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特表2022-525064超音波トランスデューサ及び皮膚処置システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ及び皮膚処置システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/02 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
A61N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553811
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 IL2020050368
(87)【国際公開番号】W WO2020194312
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/824,503
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521404853
【氏名又は名称】ソフウェイブ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スヴェルドリク、アリエル
(72)【発明者】
【氏名】エックハウス、シモン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルシュタイン、アサフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ22
4C160MM22
(57)【要約】
皮膚の処置方法は、3mm~7mmの範囲の表面積寸法を介して、非集束超音波エネルギーの1以上のパルスを送出することを含み、各パルスは5W/cm~60W/cmの範囲の強度と、前記超音波エネルギーが能動的に送信されるパルス当たり1~10秒の範囲の持続時間とを有し、非集束超音波エネルギーは、固定位置から5cm~100cmの範囲の最大表面積を有する1以上の皮膚領域へ送出されることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非集束超音波エネルギーの1以上のパルスを3mm~7mmの範囲の表面積寸法を介して送出することを含み、
各パルスは、5W/cm~60W/cmの範囲の強度と、前記超音波エネルギーが1パルス当たり1~10秒の範囲で能動的に送信される持続時間とを有し、
前記非集束超音波エネルギーは、固定位置から、5cm~100cmの範囲の最大表面積寸法を有する1以上の皮膚領域へ送出される、
皮膚の処置方法。
【請求項2】
前記各パルスは、15W/cm~30W/cmの範囲のエネルギー強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送出の間、及び送出後の少なくとも一方において、前記1以上の皮膚領域の外表面を冷却することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却は、表皮の温度を5~40℃の間に維持するために前記外表面を冷却することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記送出された非集束超音波エネルギーによって、前記皮膚の外表面から0.5mm~3mmの深さに位置する1以上の組織層を、少なくとも45℃の温度に加熱することを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1以上の皮膚領域は顔面又は頸部に位置する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記送出の前に、前記皮膚の外表面から0.5mm~3mmの範囲の深さにある1以上の神経を含む、前記皮膚領域における1以上の領域を識別することを含み、前記送出が、前記1以上の領域を含まない皮膚領域へ前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記送出は、前記1以上のパルスの非集束超音波エネルギーを、前記1以上の皮膚領域に、反復の間に少なくとも30秒の時間差を設けて、少なくとも2回反復して送出することを含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記送出は、前記送出の少なくとも1週間後に、シワ重症度評価等級(WSRS)、グローガウ等級、フィッツパトリックシワ等級、フィッツパトリックシワスコア、及びフィッツパトリックシワ・弾性線維症等級(FWES)のうちの少なくとも1つを含むシワ重症度等級において、少なくとも1ポイントの低減ができる時間の長さにわたって前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
非集束超音波エネルギーの1以上のパルスを送出することを含み、各パルスは、15W/cm~30W/cmの範囲の超音波強度と、前記超音波エネルギーが能動的に送信されるパルス当たり2~6秒の範囲の持続時間とを有する、
皮膚の処置方法。
【請求項11】
皮膚組織の少なくとも1つの領域に送出する非集束超音波エネルギーの1以上のパラメータ値を選択することであって、前記領域への超音波エネルギー送出の少なくとも1週間後に、シワ重症度評価等級(WSRS)、グローガウ等級、フィッツパトリックシワ等級、フィッツパトリックシワスコア、及びフィッツパトリックシワ・弾性線維症等級(FWES)のうちの1以上を含む、シワ重症度等級を少なくとも1ポイント低減させるために適した、パラメータ値を選択し、
前記選択された1以上のパラメータ値で、前記非集束超音波エネルギーを皮膚組織の前記少なくとも1つの領域に送出すること、
を含む、シワの重症度を低減するための方法。
【請求項12】
前記選択は、メモリ内の表から前記1以上のパラメータ値を読み出すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択は、前記皮膚領域の1以上のパラメータに従って前記1以上のパラメータ値を選択することを含む、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記皮膚領域パラメータは、前記皮膚の組織の種類、前記皮膚領域の組織組成、前記皮膚領域の脂肪組織含有量、前記皮膚領域の位置、前記皮膚領域内又はその近傍における神経の存在、のうちの1以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1以上のパラメータ値は、それぞれが15W/cm~30W/cmの範囲のエネルギー強度と、前記超音波エネルギーが3mm~7mmの表面積寸法を介してパルス当たり2~6秒の範囲で能動的に送出される継続時間と、を有する超音波エネルギーの1以上のパルスを含み、
前記送出は、前記選択された1以上のパラメータ値で前記非集束超音波エネルギーを送出して、5cm~100cmの範囲の表面積を有する前記皮膚組織の外表面をカバーすることを含む、
請求項11~請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記表皮の温度を5~40℃の間に維持するために、前記送出中及び前記送出後の少なくとも一方において前記皮膚組織の外表面を冷却することを含む、請求項11~請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記送出された非集束超音波エネルギーによって、前記皮膚の外表面から0.25mm~5mmの深さに位置する1以上の組織層を、少なくとも45℃の温度にまで加熱することを含む、請求項11~請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記送出の前に,前記皮膚の外表面から最大5cmまでの距離にある神経を含む皮膚組織の1以上の領域を識別することを含み、前記送出が、前記1以上の識別された領域を含まない前記少なくとも1つの皮膚組織の領域へ前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、請求項11~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記皮膚組織の領域は顔面又は頸部に位置する、請求項11~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
超音波アプリケータと、
前記超音波アプリケータに接続される制御コンソールと、
を備える、シワを処置するシステムであって、
前記超音波アプリケータは、
非集束超音波エネルギーを生成するように構成された複数の超音波トランスデューサであって、それぞれが3mm~7mmの範囲の表面積寸法の作動面を備える超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの少なくとも一部を皮膚組織の外表面に接触して配置させるような形状及び寸法を有するハウジングと、
を備え、
前記制御コンソールは、
前記超音波エネルギーのパラメータ値を記憶するメモリと、
前記超音波トランスデューサへ1以上の超音波エネルギーパルス生成のための信号を送るように構成された制御回路と、
を備え、
前記1以上のパルスのそれぞれは、5W/cm~60W/cmの範囲のエネルギー強度と、前記超音波エネルギーがパルス当たり2~6秒の範囲で能動的に送信される持続時間とを有する、
シワを処置するシステム。
【請求項21】
前記1以上のパルスのそれぞれは、15W/cm~30W/cmの範囲のエネルギー強度を有する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記アプリケータは、前記複数の超音波トランスデューサ、及び前記皮膚に接触して配置された前記アプリケータの領域の少なくとも一方を冷却するように構成された冷却モジュールを備える、請求項20又は請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記冷却モジュールは、それぞれが低温面と高温面とを有する、1以上の熱電冷却器(TEC)を備え、
前記低温面は、前記超音波トランスデューサ及び前記超音波トランスデューサ間の領域の少なくとも一方を冷却するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記冷却モジュールは冷却流体を含む冷却流体チャンバを備え、前記冷却流体チャンバは、前記1以上のTECの前記高温面を冷却するように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記アプリケータと前記制御コンソールとを接続する長尺ケーブルを備え、前記細長いケーブルは、電気配線と、前記冷却流体を前記冷却流体チャンバと前記制御コンソールとの間で循環させるような形状及び寸法を有する1以上の冷却流体流通路と、を備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
特定の被験者の選択された処置標的における、皮膚組織特性及び組成の少なくとも一方に関するパラメータと、非集束超音波美容処置の少なくとも1つの処置パラメータの値と、をメモリに記憶し、
前記メモリに接続された制御回路によって、前記記憶された皮膚組織関連指標に基づいて前記少なくとも1つの処置パラメータの値を自動的に調整し、
前記自動的に調整された値に従って、少なくとも1つの超音波トランスデューサに信号を送出し、前記選択された処置標的へ非集束超音波エネルギーを放出させること、
を含む、皮膚処置のための美容方法。
【請求項27】
前記皮膚関連指標および前記調整された値を含むユーザ固有プロファイルを生成することを含み、前記記憶することは、前記ユーザ固有プロファイルを前記メモリに記憶することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記記憶することは、前記被験者に送出された非集束超音波処置の評価結果を前記メモリに記憶することを含み、前記自動的に調整することは、前記記憶された評価結果に基づいて前記値を自動的に調整することを含む、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記皮膚組織関連指標は、前記選択された処置標的における皮膚組織組成及び選択された標的組織体積のうちの少なくとも1つを含む、請求項26~請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記皮膚組織関連指標は、前記選択された処置標的におけるシワの長さ、シワの深さ、及びシワの密度のうちの少なくとも1つを含む、請求項26~請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの処置パラメータは、超音波エネルギー強度、超音波エネルギーパルスの持続時間、トランスデューサの数、温度、及び皮膚表面冷却の継続時間の少なくとも一つを含む、請求項26~請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
皮膚処置のための美容方法であって、
特定の被験者に関する1以上の安全指標、及び非集束超音波美容処置の少なくとも1つの処置パラメータの値をメモリに記憶し、
前記メモリに接続された制御回路によって、前記記憶された1以上の安全指標に基づいて前記少なくとも1つの処置パラメータの前記記憶された値を自動的に調整し、
前記自動的に調整された値に従って、少なくとも1つの超音波トランスデューサに信号を送出し、前記選択された処置標的へ非集束超音波エネルギーを放出させること、
を含む、皮膚処置のための美容方法。
【請求項33】
前記記憶することは、選択された処置標的における、少なくとも1つの血管及び少なくとも1つの神経の少なくとも一方の位置に関する指標を記憶することを含み、前記自動的に調整することは、前記選択された処置標的における、前記少なくとも1つの血管及び前記少なくとも1つの神経の少なくとも一方の前記記憶された位置に基づいて、前記少なくとも1つの処置パラメータの前記記憶された値を自動的に調整することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記記憶することは、前記特定の被験者の痛覚感受性に関する指標を記憶することを含み、前記自動的に調整することは、前記記憶された痛覚感受性指標に基づいて、超音波強度を少なくとも5%内で自動的に低減すること、及び少なくとも5%内で術後の冷却継続時間を自動的に増加させることの少なくとも一方を含む、請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
送出 1以上の超音波トランスデューサを備える超音波アプリケータと、
被験者の上半身と前記超音波アプリケータの画像とを撮影するためのカメラと、
前記カメラに機能的に接続され、前記カメラから受信する信号によって前記超音波アプリケータ及び前記1以上のトランスデューサの少なくとも一方の位置を前記被験者の上半身上で決定するように構成された制御回路と、
を備える、美容用非集束超音波皮膚処置を提供するシステム。
【請求項36】
前記カメラは、被験者の動きの前、動きの間、及び動きの後の少なくとも一つにおいて、被験者の上半身の画像を撮影するように構成され、前記制御回路は、前記被験者の動きを考慮して、前記カメラから受信する信号によって前記被験者の上半身上での前記超音波アプリケータ及び前記1以上のトランスデューサの少なくとも一方の位置を決定するように構成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記制御回路は、前記受信したカメラ信号に基づいて前記上半身上の処置位置のマップを生成するように構成され、前記システムは前記マップを記憶するためのメモリを備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記カメラは、被験者の動きの前、動きの間、及び動きの後の少なくとも一つにおいて、被験者の上半身の画像を撮影するように構成され、前記制御回路は、前記被験者の動きを考慮して前記マップを生成するように構成される、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記カメラは前記被験者の前記上半身に対して移動するように構成される、請求項35~請求項38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記上半身は、顔面及び首部領域の少なくとも一方を含む、請求項35~請求項39のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年3月27日出願の米国仮特許出願第62/824,503号の米国特許法35USC§119(e)に基づく優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2017年6月6日に出願されたPCT特許出願第PCT/IL2017/050638号に関連する。上記出願の内容はすべて、その全体が本明細書に完全に記載されているがごとく、参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、その一部の実施形態において、超音波エネルギーを用いた組織の処置に関し、より具体的には、皮膚処置のための超音波トランスデューサ及びアプリケータに関するが、これらに限るものではない。
【0004】
米国特許公開第6595934(B1)号は、次のように開示している。「強力集束超音波エネルギーを用いた熱焼灼による皮膚の若返り方法であって、この方法は、超音波放出部材を皮膚の外表面に隣接して配置するステップと、超音波放出部材から超音波エネルギーを皮膚中に放出するステップと、皮膚内に超音波エネルギーを集束させるステップと、集束した超音波エネルギーで皮膚を焼灼して皮膚の外表面の下に、皮膚の非焼灼組織と皮膚組織が焼灼された複数の損傷部とを含む焼灼組織領域を形成するステップと、皮膚の外表面の傍から超音波放出部材を除去するステップと、を含む。この損傷部は、皮膚によるコラーゲン生成を刺激する。損傷部は皮膚の外表面の直下の所定の深さで始まりかつ終わるようにでき、表皮及び真皮の深層には損傷を与えないようにすることができる。」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの例を以下に列挙する。
【0006】
例1:皮膚の処置方法であって、非集束超音波エネルギーの1以上のパルスを3mm~7mmの範囲の表面積寸法を介して送出することを含み、各パルスは、5W/cm~60W/cmの範囲の強度と、前記超音波エネルギーが1パルス当たり1~10秒の範囲で能動的に送信される持続時間とを有し、前記非集束超音波エネルギーは、固定位置から、5cm~100cmの範囲の最大表面積寸法を有する1以上の皮膚領域へ送出される、方法。
【0007】
例2:前記各パルスは、15W/cm~30W/cmの範囲のエネルギー強度を有する、例1による方法。
【0008】
例3:前記送出の間、及び送出後の少なくとも一方において、前記1以上の皮膚領域の外表面を冷却することを含む、上記例のいずれか一つによる方法。
【0009】
例4:前記冷却は、表皮の温度を5~40℃の間に維持するために前記外表面を冷却することを含む、例3による方法。
【0010】
例5:前記送出された非集束超音波エネルギーによって、前記皮膚の外表面から0.5mm~3mmの深さに位置する1以上の組織層を、少なくとも45℃の温度に加熱することを含む、上記実施例のいずれか一つによる方法。
【0011】
例6:前記1以上の皮膚領域は、顔面又は頸部に位置する、上記例のいずれか一つによる方法。
【0012】
例7:前記送出の前に、前記皮膚の外表面から0.5mm~3mmの範囲の深さにある1以上の神経を含む、前記皮膚領域における1以上の領域を識別することを含み、前記送出が、前記1以上の領域を含まない皮膚領域へ前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、上記例のいずれか一つによる方法。
【0013】
例8:前記送出は、前記1以上のパルスの非集束超音波エネルギーを、前記少なくとも1以上の皮膚領域に、反復の間に少なくとも30秒の時間差を設けて、少なくとも2回反復して送出することを含む、上記例のいずれか一つによる方法。
【0014】
例9:前記送出は、当該送出の少なくとも1週間後に、シワ重症度評価等級(WSRS:Wrinkle Severity Rating Scale)、グローガウ等級(Glogau scale)、フィッツパトリックシワ等級(Fitzpatrick wrinkle scale)、フィッツパトリックシワスコア(Fitzpatrick wrinkle score)、及びフィッツパトリックシワ・弾性線維症等級(FWES:Fitzpatrick Wrinkle and Elastosis Scale)のうちの1以上を含むシワ重症度等級において、少なくとも1ポイントの低減ができる時間の長さにわたって前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、上記例のいずれか一つによる方法。
【0015】
例10:皮膚の処置方法であって、非集束超音波エネルギーの1以上のパルスを送出することを含み、各パルスは、15W/cm~30W/cmの範囲の超音波強度と、前記超音波エネルギーが能動的に送信されるパルス当たり2~6秒の範囲の持続時間とを有する、方法。
【0016】
例11:シワの重症度を低減するための方法であって、皮膚組織の少なくとも1つの領域に送出する非集束超音波エネルギーの1以上のパラメータ値を選択することであって、前記領域への超音波エネルギー送出の少なくとも1週間後に、シワ重症度評価等級(WSRS)、グローガウ等級、フィッツパトリックシワ等級、フィッツパトリックシワスコア、及びフィッツパトリックシワ・弾性線維症等級(FWES)のうちの1以上を含む、シワ重症度等級における少なくとも1ポイントの低減に適した、1以上のパラメータ値を選択し、前記選択された1以上のパラメータ値で、前記非集束超音波エネルギーを皮膚組織の前記少なくとも1つの領域に送出すること、を含む、方法。
【0017】
例12:前記選択は、メモリ内の表(テーブル)から前記1以上のパラメータ値を読み出すことを含む、例11による方法。
【0018】
例13:前記選択は、前記皮膚領域の1以上のパラメータに従って前記1以上のパラメータ値を選択することを含む、例11又は例12のいずれか一つによる方法。
【0019】
例14:前記皮膚領域パラメータは、前記皮膚の組織の種類、前記皮膚領域の組織組成、前記皮膚領域の脂肪組織含有量、前記皮膚領域の位置、前記皮膚領域内又はその近くにおける神経の存在、の内の1以上を含む、例13による方法。
【0020】
例15:前記1以上のパラメータ値は、前記超音波エネルギーが3mm~7mmの表面積寸法を介して送出される超音波エネルギーの1以上のパルスであって、それぞれが15W/cm~30W/cmの範囲のエネルギー強度と、パルス当たり2~6秒の範囲で能動的に送出される継続時間と、を有する超音波エネルギーの1以上のパルスを含み、前記送出は、5cm~100cmの範囲の表面積を有する前記皮膚組織の外表面に亘って、前記選択された1以上のパラメータ値で前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、例11~例14のいずれか一つによる方法。
【0021】
例16:前記表皮の温度を5~40℃の間に維持するために、前記送出中及び前記送出後の少なくとも一方において、前記皮膚組織の外表面を冷却することを含む、例11~例15のいずれか一つによる方法。
【0022】
例17:前記送出された非集束超音波エネルギーによって、前記皮膚の外表面から0.25mm~5mmの深さに位置する1以上の組織層を、少なくとも45℃の温度にまで加熱することを含む、例11~例16のいずれか一つによる方法。
【0023】
例18:前記送出の前に前記皮膚の外表面から最大5cmまでの距離にある神経を含む、皮膚組織の1以上の領域を識別することを含み、前記送出が、前記1以上の識別された領域を含まない前記少なくとも1つの皮膚組織の領域へ前記非集束超音波エネルギーを送出することを含む、例11~例17のいずれか一つによる方法。
【0024】
例19:前記皮膚組織の領域は、顔面又は頸部に位置する、例11~例18のいずれか一つによる方法。
【0025】
