(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】骨癒合を増強するための血小板由来増殖因子製剤
(51)【国際特許分類】
A61L 27/22 20060101AFI20220428BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20220428BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20220428BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220428BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/12
A61L27/02
A61L27/36 110
A61L27/36 311
A61L27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555291
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 US2020022992
(87)【国際公開番号】W WO2020186267
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513149654
【氏名又は名称】バイオミメティック セラピューティクス,リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スンダララジ,シャラス
(72)【発明者】
【氏名】ショックリー,ロバート ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,コナン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウニング,キャリー
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081AB03
4C081AB04
4C081BA12
4C081BA13
4C081BB06
4C081CD122
4C081CD28
4C081CD29
4C081CF011
4C081CF021
4C081CF031
4C081CF21
4C081DB03
4C081DB04
4C081EA02
(57)【要約】
本開示は、骨癒合術、例えば脊椎固定術のために有用な血小板由来増殖因子の溶液および生体適合性マトリックスを含む改善された組成物を提供する。組成物は、有利には、約2:1の体積対重量(mL:g)比でPDGF溶液および生体適合性マトリックスを含み、その結果、組成物は、シリンジまたはカニューレを使用して骨癒合の部位に容易に適用することができる。特定の実施形態において、組成物は、脊椎固定ケージと組み合わせて脊椎固定術において有用である。本開示はまた、癒合術、例えば脊椎固定を行う方法、および癒合術用のキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性マトリックス中に配された血小板由来増殖因子(PDGF)の溶液を含む組成物であって、前記生体適合性マトリックスが骨足場材料および生体適合性結合剤を含み、前記溶液が約0.05mg/mL~約5mg/mLの範囲内のPDGF濃度を有し、かつ前記溶液および前記生体適合性マトリックスが約1:1~約2.5:1の範囲内の体積対質量比(mL:g)で前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記体積対質量比(mL/g)が約1.5:1~約2.5:1の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記体積対質量比(mL/g)が約2:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記足場材料が、多孔性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、同種移植片およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記多孔性リン酸カルシウムが、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、低結晶性ヒドロキシアパタイト、非晶質リン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸八カルシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記リン酸カルシウムがβ-リン酸三カルシウムを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記骨足場材料がリン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記PDGFが、約0.1mg/ml~約1.0mg/mlの範囲内の濃度で前記溶液中に存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記PDGFが約0.2mg/ml~約0.4mg/mlの濃度で前記溶液中に存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記PDGFが約0.3mg/mlの濃度で前記溶液中に存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記PDGFが、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-AB、PDGF-CC、PDGF-DD、またはこれらの混合物もしくは誘導体を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記PDGFがPDGF-BBを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記PDGFがPDGF-BBからなる、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記PDGF-BBが少なくとも65%のインタクトなPDGF-BBを含む、請求項12または13、68に記載の組成物。
【請求項15】
前記PDGF-BBが組換えヒト(rh)PDGF-BBである、請求項12~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記溶液が緩衝液中のPDGFを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶液が緩衝液中のPDGFからなる、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記緩衝液が酢酸ナトリウムを含む、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記骨足場材料が、約50ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約50ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約300ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約300ミクロンのサイズ、または約250ミクロン~約1000ミクロンのサイズの範囲内の粒子を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記骨足場材料が、約25%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約80%より高い、または約90%より高い多孔度を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記骨足場材料がマクロ多孔性を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記骨足場材料が、前記マトリックス中への細胞遊走を促す多孔度を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記骨足場材料が、相互接続されたポアを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記骨足場材料が吸収性である、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記生体適合性結合剤がコラーゲンを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記生体適合性結合剤が、約10重量パーセント~約40重量パーセントの範囲内の量で前記生体適合性マトリックス中に存在する、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記生体適合性結合剤が、約15重量パーセント~約35重量パーセントの範囲内の量で前記生体適合性マトリックス中に存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記生体適合性結合剤が、約15重量パーセント~約25重量パーセントの範囲内の量で前記生体適合性マトリックス中に存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記生体適合性結合剤が、約20重量パーセントの量で前記生体適合性マトリックス中に存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記生体適合性マトリックスがリン酸カルシウムおよびコラーゲンからなる、1~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
所望の骨癒合の部位に請求項1~30のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、骨を癒合する方法。
【請求項32】
骨癒合の前記部位が関節である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
骨癒合の前記部位が、足、足指、足首、膝、臀部、脊椎、肋骨、胸骨、鎖骨、関節、肩、肩甲骨、肘、手関節、手または手指にある、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
骨癒合が脊椎固定におけるものである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
椎体の間に椎骨内スペーサーを置くことをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、前記椎体の間に前記椎骨スペーサーを置く前に前記椎骨スペーサー中に配される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記椎体の間に前記スペーサーを置いた後に前記スペーサー中に前記組成物を配することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記脊椎固定術が椎体間固定術である、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記脊椎固定術が腰椎固定術である、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
骨癒合術における使用のためのキットであって、
第1の容器中の生体適合性マトリックス、
第2の容器中のPDGFの溶液であって、前記生体適合性マトリックスおよび前記PDGFの溶液が約1:1~約2.5:1の範囲内の体積対質量比(mL:g)を有する、前記PDGFの溶液、ならびに
i)請求項1~29のいずれか1項に記載の組成物を調製するため、およびii)骨癒合の部位に前記組成物を投与するための使用説明書
