(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】眼科用医薬品製剤の調製におけるノトギンセノシド抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/704 20060101AFI20220428BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220428BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220428BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61K31/704
A61P27/02
A61K9/08
A61K9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569926
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2020089935
(87)【国際公開番号】W WO2020238621
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201910438713.9
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501353948
【氏名又は名称】中国▲薬▼科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 真
(72)【発明者】
【氏名】譚 寧華
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲カイ▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076BB24
4C076DD34
4C076DD38
4C076EE23
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明はドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患を予防及び治療するための医薬品の調製におけるノトギンセノシド抽出物の使用を開示し、前記ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患は、ドライアイ、網膜退行性病症、網膜静脈閉塞症、網膜静脈周囲炎、前房出血、硝子体出血、角膜損傷、網膜挫傷、緑内障性視神経萎縮、ドルーゼン、加齢性黄斑変性症及び糖尿病網膜症を含むがこれらに限定されない。本発明で使用される眼部局所投与のモードは、投与量が少なく、安全性が高く、副作用が少なく、患者のコンプライアンスが良好である等の様々な優位性があり、注射投与による安全リスクを回避し、且つ投与方法を変更した後、その代謝経路、作用機序等はすべて注射剤と異なり、良好な臨床応用の見通しを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患を予防及び治療するための医薬品の調製におけるノトギンセノシド抽出物の使用。
【請求項2】
前記ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患は、ドライアイ、網膜退行性病症、網膜静脈閉塞症、網膜静脈周囲炎、前房出血、硝子体出血、角膜損傷、網膜挫傷、緑内障性視神経萎縮、ドルーゼン、加齢性黄斑変性症及び糖尿病網膜症を含むがこれらに限定されない、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬品は、眼部血栓の形成を阻害し、眼部の微小循環を改善し、眼部神経細胞のアポトーシスを阻害し、止血して眼部創傷組織の癒合を促進することにより、治療の目的を達成する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記医薬品の剤型は、眼科用溶液、眼科用ゲル、眼科用軟膏、眼科用ローション又は眼内注射剤を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患を予防及び治療するための医薬品の調製における、他の治療作用を有する眼科用製剤と組み合わせたノトギンセノシド抽出物の使用。
