IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トタル マーケティング セルヴィスの特許一覧

特表2022-525117冷却用組成物におけるエステルの使用
<>
  • 特表-冷却用組成物におけるエステルの使用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】冷却用組成物におけるエステルの使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/32 20060101AFI20220428BHJP
   C10M 105/34 20060101ALI20220428BHJP
   C10M 105/36 20060101ALI20220428BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20220428BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20220428BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220428BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
C10M105/32 ZHV
C10M105/34 ZAB
C10M105/36
C10N40:04
C10N40:00 Z
C10N30:06
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554777
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020056186
(87)【国際公開番号】W WO2020182718
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】1902567
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514170019
【氏名又は名称】トタル マーケティング セルヴィス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・シャンパーニュ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB32A
4H104BB33A
4H104EA02A
4H104EA30A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA03
4H104PA50
(57)【要約】
冷却用組成物におけるエステルの使用。本発明は、電気自動車又はハイブリッド車の駆動システムを冷却するための組成物であって、-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び350℃以上の自己発火点を有する少なくとも1種のエステルを含む、組成物の使用に関する。本組成物はまた、駆動システム、特に、電気自動車又はハイブリッド車の電池及び/若しくはパワーエレクトロニクスを冷却することが可能な組成物であって、(i)-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び350℃以上の自己発火点を有する少なくとも1種のエステル、並びに(ii)酸化防止剤、摩擦調整剤、洗剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車又はハイブリッド車の推進システムを冷却するための、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び規格ASTM E659に準拠して測定される350℃以上の自己発火温度を有する少なくとも1種のエステルを含む組成物の使用。
【請求項2】
組成物が、組成物の全質量に対して、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、更により優先的には少なくとも80質量%、又は更には少なくとも90質量%の前記エステルを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
電気自動車又はハイブリッド車の電池及び/又はパワーエレクトロニクス、特にリチウム-イオン電池又はニッケル-カドミウム電池を冷却するための、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記エステルが、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される、150mm2/s以下、特に120mm2/s以下、好ましくは100mm2/s以下、とりわけ20~100mm2/sの範囲、より詳細には40~70mm2/sの範囲の動粘度、及び/又は規格ASTM E659に準拠して測定される、360℃以上、特に、380℃以上、より好ましくは400℃以上の自己発火温度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記エステルが、以下:
- モノエステル、
- 前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステル、及び
それらの混合物
から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記モノエステルが、少なくとも1つの飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのアルコールとの間に形成される、分岐状モノエステルであることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記モノエステルが、1~14個の炭素原子、特に3~14個の炭素原子を含む、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、好ましくは分岐状の、好ましくは飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、1~14個の炭素原子、好ましくは3~14個の炭素原子を含む、分岐状又は非分岐状の、好ましくは飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールから形成されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む前記エステルが、モノエステル、ジエステル又はトリエステルであることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む前記エステルが、少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つのエーテル官能基を含む少なくとも1つのアルコール、好ましくは、特に3~14個の炭素原子を含む少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むアルコールとから形成され、前記炭化水素をベースとする鎖が、少なくとも1個の酸素原子により介在されており、好ましくは前記エステルは、3~14個の炭素原子を含む直鎖状の飽和の炭化水素をベースとする鎖を含有するジカルボン酸と、2~14個の炭素原子を含み、かつ酸素原子によって介在されている直鎖状の飽和の炭化水素をベースとする鎖を含有するモノアルコールとの間で形成されることを特徴とする、請求項5又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記エステルが、以下の式(I):
[化学式1]
G1-C(O)-O-G2 (I)
(式中、
○ G1は、3~14個の炭素原子を特に含有する飽和又は不飽和の、好ましくは分岐状の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ又は複数のR1-O-C(O)-基、好ましくは1つ又は2つのR1-O-C(O)-基を場合により有しており、R1は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、好ましくは1~13個の炭素原子を含む、分岐状の又は非分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、
○ G2は、1~14個の炭素原子を特に含有する直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、好ましくは分岐状の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ又は複数の-O-C(O)-R2基、好ましくは1つ又は2つの-O-C(O)-R2基を場合により有しており、R2は、好ましくは3~13個の炭素原子からなり、1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、分岐状又は非分岐状の、好ましくは分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表す)
に相当することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
○ G1は、特にC3~C13、とりわけC4~C11、より詳細にはC5~C9からなる、好ましくは分岐状のアルキル基を表し、
○ G2は、特にC1~C14、特にC3~C12、より詳細にはC6~C10からなる、直鎖状又は分岐状アルキル基を表す
ことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記エステルが、分岐状の飽和C8~C10、好ましくはC9モノカルボン酸、特に、3,5,5-トリメチルヘキサン酸と、3,5,5-トリメチルヘキサノール又はその異性体等の分岐状の飽和C8~C10、好ましくはC9モノアルコールとの間で形成されるモノエステルであることを特徴とする、請求項1から7、10及び11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
○ G2は、1~14個の炭素原子、特に、3~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含む、好ましくは直鎖状のアルキル鎖を表し、前記鎖は、少なくとも1個の酸素原子、好ましくは1個の酸素原子により介在されており、
○ G1は、R1-O-C(O)-A1-基を表し、A1は、特に、C2~C12、とりわけC3~C10アルキレン基を表し、R1は、請求項10に規定されている通りであり、好ましくは、R1は、G2と同一である
ことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記エステルが、アジピン酸等の直鎖状の飽和C4~C10ジカルボン酸と、酸素原子により介在されている、ブチルグリコール等の直鎖状の飽和C4~C10炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成されるジエステルであることを特徴とする、請求項1から5、8から10及び13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、前記エステルの他に、酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤及びそれらの混合物から、特に酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤及び腐食防止剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
