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特表2022-525318CD147キメラ抗原受容体および使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-12
(54)【発明の名称】CD147キメラ抗原受容体および使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220502BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220502BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220502BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220502BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220502BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20220502BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALI20220502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220502BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220502BHJP
   A61K 35/13 20150101ALI20220502BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20220502BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220502BHJP
   A61K 35/26 20150101ALI20220502BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/0787
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/17 A
A61K35/15 Z
A61K35/13
A61K35/51
A61K35/28
A61K35/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555228
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020020436
(87)【国際公開番号】W WO2020190483
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/819,403
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306010244
【氏名又は名称】ラトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュージャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ドンファン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087BB43
4C087BB44
4C087BB59
4C087BB63
4C087BB64
4C087CA04
4C087CA05
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
CD147に特異的に結合する改変された一本鎖可変断片(scFv)が提供される。改変されたCD147scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)、CARをコードする核酸、CARをコードする核酸を含むベクター、およびCARを発現する免疫細胞も提供される。がんを有する対象を処置する方法であって、開示したCD147-CARを発現する免疫細胞を前記対象に投与することを含む方法も提供される。本開示は免疫療法、特にCD147を標的とするキメラ抗原受容体およびがんを処置するためのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)それぞれ配列番号2のアミノ酸位置26~32、52~59、および101~104の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号2のアミノ酸位置155~165、181~187、および220~228の可変軽鎖(VL)ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、CD147に特異的に結合する抗原結合ドメイン、
(b)ヒンジドメイン、
(c)膜貫通ドメイン、ならびに
(d)1つまたは複数の共刺激分子細胞内ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記抗原結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインが、高レベルの表面CD147を発現する細胞に結合する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記1つまたは複数の共刺激分子細胞内ドメインが、CD28および4-1BBの細胞内ドメインを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζのシグナル伝達ドメインを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記ヒンジドメインが、IgG1ヒンジドメインを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメインまたはCD8a膜貫通ドメインである、請求項1から7のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
1つまたは複数の追加の抗原結合ドメインをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
前記1つまたは複数の追加の抗原結合ドメインが、グリピカン3、アルファ-フェトプロテイン、またはムチン-1に特異的に結合する、請求項11に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項13】
誘導性自殺分子をさらに含む、1から12のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項14】
前記自殺分子が、カスパーゼ9を含む、請求項13に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項15】
前記自殺分子の発現が、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、またはラパマイシンによって誘導可能である、請求項13または請求項14に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項16】
配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項13または請求項14に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項17】
配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項18】
サイトカイン受容体細胞内ドメインをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項19】
前記サイトカイン受容体細胞内ドメインが、インターロイキン-15受容体細胞内ドメイン、インターロイキン-12受容体細胞内ドメイン、またはインターロイキン18受容体細胞内ドメインである、請求項18に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子。
【請求項21】
配列番号4、配列番号6、または配列番号14の核酸配列を含む、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
請求項20または請求項21に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項23】
B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスを標的とする第2のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子をさらに含む、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
前記キメラ抗原受容体核酸分子に作動可能に連結された誘導性プロモーターまたはエンハンサーの核酸分子をさらに含む、請求項22に記載のベクター。
【請求項25】
前記エンハンサー核酸分子が、Gal4上流活性化配列である、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
配列番号15の核酸配列を含む、請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
ウイルスベクターである、請求項22から26のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項28】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
それぞれ配列番号2のアミノ酸位置26~32、52~59、および101~104の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号2のアミノ酸位置155~165、181~187、および220~228の可変軽鎖(VL)ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、CD147に特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)。
【請求項30】
前記アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項29に記載のscFv。
【請求項31】
前記アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項30に記載のscFv。
【請求項32】
高レベルの表面CD147を発現する細胞に結合する、請求項29から31のいずれか一項に記載のscFv。
【請求項33】
請求項29から32のいずれか一項に記載のscFvをコードする核酸分子。
【請求項34】
配列番号1の核酸配列を含む、請求項33に記載の核酸分子。
【請求項35】
請求項33または請求項34に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項36】
請求項1から19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を発現する、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項37】
請求項20、請求項21、請求項33、もしくは請求項34に記載の核酸、または請求項22から28もしくは請求項35のいずれか一項に記載のベクターを含む、T細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項38】
前記誘導性プロモーターまたはエンハンサーのアクチベーターをコードする核酸分子をさらに含む、請求項37に記載のT細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項39】
前記アクチベーターをコードする前記核酸が、抗GPC3特異的結合剤をさらにコードする、請求項38に記載のT細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項40】
誘導性プロモーターまたはエンハンサーのアクチベーターをコードする核酸分子および前記誘導性プロモーターまたはエンハンサーに作動可能に連結された抗GPC3キメラ抗原受容体を含むベクターをさらに含む、請求項24または請求項35に記載のベクターを含むT細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項41】
抗GPCキメラ抗原受容体を含む前記ベクターが、配列番号16の核酸配列を含む、請求項40に記載のT細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項42】
末梢血、臍帯血、リンパ節、骨髄、腫瘍組織、または細胞系から得られる、請求項36から41のいずれか一項に記載のT細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージ。
【請求項43】
NK-92細胞またはNK-92MI細胞である、請求項36から42のいずれか一項に記載のNK細胞。
【請求項44】
CD147-CAR-T細胞またはCD147-CAR-NK細胞を産生する方法であって、請求項22から28のいずれか一項に記載のベクターをT細胞またはNK細胞に形質導入またはトランスフェクトすることを含む方法。
【請求項45】
がんを有する対象を処置する方法であって、有効量の請求項36から43のいずれか一項に記載のT細胞、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞、好中球、またはマクロファージを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項46】
前記対象が、CD147を発現するがんを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、肝細胞癌、神経芽腫、乳がん、膵がん、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、結腸直腸がん、肺がん、黒色腫、腎細胞癌、肉腫、または鼻咽頭癌を有する、請求項45または請求項46に記載の方法。
【請求項48】
手術、放射線、化学療法、追加の免疫療法、またはそれらの2つもしくはそれより多い組合せの少なくとも1つを用いて前記対象を処置することをさらに含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年3月15日出願の米国仮特許出願第62/819,403号の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は免疫療法、特にCD147を標的とするキメラ抗原受容体およびがんを処置するためのそれらの使用に関する。
【0003】
政府補助の謝辞
本発明はアメリカ国立衛生研究所によって授与された助成金番号AI130197、HL125018、AI124769-01、およびAI129594による政府補助によって行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
肝がんは世界で2番目に多いがん関連の死因である。肝がんの負荷は2030年までに100万例を超すと予測されている。肝がんは世界の症例では5番目であり、男性の死亡の2番目である。毎年、50万人を超える患者が肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)(HCC)で死亡している。
【0005】
原発性肝がんには肝細胞癌(HCC)、肝内胆管癌(iCCA)、線維層板癌、および肝芽腫が含まれる。HCCおよびiCCAは最も一般的な原発性肝がんであり、原発性肝がん症例の99%よりも多くを占める。HCC単独(1年あたりほぼ800,000の新たな症例)で原発性肝がんの全症例の90%を占める。現在のところ、HCCを処置するために利用可能な有効な療法はない。ソラフェニブ(CheckMate-040、進行したHCCを有する患者に広く使用されているマルチキナーゼ阻害剤であるが、効力が低く重篤な副作用がある)がHCCのファーストラインの標準的な全身性薬剤である。現在のところ、PD-1遮断薬Opdivo(ニボルマブ)が、以前ソラフェニブによって処置されたHCCを有する患者へのセカンドライン処置戦略として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。HCCのファーストライン処置としてのPD-1遮断薬を試験する臨床試験が、現在進行中である。その間に、他の介入と組み合わせたPD-1またはPD-L1遮断薬を使用する種々の臨床試験も進行中である。例えば、切除可能なおよびおそらく切除可能なHCCを有する患者において、抗CTLA-4抗体と組み合わせた抗PD-1抗体を評価する研究が、臨床試験で試験されている(NCT03222076)。
【0006】
キメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞療法は、種々の血液がんの処置のための有望な免疫療法戦略になってきた。血液がんにおけるCAR改変T細胞免疫療法の最近の進歩にも関わらず、高い費用および重篤な毒性がその広範囲におよぶ使用を妨げてきた。一方、CAR-T細胞は、固形腫瘍の標的化の間に、腫瘍微小環境における永続的な増殖および持続性を維持することなどのさらなる課題に直面している。肝がんのためのCAR媒介免疫療法に対するさらなる課題は、有効な標的を発見することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
CD147は様々なレベルで種々の細胞型(例えば造血、上皮、および内皮細胞)に発現する。しかし、CD147はHCC、乳がん、膀胱がん、結腸直腸がん、卵巣がん、黒色腫、および骨肉腫などの病態において有意に上方調節される。CD147を発現する細胞を特異的に標的とするCARが提供される。これらのCARは、CD147を発現または過剰発現しているがんの免疫療法において使用することができる。
【0008】
CD147に特異的に結合する改変された一本鎖可変断片(scFv)が本明細書で開示される。一部の実施形態では、scFvは、配列番号8の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列、ならびに配列番号9の可変軽鎖(VL)ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有する。一部の例では、scFvは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号2のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる。改変されたCD147scFvをコードする核酸、例えば配列番号1の核酸分子と少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号1の核酸配列を含むかもしくはそれからなる核酸、および核酸配列を含むベクターも提供される。追加の実施形態では、改変されたCD147scFvをコードするベクター(例えば配列番号1)が提供され、ベクターはCD147scFv核酸分子に作動可能に連結された誘導性プロモーターまたはエンハンサー核酸分子をさらに含む。一部の例では、エンハンサー核酸は、CD147scFvをコードする核酸に作動可能に連結されたGal4上流活性化配列(UAS)である。別の例では、ベクターはsynNotch構築物、例えばsynNotchおよびGal4-VP64コーディング配列(例えば配列番号17)に連結された改変されたCD147scFv核酸分子(例えば配列番号1)の核酸配列を含むベクターである。
【0009】
本明細書で提供する改変されたCD147scFv、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激分子細胞内ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含むCARも提供される。一実施形態では、CD147-CARは、本明細書で提供する改変されたCD147scFv、IgG1ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28および4-1BB共刺激ドメイン、ならびにCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。一部の例では、CD147-CARは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号5のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる。
【0010】
一部の実施形態では、CD147-CARは、カスパーゼ9などの誘導性自殺分子をさらに含む。一部の例では、自殺分子の発現はテトラサイクリン、ドキシサイクリン、またはラパマイシンによって誘導される。一例では、誘導性自殺遺伝子を有するCD147-CARは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号7のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる。CD147-CARは、サイトカイン受容体細胞内ドメイン、例えばインターロイキン-15受容体細胞内ドメイン(例えば配列番号12)、インターロイキン-12受容体細胞内ドメイン、またはインターロイキン18受容体細胞内ドメインをさらに含んでよい。
【0011】
本明細書で開示するCD147-CARをコードする核酸、および該核酸を含むベクター(例えばウイルスベクター)も提供される。一部の例では、CD147-CARは、配列番号4または配列番号6の核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。他の例では、CD147-CARは、配列番号4または配列番号6の核酸配列を含むか、またはこれらからなる核酸によってコードされる。
【0012】