例20:シワを処置するシステムであって、
超音波アプリケータと、
前記超音波アプリケータに接続される制御コンソールと、
を備え、
前記超音波アプリケータは、
非集束超音波エネルギーを生成するように構成された複数の超音波トランスデューサであって、それぞれが3mm~7mmの範囲の表面積寸法の作動面を備える、複数の超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの少なくとも一部を皮膚組織の外表面に接触して配置するような形状及び寸法のハウジングと、
を備え、
前記制御コンソールは、
前記超音波エネルギーのパラメータ値を記憶するメモリと、
前記超音波トランスデューサへ超音波エネルギーの1以上のパルスを生成するための信号を送るように構成された制御回路と、
を備え、
前記1以上のパルスのそれぞれは、5W/cm~60W/cmの範囲のエネルギー強度と、前記超音波エネルギーがパルス当たり2~6秒の範囲で能動的に送信される持続時間とを有する、システム。
【0026】
例21:前記1以上のパルスのそれぞれは、15W/cm~30W/cmの範囲のエネルギー強度を有する、例20によるシステム。
【0027】
例22:前記アプリケータは、前記複数の超音波トランスデューサ、及び前記皮膚に接触して配置された前記アプリケータの領域の少なくとも一方を冷却するように構成された冷却モジュールを備える、例20又は例21のいずれか一つによるシステム。
【0028】
例23:前記冷却モジュールは、それぞれが低温面と高温面とを有する、1以上の熱電冷却器(TEC:thermo electric cooler)を備え、前記低温面は、前記超音波トランスデューサ及び前記超音波トランスデューサの間の領域の少なくとも一方を冷却するように構成される、例22によるシステム。
【0029】
例24:前記冷却モジュールは冷却流体を含む冷却流体チャンバを備え、前記冷却流体チャンバは、前記1以上のTECの前記高温面を冷却するように構成される、例23によるシステム。
【0030】
例25:前記アプリケータと前記制御コンソールとを接続する長尺ケーブルを備え、前記長尺ケーブルは、電気配線と、前記冷却流体を前記冷却流体チャンバと前記制御コンソールとの間で循環させるような形状及び寸法を有する1以上の冷却流体流通路とを備える、例24によるシステム。
【0031】
例26:皮膚処置のための美容方法であって、
特定の被験者の選択された処置標的における、皮膚組織特性及び組成の少なくとも一方に関するパラメータと、非集束超音波美容処置の少なくとも1つの処置パラメータの値とをメモリに記憶し、
前記メモリに接続された制御回路によって、前記記憶された皮膚組織関連の指標に基づいて前記少なくとも1つの処置パラメータの値を自動的に調整し、
少なくとも1つの超音波トランスデューサに信号を送って、前記自動的に調整された値に従って、前記選択された処置標的へ非集束超音波エネルギーを放出させること、
を含む、方法。
【0032】
例27:前記皮膚関連の指標および前記調整された値を含むユーザ特有プロファイルを生成することを含み、前記記憶することは前記ユーザ特有プロファイルを前記メモリに記憶することを含む、例による方法。
【0033】
例28:前記記憶することは、前記被験者に送出された非集束超音波処置の評価結果を前記メモリに記憶することを含み、前記自動的に調整することは、前記記憶された評価結果に基づいて前記値を自動的に調整することを含む、例26又は例27のいずれか一つによる方法。
【0034】
例29:前記皮膚組織関連の指標は、前記選択された処置標的における皮膚組織組成及び選択された標的組織体積のうちの少なくとも1つを含む、例26~例28のいずれか一つによる方法。
【0035】
例30:前記皮膚組織関連の指標は、前記選択された処置標的におけるシワの長さ、シワの深さ、及びシワの密度のうちの少なくとも1つを含む、例26~例29のいずれか一つによる方法。
【0036】
例31:前記少なくとも1つの処置パラメータは、超音波エネルギー強度、超音波エネルギーパルスの持続時間、トランスデューサの数、温度、及び皮膚表面冷却の継続時間の少なくとも一つを含む、例26~例30のいずれか一つによる方法。
【0037】
例32:皮膚処置のための美容方法であって、
少なくとも特定の被験者に関する1以上の安全指標、及び非集束超音波美容処置の少なくとも1つの処置パラメータの値をメモリに記憶し、
前記メモリに接続された制御回路によって、前記記憶された1以上の安全指標に基づいて前記少なくとも1つの処置パラメータの前記記憶値を自動的に調整し、
少なくとも1つの超音波トランスデューサに信号を送って、前記自動的に調整された値に従って、前記選択された処置標的へ非集束超音波エネルギーを放出させることと、
を含む、方法。
【0038】
例33:前記記憶することは、選択された処置標的における、少なくとも1つの血管及び少なくとも1つの神経の少なくとも一方の位置に関する指標を記憶することを含み、前記自動的に調整することは、前記選択された処置標的における、前記少なくとも1つの血管及び前記少なくとも1つの神経の少なくとも一方の前記記憶された位置に基づいて、前記少なくとも1つの処置パラメータの前記記憶された値を自動的に調整することを含む、例32による方法。
【0039】
例34:前記記憶することは、前記特定の被験者の痛覚感受性に関する指標を記憶することを含み、前記自動的に調整することは、前記記憶された痛覚感受性指標に基づいて、超音波強度を少なくとも5%内で自動的に低減すること、及び少なくとも5%内で術後の冷却継続時間を自動的に増加させることの少なくとも一方を含む、例32又は例33のいずれか一つによる方法。
【0040】
例35:美容用非集束超音波皮膚処置を送出するシステムであって、
1以上の超音波トランスデューサを備える超音波アプリケータと、
被験者の上半身と前記超音波アプリケータの画像を撮影するためのカメラと、
前記カメラに機能的に接続され、前記カメラから受信する信号に従って前記超音波アプリケータ及び前記1以上のトランスデューサの少なくとも一方の位置を前記被験者の上半身上に決定するように構成された制御回路と、
を備えるシステム。
【0041】
例36:前記カメラは、被験者の動きの前、動きの間、及び動きの後の少なくとも一つにおいて、被験者の上半身の画像を撮影するように構成され、前記制御回路は、前記被験者の動きを考慮に入れて、前記カメラから受信する信号によって前記被験者の上半身上の前記超音波アプリケータ及び前記1以上のトランスデューサの少なくとも一方位置を決定するように構成される、例35によるシステム。
【0042】
例37:前記制御回路は、前記受信したカメラ信号に基づいて前記上半身上の処置位置のマップを生成するように構成され、前記システムは前記マップを記憶するためのメモリを備える、例35によるシステム。
【0043】
例38:前記カメラは、被験者の動きの前、動きの間、及び動きの後の少なくとも一つにおいて、被験者の上半身の画像を撮影するように構成され、前記制御回路は、前記被験者の動きを考慮して、前記マップを生成するように構成される、例37によるシステム。
【0044】
例39:前記カメラは前記被験者の前記上半身に対して移動するように構成される、例35~例38のいずれか一つによるシステム。
【0045】
例40:前記上半身は、顔面及び首部領域の少なくとも一つを含む、例35~例39のいずれか一つによるシステム。
【0046】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料が、本発明の実施形態の実行又は試行に使用可能であるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記述する。矛盾する場合には、定義を含む本発明の明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定的であることを意図するものではない。
【0047】
本発明の実施形態の方法及びシステムの少なくとも一方の実施は、選択されたタスクを手動、自動又はそれらの組み合わせで実行又は完了させることを含み得る。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを用いたソフトウェア又はファームウェア及びそれらの組合せの少なくとも一方によって実施可能である。
【0048】
例えば、本発明の実施形態による、選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装可能である。ソフトウェアとしては、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いるコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装可能である。本発明の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的実施形態による1以上のタスクは、複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサにより実行される。任意選択的に、データプロセッサには、命令及びデータの少なくとも一方を記憶する揮発メモリ、及び/又は命令及びデータの少なくとも一方を記憶する不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及びリムーバブル媒体の少なくとも一方、が含まれる。
【0049】
任意選択的に、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及びキーボードやマウスなどのユーザ入力装置の少なくとも一方もまた、任意選択的に提供される。
【0050】
本明細書において本発明のいくつかの実施形態を、添付図面を参照して例示としてのみ説明する。ここで、図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は一例であって、本発明の実施形態の例示的議論を目的とするものであることが強調される。これに関し、図面と共に行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実行され得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】いくつかの実施形態による、組織への超音波印加システムのブロック図である。
図2】いくつかの実施形態による、組織表面の加熱を制御しながら組織へ超音波エネルギーを印加するフロー図である。
図3】いくつかの実施形態による、超音波トランスデューサアレイの様々な周波数での動作と、トランスデューサによって処置される組織表面への熱効果を概略的に表す図である。
図4】いくつかの実施形態による、冷却モジュールを備える超音波アプリケータの例示的構成を示す図である。
図5A】いくつかの実施形態による、超音波トランスデューサアレイの動作の例示的グラフである。
図5B】いくつかの実施形態による、超音波トランスデューサアレイの動作の例示的グラフである。
図6】いくつかの実施形態による、美容的超音波皮膚処置方法のフロー図である。
図7】いくつかの実施形態による、超音波皮膚処置システムの概略図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態によるシステムの概略図である。
図9A】本発明のいくつかの実施形態による、超音波を用いた皮膚処置プロセスのフロー図である。
図9B】本発明のいくつかの実施形態による、皮膚組織処置を個人向けとするプロセスのフロー図である。
図9C】本発明のいくつかの実施形態による、処置の安全性を高めるための皮膚組織処置の修正プロセスのフロー図である。
図9D】本発明のいくつかの実施形態による、超音波アプリケータ及びトランスデューサの少なくとも一方の位置による超音波エネルギー印加の制御プロセスのフロー図である。
図9E】本発明のいくつかの実施形態による、超音波システム、遠隔デバイス、システムユーザ及び処置される被験者の間の情報の流れを示す概略図である。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、顔面および頸部の異なる領域を示す画像である。
図11A】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11B】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11C】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11D】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11E】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11F】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11G】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11H】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11I】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11J】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11K】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図11L】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12A】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12B】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12C】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12D】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12E】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12F】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12G】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12H】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前又は後における顔面及び/又は頸部の写真である。
図12I】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前における顔面領域の画像と3Dモデルである。
図12J】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の前における顔面領域の画像と3Dモデルである。
図12K】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の後における顔面領域の画像と3Dモデルである。
図12L】本発明の臨床研究として、またいくつかの実施形態に従って実行した処置の後における顔面領域の画像と3Dモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、その一部の実施形態において、超音波エネルギーを用いた組織の処置に関し、より具体的には、これに限るものではないが、皮膚処置のための超音波トランスデューサ及びアプリケータに関する。
【0053】
いくつかの実施形態の広範な態様は、組織表面及び組織層の少なくとも一方への熱損傷を低減するために少なくとも一部の組織を任意選択的に冷却しつつ、例えば焦点に集束しない超音波、例えば非集束超音波を用いて組織を処置すること関する。実施形態のいくつかは組織の制御された加熱に関する。任意選択的に、非集束超音波エネルギーを放出するように構成された複数の超音波トランスデューサを含むアプリケータによって熱が組織へ印加される。アプリケータには冷却モジュールが備えられ、皮膚に接触するトランスデューサを介した冷却により、少なくとも組織の表面(例えば皮膚)を冷却するようになっている。いくつかの実施形態において、加熱及び冷却の少なくとも一方程度は、組織表面からの選択された深さにおいて熱損傷が得られるように制御される。いくつかの実施形態において、トランスデューサの構造、寸法(例えば厚さ)、及び材料の少なくとも一つは、トランスデューサの放出面から組織への熱伝達及び/又はアプリケータの冷却モジュールからトランスデューサを介した組織への熱伝達などの、熱伝達を最適化するように選択される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、本出願において議論される処置は、治療効果をもたらさない美容処置である。いくつかの実施形態において、処置のための被験者の選択は、治療効果がない様に行われる。
【0055】
いくつかの実施形態の一態様は、組織表面への熱損傷を低減又は防止できるような低温に組織表面を維持しつつ、組織体積に非集束超音波を印加するように構成されたアプリケータに関する。いくつかの実施形態においてアプリケータは、リブ付きフレームに横並びに配置したトランスデューサ同士を熱的に分離した、超音波トランスデューサのアレイを備える。
【0056】
任意選択的に熱的分離は、トランスデューサ間を離隔させて空気又は他の材料によってトランスデューサ間が分離されるようにすることで達成される。
【0057】
いくつかの実施形態において、トランスデューサ及びアプリケータに接触する組織表面の少なくとも一方は、例えば熱交換器と共に使用される熱電冷却(TEC:thermo electric cooler)素子によるか、水又は不凍液などの流体の循環によるか、又はガスによるか、の少なくともいずれかによって能動的に冷却される。追加的又は代替的に、トランスデューサ及び組織表面の少なくとも一方は、例えば熱貯蔵器ブロック(例えば冷却された銅のブロック)によって受動的に冷却される。
【0058】
いくつかの実施形態において、冷却はトランスデューサの過熱を防止するために行われる。追加的又は代替的に、組織表面の温度を下げるために冷却が行われる。任意選択的に、組織表面の冷却は、例えばトランスデューサの放出面を組織表面のその時の温度よりも低い温度に冷却することにより、アプリケータを介して行われる。冷却は、組織に対するエネルギーの印加前、印加中、及び印加後の少なくとも一つにおいて行われることができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、トランスデューサは、トランスデューサを介して組織を冷却できるよう十分薄いように選択される。任意選択的に、薄い超音波放出素子、例えば90~250ミクロンの間の厚さを有するPZTプレートの使用により、トランスデューサにより高強度及び高周波数の少なくとも一方の超音波エネルギーが放出されているときでも、トランスデューサを介して組織表面を冷却することが可能である。PZTプレートの共振周波数はそのプレートの厚さによって決定されるので、薄いプレートを使用することの潜在的な利点には、例えば8~22MHzの間の高周波を利用できることが含まれ得る。いくつかの実施形態においては、組織への冷却を施すことにより組織内でのエネルギー放散を制御又は制限する。
【0060】
いくつかの実施形態において、アプリケータは、1以上のトランスデューサの温度を示すか、組織、例えば組織表面、の温度を示すか、又はその両方のように構成された1以上の温度センサ(例えばサーミスタ及び熱電温度計)を備える。任意選択的に冷却は、1以上の温度センサにより与えられる温度フィードバックに従って制御される。いくつかの実施形態において、1以上の温度センサはトランスデューサを担持するフレームの温度を示すように構成される。いくつかの実施形態において、1以上の温度センサはアプリケータの冷却システムの熱交換器及び他の構成要素の少なくとも一つの温度を示すように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態の一態様は、2層の可撓性フィルム(例えばカプトン(登録商標))の間に挟まれた1以上の超音波放出素子を含んだ、組織へ超音波エネルギーを印加するための可撓性アプリケータに関する。いくつか実施形態において、放出素子は横並びに配置される。いくつかの実施形態において、放出素子を作動させるように構成された電気回路は、片方又は両方のフィルムの内側に、放出素子に面して埋め込まれるか印刷されるかのいずれか又は両方である。任意選択的に、回路は組織の温度及び放出素子の温度の少なくとも一方を示すように構成された熱抵抗器を備える。
【0062】
いくつかの実施形態において、アプリケータは湾曲されて、例えば額及び/又は首の周りなどの、平坦でない組織表面に配置されることできる。任意選択的に、各超音波放出素子は可撓性アプリケータの折り曲げ、折り畳み、及びその他の成形の少なくとも一つによる干渉を低減するために、幅が十分に狭くなっている。いくつかの実施形態において、放出素子は互いに十分な間隔があって、それらの間の可撓性フィルム部が折り曲げ又はその他の屈曲に対する十分な幅を残し、1つの素子を隣接する素子に対して移動可能とする。
【0063】
いくつかの実施形態の一態様は、異なる深さにある組織への熱効果を制御することに関する。いくつかの実施形態において、第1の熱効果は第1の深さにある組織に生成され、第1の深さとは異なる第2の深さにある組織には第1の熱効果とは異なる第2の熱効果が生成される。いくつかの実施形態は、隣接する超音波トランスデューサを異なる周波数で励起することにより組織表面の熱効果を制御することに関する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサが励起される。第1のトランスデューサは組織内のより深い組織層への熱損傷生成に適した周波数で励起され、第2のトランスデューサは組織表面の局部的加熱に適した周波数で励起され、第2の周波数は第1のトランスデューサの処置周波数の少なくとも10%であるか又は少なくとも10%低い。
【0064】
いくつかの実施形態では、1以上のトランスデューサが処置周波数(例えば9~22MHzの間)で励起され、他方、1以上の他のトランスデューサ、例えば処置用トランスデューサの間に配置されたトランスデューサが処置周波数とは異なる周波数で(例えば共振周波数の2倍で作動されて)励起され、組織表面領域の過冷却を避けるために十分な熱を生成する(能動的に冷却されたアプリケータに接触し、処置用トランスデューサに接触していない組織領域には過冷却が生じる可能性がある)。代替的には、処置用でないトランスデューサは作動されない。任意選択的に、作動していないときは、トランスデューサは加熱トランスデューサの近傍で組織表面を冷却する効果がある。場合によっては、組織表面の加熱は比較的低い電力エネルギーを用いて得られ、任意選択的に、例えば望ましくない非線形効果をもたらし得る高電力に比べて、より長い時間にわたって印加される。
【0065】
いくつかの実施形態では、組織内での超音波減衰に応じて、異なる周波数が選択される。任意選択的に、周波数を増大させれば組織内での急速なエネルギー吸収を生じ、放出素子により近い組織層がより深い組織層に比べてより加熱されることになる。
【0066】
異なる周波数を用いることに加えて、或いは代替的に、例えば、第2トランスデューサ(例えば非処置用トランスデューサ)の効率を相対的に低くして作動させ、そのことの副作用として放出素子を発熱させて、それにより組織表面を加熱するように、トランスデューサの出力を設定することで熱効果が制御される。いくつかの実施形態において、(例えば組織表面の)加熱は、加熱素子、例えばアプリケータの組織に対向する部分に取り付けられた加熱素子によって提供される。
【0067】
いくつかの実施形態の一態様は、組織表面から選択された深さにある組織層及び組織の種類の少なくとも一方を標的にすることによって組織を処置することに関する。いくつかの実施形態は、非集束超音波エネルギーを用いて、表皮から0.5~3mmの間の深さに制御された熱損傷を生成することによって皮膚を処置(例えば皮膚を引き締めさせる)ことに関係する。
【0068】
