(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】医療用デバイスおよび医療用デバイスを調製する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 33/04 20060101AFI20220428BHJP
A61L 33/08 20060101ALI20220428BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20220428BHJP
A61L 27/30 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61L33/04
A61L33/08
A61L27/28
A61L27/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555431
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2020053670
(87)【国際公開番号】W WO2020187493
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510325765
【氏名又は名称】クヴァンテック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブッツィ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】マデル, アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ツッカー, アリク
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081AC01
4C081BA02
4C081BA03
4C081BA16
4C081BB01
4C081CD012
4C081CE11
4C081DA02
4C081DB07
4C081EA06
4C081EA11
(57)【要約】
本発明は、ヒトまたは動物の体に適用される医療用デバイスに関する。医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用される場合、医療用デバイスはヒトまたは動物の体と接触する接触面を含む。接触面は、可溶型表面シーリングで覆われている。表面シーリングは、有機化合物から構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の体に適用される医療用デバイスであって、
医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用される場合、ヒトまたは動物の体と接触する接触面を含み、
接触面が可溶型表面シーリングで覆われている、医療用デバイスにおいて、
表面シーリングが有機化合物から構成されていることを特徴とする医療用デバイス。
【請求項2】
有機化合物が炭水化物である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
炭水化物が二糖または三糖である、請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
炭水化物が、トレハロース、マルトトリオース、ラクトース、ラクツロース、パラチノース、またはスクロースである、請求項3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
炭水化物が、単糖または糖アルコール、例えばトレイトール、エリトリトール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、ガラクトース、ガラクチトール、マンノース、マンニトール、キシリトール、ミオイノシトールまたは類似物質、有機酸、例えばクエン酸、または他の物質、例えばビタミンCである、請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
表面シーリングが、少なくとも2つの異なる炭水化物の組合せを含んでいる、請求項1から5のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
表面シーリングが、滅菌に耐えるように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
滅菌が、ガンマ照射、電子線供給、またはエチレンオキシド供給を含んでいる、請求項7に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
表面シーリングが、水溶液と接触してから30秒以内に溶解するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
表面シーリングが均一である、請求項1から9のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
表面シーリングが、接触面をシームレスに覆っている、請求項1から10のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
表面シーリングが気密である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
インプラントである、請求項1から12のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
インプラントが、ヒトまたは動物の体の天然の生物学的構造と置き換わるように構成されている、請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
インプラントが、損傷した生物学的構造を物理的に支持するように構成されている、請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
インプラントが、損傷した生物学的構造を機能的に支持するように構成されている、請求項13から15のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
