(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-12
(54)【発明の名称】操舵システムを監視する方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220502BHJP
G01M 17/06 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B62D6/00
G01M17/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555552
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2020053260
(87)【国際公開番号】W WO2020187485
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】102019203522.1
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フリーデル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ケアステン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ マイアー
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232CC30
3D232CC45
3D232DA01
3D232DA61
3D232DA82
3D232DD02
3D232EC37
3D232GG01
(57)【要約】
本発明は、特に車両(12)における動作中に操舵システム(10)を監視する方法であって、操舵システム(10)の少なくとも1つのステアリング部材(14)への負荷特性量を算定して、ステアリング部材(14)への応力及び/又はステアリング部材(14)の状態を特定するために評価する、方法に関する。負荷特性量が、ステアリング部材(14)への、外部の力作用によって発生した少なくとも1つの負荷を含むことが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両(12)における動作中に操舵システム(10)を監視する方法であって、前記操舵システム(10)の少なくとも1つのステアリング部材(14)への負荷特性量を算定して、前記ステアリング部材(14)への応力及び/又は前記ステアリング部材(14)の状態を特定するために評価する、方法において、
前記負荷特性量は、前記ステアリング部材(14)への、外部の力作用によって発生した少なくとも1つの負荷を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
外部の力作用によって発生した前記負荷を算定するために、少なくとも前記操舵システム(10)の電動ステアリングアクチュエータ(16)の加速度を監視する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外部の力作用によって発生した前記負荷を算定するために、少なくとも前記操舵システム(10)の電動ステアリングアクチュエータ(16)の慣性を考慮する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷特性量は、特に前記操舵システム(10)が動作する際に発生して前記ステアリング部材(14)に作用する、前記ステアリング部材(14)への少なくとも1つのシステム固有の負荷を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記システム固有の負荷を算定するために、少なくとも前記操舵システム(10)の電動ステアリングアクチュエータ(16)への駆動トルク及び/又は駆動力を監視する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記負荷特性量を評価するために、レインフロー法及び/又は最小値・最大値計数法を使用する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記負荷特性量を使用して、前記車両(12)の路床と相関関係にある少なくとも1つの状態特性量を算定する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
指示通知を生成するために及び/又は車道状態マップを生成するために、前記状態特性量を使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
実際の走行モードを特定し、前記実際の走行モードが自動走行モード及び/又は半自動走行モードである少なくとも1つの動作状態において、前記負荷特性量に依存して、前記自動走行モード及び/又は半自動走行モードを離脱するためのアクションを起動及び/又は実行する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(20)を備える制御装置(18)。
