(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】車両の減速中の衝撃モーメントを回避する方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20220428BHJP
B60T 13/18 20060101ALI20220428BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20220428BHJP
B60T 13/122 20060101ALI20220428BHJP
B60W 30/06 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T13/18
B60T13/68
B60T13/122 A
B60W30/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555205
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2020056523
(87)【国際公開番号】W WO2020187667
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】102019203573.6
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン・ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】片山 健
【テーマコード(参考)】
3D048
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB31
3D048BB33
3D048HH15
3D048HH26
3D048HH66
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3D246JB37
3D246LA33Z
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3D246LA72Z
(57)【要約】
本発明は、ブレーキ動作システム(1)により、車両(100)の減速中の衝撃モーメントを低減する方法であって、ブレーキ動作システム(1)は、少なくとも1つの電気的に作動可能な圧力供給装置(3.1、3.2)、油圧車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)及びバルブ装置を有する、方法に関する。バルブ装置は、圧力供給装置(3.1、3.2)によって供給される圧力を車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の選択可能なサブセットに印加するように設計される。本方法は、ブレーキ動作要求を決定するステップと、車両速度を判定するステップと、車両速度が所定の閾値を下回っているか否かを確認するステップと、車両速度が閾値を下回っている場合、車輪ブレーキのサブセットを選択するステップと、圧力供給装置によって供給される圧力を車輪ブレーキのサブセットのみに印加するステップとを含み、圧力は、車輪ブレーキの選択されたサブセットに応じて決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステム(1)により、車両(100)の減速中の揺動モーメントを回避する方法であって、前記ブレーキシステム(1)は、少なくとも1つの電気的に動作可能な圧力供給装置(3.1、3.2)、前記圧力供給装置(3.1、3.2)に接続され、且つそれぞれ前記車両(100)の車輪(2.1、2.2、2.3、2.4)に割り当てられる複数の油圧車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)及びバルブ装置を有し、前記バルブ装置は、前記圧力供給装置(3.1、3.2)によって供給される圧力を前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の選択可能なサブセットに印加するように設計され、前記方法は、
・ブレーキ動作要求を決定するステップと、
・車両速度を判定するステップと、
・前記車両速度が所定の制限値を下回っているか否かを確認するステップと、
・前記車両速度が前記制限値を下回っている場合、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)のサブセットを選択するステップと、
・前記圧力供給装置(3.1、3.2)により、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記サブセットのみに圧力を印加するステップであって、前記圧力は、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記選択されたサブセットに応じて固定される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ブレーキ動作要求は、自動運転機能、特に自動駐車支援によって指定されたブレーキ動作要求である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
