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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】シート高さ調整アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/02 20060101AFI20220428BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A47C7/02 D
B60N2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553026
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2020051984
(87)【国際公開番号】W WO2020178801
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】16/294,394
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521399928
【氏名又は名称】エスライフ ホールディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】ン ピウス クン-プン
(72)【発明者】
【氏名】シャヒワラ パース ジテンドラ
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BC28
(57)【要約】
シート高さ調整アクチュエータは、ブレーキドラムを含み、ブレーキドラムは、シートに固定可能であり、外側ブレーキレースを画定する。回転可能ブレーキハブは、シェルフを備えた床と、内側ブレーキレースを画定するカム面を備えた床の周囲の壁と、を含む。ブレーキハブに固定されたピニオンは、ブレーキドラムを通じてシート調整機構に係合する。ローリングブレーキ要素は、内側ブレーキレースと外側ブレーキレースとの間に割り込み、ブレーキハブを静止状態でロックする。クラッチドラムは、外側クラッチレースを画定し、ブレーキレースの間に延びるタブを含み、アクチュエータの入力により、ブレーキローラを変位させ、ブレーキハブをロック解除する。床上のセンタリングバイアス要素は、シェルフとクラッチドラムの突起部を同時に係合させ、静止時にシェルフ上で突起部をセンタリングする。ドライバカムは、アクチュエータ入力を受けてクラッチドラムの回転を駆動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート高さ調整アクチュエータであって、
シートに固定可能なブレーキドラムであって、前記ブレーキドラムは、出力開口部と、前記出力開口部の周囲の外側ブレーキレースと、を画定するブレーキドラムと、
前記外側ブレーキレース内で回転可能なブレーキハブであって、前記ブレーキハブは、
(i)床面であって、そこから上昇するシェルフを有する床面と、
(ii)前記床面および前記シェルフを囲む、内側ブレーキレースを画定する複数のブレーキカム面を有する壁と、
を含むブレーキハブと、
ピニオンであって、前記ブレーキハブに固定され、前記出力開口部を通って延びて前記シートのシート調整機構に係合するピニオンと、
前記内側ブレーキレースと外側ブレーキレースの間の、ローリングブレーキ要素であって、前記外側ブレーキレースと各ブレーキカム面との間に割り込み、アクチュエータ入力がないときに前記ブレーキハブを前記ブレーキドラムに対してロックするように構成されたローリングブレーキ要素と、
クラッチドラムであって、前記内側ブレーキレースおよび外側ブレーキレースに隣り合って回転可能に支持され、前記クラッチドラムは、外側クラッチレースを画定し、
(i)クラッチタブであって、内側ブレーキレースと外側ブレーキレースとの間に延び、アクチュエータ入力に応じて前記ローリングブレーキ要素を変位させることによって前記ブレーキハブをロック解除するクラッチタブと、
(ii)前記ブレーキハブの前記シェルフに向かって延びる突起部と、
を有するクラッチドラムと、
センタリングバイアス要素であって、前記床面によって支持され、前記シェルフと前記突起部を同時に係合させ、前記アクチュエータ入力がないときに前記突起部を前記シェルフ上でセンタリングする、センタリングバイアス要素と、
ドライバカムであって、前記アクチュエータ入力を受け、前記外側クラッチレース内で回転可能であり、内側クラッチレースを画定するドライバカムと、
前記内側クラッチレースと前記外側クラッチレースとの間の、ローリングクラッチ要素であって、前記アクチュエータ入力を前記クラッチドラムに伝達し、前記アクチュエータ入力がないときに前記クラッチドラムに対する前記ドライバカムの回転を許容するローリングクラッチ要素と、
