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特表2022-525324精密物品のプリントのための高生産性システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-12
(54)【発明の名称】精密物品のプリントのための高生産性システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/129 20170101AFI20220502BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20220502BHJP
【FI】
B29C64/129
B29C64/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555234
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 US2020013462
(87)【国際公開番号】W WO2020197611
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/824,724
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】スー,ケヴィン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ダン,パトリック
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213WA25
4F213WA63
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL55
4F213WL62
4F213WL67
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
三次元プリントシステムは、樹脂容器、支持トレイ、電動キャリッジ、光エンジン、およびコントローラを含む。樹脂容器は、透明シートが設けられた下部を有し、これは、容器内に含まれる光硬化樹脂についての下限を提供する。支持トレイは、作製中の物体を支持するための下面を有している。電動キャリッジは、支持トレイを支持し、垂直方向に位置決めするためのものである。光エンジンは、透明シートを介して構築平面に放射線を上方に照射するためのものである。コントローラは、電動キャリッジおよび光エンジンを作動して物体を作製する。物体は、下面から吊り下げられた歯科用アーチの垂直配置、および、歯科用アーチの対を接続する複数の継手を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリントシステムであって、
透明シートが設けられた下部を有する樹脂容器;
下面を有する支持トレイ;
前記支持トレイを支持し垂直方向に位置決めするための電動キャリッジ;
前記透明シートを介して構築平面に放射線を上方に照射するための光エンジン;および
前記電動キャリッジおよび前記光エンジンを作動して物体を形成するよう構成されるコントローラ
を含み、
前記物体が、
前記下面から吊り下げられた歯科用アーチの垂直配置;および
前記歯科用アーチの対を接続する複数の継手
を含むことを特徴とする、
三次元プリントシステム。
【請求項2】
前記物体が、前記歯科用アーチの垂直配置を複数含むことを特徴とする、請求項1に記載の三次元プリントシステム。
【請求項3】
1つの垂直配置が、少なくとも4つの歯科用アーチを含むことを特徴とする、請求項2に記載の三次元プリントシステム。
【請求項4】
前記垂直配置が、前記下面に接続された最上部アーチ、および、該最上部アーチの下方の複数の追加アーチを含み、前記継手が、前記追加アーチのための一次支持を提供することを特徴とする、請求項1に記載の三次元プリントシステム。
【請求項5】
前記歯科用アーチが個々に、頂部および2つのウイングを含み、前記頂部が下向きに凸状であり、前記ウイングが概ね上向きに延びることを特徴とする、請求項1に記載の三次元プリントシステム。
【請求項6】
前記継手が個々に、前記垂直ウイングの上端を、前記垂直ウイングの上方のアーチの外面に接続することを特徴とする、請求項5に記載の三次元プリントシステム。
【請求項7】
歯科用アーチが、前記継手により2つの上端で支持されることを特徴とする、請求項6に記載の三次元プリントシステム。
【請求項8】
前記継手が個々に、前記歯科用アーチから前記継手を分離するための破断機構を提供するスロットを画定することを特徴とする、請求項1に記載の三次元プリントシステム。
