(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】心臓トロポニン活性化因子の多形
(51)【国際特許分類】
C07D 401/06 20060101AFI20220428BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220428BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C07D401/06 CSP
A61K31/4439
A61P9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554692
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020022221
(87)【国際公開番号】W WO2020185983
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504236628
【氏名又は名称】サイトキネティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アザリ, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】チャヴェス, メアリー
(72)【発明者】
【氏名】マリノフスキ, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】メネン, スティーブン エム.
(72)【発明者】
【氏名】リード, ダレン エル.
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB04
4C063CC12
4C063DD08
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC07
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA36
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、化合物Bの遊離塩基結晶形態、結晶塩、及び溶媒和物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu Kα放射線を使用して、8.31、10.20、13.11、14.07、及び16.65±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする化合物Bの遊離塩基無水物結晶形態(「形態I」)。
【請求項2】
Cu Kα放射線を使用して、20.42、21.49、22.57、23.39、25.27、及び25.60±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
Cu Kα放射線を使用して、18.34、19.36、19.84、22.21、24.70、26.31、26.97、28.02、28.49、及び28.91±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項4】
実質的に
図1に示すXRPDパターンを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項5】
示差走査熱量測定によって測定されるとおり、170℃~180℃で吸熱転移を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項6】
前記吸熱転移が175℃±3℃である、請求項5に記載の結晶形態。
【請求項7】
実質的に
図4に示す動的蒸気収着(「DVS」)を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項8】
実質的に
図3に示す熱重量分析(「TGA」)を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項9】
Cu Kα放射線を使用して、6.19、9.96、12.37、15.40、及び16.04±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする化合物Bの遊離塩基一水和物結晶形態(「形態II」)。
【請求項10】
Cu Kα放射線を使用して、16.97、17.65、18.57、19.32、20.10、21.56、23.08、23.44、23.83、24.22、及び27.51±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項11】
Cu Kα放射線を使用して、20.54、24.95、25.51、26.76、28.49、及び29.43±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項10に記載の結晶形態。
【請求項12】
実質的に
図5に示すXRPDパターンを有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項13】
示差走査熱量測定によって測定されるとおり、100℃~115℃で吸熱転移を有する、請求項9~12のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項14】
前記吸熱転移が106℃±3℃である、請求項13に記載の結晶形態。
【請求項15】
実質的に
図8に示す動的蒸気収着(「DVS」)を有する、請求項9~14のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項16】
実質的に
図7に示す熱重量分析(「TGA」)を有する、請求項9~15のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項17】
Cu Kα放射線を使用して、15.37、18.13、20.00、22.45、24.84、26.91、及び27.71±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする化合物B塩酸塩の結晶形態。
【請求項18】
Cu Kα放射線を使用して、14.23、17.83、18.40、18.68、18.94、19.07、22.23、22.45、22.62、23.39、23.94、24.42、25.42、27.39、28.31、29.08、40.01、及び42.09±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項17に記載の結晶形態。
【請求項19】
Cu Kα放射線を使用して、11.50、17.54、19.73、20.71、23.09、29.38、29.80、31.38、34.09、38.09、及び44.39±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項18に記載の結晶形態。
