(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】低電力システム用のアクチュエータを制御及び診断するための方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20220428BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01F7/18 Z
F16K31/06 310E
H01F7/18 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502321
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020056717
(87)【国際公開番号】W WO2020187706
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521425249
【氏名又は名称】エス - レイン コントロール アクチーセルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノール クリスチャンセン、トム
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106EE22
3H106FA01
3H106KK05
(57)【要約】
アクチュエータが、可動要素と、可動要素を電磁コイルの軸に沿って変位させるための磁場を生成するための電磁コイルとを備える、散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを制御する方法であって、可動要素と、前記可動要素を電磁コイルの軸に沿って変位させるための磁場を生成するための前記電磁コイルとを備え、前記可動要素は、磁性材料を含み、前記アクチュエータは、能動状態及び受動状態を有し、前記可動要素は、前記アクチュエータが前記受動状態にあるときよりも、前記能動状態にあるときに前記電磁コイルに近くなり、前記方法は、
- 電流が前記電磁コイルを通って流れるように前記電磁コイルにDC突入電圧V
iを印加するステップであって、それにより、前記電磁コイルを通って流れる前記電流は、突入定常状態電流I
sに到達するまで増加する、ステップと、
- 動作保持電圧V
operを最適化するステップであって、前記動作保持電圧V
operを最適化するステップは、
a)前記DC突入電圧V
iよりも低い保持電圧V
hを印加するステップと、
b)前記DC突入電圧V
iを前記電磁コイルに印加するステップと、
c)ステップb)における前記DC突入電圧V
iの印加中に前記電磁コイルによって生成される前記磁場により、前記可動要素が前記受動状態から前記能動状態に移動したかどうかを判定するステップであって、前記可動要素が前記受動状態から前記能動状態に移動したかどうかを判定するステップは、
- 立ち上がり時間T
iを取得するステップであって、前記立ち上がり時間は、前記電磁コイルを通る前記電流が突入電流I
iに到達するのにかかる時間であり、前記突入電流は、前記突入定常状態電流I
sにほぼ等しいか、又は前記突入定常状態電流よりも低い、ステップと、
- 保持電流I
hを取得するステップであって、前記保持電流I
hは、前記保持電圧V
hが前記電磁コイルに印加されたとき、前記電磁コイルを通る前記定常状態電流である、ステップと、
- 保持電流時間T
hを取得するステップであって、前記保持電流時間T
hは、前記電磁コイルに前記突入電圧V
iが印加されたとき、前記電磁コイルを通る前記電流が0の電流から前記保持電流I
hになるのにかかる時間である、ステップと、
- 試験立ち上がり時間T
testを測定するステップであって、前記試験立ち上がり時間T
testは、前記電磁コイルを通る前記電流が前記保持電流I
hからほぼ前記突入電流I
iになるのにかかる時間である、ステップと、
- 前記保持電流時間T
hと前記試験立ち上がり時間T
testの合計が前記立ち上がり時間T
iにほぼ等しい場合、すなわち、T
h+T
test≒T
iである場合、前記可動要素が前記受動状態から前記能動状態に又は前記能動状態から前記受動状態に移動したと判定するステップと
を含む、ステップと、
d)前記DC突入電圧V
iの後続の印加時に、前記可動要素が移動しなかったと判定された前記保持電圧V
hの1つ又は複数の値、及び場合によっては、前記可動要素が移動したと判定された前記保持電圧V
hの1つ又は複数の値を決定するためにステップa)からc)を反復するステップと、
e)前記DC突入電圧V
iの後続の印加時に、前記可動要素が移動しなかったと判定された前記保持電圧V
hの最低値にほぼ等しいか又はそれよりも高い値を有するように前記動作保持電圧V
operを選択するステップと、
f)前記可動要素を前記能動状態に維持するために、前記動作保持電圧V
operを前記電磁コイルに印加するステップと
を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップe)は、前記DC突入電圧V
iの後続の印加時に、前記可動要素が移動しなかったと判定された前記保持電圧V
hの最低値よりも約50%高くなるように前記動作保持電圧V
operを選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項3】
前記電磁コイルR
coilの抵抗値を決定するステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項4】
前記電磁コイルの前記抵抗値は、オーム性であると仮定される、請求項3に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項5】
保持電流時間T
hの取得は、データ記憶媒体に記憶された値を読むステップを含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項6】
保持電流時間T
hの取得は、前記保持電流時間T
hを測定するステップを含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項7】
前記アクチュエータはソレノイド・バルブであり、前記可動要素はプランジャ又はピストンである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項8】
前記ソレノイド・バルブは、散水システムの一部である、請求項7に記載の低電力システム用のアクチュエータを制御する方法。
【請求項9】
