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特表2022-525101in situでの2本鎖核酸の検出、及びその関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】in situでの2本鎖核酸の検出、及びその関連方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6841 20180101AFI20220428BHJP
   C12Q 1/682 20180101ALN20220428BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20220428BHJP
【FI】
C12Q1/6841 Z
C12Q1/682 Z
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554678
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 US2020022010
(87)【国際公開番号】W WO2020185846
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/817,449
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521361338
【氏名又は名称】アドヴァンスド セル ダイアグノスティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マ,シャオ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】トンドネービス,ファルザネ
(72)【発明者】
【氏名】トドロフ,コートニー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ピンチン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QS24
4B063QS34
(57)【要約】
本発明は、in situハイブリダイゼーションアッセイ用を含む、標的2本鎖核酸の検出方法を提供する。本発明は、検出対象の標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞の試料と、そのような試料を含むスライドも提供する。加えて、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本鎖核酸の検出方法であって、
(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、前記標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む、前記接触させることと、
(B)その試料と、前記第1の標的プローブに対する結合部位と、前記第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤とを接触させることと、
(C)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、前記増幅剤が、前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む、前記接触させることと、
(D)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、前記標識プローブが、標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む、前記接触させることと、
(E)前記標的2本鎖核酸に結合した前記標識プローブを検出することによって、前記標的2本鎖核酸を検出することと、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、
(B)前記標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、
(C)前記第1の標的プローブに対する結合部位と、前記第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤であって、前記第1の標的プローブと前記第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされている前記プレ増幅剤と、
(D)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の増幅剤と、
(E)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、前記増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の標識プローブと、
を含む、固定された浸透化細胞の試料であって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記標的2本鎖核酸上に供給される前記試料。
【請求項8】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項7に記載の試料。
【請求項9】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項7または8に記載の試料。
【請求項10】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項7~9のいずれか1項に記載の試料。
【請求項11】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項7~9のいずれか1項に記載の試料。
【請求項12】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項7~9のいずれか1項に記載の試料。
【請求項13】
(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、
(B)前記標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、
(C)前記第1の標的プローブに対する結合部位と、前記第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤であって、前記第1の標的プローブと前記第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされている前記プレ増幅剤と、
(D)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の増幅剤と、
(E)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、前記増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の標識プローブと、
を含むスライドであって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記標的2本鎖核酸上に供給される前記スライド。
【請求項14】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項13に記載のスライド。
【請求項15】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項13または14に記載のスライド。
【請求項16】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項13~15のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項17】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項13~15のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項18】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項13~15のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項19】
標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、
(A)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤と、
(B)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、
(C)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブと、
を含む前記キット。
【請求項20】
前記キットが、標的プローブセットを含み、前記標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、前記標的2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む、請求項19~21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
2本鎖核酸の検出方法であって、
(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、前記標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む、前記接触させることと、
(B)その試料と、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットとを接触させることであって、前記第1のプレ-プレ増幅剤が、前記第1の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第2のプレ-プレ増幅剤が、前記第2の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含む、前記接触させることと、
(C)その試料を複数のプレ増幅剤と接触させることであって、前記プレ増幅剤が、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む、前記接触させることと、
(D)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、前記増幅剤が、前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む、前記接触させることと、
(E)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、前記標識プローブが、標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む、前記接触させることと、
(F)前記標的2本鎖核酸に結合した前記標識プローブを検出することによって、前記標的2本鎖核酸を検出することと、
を含む前記方法。
【請求項24】
前記プレ増幅剤が、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方の前記プレ-プレ増幅剤との結合の融解温度が、1つの前記プレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、
(B)前記標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、
(C)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、前記第1のプレ-プレ増幅剤が、前記第1の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第2のプレ-プレ増幅剤が、前記第2の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、前記プレ-プレ増幅剤が、前記第1の標的プローブと前記第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされている前記プレ-プレ増幅剤セットと、
(D)前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数のプレ増幅剤と、
(E)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の増幅剤と、
(F)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、前記増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の標識プローブと、
を含む、固定された浸透化細胞の試料であって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記標的2本鎖核酸上に供給される前記試料。
【請求項31】
前記プレ増幅剤が、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方の前記プレ-プレ増幅剤との結合の融解温度が、1つの前記プレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い、請求項30に記載の試料。
【請求項32】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項30または31に記載の試料。
【請求項33】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項30~32のいずれか1項に記載の試料。
【請求項34】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項30~33のいずれか1項に記載の試料。
【請求項35】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項30~33のいずれか1項に記載の試料。
【請求項36】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項30~33のいずれか1項に記載の試料。
【請求項37】
(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、
(B)前記標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、
(C)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、前記第1のプレ-プレ増幅剤が、前記第1の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第2のプレ-プレ増幅剤が、前記第2の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、前記プレ-プレ増幅剤が、前記第1の標的プローブと前記第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされている前記プレ-プレ増幅剤セットと、
(D)前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数のプレ増幅剤と、
(E)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、第1のプレ増幅剤と第2のプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の増幅剤と、
(F)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、前記増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の標識プローブと、
を含むスライドであって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記標的2本鎖核酸上に供給される前記スライド。
【請求項38】
前記プレ増幅剤が、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方の前記プレ-プレ増幅剤との結合の融解温度が、1つの前記プレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い、請求項37に記載のスライド。
【請求項39】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項37または38に記載のスライド。
【請求項40】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項37~39のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項41】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項37~40のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項42】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項37~40のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項43】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項37~40のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項44】
標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、
(A)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、前記第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含む前記プレ-プレ増幅剤セットと、
(B)前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤と、
(C)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、
(D)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブと、
を含む前記キット。
【請求項45】
前記キットが、標的プローブセットを含み、前記標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、前記標的2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記プレ増幅剤が、前記第1のプレ-プレ増幅剤と前記第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方の前記プレ-プレ増幅剤との結合の融解温度が、1つの前記プレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い、請求項44~46のいずれか1項に記載のキット。
【請求項48】
