(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-12
(54)【発明の名称】光放射を提供する装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20220502BHJP
H01S 3/23 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555523
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 GB2020000028
(87)【国際公開番号】W WO2020188232
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503443773
【氏名又は名称】トルンプ レーザー ユーケー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ジョルジュ デムーラン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ケバン ダーキン
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AL07
5F172AM08
5F172DD06
5F172NN05
5F172NN06
5F172NR30
5F172ZZ01
(57)【要約】
光放射(9)を提供する装置は、第1のシーディング放射(11)を提供するための第1のシード源(1)と、第2のシーディング放射(12)を提供するための第2のシード源(2)と、前記第1のシーディング放射(11)及び前記第2のシーディング放射(12)を連結するために前記第1のシード源(1)及び前記第2のシード源(2)に接続されたカプラ(3)と、前記第1のシーディング放射(11)及び前記第2のシーディング放射(12)を増幅するための少なくとも1つの増幅器(4)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシーディング放射を提供する第1のシード源と、
第2のシーディング放射を提供する第2のシード源と、
前記第1のシーディング放射及び前記第2のシーディング放射を連結するために前記第1のシード源及び前記第2のシード源に接続されたカプラと、
前記第1のシーディング放射及び前記第2のシーディング放射を増幅するための少なくとも1つの増幅器と、
を備える、光放射を提供するための装置。
【請求項2】
前記第1のシード源と、前記第2のシード源と、前記増幅器と、を制御する制御器を備え、前記第2のシーディング放射のピークパワーが減少すればランダムな光学パルスの周波数及び振幅を増加させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器を制御するための制御器を備え、放出された前記光放射が、前記装置が前記第2のシード源を含まない場合に比べてより高いピークパワー、より高い平均パワー、及び/又はより高いパルスエネルギーを有するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器を制御するための制御器を備え、放出された光放射が、前記装置が前記第2のシード源を含まない場合に比べて、前記装置の損傷閾値を超過する前により高いピークパワーを達成可能である、請求項1又は1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のシーディング放射は第1の波長により特徴付けられ、前記第2のシーディング放射は第2の波長により特徴付けられ、前記第1の波長は前記第2の波長と同じである、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記カプラは偏波コンバイナーであり、前記第1のシーディング放射及び前記第2のシーディング放射が直交する偏波である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記カプラ及び前記増幅器の間に偏光解消素子を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のシード源はファブリペロー半導体レーザであり、前記第2のシード源はファブリペロー半導体レーザである、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のシード源はスーパールミネッセントダイオードであり前記第2のシード源はスーパールミネッセントダイオードである、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のシーディング放射の一部分を前記第1のシード源へと反射する第1の反射器を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のシーディング放射の一部分を前記第2のシード源へと反射する第2の反射器を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1のシード源と前記第1の反射器とは第1の距離だけ離れていて、前記第2のシード源と前記第2の反射器は第2の距離だけ離れていて、前記第1の距離と前記第2の距離は等しい、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のシード源と前記第1の反射器とは第1の距離だけ離れていて、前記第2のシード源と前記第2の反射器は第2の距離だけ離れていて、前記第1の距離が前記第2の距離と異なる、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が同じスペクトル特性を有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