【請求項6】
前記ノトギンセノシド抽出物は、ノトギンセノシドR1、ノトギンセノシドR2、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRh1及びギペノシドIXから選択される1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
前記ノトギンセノシド抽出物において、総含有量が60~90%の、ノトギンセノシドR1、ノトギンセノシドR2、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRh1及びギペノシドIXを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ノトギンセノシド抽出物において、ノトギンセノシドR1の含有量が3.0%以上、ジンセノサイドRg1の含有量が20.0%以上、ジンセノサイドReの含有量が1.5%以上、ジンセノサイドRb1の含有量が25.0%以上、ジンセノサイドRdの含有量が2.5%以上である、ことを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬品における前記ノトギンセノシド抽出物の質量百分率が0.02~30.0%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬品はノトギンセノシド抽出物を唯一の有効成分とし、ノトギンセノシド抽出物の質量百分率が0.1~40.0%であり、残りの60.0~99.9%が薬学的に許容される担体及び/又は補助剤である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然医薬品の技術に属し、特に眼科用医薬品製剤の調製におけるノトギンセノシド抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、眼の不適切な使用は普遍的に存在し、ドライアイの発生率が増加しており、生活水準の向上に伴って、網膜静脈閉塞症、糖尿病性網膜症、脈絡網膜症、加齢黄斑変性症、緑内障性視神経萎縮等の盲検疾患も中高年の日常生活に深刻に悩まされ、前房出血と硝子体出血等の眼外傷は、発生率が高くないが、それによりもたらされた痛みや急性反応も患者の生活の質に深刻な影響を及ぼす。
【0003】
現代の研究では以下を証明した。ジンセノサイドとノトギンセノシド類成分は、血小板表面活性を顕著に低減させ、血小板粘着と凝集を阻害し、抗血栓形成、微小循環改善等の作用を達成することができ、虚血再灌注後の血清IL-8の生成と放出を低減させることにより、好中球の活性化、浸潤及び凝集をブロックし、虚血組織の炎症反応を軽減することができ、虚血再灌注損傷から保護する効果があり、GluR2の正の発現を強化し、caspase-3mRNAの転写とcaspase-3タンパク質の分解活性化を阻害し、bcl-2mRNAの転写とBcl-2タンパク質の発現を促進し、細胞アポトーシスを減少させ、ニューロンの生存及び損傷の修復を促進することができ、出血と凝血の時間を顕著に短縮することができ、優れた止血効果があり、実験的な粥状動脈硬化症のウサギの大動脈内膜プラークの形成を顕著に阻害することができ、急性炎症による毛細血管透過性の増加、炎症性滲出、組織浮腫、白血球遊走及び後期肉芽組織の増殖に対して顕著な阻害作用があり、且つUVによって誘発された線維芽細胞MMP-1の高分泌を阻害し、血管内皮増殖因子と塩基性線維芽細胞増殖因子の発現を促進し、創傷組織の癒合を促進することができる。
【0004】
