IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エスの特許一覧

特表2022-525047ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法
<>
  • 特表-ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法 図1
  • 特表-ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法 図2
  • 特表-ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法 図3
  • 特表-ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法 図4
  • 特表-ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20220428BHJP
   F03D 80/50 20160101ALI20220428BHJP
【FI】
F03D1/06
F03D80/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553086
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020056258
(87)【国際公開番号】W WO2020182762
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】19161709.1
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19189612.5
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギリダル ラマヌイアム
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178BB31
3H178BB62
3H178BB75
3H178BB77
3H178BB79
3H178CC02
3H178CC12
(57)【要約】
ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法。本発明は、ロータブレード(1)の外面(2)に取り付けられた付属品パーツ(3)の長手方向縁部段差(3E)に沿って初期縁部シール(S1)を成形する方法であって、ロータブレード(1)の外面(2)に取り付けられた付属品パーツ(3)の長手方向縁部段差(3E)に沿って初期縁部シール(S1)を提供するステップと、初期縁部シール(S1)の最上層(L)を除去するステップとを含む、方法を説明している。本発明は、さらに、関連した風力タービンロータブレードを説明している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータブレード(1)の外面(2)に取り付けられた付属品パーツ(3)の長手方向縁部段差(3E)に沿って初期縁部シール(S1)を成形する方法であって、
ロータブレード(1)の外面(2)に取り付けられた付属品パーツ(3)の長手方向縁部段差(3E)に沿って初期縁部シール(S1)を提供するステップと、
前記初期縁部シール(S1)の最上層(L)を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記初期縁部シール(S1)の提供が、ロータブレード(1)の外面(2)に取り付けられた付属品パーツ(3)の長手方向縁部段差(3E)をシールするステップを含み、好ましくは前記付属品パーツ(3)に重畳するように液体シーラント(LS)を塗布し、
好ましくは、前記液体シーラント(LS)を下準備成形ツールを使用して引き延ばし、次いで、引き延ばされた前記シーラント(LS)上で仕上げツール(6)を引くことによって最終的な形状へと平滑化する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
好ましくは、風洞測定に基づいて、インタフェース面による前記段差の空気力学的な影響を低減するために、シーリングの幅(δ、δ1)を調整する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記初期縁部シール(S1)が、前記付属品パーツ(3)に重畳している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記付属品パーツ(3)の前記長手方向縁部段差(3E)に隣接する重畳領域における縁部シールオーバラップ(S0V)の幅(h)を特定するステップを含み、前記付属品パーツ(3)の前記長手方向縁部段差(3E)での高さ(t)に基づいて、オーバラップ幅(h)を特定する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記長手方向縁部段差(3E)での高さ(t)に対する幅(δ)および/またはオーバラップ幅(h)の比率が、4:1より大きく、好ましくは20:1より大きく、かつ/または100:1より小さい、請求項5記載の方法。
【請求項7】
初期縁部シール(S1)を提供するステップが、
シーラント化合物によって覆われるロータブレード表面と前記付属品パーツとの塗布領域を、好ましくは厚さ0.2mm未満の肉薄の平滑なマスキングテープで画定するステップと、
特にビードまたはスプレーの塗布によって前記塗布領域へ前記シーラントを計量分配するステップであって、前記シーラントが、好ましくは、付属品とブレード表面との間の移行部と重畳する蛇行した線で塗布される、シーラントを計量分配するステップと、
好ましくは可撓性の歯付きヘラを使用して前記シーラントを分配するステップと、
(任意選択的には)ツール、好ましくは可撓性のツールを前記ブレードの長手方向に移動させて、接着剤を平滑化するステップであって、前記ツールが、好ましくは前記ブレードの形状に合うように設計されている、接着剤を平滑化するステップと、
前記マスキングテープを除去するステップと、
好ましくはショアA硬さが40~60である可撓性のツールを用いてシーラント移行部段差を平滑化するステップと、