が異なるスペクトル特性を有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器の前記スペクトル特性、並びに前記第1の距離及び前記第2の距離は前記光放射のピークパワー及びパルスエネルギーを最適化するように選択される、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が光ファイバブラッグ回析格子である、請求項11から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記制御器は前記第1のシード源を駆動する第1の制御信号及び前記第2のシード源を駆動する第2の制御信号を放出し、前記第1の制御信号は前記第2の制御信号と異なる、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第1のシード源と前記増幅器の間に、後進する光放射から前記第1のシード源を隔離するための第1の光アイソレータを備えた、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記第2のシード源と前記増幅器の間に、後進する光放射から前記第2のシード源を隔離するための第2の光アイソレータを備えた、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記カプラと前記増幅器の間に位置し、前記第1のシード源及び前記第2のシード源の双方を後進する光放射から隔離するための第3の光アイソレータを備えた、請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
少なくとも1つの前置増幅器及び第4の光アイソレータを含み、前記第4の光アイソレータは前記前置増幅器と前記増幅器との間に位置する、請求項1から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
可視光レーザダイオード及びカプラを備え、前記カプラは前記可視光レーザダイオード及び前記前置増幅器から放出された光放射を組み合わせ、前記組み合わされた光放射を前記増幅器へ受け渡す、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記カプラは前記第4の光アイソレータに組み込まれた、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
ビーム伝送ケーブル及び出力用光学素子を備え、前記ビーム伝送ケーブルは前記増幅器から放出された前記光放射を伝送する光ファイバを備える、請求項1から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記光ファイバは中空コアファイバである、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記出力用光学素子は光アイソレータを備える、請求項25又は26に記載の装置。
【請求項28】
第1のシード源による第1のシーディング放射を提供することと、
第2のシード源による第2のシーディング放射を提供することと、
カプラにより前記第1のシーディング放射及び前記第2のシーディング放射を連結することと、
少なくとも1つの増幅器により前記第1のシーディング放射及び前記第2のシーディング放射を増幅することと、
を含む、光放射を提供する方法。
【請求項29】
前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器を備え、前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器は前記第2のシーディング放射のピークパワーが減少するとランダムな光学パルスの周波数及び振幅が増加する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器を制御する制御器を備え、前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器は、前記増幅器により放出された前記光放射が、前記第2のシーディング放射を提供する前記ステップを含まない場合よりもより高いピークパワー、より高い平均パワー、及び/又はより高いパルスエネルギーを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器を制御する制御器を備え、前記第1のシード源、前記第2のシード源、及び前記増幅器は、前記第2のシーディング放射を提供する前記ステップを含まない場合に比べて、前記増幅器により放出された前記光放射が損傷閾値を超過する前により高いピークパワーを達成可能である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のシーディング放射は第1の波長により特徴付けられ、前記第2のシーディング放射は第2の波長により特徴付けられ、前記第1の波長は前記第2の波長と同じである、請求項28から31のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記カプラは偏波コンバイナーであり、前記第1のシーディング放射及び前記第2のシーディング放射が直交する偏波である、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記カプラと前記増幅器との間に偏光解消素子を提供する前記ステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のシード源はファブリペロー半導体レーザであり、前記第2のシード源はファブリペロー半導体レーザである、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のシード源はスーパールミネッセントダイオードであり前記第2のシード源はスーパールミネッセントダイオードである、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のシーディング放射の一部分を前記第1のシード源へ反射する第1の反射器を提供するステップを含む、請求項28から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2のシーディング放射の一部分を前記第2のシード源へと反射する第2の反射器を提供するステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のシード源と前記第1の反射器とは第1の距離だけ離れていて、前記第2のシード源と前記第2の反射器は第2の距離だけ離れていて、前記第1の距離と前記第2の距離が等しい、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のシード源と前記第1の反射器とは第1の距離だけ離れていて、前記第2のシード源と前記第2の反射器は第2の距離だけ離れていて、前記第1の距離が前記第2の距離と異なる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が同じスペクトル特性を有する、請求項38から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が異なるスペクトル特性を有する、請求項38から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器の前記スペクトル特性、並びに前記第1の距離及び前記第2の距離は前記光放射のピークパワー及びパルスエネルギーを最適化するように選択される、請求項41又は請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が光ファイバブラッグ回析格子である、請求項38から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記制御器は前記第1のシード源を駆動する第1の制御信号及び前記第2のシード源を駆動する第2の制御信号を放出する制御器を提供するステップを含み、前記第1の制御信号は前記第2の制御信号と異なる、請求項28から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のシード源と前記増幅器の間に、後進する光放射から前記第1のシード源を隔離するための第1の光アイソレータを提供するステップを含む、請求項28から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2のシード源と前記増幅器の間に、後進する光放射から前記第2のシード源を隔離するための第2の光アイソレータを提供するステップを含む、請求項28から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記カプラと前記増幅器の間に位置し、前記第1のシード源及び前記第2のシード源を後進する光放射から隔離するための第3の光アイソレータを提供するステップを含む、請求項28から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも1つの前置増幅器及び第4の光アイソレータを提供するステップを含み、前記第4の光アイソレータは前記前置増幅器及び前記増幅器の間に位置する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
可視光レーザダイオード及びカプラを提供するステップを含み、前記カプラは前記可視光レーザダイオード及び前記前置増幅器から放出された光放射を組み合わせ、前記組み合わされた光放射を前記増幅器へ受け渡す、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記カプラは前記第4の光アイソレータに組み込まれた、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ビーム伝送ケーブル及び出力用光学素子を提供するステップを含み、前記ビーム伝送ケーブルは前記増幅器から放出された前記光放射を伝送する光ファイバを備える、請求項28から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記光ファイバは中空コアファイバである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記出力用光学素子は光アイソレータを備える、請求項51又は請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光放射を提供する装置に関する。本発明は半導体ダイオードレーザ及びファイバレーザを含む連続波及びパルスレーザ、並びにそのようなレーザを使用したマーキング、切断、スクライビング及び溶接に特に適している。本発明は、銅やダイヤモンド等の高反射材料を処理するために使用されるレーザ、及び一般的に付加製造又は3Dプリントと呼ばれるレーザを使用した金属粉の焼結にも適している。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザやディスクレーザ等の産業用レーザは、マーキング、切断、スクライビング、溶接、一般的に付加製造又は3Dプリントと呼ばれる手法によるレーザを使用した金属粉の焼結、及びその他の材料の生産加工における重要な用途を有する。レーザは家電、医療機器、自動車、航空宇宙等の様々な産業で使用されている。レーザはパルスであっても、連続波であってもよい。実現可能な典型的なパルス長は数ピコ秒から数ナノ秒、マイクロ秒、及びミリ秒に渡る。パルスの繰り返し率は電子的に制御され、幅広い範囲に渡ってもよい。
【0003】
