(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】パーキンソン病を処置するための遺伝子治療組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220428BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20220428BHJP
A61K 38/50 20060101ALI20220428BHJP
A61K 38/51 20060101ALI20220428BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220428BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220428BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220428BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K38/44
A61K38/50
A61K38/51
A61K35/76
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 105
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/55
C12N15/11 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555083
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 IB2020052073
(87)【国際公開番号】W WO2020183374
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521412412
【氏名又は名称】サイオ ジーン セラピーズ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521412423
【氏名又は名称】オックスフォード バイオメディカ (ユーケー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コーコラン, ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ストーン, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ミトロファヌス, キリアコス
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート, ハンナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AA97X
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA31
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC22
4C084DC23
4C084DC26
4C084NA05
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZB211
4C084ZB212
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087ZA15
4C087ZB21
(57)【要約】
神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが対象中において低下する疾患に罹患している前記対象における運動機能を改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含む有効量のウイルスベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが対象中において低下する疾患に罹患している前記対象における運動機能を改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含む有効量のウイルスベクターを前記対象の脳に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが低下する疾患がパーキンソン病である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パーキンソン病に罹患している対象における運動機能を処置または改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(a)(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含むウイルスベクターと、(b)薬学的に許容され得る賦形剤とを含む治療有効量の組成物を前記対象の脳に投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記対象がL-ドパまたはLED治療を受けている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象のL-ドパまたはLED治療用量が、投与前の前記対象のL-ドパまたはLED治療用量と比較して、前記核酸構築物の投与後3ヶ月以内に減少する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記平均L-ドパまたはLED治療用量が、投与後3ヶ月に、ベースラインから少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%または少なくとも19%減少する、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、1×10
6TU/対象~5×10
8TU/対象の目標用量で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記目標用量が、約4×10
6TU/対象~8×10
6TU/対象、8×10
6TU/対象~4×10
7TU/対象または1×10
7TU/対象~5×10
8TU/対象である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
投与が1回投与である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が注入による被殻への投与である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列と、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列と、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列とを含み、THをコードする前記ヌクレオチド配列は、THをコードする前記ヌクレオチド配列とCH1をコードする前記ヌクレオチド配列が融合タンパク質TH-CH1をコードするように、CH1をコードする前記ヌクレオチド配列に連結されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸構築物が、
TH-
L-CH1-
IRES-AADC;
AADC-
L-TH-
L-CH1;
TH-
L-CH1-
L-AADC;
またはTH-
L-CH1-
L-AADC;
を含み、
ここで、Lはリンカーコード配列であり、IRESは内部リボソーム進入部位であり、Pはプロモーターである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸構築物がTH-
L-CH1-
IRES-AADCを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸構築物が、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列と、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列と、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列とを含み、THをコードする前記ヌクレオチド配列は、THをコードする前記ヌクレオチド配列とCH1をコードする前記ヌクレオチド配列が融合タンパク質TH-CH1をコードするように、CH1をコードする前記ヌクレオチド配列に連結されており、前記構築物は、TH-L-CH1-IRESAADCまたはTH-L-CH1-P-AADCを含み、ここで、Lはリンカーコード配列であり、IRESは内部リボソーム進入部位であり、Pはプロモーターである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記リンカー(L)がコドン最適化されていない、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記リンカー(L)が、配列番号1または配列番号3として示される配列を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸構築物が、構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたはこれらの組み合わせから選択されるプロモーター(P)をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記プロモーターが、CMVプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターまたはチミジンキナーゼプロモーターである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルスベクターがウイルス粒子である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルス粒子がEIAVベクター粒子であり、VSV-Gで偽型化されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルスベクターが、薬学的に許容され得る賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物として製剤化される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象における運動機能が、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後のUPDRS-III(運動)OFFスコアの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%の増加によって示されるように改善される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
以下:(a)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、日常生活に支障となるジスキネジアを伴うハウザー日記ON時間の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%の減少;(b)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、UPDRS-IVスコアの少なくとも50%の減少、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%または少なくとも74%の減少、および(c)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、ラッシュジスキネジアスコアの少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%の改善、の1またはそれより多くによって示されるように、ジスキネジアが前記対象において減少する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
振戦、運動緩徐、筋肉硬直、姿勢および/もしくは平衡障害、自動運動の喪失、発話困難、微細運動技能の困難またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される前記対象における1またはそれより多くの症状をさらに改善する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
投与後3ヶ月以内に、投与前における前記対象のベースラインと比較して、前記対象が、改善された運動機能、減少したジスキネジアおよび減少したL-ドパまたはLED治療用量を投与後に有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/816,170号および2019年7月5日に出願された米国仮特許出願第62/871,007号の恩典を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願ととともに提出された電子的に提出される配列表(名称:4226_038PC02_seqListing_ST25.txt、サイズ:4,044バイト;作成日:2020年3月10日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、パーキンソン病の処置のためにウイルスベクター粒子を使用して送達されるドーパミン合成経路に関与する酵素活性をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子治療組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
パーキンソン病(PD)は、黒質におけるドーパミン作動性神経細胞の喪失を特徴とする中枢神経系(CNS)の神経変性障害である。これは最終的に、線条体におけるドーパミン枯渇をもたらし、重度の運動障害を引き起こす。ほとんどの患者のPDの原因は不明であり、これは「孤発性」または「特発性」PDと呼ばれる。世界中で630万人がPDを有すると推定されており、ほとんどの人が60歳後に症状を発症するが、10人に約1人は50歳前に診断される(欧州パーキンソン病協会のウェブサイト:www.epda.eu.com/en/pd-info/で入手可能)。女性よりもわずかに多くの男性が罹患する。
【0005】
PDの疾患進行を停止させるための根治的処置も治療も存在しない。現在の処置選択肢には、薬理学的アプローチおよび外科的アプローチが含まれる。疾患の初期段階は、末梢におけるL-ドパまたはドーパミンの分解を停止させることを目的とするL-ドパ(ドーパミンの前駆体)治療、ドーパミンアゴニストおよび酵素阻害剤などの経口ドーパミン系処置によって効果的に管理することができる。約5年の経口ドーパミン系処置後に、とりわけ長期間の間欠的使用後に、患者の50%が、ジスキネジアなどの運動障害を発症する。例えば、疾患が進行するにつれて、L-ドパ治療は運動障害の処置において効果がより低くなり、重度の副作用を有するより高い用量を使用することが必要になる。
【0006】
PDの中期から後期に経口薬が効かなくなり始めると、標準的なケアは存在しない。この段階では、脳深部刺激(DBS)、Duodopa(登録商標)(レボドパ/カルビドパの併用)およびアポモルヒネ(ドーパミンアゴニスト)ポンプを含む、運動機能を制御するための、および運動性低下発症を軽減するためのより侵襲的な外科療法が導入される。
【発明の概要】
【0007】
発明の態様の概要
本開示の特定の態様は、神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが対象中において低下する疾患に罹患している対象における運動機能を改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含む有効量のウイルスベクターを対象に投与することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態において、神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが低下する疾患がパーキンソン病である。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、パーキンソン病に罹患している対象における運動機能を処置または改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(a)(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含むウイルスベクターと、(b)薬学的に許容され得る賦形剤とを含む治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0009】