いくつかの実施形態では、非集束超音波エネルギーを印加して組織内に、例えば皮膚の真皮網状層に複数の離隔した熱損傷による損傷部を生成する。いくつかの実施形態において、損傷部は実質的に円筒状である。あるいは、損傷部は異なる形状であるか、又は場合によっては任意の形状である。離隔した損傷部を形成することの潜在的な利点は、損傷部間にある非損傷組織が、エラスチン及びコラーゲン線維の少なくとも一方を成長させることにより治癒を促進し得ることが含まれ得る。いくつかの実施形態において、非集束超音波を使用することで、反復的な損傷部の空間パターン生成が可能となる。非集束超音波の潜在的な利点は、比較的広い表面積をカバーし、アプリケータの反復移動の必要性を低減し、例えば集束超音波を使用する場合に比べて損傷のより一様な分布を得られる可能性が高いことである。
【0069】
いくつかの実施形態において、熱損傷領域は離隔した損傷部の間に広がって、任意選択的にそれらの領域を接続する。例えば、結合組織(例えば脂肪組織)の熱損傷層は、皮膚の真皮網状層に生成された2以上の円筒損傷部の間に広がり、例えば損傷部の底部に延在し得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、非集束エネルギーは線維性組織(例えばコラーゲン線維)を選択的に標的とし、脂肪組織及び/又は結合組織などのその他のタイプの組織への影響は比較的小さい。それは印加された熱に対するこれらの組織の感度が、線維性組織の感度よりも小さいからであり、結果として脂肪は熱損傷に対する自然の障壁を形成する。
【0071】
いくつかの実施形態において、処置パラメータは所望の効果が得られるように選択される。パラメータ選択の一例では、放出超音波の強度は、真皮に熱損傷を生成し、なおかつ表皮への損傷を回避するために、8~40W/cmの間、12~22W/cmの間、10~17W/cmの間、14~18W/cmの間となるように選択される。または、所望によっては、真皮及び表皮に熱損傷を生成するために22W/cm超が選択される。いくつかの実施形態において、強度の選択は、励起持続時間、及び適用される能動的冷却の程度などの他のパラメータと相関づけられるべきである。一例では、トランスデューサ基部を-10℃まで能動的に冷却するとともに、上記の強度を、4秒間の励起持続時間にわたって印加する。処置パラメータの他の例としては、処置継続時間、反復回数、励起周波数、作動させるトランスデューサの数、その他がある。いくつかの実施形態では、処置パラメータは、表皮から0.5~5mmなどの選択された深さに損傷を得られるように選択される。いくつかの実施形態では、処置パラメータは特定のサイズ及び形状の、例えば1~4mmの長さの、損傷部を得られるように選択される。
【0072】
いくつかの実施形態は、例えば本明細書に記載の超音波アプリケータ、コンソール、及びユーザインタフェースの少なくとも一つを備える美容処置システムに関する。いくつかの実施形態では、アプリケータは皮膚(例えば顔面の皮膚)表面上を移動するように構成される。いくつかの実施形態では、システムは所望の効果に関わるような入力を受信し、その効果を得るための処置パラメータを自動的に選択するように構成される。
【0073】
いくつかの実施形態の一態様は、加熱すべき組織層を標的にすることによって、組織上に所望の効果を得ること(かつ、任意選択的に望ましくない効果を回避すること)に関する。いくつかの実施形態では、ある組織層に標的が絞られて加熱され、他の組織層及びその横(すなわち水平軸上)にある組織は実質的に影響がないままとされる。
【0074】
所望の効果としては、例えばシワの平滑化、伸展線条を目立たなくすること、肌色の均質化、及びその他の効果のうちの少なくとも1つ以上が含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態では、効果には短期的効果、長期的効果あるいはその組み合わせが含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、処置パラメータは、処置後の数分又は数時間ですぐに現れるような、短期的効果を生じさせるために選択される。いくつかの実施形態では、処置パラメータは、少なくとも6時間、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、あるいはこれらの中間の、より長いかより短い期間継続する短期的効果を生じさせるために選択される。追加的又は代替的に、処置パラメータは、処置から3週間後、処置から2か月後、処置から6か月後、又はこれらの中間の、より長いかより短い期間経過後にのみ現れるような長期的効果を生じさせるために選択される。いくつかの実施形態では、処置パラメータは、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも1年、少なくとも5年、あるいはこれらの中間の、より長いかより短い期間継続する長期的効果を生じさせるために選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、短期的効果は組織表面を実質的に損傷させることなく得られる。いくつかの実施形態では、短期的効果は長期的効果なしで得られる。いくつかの実施形態では、短期的効果を取得することは、例えば浮腫、刺激、腫れ、及びその他の少なくとも一つを含む炎症効果を生じさせる程度の熱損傷に関係する。任意選択的に、熱損傷は炎症となる程度に限られ、線維芽細胞浸透、及びコラーゲン、エラスチン生成の実質的誘発の少なくとも一方のような長期的効果を引き起こさない。
【0078】
いくつかの実施形態では、長期的効果を得ることは、コラーゲン及び/又はエラスチンの生成、及び一般的な治癒作用の少なくとも一方などを誘発するような、より高い程度の熱損傷に関係する。いくつかの実施形態では、長期的効果を得るためには、短期的効果を得るために標的とする層に比べて、より深い組織層を標的とする。
【0079】
いくつかの実施形態ではシステムは、入力として、所望の効果、望ましくない効果、効果のタイミング(例えば短期か長期か)、効果が持続すべき期間、及び/又はその他の入力の内の1以上を受信し、その効果を得るのに適した処置パラメータを自動的に選択するように構成される。例えば、システムは、他の層への損傷を回避しつつ、特定の組織層を標的とするのに適したパラメータを選択する。
【0080】
いくつかの実施形態の一態様は、超音波処置を1以上の追加の美容処置、例えば充填材注射処置、局部クリーム、神経毒素注射(BOTOX(登録商標))及び他の処置などの少なくとも一つと組み合わせることに関係する。いくつかの実施形態において、超音波処置は第2の処置の準備として適用される。いくつかの実施形態において、超音波処置は、第2の処置を適用しやすくするように組織に対して影響する。追加的又は代替的に、2つの処置が互いに作用して、任意選択的に各個別の処置では得られない効果を取得可能とする。任意選択的に、両方の処置を適用することで、各処置を単独で適用した場合に要するよりも短い時間で、所望の効果が得られる。
【0081】
一例では、充填材注射の場合、超音波を印加して、結合組織を緩和させて注射の処理を容易にすることが可能であり、別の例では、注射の部位又はその近辺に超音波を印加して組織の熱損傷を発生させ、例えば新しいコラーゲン/エラスチンのマトリックス生成を誘発する。
【0082】
いくつかの実施形態は、皮膚に即時の視認可能な効果を得るための方法に関し、これは、効果が視認可能となるべき時間を決定すること、決定された時間より前の24時間以内に、表皮に熱損傷を与えることなしに、表皮の下にある組織に加熱を施すことを含む。いくつかの実施形態では、非集束超音波がその皮膚に接触して印加される。例示的な適用では、被験者がその日又は翌日のイベントに備えて処置される。任意選択的に、効果は、1日、2日、5日、1週間、あるいはこれらの中間の、より長いかより短い期間持続する。
【0083】
いくつかの実施形態の一態様は、個人化した超音波皮膚処置の送出に関する。いくつかの実施形態において、個人化した処置とは、個人に特化した非集束超音波皮膚処置、例えば皮膚の美容処置である。いくつかの実施形態において、例えば、特定のユーザに対して短期間で例えばシワ及び皮膚扁平化の少なくとも一方の出現を低減して、皮膚の効率的処置を提供するために、処置が個人化される。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、処置に選ばれた被験者に関する情報が収集される。いくつかの実施形態では、被験者固有の情報は、診療情報、例えば被験者の臨床状態、投薬計画、病歴、及び既知の病状、例えば皮膚関連の病状の少なくとも一つを含む。任意選択的に、診療情報には精神疾患の病歴を含む。任意選択的に、診療情報には、家族構成員の診療情報を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、被験者に関する情報には、皮膚の潜在的処置標的に関する情報が含まれる。いくつかの実施形態では、処置標的の情報には、潜在的な処置標的における組織組成、例えば脂肪層の厚さ、処置標的部位の深さ、組織の機械的性質、皮膚の伸展性、潜在的処置標的における傷や瘢痕や壊死組織の有無、などが含まれる。いくつかの実施形態では、処置標的情報には、処置標的におけるシワに関する情報、例えば大きさ、深さ、及び皮膚表面積当たりのシワの密度の少なくとも一つが含まれる。
【0086】
いくつかの実施形態によると、収集された情報に従って、少なくとも1つの処置パラメータの値が変更される。いくつかの実施形態では、処置パラメータには、エネルギー強度、各回の処置又は処置全体における表面積又は表面領域におけるエネルギー総量、エネルギー送出の持続時間、及び領域当たりのパルス数、のうちの少なくとも1つが含まれる。代替的又は追加的に、処置パラメータには、所望結果への到達に要する処置回数、所望結果への到達に要する総処置時間が含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、全体処置の間に、例えば処置のセッションとセッションの間、及びセッション中の少なくとも一つの間に、任意選択的に処置結果の評価及び必要があれば少なくとも1つの処置パラメータの修正によって、処置が特定の被験者に対して個別化される。
【0088】
いくつかの実施形態の一態様は、安全な超音波処置、例えば特定の被験者への美容超音波処置の送出に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処置パラメータの特定の値、例えばエネルギー強度及びエネルギー送出の持続時間の少なくとも一つが、安全な超音波処置を提供するために選択される。いくつかの実施形態において安全な超音波処置とは、神経損傷、及び1以上の筋肉、例えば顔面筋肉の麻痺の少なくとも一つを、超音波エネルギー送出終了からの6時間超、例えば7時間超、10時間超、12時間超、あるいはこれらの中間の、より短いかより長い任意の期間において、招来しない処置である。追加的又は代替的に、安全な超音波処置とは、超音波エネルギー送出終了から30分間超、例えば40分間超、90分間超、あるいは任意のこれらの中間の、より短いかより長い期間において、痛覚、例えば処置領域における痛覚を招来しない処置である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、例えば選択された処置標的内又はその近辺における神経及び血管の少なくとも一方の位置を判定するために、被験者からの情報が収集される。代替的又は追加的に、被験者から収集された情報を使用して、その被験者の、例えば選択された処置標的における、痛みレベルの感受性が推定される。任意選択的に、被験者の痛みレベル感受性は、過度の加熱又は冷却により生じる痛みに対する感受性を含む。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、皮膚表面から0.5mm~3mmの範囲の深さ、例えば0.5mm~2mm、1mm~2.5mm、2mm~3mm、又は任意のそれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の深さにある1以上の神経が、皮膚領域、例えば潜在的な処置領域内で識別される。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、識別された血管及び/又は神経の決定された位置からの超音波トランスデューサの距離、及び皮膚表面からの識別された神経及び/又は血管の深さの少なくとも一方に従って、少なくとも1つの処置パラメータの特定の値が選択される。追加的又は代替的に、少なくとも1つの処置パラメータの特定の値が被験者の処置領域の推定される痛みレベルに従って選択される。いくつかの実施形態では、エネルギーの送出強度は、特定の被験者に耐えられない程の痛覚を起こさせる超音波エネルギー強度より少なくとも5%低く、例えば少なくとも10%低いか、少なくとも20%低いか、又は任意のそれらの中間の、より小さいかより大きいパーセンテージに調整される。
【0092】
いくつかの例示的実施形態によると、1パルス当たりのジュール数とW/cm単位でのエネルギー強度との間の相関は、使用するトランスデューサの数、特定の強度が放出される持続時間、例えばパルス持続時間、パルス前の冷却時間、パルス後の冷却時間及び超音波周波数、の1以上に依存する。
【0093】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波エネルギーは非集束超音波の1以上のパルスで送出される。いくつかの実施形態では、3mm~7mmの範囲、又は任意のその中間の、より小さいか、より大きい値の範囲の表面積寸法を介して送出される。いくつかの実施形態では、各パルスは、5W/cm~60W/cmの範囲の強度を有し、例えば10W/cm~30W/cm、10W/cm~17W/cm、15W/cm~25W/cm、20W/cm~30W/cm、25W/cm~50W/cm、40W/cm~60W/cm、又は任意のこれらの中間の、より小さいか、より大きい値の範囲である。いくつかの実施形態では、この超音波エネルギーが能動的に送信される持続時間は1パルス当たり1~10秒の範囲であり、たとえば、1~5秒、3~7秒、6~10秒、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値である。いくつかの実施形態では非集束超音波エネルギーは、任意選択的に固定位置から送出される場合、2cm~150cmの範囲、例えば2cm~50cm、10cm~100cm、50cm~150cm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい値の範囲の表面積寸法に亘るように送出される。いくつかの実施形態では、非集束超音波エネルギーは、1~20個のトランスデューサ、例えば単一のトランスデューサ、1~10個のトランスデューサ、5~15個のトランスデューサ、10~20個のトランスデューサ、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい数の超音波トランスデューサによって送出される。
【0094】
いくつかの例示的実施形態によると、皮膚の外表面から約0.5~6mm、例えば約0.7~1.2mm、約0.9~1.5mm、約1~2mm、約2~4mm、約3~6mm、約2~6mm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい値の範囲の組織層に、約55~65℃の高い熱効果を生成するように調整された処置パラメータ値で超音波エネルギーが送出される。いくつかの実施形態では、皮膚の外表面から約0.4~0.7mm及び約2~2.5mmの深さの組織層に、約47~55℃の中程度の熱効果を生成するように調整された処置パラメータ値で超音波エネルギーが送出される。
【0095】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用が、以下の説明に提示するか、図面及び/又は例に示す、構成要素の構成、配置及び方法の少なくとも一つ詳細に、必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実行又は実施可能である。
【0096】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明に提示されるか又は実施例に例示される詳細に、必ずしも限定されるものではないことを理解されたい。本発明では、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実行又は実施可能である。
【0097】
ここで図面を参照すると、図1はいくつかの実施形態による組織への超音波適用のためのシステムのブロック図である。
【0098】
いくつかの実施形態において、システム100は、皮膚などの組織へ超音波エネルギーを印加するように構成された超音波アプリケータ102を備える。いくつかの実施形態において、アプリケータ102は、外科医などの臨床医、又は看護師によって操作可能なハンドルを備える。
【0099】
いくつかの実施形態において、アプリケータ102は、1以上の超音波トランスデューサ104のような、1以上の超音波放出素子を備える。一実施例において、アプリケータ102は、例えば5個のトランスデューサ、7個のトランスデューサ、9個のトランスデューサ、12個のトランスデューサ、又はこれらの中間の、より大きいかより小さい数のトランスデューサからなる、超音波トランスデューサのアレイを備える。
【0100】
いくつかの実施形態では、システム100には、コンソール106が含まれる。いくつかの実施形態では、コンソール106には、コントローラ108が含まれる。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、システムの操作の制御、例えばアプリケータ102による超音波エネルギーの放出の制御をするように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラはメモリを備え、これが例えば設定データ、過去の処置の記録、及びその他の少なくとも一つを記憶する。
【0101】
いくつかの実施形態では、コンソール106は、システム操作のための1以上の構成要素を備え、これは例えば電源110(及び/又は外部電源への接続)、増幅器システム112及びオシロスコープなどの他の構成要素の少なくとも一つである。いくつかの実施形態では、コンソール106は、可搬であり、例えば台車に載せられる。いくつかの実施形態では、コンソール106にはユーザ入力モジュールが含まれる。任意選択的に、ユーザ(例えば外科医)が、処置パラメータ、患者データ、望ましい及び望ましくない処置効果の1以上を挿入し、コントローラがその挿入された入力に従って、処置パラメータ、標的とする組織層、処置回数、処置のタイミング、及び処置持続時間、の1以上を選択する。
【0102】
いくつかの実施形態では、システム100は外科医などのユーザからの入力を受け取ること、及びユーザへ情報を提供することの少なくとも一方のための、ユーザインタフェース114を備える。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース114は、例えば周波数、強度などのエネルギーパラメータ、及び処置持続時間などの使用パラメータの少なくとも一方を含む、操作パラメータを受け取るように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース114は患者データ(例えば年齢、体重、身長、性別、健康状態及びその他の患者関連データの少なくとも一つ)を受け取るように構成される。任意選択的に、ユーザインタフェース114は患者パラメータに従って処置方式を自動的に選択するように構成される。
【0103】
いくつかの実施形態において、ユーザインタフェース114はディスプレイを備える。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェースはラップトップやタブレットコンピュータなどのコンピュータを備える。
【0104】
いくつかの実施形態では、システム100は冷却システム116を備える。いくつかの実施形態では、冷却システム116は、アプリケータ102の1以上の部分を冷却するように構成され、例えばトランスデューサ104を冷却するように構成される。追加的又は代替的に、冷却システム116は、エネルギーが印加される組織表面を冷却するように構成され、例えば冷却される組織及び周囲の組織の少なくとも一方がアプリケータにより接触される。
【0105】
いくつかの実施形態では、冷却システム116は液体及び気体の少なくとも一方の形態の循環冷却剤、例えば水又は不凍液を含む。任意選択的に、循環はポンプにより行われる。
【0106】
いくつかの実施形態では、冷却システム116は、熱電冷却器などの能動的冷却素子を備える。いくつかの実施形態において、冷却システム116はファンを備える。いくつかの実施形態では、液体及び気体の少なくとも一方を冷却するために冷却器が使用される。
【0107】
追加的又は代替的に、冷却システム116は、熱貯蔵器ブロック、例えば銅のブロックなどの受動的冷却素子を備える。任意選択的に、銅ブロックは処置の全期間にわたってトランスデューサ及び組織表面の少なくとも一方を十分に冷却できる温度にまで予冷される。
【0108】
いくつかの実施形態では、冷却システム116はアプリケータ102に結合される。いくつかの実施形態では、冷却システム116はアプリケータ102に内在する構成要素である。
【0109】
いくつかの実施形態では、システム100が作動されて処置する組織に向かって超音波エネルギーを放出する。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは、たとえば焦点を結ばない、非集束エネルギーである。或いは、いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは集束である。
【0110】
いくつかの実施形態では、放出エネルギーのパラメータは処置する組織に熱損傷効果を生成するように選択される。いくつかの実施形態では、パラメータは、特定の広がりの損傷(例えば損傷した組織体積の寸法)、特定のレベルの損傷(例えば軽度の損傷、中程度の損傷、強度の損傷)、及び特定の位置の損傷の少なくとも一つ、を達成するように選択される。
【0111】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ104は冷却システム116によって冷却されて組織への熱効果を制御し、例えば、組織表面への熱損傷(例えば、壊死、タンパク質の変性及び血液の血栓症の少なくとも一つ)を低減するようにする。
【0112】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ104の厚さを十分に小さく選択して、トランスデューサが冷却システムで効率的に冷却されるようにする。いくつかの実施形態では、トランスデューサはそれが接触する組織表面を冷却する。
【0113】
薄いトランスデューサの潜在的な利点として、破断、例えばトランスデューサの励起の前後及びその最中の少なくとも一つにおける強力な冷却による熱応力によって発生する破断などに対する耐力が改良されることが含まれ得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、各トランスデューサは他のトランスデューサとは独立して励起されるように構成される。いくつかの実施形態では、増幅器システム112が各トランスデューサに対して個別の出力増幅器を備える。
【0115】
あるいは、2以上のトランスデューサが同時に励起されるように構成される。
【0116】
任意選択的に、トランスデューサは並列構成で接続される。
【0117】
あるいは、トランスデューサは直列結合で接続される。
【0118】
又は、トランスデューサは直列のセットと並列のセットの組み合わせで接続される。
【0119】
いくつかの実施形態において、回路は、例えば1つのトランスデューサに繋がる分岐のインピーダンスの設定によって、各トランスデューサの出力制御をする1以上の電気部品(例えば抵抗器、コイル及びコンデンサの少なくとも一つ)を備える。
【0120】
いくつかの実施形態では、アプリケータは無線で作動される。任意選択的に、アプリケータはバッテリ駆動される。いくつかの実施形態において、バッテリは充電ステーションを介して、及び無線誘導によって(例えば電磁放出を用いて)の少なくとも一方により充電される。
【0121】