【請求項9】
継手の外面から、前記歯科用アーチの1つにおいて画定される臼歯の上面に伸長する、分岐支持体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の三次元プリントシステム。
【請求項10】
三次元プリントシステムの動作方法であって、
樹脂容器内の構築平面に樹脂トレイの下面を配置する工程;
光エンジンを作動して、前記樹脂容器を介して前記構築平面に放射線を上方に選択的に照射する工程;および
前記樹脂トレイ配置を配置する工程および前記光エンジンを作動する工程を繰り返して、前記樹脂トレイの下面上に物体を画定する工程
を含み、
前記物体が、
前記下面から吊り下げられた歯科用アーチの垂直配置;および
前記歯科用アーチの対を接続する複数の継手
を含むことを特徴とする、
方法。
【請求項11】
前記歯科用アーチが個々に、頂部および2つのウイングを含み、前記頂部が下向きであり、前記ウイングが概ね上向きに延びて2つの端部を画定し、該端部の両方について継手が1つの歯科用アーチの1つの端部を上方の歯科用アーチに連結することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記継手が、前記歯科用アーチから前記継手を分離するための破断機構を提供するスロットを画定することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スロットが、下方の側方端部の上端に隣接する下部スロットおよび上方の歯科用アーチに隣接する上部スロットを含む2つのスロットを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記下部スロットが、概して水平方向に配向され、前記上部スロットが、垂直軸に概して傾斜した角度で配向されて上方の歯科用アーチの外面の配向に概ね一致することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記歯科用アーチの端部が個々に後臼歯を含み、さらに、両上端について前記継手を前記後臼歯の外面に連結する分岐支持体を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
三次元プリントシステムを作動するためのコンピュータ可読記憶媒体であって、該コンピュータ可読記憶媒体は、非一過性であり、内部に格納されたコンピュータ可読コード部分を有し、プロセッサによる実行に応答して、前記コンピュータ可読コード部分は、前記三次元プリントシステムに、少なくとも以下:
樹脂容器内の構築平面に樹脂トレイの下面を配置し;
光エンジンを作動して、樹脂容器を介して構築平面に放射線を上方に選択的に照射し;および
前記樹脂トレイの配置および前記光エンジンの作動を繰り返して、前記樹脂トレイの下面上に物体を画定する
を実行させ、
前記物体が、
前記下面から吊り下げられた歯科用アーチの垂直配置;および
前記歯科用アーチの対を接続する複数の継手
を含むことを特徴とする、
コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記歯科用アーチが個々に、頂部および2つのウイングを含み、前記頂部が下向きに配向され、前記ウイングが概ね上向きに延びることを特徴とする、請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記継手が個々に、前記垂直ウイングの上端を、前記垂直ウイングの上方のアーチの外面に接続することを特徴とする、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記継手が、前記歯科用アーチから前記継手を分離するための破断機構を提供するスロットを画定することを特徴とする、請求項18に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記ウイングが個々に、上端に向かって後臼歯を含み、さらに、前記継手を前記後臼歯の外面に連結する分岐支持体を含むことを特徴とする、請求項18に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この非仮特許出願は、U.S.C.119(e)の下でここに参照することによって援用される、2019年3月27日出願のKevin Michael Hsuらによる「High Productivity System for Printing Precision Articles」と題された米国仮特許出願第62/824,724号に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、放射線硬化(光硬化)樹脂から製造対象の固体三次元(3D)物品を作製する装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、ステレオリソグラフィシステムの生産性および精度を向上させる。