運転動作モードを決定するステップも含み、前記車両速度の前記制限値は、決定される前記運転動作モードによって固定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両(100)の移動方向(110、112、114、116)の判定を含み、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記サブセットは、判定された前記移動方向(110、112、114、116)に応じて選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バルブ装置は、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)と前記圧力供給装置(3.1、3.2)との間に配置される吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)であって、それにより、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)は、前記圧力供給装置(3.1、3.2)から分離され得る、吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力供給装置(3.1、3.2)により、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記サブセットに圧力を印可するために、前記サブセットに含まれない前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)は、閉鎖され、且つ前記サブセットに含まれる前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)は、開放され、及び前記圧力供給装置(3.1、3.2)は、前記圧力を蓄積するために起動される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力供給装置(3.1、3.2)は、二重回路ピストンポンプである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
車両(100)のブレーキシステム(1)のための制御ユニット(20)であって、前記ブレーキシステム(1)は、電気的に動作可能な圧力供給装置(3.1、3.2)及び前記圧力供給装置(3.1、3.2)に接続され、且つそれぞれ前記車両(100)の車輪(2.1、2.2、2.3、2.4)に割り当てられる複数の車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)を有し、前記制御ユニット(20)は、
・ブレーキ動作要求を決定することと、
・車両速度を判定することと、
・前記車両速度が所定の制限値を下回っているか否かを確認することと、
・前記車両速度が前記制限値を下回っている場合、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)のサブセットを選択することと、
・前記圧力供給装置(3.1、3.2)により、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記サブセットのみに圧力が印加されるように前記ブレーキシステム(1)を起動することであって、前記圧力は、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記選択されたサブセットに応じて固定される、起動することと
を行うように設計される、制御ユニット(20)。
【請求項9】
前記ブレーキシステム(1)は、バルブ装置を有し、前記バルブ装置は、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)と前記圧力供給装置(3.1、3.2)との間に配置される吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)であって、それにより、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)は、前記圧力供給装置(3.1、3.2)から分離され得る、吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)を有し、前記制御ユニット(20)は、前記サブセットに含まれる前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)が開放され、且つ前記サブセットに含まれない前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記吸入バルブ(8.10、8.11、8.20、8.21)が閉鎖されるように、前記車輪ブレーキ(2.11、2.12、2.21、2.22)の前記サブセットに圧力を印可するために前記バルブ装置を起動するように設計される、請求項8に記載の制御ユニット(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、ブレーキシステムにより、車両の減速中の揺動モーメントを回避する方法及び請求項8に記載の、車両ブレーキシステムのための対応する制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車は、自動車の運転に関する通常の作業で運転者を支援するか、又は更に運転者をこれらの作業から完全に解放する運転機能を備えることが増えている。