散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを診断する方法であって、可動要素と、電磁コイルの軸に沿って前記可動要素を変位させるための磁場を生成するための前記電磁コイルとを備え、前記可動要素は、柔軟な磁性材料を含み、前記アクチュエータは、能動状態及び受動状態を有し、前記可動要素は、前記アクチュエータが前記受動状態にあるときよりも、前記能動状態にあるときに前記電磁コイルに近くなり、一定のDC電圧である保持電圧V
hが、前記電磁コイルに印加され、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
- 前記電磁コイルを通る保持電流I
hを測定するステップであって、前記保持電流I
hは、前記保持電圧V
hが印加されたとき、前記電磁コイルを通って流れる定常状態電流である、ステップと、
- 前記電磁コイル及び前記可動要素を特徴付ける値、すなわち、
-- DC突入電圧V
i及び対応する立ち上がり時間T
iと、
-- 前記DC突入電圧V
i、前記立ち上がり時間T
i、及び前記電磁コイルの抵抗値Rに依存し、前記電磁コイルにほぼ0の電圧が印加された時刻から、時間T
iの間に前記DC突入電圧V
iが前記電磁コイルに印加された後、前記電磁コイルを通って流れる電流である、突入電流I
i(V
i,T
i,R)と、
-- 前記電磁コイルを通る前記電流がほぼ0の電流から前記保持電流I
hになるのにかかる時間である、保持電流時間T
hと
を取得するステップと、
- 前記電磁コイルを通る前記電流を時間の関数として測定しながら、前記取得されたDC突入電圧V
iを前記電磁コイルに印加するステップと、
- 前記電磁コイルを通る前記電流がほぼ前記突入電流I
iの取得された値に到達するのにかかる時間である試験立ち上がり時間T
testを決定するステップと、
- T
raise,total=T
h+T
testとなるように、前記保持電流時間T
hと前記測定された試験立ち上がり時間T
testの合計として総立ち上がり時間T
raise,totalを計算するステップと、
- 前記総立ち上がり時間T
raise,totalが、測定の不確かさの範囲内で前記立ち上がり時間T
iにほぼ等しいかどうかを判定するステップであって、そうであれば、前記取得されたDC突入電圧V
iの前記電磁コイルへの印加により前記可動要素が移動したと結論付ける、ステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記アクチュエータはソレノイド・バルブであり、前記可動要素はプランジャ又はピストンである、請求項9に記載の低電力システム用のアクチュエータを診断する方法。
【請求項11】
前記ソレノイド・バルブは、散水システムの一部である、請求項9又は10に記載の低電力システム用のアクチュエータを診断する方法。
【請求項12】
ステップb)における前記電磁コイル及び前記可動要素を特徴付ける値の取得は、データ記憶媒体に記憶された1つ又は複数の値を読むステップを含む、請求項9から11までのいずれか一項に記載の低電力システム用のアクチュエータを診断する方法。
【請求項13】
ステップb)における前記電磁コイル及び前記可動要素を特徴付ける値の取得は、1つ又は複数の値を測定するステップを含む、請求項9から12までのいずれか一項に記載の低電力システム用のアクチュエータを診断する方法。
【請求項14】
前記方法は、
- 前記可動要素が移動したか否かをシステム又はユーザに報告するステップ
をさらに含む、請求項9から13までのいずれか一項に記載の低電力システム用のアクチュエータを診断する方法。
【請求項15】
ソレノイド及びピストンを備える散水バルブを制御するために、請求項1から6までのいずれか一項に記載された、可動要素及び電磁コイルを備えるアクチュエータを制御する方法の使用。
【請求項16】
散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを制御する方法であって、可動要素と、前記可動要素を電磁コイルの軸に沿って変位させるための磁場を生成するための前記電磁コイルとを備え、前記可動要素は、磁性材料を含み、前記アクチュエータは、能動状態及び受動状態を有し、前記可動要素は、前記アクチュエータが前記受動状態にあるときよりも、前記能動状態にあるときに前記電磁コイルに近くなり、前記能動状態は、前記電磁コイルにDC電圧を印加することによって得られ、
前記方法は、
1)前記電磁コイルを通って電流が流れるように、前記電磁コイルに第1のDC電圧を印加するステップであって、前記電流は、前記アクチュエータを前記受動状態から前記能動状態にもっていくのに十分である、ステップと、
2)前記第1のDC電圧よりも低いDC電圧を印加し、前記可動要素が移動するかどうかを判定し、前記アクチュエータを前記能動状態から前記受動状態のほうにもっていく、ステップと、
3)ステップ2)を反復し、前記アクチュエータが前記能動状態のままであるように前記可動要素が移動しない、前記第1のDC電圧よりも低いいくつかの第2のDC電圧を決定するステップと、
4)前記アクチュエータを前記能動状態に保つために、前記第2の電圧の少なくとも1つを選択して印加するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水システムにおいて使用するためのプランジャを有するソレノイド・バルブなどの、低電力システム用のアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子的に制御される散水システムは、通常、磁場を生成し、それによって、バルブを開放又は閉鎖する可動要素を操作するために、各々が電流を利用する多数のソレノイド・バルブを備える。このように、電力が、機械的な動力に変換される。
【0003】
プランジャ式ソレノイド・バルブでは、電磁コイルを通る電流は、プランジャを動かす磁場を生成する。プランジャの移動は、バルブを開放するか又は閉鎖するかのいずれかである。磁場がオンとなるとき、バルブが開放する場合は、バルブは「ノーマル・クローズ」と呼ばれるが、磁場がオンとなるとき、バルブが閉鎖する場合は、バルブは「ノーマル・オープン」と呼ばれる。
【0004】
散水システムでは、使用されるバルブは、ほとんどの時間に水の流れがないので、通常はノーマル・クローズのバルブである。それでも、散水のためには、磁場は、長期間にわたってオンでなければならず、これは、電流が電磁コイルを通って連続的に流れることを必要とする。低電力システムであっても、これは、時間の経過とともにかなりのエネルギー消費量に達する可能性がある。したがって、比較的小さい電流量を使用することが有利である。しかし、小さすぎる使用電流及び生成磁場は、プランジャを定位置に保持するには不十分であり、バルブを閉鎖させる。