ワーレベル及び強度が上がるにつれて、例えばスペクトルノイズ、時間ノイズ、スペックル、光放射の非線形波長変換、及びセルフQスイッチのような、非線形効果に関連した問題も増加する。これらの非線形効果は、工程の再現性が必要とされる産業用加工システムにおいては望ましくないものである。
【0004】
例えば、波長変換により光合焦システムにエラーが引き起こされ、材料に到達する光学パワーが削減されるかもしれず、セルフQスイッチによりレーザシステムの光増幅器及び光ファイバが破壊され得る。
【0005】
ファイバ増幅器内の局所的な反転分布状態は、パルスが増幅器の出力端に到達する前に相当増加する。パルスは伝播するに従い、反転分布状態を枯渇させ、強度が上昇する。増幅プロセスはまたパルスの著しい再整形及び再先鋭化に寄与する。これはパルス幅及びピークパワーを定義する際に非常に重要であり、結果として誘導ラマン散乱(SRS)及び誘導ブリルアン散乱(SBS)のような様々な非線形性の兆候を定義することになる。特定のエネルギーレベル以上であれば、全てのパルスは再整形(再先鋭化)され、パルス幅が減少する。これはパルスが増幅器の飽和を開始することに充分なエネルギーを獲得することに起因する。このような状況ではエネルギーは主にパルスの立ち上がりにて取り出されるため、パルスの変形や歪みが生じることが知られている。ファイバの設計やパルスの形状により、ピークパワーはパルスエネルギーと共に非線形に増加し、典型的に約5kWから10kWであるSRS閾値を必ず超過する。
【0006】
パルス状のファイバレーザの出力パワーを制限するもう一つの重要な効果は、ジャイアントパルスの形成である。これらは不幸にもシステム中の光学要素を損傷し得る。この効果はレーザのピークパワー及びスペクトル特性に大きく依存し、誘導ブリルアン散乱(SBS)により生じると考えられている。非線形閾値に達すると、前進パルスが反射される。ジャイアントパルスが観察され、それらは不幸にもパルスレーザシステム内の増幅器(及びその他の装置)を損傷し得る。不運にも、この効果の性質は確率的であり、それ自体は非常に予測不可能である。シード源レーザ(レーザダイオードのような)の線幅を狭めるようなスペクトル特性の瞬間的な変化により、SBSイベントが起こるかもしれず、ジャイアントパルスの形成が起こり、その後に続く壊滅的な損傷に繋がり得る。
【0007】
米国特許第7,936,796号明細書は、出力が光ファイバ増幅器により増幅される多縦モードファブリペロー半導体レーザを使用した主発振電力増幅器を開示する。ファイバブラッグ回析格子のような反射器が半導体レーザと増幅器の間に挿入されている。反射器は光ファイバ増幅器から放出されたレーザ放射の帯域幅を狭め、後進ランダムパルス、及びジャイアントパルスの形成のような誘導ブリルアン散乱の効果を削減した。より狭い帯域幅により、通常は誘導ブリルアン散乱の効果が悪化することが期待されるため、この結果は驚くべきものだった。しかしながら、要求されるピークパワー及び平均パワーが増加し続けるにつれ、誘導ブリルアン散乱及びその他の非線形効果は再度問題となるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に示した問題を回避又は削減する光放射を提供する装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の非限定実施形態によれば、
第1のシーディング放射を提供する第1のシード源と、
第2のシーディング放射を提供する第2のシード源と、
第1のシーディング放射及び第2のシーディング放射を連結するために第1のシード源及び第2のシード源に接続されたカプラと、
第1のシーディング放射及び第2のシーディング放射を増幅するための少なくとも1つの増幅器と、
を備える、光放射を提供する装置が提供される。
【0010】
装置は、第1のシード源と、第2のシード源と、増幅器とを制御するための制御器を備えてもよく、第2のシーディング放射のピークパワーが減少すればランダムな光学パルスの周波数及び振幅を増加させる。
【0011】
装置は、第1のシード源、第2のシード源、及び増幅器を制御するための制御器を備えてもよく、装置により放出された光放射が、装置が第2のシード源を含まない場合に比べてより高いピークパワー、より高い平均パワー、及び/又はより高いパルスエネルギーを有する。
【0012】
装置は、第1のシード源、第2のシード源、及び増幅器を制御するための制御器を備えてもよく、装置により放出された光放射が、装置が第2のシード源を含まない場合に比べて、装置の損傷閾値を超過する前により高いピークパワーを達成可能である。
【0013】
驚くことに、第1のシード源と、第2のシード源と、増幅器とは、第2のシーディング放射のピークパワーが減少すればランダムな光学パルスの周波数及び振幅を増加させるように制御可能である。このようなランダムな光学パルスは装置への壊滅的な損傷を引き起こす誘導ブリルアン散乱の存在を示すと考えられている。第2のシーディング放射のピークパワーが増加した時にランダムな光学パルス及び関連する誘導ブリルアン散乱の存在が減少することにより、装置がより確実により高いピークパワーを提供することが可能になる。
【0014】
また、驚くことに、光学増幅器から放出された光学パルスが第2のシード源を含まない類似の装置よりもより高いピークパワー及びより高い平均パワーを有するように、第1のシード源、第2のシード源、及び増幅器を制御することが可能である。達成可能なピークパワーの制限は、誘導ブリルアン散乱により誘発されたと考えられるランダムな光学パルス及びジャイアント光学パルスの生成により起こる。
【0015】
第1のシーディング放射は第1の波長により特色付けられてもよい。第2のシーディング放射は第2の波長により特色付けられてもよい。第1の波長は第2の波長と同一であってもよい。
【0016】