細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む、請求項44~47のいずれか1項に記載のキット。
【請求項49】
2本鎖核酸の検出方法であって、
(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、前記標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む、前記接触させることと、
(B)その試料と、前記第1の標的プローブに対する結合部位と、前記第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤とを接触させることと、
(C)その試料と、前記プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤とを接触させることと、
(D)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、前記増幅剤が、前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む、前記接触させることと、
(E)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、前記標識プローブが、標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む、前記接触させることと、
(F)前記標的2本鎖核酸に結合した前記標識プローブを検出することによって、前記標的2本鎖核酸を検出することと、
を含む前記方法。
【請求項50】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、
(B)前記標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、
(C)前記第1の標的プローブに対する結合部位と、前記第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤であって、前記第1の標的プローブと前記第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされている前記プレ-プレ増幅剤と、
(D)前記プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、前記プレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数のプレ増幅剤と、
(E)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の増幅剤と、
(F)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、前記増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の標識プローブと、
を含む、固定された浸透化細胞の試料であって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記標的2本鎖核酸上に供給される前記試料。
【請求項56】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項55に記載の試料。
【請求項57】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項55または56に記載の試料。
【請求項58】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項55~57のいずれか1項に記載の試料。
【請求項59】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項55~57のいずれか1項に記載の試料。
【請求項60】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項55~57のいずれか1項に記載の試料。
【請求項61】
(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、
(B)前記標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、前記2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、
(C)前記第1の標的プローブに対する結合部位と、前記第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤であって、前記第1の標的プローブと前記第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされている前記プレ-プレ増幅剤と、
(D)前記プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、前記プレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数のプレ増幅剤と、
(E)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の増幅剤と、
(F)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、前記増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記複数の標識プローブと、
を含むスライドであって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記標的2本鎖核酸上に供給される前記スライド。
【請求項62】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項61に記載のスライド。
【請求項63】
前記2本鎖核酸が、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである、請求項61または62に記載のスライド。
【請求項64】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項61~63のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項65】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項61~63のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項66】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項61~63のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項67】
標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、
(A)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤と、
(B)前記プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤と、
(C)前記プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、
(D)標識と、前記増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブと、
を含む前記キット。
【請求項68】
前記キットが、標的プローブセットを含み、前記標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、前記標的2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
前記標的プローブセットが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む、請求項67~69のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2019年3月12日に出願した米国特許仮出願第62/817,449号に基づく利益を主張するものであり、この仮出願の内容の全体は、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
〔背景技術〕
本発明は、広くは、核酸の検出、より具体的には、in situでの2本鎖核酸の検出に関するものである。
【0003】
DNA in situ ハイブリダイゼーション(ISH)は、染色体、細胞または組織において、その染色体、細胞及び組織の内容物を保持したまま、所定の配列を検出する目的で広く用いられている分子生物学的技法である(Ratan et al.,Cureus 9(6):e1325.doi:10.7759/cureus.1325(2017))。DNA ISHには、研究及び診断における多くの用途がある(Hu et al.,Biomark.Res.2(1):3.doi:10.1186/2050-7771-2-3(2014)、Ratanらによる2017年の上記文献、Weier et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2(2):109-119(2002))。しかしながら、現在のDNA ISH法は、大きいプローブを使用すること、及びそれよりも短い配列に対する感度が限られていることから、大きな染色体領域(100kb超)しか検出できない。ヒトゲノムの遺伝子サイズの中央値は、24キロベースに過ぎないので、上記のことは、現在のDNA ISHプローブのほぼすべてが、2つ以上の遺伝子を対象範囲とするため、単一遺伝子レベルでの判断が困難となる場合が多いことを意味する。したがって、さらに短い配列を可視化可能にする、より感度と特異性の高い方法は、依然として技術的課題である。
【0004】
すなわち、2本鎖核酸、特に、より小さい領域及びまたは個別の遺伝子の2本鎖核酸をin situで検出する方法に対するニーズが存在する。本発明は、このニーズに対応するとともに、関連する利点も提供する。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、2本鎖核酸の検出方法を提供する。一実施形態では、本発明は、2本鎖核酸の検出方法であって、(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、その標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含むことと、(B)その試料と、第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤とを接触させることと、(C)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、その増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、その標識プローブが、標識と、増幅剤に対する結合部位を含むことと、(E)標的2本鎖核酸に結合した標識プローブを検出することによって、標的2本鎖核酸を検出することを含む方法を提供する。
【0006】
上記のような方法の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0007】
上記のような、2本鎖核酸の検出方法の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0008】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のような方法の別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のような方法のさらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0009】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤と、(D)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(E)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含む、固定された浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給される試料を提供する。
【0010】
上記のような試料の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0011】
上記のような試料の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0012】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のような試料のさらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0013】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤と、(D)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(E)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給されるスライドを提供する。
【0014】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0015】
上記のようなスライドの一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0016】
上記のようなスライドの別の実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のようなスライドのさらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0017】
一実施形態では、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、(A)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤と、(B)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、(C)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブを含むキットを提供する。
【0018】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを含み、その標的プローブセットは、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む。一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0019】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0020】
一実施形態では、本発明は、2本鎖核酸の検出方法であって、(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、その標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含むことと、(B)その試料と、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットとを接触させることであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むことと、(C)その試料を複数のプレ増幅剤と接触させることであって、そのプレ増幅剤が、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、その増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、その標識プローブが、標識と、増幅剤に対する結合部位を含むことと、(F)標的2本鎖核酸に結合した標識プローブを検出することによって、標的2本鎖核酸を検出することを含む方法を提供する。
【0021】
上記のような方法の一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方のプレ-プレ増幅剤との結合の融解温度は、1つのプレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0022】
上記のような方法の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0023】
上記のような方法の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0024】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0025】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、プレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含む、固定された浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給される試料を提供する。
【0026】
上記のような試料の一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方のプレ-プレ増幅剤との結合の融解温度は、1つのプレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0027】
上記のような試料の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0028】
上記のような試料の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0029】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0030】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、プレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、第1のプレ増幅剤と第2のプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給されるスライドを提供する。
【0031】
上記のようなスライドの一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方の領域との結合の融解温度は、1つの領域のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0032】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0033】
上記のようなスライドの一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0034】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0035】