【0005】
プランジャの移動は、電圧が印加される時間の関数として測定される電磁コイルを通る電流の曲線中のくぼみとして検出可能である場合がある。電圧の印加後、電磁コイルを通る電流は、定常状態電流に到達するまで増加し、プランジャが電磁コイルに向かって又は電磁コイル内に移動するとき、しばしば、電磁コイルを通る電流の低下が瞬間的に生じる。しかし、電流の低下は、検出するには小さすぎる場合があり、プランジャのこの移動検出を信頼できないものにする。
【0006】
プランジャの移動をより確実に検出することができれば、ソレノイド・バルブの動作及びその動作における誤差の検出をより確実に実現することができる。これにより、長期間にわたってバルブを開放したままにするのに必要な電流の最適化を改善することができる。
【0007】
したがって、ソレノイド・バルブなどのアクチュエータのエネルギー消費量を最適化する改善された方法が有利であり、さらに、ソレノイド・バルブなどのアクチュエータ内の可動要素の状態を判定するための改善された方法が有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ソレノイド・バルブなどの低電力システム用のアクチュエータ内の可動要素の状態を判定するための改善された方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、ソレノイド・バルブなどの低電力システム用のアクチュエータのエネルギー消費量の最適化のための改善された方法を提供することである。
【0010】
従来技術の上述した問題を解決する、従来技術の代替物を提供することを、本発明の目的とみなすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、上述の目的及びいくつかの他の目的は、本発明の第1の態様において、散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを制御する方法を提供することによって達成されることが意図される。アクチュエータは、可動要素と、可動要素を電磁コイルの軸に沿って変位させることができる磁場を生成するための電磁コイルとを備える。可動要素は、柔軟な磁性材料、すなわち、磁場によって容易に磁化されるが、磁場が除去されると磁化されたままにならない材料を含む。電磁コイルに電圧が印加されたとき、電流が電磁コイルを通って流れ、磁場を生成する。磁場が十分に強い場合、可動要素は、電磁コイルに向かって引っ張られる。したがって、アクチュエータは、能動状態及び受動状態を有し、可動要素は、アクチュエータが受動状態にあるときよりも、能動状態にあるときに電磁コイルに近い。
【0012】
低電力システム用のアクチュエータを制御する方法は、
- 電流が電磁コイルを通って流れるように電磁コイルにDC突入電圧(inrush voltage)Viを印加するステップであって、それにより、電磁コイルを通って流れる電流は、定常状態電流Isに到達するまで増加する、ステップと、
- 動作保持電圧Voperを最適化するステップであって、動作保持電圧Voperを最適化するステップは、
a)DC突入電圧Viよりも低い保持電圧Vhを印加するステップと、
b)DC突入電圧Viを電磁コイルに印加するステップと、
c)ステップb)におけるDC突入電圧Viの印加中に電磁コイルによって生成される磁場により、可動要素が受動状態から能動状態に移動したかどうかを判定するステップであって、可動要素が受動状態から能動状態に移動したかどうかを判定するステップは、
- 立ち上がり時間Tiを取得するステップであって、この立ち上がり時間は、電磁コイルを通る電流がほぼ0の電流から開始して突入電流Iiに到達するのにかかる時間であり、この突入電流は、定常状態電流Isにほぼ等しいか、又は定常状態電流よりも低い、ステップと、
- 保持電流Ihを取得するステップであって、保持電流Ihは、保持電圧Vhが電磁コイルに印加されたとき、電磁コイルを通る定常状態電流である、ステップと、
- 保持電流時間Thを取得するステップであって、保持電流時間Thは、電磁コイルに電圧が印加されたとき、電磁コイルを通る電流がほぼ0の電流から保持電流Ihになるのにかかる時間である、ステップと、
- 試験立ち上がり時間Ttestを測定するステップであって、試験立ち上がり時間Ttestは、電磁コイルを通る電流が保持電流Ihからほぼ突入電流Iiになるのにかかる時間である、ステップと、
- 保持電流時間Thと試験立ち上がり時間Ttestの合計が立ち上がり時間Tiにほぼ等しい場合、すなわち、測定の不確かさの範囲内で、Th+Ttest≒Tiである場合、可動要素が受動状態から能動状態に又は能動状態から受動状態に移動したと判定するステップと
を含む、ステップと、
d)DC突入電圧Viの後続の印加時に、可動要素が移動しなかったと判定された保持電圧Vhの1つ又は複数の値、及び場合によっては、可動要素が移動したと判定された保持電圧Vhの1つ又は複数の値を決定するためにステップa)からc)を反復するステップと、
e)DC突入電圧Viの後続の印加時に、可動要素が移動しなかったと判定された保持電圧Vhの最低値にほぼ等しいか又はそれよりも高い値を有するように動作保持電圧Voperを選択するステップと、
f)可動要素を前記能動状態に維持するために、動作保持電圧Voperを電磁コイルに印加するステップと
を含む、ステップと
を含む。
【0013】
アクチュエータを制御する方法に関して、電磁コイルに印加されるDC突入電圧Viは、可動要素を移動させるのに十分大きい磁場を生成するのに十分でなければならない。これを達成するのに妥当な電圧は、例えば、同様のアクチュエータにおける試験又は製品仕様からわかる。
【0014】
DC突入電圧Viが印加されたとき、電磁コイルを通る電流は、定常状態電流Is、すなわち、印加電圧及び温度などの電流に影響を及ぼすパラメータが変化しない限り、時間とともに大幅には変化しない電流に到達するまで増加する。
【0015】
一実施例では、低電力システム用のアクチュエータを制御する方法におけるステップe)は、DC突入電圧Viの後続の印加時に、可動要素が移動しなかったと判定された保持電圧Vhの最低値よりも約50%高くなるように動作保持電圧Voperを選択するステップをさらに含む。
【0016】
保持電流時間Thは、任意の適切な時間に測定され得る。その値は、本方法の別のステップで測定される場合、データ記憶媒体に記憶することができ、Thの値は、その後にデータ記憶媒体から読まれ得る。したがって、一実施例では、保持電流時間Thの取得は、データ記憶媒体に記憶された値を読むステップを含むが、別の実施例では、保持電流時間Thの取得は、保持電流時間Thを測定するステップを含む。
