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特表2022-525314広帯域性能を有するコンパクトな薄膜表面実装可能結合器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-12
(54)【発明の名称】広帯域性能を有するコンパクトな薄膜表面実装可能結合器
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/18 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
H01P5/18 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555218
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020021393
(87)【国際公開番号】W WO2020185560
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/817,647
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】マレク,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オニール,エイリノア
(72)【発明者】
【氏名】ニッシム,ロニット
(57)【要約】
表面実装可能結合器が、第1の表面と、第2の表面と、X方向の長さと、X方向に対して垂直なY方向の幅とを有するモノリシックベース基板を含む場合がある。モノリシックベース基板の第1の表面の上に、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含む複数のポートを形成してもよい。結合器は、第1の薄膜インダクタと、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタとを含んでもよい。薄膜回路が、第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続してもよい。薄膜回路は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装可能結合器であって、
第1の表面と、第2の表面と、X方向の長さと、前記X方向に対して垂直なY方向の幅とを有するモノリシックベース基板と、
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された複数のポートであって、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含む前記複数のポートと、
第1の薄膜インダクタと、
前記第1の薄膜インダクタに誘導結合され、前記入力ポートと前記出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタと、
前記第1の薄膜インダクタを前記結合ポートに電気的に接続する薄膜回路であって、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含む前記薄膜回路とを含む、表面実装可能結合器。
【請求項2】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、約50マイクロメートル未満の厚さを有する層を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項3】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜抵抗器を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項4】
前記薄膜抵抗器は窒化タンタルを含む、請求項3に記載の結合器。
【請求項5】
前記結合器は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に配置された誘電体層を含み、前記誘電体層は第1の表面と第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第2の表面は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に対向する、請求項1に記載の結合器。
【請求項6】
前記薄膜回路の少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の電極と、前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成された第2の電極とを含む薄膜キャパシタを含む、請求項5に記載の結合器。
【請求項7】
前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成されたカバー層をさらに含む、請求項5に記載の結合器。
【請求項8】
前記カバー層は酸窒化シリコンを含む、請求項7に記載の結合器。
【請求項9】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、第3の薄膜インダクタを含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項10】
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に配置された誘電体層であって、第1の表面と第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第2の表面は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に対向する、前記誘電体層と、
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の導電層と、前記誘電体層の第1の表面の上に形成された第2の導電層と、前記第1の導電層を前記第2の導電層に接続するビアとを含む第3の薄膜インダクタとをさらに含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項11】
前記第1のインダクタは、第1の方向に長い第1の導電層を含み、前記第2のインダクタは、前記第1の導電層と平行であって、前記第1の導電層から前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に、前記第1の導電層の少なくとも一部に沿ってほぼ均等な間隔で離隔した第2の導電層を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項12】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、第3の薄膜インダクタと薄膜キャパシタとを含み、前記第3の薄膜インダクタと前記薄膜キャパシタとは互いに並列に電気的に接続され、それぞれ前記第1の薄膜インダクタと前記結合ポートとの間に直列に電気的に接続された、請求項1に記載の結合器。
【請求項13】
前記結合器の幅は約1.2mm未満である、請求項1に記載の結合器。
【請求項14】
前記結合器の長さは約2mm未満である、請求項1に記載の結合器。
【請求項15】
前記結合器の占有面積は約3mm未満である、請求項1に記載の結合器。
【請求項16】
前記モノリシックベース基板はセラミック材料を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項17】
前記結合器の結合係数は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限と、前記下限より少なくとも2GHz大きい上限とを有する結合周波数範囲にわたって約4dB未満変動する、請求項1に記載の結合器。
【請求項18】
前記周波数範囲の前記下限は約2GHzである、請求項17に記載の結合器。
【請求項19】
表面実装可能結合器であって、
モノリシックベース基板と、
前記結合器を表面実装するために前記結合器の外側に沿って露出した少なくとも1つのポートと、
少なくとも1つの薄膜コンポーネントとを含み、
前記結合器の占有面積は約3mm未満であり、
前記結合器の結合係数は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限と、前記下限より少なくとも2GHz大きい上限とを有する結合周波数範囲にわたって約4dB未満変動する、表面実装可能結合器。
【請求項20】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜抵抗器を含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項21】
前記薄膜抵抗器は窒化タンタルを含む、請求項20に記載の結合器。
【請求項22】
前記モノリシックベース基板の第1の表面上に配置された誘電体層をさらに含み、前記誘電体層は第1の表面と第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第2の表面は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に対向する、請求項19に記載の結合器。
【請求項23】
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の電極と前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成された第2の電極とを含む薄膜キャパシタをさらに含む、請求項22に記載の結合器。
【請求項24】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の導電層と、前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成された第2の導電層と、前記第1の導電層を前記第2の導電層に接続するビアとを含む薄膜インダクタを含む、請求項22に記載の結合器。
【請求項25】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜キャパシタを含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項26】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜インダクタを含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項27】
前記少なくとも1つのポートは、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含み、
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、
第1の薄膜インダクタと、
前記第1の薄膜インダクタに誘導結合され、前記入力ポートと前記出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタとを含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項28】
前記第1の薄膜インダクタを前記結合ポートに電気的に接続する薄膜回路をさらに含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項29】
前記薄膜回路は薄膜抵抗器を含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項30】
前記薄膜回路は薄膜キャパシタを含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項31】
前記薄膜回路は第3の薄膜インダクタを含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項32】
前記第1の薄膜インダクタは、第1の方向に長い第1の導電層を含み、前記第2の薄膜インダクタは前記第1の導電層と平行であり、前記第1の導電層の少なくとも一部に沿って前記第1の方向に対して垂直な第2の方向にほぼ均等な間隔で前記第1の導電層から離隔された第2の導電層を含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項33】