外装カップであって、前記ブレーキハブと、前記ローリングブレーキ要素と、前記クラッチドラムと、前記ドライバカムと、前記ローリングクラッチ要素と、を囲むように前記ブレーキドラムに固定され、前記外装カップは、それを通る入力開口部を有する外装カップと、
を備える、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記外装カップは、入力開口部を含み、前記ドライバカムは、ハンドルと結合するために前記入力開口部を通って延びるように構成されたボスを含む、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、それぞれのクラッチタブは、前記クラッチタブに隣り合う前記ローリングブレーキ要素の間の距離よりも小さい幅を有する、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記アクチュエータ入力を受けたときに、前記センタリングバイアス要素は、変形して、前記シェルフ上でセンタリングされた位置から前記突起部の移動を可能にする、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記センタリングバイアス要素は、環状ばねクリップである、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記シェルフは、楔形である、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記シェルフに回転可能に取り付けられたセンタリングプレートをさらに含み、前記センタリングプレートは、1対の翼の間にスロットを画定し、前記突起部が前記スロット内に受け入れられるようになっており、前記センタリングバイアス要素は、前記アクチュエータ入力がない場合に、前記翼と前記シェルフとを同時に係合させて、前記シェルフ上で前記突起部をセンタリングする、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記ローリングクラッチ要素の各対の間のバイアスクラッチ要素をさらに備える、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記外装カップは、カップタブのセットを含み、前記カップタブのセットは、前記ローリングクラッチ要素の隣り合う対を分離するために前記内側クラッチレースと前記外側クラッチレースとの間に延びる、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項10】
請求項9に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記カップタブの第1カップタブは、第1幅を有し、前記アクチュエータ入力がない場合に、前記ローリングクラッチ要素が第1タブに接触しないようになっている、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項11】
請求項10に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記カップタブの第2カップタブおよび第3カップタブは、第1幅よりも大きい第2幅を有し、前記アクチュエータ入力がない場合に、前記第2カップタブが、第2カップタブと第1カップタブとの間のローリングクラッチ要素に接触し、第3カップタブが、第3カップタブと第1カップタブとの間のローリングクラッチ要素に接触するようになっている、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項12】
請求項11に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、第2および第3タブと対応するローリングクラッチ要素との接触により、前記バイアスクラッチ要素の対応するものが圧縮され、前記外装カップに対して前記ドライバカムがセンタリングされる、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項13】
請求項1に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記ブレーキドラムは、
前記外側ブレーキレースの周りに配置された複数のロックチャネルを含み、前記シート高さ調整アクチュエータは、耐クリープインサートをさらに備え、
前記耐クリープインサートは、前記ブレーキハブに取り付けられ、前記ブレーキハブが回転可能に固定され、前記耐クリープインサートは、前記ロックチャネルと係合するロック位置と、前記ロックチャネルから外れるアンロック位置と、の間で変形可能である、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項14】