【0017】
一般に、例えば時間又は電流などの値を取得するとき、その値は、測定されるか、又はデータ記憶媒体から読まれ得る。
【0018】
一実施例では、本方法は、電磁コイルの抵抗値Rcoilを決定するステップをさらに含む。
【0019】
別の実施例では、電磁コイルの抵抗値は、オーム性、すなわち線形であると仮定される。電磁コイルに関して、印加電圧及び結果として生じる定常状態電流は、そのオーム抵抗値を計算するために使用される。
【0020】
一実施例では、アクチュエータはソレノイド・バルブであり、可動要素はプランジャ又はピストンである。
【0021】
さらなる実施例では、ソレノイド・バルブは散水システムの一部である。
【0022】
本発明の記載された目的及びいくつかの他の目的は、本発明の第2の態様において、散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを診断する方法を提供することによって達成されることが意図される。アクチュエータは、可動要素と、電磁コイルの軸に沿って可動要素を変位させるための磁場を生成するための電磁コイルとを備える。可動要素は、柔軟な磁性材料、すなわち、磁場によって容易に磁化されるが、磁場が除去されると磁化されたままにならない材料を含む。電磁コイルに電圧が印加されたとき、電流が電磁コイルを通って流れ、磁場を生成する。磁場が十分に強い場合、可動要素は、電磁コイルに向かって引っ張られる。したがって、アクチュエータは、能動状態及び受動状態を有し、可動要素は、アクチュエータが受動状態にあるときよりも、能動状態にあるときに電磁コイルに近い。一定のDC電圧である保持電圧Vhが、電磁コイルに印加される。低電力システム用のアクチュエータを診断する方法は、以下のステップ、すなわち、
- 電磁コイルを通る保持電流Ihを測定するステップであって、保持電流Ihは、保持電圧Vhが印加されたとき、電磁コイルを通って流れる定常状態電流である、ステップと、
- 電磁コイル及び可動要素を特徴付ける値、すなわち、
-- DC突入電圧Vi及び対応する立ち上がり時間Tiと、
-- DC突入電圧Vi、立ち上がり時間Ti、及び電磁コイルの抵抗値Rに依存し、電磁コイルにほぼ0の電圧が印加された時刻から、時間Tiの間にDC突入電圧Viが電磁コイルに印加された後、電磁コイルを通って流れる電流である、突入電流Ii(Vi,Ti,R)と、
-- 電磁コイルを通る電流がほぼ0の電流から保持電流Ihになるのにかかる時間である、保持電流時間Thと
を取得するステップと、
- 電磁コイルを通る電流を時間の関数として測定しながら、取得されたDC突入電圧Viを電磁コイルに印加するステップと、
- 電磁コイルを通る電流がほぼ突入電流Iiの取得された値に到達するのにかかる時間である試験立ち上がり時間Ttestを決定するステップと、
- Traise,total=Th+Ttestとなるように、保持電流時間Thと測定された試験立ち上がり時間Ttestの合計として総立ち上がり時間Traise,totalを計算するステップと、
- 総立ち上がり時間Traise,totalが、測定の不確かさの範囲内で立ち上がり時間Tiよりも大きいか又はほぼそれに等しいかを判定するステップであって、そうであれば、取得されたDC突入電圧Viの電磁コイルへの印加により可動要素が移動したことを報告する、ステップと
を含む。
【0023】
アクチュエータを診断する方法では、電磁コイルに印加されるDC突入電圧Viは、可動要素を移動させるのに十分大きい磁場を生成するのに十分でなければならない。これを達成するのに妥当な電圧は、例えば、このアクチュエータ若しくは同様のアクチュエータにおける試験又は製品仕様からわかる。
【0024】
一実施例では、アクチュエータはソレノイド・バルブであり、可動要素はプランジャ又はピストンである。
【0025】
さらなる実施例では、ソレノイド・バルブは、散水システムの一部である。
【0026】
一実施例では、ステップb)における電磁コイル及び可動要素を特徴付ける値の取得は、データ記憶媒体に記憶された1つ又は複数の値を読むステップを含む。
【0027】
別の実施例では、ステップb)における電磁コイル及び可動要素を特徴付ける値の取得は、1つ又は複数の値を測定するステップを含む。
【0028】
さらなる実施例では、本方法は、
- 可動要素が移動したか否かをシステム又はユーザに報告するステップ
をさらに含む。
【0029】
本発明はまた、散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを制御する方法に関し、このアクチュエータは、可動要素と、前記可動要素を電磁コイルの軸に沿って変位させるための磁場を生成するための前記電磁コイルとを備え、前記可動要素は磁性材料を含み、前記アクチュエータは、能動状態及び受動状態を有し、前記可動要素は、前記アクチュエータが前記受動状態にあるときよりも、前記アクチュエータが前記能動状態にあるときに前記電磁コイルに近くなり、前記能動状態は、前記電磁コイルにDC電圧を印加することによって得られ、
本方法は、
1)前記電磁コイルを通って電流が流れるように、前記電磁コイルに第1のDC電圧を印加するステップであって、前記電流は、アクチュエータを受動状態から能動状態にもっていくのに十分である、ステップと、
2)前記第1のDC電圧よりも低いDC電圧を印加し、可動要素が移動するかどうかを判定し、アクチュエータを能動状態から受動状態のほうにもっていく、ステップと、
3)ステップ2)を反復し、アクチュエータが能動状態のままであるように可動要素が移動しない、前記第1のDC電圧よりも低いいくつかの第2のDC電圧を決定するステップと、
4)アクチュエータを能動状態に保つために、第2の電圧の少なくとも1つを選択して印加するステップと
を含む。
【0030】
本方法は、ソレノイド・バルブなどのアクチュエータのエネルギー消費量を最適化するためのさらなる方法、及びさらに、ソレノイド・バルブなどのアクチュエータ内の可動要素の状態を判定するための改善された方法を提供する。
【0031】
本発明の記載された目的及びいくつかの他の目的は、本発明の第3の態様において、ソレノイド及びピストンを備える散水用バルブを制御するために、上述のように、可動要素及び電磁コイルを備えるアクチュエータを制御する方法の使用によって達成されることが意図される。
【0032】