【請求項20】
実質的に
図10に示すXRPDパターンを有する、請求項17~19のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項21】
示差走査熱量測定によって測定されるとおり、140℃~155℃で吸熱転移を有する、請求項17~20のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項22】
前記吸熱転移が148℃±3℃である、請求項21に記載の結晶形態。
【請求項23】
実質的に
図12に示す熱重量分析(「TGA」)を有する、請求項17~22のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項24】
Cu Kα放射線を使用して、14.58、17.36、19.44、及び19.66±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする化合物B及びアセトニトリルの結晶形態。
【請求項25】
Cu Kα放射線を使用して、8.56、11.29、14.38、17.16、17.36、19.44、23.20、24.83、及び25.60±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項24に記載の結晶形態。
【請求項26】
Cu Kα放射線を使用して、11.10、18.59、20.79、22.03、22.66、24.11、24.31、26.36、及び29.06±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項25に記載の結晶形態。
【請求項27】
実質的に
図13に示すXRPDパターンを有する、請求項24~26のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項28】
示差走査熱量測定によって測定されるとおり、100℃~115℃で吸熱転移を有する、請求項24~27のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項29】
前記吸熱転移が108℃±3℃である、請求項28に記載の結晶形態。
【請求項30】
実質的に
図15に示す熱重量分析(「TGA」)を有する、請求項24~29のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項31】
Cu Kα放射線を使用して、16.18、17.54、17.73、19.33、及び24.26±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする化合物B及びジクロロエタンの結晶形態。
【請求項32】
Cu Kα放射線を使用して、10.67、18.31、21.35、25.94、26.43、及び26.59±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項31に記載の結晶形態。
【請求項33】
Cu Kα放射線を使用して、11.91、16.91、20.26、21.00、21.51、25.19、27.68、及び28.13±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項32に記載の結晶形態。
【請求項34】
実質的に
図16に示すXRPDパターンを有する、請求項31~33のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項35】
示差走査熱量測定によって測定されるとおり、90℃~100℃で吸熱転移を有する、請求項31~34のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項36】
前記吸熱転移が95℃±3℃である、請求項35に記載の結晶形態。
【請求項37】
実質的に
図18に示す熱重量分析(「TGA」)を有する、請求項31~36のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項38】
Cu Kα放射線を使用して、14.44、19.32、22.22、及び22.61±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする化合物B及びニトロメタンの結晶形態。
【請求項39】
Cu Kα放射線を使用して、8.27、8.48、16.55、16.95、23.74、及び25.53±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項38に記載の結晶形態。
【請求項40】
Cu Kα放射線を使用して、11.09、15.35、20.46、24.44、24.92、25.92及び29.07±0.2°2θでのXRPDパターンピークをさらに特徴とする、請求項39に記載の結晶形態。
【請求項41】
実質的に
図19に示すXRPDパターンを有する、請求項38~40のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項42】
示差走査熱量測定によって測定されるとおり、105℃~120℃で吸熱転移を有する、請求項38~41のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項43】
前記吸熱転移が112℃±3℃である、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項44】
実質的に
図21に示す熱重量分析(「TGA」)を有する、請求項38~43のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物Bまたはその塩の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項46】
心不全の治療をそれを必要とする対象に行う方法であって、心不全を治療するのに有効な量の、請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物Bもしくはその塩の結晶形態または請求項45に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化合物(1R,3R,5R)-N-((R)-(4-クロロ-2,5-ジフルオロフェニル)(シクロプロピル)メチル)-2-(5-(メチルスルホニル)ニコチノイル)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキサミドは、心臓トロポニン活性化因子として有用である。
【化1】
【0002】
