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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】抗菌コーティング
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/30 20060101AFI20220428BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220428BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20220428BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20220428BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C03C17/30 A
A01P3/00
A01N59/20
A01N25/10
A01N25/04 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555396
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 GB2020050672
(87)【国際公開番号】W WO2020183204
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】1903507.0
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521417668
【氏名又は名称】ピルキントン テクノロジー マネジメント リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PILKINGTON TECHNOLOGY MANAGEMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ローリー バック
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ポール オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ルス ロメロ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ジェフリース
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー オリバー スミス
【テーマコード(参考)】
4G059
4H011
【Fターム(参考)】
4G059AA08
4G059AC30
4G059FA05
4G059FA27
4G059FB03
4H011AA02
4H011BB18
4H011BC19
4H011DH07
(57)【要約】
本発明は、ガラス基板上に抗菌コーティングを生成するためのプロセス、該プロセスにより作製された抗菌コーティングガラス基板およびその使用に関し、該プロセスは、i)第1の表面および第2の表面を有するガラス基板を提供するステップと;ii)シリコン含有溶液および粒子含有溶液を提供するステップと;iii)シリコン含有溶液および粒子含有溶液を一緒に混合して、シリカコーティング組成物を形成するステップと;iv)前記基板の少なくとも前記第1の表面をシリカコーティング組成物と接触させて、ガラス基板上にシリカの層を堆積させるステップと;iv)ガラス基板上に堆積したシリカコーティング組成物を硬化させて、シリカマトリックスコーティング層を形成するステップと、を含み、粒子が、0.1~20重量%の量でシリカマトリックスコーティング層上および/または層内に堆積する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に抗菌コーティングを生成するためのプロセスであって、
i)第1の表面および第2の表面を有するガラス基板を提供するステップと、
ii)シリコン含有溶液および粒子含有溶液を提供するステップと、
iii)前記シリコン含有溶液および前記粒子含有溶液を一緒に混合して、シリカコーティング組成物を形成するステップと、
iv)前記基板の少なくとも前記第1の表面を前記シリカコーティング組成物と接触させて、前記ガラス基板上にシリカの層を堆積させるステップと、
iv)前記ガラス基板上に堆積した前記シリカコーティング組成物を硬化させて、シリカマトリックスコーティング層を形成するステップと、を含み、粒子が、0.1~20重量%の量で前記シリカマトリックスコーティング層上および/または層内に堆積する、プロセス。
【請求項2】
前記粒子含有溶液が、金属粒子および/または金属凝集物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記金属粒子および/または金属凝集物が、銅を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記金属粒子が、10nm~150nmのサイズ範囲を含み、かつ、前記金属凝集物が、1μm~4μmのサイズ範囲を含む、請求項2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記シリコン含有溶液および前記粒子含有溶液がそれぞれ、溶媒を含む、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール、1-メトキシ2-プロパノール(PGME)、プロピレングリコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記シリカコーティング組成物が、少なくとも65重量%、または好ましくは少なくとも75重量%のシリカを含む、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記シリカマトリックスコーティング層が、下記式、
[R Si-N R]n
[式中、R、RおよびRは、それぞれHまたはC~Cアルキルから独立して選択され、nは、整数である]のポリシラザンを、または、
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を、
ベースにする、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記シリカコーティング組成物が、前記ガラス基板と接触して直接付与される、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記シリカコーティング組成物が、
前記シリカマトリックスコーティング層中のシリカの量に対して少なくとも1.0重量%のアルミニウムをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記アルミニウムが、アルミニウムの酸化物の形態で前記シリカマトリックスコーティング層中、または前記シリカマトリックスコーティング層上に存在する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記シリカコーティング組成物が、ディップコーティング、スピンコーティング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、スプレーコーティング、空気霧化噴霧、超音波噴霧、またはスロットダイコーティングのうちの1つ以上の手段によって前記ガラス基板に付与される、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記シリカコーティング組成物が、ローラーコーティングまたはスプレーコーティングによって前記ガラス基板に付与される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記シリカコーティング組成物を付与する前に、前記ガラス基板の表面をクリーニングするステップをさらに含む、請求項1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
クリーニングが、セリアによる研磨、アルカリ性水溶液による洗浄、脱イオン水によるすすぎ、および/またはプラズマ処理のうちの1つ以上によって、前記ガラス基板の前記表面を処理するステップを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記シリカコーティング組成物の硬化が、前記シリカコーティング組成物が付与された前記ガラス基板に紫外線を照射すること、および/または90℃~450℃の範囲の温度に加熱することを含む、請求項1~15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記シリカコーティング組成物の硬化が、前記ガラス基板および前記シリカコーティング組成物を90℃~250℃の範囲の温度に加熱することを含む、請求項1~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記シリカマトリックスコーティング層が、5nm~250nmの範囲の厚さに堆積する、請求項1~17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
透明導電性酸化物コーティングが、前記シリカコーティング組成物の堆積前に前記ガラス基板に付与される、請求項1~7または9~17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載のプロセスによって作製された抗菌コーティングガラス基板であって、
i)ガラス基板と、
ii)シリカマトリックスコーティング層であって、
a)少なくとも65重量%のシリカと、
b)シリカマトリックスの上および/または内部に保持された銅粒子と、
を含むシリカマトリックスコーティング層と、を備え、
前記ガラス基板上の細菌の増殖が、コーティングされていないガラス基板と比較して少なくとも10%低減されている、抗菌コーティングガラス基板。
【請求項21】
前記シリカマトリックスコーティング層が、少なくとも1.0重量%のアルミニウムをさらに含む、請求項20に記載の抗菌コーティングガラス基板。
【請求項22】
37℃で2時間以内にグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌を少なくとも2対数低減させる、請求項20または21に記載の抗菌コーティングガラス基板。
【請求項23】
請求項20~22のいずれかに記載の抗菌コーティングガラスを備えるか、および/または請求項1~19のいずれかに記載のプロセスによって作製された建築用または自動車用ガラス窓。
【請求項24】
断熱ガラス窓ユニット、自動車用ガラス窓ユニットの作製における、請求項20~22のいずれかに記載の、および/または請求項1~19のいずれかに記載のプロセスによって作製された抗菌コーティングガラス基板の使用。