次に、本発明による方法を添付の図に関してより詳細に説明する。図は、本発明を実施する1つの方法を示し、設定された添付の特許請求の範囲に含まれる他の考え得る実施例を限定するものと解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】ある期間中にソレノイド・バルブ内の電磁コイルを通る電流の実験測定を示す図であり、ここで、突入電圧が印加され、プランジャが移動し、その後、電圧はそれ以上印加されなかった。
【
図3】
図2に示される測定などの測定の概略グラフである。
【
図4】ソレノイド・バルブ内の電磁コイルを通る電流の実験測定を示し、最初に保持電圧が印加され、突入電圧が印加され、プランジャが移動し、その後、電圧はそれ以上印加されなかった。
【
図5】
図4に示される測定などの測定の概略グラフである。
【
図6a】立ち上がり時間T
iの実験測定を示す図である。一測定では、プランジャは移動することができない。
【
図6b】立ち上がり時間T
iの実験測定を示す図である。一測定では、プランジャは移動することができない。
【
図7】本発明による、低電力システム用のアクチュエータを制御する方法のフロー・チャートである。
【
図8】保持電圧V
hが最適化されているときの電磁コイルを通る電流対時間の概略グラフである。
【
図9】本発明による、低電力システム用のアクチュエータを診断する方法のフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、コネクタ・ボックス4に接続された制御可能な散水バルブ2を備える散水制御ユニットの概略図を示す。コネクタ・ボックス4内のソレノイド、すなわち電磁コイルは、プランジャを制御し、バルブが開放されているか、又は閉鎖されているかを判定する。電磁コイルを通して電流を流すことにより、コイルの軸に沿って磁場が生成される。プランジャは、柔軟な磁性材料を含み、十分大きい磁場が、コイルの軸に沿った方向においてプランジャをコイルのほうに引っ張り、バルブの状態に変化を起こす。ノーマル・クローズのバルブでは、プランジャの移動は、流体がパイプライン6内のバルブを通して流れるようにバルブを開放する。磁場が除去されると、プランジャは、「ノーマル」状態に戻り、すなわち、ノーマル・クローズのバルブでは、磁場の除去により、バルブが閉鎖される。
【0035】
多数のノーマル・クローズのソレノイド・バルブを備える散水システムでは、電流は、所与のバルブの電磁コイルを通して流され、そのバルブを開放する。所与のバルブを開放するのに必要な電流量、すなわちプランジャを移動させるのに十分大きい磁場を生成するのに必要な量は、既知であるか、又は実験的に決定され得る。
【0036】
電圧は、散水の継続時間の間、連続的に印加される必要がある。エネルギー及び費用を節約するために、ノーマル・クローズのバルブをその開放位置に維持するために、できる限り低い電流を使用することが有益である。電磁コイルへの突入電圧Viの印加によりバルブが開放されると、電圧は、保持電圧Vhまで低下し得る。保持電圧Vhは、十分大きい場合、散水が所望される期間にわたってバルブをその開放位置に維持する。
【0037】
電磁コイルを通る電流は、時間の関数として測定することができる。そのような測定の実例を
図2に示すが、この種の測定の一般化されたグラフを
図3に示す。
図2及び
図3に見られるように、突入電圧V
iが印加されたとき、電流は急激に上昇する。電磁コイルによって生成された磁場は、柔軟な磁性材料を含むプランジャを引っ張る。生成された磁場が十分大きいとき、プランジャにかかる引張力は、プランジャをコイルに向かって移動させるのに十分強い。プランジャが移動すると、コイル内に逆起電力が誘導され、コイルにかかる電圧の低下を引き起こす。これは、しばしば、プランジャが移動を終了するまで、コイルを通る電流の識別可能な降下を引き起こす。しかし、逆起電力の電流への影響は、
図2から
図5に示されたくぼみなどの電流の降下として検出できない場合があり、したがって、このような場合に、そのようなくぼみを使用してプランジャの移動を検出することを不可能にし、むしろ、電流は、よりゆっくりと上昇するだけである。
【0038】
コイルを通る電流は、その定常状態電流に到達するまで上昇し続ける。定常状態電流は、印加される電圧及び温度などの電流に影響を及ぼすパラメータが変化しない限り、時間とともに大幅には変化しない電流である。
図2に示された測定では、ある時間後に印加電圧が除去され、その結果、コイルを通る電流が降下する。プランジャの移動が認識可能なくぼみを引き起こすか、又は電流がよりゆっくりと上昇するだけであるかにかかわらず、コイルによって生成される磁場によってプランジャが移動する場合、電流がその定常状態値に到達するのにかかる時間は、より長くなる。
【0039】
図3には、電流の2つの値及びそれらの対応する時間が示されている。立ち上がり時間T
iは、電磁コイルを通る電流が、ほぼ0の電流から開始して、突入電流I
iに到達するのにかかる時間である。突入電流は、定常状態電流にほぼ等しいか、又は定常状態電流より低くてもよいが、好ましくは、プランジャが立ち上がり時間T
iの間に移動を終了したと仮定され得る(又は試験から知られ得る)ように選択されるべきである。
【0040】
図2に示された測定などの測定は、所与の印加電圧に対して、ほぼ0の電流から定常状態電流までの時間及び電流の対応する値(I,T)を記録するために使用することができる。この測定は、本明細書に提示されるように、プランジャの状態を判定することによって、バルブが所与の時間に開放されたか、又は閉鎖されたかを判定するための方法において使用され得る。
【0041】
図4は、
図2の測定と同様に、時間の関数としての電磁コイルを通る電流の測定を示す。しかし、
図4では、保持電圧V
hが測定の開始時に電磁コイルに印加され、その結果、保持電流I
hがコイルを通って流れている。保持電圧V
hは、突入電圧V
iがコイルに印加された後に印加されるが、ここで、突入電圧V
iの結果として生成された磁場は、プランジャをコイルに向かって移動させた。保持電流I
hによって生成された磁場が十分大きい場合、磁場は、プランジャの位置を維持し、すなわち、ノーマル・クローズのバルブは、開放位置のままである。しかし、磁場が十分には大きくない場合、プランジャは、電磁コイルから遠ざかり、したがって、バルブを閉鎖する。
【0042】
プランジャの状態を判定するために、突入電圧V
i(保持電圧よりも大きい)がコイルに印加され、これにより、
図4及び
図5に示されるように、コイルを通る電流が増加する。印加された突入電圧は、プランジャを移動させるのに十分であることがわかっており、印加された突入電圧に対して、ほぼ0の電流から定常状態電流までの時間及び電流のいくつかの対応する値(I,T)の測定が以前に記録されている。
【0043】