インプラントが本質的に硬質である、請求項13から16のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項18】
インプラントが標的位置にインプラントされると、表面シーリングが溶解するように構成されている、請求項13から17のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項19】
インプラントが標的位置に到達すると、表面シーリングが溶解するように構成されている、請求項13から18のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項20】
接触面を形成している医療用デバイスの少なくとも一部分が、金属、金属合金、セラミック材料、ガラス、金属酸化物、またはポリマー材料で作製されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項21】
接触面が粗面である、請求項1から20のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項22】
接触面が平坦な表面である、請求項1から20のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
平坦な表面が、実質的な粗さまたはそのトポロジーのうねりまたは任意の実質的なテクスチャまたはコーティングまたはその組合せを欠いている、請求項22に記載の医療用デバイス。
【請求項24】
接触面が、標的特性をもたらすように構成されている、請求項1から23のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項25】
標的特性は、水和を含む、請求項24に記載の医療用デバイス。
【請求項26】
標的特性が、医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用されるとイオンが体液に曝されるように、二価値またはそれ以上の荷電イオンを供給された接触面によって得られた官能基化を含んでいる、請求項24または25に記載の医療用デバイス。
【請求項27】
イオンが、リン酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオンもしくは炭酸イオン基または有機酸を含む陰イオン、その任意の組合せ、または2つ以上の荷電基をもつ分子である、請求項26に記載の医療用デバイス。
【請求項28】
イオンが、リン酸イオンである、請求項26または27に記載の医療用デバイス。
【請求項29】
表面シーリングが、少なくとも単糖、例えばグルコースと二糖、例えばトレハロースとの組合せを含む、請求項6、請求項25および請求項26から28のいずれか一項に記載の医療用送達デバイス。
【請求項30】
表面シーリングが、約50%またはそれ以上の相対濃度で単糖を含む、請求項29に記載の医療用デバイス。
【請求項31】
医療用デバイスを調製するための方法であって、
ヒトまたは動物の体と接触するように構成された接触面を有する医療用デバイスを得ること、
接触面を水溶液に浸すこと、
シーリング剤を水溶液中に供給すること、
接触面を水溶液から取り出すこと、および
接触面を覆う表面シーリングを形成するように接触面を乾燥させること
を含む、方法。
【請求項32】
接触面が、シーリング剤を水溶液に供給する前に水溶液に浸される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
接触面が、シーリング剤を水溶液に供給した後に水溶液に浸される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用されるとイオンが体液に曝されるように、接触面に二価またはそれ以上の荷電イオンを供給する工程を含む、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
イオンが、リン酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオンもしくは炭酸イオン基または有機酸を含む陰イオン、その任意の組合せ、または2つ以上の荷電基をもつ分子である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
イオンが、リン酸イオンである、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
シーリング剤が、有機化合物を含む、請求項31から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
有機化合物が、炭水化物である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
炭水化物が、二糖または三糖である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
炭水化物が、トレハロース、マルトトリオース、ラクトース、ラクツロース、パラチノース、またはスクロースである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
炭水化物が、単糖または糖アルコール、例えばトレイトール、エリトリトール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、ガラクトース、ガラクチトール、マンノース、マンニトール、キシリトール、ミオイノシトールまたは類似物質、有機酸、例えばクエン酸、または他の物質、例えばビタミンCである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
シーリング剤が、少なくとも2つの異なる炭水化物の組合せを含む、請求項31から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
シーリング剤が、少なくとも単糖、例えばグルコースと二糖、例えばトレハロースとの組合せを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