請求項13に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記ブレーキドラムは、クレネレーションを含み、前記クレネレーションは、前記外側ブレーキレースを囲み、前記ロックチャネルを画定する、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項15】
請求項14に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記耐クリープインサートは、その第1および第2の端部から外側に延びる前記クレネレーションと相補的な突起部をさらに含む、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項16】
請求項13に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記耐クリープインサートは、ロック位置では第1長さを有し、ロック解除位置では第2長さを有し、第1長さは第2長さよりも大きい、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項17】
請求項13に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記ブレーキハブは、ガイド部材のセットを含み、前記耐クリープインサートは、前記ガイド部材を受け入れるためのガイドチャネルのセットを含み、前記ブレーキハブに対して前記耐クリープインサートを回転可能に固定する、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項18】
請求項13に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記耐クリープインサートは、前記クラッチドラムに向かって延びる突起部を含み、
前記クラッチドラムは、前記突起部を受け入れるための窪みをその下面に含み、前記窪みは、傾斜壁を有し、前記クラッチドラムの回転に応答して前記耐クリープインサートをロック位置とアンロック位置との間で移行させる、シート高さ調整アクチュエータ。
【請求項19】
請求項1に記載のシート高さ調整アクチュエータであって、前記ブレーキドラムは、前記シートに直接取り付けられている、シート高さ調整アクチュエータ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般にシート調整機構に関し、特にシート高さ調整機構用のアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車におけるシートなどのシートは、その位置を調整するための機構を備え得る。そのような機構は、例えば、シートの高さの調整を可能にし得る。調整機構は、手動式または電動式のアクチュエータによって駆動され得る。調整機構のための様々な手動アクチュエータが当技術分野で知られている。しかしながら、そのようなアクチュエータは、製造コストが高い、故障しやすい、重いまたは大きい、またはこれらの組み合わせである、複雑な部品の配置である可能性がある。さらに、そのようなアクチュエータは、例えば、車両からの振動に起因するクリープまたはアンロックが発生しやすく、望ましくなく車両運転中にシートの動きを許容してしまうこともある。
【0003】
本実施形態は、以下の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】高さ調整機構用のアクチュエータを有するシートを示す。
図2図2Aおよび2Bは、図1の組み立てられたアクチュエータを示す。
図3図2Aおよび2Bのアクチュエータの分解図である。
図4A】分離した状態でアクチュエータのブレーキハブを示す。
図4B】分離した状態でアクチュエータのクラッチドラムを示す。
図4C】断面で示された図4Bのクラッチドラムを有する部分的に組み立てられたアクチュエータを示す。
図5】断面で示された外装カップを有する部分的に組み立てられたアクチュエータを示す。
図6A図1のアクチュエータのクラッチドラムの追加の特徴を示す。
図6B図1のアクチュエータのブレーキドラムの追加の特徴を示す。
図7A図1のアクチュエータ用の耐クリープインサートを示す。
図7B図1のアクチュエータのブレーキハブの追加の特徴を示す。
図8A】組み立てられた状態のブレーキハブ、ブレーキドラム、および耐クリープインサートを示す。
図8B】組み立てられた状態のブレーキハブ、ブレーキドラム、耐クリープインサート、およびクラッチドラムを示す。