電気自動車又はハイブリッド車の推進システム、特に電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却することが可能な組成物であって、
(i)規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び規格ASTM E659に準拠して測定される350℃以上の自己発火温度を有する、少なくとも1種のエステル、及び
(ii)酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の添加剤
を含む、組成物。
【請求項17】
前記エステルが、請求項4から14のいずれか一項に規定の通りであることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも1種の酸化防止添加剤を含み、前記組成物が、前記エステル、及び1種又は複数の酸化防止添加剤からより詳細には形成されることを特徴とする、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
30質量%超、特に、50%質量%超、とりわけ70質量%超、好ましくは80質量%超、特に90質量%超、より詳細には95質量%超の前記エステルを含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムを冷却するため、より詳細には、電気自動車又はハイブリッド車の電池及び/若しくはパワーエレクトロニクスを冷却するための組成物の分野に関する。本発明は、より詳細には、電池及び/又はパワーエレクトロニクスにおけるその使用に適合可能であり、かつ高温、とりわけ熱暴走の場合に到達される温度において安定性が改善した冷却用組成物を提案することを対象とする。
【背景技術】
【0002】
CO2排気量を低減するためだけでなく、エネルギー消費量も低下させるための国際基準の変更により、自動車製造業者は、燃焼エンジンに対する代替解決策の提案に迫られている。
【0003】
自動車製造業者によって特定された解決策の1つは、燃焼エンジンの電気モータによる置き換えで構成される。したがって、CO2排気量を削減することを目的とする研究により、ある程度の数の自動車会社による電気自動車の開発がもたらされてきた。
【0004】
本発明の目的に関すると、用語「電気自動車」は、推進力の単独手段として電気モータを備えるビヒクルを意味する一方、ハイブリッド車は、推進力の併用手段として、燃焼エンジン及び電気モータを備える。
【0005】
本発明の目的に関すると、用語「推進システム」は、電気自動車の推進に必要な機械部品を含むシステムを意味する。したがって、推進システムは、より詳細には、パワーエレクトロニクスのロータ-固定子組立体(速度調節専用)、トランスミッション及び電池を備える電気モータを包含する。電池、それ自体は、一般に、セルとして知られている一式の蓄電池からなる。
【0006】
一般に、電気自動車又はハイブリッド車では、上で起想される推進システムの様々な部品を潤滑する及び/又は冷却するという制約を満足するための組成物を使用する必要がある。
【0007】
特に、電気推進システムは、電気モータ、パワーエレクトロニクス及び電池によって、それらが機能する間に熱を発生する。発生した熱の量は、環境に向けて通常、消散される熱量よりも多いので、モータ、パワーエレクトロニクス及び電池の冷却を確実に行う必要がある。一般に、冷却は、危険な温度に到達するのを防止するよう、熱を発生する推進システムのいくつかの部品、及び/又は前記システムの熱感度が高い部品、及びとりわけパワーエレクトロニクス及び電池に行われる。
【0008】
慣用的には、場合によりグリコールと組み合わせた、空気又は水を用いて電気モータを冷却する慣例が知られている。しかし、出力の益々大きな、益々小さくなるモータの出現により、これらの冷却方法はもはや十分ではない。更に、とりわけ、急速充電中に、電池によって発生し得る熱は、使用されている従来の方法によって抽出され得ない。
【0009】
したがって、推進システム、特に電池を冷却するための代替方法が、最近、提案されている。
【0010】
この点で、潤滑剤組成物は、潤滑化及び冷却という2倍の機能を果たすよう提案されている。潤滑剤組成物は、基油、例えば、摩擦改変添加剤の潤滑性能を刺激するよう意図されているいくつかの添加剤と一般に組み合わされた、1種又は複数の基油からなるのが従来的である。例として、WO2018/078290は、電気自動車のモータ化システムを冷却及び/又は潤滑するため、2~8個の炭素原子を含むアルキレンオキシドの重合又は共重合により得られる、少なくとも1つのポリアルキレングリコールを含む組成物を使用することを提案している。
【0011】
冷却システムを使用するにも関わらず、例えば、欠陥セルのある場合、又はそうでない場合、その間にセルに穴が開く恐れがある事故過程において、電池が過熱状態になるリスクを完全に排除することは可能ではない。これは、「ランナウェイ効果」として知られている、電池の爆発及び全体的な発火さえもたらす恐れがある。このような過熱は、とりわけ、Li-イオン電池の機能化の状況において恐れられている。したがって、安全性テスト(UN RE100規格)は、電池が上市される前に、電池に行われなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2018/078290
【特許文献2】WO2015/116496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムにおいて、とりわけ電池及び/又はパワーエレクトロニクスにおいて使用されるクーラント流体の、電池が過熱した場合に到達する恐れのある高温でさえも保護される特性が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特に、最大で350℃の温度まで、又は400℃にさえなるシステムが過熱している間に到達され得る高温において安定であり続けると同時に、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムを冷却するため、特に電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却するために使用するのに好適な新規な組成物を細部にわたり提案することを対象としている。
【0015】
したがって、本発明の対象は、電気自動車又はハイブリッド車の推進システム、特に、電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却するための、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び規格ASTM E659に準拠して測定される350℃以上の自己発火温度を有する少なくとも1種のエステルを含む組成物の使用である。
【0016】
用語「エステル」は、少なくとも1つのエステル官能基を含む化合物を意味する。エステルは、とりわけ、モノエステル、ジエステル又はトリエステルとすることができる。
【0017】
本文の続きにおいて、及び特に示さない限り、用語「本発明によるエステル」は、動粘度及び自己発火温度に関して、上述の基準を満足するエステルを意味する。
【0018】
「AIT」として知られている自己発火温度は、いかなる炎も与えられないで、燃焼を自己開始する温度及びそれより高い温度を表す。
【0019】
同様に、用語「冷却用組成物」又は「クーラント組成物」は、本文の続きでは、上で定義されている、本発明による少なくとも1種のエステルを含む、本発明により使用される組成物を意味するよう使用される。
【0020】
有利には、本発明によるエステルは、規格ASTM D445に準拠して25℃で測定される、20mm2/s以下、好ましくは15mm2/s以下、特に、10mm2/s以下の動粘度を有する。
【0021】
更に、本発明によるエステルは、特に、高い自己発火温度、好ましくは360℃以上、より優先的には380℃以上、特に、400℃以上を有利なことに有する。
【0022】
本発明による組成物は、先に定義した1つ又は複数のエステルから、全体が又は一部が形成され得る。好ましくは、本発明による冷却用組成物は、該組成物の全質量に対して、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より優先的には少なくとも70質量%、更により優先的には少なくとも80質量%又は更には少なくとも90質量%の本発明による1つ又は複数のエステルから形成される。
【0023】
好ましくは1種又は複数の酸化防止剤の添加剤の添加が可能であり、ただし、その存在は、本発明により使用されるエステルによってもたらされる特性に影響を及ぼさないことを条件とする。
【0024】
本発明により使用されるエステルは、とりわけ、以下:
- 少なくとも1つの飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成される、モノエステル、好ましくは「分岐状」モノエステル、及び
- 前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステル、及び
それらの混合物
から選択され得る。
【0025】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、以下:
- 本文の続きで「分岐状エステル」と称されるエステルであって、少なくとも1つの飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖、好ましくは分岐状モノエステルを含む少なくとも1つのアルコールとの間に形成される、エステル、
- 前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステル、及び
- それらの混合物
から選択される。
【0026】
好ましくは、本発明による分岐状エステルは、3~14個の炭素原子を含む、好ましくは飽和の、少なくとも1つの分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのカルボン酸から形成される。
【0027】
特に、本発明による分岐状エステルは、特に、3~14個の炭素原子を含む、好ましくは飽和の、少なくとも1つの分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのアルコールから形成され得る。
【0028】
本発明によるエステルであって、前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に、少なくとも1個のヘテロ原子を含む上記エステルは、前記ヒドロキシル官能基の前記酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む少なくとも1つのアルコール、及び/又は前記カルボキシル官能基の前記酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む少なくとも1つのカルボン酸であって、前記ヘテロ原子が酸素及び窒素から選択される、上記の少なくとも1つのカルボン酸から形成され得る。
【0029】
