(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ギアボックス及びこれを使用する駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/46 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
F16H1/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571321
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 CN2020092655
(87)【国際公開番号】W WO2020238969
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201910462384.1
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】タ ジンニン
(72)【発明者】
【氏名】リ キウメイ
(72)【発明者】
【氏名】ジ バオフェン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ ヨンジュン
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FB02
3J027GB03
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE12
(57)【要約】
ギアボックス(20)が、太陽歯車(30)と、太陽歯車(30)と噛み合う複数の遊星歯車(40)と、遊星歯車(40)を支持する回転フレーム(60)と、遊星歯車(40)と噛み合う内部環状歯車(71)を有するハウジングとを含む。遊星歯車(40)は、軸方向に沿って互いに同軸的に連結されて同期して回転する第1の歯車(41)及び第2の歯車(42)を含み、第1の歯車(41)は太陽歯車(30)に噛み合い、第2の歯車(42)はハウジング(70)の内部環状歯車(71)に噛み合う。ハウジング(70)内に受け取られる回転フレーム(60)は、中心孔を有する上側フレーム(61)及び下側フレーム(62)を有し、複数の遊星歯車(40)の各々は、取り付けピン(50)によって上側フレーム(61)と下側フレーム(62)との間に配置され、下側フレーム(62)は、ハウジング(70)に連結されたフランジ(80)によって支持され、太陽歯車(30)は、回転フレーム(60)を動作させるように回転駆動される。本開示のギアボックス(20)は、低振動かつ低騒音である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車(30)と、回転フレーム(60)に支持されて前記太陽歯車(30)と噛み合う複数の遊星歯車(40)と、内部環状歯車(71)を有するハウジング(70)とを備えたギアボックス(20)であって、前記内部環状歯車(71)は、前記ハウジング(70)の内面に設けられて前記複数の第1の遊星歯車(40)と噛み合い、
前記複数の遊星歯車(40)の各々は、軸方向に沿って互いに同軸的に連結されて同期して回転する第1の歯車(41)及び第2の歯車(42)を含み、前記第1の歯車(41)は前記太陽歯車(30)と噛み合い、前記第2の歯車(42)は前記ハウジング(70)の前記内部環状歯車(71)と噛み合い、
前記ハウジング(70)内に受け取られる前記回転フレーム(60)は、中心孔を有する上側フレーム(61)及び下側フレーム(62)を含み、前記複数の遊星歯車(40)の各々は、取り付けピン(50)によって前記上側フレーム(61)と前記下側フレーム(62)との間に配置され、前記下側フレーム(62)は、前記ハウジング(70)に連結されたフランジ(80)によって支持され、前記太陽歯車(30)は、前記回転フレーム(60)を動作させるように回転駆動される、
ことを特徴とするギアボックス。
【請求項2】
前記上側フレーム(61)は、本体(63)と、互いに間隔を空けて前記本体(63)の前記周縁部から軸方向に沿って延びる複数の延長部分(64)とを含み、前記複数の遊星歯車(40)は、前記複数の延長部分(64)によって形成される空間内に収容される、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項3】
