(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-16
(54)【発明の名称】横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器パッケージ及び方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220509BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20220509BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/02 B
H03H9/64 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555879
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2020026890
(87)【国際公開番号】W WO2020206433
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326649
【氏名又は名称】レゾナント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESONANT INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ターナー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】エディ マイク
(72)【発明者】
【氏名】ケイ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヤンチェフ ヴェントシスラフ
(72)【発明者】
【氏名】チュン チャールズ
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA19
5J097BB17
5J097EE07
5J097KK04
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
音響共振装置及びフィルターが開示される。圧電板は、基板に取り付けられ、圧電板の部分は基板のキャビティーをまたぐ振動板を形成する。第1導体パターンは、圧電板の面に、形成される。第1導体パターンは、振動板に配置されたインターデジタル変換器のインターリーブされたフィンガーと、第1の複数の接触パッドとを含む。第2導体パターンは、基材の面に形成され、第2導体パターンは、第2の複数の接触パッドを含む。第1の複数の接触パッドの各パッドは、第2の複数の接触パッドの各パッドに直接接合される。リング状シールは、圧電板の外周と基材の外周の間に形成される。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響共振器チップであって、
前面及び背面を有し、前記前面にキャビティーが形成される基板と、
前面及び背面を有し、前記キャビティーをまたぐ振動板を形成する圧電板の部分を除いた前記基板の前記前面に、前記背面が取り付けられる圧電板と、
前記圧電板の前記前面に1つまたは複数の導体層として形成された第1導体パターンであって、
IDTのインターリーブされたフィンガーが前記振動板に配置されるインターデジタル変換器(IDT)と、
第1の複数の接触パッドと、を含む第1導体パターンと、を備える音響共振器チップと、
インターポーザであって、
前面及び背面を有する基材と、
前記基材の前記背面に形成された第2導体パターンであって、
第2の複数の接触パッドを含む前記第2導体パターンと、を備えるインターポーザと、
前記圧電板の外周と前記基材の外周とをつなぐリング状シールと、を備え、
前記第1の複数の接触パッドの各接触パッドは、前記第2の複数の接触パッドの各接触パッドに直接接合される音響共振装置。
【請求項2】
前記キャビティーは、前記基板の厚さを貫通する穴であり、
前記音響共振装置は、前記基板の前記背面に接合されたキャップをさらに備える請求項1に記載の音響共振装置。
【請求項3】
前記第1導体パターンは、前記圧電板の前記外周のまわりに第1導体リングをさらに含み、
前記第2導体パターンは、前記基材の前記外周のまわりに第2導体リングをさらに含み、
前記シールは、前記第2導体リングに直接接合される前記第1導体リングである請求項1に記載の音響共振装置。
【請求項4】
前記シールは、接着材料を含む請求項1に記載の音響共振装置。
【請求項5】
前記インターポーザは、前記第2の複数の接触パッドを前記基材の前記前面に形成された第3の複数の接触パッドに接続するビアをさらに備える請求項1に記載の音響共振装置。
【請求項6】
前記インターポーザは、前記基材に、前記振動板と対向する凹部をさら備える請求項1に記載の音響共振装置。
【請求項7】
前記凹部の底面から前記振動板までの距離が、15μm以上100μm以下である請求項6に記載の音響共振装置。
【請求項8】
前記音響共振装置は、バンドパスフィルターであり、
複数のキャビティーが前記基板に形成され、
前記圧電板の複数の部分は、前記複数のキャビティーのそれぞれのキャビティーにまたがり、対応する複数の振動板を形成し、
前記第1導体パターンは、複数のIDTを含み、各IDTのインターリーブされたフィンガーは、前記複数の振動板のそれぞれの振動板に配置される請求項1に記載の音響共振装置。
【請求項9】
音響共振器チップを製造することであって、
圧電板の背面を基板に接合することと、
前記基板にキャビティーを形成して、前記圧電板の部分に前記キャビティーをまたぐ振動板を形成することと、
単結晶圧電板の前面に1つまたは複数の導体層として第1導体パターンを形成することであって、
IDTのインターリーブされたフィンガーが前記振動板に配置されるインターデジタル変換器(IDT)と、
第1の複数の接触パッドと、を含む第1導体パターンを形成することと、を含む、音響共振器チップを製造することと、
基材の背面に第2導体パターンを形成することであって、
第2の複数の接触パッドを含む、前記第2導体パターンを形成することと、
前記第1の複数の接触パッドの各接触パッドを前記第2の複数の接触パッドの各接触パッドに直接接合することによって、前記基材の前記背面を前記圧電板の前記前面に取り付けることと、
前記圧電板の外周と前記基材の外周との間にリング状シールを形成することと、を含む音響共振装置の製造方法。
【請求項10】
前記キャビティーは、前記基板の厚さを貫通する穴であり、
前記基板の背面にキャップを接合することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1導体パターンは、前記圧電板の前記外周のまわりに第1導体リングをさらに含み、
前記第2導体パターンは、前記基材の前記外周のまわりに第2導体リングをさらに含み、
リング状シールを形成することは、前記第1導体リングを前記第2導体リングに直接接合することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
リング状シールを形成することは、
前記圧電板の外周及び前記基材の外周の一方または両方のまわりに接着材料のリングを適用することと、
前記第1の複数の接触パッドを前記第2の複数の接触パッドに直接接合した後または同時に、前記接着材料を硬化させることと、をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の複数の接触パッドを、前記基材の前記前面に形成された第3の複数の接触パッドに接続するビアを形成することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記基材を前記圧電板に取り付ける前に、前記基材の前記背面に凹部を形成することであって、前記基材の前記背面のうち前記振動板と対向する領域に位置する凹部を形成することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記基材の前記背面に凹部を形成することは、
前記基材を前記圧電板に取り付けた後に、前記凹部の底面から前記振動板までの距離が15μm以上100μm以下となるように、深さを有するの凹部を形成することをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記音響共振装置は、バンドパスフィルターであり、