【請求項11】
少なくとも1つのステアリング部材(14)を含む少なくとも1つの操舵システム(10)と、請求項10に記載の制御装置(18)とを備える車両(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の操舵システムを監視する方法に関する。さらに、本発明は、このような方法を実施するための計算ユニットを備えた制御装置、及び、このような制御装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102004017660号明細書から、電気式及び/又は電気機械式システム、例えば操舵システムを監視する方法が公知であり、この方法においては、負荷特性量を、部材の内部負荷又はシステム固有の負荷の形態において算定して、部材への応力及び/又は部材の状態を特定するために評価する。さらなるシステム変数を評価する場合に、例えば、動作時間、負荷時間及び/又は周囲温度をさらに考慮することができる。しかしながら、上記文献において、部材への応力及び/又は部材の状態に対して有意な影響も及ぼし、例えば、車道の凹凸、路面のくぼみ、及び/又は、他の事象若しくは例外的な事象によって発生させられる外部負荷は、考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004017660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この背景技術を起点として、本発明の課題は、特に、応力解析に関して改善された特性を備えた、操舵システムを監視する方法を提供することにある。この課題は、請求項1、請求項10及び請求項11に記載の特徴によって解決される一方、本発明の有利な態様及び改良形態については、従属請求項から得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
本発明は、特に車両、有利には自動車における動作中に操舵システムを監視する方法であって、操舵システムの、特に監視すべき少なくとも1つのステアリング部材への負荷特性量を算定して、ステアリング部材への特に機械的応力及び/又は電気的応力及び/又はステアリング部材の状態を特定するために評価する、方法に関する。
【0006】
負荷特性量が、ステアリング部材への少なくとも1つの負荷であって、外部の力作用によって発生した、特に周囲環境によってステアリング部材に作用する、特にステアリング部材への外部負荷を含むことが提案される。この場合、特にステアリング部材への負荷をもたらす外部の力作用は、例えば、車道の凹凸、路面のくぼみ、障害物への衝突、障害物に対する操舵、障害物の上を通過すること、及び/又は、他のこのような事象若しくは例外的な事象によって発生させることができる。この構成により、ステアリング部材及び/又は操舵システムの特に有利な応力解析を実現することができる。これにより、特に内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の損傷メカニズムとは有意に区別することができる外部負荷の損傷メカニズムを確実に検出して考慮することもでき、これにより、有利には、動作信頼性を高めることができる。
【0007】
さらに、車両及び/又は操舵システムは、さらなる部材及び/又は構成要素、例えば、少なくとも1つの制御装置、負荷特性量を検出するための少なくとも1つの検出ユニット、手動トルクを適用するためのステアリングハンドル、有利には、少なくとも1つのステアリング調節要素、例えば、ラックアンドピニオンの形態のステアリング調節要素を有するステアリングギア、特にステアリングギアと協働する少なくとも1つのステアリングアクチュエータ、及び/又は、ステアリングギアを備えたステアリングアクチュエータを連結するための少なくとも1つの連結器を含み得る。特に車両及び/又は操舵システムの、ステアリングアクチュエータ、及び/又は、ステアリングアクチュエータに作用結合している部材、例えば、ステアリング調節要素及び/又は連結器は、監視すべきステアリング部材であるものとしてよい。この場合、特に、「ステアリングアクチュエータ」とは、特に電動式に構成されたアクチュエータユニットと解されるべきであり、このアクチュエータユニットは、特にステアリングトルクをステアリング調節要素に伝達し、これにより、有利には、車両の走行方向に影響を及ぼすように設けられている。好ましくは、ステアリングアクチュエータは、ステアリングハンドルに適用された手動トルクを補助するためのステアリングトルク、及び/又は、車両の走行方向を自発的に及び/又は自動的に制御するためのステアリングトルクを提供するように設けられている。これに加えて、ステアリングアクチュエータは、少なくとも1つの電動機を含み得る。電動機は、有利にはブラシレスモータ、好適には、非同期モータ又は永久励磁式の同期モータとして構成されている。「設けられている」とは、特に、特別にプログラムを作成すること、設計すること及び/又は備えることと解されるべきである。対象物が特定の機能のために設けられているとは、特に、対象物がこの特定の機能を、少なくとも1つの利用状態及び/又は動作状態において実現及び/又は実施することと解されるべきである。
