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特表2022-525228神経筋疾患の治療に使用するための植物エクジソン及びその誘導体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】神経筋疾患の治療に使用するための植物エクジソン及びその誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20220428BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20220428BHJP
   A61K 36/88 20060101ALI20220428BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20220428BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61K31/573
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P21/00
A61P9/00
A61K31/58
A61K36/88
A61K36/28
A61K31/575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555793
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020056590
(87)【国際公開番号】W WO2020187678
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1902726
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513285907
【氏名又は名称】ビオフィティス
(71)【出願人】
【識別番号】507416908
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ラティル,マチルド
(72)【発明者】
【氏名】ディルダ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイエ,スタニスラス
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086DA11
4C086DA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA94
4C086ZC41
4C088AB26
4C088AB71
4C088BA08
4C088NA14
4C088ZA22
4C088ZA36
4C088ZA94
4C088ZC41
(57)【要約】
本発明は、脊髄性筋萎縮症若しくは筋萎縮性側索硬化症といった神経筋疾患の治療における、又はより詳細には、これらの神経筋疾患の一部として発生する筋機能の変化を引き起こす運動ニューロンの特定の障害の治療における、使用を目的とした、20‐ヒドロキシエクジソン及びその誘導体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経筋疾患に罹患した哺乳類の運動ニューロンの特定の障害の治療におけるその使用のための、少なくとも20‐ヒドロキシエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1つの半合成誘導体を含む組成物であって、前記障害は、運動ニューロンの前記特定の障害による筋機能の変化を含む、組成物。
【請求項2】
20‐ヒドロキシエクジソンは、植物抽出物又は植物の一部分の抽出物の形態であり、
前記植物は、前記植物の乾燥重量の少なくとも0.5%の20‐ヒドロキシエクジソンを含有する植物から選択され、
前記抽出物は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含む、請求項1に記載の、その使用のための組成物。
【請求項3】
注目すべきことに、前記抽出物の医薬品としての応用の安全性、利用可能性、又は有効性に影響を及ぼし得る不純物を、前記抽出物の乾燥重量の0~0.05%含む、請求項2に記載の、その使用のための組成物。
【請求項4】
前記植物は、Stemmacantha carthamoides、Cyanotis arachnoidea及びCyanotis vagaから選択される、請求項2又は3に記載の、その使用のための組成物。
【請求項5】
前記筋機能の前記変化は、運動ニューロン機能の変化又はその変性によって生成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項6】
運動ニューロンの前記障害は、神経筋疾患に罹患した哺乳類の遺伝的変化に起因する、請求項1~5のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項7】
変化する前記筋機能は、横紋筋又は心筋の機能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項8】
前記筋機能の前記変化は、形成不全及び/又は萎縮に関連する、請求項1~7のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項9】
前記神経筋疾患は、哺乳類の乳児脊髄性筋萎縮症(SMA)及び/又は筋萎縮性側索硬化症(SLA)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項10】
20‐ヒドロキシエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1つの半合成誘導体は、SMA又はSLAの原因となる少なくとも1つの遺伝的変化を治療するために使用される、請求項9に記載の、その使用のための組成物。
【請求項11】
前記神経筋疾患は、SMN1、SOD1、TARDBP、VCP、FUS/TLS、及びC9ORF72から選択される少なくとも1つの遺伝子の突然変異に起因する、請求項1~10のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項12】
運動ニューロンの前記特定の障害の治療は、運動ニューロンの生存率の改善、及び/又は神経筋接合部の成熟の加速を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項13】
20‐ヒドロキシエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1つの半合成誘導体は、ヒトでは、3~15mg/kg/日の用量で投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項14】
20‐ヒドロキシエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1つの半合成誘導体は、成年のヒトでは、200~1000mg/日の用量を1回以上に分けて投与され、ヒトの小児又は幼児では、5~350mg/日の用量を1回以上に分けて投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項15】
一般式(I):
【化1】
の少なくとも1つの化合物を含み、ここで、
V‐Uは炭素‐炭素単結合であり、Yはヒドロキシル基又は水素であり、又はV‐Uはエチレン性C=C結合であり;
Xは酸素であり;
Qはカルボニル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基、ただしAは、OH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)、CO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す;CHBr基から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである、請求項1~14のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【請求項16】
前記一般式(I)において:
Yはヒドロキシル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基、ただしAは、OH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)、CO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す、から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである、請求項15に記載の、その使用のための組成物。
【請求項17】
前記一般式(I)の前記少なくとも1つの化合物は:
‐No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリジン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]エチルスルファニルアセテート;
‐No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン
から選択される、請求項15又は16に記載の、その使用のための組成物。
【請求項18】
一般式(II):
【化2】
の少なくとも1つの化合物を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の、その使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経筋疾患、特に乳児脊髄性筋萎縮症及び筋萎縮性側索硬化症の治療のための、植物エクジソン、及び植物エクジソンの半合成誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経筋疾患は、運動ニューロン、神経筋接合部、及び骨格筋で構成された運動単位の機能性の変化を特徴とする。疾患の原因が、乳児脊髄性筋萎縮症若しくは筋萎縮性側索硬化症におけるように神経性であるか、又は筋肉性であるかにかかわらず、これらの疾患は全て、患者の運動機能の変化を引き起こし、これはハンディキャップから、重要な筋肉が影響を受けた場合の早期の死亡にまで及ぶ可能性がある。これらの神経筋疾患のためのケアは、現在でも依然として対症療法的なものであり、患者のハンディキャップのレベル、これらの症状の進行度、並びにこれらの病状が必要とする人的及び物質的ニーズに関して、相当な経済的コストを呈する。運動に関する症状及び患者の依存度を緩和できる療法の研究及び開発は、一定の社会的及び経済的関心を集めている。