【請求項25】
電子デバイス、ボトルまたは医療容器の作製における、請求項20~22のいずれかに記載の、および/または請求項1~19のいずれかに記載のプロセスによって作製された抗菌コーティングガラス基板の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に抗菌コーティングを生成するためのプロセス、抗菌コーティングされた基板、および所定の範囲の用途におけるそのような抗菌コーティングされた基板の使用に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ガラス基板上に抗菌コーティングを生成するためのプロセス、およびその少なくとも1つの表面上に抗菌コーティングされたガラス基板に関する。本発明はまた、例えばこれらに限定されないが、建築用および自動車用ガラス窓(glazings)、スプラッシュバック、家具、ボトル、壁装材、およびタッチスクリーンなど本発明に従って作製された、抗菌コーティングガラス基板を含む抗菌物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
電子デバイスの使用頻度が世界中に広がるにつれ、スクリーン表面に存在する可能性のある微生物の存在もまた増加し、したがって、個人間の微生物の潜在的な移動が増加する。実際、例えば店舗およびスーパーマーケットにあるタッチスクリーンでは、1時間あたり数百人のタッチスクリーン端末を使用するユーザーがおり、細菌、真菌、酵母、ウイルスであり得る微生物をユーザー間で拡散させる可能性がある。
【0004】
さらに、特定の細菌株に対する耐性の脅威が高まり、あるウイルスの伝染から疫病の流行が発生するにつれて、個々のガラス基板には、デバイスや用途に関わらず、微生物の拡散を止めることができる必要性がますます高まっている。
【0005】
細菌、酵母、ウイルスを含む微生物は、金属表面に接触すると死滅し得ることは以前から知られていた。実際、院内環境での微生物の拡散を食い止める試みにおいて、ドアの取っ手、浴室の備品およびベッドなどの表面に銅が使用されてきた(Applied and Environmental microbiology 2011、March、77(5)、1541-1547)。
【0006】
しかしながら、窓やドアなどの透明性を必要な基準に維持する必要があり、かつ、例えば摩耗や引っかき傷にも耐性がある表面に抗菌特性を組み込む技能は困難であることが証明されている。これは、ガラス基板に永続的な抗菌活性を与えることが難しいだけでなく、抗菌活性をもたらす、ガラス基板に付与されたいずれのコーティングも、許容コストで美的外観を維持しながら、ガラス窓の必要なパラメーターを尚、提供しなければならないためである。
【0007】
基板表面に抗菌活性を付与する試みがなされてきた。例えば、WO2009/098655には、高周波スパッタリングによって基板を銀膜でコーティングすることを含む、基板に抗菌特性を付与するための方法が記載されている。ただし、該文献は、処理後のガラス基板の特性に関しては言及していない。
【0008】
KR20130077630Aは、指紋防止および抗菌目的のためのシリカゾル-ゲル中のナノ金属イオンの分散を開示している。ただし、銅粒子は考慮されておらず、代わりに、銀を中心に、強い金属塩の反応を通じたナノ金属イオンの生成に焦点が当てられている。
【0009】
同様に、CN109534687は、抗菌機能を提供するために使用される、組み込まれた金属イオン、好ましくは銀を有するシリカベースのゾル-ゲルを提供するためのプロセスを記載している。
【0010】
US2017/0036949は、抗菌機能を有するコーティングを提供するために、摂氏320~620℃の温度でアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに組み込まれた硝酸銀を記載している。
【0011】
US9,028,962 B2は、酸化銅粒子が透明基板に付与される複雑な多段階プロセスを開示している。ガラス基板を、粒子の付与の前または後にイオン交換に供してガラスを化学的に強化し、続いて酸化銅粒子を還元する。抗菌ガラスはさらにフルオロシラン層でコーティングされる。
【0012】
WO2005115151では、ナノ粒子添加剤を含み、かつ、機能性シラン、すなわち、OH基含有量の高いオリゴマーで形成された分散助剤および/または接着促進剤の付着により粒子の表面が修飾された結果として、抗菌機能および装飾機能の両方を有すると言われる機能性ゾル-ゲルコーティング剤が開示されている。
【0013】
同様に、JP200511902には、基板の表面全体に表面ヒドロキシル基で置換されたシロキサン分子を含むフィルムによって抗菌特性および防汚特性を同時に提供する基板が記載されており、該フィルムはさらに銀の粒子を含有する。
【0014】
US2010/0015193は、耐性コーティングを形成する目的で、基板の表面上に形成され、外部雰囲気に曝された複数の抗菌性金属アイランドを有する基板を開示している。走査型電子顕微鏡で測定した場合、基板と各々の抗菌金属アイランドとの間の平均接触角値は90度以下である。抗菌性金属アイランドは、不活性ガス雰囲気でスパッタリングすることによって配置される。
【0015】
DE202005006784は、一般に、その表面の少なくとも一部を透明で多孔質のゾル-ゲル層でコーティングすることが提案されているエアコンまたは冷蔵庫のドア、窓および/または内張りなどの物品であって、該ゾル-ゲル層は、1つ以上のアルキル基を有し、かつ、少なくとも1つの抗菌効果のある物質/化合物がドープされた有機修飾シロキサンマトリックスを含むものが記載されている。残念ながら、サポートとして提供されている抗菌試験データはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記した先行技術文献のいずれも、本発明に係るプロセスを詳述しておらず、本発明に係るプロセスは、必要な微生物耐性および光学特性、ならびに摩耗や引っかき傷への耐性を有する基板上に、ガラス産業でリーズナブルなコストで使用される、および、例えば、ガラスまたはガラス窓が高頻度で一般的接触を伴うロケーションで使用され得る、ガラス基板およびガラス窓の求められるレベルにまで抗菌コーティングを提供することができる。
【0017】
したがって、リーズナブルなコストで光学的性能および機械的耐久性を維持しながら、微生物病原体の増殖および伝染を低減することができる透明コーティングが付与されたガラス基板の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従って作製された抗菌コーティングガラス基板は、例えばこれらに限定されないが、自動車用ガラス窓ならびに、商業用および住宅用用途を含む建築用ガラス窓、さらには食品およびヘルスケア用途に使用してもよい。本発明はまた、例えばこれらに限定されないが、タッチスクリーン、携帯電話、ラップトップコンピュータ、ブックリーダー、ビデオゲームデバイス、および現金自動預金支払機などの電子デバイスにおける用途も見出し得る。実際、本発明は、ガラス基板が使用されて触れられ得るか、またはガラススクリーンに表示された情報がタッチによって検索される任意の用途または状況に適用可能である。
【0019】
さらに、本発明に従って作製された抗菌コーティングは、例えばコーティングされたおよびコーティングされていない基板と共に、例えばこれらに限定されないが、コーティング層(コーティング層は、抗菌コーティングの上または下に配置されている)を生成するための化学蒸着(CVD)および/または物理蒸着(PVD)を用いてコーティングされたフロートガラスなどのガラス基板と共に使用されてもよい。
【0020】
さらに、本発明に従って作製された抗菌コーティングがガラス基板に付与される場合、ガラス基板は、例えばフロートガラスなどの平坦なガラスを含み得るか、あるいは該ガラス基板は、例えばこれらに限定されないが、ボロシリケートガラス、圧延による板ガラス、セラミックガラス、強化ガラス、化学強化ガラス、中空(hollow)ガラス、またはボトル、ジャーおよび医療容器などの物品用に成形されたガラスなどの代替形態のガラスを含み得る。
【0021】
本発明の第1の態様によると、ガラス基板上に抗菌コーティングを生成するためのプロセスであって:
i)第1の表面および第2の表面を有するガラス基板を提供するステップと;
ii)シリコン含有溶液および粒子含有溶液を提供するステップと;
iii)前記シリコン含有溶液および前記粒子含有溶液を一緒に混合して、シリカコーティング組成物を形成するステップと;
iv)前記基板の少なくとも前記第1の表面を前記シリカコーティング組成物と接触させて、前記ガラス基板上にシリカの層を堆積させるステップと;
iv)ガラス基板上に堆積したシリカコーティング組成物を硬化させて、シリカマトリックスコーティング層を形成するステップと、を含み、粒子が、0.1~20重量%の量で前記シリカマトリックスコーティング層上および/または層内に堆積する、プロセスが提供される。
【0022】
好ましくは、シリコン含有溶液と共にシリカコーティング組成物を形成するために使用される粒子含有溶液は、金属粒子および/または金属凝集物を含む。好ましくは、金属粒子および/または金属凝集物は銅を含む。凝集物とは、銅粒子のクラスターを意味する。
【0023】
すなわち、本発明者らは、銅粒子が、シリコン含有溶液と混合および硬化されてシリカマトリックスコーティング層を形成するときに、ガラス基板に効果的な抗菌特性を提供するのに特に適合性があり有益であることを見出した。
【0024】
銅粒子は、好ましくは、粒子含有溶液中に10~150nmのサイズ範囲で提供される。より好ましくは、銅粒子は、15~100nmのサイズ範囲で好ましく提供される。しかしながら、最も好ましくは、銅粒子は、20~60nmのサイズ範囲にある。
【0025】
粒子含有溶液中に凝集物として存在する場合、銅凝集物は、好ましくは、0.1μm(100nm)~10ミクロン、または0.5μm~5μmのサイズ範囲で提供される。より好ましくは、粒子含有溶液中の該凝集物は、好ましくは、1μm~4μmのサイズ範囲で提供される。
【0026】
あるいは、および/またはさらに、銅は、0.1μm(100nm)~10ミクロンのサイズ範囲を有する離散粒子として、粒子含有溶液中に存在してもよい。
【0027】
さらには、銅粒子または凝集物は、好ましくは、少なくとも95.00%の純度レベルで粒子含有溶液中に存在する。より好ましくは、銅粒子は、少なくとも98.00%の純度レベルで該粒子溶液中に好ましく存在する。さらにより好ましくは、銅粒子は、少なくとも99.00%の純度レベルで該粒子溶液中に好ましく存在する。最も好ましくは、銅粒子は、少なくとも99.50%の純度レベルで該粒子溶液中に好ましく存在する。
【0028】