突入電圧V
iを印加すると、突入電圧V
iの印加から、電磁コイルを通る電流が突入電流I
iにほぼ等しくなる時間までの試験立ち上がり時間T
testが、
図5に示されるように測定される。印加された突入電圧に対する時間及び電流のいくつかの対応する値(I,T)の測定から、
図3を参照して、保持電流時間T
hがわかり、ここで、保持電流時間T
hは、突入電圧V
iがコイルに印加されたとき、電磁コイルを通る電流がほぼ0の電流から保持電流I
hになるのにかかる時間である。総立ち上がり時間T
raise,totalは、T
testとT
hの値の合計、すなわち、T
raise,total=T
test+T
hとして計算することができる。
【0044】
突入電圧V
iの印加の結果として生成された磁場によってプランジャがコイルに向かって移動した場合、これは、保持電圧V
hが、プランジャをコイルにより近いその位置に保持するのに十分な磁場を生成するのに十分には大きくなかったことを意味する。突入電圧V
iが印加されたときにプランジャが移動したかどうかは、総立ち上がり時間T
raise,totalを、
図3に示されるように測定された立ち上がり時間T
iと比較することによってわかり得る。T
raise,totalが、測定の不確かさの範囲内で立ち上がり時間T
iにほぼ等しい場合、突入電圧V
iが印加されたとき、プランジャは移動した。総立ち上がり時間T
raise,totalが立ち上がり時間T
iよりも著しく小さい場合、プランジャは移動しなかったが、これは、プランジャの移動によって誘導された逆起電力によってコイルを通る電流が「抑制」されなかったことを意味するからである。プランジャを移動させるのにエネルギーがまったく消費されないとき、プランジャが既に電磁コイルにより近いその位置にある状態の間に印加された突入電圧の場合のように、コイルを通る電流は、突入電流I
iの値により速く到達する。
【0045】
したがって、電磁コイルを通る電流が突入電流Iiに到達するのにかかる時間の測定は、保持電圧Vhがバルブを開放位置に維持するのに十分大きかったかどうかを判定するために使用することができる。バルブを開放のままにするのに十分大きく、エネルギーを節約するために小さい保持電圧は、突入電圧Viに続いて様々な保持電圧Vhを印加し、保持電圧がプランジャを保持するのに十分であったかどうかを判定することによって決定され得る。
【0046】
図6a及び
図6bには、プランジャが移動するとき(
図6a)と、プランジャが移動しないとき(
図6b)との立ち上がり時間T
iの差を示す、立ち上がり時間T
iの実験測定が示されている。これらの実験では、同じ突入電圧が印加されたが、プランジャは、
図6bに示される測定中には移動することができなかった。上述したように、立ち上がり時間T
iは、突入電圧の印加中にプランジャが移動する場合に増加し、これは、
図6a及び
図6bに示された実験データを比較すると、明確にわかる。
【0047】
本明細書に記載される方法の利用による保持電圧の最適化は、試験されるべき保持電圧V
hを選択するための様々な最適化方法を使用して行われてもよい。本方法のフロー・チャートを
図7に示す。
【0048】
図8には、保持電圧の様々な値が試験される間の、ソレノイド・バルブ内の電磁コイルを通る電流の一連の測定の概略図を示す。最初に、コイルを通る電流は、突入電圧V
iが印加されるまでほぼ0である。コイルを通る電流によって生成された磁場が十分大きいとき、プランジャは、コイルにより近いその位置に移動する。コイルを通る電流が増加する間、電流及び時間(I,T)の値は記録されてもよいが、これらの値は、以前の測定からわかっている場合もある。コイルを通る電流がほぼ0の電流から開始した場合に突入値I
iに到達するのにかかる時間は、立ち上がり時間T
iである。
【0049】
使用するのに適した突入電圧は、1つ又は複数の測定によって、又は、電磁コイルの周囲の測定温度に基づくチャートから記憶された抵抗値を読むなど、既知の値を参照することによって、電磁コイルの抵抗値を最初に決定することによって決定され得る。
【0050】
電流がその定常状態値I
sに到達した後、
図8に示すように、突入電圧V
iよりも低い第1の保持電圧V
h1が印加され、コイルを通る電流を新たな定常状態値I
h1まで減少させる。第1及び任意の後続の保持電圧V
hは、好ましくは、突入電圧V
iの1/20にほぼ等しいか、又はそれ未満になるように選択されてもよい。
【0051】
ソレノイド・バルブの起動の開始時に、電流及び時間(I,T)の値並びに立ち上がり時間Tiを測定することによって、バルブが開放している比較的短い期間の間の電磁コイル内の温度変化は、最小になる。これは、部分的には、通常、導電性材料として銅を含む、電磁コイルに非常にわずかな電力しか蓄積されないためである。これは、起動時に行われた測定が、起動中の測定と比較するために確実に使用することができることを意味する。
【0052】
第1の保持電圧V
h1がプランジャの位置を維持するのに十分であるかどうかを判定するために、突入電圧がコイルに再び印加され、試験立ち上がり時間T
test,
1が測定される。ある時間における突入電圧V
iの印加の後、第1の保持電圧V
h1がコイルに印加された場合、電流が突入値I
iに到達するのにかかる時間T
test,1は、コイルを通る電流がほぼ0である時間に突入電圧V
iが印加されるとき、より小さい。しかし、本発明者らは、電流及び時間の対応する値(I,T)の測定から、コイルを通る電流がほぼ0の電流から開始したときに値I
h1に到達するのにどれくらいの時間がかかるかを知っており、この保持電流時間は、
図8にT
h1で示される。
【0053】
次に、総立ち上がり時間Traise,totalは、Traise,total=Th1+Ttest,1となるように、保持電流時間Th1と測定された試験立ち上がり時間Ttest,1との合計として計算することができる。総立ち上がり時間Traise,totalが立ち上がり時間Tiにほぼ等しい場合、第1の保持電圧Vh1が印加された時間に突入電圧Viが印加されたとき、プランジャは移動し、第1の保持電圧Vh1は、プランジャを電磁コイルにより近いその位置に維持するには不十分であったと結論付けることができる。この場合、第2の保持電圧Vh2は、第1の保持電圧Vh1よりも高くなるように選択される。
【0054】
図8に示された概略図では、第1の保持電圧V
h1は、プランジャをコイルにより近い位置に保持するのに十分であると結論付けられ、第2のより低い保持電圧V
h2が印加される。上記と同じ方法は、総立ち上がり時間T
raise,totalを計算し、立ち上がり時間T
iと比較することができるように、試験立ち上がり時間T