【0008】
さらに、特に、「負荷特性量」とは、特に内部の力作用及び/又は外部の力作用によってステアリング部材に発生した、ステアリング部材への負荷と少なくとも相関関係にある特性量と解されるべきである。特に、少なくとも負荷特性量に基づき、ステアリング部材への特に機械的応力及び/又は電気的応力及び/又はステアリング部材の状態を推定することができ、及び/又は、ステアリング部材への特に機械的応力及び/又は電気的応力及び/又はステアリング部材の状態を特定することができる。さらに、負荷特性量は、有利には、ステアリング部材へのさらなる負荷、例えば、周囲温度によって発生した負荷、空気湿度によって発生した負荷、及び/又は、周囲条件によって発生したその他の負荷を含み得る。さらに有利には、負荷特性量に基づき、これに加えて、車両の少なくとも1つの車両部材への特に機械的応力及び/又は電気的応力及び/又は車両部材の状態を推定することもでき、及び/又は、車両の少なくとも1つの車両部材への特に機械的応力及び/又は電気的応力及び/又は車両部材の状態を特定することもできる。この場合、有利には、監視時間インターバル全体にわたって負荷特性量が監視され、ステアリング部材への応力及び/又はステアリング部材の状態を特定するために負荷特性量の経時変化が評価される。特に、「監視時間インターバル」とは、特に比較的長い間持続する、有利には、操舵システム及び/又は車両の耐用年数と相関関係にある時間インターバルと解されるべきであり、この時間インターバルにおいて、負荷特性量の変化が検出される。この場合、特に、監視時間インターバルは、数日、数週、数か月及び/又は数年の期間を含み得る。
【0009】
さらに、車両及び/又は操舵システムは、本願においては、特に、少なくとも1つの計算ユニット及び/又は計算ユニットを備えた少なくとも1つの制御装置を含み得る。この場合、計算ユニットは、特に、ステアリング装置を監視する方法を実施するように設けられている。「計算ユニット」とは、特に、電気及び/又は電子ユニットと解されるべきであり、このユニットは、情報入力装置と、情報処理装置と、情報出力装置とを有する。有利には、計算ユニットは、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの動作メモリ、少なくとも1つの入出力手段、少なくとも1つの動作プログラム、少なくとも1つの制御ルーチン、少なくとも1つの計算ルーチン、少なくとも1つの監視ルーチン、及び/又は、少なくとも1つの評価ルーチンをさらに有する。特に、計算ユニットは、少なくとも、ステアリング部材への負荷特性量を算定及び/又は受信する、特に、ステアリング部材への特に機械的応力及び/又は電気的応力及び/又はステアリング部材の状態を特定するために評価するように設けられている。
【0010】
外部の力作用によって発生した負荷を算定するために、車両及び/又は操舵システムは、特に、特別なセンサ、例えば、加速度センサ及び/又は固体伝播音センサを含み得る。しかしながら、これとは択一的に又はこれに加えて、外部の力作用によって発生した負荷を算定するために、特に外部の力作用によって発生した、少なくとも操舵システムの電動ステアリングアクチュエータ、特に既に前述したステアリングアクチュエータの、有利には、ステアリングアクチュエータのロータ要素の加速度、及び/又は、ステアリングアクチュエータの、加速度と相関関係にある動作量、例えば、動作電圧及び/又は動作電流を監視する、特に評価することが提案される。これにより、特に、外部負荷の特に簡単な及び/又は低コストの算定を実現することができる。
【0011】
さらに、外部の力作用によって発生した負荷を算定するために、少なくとも操舵システムの電動ステアリングアクチュエータ、特に既に前述したステアリングアクチュエータの、有利にはステアリングアクチュエータのロータ要素の慣性、有利には慣性モーメントを考慮することが提案される。これにより、特に、外部負荷の特に正確な算定を実現することができる。
【0012】
さらなる態様において、負荷特性量が、特に操舵システムが動作する際に発生してステアリング部材に作用する、ステアリング部材への少なくとも1つの内部負荷及び/又はシステム固有の負荷を含むことが提案され、これにより、特に、ステアリング部材及び/又は操舵システムの網羅的な応力解析を実現することができる。特に、これにより、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の損傷メカニズムを検出して考慮することもでき、これにより、有利には、動作信頼性をさらに高めることができる。さらに、これにより、有利には、車両のメンテナンスインターバルを識別して設定することもできる。さらに、負荷特性量に基づき、有利には、ステアリング部材及び/又は車両の残余の動作時間を予測し及び/又は見積もることができる。
【0013】