追加の実施形態では、CD147-CAR(例えば配列番号4または配列番号6)をコードし、CD147-CAR核酸分子に作動可能に連結された誘導性プロモーターまたはエンハンサー核酸分子をさらに含むベクターが提供される。一部の例では、エンハンサー核酸は、CD147-CARをコードする核酸に作動可能に連結されたGal4上流活性化配列(UAS)(例えば配列番号14)である。一例では、ベクターはsynNotch構築物中のCD147-CAR、例えば配列番号15の核酸配列を含むベクターを含む。他の例では、CD147-CAR核酸分子(例えば配列番号1)は、synNotchおよびGal4-VP64コーディング配列(例えば配列番号17)に連結されている。
【0013】
開示したscFvおよび/またはCARを発現するT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、二重陰性T(DNT)細胞(CD3CD4CD8)、好中球、またはマクロファージ、例えば開示したCD147scFvもしくはCD147-CARをコードする核酸または開示したCD147scFvもしくはCD147-CARをコードするベクターを含むT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージも提供される。一部の例では、NK細胞はNK-92またはNK-92MI細胞である。CD147-CAR-NK細胞、CD147-CAR-T細胞、またはCD147-CAR-マクロファージを含むがこれらに限らないCARを発現する細胞を産生する方法が提供される。これらの方法は、開示したCARをコードするベクターをT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージに形質導入またはトランスフェクトすることを含む。
【0014】
さらなる実施形態では、誘導性プロモーターまたはエンハンサーエレメントのアクチベーターに作動可能に連結されたCD147-CARを発現するT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージが提供される。一部の例では、T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージは、誘導性プロモーターまたはエンハンサーエレメントのアクチベーターに作動可能に連結された抗GPC3特異的結合剤(例えば抗GPC3scFv)をコードする核酸をさらに発現する。他の実施形態では、誘導性プロモーターまたはエンハンサーエレメントに作動可能に連結されたCD147scFvを発現し、誘導性プロモーターまたはエンハンサーに作動可能に連結された抗GPC3キメラ抗原受容体をコードする核酸分子をさらに含むT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージが提供される。
【0015】
例えば本明細書で開示するCARを発現するNK細胞、T細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージ(例えばCD147-CAR NK細胞、CD147-CAR-T細胞、またはCD147-CARマクロファージ)を対象に投与することによって、がんを有する対象を処置するための方法が本明細書で開示される。一部の例では、対象は、CD147を発現するがんを有する。特定の非限定的な例では、対象は、肝細胞癌、神経芽腫、乳がん、膵がん、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、結腸直腸がん、肺がん、黒色腫、腎細胞癌、肉腫、または鼻咽頭癌を有する。
【0016】
本開示の上記および他の特色は、添付した図面への参照によって進む以下の詳細な説明によってさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1-1】図1A~1Eは、肝細胞癌細胞におけるCD147の過剰発現を示す。図1Aは、TCGAデータセットからのヒトがん患者の全生存期間についてのCD147の上方調節された発現の予後値を示す。相対的なCD147の高いおよび低い発現(下のパネル)に基づく様々な患者集団の生存曲線(上のパネル)。LUAD(肺腺癌)、SKCM(皮膚黒色腫)、LIHC(肝細胞癌(Liver hepatocellular carcinoma))、およびLGG(脳の低悪性度神経膠腫)のデータを解析のために収集した。図1Bは、TCGAデータセットからの正常組織(NT)および多数のがん型における腫瘍試料(TP)の間のCD147発現の比較を示す。データは、3回の個別の実験の平均±SEMを表す。対応のないスチューデントのt検定を用いた。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、およびn.s(有意差なし)。TCGAデータベースによれば、各がん型の完全名称は、BRCA(乳房浸潤癌)、CHOL(胆管癌)、GBM(多形性神経膠芽腫)、LGG(脳の低悪性度神経膠腫)、HNSC(頭頚部扁平上皮癌)、KICH(腎嫌色素性)、KIPAN汎腎コホート(KICH+KIRC+KIRP)、KIRP(腎乳頭細胞癌)、LIHC(肝細胞癌)、LUAD(肺腺癌)、LUSC(肺扁平上皮癌)、PRAD(前立腺腺癌)、UCEC(子宮体内膜癌)である。図1Cは、HCC細胞系におけるCD147のウェスタンブロット解析を示す。種々の細胞系の1×10個の細胞を200μlのRIPA緩衝液中で溶解し、50μlの5×SDSローディング緩衝液と混合した後、独立にSDS-PAGEにロードした。マウス抗ヒトCD147(HIM6、マウスIgG1)をウェスタンブロット解析に使用した。ローディング対照として抗GAPDHを使用した。図1Dは、HCC細胞系(SK-Hep1およびHepG2)中のCD147を示す。SK-Hep1およびHepG2(1×10個の細胞)は、2μgのFITC-マウス抗ヒトCD147(抗CD147)または2μgのFITC-アイソタイプマウスIgG1(アイソタイプ、カッパ)で染色した。インキュベーションおよび洗浄の後、フローサイトメトリーによって試料を解析した。数字は各試料の平均蛍光強度(MFI)を表す。図1Eは、PDXマウスモデルから単離したヒトHCC腫瘍上のCD147抗原発現の組織病理学的解析を示す一連のパネルである。それぞれPBS、NK-92MI、およびCD147-CAR NK-92MIで処置した様々な患者由来の異種移植(PDX)マウスからの腫瘍試料の代表的なH&E(上の列)およびCD147のIHC染色(中間の列)。下列は一次抗体なしのIHC染色を示す。スケールバーは50μmを表す。データは3回の独立した実験を代表する。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図2-1】図2A~2Fは、CD147-CARの設計およびCAR改変NK-92MI細胞の表現型判定を示す。図2Aは、SFGレトロウイルスベクターに基づくCD147特異的CARの概略設計を示す。構築物は、CD147特異的一本鎖抗体断片(クローン5F6からの改変されたscFv、mIgG1)、ヒトIgG1 CH2CH3ヒンジ領域およびCD28膜貫通領域、それに続く共刺激CD28、4-1BBの細胞内ドメインおよびCD3ζの細胞内ドメインを含む。図2Bは、親NK-92MIおよびCD147-CAR-NK-92MIの表面上のCAR発現およびCD56のフローサイトメトリー解析を示す。データは、少なくとも3回の実験を代表する。図2Cは、内因性CD147およびCD147-CAR融合タンパク質の検出のための抗ヒトCD3ζ特異的抗体による親NK-92MIおよびCD147-CAR-NK-92MI細胞におけるCAR発現のウェスタンブロット解析を示す。図2Dは、親NK-92MI、CAR-CD19(4-1BB)-NK-92MI、およびCD147-CAR-NK-92MI細胞におけるNK活性化および阻害マーカーを示す。各データは少なくとも3回または4回の実験を表す。フローグラフ中の数字は、各試料の平均蛍光強度(MFI)を表す。図2Eは、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)を使用したCD19-CAR-NK-92MIおよびCD147-CAR-NK-92MIにおけるCARの発現のフローサイトメトリー解析を示す。対照として野生型NK-92MI細胞を使用した。図2Fは、NK-92MI、CD19-CAR-NK-92MI、およびCD147-CAR-NK-92MIにおけるCD147の発現のフローサイトメトリー解析を示す。図2Gは、NK-92MI、CD19-CAR-NK-92MI、およびCD147-CAR-NK-92MIにおけるCD147発現レベルの重ね合わせたフローサイトメトリープロファイルを示す。データは2回の独立した実験を代表する。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図3-1】図3A図3Dは、CD147-CAR-NK-92MI細胞におけるCD107aの脱顆粒およびサイトカイン産生がその感受性標的細胞によって刺激されることを示す。図3Aは、培地(対照)、SK-Hep1、およびHepG2を用いて10時間後のNK-92MI、CD19-4-1BB-CAR、CD19-CD28-CAR、およびCD147-CARにおけるCD107aの脱顆粒を説明する代表的なフローサイトメトリーデータを示す。エフェクターと標的の比は1:1.2である。表面CD107a発現を定量するため、細胞をCD56陽性サブセットについてゲーティングした。図3Bは、示したように、様々な刺激におけるCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a発現のパーセンテージの定量データを示す。様々な条件によって刺激されたCD147-CAR-NK-92MI、CD19-4-1BB-CAR-NK-92MI、CD19-CD28-CAR-NK-92MI、および野生型NK-92MIによるサイトカインTNF-アルファ(図3C)およびIFN-ガンマ(図3D)の産生。NK-92MI細胞は、SK-Hep1細胞とともにエフェクター/標的比1:1または培地で、12時間共培養した。陽性対照としてフォルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)/イオノマイシン(IONO)を使用した。サイトカイン放出の比は以下の等式:試料の値/陽性対照値の平均×100(%)によって計算した。データは少なくとも3回または4回の実験からプールした。
図3-2】同上。
図4図4A~4Cは、CD147-CAR-NK-92MIによる2種のHCC細胞系の殺滅を示す。図4Aは、Huh7(左)およびHCO2(右)細胞系における表面CD147分子の代表的なフローサイトメトリー染色である。図4Bは、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定したCD147-CAR-NK-92MIの細胞傷害性を示すグラフである。CD147-CAR-NK-92MIに感受性のある標的細胞としてCD147陽性Huh7細胞を使用した。対照として野生型NK-92MIを使用した。図4Cは、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定したCD147-CAR-NK-92MIの細胞傷害性を示すグラフである。CD147-CAR-NK-92MIに感受性のある標的細胞としてCD147陽性HCO2細胞を使用した。対照として野生型NK-92MIを使用した。データは3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。
図5-1】図5A~5Gは、CD147陽性標的細胞の刺激におけるCD147-CAR-NK-92MI細胞の活性化を示す。図5Aは、示したように、様々な刺激におけるCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a発現のパーセンテージを示す代表的なデータを示す。CD147-CAR-NK-92MI細胞を、SK-Hep1またはHepG2細胞で4時間刺激した。CD147-CARとCD147分子との間の相互作用を遮断するために、5μgのマウス抗ヒトCD147(HIM6)をエフェクターと標的細胞との混合物に添加した。示したように、対照として5μgのアイソタイプ-マウスIgG(IgG)またはPBS(ビヒクル対照群)を使用した。図5Bおよび5Cは、CD147陽性SK-Hep1(図5B)およびCD147陽性HepG2(図5C)細胞系で刺激したCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a染色のパーセンテージの定量データを示すグラフである。示したように、対照として野生型NK-92MI細胞単独およびCD147-CAR-NK-92MI細胞単独を使用した。図5Dは、CD147陽性野生型(WT)SK-Hep1細胞系(上のパネル)およびCD147ノックアウト(CD147-/-)SK-Hep1細胞系(中間のパネル)で刺激したCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a発現のパーセンテージを示す代表的なデータを示す。対照として培養培地のみの群を使用した。対照エフェクター細胞としてナイーブNK-92MIおよび4-1BB-CD19-CAR(CD19-CAR)を使用した。図5Eは、それぞれCD147陽性SK-Hep1(WT)およびCD147ノックアウトSK-Hep1(CD147-/-)細胞系で刺激したCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a染色のパーセンテージの定量データを示す。図5Fは、CD147陽性野生型(WT)HepG2細胞系(上のパネル)およびCD147ノックアウトHepG2細胞系(中間のパネル)で刺激したCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a発現のパーセンテージを示す代表的なデータを示す。対照として培養培地のみの群を使用した。対照エフェクター細胞としてナイーブおよびCD19-4-1BB-CAR-NK-92MI(CD19-CAR)を使用した。図5Gは、それぞれCD147陽性HepG2(WT)およびCD147ノックアウトHepG2(CD147-/-)細胞系で刺激したCD147-CAR-NK-92MI細胞における表面CD107a染色のパーセンテージの定量データを示す。エフェクターと標的の比は1:1.2である。CD147-CAR-NK-92MI細胞は、CD56抗体表面染色によってゲーティングした。NK脱顆粒は、フローサイトメトリーによるCD107a表面染色によって測定した。データは3回の個別の実験の平均±SEMを表す。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。
図5-2】同上。
図6図6は、マウス抗ヒトCD147(HIM6)がCD19-CAR-NK細胞の細胞傷害性に影響しないことを示す。CD19-CAR-NK-92MIの細胞傷害性は、FFLucレポートシステムアッセイを使用して測定した。簡単に述べると、Daudi-FFLuc細胞(1×10)を、Matrigel(BD)で処置した96ウェルの光学底マイクロプレート(optical-bottom microplate)に一夜、前播種した。エフェクター細胞(CD19-CAR-NK-92MI)を、2つの異なるエフェクター/標的比(示したように5:1および1:1)で、6時間、共培養した。マイクロプレートリーダーによって発光シグナルを定量し、特異的溶解のパーセンテージを計算した。データは3回の独立した実験からプールした。エラーバーは±SEM(平均の標準誤差(stand error))を示す。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。
図7図7Aおよび7Bは、CD147-CAR-NK-92MIの殺滅活性の代表的なイメージを示す。エフェクター細胞(1×10)CD147-CAR-NK-92MIおよびNK-92MIを、標的細胞FFLuc-GFP-SK-Hep1(図7A、上)(1×10)およびFFLuc-GFP-HepG2(図7A、下)とともに、96ウェルの光学底マイクロプレート中で12時間、共培養した。同じ設定でCD147-CAR-NK-92MIの殺滅活性を可視化するために、従来の蛍光顕微鏡法で検出したGFP蛍光(上のレーン)および明視野(下のレーン)を使用した。GFP蛍光強度は、ImageJソフトウェア(NIH)によって定量した(図7B)。GFPの定量平均蛍光強度(MFI)をGraphプリズム5ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)によってプロットした。
図8-1】図8A~8Nは、CD147-CAR-TおよびNK細胞がin vitroでCD147陽性腫瘍細胞を特異的に殺滅することを示す。図8Aは、FFLucレポーターアッセイによって測定した初代CD147-CAR-T細胞の細胞傷害性を示す。CD147-CAR-Tに感受性のある標的細胞としてCD147陽性FFLuc-GFP-SK-Hep1を使用した。各実験の対照群としてカッパ-CAR T細胞を使用した。図8Bおよび8Cは、FFLucレポーターアッセイによる、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-SK-Hep1細胞系およびHepG2細胞系を使用したCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性の有意な低下を示す。データは3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。図8Dは、4時間の標準的な51Cr放出アッセイによって測定した初代CD147-CAR-NK細胞の細胞傷害性を示す。CD147-CAR-Tに感受性のある標的細胞としてCD147陽性FFLuc-GFP-SK-Hep1を使用した。各実験の対照群としてカッパ-CAR T細胞を使用した。図8Eおよび8Fは、4時間の標準的な51Cr放出アッセイによる、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-SK-Hep1細胞系およびHepG2細胞系を使用した初代CD147-CAR-NK細胞の細胞傷害性の有意な低下を示す。データは3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。図8Gは、初代CD147-CAR-NKがFFLuc-GFP-SK-Hep1を自然に殺滅するのを、抗NKG2D抗体が遮断したことを示す。様々な比の初代CD147-CAR-NK細胞を、FFLuc-GFP-SK-Hep1、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-SK-Hep1細胞系、または5μgの抗NKG2Dを含むノックアウトCD147FFLuc-GFP-SK-Hep1細胞系とともに4時間、共培養した。FFLucレポーターアッセイを使用した。データは3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。図8Hは、SK-Hep1に対するCD147-CAR-NK-92MIの細胞傷害性を標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定したことを示す。エフェクター細胞(CD147-CAR-NK-92MIおよびNK-92MI)をウェルあたり1×10個の標的細胞FFLuc-GFP-SK-Hep1とともに共培養した。4時間後、上清を収集し、放出された51Crをガンマカウンターで測定した。図8Iおよび8Jは、CD147-CAR-NK-92MIによるFFLuc-GFP-SK-Hep1およびFFLuc-GFP-HepG2細胞系の特異的殺滅のFFLucレポーターシステムアッセイである。エフェクター細胞(CD147-CAR-NK-92MIおよびNK-92MI)を、ウェルあたり1×10個のFFLuc-GFP-SK-Hep1(図8I)またはFFLuc-GFP-HepG2(図8J)標的細胞とともに、96ウェルの光学底マイクロプレート中で6時間、共培養した。D-ルシフェリンとともに5分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーによって発光シグナルを測定して、NK細胞の細胞傷害性を計算した。使用した対照群は、CD147陽性FFLuc-GFP-SK-Hep1またはCD147陽性FFLuc-GFP-HepG2とともにインキュベートした野生型NK-92MIであった。図8Kおよび8Lは、FFLucレポーターシステムアッセイによる、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-SK-Hep1(図8K)およびノックアウトCD147FFLuc-GFP-HepG2(図8L)細胞系を使用したCD147-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害性の低下を示す。エフェクター細胞(CD147-CAR-NK-92MIおよびNK-92MI)を、ウェルあたり1×10個の野生型またはCD147ノックアウト標的細胞とともに、96ウェルの光学底マイクロプレート中で6時間、共培養した。D-ルシフェリンとともに5分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーによって発光シグナルを測定して、NK細胞の細胞傷害性を計算した。図8Mおよび8Nは、抗CD147(クローン、HIM6)がFFLuc-GFP-SK-Hep1(図8M)およびFFLuc-GFP-HepG2(図8N)に対するCD147-CAR-NK-92MIの特異的溶解効果を阻害したことを示すグラフである。エフェクター細胞(CD147-CAR-NK-92MIおよびNK-92MI)を、ウェルあたり1×10個のFFLuc-GFP-SK-Hep1またはFFLuc-GFP-HepG2標的細胞とともに、96ウェルの光学底マイクロプレート中で6時間、共培養した。D-ルシフェリンとともに5分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーによって発光シグナルを測定して、NK細胞の細胞傷害性を計算した。データは3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。
図8-2】同上。
図9図9Aおよび9Bは、フローサイトメトリーおよびウェスタンブロットによるノックアウトCD147SK-Hep1およびHepG2細胞系の検証を示す。図9Aは、野生型(wt)SK-Hep1およびCD147-/--SK-Hep1細胞系(上)、ならびに野生型(wt)HepG2およびCD147-/--HepG2細胞系(下)における表面CD147分子の染色を示す。図9Bは、野生型(wt)SK-Hep1およびCD147-/--SK-Hep1細胞系、ならびに野生型(wt)HepG2およびCD147-/--HepG2細胞系におけるCD147分子のウェスタンブロット解析を示す。ローディング対照としてGAPDHを使用した(下)。
図10図10A~10Cは、CD147-CAR-NK-T細胞がCD147陽性腫瘍細胞を特異的に殺滅することを示す。CD147-CAR-T細胞の細胞傷害性は、FFLucレポートシステムアッセイによって測定した。CD147-CAR-Tに感受性のある標的細胞としてCD147陽性FFLuc-EGFP-Hep-G2(図10A)およびCD147陽性FFLuc-EGFP-SK-Hep1(図10B)を使用した。各実験の対照群としてカッパ-CAR T細胞を使用した。図10Cは、FFLucレポートシステムアッセイによる、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-SK-Hep1細胞系を使用したCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性の有意な低下を示す。簡単に述べると、エフェクター細胞(CD147-CAR-T細胞)を、標的細胞FFLuc-EGFP-SK-Hep1またはCD147ノックアウトFFLuc-EGFP-SK-Hep1(1×10)とともに、96ウェルの光学底マイクロプレート中で6時間、共培養した。CD147-CAR-T細胞の細胞傷害性は、マイクロプレートリーダーによる発光シグナルの読み取りによって測定した。データは3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。
図11図11A~11Dは、CD147-CAR-T-92MI細胞が異種移植マウスモデルにおけるHCCの進行を制御することを示す。図11AはHCC異種移植モデルの実験設計のダイアグラムである。簡単に述べると、NSGマウスに、等体積のMatrigelと予備混合した4×10個のSK-Hep1細胞を皮下注射した(0日目)。マウスを腫瘍負荷についてモニターし(ほぼ50mmに到達)、4日目にランダムにグループ分けした。5日目(D5)に、マウスに1用量の1×10個のエフェクターCD147-CAR-T(群#1)細胞を2×10IUのIL-2とともに注射(i.v.)した。対照群にはビヒクル(PBS)対照のみを注射した(群#2)。7、9、および16日目に、各群に同一の処置を投与した。図11Bは、それぞれCD147-CAR-TおよびPBS(ビヒクル対照群)で処置したSK-Hep1異種移植片の腫瘍負荷の定量を示す。全ての結果は平均±SEMである。各群についての差異は二元配置ANOVA解析によって解析した。図11Cは、示した時点で評価した各群の定量的体重である。図11Dは、CD147-CAR-T細胞およびPBS(ビヒクル対照群)での処置後の担腫瘍マウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。p値はログ-ランク(Mantel-Cox)検定によって解析した。
図12図12A~12Dは、マウス異種移植モデルにおけるHCCに対するCD147-CAR-NK-92-MI細胞の抗腫瘍効力を示す。図12Aは、HCC異種移植モデルにおける初代CD147-CAR-NKの抗腫瘍効力についての実験設計のダイアグラムである。5日間の腫瘍の埋め込みの後(5日目)、マウスに1用量の1×10個のエフェクター初代CD147-CAR-NK細胞を2×10IUのIL-2とともに注射(i.v.)した。対照群には同数の形質導入していない初代NK細胞を2×10IUのIL-2(群#2)またはPBSのみ(群#3)とともに注射した。5、7、9、16、および18日目に、示したように各群において同一の処置を投与した。図12Bは、それぞれ初代CD147-CAR-NK、形質導入していない初代NK、およびPBS(ビヒクル対照群)で処置したHCC異種移植マウスの定量的腫瘍負荷を示す。全ての結果は平均±SEMである。各群についての差異は二元配置ANOVA解析によって解析した。図12Cは、示した時点で評価した各群の定量的体重を示す。図12Dは、初代CD147-CAR-NK、親初代NK群、およびPBS(ビヒクル対照群)での処置後の担腫瘍マウスのKaplan-Meier生存曲線である。ログ-ランク(Mantel-Cox)検定によるp値解析。各群についての差異は二元配置ANOVA解析によって解析した。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001は、CD147-CAR改変細胞で処置した群の対照群との比較におけるものとして示している。
図13図13は、in vitroでのHCC細胞系の殺滅における照射CD147-CAR-NK-92MIと非照射CD147-CAR-NK-92MI細胞の間の同程度の抗HCC腫瘍活性を示す。照射および非照射のCD147-CAR-NK-92MIの細胞傷害性は、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定した。CD147-CAR-NK-92MIに感受性のある標的細胞としてCD147陽性野生型HepG2腫瘍細胞(実験群、左パネル)またはCD147ノックアウト(CD147KO、右パネル)HepG2腫瘍細胞系を使用した。エフェクター細胞対照群として照射および非照射の野生型NK-92MI細胞を使用した。データは3回の独立した実験の代表である。全てのデータは平均±SEMとして提示している。
図14図14A~14Dは、異種移植マウスモデルにおけるHCCの進行の制御における照射CD147-CAR-NK-92MIと非照射CD147-CAR-NK-92MI細胞の間の同程度の抗HCC腫瘍活性を示す。図14AはHCC異種移植モデルの実験設計のダイアグラムである。NSGマウスに、等体積のMatrigelと予備混合した2×10個のSK-Hep1細胞を注射した(s.c.)(0日目)。処置の1日前(4日目)に腫瘍負荷を決定し(ほぼ50mmに到達)、マウスをランダムにグループ分けした。5日目(D5)に、マウスに1用量の1×10個のエフェクター非照射CD147-CAR-NK-92MI(群#1)細胞を2×10IUのIL-2とともに注射した(i.v.)。対照群にはPBS中の同数の照射CD147-CAR-NK-92MIを2×10IUのIL-2とともに(群#2)またはビヒクル対照のみ(群#3)を注射した。7、9、16、および18日目に、各群に同一の処置を投与した。図14Bは、それぞれCD147-CAR-NK-92MIおよびPBS(ビヒクル対照群)で処置したSK-Hep1異種移植片の腫瘍負荷の定量を示す。全ての結果は平均±SEMである。各群についての差異は二元配置ANOVA解析によって解析した。図14Cは、示した時点で評価した各群の定量的体重のグラフである。図14Dは、CD147-CAR-NK-92MI細胞およびPBS(ビヒクル対照群)での処置後の担腫瘍マウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。p値はログ-ランク(Mantel-Cox)検定によって解析した。データは2回の独立した実験の代表である。全てのデータは平均±SEMとして提示している。
図15図15A~15Dは、CD147-CAR-NK-92MI細胞が異種移植マウスモデルにおいてHCCの進行を制御することを示す。図15AはHCC異種移植モデルの実験設計のダイアグラムである。簡単に述べると、NSGマウスに、等体積のMatrigelと予備混合した4×10個のSK-Hep1細胞を皮下注射した(-7日目)。0日目(1日目の前日)に腫瘍負荷を決定し(約50mm)、マウスをランダムにグループ分けした。1日目(D1)に、マウスに1用量の1×10個のエフェクターCD147-CAR-NK-92MI(群#1)細胞を2×104IUのIL-2とともに注射(i.v.)した。対照群にはPBS中の同数のNK-92MIを2×10IUのIL-2とともに(群#2)またはビヒクル対照のみ(群#3)を注射した。3日目および5日目に、各群において同一の処置を投与した。図15Bは、それぞれCD147-CAR-NK-92MI、親NK-92MI細胞(対照群)、およびPBS(ビヒクル対照群)で処置したSK-Hep1異種移植片の腫瘍負荷の定量を示す。全ての結果は平均±SEMである。各群についての差異は二元配置ANOVA解析によって解析した。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001は、CD147-CAR処置群のNK-92MI処置群との比較におけるものとして示している。+p<0.05、++p<0.01、および+++p<0.001は、CD147-CAR処置群のビヒクル対照処置群との比較におけるものとして示している。図15Cは、示した時点で評価した各群の定量的体重を示し、図15Dは、CD147-CAR-NK-92MI細胞、親NK-92MI群、およびPBS(ビヒクル対照群)での処置後の担腫瘍マウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。p値はログ-ランク(Mantel-Cox)検定によって解析した。
図16図16A~16Dは、CD147-CAR-NK-92MI細胞がPDXマウスモデルにおいてHCCの進行を制御することを示す。図16Aは、Jackson Laboratoryによって生成された肝PDXモデルにおけるCD147-CAR-NK-92MIの抗腫瘍効力の実験設計のダイアグラムである。患者由来の異種移植肝がんマウスは、Jackson Laboratoryから購入した。4週間の腫瘍の埋め込みの後(1日目)、腫瘍負荷を決定し(約50mm)、マウスをランダムにグループ分けした。次いで示したマウスに1用量の5×106個のエフェクターCD147-CAR-NK-92MI細胞を2×10IUのIL-2とともに注射(i.v.)した。対照群にはPBS中の同数のNK-92MI細胞を2×10IUのIL-2とともに(群#2)またはPBSのみ(群#3)を注射した。6、8、11、15、18、22、および26日目に、示したように各群において同一の処置を投与した。図16Bは、それぞれCD147-CAR-NK-92MI細胞、親NK-92MI細胞(対照群)、およびPBS(ビヒクル対照群)で処置したPDXマウスの定量的腫瘍負荷である。全ての結果は平均±SEMである。各群についての差異は二元配置ANOVA解析によって解析した。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001は、CD147-CAR処置群のNK-92MI処置群との比較におけるものとして示している。+p<0.05、++p<0.01、および+++p<0.001は、CD147-CAR処置群のビヒクル対照処置群との比較におけるものとして示している。図16Cは、示した時点で評価した各群の定量的体重を示す。図16Dは、CD147-CAR-NK-92MI細胞、親NK-92MI群、およびPBS(ビヒクル対照群)での処置後の担腫瘍マウスのKaplan-Meier生存曲線である。ログ-ランク(Mantel-Cox)検定によるp値解析。
図17図17A~17Dは、CD147-CAR-T細胞によるCD147陽性HCC細胞の殺滅を示す。CD147-CAR-T細胞によるFFLuc-EGFP-HepG2の特異的殺滅のFFLucレポーターシステムアッセイ(図17A)。対照群は、CD147陽性FFLuc-EGFP-HepG2とともにインキュベートする野生型カッパ-CAR-T細胞を使用した。図17Bは、FFLucレポートシステムアッセイによる、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-HepG1を使用したCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性の低下を示す。図17Cは、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定したCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性を示す。図17Dは、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによる、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-HepG1を使用したCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性の有意な低下を示す。
図18-1】図18Aおよび18Bは、CD147 CAR-Tまたは-NK細胞によるCD107aの脱顆粒を示す。図18Aは、培地(対照)、SK-N-SH腫瘍細胞での10時間後のCD147-CAR-T細胞におけるCD107aの脱顆粒を示す代表的なフローサイトメトリーデータを示す。表面CD107a発現を定量するため、細胞をCD56陽性サブセットについてゲーティングした。図18Bは、示したように、様々な刺激におけるCD147-CAR-NK-92MI細胞上の表面CD107a発現のパーセンテージの定量データを示す。データは少なくとも3回または4回の実験からプールした。
図18-2】同上。
図19図19は、in vitroにおけるCD147-CAR-NK-92MI細胞のDaoY細胞に対する細胞傷害性を示す。
図20図20は、元のscFv配列(配列番号3)およびコンセンサス配列(配列番号13)と比較した、最適化されたCD147scFv核酸配列(配列番号1)を示すアラインメントである。
図21-1】図21A~21Eは、患者由来の初代CD147-CAR-NK細胞がin vitroでCD147陽性腫瘍細胞を特異的に殺滅することを示す。図21Aは、様々なステージのHCC患者からの肝の試料の代表的なH&E(上)およびIHC(下)染色である。図21Cは、肝がん組織の様々な区域からのHCC試料取得の実験設計のダイアグラムである。簡単に述べると、目的の3つの領域(腫瘍ゾーン、隣接ゾーン、および非腫瘍ゾーン)が得られた。これらのゾーンから初代NK細胞を単離した(図21Bに示す)。図21Dは、肝組織の様々なゾーンからのCD147-CAR陽性初代NK細胞のフローサイトメトリー解析である。図21Eは、4時間の標準的な51Cr放出アッセイによって測定した初代CD147-CAR-NK細胞の細胞傷害性を示す。
図21-2】同上。
図21-3】同上。
図22-1】図22Aおよび22Bは、様々な型の細胞におけるCD147発現の代表的なフローサイトメトリー解析(図22A)および様々なCD147発現レベルを有する標的細胞に対する標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定したCD147-CAR-NK-92MIの細胞傷害性(図22B)である。データは2回の独立した実験の代表である。全てのデータは平均±SEMとして提示している。
図22-2】同上。
図23-1】図23A~23Hは、SynNotch GPC3誘導性CD147-CAR T細胞がGPC3+CD147+HepG2細胞を選択的に標的とするが、GPC3+CD147-またはGPC3-CD147+HepG2細胞を標的としないことを示している。図23Aは、SFGレトロウイルスベクター中のGPC3-Gal4VP64-synNotch受容体およびpHRレンチウイルスベクターに基づくCD147-CARの概略設計である。SFGレトロウイルスベクターはeGFPを含有し、これはGPC3-Gal4VP64-synNotch陽性細胞を選択するためのマーカーとして使用することができる。pHR構築物は、CD147特異的一本鎖抗体断片(クローン、5F6)、ヒトIgG1 CH2CH3ヒンジ領域、およびCD28膜貫通領域、それに続く共刺激CD28、4-1BBの細胞内ドメイン、およびCD3ζの細胞内ドメインを含んでいた。pHRレンチウイルスベクターはmCherryを含有し、これはCD147-CAR陽性細胞を選択するためのマーカーとして使用することができる。図23Bは、両方の抗原が共発現された場合には誘導された細胞傷害性を示すが、バイスタンダーまたは健康な細胞の上で個別に発現された場合には細胞傷害性を示さない、「論理ゲート(Logic-gated)」GPC3-synNotchおよびCD147-CARの概略設計である。図23Cおよび23Dは、GPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherryベクターで共形質導入したT細胞の概略実験設計(図23C)ならびにGPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherryの発現の代表的なフローサイトメトリー解析(図23D)である。図23Eは、T細胞に共形質導入し、GPC3highCD147lowHepG2細胞系によりプライミングし、続いてmCherry陽性のみ、GFP陽性のみ、GFPおよびmCherryの二重陽性、ならびにGFPおよびmCherryの二重陰性のサブセットを含む形質導入されたT細胞の様々なサブセットの中でCD147-CAR発現解析したGPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherryベクターの概略実験設計である。図23Fは、形質導入されたT細胞の様々なサブセットの表面におけるCD147-CAR発現の代表的なフローサイトメトリー解析を示す。平均蛍光強度(MFI)とCD147-CARのパーセンテージの両方を各代表的なフローサイトメトリーチャートに表示している。図23Gは、HepG2腫瘍細胞系におけるCD147およびGPC3の発現の代表的なフローサイトメトリー解析である。図23Hは、様々なHepG2腫瘍細胞系による2時間の「プライミングおよび誘発」プロトコールの後の形質導入されたT細胞の様々なサブセットにおける表面CD107a発現の定量的解析を示す。データは2回の独立した実験の代表である。
図23-2】同上。
図23-3】同上。
図24図24は、ガンマセクレターゼ阻害剤(MK-0752、Notchシグナル伝達阻害剤)が、GPC3-SynNotch-eGFP+およびCD147-CAR-mCherry+初代T細胞サブセットにおいてGPC3-SynNotch誘導性CD147-CAR発現を特異的に遮断するが、他の初代T細胞のサブセットでは遮断しないことを示す。初代T細胞の様々なサブセットの中のCD147-CAR発現の代表的なフローサイトメトリー解析(中間)。形質導入されたT細胞は、それぞれDMSO(0.3%、対照)、MK-0752(10μM)、TAPI-1(10μM)、GI254023X(10μM)、およびMK-0752+TAPI-1+GI254023Xの組合せで処置した。一方、これらの細胞をCD147KO GPC3high HepG2細胞の存在下でプライミングした。形質導入されたT細胞の様々なサブセットの表面におけるCD147-CARの発現は、フローサイトメトリーによって解析した。平均蛍光強度(MFI)とCD147-CARのパーセンテージの両方を各代表的なフローサイトメトリーチャートに表示している。データは2回の独立した実験の代表である。全てのデータは平均±SEMとして提示している。
図25-1】図25A~25Hは、SynNotch CD147誘導性GPC3-CAR T細胞がGPC3+CD147+HepG2細胞を選択的に標的とするが、GPC3+CD147-またはGPC3-CD147+のHepG2細胞を標的としないことを示す。図25Aは、SFGレトロウイルスベクター中のMyc-CD147-Gal4VP64-SynNotch受容体、およびpHRレンチウイルスベクターに基づくGPC3-CARの概略設計である。SFGレトロウイルスベクターはMycタグを含有し、これはCD147-Gal4VP64-SynNotch陽性細胞を選択するためのマーカーとして使用することができる。pHR構築物は、GPC3特異的一本鎖抗体断片(scFv、クローン5F6、mIgG1)、ヒトIgG1 CH2CH3ヒンジ領域、およびCD28膜貫通領域、これに続く共刺激CD28、4-1BBの細胞内ドメインおよびCD3ζの細胞内ドメインからなっていた。pHRレンチウイルスベクターはmCherryを含有し、これはGPC3-CAR陽性細胞を含む細胞を選択するためのマーカーとして使用することができる。図25Bは、両方の抗原が共発現された場合には誘導された細胞傷害性を示すが、バイスタンダーまたは健康な細胞の上で個別に発現された場合には活性化されない、「論理ゲート」CD147-SynNotchおよびGPC3-CARの概略設計である。図25Cおよび25Dは、Myc-CD147-SynNotchおよびGPC3-CAR-mCherryベクターで共形質導入したT細胞の概略実験設計(図25C)ならびにMyc-CD147-SynNotchおよびGPC3-CAR-mCherry発現の代表的なフローサイトメトリー解析(図25D)である。図25Eは、T細胞に共形質導入し、GPC3highCD147lowHepG2細胞系によりプライミングし、続いてmCherry陽性のみ、GFP陽性のみ、GFPおよびmCherryの二重陽性、ならびにGFPおよびmCherryの二重陰性のサブセットを含む形質導入されたT細胞の様々なサブセットの中でGPC3-CAR発現解析したMyc-CD147-SynNotchおよびGPC3-CAR-mCherryベクターの概略実験設計である。図25Fは、形質導入されたT細胞の様々なサブセットの表面におけるGPC3-CAR発現の代表的なフローサイトメトリー解析である。平均蛍光強度(MFI)とGPC3-CARのパーセンテージの両方を各代表的なフローサイトメトリーチャートに表示している。図25Gは、様々なHepG2腫瘍細胞系による「プライミングおよび誘発」プロトコールの後の形質導入されたT細胞の様々なサブセットにおける表面CD107a発現の代表的なフローサイトメトリー解析である。図25Hは、様々なHepG2腫瘍細胞系による「プライミングおよび誘発」プロトコールの後の形質導入されたT細胞の様々なサブセットにおける表面CD107a発現の定量的解析を示す。CD107aのMFIの倍数変化は以下のように計算した。[(MFI試料-MFIプライミングのみ)/MFIプライミングのみ]。データは2回の独立した実験の代表である。全てのデータは平均±SEMとして提示している。p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。