該当天然物の様々な薬理学的活性は各種の心脳血管疾患の治療に使用されており、その抽出物は「血塞通」、「冠心寧」及び「血栓通」等の医薬品に調製されて登場している。しかしながら、眼部外傷、眼部血管性疾患、及び眼部神経疾患等の眼部問題に対する安全で効果的な製品が登場していない。血栓通、血塞通注射剤は、同様に、臨床において網膜静脈栓塞の治療に広く使用されており、該当注射剤は、投与量が大きく、治療コースが長く(一ヶ月)、注射投与の安全リスクが高く、また、毎年、国家医薬品副作用モニタリングセンターは大量の副作用に関する報告を受け取り、発熱、寒気、アナフィラキシー様反応、アナフィラキシーショック等の全身性損傷、胸部圧迫感、呼吸困難、呼吸促迫、喘息、喉浮腫等の呼吸器系損傷、発疹、掻痒、剥奪性皮膚炎等の皮膚と付属品の損傷、動悸、頻脈等の心拍数及び心調律障害、目まい、頭痛、けいれん、振戦等の中枢及び末梢神経系損傷、吐き気、嘔吐等の胃腸系損傷、チアノーゼ、紅潮、血圧低下、血圧上昇等の心臓血管系損傷、血尿、肝機能異常等の他の損傷を含む。中国特許CN102688479Bでは、ポリグルタミン酸と細胞増殖因子を主な有効成分としてドライアイを予防できるアイマスクが開示されており、中国特許CN102512433Bでは、網膜静脈閉塞症を治療するためのルテオリングルクロニドの用途が開示されており、中国特許は、眼精疲労に対する該当天然物の特許が開示されており、すなわち特許CN107898816Aでは、「眼科用医薬品製剤及びその使用」が公開されており、その組成物であるノトギンセノシドR1、ノトギンセノシドR2、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRh1及びギペノシドIX等は、視力疲労の緩和に対して優れた効果があり、中国特許CN102813666Aである「神経眼科疾患を予防及び治療するための医薬品におけるノトギンセノシドR1の使用」は、静脈注射の投与方式により、モノマー化合物であるノトギンセノシドR1が多くの眼部神経疾患に対して優れた治療効果を有することを指摘している。現在、該当天然物組成物を使用して眼部の局所投与によって眼部外傷、眼部血管性疾患及び眼部神経疾患等を予防及び治療するための医薬品製剤及びその新剤型は出現していない。
【発明の概要】
【0005】
上記従来技術に対して、本願は眼科用医薬品製剤の調製におけるノトギンセノシド抽出物の使用を提供することを目的とする。
【0006】
技術的解決手段:ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患を予防及び治療するための医薬品の調製における本発明に記載のノトギンセノシド抽出物の使用。
【0007】
その中で、前記ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患は、ドライアイ、網膜退行性病症、網膜静脈閉塞症、網膜静脈周囲炎、前房出血、硝子体出血、角膜損傷、網膜挫傷、緑内障性視神経萎縮、ドルーゼン、加齢性黄斑変性症及び糖尿病網膜症を含むがこれらに限定されない。
【0008】
前記ドライアイは、特に過度蒸発型ドライアイ(涙液不足型ドライアイ)を指すが、本発明は疾患によって引き起こされたすべての眼球表面乾燥症に対して緩和作用を有する。その中で、前記眼部外傷は、特に様々な原因で引き起こされた前房出血及び硝子体出血を指し、角膜挫傷、強膜挫傷、網膜震盪と挫傷、脈絡膜破裂、眼の化学的損傷、眼部熱傷及び放射線による眼の損傷も含むがこれらに限定されない。その中で、前記眼部血管性疾患は、特に網膜静脈閉塞症及び糖尿病網膜症を指し、網膜動脈閉塞及び網膜静脈周囲炎(網膜血管炎)も含むがこれらに限定されない。その中で、前記眼部神経疾患は、特に緑内障性視神経萎縮を指し、網膜退行性病変、様々な脈絡網膜症(中心性漿液性脈絡網膜症)及び加齢性黄斑変性症も含むがこれらに限定されない。
【0009】
さらに、前記ノトギンセノシド抽出物は、眼部血栓の形成を阻害し、眼部の微小循環を改善し、眼部神経細胞のアポトーシスを阻害し、止血して眼部創傷組織の癒合を促進することにより、治療の目的を達成する。
【0010】
本願に記載の医薬品の剤型は、眼科用溶液、眼科用ゲル、眼科用軟膏、眼科用ローション又は眼内注射剤を含む。本発明の化合物は眼に局所的に投与することができ、例えば、局所、結膜下、眼球後、眼周囲、網膜下、脈絡膜上又は眼内で投与する。眼に直接投与した特に有効な医薬品組成物は、成点眼剤として調製された水溶液及び/又は懸濁液、及び眼科用ゲル(ゲル形成溶液を含む)又は軟膏として調製された増粘溶液及び/又は懸濁液を含み、それは眼科用溶液、眼科用軟膏、眼科用ローション、眼内注射剤及び眼科用ゲル等である。眼科用医薬品の送達のための他の剤型は、眼球インサート(ocular insert)、硝子体内注射剤及びインプラントを含む。注射可能な溶液は、細い針で角膜、水晶体及び硝子体又は隣接する組織内に直接注射することができる。