内部負荷及び/又はシステム固有の負荷を算定するために、車両及び/又は操舵システムは、特に、特別なさらなるセンサ、例えば、温度センサ、磁場センサ、湿度センサ、電圧センサ及び/又は電流センサを含み得る。これにより、例えば、過電圧、ピーク電圧、高められた電流及び/又はピーク電流を、例えば、車両の車載電源において検出し、これらと相関関係にあるステアリング部材への負荷を考慮することができる。しかしながら、これとは択一的に又はこれに加えて、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷を算定するために、少なくとも操舵システムの電動ステアリングアクチュエータ、特に既に前述したステアリングアクチュエータへの、有利には、ステアリングアクチュエータのロータ要素への駆動トルク及び/又は駆動力、及び/又は、この駆動トルク及び/又は駆動力と相関関係にあるさらなる動作量、例えば、ステアリングアクチュエータのさらなる動作電圧及び/又はさらなる動作電流を監視すること、特に評価することが提案される。これにより、特に、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の特に簡単な及び/又は低コストの算定を実現することができる。
【0014】
同時にステアリング部材の残余の動作時間を算定することを可能にする、応力解析のための特に簡単な評価アルゴリズムは、特に負荷特性量を評価するために、レインフロー法及び/又は最小値・最大値計数法を、有利には、ヴェーラー曲線図、Haigh線図及び/又はマイナー則と組み合わせて使用する場合に提供することができる。この場合、好ましくはレインフロー法を、特に内部負荷及び/又はシステム固有の負荷のために、特に内部負荷及び/又はシステム固有の負荷と相関関係にある測定データのデータ削減のために使用する。さらに、最小値・最大値計数法を、好適には外部負荷のために、特に外部負荷と相関関係にある測定データのデータ削減のために使用する。この場合、最小値・最大値計数法は、特に、対応する測定データにおける臨界点及び/又は最大値及び最小値を検出する。ヴェーラー曲線図、Haigh線図及び/又はマイナー則は、後続のプロセスステップ、有利には、実際の損傷計算のために使用される。
【0015】
さらに、負荷特性量を使用して、車両の路床と相関関係にある少なくとも1つの状態特性量を算定することが提案される。特に、少なくとも状態特性量に基づき、車両の路床の状態、有利には車道の状態を推定することができ、及び/又は、車両の路床の状態、有利には車道の状態を特定することができる。これにより、特に、応力解析のために検出されたデータを、有利には、車両が実際に上を通過する路面と関連付けることができる。
【0016】
さらに、特に車両の路床と相関関係にある指示通知を生成するために、例えば、運転者に警告するために、及び/又は、有利には、検出された位置データ、例えばナビゲーション装置の位置データと連携して警告するために、車道状態マップを生成するために、状態特性量を使用することが提案される。特に、これにより、特に高いフレキシビリティ及び/又は動作信頼性を実現することができる。この場合、例えば、安全な車道を離脱した場合に、運転者に警告することができる。さらに、車道状態マップを、有利には、未来の走行の際に使用し、これにより、早期のうちに、車道の凹凸及び/又は路面のくぼみ又はこれに類するものについて運転者に警告することができる。特に、この関連において、状態特性量を、有利には無線により他の車両に伝達することも可能であり、及び/又は、さらなる状態特性量を、有利には無線により他の車両から受信することも可能であり、これにより、特に、種々の車両の間における状態特性量の有利な交換を実現することができ、及び/又は、車道状態マップの生成を容易にすることができる。
【0017】
さらに、実際の走行モードを、特に、少なくとも1つの従来の走行モード及び/又は手動走行モードと自動走行モード及び/又は半自動走行モードとを含む一群の種々異なる走行モードから特定し、実際の走行モードが自動走行モード及び/又は半自動走行モードである少なくとも1つの動作状態において、負荷特性量に依存して、特に状態特性量に依存して、自動走行モード及び/又は半自動走行モードを離脱するためのアクションを起動及び/又は実行することが提案される。特に、これにより、特に自動走行モード及び/又は半自動走行モードを備えた車両の場合に、特に高い動作信頼性を実現することができる。
【0018】
操舵システムを監視する方法、制御装置及び車両は、本明細書においては、上述した用途及び実施形態に限定されるものではない。特に、操舵システムを監視する方法、制御装置及び車両は、本明細書において説明した機能を実現するために、本明細書において言及した数とは異なる数の、個々の要素、部材及びユニットを有するものとしてもよい。
【0019】
さらなる利点は、以下の図面の説明から明らかである。図面に、本発明の実施形態が示されている。図面と、明細書と、特許請求の範囲とは、本発明の多数の態様を含む。当業者は、これらの態様を、目的に応じて個別のものとみなすこともでき、有意義なさらなる組合せに統合することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】操舵システムを備えた例示的な車両を示す簡略図である。