前記モノリシックベース基板の前記第2の表面の上に形成されたカバー層をさらに含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項34】
前記カバー層は酸窒化シリコンを含む、請求項33に記載の結合器。
【請求項35】
前記結合器の長さは約2mm未満である、請求項19に記載の結合器。
【請求項36】
前記結合器の幅は約1mm未満である、請求項19に記載の結合器。
【請求項37】
前記モノリシックベース基板はセラミック材料を含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項38】
前記周波数範囲の前記下限は約2GHzである、請求項19に記載の結合器。
【請求項39】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、約50マイクロメートル未満の厚さを有する層を含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項40】
表面実装可能結合器を形成する方法であって、
第1の表面と、前記底面とは反対側の第2の表面とを有するモノリシックベース基板を設けるステップと、
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に複数のポートを形成するステップと、
第1の薄膜インダクタを形成するステップと、
前記第1の薄膜インダクタに誘導結合され、前記入力ポートと前記出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタを形成するステップと、
少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含み、前記第1の薄膜インダクタを前記結合ポートに電気的に接続する薄膜回路であって、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含む前記薄膜回路を形成するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月13日出願の米国仮特許出願第62/817,647号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薄膜結合器は、一般に、信号線にある電気信号を結合線で再現するために、直接電気接続なしにソース線を結合線に結合する。結合周波数範囲は、一般に、薄膜結合器が比較的均等な結合性能を示す周波数範囲と定義される。狭い結合周波数範囲は、このような薄膜結合器の有用性を制限する可能性がある。
【0003】
微細化の趨勢によって、微小な受動コンポーネントがますます望まれるようになっている。しかし、微細化により、そのような微小な結合器の表面実装の困難度が増している。したがって、当技術分野では、広い結合周波数範囲を有する、コンパクトな表面実装可能薄膜結合器が歓迎されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によると、表面実装可能結合器が、第1の表面と、第2の表面と、X方向の長さと、X方向に対して垂直なY方向の幅とを有するモノリシックベース基板を含んでもよい。モノリシックベース基板の第1の表面の上に、結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含む複数のポートを形成してもよい。結合器は、第1の薄膜インダクタと、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタとを含んでもよい。薄膜回路が、第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続してもよい。薄膜回路は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。
【0005】
本発明の別の実施形態によると、表面実装可能結合器が開示される。この結合器は、モノリシックベース基板と、結合器を表面実装するために結合器の外側に沿って露出した少なくとも1つのポートと、少なくとも1つの薄膜コンポーネントとを含んでもよい。結合器の占有面積(footprint)は約3mm未満である。結合器の結合係数は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限と、下限より少なくとも2GHz大きい上限とを有する結合周波数範囲にわたって、約4dB未満変動する場合がある。
【0006】
本発明の別の態様によると、表面実装可能結合器を形成する方法が、第1の表面と、底面とは反対側の第2の表面とを有する、モノリシックベース基板を設けることを含んでもよい。この方法は、モノリシックベース基板の第1の表面の上に複数のポートを形成することを含んでもよい。この方法は、第1の薄膜インダクタを形成することと、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタを形成することとを含んでもよい。この方法は、第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続する薄膜回路を形成することを含んでもよい。薄膜回路は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。
【0007】
本明細書には、当業者を対象とする本発明の最良の形態を含む本発明の完全で実施可能な開示が記載されている。本明細書では以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の態様によるコンパクトな薄膜表面実装可能結合器を示す概略図である。
図2】本開示の態様によるコンパクトな表面実装可能結合器の一実施形態を示す上面図である。
図3図2の結合器を示す側面図である。
図4】本開示の態様による表面実装可能結合器を形成する方法を示すフローチャートである。
図5】2GHzから8GHzまでに及ぶ周波数範囲にわたる、図2および図3の結合器の理論的に計算されたSパラメータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面全体を通して参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
コンパクトな表現実装可能パッケージにおいて、広い周波数範囲にわたって均等な結合を実現する薄膜結合器を提供する。結合器は、一般には、直接電気接続なしに2つの信号線の間の結合を実現する。
【0010】
この結合器は、一般には、モノリシックベース基板を含む。例えばグリッドアレイ型実装(例えば、ランドグリッドアレイ(LGA)型実装、ボールグリッドアレイ(BGA)型など)を使用して結合器を表面実装するために、結合器の外側に沿って少なくとも1つのポート(例えば、入力ポート、出力ポート、結合ポートおよび/または接地ポート)が露出してもよい。結合器は、入力ポートによって受信した入力信号に応答して(例えば接地ポートに対して)結合ポートで結合信号を生成するように構成された少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、実施形態によっては、結合器は、第1の薄膜インダクタと、第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタとを含んでもよい。第2の薄膜インダクタは、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートの間に電気的に接続されてもよい。薄膜回路が、第1の薄膜インダクタを結合ポートおよび/または接地ポートに電気的に接続する。
【0011】
実施形態によっては、薄膜結合器はコンパクトな場合がある。例えば、結合器は占有面積が小さく、したがって、プリント回路基板に実装するための空間がより少なくて済む。結合器は、約3mm未満、実施形態によっては約2.5mm未満、実施形態によっては約2.0mm未満、実施形態によっては約1.5mm未満、実施形態によっては、約1.0mm未満、実施形態によっては約0.8mm未満、実施形態によっては約0.6mm未満の占有面積を有する場合がある。
【0012】
結合器は、約2.0mm未満、実施形態によっては、約1.8mm未満、実施形態によっては約1.5mm未満、実施形態によっては約1.1mm未満の長さを有する場合がある。結合器の幅は、約1.2mm、実施形態によっては約1mm未満、実施形態によっては約0.8mm未満、実施形態によっては約0.7mm未満、実施形態によっては約0.6mm未満の場合がある。実施形態によっては、薄膜結合器は、1206、805、0504、0402、0303、0202またはこれより小さいEIAケースサイズを有する場合がある。
【0013】
この薄膜結合器は、結合周波数範囲にわたって均等な結合係数を示す場合がある。例えば、結合係数は、結合周波数範囲にわたって約4dB未満、実施形態によっては約3.8dB未満、実施形態によっては約3.6dB未満、実施形態によっては約3.4dB未満、実施形態によっては約3.2dB未満、実施形態によっては約3.1dB未満変動する場合がある。
【0014】
結合周波数範囲は、下限(例えば約2GHz)と、下限より少なくとも2GHz高い上限、実施形態によっては少なくとも約4.5GHz、実施形態によっては少なくとも約5GHz、実施形態によっては少なくとも約5.5Hz、実施形態によっては少なくとも約6GHz、実施形態によっては少なくとも約8GHz、実施形態によっては、少なくとも約10GHz、実施形態によっては少なくとも約12GHzの上限を有する場合がある。下限は、約250MHzから約6GHzまでの範囲、実施形態によっては約500MHzから約5GHzまで、実施形態によっては約750MHzから約2GHzまで、実施形態によっては、約1GHzから約3GHzまでの範囲の場合がある。
【0015】
上記で示すように、薄膜回路が第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続してもよい。薄膜回路は、1つまたは複数の薄膜抵抗器、1つまたは複数の薄膜インダクタ、および/または、1つまたは複数の薄膜キャパシタを含んでもよい。例えば、薄膜回路は、互いに並列に電気的に接続された第3の薄膜インダクタと薄膜キャパシタとを含んでもよい。第3の薄膜インダクタと薄膜キャパシタとは、第1の薄膜インダクタと結合ポートとの間に直列に電気的に接続されてもよい。
【0016】
実施形態によっては、薄膜素子のうちの1つまたは複数の薄膜素子の少なくとも一部が、モノリシックベース基板の表面の上に形成される場合がある誘電体層の上に形成されてもよい。誘電体層は、第1の表面と第2の表面とを有してもよい。誘電体層の第2の表面は、モノリシックベース基板の第1の表面に対向してもよい。しかし、誘電体層とモノリシックベース基板との間に1つまたは複数の中間層があってもよいことを理解されたい。
【0017】
本明細書で使用する場合、「の上に形成」とは、別の層と直接接触している層を指す場合がある。しかし、2つの層の間に中間層が形成されてもよい。また、底面に関して使用する場合、「上に形成」とはコンポーネントの外表面に対して使用する場合がある。したがって、底面「の上に形成」されている層は、その層がその上に形成されている層よりも、コンポーネントの外部により近い場合がある。
【0018】
薄膜インダクタは、モノリシックベース基板の第1の表面の上に形成された第1の導電層を含んでもよい。薄膜インダクタの第2の導電層が誘電体層の第1の表面の上に形成されてもよい。ビアが第1の導電層を第2の導電層に接続してもよい。
【0019】
別の実施例として、薄膜キャパシタは、少なくとも誘電体層の厚さだけ互いに離隔した(spaced apart)電極を含んでもよい。薄膜キャパシタは、モノリシックベース基板の第1の表面の上に形成された第1の電極と、誘電体層の第1の表面の上に形成された第2の電極とを含んでもよい。
【0020】