いくつかの実施形態では、アプリケータは携帯可能である。
【0122】
いくつかの例示的実施形態によると、システム100は少なくとも1つの光学センサ111、例えばカメラを備える。いくつかの実施形態では、光学センサは接続可能であり、例えばコンソール本体106に機能的に接続可能である。あるいは、光学センサ111はコンソール111の一体部品である。いくつかの実施形態では、光学センサは可動であり、被験者の上半身を、被験者の上半身に対して異なる角度及び位置の少なくとも一方から撮影するように構成される。任意選択的に、光学センサは、コンソール又はその被験者が位置するベッド又は椅子に機械的に接続された可動アームに取り付けられる。
【0123】
いくつかの実施形態では、光学センサ111はコントローラ108に有線又は無線で電気的に接続される。いくつかの実施形態では、光学センサ111は、例えば被験者103の身体、例えば被験者の上半身の処置領域の画像を撮像、ビデオ又は静止画像撮影するように構成される。いくつかの実施形態では、被験者の上半身は被験者の顔及び首の少なくとも一方を含む。
【0124】
いくつかの例示的実施形態によると、アプリケータ102は少なくとも1つの位置センサ、例えばアプリケータの位置及び1以上のトランスデューサ104の位置の少なくとも一方に関する情報を提供するように構成された位置センサ115を備える。任意選択的に、位置センサは光学センサ111によって視覚化可能なマーカである。いくつかの実施形態では、システム100は被験者103に取り付けられたマーカ113又は少なくとも1つの位置センサを備える。
【0125】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波システム例えばコントローラ108は、超音波処置を行っている間、光学センサ111から受信する信号に基づいて、超音波アプリケータ102の位置及び1以上の超音波トランスデューサ104の位置の少なくとも一方を決定する。任意選択的に、コントローラは、光学センサ111から受信する信号、及びマーカ113の登録位置及びアプリケータ102の位置センサ115から受信する信号の少なくとも一方を用いて、超音波アプリケータ102の位置及び1以上の超音波トランスデューサ104の位置の少なくとも一方を決定する。
【0126】
いくつかの例示的実施形態によると、アプリケータ102及びトランスデューサ104の少なくとも一方の既知の位置に基づいて、システム100はユーザに対して特定の場所、例えば顔又は首の特定の場所に超音波エネルギーの送出を継続するための標示、例えば人が検出可能な標示を生成する。代替的又は追加的に、システム100、例えばコントローラ108は、決定されたアプリケータ及びトランスデューサの少なくとも一方の位置に基づいて、処置した領域のマップを生成するように構成される。任意選択的に、決定された位置に基づいて、超音波アプリケータ102及びトランスデューサ104の少なくとも一方が望ましくない位置、例えば処置によって影響を受け得る血管及び神経の少なくとも一方に近い位置に向かって移動すると、システム100は警告信号を生成する。
【0127】
いくつかの例示的実施形態によると、システム100、例えばコントローラ108は、被験者のマップ、例えば被験者の上半身のマップを生成するように構成される。いくつかの実施形態では、マップは、光学センサ111、例えばカメラから受信する信号、及び位置センサ115の信号の少なくとも一方に基づいて生成される。
【0128】
いくつかの例示的実施形態によると、光学センサ111、例えばカメラは、被験者の体が超音波エネルギー送出の前後及びその最中の少なくとも一つにおいて動いている間に、被験者の体を撮像するように構成される。いくつかの実施形態では、生成されたマップは、例えば被験者の画像を被験者の3Dモデルと比較することにより、被験者の動きを考慮に入れる。任意選択的に、3Dモデルは光学センサ111、及び追加のカメラ、例えば外部カメラ、の少なくとも一つを用いて生成される。いくつかの実施形態では、システム100、例えばシステムのコントローラ108は、被験者の動きを考慮に入れつつ、例えば体の3Dモデルを使用して被験者の体に対するアプリケータの位置を決定するように構成される。
【0129】
図2は、いくつかの実施形態による組織表面の加熱を制御しながら組織へ超音波エネルギーを印加するフロー図である。
【0130】
いくつかの実施形態では、1以上の超音波トランスデューサを備える超音波アプリケータが、組織表面に接して、例えば皮膚に接して配置される(200)。いくつかの実施形態では、接触は1以上の超音波トランスデューサの外表面と組織との間である。任意選択的に、超音波トランスデューサの外表面積の少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、あるいはこれらの中間の、より大きいかより小さいパーセンテージの超音波トランスデューサの外表面積が組織表面に接触するときに、接触が達成される。
【0131】
いくつかの実施形態では、非集束超音波エネルギーが深層の標的組織、例えば組織表面から少なくとも1.5mm、少なくとも3mm、少なくとも5mm、又はこれらの中間の、より短いかより長い距離にある標的組織に印加されて熱損傷を与える(202)。
【0132】
いくつかの実施形態では、非集束超音波エネルギーが皮膚組織の処置のために印加される。任意選択的に、エネルギーは選択的に適用され、例えば真皮などのより深い皮膚層へ熱損傷を生じさせ、表皮のような上層への損傷は少ないか防止される。一例では、2~1.55mmの深さにある真皮組織が熱損傷を受ける。
【0133】
いくつかの実施形態では、加えられるエネルギーは標的組織の温度を50~80℃の間、例えば60~70℃、55~65℃、70~75℃、又はこれらの中間の、より高いかより低い温度まで上げるのに十分である。任意選択的に、エネルギーは1~60秒の間、例えば、5~10秒、10~20秒、15~30秒、又はこれらの中間の、より長いかより短い時間の間にわたって印加される。
【0134】
いくつかの実施形態では、印加されるエネルギーが標的組織を焼灼する。いくつかの実施形態では、標的組織(例えばコラーゲン)は変性及び凝固の少なくとも一方をする。
【0135】
いくつかの実施形態では、エネルギーが選択的に加えられて、熱損傷した損傷部(lesions)が、健全な実質的に損傷のない組織領域によって分離される。超音波エネルギーを制御して印加して、健全な組織によって分離された損傷部を生成することの潜在的な利点として、例えばエラスチン及びコラーゲン線維の少なくとも一方の成長を誘発することによる治癒の促進がある。
【0136】
いくつかの実施形態では、熱損傷した損傷部間の横方向距離は、1~5mmの間、例えば2~4mm、3~5mm、1~2mm、あるいはこれらの中間の、より長いかより短い距離である。いくつかの実施形態では、熱損傷による各損傷部は、体積が0.5mm~5mmの間、例えば2mm、4mm、1mm、あるいはこれらの中間の、より大きいかより小さい体積である。
【0137】
いくつかの実施形態では、生成される損傷部はほぼ円筒形である。
【0138】
あるいは、損傷部は球形、立方形、円錐形である。
【0139】
いくつかの実施形態では、エネルギーは組織を選択的に標的とし、例えば、コラーゲン、弾性繊維、及び線維外マトリックスなどの少なくとも一つである、真皮網状層組織を標的とする。任意選択的に、脂肪組織や結合組織などの他の種類の組織へのエネルギー放出の影響は小さいので、脂肪組織は損傷に対する自然の障壁を形成する(例えば真皮直下の脂肪組織層)。非集束超音波を適用して、脂肪組織などの特定の種類の組織によって自然に減少または制限される熱効果を生成することの潜在的な利点としては、解剖学的変動(例えば組織の構造及び厚さの少なくとも一方における患者間の変動)に対する感度が小さくなることがある。
【0140】
いくつかの実施形態では、組織表面の加熱は制御される(204)。いくつかの実施形態では、組織表面に冷却が行われて、放出された超音波ビームの組織表面への熱効果を低減する。
【0141】
いくつかの実施形態では、冷却は超音波トランスデューサを介して、例えばトランスデューサの放出面を、組織の現状の温度より低い温度にまで冷却することによって行われる。追加的又は代替的な冷却は、冷たい液体及び気体の少なくとも一方を、例えばトランスデューサ表面に形成された専用の穴を介して、組織に送出することにより行われる。
【0142】
いくつかの実施形態では、熱は超音波トランスデューサの放出面に接触する組織表面との間を伝導する。
【0143】
いくつかの実施形態では、トランスデューサの放出面は組織に直接接触する。あるいは、カプトン(登録商標)、他のポリイミドフィルム、パリレン(登録商標)、PEEK、PTFE、シリコンゴム、及びラテックスの少なくとも一つなどの、絶縁材料の薄層が、組織に面するトランスデューサの放出面に配置される。任意選択的に、組織に面するアプリケータの面は保護層、例えば薄い熱的絶縁層及び電気的絶縁層の少なくとも一方の保護層で被覆される。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載したような冷却のシステム及び/又は方法は、トランスデューサの放出面の冷却(例えば流体循環、熱貯蔵ブロック、熱電冷却器、及びその他の方式の少なくとも一つを用いる冷却など)に使用される。任意選択により、冷却はエネルギー放出期間の前、後、及びその間の少なくともいずれかにおいて適用される。
【0145】
追加的又は代替的に、冷却はトランスデューサの放出面に接触する組織領域の近傍の組織表面に行われる。任意選択的に、非作動トランスデューサ、及び処置パラメータとは異なるパラメータを使用して作動されるトランスデューサの少なくとも一方が、処置用トランスデューサの近傍で組織を冷却する。
【0146】
追加的又は代替的に、エネルギー放出の前、後、及びその最中の少なくとも一つでの冷却は、例えばジェルを用いた、組織表面の直接冷却により達成される。いくつかの実施形態では、ジェルは超音波伝導性のジェルである。任意選択的に、ジェルがトランスデューサの放出面(あるいはその被覆)と組織の間の空隙を充填する。追加的又は代替的に、液体を充填したバルーンが組織表面の冷却に使用される。
【0147】
いくつかの実施形態では、組織表面の加熱を制御するとき、1以上のパラメータが考慮され、それは例えば、周辺への熱放散(他のパラメータの中でも特に周囲温度に依存する);放出超音波ビームのパラメータ(強度プロファイル、周波数プロファイル、ビーム角度、ビーム形状など);処置する組織の種類;処置する組織の熱伝導率、熱容量及び/又は熱放散係数;組織内での超音波の吸収係数及び減衰係数の少なくとも一方;ピエゾ素子の幾何形状及び寸法の少なくとも一方、及びその他のパラメータ、などの少なくとも一つである。
【0148】
いくつかの実施形態では、組織表面の加熱は、特定の厚さ及び幅の少なくとも一方を有するピエゾ素子を選択することにより制御される。例えば、ピエゾ素子は9~22Mhzの間の共振周波数を規定する厚さで選択される。
【0149】
別の例では、ピエゾ素子の幅は既定の開口角を有する超音波ビームを提供するように選択される。例えば5~45度の間の開口角を有するビームを提供するためには0.5~3mmの間の幅が選択される。
【0150】
任意選択的に、ビーム角を広げることで(例えば大きな幅のピエゾ素子を提供することにより)、組織表面への熱効果が減少する。
【0151】
いくつかの実施形態では、トランスデューサの放出面の温度が決定される。任意選択的に、温度は1以上の温度センサによって測定される。追加的又は代替的に、放出面の温度は励起中のトランスデューサの静電容量を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、トランスデューサの放出面を被覆する材料(例えばカプトン(登録商標))の温度が決定される。追加的又は代替的に、組織の生体インピーダンスが、組織の熱状態の指標として(例えばトランスデューサを介して組織を刺激することによって)測定される。追加的又は代替的に、組織温度は組織から反射する超音波信号を用いて決定される。
【0152】
任意選択的に、信号はアプリケータによって(例えばアプリケータ上に構成された1以上のレシーバ、及び1以上のトランシーバの少なくとも一方によって)受信される。いくつかの実施形態では、1以上のトランシーバは、処置エネルギーの放出及び反射信号の受信の両方の役割をする。
【0153】
いくつかの実施形態では、組織状態が評価される(206)。任意選択的に、組織状態は処置中及び処置後の少なくとも一方において評価される。いくつかの実施形態では、熱損傷の程度が評価される。
【0154】
いくつかの実施形態では、熱損傷の程度が、組織から反射するエコー信号を解析して評価される。いくつかの実施形態では、装置はエコー信号を受信するように構成され、また任意選択的に装置のコントローラがそのような解析を行うように構成される。任意選択的に、1以上のアプリケータのトランスデューサが、戻り信号を受信するように構成されたトランシーバとして機能するように構成される。
【0155】
いくつかの実施形態では、処置から特定の時間を経過した後、例えば処置から1日、1週間、3週間、1か月、3か月、又はこれら中間の、より長いかより短い期間の後に、組織状態が評価される。例えばいくつかの実施形態では、処置後に処置した皮膚に目に見える効果、例えば皮膚の引き締めが観察可能である。
【0156】
任意選択的に、処置は反復される(208)。いくつかの実施形態では、処置は、所望の効果、例えば皮膚の目に見える引き締めが達成されるまで繰り返される。
【0157】
いくつかの実施形態では、1以上のパラメータ、例えば、エネルギーパラメータ(周波数、強度など)、トランスデューサの温度プロファイル、処置持続時間、アプリケータの形状、及び寸法の少なくとも一つが変更される。
【0158】
いくつかの実施形態では、処置は皮膚以外の組織、例えば、生殖器系の組織、尿路、胃腸管、気道、及び体の自然の開口を経由して到達可能な他の任意の組織の少なくとも一つに適用される。
【0159】
図3は、いくつかの実施形態による、様々な周波数での超音波トランスデューサアレイ500の作動と、トランスデューサによって処置される組織表面への熱効果を概略的に表す。
【0160】
いくつかの実施形態において、1以上のトランスデューサ502が深部組織に熱損傷を与えるために好適な周波数、例えば8~22MHz、10~20MHzの間の周波数、11MHz、15MHz、18MHzなどの周波数で作動される。
【0161】
いくつかの実施形態では、1以上のトランスデューサ504、506、508が処置周波数ではない周波数、例えば22MHz、33MHz、45MHzなどの、20MHzより高い周波数、又は、9MHz、5MHz、2MHzなどの、10MHzより低い周波数で作動される。任意選択的に、トランスデューサ504、506、508は同じ周波数で作動されるか、あるいは、トランスデューサ504、506、508は様々な周波数で作動される。
【0162】
いくつかの実施形態では、1以上のトランスデューサ510は作動されない。
【0163】
いくつかの実施形態では、1以上のトランスデューサにより放出されるエネルギーは非集束超音波エネルギーを含む。追加的又は代替的に、1以上のトランスデューサにより放出されるエネルギーは集束超音波エネルギーを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、非集束超音波と集束超音波とが同時又は連続して印加される。集束超音波と非集束超音波とを同時及び/又は連続して印加することの潜在的な利点には、非集束超音波が集束超音波の焦点を囲む組織を加熱して、焦点における組織の温度を上昇させるので、組織に対するより強固な熱効果が得られることが含まれ得る。集束超音波を使用する別の潜在的な利点には、互いに離隔した個々の処置ポイントに正確に標的にできることが含まれ得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、集束超音波は、例えば0.25~0.2MHzの間の周波数で印加されると、キャビテーション気泡のクラウドを生成する。任意選択的に、非集束超音波ビームを集束超音波と同時又は連続して印加することでクラウド領域が加熱され、クラウド領域に標的を絞った焼灼を与えることができる。集束超音波と非集束超音波とのエネルギーが一緒に印加される例示的実施形態には、脱毛用途が含まれ、そこでは集束超音波が毛管内にキャビテーションを生成し、任意選択的に集束ビームよりも高い周波数で印加される非集束ビームが毛管の加熱を強める。他の用途としては、汗腺処置、にきび処置、及びその他の処置の少なくとも一つが含まれ得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、隣接するトランスデューサが作るエネルギー場は重なり合う。
【0167】
任意選択的に、隣接するトランスデューサは異なるエネルギータイプ(例えば集束超音波、非集束超音波、RF)を放出する。任意選択的に、隣接するトランスデューサは異なる周波数で駆動される。いくつかの実施形態では、重なり合う場が複合場を生成し、そこにはより高強度の局部ピークが含まれ得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、ビーム512は実質的に台形のプロファイルを含む。
【0169】
または、ビームは、円錐形、長方形、及び他の形状の少なくとも一つなどの異なるプロファイルを含む。いくつかの実施形態では、ビーム512の開口角αは、例えば5~20度の間であって、10度、15度、19度などである。
【0170】
いくつかの実施形態では、放出ビームのエネルギー分布はエネルギーパラメータの選択によって制御される。例えばいくつかの実施形態では、エネルギーパラメータ(例えば周波数及び強度の少なくとも一方)は、生成されたビームの超音波場が、ビームの他の部分よりもビームの基部でより強く、例えば組織との接触点を加熱するのに効果的になるように選択される。追加的又は代替的に、ビームの中間部がより強く、例えば表面から浅い深さにある組織の加熱に効果的である。追加的又は代替的に、ビームの遠い部分がより強く、例えば深い組織の加熱に効果的である。
【0171】
図3はさらに、組織表面514に対する、例えば本明細書に記載のようなアレイの熱効果を示す。いくつかの実施形態では、処置用トランスデューサ502により(例えば接触されて)影響を受ける組織表面516は最も加熱され、例えば20~40℃の間の温度に加熱される。いくつかの実施形態では、処置用トランスデューサと、隣接する任意選択的な冷却トランスデューサとの両方の影響を受ける、518、520及び522などの少なくとも一つの組織表面は、より低い温度、例えば10~30℃の間の温度に加熱される。いくつかの実施形態では、処置用トランスデューサから更に離れた位置にある524などの組織表面は、より低い温度、例えば5~25℃の間に加熱される。
【0172】
図4は、いくつかの実施形態による、冷却モジュールを備える超音波アプリケータの例示的構成である。
【0173】
いくつかの実施形態において、アプリケータ700は1以上の超音波トランスデューサ702(例えば9個のトランスデューサ、5個のトランスデューサ、15個のトランスデューサ、又はこれらの中間の、より多いかより少ない数のトランスデューサ)を備える。いくつかの実施形態では、トランスデューサ702はベース704に取り付けられる。任意選択的に、各トランスデューサ702は、ベース704から遠ざかる方向に延出する枝部706に取り付けられる。任意選択的に、トランスデューサ702は接着剤、例えば熱伝導性及び電気伝導性の少なくとも一方の接着剤の薄層によってベース704に取り付けられる。
【0174】
任意選択的に、例えば本明細書に示すように、枝部は相互に、例えば1~6mm、2~4mm、0.5~3mmの間、又はこれらの中間の、より短いかより長い距離である横方向距離708だけ離れている。任意選択的に、枝部間の距離、及び枝部の互いに対する空間配向の少なくとも一方は、処置する組織内に形成を意図する損傷部パターンに従って選択される。
【0175】
いくつかの実施形態では、枝部706同士の間には熱的分離及び電気的絶縁の少なくとも一方が構成される。任意選択的に、枝部間に画定される空隙には、隣接するトランスデューサ間を熱的及び電気的に分離するために空気が入ることができる。
【0176】
追加的又は代替的に、熱的分離材料及び電気的絶縁材料の少なくとも一方である、例えばポリウレタンフォームが枝部間に配置される(図示せず)。
【0177】
あるいは、いくつかの実施形態では、枝部706を含むベース704が、熱的分離材料及び電気的絶縁材料の少なくとも一方(ポリイミド及びパリレン(登録商標)の少なくとも一方などで、例えば10~20ミクロンの間の厚さを有する)で被覆される。任意選択的に、被覆が枝部間の空隙に空気を閉じ込める。これに代わり、いくつかの実施形態では、ベース704には枝部が含まれず、トランスデューサはベースに直接取り付けられる。任意選択的に、ベース704は、ポリイミド及びパリレンの少なくとも一方などの、例えば10~20ミクロンの間の厚さを有する熱的分離材料及び電気的絶縁材料の少なくとも一方によって少なくとも部分的に被覆される。いくつかの実施形態では、この被覆は電気回路(例えばプリント回路)を含み、トランスデューサ702を作動させるか、アプリケータが接触する組織表面を例えば組織の直接加熱及びトランスデューサの加熱の少なくとも一方により加熱するように構成される。
【0178】
いくつかの実施形態ではアプリケータ700は、トランスデューサからの熱を吸収して放散させる、及びトランスデューサを能動的及び/又は受動的に冷却することの少なくとも一方を行うように構成された冷却モジュール701を備える。いくつかの実施形態では冷却モジュール701は、トランスデューサの超音波放出面の過熱などのトランスデューサ過熱防止に十分な速度でトランスデューサからの熱を移すように構成される。いくつかの実施形態では冷却速度は十分に高く、トランスデューサを現在の組織表面温度よりも低い温度まで冷却可能である。任意選択的に、能動的冷却が提供される。トランスデューサを処置組織表面の現在の温度よりも低い温度まで冷却することの潜在的利点は、組織表面を直接冷却するように構成された冷却素子などの追加的な冷却素子の必要性を減らし得ることである。これは、トランスデューサが冷却され、また、トランスデューサを介して(例えばトランスデューサの放出面を介して)、トランスデューサに接触している組織表面が冷却されるからである。いくつかの実施形態では、冷却モジュール701はトランスデューサの作動に従って制御される。任意選択的に、冷却速度は十分に高く、エネルギーを放出するトランスデューサによる加熱を克服する。例示的な冷却速度は、1K/分、5K/分、10K/分、60K/分、又はこれらの中間の値であり、熱伝達率は1~7W/(mK)又はこの中間の値であり得る。
【0179】
いくつかの実施形態では冷却モジュール701は、例えば熱電冷却器(TEC)710の形状をした、ペルチエ素子などの1以上の冷却素子を含む。任意選択的に、1以上(例えば図示するように3個)のTEC素子がベース704に接触して配置される。いくつかの実施形態では、ベース704は、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス鋼の少なくともいずれかを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、冷却モジュール701はヒートシンク712を含む。
【0181】
任意選択的に、ヒートシンク712は、例えばTEC素子710の下に配置され、TEC素子からの熱を吸収及び放散の少なくとも一方をさせるように構成される。
【0182】
いくつかの実施形態においてTEC素子710は、ベース704とヒートシンク712の間に配置される。任意選択的に、TECの遠位対向面714は少なくとも部分的にベース704に接触し、TECの近位対向面716は少なくとも部分的にヒートシンク712に接触する。任意選択的に、遠位対向面714はTECの冷却側であり、近位対向面716はTECの高温側である。任意選択的に、TECへの電力は、電源ケーブル(図示せず)を介して供給される。
【0183】
いくつかの実施形態では、各トランスデューサは単一のTEC素子に結合される。
【0184】