これらは、例えば、自動駐車機能又は適応クルーズ制御機能(ACC)等の機能を含む。油圧ブレーキシステムでそのような支援機能を実行する装備のなかでも、多くの場合、電気的に動作可能な圧力供給装置、多くの場合には二重回路ピストンポンプ及びバルブが設けられ、これにより車両の各車輪ブレーキの各車輪にブレーキ圧力を個別に能動的に設定することができる。
【0003】
特に自動駐車機能の場合、制御の精度が不十分である場合、静止物体との衝突が生じ得るため、車両及び特にその速度の極めて精密な制御が必要である。同時に、車両の運転者にとって厄介又は不快であることが分かっている車両の揺動を回避することが意図されている。駐車操作中の速度は、極めて低速であるため、多くの場合、車両を減速させるために、ブレーキシステムの車輪ブレーキには、10~20バーの範囲の極めて低いブレーキ圧力のみが必要とされる。しかしながら、ピストンポンプ及びバルブのブレーキ圧力の制御に用いられる組み合わせは、低圧力では、多くの場合に車輪ブレーキのブレーキ圧力を3~8バーの精度でのみ制御できるため、低速駐車操作中に車両の揺動する減速が常に生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この背景に対して、本出願は、車両の減速中の揺動モーメントを回避する方法及び対応する制御ユニットを提供する客観的な技術的課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
方法に関して、この問題は、請求項1に記載の方法によって解決される。本方法の有利な改良形態は、従属請求項2~7に示されている。制御ユニットに関して、問題は、請求項8に記載の制御ユニットによって解決される。
【0006】
第1の態様において、本発明は、ブレーキシステムにより、車両の減速中の揺動モーメントを回避する方法に関し、このブレーキシステムは、少なくとも1つの電気的に動作可能な圧力供給装置、圧力供給装置に接続され、且つそれぞれ車両の車輪に割り当てられる複数の油圧車輪ブレーキ及びバルブ装置を有する。この場合、バルブ装置は、圧力供給装置によって供給される圧力を車輪ブレーキの選択可能なサブセットに印加するように設計される。本方法の過程において、最初にブレーキ動作要求が決定される。次いで、車両速度が判定され、及び車両速度が所定の制限値を下回っているか否かが確認される。車両速度が制限値を下回っている場合、車輪ブレーキのサブセットが選択され、及び圧力供給装置により、車輪ブレーキのサブセットのみに圧力が印加され、圧力は、車輪ブレーキの選択されたサブセットに応じて固定される。
【0007】
本発明による方法は、車輪ブレーキのサブセットを用いるとき、車両を減速させるために印加される全ての力を印加するには、より少ない数の車輪ブレーキを用いるのみでよいという考えに基づいている。従って、車両の車輪ブレーキの全てをブレーキ動作に用いる場合と比較して、相応の減速を実現するためにより高いブレーキ圧力をこれらの車輪ブレーキに設定しなければならない。しかし、この場合、車両の車輪ブレーキの全てをブレーキ動作に用いることと比較して、圧力供給装置によって生成されるブレーキ圧力の絶対精度は、全く変化しないか又は僅かにのみ変化する。従って、車両を同程度減速させるのに車輪ブレーキのブレーキ圧力が高くなる結果として、圧力の供給の絶対精度が不変であるため、目標ブレーキ圧力からの実際のブレーキ圧力の相対偏差が小さくなる。この直接的な結果として、車両の減速中、目標ブレーキ圧力からの偏差が不均衡なブレーキ圧力によって生じる揺動モーメントが効果的に回避される。
【0008】
圧力を固定する際にサブセット内の車輪ブレーキの実際の数を考慮するのとは別に、特に車両の移動方向を考慮しながら、圧力を固定する際に車両の車輪ブレーキの位置を考慮するものと規定し得る。圧力の固定は、境界条件も考慮に入れ得る。
【0009】
「車輪ブレーキのサブセット」は、この場合、車両の少なくとも1つの車輪ブレーキが含まれない車輪ブレーキの任意の組を意味するものと理解されたい。車輪ブレーキのサブセットは、この場合、車両の単一の車輪ブレーキからなる場合も含み得る。その理由は、車両が低速である場合、単一の車輪ブレーキによって車両を確実に減速することが既に保証できるからである。
【0010】
本発明によれば、ある数の制限値も提供することができ、車両の速度が低下している場合に車両を減速させるために、より少ない数の車輪ブレーキが車輪ブレーキのサブセットに割り当てられる。