【
図1b】操舵システムを備えた例示的な車両を示す簡略図である。
【
図2】操舵システムを監視するための信号線図を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の説明
図1a及び
図1bは、複数の車輪22と、1つの操舵システム10とを備えた、例示的に乗用車として構成された車両12を簡略図において示している。操舵システム10は、本実施形態においては、特に前輪として構成された車輪22に作用結合されており、車両12の走行方向に影響を及ぼすように設けられている。さらに、操舵システム10は、電動支援式の操舵システムとして構成されており、従って、パワーステアリングの形態の電動力補助装置を有する。さらに、車両12は、本実施形態においては例示的に、少なくとも2つの異なる走行モード、特に、従来の走行モード及び/又は手動走行モード並びに自動走行モード及び/又は半自動走行モードを含む。しかしながら、原則的に、操舵システムを、液圧支援式の操舵システムとして、特に液圧力補助装置を備えて構成することも可能である。さらに、操舵システムを原則的に、ステアバイワイヤ操舵システム及び/又は商用車の操舵システムとしても構成することができる。さらに、車両は、厳密に1つの走行モードを有するものとしてもよく、及び/又は、商用車として構成されるものとしてもよい。
【0022】
操舵システム10は、本実施形態においては例示的にステアリングホイールとして構成された、手動トルクを適用するステアリングハンドル24と、例示的にラックアンドピニオンステアリングギアとして構成されたステアリングギア26であって、ステアリング調節要素30を含み、ステアリングハンドル24に加えられたステアリング設定を車輪22のステアリング運動に変換するように設けられたステアリングギア26と、特にステアリングハンドル24とステアリングギア26とを機械的に接続するステアリングシャフト28とを含む。選択的に、ステアリングハンドルは、ステアリングレバー及び/又はステアリングボール又はこれに類するものとして構成されるものとしてもよい。操舵システムは、原則的に、例えば、純粋な自律走行車両の場合には、ステアリングハンドルを有しないものとしてもよい。さらに、ステアリングシャフトは、例えば、機械的なフォールバックレベルを用いたステアバイワイヤ操舵システムを備えた車両の場合には、ステアリングハンドルをステアリングギアに一時的にのみ結合することもできる。この関連において、当然ながら、ステアリングシャフトを完全に省略することも可能である。
【0023】
さらに、操舵システム10は、ステアリングアクチュエータ16を含む。ステアリングアクチュエータ16は、少なくとも部分的に電気式に及び/又は電子式に構成されている。ステアリングアクチュエータ16は、ステアリングギア26に作用結合されている。ステアリングアクチュエータ16は、ステアリングハンドル24に適用された手動トルクを補助するステアリングトルクを提供して、ステアリング調節要素30に伝達するように設けられている。これに加えて、ステアリングアクチュエータ16は、少なくとも1つの電動機を含む。電動機は、本実施形態においては、特に、永久励磁式の同期モータとして構成されており、ステアリングトルクを発生させるように設けられている。
【0024】
ステアリングアクチュエータ16をステアリングギア26に連結するために、操舵システム10は、連結器32をさらに含む。連結器32は、例えば、ベルト駆動装置として、ウォームギヤ駆動装置として、又は、ボールねじ駆動装置として、構成されるものとしてよい。連結器32は、電動機へのステアリングトルクをステアリング調節要素30に伝達するように設けられており、これにより、ステアリング調節要素30の調節を発生させる。しかしながら、原則的に、連結器を省略し、電動機をステアリング調節要素に直接的に連結することも可能である。さらに、例えば、液圧支援式の操舵システムの場合には、電動機を完全に省略することもできる。
【0025】
さらに、車両12は、少なくとも1つの検出ユニット34を含む。検出ユニット34は、少なくとも1つのステアリング部材14、例えば、ステアリングアクチュエータ16、ステアリング調節要素30及び/又は連結器32への負荷特性量を検出するように設けられている。これに加えて、検出ユニット34は、ステアリングアクチュエータ16に対応付けられた少なくとも1つのセンサ36を含む。センサ36は、本実施形態においては、ロータ位置センサとして構成されており、電動機の少なくとも1つのロータ位置信号を検出するように設けられている。しかしながら、これとは択一的に又はこれに加えて、検出ユニットは、ロータ位置センサとは異なる少なくとも1つのセンサ、例えば、加速度センサ、固体伝播音センサ、電圧センサ、電流センサ及び/又は温度センサを含むものとしてもよい。
【0026】
さらに、車両12は、制御装置18を有する。制御装置18は、例示的にステアリング制御装置として構成されており、従って、操舵システム10の一部である。制御装置18は、ステアリングアクチュエータ16と検出ユニット34とに作用接続されている。制御装置18は、負荷特性量を検出ユニット34から受信するように設けられている。さらに、制御装置18は、ステアリングアクチュエータ16を駆動制御するように設けられている。