銅粒子の溶液は、例えば、鉛、スズ、鉄、アンチモン、ニッケル、亜鉛、カドミウム、クロム、ヒ素、およびテルルなどの追加の金属成分を含んでもよい。しかしながら、追加の金属成分は、好ましくは、それぞれが0.005%未満のレベルで存在する。
【0029】
好ましくは、本発明に係るガラス基板に付与されるシリカコーティング組成物は、少なくとも0.1重量%の銅を含む。あるいは、ガラス基板に付与されるシリカコーティング組成物は、0.5~1.5重量%の銅を含んでもよい。あるいは、該基板に付与されるシリカコーティング組成物は、最大20重量%の銅を含んでもよい。
【0030】
すなわち、ガラス基板上に堆積したシリカコーティング組成物、ゆえに基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、0.1~20重量%の銅を含んでもよい。あるいは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、1~20重量%の銅を含んでもよい。あるいは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、1~15重量%の銅を含んでもよい。あるいは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、2~10重量%の銅を含んでもよい。
【0031】
あるいは、ガラス基板上に堆積したシリカコーティング組成物、ゆえに基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、1~10重量%の銅を含んでもよい。より好ましくは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、2重量%~8重量%の銅を含んでもよい。最も好ましくは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、2.5重量%~5重量%の銅を含んでもよい。
【0032】
好ましくは、シリカマトリックスコーティング層中の銅は、金属銅、酸化銅(I)または酸化銅(II)の形態である。より好ましくは、シリカマトリックスコーティング層中の銅は、金属銅または酸化銅(I)の形態である。しかしながら、最も好ましくは、上記銅は銅金属の形態である。
【0033】
シリカマトリックスコーティング層中の重量による銅の量およびアルミニウムの量は、同じであっても異なっていてもよいこともまた、好ましい。シリカマトリックスコーティング層中の重量による銅の量およびアルミニウムの量が異なる場合、シリカマトリックスコーティング層中の銅の重量は、アルミニウムの重量よりも多くてもよい。例えば、シリカマトリックスコーティング層中には、1~20重量%の銅および1~15重量%のアルミニウムが存在してもよい。
【0034】
あるいは、シリカマトリックスコーティング層中の重量による銅の量およびアルミニウムの量が異なる場合、シリカマトリックスコーティング層中のアルミニウムの量は、銅の量よりも多くてもよい。しかしながら、シリカマトリックスコーティング層中には重量によるアルミニウムの量よりも銅の方が多く存在することが好ましい。
【0035】
本発明の第1の態様に関して、シリコン含有溶液および粒子含有溶液はそれぞれ、好ましくは溶媒を含む。シリコン含有溶液および粒子含有溶液で使用される溶媒は、同じであっても異なっていてもよい。溶媒は、好ましくは、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール、1-メトキシ2-プロパノール(PGME)、プロピレングリコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0036】
好ましくは、本発明に係るガラス基板に付与されるシリカコーティング組成物は、少なくとも65重量%のシリカを含む。あるいは、ガラス基板に付与されるシリカコーティング組成物は、少なくとも75重量%のシリカを含む。あるいは、該基板に付与されるシリカコーティング組成物は、少なくとも80重量%のシリカを含む。
【0037】
すなわち、ガラス基板上に堆積したシリカコーティング組成物、ゆえに基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、65重量%~99重量%のシリカを含んでもよい。より好ましくは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、65重量%~98重量%のシリカを含んでもよい。あるいは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、65重量%~75重量%のシリカを含んでもよい。あるいは、基板上にそのように形成されたシリカマトリックスコーティング層は、65重量%~90重量%のシリカを含んでもよい。
【0038】
シリカマトリックスコーティング層は、例えば、テトラエチルオルトシリケート、Si(OC、(TEOS)および/またはそれらの誘導体をベースにしてもよい。あるいは、シリカマトリックスコーティング層は、フロートガラスなどのガラス上での使用に理想的な透明コーティングを形成するために、例えばペルヒドロポリシラザン(PHPS)のようなポリシラザンおよび/またはその誘導体をベースにしてもよい。
【0039】
すなわち、本発明に係るプロセスにおいて、シリカマトリックスコーティング組成物は、好ましくは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)をベースにしてもよい。あるいは、該シリカマトリックスは、下記式のポリシラザンをベースにしてもよい:
[R Si-N R]n
式中、R、RおよびRは、それぞれHまたはC~Cアルキルから独立して選択され;nは、ポリシラザンの数平均分子量が150~150,000g/molの範囲であるような整数である。
【0040】
ポリシラザンは、好ましくは、式中、R、RおよびRが、それぞれHである、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)を含んでもよい。あるいは、ポリシラザンは、式中、R、RおよびRのうちの1つ以上がメチルであるメチルポリシラザンを含んでもよい。
【0041】
ポリシラザンのさらなるタイプは、以下の式の化合物を含み得る:
((R45Si-NR6)O-(R78Si-NR9)p) または、
[(R45Si-NR6]-[R78Si-NR9)]q,
式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれHまたはC~Cアルキルから独立して選択され、o、p、qは整数である。o、pおよびqは、ポリシラザンが150~150,000g/モルの範囲の数平均分子量を有するようなものであってよい。
【0042】
好ましくは、シリカマトリックスコーティング層は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)をベースにする。
【0043】
本発明に係るプロセスの一実施形態では、シリカコーティング組成物は、ガラス基板と接触して直接付与されてもよい。あるいは、シリカコーティング組成物は、ガラス基板上に堆積した別の層の上に付与されてもよい。
【0044】
加えて、シリカコーティング組成物は、アルミニウムをさらに含んでもよい。シリカコーティング組成物中のアルミニウムの量は、シリカマトリックスコーティング層中のアルミニウムの必要量に対して設定されることが好ましい。より好ましくは、シリカコーティング組成物中のアルミニウムの量は、硬化したシリカマトリックスコーティング組成物中のアルミニウムの必要量に対して設定されることが好ましい。
【0045】
例えば、シリカコーティング組成物は、少なくとも1重量%のアルミニウムをさらに含んでもよい。あるいは、シリカコーティング組成物は、1重量%未満のアルミニウムを含んでもよい。本発明の代替の実施形態では、シリカコーティング組成物は、1~15重量%のアルミニウムを含んでもよい。好ましくは、シリカコーティング組成物は、2~10重量%のアルミニウムを含んでもよい。シリカマトリックスコーティング層の耐久性を改善するために、シリカコーティング組成物は、好ましくは、2~8重量%のアルミニウムを含む。
【0046】
アルミニウムは、好ましくは、アルミニウムの酸化物の形態でシリカコーティング組成物中に存在する。アルミニウムは、好ましくは、塩化アルミニウム六水和物、AlCl.6HOの形態でシリコン含有溶液中に提供され、硬化中に酸化アルミニウムを形成する。
【0047】
本発明に係るプロセスに関連して、シリカコーティング組成物は、好ましくは、ディップコーティング;スピンコーティング; カーテンコーティング; ローラーコーティング; スプレーコーティング;空気霧化噴霧(air atomisation spraying);超音波噴霧;またはスロットダイコーティングのうちの1つ以上によってガラス基板に付与されてもよい。しかしながら、最も好ましくは、シリカコーティングは、スプレーコーティングまたはローラーコーティングによって付与される。
【0048】
本発明に係るプロセスに従う場合、コーティングの品質を改善するため、シリカコーティング組成物を付与する前に、ガラス基板の表面をクリーニングしてもよい。ガラス基板のクリーニングは、好ましくは、セリアによる研磨、アルカリ性水溶液による洗浄、脱イオン水リンスによるすすぎ、および/またはプラズマ処理のうちの1つ以上を含んでもよい。クリーニングは、好ましくは、シリカ層の付与前に溜まった可能性のある不要なほこりまたは汚れ粒子を除去する。
【0049】
シリカコーティング組成物の硬化は、好ましくは、シリカコーティング組成物が付与された時点で、ガラス基板に紫外線を照射することによって、および/または90℃~450℃の範囲の温度に加熱することによって実施してもよい。より好ましくは、本発明に係る方法は、90℃~250℃の範囲の温度に加熱することによってシリカコーティング組成物を硬化させることを好ましく含んでもよい。シリカコーティング組成物の硬化は、シリカマトリックスコーティング層の密度およびシリカマトリックスコーティング層が形成される速度を改善し得るので有利である。
【0050】
好ましくは、シリカマトリックスコーティング層は、5nm~250nmの範囲の厚さに堆積する。あるいは、シリカマトリックスコーティング層は、5nm~200nmの範囲の厚さに堆積する。より好ましくは、シリカマトリックスコーティング層は、10~100nmの範囲の厚さに堆積するか、またはシリカマトリックスコーティング層は、20~80nmの範囲の厚さに堆積してもよい。しかしながら、最も好ましくは、シリカマトリックスコーティング層は、25~60nm、さらには30~50nmの範囲の厚さに堆積する。
【0051】
銅を含み、アルミニウムを含むまたは含まないシリカマトリックスコーティング層は、例えば化学蒸着および/または物理蒸着によってガラス基板に付与され、かつ、シリカマトリックスコーティング層の上または下に付与されるコーティングと組み合わせて使用することもできる。