図9】耐クリープインサートが係合解除位置にある図8Bの部分図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は、車両用シートなどのシート50を描く。シート50が支持されているベース54に対するシート50の位置は、様々な方法で調整可能であり得る。本実施形態では、少なくともシート50の高さが調整可能である。換言すれば、シート50の位置は、図1において矢印58で示す方向に調整することができる。そのような調整は、シート50およびベース54の一方または両方の内部に配置された高さ調整機構を作動させることによって行われる。当業者は様々なそのような高さ調整機構が思い当たり、そのような機構に関するさらなる議論はここでは行わない。
【0006】
また、図1には、本明細書では単にアクチュエータ100とも称される、シート高さ調整アクチュエータ100が示されている。アクチュエータ100は、シート50に固定されている(ただし、アクチュエータ100は、シート50および/またはベース54内の高さ調整機構の配置に応じて、いくつかの実施形態では、代替的にベース54に固定され得る)。以下でより詳細に説明するように、アクチュエータ100のハンドル102に(例えば、シート50に着座したユーザが)力を加えると、矢印104で示す方向に軸Aを中心にハンドル102が回転する。ハンドル102の回転は、ハンドルの回転方向に従って、シート50の位置を上昇または下降させる。
【0007】
次に、図2Aおよび2Bを参照すると、アクチュエータ100は、分離して示され、ハンドル102が省略されている。一般に、上述のように、アクチュエータ100を動作させるために、ハンドル102に及ぼされる力の形で、(例えば、シート50のユーザから)アクチュエータ入力が受け取られる。アクチュエータ入力は、ハンドル102から、ハンドル102に結合されたボス202に、本明細書で詳述する様々な構成要素を介して、ピニオン204に、伝達される。それ故に、ピニオン204は、アクチュエータ入力に応じて回転し、従ってシート高さ調整機構(図示せず)を作動させる。
【0008】
アクチュエータ100の構成要素は、ブレーキドラム208と、ブレーキドラム208に固定された(例えば、実質的に移動不能に取り付けられた)外装カップ212と、によって画定されたハウジングによって囲まれている。外装カップ212は、様々な方法(例えば、溶接、ボルトやリベットなどの締結具など)でブレーキドラム208に固定することができる。この例では、外装カップ212は、複数の圧着タブ214(例えば、4つの圧着タブ214、そのうちの2つが図2Aおよび2Bで見える)によってブレーキドラム208に固定され、複数の圧着タブ214は、ブレーキドラム208と外装カップ212とを組み合わせるために、ブレーキドラム208の外壁の周りに圧入される。より詳細に後述するように、圧着タブ214およびブレーキドラム208は、組み立て中にブレーキドラム208に対する外装カップ212の正しい配置を確実にするための、および組み立て後にブレーキドラム208に対する外装カップ212の動きを軽減するための追加の構造的特徴を含むことができる。
【0009】
ブレーキドラム208は、シート50および/またはベース54に固定されている。いくつかの例では、ブレーキドラム208は、例えば、溶接または他の適切な締結機構を介して、シート50またはベース54に直接固定される。ブレーキドラム208は、1つ以上のディンプル214(この例では、長いディンプル214aおよび短いディンプル214bが示されている)を含むことができ、1つ以上のディンプル214は、シート50および/またはベース54の相補的な窪みと協働してブレーキドラム208を位置付ける。図1および図2A-2Bに示された例を含む他の例では、ブレーキドラム208は、ベースプレート216を介してシート50および/またはベース54に固定されている。ブレーキドラム208は、機械的インターロック(例えば、ブレーキドラム208上のタブは、ベースプレート216上の対応するスロットに嵌め込むことができる)、締結具(例えば、ボルト、接着剤等)、溶接等のいずれか1つまたは任意の適切な組み合わせを含む、任意の適切な方法でベースプレート216に固定することができる。ベースプレート216は、シート50および/またはベース54の対応するねじ穴に延びる締結具(例えば、ボルト等)を受け入れるための一組の締結具穴220(この例では、ベースプレート216は、3つの締結具穴220を含む)を介して、シート50に固定することができる。図2Bに見られるように、ディンプル214は、ベースプレート216に対してブレーキドラム208を位置決めする役割を果たす。
【0010】