第1の薄膜インダクタによる第2の薄膜インダクタにおける信号の誘導を容易にするために、第1のインダクタと第2のインダクタの少なくとも一部が長くされ、互いに平行であってもよい。より詳細には、第1のインダクタは、X-Y面において第1の方向に長い第1の導電層を含んでもよい。第2のインダクタは、第1の導電層と平行であって、第1の導電層の少なくとも一部に沿ってほぼ均等な間隔で、第1の方向に対して垂直なX-Y面において第2の方向に第1の導電層から離隔した、第2の導電層を含んでもよい。間隔は、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルの範囲、実施形態によっては約5マイクロメートルから約80マイクロメートル、実施形態によっては約10マイクロメートルから約30マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0021】
実施形態によっては、誘電体層の第2の表面の上にカバー層が形成されてもよい。例えば、カバー層は、誘電体層の第2の表面上に直接形成してもよく、またはカバー層と誘電体層の間に1つまたは複数の中間層があってもよい。例えば、カバー層と誘電体層との間に金属中間層があってもよい。
【0022】
カバー層は、例えば後述するような適切なセラミック誘電材料を含んでもよい。カバー層は、約100マイクロメートルから約600マイクロメートル、実施形態によっては約125マイクロメートルから約500マイクロメートル、実施形態によっては約150マイクロメートルから約400マイクロメートル、実施形態によっては約175マイクロメートルから約300マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
【0023】
ベース基板、誘電体層、および/またはカバー層は、1つまたは複数の適切なセラミック材料を含んでもよい。適切な材料は概ね電気絶縁性であり、熱伝導性である。材料の例としては、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、ビスマスストロンチウムタンタレート、タンタル、ニオブ、このような物質の酸化物または窒化物、NPO(COG)、X7R、X7S、Z5U、Y5V製剤、ドープまたは非ドープPZT誘電体などの鉛系材料などがある。その他の例としては、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコン、炭化シリコン、シリカ、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、酸化ジルコニウム、これらの混合物、このような物質の酸化物および/または窒化物、または任意のその他の適切なセラミック材料がある。その他のセラミック材料には、チタン酸カルシウム(CaTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、低火度ガラス含有セラミック、およびその他のガラス結合材料がある。
【0024】
実施形態によっては、ベース基板、誘電体層および/またはカバー層のうちの1つまたは複数が、サファイヤまたはルビーを含んでもよい。サファイヤおよびルビーは、追加微量物質を含有する酸化アルミニウム(セラミック材料)の結晶形態である、コランダムの一種である。サファイヤを含む基板は、優れた電気絶縁、熱放散および高温安定性を含むいくつかの利点を示す場合がある。さらに、サファイヤは概ね透明であるため、結合器の内部フィーチャを目視検査することができ、それによって完成コンポーネントの品質の検査に付随する時間と困難度が低減される。
【0025】
ベース基板、誘電体層および/またはカバー層は、25℃の動作温度および1kHzの周波数で、ASTM D2149-13に従って測定された約30未満の誘電率、実施形態によっては約25未満、実施形態によっては約20未満、実施形態によっては、約15未満の誘電率を有する材料を含んでもよい。しかし、他の実施形態では、より高い周波数および/またはより微小なコンポーネントを実現するために、30より高い誘電率を有する材料を使用してもよい。例えば、そのような実施形態では、誘電率は、25℃の動作温度および1kHzの周波数で、ASTM D149に従って測定された、約30から約120の範囲またはそれ以上、実施形態によっては約50から100、実施形態によっては約70から90の範囲であってもよい。
【0026】
薄膜コンポーネントは、様々な適切な材料から形成されてもよい。例えば、薄膜抵抗器は抵抗層を含んでもよく、抵抗層は様々な適切な抵抗物質から形成されてもよい。例えば、抵抗層は、窒化タンタル(TaN)、ニッケルクロム(NiCr)、タンタルアルミナイド、クロム・シリコン、窒化チタン、チタン・タングステン、タンタル・タングステン、これらの物質の酸化物および/または窒化物、および/または任意のその他の適切な薄膜抵抗材料を含んでもよい。
【0027】
薄膜インダクタおよび/またはキャパシタは、導電層を含んでもよい。導電層は、様々な適切な導電性材料を含んでもよい。導電性材料の例としては、銅、ニッケル、金、スズ、鉛、パラジウム、銀、およびこれらの合金がある。しかし、薄膜製作に適した任意の導電性金属または非金属材料を使用してもよい。
【0028】
薄膜コンポーネントの層は、約50マイクロメートル以下、実施形態によっては20マイクロメートル以下、実施形態によっては10マイクロメートル以下、実施形態によっては5マイクロメートル以下の厚さを有してもよい。例えば、実施形態によっては、薄膜コンポーネントの厚さは、約0.05マイクロメートルから約50マイクロメートルの範囲、実施形態によっては約0.1マイクロメートルから約20マイクロメートル、実施形態によっては約0.3マイクロメートルから約10マイクロメートル、実施形態によっては約1マイクロメートルから約5マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0029】
薄膜コンポーネントは、様々な適切な減法プロセス、準加法プロセスまたは完全加法プロセスを使用して精密に形成してもよい。例えば、物理気相付着および/または化学気相付着を使用してもよい。例えば、実施形態によっては、薄膜コンポーネントは、物理気相付着の一種であるスパッタリングを使用して形成してもよい。しかし、例えばプラズマ化学気相付着(PECVD)、無電解めっき、電気めっきを含む様々なその他の適切なプロセスを使用してもよい。薄膜コンポーネントの目的の形状を作成するために、リソグラフィマスクとエッチングを使用してもよい。反応性ガスまたは非反応性ガス(例えば、アルゴン、窒素、酸素、塩素、ホウ素、三塩化物)のプラズマを使用したドライエッチング、および/またはウェットエッチングを含む、様々な適切なエッチング技法を使用してもよい。
【0030】
実施形態によっては、結合器は、薄膜コンポーネントのうちの1つまたは複数の薄膜コンポーネントと接触した少なくとも1つの接着層を含んでもよい。接着層は、薄膜コンポーネントと、ベース基板、誘電体層および/またはカバー層などの隣接層との接着を向上させるのに適した様々な材料であるか、またはそのような材料を含んでもよい。例として、接着層は、Ta、Cr、TaN、TiW、TiまたはTiNのうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、接着層は、タンタル(Ta)(例えばタンタルまたはその酸化物または窒化物)であるかまたはそれを含んでもよく、マイクロストリップとベース基板との接着を向上させるためにマイクロストリップとベース基板との間に形成してもよい。理論にとらわれずに、接着層の材料は、格子不整合および残留応力などの現象を克服するように選択されてもよい。
【0031】
接着層は、様々な適切な厚さを有してもよい。例えば、実施形態によっては、接着層の厚さは、約100オングストロームから約1000オングストロームまでの範囲、実施形態によっては約200オングストロームから約800オングストローム、実施形態によっては、約400オングストロームから約600オングストロームの範囲であってもよい。
【0032】
上記で示したように、結合器は、コンポーネントを表面実装するために結合器の底面に沿って露出したポートを使用して、プリント回路基板(PCB)などの実装面に表面実装するように構成してもよい。例えば、結合器は、ランドグリッドアレイ(LGA)型実装、ボールグリッドアレイ(BGA)型実装、または任意のその他の適切な種類のグリッドアレイ型表面実装などの、グリッドアレイ型表面実装用に構成されてもよい。したがって、ポートは、例えば表面実装デバイス(SMD)の場合のように、ベース基板の側面に沿って延びていなくてもよい。したがって、実施形態によっては、ベース基板および/または結合器の側面には導電材料がなくてもよい。
【0033】
実施形態によっては、結合器は、結合器の底面に沿って露出した第1の保護層、および/または結合器の上面に沿って露出した第2の保護層を含んでもよい。例えば、第1の保護層は、カバー層の第1の表面の上に形成されてもよい。実施形態によっては、第2の保護層は、モノリシックベース基板の第2の表面の上に形成されてもよい。第1の保護層および/または第2の保護層は、ポリマー材料(例えばポリイミド)、SiNO、Al、SiO、Si、ベンゾシクロブテンまたはガラスの層を含んでもよい。第1の保護層および/または第2の保護層は、約1マイクロメートルから約300マイクロメートル、実施形態によっては約5マイクロメートルから約200マイクロメートル、実施形態によっては、約10マイクロメートルから約100マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
I.例示の実施形態
図1に、本開示の態様による結合器100の概略図を示す。結合器100は、入力ポート102と、出力ポート104と、結合ポート106と、接地ポート108とを含んでもよい。第1のインダクタ107を第2のインダクタ109に誘導結合してもよい。第2のインダクタ109は、入力ポート102と出力ポート104との間に接続してもよい。
【0034】
薄膜回路111が、第1の薄膜インダクタ107を結合ポート106および/または接地ポート108に電気的に接続してもよい。薄膜回路111は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、薄膜回路111は、結合ポート106と接地ポート108との間に電気的に接続された第1のキャパシタ110を含んでもよい。薄膜回路111は、結合ポート106と接地ポート108との間に直列に接続された第2のキャパシタ112と第1の抵抗器114とを含んでもよい。第1のインダクタ107と接地ポート108の間に第2の抵抗器116を接続してもよい。第3の抵抗器122を、一端で第3のインダクタ120と第1のインダクタ107のそれぞれに接続し、他端で第1の抵抗器114と第2のキャパシタ112のそれぞれに接続してもよい。第3のインダクタ120は、第1のインダクタ107と結合ポート106の間に接続してもよい。
【0035】
図2に、本開示の態様による結合器200の一実施形態の上面図を示す。図3は、図2の結合器200の側面図である。結合器200は、例えば入力ポート202、出力ポート204、結合ポート206、および/または接地ポート208を含む、複数のポートを含んでもよい。
【0036】
実施形態によっては、結合器200は、全体として、図1に示すように構成されてもよい。第1のインダクタ207を第2のインダクタ209に誘導結合してもよい。第2のインダクタ209は、入力ポート202と出力ポート204の間に接続してもよい。
【0037】
薄膜回路211が第1の薄膜インダクタ207を結合ポート206に電気的に接続してもよい。薄膜回路211は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、薄膜回路211は、結合ポート206と接地ポート208との間に電気的に接続された第1のキャパシタ210を含んでもよい。薄膜回路211は、結合ポート206と接地ポート208との間に直列に接続された第2のキャパシタ212と第1の抵抗器214とを含んでもよい。薄膜回路211は、第1のインダクタ207と接地ポート208との間に接続された第2の抵抗器を含んでもよい。薄膜回路211は、第1の端部で第3のインダクタ220と第1のインダクタ207のそれぞれに接続され、第2の端部で第1の抵抗器214と第2のキャパシタ212のそれぞれに接続された、第3の抵抗器222を含んでもよい。第3のインダクタ220は第1のインダクタ207と結合ポート206の間に接続してもよい。