シーリング剤が、約50%またはそれ以上の相対濃度で単糖を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
接触面が、水溶液に浸される前に汚染物質を除去するために処理される、請求項31から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
接触面を乾燥させた後に医療用デバイスを滅菌することを含む、請求項31から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
医療用デバイスが、請求項1から30のいずれか一項に記載の医療用デバイスである、請求項31から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1から30のいずれか一項に記載の医療用デバイスと医療用デバイスの接触面を保護するように構成されているパッケージとを含むセット。
【請求項49】
パッケージが、乾燥状態で医療用デバイスの接触面を維持するように構成されている、請求項48に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルに記載のヒトまたは動物の体に適用される医療用デバイスに関し、より具体的には医療用デバイスおよび医療用デバイスセットを調製する方法に関する。
【0002】
ヒトまたは動物の体と接触する接触面を含むそのような医療用デバイスは、その接触面が可溶型表面シーリングで覆われており、種々の医療用途に使用することができる。例えば、そのような医療用デバイスは、恒久的もしくは一時的に体内に取り付けられるインプラント、埋め込み型デバイスまたは体内への一時的な供給によって適用されるデバイスであり得る。
【背景技術】
【0003】
多くの内科的治療では、ヒトまたは動物患者の体に、または体内に適用すべきデバイスが使用される。患者の生物体と適合性である、すなわち生体適合性であるために、または生物体の妨害を防ぐために、医療用デバイスの接触面は、特別に調製される。例えば、そのような接触面は、感染または体内への汚染物質の移動を防ぐために、洗浄または滅菌することができる。医療用デバイスの調製された接触面を保護するために、調製された接触面の特性を維持するように構成された適切なパッキングを提供することが知られている。
【0004】
また、医療用デバイスの接触面を保護層で覆うことが知られている。例えば、US2009/0132048A1には、歯科用インプラントが記載されており、そのインプラント本体は、それが取り付けられる骨と接触して溶解する保護層で覆われている。保護層は、塩で作製されている。塩を含んだ保護層を有していることによって、歯科用インプラントは、骨に取り付けられるまでインプラント本体の外面の特性を保持するのに適している可能性がある。その上、可溶型であるため、保護層は、骨内に取り付けられている間または取り付けられた直後に自動的に除去され得る。保護層を除去するための追加の特定の工程は必要ではない。
【0005】
しかしながら、当技術分野のそのような塩を含んだ保護層は、骨内に取り付けられるまでインプラント本体の表面特性を簡便には保護することを可能にしても、それらは通常脆い傾向がある。したがって、歯科用インプラントは、取り付けられる前に慎重に取り扱う必要があり、特に、保護層が機械的に歪むのを防ぐ必要がある。さらに、塩を含んだ保護層は、表面のいくつかの特定の特性を確実に維持するのに適していない。例えば、多くの用途では、接触面が水和している医療用デバイスを適用することが望ましい。しかしながら、表面の水和自体または水和の組成物は、塩を含んだ保護層によって損なわれる可能性がある。
【0006】
したがって、保護されている接触面を有する医療用デバイスの必要性があり、その接触面の特性、特にその水和は、安全に維持することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって定義されている、ヒトまたは動物の体に適用される医療用デバイスによって、独立請求項31の特徴によって定義されている、医療用デバイスを調製する方法によって、また独立請求項48の特徴によって定義されているセットによって、解決される。
【0008】
特に、一態様では、本発明は、ヒトまたは動物の体に適用される医療用デバイスである。医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用される場合、医療用デバイスはヒトまたは動物の体と接触する接触面を含む。接触面は、可溶型表面シーリングで覆われており、その表面シーリングは、有機化合物、好ましくは極性有機化合物から構成される。
【0009】
したがって、有機化合物は、好ましくは炭水化物であり、より具体的には二糖または三糖である。好ましくは、炭水化物は、トレハロース、マルトトリオース、ラクトース、ラクツロース、パラチノース、またはスクロースである。例えば、トレハロースは、本発明による表面シーリングを作成するのに適していることが実証されており、また高温に対しても安定であることを実証している。
【0010】
あるいは、炭水化物は、好ましくは単糖または糖アルコール、例えばトレイトール、エリトリトール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、ガラクトース、ガラクチトール、マンノース、マンニトール、キシリトール、ミオイノシトールまたは類似物質、有機酸、例えばクエン酸、または他の物質、例えばビタミンCである。
【0011】
いくつかの用途においては、医療用デバイスの接触面のみに表面シーリングを供給し、医療用デバイスの他の表面部分を覆わないままにすることで十分な場合がある。例えば、そのような部分的に覆うことは、歯肉と接触する部分だけが覆われる橋脚歯に対しては十分または望ましい場合がある。しかしながら、体または体液と接触するように医療用デバイスの本質的に全外周に表面シーリングを供給することも有益である可能性がある。このように、全接触面が、効率的に覆われ、保護されることができる。
【0012】