次に、図3を参照すると、再びハンドル102を省略したアクチュエータ100の分解図が示されている。アクチュエータ100は、上述のハウジング内(すなわち、外装カップ212とブレーキドラム208との間)に複数の構成要素を含む。アクチュエータ100の構成要素は、アクチュエータ入力(例えば、アクチュエータ100のユーザなどがハンドル102を介して加える力)がない場合、ブレーキドラム208に対するピニオン204の位置をロックするように構成される。ピニオン204がロックされると、ピニオン204がブレーキドラム208の出力開口部300aおよびベースプレートの出力開口部300bを通じて接続されているシート高さ調整機構は、静止したままとなる。アクチュエータ100の構成要素は、ハンドル102を介してアクチュエータ入力が加えられると、ブレーキドラム208に対するピニオン204のロックを解除するようにさらに構成される。ピニオン204のロックが解除されると、アクチュエータ入力は、軸Aを中心としたピニオン204の回転を介してシート高さ調整機構に伝達される。
【0011】
より具体的には、アクチュエータ100は、本明細書で論じられるアクチュエータ100の追加の構成要素との相互作用を介して、アクチュエータ入力に応答して軸Aを中心に回転するように構成されたクラッチドラム304を含む。クラッチドラム304の回転は、ピニオン204に取り付けられた(例えば、ピニオン204と一体的に形成された、または、任意の適切な締結具によってピニオン204に取り付けられた)ブレーキハブ308のロックを解除し、従って、ピニオン204自体のロックを解除する。クラッチドラム304の回転も、ブレーキハブ308の回転を駆動し、従ってピニオン204の回転も駆動する。アクチュエータ入力がない場合、ブレーキハブ308(および従ってピニオン204)は、ブレーキドラム208に対して再びロックされる。クラッチドラム304からブレーキハブ308へのアクチュエータ入力の伝達、ならびにブレーキハブ308のロックおよびロック解除は、1組のローリングブレーキ要素312および対応する1組のバイアスブレーキ要素316によって可能になる。この例では、4対のローリングブレーキ要素316が設けられており、各組が、対の部材の間に配置されたバイアスブレーキ要素316を有している。
【0012】
この例ではローラベアリングであるローリングブレーキ要素312は、ブレーキドラム208によって画定された外側ブレーキレース320と、ブレーキハブ308によって画定された内側ブレーキレース324との間に配置される。この例ではコイルスプリングであるバイアスブレーキ要素316も、内側ブレーキレース320と外側ブレーキレース324との間に配置される。
【0013】
外側ブレーキレース320は、例えば、軸Aに実質的に垂直な環状面から延びる軸Aに実質的に平行な環状壁であり、開口部300aを取り囲む。内側ブレーキレース324は、複数のセグメントを含む。この例では、4つのセグメントが設けられており、各セグメントが、1対のローリングブレーキ要素312および対応するブレーキバイアス要素316のうちの1つに対応している。各セグメントは、移動領域332によって分離された1対のウェッジ領域328を含む。より詳細に後述するように、内側ブレーキレース324の構成は、ローリングブレーキ要素312が、バイアス要素316の作用下で外側ブレーキレース320とウェッジ領域328との間に割り込むように構成され、ブレーキハブ308をロックするようになっている。
【0014】
クラッチドラム304は、ローリングブレーキ要素312の対の数に等しい数(すなわち、この例では4つであり、そのうちの2つが図3で見える)のクラッチタブ336のセットを含む。クラッチタブ336は、後述するように、ブレーキハブ308のロックを解除するために、ローリングブレーキ要素312のサブセットをウェッジ領域328から移動領域332に向かって変位させるように構成されている。クラッチタブ336は、内側ブレーキレース324のノッチ340との係合を介して、ブレーキハブ308の回転を駆動するようにも構成される。図3に見られるように、ノッチ340は、内側ブレーキレース324のセグメントのそれぞれ隣り合う対の間に画定される(従って、図示された例では、4つのノッチ340が設けられる)。
【0015】
アクチュエータ100は、また、この例では環状ばねクリップであるセンタリングバイアス要素344と、アクチュエータ入力がない場合にブレーキハブ308に対するクラッチドラム304の所定の向き(すなわち、軸Aを中心とした所定の位置)を維持するためにブレーキハブ308およびクラッチドラム304と協働するセンタリングプレート348と、を含む。ブレーキハブ308に対するクラッチドラム304の所定の向きを維持することは、本明細書では、クラッチドラム304のセンタリングとも称される。プレート348は、中央開口部349と、その間にスロット351を画定する少なくとも1対の翼350(開口部349の両側に1対ずつある2対の翼が図2に示されている)と、を含む。
【0016】