【0038】
結合器200は、モノリシックベース基板226を含んでもよく、モノリシックベース基板226はセラミック材料を含んでもよい。図2および図3を参照すると、モノリシックベース基板226は、第1の表面228と第2の表面230とを有してもよい。モノリシックベース基板226は、X方向234の長さ232を有してもよい。モノリシックベース基板226は、Y方向238の幅236(図2)と、X方向234およびY方向238に対して垂直なZ方向242の厚さ240(図3)を有してもよい。結合器200の長さ232は、約1.4mm未満であってもよい。結合器200の幅236は、約1mm未満であってもよい。
【0039】
モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に複数の薄膜コンポーネントを形成してもよい。例えば、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に、薄膜コンポーネントを含み、および/または、接続する、第1のパターン形成導電層243(図3)を形成してもよい。例えば、第1のパターン形成導電層は、第1の抵抗器214と第2の抵抗器216とを含んでもよい。第1の抵抗器214および/または第2の抵抗器216は、第1のパターン形成導電層243が第1の抵抗器214、第2の抵抗器216および/または第3の抵抗器222に接続されなくなるように抵抗層を露出させるために、抵抗層の上に形成される第1のパターン形成導電層243を選択的にエッチングすることによって形成してもよい。抵抗器214、216、222の抵抗層は、窒化タンタルなどの様々な適切な抵抗材料を含んでもよい。
【0040】
結合器200は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に誘電体層244を含んでもよい。誘電体層244は、第1の表面246と、第1の表面246とは反対側の第2の表面248とを含んでもよい。誘電体層244の第2の表面248は、モノリシックベース基板226の第1の表面228に対向してもよい。モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に、第2のパターン形成導電層249を形成してもよい。図2では、第1のパターン形成導電層243が第2のパターン形成導電層249よりも濃い陰影で表されている。第2のパターン形成導電層249は、例えば以下で説明するように、第2のキャパシタ212の第1の電極256、第1のインダクタ207の第2の導電層264、第2のインダクタ209の導電層270、および/または、第3のインダクタ220の第2の導電層252を含んでもよい。
【0041】
第3のインダクタ220は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に形成された第1の導電層250と、誘電体層244の第1の表面246の上に形成された第2の導電層252と、第1の導電層250を第2の導電層252に接続するビア254とを含んでもよい。第2の導電層252は、結合ポート206に接続してもよい。第1の導電層250は、第3の抵抗器222に接続してもよい。
【0042】
第1および第2の薄膜キャパシタ210、212は、誘電体層244によって離隔されたそれぞれの電極を含んでもよい。例えば、第2の薄膜キャパシタ212は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に形成された第1の電極256を含んでもよく、誘電体層244の第1の表面246の上に第2の電極258が形成されてもよい。第1の電極256は、接地ポート208に接続してもよい。第2の電極258は、第1の抵抗器214と第2の抵抗器222のそれぞれに接続してもよい。
【0043】
第1の薄膜キャパシタ210は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に形成された第1の電極260と、誘電体層244の第1の表面246の上に形成された第2の電極262を含んでもよい。第1の薄膜キャパシタ210の第1の電極260は、結合ポート206に接続してもよい。実施形態によっては、第1の薄膜キャパシタ210の第2の電極262は、第2の薄膜キャパシタ212の第2のキャパシタ258と一体に(例えば同じ導電層の一部として)形成されてもよい。
【0044】
第1のインダクタ207は、モノリシックベース基板226の第1の表面の上に形成された導電層264を含んでもよい。導電層264はループを形成してもよい。第1のインダクタ207は、パターン形成導電層243とともに導電層264と接続された第1のビア266と第2のビア268を含んでもよい。例えば、第1のビア266は、導電層264を第3の抵抗器222と、第3のインダクタ220の第1の導電層250とに接続してもよい。第2のビア268は、導電層264を第2の抵抗器216に接続してもよい。
【0045】
第2のインダクタ209は、入力ポート202と出力ポート204のそれぞれに接続された導電層270を含んでもよい。導電層270は、第1のインダクタ207に誘導結合されてもよい。第2のインダクタ209は、第1のインダクタ207の導電層264の少なくとも一部に沿って、モノリシックベース基板226の第1の表面228と平行なX-Y面において第1のインダクタ207からほぼ均一に離隔してもよい。例えば、第2のインダクタ209は、Y方向238に第1の間隔271だけ、および、X方向234に第2の間隔273だけ、第1のインダクタ207から離隔してもよい。第1の間隔271は、第2の間隔273とほぼ等しくてもよい。第1の間隔271は、インダクタ207、209のY方向238に長い部分にわたってほぼ均一であってもよい。第2の間隔273は、インダクタ218、224のX方向234に長い部分にわたってほぼ均一であってもよい。
【0046】
図3を参照すると、結合器200は、誘電体層244の第2の表面246の上に形成されたカバー層272を含んでもよい。カバー層272は、第1の表面274と第2の表面276とを有してもよい。カバー層272の第2の表面276は、誘電体層244の第1の表面246に対向してもよい。カバー層272は、酸窒化シリコンなどの様々な適切な材料を含んでもよい。
【0047】
実施形態によっては、カバー層272の第1の表面274の上に第1の保護層を形成してもよい。第1の保護層は、ポリイミドなどの様々な適切な材料を含んでもよい。
図3を参照すると、ポート202、204、206、208がカバー層272(および第1の保護層がある場合は第1の保護層も)通って延びてもよく、第1のパターン形成導電層243および/または第2のパターン形成導電層249に電気的に接続してもよい。より詳細には、図2を参照すると、結合ポート206は、第2のキャパシタ212の第2の導電層252と、第1のキャパシタ210の第1の電極260と、第1の抵抗器214のそれぞれに電気的に接続してもよい。入力ポート202と出力ポート204のそれぞれは、第2のインダクタ209の導電層270に電気的に接続してもよい。接地ポート208は、第2の抵抗器216と第2のキャパシタ212の第1の電極256のそれぞれに電気的に接続してもよい。
【0048】
ポート202、204、206、208は、結合器200をポート202、204、206、208を介して(例えばプリント回路に)実装し、電気的に接続することができるように、カバー層272の第1の表面274より突出してもよい。ポート202、204、206、208は、選択的エッチングに続いて、例えば電気めっきを使用した第1導電材料(例えば銅)の堆積によって形成されてもよい。ポート202、204、206、208は、スズ、ニッケルのめっきまたはこれらの混合物などの第1の導電性材料の上の1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0049】
図4を参照すると、本開示の態様は、表面実装可能結合器を形成する方法400を対象とする。全体として、ここでは方法400について、図1から図3を参照して上述した薄膜結合器200を参照しながら説明する。しかし、開示する方法400は、任意の適切な薄膜結合器で実装することもできることを理解されたい。さらに、図4では、例示と説明のために特定の順序で行われるステップを示しているが、本明細書で説明する方法は、いかなる特定の順序または配置にも限定されない。本明細書で示されている開示を使用する当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示する方法の様々なステップを様々な仕方で省略、並べ替え、組み合わせ、および/または改変することができることがわかるであろう。
【0050】
方法400は、(402)で、例えば図2および図3を参照しながら上述したような、第1の表面を有するモノリシックベース基板を設けることを含んでもよい。モノリシックベース基板は、例えば図2および図3を参照しながら上述したような、底面とは反対側の第2の表面と、x方向の長さと、x方向に対して垂直なy方向の幅とを有してもよく、幅は長さより小さい。
【0051】
方法400は、(404)で、モノリシックベース基板の第1の表面の上に複数のポートを形成することを含んでもよい。ポートは、例えば図2および図3を参照しながら上で説明したように、第1のパターン形成導電層および/または第2のパターン形成導電層と電気的に接触してもよい。
【0052】
方法400は、(406)で、複数の薄膜コンポーネントを形成することを含んでもよい。例えば図2および図3を参照しながら上述したように、例えば、複数の薄膜コンポーネントは、第1の薄膜インダクタ207と、第1の薄膜インダクタ207に誘導結合され、入力ポート202と出力ポート204との間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタ209とを含んでもよい。複数の薄膜コンポーネントは、例えば図2および図3を参照しながら上述したような薄膜回路211を含んでもよい。
II.シミュレーションデータ
図5は、2GHzから8GHzに及ぶ周波数範囲にわたる、本開示の態様による図2および図3の結合器200の理論的に計算されたSパラメータを表す。当技術分野で了解されているように、SパラメータはS(a,b)という形で添字を使用して表される。値aおよびbは、各Sパラメータが、ポートaで入力された信号の結果としてポートbで生じる信号を表すと理解することができるように、Sパラメータに関連するポート番号を示す。当技術分野で了解されているように、Sパラメータは一般に以下のように称される。
【0053】
【表1】
【0054】
図5を参照すると、結合係数S(3,1)は、2GHzで-21.968dB、4.854GHzで-19.007、8GHzで-20.736に等しい。したがって、この結合器は、広い結合周波数範囲にわたってきわめて均等な結合を示す。より詳細には、結合係数は2GHzから8GHzまでで約3dB変動する。したがって、この実施例では、結合周波数範囲は2GHzから8GHzまで6GHzにわたる。しかし、他の実施形態では、結合周波数範囲は、これより小さい周波数範囲(例えば、4GHz、3GHz、2GHzまたはそれ以下)またはより大きい周波数範囲(例えば、7GHz、8GHzまたはそれ以上)にわたる場合がある。さらに、結合周波数範囲は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限を有してもよい。
【0055】
図5でわかるように、この結合器は、優れた挿入損失特性S(1,2)を示す場合がある。例えば、挿入損失S(1,2)は、2GHzから8GHzまでで-0.564以上の場合がある。さらに、図5でわかるように、S(3,2)は2GHzから8GHzまでで-40.238以下の場合がある。
III.試験
結合係数、挿入損失、リターン損失およびその他のSパラメータ特性の試験を、信号源信号発生器(例えば1306ケースレー2400シリーズ電源測定ユニット(SMU)、例えばケースレー2410-C SMU)を使用して行ってもよい。例えば、信号源信号発生器を使用して、結合器の入力ポートに入力信号を印加し、結合器の結合ポートで結合信号を測定してもよい。
IV.用途