特に、前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、本発明によるエステルは、少なくとも1つのエーテル官能基を含む少なくとも1つのアルコールから、好ましくは、特に3~14個の炭素原子を含む少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素をベースとする鎖を含む、少なくとも1つのアルコールから形成され、前記炭化水素をベースとする鎖は、少なくとも1個の酸素原子により介在されている。
【0030】
本発明によるエステルは、有利には、モノエステル、ジエステル又はトリエステルである。エステルは、好ましくは、モノエステル又はジエステルである。
【0031】
特定の実施形態によれば、本発明によるエステルは、モノエステル、特に、上で定義されている分岐状モノエステルである。
【0032】
別の特定の実施形態によれば、本発明によるエステルは、前記エステル官能基に結合されている酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、エステルである。エステルは、モノエステル、ジエステル又はトリエステル、好ましくはジエステルとすることができる。
【0033】
好ましくは、本発明によるエステルは、上で定義した分岐状モノエステル、又はジエステルであって、該ジエステルのエステル官能基に結合している酸素原子以外に、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは2個のヘテロ原子、特に2個の酸素原子を含む上記のジエステルである。
【0034】
したがって、特に好ましい実施変形形態によれば、本発明による冷却用組成物は、好ましくは3~14個の炭素原子を含む、好ましくは分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、好ましくは1~14個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成される、少なくとも1つのモノエステルを含む。
【0035】
有利には、本発明によるモノエステルは、分岐状飽和C9モノカルボン酸と、3,5,5-トリメチルヘキサン酸3,5,5-トリメチルヘキシル等の分岐状飽和C9モノアルコールとの間で形成されるモノエステルとすることができる。
【0036】
特に、本発明による組成物は、分岐状飽和C9モノカルボン酸、例えば、3,5,5-トリメチルヘキサン酸と、分岐状飽和C8~C10モノアルコールの混合物、好ましくは分岐状飽和C9モノアルコール異性体の混合物との間で形成される、モノエステルの混合物を含むことができる。
【0037】
本発明の別の変形形態によれば、本発明による冷却用組成物は、好ましくは3~14個の炭素原子を含む直鎖状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むジカルボン酸と、少なくとも1個のヘテロ原子により、好ましくは酸素原子により介在されている、好ましくは2~14個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成される、少なくとも1つのジエステルを含む。
【0038】
有利には、本発明によるジエステルは、直鎖状の飽和C4~C10ジカルボン酸と、酸素原子により介在された直鎖状の飽和C4~C10炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成され得る。ジエステルは、例えば、アジピン酸ジブチルグリコールとすることができる。
【0039】
後の実施例から現れる通り、発明者らは、本発明によるエステルは、電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却するため、それらの使用に好適な、良好な粘度特性と、特に高い自己発火温度とを有利なことに併せ持つことが可能となり、したがって、これにより、特に、電池が過熱した場合に、発火に耐性となる、冷却用組成物の安定性が確実になることを見出した。
【0040】
したがって、有利には、本発明によるエステルは、規格ASTM D445に準拠して25℃で測定される、20mm2/s以下、好ましくは15mm2/s以下、特に、10mm2/s以下の動粘度を有する。
【0041】
更に、本発明によるエステルは、特に高い自己発火温度、好ましくは360℃以上、より優先的には380℃以上、特に400℃以上を有利なことに有する。
【0042】
したがって、有利には、特に、上で定義されている本発明による1つ又は複数のエステルの使用により、とりわけ電池及び/又はパワーエレクトロニクスの、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムにおけるその使用に好適な粘度、及び発火に対する優れた耐性を同時に有する、冷却用組成物を利用することが可能である。
【0043】
発明による冷却用組成物は、より詳細には、電気自動車の電池パック、とりわけLi-イオン又はニッケル-カドミウム(Ni-Cd)電池と直接接触して置かれることが意図され得る。
【0044】
本発明による冷却用組成物は、セルが臨界温度に到達するのを防止し、したがって、熱暴走を受けるのを防止することによって、前記電池パックの熱暴走を抑制又は防止することが可能となる。
【0045】
本発明により使用される冷却用組成物はまた、優れた電気絶縁特性を有しており、これにより、ハイブリッド車及び電気自動車に使用するのに特に好適となる。絶縁特性は、とりわけ規格ASTM D1169に準拠して、冷却用組成物の電気抵抗を測定することによって評価され得る。
【0046】
本発明はまた、電気自動車又はハイブリッド車、特に電池及び/又はパワーエレクトロニクスの推進システムの、少なくとも1つの部品を冷却するための方法であって、少なくとも前記部品、特に、前記電池、例えば、リチウム-イオン電池又はニッケル-カドミウム電池を、既に定義した本発明による少なくとも1種のエステルを含む組成物に接触させて配置する少なくとも1つの工程を含む、方法に関する。
【0047】
その態様の別のものによれば、本発明はまた、電気自動車又はハイブリッド車の推進システム、特に電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却することが可能な組成物であって、
(i)先に定義した、本発明による少なくとも1種のエステル、及び
(ii)酸化防止剤、消泡剤、流動点改善剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤、摩擦調整剤、洗剤、極圧添加剤、分散剤及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の添加剤
を含む、組成物に関する。
【0048】
有利には、本発明による組成物は、冷却特性及び潤滑特性を併せ持つことができる。
【0049】
したがって、特定の実施形態によれば、電気自動車又はハイブリッド車の推進システム中において使用される本発明による組成物により、その冷却機能の他に、例えば、電気自動車又はハイブリッド車における、トランスミッションを潤滑するための、推進システムの部品の潤滑化に関する、良好な特性を利用することが可能となる。
【0050】
本発明によるエステルの使用の、他の特徴、変形形態及び利点は、以下に続く、本発明の非限定例として示されている、説明及び実施例を一読すると一層明確に現れる。
【0051】
本文の続きにおいて、表現「・・・と・・・との間(between... and...)」、「・・・と・・・との間の範囲にある(ranging from... to...)」及び「・・・と・・・との間で様々である(varying from... to...)」は、等価であり、特に明記されていない限り、限定が含まれていることを意味することが意図される。
【0052】
特に示さない限り、表現「を1つ含む」は、「少なくとも1つを含む」として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】電気自動車又はハイブリッド車の推進システムの概略を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明によるエステル
上記の通り、本発明により使用されるエステルは、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び規格ASTM E659に準拠して測定される350℃以上の自己発火温度を有する。
【0055】
好ましくは、本発明によるエステルは、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される、150mm2/s以下、特に、120mm2/s未満、好ましくは100mm2/s以下、とりわけ20~100mm2/sの範囲、より詳細には40~70mm2/sの範囲の動粘度を有する。
【0056】
特定の実施形態によれば、本発明によるエステルは、有利には、規格ASTM D445に準拠して25℃で測定される、20mm2/s以下、好ましくは15mm2/s以下、特に、10mm2/s以下の動粘度を有する。
【0057】
同様に、本発明により使用されるエステルは、規格ASTM E659に準拠して測定される、360℃以上、特に、380℃以上、より詳細には400℃以上の自己発火温度を有利なことに有する。
【0058】
本発明によるエステルは、好ましくは、モノエステル、ジエステル又はトリエステル、好ましくはモノエステル又はジエステルである。エステルは、好ましくは、モノカルボン酸とモノアルコールとの間に形成されるモノエステルとすることができる。エステルはまた、ジカルボン酸とモノアルコールとの間に形成されるジエステル、又はモノカルボン酸とジオールとの間に形成されるジエステルとすることができる。
【0059】
本発明により使用されるエステルは、飽和又は不飽和であってよく、好ましくは飽和である。
【0060】
特に好ましい実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、以下:
- 少なくとも1つの飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成される、モノエステル、好ましくは「分岐状」モノエステル、及び
- 前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステル、及び
それらの混合物
から選択される。
【0061】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、以下:
- 分岐状エステル、特に、少なくとも1つの飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのアルコールとの間に形成される、分岐状モノエステル、
- 前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステル、及び
- それらの混合物
から選択される。
【0062】
本発明の目的に関すると、用語「カルボン酸」は、少なくとも1つのカルボキシル官能基を含む化合物を意味することが意図されている。カルボン酸は、モノカルボン酸であってもよく、又はポリカルボン酸であってもよい。カルボン酸は、一層優先的には、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸である。好ましくは、カルボン酸は、モノカルボン酸である。
【0063】