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月14日に出願された米国仮出願第62/818,104号に対する優先権の利益を主張し、該仮出願の内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概しては、生体適合性マトリックス中に血小板由来増殖因子(PDGF)溶液を含む組成物、および骨癒合術、例えば脊椎固定におけるそれらの使用方法に関する。本開示は、これらの組成物を調製する方法および骨癒合用のキットをさらに提供する。
【背景技術】
【0003】
筋骨格の問題は、全ての年齢群および両方の性別において集団の全体に行きわたっている。American Academy of Orthopedic Surgeons(AAOS)の2003年年次大会において提示された公開された論文によれば、米国人の半数は生涯の何らかの時点において骨折に対するサービスまたは骨癒合を必要とする。骨癒合は、患者の様々な関節と関連する筋骨格の問題を治療するために使用される整形外科手術の一般的な形態である。骨癒合は、2つの骨の間の関節の骨化の人工的な誘導を伴う。椎間板変性疾患、変形、不安定な脊椎外傷、または脊椎すべり症に起因する腰痛を有する患者において米国において年間で約100,000の腰椎固定手術が行われている。脊椎固定の失敗率は現在30%もの高さである。様々な整形外科用デバイス、例えば椎弓根スクリュー、プレートおよびオステオバイオロジクスの使用は癒合率における向上に繋がっているが、脊髄手術の失敗は依然として深刻な問題のままである。人間および動物における脊椎固定は、背部痛、ならびに関連する頸部、腕、および脚の疼痛を含む神経の徴候を緩和するために行われ、病的な脊椎セグメントの固定および同じレベルにおける脊髄の除圧を一般に必要とする。
【0004】
脊椎の隣接する椎体(VB)の骨癒合は、椎間板疾患を治療するための解決策として現在使用されている。疾患のある椎間板組織は除去され、隣接する椎体の終板は郭清され、2つのレベルを安定化させるためのケージの形態の堅固な固定化がVBの間に埋め込まれる。治癒は、ケージハードウェアの全体を通じてVBの間の新たな骨の形成と共に進行する。多くの場合、骨移植が行われ、ケージの間隙を越えた骨癒合を確実にし、および患者のために脊椎を安定化させて、疼痛を和らげ、多くの場合に患者をある程度の活動に復帰させることができる。共存症患者において、VBの間の間隙を越えた骨癒合を達成することは難しい場合があり、骨治癒反応を増強するために骨伝導性および骨誘導性移植片が使用される。
【0005】
椎体間および後外側の両方の脊椎固定では、脊椎固定のために必要な骨を生成するために生物学的骨誘導剤が使用される。現行の標準治療は、腸骨稜または他の骨性部位から骨を回収して骨誘導性移植片材料を得ることである。よって、患者は、脊椎固定手術自体に加えて、通常は腸骨稜から、移植片を回収するための手術も受けなければならない。腸骨稜からの骨移植片の回収は術後疼痛を伴い、これは25%までの患者において持続し得る。この治療方法に関連する他の欠点は、感染症のリスクの増加、骨自家移植片材料の利用可能性および品質、ならびにドナー部位罹患に起因して引き起こされる患者の不便である。
【0006】
よって、骨癒合術において有用な改善された骨移植片組成物に対する必要性が存在する
。さらには、脊椎固定術の間に脊椎固定ケージに容易に提供することができる移植片組成物に対する必要性が存在する。また、脊椎固定術の間および後にケージ中に残存し、それにより、ケージの外側の組織への移植片材料の運動を低減させ、その結果、移植片および任意の骨伝導性または骨誘導性の剤が固定部位に局在化したままとなることができる組成物。最後に、自家移植片回収の必要性をなくすことができる組成物は有用である。本開示はこれらの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、1つの実施形態において、生体適合性マトリックス中に配された血小板由来増殖因子(PDGF)の溶液を含む組成物であって、生体適合性マトリックスが骨足場材料および生体適合性結合剤を含み、溶液が約0.05mg/mL~約5mg/mLの範囲内のPDGF濃度を有し、かつ溶液および生体適合性マトリックスが約1:1~約2.5:1の範囲内の体積対質量比(mL:g)で組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0008】
一部の実施形態において、生体適合性マトリックスに対するPDGFの溶液の体積対質量比(mL/g)は約1.5:1~約2.5:1の範囲内であり、他の実施形態において、生体適合性マトリックスに対するPDGFの溶液の体積対質量比(mL/g)は約2:1である。
【0009】
一部の実施形態において、足場材料は、多孔性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、同種移植片およびこれらの組み合わせから選択される。
【0010】
一部の実施形態において、多孔性リン酸カルシウムは、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、低結晶性ヒドロキシアパタイト、非晶質リン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸八カルシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、他の実施形態において、リン酸カルシウムはβ-リン酸三カルシウムを含む。
【0011】
さらに他の実施形態において、骨足場材料はリン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムを含む。
【0012】
一部の実施形態において、PDGFは、約0.1mg/ml~約1.0mg/ml、約0.2mg/ml~約0.4mg/ml、または約0.3mg/mlの範囲内の濃度で溶液中に存在する。
【0013】
一部の実施形態において、PDGFは、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-AB、PDGF-CC、PDGF-DD、またはこれらの混合物もしくは誘導体を含む。一部の実施形態において、PDGFはPDGF-BBを含み、他の実施形態において、PDGFはPDGF-BBからなる。一部の実施形態において、PDGF-BBは少なくとも65%のインタクトなPDGF-BBを含む。さらに他の実施形態において、PDGF-BBが組換えヒト(rh)PDGF-BBである、請求項12~13のいずれか1項に記載の組成物。
【0014】
一部の実施形態において、溶液は緩衝液中のPDGFを含み、他の実施形態において、溶液は緩衝液中のPDGFからなる。一部の実施形態において、緩衝液は酢酸ナトリウムを含む。
【0015】
一部の実施形態において、骨足場材料は、約50ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約50ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約5000ミク
ロンのサイズ、約100ミクロン~約5000ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約300ミクロンのサイズ、約100ミクロン~約300ミクロンのサイズ、または約250ミクロン~約1000ミクロンのサイズの範囲内の粒子を含む。
【0016】
一部の実施形態において、骨足場材料は、約25%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約80%より高い、または約90%より高い多孔度を含む。
【0017】
一部の実施形態において、骨足場材料はマクロ多孔性を含む。
【0018】
一部の実施形態において、骨足場材料は、マトリックス中への細胞遊走を促す多孔度を有する。
【0019】
一部の実施形態において、骨足場材料は、相互接続されたポアを含む。
【0020】
一部の実施形態において、骨足場材料は吸収性である。
【0021】
一部の実施形態において、生体適合性結合剤はコラーゲンを含む。
【0022】
一部の実施形態において、生体適合性結合剤は、約10重量パーセント~約40重量パーセントの範囲内の量で生体適合性マトリックス中に存在し、他の実施形態において、生体適合性結合剤は、約15重量パーセント~約35重量パーセント、約15重量パーセント~約25重量パーセント、または約20重量パーセントの範囲内の量で生体適合性マトリックス中に存在する。
【0023】
一部の実施形態において、生体適合性マトリックスはリン酸カルシウムおよびコラーゲンからなる。
【0024】
他の実施形態において、本開示は、所望の骨癒合の部位に上記の任意の実施形態の組成物を投与することを含む、骨を癒合する方法を提供する。一部の実施形態において、骨癒合の部位は関節中にある。一部の実施形態において、骨癒合は、足、足指、足首、膝、臀部、脊椎、肋骨、胸骨、鎖骨、関節、肩、肩甲骨、肘、手関節、手または手指において為される。一部の実施形態において、骨癒合は脊椎固定である。
【0025】
一部の実施形態において、方法は、椎体の間に椎骨内スペーサーを配することをさらに含む。一部の実施形態において、組成物は、椎体の間に椎骨スペーサーを挿入する前に椎骨スペーサー中に配される。他の実施形態において、
【0026】
方法は、椎体の間にスペーサーを挿入した後にスペーサー中に組成物を配することをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態において、脊椎固定術は椎体間固定術であり、他の実施形態において、脊椎固定術は腰椎固定術である。
【0028】
本開示はさらに、骨癒合術における使用のためのキットであって、第1の容器中の生体適合性マトリックス;第2の容器中のPDGFの溶液であって、生体適合性マトリックスおよびPDGFの溶液が約1:1~約2.5:1の範囲内の体積対質量比(mL:g)を有する、PDGFの溶液;ならびにi)上述の任意の実施形態に記載されるものを調製するため、およびii)骨癒合の部位に組成物を投与するための使用説明書を含む、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】
図1A~1Fは、本開示の例示的な組成物の調製を描写する写実的イメージである。
【
図1B】
図1A~1Fは、本開示の例示的な組成物の調製を描写する写実的イメージである。
【
図1C】
図1A~1Fは、本開示の例示的な組成物の調製を描写する写実的イメージである。
【
図1D】
図1A~1Fは、本開示の例示的な組成物の調製を描写する写実的イメージである。
【
図1E】
図1A~1Fは、本開示の例示的な組成物の調製を描写する写実的イメージである。
【
図1F】
図1A~1Fは、本開示の例示的な組成物の調製を描写する写実的イメージである。
【
図2】
図2は、生体適合性マトリックスをPDGFの溶液と混合するための例示的なプロセスを描写する図式である。
【
図3B】
図3Bは、脊椎固定ケージと共に使用するための例示的な固定化ハードウェアを描写する。
【
図3C】
図3Cは、本開示の組成物で満たした例示的な脊椎固定ケージを描写する。
【
図4A】
図4A~4Cは、脊椎固定用のヒツジモデルにおける生体力学試験の結果を要約するグラフである。屈曲伸展の可動域(
図4A)、側屈の可動域(
図4B)、および軸回転の可動域(
図4C)を、自家移植片、コラーゲン/β-TCPマトリックスを伴うrhPDGF-BBの組成物、rhPDGFを伴わないコラーゲン/β-TCPマトリックス、または空のケージのいずれかを与えたヒツジで試験した。
図4Dは、
図4A~4C中のグラフのキーである。
【
図4B】
図4A~4Cは、脊椎固定用のヒツジモデルにおける生体力学試験の結果を要約するグラフである。屈曲伸展の可動域(
図4A)、側屈の可動域(
図4B)、および軸回転の可動域(