図25-2】同上。
図25-3】同上。
図26図26A~26Dは、SynNotch GPC3誘導性CD147-CAR T細胞がGPC3highCD147highHepG2細胞を選択的に殺滅するが、CD147knockoutGPC3highHepG2細胞を殺滅しないことを示す。図26Aおよび26Bは、CD3、CD56、GPC3-synNotch-GFP、およびCD147-CAR-mCherry発現の代表的なフローサイトメトリー解析である。初代PBMCにCD147-CAR-mCherryレンチウイルスを形質導入した。これらのmCherry陽性T細胞を、フローサイトメトリーを使用してソートし、続いてGPC3-synNotch-GFPレトロウイルスを二次形質導入した。CD3およびCD56の代表的なフローサイトメトリー解析(図26A)ならびにGPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherryの発現(図26B)をそれぞれ表示する。図26Cは、7時間のFFlucレポーターアッセイによって測定したHepG2-CD147high-GPC3highおよびHepG2-CD147knockout-GPC3highに対する初代GPC3-synNotch-GFP-CD147-CAR-mCherry T細胞の細胞傷害性のグラフである。図26Dは、7時間のCr-51放出アッセイによって測定したHepG2-CD147high-GPC3highおよびHepG2-CD147knockout-GPC3highに対する初代GPC3-synNotch-GFP-CD147-CAR-mCherry T細胞の細胞傷害性を示すグラフである。データは2回の独立した実験の代表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
配列表
本明細書または添付した配列表に列挙した任意の核酸およびアミノ酸の配列は、37C.F.R.§1.822に定義されたヌクレオチド塩基およびアミノ酸の標準的な略号を使用して示している。少なくとも一部の例では、各核酸配列の1つの鎖のみが示されているが、表示された鎖への任意の参照によって相補的な鎖が含まれていると理解される。
配列番号1は改変されたCD147scFvをコードする核酸配列である。ヌクレオチド349~409はリンカー配列である。
配列番号2は改変されたCD147scFvのアミノ酸配列である。
配列番号3は出発CD147scFvをコードする核酸配列である。
配列番号4はCD147-CARをコードする核酸配列である。シグナルペプチド:ヌクレオチド1~57;VHドメイン:ヌクレオチド58~411;リンカー配列:ヌクレオチド412~468;VLドメイン:ヌクレオチド469~792;CD28 TMドメイン-41BB細胞内ドメイン-CD3ζドメイン:ヌクレオチド793~2202。
配列番号5はCD147-CARのアミノ酸配列である。シグナルペプチド:アミノ酸1~19;VHドメイン:アミノ酸20~137;リンカー配列:アミノ酸138~156;VLドメイン:アミノ酸157~264;CD28 TMドメイン-41BB細胞内ドメイン-CD3ζドメイン:アミノ酸269~734。
配列番号6は誘導性カスパーゼ9を含むCD14-CARをコードする核酸配列である。iカスパーゼ9配列はヌクレオチド355~1200である。
配列番号7はCD147-iカスパーゼ9-CARのアミノ酸配列である。アミノ酸119~400はiカスパーゼ9である。
配列番号8は抗CD147 VH CDRドメインのアミノ酸配列である。
配列番号9は抗CD147 VL CDRドメインのアミノ酸配列である。
配列番号10および11はCD147ノックアウト細胞系を生成するために使用されるCD147を標的とするガイドRNAである。
配列番号12は例示的なIL-15受容体細胞内ドメインである。
配列番号13は元のscFv配列(配列番号3)と比較して最適化されたCD147scFv核酸配列(配列番号1)のコンセンサス核酸配列である。
配列番号14はGal4UAS CD147-CAR構築物の核酸配列である。
配列番号15はpHR_Gal4UAS-CD147-CAR-pGK_mCherryベクターの核酸配列である。
配列番号16はGPC3-CARの核酸配列である。
配列番号17はGAL4-VP64アクチベーターをコードする核酸である。
配列番号18~35はプラスミドの構築に使用されるプライマーの核酸配列である。
【0019】
詳細な説明
新規なCD147標的化CARを発現する免疫細胞(T細胞およびNK細胞を含む)が本明細書で開示される。CD147抗原の生物学的特性により、CD147-CAR-NK細胞およびCD147-CAR-T細胞がin vitroおよびin vivoで肝細胞癌に対する強力な抗腫瘍活性を産生することが可能になる。さらに、CD147-CAR-NK細胞はin vitroでヒト神経芽腫細胞を殺滅することもできる。
【0020】
CD147は様々な発現レベルでいくつかの臓器でも発現されるので、CD147-CAR改変免疫細胞は「オンターゲット、オフ腫瘍」毒性を示す可能性がある。「自殺遺伝子」(誘導性カスパーゼ9など)ならびにCD147およびGPC3などの2つの抗原の結合に際してのみ活性化されるCAR発現細胞のような組合せ処置を含む、この毒性の可能性に対処するための構築物および方法が本明細書で開示される。
【0021】
I.用語
他に注記しない限り、技術用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Lewin's Genes X, ed. Krebs et al., Jones and Bartlett Publishers, 2009 (ISBN 0763766321)、Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Publishers, 1994 (ISBN 0632021829)、Robert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by Wiley, John & Sons, Inc., 1995 (ISBN 0471186341)、およびGeorge P. Redei, Encyclopedic Dictionary of Genetics, Genomics, Proteomics and Informatics, 3rd Edition, Springer, 2008 (ISBN: 1402067534)、ならびに他の同様の参照文献に見出され得る。
【0022】
他に説明しない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって他が明確に示されない限り、複数の参照を含む。「AまたはBを含む」は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドについて与えられる全ての塩基のサイズまたはアミノ酸のサイズ、および全ての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために提供されることがさらに理解されるべきである。
【0023】
本明細書に記載したものと同様または等価の方法および材料は本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が以下に記載されている。本明細書で述べる全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は参照によりその全体が組み込まれ、GenBank受託番号も同様である。矛盾する場合には、本明細書が用語の説明を含めて優先する。さらに、材料、方法、および実施例は説明のみであって限定することを意図していない。
【0024】
本開示の種々の実施形態の概要を容易にするために、特定の用語について以下の説明が提供される。
【0025】
抗体:抗原のエピトープを認識し、これに結合する(例えば特異的に認識し、特異的に結合する)少なくとも1つの可変領域を含むポリペプチドリガンド。哺乳動物の免疫グロブリン分子は重(H)鎖および軽(L)鎖から構成されており、そのそれぞれが、それぞれ可変重(V)領域および可変軽(V)領域と称される可変領域を有する。V領域およびV領域は一緒に、抗体によって認識される抗原の結合に関与している。哺乳動物の免疫グロブリンには5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ)があり、これらが抗体分子:IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEの機能活性を決定する。
【0026】
抗体可変領域は、「フレームワーク」領域および「相補性決定領域」または「CDR」として公知の超可変領域を含有する。CDRは抗原のエピトープへの結合に主に関与している。抗体のフレームワーク領域はCDRを三次元空間において位置決めし、整列させるために働く。所与のCDRのアミノ酸配列の境界は、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991;「Kabat」番号付けスキーム)、Chothiaら(Chothia and Lesk, J Mol Biol 196:901-917, 1987、Chothia et al., Nature 342:877, 1989、およびAl-Lazikani et al., (JMB 273, 927-948, 1997; 「Chothia」番号付けスキームを参照)、およびImMunoGeneTics(IMGT)データベース(Lefranc, Nucleic Acids Res 29:207-9, 2001、「IMGT」番号付けスキームを参照)によって記載されたものを含む周知のいくつかの番号付けスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。KabatおよびIMGTのデータベースはオンラインで維持されている。
【0027】
一本鎖抗体(scFv)は、遺伝子的に融合した一本鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された1つまたは複数の抗体のVおよびVドメインを含有する遺伝子操作された分子である(例えばBird et al., Science, 242:423-426, 1988、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 85:5879-5883, 1988、Ahmad et al., Clin. Dev. Immunol., 2012, doi:10.1155/2012/980250、Marbry, IDrugs, 13:543-549, 2010を参照)。scFvにおけるVドメインおよびVドメインの分子内配向は典型的にはscFvについて決定的ではない。したがって、両方の可能な配置(Vドメイン-リンカードメイン-Vドメイン、Vドメイン-リンカードメイン-Vドメイン)を有するscFvを使用することができる。dsFvでは、VおよびVはジスルフィド結合を導入して鎖の会合を安定化するように変異している。ダイアボディも含まれ、これはVおよびVドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現しているが、同じ鎖における2つのドメインの間で対形成することを可能にするには短すぎるリンカーを使用していて、それによりドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を作出する、二価で二重特異性の抗体である(例えばHolliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 90:6444-6448, 1993、Poljak et al., Structure, 2:1121-1123, 1994を参照)。
【0028】
抗体には、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体)などの遺伝子操作された形態も含まれる。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL)、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997も参照されたい。
【0029】
がん:異常なまたは制御されない細胞成長によって特徴付けられる悪性腫瘍。がんと関連することが多い他の特色には、転移、近隣細胞の正常な機能への干渉、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出および炎症性または免疫学的な応答の抑制または悪化、リンパ節などの周囲または遠位の組織または臓器の侵襲などが含まれる。「転移性疾患」は、元の腫瘍部位を離れ、例えば血流またはリンパ系を介して身体の他の部分に移動したがん細胞を指す。
【0030】
CD147:ベイシジン(BSG)としても公知の細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(EMMPRINまたはEMPRIN)。正常な細胞機能および疾患において多数の機能を有する膜貫通糖タンパク質(Hahn et al., J. Leukocyte Biol. 98:33-48, 2015)。CD147は免疫細胞において、T細胞の活性化および増殖、ならびに細胞の遊走、付着、および侵襲のために重要である(Hahn et al., J. Leukocyte Biol. 98:33-48, 2015)。CD147は種々の細胞型(例えば造血、上皮、および内皮細胞)において様々なレベルで発現され(Liao et al., Mol. Cell Biol. 31:2591-2604, 2011)、HCCなどの疾患状態で有意に上方調節され得る。
【0031】
CD147の配列は公的に利用可能である。例えば、GenBank受託番号NM_198590、NM_198591、NM_001728、NM_198589、およびNM_001322243はヒトCD147核酸配列を開示し、GenBank受託番号NP_940992、NP_940993、NP_001719、NP_940991、およびNP_001309172はヒトCD147アミノ酸配列を開示している。同様に、NM_009768およびNM_001077184はマウスCD147核酸配列を開示し、GenBank受託番号NP_033898およびNP_001070652はマウスCD147アミノ酸配列を開示している。これらの配列の全ては、2019年3月15日にGenBankに存在するように参照により組み込まれる。
【0032】
キメラ抗原受容体(CAR):抗原結合性部分(単一ドメイン抗体またはscFvなど)およびT細胞受容体由来のシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζ)などのシグナル伝達ドメインを含むキメラ分子。典型的には、CARは抗原結合性部分、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、典型的にはCD3ζまたはFcεRIγなどの免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を有するシグナル伝達鎖を含む。一部の場合には、細胞内ドメインは、CD28、4-1BB(CD137)、ICOS、OX40(CD134)、CD27、および/またはDAP10などの少なくとも1つのさらなる共刺激ドメインの細胞内部分も含む。
【0033】
相補性決定領域(CDR):抗体の結合親和性および特異性を定義する超可変アミノ酸配列の領域。哺乳動物の免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれVL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3、およびVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3と指定される3つのCDRをそれぞれ有する。
【0034】
グリピカン-3(GPC3):CD26に結合し、その活性を阻害する細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン。GPC3は一部の細胞型においてアポトーシスを誘導し得る。GPC3は肝細胞癌、黒色腫、卵巣明細胞癌、卵黄嚢腫瘍、神経芽腫、肝芽腫、およびウィルムス腫瘍を含む一部の腫瘍によって発現される。
【0035】
GPC3の配列は公的に利用可能である。例えば、GenBank受託番号NM_001164619、NM_001164618、NM_004484、およびNM_001164617は例示的なヒトGPC3核酸配列を開示し、GenBank受託番号NP_001158091、NP_001158090、NP_004475、およびNP_001158089は例示的なヒトGPC3アミノ酸配列を開示している。同様に、GenBank受託番号NM_016697は例示的なマウスGPC3核酸配列を開示し、GenBank受託番号NP_057906は例示的なマウスGPC3アミノ酸配列を開示している。これらの配列のそれぞれは、2020年2月27日にGenBankに存在するように参照により組み込まれる。
【0036】
単離された:核酸、タンパク質(抗体を含む)、またはオルガネラなどの「単離された」生物学的成分は、その成分が天然に存在する環境(細胞など)中の他の生物学的成分、即ち他の染色体のおよび染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質、およびオルガネラから実質的に分離または精製されている。「単離され」ている核酸およびタンパク質は、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。用語は、宿主細胞中で組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
【0037】
肝がん:肝細胞癌(HCC)は、肝の原発性悪性腫瘍の最も一般的な型であり、ウイルス性肝炎(例えばB型肝炎またはC型肝炎)、毒物への曝露、または肝硬変(アルコール依存症によって引き起こされることがある)を有する患者で起こることが多い。他の型の肝がんには、肝内胆管癌(iCCA)、線維層板癌、および肝芽腫が含まれる。
【0038】
ナチュラルキラー(NK)細胞:特定の抗原刺激の非存在下、MHCクラスによる制約なしに標的細胞を殺滅する免疫系の細胞。標的細胞は腫瘍細胞またはウイルスを有する細胞であり得る。NK細胞はCD56表面マーカーの存在およびCD3表面マーカーの非存在によって特徴付けられる。NK細胞は典型的には正常末梢血中の単核細胞画分のほぼ10~15%を占める。歴史的には、NK細胞は事前の免疫や活性化なしにある特定の腫瘍細胞を溶解するそれらの能力によって最初に同定された。NK細胞は、MHCクラスI提示を下方調節することによってCTL応答を逃れ得るウイルスおよび腫瘍に対する「バックアップ」防御機構を提供すると考えられる。直接の細胞傷害性殺滅への関与に加えて、NK細胞はサイトカイン産生における役割も果たしており、これはがんおよび感染を制御するために重要であり得る。
【0039】
一部の例では、「改変されたNK細胞」は、異種核酸(例えば本明細書で開示する核酸またはベクターの1つまたは複数)によって形質導入もしくはトランスフェクトされた、または1つもしくは複数の異種タンパク質を発現するNK細胞である。用語「改変されたNK細胞」および「形質導入されたNK細胞」は、本明細書の一部の例で相互交換可能に使用される。
【0040】
精製された:用語「精製された」は完全な純粋さを必要としない。むしろ、これは相対的な用語として意図されている。したがって、例えば精製されたタンパク質または核酸の調製物は、タンパク質または核酸が、タンパク質または核酸が天然の環境(例えば細胞内)にある場合よりも富化されている調製物である。一実施形態では、調製物はタンパク質または核酸が調製物の総タンパク質または核酸の含量の少なくとも50%を表すように精製される。実質的な精製は、他のタンパク質または細胞成分からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質または核酸は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、または98%純粋である。したがって、1つの具体的な非限定的な例では、実質的に精製されたタンパク質または核酸は、他の成分を90%含まない。
【0041】
組換え:天然に存在しない配列を有するか、または他の方法で分離された配列の2つのセグメントの人工的な組合せによって作製された配列(例えば「キメラ」配列)を有する、核酸またはタンパク質。この人工的な組合せは、化学合成によって、または核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって、例えば遺伝子操作技法によって、達成することができる。
【0042】
対象:生きている多細胞脊椎動物、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含めたヒト対象および獣医学的対象の両方を含むカテゴリー。
【0043】
T細胞:免疫応答の重要なメディエーターである白血球(リンパ球)。T細胞にはCD4T細胞およびCD8T細胞が含まれるが、これらに限定されない。CD4Tリンパ球は、「分化抗原群4」(CD4)として公知のマーカーをその表面に有する免疫細胞である。これらの細胞はヘルパーT細胞としても公知であり、抗体応答ならびにキラーT細胞の応答を含む免疫応答を組織化することを助ける。CD8T細胞は「分化抗原群8」(CD8)マーカーを有する。一実施形態では、CD8T細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。別の実施形態では、CD8細胞はサプレッサーT細胞である。
【0044】