異なる化学的安定性及び物理的安定性を有する化合物Bの様々な新規塩及び結晶形態、ならびにそれらの製剤及び使用が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で提供されるのは、遊離塩基結晶形態、結晶塩、及び結晶溶媒和物など、化合物Bまたはその塩の結晶形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、化合物Bの遊離塩基無水物結晶形態Iである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、化合物Bの遊離塩基一水和物結晶形態IIである。本明細書に提供されるのは、化合物B塩酸塩の結晶形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、化合物B及びアセトニトリルの結晶形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、化合物B及びジクロロエタンの結晶形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、化合物B及びニトロメタンの結晶形態である。
【0004】
また、本明細書に開示の化合物Bまたはその塩の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0005】
それを必要とする対象における心不全を治療する方法であって、心不全を治療するのに有効な量で本明細書に開示の化合物Bまたはその塩の結晶形態を対象に投与することを含む方法がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】遊離塩基無水物結晶形態IのX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示す図である。
【
図2】遊離塩基無水物結晶形態Iの示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラフを示す図である。
【
図3】遊離塩基無水物結晶形態Iの熱重量分析(「TGA」)トレースを示す図である。
【
図4】遊離塩基無水物結晶形態Iの動的蒸気収着(「DVS」)グラフを示す図である。
【
図5】遊離塩基一水和物結晶形態IIのX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示す図である。
【
図6】遊離塩基一水和物結晶形態IIの示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラフを示す図である。
【
図7】遊離塩基一水和物結晶形態IIの熱重量分析(「TGA」)トレースを示す図である。
【
図8】遊離塩基一水和物結晶形態IIの動的蒸気収着(「DVS」)グラフを示す図である。
【
図9】遊離塩基結晶形態I(上)と形態II(下)とのXRPDパターンのオーバーレイを示す図である。
【
図10】結晶性塩酸塩のX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示す図である。
【
図11】結晶性塩酸塩の示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラフを示す図である。
【
図12】結晶性塩酸塩の熱重量分析(「TGA」)トレースを示す図である。
【
図13】アセトニトリル溶媒和物のX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示す図である。
【
図14】アセトニトリル溶媒和物の示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラフを示す図である。
【
図15】アセトニトリル溶媒和物の熱重量分析(「TGA」)トレースを示す図である。
【
図16】ジクロロエタン溶媒和物のX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示す図である。
【
図17】ジクロロエタン溶媒和物の示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラフを示す図である。
【
図18】ジクロロエタン溶媒和物の熱重量分析(「TGA」)トレースを示す図である。
【
図19】ニトロメタン溶媒和物のX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示す図である。
【
図20】ニトロメタン溶媒和物の示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラフを示す図である。
【
図21】ニトロメタン溶媒和物の熱重量分析(「TGA」)トレースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、様々な形態の(1R,3R,5R)-N-((R)-(4-クロロ-2,5-ジフルオロフェニル)(シクロプロピル)メチル)-2-(5-(メチルスルホニル)ニコチノイル)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキサミドを提供する。これは、本明細書で「化合物B」と称し、以下の構造を有する:
【化2】
【0008】
化合物Bの遊離塩基形態、塩形態、及び溶媒和物の実施形態は、以下でさらに詳細に記載するパラメータのうちの1つ以上を特徴とし得る。
【0009】
化合物Bの遊離塩基結晶形態
本明細書で提供されるのは、化合物Bの遊離塩基結晶形態である。実施形態では、化合物Bの遊離塩基結晶形態は、化合物Bの非イオン形態であり得る。実施形態では、化合物Bの遊離塩基結晶形態は、無水であり得る。実施形態では、化合物Bの遊離塩基結晶形態は、一水和物であり得る。
【0010】
遊離塩基無水物結晶形態I
化合物Bの遊離塩基無水物結晶形態I(「形態I」)は、実施例に記載のとおり得られ、Cu Kα放射線を使用して、約8.31、10.20、13.11、14.07、及び16.65±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。形態Iは、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約20.42、21.49、22.57、23.39、25.27、及び25.60±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。形態Iは、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約18.34、19.36、19.84、22.21、24.70、26.31、26.97、28.02、28.49、及び28.91±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。形態Iは、任意により、実施例に示される表1に示されるピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、形態Iは、実質的に
