(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-16
(54)【発明の名称】腫瘍選択的併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20220509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220509BHJP
A61K 31/4738 20060101ALI20220509BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20220509BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61K31/4738
A61K31/353
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556462
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 US2020023250
(87)【国際公開番号】W WO2020190990
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(71)【出願人】
【識別番号】513288654
【氏名又は名称】インディアナ ユニバーシティー リサーチ アンド テクノロジー コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】503060525
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フー ヤン-シン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン シュウメイ
(72)【発明者】
【氏名】ブースマン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲンロザー ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオグワン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リンシャン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084AA24
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086CB09
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本明細書に記載の治療法は、対象における様々な異なる癌細胞タイプおよび癌状態に対して選択的に致死的であり得る。本明細書に記載の併用療法は、免疫療法において選択的致死性が有益である場合、特に疾患がNQO1の高いレベルを伴う場合の、疾患の管理、処置、制御、または補助処置のために有用であり得る。特に、チェックポイント阻害剤などの免疫療法を、NQO1生体内活性化可能薬物と組み合わせる場合の態様である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する患者の癌細胞を死滅させるまたはその増殖を阻害する方法であって、NQO1生体内活性化可能薬物をチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与する段階を含む、方法。
【請求項2】
癌細胞を有する患者の癌細胞を死滅させるまたはその増殖を阻害するための薬剤の製造のための、NQO1生物活性化可能薬物の第2の作用物質と組み合わせての使用であって、第2の作用物質がチェックポイント阻害剤であり、薬剤がNQO1生物活性化可能薬物およびチェックポイント阻害剤の有効な致死量または阻害量を含む、使用。
【請求項3】
癌を有する患者の処置における、NQO1生体内活性化可能薬物の第2の作用物質と組み合わせての使用であって、第2の作用物質がチェックポイント阻害剤である、使用。
【請求項4】
癌細胞が、不完全なDNA修復プロセスにより塩基除去修復(BER)の欠陥または脆弱性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
BERの欠陥または脆弱性が、欠陥レベルのX線交差補完1すなわちXRCC1遺伝子/タンパク質/酵素を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
NQO1生体内活性化可能薬物の使用が、低分子チェックポイント阻害剤との組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
NQO1生体内活性化可能薬物の使用が、抗体チェックポイント阻害剤との組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
NQO1生体内活性化可能薬物の使用が、PD-1またはCTLA-4の阻害剤との組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
NQO1生体内活性化可能薬物が、β-ラパコンまたはDNQ化合物である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
NQO1生体内活性化可能薬物が、β-ラパコンまたはDNQ化合物である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
NQO1生体内活性化可能薬物が、β-ラパコンまたはDNQ化合物である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
さらなる化学療法剤または放射線療法をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
癌細胞が高いレベルのNQO1を有する、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
癌細胞が固形腫瘍の形態である、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
癌細胞が、非小細胞肺癌細胞、前立腺癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、頭頸部癌細胞、または大腸癌細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
NQO1生体内活性化可能薬物が、
;またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
NQO1生体内活性化可能薬物が、
;またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項2または3記載の使用。
【請求項18】
NQO1生体内活性化可能薬物がDNQまたはDNQ-87である、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
NQO1生体内活性化可能薬物をチェックポイント阻害剤の前に投与する、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
NQO1生体内活性化可能薬物をチェックポイント阻害剤の後に投与する、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
NQO1生体内活性化可能薬物をチェックポイント阻害剤と同時に投与する、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
NQO1生体内活性化可能薬物を複数回投与する、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
チェックポイント阻害剤を複数回投与する、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
NQO1生体内活性化可能薬物およびチェックポイント阻害剤を複数回投与する、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
さらなる抗癌療法をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
さらなる抗癌療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、毒素療法、または手術であり得る、請求項25記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年3月18日提出の米国特許仮出願第62/819,870号に対する優先権の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府支援
本発明は、米国立衛生研究所により授与された契約番号R01 CA102792-18の下で政府支援により行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
I. 分野
本開示の分野は概して、薬化学、医学、腫瘍学、化学療法、および免疫療法に関する。より具体的には、癌の処置におけるNQO1生体内活性化可能薬物の、チェックポイント阻害剤と組み合わせた使用に関する。
【背景技術】
【0004】
II. 関連技術
抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびそのリガンドであるプログラム細胞死リガンド1(PDL1)モノクローナル抗体は、いくつかの異なる癌タイプにわたって前例のない永続性のある応答を示し、これらの最初の臨床における成功は癌免疫療法の分野に光を当てた。PD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用を阻止すると、T細胞の生存および増殖が高まり、T細胞枯渇が低減し、細胞傷害性T細胞機能を回復して抗腫瘍免疫応答を促進する(Topalian et al., 2015; Pauken and Wherry, 2015)。残念ながら、抗PD1/PD-L1剤で処置した患者で永続性のある応答を有する者は少数にすぎない(Sharma et al., 2017)。他のチェックポイントが低い応答および再発に寄与しているかもしれないが、T細胞のチェックポイントをさらに遮断しても応答率は改善されなかった(Jenkins et al., 2018; Garber, 2018)。腫瘍微小環境内の機能が損なわれた抗原提示細胞は、T細胞の最適な活性化を制限する可能性がある(Lee et al., 2009)。腫瘍抗原は腫瘍環境内で役立つかもしれないが、抗原処理および提示を適切に活性化できないことで、腫瘍特異的T細胞の再活性化を制限する可能性がある。
【0005】
効果的な適応免疫の生成には、自然細胞(すなわち、樹状細胞マクロファージおよびナチュラルキラー細胞)を活性化するための危険信号または損傷信号のセンシング、抗原処理および提示、I型IFN産生ならびにT細胞の交差提示を含む、協調自然免疫応答が必要である(Woo and Corrales, 2015)。一般に、これらの危険信号または損傷信号は、自然免疫細胞によって発現される細胞外および細胞内パターン認識受容体(PRR)によって認識され、抗原の取り込みを促進し、抗原提示細胞(APC)を活性化し、APCと損傷細胞との相互作用を促進する(Takeuchi and Akira, 2010)。しかし、正常な自然免疫応答のこれらの重要な特性は、腫瘍微小環境で破壊されることが多い(Patel and Minn, 2018)。例えば、癌は、十分なネオ抗原を欠く、または提示することができない腫瘍クローンの生存に一般に好都合であり;腫瘍はまた、適応応答を刺激するのではなく、癌の炎症を促進するPRR信号または機能が損なわれた自然免疫細胞を好む(Lee et al., 2009; Hernandez et al., 2016; Grivennikov et al., 2010)。
【0006】
腫瘍は免疫抑制性微小環境に有利な自然センシングの障害を示すため、チェックポイント遮断を改善する上で重要な検討事項は、腫瘍微小環境における自然信号を増強することである。この目標を達成するための1つの可能なアプローチは、腫瘍微小環境内の免疫原性細胞死(ICD)の誘導を含む(Patel and Minn, 2018)。例えば、いくつかのDNA損傷またはDNA修復阻害化学療法(放射線療法、アントラサイクリンおよびオキサリプラチンなど)はICDを誘発する(Garg et al., 2017)。ICDは、高移動度群ボックス1(HMGB1)タンパク質、細胞外ATP、細胞質カルレチクリン、および瀕死腫瘍細胞による内因性核酸などの一連の免疫刺激損傷関連分子パターン(DAMP)の放出によって特徴づけられる(Sistigu et al., 2014)。これらのDAMPは、自然細胞によって発現されるそれらの同族PRRによって認識される。このDAMP/PRRシグナル伝達は、炎症性微小環境を変化させ、かつ/またはネオ抗原産生を刺激し、かつAPCを誘引し、活性化してT細胞を活性化し、これらは現在腫瘍を攻撃するために認可されている(Galluzzi et al., 2015)。したがって、免疫刺激特性は、ICD誘導剤を併用免疫療法の魅力的な候補にする。しかし、ICD誘導剤として特定された細胞毒性薬物はごくわずかであり、一般的な毒性、免疫抑制性、および腫瘍選択性の欠如は、それらの使用を制限している。したがって、「標的指向」作用物質がより特異的に自然センシングを増大させ、続いて抗PD1/PD-L1処置の利点を拡大し得るかどうかを探求することが非常に望ましい。
【0007】
NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)は、大腸癌、肺癌、黒色腫、胆管癌、および膵臓癌を含む、多くのヒト癌においてアップレギュレートされている(Li et al., 1995)サイトゾル2電子オキシドレダクターゼである(Oh et al., 2016)。NQO1の高レベル発現は、後期臨床段階、予後不良、およびリンパ節転移に関連している(Li et al., 2015; Ma et al., 2014)。β-ラパコン(β-lap、臨床形態、ARQ761)を含むNQO1生体内活性化可能薬物は、NQO1により触媒されて活性酸素種(ROS)を生成することができる独特のキノン構造を有する(Huang et al., 2016)。一般に、1モルのβ-lapは約2分で約120モルのスーパーオキシドを生成し、約60モルのNAD(P)Hを消費する(Pink et al., 2000)。NQO1は腫瘍細胞において過剰発現され、過酸化水素(H2O2)消去酵素のカタラーゼは、正常組織に対して腫瘍組織で失われる(Doskey et al., 2016)。ヒト癌における高いNQO1:カタラーゼ比は、NQO1「生体内活性化可能」薬物の使用に最適な治療ウィンドウを提供することができる一方で、低い発現比は正常組織を保護する。この強力な腫瘍特異的ROS産生は、広範な酸化的DNA傷害および腫瘍選択的細胞死をもたらす(Huang et al., 2012)。異種移植モデルにおいて、NQO1生体内活性化可能β-lapは未修復のDNA損傷および細胞死を引き起こし、PARP1阻害剤および放射線療法と相乗作用することが示されている(Huang et al., 2016; Li et al., 2016)。β-Lapは現在、NQO1+固形腫瘍の患者における単剤療法または他の化学薬物との組み合わせで試験中である(ClinicalTrials.gov 識別子NCT02514031およびNCT01502800)。しかし、β-lapの抗腫瘍効果の評価は主に、インビトロおよび免疫不全マウスモデルで行われ、治療法の改善は直接の腫瘍死滅に焦点を合わせることが多く、適応免疫にはほとんど注意が払われなかった。発明者らは最近、β-lapが免疫原性細胞死(ICD)を誘発し、宿主TLR4/MyD88/I型インターフェロン経路およびBatf3樹状細胞依存的交差提示を活性化する損傷関連分子パターン(DAMP)放出を誘導して、NQO1陽性腫瘍に対する自然および適応免疫応答を橋渡しすることを示した(Li et al., 2019)。さらに、本発明者らは、β-lapが腫瘍微小環境内で自然センシングを誘発して、十分に定着した腫瘍におけるチェックポイント遮断抵抗性を克服することを見出した(Li et al., 2019)。イソブチルデオキシニボキノン(IB-DNQ)は、多くの固形腫瘍で過剰発現される酵素である、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ(NQO1)の新規選択的基質である。IB-DNQは、NQO1陽性固形癌を標的とする有望で強力な抗癌剤である(Lundberg et al., 2017)。
【発明の概要】
【0008】
概要
したがって、本開示に従い、癌を有する患者の癌細胞を死滅させるまたはその増殖を阻害する方法であって、NQO1生体内活性化可能薬物をチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法が、提供される。また、癌細胞を有する患者の癌細胞を死滅させるまたはその増殖を阻害するための薬剤の製造のための、NQO1生物活性化可能薬物の第2の作用物質と組み合わせての使用も提供され、第2の作用物質はチェックポイント阻害剤であり、薬剤はNQO1生物活性化可能薬物およびチェックポイント阻害剤の有効な致死量または阻害量を含む。また、癌を有する患者の処置における、NQO1生体内活性化可能薬物の第2の作用物質と組み合わせての使用も提供され、第2の作用物質はチェックポイント阻害剤である。方法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、毒素療法、または手術などの、追加の抗癌療法をさらに含んでもよい。
【0009】
癌細胞は、不完全なDNA修復プロセスにより塩基除去修復(BER)の欠陥または脆弱性を有し得る。BERの欠陥または脆弱性は、欠陥レベルのX線交差補完1すなわちXRCC1遺伝子/タンパク質/酵素を含み得る。NQO1生体内活性化可能薬物を、低分子チェックポイント阻害剤または抗体チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用してもよい。NQO1生体内活性化可能薬物を、PD-1またはCTLA-4の阻害剤と組み合わせて使用してもよい。NQO1生体内活性化可能薬物は、β-ラパコンまたはDNQ化合物であり得る。方法は、さらなる化学療法剤または放射線療法をさらに含んでもよい。癌細胞は、高いレベルのNQO1を有し得る。癌細胞は固形腫瘍の形態であってもよい。癌細胞は、非小細胞肺癌細胞、前立腺癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、頭頸部癌細胞、または大腸癌細胞であり得る。
【0010】
NQO1生体内活性化可能薬物は、
、またはその塩もしくは溶媒和物であり得る。NQO1生体内活性化可能薬物はDNQまたはDNQ-87であり得る。
【0011】
NQO1生体内活性化可能薬物を、チェックポイント阻害剤の前、チェックポイント阻害剤の後、またはチェックポイント阻害剤と同時に投与してもよい。NQO1生体内活性化可能薬物を複数回投与してもよい。チェックポイント阻害剤を複数回投与してもよい。NQO1生体内活性化可能薬物およびチェックポイント阻害剤の両方を複数回投与してもよい。
【0012】
当業者であれば、具体的に例示するもの以外の出発原料、生体材料、試薬、合成法、精製法、分析法、検定法、および生物学的方法を、過度の実験に頼ることなく、本開示の実施に用い得ることを理解するであろう。任意のそのような材料および方法のすべての当技術分野において公知の機能的等価物は、本開示に含まれることが意図される。
【0013】
使用している用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用しており、そのような用語および表現の使用において、提示および記載する特徴またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、特許請求する開示の範囲内で様々な改変が可能であることが理解される。
【0014】
したがって、本開示を特定の態様および任意の特徴によって具体的に開示しているが、本明細書に開示する概念の改変および変動が当業者によって行われ得ること、ならびにそのような改変および変動は添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の一定の態様または様々な局面をさらに示すために含まれる。いくつかの場合に、本発明の態様は、添付の図面を本明細書における詳細な説明と組み合わせて参照することにより、最も良く理解することができる。その説明および添付の図面は、本発明の一定の具体的実施例、または一定の局面を強調することがある。しかし、当業者であれば、本発明の実施例または局面の一部を他の実施例または局面と組み合わせて使用し得ることを理解するであろう。
【
図1】
図1A~J:NQO1生体内活性化可能薬物β-lapはインビトロおよびインビボでマウス腫瘍細胞をNQO1-依存的様式で死滅させる。(
図1A)48穴プレート中で増殖させたNQO1陽性腫瘍細胞株MC38、TC-1およびAg104LdならびにNQO1陰性細胞株Panc02およびB16を、β-lap(0~8μM)で3時間処理し、続いて洗浄し、培地を交換した。4日後、細胞生存性をスルホローダミンB(SRB)検定で判定した。(
図1B)MC38、TC-1およびAg104Ld細胞を4μM β-lap±ジクマロール(DIC、50μM)に3時間曝露し、4日後に細胞生存を評価した。(
図1C)96穴プレートに播種したCRISPRベースのNQO1ノックアウトを有するMC38(MC38 NQO1KO #5)をβ-lapに3時間曝露し、48時間後に細胞生存を評価した。(
図1D)96穴プレートに播種したpCMV-NQO1発現ベクターを安定に有するB16細胞(B16 NQO1#1)をβ-lap±ジクマロール(DIC、50μM)に3時間曝露し、48時間後に生存を評価した。(
図1E)MC38細胞を致死用量のβ-lap(4μM)に表示の時間曝露し、次いで7-AADおよびアネキシンVで染色し、続いてフローサイトメトリー分析を行った。(F-G)MC38細胞(
図1F)またはB16およびB16 NQO1#1細胞(
図1G)をβ-lap±ジクマロール(DIC、50μM)に3時間曝露し、次いでROSレベルをDCFDA細胞ROS検定により判定した。(
図1H)MC38およびB16 NQO1#1細胞をβ-lapに3時間曝露した。カタラーゼ(1000 U/ml)を加え、48時間後に細胞生存を評価した。(
図1I)C57BL/6マウス(n=5/群)にMC38細胞を移植し、β-lap(0.03mg、0.1mgまたは0.3mg、腫瘍内;または25mg/kg、i.v.)で1日おきに4回処置した。(
図1J)C57BL/6マウスにMC38細胞(NQO1 WTまたはKO、n=5/群)を移植し、β-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターした。データを2~3の別々の実験からの平均±SEMで示す。独立スチューデントt-検定(
図1F、
図1Gおよび
図1H)または二元配置分散分析(
図1Iおよび
図1J)で判定して、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図2】
図2A~F:β-Lapの抗腫瘍効果はCD8
+ T細胞依存性である。(
図2A)MC38細胞をC57BL/6 WT(n=5~6/群)およびRag1 KOマウス(n=5/群)にそれぞれ皮下移植した。腫瘍担持マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。処置後に無腫瘍マウスの数を示した。(
図2B)MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。CD8
+ T細胞枯渇のために、200μgの抗CD8抗体を処置中3日間隔で4回腹腔内注射した。(
図2C)TC-1腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5/群)をβ-lap(0.1mg、i.t.)で抗CD8抗体と共に、または抗体なしで4回処置した。(
図2D)未処置(n=5/群)およびβ-lap治癒した無MC38腫瘍(n=7/群)C57BL/6マウスを、完全拒絶の30日後に原発腫瘍の反対側に3×10
6 MC38細胞で皮下に再チャレンジし、腫瘍増殖曲線をモニターした。(
図2E)2×10
6 A549細胞をC57BL/6 Rag1
-/-マウス(媒体およびβ-lapでn=5/群;媒体+OT-1およびβ-lap+OT-1でn=7/群)に皮下注射した。30日後、マウスにOT-1トランスジェニックマウスからの2×10
6リンパ節細胞を静脈内に養子移植した。翌日、腫瘍担持マウスをβ-lap(0.2mg)で1日おきに4回腫瘍内処置した。(
図2F)A549細胞をNSG-SGM3 (n=5/群)またはヒトCD34
+造血幹細胞を有するNSG-SGM3(Hu-NSG媒体でn=5/群;Hu-NSG β-lapでn=6/群)に皮下注射した。腫瘍担持マウスをβ-lap(0.2mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。腫瘍増殖を週に2回測定した。データを3つの別々の実験からの平均±SEMで示す。二元配置分散分析で判定して、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図3】
図3A~E:Batf3依存性樹状細胞媒介性T細胞交差提示がβ-lapの抗腫瘍効果に必要である。(
図3A)MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに3回処置し、最初の処置の10日後、脾臓からのリンパ球を単離し、培地または60Gyで照射したMC38細胞で刺激した。(