複数のキャビティーを前記基板に形成することは、前記圧電板の複数の部分が前記複数のキャビティーのそれぞれのキャビティーにまたがり、対応する複数の振動板を形成するように、複数のキャビティーを形成することを含み、
前記第1導体パターンは、複数のIDTを含み、各IDTのインターリーブされたフィンガーは、前記複数の振動板のそれぞれの振動板に配置される請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響波共振器を用いた無線周波数フィルターに関し、特に通信装置に用いられるフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
無線周波数(RF)フィルターは、いくつかの周波数を通過させ、他の周波数を阻止するように構成された2ポート装置であり、「通過(pass)」とは、比較的低い信号損失で送信することを意味し、「停止(stop)」とは、遮断または実質的な減衰を意味する。フィルターが通過する周波数の範囲は、そのフィルターの「パスバンド」と呼ばれる。また、フィルターによって阻止される周波数の範囲は、フィルターの「ストップバンド」と呼ばれる。一般的なRFフィルターは、少なくとも1つのパスバンドと少なくとも1つのストップバンドを持っている。パスバンドやストップバンドに関する具体的な要件は、特定の用途に依存する。例えば、「パスバンド」は、フィルターの挿入損失が1dB、2dB、3dBなどの定義された値よりも優れる周波数範囲として定義されることがある。「ストップバンド」は、用途に応じて、フィルターの除去率が20dB、30dB、40dBなどの定義された値よりも大きくなる周波数範囲として定義されることがある。
【0003】
RFフィルターは、無線リンクで情報を送信する通信システムに使用される。例えば、RFフィルターは、セルラー基地局、携帯電話及びコンピューティング装置、衛星トランシーバー及び地上局、IoT(Internet of Things)装置装置、ラップトップコンピュータ及びタブレット、固定点無線リンク、及び他の通信システムのRFフロントエンドにみられる。また、RFフィルターは、レーダーや電子、情報戦システムにも使用される。
【0004】
RFフィルターは、通常、特定の用途ごとに、挿入損失、除去、分離、パワー処理、直線性、サイズ、コストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を達成するために、多くの設計トレードオフを必要とする。特定の設計及び製造方法や改善は、これらの要件の1つまたは複数を同時に満たすことができる。
【0005】
無線システムのRFフィルターの性能改善は、システムの性能に幅広い影響を与える。RFフィルターの改良は、セルサイズの拡大、バッテリー寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、低コスト、セキュリティの改善、信頼性の向上など、システム性能の向上に活用することができる。これらの改良は、例えば、RFモジュール、RFトランシーバー、モバイルまたは固定サブシステム、ネットワークレベルなど、ワイヤレスシステムの多くのレベルで、単独または組み合わせて実現することができる。
【0006】
通信チャネルのバンド幅を広くしたいという要望は、必然的により高い周波数の通信バンドを使用することにつながる。現在のLTE(登録商標)(Long Term Evolution)の仕様では、3.3GHz~5.9GHzの周波数帯が定められる。これらのバンドの中には、現在使用されていないものもある。今後の無線通信の提案としては、28GHzまでのミリメートル波通信帯がある。
【発明の概要】
【0007】
現在の通信システムの高性能RFフィルターは、表面弾性波(SAW)共振器、バルク音響波(BAW)共振器、フィルムバルク音響波共振器(FBAR)または他の音響波共振器(acoustic resonators)を内蔵するのが一般的である。しかし、これらの既存技術は、将来の通信ネットワークで提案されるより高い周波数での使用には適さない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略平面図と2つの概略断面図を含む。
【
図2】
図1のXBARの部分の拡大概略断面図である。
【
図3】
図1で画定された断面A-Aに沿った代替断面図である。
【
図4】
図4Aは、パッケージされたXBARの概略断面図である。
図4Bは、他のパッケージされたXBARの概略断面図である。
【
図5】XBARとシリコンカバーの間の距離をパラメータとした、XBARを用いたバンドパスフィルターの透過率S21のグラフである。
【
図6】
図6Aは、接合前のXBARフィルターチップとインターポーザの概略断面図である。
図6Bは、パッケージされたXBARフィルターの概略断面図である。
【
図7】
図7Aは、他のパッケージされたXBARフィルターの概略断面図である。
図7Bは、他のパッケージされたXBARフィルターの概略断面図である。
【
図8】他のパッケージされたXBARフィルターの概略断面図である。
【
図9】他のパッケージされたXBARフィルターの概略断面図である。
【
図10】他のパッケージされたXBARフィルターの概略断面図である。
【
図11】XBARチップを製造する工程のフローチャートである。
【
図13】XBARフィルターをパッケージングするための他の工程のフローチャートである。
【
図14】XBARフィルターをパッケージングするための他の工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、図に登場する構成には3桁または4桁の参照符号が割り当てられており、最下位の2桁はその構成に固有のものであり、最上位の1桁または2桁はその構成が最初に紹介される図の番号である。図とともに説明されていない構成は、同じ参照符号を持つ前に説明された構成と同じ特性と機能を持っていると推定することができる。
【0010】
詳細な説明
装置の説明
図1は、横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略上面図及び直交する断面図である。共振器100のようなXBAR共振器は、バンドリジェクトフィルター、バンドパスフィルター、デュプレクサ、マルチプレクサを含む、さまざまなRFフィルターに使用されてよい。XBARは、特に周波数が3GHz以上の通信バンド用のフィルターの使用に適する。
【0011】
XBAR100は、平行な前面及び背面112,114をそれぞれ有する圧電板110の面に、薄膜導体パターンを形成したものである。圧電板は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ランタンガリウムシリケート、窒化ガリウム、窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電板は、前面及び背面に対するX、Y、Zの結晶軸の向きが既知で一貫するように切断される。この特許で紹介される例では、圧電板はZカット、つまりZ軸が面に垂直になっている。しかし、XBARは、他の結晶学的な方位の圧電板にも製造可能である。
【0012】
圧電板110の背面114は、圧電板110に機械的な支持を与える基板120に取り付けられる。圧電板110は、ウェハ接合工程を用いて基板120に接合してもよく、基板120上に成長させてもよく、他の方法で基板に取り付けてもよい。圧電板は、基板に直接取り付けてもよく、1つ以上の中間材料層を介して基板に取り付けてもよい。
【0013】
XBAR100の導体パターンは、インターデジタル変換器(IDT)130を含む。IDT130は、第1バスバー132から延びる、フィンガー136などの第1の複数の平行なフィンガーと、第2バスバー134から延びる第2の複数のフィンガーとを含む。第1及び第2の複数の平行フィンガーは、インターリーブされる。インターリーブされたフィンガーは、通常、IDTの「隙間(aperture)」と呼ばれる距離APだけオーバーラップする。IDT130の最も外側のフィンガーの間の中心から中心までの距離LがIDTの「長さ」である。
【0014】
第1及び第2バスバー132,134は、XBAR100の端子として機能する。IDT130の2つバスバー132,134の間に適用された無線周波数またはマイクロ波信号は、圧電板110内の音響波を励起する。詳細は後述するが、励起された音響波は、圧電板110の面に垂直な方向に伝搬するバルクせん断波であり、IDTフィンガーによって作られた電界の方向に対しても垂直、つまり横方向に伝搬する。このように、XBARは横方向に励起されたフィルムバルク波共振器と考えられる。