任意選択的に、遠位対向面714上に構成された基板(例えばセラミック基板)は除去され、TEC素子の電気回路とトランスデューサとの間が直接結合される。そのような直接結合は、例えば1以上のトランスデューサが第1のエネルギーパラメータのセット(周波数、強度など)で作動され、他の1以上のトランスデューサが第2のエネルギーパラメータの組で作動される動作モードにおいて、各トランスデューサの冷却を独立して制御するのに有利であり得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、TEC710とヒートシンク712の間、及びTEC遠位対向面714とベース704との間の少なくとも一方に熱伝達層720が配置される。これは、例えば熱伝導性の接着剤、ペースト、及びパッドの少なくとも一つを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、ヒートシンク712は、例えば流体、気体、不凍液の少なくとも1つから成る冷却剤718を含む。一例では、冷却剤は水を含む。任意選択的に、冷却剤は、例えばポンプ(図示せず)を用いることでヒートシンク内を循環する。いくつかの実施形態では、冷却剤は、例えばヒートシンク712内に配置されるか、アプリケータ700の外部に配置されるかの少なくともいずれかである冷却装置(図示せず)によって冷却される。
【0187】
いくつかの実施形態では、冷却モジュール701はファン(図示せず)を備え、追加的な熱除去を提供するか、上記で説明した1以上の冷却素子(TEC及びヒートシンクなどの少なくとも一つ)を置き替えるかの、少なくともいずれかとなるように構成される。
【0188】
追加的又は代替的に、冷却モジュール701は、例えば銅のブロックである熱貯蔵ブロック(図示せず)を備える。任意選択的に熱貯蔵ブロックは、例えばベース704を介してトランスデューサ702を十分に冷却できるほどの温度に予冷され、組織表面への熱損傷を低減又は防止できるようにする。
【0189】
いくつかの実施形態では、ベース704はヒートシンク712上に直接取り付けられる。
【0190】
そのような構成においては任意選択的に、冷却剤718の温度は(例えばTEC素子が使用されるアプリケータに比べて)さらに低い温度に下げられる。
【0191】
いくつかの実施形態では、連続したPZTプレートが使用されて、例えばベース704の枝部構造を置き替えることが可能である。いくつかの実施形態では、連続したPZTプレートが処理されて、例えば以下で説明するような複数の選択的に独立して動作可能な放出素子が画定される。
【0192】
追加的又は代替的に、連続した多孔質PZTプレートが使用される。いくつかの実施形態では、多孔質PZTプレートは電気伝導層(銀層など)で被覆され、その層を、電極に接触する個別のPZT部を励起するための別個の電極の生成に適したパターンとなるよう、除去(例えばエッチング)する。
【0193】
追加的又は代替的、多孔質PZTプレートの頂面及び/又は底面に別個の電極を配置することによって、複数の放出素子が生成される。いくつかの実施形態では、多孔質PZTプレートを使用する場合、多孔質材料中では音速がより低いために、プレートの厚さを、例えば非多孔質PZT素子の厚さより小さくなるように選択する。
【0194】
いくつかの実施形態では、アプリケータ700は、トランスデューサを担持するベースを2以上含む構成を備える。一例では、2つのベースが互いに対向して(例えば鏡面対称を形成して)配置される。任意選択的に、ベース間の距離及び角度位置は、処置する組織に特定の損傷部パターンを形成するように選択及び/又は修正される。任意選択的に、各ベースは別々のTEC素子に結合される。
【0195】
いくつかの実施形態では、アプリケータ700は1以上の温度センサ724を備える。いくつかの実施形態では、センサ724はトランスデューサ702同士の間に配置される。任意選択的に、センサ724は被覆(例えば先に説明したような、ベースのポリイミド及び/又はパリレン(登録商標)被覆)に結合されるか、枝部間に構成された絶縁材料に結合されるか、またはその両方である。いくつかの実施形態では、センサ724はトランスデューサ702の温度、例えばトランスデューサの放出面の温度を示すように構成される。追加的又は代替的に、センサ724は組織表面の温度を示すように構成される。任意選択的に、温度センサ724はトランスデューサの近傍に、例えばトランスデューサの放出面から0.1mm~1mmの間に配置される。
【0196】
追加的又は代替的に、トランスデューサの温度は、組織によって反射され、アプリケータ700によって受信されるエコー信号を解析して評価される。
【0197】
任意選択的に、アプリケータ700は1以上の超音波受信素子を備える。任意選択的に、1以上のトランスデューサ700は、エミッタとレシーバの両方として機能するように構成される。
【0198】
いくつかの実施形態では、アプリケータ700は1以上のRF電極(図示せず)を備える。任意選択的に、RF電極はベースの被覆に結合するか、トランスデューサの間の絶縁材料に結合するか、又はその両方である。いくつかの実施形態では、RF電極は、例えば、表面への熱損傷を低減するために、組織表面に追加的な加熱を行うために使用される。追加的又は代替的に、RF電極は組織の生体インピーダンスを測定するために使用される。任意選択的に、生体インピーダンスの測定は、トランスデューサの組織への接触を評価するために、又は処置に応答する組織状態の基準として、又はその両方のために行われる。
【0199】
いくつかの実施形態では、薄いジェルのパッド728(例えば厚さが0.1~1mmの範囲)がアプリケータ700の遠位端に配置される。任意選択的に、ジェルパッド728はトランスデューサと組織の間の接触を高める。任意選択的に、ジェルパッド728は組織表面への冷却を与える(例えばエネルギー放出の前に組織を予冷する)。いくつかの実施形態では、ジェルパッド728は使い捨てであり、処置の都度及び患者ごとの少なくとも一方において交換される。
【0200】
追加的又は代替的に、アプリケータ700は薄いバルーンの中に挿入されて、それが処置の都度、及び患者ごとの少なくとも一方において交換可能である。
【0201】
図5A図5Bは、いくつかの実施形態による、超音波トランスデューサアレイの作動の例示的グラフである。
【0202】
いくつかの実施形態では、例えば図5Aに概略的に示すように、アレイ中の様々な超音波トランスデューサが異なるエネルギーパラメータのセット(例えば、異なる周波数、異なる強度、異なる持続時間、異なる電力などの少なくとも1つ)を用いて作動される。図5Aの概略のグラフでは、4つの超音波トランスデューサが異なる周波数で作動される。任意選択的に、組織表面の加熱を制御するために作動が制御される。任意選択的に、隣接するトランスデューサ間の温度差を低減するために、作動が制御される。
【0203】
任意選択的に、異なるトランスデューサは異なるパラメータのセットで作動されて、組織のより深い層に選択された温度分布を生成する。
【0204】
図5Bは複数のトランスデューサ、この例では19個のトランスデューサを含むアレイの作動パラメータの表である。いくつかの実施形態では、例えば1~50個のトランスデューサの範囲で、より多いかより少ない数のトランスデューサが使用され得る。
【0205】
本明細書に示す例示的パラメータは皮膚組織の処置(例えば皮膚の引き締め処置)に適用可能である。
【0206】
説明した例では、各トランスデューサのPZT素子の寸法には、例えば長さ5mmで幅が1mmの、5mmの表面積を有する長方形の放出面が含まれる。他の形状及び寸法の少なくとも一方を有するPZT素子も使用され得ることに留意されたい。
【0207】
いくつかの実施形態では、薄いトランスデューサ(例えば、幅が4mm未満、2mm未満、1mm未満など)を使用することで、複数のトランスデューサを相互に隣接配置してアレイを形成することができる。
【0208】
任意選択的に、アレイ中の2以上のトランスデューサを同時に作動させて、複数の離隔した組織領域を標的とする非集束超音波を放出する。
【0209】
非集束超音波を放出する薄いトランスデューサを使用する潜在的な利点には、手持ちのアプリケータのヘッドに取り付けられるほどに十分小さいトランスデューサのアレイを使用して複数の組織領域を処置できることがある。これによって、例えば、1つの焦点に向かってエネルギーを集束させるために単一の大きなトランスデューサを必要とすることのある集束超音波よりも有利となり得る。
【0210】
図6は、いくつかの実施形態による、美容用の超音波皮膚処置方法のフロー図である。
【0211】
いくつかの実施形態では、超音波エネルギーが放出されて、例えば皮膚の真皮層に、離隔した熱損傷による損傷部を生成する(1000)。いくつかの実施形態では、エネルギーは非集束である。
【0212】
いくつかの実施形態では、印加されたエネルギーが真皮組織の画定された体積領域の温度を、例えば60~70℃の間の温度にまで上昇させる。任意選択的に、熱損傷した体積が、最上部の皮膚層つまり表皮からある距離、例えば少なくとも1mm、少なくとも1.5mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも5mm、あるいはこれらの中間の、より長いかより短い距離に、構成される。
【0213】
いくつかの実施形態では、表皮を5~40℃の間、例えば、5~10℃、10~20℃、7~15℃、20~30℃、又はこれらの中間の、より高いかより低い範囲などに維持するために冷却が行われる。任意選択的に、アプリケータの冷却モジュールは、組織表面が実効的に5~40℃の範囲に達するように、-5~-20℃の間の温度に設定される。いくつかの実施形態では、表皮を1℃未満の温度に冷却することが回避される。これは例えば皮膚がアプリケータに付着する事態を防止するためである。
【0214】
いくつかの実施形態では、冷却はエネルギー放出の前に適用される。
【0215】
追加的又は代替的に、冷却はエネルギーを放出している期間と期間の間に適用される。追加的又は代替的に、冷却はエネルギー放出中に適用される。
【0216】
任意選択的に、トランスデューサ表面は継続的に冷却される。いくつかの実施形態では、温度標示に応答して適用され、例えば組織に接触している1以上の温度センサにより示される温度が、閾値よりも高い場合、例えば20℃より高い、30℃より高い、40℃より高い、あるいはこれらの中間の、より高いかより低い閾値より高い場合には、より強い冷却が提供される。任意選択的に、TEC素子の作動は温度標示に従って制御される。
【0217】
図7は、いくつかの実施形態による、超音波皮膚処置システムの概略図である。
【0218】
いくつかの実施形態では、システム1100はコンソール1104に動作可能に結合したハンドユニット1102を備える。いくつかの実施形態では、ハンドユニット1102はコンソールに有線接続される。追加的又は代替的に、ハンドユニット1102はコンソールに無線接続される。
【0219】
いくつかの実施形態では、ハンドユニット1102は、超音波アプリケータ1108が取り付けられたハンドル1106を備える。いくつかの実施形態では、アプリケータ1108は、トランスデューサ1110などの1以上のエネルギー放出素子を備える。いくつかの実施形態では、アプリケータ1108は、例えばTEC素子1112、ヒートシンク1114、及び任意選択的にファン1116を備える冷却モジュールを含む。いくつかの実施形態では、1以上の温度センサ1118がアプリケータに組み込まれて、例えばトランスデューサ1110の近傍及びその上の少なくとも一方に配置される。
【0220】
いくつかの実施形態では、アプリケータ1108は処置する皮膚1120の上に配置される。
【0221】
任意選択的にアプリケータは、例えばトランスデューサ1110のエネルギー放出面が皮膚に直接接触するように、直接配置される。
【0222】
あるいは、ジェルが皮膚に塗布される。いくつかの実施形態では、アプリケータ1108にジェルブリスター(blister)が結合される。任意選択的に、ジェルブリスターは、例えば処置中にジェルがゆっくりと放出されて皮膚に塗布されるように構成される。
【0223】
あるいは、アプリケータ1108が薄いバルーンに挿入されて、それが皮膚に接触する。
【0224】
いくつかの実施形態では、動作中にハンドル1106が、例えば医師によって表皮1122表面上を移動される。いくつかの実施形態では、移動パターンは意図する組織内の損傷部パターンに従って選択される。いくつかの実施形態では、移動はトランスデューサの長軸に対して実質的に直交する方向に行われる。あるいは、移動はトランスデューサの長軸に対して実質的に平行な方向に行われる。
【0225】
あるいは、移動はトランスデューサの長軸に対して実質的に斜めの方向に行われる。
【0226】
いくつかの実施形態では、トランスデューサの放出面の形状、寸法、及びトランスデューサの組織表面上での移動のさせ方の少なくとも一つは、特定の損傷部パターンを生成するように選択される。例えば、長方形のトランスデューサを組織上でトランスデューサの長軸に沿って移動させると、組織内に強い熱損傷の離隔した連続ラインを生成可能である。あるいは、長方形のトランスデューサをその短軸に沿って移動させると、組織内に比較的弱い熱損傷の近接した連続ラインを生成可能である。
【0227】
いくつかの実施形態では、最大幅が例えば約2mmの、正方形、円形あるいは半円形のトランスデューサ面を組織表面上で間欠的に移動させて(例えば3~10秒の放出間隔で)、間に損傷のない組織を有する、熱損傷の離隔したポイントを部分的に生成する。
【0228】
いくつかの実施形態では、アプリケータの複数の超音波素子の励起パルスの間に所定の遅延を設定してハンドルを移動させることで、放出ビームをある範囲の角度で操縦することができ、組織内に所望の熱効果を生成する。
【0229】
いくつかの実施形態では、アプリケータ1108を組織に当てて保持し、1~30秒の間、例えば3秒、5秒、9秒、10秒、20秒、あるいはこれらの中間の、より長いかより短い時間の間、エネルギーを放出し、その後アプリケータを再度別の場所に移動する。任意選択的に、放出持続時間及びその他のエネルギーパラメータの少なくとも一つは処置される組織の種類及び状態の少なくとも一方に従って選択される。例えば額のシワを処置するためには、各エネルギー放出時間は8~10秒の範囲となり得る。首の領域のたるんだ皮膚を処置する場合、エネルギー放出時間はより長く、例えば10~20秒の範囲となり得る。任意選択的にエネルギー周波数が変更され、例えばより低い周波数が選択される。
【0230】
いくつかの実施形態では、エネルギーは間欠的に印加され、例えば、放出期間の間に5~30秒の間の時間間隔がある。任意選択的に、エネルギーは1~50%の間の負荷サイクルで印加される。あるいはまた、エネルギーは連続モードで印加される。
【0231】
いくつかの実施形態では、1以上の損傷部1124が組織、例えば真皮網状層1126に生成される。任意選択的に、(例えばトランスデューサアレイの使用により)複数の損傷部が同時に生成される。
【0232】
いくつかの実施形態では、損傷部1124の断面形状は、細長い、ほぼ楕円形状である。いくつかの実施形態では、損傷部1124の体積は、1mm~3mmの間、0.3mm~2mmの間、1mm~7mmの間、又はこれらの中間の、より大きいかより小さい体積である。
【0233】
いくつかの実施形態では、損傷部1124は、例えば1mm、2mm、4mm、6mm、8mmの距離1128、又はこれらの中間の、より長いかより短い距離だけ互いに離隔している。いくつかの実施形態では、損傷部内の損傷組織は、変性コラーゲン、壊死した細胞、及び凝固した血液の少なくとも一つを含む。いくつかの実施形態では、損傷は組織の炎症性創傷-治癒反応を誘発する。
【0234】
いくつかの実施形態では、損傷部間の組織は実質的に損傷なしに保たれる。熱損傷による損傷部の間に健全な組織があることの潜在的な利点として、コラーゲン及びエラスチン線維など少なくとも一つの組織の成長を刺激することがあり、それが次に組織の再形成、皮膚のリフティング及び引き締めの少なくとも一つを導く可能性がある。いくつかの場合、1か月後、3か月後、6か月後、9か月後、又はこれらの中間の、より長いかより短い期間後に、皮膚に目に見える効果が観察され得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、表皮1122は実質的に損傷のないままである。
【0236】
あるいはいくつかの実施形態では、表皮には僅かな熱損傷が生じる。任意選択的に、損傷は表皮の底部に向かって真皮に近いほど大きく、真皮の最上外表面に向かう程小さい。
【0237】
いくつかの実施形態では、脂肪及び結合組織の少なくとも一方を含む組織層1128は、熱損傷に対する自然の障壁を画定する。いくつかの実施形態では、脂肪組織でのエネルギー減衰に比べて真皮でのエネルギー減衰が高いために、非集束超音波は真皮を脂肪組織の温度よりも実質的に高い温度に加熱する。任意選択的に、そのような構成においては、皮下組織の皮下脂肪が、熱損傷の空間的広がりの下限を画定する。非集束超音波を使用することの潜在的利点には、真皮の深さの変動及びシワの存在などの解剖学的な変動に拘わらず、真皮を標的にできることが含まれ得る。解剖学的変動に対するこの低い感度は、例えば集束超音波に対する利点を提供し得る。集束超音波では、固定された焦点をあらかじめ決定しなければならず、組織の解剖学的構造が考慮したものと僅かに異なる場合にはエネルギーが望ましくない組織位置にまで到達する可能性がある。
【0238】
いくつかの実施形態では、アプリケータと組織表面(例えば表皮)との間の接触が評価される。いくつかの実施形態では、以下の1以上が組織との接触を表すために(例えば、接触が確立されているかどうか、アプリケータが組織の十分近くに位置しているか、などに)使用可能である。
【0239】
A.1以上のトランスデューサのインピーダンス変化(例えば、組織との接触前と接触後における)を測定
B.励起前、励起中及び励起後の少なくとも一つにおいて1以上のトランスデューサの電力消費を測定
C.励起後の1以上のトランスデューサのリンギング減衰の変化を測定
D.励起後の1以上のトランスデューサの冷却曲線の変化を測定
E.例えば2つのトランスデューサを介して、組織の生体インピーダンスを測定
F.励起前及び励起中の少なくとも一方における、1以上の温度センサの冷却曲線の変化を測定
G.1以上のトランスデューサが受信する音響信号の変化を測定
H.増幅器利得の変化を測定
I.1以上のトランスデューサの静電容量の変化を測定
J.隣接するトランスデューサなどの異なるトランスデューサの上部電極間における静電容量の違いを測定
【0240】
いくつかの実施形態では、トランスデューサの過熱が低減又は防止される。
【0241】
任意選択的に、トランスデューサの放出面温度は、20℃未満、25℃未満、15℃未満、又はこれらの中間の、より高温かより低温の温度未満に維持される。
【0242】
いくつかの実施形態では、組織表面の過熱が低減又は防止される。任意選択的に、組織表面の温度は、例えば40℃、38℃、41℃より低く維持される。いくつかの実施形態では、トランスデューサ及び組織の少なくとも一方の温度を評価するために、以下の1以上を使用可能である。
【0243】
A.超音波放出素子(例えばPZT)の温度を、例えばエネルギーの放出前、放出中及び放出後の少なくとも一つにおいて、例えば1以上の温度センサを使用して測定
B.超音波素子の静電容量を温度標示として測定
C.1以上のトランスデューサに施されている被覆の温度を、いくつかの実施形態に従って、例えばその被覆に隣接して配置された1以上の温度センサを使用して、及びその被覆に埋め込まれた回路に組み込まれた熱抵抗器を介しての少なくとも一方により測定
D.組織の生体インピーダンス及びその変化の少なくとも一方を測定
E.インパルス応答の減衰変化を測定し、減衰変化と温度の間の相関に基づいてトランスデューサの温度を評価
F.トランスデューサのインピーダンスを測定
【0244】
任意選択的に、感温材料がトランスデューサに組み込まれ、その材料の特性の変化がトランスデューサのインピーダンスに影響する。例えば、PZT素子をベースに結合する接着剤の粘度は、PZT素子の温度変化に応じて変化する。
【0245】
いくつかの実施形態では、処置前、処置中、及び処置後の少なくとも一つにおける痛みを低減するために、以下の1以上が使用され得る。
【0246】
A.1以上のトランスデューサを低周波数で、例えば、90kHz、100kHz、200kHz、300kHzなどの50~400kHzの範囲の周波数で励起する。
任意選択的に、強度は0.05W/cm2から1W/cmの間となるように選択される。
いくつかの実施形態では、2以上の隣接するトランスデューサを近いが同じではない周波数で作動して音響うなりを生成することで低い周波数を取得する。
追加的又は代替的に、トランスデューサが屈曲モード周波数で作動される。
B.1以上のトランスデューサをその屈曲モード共振周波数で励起する。任意選択的に、同時に広範囲にわたる冷却を行う。
C.いくつかの実施形態によれば、隣接する2以上のトランスデューサを、50~200kHzの範囲の周波数を使用して、音響うなりを生成するのに十分近いが僅かに異なる周波数で励起する。
D.処置の前に、標的領域の神経を麻痺させるために、1以上のトランスデューサを処置に必要な強度よりも高い強度で短時間励起する。任意選択的に、組織に低水準の熱損傷を生成することで、痛みの部分的遮断が達成される。これは神経が非神経組織よりも高い温度に対してより感度が高いためである。一例では、神経を麻痺させるために、処置強度よりも20~200%高い強度で0.01~1秒の間、エネルギーが印加される。任意選択的に、エネルギーはパルス列で印加される。
【0247】
例示的システム
いくつかの例示的実施形態によると、超音波、例えば皮膚処置用の非集束超音波を送出するシステムは、超音波アプリケータと制御コンソールとを備える。いくつかの実施形態では、システムは選択された顔面及び頸部の少なくとも一方、例えば首の顎下領域へ超音波を送出するように構成される。ここで、本発明のいくつかの例示的実施形態による皮膚処置のための超音波送出システムを示す図8を参照する。
【0248】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波を送出するシステム、例えばシステム2302は、制御コンソール2304に長尺ケーブル2308、例えば長尺の可撓性ケーブルで接続された超音波アプリケータ2306、例えば手持ち式アプリケータを備える。いくつかの実施形態ではアプリケータ2306は、皮膚の外表面に接触するかその近くに配置されるように構成された2以上の超音波トランスデューサを備える。任意選択的に、この2以上の超音波トランスデューサは超音波トランスデューサのアレイ状に配置される。いくつかの実施形態では、アプリケータ2306は、顔面及び頸部の少なくとも一方、例えば首の顎下領域へ接触させて配置できる形状及び寸法である。いくつかの実施形態では、各トランスデューサは超音波エネルギーを生成及び送出するための作動面を備える。いくつかの実施形態では、この作動面の表面積は3mm~9mmの範囲であり、例えば3mm~5mm、4mm~8mm、6mm~9mm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値である。
【0249】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波アプリケータは、5cm~100cmの範囲の表面積寸法を有する1以上の皮膚領域、例えば顔面及び首の少なくとも一方の皮膚領域へ、超音波エネルギーを送出する形状と寸法である。
【0250】
例示的実施形態によると、アプリケータ2306は、皮膚表面に接触して配置されるトランスデューサ表面、及び皮膚表面に接触するトランスデューサ同士の間の領域の少なくとも一方を冷却するように構成された温度制御ユニットを備える。いくつかの実施形態では、温度制御ユニットはトランスデューサアレイを冷却するように構成される。いくつかの実施形態では、温度制御ユニットは1以上の熱電冷却器(TEC)を備える。いくつかの実施形態では、各TECは低温面と高温面を備える。
【0251】
いくつかの例示的実施形態によると、温度制御ユニットは、トランスデューサアレイと1以上のTECの低温面とに接触する形状と寸法を有する、少なくとも1つの熱伝導体を備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの熱伝導体はアルミニウム又は任意のその他の熱伝導性材料から作られる。いくつかの実施形態では少なくとも1つの熱伝導体は、トランスデューサアレイ、例えばトランスデューサ及びトランスデューサ同士の間の領域の少なくとも一方から、1以上のTECの低温面へ熱を伝導するように構成される。代替的又は追加的に、少なくとも1つの熱伝導体は、1以上のTECの低温面からトランスデューサアレイ、例えばトランスデューサ及びトランスデューサ同士の間の領域の少なくとも一方へ、冷温を伝導するように構成される。