図3B)MC38-OVA腫瘍担持マウス(n=4/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに3回処置し、最初の処置の10日後、脾臓からのリンパ球を単離し、2.5μg/mlのOT-1ペプチドで刺激した。IFNγ産生細胞をELISPOT検定で判定した。(
図3C)MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。100μgの抗CSF1R抗体を処置中3日間隔で3回腫瘍内注射した。(
図3D)MC38細胞をC57BL/6 WT(n=5/群)およびBatf3
-/-マウス(Batf3
-/-媒体でn=5/群;Batf3
-/- β-lapでn=6/群)にそれぞれ皮下移植した。腫瘍担持マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターした。(
図3E)MC38-OVA担持マウス(n=3/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1回処置し、4日後、CD11c
+樹状細胞を腫瘍排出リンパ節から精製し、OT-1トランスジェニックマウスの脾臓から単離したCD8 T細胞と共培養した。T細胞の交差提示の活性を、Cytometric Bead Array(CBA)マウスIFNγ検定により、細胞分泌IFNγのレベルで判定した。データを3つの別々の実験からの平均±SEMで示す。独立スチューデントt-検定(
図3A、3Bおよび3E)または二元配置分散分析(
図3Cおよび3D)で判定して、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図4】
図4A~F:I型IFNおよびTLR4/MyD88/シグナル伝達がβ-lapおよび腫瘍特異的CTLの抗腫瘍効果に必要である。(
図4A)MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。抗IFNARブロッキング抗体(150μg、i.t.)を処置中4日毎に3回投与した。(
図4B)MC38腫瘍担持WT(n=5/群)およびIfnar1
-/-(n=4/群)C57BL/6マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。(
図4C)MC38腫瘍担持WT(n=5/群)およびMyd88
-/-(n=3/群)C57BL/6マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。(
図4D)MC38腫瘍担持WT(n=5/群)およびTlr4
-/-(n=4/群)C57BL/6マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。(
図4E)MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5/群)をβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。抗HMGB1中和抗体(200μg、i.p)を処置中3日毎に3回投与した。腫瘍増殖を週に2回モニターした。(
図4F)MC38腫瘍担持WT(n=4/群)またはTlr4
-/-(n=4/群)またはMyD88-/-(n=6/群)C57BL/6マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。抗HMGB1中和抗体(200μg、i.p)を処置中3日毎に3回投与した。最初の処置の12日後、TdLNからのリンパ球を単離し、60Gyで照射したMC38腫瘍細胞で刺激した。IFNγ産生細胞をELISPOT検定で判定した。データを2~3つの別々の実験からの平均±SEMで示す。二元配置分散分析で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図5】
図5A~F:β-Lap処置誘導性HMGB1放出はインビボで腫瘍の免疫原性を増強し、抗腫瘍T細胞免疫を誘発する。(
図5A)MC38、TC-1およびB16(NQOヌルおよび過剰発現クローン)をβ-lapで3時間処理し、続いて洗浄し、培地を交換した。24時間後に、培養上清中に放出されたHMGB1のレベルをELISAで判定した。(
図5B)
図5Cおよび
図5Dにおけるβ-lap誘導性瀕死腫瘍細胞からの腫瘍特異抗原のインビボ交差提示のための研究計画。(
図5C~D)生存またはβ-lap誘導性瀕死MC38-OVA細胞を、抗HMGB1抗体と共に、または抗体なしで、WTまたはTlr4
-/- C57BL/6(n=3~4/群)マウスの側腹に皮下接種した。5日後、腫瘍排出リンパ節細胞を採取し、OVAタンパク質、OT-1ペプチドまたは照射MC38-OVA細胞で48時間再刺激した。IFNγ産生細胞をELISPOT検定で判定し(
図5C)、IFNγ分泌レベルをCBAマウスIFNγ検定により定量した(
図5D)。(
図5E)
図5Fにおける免疫原性ワクチン検定のための研究計画。(
図5F)インビトロでβ-lap処理したMC38-OVA細胞を、抗HMGB1抗体と共に、または抗体なしで、C57BL/6マウス(n=5~7/群)の側腹に皮下接種した。7日後、マウスを生存MC38-OVA細胞で、反対側の側腹への注射により再チャレンジした。再チャレンジした無腫瘍マウスのパーセンテージを示した。データを少なくとも2~3つの別々の実験からの平均±SEMで示す。二元配置分散分析(
図5Cおよび
図5D)または対数順位検定(
図5F)で判定して、*P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
【
図6】
図6A~H:β-Lapは、抗PD-L1療法との組み合わせにより、大きい定着腫瘍およびチェックポイント遮断抵抗性腫瘍を根絶した。(
図6A)
図6Bおよび
図6Cにおける局所β-lap処置ベースの併用療法のための処置計画。(
図6B~C)MC38腫瘍細胞をC57BL/6マウス(n=5/群)の側腹に皮下接種した。小さい腫瘍(約50mm
3、B)または進行腫瘍(約150~200mm
3、
図6C)担持マウスを、β-lap(0.3mg、i.t.)で抗PD-L1ベースのチェックポイント遮断と共に、または遮断なしで4回局所処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターし、処置後の無腫瘍マウスの数を示した。(
図6D)
図6Eおよび
図6Fにおける全身性β-lap処置ベースの併用療法のための処置計画。(E)MC38腫瘍細胞をC57BL/6マウス(n=5~8/群)の側腹に皮下接種した。腫瘍担持マウス(約50~100mm
3)を、β-lap(30mg/kg、i.p.)で抗PD-L1ベースのチェックポイント遮断と共に、または遮断なしで6回全身処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターし、処置後の無腫瘍マウスの数を示した。(
図6F)
図6Eにおける併用処置によるMC38腫瘍担持マウスの生存曲線。(
図6G、
図6H)MC38-OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(約150 mm
3、n=4/群)を、β-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回、または抗PD-L1(100μg、i.p.)で3回、単独または併用で局所処置した。最初の処置の12日後、腫瘍浸潤CD45
+細胞およびリンパ球をフローサイトメトリーで分析し(
図6G)、脾臓中のOT-1抗原特異的T細胞をIFNγ ELISPOT検定で判定した(
図6H)。データを2~3つの別々の実験からの平均±SEMで示す。二元配置分散分析(
図6B、
図6C、
図6E、
図6Gおよび
図6H)または対数順位検定(
図6F)で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図7】NQO1生体内活性化可能薬物による改善された標的療法のための抗腫瘍免疫応答活性化のための推奨モデル。
【
図8】
図8A~E:β-lapは腫瘍特異的ROSを誘導し、カスパーゼ非依存的プログラム壊死を惹起する。(
図8A)複数のマウス腫瘍株におけるNQO1発現を表示の通りに免疫ブロットした。(
図8B)NQO1
+細胞(MC38、TC-1、およびAg104Ld)およびNQO1
-細胞(B16およびPan02)をβ-lap±DIC(50μM)で3時間処理した。5日後に薬物を除去し、生存を評価した。(
図8C)相対H
2O
2レベルを、表示の用量のβ-lapで3時間処理した様々な細胞で、CellRox-Gloを用いて評価した。値をDMSO処理対照細胞に対して標準化した。(
図8D)TC-1細胞のβ-lapへの12時間の曝露と、その後のPARP-1およびカスパーゼ-3レベルをウェスタンブロット検定で分析した。(
図8E)TC-1細胞のβ-lap(4μM)への12時間の曝露の写真。
【
図9】
図9A~B:β-lapの抗腫瘍機能はCD8
+ T細胞に依存するが、CD4
+ T細胞には依存しない。(
図9A)C57BL/6 WTまたはrag-/-マウス(n=5/群)に6×10
5 MC38細胞を皮下(s.c.)接種し、第9日、第12日および第15日に0.3mgのβ-lapまたは媒体で腫瘍内(i.t.)処置した。(
図9B)MC38腫瘍担持C57BL/6マウスを、前述のとおりにβ-lapで処置した。CD4枯渇(クローンGK1.5)またはCD8枯渇(クローン2.43)抗体(200μg)を、第8日に開始して、週に2回腹腔内投与した。腫瘍増殖を週に2回測定した。二元配置分散分析で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図10】
図10A~C:β-Lapは、STING依存性DNAセンシングおよびI型IFNシグナル伝達に依存性の腫瘍退縮を誘導する。(
図10A)C57BL/6 WTマウス(n=5/群)に6×10
5 MC38細胞を皮下(s.c.)接種し、第14日、第16日、第18日および第20日に0.1mgのβ-lapまたは媒体で腫瘍内(i.t.)処置した。抗IFNAR遮断抗体(150μg)を、第13日に開始して、週に2回i.p.投与した。(
図10B~C)C57BL/6 WT IFNAR
-/-またはSTING
mut/mutマウス(n=5/群)にMC38細胞を皮下(s.c.)接種し、第9日、第12日および第15日に0.3mgのβ-lapまたは媒体で腫瘍内(i.t.)処置した。二元配置分散分析で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図11】
図11A~D:β-Lap誘導性好中球浸潤は抗腫瘍免疫応答に寄与する。(
図11A~B)β-lap処理3日後に、MC38(
図11A)またはTC-1(
図11B)腫瘍組織から単一細胞を誘導した。次いで、CD11b+ Gr1+細胞の頻度をフローサイトメトリーで分析した。(
図11C~D)C57BL/6 WTマウス(n=5/群)に6×10
5 MC38(
図11C)または1×10
5 TC-1(
図11D)細胞を皮下(s.c.)接種し、第9日、第12日および第15日に0.3(mg)のβ-lapまたは媒体で腫瘍内(i.t.)処置した。抗Ly6G遮断抗体(200μg)を、第8日に開始して、週に2回腹腔内投与した。腫瘍増殖を週に2回測定した。データを2~3つの別々の実験からの平均±SEMで示す。二元配置分散分析で判定して、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図12】
図12A~B:低用量のβ-Lapは免疫チェックポイント遮断(抗PD-L1)療法と相乗作用する。(
図12A)C57BL/6J WTマウス(n=5/群)に6×10
5 MC38細胞を皮下(s.c.)接種し、媒体または0.1mgのβ-Lapで抗PD-L1(アテゾリズマブ)と共に、または抗体なしで3日毎に4回注射して腫瘍内(i.t.)処置した。処置を、腫瘍体積が>100mm
3となった時点で開始した。100μgの抗PD-L1(クローン10F.9G2)またはアイソタイプ対照抗体(クローンLTF-2)を、β-Lap処置の1日前に腹腔内(i.p.)注射した。(
図12B)同じMC38腫瘍担持マウスを媒体または30mg/kgのβ-Lapで抗PD-L1(アテゾリズマブ)と共に、または抗体なしで3日毎に6回注射して腹腔内(i.p.)処置した。処置を、腫瘍体積が>50mm
3となった時点で開始した。腫瘍直径を週に2回ノギスで測定した。腫瘍体積を平均±SDで示す。*p<0.05、**p<0.01、***P<0.001。
【
図13】
図13A~B:低用量のβ-lapによる皮下マウス癌の放射線増感。(
図13A)C57BL/6J WTマウス(n=5/群)に6×10
5 MC38細胞を皮下(s.c.)接種し、媒体、IR(10Gy)または0.1mgのβ-lapでIRと共に、またはIRなしで3日毎に3回注射して腫瘍内(i.t.)処置した。処置を、腫瘍体積が>100mm
3となった時点で開始した。(
図13B)同じMC38腫瘍担持マウスを媒体IR(10Gy)または30mg/kgのβ-LapでIRと共に、またはIRなしで1日おきに6回注射して腹腔内(i.p.)処置した。処置を、腫瘍体積が>50mm
3となった時点で開始した。IRをβ-lap処置の前に行った。腫瘍直径を週に2回ノギスで測定した。腫瘍体積を平均±SDで示す。*p<0.05、**p<0.01、***P<0.001。
【
図14】
図14A~H:IB-DNQはマウス癌細胞をNQO1-依存的様式で死滅させ、NAD+/ATP枯渇およびDNA損傷を誘導する。(
図14A~C)NQO1
+細胞MC38(A)およびTC-1(B)およびNQO1
-細胞B16(C)を様々な用量のIB-DNQ±DIC(50μM)で2時間処理した。薬物を除去し、生存を6日後に評価した。(
図14D)複数のマウス腫瘍株におけるNQO1発現を、表示のとおりに免疫ブロットした。(
図14E~F)相対NAD
+(E)またはATP(F)レベルを、様々な用量のIB-DNQに2時間曝露したTC-1細胞で評価した。値をDMSO処理対照細胞に対して標準化した。(
図14G~H)TC-1細胞をIB-DNQ(0.25μM)に60分間曝露し、細胞を以下について評価した:アルカリ性コメット検定を用いての全DNA損傷(
図14G)。a.u.におけるコメットテールの長さを表示の時点でモニターし;DSBを表示の時点で免疫蛍光を用いてγH2AXフォーカス/核により定量した(
図14H)。グラフは
図14A~C、
図14Eおよび
図14Fにおける3つの実験からの平均±SDである。スチューデントt検定を実施した。*p<0.05、**p<0.01、***P<0.001。
【
図15】
図15A~B:IB-DNQは適応免疫系に依存性の腫瘍退縮を誘導する。(
図15A)C57BL/6J WTまたはrag-/-マウス(n=5/群)に6×10
5 MC38細胞を皮下(s.c.)接種し、第10日、第12日、第14日および第16日に0.15mgのIB-DNQまたは媒体で腫瘍内(i.t.)処置した。(
図15B)C57BL/6J WTまたはrag-/-マウス(n=5/群)に1×10
5 TC-1細胞を皮下(s.c.)接種し、第10日、第12日、第14日および第16日に0.15mgのIB-DNQまたは媒体で腫瘍内(i.t.)処置した。腫瘍直径を週に2回ノギスで測定した。腫瘍体積を平均±SDで示す。*p<0.05、**p<0.01、***P<0.001。
【
図16】
図16A~B:IB-DNQは免疫チェックポイント遮断(抗PD-L1)療法と相乗作用する。C57BL/6J WTマウス(n=5/群)に6×10
5 MC38細胞を皮下(s.c.)接種し、媒体、抗PD-L1(アテゾリズマブ)または0.05mgのIB-DNQで抗PD-L1と共に、または抗体なしで第10日、第13日、第16日および第19日に腫瘍内(i.t.)処置した。100μgの抗PD-L1(クローン10F.9G2)またはアイソタイプ対照抗体(クローンLTF-2)を、第9日に開始して3日毎に腹腔内(i.p.)注射した。腫瘍直径を週に2回ノギスで測定した。腫瘍体積が1000mm
3に達した時点でマウスを屠殺した。(
図16A)代表的マウス腫瘍体積(平均±SD)。(
図16B)カプラン・マイヤー生存曲線。*p<0.05、**p<0.01、***P<0.001。
【
図17】
図17A~I:(
図1A~Jに関連)。NQO1生体内活性化可能薬物β-lapはインビトロおよびインビボでマウス腫瘍細胞をNQO1-依存的様式で死滅させる。(
図17A)異なるマウス癌細胞におけるNQO1発現をウェスタンブロット検定で判定した。(
図17B)CRISPRベースのNQO1ノックアウトを有するMC38細胞の異なるクローンにおけるNQO1発現をウェスタンブロット検定で判定した。(
図17C)MC38細胞(NQO1 WTまたはKO)を、β-lapで3時間処理し、続いて洗浄し、新鮮培地に交換した。48時間後、細胞生存性をスルホローダミンB(SRB)検定で判定した。(
図17D)pCMV-NQO1発現ベクターを安定に有するB16細胞の異なるクローンにおけるNQO1発現をウェスタンブロット検定で判定した。(
図17E、
図17F)B16細胞(NQO1ヌルまたは安定過剰発現)β-lapでジクマロール(DIC、50μM)と共に、またはDICなしで3時間処理し、続いて洗浄し、培地を交換した。48時間後、細胞生存性をSRB検定で判定した。(
図17G)NQO1過剰発現B16細胞(クローン#3および#4)をβ-lapに3時間曝露した。カタラーゼ(1000 U/ml)を加え、48時間後に細胞生存性を評価した。(
図17H)C57BL/6マウス(n=5/群)にTC-1細胞を移植し、β-lap(0.1または0.3mg)で1日おきに4回腫瘍内処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターした。(
図17I)C57BL/6マウス(n=4/群)に親B16細胞(NQO1ヌル)またはNQO1安定過剰発現B16細胞(クローン#1および#4)を移植し、β-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。データを平均±SEMで示す。独立スチューデントt-検定(
図17G)または二元配置分散分析(
図17Hおよび
図17I)で判定して、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図18】
図18A~D:(
図2A~Fに関連)。β-Lap媒介性抗腫瘍効果は免疫媒介性死滅に依存する。(
図18A)B16 NQO1 #1細胞をC57BL/6 WTおよびRag1KOマウス(n=5/群)にそれぞれ皮下移植した。腫瘍担持マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。(
図18B)β-lap処置の7日後の腫瘍微小環境における免疫細胞の変化。C57BL/6マウス(n=4/群)にMC38細胞を移植し、0.3mgのβ-lapで2回腫瘍内処置した。最後の処置の7日後、腫瘍組織を摘出して消化し、免疫細胞をフローサイトメトリーで分析した(独立スチューデントt検定を用いて変化の有意性を分析した、*P<0.05、**P<0.01)。(
図18C)C57BL/6マウスにMC38細胞を移植し、β-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。T細胞枯渇のために、200μgの抗CD4または抗CD8抗体を処置中3日間隔で4回注射した。(
図18D)48穴プレート中で増殖させたNQO1陽性ヒト肺癌株A549をβ-lap(0~6μM)±ジクマロール(DIC、50μM)に3時間曝露し、4日後に細胞生存をSRB検定で評価した。データを平均±SEMで示す。
【
図19】
図19A~C:(
図4A~Fに関連)。TLR4/MyD88経路がβ-lapの抗腫瘍効果に必要であるが、TLR9シグナル伝達は必要ではない。(
図19A~B)MC38-OVA担持マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で2回処置した。6日後、単一細胞消化(
図19A)およびRNA抽出(
図19B)両方のために腫瘍組織を採取した。(
図19A)24時間の培養後、懸濁した細胞上清から分泌されたIFNβをELISAで測定した。(
図19B)IFNα1、IFNγ、TNFαおよびCXCL10のmRNAレベルをリアルタイムPCR検定で判定した。(
図19C)MC38細胞をMyd88
-/-、Tlr4
-/-およびTlr9
-/- C57BL/6マウスにそれぞれ移植した。次いで、腫瘍担持マウスをβ-lap(0.3mg、i.t.)で1日おきに4回処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターした。データを平均±SEMで示す。独立スチューデントt検定で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図20】
図20A~F:(
図6A~Hに関連)。局所および全身β-lap処置はいずれも抗PD-L1免疫チェックポイント遮断と相乗作用し得る。(
図20A)MC38腫瘍細胞をC57BL/6マウス(n=5/群)の側腹に皮下接種した。進行腫瘍(約150~200mm
3)担持マウスを、β-lap(0.3mg、i.t.)で、3回の抗PD-L1ベースのチェックポイント遮断(100μg、i.p.)と共に、または遮断なしで4回局所処置した。腫瘍増殖を週に2回モニターし、各群の個々のマウスの増殖曲線を示した。(
図20B)MC38腫瘍細胞をC57BL/6マウス(n=5/群)の側腹に皮下接種した。進行腫瘍(約100mm
3)担持マウスを、低用量のβ-lap(0.1mg、i.t.)でPD-L1ベースのチェックポイント遮断と共に、または遮断なしで4回局所処置した。(
図20C、
図20D)MC38腫瘍担持マウス(約50~100mm
3、n=5~8/群)を、β-lap(30mg/kg、i.p.)でPD-L1ベースのチェックポイント遮断と共に、または遮断なしで6回全身処置した。腫瘍増殖(
図20C)および体重(
図20D)を週に2回モニターした。各群の個々のマウスの増殖曲線を示した。(
図20E、
図20F)安定NQO1過剰発現を示すB16細胞(混合クローン#1、#3および#4)をC57BL/6マウスに皮下接種した。腫瘍担持マウス(約100mm
3)を、β-lap(0.3mg、i.t.)で3回の抗PD-L1ベースのチェックポイント遮断(150μg、i.p.)と共に、または遮断なしで4回局所処置した。処置計画を示し(
図20E)、腫瘍増殖曲線をモニターした(
図20F)。データを少なくとも2つの別々の実験からの平均±SEMで示す。二元配置分散分析で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図21】
図21A~F:IB-DNQは強力な腫瘍特異的ROS産生および広範なDNA損傷によるNQO1
+腫瘍細胞死を選択的に誘導する。(
図21A)4時間のIB-DNQ処理後のマウス細胞株の生存性。TC-1、Ag104LdおよびMC38細胞は内因性NQO1を発現するが、Pan02およびB16細胞はNQO1ヌルである。(
図21B)4時間のIB-DNQ処理後のNQO1 KO(MC38 NQO1
-/-)およびNQO1過剰発現(B16 NQO1
+)細胞の生存性。(
図21C)IB-DNQに1時間曝露した後のMC38細胞におけるROSレベル。(
図21D~E)DNA二本鎖切断をコメット検定(
図21D)およびγH2AXフォーカス/核免疫蛍光(
図21E)により評価した。(
図21F)IB-DNQに4時間曝露した後のMC38細胞死を、フローサイトメトリー分析を用いて7AADおよびアネキシンV染色により判定した。(
図21A)、(
図21B)データを3つの別々の実験(6回反復/各実験)からの平均±SDで示し;(
図21C~F)データを3つの別々の実験からの平均±SDで示す。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;NS、有意ではない。
【
図22】
図22A~F:IB-DNQ媒介性抗腫瘍効果は免疫系に関与する。6×10
5 MC38または8×10
5 MC38 NQO1 KO細胞をRag1
-/-、C57BL/6、およびNSGマウス(n=5/群)にそれぞれ皮下移植した。腫瘍体積が50mm
3に達した後、腫瘍担持マウスをIB-DNQ(12mg/kg、i.t.)または20%HPβCD(媒体)で1日おきに4回処置した。腫瘍体積および生存を評価した。(
図22A)WT C57BL/6およびNSGマウスにおけるMC38の腫瘍体積。(
図22B)MC38腫瘍担持WT C57BL/6およびNSGマウスの生存曲線。(
図22C~D)WT C57BL/6およびRag1
-/-マウスにおけるそれぞれMC38およびTC-1の腫瘍体積。(
図22E~F)C57BL/6マウスにおけるMC38およびMC38 NQO1 KOモデルの腫瘍体積および生存分析。データを少なくとも2つの別々の実験からの平均±SDで示す。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;NS、有意ではない。
【
図23】
図23A~D:IB-DNQ媒介性抗腫瘍効果は腫瘍微小環境に影響する。6×10
5 MC38細胞をC57BL/6マウス(n=3/群)に皮下移植した。腫瘍体積が50mm
3に達した後、腫瘍担持マウスをIB-DNQ(12mg/kg、i.t.)または媒体で1日おきに4回処置した。最後のIB-DNQ注射の24時間後、腫瘍を採取した。(
図23A)媒体およびIB-DNQ処置腫瘍からの腫瘍浸潤免疫細胞のフローサイトメトリー分析。(
図23B)媒体およびIB-DNQ処置腫瘍からの免疫集団の定量。(
図23C)IB-DNQ存在下/非存在下でのT細胞増殖。CFSE標識した脾細胞を致死量のIB-DNQで4時間処理し、続いて洗浄し、抗CD3(1μg/ml)および抗CD28(2μg/ml)で48時間刺激し、次いで増殖性CD8 T細胞をフローサイトメトリー検定で分析した。(