いくつかの実施形態において、対象は、L-ドパまたはレボドパ換算用量(LED)治療を受けている。いくつかの実施形態において、対象の一日L-ドパまたはLED治療用量は、投与前の対象のL-ドパまたはLED治療用量と比較して、核酸構築物の投与後3ヶ月以内に減少する。いくつかの実施形態において、平均一日L-ドパまたはLED治療用量は、投与後3ヶ月に、ベースラインから少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%または少なくとも20%減少する。
【0010】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、1×106TU/対象~5×108TU/対象の目標用量で投与される。いくつかの実施形態において、目標用量は、約4×106TU/対象~8×106TU/対象、8×106TU/対象~4×107TU/対象または1×107TU/対象~5×108TU/対象である。
【0011】
いくつかの実施形態において、投与は1回投与である。いくつかの実施形態において、投与は脳に対する投与である。いくつかの実施形態において、投与は注入による被殻への投与である。
【0012】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列と、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列と、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列とを含み、THをコードするヌクレオチド配列は、THをコードするヌクレオチド配列とCH1をコードするヌクレオチド配列が融合タンパク質TH-CH1をコードするように、CH1をコードするヌクレオチド配列に連結されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、
TH-L-CH1-IRES-AADC;
AADC-L-TH-L-CH1;
TH-L-CH1-L-AADC;
またはTH-L-CH1-L-AADC;
を含み、
ここで、Lはリンカーコード配列であり、IRESは内部リボソーム進入部位であり、Pはプロモーターである。
【0014】
いくつかの実施形態において、核酸構築物はTH-L-CH1-IRES-AADCを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列と、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列と、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列とを含み、THをコードするヌクレオチド配列は、THをコードするヌクレオチド配列とCH1をコードするヌクレオチド配列が融合タンパク質TH-CH1をコードするように、CH1をコードするヌクレオチド配列に連結されており、構築物は、TH-L-CH1-IRES-AADCまたはTH-L-CH1-P-AADCを含み、ここで、Lはリンカーコード配列であり、IRESは内部リボソーム進入部位であり、Pはプロモーターである。
【0016】
いくつかの実施形態において、リンカー(L)は、配列番号1または配列番号3として示される配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたはこれらの組み合わせから選択されるプロモーター(P)をさらに含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターまたはチミジンキナーゼプロモーターである。
【0017】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはウイルス粒子である。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子はEIAVベクター粒子であり、VSV-Gで偽型化されている。
【0018】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、薬学的に許容され得る賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物として製剤化される。
【0019】
いくつかの実施形態において、対象における運動機能は、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後のUPDRS-III(運動)OFFスコアの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%の増加によって示されるように改善される。
【0020】
いくつかの実施形態において、対象におけるジスキネジアは、(a)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、日常生活に支障となるジスキネジアを伴うハウザー日記ON時間の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%の減少;(b)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、UPDRS-IVスコアの少なくとも50%の減少、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも74%または少なくとも75%の減少、および(c)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、ラッシュジスキネジアスコアの少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%または少なくとも25%の改善、の1またはそれより多くによって示されるように減少する。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法は、振戦、運動緩徐、筋肉硬直、姿勢および/もしくは平衡障害、自動運動の喪失、発話困難、微細運動技能の困難またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される対象における1またはそれより多くの症状をさらに改善する。
【0022】
いくつかの実施形態において、投与後3ヶ月以内に、投与前における対象のベースラインと比較して、対象は、改善された運動機能、減少したジスキネジアおよび減少したL-ドパまたはLED治療用量を投与後に有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、チロシンをレボドパ(L-ドパ)に変換する酵素チロシンヒドロキシラーゼ(TH)およびシクロヒドロラーゼ1(CH1)、ならびにL-ドパをドーパミンに変換する芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)を含む模式的な内因性ドーパミン合成を示す。
【0024】
【
図2A-2B】
図2A~2Bは、それぞれ、(A)Lenti-PDおよび(B)ProSavin(登録商標)に対する遺伝子構築物を示す。2つの構造の相違としては、Lenti-PDでは、CH1がプロモーターのより近くに移動して発現を増強し、Lenti-PDでは、共局在化を確実にするために、THとCH1が柔軟なリンカーによって連結されていることが挙げられる。
【0025】
【
図3】
図3は、ProSavin(登録商標)およびLenti-PDを用いた初代ヒト神経細胞におけるドーパミンおよびL-ドパのインビトロ産生を示す。
【0026】
【
図4A-4B】4A~4Bは、(A)パートA:用量漸増および(B)パートB:模倣手術手順と比較した拡大コホートを含む第2相臨床試験デザインを示す。
【0027】
【
図5】
図5は、UPDRSパートIII(運動)OFFスコアを通じて反映されたPD患者の進行を示す。コホート1の対象は、58および60のベースラインスコアを有する。
【0028】
【
図6】
図6は、Lenti-PDの低用量コホートならびに以前の臨床試験からのProSavin(登録商標)の低、中および高用量コホートおよびシャム対照についての、3ヶ月目でのUPDRSパートIII OFFスコアのベースラインからの変化を示す。
【0029】
【
図7A-7B】
図7A~
図7Bは、Lenti-PDの低用量コホートおよびProSavin(登録商標)のすべてのコホートについての、3ヶ月目での、下位尺度(A)日常生活動作および(B)治療の合併症にわたるベースラインからのUPDRS OFF変化を示す。
【0030】
【
図8】
図8は、ハウザー患者日記およびレボドパ換算用量(LED)を示す。ハウザー患者日記は、研究来院の直前2日間にわたって収集した。患者は、各24時間の期間につき、30分ごとに日記に記入する必要があった。
【0031】
【
図9A】9A~9D。
図9Aは、Lenti-PDの低用量コホートならびに以前の臨床試験からのProSavin(登録商標)の低、中および高用量コホートおよびシャム対照についての、3ヶ月目および6ヶ月目でのUPDRSパートIII OFFスコアのベースラインからの変化を示す。
図9Bおよび9Cは、Lenti-PDの低用量コホートおよびProSavin(登録商標)のすべてのコホートについての、3ヶ月目および6ヶ月目での、下位尺度(B)日常生活動作および(C)治療の合併症にわたるベースラインからのUPDRS OFF変化を示す。
図9Dは、ProSavin(登録商標)と比較したPDQ-39サマリーインデックスの結果を示す。PDQ-39は、パーキンソン病に特異的な健康関連の質を評価する質問票である。患者は、6ヶ月の時点で、UPDRS II日常生活動作「OFF」スコアでベースラインから19.5ポイント、UPDRS IV治療の合併症「OFF」スコアでベースラインから3ポイント、およびPDQ-39サマリーインデックススコアでベースラインから32.1ポイントの平均改善を経験した。
【
図9B-9C】9A~9D。
図9Aは、Lenti-PDの低用量コホートならびに以前の臨床試験からのProSavin(登録商標)の低、中および高用量コホートおよびシャム対照についての、3ヶ月目および6ヶ月目でのUPDRSパートIII OFFスコアのベースラインからの変化を示す。
図9Bおよび9Cは、Lenti-PDの低用量コホートおよびProSavin(登録商標)のすべてのコホートについての、3ヶ月目および6ヶ月目での、下位尺度(B)日常生活動作および(C)治療の合併症にわたるベースラインからのUPDRS OFF変化を示す。
図9Dは、ProSavin(登録商標)と比較したPDQ-39サマリーインデックスの結果を示す。PDQ-39は、パーキンソン病に特異的な健康関連の質を評価する質問票である。患者は、6ヶ月の時点で、UPDRS II日常生活動作「OFF」スコアでベースラインから19.5ポイント、UPDRS IV治療の合併症「OFF」スコアでベースラインから3ポイント、およびPDQ-39サマリーインデックススコアでベースラインから32.1ポイントの平均改善を経験した。
【
図9D】9A~9D。
図9Aは、Lenti-PDの低用量コホートならびに以前の臨床試験からのProSavin(登録商標)の低、中および高用量コホートおよびシャム対照についての、3ヶ月目および6ヶ月目でのUPDRSパートIII OFFスコアのベースラインからの変化を示す。
図9Bおよび9Cは、Lenti-PDの低用量コホートおよびProSavin(登録商標)のすべてのコホートについての、3ヶ月目および6ヶ月目での、下位尺度(B)日常生活動作および(C)治療の合併症にわたるベースラインからのUPDRS OFF変化を示す。
図9Dは、ProSavin(登録商標)と比較したPDQ-39サマリーインデックスの結果を示す。PDQ-39は、パーキンソン病に特異的な健康関連の質を評価する質問票である。患者は、6ヶ月の時点で、UPDRS II日常生活動作「OFF」スコアでベースラインから19.5ポイント、UPDRS IV治療の合併症「OFF」スコアでベースラインから3ポイント、およびPDQ-39サマリーインデックススコアでベースラインから32.1ポイントの平均改善を経験した。
【0032】
【
図10A-10B】
図10A~
図10Bは、ベクター投与後のPDのMPTPマカクモデルにおける臨床評価スコアおよび総移動距離(TDM)のパーセント変化の定量を示す。百分率は、各時点で得られた最後の3つのTDM値から計算した。データは、(MPTP後に対する)ベースラインとの比較またはMPTP後の値(3ヶ月および6ヶ月のデータ)との比較である。データは、平均±平均値の標準誤差を表す。p≦0.002
***
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
定義
以下の定義および方法は、本発明をより明確に定義し、本発明の実施において当業者に指針を与えるために提供される。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」または「an」または「the」は、文脈が明確に反対の意味を指示しなければ、複数表記を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「酵素(an enzyme)」という表記は、複数の酵素を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、「ベクター」という用語は、核酸(例えば、DNA)セグメントをある細胞から別の細胞に移す核酸分子に関して使用される。「媒体」または「送達ベクター」という用語は、「ベクター」と互換的に使用されることがある。任意の形態の媒体またはベクターがこの定義の中に包含されることが意図される。例えば、ベクター(例えば、ウイルスベクター)には、ウイルス粒子、プラスミド、トランスポゾンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係で配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と「機能的に連結」されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼせば、プロモーターはコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合には、同じ読み枠内にある。
【0036】
「変異体」という用語は、野生型配列からの1またはそれを超えるアミノ酸の変動を含む酵素を含む。例えば、変異体は、1またはそれを超えるアミノ酸の付加、欠失または置換を含むことができる。いくつかの実施形態において、変異体は、人工的に(例えば、部位特異的変異誘発によって)作製され得る。
【0037】
本明細書において、「相同体」という用語は、ドーパミン合成酵素と一定の相同性を有するタンパク質を意味する。本明細書において、「相同性」という用語は、「同一性」と同義であり得る。
【0038】
「対象」という用語は、「患者」と互換的に使用することができる。本開示の対象には、ヒトおよび動物(例えば、ブタ、ウシ、イヌ、ウマ、ロバ、マウス、ハムスター、サル)対象が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
核酸構築物
本開示のある特定の態様は、それぞれが酵素をコードする1つ、2つまたは3つの関心対象のヌクレオチド配列(NOI)を含むヌクレオチド配列を含む核酸構築物に関する。核酸構築物は、DNAまたはRNA配列、例えば合成RNA/DNA配列、組換えRNA/DNA配列(すなわち、組換えDNA技術の使用によって調製される)、cDNA配列、部分ゲノムDNA配列などであり得、これらの組み合わせを含む。本開示は、本開示の核酸構築物を含むベクター、例えばプラスミドも包含する。
【0040】
いくつかの実施形態において、核酸構築物中のNOIは、ドーパミン合成に関与する酵素をコードする。チロシンをレボドパ(L-ドパ)に変換する酵素チロシンヒドロキシラーゼ(TH)およびシクロヒドロラーゼ1(CH1)、ならびにL-ドパをドーパミンに変換する芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)を含む内因性ドーパミン合成を示す模式図が
図1に示されている。いくつかの実施形態において、NOIは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)、芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)またはこれらの機能的断片をコードする。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)、芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される酵素をコードする核酸を含む。それぞれ受託番号がX05290、U19523およびM76180である3つの完全長酵素すべての配列が利用可能である。
【0041】
