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特表2022-525140凝集リグニンの製造プロセスおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】凝集リグニンの製造プロセスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07G 1/00 20110101AFI20220428BHJP
   C10L 5/44 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
C07G1/00
C10L5/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555190
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 IB2020052132
(87)【国際公開番号】W WO2020183383
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】1950320-0
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレスコグ、ディミトリ
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA12
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BA09
4H015BA13
4H015BB06
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
本発明は、制御された粒径分布を有する凝集リグニンを製造するプロセスに関する。この凝集リグニンは本質的に粉塵(ダスト)を含まず、その結果、粉塵爆発の危険性が大幅に低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された粒径分布を有する凝集リグニンを製造するプロセスであって、
a)リグニンの圧縮ステップであって、ここで、1重量%~45重量%の含水率を有するリグニンをロール圧縮によって凝集し、ロールが空洞を有し、ロール圧縮に使用される各空洞の深さが0.1mm~10mmである、リグニンの圧縮ステップ;
b)ステップa)で得られた圧縮されたリグニンを粉砕にかけるステップ;続いて
c)ふるい分けステップであって、ここで、ステップb)の生成物をふるい分けにかけて、100μm未満の粒径を有する粒子を除去し、このふるい分けステップで使用されるふるい分けスクリーンの多孔度によって決定される粒径分布が制御された最終的な凝集リグニンを生成し、ステップc)後に保持された粒子の10重量%未満が100μm未満の粒径を有する、ふるい分けステップを含むプロセス。
【請求項2】
前記リグニンが添加物の添加なしに凝集することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)で使用される前記リグニンが5重量%~25重量%の含水率を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップa)で使用される前記リグニンが5重量%~10重量%の含水率を有する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップa)の前記ロール圧縮で使用される各空洞の深さが1mm~5mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
異なる多孔度を有する少なくとも2つのふるい分けスクリーンを使用して、前記ふるい分けが2つ以上の段階で実行される、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された粒径分布を有する凝集リグニンを製造するためのプロセスに関する。この凝集リグニンは本質的に粉塵(ダスト)を含まず、その結果、粉塵爆発の危険性が大幅に低減される。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリマーであるリグニンは、例えば木材中に存在する主成分であり、地球上でセルロースに次いで二番目に最も豊富な炭素源である。近年、パルプ製造工程から高度に精製された固形の粉末形態でリグニンを抽出する技術の開発と商業化により、現在石油化学産業から供給されている主要な芳香族化学前駆物質の再生可能な代替物候補として大きな注目を集めている。
【0003】
リグニンは、合板、ハードボード、中密度繊維板、またはパーティクルボードなどのパネルボードの生産用のフェノール-ホルムアルデヒドバインダーの製造中に、フェノールの好適な代替品として広く研究されてきた。
【0004】