図4C)を、自家移植片、コラーゲン/β-TCPマトリックスを伴うrhPDGF-BBの組成物、rhPDGFを伴わないコラーゲン/β-TCPマトリックス、または空のケージのいずれかを与えたヒツジで試験した。
図4Dは、
図4A~4C中のグラフのキーである。
【
図4C】
図4A~4Cは、脊椎固定用のヒツジモデルにおける生体力学試験の結果を要約するグラフである。屈曲伸展の可動域(
図4A)、側屈の可動域(
図4B)、および軸回転の可動域(
図4C)を、自家移植片、コラーゲン/β-TCPマトリックスを伴うrhPDGF-BBの組成物、rhPDGFを伴わないコラーゲン/β-TCPマトリックス、または空のケージのいずれかを与えたヒツジで試験した。
図4Dは、
図4A~4C中のグラフのキーである。
【
図4D】
図4A~4Cは、脊椎固定用のヒツジモデルにおける生体力学試験の結果を要約するグラフである。屈曲伸展の可動域(
図4A)、側屈の可動域(
図4B)、および軸回転の可動域(
図4C)を、自家移植片、コラーゲン/β-TCPマトリックスとrhPDGF-BBとの組成物、rhPDGFを含まないコラーゲン/β-TCPマトリックス、または空のケージのいずれかを与えたヒツジで試験した。
図4Dは、
図4A~4C中のグラフのキーである。
【
図5A】
図5Aおよび
図5Bは、脊椎固定用のヒツジモデルにおけるそれぞれ骨体積分率および骨密度分率を要約するグラフである。
【
図5B】
図5Aおよび
図5Bは、脊椎固定用のヒツジモデルにおけるそれぞれ骨体積分率および骨密度分率を要約するグラフである。
【
図6】
図6は、自家移植片、コラーゲン/β-TCPマトリックスとrhPDGF-BBとの組成物、rhPDGFを含まないコラーゲン/β-TCPマトリックス、または空のケージを用いて治療されたヒツジからの中矢状平面のMicroCTスキャンの写真画像である。
【
図7A】
図7A~7Cは、脊椎固定用のヒツジモデルの組織形態計測分析を要約するグラフである。平均骨パーセンテージ(
図7A)、平均軟組織パーセンテージ(
図7B)および平均空き空間パーセンテージ(
図7C)を分析した。
【
図7B】
図7A~7Cは、脊椎固定用のヒツジモデルの組織形態計測分析を要約するグラフである。平均骨パーセンテージ(
図7A)、平均軟組織パーセンテージ(
図7B)および平均空き空間パーセンテージ(
図7C)を分析した。
【
図7C】
図7A~7Cは、脊椎固定用のヒツジモデルの組織形態計測分析を要約するグラフである。平均骨パーセンテージ(
図7A)、平均軟組織パーセンテージ(
図7B)および平均空き空間パーセンテージ(
図7C)を分析した。
【
図8】
図8は、自家移植片、コラーゲン/β-TCPマトリックスとrhPDGF-BBとの組成物、rhPDGFを含まないコラーゲン/β-TCPマトリックス、または空のケージを用いて治療されたヒツジからの中矢状平面の組織学的切片の写真画像である。
【
図9】
図9は、経時的な倍数変化として表される、高用量rhPDGF-BBおよび自家移植片群における血清サイトカインレベルを描写するグラフである。
【
図10】
図10は、経時的なT2強調MRI画像上の高強度領域の平均体積を描写するグラフである。ラット傍脊椎インプラント安全性モデルにおける術後4、7、10、および21日時のサイトカイン定量化。
【
図11】
図11は、炎症の領域を表すオーバーレイを伴う、L4-L5椎間板空間における腰椎の代表的なT2強調軸方向MRIスライスの写真画像である。
【
図12A】
図12Aおよび
図12Bは、β-TCP/Col 3.0mgのrhPDGF-BBを用いた4日目について示される、Ki67(
図12A)およびフォンウィルブランド因子(vWF)(
図12C)についてのIF染色の代表的な画像である。
【
図12B】
図12Aおよび
図12Bは、β-TCP/Col 3.0mgのrhPDGF-BBを用いた4日目について示される、Ki67(
図12A)およびフォンウィルブランド因子(vWF)(
図12C)についてのIF染色の代表的な画像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、生体適合性マトリックス中にPDGFの溶液を含む組成物、および骨癒合術、特には脊椎固定術のためにそれらを使用する方法を提供する。約2:1のPDGF溶液の体積:生体適合性マトリックスの質量の比(mL:g)で提供される場合、組成物は、濃いペーストであり、治療が必要な部位にカニューレまたは針を通じて適用することができる。一部の実施形態において、生体適合性マトリックスおよびPDGFを含む溶液は、約1:1~約2.5:1、約1.5:1~約2.5:1、または約2:1の範囲内の体積対質量比(mL:g)で組成物中に存在する。一部の実施形態において、組成物は、ケージまたは椎間スペーサーと組み合わせて使用される。組成物は、郭清された椎体の間のケージの埋め込みの前またはケージが脊椎固定手術の間に椎体の間に置かれた後のいずれかにケージの内腔の内側に配されてもよい。
【0031】
椎体間固定は、通常は椎間板により占有される領域中の椎骨の間に骨移植片(例えば本発明の組成物)を置く。脊椎固定のための準備において、椎間板は全体的に除去されてもよい。デバイスは、脊椎アライメントおよび椎間板高さを維持するために椎骨の間に置かれてもよい。椎間デバイスは、例えば、スペーサーであってもよい。
【0032】
椎間デバイスは、例えば、プラスチックまたはチタンから作られていてもよい。固定が次に椎骨の終板の間で起こる。椎体間固定の種類としては、前方腰椎椎体間固定(ALIF)、後方腰椎椎体間固定(PLIF)、および片側進入腰椎後方椎体間固定(TLIF)が挙げられる。一部の実施形態において、固定は、固定化(fixation)と呼ばれる方法により増大され、該方法は、金属スクリュー(椎弓根スクリュー、多くの場合はチタン製)、ロッドもしくはプレート、スペーサー、またはケージを置いて椎骨を安定化させ、それにより骨癒合を促すことを意味する。固定の過程では、外的なブレイシング(装具)が使用されてもよい。
【0033】
後外側固定は、脊椎の背部における横突起(transverse processes)の間に骨移植片を置く。これらの椎骨は次に、椎骨の各側において金属棒に結合している各椎骨の椎弓根を通じてスクリューおよび/またはワイヤーを用いて適所に固定化されてもよい。
【0034】
定義
本明細書において使用される場合、脊椎固定を「促進する(promoting)」または「促す(facilitating)」は、脊椎固定術の臨床的進行に望ましく影響するように設計された臨床的介入を指す。臨床的介入の望ましい効果としては、例えば、固定の部位における骨密度の程度の増加および/または骨形成の加速(例えば骨密度の加速)、固定の部位における骨結合もしくは骨架橋の程度の増加および/または骨結合もしくは骨架橋の加速、骨癒合部位における骨の組成および/または構造における改善(例えば、骨癒合部位において天然の骨に密接に似通ったものになること)の1つまたは複数が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
本明細書において使用される場合、「有効量」という用語は、必要な用量および時間的期間においての、少なくとも所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。有効量は、1つまたは複数の投与において提供され得る。
【0036】
本明細書における「約」値またはパラメーターへの言及はまた、その値またはパラメーター自体に向けられた実施形態を含む(かつそれを記載する)。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他に指し示さなければ、複数への言及を含む。例えば、「PDGFホモ二量体」(a ”PDGF homodimer”)への言及は1つまたは複数のPDGFホモ二量体への言及であり、当業者に公知のその均等物などを含む。
【0038】
本明細書に記載の発明の全ての態様および実施形態は、「含む」、「からなる」および「から本質的になる」態様および実施形態を含み得ることが理解される。記載される要素「から本質的になる」方法または組成物は、特定のステップまたは材料ならびにそれらの方法および組成物の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないもののみを含むことが理解されるべきである。
【0039】
「骨足場材料(bone scaffolding material)」および「骨代用剤(bone substituting agent)」は本開示において交換可
能に使用される。
【0040】
「体積対質量比」は、本明細書において使用される場合、グラム(g)での生体適合性マトリックスの質量に対するミリリットル(mL)でのPDGFの体積の比を指す。例えば、体積対質量比は、約1:1~約2.5:1、約1.5:1~約2.5:1、約1.75:1~約2.25:1、または約2:1の範囲内であることができる。例示的な実施形態は、例えば、約2mLのPDGF溶液および約1gの生体適合性マトリックス、約1.5mLのPDGFおよび約0.75gの生体適合性マトリックス、または約1mLのPDGF溶液および約0.5gの生体適合性マトリックスを含んでもよい。
【0041】
PDGF溶液
1つの実施形態において、脊椎固定術用の組成物は、PDGFを含む溶液および生体適合性マトリックスを含み、溶液は生体適合性マトリックス中に配されまたは組み込まれる。一部の実施形態において、PDGFは、約0.01mg/ml~約10mg/ml、約0.05mg/ml~約5mg/ml、または約0.1mg/ml~約1.0mg/mlの範囲内の濃度で溶液中に存在する。PDGFは、各範囲の上限および下限を含めて、これらの記載される範囲内の任意の濃度で溶液中に存在してもよい。他の実施形態において、PDGFは、以下の濃度:約0.05mg/ml、約0.1mg/ml、約0.15mg/ml、約0.2mg/ml、約0.25mg/ml、約0.3mg/ml、約0.35mg/ml、約0.4mg/ml、約0.45mg/ml、約0.5mg/ml、約0.55mg/ml、約0.6mg/ml、約0.65mg/ml、約0.7mg/ml、約0.75mg/ml、約0.8mg/ml、約0.85mg/ml、約0.9mg/ml、約0.95mg/ml、または約1.0mg/mlのいずれか1つで溶液中に存在する。これらの濃度は単純に特定の実施形態の例であること、ならびにPDGFの濃度は、各範囲の上限および下限を含めて、上記の濃度範囲のいずれか以内であってもよいことが理解されるべきである。
【0042】
PDGFの様々な量が本発明の組成物において使用されてもよい。使用されるPDGFの量は、一部の実施形態において、以下の範囲:約1μg~約50mg、約10μg~約25mg、約100μg~約10mg、または約250μg~約5mg内の量を含む。
【0043】
本開示の一部の実施形態におけるPDGFまたは他の増殖因子の濃度は、米国特許第6,221,625号明細書、同第5,747,273号明細書、および同第5,290,708号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような酵素結合イムノアッセイ、またはPDGF濃度を決定するための当該技術分野において公知の任意の他のアッセイを使用することにより決定することができる。本明細書において提供される場合、PDGFのモル濃度は、PDGF二量体の分子量(MW)(例えば、PDGF-BB;MW 約25kDa)に基づいて決定される。
【0044】
PDGFは、PDGFホモ二量体および/またはヘテロ二量体を含んでもよく、これらの二量体としては、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-AB、PDGF-CC、PDGF-DD、ならびにこれらの混合物および誘導体が挙げられる。一部の実施形態において、PDGFはPDGF-BBを含む。別の実施形態において、PDGFは組換えヒト(rh)PDGF、例えばrhPDGF-BBを含む。