図1に示されるX線粉末回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。XRPDの分野では、スペクトルの相対的なピーク高さは、サンプル前処理及び機器の形状など、複数の要因に依存する一方で、ピーク位置は、実験の詳細に比較的影響を受けないことは周知である。
【0011】
実施例に記載のとおり、形態Iについて示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、約175℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、形態Iは、約170℃~約180℃の範囲で開始する分解吸熱を有するDSCサーモグラフを特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、形態Iは、
図2に示すDSCを特徴とする。
【0012】
形態Iは、熱重量分析(TGA)も特徴とし得る。したがって、形態Iは、約25℃~約35℃の範囲の開始温度で、約0%~約0.5%の範囲の重量損失を特徴とし得る。例えば、形態Iは、約200℃以下で約0.05%の重量損失を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、形態Iは、実質的に
図3に示す熱重量分析を有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特徴が約±5℃変動し得ることを意味する。実施形態では、形態Iは、実質的に
図4に示す動的蒸気収着(「DVS」)を有する。
【0013】
遊離塩基一水和物結晶形態II
化合物Bの遊離塩基一水和物結晶形態II(「形態II」)は、実施例に記載のとおり得られ、Cu Kα放射線を使用して、約6.19、9.96、12.37、15.40、及び16.04±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。形態IIは、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約16.97、17.65、18.57、19.32、20.10、21.56、23.08、23.44、23.83、24.22、及び27.51±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。形態IIは、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約20.54、24.95、25.51、26.76、28.49、及び29.43±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。形態IIは、任意により、実施例に示される表2に示されるピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、形態IIは、実質的に
図5に示されるX線粉末回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。XRPDの分野では、スペクトルの相対的なピーク高さは、サンプル前処理及び機器の形状など、複数の要因に依存する一方で、ピーク位置は、実験の詳細に比較的影響を受けないことは周知である。
【0014】
実施例に記載のとおり、形態IIについて示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、約106℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、形態IIは、約100℃~約115℃の範囲で開始する分解吸熱を有するDSCサーモグラフを特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、形態IIは、
図6に示すDSCを特徴とする。
【0015】
形態IIは、熱重量分析(TGA)も特徴とし得る。したがって、形態IIは、約30℃~約50℃の範囲の開始温度で、約2.6%~約4.6%の範囲の重量損失を特徴とし得る。例えば、形態IIは、約100℃以下で約3.6%の重量損失を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、形態IIは、実質的に
図7に示す熱重量分析を有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特徴が約±5℃変動し得ることを意味する。実施形態では、形態IIは、実質的に
図8に示す動的蒸気収着(「DVS」)を有する。
【0016】
遊離塩基結晶形態I及びIIの明確なXRDピークの要約は、表3で確認することができ、2つの異なる結晶形態のオーバーレイを
図9に示す。
【0017】
化合物Bの塩
結晶性塩酸塩
化合物B塩酸塩(「塩酸塩」)の結晶形態は、実施例に記載のとおり得られ、Cu Kα放射線を使用して、約15.37、18.13、20.00、22.45、24.84、26.91、及び27.71±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。塩酸塩は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約14.23、17.83、18.40、18.68、18.94、19.07、22.23、22.45、22.62、23.39、23.94、24.42、25.42、27.39、28.31、29.08、40.01、及び42.09±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。塩酸塩は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約11.50、17.54、19.73、20.71、23.09、29.38、29.80、31.38、34.09、38.09、44.39±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。塩酸塩は、任意により、実施例に示される表4に示されるピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、塩酸塩は、実質的に
図10に示されるX線粉末回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。
【0018】
実施例に記載のとおり、塩酸塩について示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、約148℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、塩酸塩は、約140℃~約155℃の範囲で開始する分解吸熱を有するDSCサーモグラフを特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、塩酸塩は、
図11に示すDSCを特徴とする。