プロセスに不必要な追加の水をもたらさないように、水分量が最小限のリグニン製品を利用することが好ましい。しかし、最小の含水率が0~5%(重量ベース)のリグニンの取り扱いには、いくつかの重大な問題がある。それらの中には、あらゆる種類の取り扱い中のリグニンが粉塵雲を形成するということがある。これらの粉塵雲は、十分に高濃度の可燃性物質が空気中に浮遊している場合、粉塵爆発をさらに引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、粉塵爆発の危険性が大幅に低減され得るような手法でリグニンを処理する方法が必要とされている。
【0006】
リグニンのローラー圧縮機処理を適用するいくつかの試みが知られている。RU2197389、RU2307033、US2010/0218420、およびUS2010/154296は、リグニンが最終的なブリケット(briquette)組成物の成分であるブリケットを製造するプロセスを開示している。そこに記載されたプロセスでは、リグニンは、ブリケットを生成するために様々な成分を一緒に結合する液体または固体のバインダーとして使用される。これらのブリケットの最終用途は、エネルギー生成の分野である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、従来技術の問題の1つ以上に対する解決策を提供する。本発明によるプロセスの特に大きな利点は、粉塵を形成する微粉が、粉塵爆発の危険性が存在しない程度に低減されることである。
【0008】
本発明は、以下に関する:
制御された粒径分布を有する凝集リグニンを製造するプロセスであって、
a)リグニンの圧縮ステップであって、ここで、1重量%~45重量%の含水率を有するリグニンをロール圧縮によって凝集し、ロールが空洞を有し、ロール圧縮に使用される各空洞の深さが0.1mm~10mmである、リグニンの圧縮ステップ;
b)ステップa)で得られた圧縮されたリグニンを粉砕にかけるステップ;続いて
c)ふるい分けステップであって、ここで、ステップb)の生成物をふるい分けにかけて、100μm未満の粒径を有する粒子を除去し、このふるい分けステップで使用されるふるい分けスクリーン(screen:ふるい)の多孔度によって決定される粒径分布が制御された最終的な凝集リグニンを生成し、ステップc)後に保持された粒子の10重量%未満が100μm未満の粒径を有する、ふるい分けステップを含む
凝集リグニン製造プロセス。
【0009】
本発明による圧縮は、好ましくは、圧縮される材料にいかなる添加剤も添加せずに実行される。本発明の文脈において、添加剤は、リグニン粒子間の接着性(付着性)を改善するためにプロセスに添加される物質である。従って、添加剤は、添加される物質であり、ステップa)の出発物質であるリグニンには存在しない物質を指す。従って、本発明の文脈では、ステップa)の出発物質であるリグニンにすでに存在する水などの水分(湿分)も他の成分もまた、添加剤とは見做されない。
【0010】
本発明はまた、ステップc)の生成物として得られた、制御された粒径分布を有する凝集リグニンの使用に関する。例えば、リグニンは、バインダーの製造などの化学合成プロセスの中間体として利用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本明細書全体を通して、「リグニン」という表現は、あらゆる種類のリグニン、例えば広葉樹(硬材)、針葉樹(軟材)、または一年生植物に由来するリグニンを包含することが意図されている。好ましくは、リグニンは、例えばクラフトプロセスで生成されるアルカリ性リグニンである。好ましくは、リグニンは、本発明によるプロセスで使用される前に精製または単離されている。リグニンは、本発明によるプロセスで使用される前に黒液(ブラックリカー)から単離されてよく、任意選択でさらに精製されてよい。精製は、典型的には、リグニンの純度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%になるように行われる。よって、本発明のプロセスに従って使用されるリグニンは、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満の不純物を含む。次に、リグニンは、W02006/031175に開示されたプロセスを使用することによって黒液から分離され得る。
【0012】
好ましくは、リグニンは、圧縮前に、すなわち、本発明によるプロセスのステップa)の前に乾燥される。リグニンの乾燥は、当技術分野で知られている方法および装置によって実施される。ステップa)で使用されるリグニンは、1重量%~45重量%の含水率を有する。好ましくは、本発明による圧縮前のリグニンの含水率は、25重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満である。乾燥中の温度は、好ましくは80℃~160℃の範囲であり、より好ましくは100℃~120℃の範囲である。
【0013】
乾燥後に得られたリグニン粉末は、1μm~2mmの範囲の広い粒径分布を有し、マイクロメートルの範囲の方に大幅に傾斜しており、これは、粒子の大部分が1~200μmの範囲の粒径を有することを意味する。爆発特性と粒径分布との間に強い相関関係が存在する、つまり、粒子が小さいほど爆発の危険性はより重大なものになることが当技術分野で知られている(参照:BIA-レポート13/97 粉塵の燃焼および爆発特性)。ここでは、粒径100μm未満の粒子を微粒子(fines)と見做す。