【0015】
IDT130を含む圧電板110の部分115が、基板120に接触することなくキャビティー140上に吊り下げられるように、基板120にキャビティー140が形成される。「キャビティー」は、「固体内の空の空間」という従来の意味を有する。キャビティー140は、(断面A-A及び断面B-Bに示すように)基板120を完全に貫通する穴であってもよく、(
図3に続いて示すように)基板120の凹部であってもよい。キャビティー140は、例えば、圧電板110と基板120の取り付け前または取り付け後に、基板120を選択的にエッチングすることで形成されてもよい。
【0016】
キャビティー140の上に吊り下げられた圧電板の部分115は、マイクロフォンの振動板(diaphragm)に物理的に似ていることから、本明細書では(より良い言葉がないため)「振動板」と呼ぶことにする。振動板は、キャビティー140の全周またはほぼ全周において、圧電板110の他の部分と連続的かつ途切れずに接続されていてもよい。
【0017】
図1の説明を容易にするために、IDTフィンガーの幾何学的なピッチと幅は、XBARの長さ(寸法L)と隙間(寸法AP)に対して大きく誇張される。一般的なXBARでは、IDT110に10本以上の平行なフィンガーがある。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行フィンガーを持つことができる。同様に、断面図でのフィンガーの厚さも大きく誇張される。
【0018】
図2は、
図1のXBAR100の詳細な概略断面図である。圧電板110は、厚さtsを有する圧電材料の単結晶層である。厚さtsは、例えば、100nm~1500nmであってもよい。3.4GHZ~6GHzのLTE(登録商標)バンド(例えば、バンド42、43、46)のフィルターに使用する場合、厚さtsは、例えば200nm~1000nmとすることができる。
【0019】
圧電板110の前側に、前側誘電体層214を任意に形成してもよい。XBARの「前側」とは、定義上、基板から反対側の面である。前側誘電体層214は、厚さtfdを有する。前側誘電体層214は、IDTフィンガー238の間に形成される。また、
図2には示されていないが、前側誘電体層214は、IDTフィンガー238の上に堆積されてもよい。また、圧電板110の裏側に裏側誘電体層216を任意に形成してもよい。裏側誘電体層216は、厚さtbdを有する。前側及び裏側誘電体層214,216は、二酸化ケイ素や窒化ケイ素などの非圧電性の誘電体材料であってもよい。tfd及びtbdは、例えば、0~500nmであってもよい。tfd及びtbdは、典型的には、圧電板の厚さtsよりも小さい。tfd及びtbdは、必ずしも等しくなく、前側及び裏側の誘電体層214,216は、必ずしも同じ材料ではない。なお、前側及び裏側誘電体層214,216のいずれか一方または両方は、2種類以上の材料を用いた多層構造で形成されてもよい。
【0020】
IDTフィンガー238は、アルミニウム、実質的にアルミニウム合金、銅、実質的に銅合金、ベリリウム、金、または他の導電性材料であってもよい。フィンガーと圧電板110との間の接合性を向上させるため、及び/または、フィンガーを不動態化またはカプセル化するために、フィンガーの下及び/または上に、クロムやチタンなどの他の金属の(導体の総厚さに比べて)薄い層が形成されてもよい。IDTバスバー(
図1の132、134)は、フィンガーと同じまたは異なる材料で作製されてもよい。
【0021】
寸法pは、IDTフィンガーの中心から中心までの間隔または「ピッチ」であり、IDTのピッチ及び/またはXBARのピッチと呼ばれることがある。寸法wは、IDTフィンガーの幅または「マーク」である。XBARのIDTは、表面弾性波(SAW)共振器のIDTとは実質的に異なる。SAW共振器では、IDTのピッチが共振周波数における音響波長の1/2になる。さらに、SAW共振器IDTのマークとピッチの比は、通常0.5に近い(つまり、マークやフィンガーの幅は、共振時の音響波長の約1/4である)。XBARでは、IDTのピッチpは、通常、フィンガーの幅wの2~20倍である。また、IDTのピッチpは、通常、圧電スラブ212の厚さtsの2~20倍である。XBARのIDTフィンガーの幅は、共振時の音響波長の1/4に制約されることはない。例えば、XBAR IDTフィンガーの幅は、光リソグラフィを用いてIDTを製造できるように、500nm以上とすることができる。IDTフィンガーの厚さtmは、100nmから幅wとほぼ等しくてもよい。IDTのバスバー(
図1の132、134)の厚さは、IDTフィンガーの厚さtmと同じであってもよく、それ以上であってもよい。
【0022】
図3は、
図1で画定された断面A-Aに沿った代替断面図である。
図3では、圧電板310が基板320に取り付けられる。圧電板310のうち、XBARのIDTを含む部分の下の基板には、基板320を完全には貫通していないキャビティー340が形成される。なお、キャビティー340は、例えば、圧電板310を取り付ける前に基板320をエッチングすることで形成されてもよい。あるいは、キャビティー340は、圧電板310に設けられた1つまたは複数の開口部342を介して基板に到達する選択的なエッチング液で基板320をエッチングすることにより、形成されてもよい。
【0023】
図3に示すXBAR300は、キャビティー340が(圧電板310を取り付ける前または後に)基板320の前側からエッチングされるので、本明細書では「前側エッチング」構成と呼ぶことにする。また、
図1のXBAR100は、キャビティー140が圧電板110を取り付けた後に基板120の裏側からエッチングされるので、本明細書では「裏側エッチング」構成と呼ぶことにする。
【0024】
図1及び
図3のXBAR及びXBARを用いたフィルター装置は、パッケージに封入する必要がある。XBARのパッケージには、以下の機能が求められる。
・振動板と導体パターンを機械的に保護する。
・基板320のキャビティー340と同等の振動板に面したキャビティーを設ける。
・パッケージされたフィルターを電子装置に組み立てる際に発生しうる湿気及び/又は液体の侵入を防ぐためのシール(seal)を提供する。
・XBARの導体パターンをパッケージされたフィルター装置の外部の回路に接続するための手段を提供する。
【0025】
図4A及び
図4Bは、パッケージされたXBARフィルターの概略断面図であり、それぞれは、XBARフィルターチップ405及びインターポーザ450から構成される。
図4A及び
図4Bの断面図は、2つのXBARを含むXBARフィルターチップ405を示すが、フィルターは通常、5つ~9つのXBARを含んでいてもよい。具体的には、
図4Aは、前側にエッチングされたXBARを用いたパッケージされたフィルター400Aの概略断面図であり、
図4Bは、裏側にエッチングされたXBARを用いたパッケージされたXBARフィルター400Bの概略断面図である。
図4A及び
図4Bは、XBARフィルターのパッケージに求められる要件を説明するためのものであり、必ずしも実用的なパッケージ構造を示すものではない。
【0026】
図4Aを参照すると、XBARフィルターチップ405は、基板420に取り付けられた圧電板410を含む。圧電板の部分は、基板420のそれぞれのキャビティー440をまたぐ振動板を形成する。通常、
図4Aに示されるが特定されない1つまたは複数の中間層が、圧電板410と基板420との間に配置されてもよい。圧電板410の面には、フィンガー430のようなインターリーブされたIDTフィンガーが振動板上に配置されるように、IDTを含む導体パターンが形成される。
【0027】
また、インターポーザ450は、圧電板410上の導体パターンと、フィルターの外部にある回路(図示せず)との間の電気的接続を行うために、基材452及び導電性ビア454を含む。「インターポーザ」という言葉は、通常、2つの異なるインターフェース間の電気的接続を提供する受動的な回路装置を表すのに使われる。インターポーザ450は、この機能を果たすだけでなく、パッケージされたXBARフィルター400Aのパッケージの構造部分を形成する。インターポーザは、例えば、プリント回路基板(PCB)、低温同時焼成セラミック(LTCC)回路カード、シリコンウェハ、または、XBARの振動板を機械的に保護する他の構造体であることが考えられる。