前記複数の延長部分(64)の各々は、第1の延長部分(65)と、該第1の延長部分(65)から延びる第2の延長部分(66)とを含み、前記複数の第1の延長部分(65)によって、前記第2の歯車(42)を収容するための第1の空間(650)が形成され、前記複数の第2の延長部分(66)によって、前記第1の歯車(41)を収容するための第2の空間(660)が形成される、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項4】
前記本体(63)は円盤形であり、該本体から、外部負荷を連結するための出力部(67)が前記遊星歯車(40)から離れて延びる、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項5】
前記第2の歯車(42)の直径は前記第1の歯車(41)の直径よりも小さく、前記第1の歯車(41)ははす歯歯車であり、第2の歯車(42)は平歯車又ははす歯歯車である、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項6】
前記上側フレーム(61)から前記太陽歯車(30)に向かって突出部が延び、前記太陽歯車(30)との間に間隙を維持して前記太陽歯車が過度に変位するのを防ぐ、
請求項5に記載のギアボックス。
【請求項7】
前記突出部上に、前記太陽歯車(30)よりも高い剛性を有するストッパが設けられて過剰な摩擦を防ぐ、
請求項6に記載のギアボックス。
【請求項8】
前記延長部分(64)間に、前記取り付けピン(50)の一端を受け取る複数の上側溝(630)が設けられ、前記下側フレーム(62)上に、前記取り付けピン(50)の他端を受け取る複数の下側溝(620)が設けられる、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項9】
前記下側フレーム(62)は、前記上側フレーム(61)の前記延長部分(64)を固定する複数のスロット(621)をさらに含む、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項10】
下側フレーム(62)と前記フランジ(80)との間に、摩擦を低減するためのガスケット(81)が設けられる、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項11】
前記太陽歯車(30)は、軸方向に延びる伝達部分(31)をさらに含み、該伝達部分(31)上に、前記モータ(10)の出力シャフトを受け取る連結間隙(310)が形成される、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項12】
前記上側フレーム(61)と前記ハウジング(70)との間に、摩擦を低減するためのブッシュ(90)が設けられる、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項13】
太陽歯車(30)と、該太陽歯車(30)と噛み合う複数の遊星歯車(40)と、内部環状歯車(71)を有するハウジング(70)とを備えたギアボックス(20)であって、前記内部環状歯車(71)は、前記ハウジング(70)の内面に設けられて前記複数の第1の遊星歯車(40)と噛み合い、
前記複数の遊星歯車(40)の各々は、軸方向に沿って互いに同軸的に連結されて同期して回転する第1の歯車(41)及び第2の歯車(42)を含み、前記第1の歯車(41)は前記太陽歯車(30)と噛み合い、前記第2の歯車(42)は前記ハウジング(70)の前記内部環状歯車(71)と噛み合い、
前記ハウジング(70)内に受け取られる前記回転フレーム(60)は、上側フレーム(61)及び下側フレーム(62)を含み、前記複数の遊星歯車(40)の各々は、前記上側フレーム(61)と前記下側フレーム(62)との間に配置され、前記下側フレーム(62)は、前記ハウジング(70)に連結されたフランジ(80)によって支持され、前記太陽歯車(30)は、前記回転フレーム(60)の出力部が回転するように前記遊星歯車(40)を回転させるように駆動される、
ことを特徴とするギアボックス。
【請求項14】
前記上側フレーム(61)は、本体(63)と、互いに間隔を空けて前記本体(63)の前記周縁部から軸方向に沿って延びる複数の延長部分(64)とを含み、前記複数の遊星歯車(40)は、前記複数の延長部分(64)によって形成される空間内に収容される、
請求項13に記載のギアボックス。
【請求項15】
前記複数の延長部分(64)の各々は、第1の延長部分(65)と、該第1の延長部分(65)から延びる第2の延長部分(66)とを含み、前記複数の第1の延長部分(65)によって、前記第2の歯車(42)を収容するための第1の空間(650)が形成され、前記複数の第2の延長部分(66)によって、前記第1の歯車(41)を収容するための第2の空間(660)が形成される、