【0011】
本願は、ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患又は眼部神経疾患を予防及び治療するための医薬品の調製における、他の治療作用を有する眼科用製剤と組み合わせた前記ノトギンセノシド抽出物の使用をさらに開示する。
【0012】
他の眼科用製剤は、抗感染性成分、抗炎症薬、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬を含む)、人工涙液血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛薬、眼圧低下剤、免疫調節剤、抗酸化剤、ビタミン及びミネラル、酵素阻害剤及びペプチダーゼ、サイトカイン阻害剤等を含むがこれらに限定されない。
【0013】
さらに、前記組み合わせて使用できる眼部治療剤は、アクラー(Acular)(ケトロラクトロメタミン眼科用溶液)0.5%、Acuvail(ケトロラクトロメタミン)、AK-Con-A(ナファゾリン眼科薬)、Akten(塩酸リドカイン)、Alamast、Alphagan(ブリモニジン)、Alrex、Astepro(塩酸アゼラスチン鼻噴霧剤)、AzaSite(アジスロマイシン)、Bepreve(ベシル酸ベポタスチン眼科用溶液)、Besivance(ベシフロキサシン眼科用懸濁液)、Betaxon、BSS滅菌灌流液、Cosopt、Durezol(ジフルプレドネート)、Eylea(アフリバーセプト)、Lotemax、Lucentis(ラニビズマブ)、Lumigan(ビマトプロスト眼科用溶液)、Macugen(ペガプタニブ)、Ocuflox(オフロキサシン眼科用溶液)0.3%、OcuHist、Ozurdex(デキサメタゾン)、Quixin(レボフロキサシン)、Rescula(ウノプロストンイソプロピル眼科用溶液)0.15%、Restasis(シクロスポリン眼科用エマルジョン)、Salagen錠剤、Travatan(トラボプロスト眼科用溶液)、Valcyte(バルガンシクロビル)、トリフルオロチミジン(Viroptic)、Vistide(シドフォビル)、Visudyne(注射用のベルテポルフィン)、Vitrasertインプラント、ホミビルセン注射剤、ZADITOR、Zioptan(タフルプロスト眼科用溶液)、Zirgan(ガンシクロビル眼科用ゲル)、Zymaxid(ガチフロキサシン眼科用溶液)、アトロピン、フルルビプロフェン、フィゾスチグミン(Physostimine)、ブリンゾラミド(Azopt)、ゲンタマイシン、ピロカルピン(Proparacaine)、バシトラシン、ヒプロメロース点眼液(Goniosol)、ポリミキシンB、ベータダイン(Betadine)、グラミシジン、プレドニゾロン、ベタキソロール、Humorsol、プロパラカイン、ベタキソロール点眼液(Betoptic)、Hylartin、Propine、ブリンゾラミド、高張性NaCl、Puralube、BSS、インドシアニングリーン(Indocycanine Green)、ローズベンガル(Rose Bengal)、カルバコール、イトラコナゾール、ヒアルロン酸ナトリウム、セファゾリン、ラタノプロスト、スプロフェン、セルビスク(Celluvisc)、マンニットール、テラマイシン、クロラムフェニコール、メタゾラミド、チモロール、Ciloxan、ミコナゾール、トブラマイシン、シプロフロキサシン、Miostat、トリアムシノロン、Cosopt、Muro 128、トリフリジン、Demecarium、ネオマイシン、トロピカミド、デキサメタゾン、ネプタザン(Neptazane)、Trusopt、ジピベフリン、Ocuflox、ビダラビン、ドルゾラミド、オフロキサシン、Vira-A、エピネフリン、オキシテトラサイクリン、トリフルオロチミジン、フルオレセイン、フェニレフリン及びキサラタン(Xalatan)から選択される。
【0014】