【0003】
これらの神経筋疾患のうちの2つを、運動ニューロンに特に影響を与えるものとして説明されているのは、小児期に症状が現れる乳児脊髄性筋萎縮症(即ちSMA)と、成人期に症状が現れる筋萎縮性側索硬化症(又はSLA)とである。原因及び臨床症状が異なるこれら2つの神経変性疾患では、進行性筋除神経が共通しており、これは筋委縮症の原因となる(非特許文献1、2)。
【0004】
乳児脊髄性筋萎縮症は、遺伝子由来の小児の死亡の最も一般的な原因であり、出生数の1/6,000~1/10,000の発生率である(非特許文献2)。発症年齢及び臨床的症状の進行に応じて、最も重篤な1型から、寿命が40年を超える可能性がある3型までの、3つの主要な重篤度のタイプが説明されている。SMAに罹患した患者は、分離した、又は繊維束へとグループ化した筋繊維の萎縮によって、骨格筋の対称的な損傷を示す。ほとんど全てのSMAは近位筋優位であり、即ち体幹及び体幹付近の筋肉に影響を及ぼす。運動障害は漸進的に、第1段階において下肢の筋肉へと広がり、続いて第2段階において上肢の筋肉へと広がり、伸筋に優先的に影響を及ぼす。遺伝子解析により、SMAの全ての形態は、大きな臨床的異質性を有しているものの、染色体領域5q13に位置する運動ニューロンの生存のための遺伝子SMN1の突然変異によって引き起こされていることを実証できた。
【0005】
ヒトゲノムには、この遺伝子SMN2の逆セントロメアコピーが存在し、これは複数のコピーに見られる(非特許文献3)が、遺伝子SMN1の機能の喪失を部分的にしか相殺できない。実際には、SMN2はSMN1と5個のヌクレオチドの違いを有し、そのうちの1つはエクソン7に位置し、遺伝子SMN2によって生成されるmRNAの90%のスプライシングによって、その切断に有利に作用する。この選択的スプライシングは、切断された不安定なSMNΔ7タンパク質の産生につながる。よって、遺伝子SMN2によって産生されるタンパク質のうち、わずか10%しか完全でなく、機能しない(非特許文献4、5)。従って、遺伝子SMN2のコピーの数、その発現レベル、及び疾患の重篤度の間に関連が示されている。SMNタンパク質は、小さな偏在するタンパク質であり、「Gemini of Coiled Bodies」を略して「GEMs」と呼ばれる核の個々のドメイン内、及び細胞の細胞質中に存在する。SMNタンパク質は、軸索成長(非特許文献6)及び軸索輸送(非特許文献7、8)といった、特定のニューロンの役割を有するが、核内リボ核タンパク質の生体発生(非特許文献9~11)又はmRNAの翻訳の制御(非特許文献12)といった偏在的な機能にも関与する。よって、SMNタンパク質の発現も、その細胞機能も、運動ニューロンの特定の変性を直接説明することはできない。
【0006】
しかしながら、様々な動物モデルの開発、及び基礎研究の進歩により、ニューロンにおいてのみSmn遺伝子を条件付きで削除しても、SMAの完全な症状も、運動ニューロンの変性も再現されないことを実証できた(非特許文献13)。他の研究は、星状細胞(非特許文献14)、シュワン細胞(非特許文献15)、心臓細胞(非特許文献16~19)、肝細胞(非特許文献20)、及び血管(非特許文献21)の適切な機能におけるSMNタンパク質の役割を説明しており、疾患の進行及び重篤度においてエネルギ代謝が果たす役割を示唆している。他の更なる研究は、SMAにおける運動単位に焦点を合わせ、運動ニューロンの生存に不可欠な要素である神経筋接合部の特定の変化を明らかにしている(非特許文献22~25)。実際には、SMNタンパク質は、神経伝達物質小胞のプール、シナプスの活動(非特許文献26)だけでなく、機能性の獲得及びその維持を可能とする重要なステップである、接合部の成熟(非特許文献22、25)に作用することによって、神経筋接合部の適切な機能化に関与する。一方、筋肉細胞のみにおけるSmn遺伝子の無効化は:重度のジストロフィー(非特許文献27);収縮を発生させ得る、筋節構造の不十分な組織化(非特許文献28);筋幹細胞の正しい融合の減少(非特許文献29);それに伴う筋幹細胞の分化の減少(非特許文献30)といった、深刻な筋肉の変化を生成する(非特許文献27、31、32)。更に、SMAに罹患した患者の筋原細胞は、神経筋接触の確立に不可欠な、CANP(Calcium‐Activated Neutral Protease:カルシウム活性化中性プロテアーゼ)等の特定の因子が不十分である(非特許文献33、34)。最後に、運動ニューロンがSMA筋細胞との共培養においてより迅速に変性することがインビトロで観察されている(非特許文献34)。
【0007】
現在、SMAの治療法を開発するために、全く異なるアプローチが考えられている。現在の研究戦略は、大半が、SMN2遺伝子の発現の増加、又はSMN2転写産物のスプライシングの変更、又は正しい遺伝子の再導入を目的とした遺伝子療法によって、SMNの発現を直接的又は間接的に変更することに焦点を合わせている。いくつかの研究は、細胞療法の開発によって、又は神経保護の活性化(オレソキシム)若しくは筋肉機能の改善(トロポニン活性化因子)に焦点を合わせることによる、SMNとは独立したアプローチに集中している。
【0008】
SMNの進行についての多数の臨床試験にもかかわらず、現在のところ、当局によって承認されたのはわずか2つの分子のみである。
【0009】
1つ目の、トロポニン活性化因子(CK‐2127107)は、筋肉機能の耐久性及びパフォーマンスの改善のために、カルシウムに対するサルコメアの感受性を上昇させることを目的としている(非特許文献35)。この分子は、米国の規制当局によって、SMAの希少疾病用医薬品として指定された(2017年5月)。
【0010】
2つ目の、アンチセンスオリゴヌクレオチド(anti‐sense oligonucleotide:ASO)は、SMN2遺伝子によって生成された転写産物の、エクソン7の包有を促進することによって、髄腔内注射後に脊髄の細胞に完全なSMNタンパク質を過剰発現させることができるようにすることを目的としている(非特許文献36、37)。Biogen社が開発したヌシネルセンという名称のこの分子は、米国及び欧州の当局によって承認されており、1型及び2型の重篤な乳児脊髄性筋萎縮症を治療するために市販された最初の治療用分子を構成する。重篤なSMA患者に対する第II及びIII相臨床試験(非特許文献38)中においてであるかにかかわらず、イントロン7を標的とするASOによって得られる最初の結果は、非常に印象的なものであり、この致命的な疾患にとって有望なものである。しかしながら、中枢神経系への1回の及び/又は長期にわたるオリゴヌクレオチドのインビボ注射の使用に関して、グレーな領域がいくつか残っている。まず、科学界には、遺伝子発現を標的とするこのタイプの外因性分子に対する患者の長期耐性についての見通しが欠けている。そして、更なる疑問は、SMNタンパク質の有意で制御されていない過剰発現に固有のリスクに関連しており、上記タンパク質の機能は、細胞増殖に関連している(非特許文献39)。更に、ヌシネルセンの有効性はますます重要であると思われる。というのは、治療の開始が、疾患の進行、診断時間及び家族の臨床的経過の関連から得るのが難しい臨床状況に関して早期に介入するためである。最後に、SMAにおいては、疾患の進行に対して多数の組織の変化が果たす役割の重要性に留意することが重要である。しかしながら、ヌシネルセンは血液脳関門を通過しない分子であり、髄腔内経路による治療を必要とし、これは、筋肉、肝臓、膵臓、及び血管系といった他の臓器を標的とすることなく、ニューロン及びグリア細胞のみを標的とすることができる。従ってこれらの変化は、ヌシネルセンの治療効果を制限する可能性がある。最後に、SMNタンパク質の発現レベルが極めて高く、生命予後にめったに関与しない、3型SMAに罹患した患者は、治療の認可がまだ承認されておらず、この重篤度は治療に関して孤立したままである。
【0011】
従って、その保護効果を強化し、患者の臨床的経過、患者の依存度、及び患者の臨床的管理を可能な限り制限するために、ヌシネルセンを補完する、生理学的及び/又は薬理学的アプローチを開発することが重要であると思われる。
【0012】
植物エクジソンは、ポリヒドロキシル化ステロールの重要なファミリーである。これらの分子は、様々な種類の植物(シダ植物、裸子植物、被子植物)によって産生され、害虫に対するこれらの植物の防御に関与する。植物界の大半の植物エクジソンは、20‐ヒドロキシエクジソンである。
【0013】
特許文献1は、植物エクジソン、より詳細には20‐ヒドロキシエクジソン(20E)が、多数の薬学的研究の対象とされてきたことを開示している。これらの研究は、この分子の抗糖尿病及び同化特性を強調している。筋肉でのタンパク質合成に対するその刺激効果が、ラットにおいてインビボで観察されており(非特許文献40~42)、またマウス筋管C2C12においてインビトロで観察されている(非特許文献43)。動物モデルにおける上述の効果の一部は、臨床研究で発見されているものの、依然として数が少ない。例えば、20‐ヒドロキシエクジソンは、若年のアスリートの筋肉量の増大を促進する(非特許文献44)。最後に、特許文献1は更に、サルコペニア及びサルコペニア性肥満の治療及び予防のための、20‐ヒドロキシエクジソン及び20‐ヒドロキシエクジソン誘導体の使用を説明している(非特許文献45)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許第3021318号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Al-Chalabi et Hardiman, 2013