【0045】
PDGFは、一部の実施形態において、天然の供給源から得ることができる。他の実施形態において、PDGFは組換えDNA技術により製造することができる。他の実施形態において、PDGFまたはその断片は、当業者に公知のペプチド合成技術、例えばペプチド固相合成を使用して製造されてもよい。天然の供給源から得られる場合、PDGFは生体液に由来することができる。生体液は、一部の実施形態によれば、血液を含む、生きた
生物に関連する任意の処理済みまたは非処理の流体を含むことができる。
【0046】
生体液はまた、別の実施形態において、血液成分を含むことができ、血液成分としては、血小板濃縮物(PC)、アフェレーシスされた血小板、多血小板血漿(PRP)、血漿、血清、新鮮凍結血漿(FFP)、およびバフィコート(BC)が挙げられる。生体液は、さらなる実施形態において、血漿から分離され、かつ生理学的流体に再懸濁された血小板を含むことができる。
【0047】
PDGFが組換えDNA技術により製造される場合、単一の単量体(例えば、PDGF
B鎖またはA鎖)をコードするDNA配列は、一部の実施形態において、その後にホモ二量体(例えばPDGF-BBまたはPDGF-AA)を製造するために、発現のための培養された原核または真核細胞に挿入することができる。他の実施形態において、PDGFヘテロ二量体は、ヘテロ二量体の両方の単量体単位をコードするDNA配列を培養された原核または真核細胞に挿入すること、および翻訳された単量体単位が細胞によりプロセシングされてヘテロ二量体(例えばPDGF-AB)が製造されることを可能とすることにより生成することができる。商業的に入手可能なGMP組換えPDGF-BBはChiron Corporation(Emeryville、Calif.)から得ることができる。研究グレードのrhPDGF-BBは、R&D Systems, Inc.(Minneapolis、Minn.)、BD Biosciences(San Jose、Calif.)、およびChemicon, International(Temecula、Calif.)を含む複数の供給元から得ることができる。
【0048】
本発明の一部の実施形態において、PDGFはPDGF断片を含む。一部の実施形態において、rhPDGF-Bは、完全B鎖の以下の断片:アミノ酸配列1~31、1~32、33~108、33~109、および/または1~108を含む。PDGFのB鎖の完全なアミノ酸配列(1~109)は、米国特許第5,516,896号明細書(その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる)の
図15において提供されている。本発明のrhPDGF-BB組成物はインタクトなrhPDGF-B(1~109)およびその断片の組み合わせを含んでもよいことが理解されるべきである。PDGFの他の断片、例えば米国特許第5,516,896号明細書に開示されるものが用いられてもよい。1つの実施形態によれば、rhPDGF-BBは少なくとも65%のインタクトなrhPDGF-B(1~109)を含む。別の実施形態において、rhPDGF-BBは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%のインタクトなrhPDGF-B(1~109)を含む。PDGFを製造する方法は米国特許出願公開第20140308332号明細書(その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0049】
一部の実施形態において、PDGFは精製することができる。精製されたPDGFは、本明細書において使用される場合、本発明の溶液への組み込みの前に約95重量%より高いPDGFを有する組成物を含む。溶液は任意の薬学的に許容される溶液であってもよい。他の実施形態において、PDGFは実質的に精製することができる。実質的に精製されたPDGFは、本明細書において使用される場合、本発明の溶液への組み込みの前に約5重量%~約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。一部の実施形態において、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液への組み込みの前に約65重量%~約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。他の実施形態において、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液への組み込みの前に、約70重量%~約95重量%、約75重量%~約95重量%、約80重量%~約95重量%、約85重量%~約95重量%、または約90重量%~約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。精製されたPDGFおよび実質的に精製されたPDGFは足場および結合剤に組み込まれてもよい。
【0050】
さらなる実施形態において、PDGFは部分的に精製することができる。部分的に精製されたPDGFは、本明細書において使用される場合、多血小板血漿(PRP)、新鮮凍結血漿(FFP)、またはPDGFを製造するために収集および分離を要求する任意の他の血液製造物の文脈におけるPDGFを有する組成物を含む。本発明の実施形態は、ホモ二量体およびヘテロ二量体を含む、本明細書において提供される任意のPDGFアイソフォームは精製または部分的に精製できることを想定する。PDGF混合物を含有する本発明の組成物は、部分的に精製された割合でPDGFアイソフォームまたはPDGF断片を含有してもよい。部分的に精製されたおよび精製されたPDGFは、一部の実施形態において、米国特許出願第11/159,533号明細書(公開番号:20060084602)に記載されるように調製することができる。
【0051】
一部の実施形態において、PDGFを含む溶液は、PDGFを水性媒体中または1つもしくは複数の緩衝液中に可溶化することにより形成される。本発明のPDGF溶液における使用のために好適な緩衝液は、炭酸塩、リン酸塩(例えばリン酸緩衝食塩水)、ヒスチジン、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、酸性緩衝液、例えば酢酸およびHCl、ならびに有機緩衝液、例えばリジン、Tris緩衝液(例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン)、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)、および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)を含むことができるがこれらに限定されない。緩衝液は、PDGFとの生物学的適合性および望ましくないタンパク質修飾を妨害する緩衝液の能力に基づいて選択することができる。緩衝液はさらに、宿主組織との適合性に基づいて選択することができる。一部の実施形態において、酢酸ナトリウム緩衝液が使用される。緩衝液は、異なるモル濃度、例えば、約0.1mM~約100mM、約1mM~約50mM、約5mM~約40mM、約10mM~約30mM、もしくは約15mM~約25mM、またはこれらの範囲内の任意のモル濃度で用いることができる。一部の実施形態において、酢酸緩衝液が約20mMのモル濃度で用いられる。
【0052】
別の実施形態において、PDGFを含む溶液は、凍結乾燥されたPDGFを水中に可溶化することにより形成され、可溶化の前にPDGFは適切な緩衝液から凍結乾燥される。
【0053】
PDGFを含む溶液は、本発明の実施形態によれば、約3.0~約8.0の範囲内のpHを有することができる。一部の実施形態において、PDGFを含む溶液は、約5.0~約8.0、約5.5~約7.0、もしくは約5.5~約6.5の範囲内、またはこれらの範囲内の任意の値のpHを有する。PDGFを含む溶液のpHは、同じ実施形態において、PDGFまたは任意の他の所望の生物学的活性剤の長期化された安定性および有効性と適合することができる。PDGFは酸性環境においてより安定なことがある。したがって、1つの実施形態によれば、本発明はPDGF溶液の酸性保存製剤を含む。この実施形態によれば、PDGF溶液は、好ましくは、約3.0~約7.0または約4.0~約6.0のpHを有する。PDGFの生物学的活性は、しかしながら、中性pH範囲を有する溶液中で最適化することができる。したがって、さらなる実施形態において、本発明はPDGF溶液の中性pH製剤を含む。この実施形態によれば、PDGF溶液は、約5.0~約8.0、約5.5~約7.0、または約5.5~約6.5のpHを有する。本発明の方法によれば、酸性PDGF溶液は中性pH組成物に再製剤化される。本発明の好ましい実施形態によれば、溶液中で利用されるPDGFはrh-PDGF-BBである。さらなる実施形態において、PDGF含有溶液のpHは、生体適合性マトリックスへのPDGFの結合速度論を最適化するために変更することができる。
【0054】
PDGFを含む溶液のpHは、一部の実施形態において、本明細書に記載の緩衝液により制御することができる。様々なタンパク質は、安定するpH範囲が異なる。タンパク質安定性は主に、等電点およびタンパク質上の電荷により反映される。pH範囲は、タンパ
ク質の立体配座構造ならびにタンパク質分解、加水分解、酸化、およびタンパク質の構造および/または生物学的活性に対する改変をもたらすことができる他のプロセスに対するタンパク質の感受性に影響を与えることができる。
【0055】
一部の実施形態において、PDGFを含む溶液は追加の成分、例えば他の生物学的活性剤をさらに含むことができる。他の実施形態において、PDGFを含む溶液は、細胞培養培地、他の安定化タンパク質、例えばアルブミン、抗菌剤、プロテアーゼ阻害剤[例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(ベータ-アミノエチルエーテル)-N、N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、アプロチニン、イプシロン-アミノカプロン酸(EACA)など]および/または他の増殖因子、例えば線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、骨形成タンパク質(BMP)、またはPDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-AB、PDGF-CCおよび/もしくはPDGF-DDの組成物を含む他のPDGFをさらに含むことができる。
【0056】
生体適合性マトリックス
組成物は生体適合性マトリックスを含む。一部の実施形態において、生体適合性マトリックスは1つまたは複数の骨足場および1つまたは複数の生体適合性結合剤を含む。
【0057】
骨足場材料
生体適合性マトリックスは、本発明の一部の実施形態によれば、骨足場材料を含む。骨足場材料および骨代用剤という用語は本開示において交換可能に使用されることが理解されるべきである。骨足場材料は、新たな骨および組織成長が起こるためのフレームワークまたは足場を提供する。骨代用剤は、骨を永久的または一時的に置き換えるために使用することができるものである。埋め込み後に、骨代用剤は身体により保持されることができ、またはそれは身体により吸収されて骨で置き換えられることができる。例示的な骨代用剤としては、例えば、リン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム、例えばβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト、低結晶性ヒドロキシアパタイト、非晶質リン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸八カルシウム)、硫酸カルシウム、および同種移植片(例えば石灰化骨、石灰化除タンパク質化異種移植片、または脱灰骨(例えば、脱灰凍結乾燥皮質もしくは海綿骨)、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0058】