を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記初期縁部シール(S1)の最上層(L)を除去するステップが、機械加工、好ましくは研削加工および/または研磨加工および/または切断加工および/またはフライス削り加工によって行われ、これによって、結果的に得られた縁部シール(S)が、好ましくは前記縁部段差(3E)と整合している、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記結果的に得られた縁部シール(S)の表面と、前記ロータブレード(1)の表面(2)との間の角度が、前記縁部シールが前記ロータブレードの表面に移行する点(J2)と同様に、前記縁部段差(3E)の点(J1)においてより小さくなり、前記結果的に得られた縁部シール(S)が、好ましくは、その表面に凸面または瘤を有する楔の形状を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記シーラント(LS)が、液体状態と硬化状態または架橋状態との両方のシーリング材料において、固体粒子、特に充填材粒子、充填材粒子の凝集体またはゲル粒子の凝集体の最大サイズを有し、該最大サイズが、最大200μm、好ましくは最大60μmに制限されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記塗布領域に前記シーラント(LS)を計量分配するステップの前に、まず、前記長手方向の付属品の縁部(3E)に沿って充填材(F)を塗布し、前記充填材(F)が、好ましくは、速硬化性接着剤および/または高粘度接着剤であり、前記シーラント(LS)を、キュアーされたまたは硬化させられた前記充填材(F)上に塗布する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記シーラント(LS)が、前記付属品(3)を前記ロータブレードの表面(2)に固定するために使用される接着剤(4)と同一の材料を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
風力タービンロータブレード(1)であって、前記ロータブレード(1)の外面(2)に取り付けられた少なくとも1つの付属品パーツ(3)と、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により成形された縁部シール(S)とを備える、風力タービンロータブレード(1)。
【請求項14】
付属品パーツ(3)が、前縁保護カバー、後縁パネル、ベースプレート、渦発生器パネル、スラット、プレート、スポイラ、フラップ、および/またはセンサパネルのいずれかを備える、請求項13記載の風力タービンロータブレード。
【請求項15】
前記付属品パーツ(3)の長手方向縁部段差(3E)の厚さが、0.2mm~5mmの範囲であり、好ましくは0.25~2mmである、請求項13または請求項14記載の風力タービンロータブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータブレード付属品用の縁部シールを成形する方法を説明している。詳細には、本発明は、風力タービンブレードの表面の段差用の空気力学的な縁部仕上げのための方法を説明している。
【0002】
風力タービンロータブレードの空気力学的な性能は、表面欠陥、特にロータブレードの前縁に近接して位置する表面欠陥に大きく左右される。このことは、例えば、前縁保護(LEP)カバーおよび/または渦発生(VG)パネル、後縁(TE)パネルなどを適用した後など、ロータブレード表面に段差または障害物が存在するときに問題となる。LEPカバーは、腐食保護カバーまたはLEPシェルとも呼ばれる。
【0003】
ロータブレードに取り付けられたパネルまたはカバーの縁部に急な段差が存在する場合がある。そのような顕著な高低差により、空気流が層流から乱流に移行し、このことは、風力タービンの年間発電量(AEP)に悪影響を及ぼし、風力タービンの騒音にも寄与してしまう。
【0004】
LEPまたはその他の付属品の段差は、SGRE Power Edge(登録商標)、Polytech ELLE(登録商標)、3M(登録商標)Wind Protection Tapeなどの製品などの、より侵入的な(intrusive)ソリューションでは特に問題になる。
【0005】
付属品の縁部に沿った段差から発生する乱流を低減する1つの方法は、ロータブレードの外面に取り付けられた付属品パーツの長手方向縁部に沿って縁部シールを提供することである。各々の方法は、付属品パーツの長手方向縁部における高さを特定するステップと、ロータブレードの表面に塗布される縁部シールのための幅を選択するステップであって、縁部シールの幅が、付属品パーツの長手方向縁部における高さを少なくとも20倍だけ超える(すなわち、ロータブレードの縁部シールの幅と付属品の高さとの比率は、少なくとも20:1である)ように選択される、ステップと、少なくとも付属品パーツの長手方向縁部における高さと、特定されたブレードの表面の縁部シールの幅とによって規定される体積でシーラント材料を塗布することによって縁部シールを形成するステップとを含む。
【0006】
有利なことに、そのような縁部シールは、ロータブレードの空気力学的な性能に対する段差または他の障害物の悪影響を低減する。付属品の急な縁部がロータブレードの空気力学的な性能に及ぼす悪影響を大幅に低減または排除することにより、本発明の縁部シールは、付属品が「AEPニュートラル」であることを保証することができる。このシーリングにより、LEPシェル、LEPカバーなどのような、厚さの増した縁部を備えた付属品を実現することもできる。一般に、縁部シーリングは、LEPソリューションの空気力学的な性能の向上に貢献する。
【0007】
しかしながら、今日まで、縁部シーリングは最適化されていない。シーリング材料の収縮またはシーリング材料の成形中の製造上の欠陥により、付属品と縁部シールとの間には、依然として段差が残ってしまうことがある。さらに、製造方法によっては、シーリング材料は、付属品から部分的に遊離するなどの不利な影響をもたらす可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ロータブレードの表面と付属品との間の縁部シールを最適化し、ロータブレードの空気力学的な性能を向上させる方法を提供することである。
【0009】
この目的は、ロータブレードの外面に取り付けられた付属品パーツの長手方向縁部に沿って縁部シールを成形する請求項1記載の方法、および請求項13記載の風力タービンロータブレードによって達成される。
【0010】
本発明は、ロータブレードの外面に取り付けられた付属品パーツの長手方向縁部に沿って縁部シールを成形する方法、すなわち、風力タービンブレードの表面の段差の空気力学的な縁部仕上げのための方法を説明している。提示されたソリューションは、例えば、前縁に適用される制限された厚さの軟質シェルに基づくことができるが、一般的な思想は、風力タービンブレードの表面の任意の種類の段差に適用される。本発明の方法は、以下のステップを含む。
【0011】
- ロータブレードの外面に取り付けられた付属品パーツの長手方向縁部段差に沿って初期縁部シールを提供するステップであって、初期縁部シールが、好ましくは、付属品パーツに重畳している、ステップを含む。初期縁部シールは、ロータブレード上にすでに存在するという形で提供することができるが、しかしながら、ロータブレード上にシーラントを塗布し、シーラントを硬化させてまたはキュアーして縁部シールを形成することによって提供することが好ましい。「初期」という表現は、縁部シールが本発明によってまだ最適化されていないことを示している。