上述したように、クラッチドラム304にアクチュエータ入力を加えると、クラッチドラム304が回転し、これにより、ローリングブレーキ要素312がロック解除され、ブレーキハブ308およびピニオン204が回転する。アクチュエータ入力は、ドライバカム352と、その間にバイアスクラッチ要素360(この例ではコイルばね)を備えたローリングクラッチ要素356のセットとを介して、クラッチドラム304に加えられる。ドライバカムは、図2に関連して記載されたボス202を含むことができ、ボス202は、外装カップ212の入力開口部364を通って延びるように構成され、ハンドル102と結合する。すなわち、ドライバカム352は、ハンドル102からアクチュエータ入力を直接受け取り、アクチュエータ入力をアクチュエータ100の他の構成要素に伝達する。
【0017】
ドライバカム352はまた、一組のローブ366(この例では3つのローブが示されている)によって内側クラッチレースを画定する。各ローブは、ピーク370の両側に1対のウェッジング面368a,368bを含む。ウェッジング面368は、ピーク370から最も遠くに延びているところよりも、ピーク370に出会うところで軸Aに対してより大きな半径を有する。ローリングクラッチ要素356(例えば、ローラベアリング)は、ウェッジング面368と、クラッチドラム304によって画定された外側クラッチレース372との間に割り込むように構成される。特に、ローリングクラッチ要素356は、対(この例では3対)で内側クラッチレースと外側クラッチレースとの間に配置され、各対の部材要素356が、隣り合うローブ366のウェッジング面368に向かって付勢されている。そのような付勢は、ローリングクラッチ要素356の各対の間に、隣り合うローブ366の間の空間を横断するバイアスクラッチ要素360を配置することによって達成される。
【0018】
ハンドル102にアクチュエータ入力を加えると、軸Aを中心としたドライバカム352の回転が駆動される。ドライバカム352の回転により、回転クラッチ要素356の各対のうちの1つが駆動され、内側クラッチレースと外側のクラッチレースとの間を回転方向に移動させる。回転クラッチ要素356のこの移動により、クラッチドラム304の回転が駆動される。他の各対の回転クラッチ要素356は、外装カップ212から内側クラッチレースと外側クラッチレースとの間に延びるカップタブ374a,374b,374cの結果として、静止したままである。カップタブ374は、より詳細に後述するように、ピーク370と外側クラッチレース372との間に配置される。従って、各対の回転クラッチ要素356のうちの1つは、ドライバカム352によって他の対に向かって駆動され、その過程で対応するバイアスクラッチ要素360を圧縮する。
【0019】
アクチュエータ入力が取り除かれると(例えば、ハンドル102が解放されると)、圧縮されたバイアスクラッチ要素360は、各対の回転クラッチ要素356のうちの上述の進行する1つを、図3に示される静止位置に向かって戻すように付勢する役割を果たす。回転クラッチ要素360の戻りは、ウェッジ面368との係合を介して、クラッチドラム304が静止したままで、ドライバカム352を静止位置に戻すのに役立つ。カップタブ374は、後述するように、バイアスクラッチ要素360の減圧を介してドライバカム352を静止位置に繰り返し付勢するように構成される。
【0020】
アクチュエータ100はまた、ドライバカム352と外装カップ212との間にスペーサ376を含んでもよいが、他の例ではスペーサ376は省略されてよい。図3はまた、外装カップ212をブレーキドラム208に取り付ける機構の一例を示している。特に、外装カップ212は、図2Aに関連して記載した圧着タブ214(例えば、4つの圧着タブ214)を含み、それぞれがブレーキドラム208上の各チャネル380に対応している。圧着タブ214は、アクチュエータ100の組み立て中に、チャネル380内に配置され、ブレーキドラム208の近位端または下端(軸Aに沿ってシート50に近い方)の周りに変形されることができる。さらに、圧着タブ214は、くぼみ382を含むことができ、くぼみ382は、ブレーキドラム208の周りの変形の前に圧着タブ214を位置決めするために、チャネル380内の相補的なくぼみ384と嵌合するように構成される。
【0021】
次に図4A-4Cを参照して、ブレーキハブ308に対するクラッチドラム304の上述のセンタリングについてより詳細に説明する。図4Aに見られるように、ブレーキハブ308は、床面400を含み、床面400は、ブレーキハブ308の上または遠位(すなわち、ハンドル104に向かってシート50から軸Aに沿ってさらに遠い)端の近くで軸Aに実質的に垂直である。ブレーキハブ308は、床面400から上昇するシェルフ404をさらに含む。この例では、シェルフ404は、楔形であり、床面400の面積の4分の1よりも小さい面積を有する。床面およびシェルフ404を囲む壁408は、内側ブレーキレース324を画定する。さらに、ブレーキハブ308は、軸Aと同軸である中央ポスト412を含む。
【0022】