請求項14に記載のギアボックス。
【請求項16】
前記第2の歯車(42)の直径は前記第1の歯車(41)の直径よりも小さく、前記第1の歯車(41)ははす歯歯車であり、第2の歯車(42)は平歯車又ははす歯歯車である、
請求項13に記載のギアボックス。
【請求項17】
前記複数の遊星歯車(40)の各々は、取り付けピン(50)によって前記上側フレーム(61)と前記下側フレーム(62)との間に配置される、
請求項13に記載のギアボックス。
【請求項18】
モータと、請求項1から17のいずれか1項に記載のギアボックスとを備え、前記モータの出力シャフト(11)が前記ギアボックス(20)に連結され、前記フランジ(80)が前記モータ上に着座する、
ことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに取り付けられたギアボックスの技術に関し、具体的にはギアボックスを備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の電動テールゲートの開閉に使用されるパワーリフトゲートなどの駆動装置は、モータと、モータの出力シャフトに連結されたギアボックスとを含む。車のトランクのテールゲートを開くと、テールゲートを支える支持棒が設けられている。既存の支持棒は使用頻度が高く使用時間が長いため、支持棒を駆動するギアボックスの内部部品が緩みやすく、これによって支持体の使用時に騒音及び安全上の問題が発生し、支持棒の全体的な耐用年数に影響が及ぶ。ギアボックスは、モータによる高速回転中に振動及び騒音問題を生じやすい多段式の遊星歯車機構を含む。従って、ギアボックスの内部部品が良好であって使用過程が安全であることを確実にするために、支持棒を駆動する新たなタイプのギアボックスを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点を踏まえて、本開示は、パワーリフトゲート内の構成部品の信頼性を効果的に高めることができる改善された構造のギアボックスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ケーシングと、ケーシング内に取り付けられたステータと、ステータに対して回転するロータとを含む電気モータを開示する。ケーシングは、両端に開口部を有する円筒形シェルと、衝撃押し出し法によって円筒形シェル内に統合された仕切り板と、レーザー溶接によって円筒形シェルの端部に適合された、衝撃押し出し法によって形成されたエンドキャップとを含む。仕切り板は、円筒形シェルを第1のキャビティ及び第2のキャビティという2つの部分に分割し、ステータ及びロータは、ケーシングの第1のキャビティ内に受け取られる。
【0005】
仕切り板は、主板と、主板上に配置された複数の穴とを含むことが好ましい。ステータは、モータの軸方向に沿って延びる複数の導電性端子を含み、導電性端子は、それぞれ駆動信号を伝達するために仕切り板の穴を通過して第2のキャビティに至る。
【0006】
先行モータと比べると、本開示のギアボックスの遊星歯車は、第1の歯車部品と、第1の歯車と同期して回転する第2の歯車部品とを含み、これによって部品数が効果的に減少するだけでなく、組み立てが容易になり、製造コストが削減され、安定した伝達過程及び振動が得られて騒音が少ない。遊星歯車の軸方向端面と回転フレームの内側端面との間には間隙が存在し、これによって遊星歯車とフレームとの間の摩擦が効果的に減少して振動及び騒音が少ない。
【0007】
以下の図面を参照することで、実施形態の多くの態様をより良く理解することができる。図面の構成部品は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ実施形態の原理を明確に示すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による駆動装置の等角図である。
【
図4】
図1のギアボックスのモータを取り外した等角分解図である。
【
図6】本開示の別の実施形態による駆動装置の断面図である。
【
図8】
図6の駆動装置の別の側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面と共に本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、これらの図は限定ではなく例示である。図は縮尺通りではなく、説明する実施形態の全ての態様を示しているわけではなく、本開示の範囲を限定するものではない。
【0010】
図1~