本発明の目的に関すると、用語「アルコール」は、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含む化合物を意味することが意図されている。アルコールは、モノアルコールであってもよく、又はポリオールであってもよい。好ましくは、アルコールは、モノアルコール、ジオール又はトリオールである。好ましくは、アルコールは、モノアルコールである。
【0064】
本発明の目的に関すると、用語「炭化水素をベースとする鎖」は、直鎖状若しくは分岐状の、飽和又は不飽和アルキル鎖或いはアルキレン鎖を意味するように意図されている。炭化水素をベースとする鎖は、1個又は複数のヘテロ原子、特に、1個又は複数の酸素原子により場合により介在されていてもよい。好ましくは、炭化水素をベースとする鎖は、炭素原子及び水素原子からなる、直鎖状若しくは分岐状の、飽和又は不飽和アルキル鎖或いはアルキレン鎖である。炭化水素をベースとする鎖は、1~14個の炭素原子、特に、3~10個の炭素原子、及びとりわけ4~9個の炭素原子を好ましくは含む。
【0065】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、モノカルボン酸とモノアルコールとの間に形成されるモノエステルである。
【0066】
本発明によるモノエステルは、より詳細には、好ましくは1~14個の炭素原子、特に3~14個の炭素原子、とりわけ5~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分岐状の飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、好ましくは1~14個の炭素原子、特に3~14個の炭素原子、とりわけ5~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含有するモノアルコールとの間に形成され得る。
【0067】
好ましくは、本発明によるモノエステルは、本文の続きに定義されている、「分岐状」モノエステルである。
【0068】
モノエステルは、とりわけ、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、好ましくは3~14個の炭素原子を含む分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、好ましくは1~14個の炭素原子を含む少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間に形成されるモノエステルとすることができる。
【0069】
特定の一実施形態では、本発明によるモノエステルは、飽和の好ましくは分岐状C8~C10、好ましくはC9モノカルボン酸、特に、3,5,5-トリメチルヘキサン酸と、飽和の好ましくは分岐状C8~C10、好ましくはC9モノアルコール、例えば3,5,5-トリメチルヘキサノール又はその異性体とから得られる。
【0070】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、以下:
- 飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、好ましくは3~14個の炭素原子を含む、少なくとも1つの分岐状炭化水素をベースとする鎖を含む、少なくとも1つのカルボン酸、及び
- 飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、好ましくは1~14個の炭素原子を含む、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む、少なくとも1つのアルコール
の間で形成される「分岐状エステル」である。
【0071】
本発明による分岐状エステルは、好ましくは、モノエステル、ジエステル又はトリエステルである。
【0072】
特定の実施形態によれば、本発明による分岐状エステルは、モノカルボン酸とモノアルコールとの間に形成されるモノエステルとすることができる。
【0073】
別の特定の実施形態によれば、本発明による分岐状エステルは、1つのジオール化合物と2つのモノカルボン酸との間に形成されるジエステル、そうでない場合、1つのジカルボン酸(二酸)と2つのモノアルコールとの間に形成されるジエステルとすることができる。
【0074】
先に記載されている通り、本発明により使用される分岐状エステルは、好ましくは飽和の、少なくとも1つの分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのカルボン酸から得られる。
【0075】
前記カルボン酸の分岐状の炭化水素をベースとする鎖は、より詳細には、3~14個の炭素原子、特に5~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含むことができる。
【0076】
好ましくは、前記カルボン酸の分岐状の炭化水素をベースとする鎖は、4~10個の炭素原子、特に、5~8個の炭素原子を含有する直鎖状主鎖から形成することができ、前記主鎖は、少なくとも1つのアルキル側鎖基、好ましくは少なくとも2つのアルキル側鎖基、特に、少なくとも3つのアルキル側鎖基を含有し、前記アルキル基は、より詳細には、C1~C4、好ましくはC1~C3、とりわけC1~C2、例えばメチル基である。
【0077】
一実施変形形態によれば、本発明による分岐状エステルは、特に、先に定義した炭化水素をベースとする鎖を含有するモノカルボン酸から得られる。
【0078】
特定の一実施形態では、本発明による分岐状エステルは、分岐状の飽和C8~C10及び好ましくはC9モノカルボン酸、特に、3,5,5-トリメチルヘキサン酸から得られる。
【0079】
本発明による分岐状エステルが形成されるアルコールは、好ましくは飽和の、分岐状又は非分岐状(直鎖状)の炭化水素をベースとする鎖を含むことができる。
【0080】
前記アルコールの炭化水素をベースとする鎖は、より詳細には、1~14個の炭素原子、特に3~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含むことができる。
【0081】
特定の実施形態によれば、本発明による分岐状エステルは、特に、3~14個の炭素原子、特に、5~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含有する、分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む、少なくとも1つのアルコールから形成される。
【0082】
分岐状の炭化水素をベースとする鎖は、4~10個の炭素原子、特に、5~8個の炭素原子を含有する直鎖状主鎖から形成することができ、前記主鎖は、少なくとも1つのアルキル側鎖基、好ましくは少なくとも2つのアルキル側鎖基、特に、少なくとも3つのアルキル側鎖基を含有し、前記アルキル基は、より詳細には、C1~C4、好ましくはC1~C3、とりわけC1~C2、例えば、メチル基である。
【0083】
一実施変形形態によれば、本発明による分岐状エステルは、特に、先に定義した炭化水素をベースとする鎖、好ましくは分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含有するモノアルコールから得られる。
【0084】
特定の一実施形態では、本発明による分岐状エステルは、分岐状の飽和C8~C10及び好ましくはC9モノアルコールから、例えば3,5,5-トリメチルヘキサノール又はその異性体から得られる。
【0085】
別の特定の実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステルである。
【0086】
エステルは、とりわけ、モノエステル、ジエステル又はトリエステルとすることができる。前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、エステルは、分岐状又は非分岐状エステルとすることができる。
【0087】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるエステルは、前記エステルの前記エステル官能基に結合されている酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含む、ジエステルである。
【0088】
好ましくは、本発明による前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含むエステルは、少なくとも1つのカルボン酸と少なくとも1つのエーテル官能基を含む少なくとも1つのアルコールとの間で、好ましくは、特に2~14個の炭素原子を含む少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素をベースとする鎖を含む、少なくとも1つのアルコールから形成され、前記炭化水素をベースとする鎖は、少なくとも1個の酸素原子により介在されている。
【0089】
前記アルコールの炭化水素をベースとする鎖は、より詳細には、4~10個の炭素原子、特に5~8個の炭素原子を含むことができ、1個又は複数の酸素原子、好ましくは1個の酸素原子により介在されていてもよい。
【0090】
前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、本発明によるエステルが形成されるカルボン酸は、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、特にC3~C14、特にC4~C10及びとりわけC4~C8炭化水素をベースとする鎖を含むことができる。
【0091】
特定の実施形態によれば、前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含むエステルは、ジカルボン酸と、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子により介在されている、好ましくは2~14個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのモノアルコールとの間で形成されるジエステルである。
【0092】
好ましくは、ジカルボン酸は、直鎖状又は分岐状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、特にC3~C14、好ましくはC4~C10及びとりわけC6~C8炭化水素をベースとする鎖を含む。ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸とすることができる。
【0093】
好ましくは、少なくとも1個のヘテロ原子により介在されている炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールは、特に、3~14個の炭素原子、好ましくは4~10個の炭素原子、より詳細には4~8個の炭素原子を含む、直鎖状の飽和の炭化水素をベースとする鎖を有しており、前記鎖は、1個又は複数の酸素原子、好ましくは1個の酸素原子により介在されている。
【0094】
このようなモノアルコールは、より詳細には、少なくとも1つのC2~C6及び特にC4アルコキシ基を有する、C2~C4アルキレン鎖を含むことができる。モノアルコールは、例えば、ブチルグリコールとすることができる。
【0095】
特定の実施形態では、本発明により使用されるエステルは、アジピン酸ジブチルグリコールである。
【0096】
カルボン酸及びアルコールに関する上に示されている定義は、可能な限り、組み合わされて、他の特定の実施形態を定義することができることが理解される。