いくつかの実施形態において、NOIは、ドーパミン合成酵素の全部または一部をコードすることができる。例えば、NOIは、酵素活性を保持するタンパク質の切断されたバージョン(truncated version)をコードすることができる。完全長THは、触媒ドメイン、四量体化ドメインおよびN末端調節ドメインを含む。いくつかの実施形態において、本開示の構築物のTHをコードするNOIは、触媒ドメインおよび四量体化ドメインを含有するが、機能的なN末端調節ドメインを欠く切断されたTHをコードする。いくつかの実施形態において、切断されたTHは、完全長酵素の活性を制限し得るドーパミンによるフィードバック阻害を回避する。
【0042】
いくつかの実施形態において、NOIは、ドーパミン合成酵素の変異体、相同体またはバリアントをコードすることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、相同配列は、アミノ酸またはヌクレオチドレベルで、野生型または参照配列と少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、相同体は、野生型または参照配列と同じ活性部位などを含み、またはコードする。同一性比較は、例えば、BLASTソフトウェアを使用して実施され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、NOIの1またはそれより多くは、コドン最適化されている。いくつかの実施形態において、NOIの1またはそれより多くは、コドン最適化されていない。
リンカー
【0045】
本開示のある特定の態様は、例えば本開示のレンチウイルスベクターゲノムを含むウイルスベクターであって、ドーパミン合成酵素をコードする3つのNOIを含む本開示の核酸構築物を含む、ウイルスベクターに関する。いくつかの実施形態において、ゲノムが酵素アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードするように、NOIの少なくとも2つはリンカーコード配列(L)によって連結されている。
【0046】
いくつかの実施形態において、適切なリンカーは、グリシン-セリンリピートなどのアミノ酸リピートを含み得る。リンカーの目的は、酵素の正しい形成および/または機能を可能にすることである。リンカーは、その目的を達成するために十分に柔軟であり、十分に長くなければならない。NOIは異なる酵素をコードすることができるので、リンカーは両方の酵素の機能を可能にする。柔軟なリンカーのコード配列は、それが翻訳休止を促進し、したがってNOIのタンパク質産物の独立した折り畳みを促進するように選択され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、適切なリンカーには、下記に開示されるリンカーが含まれるが、本開示は、これらの特定のリンカーに限定されない。
1.Somiaら、1993 PNAS 90,7889に記載されている(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号2)。
2.(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)5(配列番号4)。
3.酵母のHSF-1由来の(Asn-Phe-Ile-Arg-Gly-Arg-Glu-Asp-Leu-Leu-Glu-Lys-Ile-Ile-Arg-Gln-Lys-Gl-y-Ser-Ser-Asn)(配列番号5)、Wiederrechtら、1988 Cell 54,841を参照。
4.POU特異的なOCT-1由来の(Asn-Leu-Ser-Ser-Asp-Ser-Ser-Leu-Ser-Ser-Pro-Ser-Ala-Leu-Asn-Ser-Pro-Gl-y-Ile-Glu-Gly-Leu-Ser)(配列番号6)、Dekkerら、1993 Nature 362,852およびSturmら、1988 Genes and Dev.2,1582を参照。
5.RGD含有ラミニンペプチド由来の(Gln-Gly-Ala-Thr-Phe-Ala-Leu-Arg-Gly-Asp-Asn-Pro-GlnGly)(配列番号7)、Aumaillyら、1990 FEES Lett.262,82参照。
6.LDV含有リンカー由来の(Ser-Gly-Gly-Gly-Glu-Ile-Leu-Asp-Val-Pro-Ser-Thr-Gly-GlySer-Ser-Pro-Gly)(配列番号8)、Wickhamら、Gene Therapy 1995 2,750を参照。
【0048】
いくつかの実施形態において、以下のGS15柔軟なリンカーを使用することができる。(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3。(配列番号2)。GS5、GS15およびGS30リンカーも適切であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は2つのリンカーを含む、例えば、1つの融合タンパク質として発現されるために3つすべての酵素が連結され、2つの同一でないリンカーコード配列を選択することができ、あるいはリンカー配列は同一であり得る。リンカー配列は、アミノ酸レベルで同一であり得るが、それらのコード核酸配列は、遺伝暗号の縮重のために異なり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、TH遺伝子とCH1遺伝子間の改変GS15リンカーコード配列(GS15mod)が使用される。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド配列において使用されるリンカーコード配列は、ヒト使用のためにコドン最適化されていない、GS5、GS15およびGS30をコードするものなどのリンカーコード配列の改変された形態であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、リンカーコード配列は、以下の配列を含むことができる:GGAGGTGGCGGGTCCGGGGGCGGGGGTAGCGGTGGCGGGGGCTCC(配列番号1)。
【0052】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号2として示されるアミノ酸配列を有するリンカーをコードすることができ、ヌクレオチド配列は、配列番号3に示される配列に対する配列を含むことができる。(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号2);GGGGGAGGCGTAGCGGCGGAGGGGGCTCCGGCGGAGGCGGGAGC(配列番号3)。
【0053】
いくつかの実施形態において、構築物は、配列番号1として示されている配列を含むことができる。
【0054】
IRES
mRNA中のオープンリーディングフレームの間に配置されている場合、IRESは、IRESエレメントでのリボソームの進入を促進し、続いて下流の翻訳の開始を促進することによって、下流のオープンリーディングフレームの翻訳を可能にする。レトロウイルスベクターにおけるIRESエレメントの使用が研究されている(例えば、国際公開第93/0314号を参照)。レンチウイルスベクターにおいて使用するための適切なIRES配列は、国際公開第02/29065号に記載されている。いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物はIRESを含む。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、TH-L-CH1-IRES-AADCを含む。
【0055】
プロモーター
いくつかの実施形態において、IRESは、例えばAADC遺伝子の発現を制御するために、プロモーターによって置き換えることができる。AADC発現がIRESの制御下にある構成(configuration)においては、AADCレベルがドーパミン産生を制限し得る。
【0056】
NOIの発現は、制御配列、例えばプロモーター/エンハンサーおよびその他の発現調節シグナルを使用して制御することができる。原核生物プロモーターおよび真核細胞中で機能的なプロモーターを使用することができる。組織特異的または刺激特異的プロモーターを使用することができる。2またはそれを超える異なるプロモーター由来の配列エレメントを含むキメラプロモーターを使用することもできる。
【0057】
いくつかの実施形態において、適切な促進配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルスおよびサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムに由来するものまたはアクチンプロモーターもしくはリボソームタンパク質プロモーターなどの哺乳動物細胞プロモーターに由来するものを含む強力なプロモーターである。遺伝子の転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することによってさらに増加させることができる。エンハンサーは、相対的に方向および位置に依存しない;しかしながら、複製起点の後期側(late side)のSV40エンハンサー(bp 100~270)およびCMV初期プロモーターエンハンサーなどの真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用し得る。エンハンサーは、プロモーターに対して5’または3’の位置でベクター中にスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’の部位に位置する。いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物はCMVプロモーターを含む。
【0058】
プロモーターは、適切な宿主中での発現を確実にするためのまたは増加させるための特徴をさらに含むことができる。例えば、特徴は、保存領域、例えば、プリブノーボックスまたはTATAボックスであり得る。プロモーターは、ヌクレオチド配列の発現レベルに影響を及ぼす(例えば、維持する、増強する、減少させる)ための他の配列を含有することさえ可能である。適切な他の配列としては、Shl-イントロンまたはADHイントロンが挙げられる。その他の配列としては、温度、化学物質、光またはストレス誘導性要素などの誘導性要素が挙げられる。また、転写または翻訳を増強するための適切な要素が存在し得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、例えば、構成的または組織特異的であり得る。
【0060】
構成的プロモーター
いくつかの例において、好適な構成的プロモーターとしては、CMVプロモーター、RSVプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)およびチミジンキナーゼ(TK)プロモーターが挙げられる。
【0061】
組織特異的プロモーター
いくつかの例では、適切な組織特異的プロモーターには、シナプシン1、エノラーゼ、α-カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIおよびGFAPが含まれる。
【0062】
融合物
ある特定の実施形態において、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターは、TH、CHIおよび/またはAADCをコードするNOIを含む本開示の核酸構築物を含む。3つのうちの2つ、または3つすべての酵素は、例えば、柔軟なリンカーを使用することによって融合することができる。2つの酵素が融合される場合、第3の酵素をコードするNOIは、例えばIRESによって、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結されることができる。IRESは、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して5’または3’に配置され得る。あるいは、第3の酵素をコードするNOIは、プロモーターに機能的に連結されることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、
【0064】
その順序でCH1に連結されたTHを有する構築物(すなわち、TH-CH1融合タンパク質を形成する)は、高い絶対レベルのカテコールアミン産生を与え;
【0065】
いずれかの順序で連結されたAADCおよびTHを有する構築物(すなわち、AADC-THまたはTH-AADC融合タンパク質を形成する)は、L-ドパのドーパミンへの極めて効率的な変換を与える。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、CTではなく、TCの順序でTHとCH1の融合物をコードすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、以下から選択することができる。
TH-L-CH1-IRES-AADC;
AADC-L-TH-L-CH1;
TH-L-CH1-L-AADC;
TH-L-CH1-P-AADC;
TH-L-AADC-IRES-CH1;
AADC-L-TH-IRES-CH1;および
TH1-L-AADC-L-CH1;
L=リンカーコード配列
IRES:内部リボソーム進入部位
P=プロモーター
【0068】
上述のように、野生型THは、触媒ドメイン、四量体化ドメインおよびN末端調節ドメインを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、THをコードするNOIは、触媒ドメインおよび四量体化ドメインを含有するが、機能的なN末端調節ドメインを欠く切断されたTHをコードすることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、THの切断されたバージョンが、GS15リンカーを介してCH1に融合される。
【0071】
ウイルスベクター
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示によるヌクレオチド構築物配列を含むレンチウイルスベクターゲノムまたはアデノ随伴ウイルスベクターゲノムなどのウイルスベクターゲノムの使用に関する。本開示は、このようなゲノムを含むウイルスベクター産生系およびベクター粒子も提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示のウイルスベクターは、任意の適切なウイルスから誘導され得、または誘導可能であり得る。いくつかの実施形態において、組換えウイルス粒子は、関心対象のヌクレオチド配列(NOI)で標的細胞を形質導入することができる。
【0073】
レトロウイルス粒子の場合、細胞内に入ると、ベクター粒子からのRNAゲノムはDNAに逆転写され、標的細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0074】
レンチウイルスベクター
レンチウイルスは、レトロウイルスというより大きな群の一部である。レンチウイルスの詳細なリストは、Coffinら(1997)”Retroviruses”Cold Spring Harbor Laboratory Press Eds:J M Coffin,S M Hughes,H E Varmus pp 758-763)に見出され得る。手短に言えば、レンチウイルスは、霊長類群と非霊長類群に分けることができる。霊長類レンチウイルスの例としては、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるが、これらに限定されない。非霊長類レンチウイルスの群には、原型「遅発性ウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)ならびに関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。
【0075】
レンチウイルスは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染する能力を有するという点で、レトロウイルス科の他のメンバーとは異なる(Lewisら(1992)EMBO J 11(8):3053-3058)およびLewis and Emerman(1994)J Virol 68(1):510-516)。これに対して、MLVなどの他のレトロウイルスは、例えば筋肉、眼、脳、肺および肝臓組織を構成する細胞などの非分裂細胞やゆっくり分裂する細胞には感染することができない。
【0076】
ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)は、レトロウイルス科のレンチウイルス属のメンバーである。野生型EIAVウイルスは、核タンパク質コアを含有するエンベロープに包まれた球状のビリオンへとパッケージングされる二量体RNAゲノム(一本鎖、正の極性)を有する。野生型EIAVゲノムの複製は、逆転写および宿主細胞ゲノム中への組み込みを介して起こる。ゲノムは、構造タンパク質gag、polおよびenvをコードする3つの遺伝子、ならびに組み込まれたウイルスゲノムの各末端に長鎖末端反復配列(LTR)を含む。すべてのレトロウイルスに共通するgag、polおよびenv配列に加えて、EIAVゲノムはいくつかの短いオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。これらの短いORFは、多重スプライシングされたmRNAから翻訳される。ORF S1は転写トランス活性化因子latをコードする。ORF S2は機能が未知のタンパク質をコードし、ORF S3はrevタンパク質をコードするようである。revは、gag、potおよびenvの効率的な発現のために必要とされると考えられる。revは、EIAVではenv遺伝子内に位置するrev応答配列(RRE)として知られるRNA配列と相互作用することによって転写後に作用する。