カプラは好ましくは偏波コンバイナーである。装置は第1のシーディング放射及び第2のシーディング放射が直交して偏波されるように構成されてもよい。
【0017】
装置はカプラと増幅器との間に偏光解消素子を備えてもよい。
【0018】
第1のシード源はファブリペロー半導体レーザであってもよい。第2のシード源はファブリペロー半導体レーザであってもよい。
【0019】
第1のシード源はスーパ-ルミネッセントダイオードであってもよい。第2のシード源はスーパ-ルミネッセントダイオードであってもよい。
【0020】
装置は第1のシーディング放射の一部分を第1のシード源へと反射する第1の反射器を備えていてもよい。装置は第2のシーディング放射の一部分を第2のシード源へと反射する第2の反射器を備えていてもよい。
【0021】
第1のシード源及び第1の反射器は第1の距離だけ離れていてもよい。第2のシード源及び第2の反射器は第2の距離だけ離れていてもよい。第1の距離は第2の距離と同一であってもよい。これにより、もしも第1のシード源及び第2のシード源が同期してパルス発振した場合に、第1のシード源及び第2のシード源からのパルスをオーバーレイすることが可能になる。代わりに、第1の距離は第2の距離と異なってもよい。これにより第1のシード源からのパルス及び第2のシード源からのパルスの位相が互いにずれるようにすることができ、又は、互いに分波された状態にすることができる。
【0022】
第1及び第2の反射器は同一のスペクトル特性を有してもよく、又は異なるスペクトル特性を有してもよい。
【0023】
第1及び第2の反射器のスペクトル特性、並びに第1及び第2の距離は、光放射のピークパワー及びパルスエネルギーを最適化するように選択されてもよい。
【0024】
第1の反射器及び第2の反射器は光ファイバブラッグ回析格子であってもよい。
【0025】
制御器は第1のシード源を駆動する第1の制御信号、及び第2のシード源を駆動する第2の制御信号を放出してもよい。第1の制御信号は第2の制御信号と異なってもよい。異なる制御信号により第1のシード源及び第2のシード源を駆動することは第1のシード源及び第2のシード源のゲインダイナミクスが互いに異なることを保証することの補助になる。これにより誘導ブリルアン散乱の発生のリスクを抑えることができる。
【0026】
装置は、第1のシード源と増幅器の間に、後進する光放射から第1のシード源を隔離するための第1の光アイソレータを備えていてもよい。
【0027】
装置は、第2のシード源と増幅器の間に、後進する光放射から第2のシード源を隔離するための第2の光アイソレータを備えていてもよい。
【0028】
装置は、カプラと増幅器との間に第1のシード源、第2のシード源の双方を後進光放射から隔離するための第3の光アイソレータを備えていてもよい。
【0029】
装置は、少なくとも1つの前置増幅器及び第4の光アイソレータを含んでいてもよく、第4の光アイソレータは前置増幅器及び増幅器の間に位置する。装置は、可視光レーザダイオード及びカプラを備えていてもよく、カプラは可視光レーザダイオード及び前置増幅器から放出された光放射を組み合わせ、組み合わされた光放射を増幅器へ受け渡す。カプラは第4の光アイソレータに組み込まれていてもよい。
【0030】
装置はさらにビーム伝送ケーブル及び出力用光学素子を備えていてもよく、ビーム伝送ケーブルは増幅器から放出された光放射を伝送するための光ファイバを備える。光ファイバは中空コアファイバであってもよい。出力用光学素子は光アイソレータを備えてもよい。
【0031】
本発明はまた、
第1のシード源による第1のシーディング放射を提供することと、
第2のシード源による第2のシーディング放射を提供することと、
カプラにより第1のシーディング放射及び第2のシーディング放射を連結することと、
少なくとも1つの増幅器により第1のシーディング放射及び第2のシーディング放射を増幅することと、
を含む、光放射を提供する方法を提供する。
【0032】
本発明の方法は本発明の装置の上述した任意の態様を使用するために必要なステップを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の実施形態は、単に例示を目的として、添付された図面を参照して以下に説明される。
【
図1】
図1は本発明における光放射を提供する装置を示す。
【
図2】
図2は従来の技術における前進パルスの例を示す。
【
図3】
図3は追加のスパイクを含む従来の技術におけるパルスを示す。
【
図4】
図4は従来の技術におけるジャイアントパルスの例を示す。
【
図5】
図5は本発明の装置から放出されたパルスを示す。
【
図8】
図8は適切な動作を監視するための熱電対を含む、本発明における光放射を提供する装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明における、
第1のシーディング放射11を提供する第1のシード源1と、
第2のシーディング放射12を提供する第2のシード源2と、
前記第1のシーディング放射11及び前記第2のシーディング放射12を連結するために前記第1のシード源1及び前記第2のシード源2に接続されたカプラ3と、
前記第1のシーディング放射11及び前記第2のシーディング放射12を増幅するための少なくとも1つの増幅器4と、
を備える、光放射9を提供する装置を示す。
【0035】
装置は第1のシード源1、第2のシード源2、及び増幅器4を制御するための制御器5を備えていてもよい。
【0036】
制御器5は、第1のシーディング放射11のピークパワー35が、第2のシード源2からの第2のシーディング放射12が存在しないときに装置を損傷する充分な強度の誘導ブリルアン散乱をもたらすピークパワー閾値36よりも大きくなるように第1のシード源1、第2のシード源2、及び増幅器4を制御してもよく、その結果装置により放出される光放射9のピークパワー37を増加させることが可能になる。
【0037】