【非特許文献2】Crawford et Pardo, 1996
【非特許文献3】Lorson et al., 1998
【非特許文献4】Vitte et al., 1997
【非特許文献5】Lefebvre et al., 1997
【非特許文献6】McWhorter et al., 2003
【非特許文献7】Akten et al., 2011
【非特許文献8】Peter et al., 2011
【非特許文献9】Buhler et al., 1999
【非特許文献10】Liu et al., 1997
【非特許文献11】Zhang et al., 2008
【非特許文献12】Sanchez et al., 2013
【非特許文献13】Frugier et al., 2000
【非特許文献14】Rindt et al., 2015
【非特許文献15】Hunter et al., 2014
【非特許文献16】Bevan et al., 2010
【非特許文献17】Heier et al., 2010
【非特許文献18】Shabadi et al., 2010
【非特許文献19】Biondi et al., 2010
【非特許文献20】Vitte et al., 2004
【非特許文献21】Somers et al., 2016
【非特許文献22】Kariya et al., 2008
【非特許文献23】Kong et al., 2009
【非特許文献24】Muray et al., 2008
【非特許文献25】Biondi et al., 2008
【非特許文献26】Torres‐Benito et al., 2011
【非特許文献27】Cifuzz et al., 2001
【非特許文献28】Walker et al., 2008
【非特許文献29】Nicole et al., 2003
【非特許文献30】Shafey et al., 2005
【非特許文献31】Rajendra et al., 2007
【非特許文献32】Lee et al., 2011
【非特許文献33】Fidzianska et al., 1984
【非特許文献34】Vrbova et al., 1989
【非特許文献35】Hwee et al., 2015
【非特許文献36】Hache et al., 2016
【非特許文献37】Chiriboga et al., 2016
【非特許文献38】Finkel et al., 2016
【非特許文献39】Grice et al., 2011
【非特許文献40】Syrov et al., 2000
【非特許文献41】Toth et al., 2008
【非特許文献42】Lawrence et al., 2012
【非特許文献43】Gorelick‐Feldman et al., 2008
【非特許文献44】Simakin et al., 1988
【非特許文献45】Lafont et al., 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、神経筋疾患に関連する運動ニューロンの喪失、及びこの変性の結果を制限することである。
【0017】
植物エクジソンは、昆虫の脱皮ホルモンに構造的に関連する植物ポリヒドロキシル化ステロールの重要なファミリーである。これらの分子は、多数の植物種によって産生され、害虫に対するこれらの防御に関与する。大半の植物エクジソンは20‐ヒドロキシエクジソンである。
【0018】
本発明者らは予想外にも、植物エクジソン及び植物エクジソンの半合成誘導体が、脊髄性筋萎縮症に罹患した哺乳類の生存率、及び体重の変化を、有意に改善することを発見した。更に、植物エクジソン及びその半合成誘導体は、筋委縮症及びこの病理に存在する形成不全を制限し、脊髄性筋萎縮症に罹患した哺乳類の運動ニューロンの喪失を有意に制限する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、本発明は、神経筋疾患に罹患した哺乳類の運動ニューロンの特定の障害の治療に使用するための、20‐ヒドロキシエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1つの半合成誘導体を含む組成物に関し、上記障害は、運動ニューロンの上記特定の障害による筋機能の変化を含む。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は更に、別個に実装される、又は技術的に動作可能な各組み合わせで実装される、以下の特性を満たしている。
【0021】
20‐ヒドロキシエクジソン及びその誘導体は、有利には、医薬品グレードまで精製される。
【0022】
使用される20‐ヒドロキシエクジソンは、より好ましくは、20‐ヒドロキシエクジソンに富む植物抽出物、又は20‐ヒドロキシエクジソンを活性剤として含む組成物の形態である。20‐ヒドロキシエクジソンに富む植物抽出物は例えば、Stemmacantha carthamoides(Leuzea carthamoidesとも呼ばれる)、Cyanotis arachnoidea及びCyanotis vagaの抽出物である。
【0023】
得られた上記抽出物は、より好ましくは医薬品グレードまで精製される。
【0024】
ある実施形態では、20‐ヒドロキシエクジソンは、植物抽出物又は植物の一部分の形態であり、上記植物は、上記植物の乾燥重量の少なくとも0.5%の20‐ヒドロキシエクジソンを含有する植物から選択され、上記抽出物は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含む。上記抽出物は、より好ましくは医薬品グレードまで精製される。
【0025】
上記抽出物はこれ以降、BIO101と呼ばれる。これは注目すべきことに、上記抽出物の医薬品としての応用の安全性、利用可能性、又は有効性に影響を及ぼし得る微量化合物等の不純物を、上記抽出物の乾燥重量の0~0.05%含む。
【0026】
本発明のある実施形態によると、不純物は、ルブロステロン、ジヒドロルブロステロン、又はポストステロン等の、19又は21個の炭素原子を含む化合物である。
【0027】
BIO101の生産の元となる上記植物は、より好ましくはStemmacantha carthamoides(Leuzea carthamoidesとも呼ばれる)、Cyanotis arachnoidea及びCyanotis vagaから選択される。
【0028】
20‐ヒドロキシエクジソンの上記誘導体は、半合成によって得られ、特に欧州特許出願第15732785.9号明細書に記載されている様式で得ることができる。
【0029】
ある好ましい実施形態によると、上記筋機能の上記変化は、運動ニューロン機能の変化又はその変性によるものである。
【0030】
ある実施形態では、変化する上記筋機能は、横紋筋又は心筋の機能である。
【0031】
ある実施形態では、上記筋機能の上記変化は、形成不全及び/又は萎縮に関連する。
【0032】
ある特定の実施形態では、運動ニューロンの障害は、神経筋疾患に罹患した哺乳類の遺伝的変化に起因する。
【0033】
用語「遺伝的変化(genetic alteration)」は、1つ以上のヌクレオチドの置換若しくは挿入、又は1つ以上のヌクレオチドの欠失といった突然変異を意味する。
【0034】
ある特定の実施形態では、本発明は、哺乳類の乳児脊髄性筋萎縮症(SMA)又は筋萎縮性側索硬化症(SLA)の治療に使用するための組成物を目的とする。
【0035】
ある特定の実施形態では、本発明は、(原因遺伝子の、若しくは1つ以上の感受性遺伝子の、ランダムな突然変異に関連する)散発性神経筋疾患、又は:SMAのフレームワークに介入するSMN1;SOD1;TAR DNA結合タンパク質43をコードするTARDBP;VCP(Valosin Containing Protein);FUS/TLS(Fused in sarcoma/translocated in liposarcoma);及びSLAのフレームワークに関与するC9ORF72(chromosome 9 open reading frame 72)から選択される少なくとも1つの遺伝子において突然変異が発見されるファミリーの形態の、治療に使用するための組成物を目的とする。
【0036】
ある特定の実施形態では、運動ニューロンの特定の障害の治療は、運動ニューロンの生存率の改善、及び/又は神経筋接合部の成熟の加速を含む。
【0037】
ある特定の実施形態では、植物エクジソンは、ヒトでは、3~15mg/kg/日の用量で投与される。用語「植物エクジソン」はここでは、一般的な植物エクジソン及びその誘導体、(特に抽出物の形態の)20‐ヒドロキシエクジソン及びその誘導体を意味する。
【0038】
好ましくは、植物エクジソンは、成年のヒトでは、200~1,000mg/日の用量を1回以上に分けて投与され、ヒトの小児又は幼児では、5~350mg/日の用量を1回以上に分けて投与される。用語「植物エクジソン」はここでは、一般的な植物エクジソン及びその誘導体、(特に抽出物の形態の)20‐ヒドロキシエクジソン及びその誘導体を意味する。
【0039】
実施形態では、上記組成物は、植物エクジソンの誘導体と考えられる少なくとも1つの化合物を含み、上記少なくとも1つの化合物は、一般式(I):
【0040】
【化1】
【0041】
のものであり、ここで、V‐Uは炭素‐炭素単結合であり、Yはヒドロキシル基又は水素であり、又はV‐Uはエチレン性C=C結合であり;
Xは酸素であり;
Qはカルボニル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基(ここでAは、OH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)、CO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す);CHBr基から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである。
【0042】