機能障害の阻害、予防又は逆転は100%の阻害、予防、排除又は逆転を必要としない。該当天然物の眼科用医薬品組成物の「有効量」は、個体の前記様々な眼科疾患を阻害、予防又は逆転するための量を指す。本発明の眼科用医薬品組成物は視覚障害を治療する有効量で必要としている被験者に投与する。本明細書に使用されるように、「治療有効量」は、個体の前記様々な眼科疾患の徴候、症状又は病因又は生物システムにおける任意の他の所望の変化の少なくとも1つを軽減するための投与量を指す。予防性使用において、「予防有効量」という用語は、特定の疾患にかかりやすく又は特定の疾患に対してリスクがある患者に投与される投与量を指し、それは、治療有効量と同じ又は異なる投与量であってもよい。特定の個体に使用される組成物の有効量は、個体、個体状況の重症度、投与される製剤の種類、投与頻度及び治療期間に決定されてもよい。本発明によれば、本発明の眼科用医薬品製剤は、液体滴剤で低い濃度、例えば10-9M~103M内の任意の濃度で投与しても、毎日1回、2回、3回又は複数回で投与することにより、このような視覚障害を逆転して、迅速に実行することができる。
【0015】
さらに、前記ノトギンセノシド抽出物は、ノトギンセノシドR1、ノトギンセノシドR2、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRh1及びギペノシドIXから選択される1種又は複数種である。
【0016】
好ましくは、前記ノトギンセノシド抽出物において、総含有量が60~90%の、ノトギンセノシドR1、ノトギンセノシドR2、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRh1及びギペノシドIXを含む。
【0017】
さらに好ましくは、前記ノトギンセノシド抽出物において、ノトギンセノシドR1の含有量が3.0%以上、ジンセノサイドRg1の含有量が20.0%以上、ジンセノサイドReの含有量が1.5%以上、ジンセノサイドRb1の含有量が25.0%以上、ジンセノサイドRdの含有量が2.5%以上である。
【0018】
前記ノトギンセノシド抽出物の生薬源は、サンシチ、ニンジン及びセイヨウジン等を含むがこれらに限定されない。サンシチは、漢方薬ウコギ科植物サンシチニンジンPanax notoginseng(Burk.)F.H Chenの乾燥した根、根茎、茎、花及び果から選択される。
【0019】
前記医薬品はノトギンセノシド抽出物を唯一の有効成分とすることができる。その中で、ノトギンセノシド抽出物の質量百分率が0.02~30.0%であり、好ましくは0.1%~10.0%であり、残りの60.0~99.9%が薬学的に許容される担体及び/又は補助剤である。
【0020】
前記薬学的に許容される担体は水、緩衝液又は塩化ナトリウム溶液である。いくつかの実施態様では、該薬学的に許容される担体は滅菌である。他の実施態様では、該薬学的に許容される担体は軟膏である。他の実施態様では、該薬学的に許容される担体はゲルである。ゲルは本分野の周知のゲル調製材料で調製され得る。
【0021】
本発明に記載のノトギンセノシド抽出物はまた対応する薬学的に許容される遊離酸、遊離塩基、塩(例えば、酸又は塩基付加塩)、水和物又はプロドラック等で置き換えることができる。前記「薬学的に許容される塩」又は「薬学的に許容される酸」はそれぞれ、該当天然物の薬学的に許容される有機又は無機塩又は酸を指す。対イオンは親化合物上の電荷を安定化する任意の有機又は無機部分であり得る。この他、薬学的に許容される塩(又は酸)は、その構造内に1つより大きい荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩(又は酸)の一部である実例として、複数の対イオンを有し得る。従って、薬学的に許容される塩(酸)は1つ又は複数の荷電原子及び/又は1つ又は複数の対イオンを有し得る。
【0022】
本発明の組成物を適切な溶剤に溶解することにより医薬品組成物を調製することもできる。適切な溶剤は、水、塩溶液(例えば、NaCl)、緩衝溶液、軟膏、ゲル又は他の溶剤を含むがこれらに限定されない。点眼剤の調製に使用される懸濁液用の水溶液及び希釈剤は、蒸留水、生理食塩水等を含む。これらの医薬品組成物は以下の方法で調製され得る通常の方法に従って化合物を、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤及び溶解助剤等の適切な医薬品添加剤と混合、希釈又は溶解し、且つ剤型に応じて通常の方式で調製する。様々な添加剤は、必要に応じて点眼剤、眼科用ゲル及び/又は眼科用軟膏内に含まれ得る。これらの添加剤は、眼との接触又は眼の周囲での使用に適し、過度の毒性、非相溶性、不安定性、刺激性、変態反応等がない付加成分、添加剤又は担体を含む。適切な状況で製剤に添加剤を加えることができ、例えば、溶剤、マトリックス、助溶剤、懸濁剤、増粘剤、乳化剤、安定剤、緩衝剤、等張性調節剤、pH調節剤、キレート剤、鎮静剤、防腐剤、矯味剤、調味剤、着色剤、賦形剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、吸収促進剤、分散剤、防腐剤、可溶化剤等である。