制御器5は、第2のシード源2による第2のシーディング放射12がない時に光放射9のピークパワー37が損傷閾値38よりも大きくなるように第1のシード源1、第2のシード源2、及び増幅器4を制御してもよい。
【0038】
図1に示されるように、制御器5は第1のシード源1及び第2のシード源2が光学パルスを放出するように構成されてもよい。代わりに、又は加えて、
図1に示されるように、制御器5は第1のシード源及び第2のシード源2が連続波光放射を放出するように構成されてもよい。
【0039】
米国特許第7,936,796号明細書にて説明されるように、
図2は第1のシード源1から増幅器4を通って進む前進パルスの光学パワー201を示す。出力パワー201は増幅器4の出力側にて計測された。
図2はまた通常の動作中に第1のシード源1へと進む後進パルスの出力パワー202を示す。計測は
図1に示された装置と類似しているが第1のシード源レーザ1のみが存在する装置により行われた。出力パワー201が光学パワー202よりもはるかに高いパワーを有するため、光学パワー201及び202は異なるスケールにてプロットされた。出力パワー202は装置の異なるスプライスに起因する第1の反射203、第2の反射204を含む。
図2に示されるパルス形状は、
図1に示されるような装置で発生する大部分のパルスに典型的なものである。
【0040】
図3は第1のシード源1に向かって伝播する後進パルス211、212の2つの例を示す。パルス211及び212は前と同じ光学パワー203及び204を含むが、追加のスパイク213及び214も含む。これらの追加のスパイク213及び214は稀に発生し、発生と強度の双方においてランダムである。第1のシード源1の動作条件(温度、駆動電流及びパルス形状のような)を変更すれば発生頻度を変化させることができる。パルス繰り返し周波数25kHzでは、追加のスパイクが、おおよそ48時間以上の期間に1回から5分間に30,000回の間の頻度で観測された。加えて、発生頻度は、異なる又は同じ製造者から供給される、異なった第1のシード源1を使用することにより変更することができる。追加のスパイク213、214は後進方向に観測されたが、前進パルス形状201においては証拠が観察できない。スパイク213及び214が誘導ブリルアン散乱(SBS)の証拠であると考えられている。スパイク213及び214はランダムな性質であり、概して望ましくなく、本明細書中のその他の箇所にてランダムパルスと称される。
【0041】
図4は前進方向に発生した通常の外見のパルス201に重畳されたジャイアントパルス221の例を示す。後方反射検知器により測定された関連パルス222は複雑な形状を有し、
図2に示されるパルス202よりも数倍大きい。事実、光学パワー203及び204はこの縮尺では不可視である。パルス222はスパイク223、後縁224、及び窪み225を有する。後方スパイク213及び214が100Hz周辺で起こるように装置をセットアップすることによりこれらのデータを取得した。この繰り返し周波数においては、ジャイアントパルス221及び関連パルス222が5分に1回起こることが観測された。言い換えれば、ジャイアントパルス221は後進パルス213及び214よりもはるかに頻度が低く、ランダムに起こる。
【0042】
窪み225はまたSBSの証拠であると考えられる。後進パルス222はSBSを介して前進パルスを励起するために充分なエネルギーを有する。これにより、前進するジャイアントパルス221が発生するため、後進パルス222からエネルギーが抽出され、窪み225が発生する。以上の全てのパルスは増幅器4中の能動利得媒体によりさらに増幅される。
【0043】
図4を参照し、図示されるジャイアントパルス221の振幅226はパルス201(ジャイアントパルス221を重畳しない場合)の振幅227の約2倍である。振幅226はランダムに変化し、パルス201の振幅227の数倍になり得る。ジャイアントパルス221の振幅は増幅器4内のファイバの光学損傷閾値を超えるに充分であると考えられ、恐らくこのことがSBS伝播と関連した音波により放出された追加エネルギーと共に、上述のランダムで予測不可能な壊滅的損傷を引き起こした。しかしながら本説明は単なる理論であり、考えられる損傷の仕組みを説明しようとする本明細書の試みは本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
再び
図1を参照し、第2のシーディング放射12のピークパワー10が減少すればランダムな光学パルス213、214の周波数及び振幅が増加するように、第1のシード源1と、第2のシード源2と、増幅器4とは制御可能である。
【0045】
図5に示される光学増幅器4から放出された光学パルス41が第2のシード源2を含まない類似の装置に比べてより高いピークパワー42、より高い平均パワー43、及びより高いパルスエネルギー44を有するように、第1のシード源1、第2のシード源2、及び増幅器4は制御可能である。双方の場合において、達成可能なピークパワーの制限は、誘導ブリルアン散乱により誘発されたと考えられるランダムな光学パルス及びジャイアント光学パルスの生成により起こる。
【0046】
第1のシード源1を有し第2のシード源2を持たない装置(米国特許第7,936,796号明細書に説明されるような)は、非線形光学効果のためにそれ以上増やせないピークパワーにて動作すると考えられていたため、この結果は驚くべきものである。達成可能なピークパワー、パルスエネルギー、及び平均パワーを制限する非線形効果は、スペクトルノイズ、時間ノイズ、スペックル、光放射の非線形波長変換、誘導ブリルアン散乱、誘導ラマン散乱、及びセルフQスイッチを含む。したがって第2のシード源2を導入し、第1のシーディング放射11及び第2のシーディング放射12をカプラ3にて結合し、第1のシーディング放射11及び第2のシーディング放射12を増幅器4で増幅させることにより、ピークパワー及び/又はパルスエネルギーを増加させることができることは驚くべきことである。