【0077】
EIAVの野生型ゲノムは、R配列(ゲノムの各末端における短い反復);U5配列(R配列の直後に存在する固有の配列エレメント);U3配列(構造タンパク質の下流に位置する固有の配列エレメント);組み込まれたプロウイルスの転写開始を制御するプロモーターエレメント;パッケージング配列(本明細書では、パッケージング部位またはパッケージング信号と互換的に呼ばれる);および5’-スプライスドナー部位を含むいくつかのシス作用配列も含有する。
【0078】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスから誘導可能な少なくとも1つの成分部分を含むベクター、例えば送達ベクターであり得る。好ましくは、その成分部分は、ベクターが細胞に感染する、遺伝子を発現する、または複製される生物学的機序に関与する。
【0079】
レトロウイルスおよびレンチウイルスゲノムの基本的な構造は、5’LTRおよび3’LTRなどの多くの共通する特徴を共有し、それらの間またはそれらの中には、ゲノムをパッケージングすることを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノム中への組み込みを可能にする付着部位、ならびにパッケージング成分をコードするgag、polおよびenv遺伝子(これらは、ウイルス粒子の集合のために必要とされるポリペプチドである)が位置している。レンチウイルスは、HIV中のrevおよびRRE配列などのさらなる特徴を有し、それらは、組み込まれたプロウイルスのRNA転写物を感染した標的細胞の核から細胞質へと効率的に搬出することを可能にする。
【0080】
プロウイルスでは、ウイルス遺伝子の両端には、長鎖末端反復配列(LTR)と呼ばれる領域に挟まれている。LTRは、エンハンサー-プロモーター配列およびポリアデニル化シグナルとして働くことによって転写に関与しており、それによって、ウイルス遺伝子の発現を制御する。
【0081】
LTR自体は、U3、RおよびU5と称される3つの要素に分割することができる同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に固有の配列に由来する。Rは、RNAの両端で反復される配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に固有の配列に由来する。3つの要素の大きさは、異なるレトロウイルス間でかなり変動し得る。
【0082】
複製欠損レンチウイルスベクターゲノムでは、gag、polおよびenvは存在しなくてもよく、または機能しなくてもよい。
【0083】
本開示の典型的なレンチウイルスベクターでは、複製のために必須の1またはそれを超えるタンパク質コード領域の少なくとも一部がウイルスから除去され得る。これにより、ウイルスベクターは複製欠損となる。標的非分裂宿主細胞に形質導入することができる、および/またはそのゲノムを宿主ゲノム中に組み込むことができるNOIを含むベクターを作製するために、ウイルスゲノムの一部はNOIによっても置き換えられ得る。
【0084】
一実施形態においては、レンチウイルスベクターは、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2007/071994号に開示されているものなどの非組込み型ベクターである。
【0085】
いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルスRNAがないまたはそれを欠いている配列を送達する能力を有する。さらなる実施形態において、送達されるべきRNAのパッケージングを確実にするために、送達されるべきRNA上に位置する異種結合ドメイン(gagに対して異種)およびgagまたはpol上の同族結合ドメインを使用することができる。これらのベクターはいずれも、国際公開第2007/072056号に記載されている。
【0086】
レンチウイルスベクターは、「非霊長類」ベクター、すなわち、霊長類、特にヒトには主に感染しないウイルスに由来するベクターであり得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはEIAVに由来し得る。gag、polおよびenv遺伝子に加えて、EIAVは、3つの他の遺伝子:tat、revおよびS2をコードする。TatはウイルスLTRの転写活性化因子として作用し(Derse and Newbold(1993)Virology 194(2):530-536およびMauryら(1994)Virology 200(2):632-642)、Revはrev応答配列(RRE)を介してウイルス遺伝子の発現を調節および調整する(Martaranoら、(1994)J Virol 68(5):3102-3111)。これらの2つのタンパク質の作用機序は、霊長類ウイルスにおける類似の機序と概ね似ていると考えられている(Martaranoら、(1994)J Virol 68(5):3102-3111)。S2の機能は未知である。さらに、膜貫通タンパク質の開始部においてenvコード配列にスプライシングされたtatの第1のエクソンによってコードされるEIAVタンパク質、Ttmが同定されている(Beiselら(1993)J Virol 67(2):832-842)。
【0088】
「組換えレンチウイルスベクター」という用語は、パッケージング成分の存在下で、標的細胞に感染することができるウイルス粒子へのRNAゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なレンチウイルスの遺伝情報を有するベクターを指す。標的細胞の感染は、逆転写および標的細胞ゲノム中への組み込みを含み得る。組換えレンチウイルスベクターは、ベクターによって標的細胞に送達されるべき非ウイルスコード配列を担持する。組換えレンチウイルスベクターは、最終標的細胞内で感染性レンチウイルス粒子を産生するための独立した複製を行うことができない。通常、組換えレンチウイルスベクターは、機能的gag-polおよび/またはenv遺伝子および/または複製に必須のその他の遺伝子を欠く。本開示のベクターは、分割イントロン(split-intron)ベクターとして構成され得る。分割イントロンベクターは、PCT特許出願公開第99/15683号に記載されている。
【0089】
いくつかの実施形態において、本開示の組換えレンチウイルスベクターは、最小のウイルスゲノムを有し得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、「最小のウイルスゲノム」という用語は、非必須要素を除去し、必須要素を保持するようにウイルスベクターが操作されており、それにより標的宿主細胞に関心対象のヌクレオチド配列を感染させるため、形質導入するため、ならびに送達するために必要とされる機能を提供することを意味する。この戦略のさらなる詳細は、本発明者らの国際公開第98/17815号に見出すことができる。
【0091】
本開示のいくつかの態様において、ベクターは自己不活化ベクターである。いくつかの態様において、自己不活化レトロウイルスベクターは、3’LTRのU3領域中の転写エンハンサーまたはエンハンサーおよびプロモーターを欠失させることによって構築されている。一巡のベクター逆転写および組み込みの後、これらの変化は5’および3’LTRの両方の中にコピーされ、転写的に不活性なプロウイルスを産生する(Yuら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.83:3194-3198;DoughertyおよびTeminら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.84:1197-1201;Hawley(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.84:2406-2410およびYeeら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.91:9564-9568)。しかしながら、このようなベクター中のLTRの内部にある任意のプロモーターは依然として転写活性を有する。この戦略は、内部に配置された遺伝子からの転写に対するウイルスLTR中のエンハンサーおよびプロモーターの影響を排除するために使用されている。このような影響には、転写の増加(Jollyら(1983)Nucleic Acids Res.11:1855~1872)または転写の抑制(Emerman and Temin(1984)Cell 39:449-467)が含まれる。この戦略は、3’LTRからゲノムDNA内への下流転写を排除するためにも使用され得る(Herman and Coffin(1987)Science 236:845-848)。これは、内因性癌遺伝子の偶発的活性化を防止することが極めて重要であるヒト遺伝子治療において特に関心が持たれる。
【0092】
しかしながら、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生するために使用されるプラスミドベクターは、宿主細胞/パッケージング細胞中でゲノムの転写を指示するためにレンチウイルスゲノムに機能的に連結された転写調節制御配列も含む。これらの調節配列は、転写されたレンチウイルス配列、すなわち5’U3領域に付随する天然配列であり得、または別のウイルスプロモーター、例えばCMVプロモーターなどの異種プロモーターであり得る。一部のレンチウイルスゲノムは、効率的なウイルス産生のために追加の配列を必要とする。例えば、HIVの場合には、revおよびRRE配列が含まれることが好ましい。しかし、revおよびRREの必要性は、gag-polのコドン最適化(国際公開第01/79518号に記載されている)および/またはLTRの下流かつ内部プロモーターの上流にオープンリーディングフレームを含めること(国際公開第03/064665号に記載されている)によって低減または排除され得、例えば、本明細書に開示されている特定の構築物においてはneoが使用されているが、当業者は任意の適切なオープンリーディングフレームを使用することができる。rev/RRE系と同じ機能を果たす代替配列も公知である。例えば、rev/RRE系の機能的類似体が、マソン・ファイザー・サルウイルスにおいて見出されている。この要素は、構成的輸送要素(CTE)として知られており、ゲノム中にRRE型配列を含み、感染細胞中の因子と相互作用すると考えられている。この細胞因子は、rev類似体と考えることができる。したがって、CTEは、rev/RRE系の代替として使用され得る。公知であるまたは利用可能となる任意の他の機能的等価物が、本開示にとって適切であり得る。例えば、HTLV-IのRexタンパク質がHIV-1のRevタンパク質を機能的に置き換え得ることも公知である。RevおよびRexは、IRE-BPと同様の効果を有することも公知である。
【0093】
本開示によるレンチウイルスベクターは、好ましくはドーパミン合成経路に関与する3つの酵素をコードする、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)由来の自己不活化最小レンチウイルスベクターを含み得る。このようなベクターによってコードされるタンパク質は、切断された形態のヒトチロシンヒドロキシラーゼ遺伝子(THのフィードバック調節に関与するN末端160アミノ酸を欠く)、ヒト芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびヒトGTP-シクロヒドロラーゼ1(GTP-CH1)遺伝子を含み得る。ベクターは、以下をコードする3つのプラスミドによる細胞(例えば、HEK293T細胞)の一過性形質移入によって作製することができる。(1)本明細書に記載されているベクターゲノム(2)合成EIAV gag/pol発現ベクター(pESGPK、国際公開第01/79518号および国際公開第05/29065号)および(3)VSV-Gエンベロープ発現ベクター(pHGK)。
【0094】
パッケージング配列
「パッケージング配列」または「psi」と互換的に呼ばれる「パッケージング信号」という用語は、ウイルス粒子形成中にレンチウイルスRNA鎖のキャプシド封入のために必要とされる非コードシス作用配列に関して使用される。HIV-1では、この配列は、主要スプライスドナー部位(SD)の上流から少なくともgag開始コドンまで広がる遺伝子座にマッピングされている。
【0095】
本明細書中で使用される場合、「伸長されたパッケージング信号」または「伸長されたパッケージング配列」という用語は、gag遺伝子内へのさらなる伸長を伴ったpsi配列周囲の配列の使用を指す。これらの追加のパッケージング配列を含めることにより、ウイルス粒子中へのベクターRNAの挿入の効率を増加させ得る。
【0096】
偽型化
いくつかの実施形態において、本開示のレンチウイルスベクターは偽型化されている。これに関して、偽型化は1またはそれを超える利点を与えることができる。例えば、レンチウイルスベクターでは、HIVをベースとするベクターのenv遺伝子産物は、CD4と呼ばれるタンパク質を発現する細胞のみに感染するようにこれらのベクターを限定する。しかし、これらのベクター中のenv遺伝子が他のウイルス由来のenv配列で置換されれば、これらのベクターはより広い感染スペクトルを有し得る(Verma and Somia(1997)Nature 389(6648):239-242)。例として、Millerらは、両種指向性レトロウイルス4070A由来のエンベロープを用いてMoMLVベクターを偽型化した(Mol.Cell.Biol.5:431-437)。他の者は、VSV由来の糖タンパク質を用いてHIVをベースとするレンチウイルスベクターを偽型化した(Verma and Somia(1997)Nature 389(6648):239-242)。
【0097】
いくつかの実施形態において、Envタンパク質は、変異体Envタンパク質または操作されたEnvタンパク質などの改変されたEnvタンパク質である。改変は、標的化能力を導入するために、または毒性を低減するために、または別の目的のために作製または選択され得る(Marinら(1996)J Virol 70(5):2957-2962;Nilsonら(1996)Gene Ther 3(4):280-286;およびFieldingら(1998)Blood 91(5):1802-1809およびこれらの中で引用されている参考文献)。
【0098】
いくつかの実施形態において、ベクターは、例えば、狂犬病Gタンパク質またはVSV-Gタンパク質の少なくとも一部をコードする遺伝子を用いて偽型化されることができる。
【0099】
VSV-G
いくつかの実施形態において、ラブドウイルスである水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープ糖タンパク質(G)は、レンチウイルスを含むある特定のレトロウイルスを偽型化することができることが示されているエンベロープタンパク質である。
【0100】
レトロウイルスのエンベロープタンパク質の非存在下においてMoMLVをベースとするレトロウイルスベクターを偽型化するその能力は、Emiら(1991)J.Virol.65:1202-1207)によって最初に示された。国際公開第94/294440号は、レトロウイルスベクターがVSV-Gで首尾よく偽型化され得ることを教示している。これらの偽型化されたVSV-Gベクターは、広範囲の哺乳動物細胞を形質導入するために使用され得る。より最近では、Abeら、(1998)J.Virol 72(8):6356-6361は、VSV-Gの添加によって非感染性レトロウイルス粒子を感染性にすることができることを教示している。
【0101】
Burnsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-8037)は、VSV-Gを用いてレトロウイルスであるMLVを首尾よく偽型化し、これにより、その天然型のMLVと比較して変化した宿主域を有するベクターが得られた。VSV-Gで偽型化されたベクターは、哺乳動物細胞だけでなく、魚、爬虫類および昆虫に由来する細胞株にも感染することが示されている(Burnsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-8037)。VSV-Gで偽型化されたベクターは、様々な細胞株に対して従来の両種指向性エンベロープよりも効率的であることも示されている(Yeeら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9564-9568およびEmiら(1991)J.Virol.65:1202-1207)。VSV-Gタンパク質の細胞質尾部はレトロウイルスのコアと相互作用することができるので、VSV-Gタンパク質は、ある特定のレンチウイルスおよびレトロウイルスを偽型化するために使用することもできる。