図23D)T細胞におけるIB-DNQの効果。未処置(n=3/群)および腫瘍担持(n=3/群)マウスからの脾細胞を異なる濃度のIB-DNQに4時間曝露し、続いて洗浄し、培地を交換した。24時間後、細胞死をフローサイトメトリーで分析した。同じ処理をしたAg104細胞を対照として用いた。データを2つの別々の実験からの平均±SDで示す。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05、**P<0.01;NS、有意ではない。
【
図24】
図24A~F:CD8
+およびCD4
+ T細胞はIB-DNQ媒介性抗腫瘍効果にとって重要である。6×10
5 MC38細胞をC57BL/6マウス(n=5/群)に皮下移植した。腫瘍体積が50mm
3に達した後、腫瘍担持マウスをIB-DNQ(12mg/kg、i.t.)または媒体で1日おきに4回処置した。CD4
+および/またはCD8
+ T細胞枯渇のために、200μgの抗CD4および/またはCD8
+抗体を処置中3日間隔で3回腹腔内注射した。(
図24A~B)IB-DNQ±抗CD4抗体により/なしで処置したMC38担持マウスの腫瘍体積および生存分析。(
図24C~D)IB-DNQ±抗CD8抗体により/なしで処置したMC38担持マウスの腫瘍体積および生存分析。(
図24E~F)IB-DNQ±抗CD4および抗CD8抗体により/なしで処置したMC38担持マウスの腫瘍体積および生存分析。データを少なくとも2つの別々の実験からの平均±SDで示す。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;NS、有意ではない。
【
図25】
図25A~E:IB-DNQは腫瘍ICDおよび樹状細胞媒介性T細胞交差提示を誘導する。(
図25A)IB-DNQ処置後の細胞培養上清中に放出されたHMGB1のレベル。MC38、MC38 NOQ1
-/-、B16、およびB16 NOQ1
+細胞をIB-DNQで4時間処理し、続いて培地を交換して24時間増殖させ、培養上清を採取してHMGB1レベルをELISAで判定した。(
図25B~C)IFN-αおよびIFN-βの相対発現。腫瘍試料は
図23Aと同じものであり、全RNA抽出は製造者の指示に従って行い、cDNAへの逆転写後、qPCRを実施した。(
図25D~E)IFN-γによって示されるT細胞応答。6×10
5 MC38または8×10
5 MC38-OVA細胞をC57BL/6マウス(n=3/群)に移植した。腫瘍が50mm
3に達した後、マウスをIB-DNQまたは媒体で1日おきに4回処置し、最後の投与の24時間後、腫瘍担持マウスから単離した脾細胞を培地または60Gyで照射したMC38細胞(
図25D)もしくはOT-1(
図25E)で刺激した。データを少なくとも2つの別々の実験からの平均±SDで示す。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図26】
図26A~H:IB-DNQは伝統的な免疫記憶に代わり自然免疫記憶を誘導する。未処置(n=5/群)およびIB-DNQ治療した無MC38腫瘍(n=7/群)C57BL/6マウスを、完全拒絶の60日後に原発腫瘍の反対側に3×10
6 MC38細胞で皮下に再チャレンジした。腫瘍が再度根絶された30日後にこれらの無腫瘍マウスからの臓器を採取した。(
図26A~B)MC38モデルの腫瘍体積および生存分析。(
図26C~D)異なる臓器中の記憶CD8
+ T細胞(
図26C)およびCD4
+ T細胞(
図26D)。(
図26E)リンパ節(LN)中のCD44
+ DC。(
図26F)無腫瘍(TF)または腫瘍担持マウスのLNからのDCを、IB-DNQ(1μM)で5時間誘導した抗原で刺激し、次いでDC上のCD44発現を評価した。(
図26G)TFまたは腫瘍担持マウスの脾臓から分離したCD8
+ T細胞をCFSEで標識し、IB-DNQ(1μM)で48時間誘導した抗原と共培養した。T細胞増殖をフローサイトメトリーで判定した。(
図26H)CFSE標識した脾細胞をTFまたは腫瘍担持マウスのLNからの細胞と抗原存在下で共培養し、抗CD3(1μg/ml)、および抗CD28(2μg/ml)で48時間刺激し、T細胞増殖をフローサイトメトリーで判定した。データを3つの別々の実験からの平均±SDで示す。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;NS、有意ではない。
【
図27】
図27A~B:IB-DNQ処置後のTMEにおけるPD-L1アップレギュレーション。6×10
5 MC38細胞をC57BL/6マウス(n=5/群)に皮下移植した。腫瘍体積が50mm
3(小)または150mm
3(大)に達した後、腫瘍担持マウスをIB-DNQ(12mg/kg、i.t.)または媒体で1日おきに4回処置した。(
図27A~B)最後のIB-DNQ注射の24時間後、小腫瘍(
図27A)または進行腫瘍(
図27B)を採取した。CD45
+免疫細胞またはCD45
-腫瘍細胞中のPD-L1タンパク質レベルをフローサイトメトリーで測定した。統計分析を独立スチューデント両側t検定を用いて実施した。*P<0.05;NS、有意ではない。
【
図28】
図28A~F:IB-DNQの抗PD-L1との併用療法はチェックポイント遮断抵抗性を克服する。(
図28A~D)小(50mm
3、赤線)または進行(150mm
3、青線)MC38腫瘍担持マウスをIB-DNQ(12mg/kg、i.v.)もしくは媒体で1日おきに4回注射(
図28A~B)、またはmIgGもしくは抗PD-L1で3回注射(
図28C~D)して処置した。(
図28E~F)MC38腫瘍担持マウス(150mm
3)をIB-DNQ、抗PD-L1またはIB-DNQ+抗PD-L1で1日おきに4回注射して処置し、媒体はmIgGまたはHPβCDであった。腫瘍体積(
図28A、28Cおよび28E)および全生存(
図28B、28Dおよび28F)を測定した。腫瘍増殖を週に2回測定した。データを3つの別々の実験からの平均±SDで示す。カプラン・マイヤー生存曲線をPrism 8ソフトウェアにより全生存について規定した。二元配置分散分析で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。NS、有意ではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明者らの以前の研究により、NQO1生体内活性化可能薬物(β-lapおよびIB-DNQ)は広範なDNA損傷およびPARP1駆動腫瘍プログラム壊死を引き起こし得るが、同時に免疫不全マウスにおける腫瘍抑制を誘導することが明らかになった。積極的な化学療法または放射線療法計画内での有効性を高めるために、これらのNQO1生体内活性化可能薬物の致死未満量の有効性を高める戦略が求められている。ここで、本発明者らは、好中球媒介性自然免疫およびCD8媒介性適応免疫系の両方が刺激され、免疫適格マウスにおけるNQO1生体内活性化可能薬物のより有効な抗腫瘍効果をもたらすことを示す。また、NQO1生体内活性化可能薬物は、免疫原性細胞死(ICD)を引き起こし、損傷関連分子パターン(DAMP)放出および食細胞/APC(抗原提示細胞)動員を誘導することができ、これらは次いで抗原/DNA取り込みおよびI型インターフェロン(IFN)産生の増大を通じて、腫瘍増殖の抑制のための細胞傷害性T細胞(CTL)の交差提示を促進することも明らかにした(
図7)。本試験は、NQO1生体内活性化可能薬物によって誘導される腫瘍特異的活性酸素種(ROS)およびDNA損傷がいかにして抗腫瘍免疫を刺激するか、ならびにこれらの応答の活性化が腫瘍標的療法の有効性を改善し得るかどうかを示す。NQO1生体内活性化可能薬物と、T細胞チェックポイント遮断などの適応免疫を活性化するアプローチとの組み合わせは、永続性のある有効性および患者の利益を提供することになる。本開示のこれらおよび他の局面を以下に詳細に示す。
【0017】
I. 定義
一般に、本明細書において用いられる用語および語句はそれらの技術分野において認められた意味を有し、これらは標準の教科書、参照文献および当業者には公知の文脈を参照することによって見出すことができる。そのような当技術分野において認められた意味は、Hawley's Condensed Chemical Dictionary 14th Edition, by R.J. Lewis, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 2001などの技術辞書を参照することによって得てもよい。
【0018】
BER、塩基除去修復;SSBR、一本鎖切断修復;DSBR、二本鎖切断修復。
【0019】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないと示さないかぎり、複数の言及を含む。したがって、例えば、「化合物」への言及はそのような化合物の複数を含み、したがって化合物Xは複数の化合物Xを含む。特許請求の範囲は任意の要素を除外するよう立案され得ることがさらに留意される。したがって、この言明は、特許請求の範囲の要素の詳述または「負」の限定の使用と連結して、「単に」、「のみ」などの排他的用語の使用のための先行する基礎として役立つことが意図される。
【0020】
「および/または」なる用語は、この用語が関連する項目の任意の1つ、項目の任意の組み合わせ、または項目のすべてを意味する。「1つまたは複数の」なる語句は、特にその使用の文脈において読まれる場合、当業者には容易に理解される。例えば、フェニル環上の1つまたは複数の置換基とは、1~5つ、または、例えば、フェニル環が二置換されている場合は、1~4つを意味する。
【0021】
「約」なる用語は、指定の値の±5%、±10%、±20%、または±25%の変動を意味し得る。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの態様において、45~55パーセントの変動を有し得る。整数の範囲について、「約」なる用語は、範囲のそれぞれの端で挙げられる整数よりも大きいおよび/または小さい1つまたは2つの整数を含み得る。本明細書において特に記載がないかぎり、「約」なる用語は、個々の成分、組成物、または態様の機能性に関して同等である、列挙した範囲に近い値、例えば、重量パーセンテージを含むことが意図される。
【0022】
当業者であれば理解されるとおり、成分、分子量などの性質、反応条件などの量を表すものを含む、すべての数字は近似であり、「約」なる用語によってすべての場合に任意に改変されていると理解される。これらの値は、本明細書における記載の教示を用いて、当業者により得ようとされる所望の性質に応じて変動し得る。そのような値は本質的に、それらの各試験法において見られる標準偏差から必ず生じる変動性を含むことも理解される。
【0023】
本発明は多くの異なる形態を取り得るが、本発明の原理の理解を促進するために、ここで図面に例示する態様を参照し、これらを説明するために特定の用語を用いることになる。それにもかかわらず、それによって本発明の範囲の限定が意図されないことが理解されよう。記載する態様の任意の変更およびさらなる改変、ならびに本明細書に記載の本発明の原理の任意のさらなる適用は、本発明が関連する技術分野の当業者には通常想起されるとおりに企図される。
【0024】
置換基の群が本明細書において開示される場合、その群のメンバーの任意の異性体、鏡像異性体、およびジアステレオマーを含む、その群およびすべての部分群のすべての個々のメンバーが別々に開示されることが理解される。マーカッシュ群または他の分類を本明細書において用いる場合、群のすべての個々のメンバーならびにその群で可能なすべての組み合わせおよび部分組み合わせは本開示に個別に含まれることが意図される。化合物の特定の異性体、鏡像異性体またはジアステレオマーが、例えば、式または化学名で指定されないような、化合物が本明細書において記載される場合、その記載は個別または任意の組み合わせで記載される化合物の各異性体および鏡像異性体を含むことが意図される。加えて、特に記載がないかぎり、本明細書において開示される化合物のすべての同位体変種は開示に含まれることが意図される。例えば、開示される分子中の任意の1つまたは複数の水素は、重水素またはトリチウムで置き換え得ることが理解されよう。分子の同位体変種は一般に、分子の検定において、ならびに分子またはその使用に関する化学的および生物学的研究において、標準として有用である。そのような同位体変種の作製法は当技術分野において公知である。化合物の特定の名称は、当業者であれば同じ化合物を異なるように命名し得ることが公知であるため、例示であることが意図される。
【0025】
本明細書において範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、炭素鎖範囲、または組成もしくは濃度範囲が示される場合はいつでも、すべての中間範囲および部分範囲、ならびに所与の範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に個別に含まれることが意図される。本記載に含まれる範囲または部分範囲内の任意の部分範囲または個々の値は、本発明の態様から任意に除外され得ることが理解されよう。
【0026】
本明細書において用いられる「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「特徴付けられる」と同義で、包括的または開放式であり、さらなる、列挙していない要素または方法段階を除外しない。本明細書において用いられる「からなる」は、請求項要素において指定されていない任意の要素、段階、または成分を除外する。本明細書において用いられる「本質的に~からなる」は、請求項の基本的および新規特徴に実質的に影響をおよぼさない、材料または段階を除外しない。本明細書におけるそれぞれの場合に、「含む」、「本質的に~からなる」および「からなる」なる用語の任意のものは他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。本明細書において例示的に記載される本発明は、適切には、本明細書において具体的に開示されない任意の要素または限定なしで実施してもよい。
【0027】
「化学療法剤」とは、癌細胞、癌細胞の集団、腫瘍、または他の悪性組織の成長、増殖、または拡散を低減または防止することができる任意の物質を意味する。この用語は任意の抗腫瘍または抗癌剤を含むことも意図される。
【0028】
本発明の処置法に関する化合物の「治療的有効量」とは、所望の投与計画の一部として(ヒトなどの哺乳動物に)投与した場合に、例えば、任意の医学的処置に適用可能な妥当な損益比で、処置する障害もしくは状態、または美容的目的のための、臨床的に許容される標準に従って、症状を緩和し、状態を改善し、または疾患状態の発症を遅らせる、製剤中の化合物の量を意味する。
【0029】
「処置すること」、「処置する」、および「処置」なる用語は、(i)疾患、病的または医学的状態が起こるのを防ぐこと(例えば、予防);(ii)疾患、病的もしくは医学的状態を阻害すること、またはその発生を停止させること;(iii)疾患、病的または医学的状態を軽減すること;および/または(iv)疾患、病的または医学的状態に関連する症状を減弱することを含む。したがって、「処置する」、「処置」、および「処置すること」なる用語は、予防に拡大することができ、処置中の状態または症状の進行または重症度を防止する、防止、防止すること、低下させること、停止させること、または逆転させることを含み得る。したがって、「処置」なる用語は、適宜、医学的、治療的、および/または予防的投与を含み得る。「処置すること」または「処置」なる用語は、状態の症状、臨床徴候、および根元的病態を、対象の状態を改善または安定化させる様式で、逆転させること、低減すること、または停止させることを含み得る。
【0030】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」なる用語は、疾患、感染、状態、または細胞群の増殖または進行を遅延させること、休止させること、または逆転させることを意味する。阻害は、処置または接触なしで起こる増殖または進行に比べて、例えば、約20%、40%、60%、80%、90%、95%、または99%を超え得る。
【0031】
「接触すること」なる用語は、例えば、生理的反応、化学反応、または物理的変化を、例えば、溶液中、反応混合物中、インビトロ、またはインビボで起こさせるために、触れさせる、接触させる、または細胞もしくは分子レベルを含む、すぐ近くに、または極めて接近させる行為を意味する。
【0032】
「曝露すること」なる用語は、当技術分野において広く理解されている定義を含むことが意図される。1つの態様において、この用語は、作用、影響、または状態を受ける、またはさらされることを意味する。例えば、例示にすぎないが、細胞は化学療法剤の薬学的に許容される形態の治療的有効量の作用、影響、または状態にさらされ得る。
【0033】
「癌細胞」なる用語は、当技術分野において広く理解されている定義を含むことが意図される。1つの態様において、この用語は、ヒトまたは動物の癌の臨床状態に寄与し得る、異常に制御された細胞を意味する。1つの態様において、この用語は、ヒトまたは動物の体内または体由来の培養細胞株または細胞を意味し得る。癌細胞は、当技術分野において理解されている、多様な分化した細胞、組織、または器官型のものであり得る。
【0034】
「腫瘍」なる用語は、新生物、典型的には複数の凝集した悪性細胞を含む塊を意味する。
【0035】
以下の基は、本明細書に記載の式において、適宜にR基または架橋基であり得る。
【0036】
「アルキル」なる用語は、好ましくは1~30個の炭素原子を有する、分枝または非分枝飽和炭化水素鎖のモノラジカルを意味する。短鎖アルキル基は、そのすべての異性体を含む、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシル基を含む、1~12個の炭素原子を有するものである。長鎖アルキル基は、12~30個の炭素原子を有するものである。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0037】
アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、および複素環基、ならびにその環式および/または不飽和版は、式IのR基であり得、各基は置換されていてもよい。
【0038】
「置換された」なる用語は、「置換された」を用いた表現で示される基上の1つまたは複数の水素原子が「置換基」で置き換えられていることを示す。「1つまたは複数の」によって意味される数は、置換基が存在する部分から明白であり得る。例えば、1つまたは複数は、例えば、1、2、3、4、5、または6;いくつかの態様において、1、2、または3;および他の態様において、1または2を意味することができる。置換基は示した基の選択肢の1つであり得、または置換される原子の通常の原子価を超えないこと、および置換が安定な化合物を生じることを条件に、当業者には公知の適切な基であり得る。適切な置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、アロイル、(アリール)アルキル(例えば、ベンジルまたはフェニルエチル)、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスフェート、スルフェート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン、およびシアノが含まれる。加えて、適切な置換基は、例えば、-X、-R、-O-、-OR、-SR、-S-、-NR2、-NR3、=NR、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、-NC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NRR、-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2R、-OS(=O)2OR、-S(=O)2NR、-S(=O)R、-OP(=O)O2RR、-P(=O)O2RR、-P(=O)(O-)2、-P(=O)(OH)2、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(S)R、-C(O)OR、-C(O)O-、-C(S)OR、-C(O)SR、-C(S)SR、-C(O)NRR、-C(S)NRR、または-C(NR)NRRであり得、ここで各Xは独立にハロゲン(「ハロ」):F、Cl、Br、またはIであり;かつ各Rは独立にH、アルキル、アリール、(アリール)アルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリール、(ヘテロアリール)アルキル、複素環、複素環(アルキル)、または保護基である。当業者には容易に理解されるとおり、置換基がケト(=O)またはチオキソ(=S)などである場合、置換される原子上の2つの水素原子が置き換わる。いくつかの態様において、前述の置換基の1つまたは複数は、置換される基上の置換基のために潜在価値がある群から除外され得る。
【0039】
「ヘテロアルキル」なる用語は、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、特に記載がないかぎり、多くの場合鎖中に2~14個の炭素、または2~10個の炭素を有し、少なくとも1個の炭素原子とO、N、P、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環式炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味する。ヘテロ原子、O、N、PおよびSならびにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置またはアルキル基が分子の残部に結合している位置にあってもよい。ヘテロアルキル基は、例えば、鎖中に1~約20個の炭素原子を有し得る。例には、--CH2--CH2--O--CH3、--CH2--CH2--NH--CH3、--CH2--CH2--N(CH3)--CH3、--CH2--S--CH2--CH3、--CH2--CH2--S(O)--CH3、--CH2--CH2--S(O)2--CH3、--CH=CH--O--CH3、--Si(CH3)3、--CH2-CH=N--OCH3、--CH=CH--N(CH3)--CH3、O--CH3、--O--CH2--CH3、および--CNが含まれるが、それらに限定されない。ヘテロアルキル基のさらなる例にはアルキルエーテル、二級および三級アルキルアミン、アミド、アルキルスルフィドなどが含まれる。基は末端基または架橋基であってもよい。本明細書において用いられる、架橋基の文脈で用いられる場合の鎖への言及は、架橋基の2つの末端の位置を連結する原子の直接の鎖を意味する。
【0040】
本明細書において用いられる「アルコール」なる用語は、水素原子において1つのヒドロキシル基で置換されたC1-12アルキル部分を含むアルコールと定義され得る。アルコールにはエタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノールなどが含まれる。アルコール中の炭素原子は直鎖、分枝または環式であり得る。
【0041】
「アシル」は、アルキル-CO-基と定義されてもよく、ここでアルキル基は本明細書に記載のとおりである。アシルの例には、アセチルおよびベンゾイルが含まれる。アルキル基はC1-C6アルキル基であり得る。基は末端基または架橋(すなわち、二価)基であり得る。
【0042】
「アルコキシ」とは、-O-アルキル基を意味し、ここでアルキルは本明細書において定義される。好ましくはアルコキシはC1-C6アルコキシである。例には、メトキシおよびエトキシが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0043】
基または基の一部としての「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、直鎖中に好ましくは2~14個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子、最も好ましくは2~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝であってもよい、脂肪族炭化水素基を意味する。基は直鎖中に複数の二重結合を含んでもよく、それぞれの周りの配向は独立にEまたはZである。例示的アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびノネニルが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0044】
基または基の一部としての「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含み、その鎖は直鎖中に2~14個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝であってもよい、脂肪族炭化水素基と定義され得る。例示的構造には、エチニルおよびプロピニルが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0045】
「アルケニルオキシ」とは、--O--アルケニル基を意味し、ここでアルケニルは本明細書において定義されるとおりである。好ましいアルケニルオキシ基はC1-C6アルケニルオキシ基である。基は末端基または架橋基であり得る。
【0046】
「アルキニルオキシ」とは、--O-アルキニル基を意味し、ここでアルキニルは本明細書において定義されるとおりである。好ましいアルキニルオキシ基はC1-C6アルキニルオキシ基である。基は末端基または架橋基であり得る。
【0047】
「アルコキシカルボニル」とは、-C(O)--O-アルキル基を意味し、ここでアルキルは本明細書において定義されるとおりである。アルキル基は好ましくはC1-C6アルキル基である。例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0048】