骨足場材料は、一部の実施形態において、少なくとも1つのリン酸カルシウムを含む。一部の実施形態において、リン酸カルシウムはβ-TCPを含む。他の実施形態において、骨足場材料は複数のリン酸カルシウムを含む。骨足場材料としての使用のために好適なリン酸カルシウムは、本発明の一部の実施形態において、0.5~2.0の範囲内のカルシウム対リン原子比を有する。一部の実施形態において、骨足場材料は同種移植片を含む。
【0059】
一部の実施形態において、生体適合性マトリックスは、生体適合性結合剤または骨同種移植片、例えば脱灰凍結乾燥骨同種移植片(DFDBA)もしくは粒子状脱灰骨マトリックス(DBM)と共にまたはそれを伴わずにリン酸カルシウム粒子を含んでもよい。別の実施形態において、生体適合性マトリックスは骨同種移植片、例えばDFDBAまたはDBMを含んでもよい。実施形態において、生体適合性マトリックスは生体吸収性である。一部の実施形態において、生体適合性マトリックスは同種移植片、例えばDFDBAまたは粒子状DBMを含む。
【0060】
骨足場材料としての使用のために好適なリン酸カルシウムの非限定的な例としては、非晶質リン酸カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸一カルシウム無水物(MCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、リン酸二カルシウム無水物(DCPA)、リン酸八カルシウム(OCP)、α-リン酸三カルシウム、β-TCP、ヒドロキシアパタイト(OHAp)、低結晶性ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム(TTCP)、デカリン酸七カルシウム、メタリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウムリン酸塩、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0061】
別の実施形態において、骨代用剤は多孔性組成物を有する。多孔性は、インプラント材料中への細胞遊走および浸潤を促し、その結果、浸潤している細胞は細胞外骨マトリックスを分泌することができるので望ましい特徴である。多孔性はまた、血管新生のためのアクセスを提供する。多孔性はまた、活性物質の吸収および放出の増強の他に、細胞-マトリックス相互作用の増加のための大きい表面積を提供する。組成物は、埋め込みのために好適な形状(例えば、スフェア、シリンダー、もしくはブロック)で提供することができ、または使用の前にサイズ調整および成形することができる。好ましい実施形態において、骨代用剤はリン酸カルシウム(例えば、β-TCP)である。多孔性骨足場材料は、一部の実施形態によれば、約1μm~約1mmの範囲内の直径を有するポアを含むことができる。一部の実施形態において、骨足場材料は、約100μm~約1mmの範囲内の直径を有するマクロポアを含む。別の実施形態において、骨足場材料は、約10μmm~約100μmの範囲内の直径を有するメソポアを含む。さらなる実施形態において、骨足場材料は、約10μm未満の直径を有するマイクロポアを含む。本発明の実施形態は、マクロポア、メソポア、およびマイクロポアまたはこれらの任意の組み合わせを含む骨足場材料を想定する。一部の実施形態において、骨足場材料は、相互接続されたポアを含む。一部の実施形態において、骨足場材料は、相互接続されていないポアを含む。一部の実施形態において、骨足場材料は、相互接続されたおよび相互接続されていないポアを含む。
【0062】
多孔性骨足場材料は、一部の実施形態において、約25%より高いまたは約40%より高い多孔度を有する。別の実施形態において、多孔性骨足場材料は、約50%より高い、約60%より高い、約65%より高い、約70%より高い、約80%より高い、または約85%より高い多孔度を有する。さらなる実施形態において、多孔性骨足場材料は、約90%より高い多孔度を有する。一部の実施形態において、多孔性骨足場材料は、足場材料中への細胞遊走を促す多孔度を含む。
【0063】
一部の実施形態において、骨足場材料は複数の粒子を含む。骨足場材料は、例えば、複数のリン酸カルシウム粒子を含むことができる。骨足場材料の粒子は、一部の実施形態において、骨足場について本明細書において提供されるポア直径および多孔度のいずれかを個々に示すことができる。他の実施形態において、骨足場材料の粒子は、骨足場材料について本明細書において提供されるポア直径および多孔度のいずれかを有するマトリックスを生成するために会合を形成することができる。
【0064】
骨足場粒子は、mm、μmまたはサブミクロン(nm)のサイズであってもよい。骨足場粒子は、一部の実施形態において、約1μm~約5mmの範囲内の平均直径を有する。他の実施形態において、粒子は、約1mm~約2mm、約1mm~約3mm、または約250μm~約750μmの範囲内の平均直径を有する。骨足場粒子は、別の実施形態において、約100μm~約300μmの範囲内の平均直径を有する。さらなる実施形態において、粒子は約75μm~約300μmの範囲内の平均直径を有する。追加の実施形態において、骨足場粒子は、約25μm未満、約1μm未満、および一部の場合には約1mm未満の平均直径を有する。一部の実施形態において、骨足場粒子は約100μm~約5mmまたは約100μm~約3mmの範囲内の平均直径を有する。他の実施形態において、
骨足場粒子は、約250μm~約2mm、約250μm~約1mm、約200μm~約3mmの範囲内の平均直径を有する。粒子はまた、約1nm~約1000nm、約500nm未満または約250nm未満の範囲内であってもよい。
【0065】
骨足場粒子は、一部の実施形態において、約1μm~約5mmの範囲内の直径を有する。他の実施形態において、粒子は、約1mm~約2mm、約1mm~約3mm、または約250μm~約750μmの範囲内の直径を有する。骨足場粒子は、別の実施形態において、約100μm~約300μmの範囲内の直径を有する。さらなる実施形態において、粒子は約75μm~約300μmの範囲内の直径を有する。追加の実施形態において、骨足場粒子は、約25μm未満、約1μm未満、および一部の場合には約1mm未満の直径を有する。一部の実施形態において、骨足場粒子は約100μm~約5mmまたは約100μm~約3mmの範囲内の直径を有する。他の実施形態において、骨足場粒子は、約250μm~約2mm、約250μm~約1mm、約200μm~約3mmの範囲内の直径を有する。粒子はまた、約1nm~約1000nm、約500nm未満または約250nm未満の範囲内であってもよい。
【0066】
一部の実施形態において、骨足場材料は、成形可能(moldable)、押し出し可能(extrudable)、かつ/または注射可能である。成形可能、押し出し可能、かつ/または注射可能な骨足場材料は、脊椎固定術の間の、骨中の標的部位中およびその周囲、ならびに所望の骨癒合の部位における骨の間における本開示の組成物の効率的な配置を促すことができる。一部の実施形態において、成形可能な骨足場材料は、スパチュラまたは同等のデバイスを用いて骨癒合の部位に適用することができる。一部の実施形態において、骨足場材料は流動性である。流動性骨足場材料は、一部の実施形態において、針またはカニューレを有するシリンジを通じて骨癒合の部位に適用することができる。一部の実施形態において、骨足場材料はインビボで硬化する。
【0067】
一部の実施形態において、骨足場材料は生体吸収性である。骨足場材料は、一部の実施形態において、インビボ埋め込み後1年以内に少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%吸収されることができる。別の実施形態において、骨足場材料は、インビボ埋め込みの1、3、6、9、12、または18か月以内に少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%吸収されることができる。生体吸収性は、(1)マトリックス材料の性質(すなわち、その化学的構成、物理的構造およびサイズ)、(2)マトリックスが置かれる身体内の位置、(3)使用されるマトリックス材料の量、(4)患者の代謝状態(糖尿病/非糖尿病、骨粗鬆症、喫煙者、高齢、ステロイドの使用など)、(5)治療される傷害の程度および/または種類、ならびに(6)マトリックスに加えての他の材料、例えば他の骨同化、異化および抗異化因子の使用に依存する。
【0068】
生体適合性結合剤
生体適合性結合剤(biocompatible binder)は、一部の実施形態によれば、合わせた物質の間の粘着を促進するように作動可能な材料を含むことができる。生体適合性結合剤は、例えば、生体適合性マトリックスの形成において骨足場材料の粒子間の付着を促進することができる。
【0069】
生体適合性結合剤は、一部の実施形態において、コラーゲン、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、合成ポリマー、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリウレタン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ乳酸、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PG
A)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-炭酸トリメチレン)、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(イプシロン-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物を含むことができる。
【0070】
生体適合性結合剤は、他の実施形態において、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、コンドロイチン硫酸塩、レシチン、N,O-カルボキシメチルキトサン、ホスファチジルコリン誘導体、デキストラン(例えば、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウム)、フィブリン糊、レシチン、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロン酸(pluronic acid)、グリセロリン酸ナトリウム、グリコーゲン、ケラチン、シルク、ならびにこれらの誘導体および混合物を含むことができる。
【0071】
一部の実施形態において、結合剤はコラーゲンを含む。一部の実施形態において、コラーゲンはI型コラーゲンを含む。一部の実施形態において、コラーゲンはウシI型コラーゲンを含む。一部の実施形態において、生体適合性結合剤はヒアルロン酸を含む。
【0072】
一部の実施形態において、生体適合性結合剤は水溶性である。水溶性結合剤は、生体適合性マトリックスの埋め込みのすぐ後に生体適合性マトリックスから溶解し、それによりマクロ多孔性を生体適合性マトリックスに導入することができる。マクロ多孔性は、本明細書において議論される場合、アクセスを増強し、結果として、インプラント部位における破骨細胞および骨芽細胞のリモデリング活性を増強することにより、インプラント材料の骨伝導性を増加させることができる。
【0073】
一部の実施形態において、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約1重量パーセント~約70重量パーセント、約5重量パーセント~約50重量パーセント、約10重量パーセント~約40重量パーセント、約15重量パーセント~約35重量パーセント、または約15重量パーセント~約25重量パーセントの範囲内の量で生体適合性マトリックス中に存在することができる。さらなる実施形態において、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約20重量パーセントの量で存在することができる。