【0047】
第1のシーディング放射11は第1の波長13により特色付けられてもよい。第2のシーディング放射12は第2の波長14により特色付けられてもよい。第1の波長13は第2の波長14と同一であってもよい。
【0048】
カプラ3は好ましくは偏波コンバイナーである。装置は第1のシーディング放射11及び第2のシーディング放射12が偏波コンバイナーのそれぞれの入力15,16にて直交して偏波されるように構成されてもよい。
【0049】
装置はカプラ3と増幅器4との間に偏光解消素子17を備えてもよい。偏光解消素子17はライオット偏光解消素子であってもよい。ライオット偏光解消素子は一方の長さが他方の長さの2倍であり互いに接続された2つの長さの偏光保持光ファイバを備えていてもよい。1つのシード源を使用する場合は、偏光解消素子がシーディング放射の偏光を増幅器4に入射する前にスクランブルし、それにより誘導ブリルアン散乱のような非線形効果が問題となる前に光放射のピークパワーを増加させることが可能になる。
【0050】
第1のシード源1はファブリペロー半導体レーザであってもよい。第2のシード源2はファブリペロー半導体レーザであってもよい。
【0051】
第1のシード源1はスーパ-ルミネッセントダイオードであってもよい。第2のシード源2はスーパ-ルミネッセントダイオードであってもよい。
【0052】
装置は第1のシーディング放射11の一部分を第1のシード源1へと反射する第1の反射器17を備えていてもよい。装置は第2のシーディング放射12の一部分を第2のシード源2へと反射する第2の反射器18を備えていてもよい。
【0053】
第1のシード源1及び第1の反射器17は第1の距離6だけ離れていてもよい。第2のシード源2及び第2の反射器18は第2の距離7だけ離れていてもよい。第1の距離6は第2の距離7と同一であってもよい。これにより、もしも第1のシード源1及び第2のシード源2が同期してパルス発振を行った場合に、第1のシード源1及び第2のシード源2からのパルスをオーバーレイすることが可能になる。代わりに、第1の距離6は第2の距離7と異なってもよい。これにより第1のシード源1からのパルス及び第2のシード源2からのパルスの位相が互いにずれるようにすることができ、又は、互いに分波された状態にすることができる。パルスのディフェージング及びインターリービングは第1及び第2の制御信号48及び49を制御器5により調整することによっても達成可能である。
【0054】
第1及び第2の反射器17、18は同一のスペクトル特性を有してもよく、又は異なるスペクトル特性を有してもよい。スペクトル特性は中心波長、帯域幅、反射率、及びチャープを含む。
【0055】
第1及び第2の反射器17、18のスペクトル特性、並びに第1及び第2の距離6、7は、光放射のピークパワー及びパルスエネルギーを最適化するように選択されてもよい。第1のシード源1及び第2のシード源2がパルス発振を行った時のピークパワーは、第1のシード源1及び第2のシード源2のうち1つのみがパルス発振されたときのピークパワーより大きくなるかもしれず、ピークパワーの制限はランダムパルス223、244及びジャイアントパルス221である。ピークパワーは少なくとも2倍増加させることができ、好ましくは5倍以上増加する。
【0056】
第1の反射器17及び第2の反射器18は光ファイバブラッグ回析格子であってもよい。
【0057】
制御器5は第1のシード源1を駆動する第1の制御信号48、及び第2のシード源2を駆動する第2の制御信号49を放出してもよい。第1の制御信号48は第2の制御信号49と同一であってもよく、又は異なってもよい。異なる制御信号により第1のシード源1及び第2のシード源2を駆動することは第1のシード源1及び第2のシード源2のゲインダイナミクスが互いに異なることを保証することの補助になる。このことは、例えば複数の縦モードを有するファブリペロー半導体レーザをパルス発振する際に有用である。半導体レーザは、時には、パルス中にて単一の縦モードにてレーザを放出し、それにより
図2から
図5を参照して説明したランダムパルス又はジャイアントパルスといった誘導ブリルアン散乱イベントが引き起こされ得る。半導体レーザを異なる制御信号で駆動することにより、パルス内にて第1のシード源1及び第2のシード源2が同時に単一の縦モードにて放出される確率を低減させることができる。受動素子を使用して、又はコンデンサ又はインダクタンスが2つのシード源に対して異なることを保証するように回路配置を調整することにより、第1の駆動信号48及び第2の駆動信号49が互いに異なるようにすることができる。
【0058】
装置は第1のシード源1と増幅器4との間に、増幅器4から第1のシード源1へ向かって伝播する後進光放射9から第1のシード源1を隔離するための第1の光アイソレータ8を備えていてもよい。
【0059】
装置は第2のシード源2と増幅器4との間に、増幅器4から第2のシード源2へ向かって伝播する後進光放射9から第2のシード源4を隔離するための第2の光アイソレータ52を備えていてもよい。
【0060】
装置は、カプラ3と増幅器4との間に、第1及び第2のシード源1、2の双方を後進光放射9から隔離するための第3の光アイソレータ53を備えてもよい。
【0061】
装置は少なくとも1つの前置増幅器21、及び第4の光アイソレータ22を含んでいてもよい。第4の光アイソレータ22は前置増幅器21と増幅器4との間に位置する。装置は可視光レーザダイオード24及びカプラ25を備えていてもよく、カプラ25は、可視光レーザダイオード24から放出される可視光放射26及び前置増幅器21から放出される光放射27を、増幅器4による増幅の前に結合する。カプラ25は光アイソレータ22に組み込まれていてもよい。カプラ25は好ましくは波長分割マルチプレクサである。波長分割マルチプレクサは溶融ファイバカプラであってもよい。