【0252】
いくつかの例示的実施形態によると、温度制御ユニットは、アプリケータ内部に位置し、かつ1以上のTECの高温面に接触する冷却流体チャンバを備える。いくつかの実施形態では、高温面に接触して配置される冷却流体チャンバの壁は、1以上のTECの高温面から、冷却流体チャンバ内の冷却流体、例えば水へ熱を伝導するように構成される。いくつかの実施形態では、冷却流体はアプリケータとコンソール2304の冷却モジュールとの間を循環する。いくつかの実施形態では冷却流体は、流路、例えば長尺ケーブル2308内の1以上の冷却流体チューブ又はチャネル内を流れて冷却モジュールに入り、また冷却モジュールからアプリケータ2306の冷却流体チャンバへ流れる。
【0253】
いくつかの例示的実施形態によると、温度制御ユニットは、例えばトランスデューサの温度及びトランスデューサ近くの温度の少なくとも一方を感知するために、トランスデューサ及びトランスデューサ間の領域の近くの少なくとも一方に配置又は接触して配置された1以上の温度センサ、例えばサーミスタを備える。代替的又は追加的に、例えば組織への超音波送出の前後あるいは最中の皮膚温度を感知するために、1以上の温度センサが皮膚に接触して配置される。
【0254】
いくつかの例示的実施形態によると、アプリケータ2306は、アプリケータユーザインタフェースを備える。これは1以上の標示、例えば人が検出可能な標示をシステムユーザに提供するように構成される。いくつかの実施形態では、この標示は処置中にアプリケータを保持するユーザが見ることができる視覚的標示を含む。いくつかの実施形態では、アプリケータユーザインタフェースは、システム2302のユーザからの入力、及び例えば処置中にアプリケータ2306を保持するユーザからの入力の少なくとも一方を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、アプリケータユーザインタフェースは、ユーザからの入力を受信するように構成された1以上のボタン及びスイッチの少なくとも一方を備える。
【0255】
いくつかの例示的実施形態によると、アプリケータ2306は交換可能なアプリケータであって、選択された処置、及び選択された処置領域の少なくとも一方によって交換可能である。いくつかの実施形態では、アプリケータ2306は、長尺ケーブル2308から容易に取り外し可能に構成されたコネクタにより、長尺ケーブル2308に接続される。いくつかの実施形態では、アプリケータが異なれば、アプリケータの寸法及び形状の少なくとも一方、トランスデューサの数、トランスデューサのアレイ配置、トランスデューサのタイプ、皮膚に接触して配置されるように構成されたアプリケータの表面積寸法及び形状の少なくとも、及びアプリケータの冷却能力、の内の1以上が変わる。
【0256】
いくつかの例示的実施形態によると、長尺ケーブル2308は制御コンソールとアプリケータの間に1以上の流路、例えば1以上のチューブ又はチャネルを含む。いくつかの実施形態では、前述したように、1以上の流路は制御コンソール2304とアプリケータ2306の間で冷却流体の循環を可能とする形状及び寸法となっている。さらには、長尺ケーブル2308は、制御コンソール2304とアプリケータ2306の間で電気を伝動するための電気配線を含む。
【0257】
いくつかの例示的実施形態によると、コンソール2304は、例えばアプリケータ2306が使用されていないとき、アプリケータ2306を保持するように構成された保持器を備える。いくつかの実施形態では、コンソール2304とシステム2302は移動可能である。いくつかの実施形態では、コンソール2304は、コンソール2304の床面上の容易な移動を可能とするための1以上の車輪2314を備える。いくつかの実施形態では、コンソール2304はタワー形状である。いくつかの実施形態では、床面からのコンソールの最大高さは40~160cmの範囲、例えば40~100cm、70~130cm、90~160cm、あるいは任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値である。
【0258】
いくつかの例示的実施形態によると、コンソール2304は制御回路とメモリを備える。いくつかの実施形態では、メモリは1以上の処置プロトコル又はそのパラメータの値を記憶する。例えば超音波の周波数値、超音波の強度値、総超音波エネルギー値、冷却関連パラメータ値、処置セッション継続時間、選択された処置領域ごとの処置継続時間、超音波エネルギー印加中及び/又は印加後の冷却継続時間、などである。いくつかの実施形態ではメモリは、例えば1以上の顔面及び頸部の少なくとも一方の処置セッションの、処置セッションごとの処置パラメータ値を記憶する。代替的又は追加的に、メモリは処置領域ごとに、例えば顔面及び首の少なくとも一方の処置領域ごとに、処置パラメータを記憶する。いくつかの実施形態では、メモリは皮膚のタイプ及び皮膚の色の少なくとも一方ごとに処置パラメータ値を記憶する。いくつかの実施形態では、制御回路が、メモリに記憶された少なくとも1つの処置プロトコル及びそのパラメータの少なくとも一方に従って、アプリケータの2以上のトランスデューサを作動させる。
【0259】
いくつかの例示的実施形態によると、コンソール2304は、システム2302のユーザへ1以上の標示を提供するように構成されたユーザインタフェースを備える。さらには、ユーザインタフェースはシステム2302のユーザからの入力を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースは、ディスプレイ、例えばディスプレイ2316を含む。いくつかの実施形態では、ディスプレイ2316は、1以上の視覚的標示及び警告の少なくとも一方、例えばシステムの機能、処置、処置パラメータ値に関連する標示などをユーザに提示するように構成される。代替的又は追加的に、ディスプレイ2316は、アプリケータ、アプリケータ内のトランスデューサの温度レベル、及び処置される身体領域の温度レベルの少なくとも一方に関連する1以上の視覚的標示及び警告の少なくとも一方を提供するように構成される。
【0260】
いくつかの例示的実施形態によると、ディスプレイ2316は、コンソールに現在接続されている超音波アプリケータのタイプ、過去の処置セッションで使用した超音波アプリケータのタイプ、超音波トランスデューサの数、1以上のトランスデューサごとのW/cm単位での超音波エネルギーの強度、ジュール単位での超音波エネルギー量の内の少なくとも1つに関する情報を表示する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ2316は、過去の全て又はいくつかの処置セッションにおける、及び/又は計画中の処置のための、組織へ送出される超音波エネルギーを、1つのパルス、一連のパルス、1つの処置セッションのうちの少なくとも1つを表示する。
【0261】
いくつかの例示的実施形態によると、ディスプレイ2316、例えばタッチセンサ式ディスプレイは、ユーザからの入力、例えば処置プロトコルの選択、処置パラメータ値の選択、及びシステムの動作パラメータ値の選択などの少なくとも一つを受信するように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースで受信される入力には、患者関連入力、例えば患者の詳細情報、患者のプロファイル、個人化された処置プロトコル及びそのパラメータの少なくとも一つが含まれる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ2316は、ディスプレイの角度をシステムユーザ、例えば座っているユーザ又は立っているユーザ、の視点に調整するために動くように構成された、可動ディスプレイを含む。
【0262】
いくつかの例示的実施形態によると、ユーザインタフェースは、例えば処置中にシステムのユーザからの入力を受信するように構成された、1以上のボタン及びスイッチの少なくとも一方を備える。いくつかの実施形態では、1以上のボタンには緊急ボタンが含まれ、これは例えば緊急ボタン2318であって、例えばトランスデューサ及び処置領域の少なくとも一方の温度が所定値より高くなった場合に、超音波エネルギーの送出又はシステムの作動を停止するように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースがフットスイッチを含むか外部フットスイッチに接続され、ユーザの足で超音波トランスデューサ又はシステム2302の他の任意の構成要素を作動及び作動停止させるように構成される。
【0263】
いくつかの例示的実施形態によると、コンソール2304は、長尺ケーブル2308のコネクタ2310とコンソール2304の間を接続可能とするように構成されたポート、例えばポート2312を備える。いくつかの実施形態では、ポート2312は、長尺ケーブル2308内の電気配線及び冷却流体流路の少なくとも一方をコンソール2304に接続可能とするように構成された1以上の電気及び冷却流体流路の少なくとも一方のコネクタを備える。
【0264】
いくつかの例示的実施形態によると、コンソール2304の制御回路が、アプリケータ内の1以上のセンサ及び構成要素の少なくとも一方から、皮膚温度、超音波結合効率及び皮膚へのエネルギー蓄積の少なくとも一つに関する信号を受信する。いくつかの実施形態では、皮膚へのエネルギー蓄積は超音波アプリケータ、例えば少なくともいくつか又はすべての超音波トランスデューサの、皮膚に対する結合に基づいて測定される。
【0265】
例示的処置手順
いくつかの例示的実施形態によると、超音波エネルギーが皮膚組織、例えば顔面組織、首組織及び顎下組織の1以上へ送出される。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは1以上の組織領域へ、例えば単一の処置セッションで送出される。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは組織へ送出されて、例えば組織の再形成を可能とする。いくつかの実施形態では、組織の再形成には、シワ、例えば顔面、首、及び顎下領域の少なくとも一つシワの外観の改善が含まれる。いくつかの実施形態では、顔面、首、及び顎下の少なくとも一つの皮膚の処置の最大の処置セッション時間は最大で60分であり、例えば最大50分、最大40分、最大35分、最大30分、最大20分、又は任意のこれらの中間の、より短いかより長い時間である。
【0266】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波エネルギーは少なくとも3ジュールのパルス、例えば少なくとも3ジュール、少なくとも4ジュール、少なくとも5ジュール、少なくとも6ジュール、少なくとも7ジュール、少なくとも8ジュール、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい値のパルスで皮膚に送出される。いくつかの実施形態では、送出される超音波エネルギーが、皮膚の外表面から少なくとも1mmの深さ、例えば少なくとも1.5mm、少なくとも2mm、又は任意の中間のより小さいかより大きい深さにある組織層を、少なくとも45℃の温度、例えば少なくとも50℃、少なくとも55℃、又は任意のこれらの中間の、より低いかより高い温度レベルにまで加熱する。
【0267】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波エネルギーが、アプリケータのトランデューサアレイの底面に等しい表面積寸法を有する単一の標的領域の皮膚組織に送出される。例えば、少なくとも20mm×5mmの表面積に対して、1以上のパルスで、又は少なくとも10パルスで、例えば少なくとも20パルスで、少なくとも30パルスで、少なくとも50パルスで、少なくとも70パルスで、少なくとも100パルスで、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい数のパルスで送出される。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーの各パルスの持続時間は、少なくとも0.5秒、例えば1秒、2秒、4秒、5秒、7秒、10秒、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい持続時間である。
【0268】
いくつかの例示的実施形態によると、送出される超音波エネルギーのパラメータ値は、少なくとも1週間の期間の後に、例えば少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は任意のこれらの中間の、より短いかより長い期間の後に、シワの深さが少なくとも10%減少、例えば少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きいパーセンテージのシワ深さの減少が、得られるように選択される。
【0269】
いくつかの例示的実施形態によると、送出される超音波エネルギーのパラメータ値は、シワ重症度評価等級(WSRS:Wrinkle Severity Rating Scale)、グローガウ等級(Glogau scale)、フィッツパトリックシワ等級(Fitzpatrick wrinkle scale)、フィッツパトリックシワスコア(Fitzpatrick wrinkle score)、及びフィッツパトリックシワ・弾性線維症等級(FWES:Fitzpatrick Wrinkle and Elastosis Scale)の少なくとも一つを含む、シワ重症度等級におけるポイントを、処置から少なくとも1週間後に、例えば基準のスコアに比べて少なくとも1ポイント、少なくとも2ポイント、少なくとも3ポイント、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きいポイント数の減少を達成するように選択される。いくつかの実施形態では、パラメータ値は、メモリに記憶された表、例えばルックアップテーブルから1以上のパラメータ値を読み出すことで選択される。
【0270】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波エネルギーは、皮膚の外表面から1mm~2.5mmの深さにある1以上の組織層、例えば皮膚の外表面から深さ1mm~2mm、1.5mm~2.5mm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の深さにある組織層を加熱するために送出される。いくつかの実施形態では、送出された超音波エネルギーが、皮膚の外表面から1mm~2.5mmの深さにある組織層を、少なくとも45℃、例えば少なくとも50℃、少なくとも55℃、又は任意のこれらの中間の、より低いかより高い温度の値にまで加熱する。
【0271】
いくつかの例示的実施形態によると、例えば、眉のリフト、上瞼の外見改善、顎下タルミの低減、首シワの低減及び顔面シワの低減、の1以上を促進するために、超音波エネルギーが顔面及び首の少なくとも一方の皮膚組織領域に送出される。ここで図9Aを参照すると、本発明のいくつかの例示的実施形態による皮膚組織、例えば顔面及び頸部の少なくとも一方の皮膚組織への超音波伝達のプロセスが示されている。
【0272】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2402において被験者が診断される。いくつかの実施形態では、専門家、例えば医師又は美容師が被験者の皮膚の状態を診断する。いくつかの実施形態では、専門家が顔面、首及び顎下領域の少なくとも一方の皮膚の状態を診断する。いくつかの実施形態では、皮膚状態の診断には、例えばシワ重症度等級を用いてシワの重症度を判定することが含まれる。いくつかの実施形態では、シワ重症度等級は、シワ重症度評価等級(WSRS)、グローガウ等級、フィッツパトリックシワ等級、フィッツパトリックシワスコア、及びフィッツパトリックシワ・弾性線維症等級(FWES)の少なくとも一つを含む。いくつかの実施形態では、シワ重症度等級の1以上の基準スコアが決定される。
【0273】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2402の被験者の診断時に、被験者の皮膚のタイプ、例えば皮膚フォトタイプが分類される。いくつかの実施形態では、被験者の皮膚フォトタイプは、例えばフィッツパトリックの皮膚タイプ等級で分類される。
【0274】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2402の被験者の診断時に、組織組成、例えば脂肪組織、結合組織、瘢痕組織、又は超音波エネルギー送出に影響を与え得る他の任意の組織タイプのパーセンテージ及び組織タイプの存在の少なくとも一つが判定される。いくつかの実施形態では、選択された1以上の領域における組織組成が決定される。
【0275】
いくつかの例示的実施形態によると、被験者はブロック2404において処置を受けるように選択される。いくつかの実施形態では、ブロック2402で行われた診断の結果に基づいて被験者が選択される。
【0276】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2408で1以上の処置領域が選択される。いくつかの実施形態では、その選択された1以上の処置領域には、顔面領域及び頸部の少なくとも一方、例えば顎下領域が含まれる。いくつかの実施形態では、1以上の処置領域は、ブロック2402で行われた診断の結果に基づいて選択される。
【0277】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2410において少なくとも1つの処置パラメータ値が、選択された処置領域及び選択された特定の被験者の少なくとも一方ごとに調整される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、超音波周波数、超音波強度、超音波エネルギー量、超音波パルスの総数、パルス列当たりの超音波パルス数、パルス列の数、処置セッションの全体の継続時間、組織領域当たりの処置継続時間、処置中及び/又は処置後の冷却強度、及び処置後の冷却継続時間、の内の少なくとも1以上を含む。
【0278】
いくつかの例示的実施形態によると、処置パラメータは、組織に印加されるエネルギーパルスの数、パルス当たりのW/cm単位での音響強度、エネルギーパルス生成に使用されるトランデューサの数、各パルスの持続時間、エネルギーパルス生成に使用されるトランデューサ総面積、各トランスデューサの長さ、各トランスデューサの幅、及び
アプリケータの底面積、の少なくとも1以上を含む。
【0279】
いくつかの例示的実施形態によると、処置パラメータ値は、シワ分類、シワ等級スコア、皮膚フォトタイプ、及び選択された処置領域における組織組成、の内の少なくとも1以上に従って調整される。いくつかの実施形態では、処置パラメータ値は、1以上の被験者関連パラメータ、例えば被験者の病態、被験者の病歴、被験者の現在の投薬計画、被験者の年齢、及び被験者の性別などの少なくとも一つに従って調整される。
【0280】
いくつかの例示的実施形態によると、少なくとも1つの処置パラメータの値は、被験者の痛みに対する感受性に従って調整される。追加的又は代替的に、少なくとも1つの処置パラメータの値は、処置中及び/又は処置後に被験者が紅斑及び浮腫の少なくとも一方を発症する可能性に従って調整される。
【0281】
いくつかの例示的実施形態によると、組織はブロック2412で任意選択的に麻酔、例えば局所麻酔される。いくつかの実施形態では、選択された処置領域の組織が局部麻酔される。いくつかの実施形態では、組織が局所麻酔されて、処置中及び/又は処置後に局所的な無痛覚を誘発する。いくつかの実施形態では組織は、例えば麻酔ジェルを局所的に塗布することで局所麻酔される。代替的又は追加的に、組織は麻酔薬の局所注射によって麻酔される。いくつかの実施形態では、麻酔化合物は、リドカイン、テトラカイン、プリロカイン、クリーム又はジェル、例えばEMLA(登録商標)クリーム、の内の1以上を含む。
【0282】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2414において超音波エネルギーは組織、例えば皮膚組織に送出される。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは皮膚組織の外表面に接触して配置されたトランスデューサのアレイによって生成される超音波により送出される。いくつかの実施形態では、トランスデューサのアレイの外表面は、選択された処置領域の皮膚の外表面に直接接触して配置される。あるいは、トランスデューサ又はトランスデューサアレイの外表面は、皮膚の外表面に対して間接的に、例えばトランスデューサアレイと皮膚の間に置かれたカバーを介して配置される。
【0283】
いくつかの例示的実施形態によると超音波エネルギーは、超音波のパルス当たりの総エネルギーレベルが1~6ジュールまで、例えば1~3ジュール、2~5ジュール、4~6ジュール、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値までで、皮膚組織、例えば選択された処置領域の皮膚へ送出される。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは単一の処置セッションで、最大で60分までの期間、例えば50分まで、40分まで、30分まで、20分まで、又は任意のこれらの中間の、より短いかより長い期間まで送出される。
【0284】
いくつかの例示的実施形態によると、選択された処置領域のそれぞれは、複数のトランスデューサによって生成される超音波エネルギーのパルスを受ける。いくつかの実施形態では、パルスは組織へ1回以上反復して送出される。いくつかの実施形態では、処置領域当たりのパルス数は、約5~100パルスの範囲、例えば約5~30パルス、約20~50パルス、約40~100パルス、又は任意のこれらの中間の、より小さい数かより大きい数のパルスの範囲である。
【0285】
いくつかの例示的実施形態によると、パルス数は処置領域によって変わる。いくつかの実施形態では、例えば処置領域が顔の側面にある場合、1回の反復当たりのパルス数は、約10~60パルスの範囲、例えば約10~40パルス、約20~50パルス、約35~60パルス、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい数のパルスの範囲である。いくつかの実施形態では、例えば眉の上及び近くの少なくとも一方を処置するとき、単一反復当たりのパルス数は、約8~70パルスの範囲、例えば約8~30パルス、約20~60パルス、約50~70パルス、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい数のパルスの範囲である。いくつかの実施形態では、例えば首上部及び顎下領域の少なくとも一方を処置するとき、単一反復当たりのパルス数は、約7~70パルスの範囲、例えば約7~40パルス、約20~60パルス、約40~70パルス、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい数のパルスの範囲である。
【0286】
いくつかの例示的実施形態によると、例えば首上部の右側を処置するとき、単一反復当たりのパルス数は約10~70パルスの範囲、例えば約10~40パルス、約30~60パルス、約35~70パルス、又は任意のこれら中間の、より小さい数かより大きい数のパルスの範囲である。いくつかの実施形態では、例えば首上部の左側を処置するとき、単一反復当たりのパルス数は約7~40パルスの範囲、例えば約7~20パルス、約15~30パルス、約25~40パルス、又は任意のこれらの中間の、より小さい数かより大きい数のパルスの範囲である。
【0287】