図2を参照すると、本開示の実施形態による駆動装置が、モータ10と、モータ10の出力シャフト11に連結されたギアボックス20とを含む。モータ10は、ニーズに応じて好適なタイプのモータが選択され、ここではその構造について繰り返さない。ギアボックス20は、モータ10の出力シャフト11に連結された太陽歯車30と、太陽歯車30と噛み合う第1の遊星歯車40と、第1の遊星歯車40内に設けられて遊星歯車40を支持する取り付けシャフト50と、遊星歯車40を収容する回転フレーム60と、回転フレーム60の外側にスリーブ連結されて遊星歯車40と噛み合うハウジング70とを含む。太陽歯車30は、出力シャフト11と同期して回転して第1の遊星歯車40を回転駆動する。第1の遊星歯車40は、回転しながらハウジング70内で太陽歯車30を中心に公転し、これによって回転フレーム60を回転させて外部負荷にトルクを伝達する。
【0011】
本実施形態では、遊星歯車40が、軸方向に沿って互いに同軸的に連結されて同期して回転する第1の歯車41及び第2の歯車42を含む。第1の歯車41は太陽歯車30と噛み合い、第2の歯車42は内部環状歯車(internal ring gear)71と噛み合い、内部環状歯車71は、ハウジング70の内面上に設けられて複数の第1の遊星歯車40のうちの第2の歯車42と噛み合う。遊星歯車40内には取り付けシャフト50が取り付けられ、取り付けシャフト50の両端は遊星歯車40の軸方向端面から突出する。取り付けシャフト50は、遊星歯車40と一体的に形成され、或いは取り付けシャフト40は、遊星歯車40が取り付けシャフト40の周囲を回転するように遊星歯車40に挿入することもできる。回転フレーム60は、固定して連結された上側フレーム61及び下側フレーム62を含む。取り付けシャフト50の一端は上側フレーム61に連結され、取り付けシャフト50の他端は下側フレーム62に連結される。本実施形態では、上側フレーム61及び下側フレーム62が別々に形成された後に互いに連結されている。上側フレーム61及び下側フレーム62は、回転フレーム60及びギアボックス20全体の重量を効果的に低減できるとともにコストも削減できるプラスチック射出成形によってそれぞれ形成されることが好ましい。組み立て時には、遊星歯車40を含む取り付けシャフト50の両端を上側フレーム61及び下側フレーム62にそれぞれ押し付けた後に、上側フレーム61及び下側フレーム62を固定して連結することができる。
【0012】
第1の歯車41及び第2の歯車42は同期して回転し、第1の歯車41は太陽歯車40によって回転駆動され、第2の歯車部分42は同期して回転する。第2の歯車部分42は環状歯車70と噛み合い、第2の歯車42は回転時に環状歯車70に沿って回転し、これによって上側フレーム62を回転させる。本実施形態では、取り付けシャフト50の両端が上側フレーム61及び下側フレーム62の受け穴(receiving hole)にそれぞれ挿入され、従って取り付けシャフト50の両端が軸方向位置決めの役割を果たしている。組み立て時には、遊星歯車40の軸方向端面と回転フレーム60の内側端面との間に摩擦を避けるための間隙が設けられる。任意に、取り付けシャフト50及び遊星歯車40は隙間嵌め(clearance fit)され、遊星歯車40は、ギアボックス20のNVH(騒音、振動、ハーシュネス(Noise、Vibration、Harshness))性能を高めるように取り付けシャフト50の周囲を回転する。
【0013】
本実施形態のギアボックス20は遊星歯車40を1つしか含んでおらず、これによって部品数が効果的に減少し、組み立てが容易になり、製造コストが削減される。一方で、単段トランスミッションの使用は伝達効率を効果的に向上させ、伝達プロセスがより安定する。本実施形態では、遊星歯車40が取り付けシャフト50及び回転フレーム60によって位置決めされていて、遊星歯車40の軸方向端面上に回転フレーム60を位置付けるための位置決め面を設ける必要がなく、これによって遊星歯車40が直接回転フレーム60に接触することが避けられる。上記の構造は、遊星歯車40と回転フレーム60との間の摩擦を効果的に低減し、モータ10の回転中に遊星歯車40に生じる摩耗を低減して振動及び騒音を抑え、これによってギアボックス20のNVH(騒音、振動、ハーシュネス)性能を向上させる。
【0014】
図3~