【0023】
例えば、化合物を界面活性剤を溶解した滅菌水に溶解して、防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び粘度向上剤等の適切な医薬品添加剤を任意選択的に添加することにより点眼剤を調製することができる。例えば、緩衝剤を添加することでpHを一定に維持し、且つ該緩衝剤は薬学的に許容される緩衝剤を含み、例えば、ホウ酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、酒石酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液等である。緩衝液に加えて、点眼剤に等張剤を添加して涙液と等張である製剤を調製することもできる。等張剤は、糖類、ポリオール、及び塩を含むがこれらに限定されない。点眼剤の浸透圧が涙液の浸透圧に等しくなるように等張剤を添加する。点眼剤及び/又は眼科用軟膏の完全性を維持するように、防腐剤を添加することができる。いくつかの実施態様では、増粘剤を使用して、点眼剤、眼科用ゲル及び/又は眼科用軟膏等の眼科用製剤の粘度を増加する。点眼剤、眼科用ゲル及び/又は眼科用軟膏は滅菌操作によって調製され得、又は代替可能に調製の適切な段階で滅菌する。例えば、滅菌医薬品組成物は、滅菌成分を滅菌的に混合することによって調製され得る。又は、該滅菌医薬品組成物はまず成分を混合し、次に最終製剤を滅菌することによって調製され得る。滅菌方法は、熱滅菌、放射線照射及び濾過を含むがこれらに限定されない。眼科用軟膏(眼軟膏)は、活性成分を眼軟膏調製用マトリックスに混合し、次に本分野の知られている任意の方法で医薬品製剤に調製することによって滅菌的に調製され得る。
【0024】
本発明の特定の実施態様はさらに、様々な眼科疾患に関連する症状の治療及び/又は予防のための成分を含むキットに関する。このようなキットは、薬学的に許容される担体中に本発明の天然物組成物を含む容器、及び、ドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患及び眼部神経疾患等に関連する少なくとも1つの症状を改善又は予防するように、本発明の天然物組成物を投与するための説明書を含む。本明細書に係るいくつかのキットに含まれる容器は点眼剤を投与するためのスポイトである。他の実施態様では、該容器は軟膏又はゲルを分配するための管である。他の実施態様では、該容器は医薬品の送達のための任意の適切な容器であり、注射器又は医薬品の眼部送達又は局所投与に適する他の容器を含むがこれらに限定されない。さらに定義しない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語及び科学用語はいずれも当業者が通常に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に説明されたものと類似又は同等の任意の方法、装置及び材料は本発明の実施又はテストに適用できるが、以下では、好ましい方法、装置及び材料を説明する。
【0025】
有益な効果:本発明は、血栓形成を阻害し、微小循環を改善し、ニューロンの生存及び損傷修復を促進し、止血して創傷組織の癒合を促進する等の該当天然物の活性を利用して、特に眼部疾患に対して投薬する剤型を調製し、薬理学的実験により、該医薬品がドライアイ、眼部外傷、眼部血管性疾患及び眼部神経疾患等による眼球及び視力への損傷に対して治癒作用を有することを証明した。また、本発明で使用される眼部局所投与のモードは、投与量が少なく、安全性が高く、副作用が少なく、患者のコンプライアンスが良好である等の様々な優位性があり、注射投与による安全リスクを回避し、且つ投与方法を変更した後、その代謝経路、作用機序等はすべて注射剤と異なり、良好な臨床応用の見通しを有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例12の光学顕微鏡検査の結果であり、ここで、