接触面を表面シーリングで覆うことによって、接触面の特性を保持することができる。特に、接触面を調製することによってもたらされ得る表面特性は、医療用デバイスが適用され、接触面がその標的位置に供給されるまで維持することができる。したがって、表面シーリングは、医療用デバイスの適用前に接触面およびその特性を保護する。さらに、有機化合物、例えば糖類は、高可溶型であるため、医療用デバイスがその標的適用位置に配置されたときまたはその直後に表面シーリングを自動的に除去できるので、調製された特定の特性または性質を有する接触面を効率的に露出させることができる。好ましくは、表面シーリングは、水溶液、例えば血液などのような体液と接触してから30秒以内、20秒以内または10秒以内に溶解するように構成されている。このように、表面シーリングは、体液、洗浄バッファーまたはデバイス洗浄に使用される別の液体と接触するとすぐに自動的に除去され得る。体に適用されたとき、または適用前の洗浄の間に、完全に純粋な接触面が適用時に直接露出されるように、表面シーリングを急速に溶解することが有利である。
【0013】
さらに、前述のように有機化合物、特に糖から構成されることによって、表面シーリングは、比較的平坦な場合でも、いくらかの機械的応力が加えられても、かつ/または長い時間経った(すなわちエイジング)後でも、剥離することなく、接触面に付着したままになることがある。実際には、有機化合物、例えば糖類の表面シーリングは、顕著な弾性および変形に対するコンプライアンスを示している。このように、表面シーリングは、機械的応力がかかったときに、脆く、亀裂が入る傾向が比較的少ない可能性がある。また、例えばアンダーカットなどを含む比較的複雑な形状、ならびに、例えばアンダーカットも含まれる可能性のある特定の粗さを持つ複雑な表面に適用できる。
【0014】
その上さらに、有機化合物または糖類の表面シーリングは、接触面にもたらされた標的特性を安定的に保持する驚くほど有利な能力を示した。特に、そのような表面シーリングは、接触面の水和を維持できることを示している。そのような水和は有益であり、したがって医療用デバイスの多くの用途、例えばデバイスがインプラントされ、血液または他の体液または骨内に接触する場合における重要な特徴である。
【0015】
また、有機化合物から構成される表面シーリングは、比較的高温および低温の条件下で安定している汚染剤との相互作用から接触面を防御するカバーを形成する。有機化合物はさらに、比較的高湿度および全医療用デバイスの滅菌中でも安定な表面シーリングの提供を可能にする。
【0016】
好ましくは、表面シーリングは、全てまたは一般的に使用される滅菌プロセスまたは技術に耐えるように構成されている。それによって、滅菌は、好ましくはガンマ照射、電子線供給、またはエチレンオキシド供給を含む。このような滅菌により、その表面シーリングを含む医療用デバイスを調製して、体に適用する、特に体内に取り付けることが可能になる。
【0017】
接触面を覆う表面シーリングの厚さは、最大数百マイクロメートルの範囲であってよい。表面シーリングは、有利に動きおよび可撓性を可能にするのに十分薄いフィルムの形態をとることができる。厚さは特に、それがコートする構造よりも薄くてもよい。
【0018】
好ましくは、表面シーリングは均一である。特に、表面シーリングは、接触面にわたって多かれ少なかれ均等に分配されていることによって、均一であり得る。それによって、表面シーリングは、前述のように、複数の異なる成分、例えば異なる糖類(saccharides)または糖類(sugars)をさらに含んでいてもよい。このような均一表面シーリングによって、均等であるとともに、迅速に溶解および除去することが可能になる。
【0019】
好ましくは、表面シーリングは、接触面をシームレスに覆っている。このように、接触面は、均等に覆われていてよく、汚染を連続的に防止することができる。
【0020】
上記の請求項のいずれか一項に記載の医療用デバイスは、表面シーリングが気密である。このような表面シーリングにより、大気を通じた表面の汚染が効率的に防止できる。このように、有機大気汚染を防止する有機表面シーリングを提供することができる。
【0021】
医療用デバイスは、好ましくは、インプラント、例えば人工関節など、埋め込み型カテーテルもしくは別のカテーテル、歯科用インプラント、橋脚歯、チューブ、ポンプ、血液などの体液を送り出すためのインペラーポンプ、または類似の装置である。
【0022】
より具体的には、好ましい実施形態では、インプラントは、ヒトまたは動物の体の天然の生物学的構造と置き換わるように構成されている。このようなインプラントは、歯科用インプラント、人工関節などであってよい。
【0023】
別の好ましい実施形態では、インプラントは、損傷した生物学的構造を物理的に支持するように構成されている。このようなインプラントは、骨プレート、骨ネジなどであってよい。
【0024】
したがって、インプラントは、好ましくは損傷した生物学的構造を機能的に支持するように構成されている。このようなインプラントは、心臓弁、血管ステント、電極などの心臓ペースメーカーの部品、人工内耳型補聴器などであってよい。
【0025】
インプラントは、好ましくは本質的に硬質である。「本質的に硬質」という用語は、これに関連して、医療用デバイスの外周または寸法の低可撓性または非可撓性に関する。したがって、医療用デバイスの異なる部分は、依然として互いに対して可動し得るが、単一部分の形状はそのような動きの間も停止している。また、インプラント内部の部分は、可撓性または弾性である可能性があるが、依然として硬質ハウジングに覆われているか埋め込まれている。本質的に硬質なインプラントに関連して、有機化合物から構成される表面シーリングは、特に有益であり得る。
【0026】
好ましくは、インプラントが標的位置にインプラントされると、表面シーリングが溶解するように構成されている。特に、表面シーリングは、好ましくは、標的位置に到達すると、または標的位置でインプラントされる前に、溶解するように構成されている。したがって、表面シーリングは、最終的にインプラントするときに表面シーリングが溶解することを保証可能なように、予め定義された挿入手順に従って構成されていてよい。これに関連して使用する「インプラントする」という用語は、体腔のまたは体腔内の標的位置にインプラントを固定することに関連し得る。このような表面シーリングによって、インプラント本来の機械的性質を、挿入前、かつ最終的に挿入している間に、その表面が表面シーリングによって保護されていても、保存することができる。