本発明の文脈において、「(C‐C)」は、炭素原子が1~6個の、直鎖又は分岐の、いずれのアルキル基、特にメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、n‐ペンチル、n‐ヘキシル基を意味する。有利には、これはメチル、エチル、イソプロピル、又はt‐ブチル基、特にメチル又はエチル基、より詳細にはメチル基である。
【0043】
ある好ましい実施形態では、上記式(I)において:
Yはヒドロキシル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基、(ここでAは、OH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)、CO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す)から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである。
【0044】
実施形態では、上記組成物は、以下の化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む:
No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリジン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]エチルスルファニルアセテート;
No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン。
【0045】
実施形態では、上記組成物は、植物エクジソンの誘導体と考えられる少なくとも1つの化合物を含み、上記少なくとも1つの化合物は、一般式(II):
【0046】
【化2】
のものである。
【0047】
式(II)の化合物は、これ以降ではBIO103と呼ばれる。
【0048】
実施形態では、上記組成物は、経口投与可能な、薬学的に許容可能な処方に組み込まれる。
【0049】
本発明の文脈において、用語「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、一般に安全であり、非毒性であり、獣医用及びヒト用医薬用途に許容される医薬組成物の調製に有用であることを意味している。
【0050】
図面を参照して非限定的な例として与えられる以下の説明を読むと、本発明はよりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A図1Aは、出生(P0)から出生後11日(P11)までビヒクルで又はBIO101で治療されたSMAマウスの体重の変化の曲線を示す。これ以降、Pは誕生後(出生後)の日数に対応し、nは試料のサイズに対応し、pは、結果の統計的有意性を定量化するために使用される「p値」に対応する。
図1B図1は、P0からP11までビヒクルで又はBIO101で治療されたSMAマウスのP11前生存曲線のカプランマイヤー表現である。
図2図2は、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、ビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、前脛骨筋(Tibialis)の筋繊維の総数を示すヒストグラムである。
図3A図3Aは、健康な対照マウス(対照)の、ヘマトキシリン及びエオシン染色による前脛骨筋の断面を表す画像である。
図3B図3Bは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)の、ヘマトキシリン及びエオシン染色による前脛骨筋の断面を表す画像である。
図3C図3Cは、P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、ヘマトキシリン及びエオシン染色による前脛骨筋の断面を表す画像である。
図3D図3Dは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の前脛骨筋(Tibialis)の筋繊維の断面積を示すヒストグラムである。
図3E図3Eは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、足底筋の筋繊維の断面積を示すヒストグラムである。
図3F図3Fは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、ヒラメ筋の筋繊維の断面積を示すヒストグラムである。
図4A図4Aは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、前脛骨筋(Tibialis)の断面積による筋繊維の分布を示すヒストグラムである。
図4B図4Bは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、足底筋の断面積による筋繊維の分布を示すヒストグラムである。
図4C図4Cは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、ヒラメ筋の断面積による筋繊維の分布を示すヒストグラムである。
図5A図5Aは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、足底筋のAKTのリン酸化を示すウエスタンブロットを示す。
図5B図5Bは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、足底筋のAKTのリン酸化の濃度測定による定量化を示すヒストグラムを示す。
図5C図5Cは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の足底筋のERKのリン酸化を示すウエスタンブロットを示す。
図5D図5Dは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、足底筋のERKのリン酸化の濃度測定による定量化を示すヒストグラムを示す。
図5E図5Eは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、足底筋のSMNタンパク質の発現のレベルを示すウエスタンブロットを示す。
図5F図5Fは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の足底筋のSMNタンパク質の濃度測定による定量化を示すヒストグラムを示す。
図6A図6Aは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、脊髄におけるAKTのリン酸化を示すウエスタンブロットを示す。
図6B図6Bは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、脊髄におけるAKTのリン酸化の濃度測定による定量化を示すヒストグラムを示す。
図6C図6Cは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、脊髄におけるERKのリン酸化を示すウエスタンブロットを示す。
図6D図6Dは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、脊髄におけるERKのリン酸化の濃度測定による定量化を示すヒストグラムを示す。
図6E図6Eは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、脊髄におけるSMNタンパク質の発現のレベルを示すウエスタンブロットを示す。
図6F図6Fは、健康な対照マウス(CTL VH)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMA VH)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、脊髄の腰部の高さにおけるSMNタンパク質の濃度測定による定量化を示すヒストグラムを示す。
図7A図7Aは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)の脊髄の腰部領域の断面における、運動ニューロンの免疫蛍光標識(抗コリンアセチルトランスフェラーゼ)の代表的な画像である。
図7B図7Bは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)の脊髄の腰部領域の断面における、運動ニューロンの免疫蛍光標識(抗コリンアセチルトランスフェラーゼ)の代表的な画像である。
図7C図7Cは、P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の脊髄の腰部領域の断面における、運動ニューロンの免疫蛍光標識(抗コリンアセチルトランスフェラーゼ)の代表的な画像である。
図7D図7Dは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、腹側半脊髄を通る切片あたりの運動ニューロンの総数のヒストグラムを示す。
図7E図7Eは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、腹側半脊髄を通る切片あたりの側方及び遠位運動ニューロンの総数のヒストグラムを示す。
図7F図7Fは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101)の、腹側半脊髄を通る切片あたりの、その細胞体の面積による運動ニューロンの分布を示すヒストグラムである。
図8図8は、健康な対照マウス(ビヒクル対照、n≧5)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル、n=5)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101、n≧6)のグループにおける、異なるタイプの運動ニューロン(低速、中速、高速)の数の分布を示すヒストグラムである。低速運動ニューロンはChAT+ERRβ+マーカーの発現を特徴とし、高速運動ニューロンはChAT+MMP9+マーカーの発現を特徴とし、中速運動ニューロンはChAT+ERRβ-MMP9-マーカーの発現を特徴とする。p<0.05の場合に有意性に到達したとみなす。「*」は、ビヒクル対照マウスのグループと比較した場合の有意差を示す。「#」は、SMAビヒクルマウスのグループと比較した場合の有意差を示す。