図5を参照すると、本実施形態では、3つの遊星歯車40が太陽歯車30を等間隔で取り囲んで噛み合っている。遊星歯車40の数はこれに限定しなくてもよい。遊星歯車40の第1の歯車41及び第2の歯車42の直径及び/又は歯数は異なることができる。具体的には、第1の歯車41の直径は第2の歯車42の直径よりも大きく、第1の歯車41の歯数は第2の歯車42の歯数よりも多い。第1の歯車41ははす歯歯車(helical gear)であり、第2の歯車42は平歯車(spur gear)又ははす歯歯車である。従って、太陽歯車30は円周方向にはす歯300を含む。はす歯300は、2つの後向きの歯面(back-facing tooth surfaces)301、302を含む。歯面301は、太陽歯車30の軸方向上端に面し、歯面302は、太陽歯車30の軸方向下端に面する。歯面301、302は曲面であり、太陽歯車30の軸方向下端から太陽歯車30の軸方向上端に向かって斜めに延びる。傾斜面の角度が小さいため、遊星歯車40は大きな逆方向の力に耐えてセルフロックを達成することができる。歯面301と軸との間の角度と、歯面302と軸との間の角度は同じである。この構成は、第1の歯車41と太陽歯車30との一致度を高め、遊星歯車40及び太陽歯車30の伝達強度及び平滑度を向上させ、これによって振動及び騒音を低減することができる。第2の歯車部分42が平歯車である場合、ハウジング70の内部環状歯車71も平歯を採用する。
【0015】
上側フレームは、円盤形の本体63と、本体63の周縁部から軸方向に沿って延びる複数の延長部分64とを含み、複数の延長部分64は、円周方向に沿って間隔を置いて設けられる。複数の延長部分64は、遊星歯車40を配置するための収容空間640を形成する。本体63は、取り付けシャフト50の一端を受け取るための上側溝630をさらに含み、各上側溝630は、2つの隣接する延長部分64間に配置される。上側溝630は、軸方向に一定の深さを有するが、本体63の軸方向先端を貫通しない。上側溝630は、本体の縁部に配置されて不完全な側壁を有し、ハウジングと共に取り付けシャフト50の端部を拘束する。本実施形態の本体63には、遊星歯車40の数に対応して等間隔で配置された3つの上側溝630が形成される。
【0016】
遊星歯車40の第1の歯車41及び第2の歯車42の直径は異なる。各延長部分64は、本体部分63から延びる第1の延長部分65と、第1の延長部分65から軸方向に沿って延びる第2の延長部分66とを含む。複数の第1の延長部分65によって、第2の歯車42を収容するための第1の空間650が形成され、複数の第2の延長部分66によって、第1の歯車41を収容するための第2の空間660が形成される。
【0017】
下側フレーム62は円盤形状を有する。下側フレーム62には、上側フレーム61の上側溝630に対応する下側溝620が設けられる。下側溝620は、軸方向に沿って一定の深さを有するが、下側フレーム62の端面を貫通しない。
【0018】
上側溝630には、取り付けシャフト50の一端が収容される。第2の歯車42の軸方向上面及び本体63の軸方向下面は、直接接触することなく一定の間隙を維持する。遊星歯車40が回転すると、上側フレーム61が取り付けシャフト50と共に同期して回転することができる。上側溝630は、上側フレーム61に対する取り付けシャフト50の半径方向の取り付けを容易にするように本体63の側壁を貫通することが好ましい。
【0019】
取り付けシャフト50の他端は、下側溝620内に取り付けられる。第1の歯車41の軸方向下面と下側フレーム62の軸方向上面との間には、直接接触することなく一定の間隙が維持される。遊星歯車40が回転すると、下側フレーム62が取り付けシャフト50と共に同期して回転することができる。
【0020】
第1の歯車41の直径は、第1の歯車41に同軸的に連結された第2の歯車42の直径よりも大きい。複数の第2の歯車42によって形成される外側輪郭円(outer contour circle)の直径は、上側フレーム61の本体63の直径よりも大きい。従って、各第2の歯車42の一部は、上側フレームから半径方向に突出してハウジング70の内部環状歯車71と噛み合う。同様に、各第1の歯車41の一部は、2つの隣接する第2の延長部分66間から半径方向に突出する。
【0021】
下側フレーム62は、上側フレーム61の第2の延長部分66に対応する複数の溝621を有する。溝621には、第2の延長部分66が挿入されて上側フレーム61及び下側フレーム62を共に固定する。上側フレーム61の第2の延長部分66及び下側フレーム62は、レーザー溶接によって連結されることによってこれらの連結強度を高めるとともに、強度及び同軸度をさらに改善できることが好ましい。
【0022】