【0027】
好ましくは、表面シーリングは、体腔内に挿入する直前、その間、またはその後に、例えば体腔、骨もしくは他の構造を通過する体液と接触するときに、溶解する。したがって、定義された接触面特性を防御する機能は、少なくとも表面シーリングの適用から製造中に包装、滅菌、貯蔵、輸送および開梱を通して効果を維持する。インプラントが調製され、体内に挿入する準備ができたらすぐ、インプラントの表面を防御する機能はもはや必要ではなくなり、表面シーリングはこの時点で、または少なくともインプラントを体内に挿入した直後に溶解し得る。所与の体腔内、または体腔で受け入れられたインプラントは、その結果、治療の成功を確実にする最良の状態にある。
【0028】
好ましくは、接触面を形成している医療用デバイスの少なくとも一部分は、金属、金属合金、セラミック材料、ガラス、金属酸化物、またはポリマー材料で作製されている。例えば、医療用デバイスの前記部分は、チタンまたはアパタイトでできていてよい。前述のインプラントも、チタン合金、例えばニチノール、コバルトクロム合金、白金クロム合金、またはステンレス鋼でできていてよい。
【0029】
好ましい一実施形態では、接触面は平坦な表面である。本発明によるインプラントの可能な実施態様との関連で「平坦」という用語は、粗さが最大10マイクロメートル、または有利には最大5マイクロメートルの範囲に含まれる実質的に平滑な表面を表すことができる。このような平坦な表面はまた、表面シーリングの材料について特別な要求を課し、それは、このような平坦な表面に付着可能でなければならない。
【0030】
したがって、平坦な表面は、好ましくは、実質的な粗さまたはそのトポロジーのうねりまたは任意の実質的なテクスチャまたはコーティングまたはその組合せを欠いている。このような平坦な表面はまた、任意の実質的な粗さ、または少なくともインプラントの内表面における任意の粗さ、またはそのトポロジーのうねりまたは任意の実質的なテクスチャまたはいかなる種類のコーティングも欠いている-または故意に奪われた可能性もある-。これは、医療用デバイスの徹底的な洗浄または精製を支援するために、反対に、周囲大気などの環境、貯蔵手段、または操作からの汚染を防止するために、特に有利であることを実証し得る。この意味で、医療用デバイスの複雑な粗さまたは山および谷のトポグラフィーを統合するための特定の処理を含めないことが任意であり、好ましく、汚染の影響を受けにくくするのに有益であることを実証し得る。
【0031】
別の好ましい実施形態では、接触面は粗面である。このような粗面は、例えば骨などに取り付けられるインプラントに特に適している可能性がある。例えば、歯科用インプラントまたは股関節インプラントは、しばしば、骨への有利な成長を達成するために、接触面として粗い境界を備えられている。
【0032】
好ましくは、接触面は、標的特性をもたらすように構成されている。したがって、標的特性は、水和を含み得る。接触面に水和をもたらすことによって、標的表面は、親水性を取り入れることができる。特に、接触面は、比較的高い親水性を有することができ、親水性は、基本的な抗血栓特性および/または基本的な生体適合特性であってよく、かつ表面シーリングによって維持されるべきである。したがって、水和した接触面を表面シーリングによって覆い、保護することにより、インプラントがその標的位置で体に適用されるまで、水和が存在することを達成することができる。
【0033】
接触面の表面特性はまた、荷電イオンの体液への曝露をもたらすことによって実施されるような官能基化によって取り入れることもできる。特に、接触面の標的特性が、好ましくは、例えば体腔に挿入されることによって医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用されるとイオンが体液に曝されるように、二価またはそれ以上の荷電イオンを供給された接触面によって得られた官能基化を含む。例えば、そのようなイオンは、リン酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオンもしくは炭酸イオン基または有機酸を含む陰イオン、その任意の組合せ、または2つ以上の荷電基をもつ分子である。好ましくは、イオンは、リン酸イオンである。
【0034】
医療用デバイスの接触面に二価またはそれ以上の荷電イオンを供給し、それによって官能基化された表面を確立することにより、再狭窄を生じ得る血栓形成のリスクを本質的に減らすことができ、体による医療用デバイスの受け入れを本質的に向上することができる。剥き出しの金属表面の代わりにイオンを体腔、または特にその中を循環する体液に曝すことにより、血栓形成性を著しく低下させることができることが示されている。したがって、二価またはそれ以上の荷電イオンの供給は、接触面を官能基化させる。
【0035】
さらに、医療用デバイスの接触面への二価またはそれ以上の荷電イオンのこのような供給は、接触面の比較的強く堅い官能基化を達成し得る。より具体的には、このような官能基化は、機械的応力に特に耐性があり得る。したがって、動く医療用デバイスに適用する場合に特に有益な可能性がある。例えば、埋め込み型インペラーポンプは、毎分1’000回転(rpm)を超える速度、例えば約5’000rpm、またはさらには最大20’000rpm以上で回転し得る。耐性のある官能基化を達成して、そのように速く動く構成部品中の血栓形成のリスクを低く抑えるために、二価またはそれ以上の荷電イオンの供給は、特に、人体の場合、抗血栓性表面は、表面上および周囲の体腔内のイオンの平衡の結果である可能性があるため、特に有益になり得る。
【0036】
好ましくは、表面シーリングは、少なくとも2つの異なる炭水化物、例えば糖類(sugars)または糖類(saccharides)の組合せを含む。したがって、異なる炭水化物が異なる速溶解糖類、例えば単糖類、二糖類、三糖類または高分子糖類である場合、特に有利になり得る。例えば、このような組合せは、2つの異なる単糖類、単糖と二糖、単糖と三糖、単糖と高分子糖、2つの異なる二糖類、二糖と三糖、二糖と高分子糖、2つの異なる三糖類、2つの異なる高分子糖類または三糖と高分子糖を含んでいてよい。したがって、表面シーリングは、好ましくは、少なくとも単糖、例えばグルコースと二糖、例えばトレハロースとの組合せを含む。したがって、表面シーリングは、好ましくは約50%またはそれ以上の相対濃度で単糖を含む。また、3つ以上の異なる糖類(saccharides)または糖類(sugars)の組合せも有益な場合がある。任意選択で、組合せは、他の化合物、例えばポリマーまたは塩を補給する。