活性化されたT細胞は、細胞増殖の増加および/または1つもしくは複数のサイトカイン(IL-2、IL-4、IL-6、IFNγ、またはTNFαなど)の発現もしくは分泌によって検出することができる。CD8+T細胞の活性化は、抗原への応答における細胞溶解活性の増加によっても検出することができる。
【0045】
一部の例では、「改変されたT細胞」は、異種核酸(例えば本明細書で開示する核酸またはベクターの1つまたは複数)を形質導入もしくはトランスフェクトされた、または1つもしくは複数の異種タンパク質を発現するT細胞である。用語「改変されたT細胞」および「形質導入されたT細胞」は、本明細書の一部の例で相互交換可能に使用される。
【0046】
形質導入されたまたは形質転換された:形質転換された細胞は、その中に核酸分子が分子生物学的技法によって導入された細胞である。本明細書で使用される場合、用語「形質導入」および「形質転換」は、それによって核酸分子がそのような細胞に導入され得る、ウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターの使用、ならびに電気穿孔、リポフェクション、およびパーティクルガン加速によるDNAの導入を含む全ての技法を包含する。
【0047】
疾患を処置するまたは改善する:「処置する」は、疾患または病態が発症し始めた後、その兆候または症状を低減または阻害する治療介入、例えば腫瘍サイズまたは腫瘍負荷の低減を指す。「改善する」は、がんなどの疾患の兆候または症状の数または重症度の低減を指す。
【0048】
ベクター:宿主細胞に(例えばトランスフェクションまたは形質導入によって)導入することができ、それにより形質転換された宿主細胞を産生する核酸分子。組換えDNAベクターは、組換えDNAを有するベクターである。ベクターは、宿主細胞中で複製することを可能にする核酸配列、例えば複製の起点を含み得る。ベクターは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および当技術分野で公知の他の遺伝子エレメントも含み得る。ウイルスベクターは、1つまたは複数のウイルスに由来する少なくともいくつかの核酸配列を有する組換え核酸ベクターである。複製欠如ウイルスベクターは、少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能の欠如により、複製に必要なウイルスゲノムの1つまたは複数の領域の補完を必要とするベクターである。
【0049】
II.いくつかの実施形態の概要
改変されたCD147scFvを含むCD147特異的結合剤が本明細書で開示される。ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインに融合されたCD147特異的結合剤をコードするキメラ抗原受容体(CAR)も開示される。一部の例では、共刺激ドメインはCD28および/または4-1BB由来であり、シグナル伝達ドメインはCD3ζ由来である。CD147特異的結合剤およびCD147-CARをコードする核酸ならびに核酸を含むベクターも提供される。
【0050】
CD147-CARを発現する改変された免疫細胞(例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージ)も本明細書で提供される。一部の実施形態では、改変された免疫細胞は、肝炎ウイルス(例えばB型肝炎またはC型肝炎)を標的とするCARなどの、1つまたは複数のさらなるCARを発現する。他の実施形態では、改変された免疫細胞は、誘導性CD147-CARおよびCD147-CARの発現を誘導する構築物、例えばCD147-CARのインデューサーの発現を推進する抗GPC3 SynNotch構築物を発現する。さらなる実施形態では、改変された免疫細胞は、誘導性GPC3-CARおよびGPC3-CARの発現を誘導する構築物、例えばGPC3-CARのインデューサーの発現を推進する抗CD147 SynNotch構築物を発現する。特定の例では、CD147-CARおよび/または抗CD147 SynNotch構築物は、本明細書で開示する改変されたCD147scFvを含む。
【0051】
対象におけるCD147を発現するがんを処置する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、CD147-CARをコードする核酸を含む有効量の改変された免疫細胞(例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージ)を対象に投与することを含む。他の実施形態では、方法は、誘導性CD147-CARをコードする核酸およびCD147-CAR発現のインデューサーを発現する抗GPC3 SynNotchのための核酸を含む有効量の改変された免疫細胞(例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージ)を対象に投与することを含む。さらに他の実施形態では、方法は、GPC3-CARをコードする核酸およびGPC3-CAR発現のインデューサーを発現する抗CD147 SynNotch構築物を含む有効量の改変された免疫細胞(例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージ)を対象に投与することを含む。一部の例では、改変された免疫細胞は自己である。他の例では、免疫細胞は同種である。一部の具体的な例では、対象は肝細胞癌または神経芽腫を有する。
【0052】
III.CD147特異的結合剤
一部の例ではキメラ抗原受容体の標的化部分として使用されるCD147結合剤が本明細書で開示される。一部の実施形態では、CD147結合剤は5F6クローン由来のCD147特異的scFvをコードする改変された断片であるCD147scFvである(米国特許第8,618,264号)。図20は、出発CD147scFv核酸配列(配列番号3)および改変されたscFv核酸配列(配列番号1)のアラインメントを示す。一部の例では、改変されたCD147特異的scFvは高発現CD147細胞に結合する。
【0053】
一部の実施形態では、CD147特異的結合剤は、CD147に特異的に結合する単一ドメイン抗体(scFvなど)であり、表1に提供するCDR配列を含む。一部の例では、scFvはCD147に特異的に結合し、配列番号8の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号9の可変軽鎖(VL)ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvは表1で提供するCDRアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有する。他の実施形態では、scFvは配列番号1のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【表1】
【0054】
追加の例では、scFvは表1に提供するCDR配列を含む核酸によってコードされ、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有する。他の実施形態では、scFvは配列番号2のヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる核酸によってコードされる。
【0055】
上記のCD147特異的結合剤をコードする核酸を含むベクターも提供される。一部の例では、ベクターは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性)を有する核酸を含み、例えば配列番号2と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。
【0056】
さらなる例では、Gal4-VP64(例えば配列番号17)をコードする核酸に作動可能に連結されたCD147特異的結合剤をコードする核酸(例えば配列番号1と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸)が本明細書で提供される。一部の例では、核酸はSynNotch構築物の部分である。CD147がこの構築物によってコードされるタンパク質に結合する場合、Gal4-VP64が活性化され、Gal4応答性エレメント(例えばGal4UAS)を有する構築物の発現を誘導することができる。抗CD147scFv SynNotchインデューサー構築物をコードする例示的なベクターを図25Aに示す。
【0057】
IV.CD147キメラ抗原受容体
上のセクションIIIに記載したCD147特異的結合剤を含むCD147-CARが本明細書で提供される。一部の実施形態では、CARは、CD147特異的scFv(例えば配列番号2)、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに少なくとも1つの共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含む抗原結合ドメインを含む。
【0058】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、例えば配列番号2と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列を有するか、または配列番号2のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなるCD147特異的scFvである。
【0059】
一部の実施形態では、ヒンジドメインはIgGヒンジ領域である。一例では、ヒンジドメインはIgG1ヒンジである。他のヒンジドメイン、例えば他の免疫グロブリン(例えばIgG4またはIgD)由来のヒンジ領域、またはCD8、CD28、もしくはCD40由来のヒンジ領域を使用することができる。
【0060】
追加の実施形態では、膜貫通ドメインはCD28膜貫通ドメインである。一例では、膜貫通ドメインはCD28由来である。膜貫通ドメインは、他のT細胞タンパク質、例えばCD8、CD4、CD3ζ、CD40、OX40L、41BBL、ICOS、ICOS-L、CD80、CD86、ICAM-1、LFA-1、ICAM-1、CD56、CTLA-4、PD-1、TIM-3、NKP30、NKP44、NKP40、NKP46、B7-H3、PD-L1、PD-2、およびCD70由来であってもよい。
【0061】
さらなる実施形態では、細胞内ドメインは、共刺激分子由来の1つまたは複数の細胞内領域、またはその部分を含む。例示的な共刺激分子には、CD28、4-1BB、CD8、CD40、OX-40、ICOS、CD27、およびDAP10、OX40-L、4-1BBL、ICOS-L、CD80、CD86、ICAM-1、LFA-1、CD56、CTLA-4、PD-1、TIM-3、NKP30、NKP44、NKP40、NKP46、B7-H3、PD-L1、PD-2、およびCD70が含まれる。特定の例では、共刺激ドメインはCD28および/または4-1BB由来である。一例では、共刺激ドメインはCD28と4-1BBの両方由来のドメインを含む。細胞内ドメインは、CD3ζ由来の細胞内シグナル伝達ドメインも含む。他の例では、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10、DAP12、PDK、またはFcεRIγ由来である。一例では、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζ由来である。
【0062】
一部の実施形態では、CD147-CARはシグナル配列も含み、これはscFvドメインのN末端に位置している。一部の例では、シグナル配列はIgGシグナル配列またはGM-CSFシグナル配列である。一例では、シグナル配列は配列番号5のアミノ酸1~19である。
【0063】
特定の実施形態では、CD147-CARは、配列番号5と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含む。一部の例では、CD147-CARは配列番号5のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0064】
追加の実施形態では、CD147-CARは、CD147-CAR発現細胞を排除するために使用することができる誘導性遺伝子(例えば「自殺」遺伝子)をさらに含む。誘導性遺伝子は、サイトカイン放出症候群(「サイトカインストーム」)などのオフターゲット副作用(またはオンターゲット/オフ腫瘍効果)の事象において活性化され得る。一部の例では、自殺遺伝子の発現は、テトラサイクリンもしくはドキシサイクリン(「TET ON」システム)またはラパマイシンなどの小分子によって誘導可能である。例えばGargett et al., Front. Pharmacol. 5:235, 2014、Stavrou et al., Mol. Ther. 6:1266-1276, 2018を参照されたい。他の例では、自殺遺伝子はFasドメイン誘導性システムによって誘導可能である。一部の例では、誘導性自殺ドメインはCARの抗原結合ドメインのN末端またはC末端に位置しているが、他の例では、誘導性自殺ドメインはCARのCD3ζドメインのC末端に位置している。誘導性自殺ドメインは自己切断性ペプチド(例えばP2AペプチドまたはT2Aペプチド)によってCARから分離されている。一部の実施形態では、誘導性自殺ドメインはカスパーゼ9、例えば配列番号7のアミノ酸119~400を含む。一部の例では、テトラサイクリン誘導性カスパーゼ9を含むCD147-CARは、配列番号7と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含む。他の例では、テトラサイクリン誘導性カスパーゼ9を含むCD147-CARは、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0065】
他の実施形態では、CD147-CARは、CARを発現する改変された免疫細胞の生存または持続性を増大させるドメインをさらに含む。一部の例では、ドメインはサイトカイン受容体由来の細胞内ドメイン、例えばインターロイキン(IL)受容体15(例えば配列番号12)、IL-12受容体またはIL-18受容体由来の細胞内ドメインである。他の例では、ドメインは成長因子受容体由来の細胞内ドメイン、例えばCD40、NKG2D、NKP40、またはNKP46由来の細胞内ドメインである。一部の例では、ドメインはCARのCD3ζドメインのC末端に位置している。
【0066】
一部の例では、CD147-CARは、腫瘍細胞上でCD147と共発現する抗原に特異的に結合する1つまたは複数の追加の抗原結合ドメインをさらに含む。一部の非限定的な例では、CD147-CARは、肝がん抗原、例えばグリピカン-3、アルファ-フェトプロテイン、またはムチン-1の1つまたは複数に特異的に結合する少なくとも1つの追加の抗原結合ドメインを含む。追加の腫瘍抗原は、処置されるがんの型に基づいて選択することができる。
【0067】
本明細書で開示するCD147-CARをコードする核酸も提供される。一部の実施形態では、核酸は、CD147特異的scFvを含むCAR、例えば配列番号1と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有する核酸配列をコードするか、または配列番号1の核酸配列を含むかもしくはそれからなる。一部の例では、CD147特異的CAR核酸は、IgGヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28および4-1BB共刺激ドメイン、ならびにCD3ζドメインもコードする。一例では、CD147特異的CARは、配列番号4と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有する核酸配列によってコードされるか、または配列番号4の核酸配列を含むかもしくはそれからなる。他の例では、CD147特異的CAR核酸は、誘導性カスパーゼ9ドメイン、例えば配列番号6と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有する核酸配列もコードするか、または配列番号6の核酸配列を含むかもしくはそれからなる。
【0068】
本明細書に記載したCARの機能性バリアントまたはそのドメインも提供され、これらは、バリアントであるかまたは特定のドメインの生物活性を保持しているCARの生物活性を保持している。機能性バリアントは、親のCARまたはドメインに対してアミノ酸配列において少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%)、約97%、約98%、約99%、またはそれよりも大きく同一であり得る。置換は、例えば細胞外標的化ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインの1つまたは複数において行うことができる。
【0069】
一部の例では、機能性バリアントは、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換(例えば10個までの保存的アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的置換)を有する親のCARまたはドメインのアミノ酸配列を含む。他の例では、機能性バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換(例えば10個までの非保存的アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の非保存的置換)を有する親のCARまたはドメインのアミノ酸配列を含む。この場合には、非保存的アミノ酸置換は、機能性バリアントの生物活性に干渉も阻害もしない。非保存的アミノ酸置換は機能性バリアントの生物活性を増強し得、それにより、機能性バリアントの生物活性は親のCARまたはドメインと比較して増大する。
【0070】
CARまたはそのドメインは、一部の例では、1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸の代わりに、1つまたは複数の合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸には、例えばアミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、a-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、trans-3-およびtrans-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、N’,N’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、oc-アミノシクロヘプタンカルボン酸、-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンが含まれる。CARは、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、ホスホリル化、エステル化、N-アシル化、例えばジスルフィド結合による環化、もしくは酸付加塩への変換、および/または必要に応じて二量体化もしくは重合、またはコンジュゲートしてもよい。
【0071】
一部の実施形態では、開示したCARをコードする核酸分子は、宿主細胞、例えばT細胞またはNK細胞における発現のために発現ベクター(例えばウイルスベクター)中に含まれる。一部の例では、発現ベクターは、CARをコードする核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。追加の発現制御配列、例えば1つまたは複数のエンハンサー、転写および/または翻訳のターミネーター、および開始配列も、発現ベクターに含めることができる。一部の実施形態では、本明細書で提供するCD147-CARをコードする核酸は、ウイルスベクターに含まれる。好適なウイルスベクターの例には、レトロウイルス(例えばMoMLVまたはレンチウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、および鶏痘ウイルスが含まれる。具体的な例では、CD147-CARをコードする核酸は、MoMLVベクター、例えばSFGレトロウイルスベクターまたはpHAGE-CPPTレンチウイルスベクターに含まれる。他の例では、ベクターはDNAベクターであってよい。
【0072】
一部の実施形態では、ベクターは、CD147-CARの誘導性発現を可能にする上流活性化配列(UAS)をさらに含む。1つの非限定的な例では、UASは、Gal4によって活性化されるGal4UASである。しかし、当業者であれば、利用することができる他のトランス活性化システムを特定することができる。一例では、Gal4UAS CD147-CAR核酸は、配列番号14と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性)を有する核酸配列を含む。Gal4UAS CD147-CAR構築物をコードする例示的なベクター、例えばpHR_Gal4UAS-CD147-CAR-pGK_mCherryを、図23Aに示す。一部の例では、ベクターは、配列番号15と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性)を有する核酸配列を含む。一部の例では、ベクターは選択可能なマーカー(例えば配列番号15におけるmCherry)を含むが、他の例では選択可能なマーカーはベクターに含まれない。
【0073】
一部の例では、ベクターは、少なくとも1つの追加のCARをコードする核酸配列をさらに含む。一部の例では、追加のCARは追加の腫瘍抗原に特異的であり、例えばCD147を発現または過剰発現する腫瘍細胞へのCD147-CARの標的化の特異性を増大させる。一部の例では、ベクターは、肝がん抗原、例えばグリピカン-3、アルファ-フェトプロテイン、またはムチン-1の1つまたは複数に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む1つまたは複数のCARをコードする核酸を含む。追加の腫瘍抗原/CARは、処置されるがんの型に基づいて選択することができる。他の例では、ベクターは、B型肝炎またはC型肝炎に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする核酸を含む。一部の例では、追加のCARは、HBVエンベロープタンパク質またはB型肝炎表面抗原(HBsAg)に結合する。他の例では、追加のCARは、HCV E2糖タンパク質に結合する。一部の例では、1つまたは複数の追加のCARは、例えばP2Aペプチド配列などの自己切断性ペプチドによって分離されたCD147-CARを有するベクターに含まれる。