一実施形態では、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、(A)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むプレ-プレ増幅剤セットと、(B)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤と、(C)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、(D)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブを含むキットを提供する。
【0036】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを含み、その標的プローブセットは、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む。一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0037】
上記のようなキットの一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方の領域との結合の融解温度は、1つの領域のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0038】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0039】
一実施形態では、本発明は、2本鎖核酸の検出方法であって、(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、その標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含むことと、(B)その試料と、第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤とを接触させることと、(C)その試料と、プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤とを接触させることと、(D)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、その増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、その標識プローブが、標識と、増幅剤に対する結合部位を含むことと、(F)標的2本鎖核酸に結合した標識プローブを検出することによって、標的2本鎖核酸を検出することを含む方法を提供する。
【0040】
上記のような方法の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0041】
上記のような方法の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0042】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0043】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤と、(D)プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、プレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含む、固定された浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給される試料を提供する。
【0044】
上記のような試料の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0045】
上記のような試料の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0046】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0047】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤と、(D)プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、プレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給されるスライドを提供する。
【0048】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0049】
上記のようなスライドの一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0050】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0051】
一実施形態では、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、(A)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤と、(B)プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤と、(C)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、(D)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブを含むキットを提供する。
【0052】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを含み、その標的プローブセットは、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、標的2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む。一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0053】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0054】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕2本鎖のDNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドを検出するためのプローブデザイン(2本鎖プローブ(ds-プローブ))の概略図を示している。各プローブ対(「Z」及び「Z」として示されている)では、一方のプローブの標的結合領域は、2本鎖のDNA、RNAまたはDNA-RNAハイブリッドのセンス鎖に結合するのに対して、もう一方のプローブの標的結合領域は、アンチセンス鎖に結合する。プローブ対の各プローブが同時に結合することで、プレ増幅剤に対する結合部位が形成される(パネルA及びB)。パネルA及びBは、二者択一の2つの例示的なプローブ配向を示している。パネルCは、同じプローブデザインをBaseScope(商標)のシグナル増幅システム(Baker et al.,Nat.Commun.8(1):1998,doi:10.1038/s41467-017-02295-5(2017))に適合させたものを示している。パネルCには、標的プローブ対の各メンバーがそれぞれ、標的核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖に結合することが示されている。各標的プローブは、別々のプレ-プレ増幅剤に結合する(パネルC)。任意に、1対以上のプローブ対が、同じ2本鎖核酸を標的とするように設計できる。
【0055】
図2〕例示的なin situハイブリダイゼーションアッセイ(左)と、2本鎖核酸を変性させるために、化学変性を用いた修正型アッセイ(右)の工程のフローチャートを示している。簡潔に述べると、標準的なプロトコールは、スライドを60℃でベーキングした後、脱パラフィンして、固形パラフィンを除去することから開始する(「ベーキング+脱パラフィン」)。続いて、スライドを抗原賦活用バッファー(「ER2」)によって88℃で処理して、標的(複数可)を露出させてから、プロテアーゼ消化(プロテアーゼIII)を行う。その後、標的プローブをスライドにハイブリダイゼーションさせ(「プローブ」)、続いて、プレ増幅剤、増幅剤及び標識プローブと逐次ハイブリダイゼーションさせ(「増幅」)、その後、色原体であるFast Redで、標的を検出する(「検出」)。DNAを検出するための修正型プロトコールには、化学変性工程(「化学変性」、2×SSC中の70%ホルムアミドによって80℃で20分)を加える。
【0056】
図3〕線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)のゲノムDNAの検出には、Z1(センス鎖結合)プローブとZ2(アンチセンス鎖結合)プローブの両方が必要であり、それにより、2本鎖DNAに対する特異性が確保されることが示されている。DNAは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
【0057】
図4〕細胞(HEK293)及び組織(大腸癌、卵巣癌、正常な膵臓、正常な乳房)における様々な遺伝子をds-プローブによって検出した結果を示している。DNAは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
【0058】
図5〕A~Cは、シグナル生成複合体(SGC)を用いて、核酸標的を検出する上記方法の概略図を示している。PPAはプレ-プレ増幅剤、PAはプレ増幅剤、AMPは増幅剤、LPは標識プローブである。
【0059】
〔発明を実施するための形態〕
本発明で開示するのは、DNA、2本鎖RNA及び/またはDNA/RNAハイブリッドのような2本鎖核酸の検出方法である。その方法は、細胞内の2本鎖核酸が、高い感度及び高い特異性で検出されるようにする。
【0060】
最近開発されたRNAscope(商標)というRNA ISH技術では、分岐状のDNA様シグナル増幅システムと組み合わせて、特別に設計されたオリゴヌクレオチドプローブ(「ダブルZ」またはZZプローブと称する場合もある)を使用して、標準的な明視野顕微鏡下で、1キロベースほどの小ささのRNAを確実に、単分子の感度で検出する(Anderson et al.,J.Cell. Biochem.117(10):2201-2208(2016)、Wang et al.,J.Mol.Diagn.14(1):22-29(2012))。このようなプローブデザインは、シグナル増幅の特異性を大きく改善させる。それぞれの対における両方のプローブが、それらの想定標的に結合した場合のみに、シグナルの増幅が可能になるからである。しかしながら、RNAscope(商標)をDNAの検出に直接適用すると、望ましくないRNAが検出されることが妨げとなる。RNAscope(商標)プローブは、DNAとRNA標的とを識別できないからである。RNAは、酵素的な方法(例えばRNase A)及び化学的な方法(例えばNaOH)によって排除できるが、これらの工程を加えると、核及び細胞の形態が大きく損なわれ、in situ検出アッセイにおけるDNAの検出または2本鎖核酸の検出がうまくいかない可能性がある。
【0061】
本明細書に記載されているのは、RNAscope(商標)のシグナル増幅システムの原理を用いて、RNAからの干渉なしに、2本鎖のDNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドを特異的に検出するプローブデザインの方策である。この方策は、2本鎖のDNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドのような2本鎖核酸の両方の鎖に結合するように、各プローブ対を設計することによって実現する。1本鎖のRNAまたはDNAには、各対における2つのプローブのうちの1つしか結合せず、1本鎖RNA及び1本鎖DNAの標的のシグナル増幅と検出が効果的に阻止されるので、1本鎖のRNAまたはDNAは、検出されないことになる。このアッセイ策により、非常に短いDNA配列(1kbほどの短い配列)を高い感度及び高い特異性で検出可能になり、分解能が、現行のDNA FISHアッセイよりも約100倍高くなる。さらに、本発明の方法では、2本鎖DNAを選択的に検出することで、2本鎖DNAと1本鎖DNAを識別可能となる。本発明の方法は、2本鎖RNA及び/またはRNA-DNAハイブリッドと、1本鎖DNA及び/またはRNAを識別するのにも適用できる。加えて、この方法では、DNAを検出するときに、RNAが保持されるので、この方法は、細胞または組織切片の同じ試料内のRNA標的とDNA標的を同時に検出するのに用いることができる。
【0062】
本発明は、細胞内の核酸配列、特には2本鎖核酸を高い感度及び高い特異性で検出可能にする方法に関するものである。本発明の方法には、多くの実用性がある(Huらによる2014年の上記文献、Ratanらによる2017年の上記文献、Weierらによる2002年の上記文献)。本発明の方法は例えば、染色体におけるDNA配列の物理的マッピングと、ゲノムの空間的構造の3次元(3D)マッピングと、罹患細胞及び罹患組織における遺伝子のコピー数の増加(重複及び増幅)、喪失(欠失)、ならびに遺伝子の再構成(転座及び融合)の検出と、染色体異常の出生前、出生後及び移植前診断と、がんの診断及び予後診断と、コンパニオン診断と、病原体(例えば、細菌及びウイルス)の検出及び特定に用いることができる。
【0063】
本発明は、シグナルを増幅させるには、各プローブ対が、DNAのような2本鎖核酸の両方の鎖に結合しなければならないようにすることによって、RNAscope(商標)技術の要であるプローブデザインの原理(Wangらによる2012年の上記文献)を拡張して、DNAのような2本鎖核酸を検出するようにしたものである(図1)。RNAscope(商標)のプローブと同様に、各プローブは、標的内の特異的な配列に結合する配列セグメントを含む。2本鎖核酸の検出、例えばDNAの検出の際には、2つのプローブは、標的2本鎖核酸において、対向する鎖上の隣接部位に結合する。両方のプローブが、それぞれの標的部位に同時に結合した場合のみに、シグナル増幅分子(例えば、図1A及び1Bにおけるようなプレ増幅剤、または図1Cにおけるようなプレ-プレ増幅剤)に対する完全な結合部位を形成可能となり、それにより、シグナルの増幅及び検出が達成される。
【0064】
図1では、標的プローブ「Z」は、例えば米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、ならびにWO2007/001986及びWO2007/002006に記載されているように、「Z型」の構成で示されている。図1に示されているZの構成は、その標的プローブのプレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤との結合部位の5’側に標的結合部位を有する(図1A~1C)。図1に記載されているようなこのような構成は、例示的なものに過ぎず、その配向は、逆であることができ、すなわち、標的結合部位は、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤との結合部位の3’側であることができることが理解される。例えば、図1Aに示されているように、プローブ「Z」は、標的結合部位の5’側に、プレ増幅剤との結合部位を有するように示されている。図1Bでは、プローブ「Z」では、標的結合部位が、プレ増幅剤との結合部位の5’側に示されている。図1Cでは、「Z」プローブは同様に、プレ-プレ増幅剤との結合部位の5’側に、標的結合部位を有するように示されている。標的プローブ対は独立して、いずれの配向であることもでき、すなわち、標的プローブ対の一方のメンバーは、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤との結合部位の5’側または3’側に標的結合部位を有することができ、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤の5’側または3’側に結合部位を有する第2のプローブと対をなすことができ、その結果、標的プローブ対の配向の考え得る組み合わせは4つとなることが理解される。
【0065】
また、図1では、例示上の目的で、2本の鎖が、「センス」及び「アンチセンス」として示されている。標的プローブ対が、2本鎖核酸の対向する鎖に結合することが理解される。2本鎖核酸の領域のうち、標的プローブ対が結合する領域は、コード領域、例えば、センス鎖及びアンチセンス鎖を有するDNAのコード領域内の領域である必要はなく、非コード領域内の領域であることもできることがさらに理解される。
【0066】
本発明の方法の有効性は、実施例1に記載されているとともに、図3及び4に示されているように、実験によって示された。BaseScope(商標)のシグナル増幅システム(Bakerらによる2017年の上記文献)を使用するために、同じ方策を適合させ(図1C)、感度と特異性をさらに改善することができる。ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)(Choi et al.,Development 145(12),pii:dev165753,doi:10.1242/dev.165753(2018))のような他のシグナル増幅方法を修正して、本発明で開示されているような、2本鎖プローブデザインの原理を導入することもできる。最新のHCR(HCR v3.0)では、RNAscope(商標)と同様の対にしたプローブデザインが用いられている(Choiらによる2018年の上記文献)。この技法では、ハイブリダイゼーション連鎖反応を開始させるには、本明細書に記載されているように、両方のDNA鎖に結合する、同様の設計のプローブ対を使用でき、それにより、dsDNAに対する特異性が確保される。複数の2本鎖核酸標的、例えば、複数のDNA標的を同時に、同じスライド上で検出するためのマルチプレックス法は、RNAscope(商標)またはBaseScope(商標)の技術のいずれかを用いることで容易になる。すなわち、2本鎖核酸の検出について本明細書で記載されているように、標的プローブ対が標的2本鎖核酸の両方の鎖に結合する標的プローブ構成には、本明細書及び上に記載されているような方法など、in situアッセイで核酸を検出するための様々な方法を適用できることが理解される。
【0067】