【0012】
- 初期縁部シールの最上層を除去するステップを含む。これは、機械加工ステップ、特に研削加工、研磨加工、フライス削り加工または切断加工によって行うことができる。最上層は、結果的に得られた縁部シールが、付属品の縁部からロータブレードへの移行部まで、特にあらゆる段差なく移行部を形成する直線状の楔状部または曲線状の楔状部を形成するように除去される必要がある。
【0013】
提案された発明は、好ましくは、シーリングステップと、研削ステップとを含む(またはそれらからなる)。例として、保護カバーの両方の側または一方の側の前縁シェルまたは前縁テープは、本明細書で提案されるように縁部処理に供されてよい。ブレードに配置された同様の他の付属品、すなわち、一方の縁部/両方の縁部が発生する前縁および/または後縁ならびに正圧側および/または負圧側に配置された付属品も、同様に、本明細書で提案されているような縁部処理に供されてよい。そのような付属品は、空気力学的な装置またはノイズ低減装置が配置されるベースプレートを含むことができる。そのような装置は、渦発生器、スラット、フラップおよび/またはスポイラを含む。いずれにせよ、風力タービンブレード上のベースプレートに取り付けられたそのような装置を取り付けることは、少なくともブレードの前縁または後縁に面する縁部でのベースプレートの縁部処理に続いてもよい。
【0014】
シーリングステップでは、シーリング剤/シーリング接着剤を使用して、縁部段差に、好ましくは、小さなオーバラップを備える縁部シールを形成する。シーリング剤または同等のものは、(縁部段差の材料および/または付属品を固定するために使用される接着剤と比較して)異なる特性であってよいが、同一の組成であってもよい。
【0015】
風洞測定に基づいて、インタフェース面による段差の空気力学的な影響を低減するために、シーリングδの範囲を調整することが好ましい。縁部シーリングδの範囲は、接合部J1での縁部段差t(すなわち、縁部段差の位置)に依存する。tに対するδの比率は、4:1、好ましくは20:1~100:1の間のどこでも変化することができる。絶対値では、縁部段差の高さは、好ましくは、少なくとも0.25mmであり、特に少なくとも0.5mmであり、かつ/または縁部シール幅は、好ましくは5mm~150mmである。縁部シーリングは、層流から縁部段差によるブレードの表面の乱流への流れの移行の開始を防止する/遅延させるために調整される。推奨される比率は、従来技術で説明されているソリューションで通常使用される比率よりも大きくなる。上述して提案された縁部シーリングは、適切な粘度のシーリング剤を使用することにより、接着液を、塗布によって形成されたギャップおよび表面の隙間に流し込むのに十分な流動性とすることができ、平滑な仕上がりを保証することができる。同時に、接着剤の粘度が接合部J2(すなわち、縁部シールがロータブレードの表面に移行する点)の段差を解消する。接合部J2での段差の高さは、好ましくは100μm未満である。これは、例えば以下で説明するように、縁部シーラーの塗布プロセスを利用して達成することができる。
【0016】
好ましくは、シーリングがキュアーされたのち、シーリングの最上層を研削して、接合部J1を露出させる。研削加工は、通常の研削ツール(ランダムオービットサンダーなど)を使用して、または手作業で行うこともできるが、専用の縁部研削ツールを使用することが好ましい。
【0017】
理論的には、本発明のソリューションを達成するために、重畳する縁部シーリングを有する必要はない。しかしながら、実際には、重畳せずに縁部シールを塗布すると、付属品パーツの硬さ(剛性)と、縁部シールの塗布時および仕上げ時に使用する引延しヘラで加えられる圧力とに応じて、高さの異なる可能性のある縁部段差が残ってしまう。これにより、結果的に生じた縁部段差がどのくらいの高さであるのか、そして、それを除去する(例えば研削する)ためにどのくらい多大な労力が必要になるのかという点で不確実さが生じる。また、付属品パーツによっては、付属品パーツの表面の相当な部分を研削することが困難または望ましくない場合がある。シーリングを重畳させると、オーバラップが(ほぼ)消えるまでシーリング材料の最上層を除去するだけでよく、これにより、最適な仕上がりを確保し、付属品パーツ自体への大幅な研削を回避するための容易かつ定量化可能な方法が確立される。したがって、シーラントは、好ましくは、付属品の縁部段差に重畳している。
【0018】
このソリューションは、ブレードを風力タービンに取り付ける前にブレードに適用することも、設置済みの風力タービンのハブにすでに取り付けられているブレードに後付けするソリューションとして適用することもできる。
【0019】
本発明の1つの特別な特徴は、研削プロセスの適用にあり、特に、ほぼ平滑な表面仕上げを生成するためのシーリングプロセスと研削プロセスとの組み合わせにある。シーリングと研削との組み合わせは、本発明の好ましいイノベーションである。この組み合わせにより、J1の段差の高さ(縁部段差の位置)を100μm未満に減少させることができる。研削プロセスには労力がかかるという事実にもかかわらず、本発明者らは、それにもかかわらず、縁部シールの完全性に関して、かつ付属品とロータブレードの表面との間の移行部の品質に関して重要な利点を有することを見出した。
【0020】
本発明は、LEPソリューションをAEPニュートラルにすることができ、これは、市場における製品に競争上の優位性を提供することができる。本発明は、また、LEPソリューションのAEP影響を低減することにより、新規および既存のタービンに対するAEPリスクを低減するのに役立つ。このソリューションは、工場や現場で適用することができ、適用環境に関係なく同様の結果を得ることができる。原則として、本発明は、ブレードの表面上のあらゆる付属品/センサによって発生する表面の段差を回避し、それによって、風力タービンの空気力学的な性能を維持するために使用することができる。
【0021】
本発明による風力タービンロータブレードは、ロータブレードの外面に取り付けられた少なくとも1つの付属品パーツと、本発明による方法で形成された縁部シールとを備える。
【0022】
本発明の特に有利な実施形態および特徴は、以下の説明で明らかにされるように、従属請求項によって与えられる。異なる請求項のカテゴリの特徴を適切に組み合わせて、本明細書に記載されていない更なる実施形態を与えることができる。
【0023】
好ましい方法によれば、付属品パーツの長手方向縁部段差に隣接する重畳領域における縁部シールオーバラップの幅を特定するステップを含み、付属品パーツの長手方向縁部段差での高さに基づいて、オーバラップ幅を特定する。
【0024】
好ましい方法によれば、初期縁部シールの提供は、ロータブレードの外面に取り付けられた付属品パーツの長手方向縁部段差をシールするステップを含み、ロータブレードの表面の縁部に、好ましくは付属品パーツに重畳するように液体シーラントを塗布する。液体シーラントを下準備成形ツールを使用して引き延ばし、次いで、引き延ばされたシーラント上で仕上げツールを引くことによって最終的な形状へと平滑化することが好ましい。