【0074】
V.CD147 CARまたはCD147特異的結合剤を発現する細胞
開示したCD147-CARまたはCD147特異的結合剤を発現する細胞(例えば免疫細胞)も本明細書で提供される。特定の実施形態では、細胞にはT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージが含まれる。一部の実施形態では、細胞はCD147-CARを発現するT細胞、NK細胞、またはマクロファージである。
【0075】
一部の例では、細胞は抗GPC3scFVなどのGPC3特異的結合剤をさらに発現する。特定の例では、細胞はGal4-VP64をコードする核酸に作動可能に連結された抗GPC3scFV(例えばSynNotch構築物)を発現する。GPC3がこの構築物によってコードされるタンパク質に結合する場合、Gal4-VP64が活性化され、Gal4応答性エレメントを有する構築物(例えばGal4UAS)の発現を誘導することができる。抗GPC3scFv SynNotchインデューサー構築物をコードする例示的なベクターを図23Aに示す。したがって、一部の例では、T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージは、誘導性CD147-CAR(例えば配列番号14)および誘導性CD147-CARの発現を誘導する抗GPC3結合剤構築物を発現する。
【0076】
他の実施形態では、細胞はCD147scFv(例えば配列番号1)およびGPC3-CARなどのCD147特異的結合剤を発現するT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージである。一部の例では、GPC3-CARは、配列番号16と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性)を有する核酸配列を含む。特定の例では、細胞はGal4-VP64をコードする核酸に作動可能に連結された抗CD147scFV(例えばSynNotch構築物)を発現する。CD147がこの構築物によってコードされるタンパク質に結合する場合、Gal4-VP64が活性化され、Gal4応答性エレメントを有する構築物(例えばGal4UAS)の発現を誘導することができる。抗CD147scFv SynNotchインデューサー構築物および抗GPC3-CARをコードする例示的なベクターを図25Aに示す。したがって、、一部の例では、T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、マクロファージは、誘導性GPC3-CAR(例えば配列番号16)および誘導性GPC3-CARの発現を誘導する抗CD147結合剤構築物を発現する。
【0077】
一部の例では、免疫細胞は、CD147-CAR、誘導性GPC3-CAR、誘導性CD147-CAR、インデューサーに作動可能に連結されたCD147特異的結合剤、インデューサーに作動可能に連結されたGPC3特異的結合剤、またはそれらの2つもしくはそれより多い任意の組合せをコードする核酸を含む1つまたは複数の核酸を含む1つまたは複数の発現ベクターを形質導入またはトランスフェクトされる。他の例では、ベクター(または構築物をコードするDNA)は、ベクターまたはDNAを含むナノ粒子に細胞を接触させることによって導入され得る。一部の例では、細胞は、形質導入またはトランスフェクションに続いて、例えば対象に投与される前に照射される(例えば少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも3,000、少なくとも5,000、少なくとも7,000、少なくとも8,000、少なくとも9,000、少なくとも10,000、少なくとも11,000、少なくとも12,000、もしくは少なくとも15,000、または約1,000~15,000、2,000~12,000、1,000~5,000、5,000~10,000、もしくは8,000~12,000、または約10,000Radの線量などでγ線照射により処置される)。
【0078】
一部の例では、形質導入またはトランスフェクトされた細胞は、単離されたT細胞(例えば初代T細胞または対象から得られたT細胞)、単離されたNK細胞(例えば初代NK細胞または対象から得られたNK細胞)、単離されたNKT細胞、単離されたDNT細胞、単離された好中球、または単離されたマクロファージ(例えば初代マクロファージまたは対象から得られたマクロファージ)である。一部の例では、T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージは、末梢血、臍帯血、リンパ節組織、骨髄、または腫瘍組織から得られる。一部の例では、T細胞、NK細胞、NKT細胞、またはDNT細胞はまた、例えば開示した発現ベクターの1つまたは複数による形質導入の前および/または後で、対象からの試料から富化、精製、および/または増大される。
【0079】
1つの非限定的な実施形態では、細胞はNK-92細胞である。NK-92細胞は、非ホジキンリンパ腫を有する患者に由来するNK細胞系(例えばATCC(登録商標)CRL-2407(商標))である。この細胞系は活性化されたNK細胞の特性を有する(例えばGong et al., Leukemia 8:652-658, 1994を参照)。別の実施形態では、細胞はNK-92MI細胞(例えばATCC(登録商標)CRL-2408(商標))である。NK-92MI細胞系は、ヒトIL-2を安定的に発現する、NK-92に由来するインターロイキン-2(IL-2)非依存性NK細胞系である(例えばTam et al., Hum. Gene Ther. 10:1359-1373, 1999を参照)。CAR(例えば本明細書で開示するCD147-CARおよび/または他の核酸)を発現するNK-92またはNK-92MI細胞は、各対象について自己NK細胞を産生する必要がないので、「既製の」免疫療法として本明細書で使用することができる。本明細書に記載したCD147-CAR(または他の核酸)とともに使用することができる他のNK細胞系には、NKL、KHYG-1、およびYTS細胞が含まれる。
【0080】
現在、NK-92媒介免疫療法のフェーズI/II臨床試験が進行中である(Arai et al., 2008、Tonn et al., 2013)。一般には、永久的生着を防止するために、NK-92細胞は注入に先立って照射しなければならない。必要な照射の量はおよそ10Gyである。照射したNK-92の注入の用量は最大1010NK92細胞/mであってよい。重要なことに、いくつかのNK-92臨床試験(NCT00900809、NCT00990717、NCT00995137、およびNCT01974479)で実証されたように、照射したNK-92細胞は患者における注入に対して安全であることが示されている。
【0081】
一部の非限定的な実施形態では、免疫細胞はCD147-CARをコードするベクターによって形質導入される。形質導入に続いて、CD147-CARを発現する細胞は、例えばCD147に結合する標識された抗体を使用するフローサイトメトリーによって、検出および/または富化することができる。一部の例では、形質導入された細胞(例えばNK細胞またはT細胞)は、例えば形質導入に続くある期間の細胞培養によって増大される。一部の例では、改変された細胞の一部または全部は、後の使用のために凍結保存される。
【0082】
VI.免疫療法の方法
本明細書に開示するCD147-CARを用いて、対象におけるがん(例えばCD147を発現または過剰発現するがん)を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、CD147-CARを発現する改変された(例えばCARをコードするベクターを形質導入された)T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージおよび薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む。他の例では、方法は、CD147-CARをコードする発現ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0083】
本明細書で開示する誘導性CD147-CARおよび該誘導性CD147-CARのインデューサーの発現に連結されたGPC3特異的結合剤を用いて、対象におけるがん(例えばCD147を発現または過剰発現するがん)を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、誘導性CD147-CARおよびインデューサーに連結されたGPC3特異的結合剤を発現する改変された(例えばCD147-CARおよびGPC3特異的結合剤をコードする1つまたは複数のベクターを形質導入された)T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージならびに薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む。他の例では、方法は、誘導性CD147-CAR(例えば配列番号15)およびインデューサーに連結されたGPC3特異的結合剤をコードする1つまたは複数の発現ベクターならびに薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
【0084】
誘導性GPC3-CARおよび誘導性GPC3-CARのインデューサーに連結された本明細書で開示するCD147特異的結合剤を用いて、対象におけるがん(例えばCD147を発現または過剰発現するがん)を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、誘導性GPC3-CARおよびインデューサーに連結されたCD147特異的結合剤を発現する改変された(例えばGPC3-CAR(例えば配列番号16)およびCD147特異的結合剤をコードする1つまたは複数のベクターを形質導入された)T細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージならびに薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む。他の例では、方法は、誘導性GPC3-CARおよびインデューサーに連結されたCD147特異的結合剤をコードする1つまたは複数の発現ベクターならびに薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
【0085】
本明細書に記載したCD147-CARまたはCD147特異的結合剤を発現する改変された細胞(例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、DNT細胞、好中球、またはマクロファージ)は、医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には細胞(例えばCD147-CAR-NK細胞またはCD147-CAR-T細胞)の集団および薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される担体」は、医薬投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, The University of the Sciences in Philadelphia, Editor, Lippincott, Williams, & Wilkins, Philadelphia, PA, 21st Edition, 2005を参照)。そのような担体または希釈剤の例には、それだけに限らないが、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、平衡塩類溶液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれる。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルも使用され得る。補完的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, The University of the Sciences in Philadelphia, Editor, Lippincott, Williams, & Wilkins, Philadelphia, PA, 21st Edition (2005)に提供されたものが含まれる。
【0086】
一部の例では、組成物は約10~1012個の改変されたNK細胞またはT細胞(例えば、約10~10個の細胞、約10~10個の細胞、または約10~1012個の細胞)を含む。例えば、組成物は約10~1010個の改変されたNK細胞または改変されたT細胞/kg(例えば約10、10、10、10、または10個の細胞/kg)が対象に投与されるように調製してよい。具体的な例では、組成物は少なくとも10、10、10、または10個のCD147-CAR-NK細胞またはCD147-CAR-T細胞を含む。改変されたNK細胞または改変されたT細胞の集団は、典型的には非経口で、例えば静脈内で投与されるが、腫瘍もしくは腫瘍付近への注射または注入(局所投与)または腹腔への投与も使用することができる。適切な投与経路は、対象、処置される状態、および他の因子などの因子に基づいて決定することができる。
【0087】
改変されたNK細胞または改変されたT細胞の集団の複数回用量を対象に投与することができる。例えば、CD147-CAR-NK細胞またはCD147-CAR-T細胞は、毎日、1日おき、週2回、毎週、隔週、3週ごと、毎月、またはそれより少ない頻度で、投与することができる。熟練した臨床医は、対象、処置される状態、以前の処置履歴、および他の因子に基づいて、投与スケジュールを選択することができる。
【0088】
追加の例では、対象に、改変されたNK細胞または改変されたT細胞の生存および/または成長を支持するために、少なくとも1つ、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つのサイトカイン(例えばIL-2、IL-15、IL-21、および/またはIL-12)も投与される。具体的な非限定的な例では、少なくとも1つのサイトカインにはIL-2およびIL-15が含まれる。サイトカイン(複数可)は、改変されたNK細胞または改変されたT細胞の前、後、または実質的にこれと同時に、投与される。具体的な例では、少なくとも1つのサイトカイン(例えばIL-2)は、例えばCD147-CAR-NK細胞と同時に投与される。
【0089】
一部の例では、処置される対象は固形腫瘍、例えばCD147を発現する固形腫瘍を有する。固形腫瘍の例には、肉腫(例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、および他の肉腫)、滑膜種、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、腹膜がん、食道がん(例えば食道扁平上皮癌)、膵がん、乳がん(基底乳癌、腺管癌、および小葉乳癌を含む)、子宮内膜がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、卵巣がん、前立腺がん、肝がん(肝細胞癌を含む)、胃がん、扁平上皮癌(頭頸部扁平上皮癌を含む)、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、卵管がん、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱がん(例えば腎細胞がん)、黒色腫、およびCNS腫瘍(例えば神経膠腫、神経膠芽腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、および網膜芽腫)が含まれる。固形腫瘍には、腫瘍転移(例えば肺、肝、脳、または骨への転移)も含まれる。一部の例では、対象は肝細胞癌、神経芽腫、乳がん、胃がん、子宮内膜がん、膀胱がん(例えば腎細胞癌)、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、子宮頸がん、髄芽腫、食道がん(例えば食道扁平上皮癌)、前立腺がん、精上皮腫、神経膠芽腫、骨肉腫、星状細胞腫、または軟部組織肉腫を有する。特定の例では、対象は肝細胞癌または神経芽腫を有する。
【0090】
他の例では、対象は血液悪性腫瘍、例えばCD147を発現する血液悪性腫瘍を有する。血液悪性腫瘍の例には、急性白血病(例えば11q23陽性急性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)を含む白血病、慢性白血病(例えば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ球性白血病)、リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病、および骨髄異形成が含まれる。特定の例では、対象は急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄球性白血病、または急性骨髄性白血病(AML)を有する。
【0091】
一部の例では、対象は、手術、放射線療法、および化学療法剤の1つまたは複数によっても処置される。例示的な化学療法剤には(それだけに限らないが)、ナイトロジェンマスタード(例えばメクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、またはクロラムブシル)、アルキルスルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジン)などのアルキル化剤;葉酸アナログ(例えばメトトレキセート)、ピリミジンアナログ(例えば5-FUまたはシタラビン)、およびメルカプトプリンもしくはチオグアニンなどのプリンアナログなどの代謝拮抗剤;または天然産物、例えばビンカアルカロイド(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシン)、エピポドフィロトキシン(例えばエトポシドまたはテニポシド)、抗生物質(例えばダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシン(mitocycin)C)、および酵素(例えばL-アスパラギナーゼ)が含まれる。追加の薬剤には、白金配位錯体(例えばシスプラチンとしても公知のcis-ジアミン-ジクロロ白金II)、置換ウレア(例えばヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(例えばプロカルバジン)、および副腎皮質抑制剤(adrenocrotical suppressant)(例えばミトタンおよびアミノグルテチミド);ホルモンおよびアンタゴニスト、例えば副腎皮質ステロイド(例えばプレドニゾン)、プロゲスチン(例えばヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、および酢酸メゲストロール(magestrol acetate))、エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン)、およびアンドロゲン(例えばテストステロンプロピオネートおよびフルオキシメステロン)が含まれる。最も一般的に使用される化学療法薬の例には、アドリアマイシン、メルファラン(Alkeran(登録商標))、Ara-C(シタラビン)、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、カルボプラチナム、シスプラチナム、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、ダウノルビシン、ダカルバジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル(またはドセタキセルなどの他のタキサン)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP-16が含まれるが、より新しい薬物にはゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、イリノテカン(CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、イマチニブ(STI-571)、トポテカン(Hycamtin(登録商標))、カペシタビン、イブリツモマブ(Zevalin(登録商標))、およびカルシトリオールが含まれる。熟練した臨床医は、対象、処置されるがん、処置履歴、および他の因子などの因子によって、(本明細書に列挙した療法または他の現在の療法から)対象への適切な追加の療法を選択することができる。
【実施例
【0092】
以下の実施例は、ある特定の特色および/または実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本開示を記載した特定の特色または実施形態に限定するものと解釈すべきではない。
【0093】
(実施例1)
材料および方法