本明細書に開示されている、本発明の方法を用いて、様々な種類の細胞及び組織におけるいずれの2本鎖核酸(DNAバイオマーカーなど)も検出することができる。本発明の一実施形態では、ds-プローブデザインをRNAscope(商標)とともに用いて、細胞及び組織内の複数の遺伝子標的を検出する(実施例1及び図4を参照されたい)。本発明の方法を用いて、DNAの様々な構造変化(新生物及び他の疾患で見られる欠失、挿入、遺伝子融合、転座、重複及び増幅など)の検出及び特徴付けを行うことができる。本発明の方法を用いて、2本鎖に対する特異性によって、2本鎖のウイルスDNA及びRNA、ならびに細菌DNAを検出することもできる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「標識プローブ」という用語は、標的分子に直接または間接的に、概ね間接的に結合して、標的を検出可能にする物体を指す。標識プローブ(または「LP」)は、直接または間接的に検出可能なシグナルを供給する標識を1つ以上含む、典型的には1本鎖のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである核酸結合部分を含む。その標識が、そのポリヌクレオチドに共有結合していることもできるし、またはそのポリヌクレオチドが、その標識に結合するように構成されていることもできる。例えば、ビオチン化ポリヌクレオチドは、ストレプトアビジン結合標識と結合できる。標識プローブは例えば、標的核酸に直接ハイブリダイゼーションできる。概して、標識プローブは、標的核酸に逐次にハイブリダイゼーションしている核酸、または標的核酸にハイブリダイゼーションしている1つ以上の他の核酸に逐次にハイブリダイゼーションしている核酸にハイブリダイゼーションできる。すなわち、標識プローブは、標的核酸のポリヌクレオチド配列、特に、標的核酸の一部分と相補的であるポリヌクレオチド配列を含むことができる。あるいは、標識プローブは、本明細書に記載されているように、増幅剤、プレ増幅剤、プレ-プレ増幅剤、シグナル生成複合体(SGC)などにおけるポリヌクレオチド配列と相補的であるポリヌクレオチド配列を少なくとも1つ含むことができる。概して、本発明の実施形態では、標識プローブは、増幅剤に結合する。本明細書で使用する場合、酵素標識を含む標識プローブは、オリゴヌクレオチドのような核酸結合部分と、その核酸結合部分にカップリングした酵素とを含む標識プローブを指す。本明細書で開示されているように、酵素の核酸結合部分へのカップリングは、共有結合であるか、またはビオチン/アビジンのような高親和性結合相互作用もしくはその他の類似の高親和性結合分子によるものであることができる。
【0069】
本明細書で使用する場合、「標的プローブ」は、標的核酸にハイブリダイゼーションして、標識プローブまたはシグナル生成複合体(SGC)の成分、例えば、増幅剤、プレ増幅剤もしくはプレ-プレ増幅剤をその標的核酸に捕捉または結合させることができるポリヌクレオチドである。標的プローブは、標識プローブに直接ハイブリダイゼーションできるか、または標識プローブに逐次にハイブリダイゼーションする1つ以上の核酸にハイブリダイゼーションでき、例えば、標的プローブは、SGCにおける増幅剤、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションできる。すなわち、標的プローブは、標的核酸のポリヌクレオチド配列と相補的である第1のポリヌクレオチド配列と、標識プローブ、増幅剤、プレ増幅剤、プレ-プレ増幅剤などのポリヌクレオチド配列と相補的である第2のポリヌクレオチド配列を含む。概して、本発明の実施形態では、標的プローブは、図1A及び1Bにおけるように、プレ増幅剤に結合するか、または図1Cにおけるように、プレ-プレ増幅剤に結合する。標的プローブは概して1本鎖であり、上記の相補的配列が、対応する標的核酸、標識プローブ、増幅剤、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤とハイブリダイゼーションするのに利用可能なようになっている。本発明の実施形態では、標的核酸が2本鎖である場合、標的プローブは、対として供給され、その場合には、その対の一方のメンバーは、2本鎖核酸の一方の鎖に結合し、もう一方の標的プローブは、2本鎖核酸の反対側の鎖に結合する。
【0070】
本明細書で使用する場合、「増幅剤」は、複数の標識プローブにハイブリダイゼーションできる分子、典型的にはポリヌクレオチドである。典型的には、増幅剤は、複数の同一の標識プローブにハイブリダイゼーションする。増幅剤は、標的核酸、標的プローブ対の標的プローブの少なくとも1つ、標的プローブ対の標的プローブの両方、または標的プローブに結合した核酸(増幅剤、プレ増幅剤もしくはプレ-プレ増幅剤など)にハイブリダイゼーションすることもできる。例えば、増幅剤は、少なくとも1つの標的プローブ及び複数の標識プローブ、またはプレ増幅剤及び複数の標識プローブにハイブリダイゼーションできる。概して、本発明の実施形態では、増幅剤は、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションできる。増幅剤は例えば、直鎖状、フォーク状、櫛状または分岐状の核酸であることができる。すべてのポリヌクレオチドについて本明細書で記載されているように、増幅剤は、修飾ヌクレオチド及び/または非標準的なヌクレオチド間結合、ならびに標準的なデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/またはホスホジエステル結合を含むことができる。好適な増幅剤は例えば、米国特許第5,635,352号、同第5,124,246号、同第5,710,264号、同第5,849,481号及び同第7,709,198号、ならびに米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により援用される。概して、本発明の実施形態では、増幅剤は、プレ増幅剤及び標識プローブに結合する(図5を参照されたい)。
【0071】
本明細書で使用する場合、「プレ増幅剤」は、1つ以上の標的プローブと1つ以上の増幅剤の間の中間結合成分としての役割を果たす分子、典型的にはポリヌクレオチドである。典型的には、プレ増幅剤は、1つ以上の標的プローブ及び複数の増幅剤に同時にハイブリダイゼーションする。例示的なプレ増幅剤は例えば、米国特許第5,635,352号、同第5,681,697号及び同第7,709,198号、ならびに米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号及び同第2017/0101672号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により援用される。概して、本発明の実施形態では、プレ増幅剤は、標的プローブ対のメンバーの両方(図1A、1B及び5Aを参照されたい)、標的プローブ対に結合できるプレ-プレ増幅剤(図5B)、または標的プローブ対に結合できるプレ-プレ増幅剤対のメンバーの両方(図5Cを参照されたい)に結合する。プレ増幅剤は、増幅剤にも結合する(図5を参照されたい)。
【0072】
本明細書で使用する場合、「プレ-プレ増幅剤」は、1つ以上の標的プローブ及び1つ以上のプレ増幅剤の間の中間結合成分としての役割を果たす分子、典型的にはポリヌクレオチドである。典型的には、プレ-プレ増幅剤は、1つ以上の標的プローブ及び複数のプレ増幅剤に同時にハイブリダイゼーションする。例示的なプレ-プレ増幅剤は例えば、2017/0101672に記載されており、これは、参照により援用される。概して、本発明の実施形態では、プレ-プレ増幅剤は、標的プローブ対(図5Bを参照されたい)または標的プローブ対のメンバー(図1C及び5Cを参照されたい)、及びプレ増幅剤(図5Cを参照されたい)に結合する。
【0073】
本明細書で使用する場合、「複数」という用語は、2以上を意味するものとして理解する。すなわち、複数とは例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、28以上、29以上、30以上、31以上、32以上、33以上、34以上、35以上、36以上、37以上、38以上、39以上、40以上、41以上、42以上、43以上、44以上、45以上、46以上、47以上、48以上、49以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上、95以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上もしくは1000以上、または特定の用途で望ましい場合には、これを上回る数を指すことができる。
【0074】
一実施形態では、本発明は、2本鎖核酸の検出方法であって、(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、その標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含むことと、(B)その試料と、第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤とを接触させることと、(C)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、その増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、その標識プローブが、標識と、増幅剤に対する結合部位を含むことと、(E)標的2本鎖核酸に結合した標識プローブを検出することによって、標的2本鎖核酸を検出することを含む方法を提供する。
【0075】
一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0076】
一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0077】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0078】
一実施形態では、本発明は、2本鎖核酸の検出方法であって、(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、その標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含むことと、(B)その試料と、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットとを接触させることであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むことと、(C)その試料を複数のプレ増幅剤と接触させることであって、そのプレ増幅剤が、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、その増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、その標識プローブが、標識と、増幅剤に対する結合部位を含むことと、(F)標的2本鎖核酸に結合した標識プローブを検出することによって、標的2本鎖核酸を検出することを含む方法を提供する。
【0079】
一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方のプレ-プレ増幅剤との結合の融解温度は、1つのプレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0080】
標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0081】
一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0082】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0083】
一実施形態では、本発明は、2本鎖核酸の検出方法であって、(A)2本鎖核酸を1つ以上含む細胞を含む試料を、標的プローブセットと接触させることであって、その標的プローブセットが、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含むことと、(B)その試料と、第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤とを接触させることと、(C)その試料と、プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤とを接触させることと、(D)その試料を複数の増幅剤と接触させることであって、その増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を複数の標識プローブと接触させることであって、その標識プローブが、標識と、増幅剤に対する結合部位を含むことと、(F)標的2本鎖核酸に結合した標識プローブを検出することによって、標的2本鎖核酸を検出することを含む方法を提供する。
【0084】
上記のような方法の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0085】
上記のような方法の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0086】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、標的核酸に特異的である各標的プローブセットは、同じ標的2本鎖核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。このような場合には、標的核酸に特異的な標的プローブセットにおける標的プローブ対は、標的核酸のうちの異なる非重複配列に結合する。同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上有する標的プローブセットを使用する場合には、それらの標的プローブ対に結合する分子、すなわち、プレ増幅剤(図1A、1B及び5Aを参照されたい)またはプレ-プレ増幅剤(図1C、5B及び5Cを参照されたい)のいずれかは、同じ標的プローブセットにおける標的プローブ対において、概ね同じである。すなわち、同じ標的2本鎖核酸に結合する標的プローブ対は、それらの標的プローブ対に結合する、SGCにおける上記分子、すなわち、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤に対する同じ結合部位を含むように設計できる。標的核酸を検出するために、複数の標的プローブ対を使用することにより、同じ標的核酸上で、複数のSGCからなるアセンブリーと関連付けられたさらに高度なシグナルが得られる。いくつかの実施形態では、同じ標的核酸に結合させるのに使用する標的プローブ対の数は、1つの標的当たり1~10対、1~20対、1~30対、1~40対、1~50対、1~60対、1~70対、1~80対、1~90対、1~100対、1~110対、1~120対、1~130対、1~140対、1~150対、1~160対、1~170対、1~180対、1~190対、1~200対の範囲もしくはこれを上回る数の対であるか、またはこれらの間のいずれかの整数分の対、例えば、1対、2対、3対、4対、5対、6対、7対、8対、9対、10対、11対、12対、13対、14対、15対、16対、17対、18対、19対、20対、21対、22対、23対、24対、25対、26対、27対、28対、29対、30対、31対、32対、33対、34対、35対、36対、37対、38対、39対、40対、41対、42対、43対、44対、45対、46対、47対、48対、49対、50対、51対、52対、53対、54対、55対、56対、57対、58対、59対、60対、61対、62対、63対、64対、65対、66対、67対、68対、69対、70対、71対、72対、73対、74対、75対、76対、77対、78対、79対、80対、81対、82対、83対、84対、85対、86対、87対、88対、89対、90対、91対、92対、93対、94対、95対、96対、97対、98対、99対、100対、101対、102対、103対、104対、105対、106対、107対、108対、109対、110対、111対、112対、113対、114対、115対、116対、117対、118対、119対、120対、121対、122対、123対、124対、125対、126対、127対、128対、129対、130対、131対、132対、133対、134対、135対、136対、137対、138対、139対、140対、141対、142対、143対、144対、145対、146対、147対、148対、149対、150対、151対、152対、153対、154対、155対、156対、157対、158対、159対、160対、161対、162対、163対、164対、165対、166対、167対、168対、169対、170対、171対、172対、173対、174対、175対、176対、177対、178対、179対、180対、181対、182対、183対、184対、185対、186対、187対、188対、189対、190対、191対、192対、193対、194対、195対、196対、197対、198対、199対、200対などである。
【0088】
本発明の方法を用いて、所望の標的2本鎖核酸の検出を実現できる。一実施形態では、複数の標的プローブ対によって標的核酸を検出する。このような場合には、複数のSGCからなるアセンブリーが、標的核酸上に得られるように、標的プローブ対は、2つ以上の標的核酸領域に結合するように設計する。複数の標的プローブ対を用いて、同じ標的核酸に結合する場合には、ある1つの標的プローブ対の標的結合部位は、別の標的プローブ対の標的結合部位と重複しないことが理解される。
【0089】
本発明の実施形態では、本発明の方法によって検出する標的核酸は、細胞試料に存在するいずれかの2本鎖標的核酸であることができる。標的2本鎖核酸の検出のための本発明の方法では、標的核酸は独立して、DNA、2本鎖RNAまたはDNA/RNAハイブリッドであることができることが理解される。すなわち、検出対象の標的核酸は、同じ種類の核酸であることができるが、それは必須ではない。加えて、本発明の方法は、RNAscope(商標)またはBaseScope(商標)のような1本鎖核酸の検出方法と組み合わせることができ、その結果、同じ試料内で、2本鎖核酸と1本鎖核酸の両方を検出できるようになる。標的核酸としては、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA、ノンコーディングRNAなどを含むRNA、もしくはDNAなど、またはDNA/RNAハイブリッドが挙げられるが、これらに限らない。標的核酸がRNAである場合には、標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択できることが理解される。すなわち、標的核酸は独立して、1本鎖もしくは2本鎖のいずれかであるDNA、または1本鎖もしくは2本鎖のいずれかであるいずれかの種類のRNA、あるいはDNA/RNAハイブリッドであることができる。
【0090】
本明細書に記載されているように、本発明の方法は概して、2本鎖核酸のin situ検出に関するものである。核酸のin situ検出法は、当業者には周知である(例えば、US2008/0038725、US2009/0081688、Hicks et al.,J.Mol.Histol.35:595-601(2004)を参照されたい)。本明細書で使用する場合、「in situハイブリダイゼーション」または「ISH」とは、直接または間接的に標識した相補的なDNA鎖またはRNA鎖(プローブなど)を用いて、試料、具体的には、組織または細胞の一部または切片(in situ)における所定の核酸(DNAまたはRNAなど)に結合して、その核酸の位置を特定するタイプのハイブリダイゼーションを指す。そのプローブの種類は、2本鎖DNA(dsDNA)、1本鎖DNA(ssDNA)、1本鎖相補的RNA(sscRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA、ミトコンドリアRNA及び/または合成オリゴヌクレオチドであることができる。「蛍光in situハイブリダイゼーション」または「FISH」という用語は、蛍光標識を利用するタイプのISHを指す。「発色in situハイブリダイゼーション」または「CISH」という用語は、発色標識を用いるタイプのISHを指す。ISH、FISH及びCISHの方法は、当業者には周知である(例えば、Stoler,Clinics in Laboratory Medicine 10(1):215-236(1990);In situ hybridization.A practical approach,Wilkinson,ed.,IRL Press,Oxford(1992)、Schwarzacher and Heslop-Harrison,Practical in situ hybridization,BIOS Scientific Publishers Ltd,Oxford (2000)を参照されたい)。