この結合器の入力および出力ポートを、信号源コンポーネントに動作可能に接続してもよい。この結合器の結合ポートおよび/または接地ポートを、(例えば、信号源コンポーネントのモニタリングまたは制御のために)別個のコンポーネントに結合信号を供給するために使用してもよい。例えば、結合線が、無線周波数送信機の増幅器に付随するフィードバック制御ループに結合信号を供給してもよい。
【0056】
本開示の結合器は、様々な用途で使用することができる。例えば、用途としては、WiFi、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)、無線ブロードバンド(WIBRO)、ロングタームエボルーション(LTE)、Bluetooth、および/または、低出力無線ゲートウェイ用途がある。その他の例としては、パワー検出、周波数検出、および電圧定在波比(VSWR)モニタリングがある。
【0057】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の上記およびその他の修正および変形が、当業者によって実施可能である。さらに、様々な実施形態の態様の全体または一部の両方を入れ替えてもよいことを理解されたい。さらに、当業者は、以上の説明が例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定することを意図していないことがわかるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月13日出願の米国仮特許出願第62/817,647号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薄膜結合器は、一般に、信号線にある電気信号を結合線で再現するために、直接電気接続なしにソース線を結合線に結合する。結合周波数範囲は、一般に、薄膜結合器が比較的均等な結合性能を示す周波数範囲と定義される。狭い結合周波数範囲は、このような薄膜結合器の有用性を制限する可能性がある。
【0003】
微細化の趨勢によって、微小な受動コンポーネントがますます望まれるようになっている。しかし、微細化により、そのような微小な結合器の表面実装の困難度が増している。したがって、当技術分野では、広い結合周波数範囲を有する、コンパクトな表面実装可能薄膜結合器が歓迎されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によると、表面実装可能結合器が、第1の表面と、第2の表面と、X方向の長さと、X方向に対して垂直なY方向の幅とを有するモノリシックベース基板を含んでもよい。モノリシックベース基板の第1の表面の上に、結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含む複数のポートを形成してもよい。結合器は、第1の薄膜インダクタと、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタとを含んでもよい。薄膜回路が、第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続してもよい。薄膜回路は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。
【0005】
本発明の別の実施形態によると、表面実装可能結合器が開示される。この結合器は、モノリシックベース基板と、結合器を表面実装するために結合器の外側に沿って露出した少なくとも1つのポートと、少なくとも1つの薄膜コンポーネントとを含んでもよい。結合器の占有面積は約3mm未満である。結合器の結合係数は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限と、下限より少なくとも2GHz大きい上限とを有する結合周波数範囲にわたって、約4dB未満変動する場合がある。
【0006】
本発明の別の態様によると、表面実装可能結合器を形成する方法が、第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面とを有する、モノリシックベース基板を設けることを含んでもよい。この方法は、モノリシックベース基板の第1の表面の上に複数のポートを形成することを含んでもよい。この方法は、第1の薄膜インダクタを形成することと、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタを形成することとを含んでもよい。この方法は、第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続する薄膜回路を形成することを含んでもよい。薄膜回路は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。
【0007】
本明細書には、当業者を対象とする本発明の最良の形態を含む本発明の完全で実施可能な開示が記載されている。本明細書では以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の態様によるコンパクトな薄膜表面実装可能結合器を示す概略図である。
図2】本開示の態様によるコンパクトな表面実装可能結合器の一実施形態を示す上面図である。
図3図2の結合器を示す側面図である。
図4】本開示の態様による表面実装可能結合器を形成する方法を示すフローチャートである。
図5】2GHzから8GHzまでに及ぶ周波数範囲にわたる、図2および図3の結合器の理論的に計算されたSパラメータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面全体を通して参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
コンパクトな表現実装可能パッケージにおいて、広い周波数範囲にわたって均等な結合を実現する薄膜結合器を提供する。結合器は、一般には、直接電気接続なしに2つの信号線の間の結合を実現する。
【0010】
この結合器は、一般には、モノリシックベース基板を含む。例えばグリッドアレイ型実装(例えば、ランドグリッドアレイ(LGA)型実装、ボールグリッドアレイ(BGA)型など)を使用して結合器を表面実装するために、結合器の外側に沿って少なくとも1つのポート(例えば、入力ポート、出力ポート、結合ポートおよび/または接地ポート)が露出してもよい。結合器は、入力ポートによって受信した入力信号に応答して(例えば接地ポートに対して)結合ポートで結合信号を生成するように構成された少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、実施形態によっては、結合器は、第1の薄膜インダクタと、第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタとを含んでもよい。第2の薄膜インダクタは、第1の薄膜インダクタに誘導結合され、入力ポートと出力ポートの間に電気的に接続されてもよい。薄膜回路が、第1の薄膜インダクタを結合ポートおよび/または接地ポートに電気的に接続する。
【0011】
実施形態によっては、薄膜結合器はコンパクトな場合がある。例えば、結合器は占有面積が小さく、したがって、プリント回路基板に実装するための空間がより少なくて済む。結合器は、約3mm未満、実施形態によっては約2.5mm未満、実施形態によっては約2.0mm未満、実施形態によっては約1.5mm未満、実施形態によっては、約1.0mm未満、実施形態によっては約0.8mm未満、実施形態によっては約0.6mm未満の占有面積を有する場合がある。
【0012】
結合器は、約2.0mm未満、実施形態によっては、約1.8mm未満、実施形態によっては約1.5mm未満、実施形態によっては約1.1mm未満の長さを有する場合がある。結合器の幅は、約1.2mm、実施形態によっては約1mm未満、実施形態によっては約0.8mm未満、実施形態によっては約0.7mm未満、実施形態によっては約0.6mm未満の場合がある。実施形態によっては、薄膜結合器は、1206、805、0504、0402、0303、0202またはこれより小さいEIAケースサイズを有する場合がある。
【0013】
この薄膜結合器は、結合周波数範囲にわたって均等な結合係数を示す場合がある。例えば、結合係数は、結合周波数範囲にわたって約4dB未満、実施形態によっては約3.8dB未満、実施形態によっては約3.6dB未満、実施形態によっては約3.4dB未満、実施形態によっては約3.2dB未満、実施形態によっては約3.1dB未満変動する場合がある。
【0014】
結合周波数範囲は、下限(例えば約2GHz)と、下限より少なくとも2GHz高い上限、実施形態によっては少なくとも約4.5GHz、実施形態によっては少なくとも約5GHz、実施形態によっては少なくとも約5.5Hz、実施形態によっては少なくとも約6GHz、実施形態によっては少なくとも約8GHz、実施形態によっては、少なくとも約10GHz、実施形態によっては少なくとも約12GHzの上限を有する場合がある。下限は、約250MHzから約6GHzまでの範囲、実施形態によっては約500MHzから約5GHzまで、実施形態によっては約750MHzから約2GHzまで、実施形態によっては、約1GHzから約3GHzまでの範囲の場合がある。
【0015】
上記で示すように、薄膜回路が第1の薄膜インダクタを結合ポートに電気的に接続してもよい。薄膜回路は、1つまたは複数の薄膜抵抗器、1つまたは複数の薄膜インダクタ、および/または、1つまたは複数の薄膜キャパシタを含んでもよい。例えば、薄膜回路は、互いに並列に電気的に接続された第3の薄膜インダクタと薄膜キャパシタとを含んでもよい。第3の薄膜インダクタと薄膜キャパシタとは、第1の薄膜インダクタと結合ポートとの間に直列に電気的に接続されてもよい。
【0016】
実施形態によっては、薄膜素子のうちの1つまたは複数の薄膜素子の少なくとも一部が、モノリシックベース基板の表面の上に形成される場合がある誘電体層の上に形成されてもよい。誘電体層は、第1の表面と第2の表面とを有してもよい。誘電体層の第2の表面は、モノリシックベース基板の第1の表面に対向してもよい。しかし、誘電体層とモノリシックベース基板との間に1つまたは複数の中間層があってもよいことを理解されたい。
【0017】
本明細書で使用する場合、「の上に形成」とは、別の層と直接接触している層を指す場合がある。しかし、2つの層の間に中間層が形成されてもよい。また、底面に関して使用する場合、「上に形成」とはコンポーネントの外表面に対して使用する場合がある。したがって、底面「の上に形成」されている層は、その層がその上に形成されている層よりも、コンポーネントの外部により近い場合がある。
【0018】
薄膜インダクタは、モノリシックベース基板の第1の表面の上に形成された第1の導電層を含んでもよい。薄膜インダクタの第2の導電層が誘電体層の第1の表面の上に形成されてもよい。ビアが第1の導電層を第2の導電層に接続してもよい。
【0019】
別の実施例として、薄膜キャパシタは、少なくとも誘電体層の厚さだけ互いに離隔した(spaced apart)電極を含んでもよい。薄膜キャパシタは、モノリシックベース基板の第1の表面の上に形成された第1の電極と、誘電体層の第1の表面の上に形成された第2の電極とを含んでもよい。
【0020】
第1の薄膜インダクタによる第2の薄膜インダクタにおける信号の誘導を容易にするために、第1のインダクタと第2のインダクタの少なくとも一部が長くされ、互いに平行であってもよい。より詳細には、第1のインダクタは、X-Y面において第1の方向に長い第1の導電層を含んでもよい。第2のインダクタは、第1の導電層と平行であって、第1の導電層の少なくとも一部に沿ってほぼ均等な間隔で、第1の方向に対して垂直なX-Y面において第2の方向に第1の導電層から離隔した、第2の導電層を含んでもよい。間隔は、約1マイクロメートル(micron)から約100マイクロメートルの範囲、実施形態によっては約5マイクロメートルから約80マイクロメートル、実施形態によっては約10マイクロメートルから約30マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0021】
実施形態によっては、誘電体層の第2の表面の上にカバー層が形成されてもよい。例えば、カバー層は、誘電体層の第2の表面上に直接形成してもよく、またはカバー層と誘電体層の間に1つまたは複数の中間層があってもよい。例えば、カバー層と誘電体層との間に金属中間層があってもよい。