【0027】
これに加えて、制御装置18は、計算ユニット20を含む。計算ユニット20は、少なくとも1つのプロセッサ、例えばマイクロプロセッサの形態のプロセッサと、少なくとも1つの動作メモリとを含む。さらに、計算ユニット20は、動作メモリ内に格納された少なくとも1つの動作プログラムを含み、この動作プログラムは、少なくとも1つの監視ルーチン38と、少なくとも1つの計算ルーチン、本実施形態においては特に損傷計算ルーチン42,46と、少なくとも1つの評価ルーチン50とを備える。しかしながら、原則的に、制御装置を操舵システムとは別個に構成することも可能である。この場合、車両は、例えば、中央計算ユニットを備えた単一の中央制御装置を有するものとしてよい。さらに、計算ユニットを車両とは別個に構成することも可能である。この場合、計算ユニットは、例えば、特に外部の中央計算システムの一部、例えば、サーバネットワーク及び/又はクラウドネットワークの一部であるものとしてよい。
【0028】
ここで、操舵システム10又は操舵システム10の少なくとも1つのステアリング部材14への応力、及び/又は、操舵システム10又は操舵システム10の少なくとも1つのステアリング部材14の状態の解析を改善するために、本実施形態においては、操舵システム10を監視する方法が提案される。本実施形態においては、ステアリング部材14は、例示的に、連結器32、又は、連結器32の少なくとも一部に対応している。しかしながら、これとは択一的に又はこれに加えて、監視すべきステアリング部材は、ステアリングアクチュエータ、又は、ステアリングアクチュエータに作用結合されている他の部材、例えば、ステアリング調節要素であるものとしてもよい。さらに、これに加えて、車両のさらなる車両部材を監視して解析することも可能である。
【0029】
さらに、特に、計算ユニット20は、この方法を実施するように設けられており、これに加えて、特に、対応するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを有する。
【0030】
本発明によれば、特に検出ユニット34を用いて、監視すべきステアリング部材14への負荷特性量を算定して、ステアリング部材14への機械的応力及び/又は電気的応力及び/又はステアリング部材14の状態を特定するために評価する。本実施形態においては、監視時間インターバル全体にわたって、有利には、操舵システム10及び/又は車両12の動作時間及び/又は耐用年数全体にわたって負荷特性量を監視し、ステアリング部材14への応力及び/又はステアリング部材14の状態を特定するために負荷特性量の経時変化を評価する。
【0031】
本実施形態においては、負荷特性量は、外部の力作用によって発生した、特に周囲環境によってステアリング部材14に作用する、ステアリング部材14への少なくとも1つの外部負荷を含む。特にステアリング部材14への負荷をもたらす外部の力作用は、この場合、例えば、車道の凹凸、路面のくぼみ、障害物への衝突、障害物に対する操舵、障害物の上を通過すること、及び/又は、他のこのような事象若しくは例外的な事象によって発生させられることがある。外部の力作用によって発生した負荷を算定するために、本実施形態においては、外部の力作用によって発生した、センサ36を用いて検出された少なくともステアリングアクチュエータ16の加速度を監視して評価する。さらに、外部の力作用によって発生した負荷を算定するために、少なくともステアリングアクチュエータ16の慣性が考慮される。
【0032】
さらに、ステアリング部材14及び/又は操舵システム10の網羅的な応力解析を実現するために、負荷特性量は、特に、操舵システム10が動作する際に発生してステアリング部材14に作用する、ステアリング部材14への内部負荷及び/又はシステム固有の負荷をさらに含む。この場合、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷は、操舵システム10の通常の動作によって発生させられる。内部負荷及び/又はシステム固有の負荷を算定するために、本実施形態においては、ステアリングアクチュエータ16への駆動トルク及び/又は駆動力を監視して評価する。
【0033】
さらに、負荷特性量は、基本的に、ステアリング部材14へのさらなる負荷、例えば、周囲温度によって発生したステアリング部材14への負荷、空気湿度によって発生したステアリング部材14への負荷、及び/又は、例えば、車載電源において過電圧及び/又はピーク電圧によって発生したステアリング部材14への負荷若しくは他のこのような負荷も含むものとしてよい。
【0034】
従って、ステアリング部材14への負荷特性量又は負荷全体は、外部負荷と内部負荷との差として得られる。ここで、
【数1】
が成り立つ。式において、M
extは、外部負荷、M
intは、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷、Jは、ステアリングアクチュエータ16の慣性、