test,
2を測定し、ある測定から保持電流時間T
h2を知ることによって、プランジャをコイルにより近い位置に保持するのに第2の保持電圧V
h2が十分であるかどうかを判定するために使用される。この手順は、プランジャが移動しなかったと判定された保持電圧V
hの1つ又は複数の値、及び場合によっては、プランジャが移動したと判定された保持電圧V
hの1つ又は複数の値を決定するために複数回、反復され得る。
【0055】
これに続いて、動作保持電圧Voperは、突入電圧Viの後続の印加時にプランジャが移動しなかったと判定された保持電圧Vhの最低値にほぼ等しいか、又はそれよりも高い電圧の値として選択することができる。次に、この動作保持電圧Voperは、プランジャをコイルに近いその位置に維持するために、突入電圧Viに続いて電磁コイルに印加され得る。実際には、プランジャをその位置に維持するために見出された最低の保持電圧を選択されるとは限らず、より高い値を選択されることがある。例えば、動作保持電圧Voperは、プランジャをコイルにより近いその位置に維持するために見出された保持電圧の最低値よりも50パーセント高くなるように選択されてもよい。それでも、エネルギー消費量の大幅な低減を実現することができる。試験の時間の条件下で実際に使用される突入電圧が十分すぎるほどあることを確実にするために、突入電圧Viのより低い値、例えば20%低い値が、突入、すなわちプランジャの移動をもたらすかどうかを試験することも関係している場合がある。
【0056】
DC突入電圧の後続の印加時にプランジャが移動しなかったと判定された少なくとも1つの保持電圧が決定される。場合によっては、プランジャが移動したと判定された保持電圧の1つ又は複数の値が決定されてもよい。これは、システム、試験される保持電圧、及びシステムの前述の情報に依存する。
【0057】
本明細書に開示された最適化のプロセスは、1秒以下ほどの少ない時間がかかり得る。プロセスを実行することができる速さに関する制限は、異なる電圧を印加する間に、システムが「追いつく」ための時間が許容されなければならないことである。これは、例えば、保持電圧と後続の突入電圧とを印加する間に、当業者には一般的な知識であるように、待機時間が組み込まれる。
【0058】
実際には、対応する立ち上がり時間値T
iを決定するために突入電流I
iとして、定常状態値I
s又は定常状態値I
iよりも低い電流を使用することを選択することができる。例えば、突入電流I
iは、定常状態電流I
sの80パーセントであり得る。電磁コイルを通る電流が突入電流値I
iに到達したときを判定するために、コンピュータ・アルゴリズムが使用される場合、コイルを通る電流が突入電圧に近い時間にプランジャが移動する可能性があり、これにより時間の関数としての電流の曲線にくぼみを生じるので、注意を払わなければならない。その場合、アルゴリズムは、くぼみのために、突入電流値に実際に到達するよりも大幅に早く到達すると判定する場合がある。これが起こる可能性を低減するために、アルゴリズムは、
図2及び
図4に示されたデータなどのデータを見るとき、「右から左」に突入電流に到達する時間を探索することが有利である。
【0059】
本方法は、散水システムで使用するためのソレノイド・バルブについて試験されており、開放バルブを維持するために本明細書に開示された方法を使用して決定される動作保持電圧の使用によって達成されるエネルギーの節約は、驚くほど大きいものであった。より多くのデコーダが起動されるほど、より多くのエネルギーが必要とされ、その際、システムはエネルギーに関してより制限を受ける。したがって、本明細書で開示される方法に従って行われる最適化により、各々のデコーダがより少ないエネルギーを使用しながら、より多くのデコーダの起動が可能になる。
【0060】
プランジャが移動することができない場合、すなわち、ソレノイド・バルブが不良である場合、又は使用される突入電圧Viが低すぎる場合、本方法は機能しない。その場合、その結果は、総立ち上がり時間が常に突入時間にほぼ等しいということになる。したがって、印加される保持電圧がどれほど低くても、プランジャを電磁コイルにより近いその位置に保持するのに十分であるかのように見えるが、実際には、立ち上がり時間Tiが測定されたとき、プランジャは移動しなかった。したがって、本方法は、ソレノイド・バルブが不良であるかどうかを判定するために使用することもできる。
【0061】
総立ち上がり時間T
raise,totalの計算及び既知の立ち上がり時間T
iとの比較は、アクチュエータを診断するために使用することもできる。この場合、本発明者らは、アクチュエータがその能動状態にあったかどうか、すなわち、保持電圧がコイルに印加された間に、プランジャなどのその可動要素が電磁コイルにより近いその位置にあったかどうかを判定することに関心がある。本発明者らは、これを本明細書に記載の方法によって判定し、それに基づいて、突入電圧V
iが印加されたときにプランジャが移動するかどうかを結論付ける。アクチュエータを診断する方法のフロー・チャートを
図9に示す。不良であるプランジャを除いて、印加された突入電圧V
iがプランジャを移動させるのに十分大きいとわかっている場合、プランジャが移動しなかったという判定は、アクチュエータがその能動状態にあったことを意味する。電磁コイルに印加された保持電圧が十分ではなく、したがって、アクチュエータがその受動状態にあった場合、本方法は、突入電圧V
iが印加されたときにプランジャが移動したことを示し、さらに、プランジャが不良でない場合、プランジャを電磁コイルにより近いその位置に維持するには低すぎることが知られている保持電圧を印加することによってプランジャを試験することができ、プランジャが電磁コイルにより近いその位置に保持されたと試験立ち上がり時間が示す場合、これが事実でないとわかっていても、プランジャは不良である。
【0062】
図9には、散水システムなどの低電力システム用のアクチュエータを診断する方法のフロー・チャートが示されている。アクチュエータは、可動要素及び電磁コイルを備える。散水システムでは、アクチュエータは、ソレノイド・バルブとすることができ、可動要素はプランジャ(ピストンとも呼ばれる)である。散水システムでは、ソレノイド・バルブは、通常、上述のようにノーマル・クローズのバルブである。電磁コイルに保持電圧V
hが印加されたとき、ソレノイド・バルブを診断する方法が使用され、バルブが開放しているかどうか、又は、バルブが不良であるかどうかを知るなど、バルブの状態を知ることが望ましい。
【0063】