図9A図9Aは、シナプス前面(ニューロフィラメント及びSNAP25)並びにシナプス後面(α‐ブンガロトキシン)の異なる複数のマーカーによる、神経筋接合部の免疫蛍光標識の写真を示す。ビスベンズイミドを用いた染色により、核の識別が可能となる。スケールバーは10μmを表す。
図9B図9Bは、健康な対照マウス(ビヒクル対照、n=4)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル、n=4)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101、n=4)のグループの足底筋における、その成熟状態(いわゆる「プレッツェル」状=成熟;穿孔=成熟の過程;又は均一=未成熟)に応じた、異なるタイプの神経筋接合部のパーセンテージの分布を示すヒストグラムである。「*」は、ビヒクル対照マウスのグループと比較した場合の有意差(p<0.05)を示す。
図9C図9Cは、健康な対照マウス(ビヒクル対照、n=4)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル、n=4)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101、n=4)のグループのヒラメ筋における、その成熟状態(いわゆる「プレッツェル」状=成熟;穿孔=成熟の過程;又は均一=未成熟)に応じた、異なるタイプの神経筋接合部のパーセンテージの分布を示すヒストグラムである。「*」は、ビヒクル対照マウスのグループと比較した場合の有意差(p<0.05)を示す。「#」は、SMAビヒクルマウスのグループと比較した場合の有意差を示す。
図9D図9Dは、健康な対照マウス(ビヒクル対照、n=4)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル、n=4)、又はP0からP11までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101、n=4)のグループの前脛骨筋における、その成熟状態(いわゆる「プレッツェル」状=成熟;穿孔=成熟の過程;又は均一=未成熟)に応じた、異なるタイプの神経筋接合部のパーセンテージの分布を示すヒストグラムである。「*」は、ビヒクル対照マウスのグループと比較した場合の有意差(p<0.05)を示す。「#」は、SMAビヒクルマウスのグループと比較した場合の有意差を示す。
図10A図10Aは、健康な対照マウス(ビヒクル対照、n=13)、P0からP9までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル、n=11)、又はP0からP9までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101、n=12)の、P5、P7、及びP9の日にオープンフィールド試験によって評価された運動パフォーマンスを示す。「*」の個数は、ビヒクル対照マウスのグループと比較した場合の有意差を示す(*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、及び****=p<0.0001)。
図10B図10Bは、健康な対照マウス(ビヒクル対照、n=17)、P0からP9までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル、n=11)、又はP0からP9までBIO101で治療されたSMAマウス(SMA BIO101、n=10)の、P5、P7、及びP9の日に握力試験によって評価された運動パフォーマンスを示す。「*」の個数は、ビヒクル対照マウスのグループと比較した場合の有意差を示す(*=p<0.05、**=p<0.01、及び***=p<0.001)。
図11A図11Aは、P0からP11までビヒクルで又はBIO103で治療されたSMAマウスの体重曲線を示す。
図11B図11Bは、P0からP11までビヒクルで又はBIO103で治療されたSMAマウスの、P11前生存曲線のカプランマイヤー表現である。
図12A図12Aは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO103で治療されたSMAマウス(SMA BIO103)の、前脛骨筋(Tibialis)の筋繊維の断面を示すヒストグラムである。
図12B図12Bは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO103で治療されたSMAマウス(SMA BIO103)の、足底筋の筋繊維の断面を示すヒストグラムである。
図12C図12Cは、健康な対照マウス(ビヒクル対照)、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO103で治療されたSMAマウス(SMA BIO103)の、ヒラメ筋の筋繊維の断面を示すヒストグラムである。
図13A図13Aは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO103で治療されたSMAマウス(SMA BIO103)の、断面による前脛骨筋(Tibialis)の筋繊維の分布を示すヒストグラムである。
図13B図13Bは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO103で治療されたSMAマウス(SMA BIO103)の、断面による足底筋の筋繊維の分布を示すヒストグラムである。
図13C図13Cは、P0からP11までビヒクルで治療されたSMAマウス(SMAビヒクル)、又はP0からP11までBIO103で治療されたSMAマウス(SMA BIO103)の、断面によるヒラメ筋の筋繊維の分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
これより、本発明を、その好ましい非限定的な応用分野の一部の特定の文脈で説明する。
【0053】
1.BIO101の精製方法
BIO101は、純度90%の20‐ヒドロキシエクジソンから、以下のステップに従って調製される:
i)純度90%の20‐ヒドロキシエクジソンをメタノールに熱溶解し、ろ過及び部分濃縮するステップ;
ii)3倍量のアセトンを添加するステップ;
iii)0~5℃の温度まで撹拌しながら冷却するステップ;
iv)得られた沈殿物を濾過するステップ;
v)アセトン及び水で連続的にすすぐステップ;並びに
vi)乾燥させるステップ。
【0054】
この精製は、この分子に好適な、工業規模で実施できる再結晶化のプロセスを伴う。
【0055】
ステップi)のろ過は、0.2μm粒子フィルタを用いて実施される。
【0056】
ステップi)の部分濃縮は有利には、MeOHの存在下における約50℃の温度での真空蒸留によって実施される。
【0057】
乾燥させるステップvi)は、約50℃の温度において真空下で実施される。
【0058】
2.BIO103の合成方法
BIO103は、以下の調製方法に従って、20‐ヒドロキシエクジソンからの半合成と、それに続く医薬品グレードへの精製とによって得られる:
【0059】
【化3】
【0060】
BIO103の3ステップでの合成ダイアグラム:
I)ポストステロンを得るための、炭素C20とC22との間での、20‐ヒドロキシエクジソンの側鎖の酸化開裂(当業者には公知のプロトコル);
II)C21位への臭素原子の導入;
III)このようにして得られた臭素化合物とエタンジオールとの反応。
【0061】
3.BIO101及びBIO103の生物活性
a.BIO101の効果の表現型分析
重度のSMAのマウスモデルをFVB/NRj遺伝子プールに対して使用した。これは、マウス遺伝子Smnのエクソン7の無効化、及びヒト導入遺伝子SMN2の発現を特徴とする(SmnΔ7/Δ7;huSMN2+/+)(Hsieh et al.,2000)。「FVB/NRj‐SmnΔ7/Δ7 huSMN2+/+ 2コピー」という遺伝子型を有するこれらの交配から生じたマウスは、「SMA」として説明される。これらのマウスは、進行性成長障害を特徴とし、この進行性成長障害は、出生4日後に開始が観察され、寿命の終了時の脊髄の前角の運動ニューロンの約50%の変性、及び約12日の平均寿命を有する(Hsieh et al.,2000)。「FVB/NRj‐Smn+/Δ7 huSMN2+/+ 2コピー」遺伝子型を有するマウスは、いずれの特定の表現型を有さず、いわゆる「対照」マウスとして使用される。上記マウスを、ビヒクル(この場合はシクロデキストリン)と複合体を形成した分子BIO101、又はビヒクル単独(VH)で、毎日50mg/kgの用量の強制経口投与によって治療した。体重及び生存率を毎日、P11まで分析した。これ以降の記述では、nは試料のサイズに対応し、pは、結果の統計的有意性を定量化するために使用される「p値」に対応する。
【0062】
結果は、マウスの誕生から毎日の経口治療において、BIO101単独(n=18(nは試料のサイズである))により、ビヒクルで治療された動物(n=22)に比べて生後9日からの動物の体重の減少を大幅に制限でき(p<0.05)(図1A)、また治療された動物のP11の前の死亡率を有意に低下させることができる(p<0.05)(図1B)ことを実証している。
【0063】
b.BIO101の筋肉栄養効果の分析
P11の、最後の強制経口投与の1時間後において、治療されているマウスを、6μL/g(マウスの体重)の1%ペントバルビタールで麻酔した後、混合型の伸筋であるヒラメ筋、高速型の伸筋である足底筋、及び高速型の屈筋である前脛骨筋を採取して、組織学的又は分子的研究を実施した。
【0064】
採取後、ヒラメ筋、足底筋、及び前脛骨筋を個別に保存用媒体に入れ、低温のイソペンタン中で冷凍した。各筋肉に関して、厚さ10μmの横方向内側の切片を作製した。これらの切片をヘマトキシリン‐エオシンで染色し、脱水して、封入培地中に入れた。これらの切片の画像を顕微鏡で撮影した(倍率200倍)。レリーフのような画像を得るために、微分干渉コントラスト技法を使用した。これらの画像から、各筋肉の筋繊維の数、及びこれらの繊維の20%の断面積を、画像処理ソフトウェアを用いて計数した(図2)。