【0011】
ブレーキ動作要求は、例えば、ブレーキシステムのブレーキペダルセンサ又は圧力センサを読み取ることによって確認することができる。
【0012】
しかし、好ましい一実施形態によれば、ブレーキ動作要求は、自動運転機能、特に自動駐車支援によって指定されるブレーキ動作要求であると規定される。この場合、運転支援機能を実装するように設計された制御ユニットにより、ブレーキ動作要求が出力される。
【0013】
好ましくは、通常のブレーキ動作制御機能、例えばアンチロック制御等は、ブレーキ動作に車輪ブレーキのサブセットを用いる場合でも機能し続けることができる。この場合、特に車輪と道路との間の摩擦係数が低下する結果として、車輪ブレーキの選択されたサブセットに自らの車輪ブレーキが含まれる車輪で車輪のスリップが増大していると判定される場合、車両の減速時に用いられない他の車輪ブレーキを用いて、より大きい減速が可能であるか否かを確認する。この場合、サブセットへの車輪ブレーキの割り当てを相応に適合させることができる。
【0014】
好ましい一実施形態によれば、本方法は、運転動作モードを決定するステップも含み、車両速度の制限値は、決定される運転動作モードによって固定される。運転動作モードは、この場合、例えば自動変速(後退ギア)又は例えば自動駐車支援等の起動された運転者支援機能の選択された運転ステージを意味するものとして理解されたい。このように、減速のために車輪ブレーキのサブセットが選択的に用いられる車両速度の制限値を、対応する運転状況に自動的に適合させることができる。例えば、自動駐車操作について、車両速度が5km/hを下回る場合、減速を実行するのが車輪ブレーキのサブセットのみであるように固定することができる。
【0015】
更なる実施形態によれば、車輪ブレーキのサブセットによる減速中の減速作用は、この場合、車両の移動方向の判定も含む方法によって向上され得、車輪ブレーキのサブセットは、判定された移動方向に応じて選択される。従って、例えば、車両が前進方向に移動する場合、前軸の車輪ブレーキが車輪ブレーキのサブセットに割り当てられると規定され得るのに対して、後退方向に移動する場合、後軸の車輪ブレーキが車輪ブレーキのサブセットに割り当てられる。その理由は、車両の減速中に車輪負荷を動的に分散させることで、車輪負荷が増大した場合に運転方向正面に配置された車輪ブレーキを用いることにより、車両の減速を早める効果があるからである。
【0016】
例えば、選択されたギアから又は車輪速度センサによって判定できる運転方向(前進/後退)とステアリング角度とを合わせて考慮することによっても、単一車輪ブレーキを用いる減速が得られる結果をもたらす場合がある。例えば、車両が前進方向に動いている状態でステアリングを右に回転した場合、最大車輪負荷が車両の減速中に生じ得るため、運転方向の左前輪を用いる減速が好都合である。
【0017】
更に、車輪ブレーキのサブセットは、車両の移動方向及び決定された運転動作モードを合わせて考慮することによっても決定され得る。
【0018】
一実施形態によれば、車輪ブレーキのサブセットを用いる選択的減速は、車輪ブレーキと圧力供給装置との間に配置され、車輪ブレーキを圧力供給装置から分離できる吸入バルブをバルブ装置が有する場合に容易に可能である。
【0019】
関連する好ましい一実施形態によれば、圧力供給装置によって車輪ブレーキのサブセットに圧力を印可するために、サブセットに含まれない車輪ブレーキの吸入バルブは、閉鎖され、且つサブセットに含まれる車輪ブレーキの吸入バルブは、開放され、及び圧力供給装置は、圧力を蓄積するために起動される。
【0020】
更なる実施形態によれば、圧力供給装置は、二重回路ピストンポンプである。
【0021】
更なる態様において、本発明は、車両ブレーキシステムのための制御ユニットに関し、このブレーキシステムは、電気的に動作可能な圧力供給装置及び圧力供給装置に接続され、且つそれぞれ車両の車輪に割り当てられる複数の油圧車輪ブレーキを有する。制御ユニットは、この場合、ブレーキ動作要求を決定することと、車両速度を判定することと、車両速度が制限値を下回っているか否かを確認することと、車両速度が制限値を下回っている場合、車輪ブレーキのサブセットを選択することと、圧力供給装置によって圧力が車輪ブレーキのサブセットのみに供給されるようにブレーキシステムを起動することとを行うように設計される。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、ブレーキシステムは、車輪ブレーキと圧力供給装置との間に配置される吸入バルブであって、それにより、車輪ブレーキは、圧力供給装置から分離され得る、吸入バルブを有するバルブ装置を有し、制御ユニットは、サブセットに含まれる車輪ブレーキの吸入バルブが開放され、且つサブセットに含まれない車輪ブレーキの吸入バルブが閉鎖されるように、車輪ブレーキのサブセットに圧力を印可するためにバルブ装置を起動するように設計される。
【0023】