【0014】
リグニンのロール圧縮は、リグニン粒子を凝集させるローラー圧縮機によって達成され得る。本発明は、3つのステップ:圧縮、粉砕およびふるい分けを含むプロセスである。
【0015】
圧縮ステップa)において、第1の中間生成物が生成される。ここで、微細なリグニン粉末は通常、ホッパーを介して供給され、水平または垂直の供給スクリューによって圧縮ゾーンに運ばれ、そこで材料は、所定のギャップを有する圧縮ローラーによってフレーク形状に圧縮される。供給スクリュー速度、圧縮ゾーンでの圧力発生を制御することによって、均一な密度のフレークを得ることができる。圧縮ゾーンでの圧力発生は、好ましくは、モニタリングされ、圧縮ロールの回転速度によって制御され得る。粉末がローラー間で引きずられるとき、それは、材料の密度が増大し、粉末がフレークまたはリボン形状に転化されるニップ領域と称される箇所に入る。使用されるロールは空洞(キャビティー)を有する。ロール圧縮に使用される各空洞の深さは、0.1mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、より好ましくは1mm~5mm、または1mm~3mmである。圧縮中に加えられる特定の押圧力は、圧縮に使用される機器によって変動し得るが、1kN/cm~100kN/cmの範囲であってよい。圧縮を実行するのに好適な装置は、当技術分野で知られている。
【0016】
好ましくは、ステップa)で使用されるリグニンは、リグニンの少なくとも25重量%が1μm~100μmの粒径を有するような粒径分布を有する粉末の形態で提供される。
【0017】
本プロセスの粉砕ステップb)において、圧縮ステップにて得られた第1の中間生成物は、回転造粒機、ケージミル、ビーターミル、ハンマーミルもしくはクラッシャーミル、および/またはそれらの組み合わせによるなどの粉砕(milling)または破砕(grinding)に供される。このステップの間、第2の中間生成物が得られる。
【0018】
本プロセスのふるい分けステップc)において、粉砕ステップb)にて得られた第2の中間生成物は、ふるい分け(スクリーニングとも称される)などの物理的分別によってスクリーニングされ、このステップでふるいまたはスクリーンの多孔度によって設定される明確な粒径分布を有する凝集リグニンである最終生成物が得られる。ふるいまたはスクリーンは、粒径が100μm未満のほとんどの粒子がふるいを通過し、拒絶され、好ましくは圧縮ステップに戻されるように選択される一方、粒径が100μmを超えるほとんどの粒子は保持されて、ふるい分けステップの生成物(本発明によるプロセスの生成物)となる。ふるい分けは、複数の段階で実施することができ、すなわち、ステップb)にて得られた粉砕済みの材料が複数のスクリーンまたはふるいを順次通過するように、ふるい分けを実行することができる。2つ以上の異なるスクリーン多孔度を有するスクリーニングのステージを用いることにより、より明確な粒径分布を有するいくつかの画分が得られる。
【0019】
一実施形態では、第1ロールが環状リムを有し、ニップ領域にある粉末がローラー表面に沿って軸方向に封止されるようにロール群が構成される。
【0020】
一実施形態では、ニップ領域が静止した板でローラー表面に沿って軸方向に封止されるようにロール群が構成される。ニップ領域が確実に封止されることにより、全体に円筒形のニップローラーと比較して、ローラー群の軸方向端での粉末の損失が最小限に抑えられる。
【0021】
本質的にリグニンのみである材料を用いて、すなわち添加剤が存在しない状態で本発明による圧縮を実施することは特に有益である。なぜなら、それは、バインダーまたは他の成分がないために、圧縮された製品の使用を容易にするからである。そうでなければ、圧縮され、粉砕され、ふるいにかけられたリグニンが使用されることになっている用途に悪影響を与える恐れがある。
【0022】
本発明によるプロセスの格別の利点は、粉塵を形成する微粉が、粉塵爆発の危険性が存在しない程度に低減されることである。
【0023】
本発明によるプロセスの更なる利点は、最終的に凝集したリグニンを容易に取り扱い、輸送し、そして貯蔵することができることである。本発明によるプロセスの更なる利点は、閉ループ構成で高度に自動化できることであり、それにより、圧縮ステップ、後続の粉砕ステップ、および最終スクリーニングステップからの拒絶品(不合格品)がローラー圧縮の段階に戻され、安定したプロセスフローおよび最終製品の均一な粒度分布が維持される。
【実施例
【0024】
例1-リグニン原料の製造および特性評価
リングドライヤーで最終的な乾燥含有量が96%になるまで乾燥されたリグニン粉末
LignoBoostプロセスに従って稼働している生産プラントの最終フィルターから得られた湿潤リグニンを、VetterTecリングドライヤーで最終的な乾燥含有量が96%になるまで処理した。最終的な材料の乾燥含有量をISO-638に説明されている方法で得た。粒径分布(PSD)を、ASTM D1921-06標準法に説明されているふるい分けによって分析した。製品のかさ密度をISO697に説明されている方法で得た。最終的な材料の爆発特性を、EN 13821に従って最小着火エネルギー(MIE)を測定することによって得た。