【0065】
採取されてヘマトキシリン‐エオシンで染色された筋肉の断面の組織学的分析は、筋肉形成不全(筋繊維の数)に対するBIO101の有益な効果を示している。実際に、前脛骨筋では、BIO101で治療されたSMAマウスの筋繊維の数が、ビヒクルで治療された動物の繊維の数に比べて大幅に増大していることが示された(繊維数はそれぞれ2,358及び2,069(+14%)、p<0.05)。
【0066】
興味深いことに、SMAマウスに存在する筋委縮症は、筋肉の性質及びタイプにかかわらず、治療によって制限される。実際に、BIO101による治療は、研究対照の3つの筋肉(屈筋又は伸筋)の萎縮を大幅に制限する。
【0067】
健康な対照マウス(図3B)に対する、SMAの文脈(図3A)での筋繊維の萎縮は、実際に前脛骨筋の組織学的切片で観察でき、筋繊維の断面積の定量は、この萎縮が、対照マウス(n=4)に比べてSMAマウス(n=4)の前脛骨筋において56.1%であることを示している(図3D)。この萎縮は、BIO101による治療(n=4)によって、P11において32.7%まで大幅に減少する(p<0.05)(図3C図3D)。これは、足底筋(健康な対照マウスに対して46%の筋繊維の有意な萎縮がSMAマウスで観察され(p<0.05)、BIO101での治療はこの萎縮を17.9%まで大幅に制限する(p<0.05)(図3E))、及びヒラメ筋(SMAマウスに関して、対照に比べて50.2%(p<0.01)、BIO101での治療によって37.8%(p<0.05))(図3F)にも当てはまる。
【0068】
萎縮に対するBIO101の効果のより精密な分析を実施するために、筋繊維の分布を断面積のカテゴリ毎に評価した。筋繊維はそれらの性質に応じて、異なる断面積を有する。低速の収縮を特徴とするI型の繊維は、高速の収縮を特徴とするII型繊維よりも小さなサイズを有する。P0からP11までのSMAマウスの治療によって観察された、分子BIO101による萎縮の大幅な減少は、ビヒクルで治療されたSMAマウスと比較して、BIO101で治療されたSMAマウスの、研究対象の3つの筋肉の断面積による繊維の分布に対するこの治療の有意な効果をもたらす(図4A、4B、4C)。P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウスの前脛骨筋では、SMAビヒクルマウスのグループに対して、400~800μmの断面積を有する繊維の比率の有意な上昇が観察され、一方で100~200μmの断面積を有する繊維の比率が有意に低下する(p<0.05)(図4A)。P0からP11までBIO101で治療されたSMAマウスの足底筋及びヒラメ筋では、200~400μmの断面積を有する繊維の比率の上昇が、足底筋については0~100μmの断面積を有する繊維(図4B)、ヒラメ筋については100~200μmの断面積を有する繊維(図4C)の減少を伴って観察される。
【0069】
c.分子分析
以前の研究により、AKT/CREB経路の活性化不足及びERK/Elk‐1経路の過剰活性化が、重篤なII型脊髄性筋萎縮症のマウスモデルとして使用される「FVB/NRj‐SmnΔ7/Δ7 huSMN2+/+ 2コピー」トランスジェニックマウスの脊髄の前角におけるSMNタンパク質の低発現に関連することが実証できており、これは、疾患におけるこれらの経路の役割を示唆している(Branchu et al., 2013)。
【0070】
冷凍した足底筋を機械的粉砕によって抽出緩衝液中で均質化した。タンパク質抽出物を含有する上清を採取し、続いて上記タンパク質抽出物を、ローリー法に従ってアッセイした。SDS‐PAGEゲル上での電気泳動を実施し、その後、分離されたタンパク質を膜上に移した。使用した一次抗体は、以下のとおりであった:マウスモノクローナル抗SMN(1:5,000)、ウサギポリクローナル抗Ser 473リン酸化AKT(1:1000)、ウサギポリクローナル抗AKT(1/100)、ウサギモノクローナル抗リン酸化ERK 1/2(1:500)、抗MAPキナーゼ1/2(ERK 1/2)(1:1000)。これらの膜をすすいだ後、ペルオキシダーゼに結合した抗マウス(1:5,000)又は抗ウサギ(1:5,000)二次抗体と共にインキュベートした。一次抗体の使用後、抗体‐光源複合体を、解離溶液中でのインキュベーションによって破壊した後、膜を再びウサギ抗AKT及び抗MAPキナーゼ1/2(ERK 1/2)抗体(1:1000)と共にインキュベートした。抗体複合体は化学発光によって可視化され、ゲル、膜、又はフィルムの試料のデジタル画像取得デバイスによって撮像された。特定の帯域それぞれの光学密度は、バックグラウンドを差し引き、βアクチンの帯域の光学密度で正規化することによって、画像処理ソフトウェアで定量化された。ビヒクルで治療された対照に関して、得られた値を1と決定し、他のグループの値をこれらの対照に対して正規化して、相対量として表現する。独立した実験を実施し、各グループを対照と比較する際に異なる複数の膜を使用することによって、各グループからの動物を得た。足底筋におけるpAKTの定量値は、ビヒクルで治療されたグループ(対照又はSMA)あたり3匹のマウス、及びBIO101で治療された4匹のマウスを表している。足底筋におけるpERKの定量値は、グループあたり少なくとも4匹のマウスを表している。SMNの定量値は、n=2を表している。脊髄におけるpAKTの定量値に関して、これらはpAKT及びpERKではグループあたりn=2のマウスを表し、SMNのレベルではグループあたりn=4を表す。
【0071】
足底筋の分子分析により、ビヒクル対照マウス(CTL VH)に比べてSMAマウスではAKT経路が実際に活性化不足となり(図5A、5B)、ERK経路に有益となる(図5C、5D)ことが確認される(Branchu et al., 2013)。BIO101での11日間の治療は、P0からP11まで治療されたマウスの筋肉において、ERKのリン酸化(pERK)のレベルの大幅な低下(図5D)と同時にAKTのリン酸化(pAKT)を極めて大きく増大させること(図5B)によって、この関係を逆転させることができる。この有益な状況は、SMNタンパク質の過剰発現に関与していることが既に実証されている(Branchu et al., 2013)。予想通り、SMNタンパク質は、健康な対照動物と比較すると、SMA動物ではほとんど発現されない。しかしながら、非常に驚くべきことに、BIO101での治療後にSMNの発現のレベルの変化は観察できず、これはオリジナルの分子調節を示唆している(図5E、5F)。
【0072】
ERKとAKTとの間のシグナル伝達経路のこのようなバランスは、SMAマウスの脊髄でも見られる。実際に、健康な対照マウス(CTL VH)と比較して、ERKのリン酸化(pERK)が増大する(図6C、6D)のと同時に、SMAマウスにおけるAKT(pAKT)のリン酸化の明らかな減少(図6A、6B)が観察される。11日間にわたるBIO101でのSMAマウスの毎日の治療は、pAKTのレベルを上昇させてpERKのレベルを低下させることによって、動物の脊髄における上記バランスを部分的に回復する(図6B、6D)。このモデルに関して予想通り、SMNタンパク質はSMAマウスで発現されない。足底筋で観察されたように、BIO101での治療は、11日間治療されたSMAマウスのSMNのレベルを回復できない(図6E、6F)。
【0073】
d.運動ニューロンの分析
健康な対照マウス又はビヒクルで若しくはBIO101で11日間治療されたSMAマウスの脊髄の腰部領域(L1~L5)の厚い切片における、運動ニューロンの集団の定量的及び定性的研究を、上述のようなコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)を用いた免疫蛍光標識によって実施した(Biondi et al., 2008;Boyer et al. , 2013)。次に、様々な運動ニューロン亜集団についての、その脊髄内での位置(外側又は内側位置)及びその細胞体のサイズの分布を特性決定することによる、様々な運動ニューロン亜集団の研究によって、分析を緻密化した。
【0074】
麻酔したマウスにPBSを心臓内注射した。マウスの脊髄を取り出し、固定してすすいだ。脊髄の腰部領域(L1~L5)を、4%アガロース溶液でコーティングした。試料の全長にわたってビブラトームを用いて、50μmの切片を作製した。次に、脊髄の5つの切片につき1つの切片を、免疫組織化学的分析に使用した。0.1Mグリシンで飽和させた後、組織を透過処理し、ブロックし、ヤギポリクローナル一次抗体である抗コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)(1/400)でマーキングした。次に切片を洗浄し、シアニン3と結合した抗ヤギポリクローナル二次抗体(1:400)と共にインキュベートした。ビスベンズイミド(1/1,000)を用いて核をマーキングした後、切片を再び洗浄してから、蛍光染料の光退色阻害剤で処置した。マーキングの特異性は、一次抗体の不在下で実施される対照マーキングによって検証される。
【0075】
画像はカメラを用いて得られ、このカメラは、倍率200倍の顕微鏡に設置され、特に好適な画像取得用ソフトウェアを備えたマイクロコンピュータタイプの中央処理装置に接続されている。全ての計数は、画像処理ソフトウェアを用いて実施された。
【0076】
免疫蛍光法では、抗ChAT抗体でマーキングされた運動ニューロンは、図面中において脊髄の前角の薄い灰色で識別できる(図7A、7B、7C)。腹側半脊髄を通る切片あたりの運動ニューロンの数を、マウスの3つのグループそれぞれについて決定した。予想通り、SMAマウスの運動ニューロンの数(n=5)は、健康な対照マウスのグループで見られる運動ニューロンの数(n=5)(図7A)に比べて、大幅に減少している(図7B)。実際には、この運動ニューロン変性は、これら2つのグループの間で25%(p<0.05)である(図7D)。極めて興味深いことに、11日間にわたるBIO101での毎日の治療の後、ビヒクルで治療されたSMAマウス(n=5)よりも、これらのSMAマウスにおいて運動ニューロンの数が大幅に多い(p<0.05)こと(図7C)が観察される。よって、BIO101での治療が、病理による運動ニューロンの変性を有意に制限すること、及びこの治療が有意な神経保護効果を発揮し、運動ニューロンの喪失が分子BIO101で治療されたグループにおいて13%まで制限されること(図7D)が観察される