【0062】
装置はさらにビーム伝送ケーブル31及び出力用光学素子32を備えてもよく、ビーム伝送ケーブル31は増幅器4から放出された光放射を伝送するための光ファイバ33を備える。出力用光学素子32は第5の光アイソレータ34を備えてもよい。
【0063】
光ファイバ33はシングルモードであってもマルチモードであってもよい。光ファイバ33はソリッドコアファイバ、微細構造ファイバ、又は中空コアファイバであってもよい。中空コアファイバはカゴメファイバ、フォトニック結晶ファイバ、又は反共振ファイバであってもよい。このような中空コアファイバは、光放射を、非線形光学効果を招くことなく、著しく長い距離を伝送することを可能にするために有利である。光ファイバ33は偏波保持ファイバであってもよい。
【0064】
反共振ファイバの例を
図6及び
図7に示す。反共振ファイバ160及び170はキャピラリー161、及びキャピラリー161の内面162に沿って複数の反共振チューブ163を備える。有利なことに、反共振ファイバ160及び170は、ファイバの断面に2回対称な構成要素を提供するような反共振チューブ163を有する、偏波保持ファイバである。これは、
図16に示すように、第1の反共振チューブ164が第2の反共振チューブ163と比べて大きい、及び/又は異なる形状であるような、第1及び第2の反共振チューブ164及び171を組み入れることにより達成される。代わりに、又は加えて、
図17に示すように、第1の反共振チューブは入れ子状チューブ171であってもよい。入れ子状チューブ171は、ファイバ170に沿って伝播する光の他方の偏光と比較して、一方の偏光の損失を発生させるために、吸収材料又は散乱材料により製造されていてもよい。材料処理の性能は多くの場合、入射する光放射の偏光に依存するため、偏光保持ファイバを使用することは、マーキング、切断及び溶接のような材料処理用途にて有利に働く。偏光された光放射を加工中の製品に伝送する能力及び光ファイバ及び/又は1/2波長板のような偏光光学系を回転することにより偏光を微調整する能力は、材料処理が光放射の偏光に依存するような用途にて非常に有利である。
【0065】
図8は光放射9を提供する装置であり、第1及び第2のシード源が半導体レーザダイオードである例を示す。制御器5はレーザダイオードドライバ81を介して第1及び第2のシード源1、2を制御する。レーザダイオードドライバ81は好ましくは高速レーザダイオードドライバである。
【0066】
前置増幅器21は少なくとも1つのポンプダイオード83により流される電流を制御する電子ポンプダイオードドライバ82を介して制御される。ポンプダイオード83は好ましくは多重横モード半導体レーザダイオードである。ポンプダイオード83は前置増幅器21の一体部品であってもよく、
図1には示されない。
【0067】
増幅器4は複数のポンプダイオード83により伝導される電流を制御する電子ポンプダイオードドライバ82を介して制御される。ポンプダイオード83の出力は、好ましくはマルチモードからマルチモードへの光ファイバポンプコンバイナであるポンプコンバイナ84により結合される。ポンプダイオード83は、好ましくは、複数の多重横モード半導体レーザダイオードを備える多重横モード半導体レーザダイオードモジュールである。ポンプダイオード83及びポンプコンバイナ84は増幅器4の一体部品であってもよく、
図1には示されない。
【0068】
出力用光学素子32は、出力が制御器5にフィードバックされるような第1の温度センサ85を備える。温度センサ85は第5の光アイソレータ34により適切な光分離が提供されているかどうかを保証するために使用される。温度センサ85は熱電対又はサーミスタであってもよい。
【0069】
第2の温度センサ86はポンプダイオード83が接続された吸熱器(図示せず)の温度をモニタするために提供される。第2の温度センサ86の出力は制御器5に接続される。制御器5は、出力放射9が外気温及び時間に対して安定することを保証する目的でポンプダイオード83に流れ込む電流を調整するために、ポンプダイオード83のパワーにおける既知の温度依存性を使用してもよい。代わりに、又は加えて、制御器5は装置を較正する際に得られた測定データを使用してもよい。
【0070】
ビーム伝送ケーブル31は、光ファイバ33が強く曲がることを防ぐために屈曲を抑制する頑丈なホース87を備える。もしも光ファイバ31の曲げ半径が小さすぎると、光放射9が光ファイバ31のコアから逃げてしまい、光ファイバ31の熱損傷を招くことになる。
【0071】
光ファイバ31はシングルモード光ファイバであってもよい。代わりに、光ファイバ31はマルチモード光ファイバであってもよく、その場合、出力放射9にて所望の光学パワー空間分布を提供する目的で光ファイバ31によりガイドされる光学モードが適切に励起されているかどうかを保証するために、随意のモードアダプタ88が提供されることができる。例えば、もしも所望の出力放射9がトップハット形状の分布を有する場合、光ファイバ31によりガイドされる光学モードが均等に励起されることが望ましい。モードアダプタ88は内部の光ファイバによりガイドされた光学モードをスクランブルするための少なくとも1つのベンドを備える光ファイバモードスクランブラであってもよい。
【0072】
図示されない追加機能は可視光レーザダイオード24を制御するためのレーザダイオードドライバ、及び装置を冷却するためのファンを含む。
【0073】
添付の図面を参照して上に説明した本発明の実施形態は例示のみを目的とし、性能を向上させるために修正及び追加の構成要素が提供されてもよいことが理解されよう。
【0074】
図面に示された各構成要素は図中の用途に限定されるものではなく、その他の図及び本発明の全ての態様に使用されてもよい。本発明は上に説明した及び/又は図示した独立した構成要素の単体、又は任意の組み合わせ対しても及ぶ。
【国際調査報告】