【0025】
好ましい方法によれば、初期縁部シールを提供することが、
- シーラント化合物(sealant compound)によって覆われるロータブレード表面と付属品パーツとの塗布領域を、好ましくは厚さ0.2mm未満の肉薄の平滑なマスキングテープで画定するステップと、
- 特にビードまたはスプレーの塗布によって塗布領域へシーラントを計量分配する(dispensing)ステップであって、シーラントが、好ましくは、付属品とブレード表面との間の移行部と重畳する蛇行した線で塗布される、シーラントを計量分配するステップと、
- 好ましくは可撓性の歯付きヘラを使用してシーラントを分配(distribution)するステップと、
-(任意選択的には)好ましくは、ブレードの形状に合うように設計され、好ましくは可撓性のツールをブレードの長手方向に移動させて、接着剤を平滑化するステップと、
- マスキングテープを除去するステップと、
- 好ましくはショアA硬さが40~60である可撓性のツールを用いてシーラント移行部段差を平滑化するステップと
を含む。
【0026】
この方法は、好ましくは、例によって以下のツールを使用することを含む。
【0027】
シーリング剤または接着性シーラント材料が、付属品のシールする塗布領域に計量分配された後、シーリング剤または接着性シーラント材料をレベリングするための、好ましくは可撓性の材料製の歯付きヘラ。
【0028】
塗布に適した断面形状と、シーリング材料の接着を防止する低エネルギー表面(表面自由エネルギー)とを備え、ショアA硬さが40~60であることを特徴とする可撓性の材料製の、例えばシリコーン材料製の第2のヘラ。使用中のブレードの表面との接触点での軟質のヘラとブレードの表面との間の角度は、硬質のヘラの場合よりも小さくなければならない。
【0029】
シーラント材料が付属品の縁部または段差と重畳するように形成されているか否かに関係なく、様々な特性を有する多数のヘラを含むツールセットを使用して、シーラント材料を塗布することができる。本発明の好ましい実施形態では、縁部シールを形成するステップは、付属品パーツの長手方向縁部に沿って少なくともロータブレードの表面にシーラント材料を堆積させるステップを含む。次いで、下準備ヘラを使用して、付属品パーツの長手方向縁部と、選択した縁部シール幅とで囲まれた領域内でシーラント材料を引き延ばす。下準備ツールは、好ましくは、シーラントの初期の引き延ばしを容易にするような可撓性および形状を有している。
【0030】
次のステップでは、調整ヘラを使用して、下準備ツールによって引き延ばされたシーラントの形状を調整する。好ましくは、調整ツールは、下準備ツールよりも低い硬さである。
【0031】
本発明の方法は、好ましくは、平滑な肉薄のマスキングテープを使用して、意図された縁部シールの領域を画定するステップを含むことができる。1つのテープは、縁部段差から外向きに距離をおいて、意図された縁部シールの外縁に沿って延びていてよい。この距離は、縁部段差の高さの少なくとも20倍である。テープの厚さは可能な限り薄く、好ましくは最大で0.2mmである。縁部シールの他の境界は、縁部段差によって画定することができる。代替的に、縁部段差上にオーバラップを形成する場合には、付属品の表面に、付属品の長手方向縁部に対して平行に第2のテープを貼り付けることができる。次いで、シーラントがこれらの範囲内で塗布される。シーラントは、最初に、例えばディスペンサノズルからのビードの形で、またはスプレーによって、ロータブレード(および付属品)上に粗く堆積させることができる。次いで、粗く塗布されたシーラントは、下準備成形ツールを使用して、例えば、可撓性の歯付きヘラを使用して引き延ばされる。
【0032】
したがって、好ましい方法によれば、シーラントの分配は、シーラントが塗布領域に計量分配された後に、好ましくは、可撓性の材料製の歯付きヘラを使用してシーラントをレベリングすることによって達成される。好ましくは、歯付きヘラの歯は、1~2mmの距離および/または0.2~5mmの高さを有する。
【0033】
引き延ばすことは、縁部シールの境界の間で、ロータブレードの表面の長手方向に歯付きヘラをガイドすることによって行うことができる。この下準備ステップが完了した後、1つ以上のテープが除去される。次いで、依然として液体であるシーラントは、引き延ばされたシーラントの上に軟質で可撓性のヘラを引くことによって、最終的な形状へと平滑化される。第2のツールを用いた調整ステップまたは平滑化ステップは、縁部段差と縁部シールの外側境界との間の縁部シールの「楔状部」の高さをさらに減少させるのに役立つ。第2の可撓性ヘラは、好ましくは、例えば50±10のような比較的低いショア硬さを確保するために、シリコーンなどの材料から作製される。
【0034】
したがって、好ましい方法によれば、可撓性のツールは、ショアA硬さが30~70であり、特に40~60であり、特に48~52である第2のヘラである。好ましいショアA硬さは30より大きく、特に40より大きく、特に45より大きく、かつ/または好ましいショアA硬さは70より小さく、特に60より小さく、特に55未満である。
【0035】
塗布プロセスは、ブレードの表面と、取り付けられかつ接着されたカバー/プレートとの間の段差によるAEP損失を最小限に抑え、理想的にはAEP損失を防止するように設計されている。
【0036】
好ましい方法によれば、初期縁部シールの最上層を除去することは、機械加工、好ましくは研削加工および/または研磨加工および/または切断加工および/またはフライス削り加工によって行われる。結果的に得られた縁部シールは、好ましくは、縁部段差と整合している。すなわち、付属品と縁部シールとの間に段差は存在しない。これは、除去ステップによって実現することができる。
【0037】
好ましい方法によれば、結果的に得られた縁部シールの表面と、ロータブレードの表面との間の角度が、縁部シールがロータブレードの表面に移行する点と同様に、縁部段差の点においてより小さくなる。これは、縁部段差の反対側の縁部シールの部分で、ロータブレードの表面と比較して縁部シールの表面が急勾配であることを意味する。縁部段差から離れる方向を指す縁部シールの勾配は、一定であるかまたは縁部段差からの距離が増加するにつれて増加すると言うことができる。結果的に得られた縁部シールは凹面を有することができるが、結果的に得られた縁部シールは、その表面に凸面および/または瘤を有する楔の形状を有することが好ましく、表面は、縁部段差に隣接する平坦な領域を有することが好ましい。特に、縁部シールは、縁部シールの表面が付属品パーツの縁部段差(上面)の近くで凸状である三次曲線の性質を有することが好ましい。代替的または追加的に、縁部シールは、シーリングの端部の近くにロータブレードの表面(下面)に向かって凹面領域を有することが好ましい。この実施形態は、結果的に得られた縁部シールの特殊な形状のために、最上層を除去する際にロータブレードの表面を損傷する危険なく容易に実現することができる。