【0077】
次に、様々な運動ニューロン亜集団を、その脊髄内での位置(外側又は内側位置)の分析によって、及びその細胞体の面積の分布の研究によって研究することにより、上記定量的分析を緻密化した。
【0078】
ビヒクルを投与されたSMAマウスに比べて、BIO101で治療されたSMAマウスにおいて(遠位筋を神経支配する)外側運動ニューロンの数が多い一方で、内側運動ニューロンに対しては有意な影響がないことが観察される(図7E)。
【0079】
運動ニューロンの細胞体の面積の分析は、予想通り、健康な対照マウスと比較した場合の、ビヒクルで治療されたSMAマウスの運動ニューロンの萎縮を示し、ここで、細胞体の面積が600μm未満(p<0.05)である運動ニューロンの数が有意に増大している。これと並行して、SMAマウスにおいて、細胞体の面積が900μm超(p<0.05)である運動ニューロンの喪失が観察される(図7F)。BIO101での治療により、細胞体の面積が300μm未満(p<0.05)である小さな運動ニューロンの数を有意に制限することによって、運動ニューロンのこのような萎縮を制限できる(図7F)。SLAの文脈において、複数の運動単位が病理的プロセスによって均質に影響されるわけではないことが説明されていることに留意することが重要である。実際には、この疾患の発症前マウスモデルにより、面積が大きな細胞体を伴う運動ニューロンが関与する、FF(Fast Fatiguable)タイプの運動単位の優先的な変性が明らかにされている(Pun et al., 2006)。同様の差分的変性が、患者でも報告されている(Dengler et al., 1990;Theys, Peeters and Robberecht, 1999)。よって、細胞体の面積が大きな運動ニューロンを優先し、面積が小さな運動ニューロンの比率を減少させることは、SLA等の病理の文脈における興味深いアプローチとなる可能性がある。
【0080】
運動ニューロンの数及びその細胞体のサイズの定量的分析、並びにその位置(腹側脊髄内の内側又は外側)に関する定性的研究を補うように、本発明者らは、運動ニューロンの亜集団(低速運動ニューロン、中速運動ニューロン、及び高速運動ニューロン)の保護に対する、BIO101による治療の影響を研究した。この運動ニューロンの亜集団の定性的分析を、対照、又はBIO101で治療された若しくはされていないSMAマウスの、脊髄の腰部領域(L1~L5)の厚い断面に対して:上述のようなコリンアセチルトランスフェラーゼを用いた免疫蛍光標識(Biondi et al., 2008;Branchu et al., 2013);及び低速運動ニューロンの特異的マーカーであるエストロゲン関連受容体β(ERRβ)による、又は高速運動ニューロンの特異的マーカーであるマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)による、免疫蛍光同時標識による、運動ニューロンのタイプの分析によって、実施した。
【0081】
麻酔したマウスにPBSを心臓内注射した。マウスの脊髄を取り出し、固定してすすいだ。脊髄の腰部領域(L1~L5)を、4%アガロース溶液でコーティングした。試料の全長にわたってビブラトームを用いて、50μmの断面を作製した。次に、脊髄の5つの切片につき1つの切片を、免疫組織化学的分析に使用した。0.1Mグリシンで飽和させた後、組織を透過処理し、ブロックし、以下の一次抗体でマーキングした:ヤギ抗ChAT抗体(1/400)、マウス抗ERRβ抗体(1/400)、ウサギ抗MMP9抗体(1/600)。3回すすいだ後、以下の抗体を切片と共にインキュベートした:ロバ抗ヤギCy5抗体(1/400)、ロバ抗マウスAlexa 488抗体(1/400)、ロバ抗ウサギCy3抗体(1/400)。ビスベンズイミド(1/1,000)を用いて核をマーキングした後、切片を再び洗浄してから、蛍光染料の光退色阻害剤で処置した。マーキングの特異性は、一次抗体の不在下で実施される対照マーキングによって検証される。
【0082】
画像はカメラを用いて得られ、このカメラは、倍率200倍の顕微鏡に設置され、特に好適な画像取得用ソフトウェアを備えたマイクロコンピュータタイプの中央処理装置に接続されている。全ての計数は、画像処理ソフトウェアを用いて実施された。
【0083】
低速運動ニューロン(ChAT+ ERRβ+)の数は、これらのグループにおいて有意に変化せず、ビヒクルで治療された健康なマウスであるか、ビヒクルで若しくはBIO101で治療されたSMAマウスであるかにかかわらない(図8)。ビヒクルで治療されたSMA動物のグループでは、健康な対照マウスのグループに比べて、高速運動ニューロン(ChAT+ MMP9+)の平均数の有意な喪失が観察される(それぞれ11及び16;p<0.05)。この喪失は、中速タイプの運動ニューロン(ChAT+ ERRb- MMP9-)の利益になり、その数は、健康な対照マウス中に存在する数と比較して、SMAビヒクルマウスのグループにおいて有意に多い(4及び7;p<0.05)。
【0084】
興味深いことに、BIO101によるSMAマウスの治療は好ましくは、高速タイプの運動ニューロン(ChAT+ MMP9+)の生存を促進する。実際に、BIO101で治療されたSMAマウスのグループでは、高速運動ニューロンの数は、ビヒクルを投与されたSMAマウスのグループにおいてよりも有意に多い(14及び11;p<0.05)。
【0085】
その結果、BIO101による治療は、特にマウスを高速運動ニューロンの喪失から保護することによって、この重篤なSMAのモデルで観察される運動ニューロンの喪失を制限する。
【0086】
e.神経筋接合部の分析
SMAは、SMNタンパク質の欠如によって誘発される神経筋接合部の特定の変化、及び運動ニューロンの特定の死によって誘発される除神経を特徴とする(Kariya et al., 2008;Biondi et al., 2008;Chali et al., 2016)。本発明者らは、いわゆる「プレッツェル」状の成熟構造の成熟及び断片化の度合いを決定するために、神経筋接合部の形態学的研究を実施した。そのために本発明者らは、分子BIO101で治療された又はされていないSMAマウスのヒラメ筋、足底筋、及び前脛骨筋の細分した筋繊維に対して、免疫蛍光法(Leroy et al., 2014)による、シナプス前面(シナプトフィジン及びニューロフィラメント)並びにシナプス後面(α‐ブンガロトキシン)の特定のマーキングを実施した。
【0087】
厚さ75μmの縦切片をビブラトームで作製した。次に上記切片を、穏やかに撹拌しながら0.1Mグリシンで飽和させた後、PBSで洗浄した。続いて上記切片をブロックし、4%PBS‐BSA‐5%ヤギ血清‐0.5%トリトンの溶液で透過処理した。(神経筋接合部のシナプス前面を識別するための)抗ニューロフィラメント(1/800)及び抗シナプトフィジン(SNAP25;1/200)一次抗体を、48時間にわたってインキュベートし、二次抗体(抗ウサギAlexaFluor(登録商標)647;1/400)で可視化してから洗浄した。最後に切片を、AlexaFluor(登録商標)555(1/500)と直接結合した抗α‐ブンガロトキシンと共にインキュベートする。切片を洗浄し、核をビスベンズイミド(1/1,000)でマーキングして、落射蛍光顕微鏡撮像での観察のために、蛍光染料の光退色阻害剤と共にカバーガラスとガラススライドとの間に配置した(図9A)。
【0088】
神経筋接合部は、最も未成熟のものから最も成熟したものまで、均一なプレート、穿孔、又は「プレッツェル」状の3つのカテゴリに従って定義及び定量化される。
【0089】
研究対象の全ての筋肉(足底筋、ヒラメ筋、及び前脛骨筋)において、SMA動物での均一な神経筋接合部のパーセンテージは、健康な対照マウスに比べて大幅に上昇する。このような神経筋接合部の成熟の遅延は予想されており、既に文献で記述されている(Biondi et al., 2008)。実際に、高速の伸筋である足底筋では、P10における未成熟の神経筋接合部のパーセンテージは、健康な対照マウスの49.7%に対して89.7%(p<0.05)であり(図9B)、低速の伸筋であるヒラメ筋では、未成熟の神経筋接合部のパーセンテージは、健康な対照マウスの45.7%に対して84.3%(p<0.05)であり(図9C)、高速の屈筋である前脛骨筋では、未成熟の神経筋接合部のパーセンテージは、健康な対照マウスの28.7%に対して69.3%(p<0.05)である(図9D)。SMAマウスを誕生からP10まで毎日BIO101で治療すると、試験した全ての筋肉の神経筋接合部において更に有意な成熟が観察され、未成熟なプレートのパーセンテージが減少して穿孔を有するプレートが優勢になり、これは成熟の加速の証拠となる。実際に、足底筋では、ビヒクルを投与されたSMA動物における10.4%に比べて、接合部の16.3%が穿孔タイプである(p=ns)(図9B)。この差は、ヒラメ筋(ビヒクルで治療されたSMAマウスのグループにおける15.7%に比べて、SMAグループにおいて接合部の26.5%が穿孔状である;p<0.05、図9C)、前脛骨筋(ビヒクルで治療されたSMAマウスのグループにおける30.7%に比べて、治療されたSMAグループにおいて45.7%が穿孔状接合部である;p<0.05、図9D)において有意である。
【0090】
よって、これらの結果は、BIO101による治療が神経筋接合部の成熟を加速させることを示している。
【0091】
f.重篤なSMAのマウスモデルの運動能力の分析
P0からBIO101で治療された又はされていない、重篤な2型SMAのマウスの表現型分析を実施した。P5からP9まで、マウスの運動能力に関する縦断試験を2日毎に実施した。本発明者らは、上述のように、オープンフィールド試験によって自発的移動能力を評価し、また握力試験によって筋肉の易疲労性を評価した(Biondi et al., 2008;Branchu et al., 2013;Chali et al., 2016).