【0097】
本発明によるエステルは、以下の式(I):
[化学式1]
G1-C(O)-O-G2 (I)
(式中、
○ G1は、3~14個の炭素原子を特に含有する直鎖状又は分岐状の、好ましくは分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ又は複数のR1-O-C(O)-基、好ましくは1つ又は2つのR1-O-C(O)-基を場合により有しており、R1は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、好ましくは1~13個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、
○ G2は、1~14個の炭素原子を特に含有する飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐状の、好ましくは分岐状の、炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ若しくは複数の-O-C(O)-R2基、好ましくは1つ若しくは2つの-O-C(O)-R2基を場合により有しており、R2は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、好ましくは3~13個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の、好ましくは分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表す)
により詳細には相当することができる。
【0098】
特定の実施形態によれば、本発明によるエステルは、以下の式(I):
[化学式1]
G1-C(O)-O-G2 (I)
(式中、
○ G1は、3~14個の炭素原子を特に含有する、好ましくは分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、可能性として、1つ又は複数のR1-O-C(O)-基、好ましくは1つ又は2つのR1-O-C(O)-基を有しており、R1は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、好ましくは1~13個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、
○ G2は、1~14個の炭素原子を特に含有する飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐状の、好ましくは分岐状の、炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、酸素原子等の1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ若しくは複数の-O-C(O)-R2基、好ましくは1つ若しくは2つの-O-C(O)-R2基を場合により有しており、R2は、好ましくは3~13個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状の、好ましくは分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表す)
により詳細には相当することができる。
【0099】
好ましくは、G1は、特に、C3~C13、とりわけC4~C11、より詳細にはC5~C9からなる、好ましくは分岐状のアルキル基、又はR1-O-C(O)-A1-基を表し、A1は、特に、C2~C12、とりわけC3~C10からなるアルキレン基を表し、R1は、先に定義されている通りである。
【0100】
好ましくは、G2は、1個又は複数の酸素原子により場合により介在されている、特にC1~C14、特に、C3~C12、より詳細にはC6~C10からなる直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖、又は-A2-O-C(O)-R2基を表し、A2は、特に、C1~C13からなるアルキレン基を表し、R2は、先に定義した通りであり、R2は好ましくは、C3~C13からなる、好ましくは分岐状のアルキル基を表す。
【0101】
第1の実施変形形態によれば、本発明によるエステルは、上記の式(I)とすることができ、式中、
○ G1は、特にC3~C13、とりわけC4~C11、より詳細にはC5~C9からなる、好ましくは分岐状のアルキル基を表す。
【0102】
G1は、特にC3~C9、とりわけC4~C7からなる直鎖状アルキル主鎖から好ましくは形成され、前記主鎖は、少なくとも1つのアルキル側鎖基、好ましくは少なくとも2つのアルキル側鎖基、特に、少なくとも3つのアルキル側鎖基を含有し、前記アルキル側鎖基は、より詳細にはC1~C4、好ましくはC1~C3、とりわけC1~C2、例えばメチル基である。
【0103】
有利には、G1は、2,4,4-トリメチルペンチル基を表すことができる。
【0104】
○ G2は、特にC1~C14、特にC3~C12、より詳細にはC6~C10からなる、直鎖状又は分岐状アルキル基を表す。
【0105】
特に有利な変形形態によれば、G2は、特にC3~C14、とりわけC6~C12、より詳細にはC8~C10からなる、分岐状アルキル鎖を表す。
【0106】
このような分岐状アルキル基は、特にC4~C10、特にC5~C8からなる直鎖状アルキル主鎖からとりわけ形成されてよく、前記主鎖は、少なくとも1つのアルキル側鎖基、好ましくは少なくとも2つのアルキル側鎖基、特に、少なくとも3つのアルキル側鎖基を含有し、前記アルキル側鎖基は、より詳細にはC1~C4、好ましくはC1~C3、とりわけC1~C2、例えば、メチル基である。
【0107】
有利には、G2は、分岐状C9アルキル基、例えば、3,5,5-トリメチルヘキシル又はその異性体を表すことができる。
【0108】
別の実施変形形態によれば、本発明によるエステルは、上記の式(I)とすることができ、式中、
○ G1は、特にC3~C13、とりわけC4~C11、より詳細にはC5~C9からなる、好ましくは分岐状のアルキル基を表す。
【0109】
G1は、特にC3~C9、とりわけC4~C7からなる直鎖状アルキル主鎖から好ましくは形成され、前記主鎖は、少なくとも1つのアルキル側鎖基、好ましくは少なくとも2つのアルキル側鎖基、特に少なくとも3つのアルキル側鎖基を含有し、前記アルキル側鎖基は、より詳細には、C1~C4、好ましくはC1~C3、とりわけC1~C2、例えばメチル基である。
【0110】
有利には、G1は、2,4,4-トリメチルペンチル基を表すことができる。
【0111】
○ G2は、-A2-O-C(O)-R2基を表し、A2及びR2は、既に定義されている通りである。
【0112】
好ましくは、A2は、C1~C13、特にC3~C12、より詳細にはC6~C10アルキレン基を表す。
【0113】
特定の実施形態によれば、R2は、G1基に関して、既に定義した通りとすることができ、優先的には、R2は、G1と同一である。
【0114】
特定の実施形態によれば、本発明によるエステルは、上記の式(I)とすることができ、式中、
○ G1は、特に、3~14個の炭素原子を含有する、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、
○ G2は、-A2-O-C(O)-R2基(A2及びR2は、既に定義されている通りである);少なくとも1つの炭化水素をベースとする鎖、特に、1個又は複数のヘテロ原子、好ましくは1個又は複数の酸素原子、特に1個の酸素原子により介在されている、G1及びR2によって表される、両方が炭化水素をベースとする鎖を表す。
【0115】
更に別の実施変形形態によれば、本発明によるエステルは、上記の式(I)とすることができ、式中、
○ G2は、特に1~14個の炭素原子を含有する、直鎖状若しくは分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、1個又は複数のヘテロ原子、好ましくは1個又は複数の酸素原子により場合により介在されている。特に、G2は、1~14個の炭素原子、特に、3~12個の炭素原子、より詳細には6~10個の炭素原子を含む、好ましくは直鎖状のアルキル鎖であって、少なくとも1個の酸素原子、好ましくは1個の酸素原子により介在されている、直鎖状のアルキル鎖を表すことができ、
○ G1は、R1-O-C(O)-A1-基を表し、A1及びR1は、既に定義されている通りである。
【0116】
特に、R1は、G2基に関して、既に定義した通りとすることができ、優先的には、R1は、G2と同一である。
【0117】
好ましくは、A1は、直鎖状又は分岐状C3~C13、及び特にC4~C11アルキレン基を表し、好ましくは、少なくとも1つの炭化水素をベースとする鎖、特に、G2及びR1によって表される、両方が炭化水素をベースとする鎖は、1個又は複数のヘテロ原子、好ましくは1個又は複数の酸素原子、特に1個の酸素原子により介在されている。
【0118】
特に好ましい実施形態によれば、本発明によるエステルは、以下:
(i)分岐状モノエステルであって:
- 特に上で定義されている、3~14個の炭素原子を好ましくは含む、分岐状の飽和の炭化水素をベースとする鎖を含有するモノカルボン酸と、
- 特に上に定義されている、3~14個の炭素原子を好ましくは含む、飽和の、好ましくは分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含有するモノアルコールと
の間で形成される、分岐状モノエステル、
又は
(ii)ジエステルであって:
- 3~14個の炭素原子、特に、4~10個の炭素原子を好ましくは含む、直鎖状の飽和の炭化水素をベースとする鎖を含有する、ジカルボン酸と、
- 3~14個の炭素原子、特に、4~10個の炭素原子を好ましくは含む、酸素原子により介在されている直鎖状の飽和の炭化水素をベースとする鎖を含有するモノアルコール
の間で形成される、ジエステル
から選択される。
【0119】
有利には、本発明によるエステルは、3,5,5-トリメチルヘキサン酸と3,5,5-トリメチルヘキサノール又はその異性体との間で形成されるモノエステル、又はそうでない場合、アジピン酸とブチルグリコールとの間で形成されるジエステルとすることができる。
【0120】
本発明によるエステルは、市販されていることがあるか、又は当業者に公知の合成法に準拠して調製され得る。これらの合成法は、より詳細には、少なくとも1つのアルコール化合物と少なくとも1つのカルボン酸化合物との間のエステル化反応を含む。
【0121】
言うまでもなく、本発明によるエステルを得るため、合成条件を調整することは当業者に委ねられる。
【0122】
有利には、本発明による分岐状エステルは、規格ASTM D445に準拠して25℃で測定される、20mm2/s以下、好ましくは15mm2/s以下、特に、10mm2/s以下の動粘度を有する。
【0123】
有利には、本発明による分岐状エステルは、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される、150mm2/s以下、特に、120mm2/s以下、とりわけ20~100mm2/sの範囲、より詳細には40~70mm2/sの範囲の動粘度を有する。
【0124】
有利には、本発明による分岐状エステルは、360℃以上、特に、380℃以上、より詳細には400℃以上の自己発火温度を有する。
【0125】