図1aは網膜試験の結果であり、
図1bは脈絡膜試験の結果である。
【
図2】本願の医薬品の眼部乾燥感緩和の統計図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、具体的な実施例を参照しながら本願を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
該当天然化合物の複数回投与点眼液(一)
該当天然化合物10gを、300mlの生理食塩水に溶解し、0.22μmメンブレンで精密ろ過し、1000mlに希釈して定容し、密封して、高温で滅菌し、点眼瓶に分注し、瓶あたり10mlで、100個の点眼液を得た。
【実施例2】
【0029】
該当天然化合物の複数回投与点眼液(二)
該当天然化合物5gを、300mlの生理食塩水に溶解し、0.22μmメンブレンで精密ろ過し、1000mlに希釈して定容し、密封して、高温で滅菌し、点眼瓶に分注し、瓶あたり10mlで、100個の点眼液を得た。
【実施例3】
【0030】
該当天然化合物の一回投与点眼液(一)
該当天然化合物10gを、300mlの生理食塩水に溶解し、0.22μmメンブレンで精密ろ過し、1000mlに希釈して定容し、密封して、高温で滅菌し、点眼瓶に分注し、瓶あたり0.4mlで、25000個の点眼液を得た。
【実施例4】
【0031】
該当天然化合物の一回投与点眼液(二)
該当天然化合物5gを、300mlの生理食塩水に溶解し、0.22μmメンブレンで精密ろ過し、1000mlに希釈して定容し、密封して、高温で滅菌し、点眼瓶に分注し、瓶あたり0.4mlで、25000個の点眼液を得た。
【実施例5】
【0032】
該当天然化合物の眼内注射剤(一)
該当天然化合物4gを、300mlの生理食塩水に溶解し、0.22μmメンブレンで精密ろ過し、1000mlに希釈して定容し、アンプル瓶に分注し、瓶あたり2mlで、密封して、高温で滅菌し、500個の眼内注射剤を得た。
【実施例6】
【0033】
該当天然化合物の眼内注射剤(二)
該当天然化合物8gを、300mlの生理食塩水に溶解し、0.22μmメンブレンで精密ろ過し、1000mlに希釈して定容し、アンプル瓶に分注し、瓶あたり2mlで、密封して、高温で滅菌し、500個の眼内注射剤を得た。
【実施例7】
【0034】
該当天然化合物の眼内注射剤(凍結乾燥)
該当天然化合物を凍結乾燥原液に調製し、発熱物質を除去し、精密ろ過の後に分注して、滅菌し、-80℃の冷蔵庫で6h予備凍結し、12h凍結乾燥し、該当天然化合物の眼内注射剤の凍結乾燥粉末注射剤を得た。
【実施例8】
【0035】
該当天然化合物の眼内用眼軟膏
医療用黄色ワセリン、グリセリン、ラノリンを、8:2:1の割合で均一に混合し、眼軟膏マトリックスを調製した。3000gのマトリックスを、該当天然化合物30gに加え、均一に混合し、該当天然化合物眼軟膏を得、滅菌して分注し、本あたり3gで、1000本得た。
【実施例9】
【0036】
該当天然化合物の外用アイクリーム
ポロキサマー188を乳化し、グリセリン、プロピレングリコールを加えて均一に混合し、眼軟膏マトリックスを調製した。3000gのマトリックスに、該当天然化合物30gを加え、均一に混合し、該当天然化合物眼軟膏を得、滅菌して分注し、本あたり3gで、1000本得た。
【実施例10】
【0037】
該当天然化合物の眼科用ローション
中国薬局方の第四部のローションの規定に従って、該当天然化合物20gに、注射用水で配合された等張溶液を1000mlに加え、均一に撹拌し、100mlの塩水瓶に分注し、閉栓し、アルミキャップで密封し、100℃循環蒸気で30min消毒して得た。
【実施例11】
【0038】
浸透圧測定
それぞれ上記実施例1~実施例7の製品を、『中国薬局方』第四部0632の規定に従って測定したところ、浸透圧が296.000~308.000mOsm/lの間にあった。
【実施例12】
【0039】
網膜静脈栓塞治療実験