【0037】
表面シーリングの組成または構造において、医療用デバイスの表面特性、表面トポロジー、粗さおよび可撓性は、共に、環境内で反応が異なる場合がある複雑なシステムを表す。より具体的には、例えば、輸送、貯蔵、滅菌などによって影響を受けるパラメーター、例えば湿度、温度または照射は、表面シーリングによる標的特性、例えば水和の保護に影響する可能性がある。構造全体の変数である表面シーリングの組成は、接触面の標的特性の維持に影響を与える可能性がある。一部の構造では、シーリングに単一タイプの糖類を使用することが有利な場合があるが、他の構造は、シーリングにおける少なくとも2つまたはそれ以上の異なる糖類の組合せから利益を得ることが示されている。したがって、シーリング成分の相対および絶対濃度も関連がある。所与の医療用デバイスにおける特定の標的特性の保存は、1つの特定の表面シーリングで十分に保存できるが、同じ医療用デバイスに対する標的特性が異なると、異なるシーリングが必要になることがある。
【0038】
例えば、グルコースなどの単糖は、イオンで官能基化された表面特性を保護するのに効果があるが、同じシーラントは、通常、水和とその結果として親水性を含む標的特性に対して十分な保護をもたらさない。さらに、トレハロースなどの二糖類は、リン酸イオンで官能基化された標的特性を保護するのに効果的であることを示している。単糖類、例えばグルコースと二糖、例えばトレハロースとの組合せ、特に単糖の相対濃度が約50%以上のシーラントは、特定の親水性標的特性を保護するのに好ましいことを示しており、リン酸イオンなどのイオンで官能基化された標的特性の保護にも有利な場合がある。
【0039】
別の態様では、本発明は、医療用デバイスを調製するための方法である。この方法は:(i)ヒトまたは動物の体と接触するように構成された接触面を有する医療用デバイスを得る工程、(ii)接触面を水溶液に浸す工程、(iii)シーリング剤を水溶液中に供給する工程、(iv)接触面を水溶液から取り出す工程、および(v)乾燥したシーリング剤が接触面を覆う表面シーリングを形成するように接触面を乾燥させる工程、を含む。
【0040】
本発明による方法は、接触面に表面シーリングを供給すると共に、一工程で接触面を洗浄および水和することを可能にする。このように、水和および保護された接触面は、非常に効率的に製造することができる。
【0041】
さらに、本発明による方法によって、表面シーリングは、密封することを意図した領域が覆われずに残され、または剥落しないように、接触面にわたって均等かつ一貫して、効率的に形成することができる。これは、シーリング剤を水溶液に、例えば1%~10%の間、好ましくは溶液に1%~6%の間で加えることによって効率的に達成することができる。
【0042】
シーリング剤を接触面上で乾燥させると、医療用デバイスは、パッケージ、例えば挿入デバイスまたはその一部に配置することができる。それによって、シーリング剤は、そのパッケージと医療用デバイスがユニットを形成するように、医療用デバイスをパッケージに結合または合体することができる。
【0043】
好ましい一実施形態では、接触面は、シーリング剤を水溶液に供給する前に水溶液に浸される。このように、表面シーリングによって覆われる前に接触面を十分に水和させることを保証することができる。特に、シーリング剤を含まない水溶液に接触面を曝す時間は、要望通りに調整することができる。
【0044】
別の好ましい実施形態では、接触面は、シーリング剤を水溶液に供給した後に水溶液に浸される。このような全てを一工程にすると、接触面の特定の効率的な調製が可能になる。
【0045】
「シーリング剤」という用語は、医療用デバイスの接触面で表面シーリングを形成する1つまたは複数の物質に関連し得る。特に、これは、液体に溶解した物質であって、乾燥すると表面シーリングを形成し得る。
【0046】
好ましくは、本方法は、医療用デバイスがヒトまたは動物の体に適用されるとイオンが体液に曝されるように、接触面に二価またはそれ以上の荷電イオンを供給する工程を含む。このような工程は、有利には、接触面を水溶液に浸す前に行なわれる。
【0047】
したがって、イオンは、好ましくは、リン酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオンもしくは炭酸イオン基または有機酸を含む陰イオン、その任意の組合せ、または2つ以上の荷電基をもつ分子である。好ましくは、イオンは、リン酸イオンである。
【0048】
本発明による医療用デバイスおよびその好ましい実施形態に関連して上記でより詳細に説明したように、接触面に二価またはそれ以上の荷電イオンを供給することは、特に有益である可能性がある。
【0049】
好ましくは、シーリング剤は、有機化合物、例えば炭水化物、より具体的には二糖もしくは三糖またはトレハロース、マルトトリオース、ラクトース、ラクツロース、パラチノース、またはスクロースを含む。このようなシーリング剤は、上記の表面シーリングを提供することを可能にする。あるいは、炭水化物は、単糖または糖アルコール、例えばトレイトール、エリトリトール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、ガラクトース、ガラクチトール、マンノース、マンニトール、キシリトール、ミオイノシトールまたは類似物質、有機酸、例えばクエン酸、または他の物質、例えばビタミンCであってよい。
【0050】
糖でできたシーリング剤は有利には、適切な程度に安定的で弾性であってよい。例えば、トレハロースは、機械的応力および熱応力の両方を受けた場合でも特に安定的であること、また事前に作成された特定の接触面特性を変わらないまま維持するのに適していることが判明している。
【0051】