【0102】
VSV-Gタンパク質などの非レンチウイルスの偽型化エンベロープの提供は、感染性を失うことなくベクター粒子を高力価に濃縮できるという利点をもたらす(Akkinaら(1996)J.Virol.70:2581-2585)。レンチウイルスおよびレトロウイルスエンベロープタンパク質は、おそらく2つの非共有結合的に連結されたサブユニットからなるので、超遠心分離中の剪断力に明らかに耐えることができない。サブユニット間の相互作用は、遠心分離によって破壊され得る。比較すると、VSV糖タンパク質は単一の単位から構成されている。したがって、VSV-Gタンパク質偽型化は潜在的な利点を提供し得る。
【0103】
国際公開第00/52188号は、膜結合型ウイルスエンベロープタンパク質として水疱性口内炎ウイルス-Gタンパク質(VSV-G)を有する偽型化されたレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターの安定した産生細胞株からの作製を記載しており、VSV-Gタンパク質の遺伝子配列を提供している。
【0104】
ロスリバーウイルス
ロスリバーウイルスのエンベロープは、非霊長類レンチウイルスベクター(FIV)を偽型化するために使用されており、全身投与後に主に肝臓を形質導入した(Kangら(2002)J Virol 76(18):9378-9388.)。効率は、VSV-G偽型化ベクターで得られたものより20倍大きく、肝毒性を示唆する肝酵素の血清レベルによって測定したところ、より低い細胞傷害性を生じさせることが報告された。
【0105】
ロスリバーウイルス(RRV)は、蚊によって拡散されるアルファウイルスであり、オーストラリアの熱帯および温帯地域特有に蔓延している。マレーバレーリバー系の平原では血清有病率が27~37%に達するが、温帯沿岸地域の通常の集団における抗体率は低い傾向がある(6%~15%)。1979年から1980年にかけて、ロスリバーウイルスが太平洋諸島において流行した。この疾患はヒト間では伝染せず、致死的ではなく、最初の症状は、患者の約半数における疲労と嗜眠を伴う関節痛である(Fields Virology Fifth Edition(2007)Eds.KnipeおよびHowley.Lippincott WilliamsおよびWilkins)。
【0106】
バキュロウイルスGP64
バキュロウイルスGP64タンパク質は、臨床および商業用途のために必要とされる高力価ウイルスの大規模生産において使用されるウイルスベクターのための、VSV-Gに代わる魅力的な手段であることが示されている(Kumar M,Bradow B P,Zimmerberg J(2003)Hum.Gene Ther.14(1):67-77)。VSV-G-偽型化ベクターと比較して、GP64偽型化ベクターは、類似の広い指向性および類似の天然の力価を有する。GP64発現は細胞を死滅させないので、GP64を構成的に発現する293Tベースの細胞株を作製することができる。
【0107】
狂犬病G
本開示では、ベクターは、狂犬病Gタンパク質またはその変異体、バリアント、相同体もしくは断片の少なくとも一部で偽型化され得る。
【0108】
狂犬病Gタンパク質およびその変異体に関する教示は、国際公開第99/61639号ならびにRose et al (1982) J. Virol. 43:361-364, Hanham et al (1993) J. Virol. 67:530-542; Tuffereau et al (1998) J. Virol. 72:1085-1091, Kucera et al (1985) J. Virol. 55:158-162; Dietzschold et al (1983) PNAS 80:70-74; Seif et al (1985) J. Virol. 53:926-934; Coulon et al (1998) J. Virol. 72:273-278; Tuffereau et al (1998) J. Virol. 72:1085-10910; Burger et al (1991) J. Gen. Virol. 72:359-367; Gaudin et al (1995) J. Virol. 69:5528-5534; Benmansour et al (1991) J. Virol. 65:4198-4203; Luo et al (1998) Microbiol. Immunol. 42:187-193, Coll (1997) Arch. Virol. 142:2089-2097; Luo et al (1997) Virus Res. 51:35-41; Luo et al (1998) Microbiol. Immunol. 42:187-193; Coll (1995) Arch. Virol. 140:827-851; Tuchiya et al (1992) Virus Res. 25:1-13; Morimoto et al (1992) Virology 189:203-216; Gaudin et al (1992) Virology 187:627-632; Whitt et al (1991) Virology 185:681-688; Dietzschold et al (1978) J. Gen. Virol. 40:131-139; Dietzschold et al (1978) Dev. Biol. Stand. 40:45-55; Dietzschold et al (1977) J. Virol. 23:286-293およびOtvos et al (1994) Biochim. Biophys. Acta 1224:68-76.に見出され得る。狂犬病Gタンパク質は、欧州特許第0445625号明細書にも記載されている。
【0109】
代替エンベロープ
レンチウイルスベクターを偽型化するために使用することができる他のエンベロープとしては、モコラ、エボラ、4070AおよびLCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)が挙げられる。
【0110】
アデノ随伴ウイルスベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターはパッケージング能力が限られており、したがって、効率的に送達され得る遺伝子の数に悪影響を及ぼすことが当技術分野において公知であった。しかしながら、現在では、この制限はAAV血清型に依存することが知られている。例えば、AAV5およびAAV7血清型のキャプシドは、最大8kbのゲノムをパッケージングすることができる。この研究は、米国特許第7,943,374号に記載されている。さらに、米国特許出願公開第2009/0214478号は、最大9kbまでのパッケージング能力を有するAAV2/5組換えベクターを記載している。
【0111】
AAVベクターの特徴は、当業者に周知である。例えば、AAVベクターは広い宿主域を有し、比較的低い免疫原性で分裂細胞と非分裂細胞の両方を形質導入する。シス作用性AAVエレメント、末端逆位反復配列(ITR)、DNAパッケージングシグナルおよび複製起点のみをそのままにして、すべてのAAVウイルス遺伝子を遺伝子カセットで置き換える方法も周知である。例えば、Musatovら、J.Virol.,December 2002,76(24)を参照。AAV遺伝子産物であるRepおよびCapならびにその他のアクセサリータンパク質が別に(in trans)与えられると、AAVは産生細胞中でパッケージングされ得る。AAVパッケージング系は記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号を参照。非AAVアクセサリー機能は、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルスなどの公知のヘルパーウイルスのいずれによっても供給され得る。このようなAAVパッケージング系は、例えば、米国特許第4,797,368号;米国特許第5,139,941号;米国特許第5,866,552号;米国特許第6,001,650号;米国特許第6,723,551号に記載されている。
【0112】
コドン最適化
いくつかの実施形態において、本開示において使用されるポリヌクレオチド(核酸構築物、NOIおよび/またはベクター成分の全部または一部を含む)は、コドン最適化され得る。コドン最適化は、国際公開第99/41397号および国際公開第01/79518号に以前に記載されている。異なる細胞は、特定のコドンの使用が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対存在量のバイアスに対応する。コドンが対応するtRNAの相対存在量と一致するように調整されるように配列中のコドンを変更することによって、発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型において稀であることが知られているコドンを意図的に選択することによって、発現を減少させることが可能である。したがって、さらなる程度の翻訳の制御が利用可能である。
【0113】
HIVおよび他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは、多数の稀なコドンを使用し、これらを一般的に使用される哺乳動物コドンに対応するように変更することによって、哺乳動物産生細胞中での関心対象の遺伝子、例えばNOIまたはパッケージング成分の発現の増加を達成することができる。コドン使用頻度表は、哺乳動物細胞および様々な他の生物について当技術分野で公知である。
【0114】
ウイルスベクター成分のコドン最適化は、多くの他の利点を有する。その配列の変化のために、産生細胞/パッケージング細胞中でのウイルス粒子の集合のために必要とされるウイルス粒子のパッケージング成分をコードするヌクレオチド配列は、該ヌクレオチド配列から除去されたRNA不安定性配列(INS)を有する。同時に、パッケージング成分に対するアミノ酸配列コード配列は、これらの配列によってコードされるウイルス成分が同じままであるように、またはパッケージング成分の機能が損なわれないように少なくとも十分に類似するように保持される。レンチウイルスベクターでは、コドン最適化は、搬出のためのRev/RREの必要性も克服し、最適化された配列をRev非依存性にする。コドン最適化は、ベクター系内の異なる構築物間(例えば、gag-polおよびenvオープンリーディングフレーム中の重複領域間)での相同組換えも低下させる。いくつかの実施形態において、コドン最適化の全体的な効果は、ウイルス力価の顕著な増加および改善された安全性である。
【0115】
いくつかの実施形態において、INSに関連するコドンのみがコドン最適化される。しかしながら、いくつかの実施形態において、配列は、いくつかの例外、例えばgag-polのフレームシフト部位を包含する配列を除いて、その全体がコドン最適化されている(下記参照)。
【0116】
gag-pol遺伝子は、gag-polタンパク質をコードする2つの重複する読み枠を含む。両タンパク質の発現は、翻訳中のフレームシフトに依存する。このフレームシフトは、翻訳中のリボソーム「翻訳スリップ」の結果として生じる。この翻訳スリップは、少なくとも一部は、RNA二次構造によるリボソームの失速によって引き起こされると考えられている。このような二次構造は、gag-pol遺伝子中のフレームシフト部位の下流に存在する。HIVの場合、重複領域は、gagの始まりの下流にあるヌクレオチド1222(ヌクレオチド1はgag ATGのAである)からgagの終わり(nt 1503)まで広がる。その結果、フレームシフト部位および2つの読み枠の重複領域にまたがる281 bp断片は、好ましくはコドン最適化されない。この断片を保持することにより、gag-polタンパク質のより効率的な発現が可能になる。
【0117】
EIAVの場合、重複の開始はnt 1262であると解されている(ヌクレオチド1はgag ATGのAである)。重複の末端は1461 bpにある。フレームシフト部位およびgag-pol重複が確実に保存されるようにするために、野生型配列はnt 1156から1465まで保持されている。
【0118】
例えば、好都合な制限部位を収容するために、最適なコドン使用からの誘導を施すことができ、保存的アミノ酸変化がgag-polタンパク質中に導入され得る。
【0119】
一実施形態において、コドン最適化は、少量発現される哺乳動物遺伝子に基づく。各コドンの3番目の塩基、時には2番目および3番目の塩基を変化させ得る。
【0120】
遺伝暗号の縮重性のために、多数のgag-pol配列が当業者によって達成され得ることが理解される。また、コドン最適化されたgag-pol配列を生成するための出発点として使用することができる多くのレトロウイルスバリアントが記載されている。レンチウイルスのゲノムは極めて可変的であり得る。例えば、依然として機能的であるHIV-1の多くの準種が存在する。これはEIAVにも当てはまる。これらのバリアントは、形質導入過程の特定の一部を強化するために使用され得る。HIV-1バリアントの例は、Los Alamos National Securityによって運営されているHIVデータベースで見出され得る。EIAVクローンの詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースで見出され得る。
【0121】
コドン最適化されたgag-pol配列に対する戦略は、任意のレトロウイルスに関して使用することができる。これは、EIAV、FIV、BIV、CAEV、VMR、SIV、HIV-1およびHIV-2を含むすべてのレンチウイルスに適用される。さらに、この方法は、HTLV-1、HTLV-2、HFV、HSRVおよびヒト内因性レトロウイルス(HERV)、MLVおよび他のレトロウイルス由来の遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。
【0122】
コドン最適化は、gag-pol発現をRev非依存性にすることができる。しかしながら、レンチウイルスベクターにおける抗rev因子またはRRE因子の使用を可能にするためには、ウイルスベクター生成系を完全にRev/RRE非依存性にすることが必要である。したがって、ゲノムも改変される必要がある。これは、ベクターゲノム成分を最適化することによって達成される。有利には、これらの改変によって、産生細胞中および形質導入された細胞中の両方において、すべての追加のタンパク質が存在しないより安全な系の作製ももたらされる。
【0123】
活性
本開示のある特定の態様において、本開示の融合構築物は、機能的ドーパミン合成酵素を産生し、国際公開第02/29065号に記載されているIRES配列によって隔てられたドーパミン合成酵素をコードする3つの遺伝子のすべてを有する構築物を使用して得られるレベルと比較すると、ドーパミン産生の増加を引き起こすことができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、細胞内で発現されたときに、国際公開第2001/04433号に記載されているベクターpONYK1より増加したL-ドパおよび/またはドーパミン産生を引き起こすことができる。
【0125】
本開示のベクターは、ドーパミンおよび/またはL-ドパ産生の少なくとも2、3、5、10、15、20、30、40、50、60、80、80、90、100、120、130、140、150、160、200、500、1000倍の増加を与えることができる。
【0126】
本開示のベクターは、例えばHEK293T細胞またはPC-12細胞において発現された場合に、pONYK1と比較すると、増加したL-ドパおよび/またはドーパミン産生を引き起こすことができる。
【0127】
ドーパミンまたはL-ドパの産生は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの当技術分野で公知の数多くの方法のいずれによっても測定することができる。
【0128】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、コードされるタンパク質が物理的に互いに近接しており、それによって互いとの相互作用を促進するので、L-ドパおよび/またはドーパミン合成が融合タンパク質によって増加されることを示唆する。各酵素の物理的な近接は、ある酵素から別の酵素への効率的な代謝物の流れを促進して、最大のL-ドパまたはドーパミン産生を可能にし得るので、これは、ドーパミン生合成経路の酵素にとって特に有利である。
【0129】
いくつかの実施形態において、本開示の融合構築物は、ベースラインと比較して、改善されたL-ドパ産生および改善されたドーパミン産生を提供し、いくつかの実施形態では、ProSavin(登録商標)などの他の構築物と比較される。
【0130】
医薬組成物および投薬