【0028】
図4Aでは、導電性ビア454は、基材を通り圧電板まで延びる単純なピンとして概略が図示される。後述するように、物理的に実現可能なビアはより複雑な構造を持っている。
【0029】
図4Aに示すように、インターポーザ450は、XBARの振動板に対向する凹部455を含む。このような凹部は、振動板と、振動板に対向するインターポーザの面(すなわち、キャビティー440の底面)との間に十分な間隔を確保するために必要となる場合がある。必要な間隔(
図4Aの寸法cd)は、インターポーザの材料によって異なる。
【0030】
図5は、高抵抗シリコンウェハから作られた基材を含むパッケージの、5つのXBARを含むバンドパスフィルターを通る透過率(S21)をプロットしたものである。シリコンウェハは、高い誘電率と有限の導電性を持っているため、XBAR内のIDTが作る電界を歪ませ、電気的損失をもたらせて、フィルターの性能に影響を与える。実線510は、寸法cdが50μmのフィルターのS12をプロットしたものである。破線520は、同じフィルターで、寸法cdが15μmの場合のS12をプロットしたものである。点線530は、同じフィルターで、寸法cdが5μmの場合のS12をプロットしたものである。インターポーザの面と振動板の間隔を50μmから15μmにすることで、パスバンドにおけるフィルターの透過率が約0.5dB低下する。さらに、インターポーザの面と振動板の間隔を5μmにすると、さらに約1.0dBの透過率の低下がみられる。15μmという寸法は、cdの実用的な最小値と言えるだろう。インターポーザの面の間隔を50μm以上、例えば100μmに広げることで、わずかながら透過率が向上する。透過率のプロットはすべて、有限要素法を用いたパッケージされたフィルターのシミュレーションに基づいている。
【0031】
図4Aに戻って、インターポーザ450は、シール460によって圧電板410に取り付けられる。シール460は、機械的な取り付けを行い、パッケージされたXBARフィルター400Aの内部への湿度や他の流体の侵入を防ぐ。
図4Aに示すように、シール460は、振動板とインターポーザ450の対向面との間の総間隔cdに寄与する有限の厚さを有する独特な構造である。シール460は、例えば、圧電板に堆積された金属層とインターポーザとの熱圧着や超音波接合、ポリマーや接合材による接合、共晶やはんだ接合、ガラスフリット接合、又は他の接合方法や構造であってもよい。あるいは、シールは、プラズマ活性化または面活性化されたウェハボンドなどであり、インターポーザ450と圧電板410の間を直接結合してもよい。この場合(
図4Aには示されていないが)、シール460の厚さは無視してもよい。いずれの場合も、シール460は、パッケージされたXBARフィルター400Aの全周に存在する。さらに、パッケージされたXBARフィルター400Aの内部の位置465などの場所で、同じシール機構が圧電板410をインターポーザ450に取り付けてもよい。
【0032】
図4Bは、裏側エッチングされたXBARを用いたパッケージされたXBARフィルター400Bの概略断面図である。キャビティー440の深さを除いて、XBARフィルターチップ405、インターポーザ450、及びインターポーザと圧電板の間のシール460の構造は、
図4Aの同等の構成と同一である。これらの構成についての説明は繰り返さない。
【0033】
さらに、パッケージXBARフィルター400Bは、キャップシール485によって基板420に取り付けられたキャップ480を含む。キャップ480は、キャビティー440が基板420の面と交差する開口部を覆うのに適した任意の材料であってよい。例えば、キャップ480は、シリコン、ガラス、石英、またはポリマーの板やフィルムであってもよい。キャップシール485は、シール460に関して先に説明した材料及びシール方法のいずれであってもよい。
【0034】
また、
図4Bは、はんだボール495によって無線モジュール回路基板490に取り付けられ、電気的に接続されるパッケージされたXBARフィルター400Bを示す。これは、パッケージされたフィルター装置の使用例である。なお、無線モジュール回路基板490及びはんだボール495は、フィルター装置400Bの一部ではない。
【0035】
図6Aは、パッケージされたXBARフィルター600の分解概略断面図である。より具体的には、
図6Aは、前側エッチングされたXBARを含むXBARフィルターチップ605と、接合前のインターポーザ650の概略断面図である。
【0036】
XBARフィルターチップ605は、基板620に取り付けられた圧電板610を含む。基板620は、高抵抗のシリコンまたは他の材料でもよい。圧電板610の部分は、基板620のそれぞれのキャビティー640をまたぐ振動板を形成する。通常、
図6Aに示されるが特定されない1つまたは複数の中間層が、圧電板610と基板620との間に配置されてもよい。圧電板610の面には、第1導体パターンが形成される。第1導体パターンは、フィンガー630などのインターリーブされたIDTフィンガーを有するIDTを、振動板上に配置する。第1導体パターンは、約100nm~1000nmの厚さを有するアルミニウム、銅、モリブデンまたは他の金属でもよい。
【0037】
圧電板610の面には、第2導体パターンが形成される。第2導体パターンは、第1導体パターンの部分を覆ってもよく、金、アルミニウム、銅、または他の金属であってもよい。第2導体パターンは、XBARフィルターチップ605の外周にある連続した金属リング662を含む。また、第2導体パターンには、第1導体パターンの部分をパッケージされたXBARフィルターの外部回路に接続する必要がある場所に、パッド672などのパッドが設けられる。
【0038】
インターポーザ650は、基材652を含み、高抵抗シリコンまたは他の材料であってもよい。なお、基材652は、振動板に対向する基材652の面(すなわち、凹部655の底面)が振動板から十分に離れるように、凹部655を有していてもよい。基材652のXBARフィルターチップ605に対向する面には、第3導体パターンが形成される。なお、第3導体パターンは、第2導体パターンと同じ材料であってもよい。第3導体パターンは、基材652の外周に連続する金属リング664を含む。また、第3導体パターンは、パッド674のように、第1導体パターンの部分がパッケージされたXBARフィルターの外部の回路に接続される場所に、パッドを含む。第3導体パターンのリング664とパッド674の配置は、典型的には、第2導体パターンのリング662とパッド672の配置の鏡像である。
【0039】
インターポーザ650は、ビア676などのビアも含む。基材がシリコンの場合、このようなビアは通常、シリコン貫通ビア(TSV)と呼ばれる。ビアは、基材652を貫通する金属被覆または金属が充填された穴で構成される。各ビアは、第3導体パターンのパッド674などのパッドの1つと、基材652の外面(つまり、図に示すように下面)上の対応するパッドとの間の電気的接続を提供する。
図6Aは、パッケージされたXBARフィルター600の構造を説明し、XBARフィルターチップ605とインターポーザ650の接合前に形成されたTSVを示し、ビアは接合後に形成されてもよい。
【0040】
図6Bは、
図6AのXBARフィルターチップ605とインターポーザ650とが互いに接合された後のパッケージされたXBARフィルター600の概略断面図である。
図6Bのすべての識別された構成の説明は、
図6Aの議論で以前に提供されたので、繰り返さない。
【0041】
図6Bに示すように、XBARフィルターチップ605の外周のリング662は、インターポーザ650の外周のリング664に直接接合されており、パッケージXBARフィルター600の外周に気密シールを形成する。ここでいう「直接接合」とは、接着材料を介在させずに接合することを意味する。同時に、第2導体パターンのパッド、例えばパッド672が、第3導体パターンのパッド、例えばパッド674に、直接接合され、XBARフィルターチップ605とインターポーザ650との間の電気的接続がなされる。第2、第3導体パターンのリングとパッドの接合は、例えば、熱圧着や超音波接合などで行うことができる。
【0042】
図7Aは、インターポーザ750に接合されたXBARフィルターチップ705を含むパッケージされたXBARフィルター700Aの概略断面図である。構成780及び785を除いて、
図7Aの識別された構成は、
図6A及び