「アルキルスルフィニル」は、-S(O)-アルキル基と定義されてもよく、ここでアルキルは本明細書において定義されるとおりである。アルキル基は好ましくはC1-C6アルキル基である。例示的アルキルスルフィニル基には、メチルスルフィニルおよびエチルスルフィニルが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0049】
「アルキルスルホニル」とは、-S(O)2-アルキル基を意味し、ここでアルキルは本明細書において定義されるとおりである。アルキル基は好ましくはC1-C6アルキル基である。例には、メチルスルホニルおよびエチルスルホニルが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0050】
「アミノ」とは、-NH2を意味し、「アルキルアミノ」とは、-NR2を意味し、ここで少なくとも1つのRはアルキルであり、第二のRはアルキルまたは水素である。「アシルアミノ」なる用語は、RC(=O)NH-を意味し、ここでRはアルキルまたはアリールである。アルキル基は、例えば、C1-C6アルキル基であり得る。例には、メチルアミノおよびエチルアミノが含まれるが、それらに限定されない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0051】
「アルキルアミノカルボニル」とは、アルキルアミノ-カルボニル基を意味し、ここでアルキルアミノは前述の定義のとおりである。基は末端基または架橋基であり得る。
【0052】
「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの、多くの場合環ごとに3~約9個の炭素を含む、炭素原子3~約30個の飽和または部分飽和、単環式または縮合もしくはスピロ多環式炭素環を意味する。これにはシクロプロピルおよびシクロヘキシルなどの単環式系、デカリンなどの二環式系、ならびにアダマンタンなどの多環式系が含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0053】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、好ましくは環ごとに5~10個の炭素原子を有する、非芳香族単環式または多環式環系と定義されてもよい。例示的な単環式シクロアルケニル環には、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロヘプテニルが含まれる。シクロアルケニル基は1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。基は末端基または架橋基であり得る。
【0054】
アルキルおよびシクロアルキル基は、アルコキシ、アルキルアミン、アルキル ケトン、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルスルホニルおよびアルキルエステル置換基などであるが、それらに限定されない、他の基のアルキル部分上の置換基であり得る。基は末端基または架橋基であり得る。
【0055】
「シクロアルキルアルキル」は、シクロアルキル-アルキル基と定義されてもよく、ここでシクロアルキルおよびアルキル部分は前述のとおりである。例示的モノシクロアルキルアルキル基には、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルおよびシクロヘプチルメチルが含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0056】
「ヘテロシクロアルキル」とは、窒素、硫黄、酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは少なくとも1つの環中に1~3個のヘテロ原子を含む、飽和または部分飽和単環式、二環式、または多環式環を意味する。各環は好ましくは3~10員、より好ましくは4~7員である。適切なヘテロシクロアルキル置換基の例には、ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3-ジアザパン(diazapane)、1,4-ジアザパン、1,4-オキサゼパン、および1,4-オキサチアパン(oxathiapane)が含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0057】
「ヘテロシクロアルケニル」とは、前述のとおりであるが、少なくとも1つの二重結合を含む、ヘテロシクロアルキルを意味する。基は末端基または架橋基であり得る。
【0058】
「ヘテロシクロアルキルアルキル」とは、ヘテロシクロアルキル-アルキル基を意味し、ここでヘテロシクロアルキルおよびアルキル部分は前述のとおりである。例示的ヘテロシクロアルキルアルキル基には、(2-テトラヒドロフリル)メチル、および(2-テトラヒドロチオフラニル)メチルが含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0059】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードなどのハロゲン置換基を意味する。
【0060】
「アリール」なる用語は、親芳香環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される芳香族炭化水素基を意味する。ラジカルは親環系の飽和または不飽和炭素原子に位置し得る。アリール基は6~18個の炭素原子を有し得る。アリール基は1つの環(例えば、フェニル)または複数の縮合環を有し得、ここで少なくとも1つの環は芳香族である(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアンスリル)。典型的アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導される基が含まれるが、それらに限定されない。アリールは、アルキル基について前述したとおり、無置換または置換されていてもよい。
【0061】
「ヘテロアリール」なる用語は、本明細書において、1、2、または3つの芳香環を含み、芳香環中に少なくとも1個の窒素、酸素、または硫黄原子を含み、無置換または、例えば、「置換された」の定義において前述した、1つもしくは複数の、特に1~3つの置換基で置換されていてもよい、単環式、二環式、または三環式環系と定義される。ヘテロアリール基の例には、2H-ピロリル、3H-インドリル、4H-キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β-カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル(imidizolyl)、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、およびキサンテニルが含まれるが、それらに限定されない。1つの態様において、「ヘテロアリール」なる用語は、炭素ならびに非過酸化物酸素、硫黄、およびN(Z)から独立して選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含む、5または6個の環原子を含む、単環式芳香環を意味し、ここでZは存在しないか、またはH、O、アルキル、アリール、もしくは(C1-C6)アルキルアリールである。別の態様において、ヘテロアリールは、それから誘導される環原子約8~10個のオルト縮合二環式複素環、特にベンズ誘導体またはそれにプロピレン、トリメチルチレン、もしくはテトラメチレンジラジカルを縮合することにより誘導されるものを意味する。
【0062】
「複素環」なる用語は、酸素、窒素、および硫黄の群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、「置換された」なる用語で本明細書において定義された、1つまたは複数の基で置換されていてもよい、飽和または部分不飽和環系を意味する。複素環は、1つまたは複数のヘテロ原子を含む単環式、二環式、または三環式基であり得る。複素環基は、環に結合したオキソ基(=O)も含み得る。複素環基の非限定例には、1,3-ジヒドロベンゾフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,4-ジチアン、2H-ピラン、2-ピラゾリン、4H-ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン、およびチオモルホリンが含まれる。
【0063】
本明細書において用いられる「DNQd」なる略語は、DNQの類縁体または誘導体を意味する。
【0064】
R1、R2、R3、およびR4の架橋基または末端基であり得る、さらなる基を以下に記載する。
【0065】
「カーボネートエステル」なる用語は、一般構造R'OC(=O)ORを有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得る。
【0066】
「エステル」なる用語は、一般構造RC(=O)OR'を有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得、または逆も同じである。
【0067】
「ピリジル」基は、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジル基であり得る。
【0068】
「スルフヒドリル」なる用語は、一般構造-S-Hを有する官能基と定義されてもよい。
【0069】
「スルフィニル」なる用語は、一般構造R-S(=O)-R'を有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得、または逆も同じである。
【0070】
「スルホニル」なる用語は、一般構造R-S(=O)2-R'を有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得、または逆も同じである。
【0071】
「ヘキソース」なる用語は、一般化学式C6H12O6を有する、6個の炭素原子を有する単糖と定義されてもよく、1位にアルデヒド官能基を有するアルドヘキソースまたは2位にケトン官能基を有するケトヘキソースが含まれ得る。例示的アルドヘキソースには、DまたはL型いずれかのアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、およびタロースが含まれる。
【0072】
スキームおよび実施例において用いられる略語には下記が含まれ得る:
A549=ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞
ATP=アデノシン三リン酸
β-lap=β-ラパコン
DHE=ジヒドロエチジウム
DNQ=デオキシニボキノン
DNQd=デオキシニボキノンの任意の類縁体または誘導体
ELISA=酵素結合免疫吸着検定法
h=時間
H596=[NCI-H596]ヒト肺腺扁平上皮癌細胞株
HT1080=霊長類線維肉腫細胞株
LD50=死亡を引き起こす確立50%を有する致死用量
LD90=死亡を引き起こす確立90%を有する致死用量
LD100=死亡を引き起こす確立100%を有する致死用量
MCF-7=ヒト乳腺癌細胞株
MDA-MB-231=ヒト乳癌細胞株
MIA-PaCa2=膵臓癌細胞株
mins=分
NADH=ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
NQO1=NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1
NSCLC=非小細胞肺癌細胞
OCR=酸素消費速度
p53=腫瘍抑制タンパク質
PC-3=ヒト前立腺癌細胞株
ROS=活性酸素種
±SE=標準誤差
siRNA=低分子干渉リボ核酸
shRNA=低分子ヘアピン型リボ核酸
μM=マイクロモル濃度
nM=ナノモル濃度
μmol=マイクロモル
【0073】
II. 治療用キノン
DNQは、膵臓癌および非小細胞肺癌を含む広い範囲の治療が困難な癌に対する標的療法のために非常に有望な、広い治療ウィンドウを示す強力な化学療法剤である。癌化学療法におけるかなりの進歩にもかかわらず、ほとんどの癌化学療法剤の選択性の欠如は、大きな制限因子のままである。ほとんどの固形腫瘍、特に非小細胞肺癌細胞(NSCLC)、前立腺癌、膵臓癌、および乳癌で見られる、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ-1(NQO1、DT-ジアホラーゼ、EC 1.6.99.2)レベルの上昇は、本明細書に記載の治療的処置の標的を提供する。NQO1は、ほとんどのキノンを還元して安定なヒドロキノンを生成することが可能な、誘導性解毒第II相2電子オキシドレダクターゼである。ほとんどの場合に、グルタチオントランスフェラーゼが次いでヒドロキノンを解毒し、分泌のためにそれらをグルタチオンで抱合し、より毒性のセミキノンを効果的に回避する。
【0074】
しかし、いくつかのまれな化合物では、NQO1媒介性生体内還元を抗腫瘍活性のために利用することができる。解毒を促進するよりも、NQO1活性は特定のキノンを高細胞毒性種に変換することができる。NQO1に依存するほとんどの抗腫瘍性キノンはDNAアルキル化剤である:(a)マイトマイシンC(MMC);(b)RH1;(c)E09;および(d)AZQ。しかし、これらのDNAアルキル化剤は解毒経路の対象であるだけでなく、亢進または誘導性のDNA修復経路からの抵抗性がそれらの有用性を制限している。さらに、これらの薬物の多くは、正常組織で広範に発現される1電子オキシドレダクターゼの効率的基質である。
【0075】
オルト-ナフトキノンのβ-ラパコン(β-lap、スキーム1)は、培養癌細胞およびマウス異種移植片ならびにインビボで、同所性ヒトまたはマウス腫瘍モデルをNQO1依存的様式で死滅させる。アルキル化キノンとは対照的に、β-lapはNQO1依存的活性酸素種(ROS)生成および酸化ストレスによって細胞死を誘導する。β-lapのNQO1代謝は不安定なヒドロキノンを生じ、これは2つの等価の二酸素によって自発的に酸化されてスーパーオキシドを生成する。
【0076】
【0077】
酸化還元の無益サイクルがこのように確立され、次いでスーパーオキシドレベルの上昇は大量のDNA塩基および一本鎖切断(SSB)損傷を引き起こすが、これらは通常は容易に、かつ速やかに修復される。しかし、β-lap-処理したNQO1過剰発現癌細胞で生じた大規模のDNA損傷は、他の場合には必須の塩基およびSSB修復酵素であるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP1)の過剰活性化をもたらす。次いで、PARP1過剰活性化は、ADPリボシル化によりNAD+/ATPプールの劇的な低減をもたらし、大幅なエネルギー枯渇および細胞死を引き起こす。その結果、NQO1は細胞周期のすべての期で発現されるため、β-lapは、NQO1+癌細胞を、(a)カスパーゼ活性化またはp53状態とは無関係の;(b)bcl-2レベルとは無関係の;(c)BAX/BAK欠乏によって影響されない;(d)EGFR、Rasまたは他の構成性シグナル伝達活性化とは無関係の;および/または(e)増殖に依存しない、特有のプログラム壊死メカニズムによって死滅させる。したがって、β-lapは、魅力的な実験的化学療法剤であり、様々なβ-lap製剤が第I/II相臨床試験で試験されたか、または現在試験中である。
【0078】
デオキシニボキノン(DNQ、スキーム1)は有望な抗新生物剤である。以前のデータは、DNQが酸化ストレスおよびROS生成によって癌細胞を死滅させることを示した。DNQの細胞毒性は、全般的フリーラジカルスカベンジャーであり、グルタチオンの前駆体である、N-アセチルシステインによって部分的に防止された。現在、DNQはβ-lapと同様のNQO1依存的無益サイクルを起こし、ここで酸素が消費され、ROSが生成して、大規模DNA損傷がPARP1過剰活性化を誘発し、プログラム壊死を示す必須のNAD+/ATPヌクレオチドプールの劇的な低減を伴うことが明らかにされている。重要なことに、DNQはβ-lapよりも20~100倍強力で、NQO1- NSCLC細胞に対してNQO1+細胞では治療ウィンドウの有意な増強を示す。DNQによる有効なNQO1依存的死滅が、インビトロでの乳癌、前立腺癌、および膵臓癌モデルでも示されている。さらに、インビトロNQO1は、DNQをβ-lapよりもはるかに効率的に処理し、利用率増大によってその効力が増大することを示している。したがって、DNQはNQO1レベルが上昇した固形腫瘍の処置のための選択的化学療法剤として非常に有望であるが、本明細書に記載の併用療法は、組み合わせの相乗作用により、様々なキノン化合物による有効な治療法を提供することができる。
【0079】
NQO1は固形腫瘍の大多数で過剰発現され、様々なキノン化合物の細胞毒性は主に酵素NQO1の発現上昇に依存するため、キノン化合物およびそれらの誘導体は、固形腫瘍を標的とするアプローチに対するすぐれた手段であり得る。本発明は、本明細書に記載のとおり、新しい癌治療薬として使用し得る多くの新しい細胞毒性化合物を提供する。
【0080】
本開示の前述および他の目的および特徴は、添付の図面を参照しながら進める、以下の詳細な説明からより明白になるであろう。本出願のさらなる態様、形態、特徴、局面、恩典、目的、および利点は、詳細な説明および本明細書と共に提供する図面から明らかになるであろう。
【0081】
NQO1生体内活性化可能薬物(NQO1の基質であるすべてのβ-ラパコンおよびDNQ誘導体)は、膨大なレベルの活性酸素種を、NQO1依存的、腫瘍選択的様式で生成し、腫瘍特異的様式で用いられる、すべてのPARP1阻害剤、DNA二本鎖切断修復阻害剤、ならびに塩基除去修復阻害剤を含む、DNA修復阻害剤の使用を可能にし、両方の薬剤の腫瘍選択的効果をもたらす。DNA修復阻害剤は、一般には、腫瘍選択性の欠如ゆえに失敗している。これらのNQO1生体内活性化可能薬物は、DNA塩基損傷、一本鎖切断および二本鎖切断を含むDNA損傷の腫瘍選択的生成を引き起こすため、DNA修復阻害剤を用いて腫瘍選択的抗腫瘍活性を提供することができる。腫瘍選択的活性および反応には、解糖の劇的な阻害ならびに他の腫瘍選択的代謝阻害が含まれる。
【0082】
NQO1生体内活性化可能薬物を用いて、DNA損傷が生じたことを知らないかぎり明らかでない様式で、ならびに明白ではなく、用いるDNA修復阻害剤に応じて変わる代謝変化および細胞死反応を引き起こす様式で、DNA修復阻害剤を腫瘍選択的にすることができる。例えば、DNQ生体内活性化可能薬物と共に投与したPARP1阻害剤は、エネルギー損失なしに標準のアポトーシス反応を引き起こす。これとは対照的に、DNA二本鎖切断修復、一本鎖切断修復、および塩基除去修復阻害剤は、PARP1過剰活性化を増強し、続いてエネルギー代謝の損失およびプログラム壊死が起こる。
【0083】
PARP-1阻害剤などのDNA修復阻害剤の唯一の現行の使用は、腫瘍特異的合成致死性反応の特有の利用を通じてである(例えば、BRACA1/2変異体腫瘍におけるPARP1阻害剤の使用)。これは、しかし、DNA修復阻害剤の非常に限られた使用であり-乳癌の約5%にすぎない。これとは対照的に、本明細書に記載のアプローチは、NQO1上昇およびカタラーゼレベル低下を有するすべての癌を処置し得る一方で、正常組織はカタラーゼレベル上昇および低レベルのNQO1を有する。本明細書に記載の方法はDNA修復阻害剤の新しい使用を提供し、腫瘍選択的様式でのそれらの使用を可能にするが、NQO1生体内活性化可能薬物を強化もする。両方の薬剤を非毒性用量で用いて、相乗的で腫瘍選択的な有効性反応を提供することができる。
【0084】
今日まで、DNA修復阻害剤は、腫瘍選択的反応および有効性の欠如で失敗している。本明細書に記載の方法はこれらの制限を解決する一方で、NQO1生体内活性化可能薬物を大幅に強化する。方法は2~4分の1の低い用量のNQO1生体内活性化可能薬物の使用も可能にし、これらのNQO1生体内活性化可能薬物の毒性効果(例えば、メトヘモグロビン血症)を解決する。治療的方法において、阻害剤をNQO1生体内活性化可能薬物の前および後に、直前、および任意で前、同時、後、またはその組み合わせで、加えることができる。細胞死反応は用いる阻害剤に依存する。反応は自明ではなく、インビボで追跡するために特定のバイオマーカーを必要とする。
【0085】
本開示は、DNQ化合物、ベータ-ラパコンおよびその誘導体、ならびに癌の処置のための併用療法におけるNQO1生体内活性化可能薬物の使用を提供する。DNQ化合物の例には式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物が含まれる:
式中、
R
1、R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立に-Hまたは-X-Rであり;
各Xは独立に直接結合または架橋基であり、ここで架橋基は-O-、-S-、-NH-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、または式-W-A-W-のリンカーであり、ここで
各Wは独立に-N(R')C(=O)-、-C(=O)N(R')-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N(R')-、-C(=O)-、-(CH
2)
n-、ここでnは1~10であり、または直接結合であり、ここで各R'は独立にH、(C
1-C
6)アルキル、または窒素保護基であり;かつ各Aは独立に(C
1-C
20)アルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
2-C
16)アルキニル、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、-(OCH
2-CH
2)
n-、ここでnは1~約20であり、-C(O)NH(CH
2)
n-、ここでnは1~約6であり、-OP(O)(OH)O-、-OP(O)(OH)O(CH
2)
n-、ここでnは1~約6であり、または2つの炭素の間、もしくは炭素と酸素との間にシクロアルキル、複素環、もしくはアリールが割り込んだ、(C
1-C
20)アルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
2-C
16)アルキニル、もしくは-(OCH
2-CH
2)
n-であり;
各Rは独立にアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、(シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、(シクロアルキル)ヘテロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(アリール)アルキル、(ヘテロアリール)アルキル、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、(アルコキシ)アルキル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、(シクロアルキル)アルコキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、-COR
x、-COOR
x、-CONHR
x、-NHCOR
x、-NHCOOR
x、-NHCONHR
x、-N
3、-CN、-NC、-NCO、-NO
2、-SH、-ハロ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、スルホネート、スルホン酸、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アミノスルホニル、R
xS(O)R
y-、R
xS(O)
2R
y-、R
xC(O)N(R
x)R
y-、R
xSO
2N(R
x)R
y-、R
xN(R
x)C(O)R
y-、R
xN(R
x)SO
2R
y-、R
xN(R
x)C(O)N(R
x)R
y-、カルボキシアルデヒド、アシル、アシルオキシ、-OPO
3H
2、-OPO
3Z
2であり、ここでZは無機カチオン、または糖であり;ここで各R
xは独立にH、OH、アルキルまたはアリールであり、かつ各R
yは独立に基Wであり;ここで任意のアルキルまたはアリールは1つまたは複数のヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、またはハロ基で置換されていてもよい。
【0086】
いくつかの態様において、R1、R2、およびR3がメチルである場合、R4はHまたはメチルではない。他の態様において、R1、R3、およびR4がメチルである場合、R2の基-X-Rは-CH2-OAcではない。一定の態様において、R1、R3、およびR4がメチルである場合、R2のR基はアシルオキシではない。様々な態様において、R1~R4はそれぞれHではない。一定の態様において、R1~R4はそれぞれ、無置換アルキルなどのアルキルではない。いくつかの態様において、R1~R4はそれぞれメチルではない。
【0087】
1つの態様において、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ(C1-20)アルキル基である。いくつかの態様において、(C1-20)アルキル基は(C2-20)アルキル基、(C3-20)アルキル基、(C4-20)アルキル基、(C5-20)アルキル基、または(C10-20)アルキル基である。アルキル基は、例えば、ヒドロキシルまたはホスフェート基で置換され得る。ホスフェート基はホスホン酸またはホスホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、もしくは他の公知の塩などのホスホン酸塩であり得る。
【0088】
R1の特定の値はHである。R2の特定の値はHである。R3の特定の値はHである。R4の特定の値はHである。
【0089】
R1の特定の値はメチルである。R2の特定の値はメチルである。R3の特定の値はメチルである。R4の特定の値はメチルである。メチルは「置換された」なる用語について前述したとおりに置換され得る。
【0090】
式(I)のいくつかの態様において:
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4は2-メチル-プロパンであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はブチルであり;
R1およびR4はメチルであり、かつR3は水素であり;かつR2はエチルであり;
R1およびR2はメチルであり、かつR3は水素であり;かつR4はエチルであり;
R1はメチルであり;R3は水素であり;R2はプロピルであり;かつR4はブチルであり;
R1およびR4はメチルであり;R2はプロピルであり、かつR3は水素であり;
R1はプロピルであり;R2およびR4はメチルであり、かつR3は水素であり;
R1およびR2はエチルであり;R3は水素であり;かつR2はメチルであり;
R1はプロピルであり;R2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はブチルであり;
R1およびR2はプロピルであり;R3は水素であり;かつR4はブチルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はC12アルキルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はtert-ブチルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はヒドロキシプロピルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4は3,3-ジメチルブチル[-CH2CH2C(CH3)2CH3]であり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4は3-メチブチル[-CH2CH2CH(CH3)CH3]であり;
R2およびR4はメチルであり;R3は水素であり;かつR1はエチルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はプロピルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はn-ペンチルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はn-ヘキシルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はイソプロピルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はシクロオクチルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はシクロプロピルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はメチルシクロプロピルであり;
R1およびR2はメチルであり;R3は水素であり;かつR4はエチルシクロプロピルであり;
R1はC12アルキルであり;R2およびR4はメチルであり;かつR3は水素であり;
R1およびR4はメチルであり;R3は水素であり;かつR2はC12アルキルであり;
R1、R2、およびR3はメチルであり;かつR4は-CH2OPO3Na2であり;
R1は-CH2OPO3Na2であり;R2およびR3はメチルであり;かつR4は水素であり;
R1およびR3はメチルであり;R2は-CH2OPO3Na2であり;かつR4は水素であり;
R1およびR2はメチルであり;R3は-CH2OPO3Na2であり;かつR4は水素であり;
R1およびR2はメチルであり;R3は-CH2CH2OPO3Na2であり;かつR4は水素であり;
R1、R2、およびR3はメチルであり;かつR4は-CH2OHであり;
R1は-CH2OHであり;R2およびR3はメチルであり;かつR4は水素であり;
R1およびR3はメチルであり;R2は-CH2OHであり;かつR4は水素であり;
R1およびR2はメチルであり;R3は-CH2OHであり;かつR4は水素であり;または
R1およびR2はメチルであり;R3は-CH2CH2OHであり;かつR4は水素である。
【0091】
式Iの一定の態様において、R1は(C1-4)アルキル基である。一定の場合に、R1は(C1-3)アルキル基である。一定の場合に、R1は(C1-2)アルキル基である。
【0092】
式Iの一定の態様において、R2は(C1-4)アルキル基である。一定の場合に、R2は(C1-3)アルキル基である。一定の場合に、R2は(C1-2)アルキル基である。
【0093】
式Iの一定の態様において、R3は水素である。
【0094】
式Iの一定の態様において、R4は置換されていてもよい(C1-10)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、またはチオールで置換されている。一定の場合に、R4は(C1-10)アルキル基、(C1-8)アルキル基、(C1-6)アルキル基、または(C1-4)アルキル基である。一定の場合に、R4は(C2-6)アルキル基である。一定の場合に、R4は置換(C1-10)アルキル基、置換(C1-8)アルキル基、置換(C1-6)アルキル基、または置換(C1-4)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、またはチオールで置換されている。一定の場合に、R4はヒドロキシルで置換されたアルキル基である。一定の場合に、R4はハロゲンで置換されたアルキル基である。一定の場合に、R4はアミノで置換されたアルキル基である。一定の場合に、R4はチオールで置換されたアルキル基である。
【0095】
式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-4)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は置換されていてもよい(C1-10)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。
【0096】
式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は置換されていてもよい(C1-10)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。
【0097】
式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は(C1-10)アルキル基である。式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は(C1-8)アルキル基である。式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は(C1-6)アルキル基である。式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は(C1-4)アルキル基である。式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は(C2-6)アルキル基である。式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は置換(C1-6)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。式Iの一定の態様において、R1およびR2は独立に(C1-2)アルキル基であり;R3は水素であり;かつR4は置換(C1-4)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。
【0098】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物87またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0099】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物9-253またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0100】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物9-251またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0101】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物10-41またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0102】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物109またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0103】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物107またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0104】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物9-281またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0105】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物9-249またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0106】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物9-255またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0107】
一定の態様において、式Iの化合物は化合物9-257またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0108】
本開示は、式(I)の化合物および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含む薬学的組成物も提供する。担体は、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)存在下の水であり得る。化合物の溶解性は、HPβCDを含まない水中の化合物溶解性に比べて、約100倍、約200倍、約500倍、約1000倍、約2000倍、または約3000倍増大し得る。さらなるDNQ化合物および方法は、国際特許出願番号PCT/US12/59988(Hergenrother et al.)によって記載されている。
【0109】
1つまたは複数の置換基を含む前述の式または基のいずれかに関して、当然のことながら、そのような基は立体的に実現不可能および/または合成的に不可能ないかなる置換または置換パターンも含まないことが理解される。加えて、本開示の化合物は、これらの化合物の置換によって生じるすべての立体化学的異性体を含む。
【0110】
本明細書に記載の化合物の選択された置換基は、再帰的な程度まで存在してもよい。この文脈において、「再帰的置換基(recursive substituent)」とは、置換基がそれ自体の別の実例を列挙してもよいことを意味する。そのような置換基の再帰的性質のために、理論的には、任意の所与の請求項において多数のものが存在し得る。薬品化学および有機化学の分野の技術者は、そのような置換基の総数が意図する化合物の所望の特性によって合理的に限定されることを理解する。そのような特性には、例示のためであり限定するものではないが、分子量、溶解性またはlog Pなどの物理的特性、意図する標的に対する活性などの適用性、および合成の容易性などの実用的な特性が含まれる。
【0111】
再帰的置換基は、本開示の意図される局面である。薬品化学および有機化学の分野の技術者は、そのような置換基の多用性を理解する。再帰的置換基が本開示の請求項において存在する程度まで、総数は前述のように決定されることになる。いくつかの態様において、再帰的置換基は化合物の分子質量が約400~約1600、約450~約1200、約500~約100、約600~約800である程度でのみ存在する。他の態様において、再帰的置換基は化合物の分子質量が2000未満、1800未満、1600未満、1500未満、1400未満、1200未満、1000未満、900未満、800未満、750未満、700未満、または約600未満である程度でのみ存在する。
【0112】
NQO1レベル上昇を有する固形腫瘍患者を、DNQおよび/またはDNQ
d(DNQ化合物)の薬学的活性形態の有効量の投与により処置することができる。以下のスキームはいくつかのより具体的な式を示す
。
【0113】
DNQd-27およびDNQd-28について、Xは式-W-A-W-のリンカーまたは二価のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルヘテロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルコキシ(cycloalkylkoxy)、ヘテロシクロアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、スルホニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アミノスルホニル、もしくはアシルなどの二価の架橋基であり得、これらはそれぞれ置換されていてもよい。
【0114】
DNQd-29について、各Xは独立に式-W-A-W-のリンカーまたはDNQd-27およびDNQd-28について前述した二価の架橋基であり得;かつ各Yは独立に下記であり得る:
(1)ヒドロキシル、(11)アセテート、(21)ニトロソ、
(2)アルデヒド、(12)アミノ、(22)ピリジル、
(3)カルボキシル、(13)アジド、(23)スルフヒドリル、
(4)ハロホルミル、(14)アゾ、(24)スルホン酸、
(5)ヒドロペルオキシ、(15)シアノ、(25)スルホネート、
(6)フェニル、(16)イソシアナト、(26)イソチオシアナト、
(7)ベンジル、(17)ニトレート、(27)ホスフィン、
(8)アルキル、(18)イソニトリル、(28)ホスフェート、
(9)アルケニル、(19)ニトロソオキシ、(29)ハロ、または
(10)アルキニル、(20)ニトロ、(30)ヘキソース。
【0115】
本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は本開示の範囲内であり、所望の薬理活性を保持し、生物学的に有害でない(例えば、塩は過度に毒性、アレルギー性、または刺激性でなく、生物が利用可能である)、酸または塩基付加塩を含む。化合物が、例えば、アミノ基などの塩基性基を有する場合、薬学的に許容される塩は無機酸(塩酸、ヒドロホウ酸、硝酸、硫酸、およびリン酸などの)、有機酸(例えば、アルギネート、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)または酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸などの)と形成され得る。本開示の化合物が、例えば、カルボン酸基などの酸性基を有する場合、アルカリおよびアルカリ土類金属(例えば、Na+、Li+、K+、Ca2+、Mg2+、Zn2+)などの金属、アンモニアもしくは有機アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)または塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジンおよびオルニチン)と塩を形成し得る。そのような塩は、化合物の単離および精製中にインサイチューで、または精製した化合物をその遊離塩基もしくは遊離酸の形で、それぞれ適切な酸もしくは塩基と別々に反応させ、そのようにして生成した塩を単離することによって調製することができる。
【0116】
本明細書に開示する分子の多くは、1つまたは複数のイオン化可能な基(プロトンを除去(例えば、-COOH)もしくは追加(例えば、アミン)することができる、または四級化することができる(例えば、アミン)基)を含む。そのような分子およびその塩のすべての可能なイオン形態は、本明細書の開示に個別に含まれることが意図される。本明細書に記載の化合物の塩に関して、当業者であれば、所与の適用のために本開示の塩の調製に適した、種々の入手可能な対イオンの中から選択することができる。特定の適用において、塩の調製のための所与のアニオンまたはカチオンの選択は、その塩の溶解性を増大または低減させることがある。
【0117】
本明細書に記載の化合物の適切な塩の例には、それらの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩またはラセミ混合物を含むその混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩およびグルタミン酸などのアミノ酸との塩が含まれる。これらの塩は当業者には公知の方法によって調製してもよい。同様に含まれるのは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩などの塩基付加塩、または類似の塩である。本開示の化合物が相対的に塩基性の官能基を含む場合、そのような化合物の中性型を十分な量の所望の酸と、ニートまたは適切な不活性溶媒中のいずれかで接触させることにより、酸付加塩を得ることができる。許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸に由来するもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの有機酸に由来する塩が含まれる。同様に含まれるのは、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツノル(galactunoric)酸などの有機酸の塩である。本開示の一定の具体的化合物は、化合物が塩基または酸付加塩のいずれかに変換されるのを可能にする、塩基性および酸性官能基の両方を含み得る。
【0118】
本開示の一定の化合物は、非溶媒和形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態として存在することができる。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本開示の範囲内に含まれる。本開示の一定の化合物は、複数の結晶形態または非結晶形態で存在してもよい。一般に、すべての物理的形態は、本開示によって企図される使用のために等価であり、本発開示の範囲内であることが意図される。
【0119】
「溶媒和物」なる用語は、1つまたは複数の溶媒分子をその固体構造に結合して有する固体化合物を意味する。溶媒和物は、化合物が溶媒から結晶化するときに生成し得る。溶媒和物は、凝固と同時に1つまたは複数の溶媒分子が固体結晶マトリックスの必須な部分になる場合に生成する。本明細書に記載の式の化合物は溶媒和物、例えば、エタノール溶媒和物であり得る。溶媒和物の別のタイプは水和物である。「水和物」は同様に、1つまたは複数の水分子をその固体または結晶構造に分子レベルで密接に結合して有する固体化合物を意味する。水和物は、化合物が水中で凝固または結晶化する際に生成し得、ここで1つまたは複数の水分子は固体結晶マトリックスの必須な部分となる。本明細書に記載する式の化合物は、水和物であり得る。
【0120】
II. DNQ化合物の作製法
本発明は、本発明の化合物および組成物の作製法にも関する。化合物および組成物は、有機合成の任意の適用可能な技術によって調製することができる。多くのそのような技術は当技術分野において周知である。しかし、公知の技術の多くはCompendium of Organic Synthetic Methods (John Wiley & Sons, New York), Vol. 1, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1971;Vol. 2, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1974;Vol. 3, Louis S. Hegedus and Leroy Wade, 1977;Vol. 4, Leroy G. Wade, Jr., 1980;Vol. 5, Leroy G. Wade, Jr., 1984;およびVol. 6, Michael B. Smith;ならびにMarch's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th Ed. byM.B. Smith and J. March (John Wiley & Sons, New York, 2001), Comprehensive Organic Synthesis; Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry, in 9 Volumes, Barry M. Trost, Ed.-in-Chief (Pergamon Press, New York, 1993 printing) );Advanced Organic Chemistry, Part B: Reactions and Synthesis, Second Edition, Cary and Sundberg (1983);Protecting Groups in Organic Synthesis, Second Edition, Greene, T.W., and Wutz, P.G.M., John Wiley & Sons, New York;およびComprehensive Organic Transformations, Larock, R.C., Second Edition, John Wiley & Sons, New York (1999)などの標準の有機参考書に詳述されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0121】
本開示の組成物のいくつかの例示的調製法を以下に提供する。これらの方法はそのような調製の性質を例示することを意図し、適用可能な方法の範囲を限定することを意図するものではない。さらなる方法および有用な技術は国際公開公報第2013/056073号(Hergenrother et al.)に記載されている。
【0122】
一般に、温度、反応時間、溶媒、後処理手順などの反応条件は、実施する特定の反応に対して当技術分野において一般的なものである。引用する参照材料は、その中で引用される材料と共に、そのような条件の詳細な記載を含む。典型的には、温度は-100℃~200℃であり、溶媒は必要とされる条件に応じて非プロトン性またはプロトン性であり、反応時間は1分~10日間である。後処理は典型的には、任意の未反応の試薬を反応停止することに続いて、水/有機層系の間での分配(抽出)および生成物を含む層の分離からなる。酸化および還元反応は典型的には室温に近い温度(約20℃)で実施するが、金属水素化物還元については、温度を0℃~-100℃に下げることが多い。適当な場合には加熱を用いることもできる。溶媒は典型的には、還元に対しては非プロトン性であり、酸化に対してはプロトン性または非プロトン性のいずれかであってもよい。反応時間は所望の変換が達成されるように調節する。
【0123】
縮合反応は典型的には室温に近い温度で実施するが、非平衡の動力学的に制御された縮合では、低い温度(0℃~-100℃)も一般的である。溶媒はプロトン性(平衡反応で一般的)または非プロトン性(動力学的に制御された反応で一般的)のいずれかであり得る。反応副生成物の共沸除去および無水反応条件(例えば、不活性ガス環境)の使用などの標準の合成技術は当技術分野において一般的で、該当する場合に適用される。
【0124】
保護基。「保護基」、「ブロック基」、または「PG」なる用語は、ヒドロキシまたは他のヘテロ原子に結合した場合に、この基で望ましくない反応が起こるのを防ぎ、通常の化学的または酵素的段階により除去して、ヒドロキシル基を再建することができる、任意の基を意味する。用いる特定の除去可能なブロック基は必ずしも重大ではなく、好ましい除去可能なヒドロキシルブロック基には、例えば、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリデン、フェナシル、メチル メトキシ、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、t-ブチル-ジフェニルシリル(TBDPS)、またはt-ブチルジメチルシリル(TBS))などの通常の置換基、およびヒドロキシル官能基上に化学的に導入し、後に生成物の性質に適合性の緩和な条件で化学的または酵素的方法のいずれかによって選択的に除去することができる任意の他の基が含まれる。式(I)のR基は、本明細書に記載の保護基でもあり得る。
【0125】
適切なヒドロキシル保護基は当業者には公知で、T.W. Greene, Protecting Groups In Organic Synthesis; Wiley: New York, 1981 (''Greene'')およびその中で引用される参照文献、ならびにKocienski, Philip J.; Protecting Groups (Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994)においてより詳細に開示され、これらはいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0126】
保護基は、本開示の方法によって化合物を調製するための合成手順、すなわち経路または方法中に、保護された基との副反応を防止するために利用可能であり、一般に公知で使用され、任意に使用される。大部分は、どの基を保護するか、いつするかの決定、および化学的保護基「PG」の性質は、それに対して保護する反応の化学(例えば、酸性、塩基性、酸化的、還元的または他の条件)および合成の所期の方向に依存することになる。