本発明の状況では、本発明によるエステル、特に本発明による分岐状エステルは、特に先に定義した、本発明による少なくとも2つのエステルの混合物の形態にあることができることが理解される。
【0126】
本発明によるエステル又はエステルの混合物は、本発明による冷却用組成物の全質量に対し、30質量%超、好ましくは50質量%超、より優先的に70質量%超、更により優先的に80質量%超、特に90質量%超、より詳細には95質量%超、又は98質量%超になることさえあり得る。
【0127】
特に、本発明により使用される冷却用組成物は、前記組成物の全質量に対して、30質量%~100質量%の間、より詳細には50質量%~99.5質量%の間、好ましくは70質量%~99質量%の間、より優先的に80質量%~99質量%の間、又は80質量%~95質量%の間にもなる本発明によるエステル又はエステルの混合物を含むことができる。
【0128】
特定の実施形態によれば、本発明による冷却用組成物は、95質量%超、特に98質量%超の本発明による1つ又は複数のエステル、特に本発明による1つ又は複数の分岐状エステルから形成され得る。
【0129】
追加の基油
本発明により使用される冷却用組成物は、本発明により1つ又は複数のエステルの他に、本発明によるエステル以外の1種又は複数の基油を含んでもよい。
【0130】
本発明による冷却用組成物中に存在し得る、前記基油は、本発明により使用される前記エステルとのその適合性に関して、適切に選択される。
【0131】
基油は、いくつかの基油の混合物、例えば、2種、3種又は4種の基油からなる混合物とすることができる。
【0132】
好ましくは、本発明による冷却用組成物に使用される、基油又は更なる基油の混合物は、規格ASTM D445に準拠して100℃で測定される、1.5~8mm2/s、特に1.5~6.1mm2/s、より詳細には1.5~4.1mm2/s及び更により詳細には1.5~2.1mm2/sの範囲の動粘度を有することができる。
【0133】
基油は、API分類(又はATIEL分類に準拠するその等価なもの)により定義されるクラスによるグループI~Vに属し、以下のtable 1(表1)に表されている、鉱物起源又は合成起源の油、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0134】
【表1】
【0135】
鉱物基油には、原油の大気圧蒸留及び減圧蒸留と、それに続く溶媒抽出、脱アスファルト、溶媒脱パラフィン、水素化処理、水素化分解、水素化異性化及び水素化仕上げ等の精製操作によって得られるすべてのタイプの基油が含まれる。
【0136】
生物ベースとすることができる、合成油及び鉱物油の混合物も使用されてもよい。
【0137】
冷却用組成物を調製するための様々な追加の基油の使用に関して、基油が、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムに使用するのに好適な、とりわけ、粘度指数、硫黄含有率又は酸化耐性に関する特性を有さなければならないということを除くと、一般に限定はない。
【0138】
基油はまた、本発明により定義されるエステル以外の、カルボン酸とアルコールとのある種のエステル等の合成油から、ポリ-α-オレフィン(PAO)から、及び2~8個の炭素原子、特に2~4個の炭素原子を含むアルキレンオキシドの重合又は共重合によって得られるポリアルキレングリコール(PAG)から選択されてもよい。
【0139】
基油として使用されるPAOは、例えば、4~32個の炭素原子を含むモノマーから、例えば、オクテン又はデセンから得られる。
【0140】
PAOの質量平均分子質量は、非常に幅広く様々となり得る。好ましくは、PAOの質量平均分子質量は、600Da未満である。PAOの質量平均分子質量はまた、100~600Da、150~600Da又は200~600Daの範囲となり得る。
【0141】
例えば、規格ASTM D445に準拠して100℃で測定される、1.5~8mm2/sの範囲の動粘度を有する、本発明の状況において使用されるPAOは、Durasyn(登録商標)162、Durasyn(登録商標)164、Durasyn(登録商標)166及びDurasyn(登録商標)168という商標名で、Ineos社により市販されている。
【0142】
有利には、追加の基油は、ポリ-α-オレフィン(PAO)から選択される。
【0143】
本発明による冷却用組成物に存在する、追加の基油の含有量を調節することは当業者に委ねられる。
【0144】
特に、本発明による冷却用組成物は、前記組成物の全質量に対して、70質量%未満、特に、50質量%未満、とりわけ30質量%未満、又は更には20質量%未満、又は10質量%未満、より詳細には5質量%未満の追加の基油を含むことができる。
【0145】
添加剤
本発明による冷却用組成物は、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムの潤滑化及び/又は冷却の分野における、当業者に公知の1種又は複数の添加剤も含んでもよい。
【0146】
本発明による組成物に組み込まれ得る添加剤は、酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤及びそれらの混合物から、特に酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤及び腐食防止剤から選択することができる。
【0147】
好ましくは、本発明による冷却用組成物はまた、酸化防止剤、消泡剤、流動点改善剤及び腐食防止剤から選択される、1種又は複数の添加剤を含むことができる。
【0148】
耐摩耗性添加剤、摩擦調整剤、洗剤、極圧添加剤及び分散剤から選択される、1種又は複数の添加剤の添加により、例えば、電気自動車又はハイブリッド車における、電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却するため、及び推進システム、例えばトランスミッションの部品を潤滑にするため、多目的流体として、本発明による冷却用組成物を使用する状況において、利点があることも判明し得る。
【0149】
使用される添加剤の性質及び量は、本発明によるエステルによって付与される、冷却用組成物の特性に影響を及ぼさないよう選択されることが理解される。
【0150】
これらの添加剤は、当業者に周知のACEA(欧州自動車工業会)及び/又はAPI(米国石油協会)によって定義される性能レベルを有する、自動車エンジン用の市販の潤滑配合物用に既に販売されているもの等の、個別に及び/又は混合物の形態で導入され得る。
【0151】
前記添加剤は、前記組成物の全質量に対して、10質量%以下、特に5質量%以下、より詳細には0.01質量%~3質量%の範囲の含有率で本発明による冷却用組成物中に存在してもよい。
【0152】
したがって、本発明により使用される冷却用組成物は、少なくとも1種の酸化防止添加剤を含んでもよい。
【0153】
したがって、その態様の別のものによれば、本発明は、電気自動車又はハイブリッド車の推進システム、特に電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却することが特に可能な冷却用組成物であって、(i)先に定義した少なくとも1種の分岐状エステル、及び(ii)少なくとも1種の酸化防止添加剤を含む、前記冷却用組成物に関する。
【0154】
酸化防止添加剤により、一般に、使用中の組成物の分解を抑制することが可能となる。この分解は、堆積物の形成、スラッジの存在によって、又は組成物の粘度の向上によって、とりわけ影響を受ける恐れがある。
【0155】
酸化防止添加剤は、遊離ラジカル阻害剤又はヒドロペルオキシド破壊剤としてとりわけ作用する。一般に使用されている酸化防止添加剤の中で、フェノール性タイプの酸化防止添加剤、アミンタイプの酸化防止添加剤及びホスホ-硫黄をベースとする酸化防止添加剤を挙げることができる。これらの酸化防止添加剤の一部、例えば、ホスホ-硫黄をベースとする酸化防止添加剤は、灰発生体となり得る。フェノール性酸化防止添加剤は、灰分を含み得ないか、又は中性塩若しくは塩基性金属塩の形態にあってもよい。酸化防止添加剤は、立体障害性フェノール、立体障害性フェノールエステル、並びにチオエーテル架橋、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC1~C12アルキル基により置換されているジフェニルアミン、N,N'-ジアルキル-アリール-ジアミン及びそれらの混合物を含む立体障害性フェノールからとりわけ選択することができる。
【0156】
好ましくは、本発明によれば、立体障害性フェノールは、アルコール官能基を有する炭素に対してビシナルな少なくとも1個の炭素が、少なくとも1つのC1~C10アルキル基、好ましくはC1~C6アルキル基、好ましくはC4アルキル基により、好ましくはtert-ブチル基により置換されているフェノール基を含む化合物から選択される。
【0157】
アミン化合物は、場合によりフェノール性酸化防止添加剤と組み合わせて使用することができる、酸化防止添加剤の別のクラスである。アミン化合物の例は、芳香族アミン、例えば、式NR4R5R6である芳香族アミン(R4は、場合により置換されている脂肪族基又は芳香族基を表し、R5は、場合により置換されている芳香族基を表し、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基を表す)、又は式R7S(O)zR8である基(R7は、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、R8は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、zは、0、1又は2を表す)である。
【0158】
硫黄化アルキルフェノール又はそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩もまた、酸化防止添加剤として使用されてもよい。
【0159】
酸化防止添加剤の別のクラスは、銅化合物、例えばチオリン酸銅又はジチオリン酸銅、カルボン酸の銅塩、及びジチオカルバメート銅、スルホン酸銅、銅フェノレート及び銅アセチルアセトネートのクラスである。銅(I)及び銅(II)の塩、及びコハク酸塩又は無水物の塩もまた、使用されてもよい。
【0160】
有利には、冷却用組成物は、少なくとも1つの灰分不含酸化防止添加剤を含む。
【0161】
本発明による冷却用組成物では、添加剤は、組成物の全質量に対して、0.1質量%~2%質量%の比で使用され得る。
【0162】
本発明による冷却用組成物は、少なくとも1種の耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤を含むことができる。
【0163】
耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤は、これらの表面に吸着される保護フィルムを形成することによって、摩擦表面を保護する。
【0164】
幅広い耐摩耗性添加剤が存在する。好ましくは、耐摩耗性添加剤は、アルキルチオリン酸金属、特にアルキルチオリン酸亜鉛、より詳細にはジアルキルジチオリン酸亜鉛又はZnDTP等のホスホ-硫黄をベースとする添加剤から選択される。好ましい化合物は、式Zn((SP(S)(OR2)(OR3))2であり、R2及びR3は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、アルキル基、優先的に1~18個の炭素原子を含むアルキル基を独立して表す。
【0165】