本開示の、核酸構築物を含むウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)は、医薬組成物の形態で提供することができる。医薬組成物は、遺伝子療法によって個体を処置するために使用することができ、組成物は、治療有効量の本開示の構築物を含むウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)を含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、ウイルス調製物は超遠心分離によって濃縮することができる。いくつかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2009/153563号に開示されている方法のいずれに従っても処理することができる。
【0132】
治療有効量のウイルスベクターは、ウイルスベクターが臨床的に適切な効果を提供するように、本開示の核酸構築物を標的細胞集団または標的組織に送達するのに十分な量である。有効量は、対象の種、年齢、体重、健康、および標的とされるべき組織などの因子に依存し得、したがって動物および組織間で異なり得る。医薬組成物は、ヒト対象を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態において、対象は、神経変性疾患または対象においてドーパミンレベルが低下する疾患に罹患している。いくつかの実施形態において、ヒトはパーキンソン病、例えば両側性特発性パーキンソン病に罹患している。
【0133】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本開示のウイルスベクター、例えばレンチウイルス粒子を含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、少なくとも106の形質導入単位(TU)、例えば、1×106TU~5×108TU(両端を含む)を含むことができる。TUは、例えば、組み込み(DNA)力価アッセイを使用して、組み込み事象の数に基づいて計算することができる。ベクター力価は、標準的なHEK293T細胞株に対して滴定された(titred)ベクター強度に対してmL当たりのTU(TU/mL)で、または対象に送達される目標用量(TU/対象)(例えば、ベクターの目標強度に対して計算される)として表すことができる。
【0134】
いくつかの実施形態において、目標用量は、2×106TU/対象~2×108TU/対象、3×106TU/対象~2×108TU/対象;4×106TU/対象~2×108TU/対象、5×106TU/対象~2×108TU/対象、6×106TU/対象~2×108TU/対象、7×106TU/対象~2×108TU/対象、8×106TU/対象~2×108TU/対象または9×106TU/対象~2×108TU/対象を含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、目標用量は、1×107TU/対象~1×108TU/対象;2×107TU/対象~1×108TU/対象;3×107TU/対象~1×108TU/対象;4×107TU/対象~1×108TU/対象、5×107TU/対象~1×108TU/対象、6×107TU/対象~1×108TU/対象、7×107TU/対象~1×108TU/対象、8×107TU/対象~1×108TU/対象または9×107TU/対象~1×108TU/対象を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、総目標用量は、1×107TU/対象~2×107TU/対象、2×107TU/対象~3×107TU/対象、3×107TU/対象~4×107TU/対象、4×107TU/対象~5×107TU/対象、5×107TU/対象~6×107TU/対象、6×107TU/対象~7×107TU/対象、7×107TU/対象~8×107TU/対象、8×107TU/対象~9×107TU/対象または9×107TU/対象~1×108TU/対象を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、目標用量は、約1×106TU/対象~5×108TU/対象、4×106TU/対象~8×106TU/対象;8×106TU/対象~4×107TU/対象;または1×107TU/対象~5×108TU/対象である。いくつかの実施形態において、目標用量は、約1.5×107TU/mL~5×107TU/mLである。
【0138】
いくつかの実施形態において、目標用量は、約2×106TU/対象、約1.4×107TU/対象、約1.5×107TU/対象、約1.6×107TU/対象、約1.7×107TU/対象、約1.8×107TU/対象、約1.9×107TU/対象、約2×107TU/対象、約2.1×107TU/対象、約2.2×107TU/対象、約2.3×107TU/対象、約2.4×107TU/対象または約2.5×107TU/対象である。
【0139】
いくつかの実施形態において、目標ベクター用量強度は、5×106TU/mL~5×108TU/mL、5×106TU/mL~5×107TU/mL、1×107TU/mL~5×107TU/mL、1.5×107TU/mL~5×107TU/mLまたは5×107TU/mL~5×108TU/mLを含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、総目標ベクター用量は、被殻内に直接、制御された速度(例えば、約2~4μL/分)で、複数の少容量(例えば、50~200μL)で、対象に投与される。
【0141】
組成物は、必要に応じて、薬学的に許容され得る担体、賦形剤または希釈剤を含み得る。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な薬学の慣行に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤または希釈剤として(またはこれらに加えて)、任意の適切な結合剤(複数可)、滑沢剤(複数可)、懸濁化剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)および標的部位中へのウイルスの侵入を補助または増加させ得る他の担体剤を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、等張化剤、凍結保存助剤、pH緩衝剤、pH調整剤またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、等張化剤は塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、凍結保存助剤は、マンニトールおよび/またはスクロースを含む。いくつかの実施形態において、pH緩衝剤はトロメタミン(TRIS)を含む。いくつかの実施形態において、pH調整剤は塩酸(HCl)を含む。いくつかの実施形態において、希釈剤は水である。
【0142】
投与
いくつかの実施形態において、本開示の構築物を含むウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)は、例えば尾状核被殻中への注射によって脳に投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは感覚運動被殻への注射によって投与される。いくつかの実施形態において、ベクターは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,339,512号に開示されている方法のいずれかに従って、脳に連続的に注入される。
【0143】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、非ドーパミン作動性神経細胞中でのコードされたタンパク質の発現を可能にするPD対象の感覚運動被殻中への局所的両側性定位注入によって投与される。いくつかの実施形態において、投与は、複数の少容量(例えば、50~200μL)で、制御された速度(約2~4μL/分、例えば3μL/分)にて、被殻内に直接、第1の半球中の1つ~6つ、例えば3つの路および第2の半球中の1つ~6つ、例えば3つの路を介して為される。
【0144】
ウイルスベクターは、半球当たり1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれを超える路を介して投与することができる。
【0145】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターのための以前に記載された投与系として投与することができ(Jarrayaら(2009)Sci Transl Med 14:1(2)2-4)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、ウイルスベクター組成物は、路の底部に一定分量(2~4μL)を投与し、針を少し引き抜いた後、第2の一定分量(2~4μL)を投与し、針をさらに少し引き抜き(2回目)、次いで、第3の一定分量(2~4μL)を投与することによって、不連続的なまたは「点状の」様式で投与することができ、このようにして、一定分量が各穿刺経路に沿って3点で堆積され、合計約10μLを送達する。
【0146】
使用の方法
本開示のある特定の態様は、(a)運動機能を改善すること、(b)ジスキネジアを軽減すること、および/または(c)対象のL-ドパもしくはLEDの1日用量の低減を可能にすることの1またはそれより多くをパーキンソン病に罹患している対象に提供する方法であって、本明細書に開示される核酸構築物を含むウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)を、該ウイルスベクターを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
【0147】
本開示のある特定の態様は、本明細書に開示される構築物を含むウイルスベクターを投与することを含む、運動機能を改善するおよび/またはジスキネジアを患っている対象におけるジスキネジアを軽減させる方法に関する。
【0148】
PDの薬理学的処置に影響を及ぼす主要な問題の1つは、L-ドパ治療をいつ開始するかを決定することである。早期投与は最大の臨床的利益を与えることが示されているが、L-ドパによる長期処置は不快な運動副作用を伴うことが知られている。その結果、多くの医師は、初期治療としてL-ドパの実施を遅らせることを好む。しかしながら、L-ドパは、副作用としてジスキネジアを誘発する。
【0149】
いくつかの実施形態において、対象は、神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが対象中において低下する疾患に罹患している。いくつかの実施形態において、対象はパーキンソン病を有する。いくつかの実施形態において、対象はL-ドパ(レボドパとしても知られている)治療を受けている。いくつかの実施形態において、対象はレボドパ換算用量(LED)治療を受けている。いくつかの実施形態において、対象にはカルビドパも投与される。
【0150】
いくつかの実施形態において、L-ドパまたはLED治療を受けている患者に投与されると、本明細書に開示されている核酸構築物を含むウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)は、症状の漸減を向上させ、L-ドパまたはLED治療の投与に伴うジスキネジアを低減させながら、L-ドパの1日投与量を低減させることを可能にする。この併用処置は、パーキンソン病患者の運動機能性の改善をもたらし、薬理学的治療によって誘発される運動の変動も改善する。この組み合わせは、ジスキネジア、「オン-オフ」およびウェアリング・オフ現象を特に減少させる。いくつかの実施形態において、ジスキネジアの減少は、「OFF」および「ON」状態でラッシュジスキネジア評価尺度(RDRS)を使用して、ベースラインからの評価尺度に基づいて判定される。
【0151】
いくつかの実施形態において、ジスキネジアは、以下:(a)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、日常生活に支障となるジスキネジアを伴うハウザー日記ON時間(Hauser diary ON time)の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%の減少;(b)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、UPDRS-IVスコアの少なくとも50%の減少、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも74%または少なくとも75%の減少、および(c)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、ラッシュジスキネジアスコアの少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%または少なくとも25%の改善、の1またはそれより多くによって示されるように、前記対象において減少する。
【0152】
いくつかの実施形態において、運動機能に対する臨床的な標準化された測定、例えば、UPDRS-III(運動)OFFスコアが、本開示の核酸構築物を含むウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)の投与後に改善される。いくつかの実施形態において、運動機能は、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後の平均UPDRS-III(運動)OFFスコアの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも45%または少なくとも50%の増加によって示されるように改善される。いくつかの実施形態において、運動機能は、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後の平均UPDRS-III(運動)OFFスコアの少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも30または少なくとも35ポイントの増加によって示されるように改善される。
【0153】
いくつかの実施形態において、投与後約3ヶ月に、対象の平均UPDRS OFF総スコアは、ベースラインから少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも55%または少なくとも60%改善する。いくつかの実施形態において、対象のベースラインUPDRSパートIII(運動)OFFスコアは、30~60である。
【0154】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物を含むウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)の投与後に、UPDRS-II(日常生活動作)OFFスコアが改善される。いくつかの実施形態において、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後の平均UPDRS-II OFFスコアの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%の増加によって示されるように、UPDRS-II OFFスコアが改善される。いくつかの実施形態において、運動機能は、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後の平均UPDRS-II OFFスコアの少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも30または少なくとも35ポイントの増加によって示されるように改善される。
【0155】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物を含むウイルスベクター(例えば、Lenti-PD)の投与後に、UPDRS-IV(治療の合併症)OFFスコアが改善される。いくつかの実施形態において、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後の平均UPDRS-IV OFFスコアの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%の増加によって示されるように、UPDRS-IV OFFスコアが改善される。いくつかの実施形態において、運動機能は、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後の平均UPDRS-II OFFスコアの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10または少なくとも12ポイントの増加によって示されるように改善される。
【0156】
いくつかの実施形態において、本開示のウイルスベクターは、神経学的状態を処置するために使用することができる。例えば、ベクターは、パーキンソン病(PD)などの神経変性疾患の処置および/または予防に有用であり得る。疾患は、対象におけるL-ドパおよび/またはドーパミンの産生によって処置可能であり得る。疾患は、パーキンソン病、例えば、両側性特発性パーキンソン病であり得る。いくつかの実施形態において、処置は、PDの後期段階のためのものであり、例えば、経口L-ドパ処置に対して難治性になった患者における処置である。