図6Bの対応する構成と同様の構造及び機能を有する。これらの構成についての説明は繰り返さない。
【0043】
キャップ780は、キャップシール785によって基板720にシールされる。XBARフィルターチップ705の基板720とインターポーザ750の基材752がともにシリコンである場合、熱膨張係数の一貫性を保つためにキャップ780もシリコンであってもよい。他のケースでは、キャップ780は、シリコン、ホウケイ酸または他のガラス、プラスチック、または他の材料であってもよい。キャップ780は、先に説明したいずれかのシール方法及び材料を用いて、基板720に取り付けられてもよい。典型的には、キャップ780は、基板にキャビティー740を形成した直後に、基板720に取り付けられる。なお、キャップ780は、XBARフィルターチップ705をインターポーザ750に接合する前に、基板720に取り付けてもよい。
【0044】
図7Bは、インターポーザ750に接合されたXBARフィルターチップ705を含むパッケージされたXBARフィルター700Bの概略断面図である。構成768を除いて、
図7Bの識別された構成は、
図6A及び
図6Bの対応する構成と同様の構造及び機能を有する。これらの構成についての説明は繰り返さない。
【0045】
パッケージされたXBARフィルター700Bでは、圧電板710と基材752との間の周囲シールが、導体リング(つまり、
図7Aの導体リング762,772)の接合によって行われていない。代わりに、硬化した接着材料768のリングが、圧電板710と基材752との間に周囲のシールを形成する。硬化した接着材料768は、例えば、エポキシ樹脂又は他の熱硬化性接着材料であってもよい。なお、接着材料(未硬化状態)は、圧電板710と基材752を組み立てる前に、圧電板710と基材752のいずれか一方または両方にしてもよい。なお、接着材料は、パッド772をパッド774に接着した後に、または接着と同時に硬化させてもよい。
【0046】
図6B、
図7A、及び
図7Bに示すXBARフィルターチップ605及び705は、多数のフィルターチップを含む大型ウェハの部分であってもよい。同様に、インターポーザ650及び750は、インターポーザの対応する数を含む大きなウェハの部分であってもよい。XBARウェハとインターポーザウェハを接合し、接合されたウェハから個々のパッケージされたXBARフィルターを切り出してもよい。
【0047】
図8は、前側にエッチングされたキャビティー840を有するXBARフィルターチップ805と、低温焼成セラミック(LTCC)インターポーザ850とを含む、他のパッケージされたXBARフィルター800の概略断面図である。これまでの例と同様に、XBARフィルターチップ805は、基板820に取り付けられた圧電板810を含む。基板820は、高抵抗のシリコンまたは他の材料でもよい。圧電板810の部分は、基板820のそれぞれのキャビティー840をまたぐ振動板を形成する。通常、
図8に示されるが特定されない1つまたは複数の中間層が、圧電板810と基板820との間に配置されてもよい。圧電板810の面には、導体パターンが形成される。導体パターンは、振動板上に配置されるフィンガー830などのインターリーブされたIDTフィンガーを有するIDTを含む。
【0048】
LTCCインターポーザ850は、薄いセラミックテープの層で構成されており、その一部または全部に印刷された導体が組み込まれた後、焼成されて硬い多層回路基板が形成される。
図8の例では、インターポーザは3つの導体層874、876、878を有する。XBARフィルター用のLTCCインターポーザは、3層以上の場合もある。複数の導体層があることで、インダクタなどの受動部品をインターポーザに組み込むことができる。
【0049】
LTCCインターポーザ850は、振動板と、振動板に対向するインターポーザの面との間に十分な間隔を確保するために、凹部855を有していてもよい。このような凹部は、例えば、インターポーザの各層を共焼成する前に、1つまたは複数のセラミック層に開口部を設けることで形成されてもよい。
【0050】
XBARフィルターチップ805は、インターポーザ850にフリップチップ実装される。フリップチップ実装により、XBARフィルターチップ805とインターポーザ850の間に物理的、電気的な接続が確立される。
図8に示すように、接続は、はんだボール872のようなはんだボールによって行われる。また、XBARフィルターチップ805とインターポーザ850(図示せず)に金バンプを熱圧着または超音波接合することで接続することも可能である。
【0051】
フリップチップ実装では、XBARフィルターチップ805とインターポーザ850との間にシールが確立されないので、ポリマーカバー860をアセンブリ上に成形して、機密に近いシールを提供する。
【0052】
図9は、裏側エッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップ905と、低温焼成セラミック(LTCC)インターポーザ950とを含む、他のパッケージされたXBARフィルター900の概略断面図である。構成980を除いて、
図9の識別された構成は、
図8の対応する構成と同様の構造及び機能を有する。これらの構成についての説明は繰り返さない。
【0053】
キャップ980は、基板920にシールされる。キャップ980は、最終的に成形されたカバー970によって囲まれるので、キャップの主な機能は、カバー970に使用される成形化合物を含む材料がキャビティー940に侵入するのを防ぐことである。この機能は、プラスチックフィルムのような非常に薄いキャップで満たすことができる。
【0054】
図10は、裏側にエッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップ1005と、XBARフィルターチップの面にビルドアップされた層によって形成されたインターポーザ1050とを含む、他のパッケージされたXBARフィルター1000の概略断面図である。XBARフィルターチップ1005は、複数のXBARフィルターチップを含むウェハ(図示せず)の部分である。インターポーザ層の積層は、すべてのXBARフィルターチップに対して同時に行われる。続いて、個々のパッケージされたXBARフィルターをウェハから切り出す。
【0055】
これまでの例と同様に、XBARフィルターチップ1005は、基板1020に取り付けられた圧電板1010を含む。基板1020は、高抵抗シリコンや他の材料であってもよい。圧電板1010の部分は、基板1020のそれぞれのキャビティー1040をまたぐ振動板を形成する。通常、
図10に示されるが特定されない1つまたは複数の中間層が、圧電板1010と基板1020との間に配置されてもよい。圧電板1010の面に導体パターンが形成される。導体パターンは、振動板上に配置されるフィンガー1030などのインターリーブされたIDTフィンガーを有するIDTを含む。キャップ1080は、先に説明したように、キャップシール1085によって基板1020にシールされる。
【0056】
インターポーザ1050は、圧電板1010上に順次形成された少なくとも3つの層を含むものである。壁1052は、XBAR装置の振動板を囲む。壁1052の厚さは、振動板と、各振動板の上に密閉されたキャビティー1055を作成する壁をまたぐカバー層1054との間の距離を画定する。壁1052とカバー層1054の両方がポリマー材料であってもよい。インターポーザの導体パターン1070は、パッケージされたXBARフィルターの外部にある回路に接続するためのパッド1072をカバー層1054の外面に含んでいる。導体パターン1070は、パッド1072をXBARフィルターチップ1005上の接続点1074に接続する。導体パターン1070は、アルミニウム、銅、金、または組み合わせた材料であってもよい。
【0057】
方法の説明
図11は、XBARフィルターチップを製造する工程1100を示す簡略化されたフローチャートである。工程1100は、圧電材料の基板と板を用いて1105から開始し、完成したXBARフィルターチップを有する1195で終了する。
図11のフローチャートには、主要な工程のステップのみが含まれる。様々な従来の工程のステップ(例えば、面準備、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、モニタリング、テストなど)は、
図11に示すステップの前、間、後、及び中に実行されてもよい。
【0058】