リン酸アミンも、本発明による組成物において使用され得る耐摩耗性添加剤である。しかし、これらの添加剤によって導入されるリンは、これらの添加剤が灰発生体となるので、自動車の触媒系にとって毒として作用し得る。これらの影響は、リン酸アミンを、リンを導入しない添加剤、例えば、ポリスルフィド、とりわけ硫黄をベースとするオレフィンにより一部を置き換えることによって最少化することができる。
【0166】
冷却用組成物は、該組成物の全質量に対して、0.01質量%~6質量%、優先的に0.05質量%~4質量%、及びより優先的に0.1質量%~2質量%の耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤を含むことができる。
【0167】
本発明による冷却用組成物はまた、消泡剤を含んでもよい。
【0168】
消泡剤は、シリコーンから選択されてもよい。
【0169】
冷却用組成物は、該組成物の全質量に対して、0.01質量%~2質量%、又は0.01質量%~5質量%、優先的に0.1質量%~1.5質量%又は0.1質量%~2質量%の消泡剤を含むことができる。
【0170】
本発明による冷却用組成物は、少なくとも1種の摩擦改変添加剤を含んでもよい。
【0171】
摩擦改変添加剤は、金属元素及び灰分不含化合物を供給する化合物から選択されてもよい。金属元素を供給する化合物の中で、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu又はZn等の遷移金属の錯体を挙げることができ、その配位子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を含む、炭化水素をベースとする化合物とすることができる。灰分不含摩擦改変添加剤は、一般に、有機起源であり、ポリオールの脂肪酸モノエステル、アルコキシ化アミン、アルコキシ化脂肪アミン、脂肪エポキシド、ホウ酸エステル化脂肪エポキシド(borate fatty epoxide)、脂肪アミン、又はグリセロールの脂肪酸エステルから選択され得る。本発明によれば、脂肪化合物は、10~24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素をベースとする基を含む。
【0172】
冷却用組成物は、該組成物の全質量に対して、0.01質量%~2質量%、又は0.01質量%~5質量%、優先的に0.1質量%~1.5質量%又は0.1質量%~2質量%の摩擦改変添加剤を含むことができる。
【0173】
有利には、冷却用組成物は、特に、電池部品の冷却に向けて使用するための、摩擦改変添加剤を含まない。
【0174】
本発明による冷却用組成物は、少なくとも1種の洗剤添加剤を含んでもよい。
【0175】
洗剤添加剤により、一般に、酸化副生物及び燃焼副生物を溶解することによって、金属部品の表面における堆積物の形成を低減することが可能となる。
【0176】
冷却用組成物中に使用することができる洗剤添加剤は、一般に、当業者に公知である。洗剤添加剤は、長い親油性の炭化水素をベースとする基及び親水性頭部を含む、陰イオン性化合物とすることができる。結合する陽イオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属陽イオンとすることができる。
【0177】
洗剤添加剤は、カルボン酸、スルホン酸、サリチル酸及びナフテン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、及び更にはフェノレート塩から優先的に選択される。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、優先的に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はバリウムである。
【0178】
これらの金属塩は、一般に、化学量論量で、又は過剰に、すなわち、化学量論よりも多い量で金属を含む。次に、それらは、過塩基性洗剤添加剤である。次に、洗剤添加剤に過塩基性性質をもたらす過剰の金属は、一般に、油に不溶性の金属塩、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩又はグルタミン酸、優先的に炭酸塩の形態にある。
【0179】
冷却用組成物は、該組成物の全質量に対して、例えば、2質量%~4質量%の洗剤添加剤を含むことができる。
【0180】
冷却用組成物はまた、少なくとも1種の流動点降下添加剤を含んでもよい。
【0181】
パラフィン結晶の形成を減速することによって、流動点降下添加剤は、一般に、組成物の低温挙動を改善する。言及することができる流動点降下剤添加剤の例は、ポリアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン及びポリアルキルスチレンを含む。
【0182】
同様に、冷却用組成物は、少なくとも1種の分散剤を含んでもよい。
【0183】
分散剤は、Mannich塩基、スクシンイミド及びそれらの誘導体から選択することができる。冷却用組成物は、該組成物の全質量に対して、例えば、0.2質量%~10質量%の分散剤を含むことができる。
【0184】
特定の実施形態によれば、本発明により使用される冷却用組成物は、(i)本発明による少なくとも1種のエステル、特に、先に定義した少なくとも1種の分岐状エステル、より詳細には、先に定義した分岐状モノエステル、及び(ii)酸化防止剤、消泡剤、流動点降下添加剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤及びそれらの混合物から、好ましくは酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤及び腐食防止剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含むか、又はそれらから形成されることさえある。
【0185】
有利には、本発明により使用される冷却用組成物は、(i)本発明による少なくとも1種のエステルから、特に、先に定義した少なくとも1種の分岐状エステル、より詳細には先に定義した分岐状モノエステル、及び(ii)少なくとも1種の酸化防止添加剤から形成される。
【0186】
特定の実施形態によれば、本発明により使用される冷却用組成物は、以下:
- 少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より優先的に少なくとも90質量%、又は少なくとも95質量%にもなる本発明による1つ又は複数のエステル、特に本発明による1つ又は複数の分岐状エステル
- 0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%の、酸化防止剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、流動点降下添加剤、分散剤及びそれらの混合物から選択される、好ましくは酸化防止剤、消泡剤、流動点降下添加剤、腐食防止剤及びそれらの混合物から選択される、1種又は複数の添加剤
- 場合により、5質量%~70質量%、好ましくは10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~30質量%の、本発明によるエステル以外の基油
を含むか、又はこれらからなることさえあり、含有率は、前記組成物の全質量に対して表されている。
【0187】
本発明により使用される冷却用組成物は、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される、200mm2/s以下、特に、120mm2/s以下、とりわけ20~100mm2/sの範囲、より詳細には40~70mm2/sの範囲の動粘度を有利なことに有する。
【0188】
有利には、やはり、本発明により使用される冷却用組成物は、規格ASTM D445に準拠して25℃で測定される、20mm2/s以下、特に、15mm2/s以下、とりわけ2~12mm2/sの範囲、より詳細には5~10mm2/sの範囲の動粘度を有する。
【0189】
更に、本発明により使用される冷却用組成物は、特に高い自己発火温度を有する。特に、本発明による冷却用組成物は、360℃以上、特に、380℃以上、より詳細には400℃以上の自己発火温度を有利なことに有する。
【0190】
用途
先に示された通り、本発明による組成物は、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムのための冷却流体として使用されてもよい。
【0191】
図1に概略的に表されている通り、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムは、電気モータ部分(1)、電池(2)及びトランスミッション、及び特に減速装置(3)をとりわけ備える。
【0192】
電気モータは、通常、固定子(13)及びロータ(14)に接続されているパワーエレクトロニクス(11)を備える。固定子は、コイル、特に、交流電流によって動力源とされる銅コイルを備える。これにより、回転磁場を発生させることが可能となる。その部品に関すると、ロータは、コイル、永久磁石又は他の磁性材料を備え、回転磁場によって回転して置かれる。
【0193】
推進システム(1)のパワーエレクトロニクス(11)、固定子(13)及びロータ(14)は、モータが駆動している間、多量の熱を発生する、複雑な構造の部品である。したがって、電気モータ及びパワーエレクトロニクスを確実に冷却することが必須である。
【0194】
回転ベアリング(12)は、一般に、固定子(13)とロータ(14)との間に組み入れられる。トランスミッション、及び特に減速装置(3)により、電気モータの出口において回転速度を低下すること、及び車輪に伝達される速度を変化させることが可能となり、自動車の速度を同時に制御することが可能となる。
【0195】
有利には、本発明による組成物は、電気自動車又はハイブリッド車の電池を冷却するために使用されてもよい。特に、電池と直接接触して置くことが意図されている。
【0196】
電気自動車又はハイブリッド車の推進システムに好適な電池として、特に、Li-イオン電池又はニッケル-カドミウム電池を挙げることができる。
【0197】
その態様の別のものによれば、本発明はまた、電気自動車又はハイブリッド車の推進システム、特に、電池の少なくとも1つの部品を冷却するための方法であって、少なくとも前記部品、特に、前記電池、例えば、リチウム-イオン電池又はニッケル-カドミウム電池を、先に定義した本発明による少なくとも1種の分岐状エステルを含む組成物に接触させて配置する少なくとも1つの工程を含む、方法に関する。
【0198】
電池と接触させて、本発明による冷却用組成物を配置する工程は、前記組成物中への電池の浸漬若しくは半浸漬、又はそうでない場合、電池の表面における前記組成物の注入からなることができる。
【0199】
用語「浸漬」とは、電池のすべてが、本発明による冷却用組成物により取り囲まれていることを意味する。用語「半浸漬」は、電池の一部しか前記組成物に接触していないことを意味する。
【0200】
冷却は、当業者に公知の任意の方法によって行われ得る。電池は、浸漬で又は半浸漬で、固定して又は循環させて、前記組成物中に存在することができる。
【0201】
直接接触して配置する例として、加圧下での本発明による組成物を使用する、注入による、噴出による、噴霧による又はミストの形成による、及び電池にかかる重力による冷却を挙げることができる。
【0202】