好ましくは、シーリング剤は、少なくとも2つの異なる炭水化物の組合せを含む。したがって、シーリング剤は、有利には、少なくとも単糖、例えばグルコースと二糖、例えばトレハロースとの組合せを含み、シーリング剤は、好ましくは約50%またはそれ以上の相対濃度で単糖を含む。本発明による医療用デバイスのそれぞれの好ましい実施形態に関連して上記でより詳細に説明したように、接触面に二価またはそれ以上の荷電イオンおよび水和を供給する場合、このようなシーリング剤は、有益な効果をもたらすことを可能にする。
【0052】
好ましくは、接触面は、水溶液に浸される前に汚染物質を除去するために処理される。このような前処理は、特定の適切な接触面をもたらすことを可能にする。
【0053】
好ましくは、方法は、接触面を乾燥させた後に医療用デバイスを滅菌する工程をさらに含む。このような滅菌工程は、即利用可能な医療用デバイスを提供することを可能にする。滅菌は、照射またはガスを施すことによって行なうことができる。この目的のために、ガンマまたはベータ照射および/または気体状滅菌剤、例えばエチレンオキシド(ETO)または類似物質を使用することができる。
【0054】
さらに他の態様では、本発明は、上記の医療用デバイスと医療用デバイスの接触面を保護するように構成されたパッケージを含むセットである。したがって、パッケージは、好ましくは乾燥状態で医療用デバイスの接触面を維持するように構成されている。
【0055】
このようなパッケージは、表面シーリングに対する衝撃または他の機械的応力/熱応力、引っかきなどからの保護をさらに強化できること、最終的には、接触面に付与された標的特性の保存に貢献する。パッケージは、ポリマー、または包装に一般的に使用される別の材料、またはその組合せでできていてよい。これは、パッケージを開けるおよび/または閉じるためのカバーを含んでいてよい。さらに、カバーは、穿刺可能な構造、例えば隔壁などを備えていてよい。このような構造によって、例えば針によって、例えば注射器などを用いて、パッケージを開けずに、媒体、例えば溶媒、例えば食塩水をパッケージ内に供給することが可能になる。このパッケージによって、接触面の完全性を維持することができる。
【0056】
容器中の液状物質に依存している先行技術の解決法とは対照的に、本発明によるパッケージは、液体またはゲル状の貯蔵手段を使用しない乾燥状態で医療用デバイスを貯蔵するように構成されている。
【0057】
本発明のセットはさらに、貯蔵のために医療用デバイスおよびパッケージを受け入れるように構成されたパウチを含んでいてよい。パウチは好ましくは、気体状滅菌剤に対して透過性であり、かつ/または照射により滅菌可能である。したがって、上記の滅菌工程は、このように特別に修正されたパウチによって実行することができる。
【0058】
このようなパウチを使用する場合、セットは、好ましくは、滅菌後に、さらなる袋、封筒、シースなどに詰める。このように、滅菌後および長期間の貯蔵の間に、透過性パウチの内容物を、例えば湿気から保護することを達成することができる。
【0059】
本発明による医療用デバイス、ならびに本発明によるセットは、例示的な実施形態によって、および添付の図面を参照して、本明細書で以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明による医療用デバイスの実施形態としての骨インプラントの概略断面図である。
【
図2】接触面が水和している、
図1の骨インプラントの概略断面図である。
【
図3】接触面がその水和と共に表面シーリングによって覆われている、
図2の骨インプラントの概略断面図である。
【
図4】患者の顎骨内にインプラントすることによって患者の体に適用されているときの
図3の骨インプラントの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の説明では、特定の用語を利便性のために使用し、本発明を制限することを意図していない。「右」、「左」、「上」、「下」、「下方」および「上方」という用語は、図中の方向を意味する。専門用語には、明示的に言及された用語ならびにそれらの派生および類似の意味をもつ用語が含まれる。また、空間的な関係を示す用語、例えば「真下」、「下側」、「下部」、「上方」、「上部」、「近位」、「遠位」などは、図に示すように1つの要素または特徴と、別の要素または特徴との関係性を説明するために使用することがある。これら空間的な関係を示す用語は、図に示された位置および方向以外に、使用中または稼働中のデバイスの異なる位置および方向を包含することが意図されている。例えば、図中のデバイスをひっくり返した場合、他の要素もしくは特徴の「下側」または「真下」と説明された要素は、他の要素もしくは特徴の「上方」または「真上」になり得る。したがって、「下側」という例示的な用語は、上方および下側の両方の位置および方向を包含し得る。デバイスは、他の方向に向けられてもよく(90度回転して、または他の方向で)、本明細書で使用する空間的な関係を示す記述語は、それに従って解釈される。同様に、種々の軸に沿った、およびそれを中心とした動きの説明は、種々の特別なデバイス位置および方向を含む。
【0062】
図および説明において種々の態様および例示的な実施形態の繰り返しを避けるため、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることが理解されたい。説明または図からの態様の省略は、その態様が、当該態様を組み込んだ実施形態から失われたことを意味するものではない。代わりに、態様は、明確性のため、また冗長な説明を避けるために、省略されてもよい。これに関して、これ以降の明細書には以下:図面を明確にするために、説明の直接関連する部分に説明されていない参照符号が図に含有されている場合、それは、その前または次の説明セクションに言及するものである。さらに、分かりやすさのために、図面中に、部分の全ての特徴に参照符号が与えられていなくとも、それは同じ部分を示す他の図面について言及するものである。2つまたはそれ以上の図における同様の番号は、同じまたは類似の要素を表す、が当てはまる。
【0063】
上で説明したように、医療用デバイスの接触面に関連する影響が治癒または生物学的受容性の重要な側面、例えば炎症および過形成反応にある場合、適用前に、医療用デバイスに特定の標的表面特性を予防的に割り当てることが有利であることが判明している。
【0064】