第1の延長部分65及び第2の延長部分66は、その半径方向外側から半径方向内側に向かって徐々に収縮して狭くなり、第1の延長部分65の円周方向の2つの側面651及び第2の歯車42の歯面は一定の間隙を維持する。同様に、第2の延長部分66の円周方向の2つの側面661と第1の歯車41の歯面との間にも一定の間隙が維持される。この構成は、遊星歯車40の回転に対する干渉を回避しながら上側フレーム61の強度を高めることができる。本実施形態では、第1の延長部分65及び第2の延長部分66の断面がいずれも概ね三角形である。
【0023】
遊星歯車40の数及び異なる歯車の直径間の関係に従って、上側フレーム61の延長部分の数及び異なる延長部分のサイズ間の関係も適宜に調整することができると理解されたい。
【0024】
上側フレーム61は、上側フレーム61自体の重量を減少させる第1の重量減少溝(weight reduction groove)631及び第2の重量減少溝632を有する。同様に、下側フレーム62は、下側フレーム62の重量を減少させる溝622を有する。溝622は、下側溝620とスロット621との間に配置される。
【0025】
上側フレーム61は、出力部67をさらに含む。出力部67は、本体部分63の中心から軸方向上向きに延び、中空の円筒形状を有し、内面には負荷と連結してトルクを出力するための環状歯670が形成される。本実施形態では、出力部67の外径が本体63の外径よりも小さい。
【0026】
図2~
図4を参照すると、ハウジング70は、軸方向に連結された第1の円筒部分72及び第2の円筒部分73を含み、これらはいずれも環状である。第1の円筒部分72の直径は第2の円筒部分73の直径よりも大きく、これによって第1の円筒部分72と第2の円筒部分73との間に段付き面74が形成される。第1の円筒部分72の内面には、内部環状歯車71が形成される。第2の円筒部分73には、上側フレーム61の出力部67が収容される。上側フレーム61の本体63の端面は、第2の円筒部分73と第1の円筒部分72との間の段付き面74に対向する。
【0027】
ハウジング70をモータ10のシェルに連結するために、フランジ80が使用される。具体的には、モータ10のシェルは、フランジ80の中心孔に挿入される突出部12を有し、フランジ80上には、ハウジング70の第1の円筒部分72がスリーブ連結される。フランジ80は下側フレーム62に対向し、これらの間にはガスケット81が配置される。
【0028】
ギアボックス20は、ハウジング70の第2の円筒部分73と上側フレーム61との間に配置されたブッシュ90をさらに含む。ブッシュ90は、回転フレーム60とハウジング70との間の摩擦を低減するために金属などの滑らかな材料で形成される。本実施形態では、ブッシュ90が、環状のスリーブ91と、スリーブ91から半径方向外向きに広がる周辺部分92とを含む。スリーブ91は、ハウジング70の第2の円筒部分73の内面の周囲に配置されて、出力部67と第2の円筒部分73との間の摩擦を低減する。周辺部分92は、第2の円筒部分73と第1の円筒部分72との間の段付き面74上に配置されて、上側フレーム61の本体63と段付き面74との間の摩擦を低減する。
【0029】
ギアボックス20は、上側フレーム61の中心から太陽歯車30に向かって延びる突出部をさらに含み、突出部にはストッパ100が取り付けられる。ストッパ100の材料硬度は、上側フレーム61の材料硬度とは異なる。これらの材料硬度は、「柔・硬の組み合わせ(soft-hard combination)」の原理に基づいて選択される。例えば、ストッパ100は(粉末冶金材料などの)硬質材料で形成され、上側フレーム61は(銅などの)低硬度材料で形成される。本実施形態では、ストッパ100が、環状側壁101と、環状側壁101から延びる当接上面102とを含む。ギアボックス20の組み立て後には、ストッパ100が太陽歯車30の軸端に対向して間隙を維持する。
【0030】
太陽歯車30は、軸方向に延びる伝達部分31をさらに含み、伝達部分31には、モータ10の出力シャフト11を受け取るための連結間隙(connecting gap)310が形成される。
【0031】
ストッパ100とモータシャフト11との間に軸方向に配置された太陽歯車30は、半径方向力に適合するように浮かんでおり、太陽歯車30は、第1の歯車41と噛み合うはす歯歯車を有する。連結間隙310は、出力シャフト11と太陽歯車30との間の伝達安定性を向上させるようにD字型などの非円形であることが好ましい。
【0032】
なお、構成部品間には、構成部品間の摩擦を低減するために軸方向の間隙を設けることができる。例えば、ガスケット81は、フランジ80又は下側フレーム62に浮動接触する。別の例として、スリーブ91の周辺部分92と上側フレーム61の本体63も浮動接触する。
【0033】
図6~