【0091】
細胞内の核酸標的のin situ検出のための本発明の方法(in situハイブリダイゼーションまたはフローサイトメトリーが挙げられるが、これらに限らない)では、標的プローブをハイブリダイゼーションさせる前に、細胞を任意に固定及び/または浸透化する。細胞を固定及び浸透化することで、核酸標的が細胞内に留まるように促すとともに、標的プローブ、標識プローブ、増幅剤、プレ増幅剤、プレ-プレ増幅剤などが細胞内に入って、標的核酸分子に到達するようにできる。その細胞を任意に洗浄して、核酸標的にキャプチャーされなかった物質を除去する。様々な工程のうちのいずれの後も、例えば、未結合の標的プローブを除去するために、標的プローブを核酸標的にハイブリダイゼーションさせた後や、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤及び/または標識プローブを標的プローブにハイブリダイゼーションさせた後などに、細胞を洗浄することができる。核酸のin situ検出のために、細胞を固定及び浸透化する方法、ならびに標的核酸をハイブリダイゼーション、洗浄及び検出する方法も、当該技術分野において周知である(例えば、US2008/0038725、US2009/0081688、Hicks et al.,J.Mol.Histol.35:595-601(2004)、Stoler,Clinics in Laboratory Medicine 10(1):215-236(1990)、In situ hybridization.A practical approach,Wilkinson,ed.,IRL Press,Oxford(1992)、Schwarzacher and Heslop-Harrison,Practical in situ hybridization,BIOS Scientific Publishers Ltd,Oxford(2000)、Shapiro,Practical Flow Cytometry 3rd ed.,Wiley-Liss,New York(1995)、Ormerod,Flow Cytometry,2nd ed.,Springer(1999)を参照されたい)。例示的な固定剤としては、アルデヒド(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)、アセトン、アルコール(メタノール、エタノールなど)が挙げられるが、これらに限らない。例示的な浸透化剤としては、アルコール(メタノール、エタノールなど)、酸(氷酢酸など)、洗浄剤(Triton、NP-40、Tween(商標)20など)、サポニン、ジギトニン、Leucoperm(商標)(BioRad,Hercules,CA)、ならびに酵素(例えば、リゾチーム、リパーゼ、プロテアーゼ及びペプチダーゼ)が挙げられるが、これらに限らない。浸透化は、組織薄切片におけるように、機械的破砕によって行うこともできる。
【0092】
2本鎖核酸のin situ検出の際には、概して、試料を処理して、試料中の2本鎖核酸を変性させ、標的プローブを到達可能にして、標的プローブが、ハイブリダイゼーションによって、標的2本鎖核酸の両方の鎖に結合するようにする。2本鎖核酸を変性させる条件は、当該技術分野において周知であり、熱及び化学物質、例えば、塩基(NaOH)、ホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどによる変性が挙げられる(Wang et al.,Environ.Health Toxicol.29:e2014007(doi:10.5620/eht.2014.29.e2014007)2014、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)を参照されたい)。例えば、NaOH、LiOHもしくはKOH、またはその他の高pH緩衝剤(pH11超)を用いて、DNAのような2本鎖核酸を変性させることができる。加えて、熱による変性方法と、化学物質による変性方法を併用することができる。
【0093】
例示的なアッセイプロトコールは、図2に概説されている。図2に示されているアッセイは、Leica Biosystems BOND RXシステム(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)で用いるためのRNAScope(商標)2.5 LS Redアッセイ(ユーザーマニュアル322150、Advanced Cell Diagnostics,Newark CA)に対応する。簡潔に述べると、標準的なプロトコールは、スライドを60℃でベーキングした後、脱パラフィンして、固形パラフィンを除去することから開始する(「ベーキング+脱パラフィン」)。続いて、スライドを抗原賦活用バッファー(「ER2」)によって88℃で処理して、標的(複数可)を露出させてから、プロテアーゼ消化(プロテアーゼIII)を行う。その後、標的プローブをスライドにハイブリダイゼーションさせ(「プローブ」)てから、プレ増幅剤、増幅剤及び標識プローブと逐次ハイブリダイゼーションさせ(「増幅」)、その後、色原体であるFast Redで、標的を検出する。DNAを検出するための修正型プロトコールには、化学変性工程(「化学変性」、2×SSC中の70%ホルムアミドによって80℃で20分)を加える。
【0094】
このようなin situ検出法は、ガラススライドに固定化した組織標本、血液試料から単離した末梢血単核細胞(PBMC)のような懸濁状のシングルセルなどに対して用いることができる。組織標本としては例えば、組織生検試料が挙げられる。血液試料としては例えば、診断目的で採取した血液試料が挙げられる。血液試料の場合、血液塗抹標本におけるように、血液を直接解析でき、あるいは、血液を処理して、例えば、赤血球細胞の溶解、PBMCまたは白血球の単離、標的細胞の単離などを行って、試料中の細胞のうち、本発明の方法によって解析する細胞が、血液試料中に存在するように、または血液試料から抽出されるようにできる。同様に、組織検体の処理を行うことができ、例えば、組織検体を細かく切断し、物理的または酵素的に処理して、組織を破壊して、個々の細胞または細胞クラスターの状態にすることができる。加えて、望ましい場合には、細胞学的試料を処理して、細胞を単離するか、または細胞クラスターを破壊することができる。したがって、当該技術分野において周知の方法を用いて、組織、血液及び細胞学的試料を入手及び処理することができる。本発明の方法は、病態を示すバイオマーカーである2本鎖核酸標的の有無に基づき、病的細胞の有無を確認する診断用途で用いることができる。
【0095】
本発明の方法を用いて標的2本鎖核酸を検出する際には、いずれかの数の好適な試料を使用できることが、当業者には理解される。本発明の方法で用いる試料は概して、生体試料または組織試料となる。このような試料は、生体対象から得ることができ、個体または何らかの他の生体物質源(生検体、剖検体または鑑定物質など)から採取される生体組織または体液由来の試料が挙げられる。生体試料には、前がん細胞、がん細胞、前がん組織もしくはがん組織を含むか、またはその細胞もしくは組織を含む疑いのある、生体対象の領域から得た試料、例えば組織生検体(細針吸引物、血液試料または細胞学的検体が挙げられる)も含まれる。このような試料は、哺乳動物のような生物から単離した器官、組織、組織断片及び/または細胞であることができるが、これらに限らない。例示的な生体試料としては、細胞培養物(初代細胞培養物を含む)、細胞株、組織、器官、細胞小器官、生体液などが挙げられるが、これらに限らない。追加の生体試料としては、皮膚試料、組織生検体(細針吸引物を含む)、細胞学的試料、便、体液(血液及び/または血清の試料、唾液、精液を含む)などが挙げられるが、これらに限らない。このような試料は、医学または獣医学における診断目的で用いることができる。試料は、他の供給源、例えば、食物、土壌、物体表面など、及び2本鎖核酸の検出が望まれるその他の物質から得ることができる。したがって、本発明の方法は、個体またはその他の供給源から採取した生体試料から、1つ以上の病原体(2本鎖のDNAウイルスまたはRNAウイルス、細菌、真菌、寄生虫のような単細胞生物など)を検出するのに用いることができる。
【0096】
本発明の方法による解析用の細胞学的試料を採取することは、当該技術分野において周知である(例えば、Dey,“Cytology Sample Procurement,Fixation and Processing”in Basic and Advanced Laboratory Techniques in Histopathology and Cytology pp.121-132,Springer,Singapore(2018)、“Non-Gynocological Cytology Practice Guideline”American Society of Cytopathology,Adopted by the ASC executive board March 2,2004を参照されたい)。子宮頸部組織の解析用に、試料(組織生検体及び細胞学的試料を含む)を処理する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Cecil Textbook of Medicine,Bennett and Plum,eds.,20th ed.,WB Saunders,Philadelphia(1996)、Colposcopy and Treatment of Cervical Intraepithelial Neoplasia:A Beginner’s Manual,Sellors and Sankaranarayanan,eds.,International Agency for Research on Cancer,Lyon,France(2003)、Kalaf and Cooper,J.Clin.Pathol.60:449-455(2007)、Brown and Trimble,Best Pract.Res.Clin.Obstet.Gynaecol.26:233-242(2012)、Waxman et al.,Obstet.Gynecol.120:1465-1471(2012)、Cervical Cytology Practice Guidelines TOC,Approved by the American Society of Cytopathology(ASC)Executive Board,November10,2000を参照されたい)。一実施形態では、細胞学的試料は、子宮頸部試料、例えばパップスメアである。一実施形態では、その試料は、細針吸引物である。
【0097】
本発明の特定の実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。本発明の別の特定の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。本発明のさらに別の特定の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0098】
本発明は、2本鎖核酸を検出可能な標識で標識するために、標的2本鎖核酸との間で複合体を構築することに基づくものである。このような複合体は、シグナル生成複合体(SGC、例えばUS20170101672を参照されたい)と称する場合がある。このような複合体、すなわちSGCは、多数の標識を標的2本鎖核酸に結合させる分子の層を構築することによって実現する。
【0099】
本発明の方法では、シグナル生成複合体(SGC)を利用でき、そのSGCは、1つの分子ではなく、複数の分子を含む。このようなSGCは、検出可能なシグナルを増幅して、標的核酸のさらに高感度な検出を行うのに特に有用である。シグナルを増幅するためのこのような方法は例えば、米国特許第5,635,352号、同第5,124,246号、同第5,710,264号、同第5,849,481号及び同第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、ならびにWO2007/001986及びWO2012/054795に記載されており、これらの各々は、参照により、本明細書に援用される。SGCの生成は、RNAscope(商標)アッセイの原理である(米国特許第7,709,198号、同第8,658,361号及び同第9,315,854号、米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号及び同第2016/0201117号、ならびにWO2007/001986及びWO2012/054795(これらの各々は、参照により、本明細書に援用される)を参照されたい)。
【0100】
基本的なシグナル生成複合体(SGC)は、図5Aに示されている(US2009/0081688(参照により、本明細書に援用される)も参照されたい)。図5に「Z」の対として示されている標的プローブ対は、「標的」と表示されている相補的な分子配列にハイブリダイゼーションする。簡略化のために、図5では、標的が1本の線で示されているが、本発明における標的は、図1に、より詳細に示されているように、2本鎖核酸であることが理解される。各標的プローブは、プレ増幅剤分子(PA、緑色で示されている)と相補的な追加の配列を含み、このPAは、安定して結合するためには、標的プローブ対の両方のメンバーに同時にハイブリダイゼーションしなければならない。プレ増幅剤分子は、各標的プローブにハイブリダイゼーションする領域を有する1つのドメインと、増幅剤分子(Amp、黒色で示されている)上の配列とそれぞれ相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメインから構成される。この配列において複数のリピートが存在することで、1つのプレ増幅剤に複数の増幅剤分子がハイブリダイゼーション可能になり、それにより、全体のシグナル増幅が増大する。各増幅剤分子は、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションする領域を有する1つのドメインと、標識プローブ(LP、黄色で示されている)上の配列とそれぞれ相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメインから構成され、このことにより、複数の標識プローブが各増幅剤分子にハイブリダイゼーション可能になり、それにより、全体のシグナル増幅がさらに増大する。各標識プローブは、2つの成分を含む。1つの成分は、標識プローブをハイブリダイゼーションさせるように、増幅剤分子上のリピート配列と相補的なヌクレオチド配列から構成される。このヌクレオチド配列は、第2の成分に連結されており、この第2の成分は、いずれのシグナル生成物であることもでき、そのシグナル生成物としては、本明細書に記載されているように、直接可視化するための蛍光標識もしくは発色標識、直接検出可能な金属同位体、または蛍光、発色もしくはその他の検出可能なシグナルを生成する化学反応を促進できる酵素もしくはその他の化学物質が挙げられる。図5Aでは、標識プローブは、核酸成分を表す線と、シグナル生成成分を表す星印として描かれている。総称して、標的プローブから標識プローブまでのアセンブリーをシグナル生成複合体(SGC)という。
【0101】
図5Bには、増幅分子層、このケースでは、プレ-プレ増幅剤分子(PPA、赤色で示されている)を加えることによって増強されたSGCが示されている。PPAは、一方のドメインでは、両方の標的プローブに結合し、もう一方のドメインでは、複数のプレ増幅剤(PA)に結合する。
【0102】
図5Cには、プレ増幅剤レベルで連携的ハイブリダイゼーションを利用する異なるSGC構造が示されている(US2017/0101672(参照により、本明細書に援用される)を参照されたい)。図5A及び5Bで形成されるSGCと同様に、標的プローブ対は、標的分子配列にハイブリダイゼーションする。各標的プローブは、固有のプレ-プレ増幅剤分子(PPA-1(紫色で示されている)、PPA-2(赤色で示されている))と相補的な追加の配列を含む。2つの独立した分子を使用することで、連携的ハイブリダイゼーションを必要にできる土台が確立される。各プレ-プレ増幅剤分子は、標的プローブのうちの1つにハイブリダイゼーションする領域を有する1つのドメインと、プレ増幅剤分子(PA、緑色で示されている)内の配列と相補的な配列を両方がそれぞれ含む1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメイン、ならびにPPAとPAの結合効率を促進するスペーサー配列から構成される。成長していくSGCに安定して結合するように、各PAは、両方のPPA分子に同時にハイブリダイゼーションしなければならない。各プレ増幅剤分子は、ハイブリダイゼーションできるように、両方のプレ-プレ増幅剤と相補的な配列を含む1つのドメインと、増幅剤分子(AMP、黒色で示されている)上の配列とそれぞれ相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメインから構成される。増幅剤ハイブリダイゼーション配列の複数のリピートにより、複数の増幅剤分子が各プレ増幅剤にハイブリダイゼーション可能になり、それにより、シグナルの増幅がさらに増大する。図の簡略化のために、増幅剤分子は、1つのプレ増幅剤分子にハイブリダイゼーションするように示されているが、増幅剤が、各プレ増幅剤に結合できることが理解される。各増幅剤分子は、標識プローブ(LP、黄色で示されている)内の配列と相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含み、これにより、数個の標識プローブが、各増幅剤分子にハイブリダイゼーション可能になる。各標識プローブは、シグナルを検出させるためのシグナル生成エレメントを含む。
【0103】
上記のように、図1A、1B及び5Aに示されている構成、または図1C及び5Cに示されている構成を用いるかにかかわらず、SGCを構築するには、両方の標的プローブの結合が必要となるように、SGCの成分を設計する。図1A、1B、5A及び5Bの構成の場合には、プレ増幅剤(または図5Bのプレ-プレ増幅剤)は、安定な結合を実現させるには、標的プローブ対のメンバーの両方に結合しなければならない。このことは、標的プローブの両方とプレ増幅剤(またはプレ-プレ増幅剤)との結合の融解温度(Tm)が、1つの標的プローブとプレ増幅剤(またはプレ-プレ増幅剤)との結合のTmよりも高くなるように、かつ1つの標的プローブが結合している状態が、アッセイ条件下では不安定になるように、標的プローブとプレ増幅剤(またはプレ-プレ増幅剤)との結合部位を設計することによって実現する。このデザインは例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、WO2007/001986、WO2007/002006、Wangらによる上記の2012年の文献、Andersonらによる上記の2016年の文献で以前に説明されている。SGCの成分をこの方法で構成させることによって、両方の標的プローブが標的核酸及びプレ増幅剤に結合すると、SGCのアセンブルが行われ、それによって、SGCが偽陽性としてアセンブルされるのが最小限に抑えられることに起因して、バックグラウンドノイズが軽減される。