いくつかの例示的実施形態によると、各トランスデューサの音響出力強度は、5~40W/cmの範囲、例えば5~15W/cm、10~25W/cm、20~40W/cm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値である。いくつかの実施形態では、音響出力強度が25W/cmで4秒間作動する、7つのトランスデューサから成る超音波トランスデューサアレイによって組織に印加される超音波エネルギーの例示的計算は、25[W/cm(音響強度)]×0.45[cm(作動長さ)]×0.1[cm(作動幅)]×7[トランスデューサ数]×4[秒(パルス持続時間)]×(4.5×7{総トランスデューサ面積}/(25×8{底面積}))=4秒のパルス持続時間当たり~5ジュールである。
【0288】
いくつかの例示的実施形態によると、1パルス当たりのジュール数とW/cm単位でのエネルギー強度との間の相関は、使用するトランスデューサの数及び特定のエネルギー強度が放出される持続時間、例えばパルス持続時間、パルス前の冷却時間、パルス後の冷却時間及び超音波周波数の1以上に依存する。
【0289】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波エネルギーは非集束超音波の1以上のパルスで送出される。いくつかの実施形態では、パルスは、3mm~7mmの範囲、又は任意のこの中間の、より小さいかより大きい値の範囲の表面積寸法を介して送出される。いくつかの実施形態では、各パルスは、5W/cm~60W/cmの範囲の強度を有し、例えば10W/cm~30W/cm、10W/cm~17W/cm、15W/cm~25W/cm、20W/cm~30W/cm、25W/cm~50W/cm、40W/cm~60W/cm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい値の範囲である。いくつかの実施形態では、この超音波エネルギーが能動的に送信される持続時間は1パルス当たり1~10秒の範囲であり、たとえば、1~5秒、3~7秒、6~10秒、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値である。いくつかの実施形態では非集束超音波エネルギーは、任意選択的に固定位置から送出される場合、2cm~150cmの範囲、例えば2cm~50cm、10cm~100cm、50cm~150cm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい値の範囲の表面積寸法をカバーするように送出される。いくつかの実施形態では、非集束超音波エネルギーは、1~20個のトランスデューサ、例えば単一のトランスデューサ、1~10個のトランスデューサ、5~15個のトランスデューサ、10~20個のトランスデューサ、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい数の超音波トランスデューサによって送出される。
【0290】
いくつかの例示的実施形態によると、皮膚外表面から約0.5~6mm、例えば約0.7~1.2mm、約0.9~1.5mm、約1~2mm、約2~4mm、約3~6mm、約2~6mm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい値の範囲の組織層に、約55~65℃の高い熱効果を生成するように調整された処置パラメータ値で超音波エネルギーが送出される。いくつかの実施形態では、皮膚外表面から約0.4~0.7mm及び約2~2.5mmの深さの組織層に、約47~55℃の中程度の熱効果を生成するように調整された処置パラメータ値で超音波エネルギーが送出される。
【0291】
いくつかの例示的実施形態によると、皮膚の外表面から少なくとも1.5mmの深さにある組織層を、超音波エネルギー15W/cmで加熱する場合、この組織層は影響を受けない。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーを、例えば20W/cmまで次第に増加させるとき、この組織層が影響を受けて、任意選択的に壊死領域が形成される。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーを25W/cmを超えるレベルにまで増加させると、壊死領域の体積及びサイズの少なくとも一方が増加する。任意選択的に、組織への15W/cmを超えるエネルギーの効果、例えば、壊死領域のサイズ及び体積の少なくとも一方の増加は、指数関数的である。
【0292】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2416において、トランスデューサアレイに接触する組織が、超音波エネルギー送出中に冷却される。いくつかの実施形態では、トランスデューサに接触する組織が、例えばトランスデューサを作動させている間に冷却される。代替的又は追加的に、隣接するトランスデューサ同士の間の領域に接する組織が、例えばトランスデューサを作動させている間に冷却される。いくつかの実施形態では、表面組織層、例えばトランスデューサアレイに近接する組織層が、トランスデューサの作動中に冷却される。いくつかの実施形態では、表面層は、深さ0.2mmまでの組織層、例えば皮膚の外表面から深さ0.1mmまで、深さ0.05mmまで、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい深さまでの組織層を含む。
【0293】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2418において、トランスデューサアレイに接触する組織が、任意選択的に超音波エネルギー送出後に冷却される。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイに接触する組織は、トランスデュ―サが超音波を生成している間、及び超音波生成を停止した後に冷却される。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイに接触する組織は、例えば処置された組織の紅斑及び浮腫の少なくとも一方を低減するために、超音波トランスデューサの作動を停止した後、約1~10秒の間冷却される。
【0294】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2420で処置結果が推定される。いくつかの実施形態では、処置結果は、ブロック2402に記載したような、シワ分類のために使用する1以上の等級を用いて推定される。いくつかの実施形態では、処置結果は例えばブロック2402で決定したベースライン値からの変化として推定される。いくつかの実施形態では、処置結果は、例えば1以上の所望の処置目標が処置後に達成されたか否かにより推定される。
【0295】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2422で1以上の処置パラメータ値が任意選択的に修正される。いくつかの実施形態では、1以上の所望の目標が達成されなかった場合に、1以上の処置パラメータ値が修正される。いくつかの実施形態では、修正された処置パラメータ値を用いて処置が反復される。
【0296】
例示的な個人化処置
いくつかの例示的実施形態によると、例えば非集束超音波皮膚処置は、特定の被験者に対して個人化(personalize)される。いくつかの実施形態では、個人化された超音波皮膚処置は、例えばより効率的な処置を可能として、任意選択的に、非個人化処置に比べてより短期間で所望の結果に到達する。ここで図9Bを参照すると、本発明のいくつかの例示的実施形態による、超音波皮膚処置を個人化するプロセスが示されている。
【0297】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2424において被験者に関する情報が取集される。いくつかの実施形態では、収集された情報には、例えば年齢及び性別などの少なくとも一つの個人情報が含まれる。さらに、あるいは代替的に、収集された情報には、診療情報、例えば病歴、家族の病歴、投薬計画、被験者の皮膚病理関連及び薬剤感受性の少なくとも一つの臨床データが含まれる。
【0298】
いくつかの例示的実施形態によると、1以上の被験者は治療効果がないように処置に選択される。いくつかの実施形態では、この処置は、治療効果をもたらさない美容処理である。
【0299】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2426で少なくとも1つの処置領域が選択される。いくつかの実施形態では、処置領域は最大で80cmの表面サイズ、例えば最大で40cm、最大で20cm、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい表面積を有する領域である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの脳領域は顔面又は頸部領域を含む。
【0300】
いくつかの例示的実施形態によると、選択された処置領域における組織特性及び組織組成の少なくとも一方がブロック2428で任意選択的に決定される。いくつかの実施形態では、組織特性は、組織の機械的性質、組織の伸長性、例えば組織の弾性、及び超音波エネルギーで加熱すべき組織体積の皮膚表面からの深さの少なくとも一つを含む。いくつかの実施形態では、組織組成は、組織表面と超音波エネルギーによって加熱される組織体積の間にある組織層、例えば脂肪組織層の存在、厚さ、及びサイズの少なくとも一つを含む。任意選択的に、組織組成は、選択された処置領域における創傷及び瘢痕組織の存在の少なくとも一つを含む。
【0301】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波システム、例えば超音波アプリケータは、少なくとも1つの圧力センサ、及び皮膚表面に圧力を加えたときの皮膚表面の弾性レベルを測定するように構成された少なくとも1つのセンサの少なくとも一方を備える。いくつかの実施形態では、弾性センサ及び圧力センサの少なくとも一方から受信した信号は、ブロック2428で組織特性の決定に使用される。
【0302】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2430でシワ特性が決定される。いくつかの実施形態では、選択された処置領域におけるシワ特性が決定される。いくつかの実施形態では、シワ特性には、シワの長さ、シワの深さ、例えば平均および最大深さ、シワ密度、例えば表面積寸法当たりのシワの数、が含まれる。
【0303】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2432において収集された被験者情報に従って超音波処置が調整される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処置パラメータ、例えば処置パラメータ値がブロック2424、2426、2428、2430の1以上で収集された情報に従って調整される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処置パラメータには、少なくとも1つの超音波トランスデューサから放出されるエネルギー強度、選択された時間での処置領域当たりの総エネルギー、選択された時間当たりの総エネルギー、各エネルギーパルスの持続時間、処置セッション当たり及び任意選択的に追加的に処置領域当たりの総エネルギーが含まれる。
【0304】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2434で既存の処置プロトコルが選択される。いくつかの実施形態では、超音波システム又は遠隔デバイスのメモリには、複数の処置プロトコルが記憶されている。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの記憶された処置プロトコルは、処置パラメータの異なる設定を含む。いくつかの実施形態では、ブロック2434で、被験者から収集されたデータに合う少なくとも1つの記憶された処置プロトコルが選択される。
【0305】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2436において被験者に対してユーザプロファイルが生成される。いくつかの実施形態では、被験者から収集されたデータ、例えばブロック2424、2426、2428及び2430の少なくとも1つにおいて収集されたデータは、ユーザプロファイルに記憶される。追加的又は代替的に、被験者の皮膚処置のために選択された処置パラメータ値、及び選択された処置プロトコルの少なくとも一方が、ユーザプロファイルに記憶される。
【0306】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2438で超音波皮膚処置が施される。いくつかの実施形態では、処置される被験者に合わせた処置パラメータを用いて、又はその被験者用に選択した処置プロトコルに従って、又はその両方により、超音波皮膚処置が施される。
【0307】
いくつかの例示的実施形態によると、処置結果がブロック2440で評価される。いくつかの実施形態では、被験者の処置標的に対して施された処置の効果が、ブロック2440で評価される。いくつかの実施形態では、評価された処置結果には、評価された副作用、例えば皮膚の発赤レベル、皮膚の嚥下レベル、及び皮膚の処置領域における痛覚の少なくとも一つが含まれる。追加的又は代替的に、処置の評価結果には、処置領域における皮膚の引き締まりの評価、シワの評価、例えば処置後のシワの深さ、長さ及び密度の少なくとも一つの評価が含まれる。
【0308】
いくつかの例示的実施形態によれば、ブロック2442で、少なくとも1つの処置パラメータが修正される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処置パラメータが、ブロック2440で評価された処置結果に従って修正される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処置パラメータには、所望の処置結果への到達に要する処置セッションの数、及び総処置時間の少なくとも一方が含まれる。
【0309】
いくつかの例示的実施形態によれば、被験者の処置プロファイルがブロック2444で更新される。いくつかの実施形態では、被験者の処置プロファイルが、処置の評価結果及び修正された処置パラメータの少なくとも一方に従って、ブロック2444で更新される。
【0310】
いくつかの例示的実施形態によると、処置データはブロック2446で遠隔デバイスに送信される。いくつかの実施形態では、処置データには、被験者から収集されたデータ、少なくとも1つの処置パラメータ、処置結果の評価、及び被験者の処置プロファイルに記憶された少なくともいくつかのデータ、のうちの少なくとも1つが含まれる。いくつかの実施形態では、遠隔デバイスには、遠隔コンピュータ、遠隔サーバ、遠隔クラウドストレージ、又はデータを記憶し及び/又はその記憶されたデータに計算を実行するように構成された任意の遠隔デバイスが含まれる。いくつかの実施形態では、送信されたデータは、データベース、例えばビッグデータのデータベース生成に使用される。いくつかの実施形態では、送信されたデータは、例えば国が発行したID番号及び被験者の顔写真などの、被験者のいかなる個人識別詳細情報なしで送信される。
【0311】
皮膚処置の例示的安全性考慮
いくつかの例示的実施形態によると、皮膚処置は、例えば神経損傷、血管損傷、及び耐え難い痛覚の少なくとも一つを生じさせないように、処置される被験者に対して安全であるように計画及び調整される。ここで、安全性の考慮に基づいて処理パラメータを修正又は選択するためのプロセスを示す図9Cを参照する。
【0312】
いくつかの例示的実施形態によると、例えば図9Bで説明したように、被験者の情報がブロック2424で収集され、少なくとも1つの処置領域がブロック2426で選択される。
【0313】
いくつかの例示的実施形態によると、望ましくない組織、例えば血管及び神経の少なくとも一方の位置がブロック2450で識別される。いくつかの実施形態では、選択された処置領域における血管及び神経の少なくとも一方の位置が特定される。いくつかの実施形態では、1以上の撮像技術、例えばサーモグラフィ、走査超音波、コンピュータトモグラフィ(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)の少なくとも一つによって収集された情報を用いて位置が特定される。追加的又は代替的に、血管及び神経の少なくとも一方の位置は、既知の解剖学的情報、及び他の被験者から収集された情報の少なくとも一方を用いて特定される。任意選択的に、血管及び神経の少なくとも一方の位置は、アプリケータの超音波トランスデューサのうちの少なくとも1つのトランスデューサを使用して特定される。
【0314】
いくつかの例示的実施形態によると、選択した処置標的が、望ましくない組織、例えば血管及び神経の少なくとも一方を、処置で影響を受ける可能性のある位置に含む場合には、ブロック7452において異なる処置領域が選択される。
【0315】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2454において被験者の痛覚感受性が任意選択的に推定される。いくつかの実施形態では、過剰な加熱又は冷却により生じる痛みに対する感受性が推定される。いくつかの実施形態では、熱を任意選択的に既知の量又は程度に生成し、その後被験者の応答を評価するテストによって、痛覚感受性が推定される。いくつかの実施形態では、痛みに対する感受性は、超音波処置の試行を施し、その後その試行処置に対する被験者の応答を評価することで評価される。いくつかの実施形態では、試行処置では、例えば特定の被験者に最大の許容可能な痛みを生成するように選択されたエネルギー強度レベルである処置パラメータで、超音波エネルギーが送出される。任意選択的に、痛覚感受性は被験者の報告に基づいて評価される。いくつかの実施形態では、被験者の痛みに対する感受性は、例えば少なくとも1つの電極から受信する信号に基づいて、定量的に測定される。
【0316】
いくつかの例示的実施形態によれば、ブロック2456で、少なくとも1つの処置パラメータの値が選択される。いくつかの実施形態では、血管及び神経の少なくとも一方の特定された位置にしたがって値が選択される。代替的又は追加的に、値は、推定された痛覚感受性レベルに従って選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処置パラメータは、エネルギー強度、エネルギー送出の継続時間、超音波トランスデューサの位置、トランスデューサ及びトランスデューサに接する皮膚表面の少なくとも一方の冷却レベル、及び皮膚表面に対する超音波トランスデューサの放出面の角度の少なくとも一つを含む。
【0317】
いくつかの例示的実施形態によると、エネルギー強度は、ブロック2456で、例えば試行超音波処置を用いて特定される最大許容可能な痛みを生成するエネルギー強度レベルから、少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きいパーセンテージ値だけ低減される。
【0318】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2458で超音波アプリケータが移動される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの超音波トランスデューサが移動される。いくつかの実施形態では、超音波アプリケータが選択された処置領域内で、例えば皮膚表面に沿って移動される。
【0319】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2460でアプリケータ及びトランスデューサの少なくとも一方の検出位置に従って、指示、例えば警告信号が受信される。いくつかの実施形態では、指示、例えば警告信号は、アプリケータ及びトランスデューサの少なくとも一方が識別された血管及び神経の少なくとも一方に近いことに基づいて受信される。
【0320】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2462で超音波処置が実施される。いくつかの実施形態では、処置を実施することが識別された血管及び神経の少なくとも一方に影響しない、又は処置が許容可能な影響しか起こさない位置にアプリケータ及びトランスデューサの少なくとも一方があるときに、超音波処置が実施される。
【0321】
いくつかの例示的実施形態によると、被験者の痛覚がブロック2464で評価される。いくつかの実施形態では、痛覚は超音波エネルギーの送出中及び送出後の少なくとも一方において評価される。いくつかの実施形態では、痛覚は皮膚表面、例えばトランスデューサに接する皮膚表面の温度、及びエネルギー送出中又は送出後のトランスデューサ温度の少なくとも一方に関する情報を受信することにより少なくとも部分的に評価される。
【0322】
いくつかの例示的実施形態によると、少なくとも1つの処置パラメータの値は、任意選択的に、痛覚の評価に従ってブロック2466において修正される。いくつかの実施形態では、評価された痛覚レベルが被験者の許容痛覚閾値より高い場合には、エネルギー強度は、被験者が耐えうる最大エネルギー強度レベルから、少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きいパーセンテージ値だけ低減される。いくつかの実施形態では、エネルギー強度は、被験者が許容可能な最大エネルギー強度レベルの、50~95%の範囲、例えば50~85%、70~90%、80~95%、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい範囲の値に低減される。代替的又は追加的に、評価された痛覚レベルが被験者の許容痛覚閾値より高い場合には、エネルギー送出の継続時間は、前回の処理継続時間の値から少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、又は任意のこれらの中間の、より小さいかより大きいパーセンテージ値だけ低減される。
【0323】
いくつかの例示的実施形態によると、痛覚を低減させるために、皮膚の後冷却の継続時間が、1~20秒、例えば1~5秒、3~10秒、5~15秒、7~20秒、又は任意のこれらの中間の、より短いかより長い継続時間だけ増加される。いくつかの実施形態では、エネルギー送出前、送出中及び送出後の少なくとも一つにおいて、例えば冷却モジュール及びトランスデューサが取り付けられているベースの少なくとも一方の冷却による、トランスデューサの冷却を使用して痛み感覚を減少させる。
【0324】
ここで図9Dを参照する。これは、本発明のいくつかの例示的実施形態による、選択された場所での処置の実施を可能とするときのシステム動作を示す。
【0325】
いくつかの例示的実施形態によると、ブロック2470でアプリケータ及び超音波トランスデューサの少なくとも一方の位置が特定される。いくつかの実施形態では、位置は、少なくとも1つの位置センサから受信した信号、及び光学センサ、例えば図1に示す超音波システムに接続されるか超音波システムの一体構成要素である光学センサ111、からの信号の少なくとも一方に基づいて特定される。いくつかの実施形態では、例えば顔面及び首の少なくとも一方にある1以上の処置の標的に対するアプリケータの相対位置又は絶対位置を決定するために、カメラが被験者である患者の頭及び上半身の少なくとも一方とアプリケータとを撮影する。いくつかの実施形態では、アプリケータの方向が、少なくとも1つの方向センサ、例えば加速度計から受信する信号に基づいて特定される。
【0326】
いくつかの例示的実施形態によると、カメラ、及びアプリケータの位置センサ、例えば図1に示す位置センサ115の少なくとも一方から受信する信号を使用して、アプリケータが顔面又は首の望ましくない領域に位置していないか否かを判定する。代替的又は追加的に、カメラ及び位置センサの少なくとも一方から受信する信号は、例えば特定の処置標的における処置を繰り返すために、システムユーザに前回処置した位置を指示することを可能とする。
【0327】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波システムの制御回路が、ブロック2472において、特定された位置が許容される位置であるか否かを判定する。いくつかの実施形態では、制御回路は、アプリケータの特定された位置と、超音波システムのメモリに記憶された既知の許容位置及び非許容位置の少なくとも一方との間の関係を判定することにより、アプリケータの位置が許容されるか否かを判定する。
【0328】