【背景技術】
【0003】
三次元(3D)プリンタは、使用が急速に増加している。3Dプリンタの1つの種類には、放射線硬化(光硬化)液体樹脂の選択的硬化および固化を含むオペレーションの原則を有するステレオリソグラフィプリンタが含まれる。一般的なステレオリソグラフィシステムには、光硬化樹脂を保持する樹脂容器、支持表面に連結される移動機構、およびコントロール可能な光エンジンが含まれる。ステレオリソグラフィシステムは、光硬化樹脂の層を選択的に硬化することにより製造対象の三次元(3D)物品を形成する。それぞれの選択的に硬化された層は、樹脂内の「構築平面」に形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのシステムにおける1つの課題は、生産性の向上である。別の課題は、高生産性を高めながら寸法精度を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様において、三次元プリントシステムは、樹脂容器、支持トレイ、電動キャリッジ(carriage)、光エンジン、およびコントローラを含む。樹脂容器は、透明シートが設けられた下部を有し、これは、容器内に含まれる光硬化樹脂についての下限を提供する。支持トレイは、作製中の物体を支持するための下面を有している。電動キャリッジは、支持トレイを支持し、垂直方向に位置決めするためのものである。光エンジンは、透明シートを介して構築平面に放射線を上方に照射するためのものである。コントローラは、電動キャリッジおよび光エンジンを作動して物体を作製するように構成されている。物体は、下面から吊り下げられた歯科用アーチ(dental arch)の垂直配置、および、歯科用アーチの対を接続する複数の継手(coupling)を含む。
【0006】
物体の設計にはいくつかの利点がある。歯科用アーチの垂直配置を有することによって、システムの効率が最大化され、アーチは支持トレイの下面から下方に延びて下のアーチと重なる。より従来型の外部足場ではなく、複数の継手を支持のために有することによって、支持に必要な材料の量および支持を取り外す際の物体の傷が低減される。
【0007】
一実装形態では、物体は、歯科用アーチの垂直配置を複数含む。垂直配置は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの歯科用アーチを含むことができる。物体は、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ以上の垂直配置を含むことができる。この複数の配置はさらに、下向きの支持面を有する支持トレイを利用するシステムの生産性を向上させる。
【0008】
歯科用アーチの1つまたは複数の垂直配置をプリントできることによって、三次元プリントシステムの生産性が向上される。特に、長時間の自動運転によって、三次元プリントシステムが他の方法では待機状態でありうる「夜通し(overnight)」のプリント時間が可能になる。別の利点は、支持トレイの交換に要する時間を、より多くの歯科用アーチの製造に亘って償却できるということである。支持トレイを交替および交換しなければならい頻度は大幅に減少し、これは、(1)機械の稼働率を向上させ、かつ(2)歯科用アーチあたりの人件費を削減するという複合的な効果を有する。
【0009】
別の実装形態では、垂直配置は、支持トレイの下面に直接接続される最上部アーチ、および、最上部アーチからぶら下がる複数の追加アーチを含む。継手は、追加アーチのための一次支持を提供する。継手による一次支持とは、アーチにおける接続支持材料の断面積のほとんどが、外部足場とは対照的に、継手によって提供されることを意味する。
【0010】
本開示の継手は、代替的なアプローチと比較して、最小限の材料使用、高い寸法精度、および傷の減少を提供する。代替的なアプローチは、支持トレイおよび歯科用アーチの外面で接続する端点を有する足場を用いて歯科用アーチを支持するであろう。このようなアプローチは、より多くの材料使用を必要とし、どの時点においてもプリントできるアーチの量を減らし、歯科用アーチの外面に傷を残すことになる。
【0011】