【0038】
シーリング剤(シーラント)または接着剤を使用して、以下で説明するように、オーバラップの有無にかかわらず、付属品の1つ以上の縁部(縁部段差)に沿って縁部シールが形成される。縁部シーリングのジオメトリは、インタフェース面、すなわち、前縁ソリューションによる段差の空気力学的な影響を低減するために調整かつ最適化されている。したがって、好ましい方法によれば、風洞測定に基づいて、インタフェース面による段差の空気力学的な影響を低減するために、シーリングの幅を調整することが好ましい。
【0039】
そのような接着剤を指すために、「シーラント」、「縁部シーラー」および「シーリング剤」という用語を使用することができる。好ましくは、付属品を固定するために使用される接着剤は、縁部シーラーと同一の材料を含むか、または異なる材料を含む。シーラントは接着剤にすることができるが、しかしながら、これはすべての場合に必要なわけではない。本願では、「シーラント」という用語は、「接着剤」という用語を含む。
【0040】
好ましくは、シールは、塗布後しばらくして固化し、液体の場合に、沈下抵抗と流動性との間の良好なバランスを提供する特定のレオロジー、特に接着剤粘度を有する特定の液体シーラント(特に接着剤材料)を使用して形成される。シーラントのレオロジー特性および特定の接着剤粘度は、好ましくは、シールの特定のジオメトリおよび位置に合わせて調整される。一方では、粘度は、シーラント/接着剤が容易に引き延ばされ、引延し中に発生する可能性のある筋を逃がすことができるように、十分に低くなければならない。しかし、他方では、シーラントの降伏点(沈下抵抗)は、重力によって引き起こされるシーラントの流出を回避するのに十分高くなければならず、これは、塗布プロセスによって作製されるシールの輪郭に悪影響を及ぼす。
【0041】
好ましくは、固化したシーラントは、(極めて)可撓性であり、耐摩耗性であり、好ましくは、シーラントが塗布される表面に良好に付着し、また、UV曝露に対して良好な耐性を有する。
【0042】
一般に、物理的プロセスおよび化学反応のいずれかまたは両方の組み合わせによって塗布後に固化する液体シーラント/接着剤は、本発明の目的に適している。反応性の二成分シーラントは、キュアー反応が速く、結果としてプロセスが速いため、好ましい。好ましくは、冷却すると固くなるホットメルトシーラントのような物理的に硬化するシーラントおよび/または化学反応によって硬化するシーラントを使用することができる。化学的に硬化するシーラントのグループからは、キュアー反応が速く、結果としてプロセスが速いため、二液型シーラントが好ましい。
【0043】
一方では、本発明による塗布プロセス、すなわち、計量分配、レベリングおよび輪郭の形成のために十分な時間を確保することができる固化速度(開放時間)を有するシーラントを使用することが好ましい。他方では、プロセス時間を短くするために、後続の処理が可能な限り迅速であるべきである。ここで、特に化学的に架橋する二成分接着剤は、特に、本発明による輪郭が形成された後、例えばIRエミッタによる中程度の加熱によって二成分接着剤のキュアーを加速させることができ、後続のプロセス時間の短縮を可能にするという利点を提供する。
【0044】
例示的な材料は、上記のように、液体およびキュアー状態での所望の特性、特に沈下抵抗および流動性を考慮して選択されたエポキシ、ポリウレタン、ポリウレア、シリコーン、シラン変性ポリマー(SMP)、メチルメタクリレート(MMA)およびハイブリッド溶液であってよい。例えば、シーラント材料は、沈下抵抗と流動性との間の良好なバランスおよびシーラント材料のキュアー状態での有利な高度の可撓性を提供する特定の接着剤粘度を有するように選択することができる。そのような材料を使用してLEPの長手方向縁部に沿って形成された一体の縁部シールは、ロータブレードの繰り返しのねじり曲げの影響を受けない。
【0045】
好ましくは、二成分シーリング材料が使用され、ブレードのダイ表面にシーリング材料を塗布する直前に2つの成分が混合される。好ましくは、2つの成分の粘度は、1つの成分については40.000~110.000mPa・sであり、他の成分については100.000~380.000mPa・sである。
【0046】
好ましいシーラントは、接着部の形成の前提条件として、シーラントが塗布される表面を濡らすのに十分であるように、シーラントが塗布される表面の表面自由エネルギーよりも低い表面張力を有する。例えば、限定されるものではないが、洗浄、研磨、プライマーの塗布または接着促進剤の塗布のための適切な方法および例えば、限定されるものではないが、プラズマ、コロナ、火炎、VUV(真空紫外線)の活性化方法によって、表面自由エネルギーを増加させることは明示的に本発明の一部である。表面を濡らす上記の能力に加えて、接着剤とブレードの表面および各々の付属品との良好な接着は、特にオフショア設備の過酷な条件下での耐用年数に関する厳しい要件を満たすために重要である。
【0047】
良好な接着性に加えて、シーラントの機械的な特性は極めて重要である。雨による浸食条件に耐える高い耐摩耗性と、動作中のブレードの振動に耐える十分な疲労強度との両方が必要である。したがって、好ましいシーラントは、ブレードの耐用年数全体にわたって、各々の表面に発生する、特に2N/mmよりも大きい剥離力に対して十分な抵抗性を有する。長期耐性の試験方法は、ISO 20340に記載されている手順である。
【0048】
本発明の対象となるシーリングの用途が広範囲にわたるために、関与する材料、各々の付属品のサイズおよびブレード上の付属品の位置に関して、シーラントは、各々の用途に合わせて調整されることが好ましい。
【0049】
好ましいシーラントは、4MPaよりも大きく、かつ/または8MPaよりも小さい引張強度(DIN EN ISO 527に準拠)、特に好ましくは5MPa±0.5MPa未満の値、特に5MPaの引張強度を有する。80℃で1000時間が経過したのち、引張強度は約9MPa以上に変化する可能性がある。
【0050】
代替的または追加的に、破壊時の伸び率(DIN EN ISO 527に準拠)は80%より大きく、かつ/または130%より小さく、特に好ましくは90%±5%、特に90%である。80℃で1000時間が経過したのち、破壊時の伸び率は100%以上の値に変化する可能性がある。
【0051】
代替的または追加的に、ヤング率(DIN EN ISO 527に準拠)は、8MPaよりも大きく、かつ/または150MPaよりも小さく、特に好ましくは11MPa±2MPa未満の値、特に11MPaである。80℃で1000時間が経過したのち、ヤング率は11MPa以上の値になる可能性がある。
【0052】