【0019】
塩酸塩は、熱重量分析(TGA)も特徴とし得る。したがって、塩酸塩は、約70℃~約90℃の範囲の開始温度で、約5%~約7%の範囲の重量損失を特徴とし得る。例えば、塩酸塩は、約200℃以下で約6.0%の重量損失を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、塩酸塩は、実質的に
図12に示す熱重量分析を有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特徴が約±5℃変動し得ることを意味する。
【0020】
化合物B溶媒和物
アセトニトリル溶媒和物
化合物B及びアセトニトリルの結晶形態(アセトニトリル溶媒和物)は、実施例に記載のとおり得られ、Cu Kα放射線を使用して、約14.58、17.36、19.44、及び19.66±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。アセトニトリル溶媒和物は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約8.56、11.29、14.38、17.16、17.36、19.44、23.20、24.83、及び25.60±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。アセトニトリル溶媒和物は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約11.10、18.59、20.79、22.03、22.66、24.11、24.31、26.36、及び29.06±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。アセトニトリル溶媒和物は、任意により、実施例に示される表5に示されるピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、アセトニトリル溶媒和物は、実質的に
図13に示されるX線粉末回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。
【0021】
実施例に記載のとおり、アセトニトリル溶媒和物について示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、約108℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、アセトニトリル溶媒和物は、約100℃~約115℃の範囲で開始する分解吸熱を有するDSCサーモグラフを特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、アセトニトリル溶媒和物は、
図14に示すDSCを特徴とする。
【0022】
アセトニトリル溶媒和物は、熱重量分析(TGA)も特徴とし得る。したがって、アセトニトリル溶媒和物は、約65℃~約85℃の範囲の開始温度で、約5.5%~約6.5%の範囲の重量損失を特徴とし得る。例えば、アセトニトリル溶媒和物は、約200℃以下で約6.5%の重量損失を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、アセトニトリル溶媒和物は、実質的に
図15に示す熱重量分析を有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特徴が約±5℃変動し得ることを意味する。
【0023】
ジクロロエタン溶媒和物
化合物B及びジクロロエタンの結晶形態(ジクロロエタン溶媒和物)は、実施例に記載のとおり得られ、Cu Kα放射線を使用して、約16.18、17.54、17.73、19.33、及び24.26±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。ジクロロエタン溶媒和物は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約10.67、18.31、21.35、25.94、26.43、及び26.59±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。ジクロロエタン溶媒和物は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約11.91、16.91、20.26、21.00、21.51、25.19、27.68、及び28.13±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。ジクロロエタン溶媒和物は、任意により、実施例に示される表6に示されるピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、ジクロロエタン溶媒和物は、実質的に
図16に示されるX線粉末回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。
【0024】
実施例に記載のとおり、ジクロロエタン溶媒和物について示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、約95℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、ジクロロエタン溶媒和物は、約90℃~約100℃の範囲で開始する分解吸熱を有するDSCサーモグラフを特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、ジクロロエタン溶媒和物は、
図17に示すDSCを特徴とする。
【0025】
ジクロロエタン溶媒和物は、熱重量分析(TGA)も特徴とし得る。したがって、ジクロロエタン溶媒和物は、約70℃~約90℃の範囲の開始温度で、約14%~約16%の範囲の重量損失を特徴とし得る。例えば、ジクロロエタン溶媒和物は、約200℃以下で約15%の重量損失を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、ジクロロエタン溶媒和物は、実質的に
図18に示す熱重量分析を有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特徴が約±5℃変動し得ることを意味する。
【0026】
ニトロメタン溶媒和物
化合物B及びニトロメタンの結晶形態(ニトロメタン溶媒和物)は、実施例に記載のとおり得られ、Cu Kα放射線を使用して、約14.44、19.32、22.22、及び22.61±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。ニトロメタン溶媒和物は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約8.27、8.48、16.55、16.95、23.74、及び25.53±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。ニトロメタン溶媒和物は、任意により、Cu Kα放射線を使用して、約11.09、15.35、20.46、24.44、24.92、25.92及び29.07±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とし得る。ニトロメタン溶媒和物は、任意により、実施例に示される表7に示されるピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、ニトロメタン溶媒和物は、実質的に