図4Bを参照すると、クラッチドラム304の下側が示されている。クラッチドラム304のクラッチタブ336のそれぞれは、駆動半径方向スパイン416と、スパイン416の外側端部(すなわち、軸Aから最も遠い端部)の両側から延びる1対の対向するロック解除リブ420と、を含む。従って、各クラッチタブ336は、ほぼT字型である。クラッチドラム304はまた、下方に延びる少なくとも1つの突起部424(図示の例では2つの突起部424が示されている)を含む。
【0023】
図4Cに見られるように、アクチュエータ100が組み立てられると、ブレーキハブ308は、ブレーキドラム208によって画定される外側ブレーキレース内に受け入れられ、クラッチドラム304は、ブレーキハブ308およびブレーキドラム208の上に配置され、クラッチタブ336が内側ブレーキレースと外側ブレーキレースとの間に延びるようになっている。具体的には、スパイン416は、ノッチ340の中に延び(クラッチドラム304の回転がブレーキハブ308の回転を駆動するように)、リブ420は、ブレーキレースの間に配置される(クラッチドラム304の回転が、ローリングブレーキ要素312を変位させ、ブレーキハブ308をロック解除するように)。センタリングプレート348は、ポスト412に回転可能に取り付けられており、スロット351は、クラッチドラム304の突起部424を受け入れて、クラッチドラム304をプレート348に固定する。センタリングバイアス要素344は、床面400に支持されており、プレート348の翼350とシェルフ404の側面との両方に係合する。翼350およびシェルフ404は、図2および図4Aに見られるように、いずれも共通の楔形プロファイルを有する。従って、センタリングバイアス要素344は、プレート348を回転方向に付勢して、静止位置(すなわち、アクチュエータ入力がない状態)でシェルフ404の真上に位置するように作用する。
【0024】
図4Cに見られるように、スパイン416の幅(すなわち、軸Aの周りのスパイン416の弧長)は、ノッチ340の幅よりも小さい。従って、図示された静止位置では、クラッチタブ336がブレーキハブ308と係合する前に、クラッチドラム304の回転方向のいずれにもある程度の自由な遊びが存在する。アクチュエータ入力があると、センタリングバイアス要素344が変形して、プレート348およびクラッチドラム304がブレーキハブ308に対して静止位置から回転することを許容し、スパイン416がノッチ340の側面に接触してブレーキハブ308の回転を駆動するまで、静止位置から回転する。アクチュエータ入力が取り除かれると、センタリングバイアス要素は、クラッチドラム308を、プレート348がシェルフ404の上にセンタリングされる静止位置に戻す。他の例では、ポスト412およびセンタリングプレート348は省略され、突起部424はセンタリングバイアス要素344と直接係合するように形成される。
【0025】
次に、図5を参照すると、アクチュエータ100の部分的に組み立てられた図は、カップタブの構成を示し、それは、上述したように、ドライバカム352、従ってハンドル102を(ボス202を介して)、所定の静止位置に戻す。上述したように、図5に断面で示されている外装カップ212は、3つのタブ374a,374b,374cを含む。アクチュエータ100が組み立てられると、それぞれのタブ374は、ドライバカム352のローブ366のピーク370に隣り合って、内側クラッチレースと外側クラッチレースとの間に延びる。さらに、タブ374aのうちの主要な1つは、静止時に、隣り合う回転クラッチ要素356のいずれもがタブ374aに接触しないようなサイズである。残りの2つのタブ374bおよび374cは、タブ374aよりも長く、それらが、主要なタブ374aに最も近い隣り合う回転クラッチ要素356のうちの1つに接触する一方で、主要なタブ374aから最も遠い隣り合う回転クラッチ要素356のうちの1つに接触しないように、配置される。
【0026】
タブ374bおよび374cと各回転クラッチ要素356との接触により、タブ374bと374aとの間、およびタブ374cと374aとの間のバイアスクラッチ要素360が圧縮される。タブ374bと374cとの間のバイアスクラッチ要素360も圧縮されるが、それらの回転クラッチ要素356のいずれもがカップタブ374と接触していないので、それが接触する回転クラッチ要素356を反対方向に単に付勢するだけである。従って、アクチュエータ入力がない場合、タブ374bと374aとの間、およびタブ374cと374aとの間の圧縮されたバイアスクラッチ要素360は、それぞれドライバカム352を反対方向に付勢するように作用し、その結果、ドライバカム352を図5に示す静止位置に維持することになる。
【0027】