【0052】
本発明に係るプロセスに関連して、代替の実施形態では、透明導電性酸化物コーティングは、好ましくは、シリカコーティング組成物の堆積前にガラス基板に付与されてもよい。
【0053】
本発明の第2の態様によると、好ましくは、本発明の第1の態様に従って作製する抗菌コーティングされた基板であって、
i)ガラス基板と;
ii)シリカマトリックスコーティング層であって:
a)少なくとも65重量%のシリカと;
b)シリカマトリックスの上および/または内部に保持された銅粒子と、を含む
シリカマトリックスコーティング層と、を備え;
基板上の細菌の増殖が、コーティングされていないガラス基板と比較して少なくとも10%低減されている基板が提供される。
【0054】
あるいは微生物の低減の観点から、本発明の第2の態様に関して、好ましくは、37℃で2時間以内にグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌を少なくとも2対数低減(2-log reduction)させる抗菌コーティングされた基板を提供する。
【0055】
2対数低減または2対数死滅(kill)は、99.0%低減後に微生物コロニーを10,000個の細菌に低減し、3対数死滅は、99.9%低減後に微生物コロニーを1,000個の細菌に低減する。
【0056】
好ましくは、抗菌コーティングされた基板は、少なくとも1.0重量%のアルミニウムをさらに含んでもよい。アルミニウムは、好ましくは、アルミニウムの酸化物として存在する。
【0057】
本発明の第3の態様によると、好ましくは、本発明の第1の態様に従って作製された抗菌コーティングされた基板を含む建築用ガラス窓が提供される。
【0058】
本発明の第4の態様によると、好ましくは、本発明の第1の態様に従ったプロセスによって作製された抗菌コーティングされた基板、および/または断熱ガラス窓ユニット、自動車用ガラス窓ユニット、電子デバイス、鏡またはガラスボトルの作製における本発明の第2の態様に係る抗菌コーティングされた基板の使用が提供される。
【0059】
したがって、本発明の第1の態様に関する本発明のすべての態様は、必要に応じて、本発明の第2、第3および第4の態様に関しても適用されることが理解されよう。
【0060】
ここで、本発明の実施形態は、以下の実施例および図面を参照する場合にのみ、例示として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】銅濃度の範囲に対するサンプル36~41の反射色空間(reflected colour space)(D65/2)値を示す。
図2】サンプル36~41の透過率測定値と銅濃度との関係を示す。
図3】サンプル36~41の記録されたヘイズ測定値と銅濃度との関係を示す。
図4】スピンコーティングされたサンプル37~41で得られた光学顕微鏡画像を示す。
図5】サンプル41(8500ppm銅)(画像a、b、c)およびサンプル38(850ppm銅)(画像d、e、f)で得られたSEM画像を示し、図5cおよび5fの銅粒子は、シリカマトリックスコーティング層から突き出ている。
図6】最初の200℃硬化後、650℃硬化前の銅粒子で得られたSEM画像を示し、銅粒子はシリカマトリックスコーティング層から突き出ている。
図7】200℃および650℃硬化させたコーティングを有する2つの異なる基板の反射色のa*値およびb*値を示すウルトラスキャン測定値を示す。
図8】ローラーコーティングされたサンプルおよびコーティングされていないガラスサンプルのさまざまな波長での透過率および反射率の測定値を示す。
図9】ローラーコーティングを使用して堆積した後の銅粒子で得られたSEM画像を示す。
図10】1000ppmの銅を用いてローラーコーティングされたサンプルからの銅粒子の経時的な浸出を明示する。
図11】8500ppmの銅を用いてローラーコーティングされたサンプルからの銅粒子の経時的な浸出を明示する。
【実施例
【0062】
[材料]
銅粒子はNanotecから入手した。TEOSは、テトラエチルオルトシリケート(テトラエトキシシランとも呼ばれ、TEOSと略記)で、式はSi(OCで、オルトケイ酸のエチルエステルであるSi(OH)である。メルク(Merck)から入手可能である。
【0063】
アルミニウムは、塩化アルミニウム六水和物(AlCl.6HO)として本発明で使用するために提供される。使用される塩化アルミニウム六水和物(AlCl.6HO)の量は、好ましくは、シリカマトリックスコーティング層に必要とされるアルミニウムの量に基づく。例えば、使用される塩化アルミニウム六水和物(AlCl.6HO)の量は、シリカの総質量と比較して、シリカマトリックスコーティング層(硬化後)中に7重量%の酸化アルミニウムを提供するのに十分であり得る。
【0064】
[実験項目1.スピンコーティングによるシリカ粒子および銅粒子の堆積、およびその後の熱処理]
ガラス基板にスピンコーティングにより付与した場合に、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)由来のシリカマトリックスを用いて、さまざまな銅粒子濃度の抗菌効果を評価するために、サンプル1~24を調製した。24個のスピンコーティングサンプルすべてについて、使用した装置はSCS(Specialty Coating system(商標))から入手可能なSpin G3-Bであった。
【0065】
サンプルを調製するために、最初に10重量%のシリカ溶液を、イソプロピルアルコール(IPA)および脱イオン水(DI)中で、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)をゾルゲル反応の触媒として1M 塩酸を用いて加水分解することにより調製した。前記溶液を室温で4時間撹拌した。次いで、前記溶液をエタノールまたはイソプロピルアルコールのいずれか中の銅粒子分散液により希釈して、表1aに示すように30ppm~100ppmの範囲の銅濃度とした。
【0066】
【表1】
【0067】
【表1a】
【0068】
エタノールおよびイソプロピルアルコール中のさまざまな濃度の銅粒子分散液(表1aに示す)を、次いで、表1bの実験1~24に示す比率で加水分解したTEOS溶液と組み合わせた。ガラス基板に付与する前に、上記混合物を最大5分間撹拌した。必要に応じて、銅粒子の分散を確保するためにサンプルを超音波処理した。
【0069】
次いで、銅粒子およびTEOS溶液の各混合物を、以下のパラメーターに設定されたスピンコーターを使用して、10cm×10cmのガラス基板に個々に付与した:
i)加速時間0.4秒、
ii)回転時間20秒、
iii)回転速度2000rpm、
iv)減速時間0.4秒。
【0070】
各TEOS/銅粒子溶液混合物を10cm×10cmのガラス基板に付与した後、得られたシリカコーティングを施したガラス基板を、200℃の温度で約1時間熱処理した。堆積したシリカ層の厚さは30nm~40nmの間であった。
【0071】
各ガラス基板は、NSGから入手可能なフロートガラスなどのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを含んでいた。典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、重量で、例えば:SiO69-74%;Al;NaO 10-16%;KO 0-5%;MgO 0-6%;CaO 5-14%;SO 0-2%;およびFe0.005-2%を含む。
【0072】
本発明に関連して、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物はまた、透過光で見た場合に、ガラス組成物に所望の色を与えるために、CO、NiOおよびSeなどの着色剤も含有してよい。透過光は、BS EN410などの認められた規格に基づいて測定し得る。ガラス組成物はまた、最大2%の量で他の添加剤、例えば精製助剤を含有してもよい。さらに、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよい。
【0073】
【表1b】
ガラス「A」は、NSGからOptiview(商標)の商品名で入手可能な反射防止コーティングされたガラスシートを含む。
ガラス「B」は、NSGからOptifloat(商標)の商品名で入手可能なフロートガラスのコーティングされていないガラスシートを含む。
【0074】
[実験項目2.スプレーコーティングによるシリカ粒子、アルミニウム粒子、銅粒子の堆積、およびその後の熱処理]
30cm×30cmのガラス基板にスプレーコーティングにより付与した場合に、アルミニウムと組み合わせたテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を含むシリカマトリックスコーティング層における銅粒子濃度の範囲の効果的な抗菌低減を評価するために、25~32までの番号が付された一連のサンプルを調製した。サンプル実験25~32それぞれにおいて、使用されたスプレーコーティング装置は、ソノテックスプレーコーター(Sonotek spray coater)であった。
【0075】
サンプル25~28については、スプレーコーティングによる堆積用溶液は以下の方法で実現された:
i)イソプロピルアルコール(IPA)を使用して、銅粒子の100ppm溶液を調製する;
ii)イソプロピルアルコール(IPA)、脱イオン水(DI)および1M塩酸(HCl)中で(表1のように)、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)の溶液を室温で4時間調製し、塩化アルミニウム六水和物と組み合わせて9.3%のSiOおよび0.7%のAlを含む溶液を実現する;
iii)イソプロピルアルコール(IPA)溶液中の100ppm銅粒子50mlと、9.3%SiOおよび0.7%Alを含有する溶液10mlとを混合する。
【0076】
サンプル29~32については、スプレーコーティングによる堆積用溶液は以下の方法で実現された:
i)エタノールを使用して、銅粒子の100ppm溶液を調製する;
ii)イソプロピルアルコール(IPA)中で、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)の溶液を調製し、塩化アルミニウム六水和物と組み合わせて9.3%のSiOおよび0.7%のAlを含む溶液を実現する;
iii)エタノール溶液中の100ppm銅粒子25mlと、9.3%SiOおよび0.7%Alを含有する溶液25mlとを混合し、シリカ-アルミニウムおよび50ppm銅粒子のスプレーコーティング混合物を実現する。
【0077】
次いで、各シリカコーティング組成物サンプル(2ml)を、室温および室圧でスプレーコーティングすることにより、30cm×30cmの正方形のフロートガラス基板に個々に付与した。各ガラス基板は、上記の典型的な組成を有するNSGから入手可能なフロートガラスなどのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを含んだ。