図19に示されるX線粉末回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。
【0027】
実施例に記載のとおり、ニトロメタン溶媒和物について示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、約112℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、ニトロメタン溶媒和物は、約105℃~約120℃の範囲で開始する分解吸熱を有するDSCサーモグラフを特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、ニトロメタン溶媒和物は、
図20に示すDSCを特徴とする。
【0028】
ニトロメタン溶媒和物は、熱重量分析(TGA)も特徴とし得る。したがって、ニトロメタン溶媒和物は、約75℃~約95℃の範囲の開始温度で、約7.9%~約9.9%の範囲の重量損失を特徴とし得る。例えば、ニトロメタン溶媒和物は、約200℃以下で約8.9%の重量損失を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、ニトロメタン溶媒和物は、実質的に
図21に示す熱重量分析を有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特徴が約±5℃変動し得ることを意味する。
【0029】
医薬組成物
本明細書に記載の化合物Bまたはその塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も本明細書に提供される。実施形態では、担体は賦形剤を含むことができる。
【0030】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される」という語句は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のないヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、安全な医学的判断の範囲内にあり、妥当な利益/リスク比に見合う、リガンド、材料、組成物及び/または剤形を指す。本明細書に記載の組成物は、任意の投与形態用に配合され得る。様々な場合において、組成物は経口投与用である。様々な場合において、組成物は錠剤形態である。
【0031】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬物投与と適合性のある緩衝液、注射用滅菌水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に害を及ぼさないという意味で「許容可能」である必要がある。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えば、乳糖、グルコース、ショ糖;(2)でんぷん、例えば、コーンでんぷん、ジャガイモでんぷん、及び置換または非置換のβ-シクロデキストリン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオバター及び坐剤ワックス;(9)オイル、例えば、ピーナッツオイル、綿実油、ベニバナ油、胡麻油、オリーブオイル、コーンオイル、及びダイズオイルなど;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)医薬製剤中に使用される他の非毒性適合物質が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は非発熱性であり、すなわち、患者に投与されたときに有意な温度上昇を誘発することはない。
【0032】
湿潤剤、乳化剤、及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び芳香剤、防腐剤及び抗酸化剤もまた、賦形剤として組成物中に存在し得る。
【0033】
賦形剤として薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤、及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0034】
医薬組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含み得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確保することができる。糖類などの張性調整剤を組成物中に含むこともまた望ましい場合がある。加えて、注射用剤型の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる剤の包含によって、もたらされ得る。
【0035】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の化合物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を減速させることが望ましい。例えば、非経口投与された化合物の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解させるかまたは懸濁させることによって達成することができる。
【0036】
組成物は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、また細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、及び塩化ナトリウムを組成物に含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0037】
滅菌注射液は、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に必要な量の活性化合物を組み込み、その後濾過滅菌することによって調製できる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上に列挙されたものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法はフリーズドライ(凍結乾燥)であり、これは、以前に滅菌濾過された溶液から有効成分と任意の追加の所望の成分の粉末を生成する。