さらに別の実装形態では、歯科用アーチは、頂部および2つのウイングを個々に含む。頂部は下向きに凸状であり、ウイングは概ね上向きかつ外向きに延びている。継手は、個々に、ウイングの上端をウイングの上方のアーチの外面に接続する。2つの継手が、両上端からアーチを支持する。
【0012】
さらなる実装形態では、継手は、個々にスロットを画定し、これは、歯科用アーチから継手を分離するための破断機構を提供する。スロットは、上部スロットおよび下部スロットを含む2つのスロットを含むことができる。上部スロットは、縦軸および横軸に対して斜めに配向された楕円形状を画定することができ、歯科用アーチの凹状の下面から継手を分離するためのものである。下部スロットは、ウイングの上端から継手を分離するための側方円の形状を画定することができる。スロットは、歯科用アーチに損傷を与えることなく歯科用アーチから継手を分離する容易さを向上する。
【0013】
さらなる実装形態では、歯科用アーチは、臼歯を備えて上方に延びるウイングを含む。分岐支持体は、継手の1つを、臼歯の上面および外面、および/または分岐支持体の下の歯科用アーチの他の部分に接続する。分岐支持体は、継手に接続する比較的大きな断面または直径の部分を含むことができ、構造的強度を提供する。分岐支持体は、歯科用アーチの表面に直接接続する複数の細いまたは比較的小さい断面または直径の端部を含むことができる。分岐支持体は、歯のような外向きに延びる機構の形成を容易にする。
【0014】
別の実装形態では、継手は個々に、垂直面において湾曲した非線形形状を画定する。継手はまた、三角形の断面を有する。継手は個々に、上部および下部スロットを有し、これらは、一対の歯科用アーチから継手を分離するために、接触するアーチの表面に対して垂直に角度をなす。三角形の断面は、アーチから継手を分離することを容易にする。上部スロットは、垂直軸に対して傾斜角を画定しうる。下部スロットは、側方平面に対して概ね平行であり得る。
【0015】
さらに別の実装形態では、継手は、2つの主要なより大きい継手および2つのより小さい継手を含むことができる。2つのより大きい継手は個々に、歯科用アーチのウイングの上端を上方の歯科用アーチに連結する。2つのより大きい継手は、三角形の断面および分離のためのスロットを有することができる。2つのより小さい継手は個々に、より大きい継手の下方に概ね位置し、円筒形の断面を有することができる。より大きい継手と組み合わせた2つのより小さい継手は、4つの接触点を提供することによって、歯科用アーチの間の継手の剛性を向上させ、プリント中のねじれ、ぐらつき、および曲げの動作を低減する。
【0016】
さらなる実装形態では、歯科用アーチは個々に、アーチのウイング間に外部足場を含むことができる。外部足場は、正三角形の幾何学的形状を画定して、せん断変形に対する抵抗を最大化することができる。足場はまた、硬化プロセス中およびスタックから切り離される際にアーチの臼歯が内側または外側に曲がるのを防止する。分岐支持体は、外部足場をアーチの頂点付近の歯に連結することができる。
【0017】
本開示の第2の態様では、三次元プリントシステムの動作方法は、以下を含む:(1)樹脂容器内の構築平面に樹脂トレイ(または三次元物体)の下面を配置する工程;(2)光エンジンを作動して、樹脂容器を介して構築平面に放射線を上方に選択的に照射する工程;および(3)樹脂トレイの配置および光エンジンの作動を繰り返して、樹脂トレイの下面上に物体を画定する工程。物体は、下面から吊り下げられた歯科用アーチの垂直配置、および、歯科用アーチの対を接続する複数の継手を含む。
【0018】
本開示の第3の態様では、三次元プリントシステムを作動するための非一過性のコンピュータ可読記憶媒体は、内部に格納されたコンピュータ可読コード部分を有する。プロセッサによる実行に応答して、コンピュータ可読コード部分は、三次元プリントシステムに、少なくとも以下を実行させる:(1)樹脂容器内の構築平面に樹脂トレイの下面を配置し、(2)光エンジンを作動して、樹脂容器を介して構築平面に放射線を上方に選択的に照射し、および(3)樹脂トレイの配置および光エンジンの作動を繰り返して、樹脂トレイの下面上に物体を画定する。物体は、下面から吊り下げられた歯科用アーチの垂直配置、および、歯科用アーチの対を接続する複数の継手を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】三次元プリントシステムの一実施形態の概略正面図
図2図1から取られたより詳細な概略正面図
図3図2の物体14を通って取られたYZ-平面の断面図
図4】支持機構の詳細を示す歯科用アーチの一実施形態の部分正面図
図5】三次元プリントシステムの一部の写真図であり、三次元プリントシステムが、歯科用アーチの6つの垂直配置を含む物体の第1の実施形態を形成するプロセス中である図