【0025】
記載されている製品について、得られた乾燥含有量および爆発特性を表1に示す。
【0026】
例2(比較)-ブリケッティングによる乾燥リグニンの凝集
ブリケットを生成するため、例1にて得られたリグニンをブリケッティングにかけた。ワーキング幅130mmの圧縮ロールを備えたローラープレスタイプ52/6.5(Maschinenfabrik Koppern GmbH)を用いてブリケッティングを実行した。圧縮ロールには、圧縮ロールの周囲に均一に分布した約30×20×20mm(長さ×幅×深さ)の寸法のブリケッティング金型を装備した。圧縮ロール間のニップ領域には封止(シーリング)を用いなかった。
【0027】
微粉末は2つのローラー間の静的なギャップを通って流れるだけであり、そのためリグニン材料の凝集は達成され得ないことが分かった。
【0028】
例3(比較)-ブリケッティングによる湿潤リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、凝集に先立って水と事前に混合した。含水率は乾燥重量ベースで11%であった。Eirich R08バッチミキサーを使用して凝集の前に予備混合を実行した。生成された中間体を、例2に記載されるようにブリケットを生成するために使用した。圧縮ロール表面の金型の過度の目詰まりが、ブリケットを生成できない程度に発生していることが観察された。
【0029】
例4(比較)-ブリケッティングによる湿潤リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、凝集に先立って水と事前に混合した。含水率は乾燥重量ベースで30%であった。Eirich R08バッチミキサーを使用して凝集の前に予備混合を実行した。生成された中間体を、例2に記載されるようにブリケットを生成するために使用した。圧縮ロール表面の金型の過度の目詰まりが、ブリケットを生成できない程度に発生していることが観察された。
【0030】
例5(比較)-添加剤1を用いたブリケッティングによるリグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、リサイクルされたフラッフパルプ(fluff pulp)と組み合わせて使用し、例2に記載されるようにブリケットを生成した。材料の急速な流れを遅らせ、均一な材料供給を確保するためにフラッフパルプを使用した。圧縮ロール表面の金型の過度の目詰まりが、ブリケットを生成できない程度に発生していることが観察された。
【0031】
例6(比較)-添加剤2を用いたリグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、リサイクルされたフラッフパルプ(fluff pulp)と組み合わせて使用し、ローラープレスタイプ52/10(Maschinenfabrik Koppern GmbH)によりフレークを生成した。ローラープレスタイプ52/10において、圧縮ロールには、圧縮ロールの周囲に均一に分布した30×20×5mmの寸法の楕円形の空洞(キャビティ)を有するフレーク化用の金型を装備した。材料の急速な流れを遅らせ、均一な材料供給を確保するためにフラッフパルプを使用した。圧縮ロール表面の金型の過度の目詰まりが、フレークを生成できない程度に発生していることが観察された。
【0032】
例7-湿潤リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、凝集に先立って水と事前に混合した。含水率は乾燥重量ベースで13%であった。Eirich R08バッチミキサーを使用して凝集の前に予備混合を実行した。Eirich R08バッチミキサーを使用して凝集の前に予備混合を実行した。得られた中間体を用いて、ローラープレスタイプ52/10上にてフレークを生成した。ローラープレスタイプ52/10において、圧縮ロールには、圧縮ロールの周囲に均一に分布した30×20×5mmの寸法の楕円形の空洞(キャビティ)を有するフレーク化用の金型を装備した。フレークを生成し得ることが観察された。続いてのビーターミル(Gebr.Jehmlich GmbH)による粉砕と手動ふるい分けで、0.25~1.0mmの標的の粒径分布を有する凝集リグニンが生成された。結果を表2に示す。
【0033】
例8-湿潤リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、凝集に先立って水と事前に混合した。含水率は乾燥重量ベースで30%であった。Eirich R08バッチミキサーを使用して凝集の前に予備混合を実行した。得られた中間体を用いて、ローラープレスタイプ52/10上にてフレークを生成した。ローラープレスタイプ52/10において、圧縮ロールには、圧縮ロールの周囲に均一に分布した30×20×5mmの寸法の楕円形の空洞(キャビティ)を有するフレーク化用の金型を装備した。フレークを生成し得ることが観察された。続いてのケージミル(Stedman Machine Company)による粉砕と手動ふるい分けで、1~2.0mmの標的の粒径分布を有する凝集リグニンが生成された。結果を表2に示す。