【0078】
スプレーコーティングによって付与された8つのサンプルそれぞれのラスター速度および流量の詳細を表2に示す。
【表2】
【0079】
TEOS-アルミニウムおよび銅粒子の溶液を含む各シリカコーティング組成物を30cm×30cm(コーティングされていない)フロートガラス基板に付与した後、付与されたシリカ-アルミニウムコーティング組成物を、200℃の温度で約1時間熱処理した。
【0080】
[スプレーコーティングされたサンプルの耐久性試験]
[実験項目3.湿度試験]
エタノール中の50ppmの銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)(サンプル32)に由来するシリカマトリックスコーティング層、およびイソプロピルアルコール中の90ppmの銅粒子を含むテトラエチルオルトシリケート(TEOS)(サンプル28)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えたフロートガラス基板サンプルを、高温および高湿度の条件にさらすことにより、相対的な耐久性(または劣化)の試験に供した。サンプルを、温度・湿度キャビネット(ThermotronSM-8-7800)に配置し、キャビネット内で設定した時間経過後に検査した。湿度試験の条件を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
湿度試験に続いて、各シリカコーティングガラス基板の表面を検査した。シリカコーティングフロートガラス基板の表面に視覚的に変化がないことが見出され、これは、本発明の方法によって作製されたシリカマトリックスコーティング層がコーティングガラスに要求される湿度試験に耐えることができることを示している。
【0083】
[実験項目4.引っかき試験]
エリクセンモデル314ユニバーサルスクラッチテスターを使用して、本発明に従って作製されたシリカマトリックスコーティング層の引っかきに対する反発性を調査した。この試験では、金属製のスタイラスおよび試験に供するサンプルを付与するターンテーブルを使用する。ターンテーブルを回転させ、下向きの力を加え、コーティングされた基板に引っかき傷が視認できるまでその力を増加させる。表4に、試験したサンプルおよび引っかき試験の結果の詳細を示す。
【0084】
【表4】
【0085】
[実験項目5.ローラーコーティングによるシリカおよび銅粒子の堆積、およびその後の熱処理]
ガラス基板にローラーコーティングにより付与した、アルミニウムと組み合わせたテトラエチルオルトシリケート(TEOS)由来のシリカマトリックスコーティング層中の、さまざまな銅粒子濃度の抗菌効果を評価するために、サンプル33~35を作製した。実験33~35それぞれにおいて、使用されたローラーコーティング装置は、Burckle easy-Coater RCL-M 700ローラーコーターであった。各コーティングは、30cm×40cmの寸法のガラス基板に個々に付与された。
【0086】
【表5】
【0087】
サンプル33~35については、ローラーコーティングによる堆積用溶液が以下の方法により調製された:
i)イソプロピルアルコール(IPA)を使用して、銅粒子の100ppm溶液を調製する;
ii)ジアセトンアルコール、プロピレングリコール、脱イオン水および1M HCL中で、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)の溶液を調製し、塩化アルミニウム六水和物と組み合わせて9.3%のSiOおよび0.7%のAlを含有する溶液を実現する;
iii)イソプロピルアルコール(IPA)溶液中の100ppm銅粒子500mlと、9.3%SiOおよび0.7%Alを含有する溶液500mlとを混合する。
【0088】
各シリカコーティング組成物サンプル(32~35)を、ドクターローラー(doctor roller)、塗布ローラー(application roller)、およびシーリングエンドプレート(sealing end plates)の間のローラーコーター上のチャネルにサンプルをポンプで送ることによって、試験した。溶液が塗布ローラーをコーティングし、塗布ローラーは、順番に該溶液をガラス基板に塗布した。表5に示されるように、サンプル33のガラス基板は、NSGから入手可能なフロートガラスなどのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを含んでいた。典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、重量で、例えば:SiO69-74%;Al;NaO 10-16%;KO 0-5%;MgO 0-6%;CaO 5-14%;SO 0-2%;およびFe0.005-2%を含む。サンプル34については、ガラス基板は、Pilkington OPTIVIEW(商標)の商品名でNSGから入手可能な反射防止コーティングを含んでいた。サンプル35については、ガラス基板は、NSG TEC(商標)の商品名でNSGから入手可能な透明導電性酸化物でコーティングされたガラスシートを含んでいた。
【0089】
ローラーコーティングの前に、ガラス基板をフラットベッド洗浄機でクリーニングした。コーティング後、対流式加熱オーブン内でサンプルを200℃で1時間熱硬化させ、シリカマトリックスコーティング層を生成した。ローラーコーティング条件を表5bに示す。ドクターローラーをテクスチャー処理し、コーティングされる材料の塗布ローラーへの移動性を改善してもよい。
【0090】
【表5b】
【0091】
[実験項目6.抗菌試験]
一連の抗菌試験プロトコルは、以下について行った:
i)スピンコーティングされたサンプル;
ii)スプレーコーティングされたサンプル;
iii)耐久性試験後のスプレーコーティングされたサンプル;
iv)強化後のスプレーコーティングされたサンプル;および
v)ローラーコーティングされたサンプル。
チリのポンティフィシア大学カトリカデバルパライソ(the Pontificia Universidad Catolica de Valaparaiso, Chile)によって、ISO 22916に基づく標準プロトコルを使用して、すべての抗菌試験を行った。詳細は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
[実験項目6i.スピンコーティングサンプル(1~24)の抗菌試験]
スピンコーティングによって堆積したシリカマトリックスコーティング層サンプルを、ISO 22196に従って、大腸菌(E.Coli)および黄色ブドウ球菌MRSAに対する抗菌試験に供した。
【0093】
細菌をシリカマトリックスコーティング層サンプルと接触させて、37℃で6、8および24時間インキュベートした。ISO2216に従って、抗菌活性(すなわち対数低減)Rを、式1により計算した。
【0094】
さらに、死滅細菌のパーセンテージについて、接種直後の未処理の試験片(%I)およびインキュベーション時間t後の未処理の試験片(%R)の両方を、式2および式3により計算した。
【数1】
【数2】
【数3】
式中、
は、接種直後に未処理の試験片から回収された生菌の平均数(細胞/cm)である。
は、インキュベーション時間t後に未処理の試験片から回収された生菌の平均数(細胞/cm)である。
は、インキュベーション時間t後に処理された試験片から回収された生菌の平均数(細胞/cm)である。
【0095】
6時間、8時間および24時間後にシリカマトリックスコーティング層サンプルと接触した大腸菌DH5αの抗菌活性の結果を各々表6a~6cに、および黄色ブドウ球菌MRSAの抗菌活性の結果を各々表6d~6fに提供する。
【0096】
【表6a】
【0097】
【表6b】
【0098】
【表6c】
【0099】
【表6d】
【0100】
【表6e】
【0101】
【表6f】
【0102】
結果は、銅が存在するサンプルは、銅が存在しないコントロールと比較して細菌負荷を低減することを実証している。抗菌活性は24時間後に増加した。さらに、抗菌活性はすべての基板タイプで同等であった。銅濃度が増加するとともに、抗菌活性の増加が観察された。コロニーの低減が最も大きかったのは、イソプロピルアルコール(IPA)に銅が90ppm含まれているサンプル(大腸菌が98.5%低減)および、IPAに銅が50ppm含まれているサンプル(MRSAが96.62%低減)であった。
【0103】
[実験項目6ii.スプレーコーティングサンプル(25~32)の抗菌試験]
サンプル25から32までのスプレーコーティングされたシリカガラス基板を、以下のように、大腸菌(E.Coli)および黄色ブドウ球菌MRSAに対する抗菌試験に供した。
【0104】
細菌をサンプルと接触させて37℃で6時間、8時間および24時間インキュベートした。ISO2216に従って、抗菌活性(すなわち対数低減)Rを、式1により計算した。さらに、死滅細菌のパーセンテージについて、接種直後の未処理の試験片(%I)およびインキュベーション時間t後の未処理の試験片(%R)の両方を、式2および式3により計算した。
【0105】
表7a~7fに提供された結果は、サンプルがコントロールと比較して細菌負荷の低減を示していることを表している。最高値は、サンプル28および32で観察された。サンプル32の場合、24時間のインキュベーション後に大腸菌で96.88%の%Rが観察され、黄色ブドウ球菌で96.53%の%Rが観察された。サンプル28の場合、24時間で高い値の%Rが観察され、大腸菌および黄色ブドウ球菌で各々、98.44%および96.13%であった。
【0106】
【表7a】
【0107】
【表7b】
【0108】
【表7c】
【0109】
【表7d】
【0110】
【表7e】
【0111】
【表7f】
【0112】
要約すると、スプレーコーティングされたサンプルの場合、ラスター速度が、液体の流量よりも抗菌性能により影響を与え得ることが示された。150mm/sとは対照的に75mm/sの遅いラスター速度で作製されたサンプルは、測定された各期間で、MRSAおよび大腸菌の両方について一貫してより高い抗菌活性を示した。流速を毎分3mlから毎分1.5mlに減少させても、抗菌活性の低下は一貫して示されなかった。
【0113】
表8は、スプレーコーティングされたサンプルの24時間後の大腸菌DH5αおよび黄色ブドウ球菌MRSAの抗菌低減活性(%R)を、酸化アルミニウム(Al)存在下において銅濃度および溶媒を様々に変えた堆積のラスター速度および流量と比較した概要である。
【0114】
【表8】
【0115】