図11のフローチャートは、基板にキャビティーをいつ、どのように形成するかが異なる、XBARフィルターチップを製造する工程1100の3つのバリエーションを示す。キャビティーは、ステップ1110A、1110B、または1110Cで形成されてもよい。工程1100の3つのバリエーションのそれぞれにおいて、これらのステップのうち1つだけが実行される。
【0059】
圧電板は、例えば、先に紹介した例で使用されるZカットのニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムであってもよい。圧電板は、他の材料や他のカットでもよい。基板は、好ましくはシリコンである。基板は、エッチングや他の方法で深いキャビティーを形成できるような他の材料でもよい。
【0060】
工程1100の1つの変形例では、1120で圧電板が基板に接着される前に、1110Aで1つ以上のキャビティーが基板に形成される。フィルター装置において、共振器ごとに別のキャビティーが形成されてもよい。1つまたは複数のキャビティーは、従来のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いて形成されてもよい。通常、1110Aで形成されたキャビティーは基板を貫通せず、結果として得られる共振装置は、
図3Aまたは
図3Bに示すような断面を持つことになる。
【0061】
1120で、圧電板を基板に接着する。また、圧電板と基板は、ウェハ接合工程によって接合されていてもよい。典型的には、基板と圧電板の接合面は高度に研磨される。また、圧電板と基板の一方または両方の接合面に、酸化物や金属などの中間材料の層が1つまたは複数形成または堆積されてもよい。一方または両方の接合面を、例えばプラズマ工程を用いて活性化してもよい。その後、接合面をかなりの力で押し付けて、圧電板と基板または中間材料層との間に分子結合を確立することができる。
【0062】
1130で、圧電板の前側に1つまたは複数の導体層を堆積させてパターニングすることにより、各XBARのIDTを含む導体パターンが形成される。導体層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、他の導電性金属であってもよい。任意選択的に、導体層の下(つまり、導体層と圧電板の間)及び/または上に、1つまたは複数の他の材料の層が配置されていてもよい。例えば、チタン、クロム又は他の金属の薄膜を用いて、導体層と圧電板との密着性を高めることができる。導体パターンの部分(例えば、IDTバスバーやIDT間の相互接続部)の上に、金、アルミニウム、銅又は他の高導電性金属の導電強化層が形成されてもよい。
【0063】
導体パターンは、1130において、圧電板の面上に導体層及び任意に1つまたは複数の他の金属層を順に堆積させることによって形成されてもよい。その後、パターンニングされたフォトレジストを介してエッチングすることで、余分な金属を取り除くことができる。導体層のエッチングは、例えば、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、湿式化学エッチングなどのエッチング技術を用いて行うことができる。
【0064】
代替的に、導体パターンは、リフトオフ工程を用いて1130で形成されてもよい。フォトレジストは、圧電板の上に堆積され、パターニングされて導体パターンを画定してもよい。導体層と、任意に1つまたは複数の他の層が圧電板の面上に順に堆積してもよい。その後、フォトレジストを除去して余分な材料を取り除き、導体パターンを残すことができる。
【0065】
1140で、圧電板の前側に1つまたは複数の誘電体材料の層を堆積させることによって、前側誘電体層が形成されてもよい。1つまたは複数の誘電体層は、スパッタリング、蒸着、化学的気相成長などの従来の成膜技術を用いて堆積させてもよい。1つ以上の誘電体層は、導体パターンの上を含めて、圧電板の面全体に堆積されてもよい。また、フォトマスクを用いた1つまたは複数のリソグラフィ工程を用いて、IDTのインターリーブされたフィンガーの間のみなど、圧電板の選択された領域に誘電体層の堆積を制限してもよい。また、マスクを使用することで、圧電板の異なる部分に異なる厚さの誘電体材料を堆積してもよい。
【0066】
工程1100の第2変形例では、1110Bで基板の裏側に1つまたは複数のキャビティーを形成する。フィルター装置において、共振器ごとに別のキャビティーが形成されてもよい。1つまたは複数のキャビティーは、異方性または配向依存性のドライまたはウェットエッチングを用いて、基板の裏側から圧電板までの穴を開けて形成されてもよい。この場合、得られる共振装置の断面は、
図1のようになる。
【0067】
工程1100の第2変形例では、キャップ480、780、980、1080などのキャップを1150で基板に取り付けて、1110Bで形成されたキャビティーを覆ってシールしてもよい。キャップは、シリコン、ガラスまたは他の材料の板状のもの、または高分子材料の板状やフィルム状のものがある。キャップは、これまでに説明してきた接着技術のいずれかを用いて基板に取り付けることができる。
【0068】
工程1100の第3変形例では、1110Cにおいて、圧電板の開口部から導入されたエッチング液を用いて基板をエッチングすることにより、基板に凹部の形態の1つまたは複数のキャビティーが形成されてもよい。フィルター装置において、共振器ごとに別のキャビティーが形成されてもよい。1110Cで形成された1つまたは複数のキャビティーは、基板を貫通せず、得られる共振装置は、
図3に示すような断面を持つことになる。
【0069】
工程1100のすべてのバリエーションにおいて、XBARフィルターチップは1160で完成する。1160で行われる動作には、SiO2やSi3O4などのシール/パッシベーション層を装置の全部または部分に堆積すること、ボンディングパッドやはんだバンプ、他の装置と外部回路との接続を行うための手段を形成すること、必要に応じて装置の前面に金属や誘電体を追加または除去することで、装置内の共振器の共振周波数を調整することが含まれる。1160の終了時には、XBARフィルターチップのパッケージ化が完了する。その後、工程1100は1195で終了する。
【0070】
図12A、
図12B、及び
図12Cは、組み合わせて、TSV(シリコン貫通ビア)を有するシリコンインターポーザを使用してパッケージXBARフィルターを製造する工程1200のフローチャートである。
図12A、
図12B、及び
図12Cは、前側にエッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップを用いた工程1200を示すが、工程1200は、裏側にエッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップを用いてもよい。
【0071】
工程1200は、1205で開始し、完成したパッケージされたXBARフィルターを有する1295で終了する。
図12A、
図12B、及び
図12Cは、主要な工程の動作を示しており、それぞれが複数のステップを含む場合がある。様々な従来の工程のステップ(例えば、面準備、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、モニタリング、テストなど)は、
図12A、
図12B、及び
図12Cに示すステップの前、間、後、及び中に実行されてもよい。各主要な工程の動作について、動作終了時の仕掛かり品の構成を説明するために、対応する概略断面図が提供される。必要に応じて、
図6で使用した参照符号を使用して、仕掛かり品の構成を識別する。
【0072】
図12Aを参照すると、1210において、例えば、
図11の工程1100を用いて、XBARフィルターチップ605が製造される。XBARフィルターチップ605は、基板620に取り付けられた圧電板610を含む。基板620は、高抵抗のシリコンまたは他の材料でもよい。圧電板610の部分は、基板620のそれぞれのキャビティー640をまたぐ振動板を形成する。圧電板610の面には、第1導体パターンが形成される。第1導体パターンは、フィンガー630などのインターリーブされたIDTフィンガーを有するIDTを、振動板上に配置する。
【0073】
XBARフィルターチップ605が裏側エッチングされたキャビティーを有する場合(一点鎖線で示すように)、カバー680が基板620の裏側にシールされる。カバー680は、
図12A、
図12B、及び