抗体および試薬:精製した抗CD247(T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖、CD3としても公知)抗体(クローン6B10.2、BioLegend)、精製した抗ヒトCD147、FITCコンジュゲート抗ヒトCD147(クローンHIM6、BioLegend)、PEまたはAPCコンジュゲート抗ヒトCD3抗体(クローンOKT3、BioLegend)、FITCまたはBV510コンジュゲート抗ヒトCD56抗体(クローンHCD56、BioLegend)、PEコンジュゲート抗ヒトCD69抗体(クローンFN50、BioLegend)、APC/Fire750コンジュゲート抗ヒトCD226抗体(DNAM-1としても公知、クローン11A8、BioLegend)、APC/Fire750コンジュゲート抗ヒトKLRG1(MAFA)抗体(クローンSA231A2、BioLegend)、BV421コンジュゲート抗ヒトCD335(NKp46)抗体(クローン9E2、BioLegend)、PE/Cy7コンジュゲート抗ヒトCD158b(KIR2DL2/L3、BioLegend)抗体(クローンDX27、BioLegend)、PE/Cy7コンジュゲート抗ヒトCD244(2B4)抗体(クローンC1.7、BioLegend)、PEコンジュゲート抗ヒトCD152(CTLA-4)抗体(クローンBNI3)、APCコンジュゲート抗ヒトCD366(Tim-3)抗体(クローンF38-2E2)、PerCP/Cy5.5抗ヒトTIGIT(VSTM3)抗体(クローンA15153G)、FITCコンジュゲート抗ヒトCD223(LAG-3)抗体(クローン11C3C65、BioLegend)、およびPerCP/Cy5.5コンジュゲート抗ヒトCD94(クローンDX22、BioLegend)は、BioLegend(San Diego、CA、USA)から購入した。
【0094】
APCコンジュゲート抗ヒトCD16抗体(クローンB73.1、BD Biosciences)、FITCコンジュゲート抗ヒトCD3抗体(クローンUCHT1、BD Biosciences)、BV480コンジュゲート抗ヒトCD85j抗体(LIR-1)抗体(クローンGHI/75、BD Biosciences)、BV711コンジュゲート抗ヒトCD314(NKG2D)抗体(クローン1D11、BD Biosciences)、およびPEまたはFITCコンジュゲート抗ヒトCD107a抗体(クローンH4A3、BD Biosciences)は、BD Biosciences(San Jose、CA、USA)から購入した。
【0095】
FITCコンジュゲート抗ヒトKIR/CD158抗体(クローン180704、R&D Systems)、PEコンジュゲート抗ヒトKIR2DL1/KIR2DS5抗体(クローン143211、R&D Systems)、APCコンジュゲート抗ヒトKIR3DL1抗体(クローンDX9、R&D Systems)、AF405コンジュゲート抗ヒトKIR3DL2/CD158k抗体(クローン539304、R&D Systems)、APCコンジュゲート抗ヒトNKG2A/CD159a抗体(クローン131411、R&D Systems)、およびPEコンジュゲート抗ヒトNKG2C/CD159c抗体(クローン134591、R&D Systems)は、R&D Systemsから購入した。AF647ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)断片抗体は、Jackson ImmunoResearch(West Grove、PA、USA)から購入した。
【0096】
公的がん患者データベースからの生物情報解析:患者の生存データおよびCD147に関するRSEM(RNA-Seq by Expectation Maximization)正規化発現データセットをThe Cancer Genome Atlas(TCGA)から生成し、OncoLnc(oncolnc.org)からダウンロードした。データは、GraphPad Prism5.0(GraphPad)を使用してKaplan-Meier曲線についてプロットした。TCGAに由来するRSEM正規化発現データセットはFireHose Broad GDACからのもので、これはThe Broad Institute(gdac.broadinstitute.org)によって開発された。図はGraphPad Prism5によって生成した。
【0097】
細胞系:293T、K562、Daudi細胞、SK-Hep1、およびHepG2細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。Daudi-FFluc細胞を確立するため、以前に記載したように、CD147陽性のHepG2およびSK-Hep1細胞に、FFLuc-GFPをコードするレンチウイルスベクターを形質導入した。健康なドナーからの末梢血の収集のためのプロトコールは、Rutgers-New Jersey Medical School(Newark、NJ)の施設内審査委員会(IRB)および倫理審査委員会によって承認された。
【0098】
NK-92MIの細胞培養およびCAR改変NK-92MI細胞の生成:NK-92MI細胞系は、ATCC(登録商標)(CRL-2408(商標)、USA)から購入した。インターロイキン-2(IL-2)非依存性NK細胞系であるNK-92MIは、ヒトIL-2 cDNAによって安定的に発現されるNK-92(ATCC(登録商標)CRL-2407(商標))細胞系(Gong et al., Leukemia 8:652-658, 1994)に由来する(Tam et al., Hum Gene Ther 10:1359-1373, 1999、Tam et al., J. Hematother. 8:281-290, 1999)。NK92-MI細胞系は、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含まないが2mMのL-グルタミンおよび1.5g/Lの重炭酸ナトリウムを含む特異的NK-92MI培養培地(アルファ最小必須培地、アルファMEM)中で維持した。完全成長培地を作製するため、以下の成分を基本培地に添加した。0.2mMのイノシトール、0.1mMの2-メルカプトエタノール、0.02mMの葉酸、最終濃度12.5%のウマ血清、および最終濃度12.5%のウシ胎児血清。3日目に、組換えフィブロネクチン断片(FN CH-296;Retronectin;Takara、Japan)をコーティングしたプレート中で、レトロウイルス上清をNK-92MI細胞に形質導入した。形質導入の後、IL-2を使用してNK細胞を増大させた。NK-92MI細胞上のCD147-CAR発現のパーセンテージを確認するため、これらの細胞をCD3およびCD56について染色してNK細胞を染色した後、フローサイトメトリー解析を行った。
【0099】
CD147ノックアウト細胞系の生成:CD147ノックアウト肝細胞の細胞系を生成するため、レンチウイルス送達システムである、CD147配列を標的とするガイドRNA:#1(5-TTGACATCGTTGGCCACCGC-3;配列番号10)、#3(5-GTGGACGCAGATGACCGCTC-3;配列番号11)を使用した。レンチウイルスは、レンチ-CRISPR v2にパッケージングプラスミドpSPAX2およびpMD2GをトランスフェクトすることによってHEK293T中で産生させた。3日後、上清を濾過(0.45μm)し、肝細胞の細胞系および8μg/mLのポリブレン(Sigma)とともにインキュベートした。48時間のインキュベーションの後、形質導入した細胞を新鮮な培地に交換し、8.0μg/mlのピューロマイシンによって5日間選択した。ウェスタンブロットおよびフローサイトメトリー解析を実施して、ノックアウト細胞系の効力を確認した。
【0100】
プラスミドの構築およびレトロウイルスの産生:5F6クローンからのCD147特異的scFvをコードするコドン最適化DNA断片をGENEWIZによって合成し、ヒトIgG1のヒンジ成分、CD28膜貫通ドメイン、細胞内ドメインCD28プラス4-1BB、およびヒトTCR/CD3複合体のζ鎖を含むインフレームのSFGレトロウイルスベクターレトロウイルス骨格にインフレームでサブクローニングした。CD147-CARレトロウイルスを産生させるため、以前に記載したように、CD147特異的scFv、RDF、およびPegPam3を含有するプラスミドの組合せを293T細胞にトランスフェクトした(Loskog et al., Leukemia 20:1819-1828, 2006)。CD19-CD28-CARおよびCD19-4-1BB-CARの構築物は以前に記載されている(Xiong et al., Mol. Ther. 26:963-975, 2018)。
【0101】
CD147-CARによるNK-92MI細胞の形質導入:増大の7日目にNK細胞を採取し、Retronectin(FN CH-296、Takara、Japan)をコーティングしたプレート中でCD147-CARレトロウイルスを形質導入した。2日後、細胞をG-Rex6マルチウェル細胞培養プレートに移し、200U/mlのIL-2(PeproTech)を含む35mlの完全RPMI-1640培地中で維持した。3~4日ごとに培地を交換し、毎回培養を継続するために各ウェルに2×10個の細胞を保持した。総細胞数はTrypan Blue排除を使用して計数した。NK細胞のパーセンテージおよびCARの発現を確認するため、CD3、CD56、およびIgG F(ab’)について細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0102】
フローサイトメトリー解析およびソーティング:1%のウシ胎児血清(FBS)を含むFACS染色緩衝液中、氷上で30分間、CAR-NK細胞を蛍光コンジュゲート抗体で染色し、PBSで洗浄し、FACS LSRIIまたはLSR Fortessaフローサイトメーター(BD)で解析した。PMT電圧を調整し、データ収集の前に補正値を計算した。FACS Divaソフトウェア(BD)を使用してデータを取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用して解析した。
【0103】
フローサイトメトリーの単一生細胞ソーティングのため、(1%のFBSを含むRPMI1640)で、氷上で30分間、試料細胞の全てを蛍光コンジュゲート抗体で染色し、PBSで2回洗浄し、完全培養培地中に再懸濁し、SORP BD FACS Aria IIIによってソーティングした。ソーティングの後、予熱した培地で収集試料を1回洗浄し、使用のために培養した。
【0104】
CAR-NK脱顆粒アッセイ(CD107a):U底96ウェルプレート中の完全NK-92MI培養培地中で、37℃で4時間または一夜、CAR-NK細胞(1×10)を標的細胞とともにインキュベートした。その後、細胞を採取し、洗浄し、GolgiStop(BD)を用いて氷上で30分間、CD3、CD56、およびCD107aについて染色し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0105】
サイトカイン放出アッセイ:CAR-NKによって分泌されるIFNガンマおよびTNF-アルファサイトカインは、市販のELISAキット(Invitrogen-Thermo Fisher Scientific)により、メーカーのプロトコールに従って測定した。
【0106】
51Cr放出アッセイ:CAR-NK細胞の細胞傷害活性を評価するため、標準的な4時間の51Cr放出アッセイを使用した。簡単に述べると、標的細胞を37℃で2時間、51Crで標識し、次いでIL2を含まず10%のFBSを含むNK-92MI培養培地中、2×10/mLで再懸濁した。次いで2×10個の標的細胞を、連続希釈したCAR-NK細胞とともに37℃で4時間、インキュベートした。遠心分離の後、上清を収集し、放出された51Crをガンマカウンター(Wallac、Turku、Finland)で測定した。細胞傷害性(パーセンテージとして)は以下のように計算した:[(試料-自然放出)/(最大放出-自然放出)]×100。
【0107】
FFLucレポーターシステムアッセイ:CAR改変免疫細胞の細胞傷害性を定量するため、FFLucレポーターシステムアッセイを開発した。簡単に述べると、1日目に光学96ウェルプレート(Greiner Bio-One(商標)No.655098)上、100μl/ウェルの標的細胞の完全栄養培地中で、標的細胞を2×10または3×10個の標的細胞/ウェル(FFluc-GFPを安定的に形質導入した細胞)で前播種し、5%CO中、37℃で一夜インキュベートした。翌日、エフェクター/標的の比に従ってエフェクター細胞の連続希釈液を調製し、示したエフェクター細胞を各ウェルに添加した(100μl/ウェル)。反応物を5%COとともに、37℃で4時間インキュベートし、次いで上清を穏やかに廃棄した。100μlの作業用D-ルシフェリンを各ウェルに添加し、光を消して5%COとともに、37℃で5分間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(PerkinElmer、USA)を使用してデータを定量した。データは、得られた値を以下の等式:特異的溶解のパーセンテージ(%)=[1-(S-E)/(T-M)]×100、(ここでSは試料ウェルの発光の値であり、Eは試料ウェルと比較した「エフェクター細胞のみ」のウェルの発光の値であり、Tは「標的細胞のみ」のウェルの発光の平均値であり、Mは「ブランク培地のみ」のウェルの発光の平均値である)によって特異的溶解のパーセンテージに変換することによって定量した。
【0108】
動物研究:全ての動物実験は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。全てのin vivo実験に、The Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)からのNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスを使用した。肝細胞癌細胞系異種移植モデルを確立するため、雌雄両方のNSGマウス(8週齢)の右側腹部に、100μLのPBS Corning(登録商標)Matrigel(登録商標)Matrix中の4×10個のSK-Hep1細胞を皮下注射した。腫瘍負荷が約40~50mmに達したら、マウスをランダムに3群に割り付けた。1日目に処置を開始して、マウスに100μLのPBS中の5×10個のCD147-CAR-NK-92MI細胞を注射(i.v.)した。対照群には親NK-92MI細胞またはビヒクル(PBS)を注入した。翌日(2日目)、全ての動物にIL-2(20,000単位/マウス)を注射(i.v.)した。動物体重および腫瘍負荷を週2回、収集した。腫瘍サイズはキャリパーで測定し、最大縦径(長さ)および最大横径(幅)を記録した。キャリパー測定に基づく腫瘍サイズは、改変された楕円式によって計算した。腫瘍サイズは以下のように計算した:腫瘍サイズ(mm)=1/2(長さ×幅)。腫瘍負荷が2000mmを超えるか、動物の体重が20%を超えて減少した場合、IACUCのガイドラインに従ってマウスを安楽死させた。同時に動物の生存データを記録した。
【0109】
患者由来の異種移植(PDX)モデルのため、患者肝細胞癌の動物モデルがThe Jackson Laboratoryによって開発された。簡単に述べると、新鮮なPDX検体を6~8週齢のNOD SCIDガンマ(NSG)マウスの側腹部の皮下に埋め込んだ。腫瘍負荷が約40~50mmに達した後で、さらなる解析のためにマウスをランダムに3群に割り付けた。使用した主な処置手順は上記の通りであった。異種移植片検体は10%のホルマリンで固定し、切断のためにパラフィンに包埋し、IHC染色のために処理するか、またはさらなる解析のために液体窒素中に直接凍結した。
【0110】
統計解析:腫瘍サイズの統計解析は、Bonferroni事後検定を伴う二元配置ANOVAによって実施した。全生存期間統計は、ログ-ランク検定を使用して計算した。他の統計的有意性は、両側対応のないスチューデントのt検定および両側対応のあるスチューデントのt検定を使用して決定した。全ての統計計算グラフは、GraphPad Prism5.0によって生成した。P<0.05()、P<0.01(**)、およびP<0.001(***)を、統計的に有意とみなした。
【0111】
(実施例2)
CD147は、肝細胞癌細胞系および患者からの肝がん検体において発現される
CD147が肝細胞癌および他の型のがんのための有効で妥当な標的であるかどうかを決定するため、患者の生存とTCGA(The Cancer Genome Atlas、cancergenome.nih.gov)データセットからのCD147の発現レベルとの間の相関を解析した。2つの異なる患者サブセット(CD147highおよびCD147low)からの生存パーセンテージの比較は、CD147と生存パーセンテージとの間に強い負の相関があることを示した(図1A)。具体的には、複数の腫瘍組織中のCD147highは、低い生存パーセンテージを示した(図1A)。さらに、正常組織(NT)と複数のがんの型における腫瘍試料(TP)との間のCD147発現の比較は、異なる型の腫瘍組織の中で、CD147発現の有意な上方調節を示した(図1B)。
【0112】
生物情報解析からのデータを検証するため、様々な腫瘍細胞系および他の組織の中のCD147の発現をウェスタンブロットにより解析した。これらの細胞系には、野生型NK-92(ヒトNK細胞系)、T2(変異体T×B細胞ハイブリッド)、721.221(HLA-A、-B、-Cヌルヒト細胞系)、MDA-MB-231(ヒト乳癌細胞系)、K562(ヒト骨髄性白血病細胞系)、HepG2(ヒト肝細胞癌細胞系)、SK-Hep1(ヒト肝腺癌細胞系)、Raji(ヒトBリンパ球バーキットリンパ腫細胞系)、Daudi(ヒトBリンパ芽球細胞系)、NK-92-MI(インターロイキン-2非依存性ナチュラルキラー細胞系)、およびヒト末梢血単球(PBMC)が含まれる。CD147分子は、PBMCと比較して、HepG2およびSK-Hep1細胞系(2種の肝細胞癌細胞系)において高度に上方調節されていた(図1C)。PBMCにおけるCD147の発現は、腫瘍細胞系と比較して、比較的低かった(図1C)。同様の結果がフローサイトメトリー解析によって得られた(図1D)。さらに、免疫組織化学(IHC)アッセイの結果は、PDXマウスモデルから単離したHCC組織においてCD147が有意に上方調節されたことを確認した(図1E)。
【0113】
(実施例3)
CD147-CAR-NK細胞の生成および特徴付け
SFGベクター(Loskog et al., Leukemia 20:1819-1828, 2006、Xiong et al., Mol. Ther. 26:963-975, 2018)を使用してCD147-CARを構築した。CD147-CARは、抗CD147抗体の改変された一本鎖可変断片(scFv)(実施例1に記載したようにクローン5F6に由来する)、IgG-CH2CH3スペーサー、CD28の膜貫通ドメイン、CD28-4-1BBの細胞内ドメイン、およびTCR-ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを含有していた(図2A)。
【0114】
最初に、このCAR構築物をNK-92MI細胞系で試験した。形質導入の後、NK-92MIはCD147-CAR分子を発現した(図2B)。フローサイトメトリーによるソーティングの後、CD147陽性NK-92MI細胞のパーセンテージは96%を超えていた(図2B)。NK-92MI細胞におけるCD147-CAR分子の発現を、ウェスタンブロットによってさらに検証した。親NK-92MI細胞系と比較して、CD147-CAR-NK-92MIは、キメラscFv-CD147-CARを発現した。近似的な分子量は約80~85kDであった(図2C)。CD147-CAR-NK-92MI細胞系を、フローサイトメトリーによってさらに特徴付けた。同程度の活性化受容体(例えばCD56、NKG2D、NKP46、NKG2A、CD16、CD94/NKG2C、CD226(DNAM-1としても公知)、およびCD244(2B4としても公知))および阻害性受容体(例えばKLRG1、LAG-3、CTLA-4、TIM-3、PD-1、およびTIGIT)の発現が観察された(図2D)。NK92-MI細胞における低レベルのCD147発現を考慮して、CD147-CAR-NK-92MI細胞系におけるCD147の発現も、フローサイトメトリーによって解析した。NK-92MIにおけるCD147-CARの発現は、形質導入後30日を超えても安定であった。しかしCD147-CAR発現にはNK-92MI細胞系におけるCD147の喪失が付随しており、CD147-CAR-NK-92MI細胞の中での限定的な同胞殺し(fratricide)を示していた(図2E~2G)。注目すべきことに、CD147-CAR-NK-92MI細胞におけるCD147分子発現の喪失は、in vitroにおけるその機能性および発現に影響しなかった。
【0115】
(実施例4)
CD147-CAR NK細胞はin vitroで肝細胞癌(HCC)を特異的に殺滅する
CD147-CAR-NK細胞の確立が成功した後で、CD147HCC細胞系(SK-Hep1およびHepG2細胞を含む)を根絶するCD147-CAR-NK-92MI細胞の能力を試験した。対照のCD19-CD28-CAR-NK-92MIおよびCD19-4-1BB-CAR-NK-92MI細胞と比較して、CD147-CAR-NK-92MI細胞は、2種のHCC細胞系、SK-Hep1およびHepG2(図3Aおよび3B)、ならびにHuh5およびHCO2細胞系(図4A~4C)に対して有意な細胞傷害性を示した。さらに、CD147-CAR-NK-92MI細胞によるTNF-アルファとIFN-ガンマの両方の産生は、SK-Hep1およびHepG2細胞によって刺激したCD19-CD28-CAR-NK-92MIおよびCD19-4-1BB-CAR-NK-92MI細胞のそれよりも有意に高かった(図3Cおよび3D)。興味深いことに、それらに感受性のある標的細胞によるCD147-CAR-NK-92MI細胞の活性化は、抗CD147抗体(クローンHIM6)によって遮断することができるが、対照IgG1によっては遮断することができない(図5A~5C)。この抗CD147抗体の特異性は、CD19-4-1BB-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害性に対するその効果を試験することによってさらに検証された。この抗CD147抗体は、CD19陽性Daudi細胞系に対するCD19-4-1BB-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害性を遮断することができず(図6)、CD19-4-1BB-CAR-NK-92MI細胞および抗CD147抗体の選択性を示した。
【0116】
CD147-CAR-NK-92MI細胞の特異性をさらに確認するため、CD147ノックアウト(CD147-/-)SK-Hep1細胞系(CD147-/--SK-Hep1)およびCD147ノックアウト(CD147-/-)HepG2細胞系(CD147-/--HepG2)を生成した。CD147-/--HepG2およびCD147-/--SK-Hep1細胞はCD147-CAR-NK-92MI細胞によって認識されず(図5D~5G)、これはCD147-KO細胞系とともに共培養した場合のCD107aの表面発現によって定量された。