表8から、大腸菌DH5αのスプレーコーティングされたサンプルの場合、最高のパフォーマンスを発揮するサンプルは、エタノールを溶媒としたサンプル28であり、ラスター速度は75mm/秒、流量は1.5ml/分、銅濃度は90ppmであり、24時間後の抗菌低減活性(%R)は98.44%であった。黄色ブドウ球菌MRSAの場合、最高のパフォーマンスを発揮するサンプルは、IPAを溶媒としたサンプル32であり、スター速度は75mm/秒、流量は1.5ml/分、銅濃度は50ppmであり、24時間後の抗菌低減活性(%R)は96.53%であった。抗菌性能の観点から、IPA中に90ppmの銅およびエタノール中に50ppmの銅を含むサンプルは、両方とも効果的に機能した。
【0116】
[実験項目7.浸出試験-リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて]
サンプル28および32を、人体との接触をシミュレートするために、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた浸出試験に供した。浸出試験では、5×5cmのサンプルを、コーティングされた面を上にして、200mlの密封可能な容器に入れた。50mlのPBS溶液(LonzaからAccuGENE(登録商標)として入手可能)を容器に加えた。次いで、容器および内容物を、8時間、7日間、14日間および28日間の浸出時間の間、室温で放置した。特定の浸出時間の後、各サンプルを脱イオン水で洗浄し、容器から取り出した。次に、PBS溶液を100mlフラスコに洗い入れ、5ml HClを加え、次に脱イオン水で容量を調整した。サンプルを容器に戻し、さらに50mlのPBSを混合物に加えた。
【0117】
ICP-OESを使用して、サンプル溶液の銅を分析した。スタンダードは、50mlのPBSおよび5mlのHClをマッチさせたマトリックスであった。コーティングされたサンプルからは、銅の有意な浸出は起こらなかったことが見出された。
【0118】
[実験項目8.強化後のスプレーコーティングされたサンプルの表面トポグラフィー分析]
スプレーコーティングされたサンプル28(90ppmの銅粒子)およびサンプル32(50ppmの銅粒子)を、マッフル炉で、650℃で5分間加熱することにより、強化(熱強化)した。次いで、コーティング層のトポグラフィーを分析し、その結果を、強化されていないサンプルと比較した。溶媒としてエタノールを使用して銅粒子で生成されたシリカ/アルミニウムマトリックスコーティング層は、溶媒としてイソプロパノールを使用して調製されたサンプルよりも厚かった。FEI Nova NanoSEM450およびTEAM softwareを備えたEDAXOctane plusEDS検出器を使用して、結果を取得した。各サンプルの光学顕微鏡写真を、WILD実体顕微鏡を使用して取得した。画像については、暗視野照明および混合視野バリアント(mixed field variant)(透過光源の部分食)を使用して取得した。
【0119】
銅テープを使用して各サンプルをフレーミングし、接着性カーボンタブを使用して各サンプルをアルミニウム走査型電子顕微鏡(SEM)のスタブに取り付けることにより、走査型電子顕微鏡での画像用にサンプルを調製した。導電性を確保するために、サンプルを白金の薄膜でコーティングした。
【0120】
サンプル28および32の走査型電子顕微鏡混合視野画像によると、エタノールベースのコーティングおよびイソプロパノールベースのコーティングの一般的な形態(morphology)(例えば、起伏のあるトポグラフィー)は、「堆積したままの」サンプルと比較して、強化されたサンプルにおいてほとんど変化しないことを示し、ごくわずかなさざ波立ち(rippling)が明らかとなったのみであった。予想通り、暗視野画像の比較により、「堆積したままの」非強化サンプルと比較して、強化サンプルでより急激なエッジ/亀裂/剥離領域が見つかったことが示されたが、それは許容範囲内であった。
【0121】
[実験項目9.強化後のローラーコーティングされたサンプルの表面トポグラフィー分析]
ローラーコーティングによりフロートガラス上に堆積した分散銅粒子を有する、TEOSに由来するシリカ/アルミニウムマトリックスコーティング層を含むサンプル33のトポグラフィーを調査した。
【0122】
シリカマトリックスコーティング層に関連する銅粒子の分布を分析するために、走査型電子顕微鏡による研究を採用した。試料を、シリカマトリックスコーティング層のサンプルから採取し、アルミニウムのスタブに取り付け、プラチナの薄層(均一な導電性表面を提供)でコーティングした後に、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して試験した。コーティングに関する銅粒子の位置を決定するために、5、15および30kVならびに4.5のスポットサイズのものを使用して画像を収集した。
表面感度を向上させるために、加速電圧5kV、ステージバイアス500V、および加速電圧8kV、ステージバイアス4kVの「ビーム減速」(BD)モードを使用した。ビーム減速(BD)モードにおいて、同心後方散乱(CBS)および「スルーザレンズ」検出器(TLD)を使用した。
ビーム電圧を上げて(5kV(表面感度)から30kV(最も透過性あり))、サンプル表面の一連の低倍率後方散乱電子(BSE)画像を収集した。BSE画像は、サンプルの化学組成に関する情報を提供し、サンプルの全画像は、平均原子番号が高く、画像のコントラストがより明るく、したがって、銅を表す材料であることを示していた。
【0123】
さまざまなビーム電圧での画像を使用して、シリカマトリックス層に関する銅粒子の分布を決定した。近接した試験により、5および15kVで撮影されたBSE画像に明確なより明るいコントラストの粒子が写し出され、これはシリカの表面に銅が存在することを示している。30kV(最も透過性の高い条件)で撮影された画像の場合、粒子はより明るいコントラストではあまり目立たなくなったが、それでも明らかであり、シリカマトリックス層に銅が存在することを示している。
【0124】
高倍率では、二次電子(SE)画像で幅約4μmの銅粒子の凝集が明らかになった。
【0125】
超高解像度イメージング(BDでTLDを使用)を採用して、サブミクロンの銅粒子の存在を決定した。予想通り、銅粒子はBSE画像ではコントラストが明るく見えた。銅粒子はまた、円形で細長いようにも見えた。粒子は35~100nmのサイズの領域にあり、より大きな粒子に凝集すると、1μm~4μmの領域であった。
【0126】
[項目10.上記項目1~9に関する要約]
本発明に関する上記の項目1~9に記載された調査に基づいて、ガラス基板上に堆積した、銅粒子とTEOS等に由来するシリカとのコーティングは、表面接触を通じて病原体を破壊することができることが見出された。
【0127】
[実験項目11.シリカマトリックスコーティング層に異なる濃度の銅粒子を備えたスピンコーティングされたサンプル、およびその後の熱処理]
上記の研究は、シリカマトリックスコーティング層への銅粒子の導入が、抗菌性能の改善を提供することを示している。次の実験では、スピンコーティングされたサンプルの抗菌性能に対する銅濃度の増加の影響を調査する。
【0128】
銅粒子が85~8500ppm(コーティング溶液中の重量)の様々な濃度範囲である、1.5重量%のシリカコーティング溶液を使用して生成されたスピンコーティングされたサンプルを調査した。
【0129】
サンプルを調製するために、最初に、ゾル-ゲル反応の触媒として1M塩酸を使用して、イソプロピルアルコール(IPA)および脱イオン水中でテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加水分解することにより、10重量%のシリカ溶液を調製した。この溶液を室温で4時間撹拌した。次いで、この溶液をイソプロピルアルコール(IPA)中の10,000ppm銅分散液、および適切な量のイソプロピルアルコール(IPA)と組み合わせて、表9に明示されている最終的なシリカと銅の濃度を達成した。
【0130】
【表9】
【0131】
各サンプルをガラス基板にコーティングする前に、超音波浴およびボルテックスミキサーを採用して、銅粒子の懸濁状態を確保した。次いで、各コーティング溶液(2ml)を、以下のパラメーターに設定されたスピンコーターを使用して、10cm×10cmのガラス基板上にピペットで移した:
i)加速時間0.4秒、
ii)スピン時間20秒、
Iii)回転速度2000rpm、
iv)減速時間0.4秒。
付与後、基板を200℃で1時間熱処理した。強化サイクルをシミュレートするために、650℃でさらに熱処理を行った。
【0132】
[実験項目11i.スピンコーティングされたサンプル36~41の光学的測定]
銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えたフロートガラス基板サンプル(Pilkington Optifloat(商標))(10cm×10cm)(サンプル36~41)について、ガードナーヘイズガードプラスおよびHunterLabウルトラスキャンプロを使用して、光学性能を試験した。試験の結果を表10に示す。
図1図3から、銅濃度の増加がスピンコーティングされたサンプルの反射色、透過率、およびヘイズ測定にどのように影響するかが見て取れる。
【0133】
【表10】
【0134】
[実験項目11ii.スピンコーティングされたサンプル37~41の表面分析]
得られたコーティング(37~41)を光学顕微鏡で分析し、各サンプルで撮影した画像を図4に示す。さまざまな銅濃度での、シリカコーティング上およびシリカコーティング内の銅粒子の分布の変化が図に示される。
【0135】
走査型電子顕微鏡の研究を採用し、シリカマトリックスコーティング層に関連する銅粒子の外観および分布も分析した。コーティングされたサンプルを採取し、アルミニウムのスタブに取り付け、プラチナの薄層(均一な導電性表面を提供)でコーティングした後に、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して試験した。650℃の熱処理後のサンプル41および38の画像を、それぞれ図5a~cおよび図5d~fに示す。これらの画像は、8500ppmと850ppmとの銅濃度間の銅の分布の違いを示している。図6aおよび6bは、650℃の熱処理前の個々の銅粒子の画像を示している。
【0136】
[実験項目11iii.スピンコーティングされたサンプル36、37および41の抗菌性評価]
スピンコーティングされたサンプル36、37および41の抗菌試験を、ヨーク大学にて、最大強度の投影を使用するイメージング方法を使用して実施した。イメージング方法および生成された画像は、2つの異なる染色の蛍光を利用して、個々の細菌(例えば、大腸菌培養物)が生きているか死んでいるかを示すことができる。yto9染色(緑)は任意の細菌細胞に入ることができるが、ヨウ化プロピジウム(赤)は膜が損傷した細胞にしか入ることができないため、本調査の目的では死んでいると見なすことができる。すなわち、細胞は一般に、生きている場合は緑色に、死んでいる場合は赤色に蛍光を発する。
【0137】