【0127】
化合物が複数のPGで置換されている場合、保護基は同じである必要はなく、一般に同じではない。一般に、PGはカルボキシル、ヒドロキシル、チオ、またはアミノ基などの官能基を保護するため、したがって副反応を防止し、またはそれ以外に合成効率を促進するために用いることになる。遊離の脱保護された基を生じるための脱保護の順序は、合成の所期の方向および発生する反応条件に依存し、当業者によって決定される任意の順で起こり得る。
【0128】
本開示の化合物の様々な官能基を保護してもよい。例えば、-OH基(ヒドロキシル、カルボン酸、または他の官能基のいずれか)の保護基には「エーテルまたはエステル形成基」が含まれる。エーテルまたはエステル形成基は本明細書に示す合成スキームにおいて化学保護基として機能することができる。しかし、いくつかのヒドロキシルおよびチオ保護基は、当業者には理解されるとおり、エーテルまたはエステル形成基のいずれでもない。カルボン酸保護基および酸のための他の保護基に関するさらなる詳細は、上で引用したGreeneを参照されたい。そのような基には、例としてであって、限定するものではないが、エステル、アミド、ヒドラジドなどが含まれる。
【0129】
III. チェックポイント阻害剤
チェックポイント阻害剤療法は、現在研究中の癌処置免疫療法の一形態である。この治療法は、腫瘍が免疫系による攻撃から自身を守るために使用し得る、免疫チェックポイント、すなわちその作用を刺激または阻害する免疫系の主要な調節因子を標的とする。チェックポイント療法は、阻害チェックポイントを阻止して免疫系機能を回復することができる。免疫チェックポイントを標的とした最初の抗癌薬は、2011年に米国で承認されたCTLA-4遮断薬であるイピリムマブであった。
【0130】
現在承認されているチェックポイント阻害剤は、分子CTLA4、PD-1、およびPD-L1を標的とする。PD-1は膜貫通プログラム細胞死1タンパク質(PDCD1およびCD279とも呼ばれる)で、PD-L1(PD-1リガンド1、またはCD274)と相互作用する。細胞表面上のPD-L1は、免疫細胞活性を阻害する免疫細胞表面上のPD1に結合する。PD-L1機能の1つは、T細胞活性における主要な調節の役割である。細胞表面上のPD-L1の(癌媒介性)アップレギュレーションは、そうでなければ攻撃する可能性のあるT細胞を阻害し得る。PD-1またはPD-L1のいずれかに結合し、したがって相互作用を阻止する抗体は、T細胞が腫瘍を攻撃するのを可能にし得る。
【0131】
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤療法は、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても公知)、BおよびTリンパ球減衰因子(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても公知)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)を標的とする分子であり得る。
【0132】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、リガンドもしくは受容体の組換え形態などの薬物であってもよく、または、特に、ヒト抗体などの抗体である(例えば、国際公開公報第2015016718号;いずれも参照により本明細書に組み入れられる)。免疫チェックポイントタンパク質またはその類縁体の公知の阻害剤を使用してもよく、特にキメラ化、ヒト化、またはヒト形態の抗体を使用してもよい。当業者には公知のとおり、本開示において言及する一定の抗体に対し、代替および/または等価の名前を使用してもよい。そのような代替および/または等価の名前は、本開示の文脈において交換可能である。例えば、ランブロリズマブは、代替および等価の名前であるMK-3475およびペンブロリズマブの下でも知られていることが公知である。
【0133】
IV. 薬学的組成物および処置法
A. 薬学的組成物
以下は、薬学的および薬理学的態様に関連する情報を記載し、当業者には入手可能な当技術分野における情報によってさらに補足される。厳密な製剤、投与経路、および用量は、患者の状態を考慮して、個々の医師または臨床家が選択することができる(例えば、Fingl et al., in The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975, Ch. 1参照)。
【0134】
主治医は、毒性または臓器機能不全などにより、投与をいかにして、およびいつ停止、中断、または調節するかを理解していることに留意すべきである。反対に、主治医は、臨床反応が十分でない場合に、処置をより高いレベルに調節することも理解しているであろう(毒性局面を考慮して、または防止して)。対象となる障害の管理における投与量の規模は、処置する状態の重症度および投与経路に応じて変動し得る。状態の重症度は、例えば、部分的には標準の予後評価法によって評価してもよい。さらに、用量およびおそらくは投与頻度も、状況、例えば、個々の患者の年齢、体重、および反応に応じて変動し得る。前述のものに匹敵するプログラムを獣医学において用いてもよい。
【0135】
処置中の特定の状態および選択した標的指向法に応じて、そのような薬剤を製剤し、全身または局所投与してもよい。製剤および投与の技術は、Alfonso and Gennaro (1995)および当技術分野における他所で見いだすことができる。
【0136】
化合物を患者に、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤との組み合わせで投与することができる。「薬学的に許容される」なる語句は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、リガンド、材料、組成物、および/または剤形を意味する。
【0137】
「薬学的に許容される担体」なる語句は、当業者には公知であろうとおり、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、希釈剤、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、緩衝剤、保存剤、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、色素、そのような同様の材料およびその組み合わせを含む(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。任意の通常の担体が活性成分と不適合である場合を除いて、化学療法剤または薬学的組成物におけるその使用が企図される。
【0138】
DNQdまたはDNQ化合物を、それが固体、液体、またはエアロゾル形態で投与されるかどうか、および注射などの投与経路のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なるタイプの担体と組み合わせてもよい。本開示は、当業者には公知であろうとおり、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、腟内、直腸内、表面、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、膀胱内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、経口、表面、局所、注射、注入、持続点滴、標的細胞を直接浸す局所灌流、カテーテルにより、洗浄により、脂質組成物(例えば、リポソーム)中、または他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって投与することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0139】
患者に投与する本開示の組成物の実際の投薬量は、体重、状態の重症度、処置中の疾患のタイプ、過去もしくは現在の治療的介入、患者の特発性疾患、および投与経路などの身体的および生理的な因子によって決定することができる。投与を担当する医師は、いかなる場合にも、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に対する適切な用量を決定することになる。
【0140】
対象に投与する場合、有効量は,当然のことながら、処置中の特定の癌;特定の癌の遺伝子型;癌の重症度;年齢、身体状態、サイズおよび体重、同時処置、処置の頻度、ならびに投与様式を含む個々の患者パラメーターに依存することになる。これらの因子は医師には周知で、日常的実験だけによって対応することができる。いくつかの態様において、健全な医学的判断に従って、最高安全用量を用いることが好ましい。
【0141】
特定の態様において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%のDNQdまたはDNQ化合物を含み得る。他の態様において、活性化合物は、例えば、単体の重量の約2%~約75%または約25%~約60%、およびその中で導き出せる任意の範囲を構成し得る。他の非限定例において、用量は、1回の投与あたり約0.1mg/kg/体重、0.5mg/kg/体重、1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約20mg/kg/体重、約30mg/kg/体重、約40mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約75mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約750mg/kg/体重~約1000mg/kg/体重またはそれ以上、およびその中で導き出せる任意の範囲も構成し得る。本明細書に挙げる数値から導き出せる範囲の非限定例において、約10mg/kg/体重~約100mg/kg/体重の範囲などを、前述の数値に基づいて投与することができる。
【0142】
いかなる場合にも、組成物は、1つまたは複数の成分の酸化を遅延させるための様々な抗酸化剤を含んでもよい。加えて、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはその組み合わせを含むが、それらに限定されない、様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤により、微生物の作用の防止をもたらすことができる。
【0143】
DNQdまたはDNQ化合物などの本明細書に記載の活性物質は、遊離塩基、中性または塩の形態で組成物に製剤してもよい。薬学的に許容される塩には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基から誘導される遊離カルボキシル基と形成される塩が含まれる。
【0144】
経口使用のための薬学的製剤は、活性化合物を固体賦形剤と混合し、得られた混合物を任意に粉砕し、かつ望まれる場合には適切な補助剤を加えた後、錠剤または糖衣錠の核を得るために顆粒の混合物を処理することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む、糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤を加えてもよい。
【0145】
糖衣錠の核は任意に適切なコーティングをして提供される。このために、濃縮糖溶液を用いてもよく、これらは任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、ならびに/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含んでもよい。特定のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または色素を、錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0146】
組成物が液体の形態である態様において、担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)、およびその組み合わせを含むがそれらに限定されない、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により;例えば、液体ポリオールもしくは脂質などの担体中への分散による、必要な粒径の維持により;例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの界面活性剤の使用により;またはそのような方法の組み合わせにより、維持することができる。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウムまたはその組み合わせなどの、等張化剤を含むことが好ましいであろう。
【0147】
無菌注射液剤は、活性化合物を必要な量の適切な溶媒中に、必要があれば上に挙げた様々な他の成分と共に組み込み、続いて滅菌ろ過することにより調製する。一般に、分散剤は、様々な滅菌活性成分を基本の分散媒および/または他の成分を含む無菌媒体中に組み込むことにより調製する。無菌注射液剤、懸濁剤、または乳剤の調製用の無菌散剤の場合、好ましい調製法は真空乾燥または凍結乾燥技術であり、これらは事前に滅菌ろ過したその液体媒質から活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。液体媒質は、必要があれば適切に緩衝化され、液体希釈剤はまず十分な食塩水またはグルコースで注射前に等張にされるべきである。
【0148】
組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。したがって、好ましい組成物は、約5よりも高い、好ましくは約5~約8、より好ましくは約5~約7のpHを有する。エンドトキシン汚染は安全レベル、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきである。
【0149】
特定の態様において、注射用組成物の長期吸収は、組成物中の、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、またはその組み合わせなどの、吸収遅延剤の使用によってもたらすことができる。
【0150】
B. インビボ投与のためのDNQ化合物の製剤
リン酸緩衝化食塩水(PBS)中、pH7.4でのDNQの水溶性を、LC-MSで測定した。DNQをPBS中で30分間超音波処理し、次いで溶解していない固体を0.45μmシリンジフィルターを通してのろ過により除去し、ろ液をLC-MSで分析した(λ=275nm、ネガティブモードでのESI-TOF)。最適超音波処理時間は、DNQを1、5、10、および30分間超音波処理することによって決定した。溶液中のDNQの濃度は1、5、および10分の間で実質的に増大したが、10分と30分との間ではわずかな差しかなかった。30分間の超音波処理中、水浴を45℃まで加温した(試料はろ過の前に室温まで冷却した)。較正曲線は、DNQをメタノール中に500μMの濃度まで溶解し、この保存液の水:メタノール=80:20の希釈液を作製することにより、1~100μMまで生成した。較正曲線(UV吸光度による尺度)はこの範囲全体で直線で;1μMはほぼ検出限界であった。DNQのPBS中の溶解度は115μMと測定された。溶液は非常に薄い黄色であった。
【0151】
DNQの水溶性が低いため、本発明者らはDNQの溶解性を改善するために、一般的な賦形剤の2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)の使用を試験した。HPβCD非存在下で、DNQの溶解性は強塩基性溶液では有意に増大し、pHが中性に戻ると、DNQは沈澱する。しかし、十分な量のHPβCD存在下では、DNQはpHが中性に戻っても沈澱しない。HPβCD中のDNQのこの同じ中性溶液は、直接(すなわちpH調節なしに)作製することはできない。これは、DNQ化合物が塩基中で脱プロトン化し、この脱プロトン化分子は、pHが低下するにつれてのプロトン化を防止するのに十分安定な、HPβCDとの緊密な複合体を形成する。水性塩基中で適度に脱プロトン化され得るDNQ上の唯一のプロトンはN-Hである。DNQのN-H結合の酸性度は測定されていないが、DNQの誘導体では測定されており、pKa=8.0を有することが判明している。
【0152】
HPβCD中でDNQ化合物を製剤するためのプロトコルは以下のとおりである:DNQ化合物をpH7.4のPBS中HPβCDの20%溶液中でスラリー化し、次いで10M NaOHの添加によってpHを高めて、DNQ化合物の溶解を誘導する。pHを1M HClの注意深い添加によってpH7.5~8.0に戻す。DNQ化合物の3.3mM溶液をこの方法によって作製することができ、これは少なくとも24時間安定である。これはPBS単独に比べてDNQの溶解性の30倍増大を表す。本発明者らは当初、20%HPβCD溶液を選択した。しかし、本発明者らは、β-lapがヒト臨床試験用にHPβCDの40%溶液として製剤されていることを見出し、我々のDNQでの経験は、DNQの濃度はHPβCDの濃度と共に直線的に増大することを示し;したがって40%HPβCD溶液はDNQおよび他のDNQ化合物の6.6mM溶液の作製を可能にするであろう。
【0153】
C. 処置
本開示は、NQO1レベル上昇を有する腫瘍細胞を有する患者の処置法も提供する。方法は、NQO1レベル上昇を有する腫瘍細胞を有する患者に、式(I)の化合物、または本明細書に記載の組成物の治療的有効量を投与する段階を含み得る。本開示は、NQO1レベル上昇を有する腫瘍細胞の処置法をさらに提供し、方法は、腫瘍細胞を、本明細書に記載の化合物または組成物の治療的有効量に曝露する段階を含み、ここで腫瘍細胞は処置される、死滅する、または増殖を阻害される。腫瘍または腫瘍細胞は悪性腫瘍細胞であり得る。いくつかの態様において、腫瘍細胞は、非小細胞肺癌などの癌細胞である。
【0154】
したがって、本開示の方法を、末端黒子型黒色腫、光線性角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細管、カルチノイド、癌腫、癌肉腫、空洞、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡嚢乳頭腫/癌腫、明細胞癌、嚢胞腺腫、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類子宮内膜腺癌、上衣、類上皮、ユーイング肉腫、線維層板型、限局性結節性過形成、ガストリン産生腫瘍、胚細胞腫瘍、神経膠芽腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞癌、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平上皮新生物、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄様上皮腫、黒色腫、髄膜、中皮、転移性癌、粘表皮癌、神経芽細胞腫、神経上皮腺癌結節型黒色腫、燕麦細胞癌、オリゴデンドログリア、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、乳頭状漿液性腺癌、松果体細胞、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、小細胞癌、軟部組織癌、ソマトスタチン産生腫瘍、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、有棘細胞癌(squamous cell carcinoma)、中皮下、表在拡大型黒色腫、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌、ビポーマ、高分化癌、およびウィルムス腫瘍を含む様々な新生物障害の処置または防止のために用いてもよい。したがって、本明細書に記載の組成物および方法は、膀胱癌、脳癌(神経膠腫、髄膜腫、神経鞘腫、および腺腫などの頭蓋内腫瘍を含む)、乳癌、大腸癌、肺癌(SCLCまたはNSCLC)卵巣癌、膵癌、および前立腺癌を処置するために用いることができる。
【0155】
D. 併用療法
本明細書に記載の活性成分(例えば、式(I)の化合物)は、他の活性成分との組み合わせで用いることもできる。そのような組み合わせは、処置する状態、成分の交差反応性、および組み合わせの薬物特性に基づいて選択される。例えば、癌を処置する場合、組成物を他の抗癌化合物(パクリタキセルまたはラパマイシンなどの)と組み合わせることができる。
【0156】
本開示の化合物を、患者への同時または逐次投与のための単位剤形において、1つまたは複数の他の活性成分と組み合わせることも可能である。併用療法を同時または逐次投与計画として投与してもよい。逐次投与する場合、組み合わせを複数回投与してもよい。
【0157】
併用療法は「相乗作用」および「相乗的」を提供し得、すなわち、活性成分を一緒に用いた場合に達成される効果は、化合物を別々に用いることで得られる効果の合計よりも大きい。相乗効果は、活性成分を:(1)組み合わせ製剤中で同時製剤し、投与または送達する;(2)別々の製剤として交互または並行に送達する;または(3)いくつかの他の投与計画による場合に獲得し得る。交互療法で送達する場合、相乗効果は化合物を逐次、例えば、別々の錠剤、丸剤もしくはカプセル剤で、または別々のシリンジ中の異なる注射により、投与または送達する場合に獲得し得る。一般に、交互療法中は、各活性成分それぞれの有効用量を逐次、すなわち連続して投与するが、併用療法では、複数の活性成分の有効量を一緒に投与する。相乗的抗癌効果は、組み合わせの個々の化合物の予想される純粋に相加的な効果よりも大きい抗癌効果を意味する。
【0158】
併用療法は米国特許第6,833,373号(McKearn et al.)によってさらに記載されており、これは本明細書に記載の化合物と組み合わせ得るさらなる活性剤、および本明細書に記載の化合物で処置し得るさらなる癌のタイプおよび他の状態を含む。
【0159】
したがって、DNQdまたはDNQを別の薬剤または治療法、好ましくは別の癌処置との組み合わせで使用し得ることは、本開示の局面である。DNQdまたはDNQは、数分から数週間の間隔で、他の薬剤処置の前または後に行ってもよい。他の薬剤および発現構築物を、細胞に別々に適用する態様において、一般には、薬剤および発現構築物が細胞に対して有利に組み合わされた効果をまだ発揮し得るように、各送達の間で著しい時間が経過しないようにする。例えば、そのような場合には、細胞、組織、または生物を、活性剤と、2、3、4、またはそれ以上の様式で、実質的に同時に(すなわち、約1分以内に)接触させ得ることが企図される。他の局面において、1つまたは複数の薬剤を、活性剤の投与の前および/または後、約1分、約5分、約10分、約20分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約9時間、約12時間、約15時間、約18時間、約21時間、約24時間、約28時間、約31時間、約35時間、約38時間、約42時間、約45時間から約48時間以内、またはそれ以上で投与してもよい。一定の他の態様において、薬剤を活性剤の投与の前および/または後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約8日、約9日、約12日、約15日、約16日、約18日、約20日から約21日までの範囲内で投与してもよい。いくつかの状況では、しかし、それぞれの投与の間で数週間(例えば、約1、約2、約3、約4、約6、もしくは約8週またはそれ以上)が経過する場合、処置の期間を著しく延長することが望ましいこともある。
【0160】
本開示の化学療法組成物の患者への投与は、毒性がある場合にはこれを考慮して、化学療法剤の投与の一般的プロトコルに従うことになる。処置周期を必要に応じて繰り返すことが予想される。様々な標準の療法または補助的癌療法、ならびに外科的介入を、記載の活性剤との組み合わせで適用し得ることも企図される。これらの療法には、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、および手術が含まれるが、それらに限定されない。
【0161】
i. 化学療法
癌療法は、化学物質および放射線に基づく処置の両方による様々な併用療法も含み得る。併用化学療法には、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン、カンプトスター(camptostar)、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポシロン、タキソテール、タモキシフェン、5-フルオロウラシル、メトキシトレキセート(methoxtrexate)、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH 66336、R115777、L778,123、BMS 214662、イレッサ(商標)(ゲフィチニブ)、タルセバ(商標)(塩酸エルロチニブ)、EGFRに対する抗体、グリベック(商標)(イマチニブ)、イントロン、ara-C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン(pentostatine)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、テニポシド、17α-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミゾール、ナベルベン(navelbene)、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、ドロロキサフィン(droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、アバスチン、ハーセプチン、ベキサール、ベルケイド、ゼバリン、トリセノックス、ゼローダ、ビノレルビン、ポルフィマー、アービタックス(商標)(セツキシマブ)、リポソーム製剤、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、トラスツズマブ、レロゾール(Lerozole)、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスフォミド(Ifosfomide)、リツキシマブ、C225、キャンパス、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP 16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、パクリタキセル、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、、トランス白金製剤(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、または前述の任意の類縁体もしくは誘導体変種などの化学療法剤の使用が含まれる。