【0022】
カバー層は、例えば後述するような適切なセラミック誘電材料を含んでもよい。カバー層は、約100マイクロメートルから約600マイクロメートル、実施形態によっては約125マイクロメートルから約500マイクロメートル、実施形態によっては約150マイクロメートルから約400マイクロメートル、実施形態によっては約175マイクロメートルから約300マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
【0023】
ベース基板、誘電体層、および/またはカバー層は、1つまたは複数の適切なセラミック材料を含んでもよい。適切な材料は概ね電気絶縁性であり、熱伝導性である。材料の例としては、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、ビスマスストロンチウムタンタレート、タンタル、ニオブ、このような物質の酸化物または窒化物、NPO(COG)、X7R、X7S、Z5U、Y5V製剤、ドープまたは非ドープPZT誘電体などの鉛系材料などがある。その他の例としては、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコン、炭化シリコン、シリカ、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、酸化ジルコニウム、これらの混合物、このような物質の酸化物および/または窒化物、または任意のその他の適切なセラミック材料がある。その他のセラミック材料には、チタン酸カルシウム(CaTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、低火度ガラス含有セラミック、およびその他のガラス結合材料がある。
【0024】
実施形態によっては、ベース基板、誘電体層および/またはカバー層のうちの1つまたは複数が、サファイヤまたはルビーを含んでもよい。サファイヤおよびルビーは、追加微量物質を含有する酸化アルミニウム(セラミック材料)の結晶形態である、コランダムの一種である。サファイヤを含む基板は、優れた電気絶縁、熱放散および高温安定性を含むいくつかの利点を示す場合がある。さらに、サファイヤは概ね透明であるため、結合器の内部フィーチャを目視検査することができ、それによって完成コンポーネントの品質の検査に付随する時間と困難度が低減される。
【0025】
ベース基板、誘電体層および/またはカバー層は、25℃の動作温度および1kHzの周波数で、ASTM D2149-13に従って測定された約30未満の誘電率、実施形態によっては約25未満、実施形態によっては約20未満、実施形態によっては、約15未満の誘電率を有する材料を含んでもよい。しかし、他の実施形態では、より高い周波数および/またはより微小なコンポーネントを実現するために、30より高い誘電率を有する材料を使用してもよい。例えば、そのような実施形態では、誘電率は、25℃の動作温度および1kHzの周波数で、ASTM D149に従って測定された、約30から約120の範囲またはそれ以上、実施形態によっては約50から100、実施形態によっては約70から90の範囲であってもよい。
【0026】
薄膜コンポーネントは、様々な適切な材料から形成されてもよい。例えば、薄膜抵抗器は抵抗層を含んでもよく、抵抗層は様々な適切な抵抗物質から形成されてもよい。例えば、抵抗層は、窒化タンタル(TaN)、ニッケルクロム(NiCr)、タンタルアルミナイド、クロム・シリコン、窒化チタン、チタン・タングステン、タンタル・タングステン、これらの物質の酸化物および/または窒化物、および/または任意のその他の適切な薄膜抵抗材料を含んでもよい。
【0027】
薄膜インダクタおよび/またはキャパシタは、導電層を含んでもよい。導電層は、様々な適切な導電性材料を含んでもよい。導電性材料の例としては、銅、ニッケル、金、スズ、鉛、パラジウム、銀、およびこれらの合金がある。しかし、薄膜製作に適した任意の導電性金属または非金属材料を使用してもよい。
【0028】
薄膜コンポーネントの層は、約50マイクロメートル以下、実施形態によっては20マイクロメートル以下、実施形態によっては10マイクロメートル以下、実施形態によっては5マイクロメートル以下の厚さを有してもよい。例えば、実施形態によっては、薄膜コンポーネントの厚さは、約0.05マイクロメートルから約50マイクロメートルの範囲、実施形態によっては約0.1マイクロメートルから約20マイクロメートル、実施形態によっては約0.3マイクロメートルから約10マイクロメートル、実施形態によっては約1マイクロメートルから約5マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0029】
薄膜コンポーネントは、様々な適切な減法プロセス、準加法プロセスまたは完全加法プロセスを使用して精密に形成してもよい。例えば、物理気相付着および/または化学気相付着を使用してもよい。例えば、実施形態によっては、薄膜コンポーネントは、物理気相付着の一種であるスパッタリングを使用して形成してもよい。しかし、例えばプラズマ化学気相付着(PECVD)、無電解めっき、電気めっきを含む様々なその他の適切なプロセスを使用してもよい。薄膜コンポーネントの目的の形状を作成するために、リソグラフィマスクとエッチングを使用してもよい。反応性ガスまたは非反応性ガス(例えば、アルゴン、窒素、酸素、塩素、ホウ素、三塩化物)のプラズマを使用したドライエッチング、および/またはウェットエッチングを含む、様々な適切なエッチング技法を使用してもよい。
【0030】
実施形態によっては、結合器は、薄膜コンポーネントのうちの1つまたは複数の薄膜コンポーネントと接触した少なくとも1つの接着層を含んでもよい。接着層は、薄膜コンポーネントと、ベース基板、誘電体層および/またはカバー層などの隣接層との接着を向上させるのに適した様々な材料であるか、またはそのような材料を含んでもよい。例として、接着層は、Ta、Cr、TaN、TiW、TiまたはTiNのうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、接着層は、タンタル(Ta)(例えばタンタルまたはその酸化物または窒化物)であるかまたはそれを含んでもよく、マイクロストリップとベース基板との接着を向上させるためにマイクロストリップとベース基板との間に形成してもよい。理論にとらわれずに、接着層の材料は、格子不整合および残留応力などの現象を克服するように選択されてもよい。
【0031】
接着層は、様々な適切な厚さを有してもよい。例えば、実施形態によっては、接着層の厚さは、約100オングストロームから約1000オングストロームまでの範囲、実施形態によっては約200オングストロームから約800オングストローム、実施形態によっては、約400オングストロームから約600オングストロームの範囲であってもよい。
【0032】
上記で示したように、結合器は、コンポーネントを表面実装するために結合器の底面に沿って露出したポートを使用して、プリント回路基板(PCB)などの実装面に表面実装するように構成してもよい。例えば、結合器は、ランドグリッドアレイ(LGA)型実装、ボールグリッドアレイ(BGA)型実装、または任意のその他の適切な種類のグリッドアレイ型表面実装などの、グリッドアレイ型表面実装用に構成されてもよい。したがって、ポートは、例えば表面実装デバイス(SMD)の場合のように、ベース基板の側面に沿って延びていなくてもよい。したがって、実施形態によっては、ベース基板および/または結合器の側面には導電材料がなくてもよい。
【0033】
実施形態によっては、結合器は、結合器の底面に沿って露出した第1の保護層、および/または結合器の上面に沿って露出した第2の保護層を含んでもよい。例えば、第1の保護層は、カバー層の第1の表面の上に形成されてもよい。実施形態によっては、第2の保護層は、モノリシックベース基板の第2の表面の上に形成されてもよい。第1の保護層および/または第2の保護層は、ポリマー材料(例えばポリイミド)、SiNO、Al、SiO、Si、ベンゾシクロブテンまたはガラスの層を含んでもよい。第1の保護層および/または第2の保護層は、約1マイクロメートルから約300マイクロメートル、実施形態によっては約5マイクロメートルから約200マイクロメートル、実施形態によっては、約10マイクロメートルから約100マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
I.例示の実施形態
図1に、本開示の態様による結合器100の概略図を示す。結合器100は、入力ポート102と、出力ポート104と、結合ポート106と、接地ポート108とを含んでもよい。第1のインダクタ107を第2のインダクタ109に誘導結合してもよい。第2のインダクタ109は、入力ポート102と出力ポート104との間に接続してもよい。
【0034】
薄膜回路111が、第1の薄膜インダクタ107を結合ポート106および/または接地ポート108に電気的に接続してもよい。薄膜回路111は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、薄膜回路111は、結合ポート106と接地ポート108との間に電気的に接続された第1のキャパシタ110を含んでもよい。薄膜回路111は、結合ポート106と接地ポート108との間に直列に接続された第2のキャパシタ112と第1の抵抗器114とを含んでもよい。第1のインダクタ107と接地ポート108の間に第2の抵抗器116を接続してもよい。第3の抵抗器122を、一端で第3のインダクタ120と第1のインダクタ107のそれぞれに接続し、他端で第1の抵抗器114と第2のキャパシタ112のそれぞれに接続してもよい。第3のインダクタ120は、第1のインダクタ107と結合ポート106の間に接続してもよい。
【0035】
図2に、本開示の態様による結合器200の一実施形態の上面図を示す。図3は、図2の結合器200の側面図である。結合器200は、例えば入力ポート202、出力ポート204、結合ポート206、および/または接地ポート208を含む、複数のポートを含んでもよい。
【0036】
実施形態によっては、結合器200は、全体として、図1に示すように構成されてもよい。第1の薄膜インダクタ207を第2の薄膜インダクタ209に誘導結合してもよい。第2の薄膜インダクタ209は、入力ポート202と出力ポート204の間に接続してもよい。
【0037】
薄膜回路211が第1の薄膜インダクタ207を結合ポート206に電気的に接続してもよい。薄膜回路211は、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、薄膜回路211は、結合ポート206と接地ポート208との間に電気的に接続された第1の薄膜キャパシタ210を含んでもよい。薄膜回路211は、結合ポート206と接地ポート208との間に直列に接続された第2の薄膜キャパシタ212と第1の抵抗器214とを含んでもよい。薄膜回路211は、第1の薄膜インダクタ207と接地ポート208との間に接続された第2の抵抗器を含んでもよい。薄膜回路211は、第1の端部で第3のインダクタ220と第1の薄膜インダクタ207のそれぞれに接続され、第2の端部で第1の抵抗器214と第2の薄膜キャパシタ212のそれぞれに接続された、第3の抵抗器222を含んでもよい。第3のインダクタ220は第1の薄膜インダクタ207と結合ポート206の間に接続してもよい。
【0038】
結合器200は、モノリシックベース基板226を含んでもよく、モノリシックベース基板226はセラミック材料を含んでもよい。図2および図3を参照すると、モノリシックベース基板226は、第1の表面228と第2の表面230とを有してもよい。モノリシックベース基板226は、X方向234の長さ232を有してもよい。モノリシックベース基板226は、Y方向238の幅236(図2)と、X方向234およびY方向238に対して垂直なZ方向242の厚さ240(図3)を有してもよい。結合器200の長さ232は、約1.4mm未満であってもよい。結合器200の幅236は、約1mm未満であってもよい。
【0039】
モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に複数の薄膜コンポーネントを形成してもよい。例えば、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に、薄膜コンポーネントを含み、および/または、接続する、第1のパターン形成導電層243(図3)を形成してもよい。例えば、第1のパターン形成導電層は、第1の抵抗器214と第2の抵抗器216とを含んでもよい。第1の抵抗器214および/または第2の抵抗器216は、第1のパターン形成導電層243が第1の抵抗器214、第2の抵抗器216および/または第3の抵抗器222に接続されなくなるように抵抗層を露出させるために、抵抗層の上に形成される第1のパターン形成導電層243を選択的にエッチングすることによって形成してもよい。抵抗器214、216、222の抵抗層は、窒化タンタルなどの様々な適切な抵抗材料を含んでもよい。
【0040】
結合器200は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に誘電体層244を含んでもよい。誘電体層244は、第1の表面246と、第1の表面246とは反対側の第2の表面248とを含んでもよい。誘電体層244の第2の表面248は、モノリシックベース基板226の第1の表面228に対向してもよい。モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に、第2のパターン形成導電層249を形成してもよい。図2では、第1のパターン形成導電層243が第2のパターン形成導電層249よりも濃い陰影で表されている。第2のパターン形成導電層249は、例えば以下で説明するように、第2の薄膜キャパシタ212の第1の電極256、第1の薄膜インダクタ207の第2の導電層264、第2の薄膜インダクタ209の導電層270、および/または、第3のインダクタ220の第2の導電層252を含んでもよい。
【0041】
第3のインダクタ220は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に形成された第1の導電層250と、誘電体層244の第1の表面246の上に形成された第2の導電層252と、第1の導電層250を第2の導電層252に接続するビア254とを含んでもよい。第2の導電層252は、結合ポート206に接続してもよい。第1の導電層250は、第3の抵抗器222に接続してもよい。
【0042】
第1および第2の薄膜キャパシタ210、212は、誘電体層244によって離隔されたそれぞれの電極を含んでもよい。例えば、第2の薄膜キャパシタ212は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に形成された第1の電極256を含んでもよく、誘電体層244の第1の表面246の上に第2の電極258が形成されてもよい。第1の電極256は、接地ポート208に接続してもよい。第2の電極258は、第1の抵抗器214と第2の抵抗器222のそれぞれに接続してもよい。
【0043】
第1の薄膜キャパシタ210は、モノリシックベース基板226の第1の表面228の上に形成された第1の電極260と、誘電体層244の第1の表面246の上に形成された第2の電極262を含んでもよい。第1の薄膜キャパシタ210の第1の電極260は、結合ポート206に接続してもよい。実施形態によっては、第1の薄膜キャパシタ210の第2の電極262は、第2の薄膜キャパシタ212の第2の電極258と一体に(例えば同じ導電層の一部として)形成されてもよい。
【0044】
第1の薄膜インダクタ207は、モノリシックベース基板226の第1の表面の上に形成された導電層264を含んでもよい。導電層264はループを形成してもよい。第1の薄膜インダクタ207は、パターン形成導電層243とともに導電層264と接続された第1のビア266と第2のビア268を含んでもよい。例えば、第1のビア266は、導電層264を第3の抵抗器222と、第3のインダクタ220の第1の導電層250とに接続してもよい。第2のビア268は、導電層264を第2の抵抗器216に接続してもよい。
【0045】
第2の薄膜インダクタ209は、入力ポート202と出力ポート204のそれぞれに接続された導電層270を含んでもよい。導電層270は、第1の薄膜インダクタ207に誘導結合されてもよい。第2の薄膜インダクタ209は、第1の薄膜インダクタ207の導電層264の少なくとも一部に沿って、モノリシックベース基板226の第1の表面228と平行なX-Y面において第1の薄膜インダクタ207からほぼ均一に離隔してもよい。例えば、第2の薄膜インダクタ209は、Y方向238に第1の間隔271だけ、および、X方向234に第2の間隔273だけ、第1の薄膜インダクタ207から離隔してもよい。第1の間隔271は、第2の間隔273とほぼ等しくてもよい。第1の間隔271は、薄膜インダクタ207、209のY方向238に長い部分にわたってほぼ均一であってもよい。第2の間隔273は、インダクタ218、224のX方向234に長い部分にわたってほぼ均一であってもよい。
【0046】
図3を参照すると、結合器200は、誘電体層244の第2の表面248の上に形成されたカバー層272を含んでもよい。カバー層272は、第1の表面274と第2の表面276とを有してもよい。カバー層272の第2の表面276は、誘電体層244の第1の表面246に対向してもよい。カバー層272は、酸窒化シリコンなどの様々な適切な材料を含んでもよい。
【0047】
実施形態によっては、カバー層272の第1の表面274の上に第1の保護層を形成してもよい。第1の保護層は、ポリイミドなどの様々な適切な材料を含んでもよい。
図3を参照すると、ポート202、204、206、208がカバー層272(および第1の保護層がある場合は第1の保護層も)通って延びてもよく、第1のパターン形成導電層243および/または第2のパターン形成導電層249に電気的に接続してもよい。より詳細には、図2を参照すると、結合ポート206は、第2の薄膜キャパシタ212の第2の導電層252と、第1の薄膜キャパシタ210の第1の電極260と、第1の抵抗器214のそれぞれに電気的に接続してもよい。入力ポート202と出力ポート204のそれぞれは、第2の薄膜インダクタ209の導電層270に電気的に接続してもよい。接地ポート208は、第2の抵抗器216と第2の薄膜キャパシタ212の第1の電極256のそれぞれに電気的に接続してもよい。
【0048】
ポート202、204、206、208は、結合器200をポート202、204、206、208を介して(例えばプリント回路に)実装し、電気的に接続することができるように、カバー層272の第1の表面274より突出してもよい。ポート202、204、206、208は、選択的エッチングに続いて、例えば電気めっきを使用した第1導電材料(例えば銅)の堆積によって形成されてもよい。ポート202、204、206、208は、スズ、ニッケルのめっきまたはこれらの混合物などの第1の導電性材料の上の1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0049】
図4を参照すると、本開示の態様は、表面実装可能結合器を形成する方法400を対象とする。全体として、ここでは方法400について、図1から図3を参照して上述した薄膜結合器200を参照しながら説明する。しかし、開示する方法400は、任意の適切な薄膜結合器で実装することもできることを理解されたい。さらに、図4では、例示と説明のために特定の順序で行われるステップを示しているが、本明細書で説明する方法は、いかなる特定の順序または配置にも限定されない。本明細書で示されている開示を使用する当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示する方法の様々なステップを様々な仕方で省略、並べ替え、組み合わせ、および/または改変することができることがわかるであろう。
【0050】
方法400は、(402)で、例えば図2および図3を参照しながら上述したような、第1の表面を有するモノリシックベース基板を設けることを含んでもよい。モノリシックベース基板は、例えば図2および図3を参照しながら上述したような、第1の表面とは反対側の第2の表面と、x方向の長さと、x方向に対して垂直なy方向の幅とを有してもよく、幅は長さより小さい。
【0051】
方法400は、(404)で、モノリシックベース基板の第1の表面の上に複数のポートを形成することを含んでもよい。ポートは、例えば図2および図3を参照しながら上で説明したように、第1のパターン形成導電層および/または第2のパターン形成導電層と電気的に接触してもよい。
【0052】
方法400は、(406)で、複数の薄膜コンポーネントを形成することを含んでもよい。例えば図2および図3を参照しながら上述したように、例えば、複数の薄膜コンポーネントは、第1の薄膜インダクタ207と、第1の薄膜インダクタ207に誘導結合され、入力ポート202と出力ポート204との間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタ209とを含んでもよい。複数の薄膜コンポーネントは、例えば図2および図3を参照しながら上述したような薄膜回路211を含んでもよい。
II.シミュレーションデータ
図5は、2GHzから8GHzに及ぶ周波数範囲にわたる、本開示の態様による図2および図3の結合器200の理論的に計算されたSパラメータを表す。当技術分野で了解されているように、SパラメータはS(a,b)という形で添字を使用して表される。値aおよびbは、各Sパラメータが、ポートaで入力された信号の結果としてポートbで生じる信号を表すと理解することができるように、Sパラメータに関連するポート番号を示す。当技術分野で了解されているように、Sパラメータは一般に以下のように称される。
【0053】
【表1】
図5を参照すると、結合係数S(3,1)は、2GHzで-21.968dB、4.854GHzで-19.007、8GHzで-20.736に等しい。したがって、この結合器は、広い結合周波数範囲にわたってきわめて均等な結合を示す。より詳細には、結合係数は2GHzから8GHzまでで約3dB変動する。したがって、この実施例では、結合周波数範囲は2GHzから8GHzまで6GHzにわたる。しかし、他の実施形態では、結合周波数範囲は、これより小さい周波数範囲(例えば、4GHz、3GHz、2GHzまたはそれ以下)またはより大きい周波数範囲(例えば、7GHz、8GHzまたはそれ以上)にわたる場合がある。さらに、結合周波数範囲は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限を有してもよい。
【0054】
図5でわかるように、この結合器は、優れた挿入損失特性S(1,2)を示す場合がある。例えば、挿入損失S(1,2)は、2GHzから8GHzまでで-0.564以上の場合がある。さらに、図5でわかるように、S(3,2)は2GHzから8GHzまでで-40.238以下の場合がある。
III.試験
結合係数、挿入損失、リターン損失およびその他のSパラメータ特性の試験を、信号源信号発生器(例えば1306ケースレー2400シリーズ電源測定ユニット(SMU)、例えばケースレー2410-C SMU)を使用して行ってもよい。例えば、信号源信号発生器を使用して、結合器の入力ポートに入力信号を印加し、結合器の結合ポートで結合信号を測定してもよい。
IV.用途
この結合器の入力および出力ポートを、信号源コンポーネントに動作可能に接続してもよい。この結合器の結合ポートおよび/または接地ポートを、(例えば、信号源コンポーネントのモニタリングまたは制御のために)別個のコンポーネントに結合信号を供給するために使用してもよい。例えば、結合線が、無線周波数送信機の増幅器に付随するフィードバック制御ループに結合信号を供給してもよい。
【0055】
本開示の結合器は、様々な用途で使用することができる。例えば、用途としては、WiFi、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)、無線ブロードバンド(WIBRO)、ロングタームエボルーション(LTE)、Bluetooth、および/または、低出力無線ゲートウェイ用途がある。その他の例としては、パワー検出、周波数検出、および電圧定在波比(VSWR)モニタリングがある。