いくつかの実施形態では、アクチュエータ100は、ブレーキハブ308とブレーキドラム208との間のクリープを軽減または除去するための追加の特徴を含む。他の実施形態では、後述する特徴は省略される。特に、図6Aを参照すると、別の実施形態に従って、クラッチドラム304の下側が示されている。クラッチドラム304は、上述したようにクラッチタブ336を含む。クラッチドラム304はまた、複数の離散的なセグメント(この実施形態では、2つのセグメント)を備える走行パッド600を含む。最後に、クラッチドラム304は、クラッチドラム304の下側に延びる一対の対向する窪み604を含む。窪み604の機能については、以下でより詳細に説明する。
【0028】
いくつかの実施形態では、アクチュエータ100は、ブレーキハブ308がロックされているときに、ブレーキドラム304に対するブレーキハブ308の小さな動き(クリープとも称される)を低減または除去するための追加の構造的特徴を含む。そのような実施形態では、図6Bに示されるように、ブレーキドラム208は、この例ではクレネレーション(crenellation)608によって画定される複数のロックチャネルを含むことができる。図7Aを参照すると、そのような実施形態のアクチュエータ100は、耐クリープインサート700も含む。インサート700は、弾性的に変形可能な中央本体708によって結合された1対の対向するアーム704を含む。本体708は、アーム704が互いから所定の距離にある第1位置に向かって付勢される(例えば、本体708の静止位置が第1位置であり、従って、本体708は第1位置から離れる動きに抵抗する)。本体708は、アーム704が互いに近づけられる第2位置に変形させることもできる。
【0029】
それぞれのアーム704は、図6Bに示されるクレネレーション608と係合するサイズの歯712を含む。上述の第1位置では、一方のアーム704の歯712は、第2位置よりも他方のアーム704の歯712から離れている。インサート700は、後述するように、それぞれのアームに設けられた突起部716と、図6Aに示されるクラッチドラム304の窪み604との間の相互作用を介して、第1位置と第2位置との間を遷移する。
【0030】
図7Bを参照すると、ブレーキハブ308は、インサート700の対応するチャネル724(図7A参照)と係合するためのガイド部材720を含み、インサート700をブレーキハブ308に結合する。ここで明らかになるように、インサート700がそのように結合されるとき、アーム704は、依然として、上述の第1位置と第2位置との間でスライドすることが許容される。図8Aは、ブレーキハブ308と組み合わされたインサート700を示しており、このインサートは、順にブレーキドラム208内に挿入される。図8Aに見られるように、第1位置では、歯712は、クレネレーション608と係合し、ブレーキドラム208に対するブレーキハブ308の移動を阻止する。図8Bは、上方からブレーキドラム208と組み合わされたブレーキハブ308を示しており、ノッチ340と係合しているクラッチタブ336(クラッチドラム304は透明に図示されている)を示している。図8Bに見られるように、また先に述べたように、ノッチ340は、クラッチタブ336のスパインよりも幅が広い。従って、クラッチドラム304は、ブレーキハブ308の移動を引き起こす前に、アクチュエータ入力に応答して一定量の移動が許容される。
【0031】
また、図8Bには、突起部716と窪み604との間の係合が示されている。ここで明らかになるように、クラッチドラム304がブレーキハブ308に対して回転すると(これは、ノッチ340の側面とクラッチタブ336のスパインとの間のクリアランスによって許容される)、各窪み604の傾斜壁は、対応する突起部716を内側に(軸線Aに向かって)追いやる。言い換えれば、クラッチドラム304の回転により、インサート700が第2位置に移行し、歯704がクレネレーション608から外れる。さらに、クラッチドラム304の回転により、前述のようにブレーキハブ308が回転する。図9は、第2位置、すなわち係合解除された位置にあるインサート700を示す。
【0032】
アクチュエータ入力が停止すると(例えば、ハンドル102が解放されると)、インサート700の本体708は、クラッチドラム304(もはや負荷がかかっていない)をブレーキハブ312に対して回転させて、突起部716を窪み604のピークで中心にし、インサート700を第1係合位置に戻すようにさせ得る。あるいは、歯712がクレネレーション608に当接している場合、そのような回転は不可能であり得る。しかしながら、アクチュエータ100のブレーキアセンブリが何らかのクリープを経験する場合、歯712は、クレネレーション608と係合できる位置にもたらされ、インサート700が第1位置に戻ることを可能にし、さらなるクリープを阻止する。
【0033】
特許請求の範囲は、上記の例に記載された実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。


図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】