(一)実験動物及び群分け:ニュージーランドウサギ7匹を、3群に分け、正常群2匹のウサギ(番号A、B)、合計4個の眼球、残り5匹のウサギ(番号C、D、E、F、G)、左眼に生理食塩水を投与してモデル群とし、右眼に該当天然化合物の点眼液を投与して投与群とした。
(二)実験材料:1%アトロピン、2%プロカイン、該当天然化合物の点眼液、生理食塩水。
(三)検査のために送る臓器:ウサギの眼底組織。
(四)検査方法:ウサギに10%の抱水クロラールを静脈又は腹腔注射し全身麻酔し、麻酔した後、眼瞼内に1%アトロピンを5μL注入して瞳孔を拡張し、15min後、2%プロカインを5μL滴下して角膜を麻酔した。ローズベンガル20mg・kg
-1を静脈注射し、体積が1mL・kgで、1min後、外科用プリセットレンズと定位固定装置を介してコールドレーザーで網膜静脈を照射し、網膜静脈栓塞モデルを準備した。正常群を処理しなかった。投与群に、1.25%濃度の該当天然化合物の点眼液(生理食塩水に溶解される)を使用して1週間点眼し、一日一回、毎回35μl、モデル群に生理食塩水を並行して投与した。実験が終了した後、眼球を解剖し、固定した後に取り出し、脱水し、パラフィンで包埋し、標本作製し(厚さ4μm)、HEで染色し、光学顕微鏡で網膜と脈絡膜の各部位を観察し、病変があるかどうか及び病変の種類、程度を検査した。
(五)検査結果:結果が
図1a、
図1bに示されており、図に示されるように、投与群の内核層の浮腫が消失し、空胞が減少し、核濃縮現象が減少し、脈絡膜血管内の血栓塊が消失し又は小さくなった。これから分かるように、本製品は実験的な網膜静脈栓塞に対して優れた治療作用を有した。
【実施例13】
【0040】
ドライアイ緩和実験1
(一)実験方法:フルオレセインナトリウム標識法又は涙液の定性定量分析法(条件で行われる)で本製品の眼部薬物動態学的挙動を最初に特徴づけた。
(二)実験動物及び群分け:ニュージーランドウサギ4匹を、4群に分け、毎匹のウサギの左右眼を一群とし(番号A、B、C、D)、左眼に生理食塩水を投与してモデル群とし、右眼に該当天然化合物の点眼液を投与して投与群とした。
(三)実験材料:該当天然化合物の点眼液、生理食塩水。
(四)実験過程:
(五)検査方法:毎群に対して、同じ複数の期間で、紫外線ランプの下で蛍光層の強度を連続的に観測した。
(六)検査結果:
【表1】
上記統計から分かるように、該当天然化合物の点眼液の眼球表面での保持時間は生理食塩水の五倍以上であり、生物学的利用率が高く、涙液の安定性が顕著に向上し、眼球表面の乾燥が緩和された。
【実施例14】
【0041】
ドライアイ緩和実験二
(一)実験方法:試用体験調査
(二)実験材料:該当天然化合物の点眼液、珍視明点眼液
(三)試用者:男女比率が均等で、年齢が18~60歳の間で、最近眼部製剤を使用していない45人、試用者を2群に分け、それぞれ短期試用群及び長期試用群とし、その中で、短期試用群が40人、長期試用群が5人である。
(四)実験過程:
1.短期試用群:試用者が電子製品の画面を長期間注視して不快感を感じた後本製品を使用し、同じ時間間隔をおいてアンケートに複数回回答し、内容は、快適に使用できるかどうか、刺激感の有無、眼精疲労を改善するかどうか、副作用の有無等を含む。
2.長期試用群:短期群の試用者の試用状況に応じて、長期群試用者は1ヶ月内に本製品を長期間使用し、追跡調査し、本製品の有効性を把握し、試用者の投与安全を確保した。
(五)試用者の調査結果:
1、該当天然化合物の点眼液を試用した後、ドライアイにする緩和効果が高いと共に、優れた使用感及びコンプライアンスがあり、統計結果が次の表に示される:
【表2】
観察された指標症状:視界不良感、眼部筋肉の痛み、眼部乾燥感、異常分泌物、眼部灼熱感、眼部掻痒、眼部異物感、涙等。項目はスコアで説明され、0~5点に分けられ、0点が無症状であり、1~2点が軽度の症状であり、3~4点が明らかな症状であり、5点が重度の症状である。ボランティアがフィードバックした情報に対して分散分析を行い、P<0.05が緩和を表し、P<0.01が顕著な緩和を表す。
図2は、試用者に本願の点眼液を投与して眼部乾燥感を緩和する効果の統計であり、図に示されるように、該当天然化合物の点眼液を一定期間試用した後、眼部乾燥を顕著に改善することができた。
【国際調査報告】