好ましい例示的実施形態について、図に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の文章では、類似又は同一の特徴を同一の参照符号で表記する。
【0026】
図1は、電気圧力供給装置及び複数のバルブを備えたバルブ装置を有する油圧ブレーキ制御ユニット25を備えた車両の電子制御油圧ブレーキシステム1を示す。ブレーキシステム1は、入力信号としてのセンサ信号E及び他の信号に基づいて、圧力供給装置及びバルブへの出力信号Aとして制御信号を生成する電子ブレーキ制御ユニット20も有する。車輪2.1、2.2、2.3及び2.4の車輪ブレーキ2.11、2.12又は2.21、2.22は、それぞれ油圧ラインを介してブレーキ制御ユニット25に接続される。ブレーキ制御ユニット25の第1のブレーキ回路1.1は、左前輪2.1(FL)及び右後輪2.1(RR)に割り当てられ、ブレーキ制御ユニット25の第2のブレーキ回路1.2は、右前輪2.2(FR)及び左後輪2.2(RL)に割り当てられる。
【0027】
ブレーキシステム1は、縦列マスターシリンダとして構成されたマスターブレーキシリンダ5に接続されたブレーキブースター5.1及び圧力媒体としてのブレーキ液又は油圧作動液の貯蔵槽5.2も有する。出口側において、マスターブレーキシリンダ5は、ブレーキブースター5.1に接続され、運転者によって起動されるブレーキペダル6に従い、供給圧力としてのブレーキ圧力Pを生成する。マスターブレーキシリンダ5は、ブレーキ制御ユニット25のブレーキ回路1.1及び1.2に接続される。ブレーキ制御ユニット25は、各ブレーキ回路1.1、1.2について、対応するブレーキ回路1.1又は1.2の入力側でマスターブレーキシリンダ5に、且つ出力側で吸入バルブ8.10及び8.11又は8.20及び8.21にそれぞれ接続される隔離バルブ7.1、7.2を含む。吸入バルブ8.10及び8.11並びに8.20及び8.21は、例えば、通常開いているように構成される。
【0028】
本例によれば、第1のブレーキ回路1.1の常閉出口バルブ9.10及び9.11は、車輪ブレーキ2.11及び2.12を低圧貯槽11.1に接続し、貯槽に関しては、圧力供給装置としての油圧ポンプ3.1の吸入口に接続され、切替バルブ10.1を介してマスターブレーキシリンダ5に接続され得る。これに対応して、第2のブレーキ回路1.2の常閉出口バルブ9.20及び9.21は、車輪ブレーキ2.21及び2.22を低圧貯槽11.2に接続し、貯槽に関しては、圧力源としての圧力供給装置3.2の吸入口に接続され、同様に切替バルブ10.2を介してマスターブレーキシリンダ5に接続され得る。本例によれば、圧力供給装置3.1及び3.2は、二重回路ピストンポンプ、特に二重回路偏心ピストンポンプとして構成される。
【0029】
油圧ポンプ3.1及び3.2は、制御ユニット20によって電気的に制御可能な電気モーター4によって駆動される。電気モーター4が起動された場合、油圧ポンプ3.1及び3.2は、吸入口で圧力媒体を取り込んで高圧側の圧力媒体を配送する。油圧ポンプ3.1及び3.2によって蓄積されたブレーキ圧力は、いずれの場合にも、第1のブレーキ回路1.1に配置された圧力センサS1及び第2のブレーキ回路1.2に配置された別の圧力センサS2によって測定される。
【0030】
車輪2.1、2.2、2.3及び2.4の回転挙動を検知するために、各スピードセンサS6が設けられ、これは、そのセンサ信号を評価のために制御ユニット20に送り、例えば車輪2.1~2.4で対応するスリップ制御動作を実行可能にする。
【0031】
例えば、ESC介入の結果として、第1のブレーキ回路1.1に対してブレーキ動作要求がある場合、最初に隔離バルブ7.1が閉鎖され、且つ切替バルブ10.1が開放されるように、対応する出力信号Aによって電子制御ユニット20がブレーキ制御ユニット25を起動する。モーター4、従って油圧ポンプ3.1の対応する起動により、油圧ポンプ3.1が圧力媒体を貯蔵槽5.2から取り込み、開いた吸入バルブ8.10及び8.11を介して、対応する車輪ブレーキ2.11及び2.12に供給することにより、所望のブレーキ圧力が車輪ブレーキ2.11及び2.12に設定される。
【0032】
上述のブレーキシステムは、従来技術からそれ自体公知であり、ABS制御機能及びESC/運転安定性機能に良好に適している。加えて、上述のブレーキ制御ユニット25は、ACC等の運転機能に対するブレーキ動作要求にも用いられる場合が増えている。特に、低速時には、車両の減速に低いブレーキ圧力のみが必要である場合が多い。しかし、車両の減速中、これらの低いブレーキ圧力をブレーキ制御ユニット25によって車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21及び2.22の全てに十分な精度で設定できないことが多いため、車両の揺動減速が生じ得る。この状況は、本発明によって解決される。
【0033】
ブレーキ制御ユニット25は、ブレーキブースター5.1を備えた油圧ブレーキシステムの
図1に示す構成で必ずしも用いられなくてもよい。むしろ、ブレーキ制御ユニット25は、ペダル及び圧力センサによってブレーキ動作要求が検知され、検知したセンサデータに基づいて、電気的に起動された線形アクチュエータにより、対応するブレーキ圧力が蓄積される電動油圧ブレーキシステムで用いられ得る。