【0157】
本明細書に記載されているある特定の構築物は、L-ドパの産生を増加させ、および/またはドーパミンの産生を増加させる。L-ドパの増加された産生は、残存するAADC酵素活性を保持し、したがってL-ドパをドーパミンに変換することが少なくとも部分的に可能である患者において有用であり得る。これらの患者は、従来のL-ドパ処置に対して感受性であり得る。例えば、TH-L-CH1-IRES-AADC構築物は、高レベルのドーパミンおよびL-ドパの両方を産生したのに対して、TH-L-AADC-IRES-CH1およびAADC-L-TH-L-CH1は、L-ドパと比較してより高レベルのドーパミンを産生した。
【0158】
ドーパミンの増加した産生は、L-ドパを処理するのに十分な内因性AADC活性を欠き、したがって従来のL-ドパ処置に対する感受性がより低い後期患者において有用であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、対象はL-ドパまたはLED治療(LED=L-ドパ換算用量の薬物)中である。いくつかの実施形態において、対象は、L-ドパまたはLED治療を受けている。いくつかの実施形態において、対象のL-ドパまたはLED治療用量は、本開示の核酸構築物の投与前の対象のL-ドパまたはLED治療用量と比較して、本開示の核酸構築物(construction)を含むウイルスベクターの投与後に減少する。いくつかの実施形態において、平均1日(average daily)L-ドパまたはLED治療用量は、本開示の核酸構築物を含むウイルスベクターの投与3ヶ月後に、ベースラインから少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%または少なくとも25%減少する。
【0160】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、パーキンソン病の1またはそれを超える症状を改善する。いくつかの実施形態において、1またはそれを超える症状は、振戦、運動緩徐、筋肉硬直、姿勢および/または平衡障害、自動運動の喪失、発話困難ならびに微細運動技能の困難からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、症状は、振戦または揺れを含み、通常は四肢、しばしば手または指において始まる。いくつかの実施形態において、症状は、運動緩徐(鈍化した動き)を含む。時が経過するにつれて、パーキンソン病は、対象の動きを遅くして、単純な作業が困難になり、時間を要するようになる。いくつかの実施形態において、症状は、筋肉硬直、例えば、対象の身体の任意の部分における筋肉のこわばりを含む。こわばった筋肉は、痛みを伴い、可動域を制限することがある。いくつかの実施形態において、症状は、姿勢および/または平衡障害を含む。いくつかの実施形態において、症状は、発話困難を含む。いくつかの実施形態において、症状は、微細運動技能、例えば筆記の困難を含む。
【0161】
ここで、実施例によって本開示をさらに説明するが、実施例は本開示を実施する上で当業者を補助するのに役立つことが意図されており、決して本発明の範囲を限定することが意図されているわけではない。
【実施例】
【0162】
[実施例1]
「Lenti-PD」は、非病原性野生型ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に基づく非複製非霊長類組換えレンチウイルスベクター(LV)である。野生型EIAVゲノムは6つの異なる遺伝子単位を有するが、これらのEIAV配列の大部分(約90%)が除去されて、元のウイルスゲノムの10%未満を含有し、天然のウイルスプロモーターまたはエンハンサーのいずれも含有せず、EIAVゲノム中またはパッケージング系中のいずれにもアクセサリータンパク質のコード領域が存在しない複製欠損最小ベクター系が作製された。Lenti-PDは、切断型のヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ヒトGTP-シクロヒドロラーゼ1(CH1)およびヒト芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードするドーパミン酵素融合プラスミドを含有する。Lenti-PD構築物を
図2Aに示す。
【0163】
ProSavin(登録商標)は、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)ベースのLVである。ProSavin(登録商標)も、コード配列TH、AADCおよびCH1を含むトリシストロン性構築物を含有し、この構築物中では、これらのコード配列は2つの内部リボソーム進入部位(IRES)によって機能的に連結されている。ProSavin(登録商標)の構築物を
図2Bに示す。
【0164】
ProSavin(登録商標)構築物とLenti-PD構築物との相違には、Lenti-PDでは、発現を増強するためにCH1がプロモーターにより近接するように動かされており、Lenti-PDでは、共局在化を確実にするためにTHとCH1が柔軟なリンカーによって連結されていることが含まれる。
【0165】
プラスミドを調製するために、より最近ではpONY8.9.4TY(KanR遺伝子を含有する)として記載されている最小のpONYK1ゲノムプラスミド(Jarrayaら、2009,Science Translational Medicine 1,2ra4)を使用した。このプラスミドは、pONY8.0Tを基礎とするものであり、pONY8.0Tは、Azzouz Mら(Azzouzら、2002 J Neurosci 22,10302-10312)によってより詳細に記載されている。簡単に記載すると、pONYK1は、(順番に)Neo、内部CMVプロモーター、切断され、コドン最適化されたヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)、EMCV内部リボソーム進入部位(IRES)、コドン最適化されたヒト芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)、ポリオウイルスIRES、GTP-シクロヒドロラーゼI(GTP-CH1)およびウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含有するカセットがその中に挿入されたEIAV SINベクターゲノムである。合成されたDNA(GeneArt、Germany)の領域をトリシストロン性カセット中に挿入し、EMCV IRES領域および第1の遺伝子の終止コドンをGS15リンカーで置き換えることによって、2つの融合された遺伝子(THおよびCH1)と1つのPV IRESエレメントとを含有するLenti-PD融合プラスミドを作製した。GS15リンカーは、3回繰り返された、1個のセリンアミノ酸が後続する4個のグリシンアミノ酸をコードし、15アミノ酸のリンカーを生じる。このGS15リンカーのDNA配列は以下のとおりである。
GGGGGAGGCGGTAGCGGCGGAGGGGGCTCCGGCGGAGGCGGGAGC(配列番号3)。
【0166】
VSV-GエンベロープおよびEIAV合成Gag/Polプラスミドを、HEK293T細胞中でのウイルスベクター産生のために使用した。組み込み(DNA)力価アッセイによって、形質導入単位/ml(TU/ml)でのベクター力価を推定した。
【0167】
Lenti-PDは、ProSavin(登録商標)と比較して、インビトロにおいて初代ヒト神経細胞中でドーパミンおよびL-ドパの産生のより大きな増加を達成した(
図3)。
【0168】
[実施例2]
第2相パーキンソン病試験(低用量-コホート1)
両側性特発性パーキンソン病(PD)を有する対象(48~70歳)において、Lenti-PDの第2相試験(SUNRISE-PD、NCT03720418)を開始した。診断は、英国パーキンソン病学会(PDS)ブレインバンク基準を使用して行ったが、1人を超える罹患した血縁者を有する対象を特に除外しなかった。臨床試験研究設計のパートAは、
図4Aに示されている用量漸増部分である。臨床試験研究のパートBは、
図4Bに示されているような拡大コホート対模倣手術手順部分である。
【0169】
Lenti-PDは、ドーパミン合成のために必要とされる一群の酵素をコードするための単一のレンチウイルスベクターを介して、3つの酵素:切断型のヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ヒトGTP-シクロヒドロラーゼ1(CH1)およびヒト芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードする遺伝子を送達する。
【0170】
進行中の第2相試験の用量漸増部分の用量レベル1コホートにおいて、2名の対象に4.2×106TUのLenti-PDを投与し、Lenti-PDの最低計画用量を試験した。この「低用量」コホート(用量レベル1)からの3ヶ月目データを収集した。このコホートは、低用量でLenti-PDの1回投与を受けた進行したパーキンソン病の対象2名を含んでいた。
【0171】
以下のもの:マンニトール(1.0% w/v)、トロメタミン(TRIS)(20mM)、スクロース(1.0%)、塩化ナトリウム(100mM)、塩酸(pH 7.3になるように適量)および注射用水を用いて、線条体注入のための液体生成物としてLenti-PDを製剤化した。
【0172】
非ドーパミン作動性神経細胞中でのコードされたタンパク質の発現を可能にするPD対象の感覚運動被殻中への局所的両側性定位注入によって、Lenti-PDを対象に送達した。少容量(100μL)で、制御された速度(約3μL/分)にて、被殻内に直接、Lenti-PDが投与され、第1の半球中の3つの路および第2の半球中の3つの路を介して為された。
【0173】
統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)スコアは、0から199の範囲の医師によって評価される尺度であり、より低いスコアは改善を示す。UPDRSパートIII(運動)OFFスコアは、パーキンソン病における運動機能の客観的で十分に検証された尺度である。対象が経口レボドパ治療を休止している間に、OFFスコアを評価した。対象がレボドパ「OFF」状態にある間に対象を評価することによって、バックグラウンド医療処置の潜在的な交絡作用なしに治療の利益を捕捉するようにUPDRS OFFスコアを設計した。UPDRSパートIII(運動)OFFスコアを通じて反映された進行を
図5に示す。用量レベル1の対象は、30~60のベースラインUPDRSパートIII(運動)OFFスコアを有していた。
【0174】
「OFF」/「ON」臨床評価およびPET評価のために、対象はPD薬物療法を中止した。最後のL-ドパ用量は、「OFF」評価の少なくとも12時間前でなければならない。「ON」評価については、効果的な「ON」応答を達成するのに十分なL-ドパの負荷用量(challenge dose)が対象に与えられ、これは通常、対象の通常の朝の用量の100%~150%である。対象および検査者による判断によって良好な「ON」応答に達した時点で、「ON」評価を記録した。タイミングは、投与の少なくとも1時間後であった。試験中にL-ドパ治療に対する対象の必要性が減少した場合、研究者はL-ドパ負荷用量をそれに応じて調整した。
【0175】
3ヶ月で、用量レベル1コホート中の対象は、Lenti-PDを受けた後、ベースラインからの55%の改善に相当する、54.5ポイントの平均UPDRS OFF総スコア改善を経験した。
【0176】
複数のUPDRS下位尺度にわたる一貫した改善も観察された。対象は、
図6に示されているように運動検査下位尺度(UPDRSパートIII OFF)に関してベースラインから25ポイントの改善、
図7Aに示されているように日常生活下位尺度(UPDRSパートII OFF)に関してベースラインから22ポイントの改善、および
図7Bに示されているように治療の合併症下位尺度(UPDRSパートIV OFF)に関してベースラインから7ポイントの改善を経験した。
【0177】
6ヶ月で、対象は、
図9Aに示されているように運動検査下位尺度(UPDRSパートIII OFF)に関してベースラインから17ポイントの改善、
図9Bに示されているように日常生活下位尺度(UPDRSパートII OFF)に関してベースラインから19.5ポイントの改善、および
図9Cに示されているように治療の合併症下位尺度(UPDRSパートIV OFF)に関してベースラインから3ポイントの改善を経験した。さらに、ベースラインから3ヶ月および6ヶ月への変化を評価するためにPDQ-39調査を実施した。PDQ-39は、パーキンソン病に特異的な健康関連の質を評価する質問票である。対象は、
図9Dに示されているように、ProSavin(登録商標)と比較して32.1ポイントの6ヶ月平均改善を経験する。これは、およそ65%のベースラインからの平均総スコア改善に相当し、3ヶ月の時点で測定されたベースラインからの約37%の改善から上昇した。これらのデータは、直接比較の臨床試験ではなく、治験間比較に基づいている。
【0178】
Lenti-PDおよびProSavin(登録商標)はいずれも、ドーパミン生合成経路中の同一の3つの酵素をコードする。ProSavin(登録商標)を用いた別個の完了した第I/II相試験は、非盲検用量漸増試験(PS1/001/07、EudraCT 2007-001109-26)であり、この試験の対象は、処置後最長10年間、ProSavin(登録商標)の安全性および耐容性を監視するように設計された長期追跡試験(PS1/001/09、EudraCT 2009-017253-35)に参加するように勧められた。
【0179】
最低用量コホート(4.2×10
6TUの総用量)中の、Lenti-PDで処置された両対象は、以前に試験されたProSavin(登録商標)のあらゆる用量コホート中で観察された平均改善よりも大きな、UPDRSパートIII OFFスコアの個々の改善を示した。まとめると、これらの結果は、以前に試験されたProSavin(登録商標)の最高用量(1.0×10
8TUの総用量)と比較して、3ヶ月でのLenti-PDに対してより大きな有効性を示唆する。この研究から得られたLenti-PDについての、および以前の臨床試験から得られたProSavin(登録商標)についてのUPDRS尺度に関する結果の詳細な要約を以下の表1に示す。
【表1】
【0180】
対象は、レボドパを含むPD薬物療法を管理するための標準的な臨床ケアを継続した。3ヶ月目の時点で、平均レボドパ換算用量(LED)は、用量レベル1の対象では208mg減少した。これは、ベースラインから19%の平均減少に相当する。
【0181】
用量レベル1の対象は、対象が経口レボドパを服用している間の日常生活動作中の機能的障害の客観的評価であるラッシュジスキネジア評価尺度ONスコアによって測定されるジスキネジアの18%の改善も経験した。表1に示されているように、治療の合併症の中で特にジスキネジアの身体障害および持続期間を捉えるUPDRSパートIVのスコアも改善された。さらに、結果は、試験された最低用量のLenti-PDが、以前に試験された最高用量のProSavin(登録商標)より実質的に大きな生物学的活性を有したことを裏付けている。
【0182】
主観的対象日記(ハウザー患者日記)を用量レベル1の対象から収集した。対象によって記録された日記の内容には変動が存在したが、両対象は、ベースラインから3.5時間(57%)の平均減少で、ジスキネジアを伴う日記ON時間の改善を示した。日常生活に支障となる(troublesome)ジスキネジアを伴う日記ON時間においても一貫した利益が観察され、ベースラインからの1.3時間(87%)の平均減少であった。主観的対象日記(subjective subject diary)およびレボドパ換算用量(LED)の結果を
図8に要約する。
【0183】
被殻内での一定したドーパミン作動性緊張レベルの維持は、L-ドパおよびドーパミンアゴニスト治療のレベルを低下させ、より長い「ON」期間およびより短い「OFF」期間を有する持続的な運動矯正を与える可能性を提供する。
【0184】
これらの結果は、Lenti-PDが、進行したパーキンソン病を有する対象において、運動機能の改善(例えば、3ヶ月で達成されたUPDRS-III(運動)OFFベネフィットの25ポイント(42%)の増加、および6ヶ月で達成されたUPDRS-III(運動)OFFベネフィットの17ポイント(29%)の増加)とジスキネジアの減少(例えば、日常生活に支障となるジスキネジアを伴う日記ON時間の87%の減少;3ヶ月でのUPDRS-IVの74%の低下、6ヶ月でのUPDRS-IVの32%の低下、およびラッシュジスキネジアの18%の改善)の両方を提供することを示唆する。
【0185】