試験を行うために、染色剤と混合した10μLの大腸菌培養物をサンプル36、37および41に堆積させた。各サンプルの上にカバースリップを置き、シリコングリースで密封し、湿度の高いチャンバー内で、37℃で24時間インキュベートした。サンプルの試験に続いて、得られた画像(生きている菌および死んでいる菌を見て)から、サンプル41(8500ppmの銅粒子)が最高のパフォーマンスを示し、すなわち、抗菌死滅に最も成功したことを示し、一方、サンプル37(85ppmの銅粒子)は、サンプル36(銅粒子が存在しない)と比較して、殺菌性能の改善をほとんど示さなかった、ということが示された。これら初期の知見および上記の光学的結果に基づいて、また光学的性能と抗菌性能との必要なバランスを考慮して、1000ppmの銅濃度でローラーコーティングプロセスを使用してさらなる試験を行った。
【0138】
[実験項目12.以前のサンプル(1~35)および(36~41)の試験に続いて、ローラーコーティングによるシリカマトリックスコーティング層および銅粒子の堆積、およびその後の熱処理]
以前のサンプル(1~35)およびサンプル(36~41)の結果に基づいて、サンプル42~91を調製し、フロートガラス基板にローラーコーティングによって付与された、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層に取り込まれた銅粒子の耐久性、光学性能および抗菌効果を評価した。
【0139】
各実験において、試験用のサンプルを生成するために使用されたローラーコーティング装置は、Burkle easy-Coater RCL-M700ローラーコーターであった。各コーティングを、30cm×40cmの寸法のガラス基板に個々に付与した。コーティングを付与した後、基板をすぐにMemmert乾燥オーブンで200℃の温度に加熱して、コーティングを硬化させた。シリカマトリックスコーティング層をさらに高密度化し、ガラス強化プロセスをシミュレートするために、生成されたサンプルの半分に650℃での熱処理を適用した。プロセスの結果を表11に示す。
【0140】
【表11】
【0141】
サンプル42~91を調製するために、最初に、ゾル-ゲル反応の触媒として1M塩酸を使用して、ジアセトンアルコール、プロピレングリコール、および脱イオン水中でテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加水分解することにより、10重量%のシリカ溶液を調製した。溶液を室温で4時間撹拌した。次いで、適切な量のジアセトンアルコール、プロピレングリコール、およびイソプロピルアルコール(IPA)中の10,000ppmの銅分散液を添加することにより、溶液を希釈して、2.5重量%のシリカと1000ppmの銅との混合物を形成した。
【0142】
次いで、各シリカコーティング組成物サンプル(42~91)を、ドクターローラー、塗布ローラー、およびシーリングエンドプレートの間のローラーコーター上のチャネルに希釈溶液をポンプで送ることによって、生成した。各溶液が塗布ローラーをコーティングし、塗布ローラーは、次に、該溶液をガラス基板に塗布した。表11に示されるように、サンプル42~91のガラス基板は、NSGから入手可能なフロートガラスなどのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを含んでいた。典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、重量で、例えば:SiO69-74%;Al;NaO 10-16%;KO 0-5%;MgO 0-6%;CaO 5-14%;SO 0-2%;およびFe0.005-2%を含む。
【0143】
ローラーコーティングの前に、ガラス基板をフラットベッド洗浄機でクリーニングした。コーティング後、対流式加熱オーブン内で全サンプルを200℃で1時間熱硬化させ、シリカマトリックスコーティング層を生成した。次いで、セットされた各基板のサンプルの半分を、650℃で5分間さらに高温熱処理に供し、熱強化条件をシミュレートした。ローラーコーティングの条件を表12に示す。
【0144】
【表12】
【0145】
[実験項目13.ローラーコーティングされたサンプルの光学性能試験]
1000ppmの銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えた、Pilkington Optiwhite(商標)およびPilkington Optifloat(商標)ガラス基板(10cm×10cm)サンプル(36、56、76および81)について、ガードナーヘイズガードプラスおよびHunterLabウルトラスキャンプロを使用して、光学性能を試験した。試験の結果を表13および14に示す。
【0146】
【表13】
【0147】
表13からわかるように、試験された全サンプルは、0.5以下の許容可能な平均ヘイズ値を有していることが示された。同様に、すべての透過率の値は、90%を超える値で許容可能であった。
【0148】
【表14】
【0149】
表14に示されているa*およびb*の結果もまた、図7に示されている。好ましくは、a*値は0~-3.00の範囲にあり、b*値は2.00~-2.00の範囲にあり、これが、コーティングされたガラスに適切な着色を提供し、コーティングされていないガラス素材と並べて使用する必要がある場合に、コーティングされたガラスを使用することが可能となるからである。さらに、上記の値はコーティングが均一な厚さであることを示している。
【0150】
図8は、ローラーコーティングされたサンプルおよびコーティングされていないガラスサンプルのさまざまな波長での透過率および反射率の測定値を示している。サンプルの透過率測定値および反射率測定値の類似性が、図8からも明らかである。すなわち、測定された波長の全範囲、つまり350~1050nmにわたって、光学性能にほとんど乃至まったく変化がない。
【0151】
[実験項目14.ローラーコーティングされたサンプルの機能性試験]
1000ppmの銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えた、Pilkington Optiwhite(商標)およびPilkington Optifloat(商標)ガラス基板(10cm×10cm)サンプル(42および62のデュプリケート)について、脱イオン水およびヘキサデカンを用いてFTA 200を使用して、接触角を試験した。この試験の結果を表15および表16に示す。
【表15】
【0152】
脱イオン水で測定された接触角に関しては、90度未満の値が許容可能であり、良好な濡れ性を示していると見なされる。
【0153】
【表16】
【0154】
ヘキサデカンで測定された接触角に関しては、90度未満の値が疎水性材料に許容可能であると見なされる。
【0155】
サンプル42および62(デュプリケート)(10×10cmサンプルにカットダウン)はまた、ダインペンを用いて表面エネルギー試験にも供し、その結果を表17に示す。
【0156】
【表17】
ダインペンを、コーティングされたガラス基板の表面に付与した。サンプル42(、42および42aのデュプリケート)について、ダイン値はサンプル62(62、62aのデュプリケート)のものよりも小さく、インクがより容易に除去されたことを示す。
【0157】
サンプル43および63を、コーティング摩擦試験(20×20cmサンプル)に供した。試験の結果を、フロートガラスのサンプル参照とともに表18に提供する。
【0158】
【表18】
【0159】
[実験項目13.ローラーコーティングされたサンプルの耐久性試験 EN1096クラスAおよびB]
1000ppmの銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えた、Pilkington Optiwhite(商標)ガラス基板サンプル(示されたサンプル)について、参照により本明細書に組み込まれるEN1096クラスAおよびEN1096クラスBに従って、SO、結露(condensation)、塩水噴霧および研磨のサイクルにさらすことにより、相対的な耐久性(すなわち劣化)の試験に供した。試験の結果を表19から26に提供する。
【0160】
【表19】
【0161】
【表20】
【0162】
【表21】
【0163】
【表22】
【0164】
【表23】
【0165】
【表24】
【0166】
【表25】
【0167】
【表26】
【0168】
[クリーニング剤の適合性]
1000ppmの銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えた、表28に示されたPilkington Optiwhite(商標)ガラス基板サンプルについて、コーティングされた表面に1Kgの負荷をかけた修正オイル摩擦リグ(oil rub rig)からの6000サイクルのクリーニング剤作用にさらすことにより、相対的な耐久性(すなわち劣化)の試験に供した。試験では、各サンプルを650℃で5分間加熱した。クリーニング剤を付与するために、8×9cmの多目的マイクロファイバークロス(88%ポリエステル/12%ポリアミド)を使用し、修正したジグに取り付け、実行中に必要に応じてクリーニング剤で濡らした。使用したガラスクリーナーは、Nationwide Hygiene Groupから入手可能な超高純度ガラスクリーナーであった。各試験の終わりには、サンプルを脱イオン水ですすぎ、拭いて乾かした。条件の概要を表27に示す。試験の結果を表28に示す。
【0169】
【表27】
【0170】
【表28】
【0171】
[引っかき試験-ピンオンディスク(pin on disk)]
1000ppmの銅粒子を含むテトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えた、Pilkington Optiwhite(商標)ガラス基板サンプル(サンプル53および73、10cm×10cm)について、コーティングの相対的な引っかき耐性の試験に供した。エリクセンモデル314ユニバーサルスクラッチテスターを使用して、本発明に従って調製されたシリカマトリックスコーティング層の引っかきに対する反発性を調査した。この試験では、金属製のスタイラスおよび試験に供するサンプルを付与するターンテーブルを使用する。ターンテーブルを回転させ、下向きの力を加え、コーティングされた基板に引っかき傷が視認できるまでその力を増加させる。表29は、試験に供したサンプルおよび引っかき試験の結果の詳細を提供する。
【0172】
【表29】
【0173】
[湿度試験]
イソプロピルアルコール(IPA)中の1000ppmの銅粒子を含む、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来するシリカマトリックスコーティング層を備えた、Pilkington Optiwhite(商標)基板サンプル(サンプル54、54a、54b、54cのトリプリケート)について、高温および高湿度の条件にさらすことにより、相対的な耐久性(すなわち劣化)の試験に供した。サンプルを、温度・湿度キャビネット(ThermotronSM-8-7800)に配置し、キャビネット内で設定した時間経過後に検査した。湿度試験の条件を表30に示す。湿度試験の結果を表31に示す。