80℃に1000時間さらされることは、タービンの寿命期間中の太陽光の結果として、より高いブレード表面温度を模倣する加速劣化試験を指す。実際のオフショア条件下での最大表面温度は60℃と推定されている。好ましくは、シーラントは、ヤング率が一定のままであるように、かつ/または引張強度および/または破壊時の伸び率が増加するように選択され、これら3つの要件すべての組み合わせは、シーラントの長期耐久性にとって極めて有利である。
【0053】
したがって、好ましい方法によれば、シーラントは、付属品の適用中に形成されたギャップおよび表面の隙間に流れ込むのに十分な流動性を有し、平滑な仕上がりを保証する。
【0054】
好ましくは、シーラントは、以下の特性のうちの1つ以上を提供する。シーラントは、
- ブレードの表面の表面自由エネルギーよりも低い表面張力、および/または
- ブレードの耐用年数全体にわたって、各々の表面に発生する、特に2N/mmより大きい剥離力に対する十分な抵抗性、および/または
- 4MPaより大きく、かつ/または8MPaより小さい引張強度、および/または
- 80%より大きく、かつ/または130%より小さい破壊時の伸び率、および/または
- 8MPaより大きく、かつ/または150MPaより小さいヤング率
を有する。
【0055】
好ましい方法によれば、塗布領域にシーラントを計量分配する前に、まず、充填材が、長手方向の付属品の縁部に沿って塗布され、充填材は、好ましくは、速硬化性接着剤および/または高粘度接着剤であり、シーラントは、キュアーされたまたは硬化させられた充填材上に塗布される。
【0056】
好ましい方法によれば、シーラントは、付属品をロータブレードの表面に結合するために使用される接着剤と同一の材料を含む。
【0057】
好ましいシーリング材料は、良好な研磨性を有するため、平滑で空気力学的に有利な表面を生成することができる。したがって、液体状態と硬化状態または架橋状態との両方のシーリング材料中の固体粒子(例えば、充填材粒子、充填材粒子の凝集体、ゲル粒子)の最大サイズは、特にDIN EN 21524またはISO 1524に従って特定される場合、好ましくは最大200μmに制限され、好ましくは最大100μmに制限され、特に好ましくは最大60μmに制限され、さらには最大50μmに制限される。
【0058】
付属品の縁部を空気力学的に最適化する本発明の方法は、LEPカバーなどの空気力学的な装置に限定されない。付属品は、好ましくはロータブレードの曲面に一致する、センサを備えるプレート、例えば可撓性のプレートであってよい。そのようなセンサプレートのロータブレードの表面への固定は、本発明のシーリングのコンセプトから恩恵を受け、AEPに関して改善を達成する。このようなプレートは、ロータブレードの前縁と後縁との間の任意の位置でロータブレードの表面に取り付けることができ、ロータブレードの負圧側または正圧側に取り付けることができる。
【0059】
好ましくは、縁部シールは、本発明の方法を使用して、そのようなプレートの長手方向縁部に沿って形成される。こうして、このようなプレートの風上縁部または風上側縁部(すなわち、ロータブレードの前縁に近い縁部)も風下縁部(ロータブレードの後縁に近い縁部)もロータブレードの表面上の層流に悪影響を及ぼさない。したがって、本発明は、シェルまたは空気力学的な装置に限定されず、例えば、ブレードの表面上のベースプレート、例えば、可撓性のプレートに取り付けられた任意の種類のセンサも含む。したがって、AEPに関する改善は、センサプレートなどのプレートでも可能であり、ブレードの表面に取り付けるときに発生するノイズを低減することもできる。
【0060】
一例として、付属品の縁部段差の高さ(シェルの高さ)は、0.25mm~2mmの間、特に0.5mm~1.5mmの間または0.7~1mmの間のいずれかであってよい。付属品の縁部段差の高さは、付属品の外縁部の厚さと、付属品をロータブレードに取り付けるために使用される任意の接着層または結合層の厚さとの合計である。
【0061】
縁部シーリングの好ましい最小幅は5mm、好ましくは20mm、特に好ましくは40mmである。縁部シーリングの好ましい最大幅は、150mm、好ましくは100mm、特に好ましくは60mmである。特に、幅は、各々の縁部段差の高さに対応して選択されることが好ましい。例えば、縁部段差の高さが0.7mmの場合、縁部シーリングの最小幅は14mm(最小)になる。例えば、縁部段差の高さが1.0mmの場合、縁部シーリングの最小幅は20mm(最小)になる。
【0062】
段差の高さに対する縁部シールの幅の比率は、4:1または20:1から100:1の間で変化する。0.5mm~1.5mmの縁部段差の高さの範囲の例では、縁部シールの幅は少なくとも10mmであり、最大150mmである。ロータブレードの付属品パーツのこのような比較的広幅の縁部シールは、(風洞試験で)改善された空気力学的な挙動をもたらすことが観察されている。したがって、好ましい方法によれば、長手方向縁部段差での幅および/またはオーバラップ幅と高さとの比率は、4:1よりも大きく(または20:1よりも大きく)、かつ/または100:1よりも小さい。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施形態は、付属品の長手方向縁部上に縁部シールを形成することによって、すなわち、縁部シールを付属品とロータブレードとの両方の外面に「重畳させる」ことによって、ロータブレードの表面上の気流の層流の性質を維持できるという洞察に基づく。したがって、本発明のさらに好ましい実施形態では、この方法は、縁部シールの長手方向縁部に隣接する付属品の表面の領域において、縁部シールのオーバラップ幅を特定するステップを含む。「オーバラップ幅」という用語は、付属品の表面に延びる縁部シール部分の幅を意味すると理解されるものとする。オーバラップ幅は、付属品の高さに基づいて特定される。
【0064】
次いで、縁部シールを形成するステップは、好ましくは、付属品パーツの重畳領域にもシーラント材料を塗布することを含む。縁部シールオーバラップは、付属品の縁部上に平滑な層を有利に形成することができる。
【0065】
したがって、好ましい方法によれば、シーラントは、付属品の縁部と重畳するように形成される。
【0066】
本発明の方法において、付属品の縁部の後ろ、すなわち、付属品の風下でのブレードの表面での層流から乱流への流れの移行の開始を防止するかまたは少なくとも大幅に遅延させるために、縁部シールの縁部シール幅(好ましくはオーバラップ幅も)を特定の付属品に合わせて「調整」することが好ましい。好ましくは、縁部シーリングの範囲(すなわち幅)および任意のオーバラップの範囲は、付属品の長手方向縁部での縁部段差の高さによって特定される。
【0067】
段差の高さに対するオーバラップ幅の比率は、10:1から50:1まで変化する。例えば、縁部段差の高さが0.5mmの場合、オーバラップ幅は5mm~25mmである。縁部段差の高さが1.5mmの場合、縁部シールの幅は15~75mmである。上記の推奨される比率は、当技術分野で知られているソリューションによって通常使用される比率よりも大幅に大きい。縁部シーリングの可能な最大幅または最大範囲は、また、ロータブレードの曲率によって特定されるかまたは制限される。