いくつかの例示的実施形態によると、特定された位置が許容位置でない場合、ブロック2478で警告標示、例えば警告信号が、超音波システムにより提供される。いくつかの実施形態では、警告信号は人が検知できる信号、例えば音声及び視覚的信号の少なくとも一方である。
【0329】
いくつかの例示的実施形態によると、特定された位置が許容位置でない場合、超音波システムはブロック2480で代替位置を提案する。
【0330】
いくつかの例示的実施形態によると、位置が許容された位置であれば、ブロック2474で超音波トランスデューサへのエネルギー、及び超音波トランスデューサからのエネルギーの少なくとも一方の送出がロック解除される。いくつかの実施形態では、エネルギー送出は超音波トランスデューサの作動を可能とすることでロック解除される。
【0331】
いくつかの例示的実施形態によると、位置が許容された位置であり、かつ任意選択的にエネルギーの送出が許容されると、ブロック2476で超音波システムのユーザへ標示、例えば人が検知可能な標示が提供される。
【0332】
例示的な情報の流れ
ここで図9Eを参照する。これは本発明のいくつかの例示的実施形態による、超音波システムに入出力する情報の流れを示す。
【0333】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波システム2486は、例えば図9B及び図9Cで説明したように、被験者2490からの情報を収集する。いくつかの実施形態では、収集された情報の少なくとも一部は超音波システム2486において記憶及び処理の少なくとも一方がされる。さらには、被験者から収集された情報、及び処置関連情報、例えば少なくとも1つの処置プロトコル及び/又は少なくとも1つの処置パラメータの値の少なくとも一つが、遠隔デバイス2492、例えば遠隔コンピュータ、遠隔サーバ、クラウドストレージ、又は情報を記憶及び処理の少なくとも一方をするように構成された任意の遠隔デバイス、において記憶及び/又は処理される。
【0334】
いくつかの例示的実施形態によると、遠隔デバイスは超音波システムから受信した情報の少なくとも一部を、データベース、例えばビッグデータベースの一部として記憶する。いくつかの実施形態では、遠隔デバイスは、記憶した情報の処理を可能とする、少なくとも1つのアルゴリズム又はルックアップテーブルを記憶する。
【0335】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波システムによって収集された情報の少なくとも一部は、システムのユーザ2488、例えば技術者、医師、又は超音波システムの操作資格を有する任意の人によって挿入される。いくつかの実施形態では、ユーザ2488が超音波トランスデューサから情報、例えば提案された処置プロトコル及び処置パラメータ値の少なくとも一方を受信する。いくつかの実施形態では、処置パラメータ値及び少なくとも1つの処置プロトコルの少なくとも一方は遠隔デバイスに記憶される。いくつかの実施形態では、超音波システム2486はユーザ2488が要求した情報を遠隔デバイス2492から受信する。
【0336】
いくつかの例示的実施形態によると、超音波システム2486は、処置実施中及び処置実施後の少なくとも一方において遠隔デバイスに対して情報を送信するように構成される。いくつかの実施形態では、遠隔デバイスに送信される情報には、被験者に施された処置に関するフィードバック情報、例えば評価データが含まれる。いくつかの実施形態では、受信したフィードバック情報を使用して、遠隔デバイスに記憶された少なくとも1つのプロトコル及びそのパラメータの少なくとも一方が更新される。あるいは、受信したフィードバックデータを使用して、少なくとも1つの新プロトコルが生成されるか、又は処置の変更方法がユーザ2488に提案されるか、又はその両方が行われる。
【0337】
例示的な検証研究
超音波エネルギーを使用して顔面および顎下領域の処置をするための様々な臨床研究が実行された。これらの臨床試行及びいくつかの実施形態において、処置する皮膚領域は、被験者の顔の左側を表す図10に示すように、以下の少なくとも1つである、即ち、顔の右側面と左側面、例えば領域2504;右眉と左眉の上領域、例えば領域2502;顎の領域、例えば領域2508;首上部の左側と右側、例えば領域2506、2510。下顎骨直下の領域、例えば領域2510は、顎下領域である。本発明のいくつかの実施形態では、示された領域の1以上が処置されることに留意されたい。あるいは、本発明のいくつかの実施形態では、他の顔面及び頸部の少なくとも一方が処置される。
【0338】
臨床試行及び本発明のいくつかの実施形態では、皮膚の外表面の近くを通る顔面神経、例えば皮膚の外表面から最大5cm、例えば最大3cm、最大1cm、又は皮膚の外表面から任意のこれらの中間の、より小さいかより大きい距離にある神経を含む顔面及び首の少なくとも一方の領域は処置されなかった。例えば鼻の上方にある領域2512、下顎と口の横との間にある領域2514、及び首の中央下部にある領域2516である。本発明のいくつかの実施形態では、顔面及び頸部の少なくとも一方の他の領域は処置されないことに留意されたい。
【0339】
いくつかの例示的実施形態によれば、例えば図9Dで説明したように、神経は1以上の撮像技術、例えば超音波エネルギーを使用して検出される。いくつかの実施形態では、神経はアプリケータの1以上のトランスデューサが受信するエコーに基づいて検出される。いくつかの実施形態では、体内で身体の垂直軸に平行な細長い要素が検出される場合には、神経が検出されるかあるいは処置すべきでない部位が検出される。
【0340】
2つの臨床試行において、各処置領域は、各パルスが2~5ジュールのエネルギーを有する一連のパルスで超音波エネルギーを受けた。一連のパルスは、2回反復して各領域へ送出された。さらには、各処置領域は1秒の継続時間で前冷却及び後冷却された。下の表は、それぞれの処置領域に対して試行において使用されたパラメータ値のまとめである。
【表1】

本発明のいくつかの実施形態においては、異なるパルス数、パルス当たりの異なるエネルギーレベル、処置領域当たりの異なるパス回数、及び処置前及び処置後の異なる冷却継続時間の少なくとも一つが使用されることに留意されたい。
【0341】
臨床研究No.1
フィッツパトリックシワ等級(FWS)がIV~VIである30人の被験者を研究のために登録した。被験者の年齢は48~61歳の範囲であった。登録された被験者の人種分布は次の通りである。コーカソイド80%(24人)、アフリカ系アメリカ人10%(3人)、アジア人7%(2人)、及びその他3%(1人)。被験者の皮膚フォトタイプの90%は、II、III及びIVであった。被験者のFWESのベースラインはIV~VIIであった。本発明のいくつかの実施形態においては、異なる試験対象者基準及び異なる被験者のプロファイルの少なくとも一方が使用されることに留意されたい。
【0342】
臨床研究において、被験者はリドカインとテトラカインの混合溶液(30%リドカイン/7%テトラカイン)で前処理された。処置は顔全体と前頸部:左側顔面、右側顔面、額、首左側/顎下、首右側/顎下に対して施された。処置パラメータは上の表に示されている通りであった。本発明のいくつかの実施形態においては、異なる前処理が行われ、異なる鎮痛剤/麻酔剤が使用され、異なる領域が処置され、及び異なる処置パラメータの少なくとも一つが使用されることに留意されたい。
【0343】
臨床研究において、処置前と、処置後の1週間と、処置後の3か月(12週間)とに標準的な35mm写真が撮影された。12週目のフォローアップ診察において、FWS等級の変化及び全体的な美的改善等級(GAIS)における改善が判定された。さらに、改善と満足度に対する被験者の評価が調査された。本発明のいくつかの実施形態においては、処置効果の評価に対して異なる期間が使用され、また異なる評価等級が使用されることに留意されたい。
【0344】
安全性の結果:処置に対する即時反応として、90%が紅斑を発現し、33%が浮腫を発現した。紅斑と浮腫のいずれも1時間以内に解消した。平均的な痛みレベルは10点中の8.3であった。他の有害事象(色素変調、小胞の瘢痕化)は見られなかった。
【0345】
12週目のフォローアップ診察での臨床研究結果は、下の表に示すように、87%の被験者(26人)において、FWESスコアが-1、-2又は-3だけ減少した。被験者の13%(4人)には改善が見られなかった。FWESの平均的減少は-1.03(p<0.0005)であった。被験者の87%の臨床状態、例えばシワの減少は、改善、又は顕著に改善であった。
【表2】

【0346】
12週目のフォローアップ診察での被験者評価のまとめは、67%の被験者が結果を改善又は顕著に改善にランク付けしたことを示した。登録した被験者で、悪化したとランク付けした者はいなかった。被験者の43%が改善に満足、又は非常に満足であった。被験者の37%が意見なしであった。被験者の20%が不満足であり、1人の被験者は非常に不満足であった。
【0347】
図11A~11Jは、顎下タルミの減少を示し、処置後12週間をベースライン画像と比較した。図11E~11Jは前頸部シワの減少を示す。図11K及び図11Lは、眉のリフト及び上瞼の外見改善を示す。
【0348】
臨床研究No.2
30人の被験者が登録された。登録被験者の90%(26人)が女性で、10%(3人)が男性であった。被験者の1人は、本研究に関連がないために研究から除外した。登録された被験者の人種分布は次の通りである。コーカソイド83%(24人)、アフリカ系アメリカ人7%(2人)、アジア人7%(1人)、及びその他7%(2人)。被験者の皮膚フォトタイプの93%は、II~IVであった。本発明のいくつかの実施形態においては、異なる包含基準及び異なる被験者のプロファイルの少なくとも一方が使用されることに留意されたい。
【0349】
処置は顔全体と前頸部:顔面左側、顔面右側、両眉、首左側、首右側+顎下中央、に対して施された。処置パラメータは上の表に示す通りであった。本発明のいくつかの実施形態においては、異なる前処理が行われ、異なる鎮痛剤/麻酔剤が使用され、異なる領域が処置され、及び/又は異なる処置パラメータが使用されることに留意されたい。
【0350】
安全性の結果:被験者の79%に紅斑が観察され、被験者の48%に浮腫が観察された。紅斑と浮腫のいずれも1時間以内に解消した。平均的な痛みレベルは10点中の6.6であった。有害事象は研究期間を通じて見られなかった。
【0351】
12週目のフォローアップ診察での臨床研究結果は、下の表に示すように、86%の被験者で、弾性線維症等級(ES:Elastosis Scale)のスコアが-1又は-2だけ改善したことが示された。被験者の14%(4人)ではESスコアの改善が見られなかった。処置後の12週で-1.07(p<0.0005)の平均的減少が示された。被験者の89%は、改善、顕著に改善、非常に改善にランク付けされた。
【表3】
【0352】
3か月目のフォローアップ診察での被験者評価のまとめでは、78%の被験者が結果を改善又は顕著に改善にランク付けしたことが示された。1人の被験者だけが、スコアを悪化にランク付けした。被験者の75%が結果に満足、又は非常に満足と感じ、14%が意見なし、11%が不満足(2人)または非常に不満足(1人)と感じた。
【0353】
図12A~12Fは、顎下タルミと首シワの処置後3か月での減少をベースライン画像と比較して示す。図12Hは、処置後3か月での指定領域の顔シワ深さの減少を、ベースライン画像12Gと比較して示す。図12Lは、処置後3か月で撮影した図12Kの3Dモデル画像解析であり、顔シワ深さが、ベースライン画像12I及びベースライン画像の3Dモデル画像解析(図12I)に比べて低減していることを示す。シワ深さの低減が、赤から黄への色の変化で示されている。
【0354】
用語「備える」、「備えた」、「含む」、「含んだ」、「有する」、及びそれらの活用形は、「含むがそれに限らない」ことを意味する。
【0355】
「から成る」という用語は、「を含み、かつ限定される」ということを意味する。
【0356】
「本質的に~から成る」という用語は、組成、方法又は構造が追加的な成分、ステップ及び/又は部分を含み得るが、その追加的な成分、ステップ及び部分の少なくとも一つが、特許請求の範囲の組成、方法又は構造の基本的かつ新規の特性を実質的に変更しない場合に限る、ことを意味する。
【0357】
本明細書で使用する、単数形「1つの(a、an)」、及び「その(the)」は文脈が明確にそうでないことを規定しない限り、複数の言及も含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を、それらの混合物も含めて含み得る。
【0358】
本出願を通じて、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式の記述は、単に便宜的かつ簡単のためのものであって、本発明の範囲の一定不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は、その範囲内の個別の数値と共にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、1~6というような範囲の記述は、その範囲にある個別の数字、例えば1、2、3、4、5、6、と共に、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲を有すると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに拘わらず適用される。
【0359】
本明細書で数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数値(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指定数と第2の指定数「の間の範囲の/範囲にある」という句、及び、第1の指定数「から」第2の指定数「まで」の「範囲の/範囲にある」という句は、本明細書では互換可能に使用されて、第1の指定数と第2の指定数、並びにその間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0360】
本明細書で使用の「方法」という用語は、与えられたタスクを達成するための、やり方、手段、技術及び手順を指し、これに限らないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の専門家に既知であるか又はそれらの専門家により、既知のやり方、手段、技術及び手順から容易に開発される、そのようなやり方、手段、技術及び手順を含む。
【0361】
本明細書で使用の「処置する」という用語は、状態の進行を無効にする、実質的に抑制する、遅延させる又は逆行させること、状態の臨床的又は審美的な症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0362】
当業者には理解されるように、本発明の態様は、システム、方法又はコンピュータプログラム製品として具体化され得る。
【0363】
したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェアとハードウェアを結合した実施形態の形をとり得る。これらはすべて、本明細書においては「回路」、「モジュール」又は「システム」と総称され得る。
【0364】
さらには、本発明の態様は、具体化されたコンピュータ可読プログラムコードをそこに有する、1以上のコンピュータ可読媒体内に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態をとり得る。本発明の実施形態の方法及びシステムの少なくとも一方の実施は、選択されたタスクを手動、自動又はそれらの組み合わせで実行又は完了させることを含み得る。さらに、本発明の方法及びシステムの実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、複数の選択されたタスクは、ハードウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを用いたソフトウェア、又はファームウェア、又はそれらの組合せにより実施可能である。
【0365】
例えば、本発明の実施形態による、選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装可能である。ソフトウェアとしては、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いるコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装可能である。本発明の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法及びシステムの少なくとも一方の例示的実施形態による1以上のタスクは、複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサにより実行される。任意選択的に、データプロセッサには、命令及びデータの少なくとも一方を記憶する揮発メモリ、及び命令及びデータの少なくとも一方を記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及びリムーバブル媒体の少なくとも一つが含まれる。任意選択的に、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、キーボードやマウスなどのユーザ入力装置もまた、任意選択的に提供される。
【0366】
1つ以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体であってよい。コンピュータ可読記憶媒体は、これに限らないが例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置又はデバイス、あるいはこれらの任意の適切な組合せであってよい。
【0367】
コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)は、以下のものを含み得る;1つ以上のワイヤを有する電気接続、携帯型のコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯型のコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、光記憶装置、磁気記憶装置、又はこれらの任意の適切な組み合わせ。本明細書の内容においては、コンピュータ可読記憶媒体は、命令を実行するシステム、装置又はデバイスにより使用されるか又はそれに接続されるプログラムを、保持又は記憶することのできる、任意の有形媒体であってよい。
【0368】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンドに、又は搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードがその中に具体化された伝搬データ信号を含み得る。そのような伝搬信号は、これに限らないが、電磁的、光学的、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含む種々の形態の任意のものであってよい。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなくて、かつ命令実行システム、装置、又はデバイスにより、又はそれに関連して使用するために、プログラムを通信、伝搬、又は輸送することのできる、任意のコンピュータ可読媒体であってよい。
【0369】
コンピュータ可読媒体上に具体化されたプログラムコードは、任意の適切な媒体を用いて送信され得る。その媒体には、これに限らないが、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど、あるいはそれらの任意の適切な組み合わせが含まれる。
【0370】
本発明の態様の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)、Smalltalk(登録商標)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語と、「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組合せで記述することが可能である。プログラムコードは、全体をユーザのコンピュータ上で、一部をスタンドアロンソフトウェアパッケージとしてユーザのコンピュータ上で、一部はユーザのコンピュータ上でかつ一部はリモートコンピュータ上で、あるいは全体をリモートコンピュータもしくはサーバ上で実行することが可能である。後者の場合には、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されてもよいし、(たとえば、インターネットサービスプロバイダーを利用したインターネット経由で)外部コンピュータに接続されてもよい。
【0371】
本発明の態様を、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフロー図表示及び/又はブロック図を参照して以下に記載する。フロー図表示及び/又はブロック図の各ブロック、及びフロー図表示及び/又はブロック図の複数のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実装可能であることが理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は機械を形成する他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、フロー図及びブロック図の少なくとも一方の1以上のブロックで特定される機能/動作を実施するための手段を生成する。
【0372】
またこれらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプロブラム可能データ処理装置、又は他の装置を特定の形で機能させるように指示可能なコンピュータ可読媒体に記憶することが可能であって、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フロー図及び/又はブロック図の1以上のブロックで指定された機能/動作を実施する命令を含む製造品を製造可能とする。
【0373】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータや他のプログラム可能データ処理装置や他の装置にロードされて、コンピュータや他のプログラム可能データ処理装置や他の装置に一連の動作ステップを実行させて、コンピュータ実装プロセスを生成させることが可能である。そうして、コンピュータや他のプログラム可能装置で実行される命令が、フロー図および/またはブロック図の1以上のブロックで指定された機能/動作を実施する処理を提供する。
【0374】
本発明の特定の特徴は、わかりやすくするために別々の実施形態の文脈に記述されていても、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈中に記述される本発明の様々な特徴は、別々または任意の適切な部分的組合せで提供されることも、又は本発明の任意の他の説明された実施形態に適切であるとして提供されることも可能である。様々な実施形態の文脈で記述される特定の特徴は、これらの要素なしではその実施形態が動作不能でない限りは、これらの実施形態の必須の特徴とは見なされない。
【0375】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許及び特許出願が具体的かつ個別的に参照により本明細書に組み込まれるように表示された場合と同じ程度に、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願中のいかなる参照の引用または特定も、そのような参照が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクション見出しに使用される限りでは、それらは必ずしも制限的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願のあらゆる優先権書類は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11A
図11B
図11C
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【国際調査報告】