有利には、本組成物は、冷却される推進システムの区域に比較的高い圧で噴出させることによって注入される。有利には、この注入に起因するせん断により、静止状態での動粘度に対する注入区域内の流体の粘度を低下させること、したがって組成物の冷却可能性を更に増大させることが可能となる。
【0203】
更に、例えば、WO2015/116496に記載されている通り、電気モータに一般に使用される油循環システムを使用することができる。
【0204】
本発明による組成物はまた、電気自動車又はハイブリッド車の電気モータを冷却するため、特に、電気モータのパワーエレクトロニクス及び/又はロータ及び/又は固定子を冷却するために使用されてもよい。
【0205】
本発明による冷却用組成物は、電気自動車又はハイブリッド車の使用に特に満たす電気絶縁特性をとりわけ有する。
【0206】
本発明による組成物の冷却特性に加えて、その潤滑特性を有効活用することが可能である。
【0207】
したがって、本発明による組成物は、電気自動車又はハイブリッド車の推進システムの様々な部品、特に、電気モータのロータと固定子との間に位置する転がり軸受、又は他には、電気自動車又はハイブリッド車におけるトランスミッション、特に減速装置を同時に潤滑するために使用されてもよい。
【0208】
このような用途の場合に、本発明による冷却用組成物はまた、耐摩耗性添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤、極圧添加剤及びそれらの混合物から選択される、1種又は複数の添加剤を有利なことに含む。
【0209】
本発明は、これより、後に続く、言うまでもなく、本発明の非限定的例示として示されている、実施例を手助けにして記載される。
【実施例
【0210】
以下の化合物から形成された様々な組成物を評価した:
- 本発明による分岐状エステルA:3,5,5-トリメチルヘキサン酸3,5,5-トリメチルヘキシル;
- 本発明によるエステルB:6個の炭素原子を含む非分岐状アルキレン鎖を含有するジカルボン酸とブチルグリコールモノアルコールとの間で形成されるジエステルである、アジピン酸ジブチルグリコール;
- これらの電池冷却用途に慣用的に使用される、水素化したデセンの二量体タイプであるポリ-α-オレフィンC;
- 本発明によらないエステルD:6個の炭素原子を含む非分岐状の直鎖状アルキレン鎖を含有するジカルボン酸と、10個の炭素原子を含有する分岐状アルキル鎖を含有するモノアルコールとの間で形成されるジエステルである、アジピン酸ジイソデシル;
- ネオペンチルグリコールと3,5,5-トリメチルヘキサン酸との間で形成されるジエステルである、本発明によらないエステルE;及び
- トリメチロールプロパンと3,5,5-トリメチルヘキサン酸との間で形成されるトリエステルである、本発明によらないエステルF。
【0211】
高温での組成物の安定性、言い換えると、発火に対するその耐性は、規格ASTM E659に準拠して、その自己発火温度の決定によって評価される。
【0212】
25℃及び-25℃における組成物の粘度は、規格ASTM D445に準拠して決定する。
【0213】
自己発火温度及び冷却温度での粘度測定の結果が、以下のtable 2(表2)に順に並べられている。
【0214】
【表2】
【0215】
本発明による分岐状エステルA及びエステルBは、高い自己発火温度を同時に有しながら、低い冷却温度粘度を有しており、これにより、これらのエステルはそれぞれ、電気自動車又はハイブリッド車の電池及び/又はパワーエレクトロニクスにおける使用と適合する。
【0216】
したがって、エステルA及びBの発火に対する安定性及び耐性は、電池が過熱した場合でさえも、確保される。
【0217】
本発明において定義されたエステルは、電気自動車又はハイブリッド車の推進システム、特に電池及び/又はパワーエレクトロニクスの冷却用組成物におけるその使用にとって特に有利な、粘度及び自己発火特性を有することがより詳細に留意される。
【符号の説明】
【0218】
1 電気モータ部分、推進システム
2 電池
3 トランスミッション、減速装置
11 パワーエレクトロニクス
12 回転ベアリング
13 固定子
14 ロータ
図1
【手続補正書】
【提出日】2021-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車又はハイブリッド車の推進システムを冷却するための、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び規格ASTM E659に準拠して測定される350℃以上の自己発火温度を有する少なくとも1種のエステルを含む組成物の使用。
【請求項2】
組成物が、組成物の全質量に対して、少なくとも30質量%の前記エステルを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
電気自動車又はハイブリッド車の電池及び/又はパワーエレクトロニクスを冷却するための、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記エステルが、規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される、150mm2/s以下の動粘度、及び/又は規格ASTM E659に準拠して測定される、360℃以上の自己発火温度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記エステルが、以下:
- モノエステル、
- 前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、エステル、及び
それらの混合物
から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記モノエステルが、少なくとも1つの飽和又は不飽和の分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を含む少なくとも1つのアルコールとの間に形成される、分岐状モノエステルであることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記モノエステルが、1~14個の炭素原子を含む、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含むモノカルボン酸と、1~14個の炭素原子を含む、分岐状又は非分岐状の炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールから形成されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記エステルの前記エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む前記エステルが、モノエステル、ジエステル又はトリエステルであることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
エステル官能基に結合している酸素原子以外に少なくとも1個のヘテロ原子を含む前記エステルが、少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つのエーテル官能基を含む少なくとも1つのアルコールとから形成されることを特徴とする、請求項5又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記エステルが、以下の式(I):
[化学式1]
G1-C(O)-O-G2 (I)
(式中、
○ G1、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ又は複数のR1-O-C(O)-基を場合により有しており、R1、1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、分岐状の又は非分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、
○ G2、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表し、前記炭化水素をベースとする鎖は、1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されており、かつ/又は1つ又は複数の-O-C(O)-R2 基を場合により有しており、R2、1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、分岐状又は非分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表す)
に相当することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
○ G1、アルキル基を表し、
○ G2、直鎖状又は分岐状アルキル基を表す
ことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記エステルが、分岐状の飽和C8C 10 ノカルボン酸と、分岐状の飽和C8C 10 ノアルコールとの間で形成されるモノエステルであることを特徴とする、請求項1から7、10及び11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
○ G2は、1~14個の炭素原子をむアルキル鎖を表し、前記鎖は、少なくとも1個の酸素原子により介在されており、
○ G1は、R1-O-C(O)-A1-基を表し、A1、アルキレン基を表し、R1は、1個又は複数のヘテロ原子により場合により介在されている、分岐状の又は非分岐状の、飽和又は不飽和の炭化水素をベースとする鎖を表すことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記エステルが、直鎖状の飽和C4~C10ジカルボン酸と、酸素原子により介在されている、直鎖状の飽和C4~C10炭化水素をベースとする鎖を含むモノアルコールとの間で形成されるジエステルであることを特徴とする、請求項1から5、8から10及び13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、前記エステルの他に、酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
電気自動車又はハイブリッド車の推進システムを冷却することが可能な組成物であって、
(i)規格ASTM D445に準拠して-25℃で測定される200mm2/s以下の動粘度、及び規格ASTM E659に準拠して測定される350℃以上の自己発火温度を有する、少なくとも1種のエステル、及び
(ii)酸化防止剤、流動点降下添加剤、消泡剤、腐食防止剤、耐摩耗性添加剤及び/又は極圧添加剤、摩擦調整剤、洗剤、分散剤及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の添加剤
を含む、組成物。
【請求項17】
前記エステルが、請求項4から14のいずれか一項に規定の通りであることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、前記エステル、及び1種又は複数の酸化防止添加剤から形成される、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
30質量%超の前記エステルを含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の組成物。
【国際調査報告】