【0117】
CD107aアッセイとサイトカイン産生アッセイの両方を使用して、感受性のある標的細胞によるCD147-CAR-NK-92MI細胞の活性化を評価することができる。CD147-CAR-NK-92MI細胞がCD147陽性HCC細胞を殺滅することができるかどうかを直接試験するため、4時間の標準的なクロム-51(51Cr)放出アッセイ(免疫学の分野におけるCTLおよびNK細胞の細胞傷害性を評価するための最も標準的なアッセイ)を使用した。CD147-CAR-NK-92MI細胞は、SK-Hep1およびDaudi細胞を殺滅した。追加のHCC細胞系、例えばHuh7細胞系(Kasai et al., Hum Cell 31:261-267, 2018)およびHCO2細胞系(Trinh et al., PLoS One 10:e0136673, 2015)に対するCD147-CAR-NK-92MI細胞による同様の殺滅活性。
【0118】
CD147-CAR-NK-92MI細胞の殺滅活性をさらに検証するため、ルシフェラーゼ生物発光シグナルを使用するCD147-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害性の評価のための新規で容易に使用できる非放射性アプローチを開発した。最初に、FFLuc-EGFP-SK-Hep1およびFFLuc-EGFP-HepG2細胞系を生成した。標的細胞の直接殺滅を評価するため、CD147-CAR-NK-92MI細胞を、それぞれFFLuc-EGFP-SK-Hep1およびFFLuc-EGFP-HepG2細胞系とともに共培養した。EGFP-ホタルルシフェラーゼ融合遺伝子(EGFP-FFluc)を安定的に発現する標的細胞を前播種した96ウェルの光学底マイクロプレート中CD147-CAR-NK-92MI細胞の4時間インキュベート後、EGFP-FFlucの化学生物発光シグナルを蛍光マイクロプレートリーダーによって定量した。実施例1に記載したように、51Cr放出アッセイと同様にFFLucシグナルを特異的溶解のパーセンテージに変換した(図8Hおよび8I)。
【0119】
最初に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離したCD147-CAR改変初代TおよびNK細胞は、多数のHCC細胞系(SK-Hep1、Huh7、およびHepG2などを含む)を根絶することができるが、カッパ-CAR改変T細胞は根絶することができない(図8A~8C)。本発明者らはまた、51Cr放出アッセイによって、CD147-CAR改変ヒト初代NK細胞がin vitroでHCC細胞系を効果的に殺滅することを実証した(図8D~8F)。CD147-CAR初代NK細胞傷害性に加えて、NKGD/NKG2DL相互作用による初代NKの天然殺滅能力をさらに実証するために、本発明者らは抗NKG2DがCD147-CAR-NKによるCD147-/--SK-Hep1細胞の殺滅をさらに遮断することを見出した(図8G)。
【0120】
用量依存性特異的溶解は、51Cr放出アッセイと同程度であった。一般的な倒立蛍光顕微鏡下でこのアプローチによって測定される細胞傷害活性をさらに定量して、標的細胞におけるEGFPシグナルの形態学および動力学を評価した(図7Aおよび7B)。したがって、2つの相補的なアプローチによって、CD147-CAR NK細胞がin vitroで肝細胞癌(HCC)を特異的に殺滅することが実証された。
【0121】
CD147-CAR-NK-92MI細胞は、親のSK-Hep1およびHepG2細胞と比較して、CD147-/--SK-Hep1およびCD147-/--HepG2を殺滅することができなかった(図8Kおよび8L)。CD147-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害性の特異性は、エフェクターおよび標的細胞の共培養系に抗CD147抗体を添加することによって、さらに検証された(図8Mおよび8N)。CD147をHCCの有効かつ妥当な標的としてさらに立証するため、2種の異なるHCC細胞系、HepG2(図10A)およびSK-Hep1(図10B)に対するCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性を試験した。SK-Hep1細胞系においてCD147分子を除去すると(CD147ノックアウトSK-Hep1細胞系)、CD147-CAR-T細胞の特異的溶解は有意に低下し(図10C)、CD147陽性HCC細胞系に対するCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性の特異性がさらに立証された。
【0122】
(実施例5)
CD147-CAR-NK細胞はin vivoでHCCの進行を制御する
CD147-CARがin vivoでHCCを殺滅することができるかどうかを評価するため、2つの異なる異種移植モデルを使用した。最初に、PBMCに由来するCD147-CAR改変初代TおよびNK細胞を、SK-Hep1異種移植マウスモデルで評価した。CD147-CAR改変初代T細胞は、腫瘍サイズを有意に抑制し、生存期間を延長させた(図11A~11D)。CD147-CAR改変初代NK細胞の効力をさらに評価するため、本発明者らは形質導入していない(NT)初代NK群を追加の対照として含めた(図12A~12D)。親NT-NK対照群およびPBSビヒクル対照群を受けたマウスは、急速な疾患の進行を生じさせた。対照的に、CD147-CAR初代TおよびNK細胞を受けたマウスは、急速な進行から有意に保護され、それらの生存期間中央値が延長し(P<0.05)、体重は異なる群の間で同程度であり(図11Cおよび12C)、in vivoにおけるCD147-CAR改変初代TおよびNK細胞の忍容できる毒性が示された。
【0123】
さらに、追加の「既製の」細胞療法戦略をさらに開発するため、本発明者らはCD147-CAR改変NK-92MI細胞の効力を評価した。NK-92MIの悪性な性質のため、CAR改変NK-92MI細胞は患者46、61に投与する前に照射する必要がある。非照射および照射CD147-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害性を、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって比較した(図13)。非照射および照射CD147-CAR-NK-92MI細胞の間で、同程度の細胞傷害性がin vitroで観察された(図13)。
【0124】
異種移植NSGマウスモデルにおける非照射および照射CD147-CAR-NK-92MI細胞の間の効力をさらに比較した(図14A~14D)。生存期間中央値によって測定して、非照射および照射CD147-CAR-NK-92MIを注入したマウスの間で、同程度の効力がin vivoで観察された(図14A~14D)。
【0125】
腫瘍成長を制御するCD147-CAR-NK-92MI細胞(腫瘍の埋め込みの後、1日目、3日目、および5日目に注射)の効力をさらに評価するため、腫瘍サイズによって疾患の進行を測定した(図15A)。親NK-92MIおよびPBSビヒクル対照群を受けたマウスは、急速な疾患の進行を生じた(図15B)。対照的に、CD147-CAR-NK-92MI細胞を受けたマウスは、急速な進行から有意に保護され、それらの生存期間中央値が延長し(P<0.01)、体重は異なる群の間で同程度であり(図15Cおよび15D)、in vivoにおけるCD147-CAR-NK-92MI細胞の忍容できる毒性が示された。
【0126】
がん細胞系は生物学および治療効果を正確にモデル化するそれらの能力における有意な制約を有し得るが、患者由来の異種移植(PDX)モデルは生物学的に安定であり、変異の状態、遺伝子発現のパターン、および腫瘍の不均一性に関するヒトの臨床条件を模倣することができる。したがって、患者からの転移肝がん組織を使用する第2の異種移植マウスモデルを用いた。生着後0日目、4日目、8日目、11日目、15日目、22日目、25日目、および35日目に投与されたCD147-CAR-NK-92MI細胞の効果を試験した。CD147-CAR-NK-92MI細胞で処置したマウスの生存期間中央値は63日であり、これは対照マウスのもの(生存期間中央値約42日)よりも有意に長かった。CD147-CAR-NK-92MI細胞で処置したマウスにおいて腫瘍負荷および疾患進行の低減が観察され(図16A~16D)、PDXマウスモデルでの肝がんの進行の抑制におけるCD147-CAR-NK-92MI細胞の効力が示された。
【0127】
(実施例6)
CD147-CAR-T細胞はCD147陽性腫瘍細胞を特異的に殺滅する
HCC細胞を殺滅するCD147-CAR-T細胞の能力を、8種のHCC細胞系(Huh7、Huh7.5、HepG2、SK-Hep1、Hep3B、Hu1545、HCO2、およびLH86)に対して試験した。末梢血単核細胞(PBMC)は健康なドナーから得た。PBMCを形質導入するため、10% FBS RPMI-1640培地中の100U/mlの組換えヒトIL-2(Proleukin;Chiron、Emeryville、CA、USA)を含む1μg/mlの抗CD3(クローン、OKT3、Ortho Biotech、Bridgewater、NJ、USA)および1μg/mlの抗CD28で細胞を活性化した。CD147-CAR-T細胞を産生するため、組換えフィブロネクチン断片(FN CH-296;Retronectin;Takara Shuzo、Otsu、Japan)をコーティングしたプレート中で3日目に、活性化されたT細胞にレトロウイルス上清を形質導入した。形質導入の後、IL-2を使用してT細胞を増大させ、次いでアッセイに使用した。
【0128】
実施例1に記載したFFLucレポーターシステムアッセイを使用して、CD147-CAR-T細胞によるFFluc-EGFP-HepG2の特異的殺滅を試験した(図17A)。96ウェルの光学底マイクロプレート中で6時間、ウェルあたり1×10個のFFLuc-GFP-HepG2で、エフェクター細胞(CD147-CAR-T細胞)を標的細胞とともに共培養した。対照群には、野生型カッパ-CAR-T細胞をCD147陽性FFLuc-EGFP-HepG2とともにインキュベートして使用した。FFLucレポートシステムアッセイにより、ノックアウトCD147FFLuc-GFP-HepG1を使用したCD147-CAR-T細胞の細胞傷害性の低下が示された(図17B)。96ウェルの光学底マイクロプレート中で6時間、エフェクター細胞(CD147-CAR-TおよびKapp-CAR-T細胞)を標的細胞CD147陽性FFLuc-EGFP-HepG2(1×10)とともに共培養した。CD147-CAR-T細胞の細胞傷害性を、マイクロプレートリーダーによる発光シグナルの読み取りによって測定した。CD147-CAR-T細胞の細胞傷害性を、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって測定した(図17C)。陰性対照群としてカッパ-CAR-T細胞を使用した。
【0129】
(実施例7)
神経芽腫細胞に対するCD147-CAR-T細胞の効果
CD147-CAR-T細胞におけるCD107aの脱顆粒を、培地(対照)またはSK-N-SH腫瘍細胞(図18A)、ならびにDaoYおよびD283細胞で10時間後に観察した。エフェクターと標的の比は1:1.2であった。表面CD107aの発現を定量するため、細胞をCD56陽性サブセットについてゲーティングした。示したように、様々な刺激におけるCD147-CAR-NK-92MI細胞上の表面CD107a発現のパーセンテージの定量データ(図18B)。CD147-CAR-NK-92MI細胞は、3時間後にDaoY細胞に対しても細胞傷害性であった(図19)。
【0130】
(実施例8)
HCC患者由来の初代CD147-CAR-NK細胞はCD147陽性腫瘍細胞をin vitroで特異的に殺滅する
多数の固形腫瘍の型にわたるCD147の幅広い発現パターンにより、CD147はCD147-CARに基づくがんの免疫療法の魅力的な標的である。ここで本発明者らは、CD147がヒトHCC組織試料中で上方調節されるかどうかを調べた。様々なステージのHCC腫瘍組織は、健康な肝組織と比較して、CD147について強く陽性に染色された(図21A)。
【0131】
HCCの肝から直接単離されたCD147-CAR改変初代NK細胞がin vitroでHCCを殺滅することができるかどうかを評価するため、HCCを有するヒト肝における腫瘍ゾーン、腫瘍隣接ゾーン、および非腫瘍ゾーンを含む肝組織の様々なゾーンからNK細胞を単離した(図21B)。次いで、これらのNK細胞を増大させた(図21C)。ヒトHCC肝組織からのこれらの増大したNK細胞を使用して、CD147-CARを生成した。活性化されたNK細胞の形質導入の効率は一般に70%よりも大きかった(図21D)。CD147-CAR-NK細胞は、CD147を発現している腫瘍細胞を特異的に認識した。CD147-CAR-NKの抗腫瘍活性をHCC細胞系に対して評価した(図21E)。合わせて、これはCD147-CAR再指向初代ヒト肝NK細胞がCD147陽性標的細胞を特異的かつ選択的に殺滅することを実証している。
【0132】
(実施例9)
SynNotch GPC3誘導性CD147-CAR T細胞はGPC3+CD147+HCC細胞を選択的に標的とするが、GPC3+CD147-またはGCP3-CD147+HCC細胞を標的としない
抗GPC3 synNotch誘導受容体ベクターを生成するため、ヒトGPC3抗原と特異的に結合することができる抗GPC3(マウスGC33クローン)scFvを、GENEWIZによって合成した。N末端のシグナルペプチドおよびmycタグをコードする配列を、(Addgeneプラスミド#79125)に由来するsynNotch-Gal4VP64誘導エレメントとオーバーラップPCRによって融合した。断片を、制限エンドヌクレアーゼNcoIおよびXhoIによって消化したSFGガンマレトロウイルスベクターに挿入した。
【0133】
抗CD147-CAR-mCherryベクターの構築のため、全CD147-CARエレメントを、制限エンドヌクレアーゼMluIおよびNdeIによって消化したpHR_Gal4UAS_pGK_mCherry(Addgeneプラスミド#79124)に挿入した。mCherry遺伝子の発現は、pGKプロモーターの制御下にあった。この戦略において、さらなる解析および機能性評価のために、synNotch CAR改変細胞としてeGFPおよびmCherry二重陽性細胞をゲーティングした。
【0134】
抗CD147synNotch誘導受容体ベクターを生成するため、抗CD147scFvを、pHR_PGK_抗CD19_synNotch_Gal4VP64(Addgeneプラスミド#79125)に由来するsynNotch-Gal4VP64誘導エレメントとオーバーラップPCRによって融合した。mycタグをN末端に付加した。断片を、制限エンドヌクレアーゼSalIおよびMluIによって消化したシグナルペプチドの後のSFGガンマレトロウイルスベクターに挿入した。
【0135】
抗GPC3-CAR-mCherryベクターの構築のため、抗GPC3(マウスGC33クローン)scFvを含有する全GPC3-CARエレメントを、制限エンドヌクレアーゼMluIおよびNdeIによって消化したpHR_Gal4UAS_pGK_mCherry(Addgeneプラスミド#79124)に挿入した。mCherry遺伝子の発現は、pGKプロモーターの制御下にあった。この戦略において、さらなる解析および機能性評価のために、synNotch CAR改変細胞としてmycタグ付きおよびmCherry二重陽性細胞をゲーティングした。
【表2-1】
【表2-2】
【0136】
正常組織へのオフ腫瘍毒性を軽減するため、CD147-CARの抗腫瘍活性に対する様々な細胞の型(造血細胞を重点的に)におけるCD147発現の密度の効果を試験した。HepG2、Raji、Daudi、およびPBMCの中でのCD147発現を評価した。CD147の異なる発現レベルが観察された(図22A)。注目すべきことに、低レベルのCD147を発現する細胞(例えばPBMC)は、10:1という高いエフェクター対標的比(E:T比)でCD147-CAR細胞を標的細胞とともに培養した場合でさえ、CD147-CAR-NK-92MI細胞の細胞傷害活性を誘発しなかった(図22B)。これらの知見は、抗CD147の最適化されたscFv配列のみが、特異的scFvドメインが細胞を高発現CD147分子と結合することを可能にし、これが低レベルのCD147分子を発現する正常組織に対するオフ腫瘍傷害性を軽減できることを示唆している。
【0137】
CD147-CARのオフ腫瘍毒性をさらに軽減するため、様々な腫瘍抗原に対するCARの発現を推進する転写因子を放出することができるsynNotch受容体を使用した。「論理ゲート」synNotch CARは、二重抗原陽性腫瘍細胞のみを殺滅することができ、単一腫瘍抗原陽性腫瘍細胞を殺滅することはできない。オフ腫瘍毒性を軽減するため、GPC-3およびCD147からなる組合せアプローチを設計した。簡単に述べると、Gal4-VP64細胞内転写活性化ドメインを連結する抗GPC3特異的synNotch受容体をコードするSFGレトロウイルスベクターを構築した。構造的に発現される増強GFP(eGFP)をGPC3-synNotchの下流に配置して、形質導入された細胞を同定した(図23A)。
【0138】
synNotch受容体の会合の後で放出されるGal4-VP64転写因子によって活性化され得る上流活性化配列(UAS)プロモーターの制御下に抗CD147-CARが配置されたレンチウイルスベクターを構築した。構造的に発現されるモノマー赤色蛍光タンパク質Cherry(mCherry)を誘導性CD147-CARの下流に配置して、形質導入された細胞を同定した(図23A)。
【0139】
ヒトPBMCを、レンチウイルスおよびレトロウイルスの両方のベクターと共形質導入した(図23C)。二重陽性細胞は、フローサイトメトリー解析を使用してeGFP(抗GPC3-synNotchのマーカー)およびmCherry(CD147-CARのマーカー)によって検証した(図23D)。形質導入されたT細胞の4つのサブセット(mCherry陽性のみ、GFP陽性のみ、GFPとmCherryの二重陽性、およびGFPとmCherryの二重陰性のサブセットを含む)を解析した(図23E)。これらの形質導入されたT細胞をGPC3highCD147lowHepG2細胞系によりプライミングして、表面上におけるCD147-CAR発現を誘導した(図23F)。synNotchの会合がない場合では、CD147-CAR発現は観察されなかった。形質導入された初代T細胞では、CAR発現の漏出性は観察されなかった。しかし、形質導入されたNK-92MI細胞では、約10%のCAR発現の漏出性が観察された(データは示していない)。この観察は、ガンマセクレターゼ阻害剤(MK-0752、Notchシグナル伝達阻害剤)処置アッセイによって、さらに検証した(図24)。GPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherry二重陽性T細胞におけるCD147-CAR発現は、MK-0752処置によって劇的に阻害された(図24)。
【0140】
GPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherryの、T細胞への共形質導入およびGPC3highCD147lowHepG2細胞系によるプライミングの後で、HCC細胞系の様々なサブセットによって2時間、形質導入されたT細胞の活性を誘発させて、殺滅効力を評価した。HCC細胞系の様々なサブセットは、CD147+GPC3highHepG2細胞系、CD147koGPC3highHepG2細胞系、CD147+GPC3lowHepG2細胞系、CD147koGPC3lowHepG2細胞系(図23G)であった。陽性対照としてフォルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)/イオノマイシン(IONO)を使用した。
【0141】
CD147koGPC3highHepG2細胞によってプライミングしたGPC3-synNotch-GFPおよびCD147-CAR-mCherry二重陽性T細胞は、CD147+GPC3highHepG2細胞によって特異的に活性化することができ(図23H)、これは様々な標的細胞系と共培養した場合にCD107aの表面発現によって定量された。mycタグ付きCD147特異的synNotch-GFPおよび誘導性GPC3-CAR-mCherryをT細胞に共形質導入した場合にも同様の結果が得られた(図25A~25H)。
【0142】
合わせて、データは、synNotch GPC3誘導性CD147-CAR T細胞のみがGPC3+CD147+HepG2細胞によって特異的に活性化され得るが、GPC3+CD147-またはGPC3-CD147+のHepG2細胞によっては活性化されないことを示唆している。これらの活性化されたCD147-CAR T細胞は、CD147+GPC3+HepG2細胞を殺滅することができるが、CD147-GPC3+HepG2細胞を殺滅することができない(図26A~26D)。
【0143】
本開示の原理を適用することができる多くの可能な実施形態に鑑み、説明した実施形態は例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって本発明者らは、これらの請求項の範囲および精神に含まれる全てを我々の発明として主張する。
図1-1】
図1-2】
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図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図4
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図5-2】
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【配列表】
2022525318000001.app
【国際調査報告】