【0068】
本明細書で提案される縁部シーリングは、十分に低粘度のシーリング剤(シーラント)またはシーリング接着剤を使用することによって達成することができ、付属品の適用中に形成されるあらゆるギャップおよび表面の隙間に流れ込むのに十分な流動性を有し、平滑な仕上がりを保証することができる。しかしながら、接着剤の粘度が、縁部シールの外側境界に沿った縁部シールの最小高さを特定するので、シーラント材料もまた、ブレードの表面への平滑な移行が保証されるように選択されることが好ましい。
【0069】
同時に、接着剤の粘度が、単純な縁部シールの段差および重畳する縁部シールの段差を解消する。重畳する縁部シーリングは、シェル縁部上に平滑な層を形成することで段差を排除することができる。縁部シーリング材料は、ブレードの表面への平滑な移行を保証するように選択される。
【0070】
縁部段差が大きい場合、充填材料を使用して縁部シールを補強することができる。本発明のそのような好ましい実施形態では、充填材料が付属品の縁部に沿って塗布されて、最初に縁部段差を低減する、すなわち、付属品の縁部から外側に延びるコンパクトな楔状部またはコンパクトな傾斜を形成する。次いで、シーラント材料が充填材上に塗布される。充填材料は、シーラント材料よりも粘度が高く、充填材層または最下層を、制限された厚さに簡単に構成することを容易にすることができる。縁部シールの端部で平滑な縁部を可能にするための、すなわち、ロータブレードの表面への平滑な移行を可能にするための縁部シーラーの均一な層が表面にあることを保証するために、充填材の範囲(幅)は、縁部シール幅の幅よりも小さいことが好ましい。充填材料が占める体積は、縁部シールの意図された体積の半分未満であってよい。
【0071】
好ましい風力タービンロータブレードでは、付属品パーツは、前縁保護カバー、後縁パネル、渦発生器パネル、スラット、プレートまたはセンサパネルのいずれかを含む。他の可能性は上記の通りである。
【0072】
好ましい風力タービンロータブレードでは、ロータブレードの長手方向縁部での付属品パーツの厚さは、0.2mmから5.0mmの範囲であり、好ましくは0.25または0.5mmから1.5mmである。
【0073】
有利なことに、本発明の構成および方法は、縁部段差を低減/回避することによって、ブレードの表面上の段差または他の障害物(例えば、LEPの適用から生じる)の空気力学的な性能への影響を低減する。このソリューションでは、縁部の厚さが厚いLEPシェルまたはLEPカバーを使用することもできる。肉薄の縁部を要求することが、これらのシェルの製造におけるコストの上昇要因であるため、これは、シェルのコスト削減の大きな機会となることができる。より肉薄のシェル縁部を回避することで、適用中のしわ形成のリスクも軽減され、このことは、不適合コストの削減と空気力学的な性能の向上とにさらに貢献する。
【0074】
上記の縁部シーリング方法は、LEPソリューションの空気力学的な性能の向上に貢献する。縁部シーリングは、間接的に、肉厚の縁部を備えるシェルの使用を可能にし、シェルのコストおよび不適合コストの削減に貢献する。
【0075】
ブレードの表面への移行を平滑にするために、適切な材料で重畳仕上げが実施される。
【0076】
本発明の利点は、固化中のシーラントの収縮が後処理によって補償され、付属品とシーラントとの間の平滑な移行を実現することができることである。オーバラップ自体は、付属品の表面から分離するかまたは遊離する場合に層流に乱流を引き起こす可能性があるため、不利であることに注意されたい。
【0077】
本発明は、縁部段差を低減/回避することにより、ブレードの表面に対する段差の空気力学的な性能への影響(例えば、LEPまたは他の任意の空気力学的な装置またはブレードの表面に取り付けられたノイズ低減手段の適用から生じる影響)を低減するという利点を提供する。このソリューションでは、縁部の厚さが厚いLEPシェルを使用することもできる。肉薄の縁部を要求することが、これらのシェルの製造におけるコストの上昇要因であるため、これはシェルのコスト削減の大きな機会となることができる。より肉薄のシェル縁部を回避することで、適用中のしわ形成のリスクも軽減され、このことは、不適合コストの削減と空気力学的な性能の向上とにさらに貢献する。
【0078】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、図面は説明のみを目的として作成されており、本発明の限定を定義するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】ロータブレード付属品の長手方向縁部に塗布される縁部シールの実施形態を示す図である。
図2】重畳する縁部シールを示す図である。
図3】本発明の縁部シールの成形の実施例を示す図である。
図4】重畳する縁部シールを提供する方法を示す図である。
図5】本発明による好ましい方法を示す図である。
【0080】
図では、同一数字は全体を通して同一の対象を指す。図中の対象は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【0081】
図1は、付属品3に塗布された縁部シールSを示しており、付属品3は、LEPカバー、シェル、TEカバー、VGパネル、TEパネル、センサパネルなどのいずれかであってよい。縁部シールは、本発明による方法によって得ることができる。付属品3は、接着剤結合層4によってロータブレード1の外面2に取り付けられている。議論の目的のために、接着剤層4は、付属品3の要素と見なすことができる。付属品の縁部段差3Eでの付属品3の高さtは、付属品3の厚さと接着剤層4の厚さとの合計である。付属品の縁部段差3Eは、ロータブレード1の長手方向に走行していると想定することができる。付属品3の縁部段差3Eと縁部シールSとの間に段差がないため、縁部シール3は、理想化された縁部シールSと見なすことができる。破線の省略記号は、点(接合点)J1での縁部段差を示す。付属品と縁部シールSとの間の移行部が平滑であることが分かる。
【0082】
縁部シールSは、付属品の縁部段差3Eの第1の点J1で始まり、第2の点J2まで延び、それにより、縁部シールSの高さは、点J1の最大値から点J2の最小値まで徐々に減少する。δ:tの比率は、好ましくは少なくとも20:1である。この場合の縁部シールSの体積は、縁部シールSの断面積、すなわち、(t・δ)/2に、シールSの長さ、例えば付属品3の長手方向縁部段差3Eの長さを乗じたものである。
【0083】