【0074】
骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部の実施形態によれば、流動性、成形可能、かつ/または押し出し可能であることができる。そのような実施形態において、生体適合性マトリックスはペーストの形態であることができる。ペーストの形態の生体適合性マトリックスは、一部の実施形態において、生体適合性結合剤により互いに接着した骨足場材料の粒子を含むことができる。
【0075】
ペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは、所望のインプラント形状に成形することができ、または埋め込み部位の輪郭に成形することができる。一部の実施形態
において、ペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは、シリンジまたはカニューレを用いて埋め込み部位に注入することができる。
【0076】
一部の実施形態において、ペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは硬化せず、埋め込み後に流動性かつ成形可能な形態を保持する。他の実施形態において、ペーストまたはパテは埋め込み後に硬化することができ、それによりマトリックスの流動性および成形可能性を低減させることができる。
【0077】
骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスはまた、一部の実施形態において、所定の形状において提供することができ、該形状としては、ブロック、スフェア、もしくはシリンダーまたは任意の所望の形状、例えば鋳型もしくは適用部位により定義される形状が挙げられる。
【0078】
骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部の実施形態において、上記のように生体吸収性である。生体適合性マトリックスは、そのような実施形態において、インビボ埋め込みの1年以内に吸収されることができる。別の実施形態において、骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスは、インビボ埋め込みの1、3、6、または9か月以内に吸収されることができる。生体吸収性は、(1)マトリックス材料の性質(すなわち、その化学的構成、物理的構造およびサイズ)、(2)マトリックスが置かれる身体内の位置、(3)使用されるマトリックス材料の量、(4)患者の代謝状態(糖尿病/非糖尿病、骨粗鬆症、喫煙者、高齢、ステロイドの使用など)、(5)治療される傷害の程度および/または種類、ならびに(6)マトリックスに加えての他の材料、例えば他の骨同化、異化および抗異化因子の使用に依存する。
【0079】
以下は、β-TCPを含む骨足場材料およびコラーゲンを含む生体適合性結合剤を参照して特定の実施形態を記載するが、本発明の他の実施形態は、β-TCPを他の骨足場材料(例えば別のリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、もしくは同種移植片)で置換することにより、かつ/またはコラーゲンを他の結合剤で置換することにより製造されてもよいことが理解されるべきである。
【0080】
β-TCPを含む骨足場材料
一部の実施形態において、生体適合性マトリックスとしての使用のための骨足場材料はβ-TCPを含むことができる。β-TCPは、一部の実施形態によれば、種々の直径の多方向かつ相互接続されたポアを有する多孔性構造を含むことができる。一部の実施形態において、β-TCPは、相互接続されたポアに加えて複数のポケットおよび様々な直径の相互接続されていないポアを含む。β-TCPの多孔性構造は、一部の実施形態において、約100μm~約1mmの範囲内の直径を有するマクロポア、約10μm~約100μmの範囲内の直径を有するメソポア、および約10μm未満の直径を有するマイクロポアを含む。β-TCPのマクロポアおよびマイクロポアは骨誘導および骨伝導を促すことができ、それと共にマクロポア、メソポアおよびマイクロポアは、流体の伝達および栄養の輸送を可能にして、β-TCP生体適合性マトリックスの全体を通じた骨再成長をサポートすることができる。
【0081】
多孔性構造の構成において、β-TCPは、一部の実施形態において、25%より高いまたは約40%より高い多孔度を有することができる。他の実施形態において、β-TCPは、50%より高い、約60%より高い、約65%より高い、約70%より高い、約75%より高い、約80%より高い、または約85%より高い多孔度を有することができる。さらなる実施形態において、β-TCPは、約90%より高い多孔度を有することができる。一部の実施形態において、(β-TCPは、β-TCP中への細胞遊走を促す多孔度を有することができる。
【0082】
一部の実施形態において、骨足場材料はβ-TCP粒子を含む。β-TCP粒子は、一部の実施形態において、β-TCPについて本明細書において提供されるポア直径および多孔度のいずれかを個々に示すことができる。他の実施形態において、骨足場材料のβ-TCP粒子は、骨足場材料について本明細書において提供されるポア直径または多孔度のいずれかを有するマトリックスを生成するために会合を形成することができる。多孔度は、その後の骨形成のためにマトリックス中への細胞遊走および浸潤を促してもよい。β-TCP粒子は、一部の実施形態において、約1μm~約5mmの範囲内の平均直径を有する。他の実施形態において、β-TCP粒子は、約1mm~約2mm、約1mm~約3mm、約250μm~約750μm、約250μm~約1mm、約250μm~約2mm、または約200μm~約3mmの範囲内の平均直径を有する。別の実施形態において、β-TCP粒子は約100μm~約300μmの範囲内の平均直径を有する。さらなる実施形態において、β-TCP粒子は約75μm~約300μmの範囲内の平均直径を有する。追加の実施形態において、β-TCP粒子は、約25μm未満の平均直径、約1μm未満、または約1mm未満の平均直径を有する。一部の実施形態において、β-TCP粒子は約100μm~約5mmまたは約100μm~約3mmの範囲内の平均直径を有する。
【0083】
β-TCP粒子を含む生体適合性マトリックスは、一部の実施形態において、埋め込みのために好適な形状(例えば、スフェア、シリンダー、またはブロック)で提供することができる。他の実施形態において、β-TCP骨足場材料は、成形可能、押し出し可能、かつ/または注射可能であり、それにより、脊椎固定術の間に所望の骨癒合の標的部位中およびその周辺におけるマトリックスの配置を促すことができる。流動性マトリックスは、シリンジ、チューブ、もしくはスパチュラまたは同等のデバイスを通じて適用されてもよい。流動性β-TCP骨足場材料は、一部の実施形態において、シリンジおよび針またはカニューレを通じて骨癒合の部位に適用することができる。一部の実施形態において、β-TCP骨足場材料はインビボで硬化する。
【0084】
β-TCP骨足場材料は、一部の実施形態によれば、生体吸収性である。一部の実施形態において、β-TCP骨足場材料は、インビボ埋め込み後1年で少なくとも30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%吸収されることができる。別の実施形態において、β-TCP骨足場材料は、インビボ埋め込み後1年で約90%より高く吸収されることができる。
【0085】
β-TCPおよびコラーゲンを含む生体適合性マトリックス
一部の実施形態において、生体適合性マトリックスはβ-TCP骨足場材料および生体適合性コラーゲン結合剤を含むことができる。コラーゲン結合剤との組み合わせのために好適なβ-TCP骨足場材料は、本明細書において上記に提供されるものと合致する。
【0086】
コラーゲン結合剤は、一部の実施形態において、I型、II型、およびIII型コラーゲンを含めて、任意の種類のコラーゲンを含むことができる。一部の実施形態において、コラーゲン結合剤は、コラーゲンの混合物、例えばI型およびII型コラーゲンの混合物を含む。他の実施形態において、コラーゲン結合剤は生理的条件下で可溶性である。骨または筋骨格組織に存在する他の種類のコラーゲンが用いられてもよい。組換え、合成および天然に存在する形態のコラーゲンが本発明において使用されてもよい。
【0087】
生体適合性マトリックスは、一部の実施形態によれば、コラーゲン結合剤を用いて互いに接着した複数のβ-TCP粒子を含むことができる。コラーゲン結合剤との使用のために好適なβ-TCP粒子は、本明細書に記載の任意のβ-TCP粒子を含むことができる。一部の実施形態において、コラーゲン結合剤との組み合わせのために好適なβ-TCP粒子は約1μm~約5mmの範囲内の平均直径を有する。別の実施形態において、コラー
ゲン結合剤との組み合わせのために好適なβ-TCP粒子は、約1μm~約1mm、約1mm~約2mm、約1mm~約3mm、約250μm~約750μm、約250μm~約1mm、約250μm~約2mm、約200μm~約1mm、または約200μm~約3mmの範囲内の平均直径を有する。β-TCP粒子は、他の実施形態において、約100μm~約300μmの範囲内の平均直径を有する。さらなる実施形態において、コラーゲン結合剤との組み合わせのために好適なβ-TCP粒子は約75μm~約300μmの範囲内の平均直径を有する。追加の実施形態において、コラーゲン結合剤との組み合わせのために好適なβ-TCP粒子は、約25μm未満、および約1mm未満または約1μm未満の平均直径を有する。一部の実施形態において、コラーゲン結合剤との組み合わせのために好適なβ-TCP粒子は約100μm~約5mmまたは約100μm~約3mmの範囲内の平均直径を有する。β-TCP粒子は、一部の実施形態において、コラーゲン結合剤により互いに接着して、多孔性構造を有する生体適合性マトリックスを生成することができる。一部の実施形態において、β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、約1μm~約1mmの範囲内の直径を有するポアを含むことができる。β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、約100μm~約1mmの範囲内の直径を有するマクロポア、約10μm~100μmの範囲内の直径を有するメソポア、および約10μm未満の直径を有するマイクロポアを含むことができる。
【0088】
β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、約25%より高いまたは40%より高い多孔度を有することができる。別の実施形態において、生体適合性マトリックスは、約50%より高い、約60%より高い、約65%より高い、約70%より高い、約80%より高い、または約85%より高い多孔度を有することができる。さらなる実施形態において、生体適合性マトリックスは、約90%より高い多孔度を有することができる。多孔性は、その後の骨形成のためにマトリックス中への細胞遊走および浸潤を促す。
【0089】
β-TCP粒子を含む生体適合性マトリックスは、一部の実施形態において、生体適合性マトリックスの約1重量パーセント~約70重量パーセント、約5重量パーセント~約50重量パーセント、約10重量パーセント~約40重量パーセント、約15重量パーセント~約35重量パーセント、または約15重量パーセント~約25重量パーセントの範囲内の量でコラーゲン結合剤を含むことができる。さらなる実施形態において、コラーゲン結合剤は、生体適合性マトリックスの約20重量パーセントの量で存在することができる。
【0090】