【0038】
注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に本明細書で提供される化合物のマイクロカプセルまたはナノカプセルマトリックスを形成することによって作製することができる。薬物対ポリマーの比率、及び使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合性のあるリポソーム、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンに薬物を封入することによって調製される。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多形及び塩は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系などの制御放出製剤など、身体からの急速な排除から治療化合物を保護する担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤は、標準的な技術を使用して調製するか、または商業的に、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Incから入手することができる。リポソーム懸濁液(細胞抗原に対するモノクローナル抗体を有する選択された細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,522,811号に記載のとおり、当業者に公知である方法に従って調製することができる。
【0040】
医薬組成物は、投与説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサー内に含むことができる。
【0041】
使用方法
本明細書に開示される化合物Bもしくはその塩の形態、または本明細書に記載の医薬組成物は、これらに限定されないが、急性(または代償性)うっ血性心不全、及び慢性うっ血性心不全、特に収縮性心機能障害に関連する疾患などの心不全の治療または予防に使用され得る。
【0042】
本明細書に開示の化合物Bもしくはその塩の1つ以上の形態、または本明細書に記載の医薬組成物のうちの1つ以上を、心不全の治療または予防に効果的な量で対象に投与することを含む、それを必要とする対象において心不全を治療するかまたは予防する方法も本明細書に提供される。これらに限定されないが、急性(または代償性)うっ血性心不全、及び慢性うっ血性心不全などの心不全の治療または予防のために、化合物B、またはそれらの組成物の開示された形態を使用するための方法がさらに提供される。
【0043】
心不全の治療または予防のための医薬品の製造における、本明細書に開示の化合物Bもしくはその塩の形態、または本明細書に記載の医薬組成物の使用もまた、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本開示は、急性(または代償性)うっ血性心不全及び慢性うっ血性心不全の治療のための医薬品の製造における、本明細書に開示の化合物Bもしくはその塩の形態、または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物Bまたはその塩の形態は、駆出率の低下を伴う心不全(HFrEF)または収縮性心不全、拡張型心筋症、産後心筋症、特発性心筋症、小児HFrEF、化学療法誘発心不全、筋ジストロフィーに関連する心不全、両心室HFrEF、肺高血圧症を伴うHFrEF、右心室機能障害を伴う駆出率が保持された心不全(HFpEF)、右心室機能不全を伴う肺高血圧症、肺高血圧症を伴う強皮症、右心室機能障害、シャーガス病、または心筋炎の治療または予防に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、駆出率の低下を伴う心不全または収縮性心不全、拡張型心筋症、産後心筋症、特発性心筋症、小児HFrEF、化学療法誘発心不全、筋ジストロフィーに関連する心不全、両心室HFrEF、肺高血圧症を伴うHFrEF、右心室機能障害を伴う駆出率が保持された心不全(HFpEF)、右心室機能不全を伴う肺高血圧症、肺高血圧症を伴う強皮症、右心室機能障害、シャーガス病、または心筋炎を治療するかまたは予防する方法であって、本方法は、それを必要とする対象に、本明細書に開示の化合物Bまたはその塩の1つ以上の形態を有効量投与することを含む。駆出率の低下を伴う心不全または収縮性心不全、拡張型心筋症、産後心筋症、特発性心筋症、小児HFrEF、化学療法誘発心不全、筋ジストロフィーに関連する心不全、両心室HFrEF、肺高血圧症を伴うHFrEF、右心室機能障害を伴う駆出率が保持された心不全(HFpEF)、右心室機能不全を伴う肺高血圧症、肺高血圧症を伴う強皮症、右心室機能障害、シャーガス病、または心筋炎の治療または予防のための医薬品の製造における、本明細書に開示の化合物Bまたはその塩の1つ以上の形態の使用もまた、本明細書に提供される。
【0045】
いくつかの実施形態では、拡張型心筋症は、遺伝的拡張型心筋症、周産期心筋症(例えば、分娩後心筋症)、特発性拡張型心筋症、感染後拡張型心筋症、毒素誘発拡張型心筋症、及び栄養不足拡張型心筋症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、小児HFrEFは、単心室(univentricular heartもしくはsingle ventricle)を有する小児患者、またはフォンタンもしくはフォンタン-クロイツァー(Fontan-Kreutzer)処置後の患者で発生する。いくつかの実施形態では、小児HFrEFは、先天性心疾患に関連する小児心不全である。いくつかの実施形態では、化学療法誘発心不全は、化学療法誘発左心室機能不全、放射線誘発心不全、アントラサイクリン治療(これらに限定されないが、ドキソルビシン、エピルビシン、及びダウノルビシンなど)に起因する心不全、抗ERBB2治療(これらに限定されないが、トラスツズマブ及びラパチニブ)に起因する心不全、VEGF阻害剤治療(これらに限定されないが、ベバシズマブ)に起因する心不全、及びチロシンキナーゼ阻害剤治療(これに限定されないが、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ(nilotinim)、ソラフェニブ、及びスニチニブ)に起因する心不全からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーに関連する心不全は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連する心不全、ベッカー型筋ジストロフィーに関連する心不全、筋緊張性ジストロフィー(例えば、シュタイナート病)に関連する心不全、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)などのラミノパシーに関連する心不全(例えば、X連鎖EDMD及び常染色体優性EDMDの両方など)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHMD)に関連する心不全、肢帯型筋ジストロフィーに関連する心不全(例えば、サルコグリカノパチー及び常染色体優性型の疾患)及び先天性筋ジストロフィーに関連する心不全からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、右心室機能不全を伴う肺高血圧症は、HFrEFにおける高い左心室(拡張)圧またはHFpEFにおける高い左心室(拡張)圧に関連している。