【0162】
ii. 放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く用いられている他の因子には、ガンマ線、X線、および/または放射性同位体の腫瘍細胞への指向送達として一般に公知のものが含まれる。マイクロ波およびUV照射などの、DNA損傷因子の他の形態も企図される。おそらく、これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の組み立ておよび維持における広範囲の損傷に影響をおよぼす。X線の線量範囲は、長期間(例えば、3~4週間)のためには50~200レントゲンの1日線量から2000~6000レントゲンの1回線量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は大きく変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強さおよび種類、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。「接触した」および「曝露した」なる用語は、細胞に適用する場合、本明細書において、それにより治療構築物および化学療法剤または放射線療法剤が標的細胞に送達される、または標的細胞に直接並置されるプロセスを記載するために用いられる。細胞の死滅または静止を達成するために、両方の薬剤を細胞に、細胞を死滅させるかまたはその分裂を防止するのに有効な組み合わせ量で送達する。
【0163】
iii. 免疫療法
免疫療法は、一般には、癌細胞を標的とし、これらを破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に頼っている。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のあるマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体は単独で治療のエフェクターとしてはたらくこともあり、または細胞死滅に実際に影響をおよぼすために他の細胞を動員することもある。抗体は薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合し、単に標的指向剤としてはたらくこともある。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と、直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を有するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞には、細胞毒性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0164】
免疫療法は、したがって、遺伝子療法と共に、併用療法の一部として用い得るであろう。併用療法の一般的アプローチを以下に記載する。一般に、腫瘍細胞は、標的指向に適用できる、すなわち、他の細胞の大部分には存在しない、あるマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかは本開示の文脈において標的指向のために適切であり得る。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb B、およびp155が含まれる。
【0165】
iv. 遺伝子療法
さらに別の態様において、二次処置は、治療用ポリヌクレオチドを第1の化学療法剤の前、後、または同時に投与する二次遺伝子療法である。遺伝子産物をコードするベクターと共に化学療法剤を送達することで、標的組織に対して組み合わせの抗過剰増殖効果がある。
【0166】
v. 手術
癌を有する人の約60%が、ある種の手術を受けることになり、それには予防的、診断的、もしくは病期分類、治癒的、および緩和的手術が含まれる。治癒的手術は、本開示の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の治療法と共に使用され得る癌処置である。治癒的手術は、癌性組織の全てまたは一部を、物理的に除去し、切り出し、かつ/または破壊する切除術を含む。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を意味する。腫瘍切除術に加えて、手術による処置には、レーザー手術、冷凍手術、電気手術、および顕微鏡制御下での手術(モース術)が含まれる。本開示は表在性癌、前癌、または付随的な量の正常組織の除去とともに用い得ることが、さらに企図される。
【実施例】
【0167】
IV. 実施例
以下の実施例は、前述の開示を例示することが意図され、その範囲を狭めると解釈されるべきではない。当業者であれば、実施例が本開示を実施し得る多くの他の様式を示唆することを容易に理解するであろう。多くの変種および改変を行い得るが、本開示の範囲内にとどまることが理解されるべきである。本開示は以下の非限定的実施例によってさらに理解されるであろう。
【0168】
実施例1-材料と方法
マウス。雌C57BL/6JおよびRag1-/-マウスは、UTサウスウェスタンマウス飼育コアから購入した。C57BL/6J遺伝的背景のMyd88-/-、Tlr4-/-、Tlr9-/-、Batf3-/-、およびOT1CD8+ T細胞受容体(TCR)-TgマウスおよびNSG-SMG3マウスは、The Jackson Laboratoryから購入した。Ifnar1-/-マウスはUniversity of ChicagoのDr. Anita Chongにより提供を受けた。すべてのマウスを特定病原体除去条件下で維持した。動物のケアおよび実験は、施設および国立衛生研究所のプロトコルおよびガイドラインの下で実施した。本試験は、Institutional Animal Care and Use Committee of the University of Texas Southwestern Medical Centerによって承認されている。
【0169】
細胞株および試薬。MC38、TC-1、B16、Panc02、Ag104LdおよびA549細胞は、10%熱不活化ウシ胎仔血清、100 U/mlペニシリン、および100 U/mlストレプトマイシンを補足したDMEMまたはREPMI 1640培地中、5%CO2、37℃で培養した。β-ラパコンは記載のとおりに合成し(Pink et al., 2000)、インビトロ試験のためにDMSOに溶解した。カタラーゼ、ジクマロール、およびFTY720は、Sigma-Aldrichから購入した。OT-1ペプチドおよびOVAタンパク質は、ThermoFisherからであった。抗CD4(GK1.5)、抗CSF1R(AFS98)、抗IFNAR1(MAR1-5A3)、抗PD-L1(10F.9G2)、抗CD8(YTS)、および抗HMGB1 mAbは、BioXCellから購入した。
【0170】
スルホローダミンB(SRB)細胞毒性検定。4,000個の細胞を96穴または48穴プレートに三つ組で播種した。終夜増殖させた後、細胞をβ-ラパコンにNQO1阻害剤ジクマロール(50μM)と共に、またはジクマロールなしで、3時間パルス曝露した。その後、細胞上清を新鮮培地に交換し、プレートを37℃、5%CO2の加湿インキュベーター中でさらに2または4日間インキュベートした。処理後、培養上清を除去し、固定試薬を各ウェルにゆっくり加えた。ウェルを水で洗浄し、プレートを終夜風乾した。100μL SRB色素溶液を加え、30分間インキュベートした後、洗浄して風乾した。細胞増殖を、マイクロプレートリーダー(SpectroSTAR Nano、BMG Labtech)で、560nMの吸光度で判定した。細胞増殖%=(100×(対照細胞-実験細胞))÷(対照細胞)。
【0171】
NQO1ノックアウトおよび過剰発現。MC38細胞のNQO1遺伝子をCRISPR/Cas9技術によりノックアウトした。ガイド配列
を、ピューロマイシン選択遺伝子を含むpSpCas9 (BB)-2A-Puroプラスミド(Addgene、#62988)中に、クローニングした。プラスミドをMC38細胞に一過性導入した。導入の48時間後、ピューロマイシン耐性細胞を選択し、選択的培地下でサブクローニングした。NQO1発現のないMC38細胞クローン(#1、#2、および#5)を、インビトロおよびインビボ試験に用いた。NQO1過剰発現のために、B16細胞(NQO1ヌル)を全長マウスNQO1タンパク質発現ベクター(pCMV3-HA-NQO1)で一過性導入した。NQO1安定発現細胞を選択し、ハイグロマイシン含有培地下でサブクローニングした。NQO1安定発現を示すB16細胞クローン(#1、#3、および#4)を以下の試験に用いた。NQO1発現レベルはウェスタンブロッティング検定によって判定した。
【0172】
腫瘍増殖および処置。約6×105 MC38細胞または1.5×105 TC-1または1.5×105 B16細胞を、マウスの右側腹に皮下接種した。腫瘍担持マウスを、腫瘍が一定のサイズに増殖した時点で、処置群に無作為に分類した。β-lap単剤療法のために、腫瘍担持マウスをβ-lapで局所(腫瘍内、0.03mg、0.1mgまたは0.3mgを1日おきに4回)または全身(静脈内または腹腔内、25または30mg/kgを1日おきに4または6回)処置した。CD4およびCD8 T細胞枯渇のために、200μgの抗体を3日間隔で4回腹腔内注射した。マクロファージ枯渇のために、100μgの抗CSF1R mAbを、β-lap処置中に3日間隔で3回腫瘍内注射した。I型IFN遮断実験のために、150μgの抗IFNAR1遮断mAbを、3日間隔で合計3回腫瘍内注射した。前述の遮断および枯渇実験は、最初のβ-lap処置の1日前に開始した。HMGB1遮断実験のために、200μgの抗HMGB1 mAbを、最初のβ-lap処理と同じ日に開始して、3日ごとに合計3回腹腔内(i.p.)投与した。PD-L1チェックポイント遮断併用療法のために、腫瘍担持マウスに100μg(MC38モデルの場合)または150μg抗PD-L1(クローン10F.9G2)を、最初のβ-lap処理と同じ日に開始して、3日ごとに合計3回腹腔内投与した。腫瘍体積を少なくとも週2回測定し、0.5×長さ×幅×高さとして計算した。
【0173】
免疫再構築マウスモデル。C57BL/6 Rag1-/-免疫再構築モデル(Lee et al., 2009; Tang et al., 2016)のために、2×106 A549細胞を、雌Rag1-/-マウスにs.c.接種した。腫瘍が十分に定着した後(約100mm3)、処置の1日前にOTIトランスジェニックマウスから2×106の合計LN細胞を、腫瘍担持マウスに静脈内注射した。その後、マウスをβ-lapで1日おきに4回局所(i.t.、0.2mg)処置した。腫瘍体積を少なくとも週2回測定した。
【0174】
NSG-SGM3ヒト化マウスモデルのために、4週齢のNSG-SGM3雌マウスを、ヒトCD34+細胞移植の1日前に100cGy(X-RAD320照射器によるX線照射)で照射した。照射したマウスをBactrim(Aurora Pharmaceutical LLC)水で2週間処置した。臍帯血はUT Southwestern Parkland Hospitalから入手した。ヒトCD34+細胞は、密度勾配遠心分離(Ficoll(登録商標) Paque Plus、GE healthcare)と、続いて抗ヒトCD34マイクロビーズ(Stem Cell)を用いたポジティブ免疫磁気選択により、臍帯血から精製した。105 CD34+細胞を各受容マウスに静脈内注射した。移植の12週間後、40%を超えるヒトCD45+細胞再構築を示すヒト化マウスならびに月齢および性別をマッチさせた非ヒト化マウスに、2×106 A549腫瘍細胞を右側腹に皮下接種した。第19日に、腫瘍担持マウスをβ-lap(i.t.、0.2mg)で1日おきに4回局所処置した。腫瘍体積を少なくとも週2回測定した。すべての実験は、UTSW Human Investigation Committee protocolおよびUTSW Institutional Animal Care and Use Committeeに従って実施した。
【0175】
HMGB1放出検出。腫瘍細胞を6穴プレートに播種し、70%コンフルエンスまで増殖させ、漸増濃度のβ-lapで3時間処理し、続いて洗浄および培地交換を行った。上清を、ELISA KIT(Chondrex)を用いて、24時間後に細胞外HMGB1について検定した。
【0176】
IFNγ酵素結合免疫吸着スポット検定(ELISPOT)。腫瘍担持マウスから腫瘍排出LNおよび脾臓を採取し、単一細胞懸濁液を調製した。照射した腫瘍細胞またはOT-1ペプチドを使用して、腫瘍特異的T細胞を再刺激した。一般に、合計2~4×105 LN細胞または脾細胞および2~4×105照射腫瘍細胞を48時間共培養し、ELISPOT検定を、製造者の指示に従い、IFNγ ELISPOTキット(BD Bioscience)を用いて行った。スポットを、ImmunoSpot Analyzer(Cellular Technology Limited)によって計算した。
【0177】
組織からの細胞分離。CD11c+ DCまたはCD8+ T細胞を製造者の指示に従い、ポジティブCD11c分離キットまたはネガティブCD8分離キット(Stemcell)を使用して、マウスのリンパ節または脾臓から分離した。腫瘍単一細胞懸濁液のために、腫瘍組織を小片に切断し、37℃の振盪インキュベーター内で45分間、消化緩衝液(1.5mg/ml I型コラゲナーゼおよび100μg/ml DNase I)に再懸濁した。消化後、細胞を70μmの細胞ストレーナーを通過させた。
【0178】
フローサイトメトリー分析。腫瘍細胞懸濁液、を抗CD16/32抗体(クローン2.4G2)で、10分間遮断し、次いで表示の抗体により暗所、4℃で30分間インキュベートした。Fixable viability Dye eFlour 506(eBioscience)を使用して、死細胞を除外した。試料を、cytoFLEX(Backman coulter)フローサイトメーターで分析した。
【0179】
DCFDA細胞ROS検出検定。細胞ROSのレベルを、製造者の指示に従い、DCFDA-Cellular ROS Detection Assay Kit(Abcam)によって判定した。簡単に言うと、細胞を12穴プレートに播種し、約70%コンフルエンスまで増殖させ、DCFDAにより37℃で30分間染色した。その後、細胞を、異なる濃度のβ-lapで3時間処理した。ROSシグナルを、Ex/Em:485/535nmでフローサイトメトリーを使用して判定した。
【0180】
統計分析。すべてのデータ分析はGraphPad Prism統計ソフトウェアで実施し、平均±SEMで示した。二元配置分散分析または独立スチューデント両側t検定で判定して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001および****P<0.0001。p<0.05の値を統計的に有意であると考えた。
【0181】
実施例2-結果
β-lapは、インビトロおよびインビボの両方で、マウス腫瘍の増殖をNQO1依存的様式で抑制する。複数のマウス癌細胞株を用いて、β-lap機能におけるNQO1の役割を調べた。高レベルのNQO1を発現する腫瘍細胞株(MC38大腸腺癌、TC-1肺癌、およびAg104Ld線維肉腫)(
図17A)は、3時間のβ-lap曝露に感受性であった(
図1A)。これに対し、NQO1欠損細胞株、B16(黒色腫)、およびPanc02(膵臓癌)(
図17A)は、β-lap曝露に対して抵抗性であった(
図1A)。NQO1特異的阻害剤であるジクマロールは、NQO1媒介性致死を逆転させた(
図1B)。次に、本発明者らは、NQO1の枯渇がβ-lapの細胞毒性を抑止するかどうかを判定した。CRISPR媒介性NQO1ノックアウト(
図17B)は、MC38細胞にβ-lap処置に対する抵抗性を与えた(
図1C;
図17C)。同様に、B16細胞におけるNQO1の過剰発現(
図17D)は、β-lapに対する感受性をもたらし(
図1D;
図1E)、ジクマロールによるNQO1の阻害はβ-lap致死性を免れさせた(
図17F)。致死量のβ-lapは、カスパーゼ活性化なしに急速な細胞膨潤、膜破裂、およびアネキシンV+/7AAD+細胞死を引き起こした(
図1E、データは示していない)。NQO1は、β-lapの2電子酸化還元を触媒して高レベルのROS(すなわち、過酸化水素/H
2O
2)を生成し、大々的なDNA酸化および細胞死を引き起こす(Huang et al., 2016)。事実、β-lapは、NQO1陽性マウス腫瘍株において高レベルのROSを誘導し、NQO1ヌル株でははるかに少なかった(
図1F~1G)。ジクマロールによるNQO1の阻害はこの効果を消失させた(
図1F~G)。次に、本発明者らは、ROSを中和することでβ-lap誘導性細胞致死を阻害し得るかどうかを判定した。H
2O
2消去酵素であるカタラーゼは、β-lap媒介性致死を有意に免れさせた(
図1H;
図17G)。これらの結果は、β-lapがインビトロで強力な腫瘍特異的ROS産生を通じてNQO1+腫瘍細胞死を誘導することを示唆するものである。
【0182】
本発明者らは、それぞれ異なるNQO1レベルを有する3つの皮下同系腫瘍モデル:MC38、TC-1、およびB16におけるβ-lapの抗腫瘍効果をさらに調べた。MC38腫瘍モデルでは、25mg/kgのβ-lapを、腫瘍接種後7日目に、腫瘍担持WT C57BL/6マウスに全身(静脈内)投与した。β-lapによる処置は顕著な腫瘍阻害をもたらした(
図1I)。β-Lapは、全身に送達されると様々な細胞上で作用する可能性がある。腫瘍退縮に対して局所腫瘍環境内でβ-lapが機能するかどうか、およびどのように機能するかを機構的に探求するために、様々な用量のβ-lapを1日おきに合計4回腫瘍内注射した。局所処置はまた、用量依存的様式で腫瘍増殖を有意に抑制した。腫瘍増殖阻害率(TGI、%)は、全身β-lap処置を行ったマウスでは62.5%、局所β-lap(1.5mg/kg mg、5mg/kg、および15mg/kg mg)処置のマウスでは11.8%、69.4%、および89.3%であった(
図1I)。特に、はるかに低い用量のβ-lap(15mg/kg)による局所処置は、全身処置よりも強力な腫瘍退縮を誘導して、マウスの46.7%(7/15)が完全な腫瘍拒絶を達成し(
図1I)、主要な作用部位が局所腫瘍微小環境に関連することを示唆した。インビトロ試験と一致して、NQO1ノックアウトMC38マウスモデルではβ-lapの治療効果が消失した。(
図1J)。同様に、HPV E6/E7形質転換腫瘍モデルのTC-1において、β-lap処置はまた、有意な腫瘍抑制を引き起こした(
図17H)。インビボでのβ-lapの特異性をさらに確認するために、本発明者らは、WT C57BL/6 WTマウスにおいて、親NQO1欠損またはNQO1過剰発現B16細胞クローン(#1および#4)を用いて皮下異種移植片を定着させた。予想通り、NQO1ヌル腫瘍はβ-lap処置に反応しなかった(
図17I)。まったく対照的に、NQO1過剰発現(クローン#1および#4)腫瘍担持マウスは、β-lap処置後に劇的な腫瘍抑制を示した(
図17I)。注目すべきことに、NQO1を過剰発現するB16腫瘍はB16親細胞よりはるかに速く増殖し、NQO1がインビボでの腫瘍増殖を促進することを示している(Oh et al., 2016)。これらの結果は、β-lapがインビトロおよびインビボでNQO1陽性マウス腫瘍の増殖を選択的に抑制するという証拠を提供する。NQO1は、β-lap媒介性抗腫瘍効果に必須かつ十分である。
【0183】
β-lap媒介性抗腫瘍効果はCD8
+ T細胞に依存する。β-lapがいかにして腫瘍細胞を死滅させるかについてのほとんどの研究は、癌細胞自律機構に焦点を当てている(Huang et al., 2016;Pink et al., 2000;Li et al., 2016)。ここで、本発明者らは、β-lap媒介性抗腫瘍効果が免疫系に関与するかどうかを疑問に思った。本明細書者らは、適応免疫に対するβ-lapの効果を調べるために、それぞれ免疫適格マウスおよび免疫不全マウスにおいてMC38腫瘍を定着させた。わずか4回のβ-lap処置の後、MC38腫瘍はWT C57BL/6マウスで根絶され、50%のマウスが治癒した(
図2A)。予想外に、β-lapは、免疫不全Rag1 KO(Rag1
-/-)C57BL/6マウスで治療活性を失った(
図2A)。NQO1過剰発現B16腫瘍モデル(
図18A)およびTC-1モデル(データは示していない)でも同様の効果が認められ、インビボでのβ-lapの強力な抗腫瘍効果には適応免疫系が必要であることを示唆した。事実、本発明者らは、対照MC38腫瘍と比較してβ-lap処理腫瘍におけるCD4
+およびCD8
+ T細胞の増加を見出し(
図18B)、T細胞のいくつかのサブセットが適応免疫に寄与し得ることを示唆した。どのT細胞サブセットが必須であったかを試験するために、マウスをβ-lap処置と共に抗CD4または抗CD8枯渇抗体のいずれかで処置した。β-lap単独またはβ-lapおよびCD4
+ T細胞枯渇の組み合わせでの処置はMC38腫瘍増殖を制御した一方で、CD8
+ T細胞枯渇はβ-lapの抗腫瘍効果を消失させた(
図2B;
図18C)。このデータは、CD8
+ T細胞はβ-lap媒介性腫瘍退縮に必要であるが、CD4
+ T細胞は必要でないことを示唆している。同様の結果が、TC-1腫瘍担持マウスでも得られた(
図2C)。β-lap媒介性抗腫瘍応答が長期の保護T細胞免疫をもたらすかどうかを判定するために、本発明者らは、MC38細胞の致死量でのβ-lap処置後に完全なMC38腫瘍拒絶反応を起こしたマウスに再チャレンジした。β-lapで治癒したマウスは全て、再チャレンジ腫瘍(
図2D)を拒絶し、β-lap処置後の記憶T細胞の生成を示した。
【0184】
ヒト腫瘍の制御におけるβ-lapの有効性を試験するために、本発明者らは、免疫再構築C57BL/6 Rag1
-/-(
図2E)およびNSG-SGM3マウス(
図2F)において、2つの異種移植モデルを開発した。NQO1を高発現するヒト肺癌細胞株A549は、インビトロでのβ-lap処理に感受性であった(
図18D)。C57BL/6 Rag1
-/-免疫再構築モデル(Lee et al., 2009;Tang et al., 2016)において、A549細胞をs.c.接種した。腫瘍が十分に定着した(約100mm
3)後、OTIトランスジェニックマウスからの合計2×10
6リンパ節(LN)細胞を、腫瘍担持Rag1
-/-マウスに移植し、腫瘍増殖を低減させることなく、少数のT細胞を再構築した。OTIトランスジェニックマウスからのLN細胞は、ヒト腫瘍抗原に応答できないが、少数の非OTI T細胞の恒常性増殖を抑制する、約98%のOVA特異的T細胞を含む。非OT-1 T細胞のごく一部は、ヒト患者における腫瘍反応性T細胞の数である、200~1000クローンに近いヒト腫瘍抗原を認識する可能性がある。T細胞移植しなければ、β-lap処置はA549腫瘍増殖を部分的に阻害するにすぎなかった。しかし、T細胞存在下では、β-lapはより強い腫瘍退縮を誘導して、腫瘍の50%が完全に拒絶され(
図2E)、β-lap媒介性抗腫瘍効果はT細胞に大きく依存していることを示した。ヒト特有のシステムにおけるβ-lap媒介性腫瘍抑制におけるT細胞機能を調べるために、本発明者らは、ヒト骨髄細胞増殖を支持し、ヒト免疫系および自然腫瘍微小環境をよりよく模倣するインビボ状態を提供する、NSG-SGM3マウスを用いた次世代ヒト化異種移植モデルをさらに開発した(Morton et al., 2016)。ヒトCD34+造血幹細胞(Hu-NSG-SGM3)を注射したNSG-SGM3マウスは、ヒトCD45、CD3、CD4、およびCD8白血球マーカーを用いたフローサイトメトリーによって測定された強固な移植効率を示した。未処置NSG-SGM3およびHu-NSG-SGM3マウスにA549細胞を別々に接種し、β-lapで処置した。特に、ヒト免疫系存在下で、β-lap処置ははるかに良好な腫瘍制御を誘導し、再構築した免疫系がβ-lapの抗腫瘍効果を回復させることを示した(
図2F)。本発明者らは、腫瘍微小環境における腫瘍に浸潤した免疫細胞をさらに調査し、β-lap処置後に腫瘍組織におけるCD45
+細胞およびCD8
+ T細胞の有意な増加を見出したが、CD4
+ T細胞の増加は見られなかった。合わせると、これらのデータは、β-lap誘導性腫瘍制御におけるT細胞の必要性を明らかにしている。
【0185】
β-lap誘導抗腫瘍効果は、樹状細胞媒介性T細胞交差提示に依存する。CD8