図2は、本発明の縁部シールの更なる実施形態を示している。ここで、初期縁部シールS1は、付属品3の長手方向縁部段差3E、この場合、ロータブレード1の前縁の周りに取り付けられたLEPカバーに塗布される。この例示的な実施形態では、初期縁部シールS1は、付属品3の長手方向縁部段差3Eに重畳する、すなわち、初期縁部シールS1は、点J0で始まり、点J2まで延びる。したがって、初期縁部シールS1の全幅δ1は、点J0から点J1まで延びるオーバラップS0Vの幅hであり、残りの縁部シール幅δは、点J1から点J2まで延びる。この実施形態では、初期縁部シールS1の高さt1は、点J0の最小値から点J1の最大値まで徐々に増加し、点J1の最大値から点J2の最小値まで徐々に減少する。オーバラップ幅hに応じて、かつ/または点J1と点J2との間の縁部シール幅δに応じて、初期縁部シールS1の高さt1は、付属品の縁部段差3Eの高さを最大で2.0mmまで超えることができる。この高さt1は、ヘラなどのツールを使用して塗布されたシーラントまたは接着剤の制御された層の厚さに基づいている。原則として、縁部シールの最上層は除去されるため、初期縁部シールS1の高さt1が縁部段差の高さをどれだけ超えるかは問題ではない。
【0084】
この場合の縁部シールSは、長手方向の付属品の縁部3Eに沿って最初に塗布される充填材料F(本明細書では充填材Fとも呼ばれる)上に延びる。充填材Fは、速硬化性接着剤および/または高粘度接着剤であってよい。充填材Fを塗布して、付属品3の高さよりも短い直線状の側面を有する楔状部を形成することができる。次のステップでは、シーラント材料が、キュアーされたまたは硬化させられた充填材Fの上に塗布される。したがって、大きな縁部段差の場合、充填材Fを使用して最初に縁部段差を低減することができ、その後、縁部シーラーを塗布することができる。充填材料Fは、限られた厚さに最下層を容易に形成することを可能にするために、縁部シールSの材料よりも高い粘度を有することができる。接合部J2で平滑な縁部を可能にする縁部シーラーの均一な層が表面にあることを保証するために、充填材Fの範囲はδ未満になる。
【0085】
図3は、本発明の縁部シールSの更なる実施形態を示す。最初、例えば、図2の初期縁部シールS1と同様に初期縁部シールS1が塗布されている。シーリングステップでは、シーリング剤/シーリング接着剤を使用し、付属品3の縁部段差3E上にわずかに重なって初期縁部シールS1を形成する。シーリング剤または同等のものは、異なる特性であってよいが、同一の組成であってもよい。
【0086】
風洞測定に基づき、インタフェース面による段差の空気力学的な影響を低減するために、初期縁部シールS1の幅δ(またはδ1)を調整することが好ましい。好ましくは、幅δは、接合部J1における縁部段差3Eの高さtに依存する。tに対するδの比率は、20:1~100:1で変化する。
【0087】
初期縁部シールS1を作製するとき、シーリング剤が、縁部段差3Eでブレード1に塗布される。シーリング剤の接着液がギャップおよび表面の隙間に流れ込むのに適した粘度が必要である。同時に、接着剤の粘度が接合部J2の段差を解消する。接合部J2での段差の高さは、好ましくは100μm未満である。これは、縁部シーラーが弾性ヘラによって形成される塗布プロセスを使用して達成することができる。
【0088】
本発明によれば、残りの縁部シールSが最適化されるように、初期縁部シールS1(チェックされた部分)の最上層Lが除去される(または除去されなければならない)。これは、シーラントがキュアーした後、初期縁部シールS1の最上層Lを研削して接合部J1を露出させることで達成することができる。研削は、ランダムオービットサンダーなどの通常の研削ツールを使用して、または手作業で行うこともできるが、特殊な縁部研削ツールを使用することが好ましい。代替的には、最上層Lは、フライス削り加工、研磨加工または切断加工することができる。
【0089】
付属品3の縁部段差3Eと残りの縁部シールSとの間に(本質的に)段差はない。したがって、初期縁部シールS1は、ブレードの表面で層流から乱流への流れの移行の開始を防止するために、最適化された縁部シールSに調整される。
【0090】
図4は、ロータブレードの表面2に取り付けられた付属品3と、好ましい形での初期縁部シールS1の形成とを示している。付属品3は、上述したように接着剤4(ここには示されていない接着剤)を使用して取り付けることができる。液体シーラントLSは、付属品3の縁部段差3Eの領域のブレード1の表面2に塗布される。
【0091】
シーラントLSを塗布する前に、平滑な肉薄のマスキングテープ(図示せず)を使用して、意図された縁部シールの領域を画定することができる。1つのテープは、縁部段差3Eから外向きに距離をおいて、意図された初期縁部シールS1の外縁に沿って延びることができる。この距離は、縁部段差の高さよりも少なくとも4倍、好ましくは少なくとも20倍大きい。テープの厚さは可能な限り薄く、好ましくは最大で0.2mmである。初期縁部シールS1の他の境界は、縁部段差3Eによって画定することができる。代替的に、縁部段差3E上にオーバラップが形成される場合、第2のテープを、付属品3の長手方向縁部に対して平行に付属品3の表面に貼り付けることができる。次いで、シーラントLSがこれらの範囲内に塗布される。シーラントLSは、最初、例えばディスペンサノズルからのビードの形態で、またはスプレーによって、ロータブレード1および付属品3の表面2上に粗く堆積させることができる。
【0092】
次いで、下準備成形ツール、例えば、可撓性の歯付きヘラ5を使用して、粗く塗布されたシーラントLSが引き延ばされる。これは、歯付きヘラ5を縁部シールの境界の間でロータブレードの表面2の長手方向にガイドすることによって行うことができる。
【0093】
この下準備ステップが完了した後、1つ以上のテープが除去される。次いで、依然として液体であるシーラントLSは、引き延ばされたシーラントLSの上に、より軟質の仕上げツール、例えば、可撓性のヘラ6を引くことによって最終的な形状へと平滑化される。第2のツールを用いた調整ステップまたは平滑化ステップは、縁部段差3Eと縁部シールの外側境界との間の初期縁部シールS1の「楔状部」の高さをさらに減少させるのに役立つ。第2の可撓性のヘラ6は、好ましくは、例えば50±10のような比較的低いショア硬さを確保するためにシリコーンなどの材料で作製される。
【0094】
図5は、図4で製造された、キュアー後の初期縁部シールS1を示している。初期縁部シールS1は、研磨ツール7によって、硬化させられたシーリング材料から最上層L(図3を参照)を除去することにより処理される。その結果、図1に示すように、最適化された縁部シールSが得られる。
【0095】
本発明は、好ましい実施形態およびその変形の形で開示されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の追加の修正および変形を行うことができることが理解される。明確にするために、本出願全体での「a」または「an」の使用は、複数を除外するものではなく、「含む」は、他のステップまたは要素を除外しないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】