【0104】
図1C及び5Cの構成の場合には、それぞれ標的プローブ対の両方のメンバーに逐次に結合しているプレ-プレ増幅剤の両方にプレ増幅剤が結合することを必要とすることによって、標的プローブ対のメンバーの両方が標的核酸に結合した場合のみに、SGCが形成されなければならないという要件が実現する。両方のプレ-プレ増幅剤とプレ増幅剤との結合の融解温度(Tm)が、いずれかのプレ-プレ増幅剤単独の融解温度よりも高くなるように、かつプレ-プレ増幅剤のうちの1つがプレ増幅剤に結合している状態が、アッセイ条件下では不安定になるように、プレ-プレ増幅剤とプレ増幅剤との結合部位を設計することによって、上記の要件が実現する。このデザインは、例えば、US20170101672、WO2017/066211及びBakerらによる上記の2017年の文献で以前に説明されている。プレ増幅剤が、両方のプレ-プレ増幅剤に結合しない限り、増幅剤及び標識プローブは、標的核酸に結合したSGCにアセンブルできず、それによって、SGCが偽陽性としてアセンブルされるのが最小限に抑えられることに起因して、バックグラウンドノイズが軽減される。
【0105】
本明細書で開示されているように、本発明は、細胞内の標的核酸の存在を検出するために、標的核酸に結合したシグナル生成複合体(SGC)を構築することに基づく。核酸のハイブリダイゼーション反応を利用して、SGCの成分を標的核酸に結合させるように、SGCを構築するための成分は概して、核酸を含む。適切な領域を選択して、標的核酸に結合する特異的かつ選択的な試薬、具体的には、標的核酸に特異的かつ選択的に結合するオリゴヌクレオチドまたはプローブ、またはSGCの他の成分を設計する方法は、当業者には周知である(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)を参照されたい)。標的プローブは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションするように設計する。適切な選択の標的核酸領域、及び適切な長さの結合剤(オリゴヌクレオチドまたはプローブなど)を用いて、所望の特異性を実現でき、このような選択方法は、当業者には周知である。当業者は、1つの特異的な標的核酸を、別の標的核酸もしくは非標的核酸よりも高度に標的化したり、SGCの成分に結合させたりするのに使用できる適切な試薬(オリゴヌクレオチドまたはプローブなど)を容易に把握するとともに、容易に判定できる。すなわち、「特異的にハイブリダイゼーションする」、「特異的に標識する」及び「特異的に結合する」(またはこれらの文法的な変形状態)とは、標的核酸にハイブリダイゼーション、標識または結合するが、非標的核酸、例えば、標的化の対象となるのが望ましくない別の標的核酸または核酸にはハイブリダイゼーション、標識または結合しないことを指すことが理解される。標的特異的SGCの所定の成分(例えば、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)が、それぞれの成分に結合して、その標的特異的SGCが、特異的標的には結合し、別の標的核酸には結合しないように、適切な選択の固有配列を用いることによって、標的特異的SGCにおいて、同様の特異性を実現できる。
【0106】
本明細書に記載されているように、本発明の実施形態は、標的プローブ対の使用を含み、その標的プローブ対のそれぞれのメンバーは、2本鎖核酸の対向する鎖に結合する。標的プローブ対が、同じプレ増幅剤(図1A、1B及び5A)またはプレ-プレ増幅剤(図5B)に結合する場合には、「Z型」構成と称する場合があるプローブ構成を使用できる。感度を上昇させ、バックグラウンドを軽減するためのこのような構成及びその利点は例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、ならびにWO2007/001986及びWO2007/002006で説明されており、これらの各々は、参照により、本明細書に援用される。米国特許第7,709,198号、ならびに米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号には、加えて、標的プローブ対のような標的プローブの特徴(長さ、配向、ハイブリダイゼーション条件などを含む)の選択に関する詳細が記載されている。当業者は、本明細書、ならびに例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号、WO2007/001986及びWO2007/002006の教示に基づき、好適な構成を容易に特定できる。
【0107】
本明細書に記載されているように、標的プローブ対における標的プローブの標的結合部位は、いずれかの所望の配向及び組み合わせであることができる。例えば、標的プローブ対のメンバーの1つの標的結合部位は、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤の結合部位の5’または3’側であることができ、標的プローブ対のもう一方のメンバーは独立して、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤の結合部位の5’または3’側に標的結合部位を有する配向にできる。
【0108】
別の実施形態では、標的2本鎖核酸の存在を検出するのに用いるSGCは、SGCの1つ以上の成分が連携的にハイブリダイゼーションすることに基づくものである(US20170101672及びWO2017/066211(それぞれ、参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。このような連携的ハイブリダイゼーションは、本明細書ではBaseScope(商標)ともいう。連携的ハイブリダイゼーションの作用では、SGCの2成分間の結合は、2つの結合部位によって媒介され、その2つの部位が同時に結合した場合の融解温度は、1つの部位が単独で結合した場合の融解温度よりも高い(US20170101672及びWO2017/066211を参照されたい)。連携的ハイブリダイゼーションの作用は、US20170101672及びWO2017/066211に記載されているような標的プローブセット構成によって増強できる。
【0109】
本発明の方法及び関連する組成物では、連携的ハイブリダイゼーションを用いて、2本鎖核酸標的のin situ検出(複雑な生理化学的環境及び圧倒的な数の非標的分子の存在により、ノイズが高くなり得る)において、特異性を向上させるとともに、バックグラウンドを軽減することができる。このような連携的ハイブリダイゼーション法を用いて、SGCが標的核酸に結合した場合のみに、標識プローブを結合させる。US20170101672及びWO2017/066211に記載され、その図1に図示されているように、この方法は、SGCの1つ以上の成分における連携的ハイブリダイゼーションの回数を増やすことによって、所望のシグナルノイズ比となるように容易に修正できる。
【0110】
別の実施形態では、連携的ハイブリダイゼーションは、SGCの様々な成分に適用できる。例えば、SGCの成分間の結合は、本明細書に記載されているように、安定な反応にでき、あるいは、その結合は、これも本明細書に記載されているように、連携的ハイブリダイゼーションを必要とする構成にできる。このような場合には、連携的ハイブリダイゼーションが想定される結合成分は、別の成分に結合する2つのセグメントを含むように設計する。
【0111】
すなわち、標的核酸を検出する方法では、標的核酸に特異的に結合するSGCをもたらす検出システムにおける成分のいずれか1つまたは全部の結合反応に、連携的ハイブリダイゼーションを用いることができる。いくつの成分かつどの成分に連携的ハイブリダイゼーションを適用するかは、所望のアッセイ条件、アッセイする試料の種類、所望のアッセイ感度などに基づいて選択できる。連携的ハイブリダイゼーション結合反応のいずれか1つまたはそれらを組み合わせたものを使用して、アッセイの感度及び特異性を向上できる。本発明の実施形態では、連携的ハイブリダイゼーションは、プレ-プレ増幅剤及びプレ増幅剤の間、プレ増幅剤及び増幅剤の間、増幅剤及び標識プローブの間、またはこれらの組み合わせであることができる(例えば、US20170101672及びWO2017/066211を参照されたい)。
【0112】
本明細書で開示されているように、これらの成分は概して、互いに直接結合する。核酸を含む成分の場合、結合反応は概して、ハイブリダイゼーションによるものである。ハイブリダイゼーション反応の場合には、成分間の結合は、直接的な結合である。望ましい場合には、ある1つの成分と別の成分との結合が間接的な結合になるように、中間成分を含めることができ、例えば、中間成分は、2つの他の成分を架橋するための相補的な結合部位を含む。
【0113】
本明細書に記載されているように、各種成分の構成は、所望の安定的または連携的ハイブリダイゼーション結合反応をもたらすように選択できる(例えばUS20170101672を参照されたい)。本明細書において、結合反応が安定な反応として例示されていても、または連携的ハイブリダイゼーションにおけるように、不安定な反応として例示されていても、そのいずれの結合反応も、標的2本鎖核酸が検出される限りは、所望に応じて改変できることが理解される。さらに、使用するアッセイ条件及びハイブリダイゼーション条件に応じて、構成を変更及び選択できることが理解される。概して、結合反応が安定的であることが望ましい場合には、上記成分間の相補的な核酸配列のセグメントは概して、10~50ヌクレオチド以上、例えば16~30ヌクレオチドの範囲(10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチドまたは50ヌクレオチド以上など)である。連携的ハイブリダイゼーション結合反応を用いる場合のように、結合反応が、比較的不安定であることが望ましい場合には、上記成分間の相補的な核酸配列のセグメントは概して、5~18ヌクレオチドの範囲(例えば、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドなど)である。このヌクレオチド長は、安定または不安定なハイブリダイゼーションのためには、アッセイで用いる配列(例えばGC含有率)及び条件に応じて、上記よりも若干短いことも長いことも可能であることが理解される。さらに、本明細書で開示されているように、ロックト核酸(LNA)または架橋型核酸(BNA)のような修飾ヌクレオチドを用いて、修飾塩基において結合強度を向上させることによって、結合セグメントの長さを短縮させることができるのが理解される。すなわち、他の核酸セグメントと相補的である核酸セグメントの長さについては、望ましい場合には、本明細書に記載されている長さをさらに短縮できることが理解される。当業者は、核酸成分間の相互作用が所望のものとなるように、長さ、修飾ヌクレオチドの存在などを含む適切なプローブデザインを容易に判断できる。
【0114】
相補的な配列を含む2つの核酸配列間の結合部位を設計する際には、その相補的な配列は任意に、融解温度差(dT)が最大になるように設計できる。この設計は、当該技術分野において知られている融解温度算出アルゴリズムを用いることによって行うことができる(例えば、SantaLucia,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:1460-1465(1998)を参照されたい)。加えて、ロックト核酸(LNA)または架橋型核酸(BNA)のような人工的な修飾塩基、及び天然の2’-O-メチルRNAは、相補対間の結合強度を高めることが知られている(Petersen and Wengel,Trends Biotechnol.21:74-81(2003)、Majlessi et al.,Nucl.Acids Res.26:2224-2229(1998))。これらの修飾塩基は戦略的に、所望に応じて、SGC成分間の結合部位に導入できる。
【0115】
アプローチの1つは、修飾ヌクレオチド(LNA、BNAまたは2’-O-メチルRNA)を用いることである。各修飾塩基は、融解温度を上昇させることができるので、2つの核酸配列(すなわち、相補的な配列)間の結合領域の長さを実質的に短縮できる。修飾塩基とその相補体との結合強度は強くなり、融解温度差(dT)は大きくなる。さらに別の実施形態は、例えば、ハイブリダイゼーションすることになるシグナル生成複合体(SGC)の核酸成分の相補的な配列内、または2つの核酸成分間で、3つの修飾塩基(例えば、3つのLNA、BNAもしくは2’-O-メチルRNA塩基、または2つもしくは3つの異なる修飾塩基を組み合わせたもの)を用いることである。このような成分は例えば、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブまたは標的プローブ対であることができる。
【0116】
LNAまたはBNAのような修飾塩基は、SGCの所定成分のセグメント、具体的には、核酸成分間の結合を媒介するセグメントで用いることができ、それにより、その塩基と、その相補的塩基との結合強度を向上して、その相補的なセグメントの長さを短縮可能にする(例えば、Petersen and Wengel,Trends Biotechnol.21:74-81(2003)、米国特許第7,399,845号を参照されたい)。Artificially Expanded Genetic Information System(AEGIS、Yang et al.,Nucl.Acids Res.34(21):6095-6101(2006))のように、天然の4つのアルファベットの塩基を拡張させる人工塩基を、SGCの相互作用成分の中の結合部位に組み込むことができる。これらの人工塩基は、この相互作用成分の特異性を向上でき、ひいては、より低ストリンジェントなハイブリダイゼーション反応を可能にして、より高度なシグナルを生成できる。
【0117】
標的プローブ対に関しては、標的核酸の直接隣接するセグメント、または標的プローブ対の標的プローブ結合部位の間に、1個から相当数の塩基を有するセグメントに結合するように、標的プローブ対を設計できる。概して、標的プローブ対は、標的核酸に結合して、概して、標的核酸上の結合部位間に、0~500塩基、例えば、0塩基、5塩基、10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、50塩基、60塩基、70塩基、80塩基、90塩基、100塩基、120塩基、140塩基、160塩基、180塩基、200塩基、220塩基、240塩基、260塩基、280塩基、300塩基、320塩基、340塩基、360塩基、380塩基、400塩基、420塩基、440塩基、460塩基、480塩基もしくは500塩基、またはこれらの間のいずれかの整数の塩基長が存在するように設計する。特定の実施形態では、標的プローブ対に対する結合部位は、0~100塩基長、例えば、0塩基長、5塩基長、10塩基長、15塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、60塩基長、70塩基長、80塩基長、90塩基長、100塩基長、またはこれらの間のいずれかの整数の塩基長である。2本鎖核酸標的に結合する場合には、標的プローブ対のメンバーが、その2本鎖核酸の対向する鎖に結合することが理解される(例えば、図1を参照されたい)。すなわち、2本鎖標的核酸の直接隣接する結合部位、または標的プローブ結合部位間に相当数の塩基がある結合部位に関して言えば、標的プローブ対の結合部位は、対向する鎖上にあることが理解される。標的プローブ対が1本鎖標的核酸に結合する場合とは異なり、2本鎖標的の場合には、標的プローブ対のそれぞれのメンバーにおいて、プローブ対の標的結合部位は、対向する鎖上に存在するので、それらの結合部位は重複し得ることが理解される。両方の標的プローブが、それぞれの標的核酸鎖に同時に結合する際に、立体障害が見られない限りは、重複し得ることが理解される。このような重複が望ましい場合には、当業者は、対向する鎖上での標的結合部位間の許容可能な重複を容易に割り出すことができる。
【0118】
SGCは、複数の標識プローブ(LP)も含む。各LPは、検出可能であるセグメントを含む。検出可能な成分は、LPに直接結合でき、あるいは、LPは、検出可能な成分、すなわち標識を含む別の核酸にハイブリダイゼーションできる。本明細書で使用する場合、「標識」とは、分子の検出を促す部分である。本発明の文脈における一般的な標識には、蛍光標識、発光標識、光散乱標識及び/または比色標識が含まれる。好適な標識としては、酵素部分、蛍光部分、発色部分、放射性核種、基質、補因子、阻害剤、化学発光部分、磁性粒子、希土類金属、金属同位体などが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、標識は、酵素である。例示的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなど、及び各種プロテアーゼが挙げられるが、これらに限らない。他の標識としては、フルオロフォア、ジニトロフェニル(DNP)などが挙げられるが、これらに限らない。標識は、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)、ならびに米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号に記載されているように、当業者には周知である。検出可能な酵素/基質の組み合わせ(Pierce,Rockford IL、Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX、Life Technologies,Carlsbad CA)を含め、多くの標識が市販されており、本発明の方法及びアッセイで使用できる。本発明の特定の実施形態では、酵素は、発色基質または蛍光基質を利用して、本明細書に記載されているように、検出可能なシグナルを生成できる。例示的な標識は、本明細書に記載されている。
【0119】
酵素活性標識または非酵素標識が、それぞれ検出できるものである限りは、いずれの数の酵素標識または非酵素標識も使用できる。本酵素は、検出可能なシグナルを生成し、そのシグナルを利用して、標的核酸を検出できる。特に有用である検出可能なシグナルは、発色シグナルまたは蛍光シグナルである。したがって、標識として用いるのに特に有用な酵素には、発色基質または蛍光基質が利用可能である酵素が含まれる。このような発色基質または蛍光基質を酵素反応によって容易に検出可能な発色生成物または蛍光生成物に変換し、この生成物は、顕微鏡法または分光法を用いて、容易に検出及び/または定量できる。このような酵素は、当業者に周知であり、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられるが、これらに限らない(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照されたい)。周知の発色基質または蛍光基質を有する他の酵素には、様々なペプチダーゼが含まれ、その発色ペプチド基質または蛍光ペプチド基質を用いて、タンパク質切断反応を検出できる。発色基質及び蛍光基質の利用は、細菌の診断でも周知であり、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、6-ホスホ-β-D-ガラクトシド6-ホスホガラクトヒドロラーゼ、β-グルコシダーゼ、α-グルコシダーゼ、アミラーゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、リパーゼなどの利用が挙げられるが、これらに限らず(Manafi et al.,Microbiol.Rev.55:335-348(1991))、既知の発色基質または蛍光基質を有するこのような酵素は、本発明の方法で用いるのに容易に適合させることができる。
