管造影用カテーテルを介して造影剤が注入され得る。別の実施形態では、造影剤は、(提供されている場合には)内側部材のガイドワイヤ管腔を介して、又は内側部材が除去されている場合には外側シース716の内部管腔を介して、直接注入されてもよい。さらに別の実施形態では、造影剤が用いられなくてもよく、フィルタアセンブリ700は、経食道心エコー法(TEE)を用いた画像化によって配置されてもよい。
【0139】
システム720が所望位置に位置したら、次に(使用されている場合には)ガイドワイヤを近位へ後退させることができる。システム720は、送達構成で上行大動脈(例えば
図1参照)に送達され得る。システムの送達構成とは、フィルタアセンブリ700が外側シース716内において折り畳まれた構成にある構成を一般に指す。外側シース716が近位に後退され、フィルタフレーム702が、無名動脈の開口部の上流の上行大動脈の壁に対して、拡張した構成に拡張する。張力要素706に近位方向の力を及ぼして、開口部の直径710を縮小させてもよいし、又は張力要素706に遠位方向の押圧力を及ぼして(又は近位方向の力を単に除去して)、開口部712の直径710を増大させてもよい。フィルタ要素704は、支持フレーム702に直接的又は間接的に固定されており、従って
図8に示す構成に再構成される。これに代わって、又は加えて、フィルタアセンブリ700は、フィルタワイヤの遠位方向の作動により、外側シース716から遠位に進められてもよい。拡張されると、フィルタアセンブリ700は、上行大動脈を通って進行する血液をろ過し、従って、無名動脈、右総頸動脈、右椎骨動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈、左椎骨動脈、及び下行大動脈に進行する血液をろ過する。従って、拡張したフィルタアセンブリ700は、異物粒子が4本の脳動脈のすべてに及び脳血管系に進行するのを防止する位置に位置する。
【0140】
フィルタアセンブリ700を外側シース716内に再収納又は配置して、フィルタアセンブリの再配置を容易にし、フィルタアセンブリ700の配置を最適化してもよい。フィルタアセンブリ700を再収納するためには、外側シース716をフィルタアセンブリ700上に遠位に進めてもよいし、フィルタアセンブリ700をフィルタワイヤによって外側シース716内へ近位に後退させてもよいし、又はそれらの組み合わせも考えられる。次に、システム720は再配置され、フィルタアセンブリ700が再留置され得る。フィルタアセンブリ700は、フィルタアセンブリ700の配置を最適化するために所望に応じて何回でも、再収納され、再配置され、再留置されてもよい。
【0141】
フィルタアセンブリ700が留置されたら、次に、インデックス処置(例えばLAOO、TMVR、アブレーション、等)が実施され得る。インデックス処置の完了後に、フィルタアセンブリ700を収納して(例えば、外側シース716内に折り畳んで)、システム720を除去することができ、任意の捕捉されたデブリはフィルタアセンブリ700と共に除去される。
【0142】
本願に記載した方法及び装置は、様々な変更及び代替形態が可能であるが、それらの特定の例を図面に示し、本願で詳細に説明している。しかしながら、本発明の主題は、開示した特定の形態又は方法に限定されるべきではなく、反対に、記載した様々な実施及び添付する特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にあるすべての変更、均等物、及び代替物を網羅することが理解されるべきである。さらに、実施又は実施形態に関連した任意の特定の特徴、態様、方法、特性、特質、品質、属性、要素などの本願における開示は、本願で述べる他のすべての実施又は実施形態において用いることができる。本願で開示される任意の方法において、行為又は操作は任意の適当な順番(se)で実施することができ、必ずしも任意の特定の開示された順番に限定されるものではなく、列挙した順序で実施されるものではない。様々な操作は、複数の別個の操作として、特定の実施形態の理解に役立つことができる方法で記載されている可能性があるが、記載の順序は、これらの操作が順序に依存することを意味するように解釈されるべきでない。加えて、本願に記載した構造は、一体化された構成要素として、又は別個の構成要素として、具体化することができる。様々な実施形態を比較する目的で、これらの実施形態の特定の態様及び利点が記載されている。必ずしも、すべてのそのような態様又は利点が任意の特定の実施形態によって達成されるわけではない。よって、例えば、実施形態は、1つの利点又は利点の群を達成又は最適化するように実施することができ、他の利点又は利点の群を達成することは必ずしも伴わない。本願に開示される方法は、従事者によってとられる特定の動作を含む場合があるが、方法はまた、これらの行為の任意の第三者の指示を明らかに又は暗に含むこともできる。例えば、「自己拡張型フィルタを留置する」などの行為は「自己拡張型フィルタの留置を指示する」ことを含む。本願に開示される範囲はまた、ありとあらゆる重複、部分的な範囲及びそれらの組み合わせを包含する。「~まで」、「少なくとも~」、「~を超える」「~未満」、「~の間」などの言葉は、列挙された数字を含む。「約」又は「およそ」などの用語が先行した数字は、列挙された数字を含み、状況に基づいて(例えば、その状況下で合理的に可能な限り正確に、例えば±5%、±10%、±15%等、に)解釈されるべきである。例えば、「約7mm」は「7mm」を含む。「実質的に」などの用語が先行した語句は、列挙された語句を含み、状況に基づいて(例えば、その状況下で合理的に可能な限り広く)解釈されるべきである。例えば、「実質的に直線状」は「直線状」を含む。
【0143】
当業者は、本発明が本願において記載され考えられた特定の実施形態以外の様々な形態で示されてもよいことを認識するであろう。従って、添付する特許請求の範囲に記載されているような本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、形態及び詳細における発展がなされてもよい。
【国際調査報告】