さらに、患者が報告したハウザー日記を6ヶ月の時点で収集した。平均して、患者は、2.7時間のジスキネジアなしのON時間のベースラインからの改善、ジスキネジアありのON時間の3.9時間の改善、0.3時間の日常生活に支障となるジスキネジアなしのON時間の改善、1.5時間の日常生活に支障となるジスキネジアありのオン時間の改善、および0.9時間のOFF時間の悪化を経験した。6ヶ月目の時点で、平均レボドパ換算1日用量(LEDD)は233mg減少し、これはベースラインからの21%の平均減少に相当する。手順またはベクター投与に関連する重篤な有害事象は観察されず、Lenti-PDは一般に良好に耐容された。対象の第2コホートにおいて試験されるべき総用量は1.4×107TUである。
【0186】
[実施例3]
パーキンソン病研究のための霊長類モデル
PDのMPTPマカクモデルでのLenti-PDの有効性を評価するために、霊長類研究を行った。Lenti-PDの安全性を評価するために、別個のGLP研究を霊長類において行った。有効性試験には、試験開始時に4~5歳の16匹の雄のカニクイザルが含まれた。動物を5つの実験群に分けた。ベクター投与後6ヶ月で、すべての処置された動物は、対照と比較して臨床評価スコアおよび自発運動活性の有意な改善を示し、Lenti-PD高用量(HD)群で最も高い回復が観察された。本研究において用いられたベクター調製物が表2に示されており、投与量が表3に示されている。各研究群において、Lenti-PD全用量または1/5用量、ProSavin(登録商標)、EIAV-LacZまたはEIAV-Nullで4匹の動物を処置した。EIAV-LacZ群とEIAV-nullベクター群の両方を対照群として使用した。各群に対して使用された投与量の概要が表3に詳述されている。
【0187】
GLP安全性研究では、年齢が3~5歳で、体重が2.1~3.6kgの6匹の雄および6匹の雌の健康なカニクイザルを研究に採用した。対照(TSSM緩衝液)群と試験Lenti-PD群に動物を均等に分けた。GLP毒物学研究のための研究群およびベクターの割り当てを表4に示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0188】
臨床スコア
有効性研究は、欧州(EU指令86/609/EEC)に従って実施した。動物の苦痛を最小限に抑えるためにあらゆる努力がなされ、動物の世話は、非ヒト霊長類の健康管理および飼育に熟練した獣医および動物技術者によって監督された。平均年齢2.5±0.1歳および平均体重3.48±0.1 kgの16匹の成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis、Sicombrec、Philippinesにより供給)を、食物および水に自由にアクセスできる標準的な環境条件下(12時間明暗サイクル、温度:22±1°C、湿度:50%)で飼育した。MPTP中毒後、すべての研究動物がパーキンソン症状を発症し、すべての群にわたって臨床評価スコア(CRS)の同様の増加が観察された(
図10Aを参照)。
【0189】
ベクター投与後、EIAV-Null群は安定してパーキンソン病様(Parkinsonian)のままであり、スコアはすべての時点にわたってベースラインと同様であった。他のすべての処置群(ProSavin(登録商標)、Lenti-PD LD、Lenti-PD HD)に関しては、CRSの進行性の改善が6ヶ月の評価期間にわたって観察された。3つの群はすべて、2~6ヶ月のすべての時点で、EIAV-Null対照群からのCRSの有意な差を示した。反復測定ANOVA分析は、有意な群効果(p=0.0001)および時間効果(p<0.0001)を実証した。フィッシャーのLSD事後分析により、すべての処置群がEIAV-Nullベクター対照群と有意に異なることが明らかになった(ProSavin(登録商標)、p=0.0005;Lenti-PD HD、p=0.001;Lenti-PD LD、p=0.001)。
【0190】
運動活性
ベースライン、MPTP中毒後ならびに3ヶ月および6ヶ月でのベクター投与後に、すべての動物に対して運動活性のビデオをベースとした定量を行った。MPTP中毒後、すべての研究動物は、総移動距離(TDM)によって評価した場合、平均自発運動活性の少なくとも90%+/-の減少を示した(
図10B参照)。ベクター投与後3および6ヶ月で、3つの処置群すべてが、MPTP後の値と比較してTDMの増加を示した。Lenti-PD HD群は、両時点でTDMの最大の改善を示した(3ヶ月で87%+/-1および6ヶ月で91%+/-1)。MPTP後の値からの百分率変化として運動活性の差を見る反復測定ANOVAは、有意な群効果(p=0.0003)、時間効果(p<0.0001)および時間群効果(p<0.0001)を示した。LSD事後分析により、すべての処置群がEIAV-Nullベクター対照群と有意に異なることが明らかになった(ProSavin(登録商標)、p=0.001;Lenti-PD LD、p=0.002;Lenti-PD HD、p<0.001)。
【0191】
生体内分布
GLP安全性研究における各動物から、バフィーコートの試料を収集し、2週目および4週目に分析し、血漿試料を収集し、処置後2週目にqPCRまたはqRT-PCR分析によってベクターの存在について分析した。研究の終わりに、測定された多種多様な組織および臓器重量に対して完全な肉眼的および顕微鏡的検査を行った。脳外のベクター存在のためにさらなる組織および体液試料も収集し、Lenti-PDベクターまたは導入遺伝子の成分に対する抗体応答のウェスタンブロット分析のために研究全体を通して定期的な採血を行った。ベクターまたは緩衝液の投与前および投与後に得られた試料に対して、完全な臨床化学および尿分析も行った。全身生体内分布分析は、ベクター関連RNAおよびDNA配列がLenti-PD処置動物由来からの生物学的試料の大部分において検出されなかったことを示した。ベクター関連DNA配列は、アッセイの定量下限を下回るレベルで少数の試料においてのみ検出された。血漿中でのベクター粒子(RNA)転移または持続および脳脊髄液中の流出は存在しなかった。ベクター関連RNAまたはDNA配列の一貫したまたは強固な存在の兆候は存在しなかった。
【0192】
毒性学
Lenti-PDに対する毒性の評価は、死亡率、臨床徴候、体重および定性的な食物消費に基づいた。さらに、眼底検査、心電図検査および血圧測定によって、生存時評価を行った。優良試験所規範(GLP)毒性学研究では、正常な健康なカニクイザルにおけるLenti-PDベクターの両側性線条体内送達の耐容性を調査した。この試験に使用されたベクターは、優良医薬品製造基準(GMP)製造プロセスを使用して作製した。26週間の観察期間にわたって、Lenti-PDは、耐容性が良好であり、臨床徴候も異常な所見も認められないことが実証された。身体検査および活動の評価、ジスキネジア評点および行動のスコアリングは、Lenti-PD関連の効果を明らかにしなかった。さらに、体重、食欲、眼底検査、心電図(ECG)、血圧、臨床病理、肉眼的所見または臓器重量に処置関連の変化は存在しなかった。Lenti-PDの処置に関連すると考えられる顕微鏡的所見は、注射部位における色素性マクロファージ浸潤を伴う/伴わない、最小から軽度の血管周囲単核細胞浸潤であった。これらは、全身的な所見と一切関連がなかった。
【0193】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の記載された方法および系の様々な改変および変形が、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかである。本開示は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、権利が請求されている発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、分子生物学、ウイルス学、神経生物学または関連分野の当業者に明らかである、本発明を実施するための記載された態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内に属することが意図される。
【0194】
(項目1)
神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが対象中において低下する疾患に罹患している前記対象における運動機能を改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含む有効量のウイルスベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記神経変性疾患または内因性ドーパミンレベルが低下する疾患がパーキンソン病である、項目1に記載の方法。
(項目3)
パーキンソン病に罹患している対象における運動機能を処置または改善し、ジスキネジアを軽減する方法であって、(a)(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列またはこれらの任意の組み合わせを含む核酸構築物を含むウイルスベクターと、(b)薬学的に許容され得る賦形剤とを含む治療有効量の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目4)
前記対象がL-ドパまたはLED治療を受けている、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
前記対象のL-ドパまたはLED治療用量が、投与前の前記対象のL-ドパまたはLED治療用量と比較して、前記核酸構築物の投与後3ヶ月以内に減少する、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記平均L-ドパまたはLED治療用量が、投与後3ヶ月に、ベースラインから少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%または少なくとも19%減少する、項目4~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記ウイルスベクターが、1×106TU/対象~5×108TU/対象の目標用量で投与される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記目標用量が、約4×106TU/対象~8×106TU/対象、8×106TU/対象~4×107TU/対象または1×107TU/対象~5×108TU/対象である、項目7に記載の方法。
(項目9)
投与が1回投与である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
投与が脳に対する投与である、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記投与が注入による被殻への投与である、項目10に記載の方法。
(項目12)
(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列と、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列と、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列とを含み、THをコードする前記ヌクレオチド配列は、THをコードする前記ヌクレオチド配列とCH1をコードする前記ヌクレオチド配列が融合タンパク質TH-CH1をコードするように、CH1をコードする前記ヌクレオチド配列に連結されている、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記核酸構築物が、
TH-L-CH1-IRES-AADC;
AADC-L-TH-L-CH1;
TH-L-CH1-L-AADC;
またはTH-L-CH1-L-AADC;
を含み、
ここで、Lはリンカーコード配列であり、IRESは内部リボソーム進入部位であり、Pはプロモーターである、
項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記核酸構築物がTH-L-CH1-IRES-AADCを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記核酸構築物が、(i)チロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするヌクレオチド配列と、(ii)GTP-シクロヒドロラーゼI(CH1)をコードするヌクレオチド配列と、(iii)芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)をコードするヌクレオチド配列とを含み、THをコードする前記ヌクレオチド配列は、THをコードする前記ヌクレオチド配列とCH1をコードする前記ヌクレオチド配列が融合タンパク質TH-CH1をコードするように、CH1をコードする前記ヌクレオチド配列に連結されており、前記構築物は、TH-L-CH1-IRES-AADCまたはTH-L-CH1-P-AADCを含み、ここで、Lはリンカーコード配列であり、IRESは内部リボソーム進入部位であり、Pはプロモーターである、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記リンカー(L)がコドン最適化されていない、項目13~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記リンカー(L)が、配列番号1または配列番号3として示される配列を含む、項目13~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記核酸構築物が、構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたはこれらの組み合わせから選択されるプロモーター(P)をさらに含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記プロモーターが、CMVプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターまたはチミジンキナーゼプロモーターである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ウイルスベクターがウイルス粒子である、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記ウイルス粒子がEIAVベクター粒子であり、VSV-Gで偽型化されている、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記ウイルスベクターが、薬学的に許容され得る賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物として製剤化される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記対象における運動機能が、ベースラインと比較して、投与3ヶ月後のUPDRS-III(運動)OFFスコアの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%の増加によって示されるように改善される、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
以下:(a)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、日常生活に支障となるジスキネジアを伴うハウザー日記ON時間の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%の減少;(b)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、UPDRS-IVスコアの少なくとも50%の減少、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%または少なくとも74%の減少、および(c)ベースラインと比較して、投与3ヶ月後に、ラッシュジスキネジアスコアの少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%の改善、の1またはそれより多くによって示されるように、ジスキネジアが前記対象において減少する、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
振戦、運動緩徐、筋肉硬直、姿勢および/もしくは平衡障害、自動運動の喪失、発話困難、微細運動技能の困難またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される前記対象における1またはそれより多くの症状をさらに改善する、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
投与後3ヶ月以内に、投与前における前記対象のベースラインと比較して、前記対象が、改善された運動機能、減少したジスキネジアおよび減少したL-ドパまたはLED治療用量を投与後に有する、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
【配列表】
【国際調査報告】