β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部の実施形態によれば、流動性、成形可能、かつ/または押し出し可能であることができる。そのような実施形態において、生体適合性マトリックスはペーストまたはパテの形態であることができる。ペーストまたはパテは、所望のインプラント形状に成形することができ、または埋め込み部位の輪郭に成形することができる。一部の実施形態において、β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含むペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは、シリンジまたはカニューレを用いて埋め込み部位に注入することができる。
【0091】
一部の実施形態において、β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含むペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは、埋め込まれたときに流動性の形態を保持することができる。他の実施形態において、ペーストまたはパテは埋め込み後に硬化することができ、それによりマトリックス流動性を低減させることができる。
【0092】
β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部の実施形態において、所定の形状、例えばブロック、スフェア、またはシリンダーで提供するこ
とができる。
【0093】
β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは吸収性であることができる。一部の実施形態において、β-TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、インビボ埋め込み後1年で少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、または90%吸収されることができる。別の実施形態において、このマトリックスは、インビボ埋め込み後1、3、6、9、12、または18か月以内に少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%吸収されることができる。
【0094】
PDGFを含む溶液は、本発明の実施形態による脊椎固定術における骨癒合を促進するための組成物を製造するために、生体適合性マトリックス中に配することができる。
【0095】
生体適合性マトリックス中へのPDGF溶液の組み込み
本発明は、骨癒合術における使用のための組成物を製造する方法を提供する。一部の実施形態において、骨の癒合を促進するための組成物を製造する方法は、PDGFを含む溶液を提供すること、生体適合性マトリックスを提供すること、およびその溶液を生体適合性マトリックスに組み込むことを含む。組み合わせのために好適なPDGF溶液および生体適合性マトリックスは、本明細書において上記されるものと合致する。
【0096】
一部の実施形態において、PDGF溶液は、生体適合性マトリックスをPDGF溶液に浸漬することにより生体適合性マトリックスに組み込むことができる。PDGF溶液は、別の実施形態において、生体適合性マトリックスをPDGF溶液に注入することにより生体適合性マトリックスに組み込むことができる。一部の実施形態において、PDGF溶液を注入することは、PDGF溶液をシリンジに組み込むことおよびPDGF溶液を生体適合性マトリックス中に排出して生体適合性マトリックスに飽和させることを含むことができる。
【0097】
溶液を生体適合性マトリックスに組み込む方法の実施形態が
図1A~1Fに描写される。PDGFの溶液がシリンジのバレルに注入される(
図1A)。生体適合性マトリックスを含有する第2のシリンジもまた提供される(
図1B)。PDGFの溶液を含有するシリンジが、生体適合性マトリックスを含有するシリンジに挿入され、PDGF溶液が、生体適合性マトリックスを含有するシリンジに移されて、生体適合性マトリックスを含水(hydrate)させる(
図1C)。PDGF溶液を移した後に、含水させた生体適合性マトリッ
クスは任意選択的に時間的期間、例えば1~10分にわたり静置されてもよい(
図1D)。シリンジが次に、例えばメス-メス(female-to-female)ルアーロックコネクターを用いて、互いに接続され、その結果、互いと流体連通する(
図1E)。生体適合性マトリックスおよびPDGFの溶液が次に、含水させた生体適合性マトリックスを数サイクルにわたりシリンジ間で行ったり来たりするように移すことにより混合される(
図2)。一部の実施形態において、均質なペーストを形成させるために、内容物は少なくとも5、10、20、またはより多くのサイクルにわたり移される。混合後、含水させたマトリックスは任意選択的に、手術部位に適用する前に数分間静置されてもよい(
図1F)。
【0098】
追加の生物学的活性剤を含む組成物
手術において骨癒合を促進および/または促すための本明細書に記載の組成物は、一部の実施形態によれば、PDGFに加えて1つまたは複数の生物学的活性剤をさらに含むことができる。PDGFに加えて本発明の組成物に組み込むことができる生物学的活性剤は、有機分子、無機材料、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、遺伝子、遺伝子断片、小挿入物(small insert)リボ核酸[si-RNA]、遺伝子調節配列、核転
写因子、およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖(例えば、ヘパリン)、糖タンパク質、ならびにリポタンパク質を含むことができる。例えば、抗がん剤、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、ホルモン、筋肉弛緩剤、プロスタグランジン、栄養因子、骨誘導性タンパク質、増殖因子、およびワクチンを含む、本発明の組成物に組み込むことができる生物学的活性化合物の非限定的な例は米国特許出願第11/159,533号明細書(公開番号:20060084602)に開示されている。一部の実施形態において、本発明の組成物に組み込むことができる生物学的活性化合物は、骨誘導性因子、例えばインスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、または他のPDGFを含む。他の実施形態によれば、本発明の組成物に組み込むことができる生物学的活性化合物は、好ましくは、骨誘導性および骨刺激性因子、例えば骨形成タンパク質(BMP)、BMP模倣物、カルシトニン、カルシトニン模倣物、スタチン、スタチン誘導体、または副甲状腺ホルモンを含む。好ましい因子としてはまた、プロテアーゼ阻害剤の他に、ビスホスホン酸塩、およびNF-kBリガンドの受容体活性化因子(RANK)リガンドに対する抗体を含めて、骨吸収を減少させる骨粗鬆症治療が挙げられる。
【0099】
追加の生物学的活性剤の送達のための標準的なプロトコールおよびレジメンは当該技術分野において公知である。追加の生物学的活性剤は、インプラント部位への適切な用量の剤の送達を可能とする量で本発明の組成物に導入することができる。ほとんどの場合に、用量は、実施者に公知かつ問題とする特定の剤に適用可能なガイドラインを使用して決定される。本発明の組成物に含められる追加の生物学的活性剤の量は、状態の種類および程度、特定の患者の全体的な健康状態、生物学的活性剤の処方、放出速度論、ならびに生体適合性マトリックスの生体吸収性などの変数に依存し得る。任意の特定の追加の生物学的活性剤のための用量および投薬頻度を最適化するために、標準的な臨床試験が使用されてもよい。
【0100】
脊椎固定術において骨癒合を促進するための組成物は、一部の実施形態によれば、自己骨髄、自己血小板抽出物、および合成骨マトリックス材料を含む、PDGFへの他の骨移植材料の追加をさらに含むことができる。
【0101】
癒合術を行う方法
本発明はまた、骨癒合術、例えば脊椎固定術を行う方法を提供する。一部の実施形態において、脊椎固定術を行う方法は、生体適合性マトリックスに組み込まれたPDGF溶液を含む組成物を提供することおよび所望の脊椎固定の部位に組成物を適用することを含む。生体適合性マトリックスに組み込まれたPDGF溶液を含む組成物は、例えば、所望の脊椎固定の部位に詰めることができる。一部の実施形態において、組成物は、骨癒合部位中の骨の全表面領域と組成物が接触するように詰めることができる。組成物は、さらに、癒合した骨をさらに強化するために骨癒合部位の近傍に適用されてもよい。
【0102】
一部の実施形態において、方法は、ケージを使用することを含む。組成物は、癒合の所望の部位への挿入の前にケージの内側の空間に適用されてもよく、あるいは、ケージは癒合の所望の部位に置かれてもよく、かつ組成物が次にケージの内側の空間に適用される。例示的なケージが
図3Aに示され、本開示の例示的な組成物で満たされたケージが
図3Cに示される。さらに、癒合の部位にケージを固定するために固定化ハードウェアもまた使用されてもよい(
図3B)。
【0103】
頸部、胸部、腰部、および仙椎領域を含めて、脊椎の任意の部分における椎骨が、本発明の組成物および方法を使用して癒合されてもよい。
【0104】
別の実施形態において、本発明の方法は、脊椎固定術において骨結合を加速させることを含み、骨結合を加速させることは、生体適合性マトリックス中に配されたPDGF溶液
を含む組成物を提供することおよびそれを適用することを含む。
【0105】
以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものであるが、それと同時に、本発明のいかなる限定も構成しない。反対に、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神から離れることなく当業者に示唆され得る様々な実施形態、その改変および均等物をとることができることが明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0106】
実施例1:β-TCP/コラーゲンマトリックス中にrhPDGF-BBを含む組成物の調製
20%/80% w/wのウシコラーゲン/β-リン酸三カルシウムマトリックスと組み合わせた20mMの酢酸ナトリウム、pH 6.0溶液中の0.3mg/mlの組換えヒト血小板由来増殖因子(rhPDGF-BB)の製剤。2:1の体積/質量比で混合された場合、製剤は、治療が必要な部位に14Gカニューレまたは針を通じて適用することができる濃いペーストとなる。
【0107】
0.5gのマトリックス(20:80のw/w比のウシコラーゲン/β-TCP)および20mMの酢酸ナトリウム、pH 6.0中の0.3mg/mLのrhPDGF-BBの溶液1mLを使用して試験製剤を調製した。0.5gのマトリックスおよび1.0mLの20mM酢酸ナトリウム、pH 6.0を用いて対照品を同様に調製した。18ゲージ針を備えた10mLのシリンジを使用して、バイアルからシリンジのバレルに1.0mLのPDGF溶液を吸引した(
図1A)。0.5gのβ-TCP/コラーゲンマトリックスを含有する第2のシリンジを数回タップしてマトリックスをほぐし、シリンジキャップを除去した(
図1B)。rhPDGF-BB溶液を含有するシリンジの針を、β-TCP/コラーゲンマトリックスを含有するシリンジの針ハブに挿入し、マトリックスを含有するシリンジにrhPDGF-BB溶液を移した(
図1C)。rhPDGF溶液が移されている間に、rhPDGF溶液がマトリックスのできるだけ多くを含水させるように針をマトリックス含有シリンジの針ハブから徐々に外してもよい。rhPDGF-BB溶液の全てを移した後に、空のシリンジを除去し、含水させたβ-TCP/コラーゲンマトリックスを含有するシリンジの針にキャップを再び置いた(
図1D)。含水させたマトリックスを少なくとも2分間静置した。メス-メスルアーロックコネクターを使用して、前にrhPDGF溶液が含まれていた空のシリンジを、含水させたマトリックスを含有するシリンジに接続した(