図12Cの後の断面図には示されていないが、工程1200におけるすべての動作は、裏側エッチングされたキャビティーの上にカバーを有するXBARフィルターチップに適合することを理解しなければならない。
【0074】
圧電板610の面には、第2導体パターンが形成される。第2導体パターンは、第1導体パターンの部分を覆ってもよく、金、アルミニウム、銅、または他の金属であってもよい。第2導体パターンは、XBARフィルターチップ605の外周にある連続した金属リング662を含む。また、第2導体パターンには、第1導体パターンの部分をパッケージされたXBARフィルターの外部回路に接続する必要がある場所に、パッド672などのパッドが設けられる。
【0075】
1220で、部分的に完成したインターポーザを用意する。部分的に完成したインターポーザは、高抵抗シリコンまたは他の材料である基材652を含む。二酸化ケイ素などの誘電体層654が、XBARフィルターチップと対向することになる基材の面に形成される。なお、基材652は、振動板に対向することになる基材652の面(すなわち、凹部655の底面)が振動板から十分に離れるように、凹部655を有していてもよい。誘電体層654は、凹部655を覆っていてもよく、いなくてもよい。誘電体層654の上には、第3導体パターンが形成される。なお、第3導体パターンは、第2導体パターンと同じ材料であってもよい。第3導体パターンは、基材652の外周に連続する金属リング664を含む。また、第3導体パターンは、パッド674のように、第1導体パターンの部分がパッケージされたXBARフィルターの外部の回路に接続される場所に、パッドを含む。第3導体パターンのリング664とパッド674の配置は、典型的には、第2導体パターンのリング662とパッド672の配置の鏡像である。
【0076】
1230で、XBARフィルターチップ605は、部分的に完成したインターポーザに接合される。具体的には、第2導体パターンのリング662が第3導体パターンのリング664に接合され、XBARフィルターチップと部分的に完成したインターポーザの外周に気密シールが形成される。同時に、XBARフィルターチップのパッド672などが、部分的に完成したインターポーザのパッド674などの対応するパッドに接合される。XBARフィルターチップを部分的に競合するインターポーザに接合する好ましい方法は、熱と圧力の組み合わせで金属層間の結合を行う熱圧着法である。超音波接合、はんだ接合、共晶接合を含む他の方法がある。
【0077】
次に
図12Bを参照すると、1240において、基板620及びXBARフィルターチップ、及び部分的に完成したインターポーザの基材652の一方または両方が、パッケージXBARフィルターの全体の高さを低減するために薄くされてもよい。基板620及び/または基材652は、例えば、機械的または化学機械的な研磨によって薄くしてもよい。
【0078】
基板620及び基材652の一方または両方を任意に薄くした後、1250から1280までの一連の動作でシリコン貫通ビアが形成される。
【0079】
1250で、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて、基材652の裏側(
図12Bに示すように下側)から基材652を介して誘電体層654まで穴1252をエッチングする。誘電体層654はDRIE工程の影響を受けないため、エッチングされた穴の深さは正確に制御され、均一になる。エッチングされた穴1252の位置は、第3導体パターンのパッド674などのパッドの位置に対応する。
【0080】
1260で、基材652の裏側及び穴1252の内部を覆うように、誘電体層1262が堆積される。誘電体層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムまたは他の誘電体材料であってもよい。誘電体層は、蒸着、スパッタリング、化学的気相成長または他の通常の工程によって堆積することができる。
【0081】
次に
図12Cを参照すると、1270において、穴1252の端部の酸化物層が、パターンニングされたフォトレジストマスクを介してエッチングされ、第3導体パターンの各接触パッド(パッド674など)の少なくとも部分を露出させる。
【0082】
1280において、第4の導体パターン1256が形成され、第3導体パターンのパッド674などのパッドから、基材652の外面(
図12Cに示すように下面)のパッド676などの対応するパッドへの電気的接続を形成する。第4の導体パターンは、金、アルミニウム、銅、または他の高導電性材料の一次導電層を含んでいてもよい。一次導電層と基材652の間に、他の金属、例えばチタンやニッケル、の薄い層を配置して、接合性を向上させてもよい。穴1252と第4導体パターンを含む構造は、通常、「シリコン貫通ビア」と呼ばれる。シリコン貫通ビアが完成すると、工程1200は1295で終了する。
【0083】
工程1200全体は、ウェハ全体で実行されてもよく、通常はそうなるだろう。複数のXBARsフィルターチップを含むウェハ全体は、1230で、対応する数の部分的に完成したインターポーザを含む他のウェハに接合される。その後の動作で、すべてのインターポーザのTSVを同時に形成する。そして、個々のパッケージされたXBARフィルターは、動作1230の後に、接合されたウェハをダイシングすることによって切除されてもよい。
【0084】
図13は、LTCCインターポーザを使用してパッケージXBARフィルターを製造するための他の工程1300のフローチャートである。
図13は、前側にエッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップを用いた工程1300を示すが、工程1300は、裏側にエッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップを用いてもよい。
【0085】
工程1300は、1305で開始し、完成したパッケージされたXBARフィルターを有する1395で終了する。
図13は主要な工程の動作を示しており、それぞれの動作には複数のステップが含まれる。様々な従来の工程のステップ(例えば、面準備、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、モニタリング、テストなど)は、
図13に示すステップの前、間、後、及び中に実行されてもよい。各主要な工程の動作について、動作終了時の仕掛かり品の構成を説明するために、対応する概略断面図を提供する。必要に応じて、
図8で使用された参照符号を使用して、仕掛かり品の構成を識別する。
【0086】
1310で、例えば、
図11の工程1100を用いて、XBARフィルターチップ805を製造する。XBARフィルターチップ805は、通常、複数のXBARフィルターチップを含むウェハの部分である。XBARフィルターチップ805は、基板820に取り付けられた圧電板810を含む。基板820は、高抵抗のシリコンまたは他の材料でもよい。圧電板810の部分は、基板820のそれぞれのキャビティー840をまたぐ振動板を形成する。圧電板810の面には、第1導体パターンが形成される。第1導体パターンは、振動板上に配置されたフィンガー830などのインターリーブされたIDTフィンガーを有するIDTを含む。
【0087】
XBARフィルターチップ805が裏側にエッチングされたキャビティー(一点鎖線で示す)を有する場合、カバー880が基板820の裏側にシールされる。カバー880は、
図13の後の断面図には示されていないが、工程1300におけるすべての動作は、裏側エッチングされたキャビティーの上にカバーを有するXBARフィルターチップに適合することを理解しなければならない。
【0088】
圧電板810の面には、第2導体パターンが形成される。第1導体パターンの部分を覆う第2導体パターンは、金、アルミニウム、銅または他の金属であってもよい。第2導体パターンは、第1導体パターンの部分がパッケージされたXBARフィルターの外部回路に接続されなければならない場所にパッド(特定されない)を含んでいてもよい。XBARフィルターチップ805をインターポーザにリフローはんだ付けできるように、パッドにはんだボールやバンプ872が形成されてもよい。また、パッドに金バンプが形成されてもよく、XBARフィルターチップ805をインターポーザに熱圧着または超音波接合してもよい。
【0089】
1320で、印刷された導体を有する一部または全部の薄いセラミック層を共焼成することによって、LTCCインターポーザ850が製造される。LTCCインターポーザ850は、通常、複数のインターポーザを含むより大きなパネルの部分である。LTCCインターポーザは、XBARフィルターチップに接続するためのパッドを含む上部(