図6】歯科用アーチの5つの垂直配置を含む物体の第2の実施形態を含有する構築容積の図
図7図6の物体の一部の図
図8図7から取られた詳細図
図9A】追加の支持体の詳細を示す歯科用アーチの垂直配置の一実施形態の正面下面図
図9B】追加の支持体の詳細を示す歯科用アーチの垂直配置の一実施形態の背面下面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、三次元プリントシステム2の一実施形態の概略正面図である。システム2の図示において、互いに直交する軸X、Y、およびZが使用される。軸XおよびYは、概して水平な横軸である。軸Zは、重力参照(gravitational reference)に対して概して位置合わせされる縦軸である。「概して」位置合わせされるとは、意図的に位置合わせされるが正確ではないことを意味する。概して位置合わせされるとは、通常の製造公差の範囲内で位置合わせされることを意味する。
【0021】
システム2は、透明シート8によって画定される下限を有する、樹脂6を含有する樹脂容器4を備える。支持トレイ10は、物体14を支持するための下面12を有する。物体14は、垂直軸Zに沿って垂直に配置された複数の歯科用アーチ16を含む。図示された複数の歯科用アーチは、単一の垂直配置15である。図示された実施形態は、支持トレイ10の下面12に直接連結された最上部歯科用アーチ16Tを含む。最上部歯科用アーチ16Tは、支持バー17を含む。支持バー17は、下面12に直接連結されている。図2に示すように、支持バー17は、開口部19を画定している。開口部19は、軸Xに沿って支持バー17を横方向に通過する2ミリメートル径の孔でもよい。開口部19は、作製プロセスに続いて洗浄槽に浸漬される際に、支持バー17を吊り下げるために使用することができる。
【0022】
追加の歯科用アーチ16Aは、最上部歯科用アーチ16Tの下方にあり、継手18によって二つ一組の態様で連結されている。追加の歯科用アーチ16Aのための一次支持は、継手18によって提供される二つ一組の連結からである。追加の歯科用アーチ16Aのための「一次支持」という用語は、追加の歯科用アーチ16Aを支持する垂直支持耐力または断面積の50%超が、最上部歯科用アーチ16Tと16Tの直下にある次の追加の歯科用アーチ16Aとの間の直接的な連結によって提供されることを意味する。より詳細な実施形態では、追加の歯科用アーチ16Aを支持する垂直支持耐力または断面積の70%超、80%超、または90%超が、最上部歯科用アーチ16Tと16Tの直下にある次の追加の歯科用アーチ16Aとの間の直接的な連結によって提供される。
【0023】
システム2は、支持トレイ10に連結された移動機構20を備える。移動機構20は、支持トレイ10、したがって物体14の下端または下面32を、構築平面28に対して垂直に位置付けるように構成されている。
【0024】
システム2は、光源24および空間光変調器26をさらに含む光エンジン22を備える。光エンジン22は、透明シート8を介してピクセル化された光を上方に照射して、樹脂6内かつ透明シート8の上方に構築平面28を画定する。レーザおよび/または機械的に走査する結像バーなどの他の光エンジン22を使用することもできる。
【0025】
コントローラ30は、移動機構20および光エンジン22に電気的にまたは無線で接続されている。コントローラ30は、移動機構20、光エンジン22、およびシステム2の他の構成要素を作動して、物体14を作製するように構成されている。コントローラは、情報記憶装置に接続されたプロセッサを含む。情報記憶装置は、コンピュータ可読プログラムコード部分を格納する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体を含む。プロセッサによる実行に応答して、コンピュータ可読コード部分は、システム2の部分を作動して、以下の工程を少なくとも実行させる:(1)支持トレイの下面12(または物体14の下面32)を構築平面28に配置する;(2)光エンジン22を作動して、構築平面まで上方に放射線を照射し、物体14の層を選択的に硬化する;(3)工程(1)および(2)を繰り返して、層ごとの態様で物体の作製を完了する。
【0026】
コントローラ20は、システム2の他の構成要素と同じ場所に配置されるコンピュータを含むことができる、または、リモートコンピュータを含むことができる。コントローラは、ローカルコントローラ、ホストコンピュータ、モバイルコンピュータ、スマートフォン、リモートサーバ、および他のコンピュータ構成要素の1つ以上を含むことができる。コントローラ20が複数のコンピュータ構成要素を含む場合、記憶媒体およびプロセッサは個々に、様々な場所に複数の記憶およびプロセッサ構成要素を含むことができる。記憶されたソフトウェアは、1つのコンピュータ構成要素にローカルに存在するかまたは複数のコンピュータ構成要素の中に分散されてもよい。