電磁コイルがそれに保持電圧Vhを印加されるバルブを診断するために、電磁コイルを通る保持電流Ihが測定される。ある測定、又は以前に行われた測定から、電磁コイル及びプランジャを特徴付けるいくつかの値が取得される。これらの値は、突入電圧Vi、対応する立ち上がり時間Ti、突入電流Ii(Vi,Ti,R)、及び保持電流時間Thである。
【0064】
突入電流I
i(V
i,T
i,R)は、突入電圧V
i、立ち上がり時間T
i、及び電磁コイルの抵抗値Rに依存する。したがって、診断方法が実行されるときの電磁コイルの抵抗値は、突入電流I
iが測定されたときのコイルの抵抗値と同程度である必要がある。突入電流I
iは、電磁コイルにほぼ0の電圧が印加された時刻から、時間T
iの間に突入電圧V
iが電磁コイルに印加された後、電磁コイルを通って流れる電流である(
図3参照)。
【0065】
保持電流時間T
hは、時間の関数として電磁コイルを通る電流の測定から得られ、保持電流時間T
hは、電磁コイルを通る電流がほぼ0の電流から保持電流I
hになるのにかかる時間であり、保持電流I
hは、電磁コイルに保持電圧V
hが印加されたときに電磁コイルを通る定常状態電流である(
図3参照)。
【0066】
電磁コイルに突入電圧Viが印加され、コイルを通る電流が時間の関数として測定される。この測定から、電磁コイルを通る電流が突入電流Iiの取得された値に到達するのにかかる時間を決定することができ、この時間は、試験立ち上がり時間Ttestである。保持電流時間Th及び試験立ち上がり時間Ttestから、総立ち上がり時間Traise,totalをその2つの合計、すなわち、Traise,total=Th+Ttestとして計算することができる。
【0067】
試験立ち上がり時間Traise,totalが立ち上がり時間Tiにほぼ等しい場合、プランジャが移動し、したがって、バルブが閉鎖されるが、そのバルブがノーマル・クローズのバルブであれば、保持電圧Vhが印加されても、すなわち、印加された保持電圧Vhは、プランジャを電磁コイルにより近いその位置に保持するには不十分であったと結論付けることができる。
【0068】
散水システムに使用されるソレノイド・バルブの場合、ソレノイド・バルブは、比較的短い期間の間に起動される。その期間中に、プランジャを電磁コイルにより近いその位置に維持するために保持電圧Vhが印加され、その結果、バルブが開放し、水がバルブを通って流れる。上述の方法を使用すれば、その期間中に、突入電圧を印加することができ、バルブは能動的になり、計算された試験立ち上がり時間Traise,totalは、最初に記録された立ち上がり時間Tiよりも短くなければならない。そうでなければ、エラーが起こった。プランジャは、低すぎる保持電圧Vhのためにコイルにより近いその位置から遠ざかるか、又は、プランジャは、起動の開始時にスタックし、したがって、移動しなかったかのいずれかである。バルブを停止すべきとき、散水期間中にエラーが起こったかどうかを判定するために、散水の終了時に試験を実行することもできる。
【0069】
試験立ち上がり時間を立ち上がり時間と比較する方法は、可動要素が移動することができないような方法でアクチュエータが不良になったかどうかを試験するために使用されてもよい。突入電圧Viに対応する立ち上がり時間Ti及び突入電流Ii(Vi,Ti,R)はすべて、アクチュエータが正常に動作している場合に、測定からわからなければならない。立ち上がり時間の測定を(電磁コイルの抵抗値がほぼ同じであると仮定することができる条件下で)反復することによって、すなわち、電磁コイルを通る電流が突入電流Iiに到達するのにかかる時間を測定することによって、測定された立ち上がり時間は、以前に測定された立ち上がり時間とほぼ同じであるべきである。測定された立ち上がり時間が、以前に測定された立ち上がり時間よりも低い場合、可動要素は、新たな測定の間に移動せず、アクチュエータは、不良になったと結論付けることができる。
【0070】
この測定が、電磁コイルの抵抗値がほぼ同じであると仮定することができる条件下で記録されたデータと比較されなければならないことは、制約をもたらす。例えば、銅(Cu)の抵抗値は、室温付近で摂氏1度当たり約0.4%変化するので、比較するために以前の測定からデータを選択するときに注意を払わなければならない。
【0071】
これらの方法は、可動要素がプランジャであるノーマル・クローズのソレノイド・バルブに関して説明されてきたが、本方法は、何かを移動させ得る電磁コイルを備えるすべてのタイプの変換器に有用である。例えば、本方法は、電磁コイルによって生成される磁場によって爪が傾けられることによって起動されるリレーとともに使用されてもよい。
【0072】
これらの方法は、ソレノイド・バルブを制御及び/又は診断するためのアルゴリズムをもつコンピュータ化されたシステムを有する自動散水システムにおいて容易に実施されるのに適している。ソレノイド・バルブを動作させるデコーダ及び散水制御ユニットの設置は、突入電圧Viの可能な最大値を決定する。最も重要なパラメータは、制御ユニットの出力電圧及び電流制限、並びにデコーダとソレノイド・バルブとの間の配線抵抗値である。これらのパラメータのすべては、システムが実行されると、デコーダとソレノイドの個々のペアに関して知られているパラメータが使用可能になるように、アルゴリズム内で考慮に入れることができる。
【0073】
本発明を特定の実施例に関して説明してきたが、本発明は、どんな形であれ、提示された実例に限定されるものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、設定された添付の特許請求の範囲によって規定される。特許請求の範囲の文脈において、用語「含む(comprising)」又は「備える(comprises)」は、他の可能な要素もステップも除外しない。また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」などの参照に言及する場合、複数を除外するものと解釈されるべきではない。図に示される要素に関する特許請求の範囲における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載された個々の特徴は、場合によっては、有利に組み合わせることができ、異なる請求項におけるこれらの特徴への言及は、特徴の組合せが可能でないこと及び有利でないことを除外しない。
【符号の説明】
【0074】
Vi DC突入電圧/突入電圧
Ti 立ち上がり時間
Is 定常状態電流
Ii 突入電流
Voper 動作保持電圧
Vh 保持電圧
Ih 保持電流
Th 保持電流時間
Ttest 試験立ち上がり時間
Traise,total 総立ち上がり時間
Rcoil 電磁コイルの抵抗値
【国際調査報告】