【0120】
検出可能なシグナルを生成させるための様々な発色基質または蛍光基質は、当業者に周知であり、市販されている。検出可能なシグナルを生成させるのに利用できる例示的な基質としては、西洋ワサビペルオキシダーゼに対する3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、クロロナフトール(4-CN)(4-クロロ-1-ナフトール)、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)及び3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、アルカリホスファターゼに対する5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-1-リン酸(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ファストレッド(ファストレッドTR/AS-MX)及びp-ニトロフェニルリン酸(PNPP)、β-ガラクトシダーゼに対する1-メチル-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド及び2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-ガラクトピラノシド、β-グルコシダーゼに対する2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-グルコピラノシドなどが挙げられるが、これらに限らない。例示的な蛍光基質としては、アルカリホスファターゼに対する4-(トリフルオロメチル)ウンベリフェリルリン酸、ホスファターゼに対する4-メチルウンベリフェリルリン酸ビス(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、4-メチルウンベリフェリルリン酸ビス(シクロヘキシルアンモニウム)及び4-メチルウンベリフェリルリン酸、西洋ワサビペルオキシダーゼに対するQuantaBlu(商標)及びQuantaRed(商標)、β-ガラクトシダーゼに対する4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、フルオレセインジ(β-D-ガラクトピラノシド)及びナフトフルオレセインジ-(β-D-ガラクトピラノシド)、β-グルコシダーゼに対する3-アセチルウンベリフェリルβ-D-グルコピラノシド及び4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド、ならびにα-ガラクトシダーゼに対する4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドが挙げられるが、これらに限らない。検出可能なシグナルを生成させる例示的な酵素及び基質は例えば、米国公開第2012/0100540号にも記載されている。発色基質または蛍光基質を含む様々な検出可能な酵素基質は、周知であり、市販されている(Pierce,Rockford IL、Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX、Invitrogen,Carlsbad CA、42 Life Science、Biocare)。概して、基質は、標的核酸の部位で沈着する沈殿物を形成する生成物に変換される。他の例示的な基質としては、HRP-Green(42 Life Science)、BiocareのBetazoid DAB、Cardassian DAB、Romulin AEC、Bajoran Purple、Vina Green、Deep Space Black(商標)、Warp Red(商標)、Vulcan Fast Red及びFerangi Blue(Concord CA、biocare.net/products/detection/chromogens)が挙げられる。
【0121】
検出可能な標識として適する例示的な希土類金属及び金属同位体としては、141Pr、142Nd、143Nd、144Nd、145Nd、146Nd、147Sm、148Nd、149Sm、150Nd、151Eu、152Sm、153Eu、154Sm、155Gd、156Gd、158Gd、159Tb、160Gd、161Dy、162Dy、163Dy、164Dy、165Ho、166Er、167Er、168Er、169Tm、170Er、171Yb、172Yb、173Yb、174Yb、175Lu及び176Ybのようなランタニド(III)同位体が挙げられるが、これらに限らない。金属同位体は、例えば、飛行時間型質量分析(TOF-MS)(例えば、FluidigmのHelios及びHyperionシステム、fluidigm.com/systems、South San Francisco,CA)を用いて検出できる。
【0122】
ビオチン-アビジン(またはビオチン-ストレプトアビジン)は、それらの2つの分子の相互の親和性が非常に高いとともに、1つのアビジン/ストレプトアビジン分子が4つのビオチン分子と結合できるという知見に基づく周知のシグナル増幅システムである。抗体は、免疫組織化学法及びISHでのシグナル増幅に広く用いられている。チラミドシグナル増幅(TSA)は、ペルオキシダーゼ活性によって、多数のハプテン化チラミド分子が沈着することに基づいている。チラミンは、フェノール化合物である。固定化された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、少量の過酸化水素の存在下で、標識基質を、極めて反応性の高い短命な中間体に変換する。続いて、活性化した基質分子は、ペルオキシダーゼ結合部位またはペルオキシダーゼ結合部位の近くで、電子の豊富なタンパク質部分(チロシンなど)と非常に速やかに反応して、その部分に共有結合する。この方法で、チラミドにコンジュゲートした多くのハプテン分子をハイブリダイゼーション部位で、in situに導入できる。その後、沈着したチラミド-ハプテン分子を直接または間接的に可視化できる。このような検出システムは例えば、米国公開第2012/0100540号にさらに詳細に記載されている。
【0123】
本明細書に記載されている実施形態では、酵素を利用して、適切な発色基質または蛍光基質を用いる検出可能なシグナルを生成できる。あるいは、標識プローブは、その標識プローブの核酸部分に直接結合された検出可能な標識を有することができることが理解される。例示的な検出可能な標識は、当業者に周知であり、発色標識または蛍光標識が挙げられるが、これらに限らない(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照されたい)。標識として有用である例示的なフルオロフォアとしては、ローダミン誘導体、例えば、テトラメチルローダミン、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、Texas Red(スルホローダミン101)、ローダミン110及びその誘導体(テトラメチルローダミン-5-(または6)など)、リサミンローダミンBなど、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)、フルオレセイン及びその誘導体、ナフタレン(ダンシル(5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホニル)など)、クマリン誘導体(7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、7-ジエチルアミノ-3-[(4’-(ヨードアセチル)アミノ)フェニル]-4-メチルクマリン(DCIA)、Alexa fluor色素(Molecular Probes)など)、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY(商標))及びその誘導体(Molecular Probes、Eugene,OR)、ピレン、スルホン化ピレン(Cascade Blue(商標)など)及びそれらの誘導体(8-メトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸などを含む)、ピリジルオキサゾール誘導体及びダポキシル誘導体(Molecular Probes)、ルシファーイエロー(3,6-ジスルホン酸-4-アミノ-ナフタルイミド)及びその誘導体、CyDye(商標)蛍光色素(Amersham/GE Healthcare Life Sciences;Piscataway NJ)、ATTO390、DyLight395XL、ATTO425、ATTO465、ATTO488、ATTO490LS、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO532、ATTO Rho6G、ATTO542、ATTO550、ATTO565、ATTO Rho3B、ATTO Rho11、ATTO Rho12、ATTO Thio12、ATTO Rho101、ATTO590、ATTO594、ATTO Rho13、ATTO610、ATTO620、ATTO Rho14、ATTO633、ATTO643、ATTO647、ATTO647N、ATTO655、ATTO Oxa12、ATTO665、ATTO680、ATTO700、ATTO725、ATTO740、Cyan500 NHS-Ester(ATTO-TECH,Siegen,Germany)などが挙げられるが、これらに限らない。例示的な発色団としては、フェノールフタレイン、マラカイトグリーン、芳香族ニトロ化合物(ニトロフェニルなど)、ジアゾ色素、ダブシル(4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-スルホニル)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0124】
本明細書で開示されているように、本発明の方法は、複数の標的核酸の同時検出を利用できる。フルオロフォアを標識として用いる場合には、複数の標的核酸の検出に用いるフルオロフォアは、標的核酸の同時検出の場合に、各フルオロフォアが識別可能であるとともに、フルオロフォアを蛍光顕微鏡で同時に検出できるように選択する。このようなフルオロフォアは、標的核酸の別個の標識を同時に検出できるように、発光線のスペクトルが分離されるように選択する。本発明の方法で用いるのに適する識別可能なフルオロフォアを選択する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Johnson and Spence,“Molecular Probes Handbook,a Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,11th ed.,Life Technologies(2010)を参照されたい)。
【0125】
顕微鏡、サイトメトリー(例えば、マスサイトメトリー、飛行時間によるサイトメトリー(CyTOF)、フローサイトメトリー)または分光法のような周知の方法を用いて、それぞれの標的核酸と関連する検出可能な発色シグナル、蛍光シグナルまたは金属シグナルを可視化できる。概して、同じ試料内の核酸標的の検出に、1種類の計器を使用できるように、同じアッセイで、それぞれ異なる標識を使用する場合には、特定のアッセイに合わせて、発色基質、蛍光基質、発色標識、蛍光標識または希土類金属同位体のいずれかを使用する。
【0126】
本発明の方法を用いて、所望の標的2本鎖核酸の検出を実現できる。一実施形態では、複数の標的プローブ対によって標的核酸を検出する。このような場合には、標的プローブ対は、標的2本鎖核酸の、2つ以上の標的核酸領域に結合するように設計する。複数の標的プローブ対を用いて、同じ標的2本鎖核酸に結合する場合には、ある1つの標的プローブ対の標的結合部位は、別の標的プローブ対の標的結合部位と重複しないことが理解される。
【0127】
別の実施形態では、本発明の方法は、標的2本鎖核酸のマルチプレックス検出に適用できる。一実施形態では、本発明の方法は、2つ以上の標的核酸、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個、またはこれを上回る数の標的核酸の検出に適用する。検出できる標的核酸の数は、検出標識によって決まる。蛍光標識では、概して、最大10個の核酸標識を検出できる。質量分析ベースの検出を用いる金属タグ付加プローブでは、標的核酸の数は、最大150個であることができる。当業者は、試料内の2つ以上の標的2本鎖核酸を検出できるように、適切な別個の標識を容易に選択できる。
【0128】
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、2本鎖核酸及び1本鎖核酸の同時検出、例えば、同じ試料内のDNA及びRNAの検出に適用できる。このような場合には、プローブは、RNAのような1本鎖核酸を検出するように(例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号及び同第2017/0101672号を参照されたい)、かつ本明細書に記載されているように、2本鎖核酸を検出するように設計して、同じ試料内で、2本鎖核酸及び1本鎖核酸の両方(DNA及びRNAなど)を検出できるようにできる。
【0129】
本明細書で説明されている本発明は概して、試料内の2本鎖核酸の検出に関するものである。加えて、本発明の方法は、標的核酸と、任意に、試料内、特には、標的核酸と同じ細胞内の他の分子を検出することにも適用できることが理解される。例えば、標的核酸を検出するのに加えて、細胞内で発現されたタンパク質も、同時に検出できる。例えば、標的核酸の検出用として、本明細書に記載されているシステムを含む周知の検出システムのいずれかを用いて、タンパク質に特異的な抗体の結合を検出することによって、細胞内のタンパク質を検出することは、当業者には周知である。標的核酸及びタンパク質の検出は、説明されている(例えば、Schulz et al.,Cell Syst.6(1):25-36(2018)を参照されたい)。
【0130】
2本鎖標的核酸が検出される限りは、本発明は、いずれの所望の順序でも実施できることが理解される。すなわち、本発明の方法では、標的2本鎖核酸が検出される限りは、細胞と、SGCをアセンブルするためのいずれかの成分とを接触させる工程は、いずれの所望の順序でも実施できるし、逐次的にも実施できるし、もしくは同時にも実施できるし、または所望に応じて、いくつかの工程を逐次的に実施できる一方で、他の工程を同時に実施する。さらに、各種の構成、成分のサイズ、アッセイ条件、アッセイ感度などを使用する目的で、所望に応じて、本明細書に開示されている実施形態は独立して、本明細書に開示されている他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。
【0131】
いくつかの場合には、アッセイ工程数を減らすこと、例えば、ハイブリダイゼーション及び洗浄の工程数を減らすことが望ましいことがある。アッセイ工程数を減らす方法の1つは、細胞と接触させる前に、SGCの成分の一部または全部を事前にアセンブルすることである。このように事前にアセンブルするのは、標的核酸と接触させる前に、SGCの成分の一部または全部を併せてハイブリダイゼーションさせることによって行うことができる。
【0132】
本発明は、標的核酸を検出させるいずれの形式でも実施できることが理解される。本明細書では、本発明の実施については、概してin situハイブリダイゼーションを用いて説明してきたが、本発明は、当該技術分野において周知であるように、他の形式で、標的核酸を検出するために、特には、細胞内の標的核酸を検出するために実施できることが理解される。細胞内の標的核酸を検出するのに使用できる方法の1つは、当該技術分野において周知であるように、フローサイトメトリーである(例えば、Shapiro,Practical Flow Cytometry 3rd ed.,Wiley-Liss,New York(1995)、Ormerod,Flow Cytometry,2nd ed.,Springer(1999)を参照されたい)。すなわち、本発明の方法、試料及びキットは、in situハイブリダイゼーションアッセイの形式、またはフローサイトメトリーのような別の形式で使用できる。in situハイブリダイゼーションを含む核酸検出方法をフローサイトメトリーに適用することは、以前に説明されている(例えば、Hanley et al.,PLoS One,8(2):e57002.doi:10.1371/journal.pone.0057002(2013)、Baxter et al.,Nature Protocols 12(10):2029-2049(2017)を参照されたい)。
【0133】
いくつかの場合には、アッセイ工程数を減らすこと、例えば、ハイブリダイゼーション及び洗浄の工程数を減らすことが望ましいことがある。アッセイ工程数を減らす方法の1つは、細胞と接触させる前に、SGCの成分の一部または全部を事前にアセンブルすることである。このように事前にアセンブルするのは、標的核酸と接触させる前に、SGCの成分の一部または全部を併せてハイブリダイゼーションさせることによって行うことができる。
【0134】
本発明は、1つの細胞または複数の細胞を含む試料も提供する。その細胞は、任意に固定できる。その細胞は、任意に浸透化できる。細胞を固定及び/または浸透化することは特に、in situハイブリダイゼーションアッセイに適用可能である。
【0135】
本発明は、一実施形態では、(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤と、(D)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(E)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含む、固定された浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給される試料も提供する。
【0136】
上記のような試料の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0137】
上記のような試料の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0138】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0139】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、プレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含む、固定された浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給される試料を提供する。
【0140】
上記のような試料の一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方のプレ-プレ増幅剤との結合の融解温度は、1つのプレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0141】