【0092】
オープンフィールド試験に使用されるデバイスは、マウスの年齢によって異なる。P0からP6までの動物については、上記デバイスは、15×15×5cmのプラスチックの箱で形成され、25個の3cm×3cmの正方形に分割されたフィールドの格子パターンを有する。P7からP21までの動物については、28×28×5cmのプラスチックの箱で形成され、16個の7cm×7cmの正方形に分割されたフィールドの格子パターンを有する。マウスは個別に試験され、評価デバイスは各セッションの終了時に洗浄された。最初にフィールドに中央に置かれた各マウスは、5分間自由に移動できた。この5分の間に挙動の測定値が実験者によって記録され、また横断された正方形の総数が記録された。
【0093】
予想通り、試験した全ての時点(P5、P7、P9)において、ビヒクルで治療したSMAマウスは、健康な対照マウスに比べて有意に低下した運動パフォーマンスを示す(図10A)。実際には、マウスが横断できる正方形の個数は、健康な対照マウスのグループではP5において17、P7において12、P9において24であるのに対して、P5において10、P7において6、P9において8である(それぞれp<0.01、p<0.0001、p<0.001)。P5では、BIO101によるSMAマウスの治療は、ビヒクルで治療されたSMAマウス(正方形10個)に比べて、SMAマウスの運動パフォーマンスを改善しない(正方形11個)。P7では、BIO101で治療されたマウスの運動性(10個の正方形を横断)は、ビヒクルを投与されたSMAマウス(6個の正方形を横断;p<0.05)に比べて有意に上昇する。P9では、この差は大きくないが、BIO101での治療はマウスに対する有益な効果を有する傾向があり、SMAビヒクルグループが8個の正方形を横断できるのに対して、SMA BIO101グループは11個の正方形を横断できる(p=ns)。
【0094】
筋肉の易疲労性を評価するために、P5からP9までのマウスの前肢の握力を試験した(握力試験)。マウスは、空中に水平に懸架した薄い金属製ロッドから、前肢で吊り下げられる。ぶら下がっている時間を記録する。各マウスは5回の連続した試行を受け、2つの試験の間には1分の休憩を入れた。最も良好な試験のみを、筋機能の評価のために保存した。
【0095】
上記握力試験によって試験された筋肉の易疲労性は、予想通り、ビヒクルで治療されたSMAマウスが、健康な対照マウスに比べて有意に低減した筋機能を有することを示している(図10B)。実際には、マウスが金属ロッドから吊り下がり続けることができる時間は、健康な対照マウスのグループではP5において3.3秒、P7において11.4秒、P9において16.1秒であるのに対して、P5において0.2秒、P7において6.2秒、P9において5.6秒となる(それぞれp<0.01、p<0.01、p<0.001)。P5では、BIO101によるSMAマウスの治療は、ビヒクルで治療されたSMAマウス(0.2秒;p<0.05)に比べて筋肉のパフォーマンスを有意に改善する(2.3秒)。P7では、BIO101による治療は、ビヒクルを投与されたSMAマウスに比べて、SMAマウスのぶら下がりの時間を、有意にではないものの増大させる傾向を有する(6.2秒に対して12.2秒、p=ns)。最後にP9では、BIO101はこのパラメータを、ビヒクルで治療されたSMAマウス(5.6秒、p<0.01)に比べて、BIO101で治療されたマウスにおいて極めて有意に改善する(20.9秒)。
【0096】
結論として、BIO101は、SMA動物の自発的運動機能及び筋肉の易疲労性に対して有益な効果を有する。
【0097】
g.BIO103の効果の表現型分析
同じII型マウスモデルを用いて、重篤なSMAのモデルにおける分子BIO103の表現型の効果を特性決定した。マウスを、ビヒクル(この場合はシクロデキストリン)と複合体化した分子BIO103で、又はビヒクル単独(VH)で、毎日50mg/kgの用量の強制経口投与によって治療した。体重及び生存率を、P11まで毎日分析した。
【0098】
結果は、マウスの誕生から毎日の経口治療において、BIO103(n=12)が、動物の体重の喪失を制限する傾向を有するものの、ビヒクルで治療された動物(n=22)と比較した場合の差は有意性の閾値に届かないことを実証している(図11A)。一方、BIO103は、ビヒクルを投与されたマウス(P11において36.3%の生存率)に比べて、治療された動物のP11より前の生存率を有意に(p<0.05)向上させる(P11において66.6%の生存率)(図11B)。
【0099】
h.BIO103の筋肉栄養効果の分析
採取された筋肉のヘマトキシリン‐エオシン染色断面の組織学的分析は、筋委縮症(筋繊維の断面積)に対するBIO103の有益な効果を示す。
【0100】
分子BIO101と同様に、SMAマウスの体内に存在する筋委縮症は、筋肉の性質及び種類にかかわらず、治療によって制限される。実際に、BIO103による治療により、研究対象の3つの筋肉の萎縮を有意に制限できる。
【0101】
筋繊維の断面の定量は、予想通り、この萎縮が非常に顕著であり、対照マウス(n=4)に比べてSMAマウス(n=4)の前脛骨筋において56.1%であることを示している。この萎縮は、BIO103による治療(n=4)によって、P11において22.1%まで大幅に減少する(p<0.05)(図12A)。これは、足底筋(健康な対照マウスに対して46%の筋繊維の有意な萎縮がSMAマウスで観察され(p<0.05)、BIO103での治療はこの萎縮を15.3%まで大幅に制限する(p<0.05)(図12B))、及びヒラメ筋(SMAマウスに関して、対照に比べて50.2%(p<0.01)、BIO103での治療によって37.1%(p<0.05))(図12C)にも当てはまる。
【0102】
萎縮に対するBIO103の効果のより精密な分析を実施するために、筋繊維の分布を断面積のカテゴリ毎に評価した。P0からP11までのSMAマウスの治療によって観察された、分子BIO103による萎縮の大幅な減少は、ビヒクルで治療されたSMAマウスと比較して、BIO103で治療されたSMAマウスの、研究対象の3つの筋肉の断面積による繊維の分布に対するこの治療の有意な効果をもたらす(図13A、13B、13C)。P0からP11までBIO103で治療されたSMAマウスの前脛骨筋では、SMAビヒクルマウスのグループに対して、400μm超の断面積を有する繊維の比率の有意な上昇が観察され、一方で200μm未満の断面積を有する小さな繊維の比率が有意に低下する(p<0.05)(図13A)。P0からP11までBIO103で治療されたSMAマウスの足底筋(図13B)及びヒラメ筋(図13C)では、300μm超の断面積を有する筋繊維の比率の上昇が、200μm未満の断面積を有する筋繊維の減少を伴って観察される。
【0103】
4.結論
乳児脊髄性筋萎縮症に罹患した哺乳類の運動ニューロンの形成不全、筋委縮症、及び変性に対する、BIO101及びBIO103の特性を考えると、植物エクジソン、特にBIO101及びBIO103の、単独での、又は遺伝的変化の影響の修正を目的とする治療への捕捉物としての、使用を提案でき、これによって、筋組織及び運動ニューロンを保護し、従って、筋機能の低下及び/又は運動ニューロンの喪失をもたらす神経筋疾患の進行を遅延させることができる。神経筋疾患は特に、筋萎縮性側索硬化症及び脊髄性筋萎縮症を含む。
【0104】
より一般的には、以上で検討されている、本発明の実装及び実施のための態様は、非限定的な例として記載されたものであること、従って他の変形例も考えられることに留意されたい。
【0105】
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図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
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図3F
図4A
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図5B
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図7A
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図7D
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図7F
図8
図9A
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図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
【国際調査報告】