【0034】
図2は、
図1に示すブレーキシステム1を備えた車両100の概略図を示す。しかし、全体的に分かり易くするために、ここでは、ブレーキシステム1及びシステム1に接続された油圧車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21及び2.22のみを概略的に示している。この場合、車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21及び2.22は、それぞれ車両100の車輪2.1、2.2、2.3及び2.4に割り当てられる。
【0035】
図2において、車両100の移動の異なる変型形態も矢印110、112、114及び116によって示されている。前進方向110及び後退方向112への運転とは別に、ステアリングホイールを右に回転させるコーナリング操作も示されており、再度前進方向114及び後退方向116への移動がそれぞれ示されている。
【0036】
以下の文章において、本発明による方法を、
図1及び
図2と合わせて考慮しながら、
図3のフロー図に基づいて説明する。
【0037】
この場合、最初にブレーキ動作要求が第1の方法ステップ200において決定される。これは、ブレーキペダル6を起動する車両100の運転者によって開始されるブレーキ動作要求と、運転者支援機能によって起動されたブレーキ動作要求との両方であり得る。ブレーキペダル6が起動された場合、ブレーキ動作要求は、例えば、ブレーキペダル6のペダル移動センサに基づいて又は圧力センサS1若しくはS2の一方に基づいて検知することができる。
【0038】
ブレーキ動作要求が検知されると、次いで、ステップ202において、車両100の速度が判定される。車輪速度センサS6によって出力される、個々の車輪2.1~2.4の回転速度に関する情報は、例えば、この目的に用いられ得る。
【0039】
次いで、ステップ204において、判定された車両速度が車両速度の所定の制限値を下回っているか否かが確認される。制限値は、この場合、例えばその時点での車両100の運転動作モード、すなわち例えば運転方向又は起動された運転者支援プログラムから導出することができる。
【0040】
それにより、車両速度がその制限値を下回らないことが確認された場合、本方法は、ステップ202に戻り、車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21及び2.22の全てを用いて車両100が減速される。
【0041】
一方、車両速度が制限値を下回っていることが確認された場合、車両100の減速に用いる車輪ブレーキ2.1~2.4のサブセットがステップ206で選択される。サブセットは、例えば、4つの車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21、2.22の3つ、2つ又は1つのみを含み得る。この場合、サブセットが車両100の運転方向に依存するものと規定され得る。車両100が前進、すなわち矢印110の方向に移動している場合、車両の前軸の車輪102及び106の2つの車輪ブレーキ2.11及び2.21が選択される。これは、ブレーキ動作中に車輪負荷の動的分散が生じて、車輪102及び106の減速を強めることができるという利点を有する。同様に、後退方向112に運転している場合、車両の後軸の車輪ブレーキ2.22及び2.12を用いる減速が好都合である。
【0042】
一方、車両100のステアリングが右に回転されて車両が前進している(方向114)ことが確認された場合、ここでは最大の減速値が実現できるため、左前輪2.1の車輪ブレーキ2.11を車両100の減速に用いることができる。同様に、方向116に沿って後退運転している場合、左後輪2.4の車輪ブレーキ2.22を用いる減速が好都合であり得る。
【0043】
車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21、2.22のサブセットを選択した後、ステップ208において、圧力供給装置、本例では油圧ポンプ3.1及び3.2により、車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21、2.22のサブセットのみに圧力を印加することによって車両が減速される。車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21、2.22の選択されたサブセットに対する圧力の選択的な印加のため、好ましくは、サブセットに含まれない車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21、2.22の吸入バルブ8.10、8.11、8.20及び8.21が閉鎖される一方、サブセットに含まれる車輪ブレーキ2.11、2.12、2.21、2.22は、開いた吸入バルブ8.10、8.11、8.20、8.21を介して圧力供給装置によって圧力を供給される。
【国際調査報告】