【0046】
「治療(Treatment)」または「治療すること(treating)」は、a)疾患または障害を阻害すること;b)疾患または障害の臨床症状の発症を減速させるかまたは阻止すること;及び/またはc)疾患または障害を軽減すること、すなわち、臨床症状の退行を引き起こすことのうちの1つ以上を含む。この用語は、状態または障害の完全及び部分的な低減、ならびに疾患または障害の臨床症状の完全または部分的な低減の両方を網羅する。したがって、本明細書に記載の化合物Bの形態または本明細書に記載の医薬組成物は、既存の疾患もしくは障害の悪化を防止するか、疾患もしくは障害の管理を支援するか、または疾患もしくは障害を低減するかもしくは排除し得る。「予防」、すなわち、疾患または障害の臨床症状を発症させないことには、例えば、慢性心不全などの予防的治療が必要であることが考えられる対象(すなわち、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト)への本明細書に記載の医薬製剤の予防的投与を含む。
【実施例】
【0047】
実施例
方法
X線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折(XRPD)データは、PANalytical X’PertPRO回折計を使用して取得した。サンプルは、周囲温度で5~30度または5~45度(2θ)の連続モードで、45kVで0.0334度のステップサイズで、Cu Kα放射線(1.54Å)により40mAでスキャンした。入射ビーム経路には、0.02radのソラースリット、15mmのマスク、4度の固定散乱防止スリット、及びプログラム可能な発散スリットを備えていた。回折ビームには、0.02radのソラースリット、プログラム可能な散乱防止スリット、及び0.02mmのニッケルフィルタを備えていた。サンプルは低バックグラウンドサンプルホルダーで調製し、2秒の回転時間で回転ステージに配置した。
【0048】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)分析は、TA Instruments Discovery Series熱量計で、50ml/分の乾燥窒素下で圧着されたアルミニウムパン内で30~250℃で10℃/分にて実施した。
【0049】
熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、TA Instruments Discovery Series分析装置で、周囲温度から10℃/分で250℃まで、25ml/分の乾燥窒素下でプラチナパン内で実施した。
【0050】
水分収着
水分収着データは、動的蒸気収着(DVS)分析装置を使用して収集した。吸湿性は、増分5%RHまたは10%RHで0%RH~95%RHまで評価した。吸着及び脱着サイクルのデータを収集した。平衡基準は、5分間で0.002%の重量変化に設定し、最大平衡時間は120分であった。
【0051】
溶解度
固体の過剰分を水に加えて懸濁液を生成し、室温で少なくとも24時間分散させた。懸濁液を濾過した。濾液を超高速液体クロマトグラフィー-紫外線(「UPLC-UV」)で分析し、検量線と比較して結晶形態の溶液濃度を決定した。固体をXRPDで分析して結晶形態を決定した。
【0052】
固体安定性
原薬は、25℃/60%RH、40℃/75%RH、40℃/周囲条件または60℃/周囲条件で保管した。化学的安定性は、超高速液体クロマトグラフィー(「UPLC」)分析のために原薬を50%アセトニトリル水に溶解することにより、各時点で判定した。物理的安定性は、XRPD、DSC及びTGAによって固体を分析することによって判定した。
【0053】
遊離塩基結晶形態I:形態Iは、溶解度スクリーニング中に水(10mg/mL)中のアセトニトリル溶媒和物のスラリーによって最初に調製した。形態Iは、約175℃で融解し、非吸湿性である。形態Iの水への溶解度は、0.009mg/mLである。形態Iは、25℃/60%RH、40℃/75%RH、40℃/周囲条件、または60℃/周囲条件で保管した場合、5週間物理的及び化学的に安定していた。
【0054】
遊離塩基結晶形態Iは、表1のピークを含むXRPDパターンを特徴とした。
【表1】
【0055】
遊離塩基結晶形態II:形態IIは、最初に、製剤スクリーニング中にアセトニトリル溶媒和物を30%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(20mg/mL)に溶解した後、周囲温度で沈殿させることによって調製した。一水和物は、水中でスラリー化されると、遊離塩基結晶形態Iに変換する。
【0056】
遊離塩基結晶形態IIは、表2のピークを含むXRPDパターンを特徴とした。
【表2】
【0057】
本明細書に開示される遊離塩基結晶形態I~IIのそれぞれに固有のXRPDピークを表3に示す。
【表3】
【0058】
塩酸塩の形態:塩酸塩は、最初に、塩酸を含むメチルtert-ブチルエーテル(「MTBE」)中の化合物Bのスラリーから調製した。塩酸塩は、水中でスラリー化されると、遊離塩基結晶形態Iに変換する。
【0059】
塩酸塩形態は、表4のピークを含むXRPDパターンを特徴とした。
【表4-1】
【表4-2】
【0060】
アセトニトリル溶媒和物:化合物Bの合成中にアセトニトリル溶媒和物を調製した。合成の最終ステップは、トリフルオロ酢酸を含む25~70%アセトニトリル/水中での逆相精製であった。
【0061】
アセトニトリル溶媒和物は、表5のピークを含むXRPDパターンを特徴とした。
【表5】
【0062】
ジクロロエタン溶媒和物:ジクロロエタン溶媒和物は、最初に、ハイスループット多形体スクリーニング中に、ジクロロエタン/トルエン1:1またはジクロロエタン/ヘプタン1:1(10mg/mL)から1容量の水で沈殿させることによって調製した。
【0063】
ジクロロエタン溶媒和物は、表6のピークを含むXRPDパターンを特徴とした。
【表6】
【0064】
ニトロメタン溶媒和物:ニトロメタン溶媒和物は、ハイスループット多形体スクリーニング中にニトロメタン(10mg/mL)から周囲温度で蒸発させることによって調製した。
【0065】
ニトロメタン溶媒和物は、表7のピークを含むXRPDパターンを特徴とした。
【表7】
【国際調査報告】