図13に示す)導体パターン874と、パッケージXBARフィルターの外部にある回路に接続するためのパッドを含む下部導体パターン878とを少なくとも有する。
図13の例では、インターポーザ850は、1つの中間導体層を含む。XBARフィルター用のLTCCインターポーザは、3層以上の導体層を有する場合がある。複数の導体層があることで、インダクタなどの受動部品をインターポーザに組み込むことができる。
【0090】
LTCCインターポーザ850は、振動板と、振動板に対向するインターポーザの面との間に十分な間隔を確保するために、凹部855を有していてもよい。このような凹部は、例えば、インターポーザの各層を共焼成する前に、1つまたは複数のセラミック層に開口部を設けることで形成されてもよい。
【0091】
1330で、XBARフィルターチップ850はインターポーザ850にフリップチップ接合される。まず、ウェハ内のXBARフィルターチップをテストし、良品のチップをウェハから切り出す。その後、良品のチップは、はんだ付け、熱圧着、超音波接合などの接合方法でLTCCインターポーザ850に接合される。接合することにより、XBARフィルターチップ805がインターポーザ850に物理的に取り付けられ、XBARフィルターチップ805とインターポーザ850の間が電気的に接続される。この接合は、通常、XBARフィルターチップ805の振動板を保護するためのシールを作るものではない。
【0092】
1340において、ポリマーカバー860がXBARフィルターチップ805の上に形成され、XBARフィルターチップ805とインターポーザ850との間の空間をシールする。カバー850は、例えば、射出成形や鋳造によって形成されてもよい。各XBARフィルターチップに個々のカバーが形成されてもよく、LTCCパネル全体に一体のカバー850が形成されてもよい。いずれの場合も、XBARフィルターのパッケージは、例えば、鋸でパネルから切り離すことができる。そして、工程1300は1395で終了する。
【0093】
図14は、ウェハレベルのビルドアップインターポーザを使用してパッケージXBARフィルターを製造するための他の工程1400のフローチャートである。工程1400は、1405で開始し、完成したパッケージされたXBARフィルターを有する1495で終了する。
図14は主要な工程の動作を示しており、それぞれの動作には複数のステップが含まれる。様々な従来の工程のステップ(例えば、面準備、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、モニタリング、テストなど)は、
図14に示すステップの前、間、後、及び中に実行されてもよい。各主要な工程の動作について、動作終了時の仕掛かり品の構成を説明するために、対応する概略断面図を提供する。必要に応じて、
図10で使用された参照符号を使用して、仕掛かり品の構成を識別する。
【0094】
1410で、例えば、
図11の工程1100を用いて、XBARフィルターチップ1005を製造する。XBARフィルターチップ1005は、通常、複数のXBARフィルターチップを含むウェハの部分である。XBARフィルターチップ1005は、基板1020に取り付けられた圧電板1010を含む。基板1020は、高抵抗のシリコンまたは他の材料でもよい。圧電板1010の部分は、基板1020のそれぞれのキャビティー1040をまたぐ振動板を形成する。圧電板1010の面には、第1導体パターンが形成される。第1導体パターンは、振動板上に配置されたフィンガー1030などのインターリーブされたIDTフィンガーを有するIDTを含む。
【0095】
その後の工程の動作では、キャビティー1040がエッチングされた後に、溶媒、フォトレジスト、または光重合性モノマーなどの液体材料を圧電板1010の前面に適用する必要がある。この工程1400は、前面にエッチングされたキャビティーを有するXBARフィルターチップには適さない。なぜなら、液体材料が振動板のエッチングされた穴を介してキャビティーを通過する可能性があるからである。このように、XBARフィルターチップ1005は、基板1020の裏側にカバー1080がシールされた裏側エッチングされたキャビティーを有する。
【0096】
1420で、圧電板1010に壁1052を形成する。壁1052には、XBAR振動板上の開口部や、後続の工程動作でXBARフィルターチップへの電気的接続が行われる開口部が形成されていてもよい。壁1052は、例えば、圧電板1010に光重合性材料を被覆した後、適切なマスクを介して光重合性材料を露出することにより形成されてもよい。必要な壁の厚さに応じて、複数の材料の層を連続してコーティングしてパターニングすることができる。
【0097】
1430で、壁1052の上にカバー層1054を適用する。カバー層1054は、例えば、接着材料によって壁1052に接着された連続フィルムとして適用されてもよい。カバー層1054は、XBAR振動板上の壁1052の開口部をまたぎ、各振動板上に密閉されたキャビティー1055を形成する。カバー層はパターニングされ、後の工程でXBARフィルターチップとの電気的接続を行うための開口部が形成される。
【0098】
1440で、導体パターン1070を形成する。導体パターン1070は、パッケージされたXBARフィルターの外部にある回路に接続するためのパッド1072を、カバー層1054の外面に含んでいる。導体パターン1070は、パッド1072をXBARフィルターチップ1005上の接続点1074に接続する。導体パターン1070は、アルミニウム、銅、金、または従来の技術を使用して堆積及びパターニングされた材料の組み合わせであってもよい。導体パターンが形成されると、1495で処理1400が終了する。
【0099】
工程1400全体は、通常、ウェハ全体で実行されてもよい。個々のパッケージされたXBARフィルターは、1440で導体パターンが形成された後、接合されたウェハを鋸で切断することによって切除することができる。
【0100】
結びのコメント
本明細書全体を通して、示された実施形態及び例は、開示または請求された装置及び手順の制限ではなく、例示とみなされるべきである。ここで紹介される例の多くは、方法行為またはシステム構成の特定の組み合わせを含んでいるが、それらの行為及びそれらの構成は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることができることを理解する必要がある。フローチャートに関して、追加のステップや少ないステップをとってもよく、また、図示されたステップを組み合わせたり、さらに洗練させたりして、本明細書に記載された方法を実現してもよい。1つの実施形態に関連してのみ議論される行為、構成、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割を排除することを意図したものではない。
【0101】
本明細書で使用する場合、「複数」は2つ以上を意味する。本明細書で使用されるように、アイテムの「セット」は、そのようなアイテムの1つまたは複数を含むことができる。本明細書で使用されるように、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれにおいても、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「運搬する」、「有する」、「含む(containing)」、「関連する(involving)」などの用語は、制約なく理解されるべきであり、すなわち、含むがこれに限定されないという意味である。請求項に関しては、「からなる」及び「のみからなる」という移行句のみが、閉じたまたはやや閉じた移行句である。請求項において、請求項の構成を修飾するために「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞を使用することは、それ自体、ある請求項の構成の他に対する優先順位、先行順位、または方法の行為が実行される時間的順序を意味するものではなく、ある名称を有するある請求項構成を、同じ名称を有する他の構成(ただし、序数詞を使用した場合)と区別するための標識として使用されるに過ぎない。本明細書では、「及び/または」は、列挙された項目が代替案であることを意味するが、代替案には列挙された項目の任意の組み合わせも含まれる。
【国際調査報告】