【0027】
図2は、物体14を支持する支持トレイ10のより詳細な概略正面図である。物体14は、支持トレイ10の下面12に連結されかつそこから吊り下げられた歯科用アーチ16の垂直配置を含む。
【0028】
図示の実施形態では、単一の歯科用アーチ16は、頂部34および2つのウイング36を有する。頂部34は、歯科用アーチ16の下端を画定し、上向きに凹状かつ下向きに凸状に配向される。2つのウイング36は、頂部34から概ね上方かつ側方外側に延びる。ウイング36は、上端38を画定する。
【0029】
継手18は個々に、1つの歯科用アーチ16の上端38を上方のウイング36の外側に連結する。歯科用アーチ16の各対は、2つの継手18によって互いに連結される。図示された実施形態では、継手18は、概ね円筒形の外側形状を有する。図示された継手の概して円筒形状の軸は、垂直軸Zと概して位置合わせされる。
【0030】
図3は、図2の物体14を通るYZ-平面の断面図である。図示されるように、説明された実施形態では、歯科用アーチ16および継手18は中空であり、樹脂の使用量および支持トレイ10にかかる質量を軽減する。中空の内部を歯科用アーチの外側の領域から分離する壁厚を画定することができる。様々な実施形態において、壁厚は、約1~3ミリメートルまたは約1.5~2.5ミリメートルの範囲内、あるいは、約1.5ミリメートルまたは約2ミリメートルでもよい。壁厚が2ミリメートルの歯科用アーチをプリントすることにより、中空でないアーチに比べて樹脂の使用量が35%減少する。壁厚が1.5ミリメートルの歯科用アーチをプリントすることにより、中空でないアーチに比べて樹脂の使用量が50%減少する。継手18は中空であるため、樹脂の使用量は約5%しか追加されない。これは、外部支持足場を使用した場合の必要量よりもはるかに低い。外部支持足場は、アーチ自体よりも最大で80~100%多くの材料を必要としうる。外部支持足場はまた、支持トレイ10および物体14の外面上に端点を有する。外面から足場を除去すると、瘢痕化を生じる(外面に傷跡などの欠陥を残す)可能性がある。
【0031】
図4は、特定の支持機構の詳細を説明するための歯科用アーチ16の一実施形態の部分正面図である。継手18は個々に、上部スロット40および下部スロット42を含む。スロット40および42は、一対のアーチ16から継手18を物理的に分離するための「ブレーク・オフ(break-off)」位置または破断機構を提供する。図示された実施形態では、上部スロット40は、楕円形状を概して画定して、これはさらに、横軸Yおよび縦軸Zに対して傾斜角を画定する。下部スロット42は、XY-平面内に概して横方向に配置される円を概して画定する。
【0032】
歯科用アーチ16は個々に、一組のモデル歯44を保持する。いくつかの実施形態では、歯44は、歯科用アーチ16から取り外し可能なように設計されている。歯44は、歯科用アーチ16の上端38に近接して配置された内側臼歯46を含む。さらなる実施形態では、臼歯を省略してもよい、および/または、歯科用アーチ16の一部分のみを含んでもよい。さらなる実施形態では、歯科用アーチを、顧客が使用するためのアライナー(生体適合性材料で作製される)、他の歯科用デバイス、および他の非歯科用デバイスなどの他のデバイスで置き換えてもよい。
【0033】
分岐支持体48は、継手18から臼歯46の上側かつ外側の表面50まで伸長する。分岐支持体は、継手18に直接連結する幅広の端部52、および、臼歯46の上側かつ外側の表面50に直接連結する複数の幅狭の先端部54を有する。
【0034】
図1および図2は、物体14を、歯科用アーチ16の単一の垂直配置15を含むものとして図示する。好ましい実施形態では、物体14は、歯科用アーチ16の複数の垂直配置15を含むことができる。
【0035】
図5は、システム2の一部の実施形態を示す等角図であり、ここで物体14は歯科用アーチ16の6つの垂直配置15を含む。垂直配置15は個々に、5つの歯科用アーチ16を含み、合計30個の歯科用アーチ16が支持トレイ10の下面12から吊り下げられている。図示された実施形態では、垂直配置15は、単一の軸に沿って配置されている。
【0036】
図6~8は、上記で図示されたものと比較して物体14の別の実施形態を示す図である。同様の要素番号は、実施形態に幾何学的な違いがあることを除いて同様の要素を示す。