【0034】
例9-乾燥リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、ワーキング直径50mmの圧縮ロールを備えたHosokawa Pharmapaktor L 200/50Pを用いて凝集させた。圧縮ロールは、圧縮ロールの軸方向に間隔を空けて配置された50×1×1mmの寸法の溝を備えていた。静的プレートを2つの圧縮ロールの半径側に取り付けて、ニップ領域を封止した。
【0035】
約80×50×2mm(長さ×幅×深さ)の寸法にてフレークを第1の中間生成物として生成し得ることが観察された。この第1の中間生成物の重量ベースでのおおよその収率は、少なくとも80%で得られた。
【0036】
続いて、フレークを、2mmスクリーンを備えたFC200フレーク破砕機(Hosokawa Bepex)で粉砕して、第2の中間生成物を生成した。この第2の中間生成物を、凝集したリグニンの標的画分に一致するように定められたメッシュサイズを有するスクリーンを備えた振動スクリーナーを使用してスクリーニングにかけた。この例では、メッシュサイズが200μmのスクリーンを使用した。
【0037】
例10-乾燥リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、ワーキング直径50mmの圧縮ロールを備えたHosokawa Pharmapaktor L 200/50Pを用いて凝集させた。圧縮ロールには、第1のロールに高さ10mmの環状リムが装備された。第2のロールは、第1のロールのリムに対して補完的な環状のくぼみを有していた。ロールはさらに、圧縮ロールの軸方向に間隔を空けて配置された50×1×1mm(長さ×幅×深さ)の寸法の溝を備えていた。約80×50×2mm(長さ×幅×深さ)の寸法にてフレークを第1の中間生成物として生成し得ることが観察された。この第1の中間生成物の重量ベースでのおおよその収率は、少なくとも85%で得られた。
【0038】
5mmのスクリーンを備えたFC200フレーク破砕機で第1の中間生成物を処理し、500μmのメッシュサイズのスクリーンを備えた振動スクリーナーを使用して第2の中間体をスクリーニングした。製品の収率を表2に示す。
【0039】
例11-乾燥リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、アレクサンダーワークWP200ファーマ(Alexanderwerk WP200 Pharma:Alexanderwerk Aktiengesellschaft製)を用いて凝集させた。ユニットには、75mmのワーキング幅の刻み付きおよび溝付きローラーを装備した。静的サイドプレートを使用した。ユニットにはさらに2段造粒機を装備し、第1のステージには2.5mmのスクリーンを装備し、第2のステージには1.25mmのスクリーンを装備した。2段造粒機の直後に取り付けたのは、最終的な凝集リグニンの標的画分に一致するように定められたメッシュサイズの単一スクリーンを備えたスクリーニングデッキであった。この例では、600μmのメッシュサイズを使用した。
【0040】
凝集したリグニンの2つの画分を収集した。画分1をスクリーニングデッキの前で収集し、画分2をスクリーニングデッキの後で収集した。画分1および画分2の粒径分布を、ふるい分析によって測定した(表3)。
【0041】
例12-乾燥リグニンの凝集
例1にて得られたリグニンを、2段造粒機の第1ステージにて5.0mmのスクリーンを用い、2段造粒機の第2ステージにて2.0mmのスクリーンを用いて、例11に記載されるように凝集させた。メッシュサイズ1.6mm、1.25mm、1.00mmおよび0.80mmの4つのスクリーンを備えたスクリーニングデッキを使用した。凝集したリグニンの2つの画分を収集した。画分1をスクリーニングデッキの前で収集し、画分2をスクリーニングデッキの後で収集した。画分1および画分2の粒径分布を、ふるい分析によって測定した(表3)。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
このように、最終的な凝集および粒状化リグニンの粒径分布を、ふるい分けステージの構成によって制御することができる。例えば、1つの特定のスクリーン多孔度を備えたふるい分けステージを採用することにより、1つの標的とする画分および1つの拒絶品(不合格品)画分である2つの画分が生成される。この標的の画分をさらに使用することもできるが、拒絶品画分を圧縮段階に戻すことができるため、プロセス中の損失が最小限に抑制される。標的の画分を、最終用途に応じてさらにふるいにかけるか、または最終製品として使用することができる。2つ以上のスクリーン多孔度を備えたふるい分けステージを採用することによって、より明確な粒径分布を有するいくつかの画分が得られる。
【0046】
本発明の上記の詳細な説明に鑑み、他の修正および変形が当業者に明らかになるであろう。しかしながら、そのような他の修正および変形が、本発明の本質および範囲から逸脱することなく実施され得ることは明らかなはずである。
【国際調査報告】