図1E)。含水させたマトリックスを次に20サイクル(1サイクルは、マトリックスを空のシリンジに入れ、次に元々のシリンジに戻すこととして定義される)にわたり2つのシリンジの間で行ったり来たりするように移して、均質なペーストを形成させた。
図2は、ペーストを形成させるために2つのシリンジの間で含水させたマトリックスを移すプロセスを描写する図式である。ペーストを最後に1つのシリンジに完全に移した。シリンジのプランジャーを穏やかに引くことにより、混合プロセスの間に蓄積した圧力を緩和してもよい。空のシリンジおよびメス-メスルアーロックコネクターを、含水させたマトリックスを含有するシリンジから除去した。シリンジ中に残存する空気を排気し、14ゲージブラントカニューレを取り付けた(
図1F)。
【0108】
実施例2:ヒツジモデルにおける腰椎固定の評価
A.研究の設計
ヒツジは形状および長さにおいてヒトと同等の脊髄構造を有するので、ヒツジモデルをこの研究のために選択した。追加的に、ヒツジは、ヒトと類似した骨治癒プロセスを持つ。よって、ヒツジモデルは腰椎固定の許容されるトランスレーショナルモデルとなる。
【0109】
合計で32匹のヒツジにL2-L3およびL4-L5レベルでの腰椎椎体間固定を行った。動物を4つの治療群に分け、PEEK椎体間固定ケージを、自家骨移植片(群1)、
実施例1に記載されるようなコラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BB(群2)、もしくは酢酸ナトリウムビヒクルを伴うコラーゲン/β-TCP(群3)で満たし、またはPEEKケージを空とした(群4)。例示的なPEEK脊椎固定ケージを
図3Aに描写し、固定化ハードウェアを
図3Bに描写している。実施例1に記載されるようなコラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBで満たしたケージを
図3Cに描写している。治療の割り当ては動物間で無作為化し、癒合レベルは各治療群について等しく分布させた。動物は研究の間に自由に歩き回ることおよび自由に食事することを許容され、術後8週または16週のいずれかで屠殺した。屠殺後に、非破壊的運動学的生体力学試験、マイクロコンピュータ断層撮影および組織学を通じて脊椎固定の質を評価した。
【0110】
B.結果
i.生体力学
6Nmの純粋なモーメント荷重の下で屈曲-伸展、左右の側屈、ならびに左右の軸回転において、解剖されたL2-L3およびL4-L5の機能的脊髄単位に対して非破壊的運動学的試験を行った。全体的に、8週の時点から16週の時点へと全ての主要な方向において全ての治療群において運動における統計的に有意な低減があった。いかなる運動平面においても8週または16週の時点内において治療群間で統計的に有意な差異はなかった。生体力学の結果を
図4A~Cに描写している(屈曲伸展、
図4A;側屈、
図4B;軸回転、
図4C;キー、
図4D)。2元配置分散分析(ANOVA)、α=0.05。同様の文字は統計的に有意な差異を指し示す。
【0111】
i. MicroCT
ケージのコア領域に対してμCT分析を行った。MicroCTを介してPEEK椎体間ケージ内の骨体積および密度を評価した。8週の時点から16週の時点で、全ての治療群について椎体間ケージ内の骨体積分率において統計的に有意な増加があった(
図5A)。治療レベルにおいて、コラーゲン/β-TCPおよび空の治療は、自家移植片およびコラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBでの治療と比較して有意により低い骨体積分率を実証したが、いずれかの時点内で治療群間の骨体積分率における統計的に有意な差異はなかった。(
図5B)。2元配置分散分析(ANOVA)、α=0.05。同様の文字は統計的に有意な差異を指し示す。
【0112】
骨密度分率、分析した全体積の密度に対して正規化された骨密度の測定値を、各椎体間ケージ内で定量化した。より大きい骨強化(bone consolidation)は、1により近い数値により表される。再び、8週の時点から16週の時点で、全ての治療群について骨密度分率において有意な向上があった。治療レベルにおいて、コラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBでの治療は、コラーゲン/β-TCPおよび空の治療と比較して統計的に向上した骨密度分率を結果としてもたらした。さらに、16週において、自家移植片骨を用いて治療された動物は、空のPEEKケージを用いて治療された動物と比較して有意に向上した骨密度分率を実証し、コラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBを用いて治療された動物は、コラーゲン/β-TCP単独または空のPEEKケージのいずれかを用いて治療された動物と比較して有意に向上した骨密度分率を実証した。
【0113】
インプラントのコア、前部、および後部表面、ならびに周囲の骨を示すために、組織学的切片は、典型的には、椎体間デバイスを通じて矢状面において取られる。
図6に見られるように、椎体間ケージを通じた中矢状断面は両方の時点において各治療群についての典型的な骨形成を示す。骨含有量は、両方の時点において、自家移植片治療動物と、コラーゲン/β-TCPを含むrhPDGF-BBを用いて治療された動物との間で類似していた。コラーゲン/β-TCPのみを用いて治療された群または治療なしの群においてより
少ない骨形成が見られた。
【0114】
iii.組織形態計測
PEEKケージにより囲まれた癒合領域の組織形態計測評価を行って、各治療における骨、軟組織、および空の領域の量を定量化した。平均骨パーセンテージは、8週と比較して16週において全ての治療群について有意により高かった。コラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBを用いて治療された動物は、8週または16週において、自家移植片治療動物と比較して骨の有意に異なる量を示さなかったが、コラーゲン/β-TCPを単独で用いて治療された動物は、8週において、自家移植片治療動物と比較して有意により少ない骨を結果としてもたらした。平均軟組織パーセンテージは、8週と比較して16週において、全ての治療群について有意により低かった。コラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBまたはコラーゲン/β-TCP単独のいずれかを用いて治療された動物は、8週において自家移植片治療動物と比較して軟組織の有意により多い量を示した。これらの差異は16週の時点において存在しなかった。椎体間ケージ内の平均空き空間は、早い時点と比較して遅い時点において、全ての治療群について有意により大きかった。時点内で治療群間での有意な差異は観察されなかった。治療レベルにおいて、骨、軟組織、または空き空間パーセンテージの観点で、自家移植片、およびコラーゲン/β-TCPと組み合わせたrhPDGF-BBでの治療の間で統計的に有意な差異はなかった。結果を
図7A~7Cに要約している。2元配置分散分析(ANOVA)、α=0.05。同様の文字は統計的に有意な差異を指し示す。(平均骨パーセンテージ、
図7A;平均軟組織パーセンテージ、
図7B;平均空き空間パーセンテージ、
図7C)。
【0115】
組織学的切片を
図8に描写している。椎体間ケージを通じたこれらの中矢状断面は、両方の時点において各治療群における典型的な骨形成を再び示す。検体は、
図6に示されるMicroCT再現と同じである。骨含有量は、両方の時点において、自家移植片治療動物、およびコラーゲン/β-TCPを含むrhPDGF-BBを用いて治療された動物の間で類似していた。コラーゲン/β-TCPのみを用いて治療された群または治療なしの群において、より少ない骨形成が見られた。
【0116】
実施例3:前臨床ラット傍脊椎インプラント安全性モデルにおけるrhPDGF-BBに対する宿主炎症応答の評価
インビボでβ-リン酸三カルシウム(TCP)/コラーゲンマトリックス担体と組み合わせて送達した場合のrhPDGF-BBの神経炎症性宿主応答を、この実施例において評価した。80匹のFischer F344雌ラットに、両側傍脊椎筋肉切除を伴うL4-5後外側固定を行い、4種類のインプラントのいずれかを用いて移植を行った:1)腸骨稜「自家移植片」(同系ドナーから取られた同種移植片)、2)酢酸ナトリウム緩衝液を含むβ-TCP/ウシコラーゲンマトリックス(β-TCP/Col)、3)0.3mgのrhPDGF-BBを含むβ-TCP/Col、および4)3.0mgのrhPDGF-BBを含むβ-TCP/Col。
【0117】
術後4、7、10、および21日目に動物の磁気共鳴イメージング(MRI)およびマルチプレックス血清サイトカイン定量化を行った。脊椎および隣接する軟組織を回収し、組織学的評価のために処理し、Ki67&フォンウィルブランド因子(vWF)で染色して免疫蛍光によりそれぞれ細胞増殖および血管新生を評価した。
【0118】
この研究において評価したサイトカインを表1に列記する。
【0119】
【0120】
4つのサイトカイン(GM-CSF、EGF、GRO/KC/CINC-1、およびMIP-2)はいずれの検体についても最小検出可能濃度を満たさず、さらなる評価から除外した。Luminex xMAP技術により分析した残りの23の血清サイトカインのうちの20は、時点により分離された場合に治療群の間で有意な差異を示さなかった。高用量rhPDGF-BBおよび自家移植片群における血清サイトカインレベルを経時的な倍数変化として表す(
図9)。対照およびrhPDGF-BB治療動物の間で表1に列記される他のサイトカインの血清レベルにおいて臨床的に有意な差異は見出されなかった。
【0121】
MRI評価において、いずれの時点においても治療群の間で流体蓄積における統計的に有意な差異は見出されなかった。経時的なT2強調MRI画像上の高強度領域の平均体積を
図10に描写している。L4-L5椎間板空間における腰椎の代表的なT2強調軸方向MRIスライスの画像を
図11に示す。高強度の自動セグメント化領域を表すオーバーレイは炎症の領域を指し示した。
【0122】
図12Aおよび
図12Bは、β-TCP/Col 3.0mgのrhPDGF-BBを用いた4日目について示される、Ki67(
図12A)およびvWF(
図12B)についてのIF染色の代表的な画像である。TissueGnostic組織学的顕微鏡(Zeiss)を用いてスライスをイメージングし、ソフトウェアTissueFAXS(Zeiss)/NIS elements(Nikon)を使用して処理してシグナルを定量化した。術後4、7、10および21日目において示されたKi67およびフォンウィルブランド因子(vWF)についての定量化されたIF染色。
【0123】
チューキー事後検定を伴うANOVAを使用して各時点において群の間でKi67(
図13A)およびvWF(
図13B)の定量化された蛍光シグナルを比較した。10日目において、腸骨稜自家移植片、および0.3mgのrhPDGF-BBを含むβ-TCP/Colの間で、Ki67シグナルにおける有意な差異があった(p=0.013)。他の治療群の間で統計的に有意な差異はなかった。
【0124】
この前臨床傍脊椎インプラント安全性モデルにおいて、低用量および高用量のいずれのrhPDGF-BBもラットにおいて神経炎症応答を誘導しなかった。間葉系細胞のための強い分裂促進剤および走化性剤としてのその役割にもかかわらず、この研究は、炎症性サイトカインにおけるいかなる有意なアップレギュレーションも、MRI上での局所的な
組織炎症の増加も、免疫蛍光により評価された血管新生関連マーカーにおける生物学的に有意な差異も実証しなかった。
【0125】
本明細書に開示される全ての参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
本開示の特定の実施形態を記載したが、以下の特許請求の範囲において記載される場合を除いて、そのような実施形態は本発明の範囲に対する限定として解釈されることは意図されない。
【国際調査報告】