【0056】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の上記およびその他の修正および変形が、当業者によって実施可能である。さらに、様々な実施形態の態様の全体または一部の両方を入れ替えてもよいことを理解されたい。さらに、当業者は、以上の説明が例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定することを意図していないことがわかるであろう。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装可能結合器であって、
第1の表面と、第2の表面と、X方向の長さと、前記X方向に対して垂直なY方向の幅とを有するモノリシックベース基板と、
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された複数のポートであって、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含む前記複数のポートと、
第1の薄膜インダクタと、
前記第1の薄膜インダクタに誘導結合され、前記入力ポートと前記出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタと、
前記第1の薄膜インダクタを前記結合ポートに電気的に接続する薄膜回路であって、少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含む前記薄膜回路とを含む、表面実装可能結合器。
【請求項2】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、約50マイクロメートル未満の厚さを有する層を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項3】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜抵抗器を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項4】
前記薄膜抵抗器は窒化タンタルを含む、請求項3に記載の結合器。
【請求項5】
前記結合器は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に配置された誘電体層を含み、前記誘電体層は第1の表面と第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第2の表面は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に対向する、請求項1に記載の結合器。
【請求項6】
前記薄膜回路の少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の電極と、前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成された第2の電極とを含む薄膜キャパシタを含む、請求項5に記載の結合器。
【請求項7】
前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成されたカバー層をさらに含む、請求項5に記載の結合器。
【請求項8】
前記カバー層は酸窒化シリコンを含む、請求項7に記載の結合器。
【請求項9】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、第3の薄膜インダクタを含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項10】
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に配置された誘電体層であって、第1の表面と第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第2の表面は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に対向する、前記誘電体層と、
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の導電層と、前記誘電体層の第1の表面の上に形成された第2の導電層と、前記第1の導電層を前記第2の導電層に接続するビアとを含む第3の薄膜インダクタとをさらに含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項11】
前記第1のインダクタは、第1の方向に長い第1の導電層を含み、前記第2のインダクタは、前記第1の導電層と平行であって、前記第1の導電層から前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に、前記第1の導電層の少なくとも一部に沿ってほぼ均等な間隔で離隔した第2の導電層を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項12】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、第3の薄膜インダクタと薄膜キャパシタとを含み、前記第3の薄膜インダクタと前記薄膜キャパシタとは互いに並列に電気的に接続され、それぞれ前記第1の薄膜インダクタと前記結合ポートとの間に直列に電気的に接続された、請求項1に記載の結合器。
【請求項13】
前記結合器の幅は約1.2mm未満である、請求項1に記載の結合器。
【請求項14】
前記結合器の長さは約2mm未満である、請求項1に記載の結合器。
【請求項15】
前記結合器の占有面積は約3mm未満である、請求項1に記載の結合器。
【請求項16】
前記モノリシックベース基板はセラミック材料を含む、請求項1に記載の結合器。
【請求項17】
前記結合器の結合係数は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限と、前記下限より少なくとも2GHz大きい上限とを有する結合周波数範囲にわたって約4dB未満変動する、請求項1に記載の結合器。
【請求項18】
前記周波数範囲の前記下限は約2GHzである、請求項17に記載の結合器。
【請求項19】
表面実装可能結合器であって、
モノリシックベース基板と、
前記結合器を表面実装するために前記結合器の外側に沿って露出した少なくとも1つのポートと、
少なくとも1つの薄膜コンポーネントとを含み、
前記結合器の占有面積は約3mm未満であり、
前記結合器の結合係数は、約250MHzから約6GHzまでの範囲の下限と、前記下限より少なくとも2GHz大きい上限とを有する結合周波数範囲にわたって約4dB未満変動する、表面実装可能結合器。
【請求項20】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜抵抗器を含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項21】
前記薄膜抵抗器は窒化タンタルを含む、請求項20に記載の結合器。
【請求項22】
前記モノリシックベース基板の第1の表面上に配置された誘電体層をさらに含み、前記誘電体層は第1の表面と第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第2の表面は前記モノリシックベース基板の前記第1の表面に対向する、請求項19に記載の結合器。
【請求項23】
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の電極と前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成された第2の電極とを含む薄膜キャパシタをさらに含む、請求項22に記載の結合器。
【請求項24】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に形成された第1の導電層と、前記誘電体層の前記第1の表面の上に形成された第2の導電層と、前記第1の導電層を前記第2の導電層に接続するビアとを含む薄膜インダクタを含む、請求項22に記載の結合器。
【請求項25】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜キャパシタを含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項26】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは薄膜インダクタを含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項27】
前記少なくとも1つのポートは、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含み、
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、
第1の薄膜インダクタと、
前記第1の薄膜インダクタに誘導結合され、前記入力ポートと前記出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタとを含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項28】
前記第1の薄膜インダクタを前記結合ポートに電気的に接続する薄膜回路をさらに含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項29】
前記薄膜回路は薄膜抵抗器を含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項30】
前記薄膜回路は薄膜キャパシタを含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項31】
前記薄膜回路は第3の薄膜インダクタを含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項32】
前記第1の薄膜インダクタは、第1の方向に長い第1の導電層を含み、前記第2の薄膜インダクタは前記第1の導電層と平行であり、前記第1の導電層の少なくとも一部に沿って前記第1の方向に対して垂直な第2の方向にほぼ均等な間隔で前記第1の導電層から離隔された第2の導電層を含む、請求項27に記載の結合器。
【請求項33】
前記モノリシックベース基板の前記第2の表面の上に形成されたカバー層をさらに含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項34】
前記カバー層は酸窒化シリコンを含む、請求項33に記載の結合器。
【請求項35】
前記結合器の長さは約2mm未満である、請求項19に記載の結合器。
【請求項36】
前記結合器の幅は約1mm未満である、請求項19に記載の結合器。
【請求項37】
前記モノリシックベース基板はセラミック材料を含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項38】
前記周波数範囲の前記下限は約2GHzである、請求項19に記載の結合器。
【請求項39】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントは、約50マイクロメートル未満の厚さを有する層を含む、請求項19に記載の結合器。
【請求項40】
表面実装可能結合器を形成する方法であって、
第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを有するモノリシックベース基板を設けるステップと、
前記モノリシックベース基板の前記第1の表面の上に、結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含む複数のポートを形成するステップと、
第1の薄膜インダクタを形成するステップと、
前記第1の薄膜インダクタに誘導結合され、前記入力ポートと前記出力ポートとの間に電気的に接続された第2の薄膜インダクタを形成するステップと、
少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含み、前記第1の薄膜インダクタを前記結合ポートに電気的に接続する薄膜回路を形成するステップとを含む、方法。
【国際調査報告】