【数2】
は、ステアリングアクチュエータ16の加速度、特にステアリングアクチュエータ16のロータ加速度、M
eiは、ステアリングアクチュエータ16への駆動トルク及び/又は駆動力、iは、連結器32の変速比、η
Systemは、外部負荷並びに内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の効率を表す。
【0035】
従って、ステアリング部材14への負荷特性量又は負荷全体は、本実施形態においては、少なくともステアリング部材14への外部負荷並びに内部負荷及び/又はシステム固有の負荷からなり、この場合、外部負荷が内部負荷及び/又はシステム固有の負荷よりも大きい状況は、外部の事象又は例外的な事象、例えば、路面のくぼみ、障害物への衝突などの形態における事象又は例外的な事象を示唆している。しかしながら、基本的に、ステアリング部材への内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の検出及び/又は評価を省略し、このような内部負荷及び/又はシステム固有の負荷を、例えば、予め適用される特性曲線を用いて描写することも可能である。
【0036】
負荷特性量を評価するために、負荷特性量を、記録し、保存し及び/又は分類する、又は、最大値に対して調整することができる。有利には、負荷特性量を評価するために、レインフロー法及び/又は最小値・最大値計数法も、例えば、特別な損傷計算アルゴリズム、特に、ヴェーラー曲線図、Haigh線図及び/又はマイナー則と組み合わせて使用することができ、これにより、ステアリング部材14の残余の動作時間の特に有利で簡単な算定を実現することができる。このような損傷計算アルゴリズムは、それ自体公知であるので、以下においては、詳細には説明しない。
【0037】
従って、負荷特性量を基準として、車両12のフィールド負荷及び/又はメンテナンスインターバルを識別する、及び/又は、システム応答を起動させる、例えば、運転者警告装置に対する指示通知の生成、操舵システム10の停止及び/又は操舵システム10の劣化評価を行うことができる。さらに、負荷特性量を使用して、単一のステアリング部材及び/又は車両部材の再利用及び/又は再生も、例えば再製造によって行うことができる。この関連において、対応する車両及び/又は操舵システムの耐用年数の間、あまり負荷を掛けられなかったステアリング部材及び/又は車両部材を再利用することが可能である。さらに、負荷特性量を基準として、例えば、ベルトの滑り及び/又はベルトの亀裂又はこれに類するものも算定することができる。
【0038】
図2は、操舵システム10を監視するための、特に負荷特性量を評価するための信号線図を示す概略図である。
【0039】
計算ユニット20は、監視ルーチン38を用いて負荷特性量を監視し、解析し、分類するように設けられている。本実施形態においては、計算ユニット20は、監視ルーチン38を用いて少なくとも、外部負荷と、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷とのどちらが支配的な負荷であるかを特定するように設けられている。
【0040】
外部負荷が支配的な負荷である場合、計算ユニット20は、負荷特性量を、第1のデータ削減ルーチン40、本実施形態においては特に最小値・最大値計数法を用いてさらに処理し、続いて第1の損傷計算ルーチン42を用いて、例えばヴェーラー曲線図を使用して、外部の力作用によって発生した、ステアリング部材14の外部の損傷度を求めるように設けられている。特に、この場合、第1のデータ削減ルーチン40及び/又は第1の損傷計算ルーチン42は、さらなる影響要因、例えば、実際の温度も供給することができ、これにより、これらの影響要因を、負荷特性量を評価する際に考慮することができる。
【0041】
これに対して、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷が支配的な負荷である場合、計算ユニット20は、負荷特性量を、第1のデータ削減ルーチン40とは異なる第2のデータ削減ルーチン44、本実施形態においては特にレインフロー法を用いてさらに処理し、続いて第2の損傷計算ルーチン46を用いて、例えばさらなるヴェーラー曲線図を使用して、操舵システム10の通常の動作によって発生した、ステアリング部材14の内部の損傷度を求めるように設けられている。損傷計算ルーチン42,46は、本実施形態においては、例えば、使用するヴェーラー曲線図に基づき区別することができる。さらに、この場合、第2のデータ削減ルーチン44及び/又は第2の損傷計算ルーチン46は、さらなる影響要因、例えば、実際の温度も供給することができ、これにより、これらの影響要因を、負荷特性量を評価する際に考慮することができる。
【0042】
続いて、計算ユニット20は、ステアリング部材14への応力及び/又はステアリング部材14の状態を特定するために、加算ルーチン48を用いて、外部の損傷度と内部の損傷度とを、ステアリング部材14の合計損傷度にまとめるように設けられている。この場合、特に、外部の損傷度及び/又は内部の損傷度を、重み付け係数を用いて乗算し、これにより、外部の損傷度と内部の損傷度とを区別して重み付けるように設計することができる。