図1は、本発明による医療用デバイスの一実施形態としての骨インプラント1の断面図を示す。このような骨インプラントは、例えば、股関節インプラントまたは歯科用インプラントなどであってよい。本発明は、骨インプラントを用いて例示されているが、同様に他の種々の医療用デバイスにも適用可能であることを理解されたい。例えば、本発明は、種々の埋め込み型デバイス、例えば骨プレート、人工関節、人工支持構造、歯科用インプラント、カテーテルなど、または例えばカテーテル、手術器具など、特定の時間患者の体に適用もしくは導入されるデバイスに適している。
【0065】
骨インプラント1の埋め込み型の本体の円周は、接触面10を形成する。通常、骨インプラント1の埋め込み型の本体には、顎骨内にねじ込むための糸(図には表示されない)が付いている。骨インプラント1はチタンで作製されている。接触面10は、インプラントが顎骨内に取り付けられた後、骨組織内への効率的な成長を可能にするために粗くされる。
図1では、骨インプラント1は、接触面が洗浄および前処理されている製造後が示されている。
【0066】
骨インプラント1を調製するために、接触面は、水溶液浴に浸される。それによって、
図2に示すように、水和2が接触面10にもたらされている。次に、トレハロースまたは少なくとも2つの異なる炭水化物の組合せがシーリング剤として水溶液に供給され、水溶液が予め定義された濃度のトレハロースまたは異なる炭水化物のそれぞれを含むようになる。トレハロースまたは異なる炭水化物の組合せは、水和2で付着し、それを安定化させる。次に、接触面10は、水溶液から取り出され、乾燥させる。
【0067】
図3では、骨インプラント1は、接触面10を乾燥させた後に示されている。トレハロースまたは異なる炭水化物の組合せからなる表面シーリング3が生成されていることがわかる。表面シーリング3は、接触面10の水和2を完全に覆っている。表面シーリング3は、その水和2を含む接触面10を保護する。特に、それにより骨インプラント1が顎骨内に取り付けられるまで水和2の維持が可能になる。
【0068】
図4は、適用されているときの骨インプラント1を示す。特に、表面シーリング3は、水溶液によって溶解し、このように接触面10および水和2から除去される。1つの可能な用途では、骨インプラント1は、顎骨内に取り付ける前に水溶液によって洗浄される。このように、表面シーリング3は、取り付けられる直前に効率的に除去することができる。別の可能な用途では、骨インプラント1は、その表面シーリング3と共に取り付けられる。表面シーリング3は、次に、インプラントを取り付けている間、血液または水溶液としての別の液体によって溶解する。このように、表面シーリング3は、事前準備を少しも必要としないでインプラントを取り付けている間に一工程で効率的に除去することができる。
【0069】
どんな場合でも、
図4に示すように、表面シーリング3の溶解の終わりに、水和2は、依然として接触面10上にある。適用またはインプラントされると、水和2およびその好ましい特性は、骨組織に曝される。
【0070】
適用されているインプラントまで接触面10上の水和2を維持することに加えて、表面シーリング3によって水和2および接触面10が清浄に維持される。このように、予防的に設計された表面特性は、環境または他の汚染物質、例えば、炭化水素堆積物または他の望ましくない有機物の堆積物、機械加工不純物、繊維、ほこりなどによって損なわれることを防ぐことができる。このような汚染物質は全て、表面シーリング3に配置され、それと一緒に除去される。
【0071】
本明細書ならびに本発明の態様および実施形態を例示する添付図面は、保護された本発明を定義する請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。言い換えると、本発明は、図面および先の明細書において詳細に例示および説明されてきたが、そのような例示および説明は、説明的または例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。本明細書および特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の機械的、構成的、構造的、電気的、および操作上の変更を行なうことができる。場合によっては、本発明を不明瞭にしないために、よく知られている回路、構造および技術は詳細に示されていない。したがって、以下の請求項の範囲および趣旨の範囲内において、変更および修正が当業者によって行われ得ることが理解されるであろう。特に、本発明は、上記および下記の異なる実施形態の特徴の任意の組合せを有するさらなる実施形態を包含する。
【0072】
本開示はまた、図に示されている全てのさらなる特徴を個別に包含するが、それらは、上記および下記の説明では説明されていない場合がある。また、図および明細書に記載された実施形態の単一の代替案ならびにその特徴の単一の代替案は、本発明の主題から、または開示された主題から拒否され得る。本開示は、特許請求の範囲または例示的な実施形態で定義された特徴からなる主題、ならびに前記特徴を含む主題を含む。
【0073】
さらに、特許請求の範囲では、「含む」という単語は、他の要素または工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外するものではない。単一のユニットまたは工程は、特許請求の範囲に記載されているいくつかの特徴の機能を満たし得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。属性または値に関連して特に「本質的に」、「約」、「およそ」などの用語もまた、それぞれ正確な属性または正確な値を定義する。所与の数値または範囲の文脈における「約」という用語は、例えば、所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内である値または範囲を指す。連結または接続されていると記載されたコンポーネントは、電気的または機械的に直接連結されていてもよく、または1つもしくはそれ以上の中間コンポーネントを介して間接的に連結されていてもよい。特許請求の範囲に記載された任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】