図8に、本開示の第2の実施形態のギアボックス20を含む駆動装置を示す。ギアボックス20と第1の実施形態のギアボックス20との間の相違点は、太陽歯車130がウォームであり、第1の歯車部分141がウォーム歯である点である。
【0034】
具体的には、太陽歯車130は、軸方向に交互に螺旋を成す2つのはす歯132、133を含む。第1の実施形態と比べると、本実施形態の太陽歯車130のはす歯132、133間の角度は、第1の実施形態における太陽歯車30のはす歯300と軸との間の角度よりも大きい。すなわち、傾斜角度がより大きい。各はす歯132、133は、2つの対向する歯面134、135を含む。歯面134は、太陽歯車130の軸方向上端に面し、歯面135は、太陽歯車130の軸方向下端に面する。歯面134、135はいずれも曲面であり、太陽歯車130の軸方向下端から太陽歯車130の軸方向上端に向かって螺旋状に延びる。本実施形態では、第2の歯車部分142がはす歯歯車である。これに対応して、ハウジング170の内面上の歯171もはす歯である。第2の歯車部分142の斜めの歯及び第1の歯車部分141の斜めの歯は、同じ傾斜方向を有して傾斜角度が異なる。第2の歯車部分142のはす歯と軸との間の角度は、第1の歯車部分141のはす歯と軸との間の角度よりも小さい。
【0035】
本実施形態では、ウォーム歯車を使用する伝達構造が、太陽歯車130と第1の歯車141との間の線接触を実現し、伝達率及び伝達強度を向上させて騒音を低減することができる。また、第1の歯車141及び第2の歯車142が受ける軸方向力が逆方向であるため、第1の歯車141及び第2の歯車142が受ける軸方向力を効果的に低減することができる。
【0036】
第2の実施形態のギアボックス120は、フランジ180内に配置されたフランジワッシャ182をさらに含む。具体的には、フランジ180に受け溝183が形成され、この受け溝183にフランジワッシャ182が受け取られる。フランジワッシャ182の表面とフランジ180とは共平面を形成する。太陽歯車130の伝達部分131の軸端は、フランジワッシャ182と浮動接触する。フランジ180と下側フレーム62との間にはガスケット181が配置される。ガスケット181の硬度は、下側フレーム62の硬度とは異なる。2つのワッシャの材料硬度は、「柔・硬の組み合わせ」の原理に基づく。例えば、下側フレーム62がプラスチック材料などの軟質材料である場合、ワッシャ181は、鋼板などの硬度及び表面仕上げの高い材料である。フランジワッシャ182は、金属などの硬質本体と、自己潤滑性プラスチックなどの、本体よりも硬度の低い、本体に埋め込まれた挿入体をと含む。大きな軸方向力によって変形が生じても、フランジガスケット182に必要とされる高減衰振動低減及び低摩擦を確実にすることができる。この構造は、大きな軸方向力によってフランジワッシャ182が変形するのを防ぐだけでなく、フランジワッシャ182に必要とされる高減衰振動低減及び低摩擦を確実にすることもできる。
【0037】
図8を参照すると、出力シャフト11の端部と伝達部分131の連結間隙310の閉じた端部との間には間隙が存在し、従って太陽歯車130から出力シャフト11への軸方向力を防ぐことができる。
【0038】
具体的な実施形態を参照しながら本開示を説明したが、本開示の説明は例示的なものであり、本開示を限定するものであると解釈すべきではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定められる本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に対して本開示の様々な修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
10 モータ
11 出力シャフト
12 突出部
30 太陽歯車
31 伝達部分
40 遊星歯車
41 第1の歯車
42 第2の歯車
50 取り付けピン
60 回転フレーム
61 上側フレーム
62 下側フレーム
63 本体
67 出力部
70 ハウジング
71 内部環状歯車
72 第1の円筒部分
73 第2の円筒部分
80 フランジ
81 ガスケット
90 ブッシュ
91 スリーブ
92 周辺部分
100 ストッパ
670 環状歯
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車(30)と、回転フレーム(60)に支持されて前記太陽歯車(30)と噛み合う複数の遊星歯車(40)と、内部環状歯車(71)を有するハウジング(70)とを備えたギアボックス(20)であって、前記内部環状歯車(71)は、前記ハウジング(70)の内面に設けられて前記複数の第1の遊星歯車(40)と噛み合い、