【0043】
これに基づき、計算ユニット20は、評価ルーチン50を用いてステアリング部材14の合計損傷度を評価する、例えば、閾値を用いた調整によって、閾値を上回る場合に対応する反応を実行する、例えば、指示通知の生成を実行するように設けられている。
【0044】
この構成により、内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の損傷メカニズムも、この内部負荷及び/又はシステム固有の負荷の損傷メカニズムとは有意に区別することができる外部負荷の損傷メカニズムも、確実に検出して考慮することができる。
【0045】
さらに、負荷特性量を使用して、車両12の路床と相関関係にある少なくとも1つの状態特性量を算定し、これにより、特に応力解析のために検出されたデータを、追加的に、車両が実際に上を通過する路面と関連付けることができるように設計することができる。この関連において、例えば、特に車両12の路床と相関関係にある指示通知を生成するために、例えば、運転者に警告するために、及び/又は、有利には、検出された位置データと連携して警告するために、車道状態マップを生成するために、状態特性量を使用することが可能である。これにより、例えば、安全な車道を離脱した場合に、運転者に警告することができる。さらに、車道状態マップを、有利には、未来の走行の際に使用し、これにより、早期のうちに、車道の凹凸及び/又は路面のくぼみ又はこれに類するものについて運転者に警告することができる。さらに、車両12の実際の走行モードを特定し、実際の走行モードが自動走行モード及び/又は半自動走行モードである少なくとも1つの動作状態において、負荷特性量に依存して及び/又は状態特性量に依存して、自動走行モード及び/又は半自動走行モードを離脱するためのアクションを起動することができ及び/又は実行することができる。このような改良形態により、特に動作信頼性をさらに高めることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両(12)における動作中に操舵システム(10)を監視する方法であって、前記操舵システム(10)の少なくとも1つのステアリング部材(14)への負荷特性量を算定して、前記ステアリング部材(14)への応力及び/又は前記ステアリング部材(14)の状態を特定するために評価する、方法において、
前記負荷特性量は、前記ステアリング部材(14)への、外部の力作用によって発生した少なくとも1つの負荷を含
み、
外部の力作用によって発生した前記負荷を算定するために、少なくとも前記操舵システム(10)の電動ステアリングアクチュエータ(16)の加速度を監視する、方法。
【請求項2】
外部の力作用によって発生した前記負荷を算定するために、少なくとも前記操舵システム(10)の電動ステアリングアクチュエータ(16)の慣性を考慮する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記負荷特性量は、特に前記操舵システム(10)が動作する際に発生して前記ステアリング部材(14)に作用する、前記ステアリング部材(14)への少なくとも1つのシステム固有の負荷を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記システム固有の負荷を算定するために、少なくとも前記操舵システム(10)の電動ステアリングアクチュエータ(16)への駆動トルク及び/又は駆動力を監視する、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記負荷特性量を評価するために、レインフロー法及び/又は最小値・最大値計数法を使用する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記負荷特性量を使用して、前記車両(12)の路床と相関関係にある少なくとも1つの状態特性量を算定する、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
指示通知を生成するために及び/又は車道状態マップを生成するために、前記状態特性量を使用する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
実際の走行モードを特定し、前記実際の走行モードが自動走行モード及び/又は半自動走行モードである少なくとも1つの動作状態において、前記負荷特性量に依存して、前記自動走行モード及び/又は半自動走行モードを離脱するためのアクションを起動及び/又は実行する、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(20)を備える制御装置(18)。
【請求項10】
少なくとも1つのステアリング部材(14)を含む少なくとも1つの操舵システム(10)と、請求項
9に記載の制御装置(18)とを備える車両(12)。
【国際調査報告】