上記のような試料の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0142】
上記のような試料の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0143】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のような試料の別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のような試料のさらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0144】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む少なくとも1つの固定された浸透化細胞と、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤と、(D)プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、プレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含む、固定された浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給される試料を提供する。
【0145】
上記のような試料の一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0146】
上記のような試料の一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0147】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0148】
加えて、本発明は、1つの細胞または複数の細胞を含むスライドを提供する。任意に、その1つの細胞または複数の細胞は、スライドに固定されている。任意に、その1つの細胞または複数の細胞は、浸透化されている。特定の実施形態では、スライド上の細胞は、in situアッセイ用に固定及び/または浸透化されている。
【0149】
別の実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤と、(D)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(E)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給されるスライドを提供する。
【0150】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0151】
上記のようなスライドの一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0152】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のようなスライドの別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のようなスライドのさらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0153】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、プレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、第1のプレ増幅剤と第2のプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給されるスライドを提供する。
【0154】
上記のようなスライドの一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方のプレ-プレ増幅剤との結合の融解温度は、1つのプレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0155】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0156】
上記のようなスライドの一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0157】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のようなスライドの別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のようなスライドのさらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0158】
一実施形態では、本発明は、(A)標的2本鎖核酸を含む固定された浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定された浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションした第2のプローブを含む標的プローブ対を含む標的プローブセットと、(C)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤であって、第1の標的プローブと第2の標的プローブにハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤と、(D)プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤であって、プレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数のプレ増幅剤と、(E)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤であって、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の増幅剤と、(F)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブであって、増幅剤にハイブリダイゼーションされている複数の標識プローブを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が標的2本鎖核酸上に供給されるスライドを提供する。
【0159】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0160】
上記のようなスライドの一実施形態では、2本鎖核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドである。
【0161】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0162】
本発明は、本明細書に記載されているようなSGCの成分を含むキットも提供し、そのキットは、標的核酸を含まない。このようなキットは、本明細書に開示されているように、プレ増幅剤(PA)、増幅剤(AMP)及び標識プローブ(LP)、ならびに任意にプレ-プレ増幅剤(PPA)を含むことができる。任意に、そのキットは、特定の1つの標的2本鎖核酸または複数の標的2本鎖核酸に対する標的プローブ(TP)を含むことができる。本発明のキットの成分は任意に、容器に入っていることができ、任意に、そのキットを使用するための説明を提供できる。
【0163】
一実施形態では、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、(A)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤と、(B)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、(C)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブを含むキットを提供する。
【0164】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを含み、その標的プローブセットは、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む。一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0165】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0166】
一実施形態では、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、(A)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、第1のプレ-プレ増幅剤が、第1の標的プローブに対する結合部位を含み、第2のプレ-プレ増幅剤が、第2の標的プローブに対する結合部位を含み、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むプレ-プレ増幅剤セットと、(B)第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む複数のプレ増幅剤と、(C)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、(D)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブを含むキットを提供する。
【0167】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを含み、その標的プローブセットは、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む。一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0168】
上記のようなキットの一実施形態では、プレ増幅剤は、第1のプレ-プレ増幅剤と第2のプレ-プレ増幅剤に対する結合部位を含み、両方のプレ-プレ増幅剤との結合の融解温度は、1つのプレ-プレ増幅剤のみとの結合の融解温度よりも高い。
【0169】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0170】
一実施形態では、本発明は、標的2本鎖核酸を検出するためのキットであって、(A)第1の標的プローブに対する結合部位と、第2の標的プローブに対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤と、(B)プレ-プレ増幅剤に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤と、(C)プレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む複数の増幅剤と、(D)標識と、増幅剤に対する結合部位を含む複数の標識プローブを含むキットを提供する。
【0171】
一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを含み、その標的プローブセットは、標的2本鎖核酸の第1の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第1のプローブと、その標的2本鎖核酸の第2の鎖に特異的にハイブリダイゼーションする第2のプローブを含む標的プローブ対を含む。一実施形態では、標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0172】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0173】
本明細書に示されている、本発明の定義内で、本発明の各種実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない修正が行われることも理解される。したがって、下記の実施例は、例示するためのものであり、本発明を限定しないように意図されている。
【0174】
〔実施例〕
実施例I
2本鎖核酸のIn situ検出
この実施例は、2本鎖核酸のin situ検出を説明するものである。
【0175】
線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)遺伝子を検出するために、本質的には図1Bに示されているように、プローブ対を設計した。HEK293細胞を、センスプローブ、アンチセンスプローブのいずれかまたは両方と接触させ、in situハイブリダイゼーションによって検出した。このアッセイプロトコールの概略は、化学変性を含む改良型LS redアッセイとして、図2に示されている(図2、右パネル)。このアッセイは基本的には、Leica Biosystems BOND RXシステムとともに用いるRNAScope(商標)2.5 LS red(Advanced Cell Diagnostics)の、メーカーによるアッセイ条件(Advanced Cell Diagnosticsマニュアル322150)に従って行った。2本鎖核酸の検出のために、変性工程を、2×SSC中の70%ホルムアミドで、80℃において20分で含めた(20×SSC-3M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)。図3に示されているように、FGFR1のゲノムDNAの検出には、Z1(センス鎖結合)プローブとZ2(アンチセンス鎖結合)プローブの両方が必要となる。センス鎖結合プローブ及びアンチセンス鎖結合プローブの両方を必要とすることで、2本鎖DNAに対する特異性をもたらす。DNAは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
【0176】
追加の例示的遺伝子のIn situ検出を行った。本質的には上記のようにして、HEK293細胞と、FGFR1、腫瘍タンパク質53(TP53、p53ともいう)及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A(CDKN2A)のゲノムDNAを検出するためのセンスプローブ及びアンチセンスプローブとを接触させて、in situハイブリダイゼーションによって検出した。図4の上パネルに示されているように、FGFR1、TP53及びCDKN2Aは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
【0177】
組織試料でも、遺伝子をin situで検出する能力について試験した。本質的には上記のようにして、大腸癌、正常な膵臓及び正常な乳房の組織試料を、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)遺伝子の検出用のセンスプローブ及びアンチセンスプローブと接触させ、in situハイブリダイゼーションによって検出した。卵巣癌の組織試料を、E3ユビキチンタンパク質リガーゼMdm2(MDM2)遺伝子の検出用のセンスプローブ及びアンチセンスプローブと接触させた。図4の下パネルに示されているように、細胞株及び各種組織試料において、各種遺伝子が検出された。DNAは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
【0178】
これらの結果から、2本鎖核酸の検出用プローブ対を用いて、細胞株及び組織試料において、遺伝子をin situで検出できることが示された。
【0179】
本願の全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示内容の全体は、参照により、本発明が属する分野の現状をさらに充分に説明する目的で、本願に援用される。上記の実施例を参照しながら、本発明について説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱しなければ、様々な修正を加えることができることは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0180】
図1】2本鎖のDNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドを検出するためのプローブデザイン(2本鎖プローブ(ds-プローブ))の概略図を示している。各プローブ対(「Z」及び「Z」として示されている)では、一方のプローブの標的結合領域は、2本鎖のDNA、RNAまたはDNA-RNAハイブリッドのセンス鎖に結合するのに対して、もう一方のプローブの標的結合領域は、アンチセンス鎖に結合する。プローブ対の各プローブが同時に結合することで、プレ増幅剤に対する結合部位が形成される(パネルA及びB)。パネルA及びBは、二者択一の2つの例示的なプローブ配向を示している。パネルCは、同じプローブデザインをBaseScope(商標)のシグナル増幅システム(Baker et al.,Nat.Commun.8(1):1998,doi:10.1038/s41467-017-02295-5(2017))に適合させたものを示している。パネルCには、標的プローブ対の各メンバーがそれぞれ、標的核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖に結合することが示されている。各標的プローブは、別々のプレ-プレ増幅剤に結合する(パネルC)。任意に、1対以上のプローブ対が、同じ2本鎖核酸を標的とするように設計できる。
図2】例示的なin situハイブリダイゼーションアッセイ(左)と、2本鎖核酸を変性させるために、化学変性を用いた修正型アッセイ(右)の工程のフローチャートを示している。簡潔に述べると、標準的なプロトコールは、スライドを60℃でベーキングした後、脱パラフィンして、固形パラフィンを除去することから開始する(「ベーキング+脱パラフィン」)。続いて、スライドを抗原賦活用バッファー(「ER2」)によって88℃で処理して、標的(複数可)を露出させてから、プロテアーゼ消化(プロテアーゼIII)を行う。その後、標的プローブをスライドにハイブリダイゼーションさせ(「プローブ」)、続いて、プレ増幅剤、増幅剤及び標識プローブと逐次ハイブリダイゼーションさせ(「増幅」)、その後、色原体であるFast Redで、標的を検出する(「検出」)。DNAを検出するための修正型プロトコールには、化学変性工程(「化学変性」、2×SSC中の70%ホルムアミドによって80℃で20分)を加える。
図3】線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)のゲノムDNAの検出には、Z1(センス鎖結合)プローブとZ2(アンチセンス鎖結合)プローブの両方が必要であり、それにより、2本鎖DNAに対する特異性が確保されることが示されている。DNAは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
図4】細胞(HEK293)及び組織(大腸癌、卵巣癌、正常な膵臓、正常な乳房)における様々な遺伝子をds-プローブによって検出した結果を示している。DNAは、核(青色)内の赤色の斑点として検出された。
図5】A~Cは、シグナル生成複合体(SGC)を用いて、核酸標的を検出する上記方法の概略図を示している。PPAはプレ-プレ増幅剤、PAはプレ増幅剤、AMPは増幅剤、LPは標識プローブである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】