前記複数の遊星歯車(40)の各々は、軸方向に沿って互いに同軸的に連結されて同期して回転する第1の歯車(41)及び第2の歯車(42)を含み、前記第1の歯車(41)は前記太陽歯車(30)と噛み合い、前記第2の歯車(42)は前記ハウジング(70)の前記内部環状歯車(71)と噛み合い、
前記ハウジング(70)内に受け取られる前記回転フレーム(60)は、上側フレーム(61)及び下側フレーム(62)を含み、前記複数の遊星歯車(40)の各々は、前記上側フレーム(61)と前記下側フレーム(62)との間に配置され、前記下側フレーム(62)は、前記ハウジング(70)に連結されたフランジ(80)によって支持され、前記太陽歯車(30)は、前記回転フレーム(60)を動作させるように回転駆動される、
ことを特徴とするギアボックス。
【請求項2】
前記上側フレーム(61)は、本体(63)と、互いに間隔を空けて前記本体(63)の前記周縁部から軸方向に沿って延びる複数の延長部分(64)とを含み、前記複数の遊星歯車(40)は、前記複数の延長部分(64)によって形成される空間内に収容される、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項3】
前記複数の延長部分(64)の各々は、第1の延長部分(65)と、該第1の延長部分(65)から延びる第2の延長部分(66)とを含み、前記複数の第1の延長部分(65)によって、前記第2の歯車(42)を収容するための第1の空間(650)が形成され、前記複数の第2の延長部分(66)によって、前記第1の歯車(41)を収容するための第2の空間(660)が形成される、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項4】
前記本体(63)は円盤形であり、該本体から、外部負荷を連結するための出力部(67)が前記遊星歯車(40)から離れて延びる、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項5】
前記第2の歯車(42)の直径は前記第1の歯車(41)の直径よりも小さく、前記第1の歯車(41)ははす歯歯車であり、第2の歯車(42)は平歯車又ははす歯歯車である、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項6】
前記上側フレーム(61)から前記太陽歯車(30)に向かって突出部が延び、前記太陽歯車(30)との間に間隙を維持して前記太陽歯車が過度に変位するのを防ぐ、
請求項5に記載のギアボックス。
【請求項7】
前記突出部上に、前記太陽歯車(30)よりも高い剛性を有するストッパが設けられて過剰な摩擦を防ぐ、
請求項6に記載のギアボックス。
【請求項8】
前記延長部分(64)間に、前記取り付けピン(50)の一端を受け取る複数の上側溝(630)が設けられ、前記下側フレーム(62)上に、前記取り付けピン(50)の他端を受け取る複数の下側溝(620)が設けられる、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項9】
前記下側フレーム(62)は、前記上側フレーム(61)の前記延長部分(64)を固定する複数のスロット(621)をさらに含む、
請求項2に記載のギアボックス。
【請求項10】
下側フレーム(62)と前記フランジ(80)との間に、摩擦を低減するためのガスケット(81)が設けられる、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項11】
前記太陽歯車(30)は、軸方向に延びる伝達部分(31)をさらに含み、該伝達部分(31)上に、前記モータ(10)の出力シャフトを受け取る連結間隙(310)が形成される、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項12】
前記上側フレーム(61)と前記ハウジング(70)との間に、摩擦を低減するためのブッシュ(90)が設けられる、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項13】
前記複数の遊星歯車(40)の各々は、取り付けピン(50)によって前記上側フレーム(61)と前記下側フレーム(62)との間に配置される、
請求項1に記載のギアボックス。
【請求項14】
モータと、請求項1から13のいずれか1項に記載のギアボックスとを備え、前記モータの出力シャフト(11)が前記ギアボックス(20)に連結され、前記フランジ(80)が前記モータ上に着座する、
ことを特徴とする駆動装置。
【国際調査報告】