【0174】
【表30】
【0175】
【表31】
【0176】
[実験項目14.ローラーコーティングされたサンプルの抗菌試験]
ローラーコーティングによって堆積したコーティングされたサンプルについて、ISO 22916に基づく標準プロトコルを使用して、英国のユニバーシティカレッジロンドン(UCL)により抗菌性能を評価した。さまざまなインキュベーション時間にわたって、大腸菌(E.Coli ATCC 8739)および黄色ブドウ球菌(S.Aureus ATCC 6538P)に対して、サンプルを試験した。
【0177】
一連の抗菌試験プロトコルを、以下について実施した:
i)わずか200℃で硬化させたローラーコーティングされたサンプルを、2時間および5時間の短いインキュベーション時間を伴って、さらに650℃で熱処理したサンプル。
ii)200℃で硬化させたローラーコーティングされたサンプルを、24時間のインキュベーション時間を伴ってさらに650℃で熱処理したサンプル。
iii)200℃で硬化させたローラーコーティングされたサンプルを、さらに650℃で熱処理し、および24時間のインキュベーション時間を伴ってEN1096耐久性試験に曝されたサンプル。
【0178】
ISO2216に従って、抗菌活性(すなわち対数低減)Rを、式1により計算した。さらに、死滅細菌のパーセンテージについて、接種直後の未処理の試験片(%I)およびインキュベーション時間t後の未処理の試験片(%R)の両方を、式2および式3により計算した。
【数4】
【数5】
【数6】
式中、
は、接種直後に未処理の試験片から回収された生菌の平均数(細胞/cm)である。
は、インキュベーション時間t後に未処理の試験片から回収された生菌の平均数(細胞/cm)である。
は、インキュベーション時間t後に処理された試験片から回収された生菌の平均数(細胞/cm)である。
【0179】
[実験項目14i.2時間および5時間後のローラーコーティングされたサンプル(48および68)の抗菌試験]
細菌溶液をコーティングされたサンプルおよびコーティングされていないサンプルに適用し、カバースリップで覆い、37℃および高湿度で以下の時間:黄色ブドウ球菌の場合は2時間;大腸菌の場合は5時間、インキュベートした。抗菌活性試験の結果を表32および表33に示す。表に記載されている各サンプルについて、3つの別々の2.5×2.5cmの試験片で試験を完了させた。したがって、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方のコーティングタイプごとに合計6つの試験片を試験した。平均結果を提供する。
【0180】
【表32】
【0181】
【表33】
【0182】
結果は、大腸菌8739に対して5時間にわたって試験した場合、200℃で硬化したローラーコーティングされたサンプル(サンプル55)は、コーティングされていない参照と比較して平均死滅率が98.55%であることを示した。650℃で硬化したサンプル(サンプル74)の場合、上記死滅率は75.37%に低下する。
【0183】
黄色ブドウ球菌6538に対して2時間にわたって試験した場合、200℃で硬化したローラーコーティングされたサンプル(サンプル56)は、コーティングされていない参照と比較して平均死滅率が99.33%である。650℃で硬化したサンプル(サンプル75)の場合、上記死滅率は94.26%に低下する。
【0184】
[実験項目14ii.ローラーコーティングされたサンプルの抗菌試験-24時間]
このセクションで試験に供したコーティングされたサンプルは、200℃で1時間硬化された後、650℃で5分間熱処理された。細菌溶液をコーティングされたサンプルおよびコーティングされていないサンプルに適用し、カバースリップで覆い、37℃および高湿度で24時間インキュベートした。
【0185】
抗菌活性の結果を表34に提供する。表に記載されている各サンプルについて、3つの別々の2.5×2.5cmの試験片で試験を完了させた。したがって、サンプル番号ごとに、大腸菌で合計9つの試験片を、および黄色ブドウ球菌で3つの試験片を試験した。平均結果を提供する。
【0186】
【表34】
【0187】
結果は、黄色ブドウ球菌6538に対して試験した場合、650℃でのローラーコーティングされたサンプルは、24時間のコーティングされていない参照と比較して99%を超える死滅率(>log2の低減)を有することを示す。大腸菌8739の死滅率は、より低く、69.86%であった。
【0188】
[実験項目14iii.ローラーコーティングされたサンプルの抗菌試験-ポスト耐久性試験]
このセクションで試験に供したコーティングされたサンプルを、200℃で1時間硬化された後、650℃で5分間熱処理した。次いで、実験項目13で説明したように、EN1096耐久性試験に供した。
【0189】
抗菌活性の結果を表35~表38に提供する。表に記載されている各サンプルについて、3つの別々の2.5×2.5cmの試験片で試験を完了させた。したがって、サンプル番号ごとに、大腸菌で合計9つの試験片を、および黄色ブドウ球菌で3つの試験片を試験した。平均結果を提供する。
【0190】
【表35】
【0191】
【表36】
【0192】
【表37】
【0193】
【表38】
【0194】
上記の結果は、黄色ブドウ球菌6538に対して試験した場合、すべてのEN1096耐久性試験の後でさえ、コーティングされたサンプルは、コーティングされていない参照と比較して99%を超える死滅率(>log2の低減)を維持することを示す。大腸菌8739に対して試験した場合、SOおよび結露 EN1096試験を受けたコーティングされたサンプルは、同様の抗菌性能を維持していた。研磨および塩水噴霧 EN1096試験を受けたサンプルでは、抗菌性能は各々70%から22%および23%に低下した。しかしながら、それらは、コーティングされていない参照と比較して、依然としていくらかの抗菌性能を維持していた。
【0195】
[実験項目15.ローラーコーティングされたサンプルの表面分析]
走査型電子顕微鏡の研究を採用し、シリカマトリックスコーティング層に関連する銅粒子の外観および分布を分析した。コーティングされたサンプルを採取し、アルミニウムのスタブに取り付け、プラチナの薄層(均一な導電性表面を提供)でコーティングした後に、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して試験した。
【0196】
図9a~9cは、さまざまな倍率での平面図における粒子分布を示している。図9dおよび9eは、平面図における個々の粒子のサイズ、形状および構造を示している。図9fおよび9hは、断面図における個々の粒子のサイズ、形状および構造、および/または粒子の凝集を示している。
【0197】
[実験項目15.浸出試験]
[Landfill Directive24時間浸出試験-REACH規制試験]
浸出試験は、埋め立て規制(Landfill directive)2003-33(EN 12457)に記載されているものに基づく。サンプルを、粉砕されたサンプル(>0.5mm<10mm)として供給し、一定分量の10gを100mlのボトルに移した。100mlの蒸留水を加え、サンプルを室温で24時間回転させた。次いで、破砕されたサンプルを濾過により蒸留水から取り除いた。5%HClを添加し、サンプルをICP-OESで分析した。試験を、サンプル57(、57a、57bのデュプリケート)(200℃硬化の1000ppm銅ローラーコーティングサンプル)、サンプル76(、76a、76bのデュプリケート)(200℃硬化、その後650℃で加熱(硬化)した1000ppm銅ローラーコーティングサンプル)およびコーティングされていないPilkington Optiwhite(商標)参照で完了させた。表39の結果は、コーティングされたサンプルおよびコーティングされていない参照のいずれかの間にも違いが見られなかったことを示している。
【0198】
【表39】
【0199】
[モノリシック浸出試験]
浸出試験は、EA NEN 7375:2004に記載されているものに基づく。
試験されたサンプルサイズは5×5cmであった。サンプルを、コーティングされた面を上にして密封可能な容器(Sistema'Klip It'200ml~10×6.5cm)に入れた。浸出液として50mlの脱イオン水を使用し、浸出期間が完了するたびに同量の水を入れ替えた。銅をICP-OES(Thermo iCAP 7400)で分析した。試験は、サンプル58(200℃硬化の1000ppm銅ローラーコーティングサンプル)、サンプル77(200℃硬化、その後650℃で加熱(硬化)した1000ppm銅ローラーコーティングサンプル)、サンプル41(200℃硬化の8500ppm銅スピンコーティングサンプル)およびサンプル41(200℃硬化、その後650℃で加熱(硬化)した85000ppm銅スピンコーティングサンプル)についてデュプリケートで完了させた。
【0200】
【表40】
【0201】
図10および図11は、8通りの期間にわたる浸出率の違いを示し、650℃の熱処理の効果を比較している。浸出速度は時間の経過とともに徐々に減少し、スピンコーティングされたサンプルおよびローラーコーティングされたサンプルの両方で650℃の処理後に劇的に低下する。
【0202】
したがって、本発明に関連して、および上記の研究で例示されるように、例えばTEOSに由来し、ガラス基板上に堆積したシリカマトリックスコーティング層の中または上での銅粒子のコーティングが、表面接触により病原体を破壊できることが実証された。
【0203】
より具体的には、本発明者らは、本発明に係るコーティングプロセスを使用することにより、細菌メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および大腸菌(E coli)などの微生物に対する効果的な耐性を提供するだけでなく、ガラス窓産業の厳しい試験要件を満たすこともできるがゆえにさまざまなガラス基板アプリケーションにおいて使用し得る、費用効果の高いコーティングされたガラス基板を作製することが可能であることを実証した。
【0204】
いかなる特定の理論に拘束されることを望まないが、銅粒子は病原体の細胞および内部タンパク質の両方に影響を与える可能性があり、抗菌効果を生み出すために必要なのはシリカコーティング内および/または上に埋め込まれた比較的少量の銅のみであると考えられる。
【0205】
銅粒子を含むシリカマトリックスはまた、耐研磨性および耐薬品性の向上という点で付加的な利点をも提供し、さらには優れた美的外観を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図9g
図9h
図10
図11
【国際調査報告】