【0037】
図6は、歯科用アーチ16の5つの垂直配置15を含む物体14の一実施形態の図である。図示された実施形態では、垂直配置15の少なくともいくつかは個々に、4つの歯科用アーチ16を含む。また、図示された実施形態では、歯科用アーチ16は、三角形のパターンを画定する内部足場56を有する。三角形の足場56の使用は、図1~5に図示された中空設計の代替であり、改良された機械的強度および物体14からの未硬化樹脂のより迅速な排出を提供する。
【0038】
垂直配置15は、縦軸Zに対して様々な向きを有している。垂直配置15のうち2つについては、ウイング36はYZ平面に沿って伸長する。垂直配置15のうち3つについては、ウイング36はXZ平面に沿って伸長する。様々な向きは、パッキングアルゴリズムの結果である。所与の歯科用アーチ16の幾何学的形状および寸法について、アルゴリズムは、画定された構築容積58(平行六面体のボックスで表される)内で製造できる歯科用アーチ16の数を最大化する。構築容積58は、長方形の構築平面28、および、物体14の作製中に支持トレイ10の下面12が構築平面上に出ることができる最大高さHによって画定される。
【0039】
図7は、垂直配置15の1つの底部から見た、図6の物体14の一部のより詳細な図である。図示された実施形態では、継手18は、YZ-平面に対して湾曲した非線形形状かつ概ね三角形の断面を有する。継手18は、下側の歯科用アーチ16の上端38を、上方のウイング36の外側に連結する。
【0040】
図8は、継手18および分岐支持体48のさらなる詳細を示す図7の一部の図である。上端において、継手18は、ウイング36に対してほぼ垂直な方向でウイング36に連結している。したがって、継手18とウイング36との間の接続は、縦軸Zおよび横方向に対して傾斜角を画定する。継手18は、ウイング36の頂部に連結している(図7も参照)。
【0041】
分岐支持体48の幅広の端部52は、継手18に接合されている。分岐支持体48は、下側の歯科用アーチ16に接合されている幅狭の先端部54に向かって分岐する。幅狭の先端部54は、歯科用アーチ16に接合される位置に向かって下向きに次第に細くなる。
【0042】
上部スロット40は、縦軸Zに対して傾斜角を画定する。下部スロット42は、XY平面と概ね平行である。上部スロット40および下部スロット42は、歯科用アーチ16から継手を分離または破断するために使用される。アーチの表面に対して垂直であることに加えて、図示された継手18の概ね三角形の断面は、スロット40および42に沿った破断および分離プロセスを容易にする。
【0043】
図9A~Bは、垂直配置15の別の実施形態の下側部分の正面図(9A)および背面図(9B)である。図9A~Bの実施形態は、支持および寸法精度をさらに向上させるためのいくつかの追加された特徴を有する。これらの追加された特徴は、側方カプラ60、外部足場62、および追加された分岐支持体64を含む。
【0044】
側方カプラ60は、上側アーチ16の下側かつ外側の表面を、下側アーチ16の上側かつ内側のウイング表面に接合する。したがって、アーチ16は、対向するウイング36の位置で支持され、垂直配置15が強化される。側方カプラ60は、三角形または円筒形の断面を有するより大きいカプラ18とは対照的に、円筒形の断面を有するより小さいカプラ60と称することができる。
【0045】
外部足場62は、アーチ16に垂直方向および横方向の支持を提供する。これにより、アーチ16の全体的な寸法安定性が向上する。外部足場は、正三角形の配列を画定する三角形の幾何学的形状を有し、せん断変形に対する抵抗を最大化する。
【0046】
追加された分岐支持体64は、先に説明した分岐支持体48と構造および機能が類似している。分岐支持体64は、外部足場62によって支持され、下側アーチ16の前歯に接合する。したがって、分岐支持体64の幅広の端部は、外部足場62に直接接合する。分岐支持体64の幅狭の先端は、前歯に接合する。分岐支持体64の幅広の端部および幅狭の先端は、分岐支持体48のものと構造および機能が同じである。
【0047】
上記で説明した具体的な実施形態およびそのアプリケーションは、専ら説明目的のためのものであり、特許請求の範囲により包含される変更形態およびバリエーションを、除外するものではない。
【符号の説明】
【0048】
2 三次元プリントシステム
4 樹脂容器
6 樹脂
10 支持トレイ
14 物体
15 垂直配置
16 歯科用アーチ
20 移動機構
24 光エンジン
30 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】