+ T細胞がβ-lapの抗腫瘍効果に必須であることを考慮して、本発明者らは、β-lap処置は抗原特異的T細胞応答を増大させるとの仮説を立てた。CD8 T細胞に対するβ-lapの直接の影響を排除するために、CD8 T細胞におけるNQO1の発現およびCD8 T細胞生存、増殖、および機能に対するβ-lapの効果を、本発明者らは評価した。結果は、脾臓からの未処理CD8 Tまたは腫瘍浸潤CD8 T細胞のいずれも、NQO1を発現しないことを示した。さらに、β-lapの腫瘍致死量は、CD8 T細胞アポトーシスならびに抗CD3/CD28刺激細胞増殖およびIFNγ産生に影響をおよぼさなかった。β-lapが抗原特異的T細胞応答を増大させるかどうかを試験するために、MC38腫瘍担持マウス由来の脾細胞を、最初のβ-lap処置の10日後に採取し、IFGNγ ELISPOT検定を行って、活性化T細胞のエフェクター機能を測定した。示すとおり、腫瘍刺激存在下(照射した腫瘍細胞)で、IFNγ産生T細胞はβ-lap処置群で劇的に増加した(
図3A)。本発明者らは、さらに、T細胞応答をより良く追跡するために、OTIペプチドを用いてMC38-OVA細胞株を生成した。同様に、IFNγ ELISPOT検定OTIペプチドにおいて、OTI特異的T細胞の数は、β-lap処置後のマウスの脾臓ではるかに高かった(
図3B)。腫瘍特異的CD8細胞の増加は、β-lap処置が交差提示を誘導し、腫瘍増殖を制御するためにT細胞を再活性化することを示唆している。樹状細胞(DC)またはマクロファージなどのAPCによる交差提示は、腫瘍特異的T細胞を活性化する主要なプライミング機構と考えられている。どのAPCがβ-lap誘導性抗腫瘍効果に必須であるかをさらに決定的にするために、本発明者らは最初に、抗CSF1R Abを使用して腫瘍組織中のマクロファージを枯渇させた(Tang et al., 2018)。示すとおり、マクロファージ枯渇は、β-lap処置に対するMC38担持マウスの応答に影響を与えなかった(
図3C)。Batf3依存性DC CD8α
+またはCD103
+ DC)は、CD8
+ T細胞を直接活性化する壊死性腫瘍細胞由来エピトープの交差提示に特化している(Sanchez-Paulete et al., 2016;Broz et al., 2014;Salmon et al., 2016)。Batf3
-/-マウスは機能性CD8α
+またはCD103+DCを欠き、細胞交差提示活性が損なわれている。WTマウスにおいて、β-lap処置は、強い腫瘍退縮を誘導した(
図3D)。まったく対照的に、同等に処置したBatf3-/-マウスでは治療効果は見られなかった(
図3D)。さらに、β-lapが交差提示を増大させる可能性に取り組むために、本発明者らは、抗原特異的システムを使用して、腫瘍抗原特異的T細胞のプライミングおよび活性化を追跡した。MC38-OVA腫瘍担持WTマウスをβ-lapで処置し、次いでDCを腫瘍排出リンパ節(TdLN)から単離し、OTIトランスジェニックマウスからのCD8 T細胞と共培養した。IFNγ分泌を測定して、抗原特異的T細胞を刺激するDCの能力を評価した。事実、β-lap処理後、DCはOTI T細胞によるより多くのIFNγ産生を誘導した(
図3E)。これらの結果は、DC媒介性交差提示がβ-lap誘導性腫瘍退縮および腫瘍反応性T細胞応答に必要であることを示唆している。
【0186】
I型IFNおよびTLR4/MyD88シグナル伝達は、β-lapおよび腫瘍特異的CTLの抗腫瘍効果に必要である。腫瘍微小環境におけるAPCは機能しておらず、T細胞の無効なプライミングおよび活性化につながる(Lee et al., 2009;Corrales et al., 2017)。I型インターフェロン(IFN)は、T細胞の最適な交差提示に必須である(Corrales et al., 2017;Deng et al., 2014)。本発明者らは、I型IFNシグナル伝達がβ-lapの治療効果に必要かどうかをさらに調べた。IFNAR1遮断抗体を腫瘍内投与して、腫瘍微小環境におけるI型IFNシグナル伝達を中和した。顕著に、I型IFNの遮断はβ-lapの治療効果を有意に減少させた(
図4A)。腫瘍細胞または宿主IFNシグナル伝達が必須であるかどうかを判定するために、MC38腫瘍を、WTおよびIFNAR1欠損(Ifnar-/-)C57BL/6マウスに接種し、続いてβ-lap処置を行った。その結果、IFNAR1シグナル伝達が損なわれているマウスで治療効果が抑止されたことが示された(
図4B)。予想通り、本発明者らは、β-lap処置した腫瘍において、IFNγおよびTNFαなどの他のサイトカインと同様に、IFNα/βおよびIFN応答遺伝子CXCL10の増加を観察した(
図19A~B)。MyD88がいくつかの化学療法剤によるI型IFN産生および抗腫瘍免疫に関与することが示されている(Sistigu et al., 2014;Zitvogel et al., 2015;Apetoh et al., 2007)。β-lap処置にMyD88シグナル伝達が必要かどうかを判定するために、腫瘍細胞をWTおよびMyD88欠損(Myd88-/-)マウスにs.c.移植した。β-lap誘導性腫瘍退縮は、同じ治療計画でのMyd88-/-マウスで消失し(
図4C)、宿主MyD88がβ-lapの抗腫瘍効果に必須であることを示した。β-lapは、強い腫瘍細胞死を誘導し得るため、本発明者らは、これが次いで損傷関連分子パターン(DAMP)の分泌および腫瘍抗原の曝露をもたらし、それによって抗腫瘍免疫応答を高めるという仮説を立てた。興味深いことに、いずれもDAMPを感知するMyD88シグナル伝達の主要な上流受容体であるが、TLR4のノックアウトは同様の治療抵抗性も引き起こしたが、TLR9ではそうではなかった(
図4D;
図19C)。これまでの研究では、TLR4の内因性リガンドの1つであるHMGB1(およびHMGB1/DNA複合体)が、MyD88依存的様式でDC交差提示を刺激する危険信号として機能し得ることが示されている(Apetoh et al., 2007)。β-lap誘導性腫瘍退縮がHMGB1依存性であるかどうかを判定するために、β-lap処置と共に、抗HMGB1 mAbを投与して、遊離HMGB1を中和した。結果は、HMGB1シグナル伝達の遮断がβ-lapの効果を低下させることを示し(
図4E)、β-lapが腫瘍微小環境におけるHMGB1放出を誘導して、TLR4/MyD88経路を介して自然応答を増強する可能性があることを示した。HMGB1の本質的な役割にさらに取り組むために、本発明者らは、β-lap処置と併せてシグナル伝達を遮断した場合の腫瘍特異的T細胞応答を評価した。MC38腫瘍細胞を、WTマウスまたはTlr4-/-もしくはMyd88-/-
C57BL/6マウスにs.c.移植し、腫瘍担持マウスをβ-lapで、抗HMGB1 Abと共に、または抗HMGB1 Abなしで処置した。処置後、腫瘍排出リンパ節(TdLN)からのリンパ球を採取し、IFNγ ELISPOT検定にかけた。WTマウスでは、β-lap処置は腫瘍反応性T細胞の数を増加させ、この効果は抗HMGB1中和Abと共投与すると消失した(
図4F)。同様に、Tlr4-/-およびMyd88-/-マウスでは、WTマウスと比較して、対照群の腫瘍反応性T細胞がはるかに少なかった(
図4F)。さらに重要なことに、β-lap処置は、これらの欠損マウスにおいて腫瘍特異的T細胞応答を増強することができなかった(
図4F)。これらの結果は、TLR4/MyD88/I型IFNシグナル伝達カスケードが、β-lap誘導性自然および適応抗腫瘍免疫応答に必要であることを示唆している。
【0187】
β-lap処置はインビボで腫瘍免疫原性細胞死を誘導し、HMGB1依存性抗腫瘍T細胞免疫を誘発する。インビボでのHMGB1依存性腫瘍特異的T細胞応答およびβ-lapのHMGB1依存性抗腫瘍効果は、β-lapが腫瘍における免疫原性細胞死(ICD)を誘導する可能性があることを示唆した。この仮説を試験するために、本発明者らは、インビトロでβ-lap処理した腫瘍細胞において、ICDの特徴であるHMGB1分泌をチェックした。事実、NQO1+腫瘍細胞(MC38、TC-1およびNQO1過剰発現B16細胞)ではHMGB1の用量依存分泌が観察されたが、NQO1-細胞(B16親細胞)では観察されなかった(
図5A)。ジクマロールによるNQO1の阻害は、β-lap誘導性HMGB1分泌を消失させた(データは示していない)。本発明者らは、HMGB1曝露がβ-lap誘導性腫瘍細胞死の免疫原性を規定する可能性があると推測した。HMGB1は、以下の2つの実験においてβ-lap誘導性免疫原性に対して重要であることが判明した:(i)インビトロでβ-lapによって誘導された瀕死MC38-OVA細胞を、抗HMGB1Abと共にまたはなしで、C57BL/6マウスの側腹に注射した(
図5B)。TdLNにおける腫瘍抗原特異的T細胞の数(
図5C)およびIFNγ産生(
図5D)を判定した;(ii)抗HMGB1Ab存在下でβ-lap誘導瀕死MC38-OVA細胞によるワクチン接種を受けたC57BL/6マウスを、抗腫瘍保護の評価のためにMC38-OVAで再チャレンジした(
図5E~F)。示すとおり、β-lap誘導性瀕死細胞でワクチン接種したマウスは、生細胞でワクチン接種したマウスと比較して、より多くのIFNγ産生抗原特異的T細胞を有した(
図5C~D)。しかし、瀕死細胞および抗HMGB1Ab混合物でワクチン接種した場合に腫瘍特異的T細胞応答は低減した(
図5C~D)。一貫して、TLR4-/-マウスは、同等の瀕死細胞でワクチン接種した場合のWTマウスと比較して、腫瘍反応性T細胞およびIFNγ産生の減少を示した(
図5C~D)。β-lap誘導性瀕死細胞が適応免疫系を活性化する能力を試験するために、本発明者らは、免疫適格C57BL/6マウスにおける予防的腫瘍ワクチン接種モデルを用いた(
図5E)。β-lap誘導性瀕死細胞によるマウスの免疫化は、再チャレンジした腫瘍の増殖を防止した(
図5F)。特に、瀕死細胞および抗HMGB1中和抗体でマウスにワクチン接種した場合に、抗腫瘍保護効果が低下した(
図5F)。これらの結果は、β-lapがICDを誘導し、HMGB1依存的様式で抗腫瘍免疫原性を増強することを示す。
【0188】
β-Lapは抗PD-L1療法との組み合わせによって大きい、定着した、チェックポイント遮断抵抗性腫瘍を根絶する。臨床現場では、十分に定着した腫瘍を有する患者は、複雑な免疫抑制ネットワークを生成し、一般に免疫療法に抵抗性である(Sharma et al., 2017;Smith et al., 2016)。同様に、本発明者らの前臨床モデルでは、完全な腫瘍拒絶が、β-lap処置後に小さい腫瘍(約50mm
3)担持マウスでのみ達成され(TGI、93.0%;
図6A~B)、大きい定着腫瘍(約150~200mm
3)は、同等の処置プロトコルによって部分的にしか制御されなかった(TGI、59.36%;
図6A~B)。β-lapが作用機序の一部として自然および適応免疫応答を誘発するという知見は、進行したチェックポイント遮断抵抗性腫瘍を根絶するための、β-lapとT細胞チェックポイント遮断との組み合わせの道を開いた(
図6A)。これを試験するために、本発明者らは次に、定着した大きいMC38腫瘍担持マウスにおいて、局所β-lap処置(15mg/kg、i.t.)を抗PD-L1処置と組み合わせた。進行したMC38腫瘍は、抗PD-L1単独に対して中程度の応答を示すにすぎなかった(TGI、63.25%、
図6C)。まったく対照的に、併用群のマウスは、強い腫瘍制御および退縮を示した(TGI、96.86%;
図6C;
図20A)。特に、腫瘍担持マウスの60%が、組み合わせ処置で腫瘍を完全に拒絶した(
図6C;
図20A)。興味深いことに、β-lapおよび免疫療法の相乗効果が、β-lapのはるかに低い用量(5mg /kg、i.t.)を局所に用いても観察された(
図20B)。最近の研究では、癌免疫療法は局所化学療法処置によって強化され、全身化学療法処置によって抑止されることが示された(Mathios et al., 2016;Ariyan et al., 2018)。全身β-lap処置が任意の免疫抑制効果を有し、抗PD-L1免疫療法を損なうかどうかをさらに評価するために、MC38腫瘍担持マウスに、全身β-lap処置(30mg/kg、i.p.)単剤療法または抗PD-L1との組み合わせを投与した(
図6D)。β-lapまたは抗PD-L1の単剤療法は、同様に中等度の腫瘍増殖阻害を引き起こした(
図6E;
図20C)。併用処置は抗腫瘍作用に対して相乗効果を有し、腫瘍の25%は完全に拒絶され(
図6E;
図20C)、腫瘍担持マウスの生存率を著しく改善した(
図6F)。B16腫瘍はPD-L1を発現するが免疫原性が低く、PD-L1/PD-1免疫チェックポイント遮断に応答しない(Chen et al., 2015;Curran et al., 2010)。本発明者らは、NQO1過剰発現B16腫瘍モデルを用いて、β-lapおよび抗PD-L1併用処置の治療効果を評価した(
図20E)。予想通り、NQO1を過剰発現するB16腫瘍は、抗PD-L1 Ab単剤に応答できなかった(
図20F)。対照的に、β-lap単剤療法は、B16-NQO1腫瘍の増殖を大きく阻害した(TGI、68.67%)。驚くべきことに、PD-L1遮断と組み合わせると、β-lapは顕著な相乗的抗腫瘍効果を有した(TGI、88.76%;
図20F)。
【0189】
β-lapとPD-L1遮断との相乗効果のメカニズムをさらに解明するために、本発明者らは、MC38-OVA腫瘍モデルにおいて最初の処置の12日後に、腫瘍微小環境における腫瘍浸潤免疫細胞を調査し、腫瘍組織および脾臓における抗原特異的T細胞を追跡した。β-lapまたは抗PD-L1単剤療法のいずれかにより、腫瘍組織におけるCD45
+細胞、CD8
+ T細胞、およびCD8
+ T細胞:Treg細胞比の有意な増大が判明した(
図6G)。重要なことに、これらの効果は併用群で劇的に拡大された(
図6G)。さらに、腫瘍組織および脾臓におけるモデル抗原OVA257-264(OT1ペプチド)に特異的なCD8
+ T細胞を追跡した。示すとおり、β-lapまたは抗PD-L1いずれの単剤療法も、腫瘍組織(
図6G)および脾臓(
図6H)におけるOT1抗原特異的T細胞を増加させなかった。驚くべきことに、併用療法は、腫瘍組織および脾臓の両方において腫瘍抗原特異的T細胞を強固に拡大した(
図6G~H)。これらの結果は、β-lap処置がPD-L1遮断と組み合わせると、腫瘍免疫原性を増強し、T細胞浸潤および腫瘍特異的T細胞応答を増大させたことを示唆している。これらのデータは、大きい、定着したチェックポイント遮断抵抗性NQO1陽性腫瘍を制御する際の、β-lapとPD-L1遮断との間の強力な相乗効果を示す。
【0190】
β-Lapは腫瘍特異的ROSおよびDNA損傷を誘導し、NQO1陽性細胞のプログラム壊死を選択的に促進する。NQO1は、NSCLC、膵臓癌、大腸癌、乳癌、および頭頸部癌を含む複数のヒト癌において特異的かつ独特に上昇する酵素であり、治療のために腫瘍選択的様式で利用することができる。β-lapは、特にPARP1阻害剤と組み合わせた場合に有意な抗腫瘍効果が示されている。しかし、β-lap媒介性腫瘍特異的DNA損傷および細胞死が免疫系と何らかの相互作用を有するかどうか;β-lapが免疫原性細胞死を誘発し、宿主免疫系に依存する腫瘍退縮をもたらすかどうかは、まだ不明である。これらの目的のために、本発明者らは、インビトロおよび免疫適格マウスにおけるβ-lapの抗腫瘍活性を調べた。示すとおり、β-lapは選択的にNQO1
+マウス腫瘍細胞株(MC38、TC-1、およびAg104Ld)を死滅させ、この効果はジクマロール(DIC、かなり特異的なNQO1阻害剤)によって抑制され得、NQO1
-細胞(B16、pan02)では起こらない(
図8A~B)。NQO1
+細胞では、β-lapへの3時間曝露後に高レベルのH
2O
2が生じたが、NQO1
-細胞では生じず(
図8C)、これはβ-lapの理想的な標的指向効果を示唆している。β-lapは、独特のカスパーゼ非依存的様式によってNQO1
+癌細胞死を誘発し(
図8D)、PARP1媒介性プログラム壊死を誘導した(
図8E)。
【0191】
マウスにおけるβ-lapの抗腫瘍効果には宿主適応免疫系が必要である。本発明者らは、NQO1陽性マウス肺癌細胞TC-1を担持する免疫適格および免疫不全マウスを別々に確立した。3回のβ-lap処置の後、TC-1腫瘍担持WTマウスで腫瘍退縮が起こったが、適応免疫不全rag
-/-マウスでは起こらなかった(
図9A)。この結果は、インビボでのβ-lapの強力な抗腫瘍効果に適応免疫系が必要であることを示唆した。どのT細胞サブセットが負荷を制御するために必須かを試験するために、マウスを抗CD4または抗CD8枯渇抗体で、β-lap処置と併せて処置した。β-lap単独またはβ-lapと抗CD4抗体との併用による処置は、同様の腫瘍増殖抑制をもたらしたが、β-lap+抗CD8抗体による併用療法は、β-lap単独と比較して腫瘍増殖阻害の完全な失敗を引き起こした(
図9B)。これらのデータは、CD8
+ T細胞がβ-lap媒介性腫瘍退縮に必要であることを示唆した。同様の結果が、MC-38細胞、すなわちマウス大腸癌モデルを担持するマウスで得られた。
【0192】
β-LapはSTING依存性DNAセンシングおよびI型IFNシグナル伝達に依存する腫瘍退縮を誘導する。I型IFNは、様々な抗腫瘍療法の開始後に抗腫瘍T細胞応答を開始し、自然免疫と適応免疫を橋渡しする、潜在的な鍵となる危険信号として出現した。I型IFNがβ-lap誘導性腫瘍退縮に関与しているかどうかを調べるために、本発明者らは、I型IFNシグナル伝達を遮断するための2つのモデルを生成した:腫瘍微小環境における抗IFNAR(インターフェロン-α/β受容体)遮断抗体の注入(
図10A)およびマウスにおける宿主IFNAR遺伝子のノックアウト(
図10)。本発明者らは、微小環境におけるI型IFNシグナル伝達の遮断が、β-lapの抗腫瘍効果を大きく損なうことを見出した(
図10A)。これらの結果と一致して、β-lap誘導性腫瘍退縮は、WTマウス(
図10B)のものと比較して、IFNARノックアウトマウスで完全に抑止され、I型IFNはβ-lap媒介性腫瘍退縮に必須なサイトカインである可能性を示唆している。最近、TLR/MyD88経路およびSTING媒介性サイトゾルDNAセンシングカスケードの両方が、I型IFN産生の主要なメカニズムであることが示された。β-lap処置に対する応答を仲介するために、MyD88およびSTINGシグナル伝達経路が必要かどうかを調べるため、TC-1細胞をWT、MyD88またはSTING欠損マウスに移植した。本発明者らは、β-lap処置後、WTマウス(
図10C)およびMyD88欠損マウス(データは示していない)において腫瘍負荷が有意に減少した一方で、宿主STINGの非存在はβ-lapの抗腫瘍効果を有意に損なった(
図10C)。これらの結果は、STING依存性サイトゾルDNAセンシングおよびI型IFN産生が、インビボでのβ-lapの治療効果にとって重要であることを示唆している。
【0193】
インビボでのβ-lapの抗腫瘍効果には、腫瘍浸潤好中球が必要である。I型IFNは、自然免疫と適応免疫を橋渡しし、腫瘍特異的T細胞応答の交差提示に重要であることが公知である。本発明者らは、β-lapの処置は、いくつかの危険シグナル伝達を増大させ、いくつかの食細胞を動員することによって自然センシングを誘発し、腫瘍抗原の交差提示を引き起こすと提唱した。この考えを試験するために、本発明者らは3日間のβ-lap処置後、腫瘍微小環境における免疫細胞集団を分析した。興味深いことに、腫瘍浸潤好中球(CD11b
+Gr1
+サブセット)は有意に増加した(
図11A)一方で、マクロファージ、DC、CD8
+、およびCD4
+ T細胞のパーセンテージは影響を受けにくいことが判明した。この増加した好中球サブセットがβ-lap誘導性腫瘍退縮に関与しているかどうかを調べるために、腫瘍浸潤好中球を特異的に標的とする抗Ly-6G(クローン1A8)抗体を使用して、このサブセットを枯渇させた。抗体媒介性好中球枯渇は、インビボでβ-lapの治療効果を大きく損ない(
図11B)、抗腫瘍免疫応答における新たな好中球浸潤の重要な役割を示唆している。
【0194】
β-Lapは免疫チェックポイント遮断(抗PD-L1/PD-1)療法と相乗作用して、NQO1
+腫瘍細胞を効果的に死滅させることができる。β-lapが作用機序の一部として自然免疫応答を誘発し得るとの知見は、適応免疫をさらに活性化するための、PD-L1/PD-1阻害剤などの適応T細胞系免疫チェックポイント遮断戦略との組み合わせに深い意味を持つ。腫瘍微小環境におけるPD-L1のI型IFN誘導性アップレギュレーションは、複数の処置に対して獲得した腫瘍抵抗性の主な理由の1つであり、これはβ-lap+PD-L1/PD-1阻害剤の間の併用処置のための治療ウィンドウにつながる。この仮説を試験するために、本発明者らは次いで、C57BL/6J WTマウスにおいて6×10
5 MC38細胞を用いて皮下異種移植片を定着させた。マウス(n=5)を、HPβCD媒体単独、抗PD-L1(アテゾリズマブ)または0.1mg(i.t.)もしくは30mg/kg(i.p.)のβ-Lapで、抗PD-L1と共に、または抗PD-L1なしで、3日毎に4回注射して、腫瘍内(i.t.)(
図12A)または腹腔内(i.p.)(
図12B)処置した。処置を、腫瘍体積が>50mm
3(i.p.)または100mm
3(i.t.)となった時点で開始した。100μgの抗PD-L1(クローン10F.9G2)またはアイソタイプ対照抗体(クローンLTF-2)を、β-Lap処置の1日前に腹腔内(i.p.)注射した。次いで、マウスを腫瘍体積の変化についてモニターした(
図12A~B)。低用量のHPβCD-β-lapまたは抗PD-L1単独での処置は、媒体と比較して腫瘍体積をわずかに減少させたが、薬物併用療法は劇的な相乗抗腫瘍効果をもたらした(
図12A~B)。
【0195】
照射およびNQO1生体内活性化可能薬物処置はマウスの抗腫瘍免疫を相乗的に促進する。本発明者らのこれまでの結果は、β-lapが免疫不全マウスにおける放射線増感剤であることを示している。ここで本発明者らは、免疫適格マウスにおけるNQO1
+ MC38マウス癌細胞の放射線増感に対するβ-lapの効果を調べた。高レベルのNQO1(130+15単位)を発現するMC38 NSCLC癌細胞は、10Gy+0.1mgのβ-lapで3回腫瘍内(i.t.)注射したC57BL/6J WTマウスにおける皮下腫瘍(100mm
3)で試験したとおり、非常に反応性が高く、腫瘍増殖の有意な阻害を示した(p<0.01、
図13A)。同様に、MC38皮下腫瘍(50mm3)は、10Gy+β-lap(30mg/kg、i.p.)の1日おきに6回注射による投与に対して有意な相乗反応を示した(p<0.01、
図13B)。マウスは有意なメトヘモグロビン血症または体重減少を有しない(データは示していない)。
【0196】
IB-DNQはNQO1依存的様式でマウス癌細胞を死滅させ、NAD+/ATP枯渇およびDNA損傷を誘導する。IB-DNQは、新しいより強力なNQO1生体内活性化可能薬物である。IB-DNQはβ-lapと等価であったが、β-lapに比べて10~20倍強力で、メトモグロビン血症(MH)を引き起こすことははるかに少なかった。β-lapと同様に、IB-DNQは薬物を解毒しようとするNQO1依存性の無益な酸化還元サイクルにも入り、ヒドロキノンを形成する。β-lapと同様に、IB-DNQ媒介性腫瘍特異的DNA損傷および細胞死が免疫系と何らかの相互作用を有するかどうかは不明である。本発明者らは、インビトロでIB-DNQの抗腫瘍活性を調べた。示すとおり、NQO1はマウス腫瘍細胞株(MC38およびTC-1)で過剰発現され、B16マウス腫瘍細胞株(B16およびtubo)において欠損していた(
図14A)。IB-DNQはNQO1
+マウス腫瘍細胞株MC38(
図14B)およびTC-1(
図14C)を選択的に死滅させたが、NQO1
-マウス腫瘍細胞B16は死滅させず(
図14D)、この効果はジクマロール(DIC、かなり特異的なNQO1阻害剤)によって抑制され得(
図14B~C)、NQO1
-細胞(B16)では起こらない(
図14D)。必須ヌクレオチドNAD
+およびATPの枯渇も、TC-1細胞における2時間のIB-DNQ処理後に認められ、ジクマロールは効果を消失させ得る(
図14E~F)。0.25μM IB-DNQで60分間の処置後、テールの長さが劇的に増加し、高いDNA総損傷を示し(
図14G)、DSBマーカーのγ-H2AX巣が有意に増加して(
図14H)、二本鎖切断を示した。
【0197】
IB-DNQは適応免疫系に依存する腫瘍退縮を誘導する。IB-DNQが抗腫瘍免疫を刺激するかどうかは不明である。ここで発明者らは、NQO1陽性マウスMC-38大腸癌細胞またはTC-1肺癌細胞を担持する免疫適格(C57BL/6J WT)および免疫不全マウス(rag
-/-)を別々に確立した。4回のIB-DNQ(0.15mg)処置の後、MC-38またはTC-1腫瘍担持WTマウスでは腫瘍退縮が起こったが、適応免疫不全rag
-/-マウスでは起こらなかった(
図15A~B)。この結果は、適応免疫系はインビボでのIB-DNQの強力な抗腫瘍効果にも必要であることを示唆した。
【0198】
IB-DNQと免疫チェックポイント遮断(抗PD-L1)療法を組み合わせることによる相乗作用。以前の研究は、β-lapが免疫チェックポイント遮断療法と相乗作用し得ることを明らかにした。ここで本発明者らは、IB-DNQも免疫チェックポイント遮断療法と相乗作用し得るかどうかを調べる。MC38腫瘍担持マウス(C57BL/6J WT)を、HPβCD媒体単独、抗PD-L1(アテゾリズマブ)または0.05mg(i.t.)のIB-DNQで、抗PD-L1と共に、または抗PD-L1なしで、3日毎に4回注射して腫瘍内(i.t.)処置した。処置を、腫瘍体積が約100mm
3となった時点で開始した。100μgの抗PD-L1(クローン10F.9G2)またはアイソタイプ対照抗体(クローンLTF-2)を、IB-DNQ処置の1日前に腹腔内(i.p.)注射した。次いで、マウスを、腫瘍体積の変化および全生存についてモニターした(
図16A~B)。同様に、本発明者らは、低用量のHPβCD-IB-DNQまたは抗PD-L1単独での処置も、媒体と比較して腫瘍増殖を有意に低減させ、マウスの寿命を延長するが、薬物併用療法は劇的な相乗抗腫瘍効果をもたらすことを見出した(
図16A~B)。
【0199】
IB-DNQはNQO1依存的様式で腫瘍特異的ROS形成および広範なDNA損傷を誘導する。NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)は、ほとんどの固形癌で上昇(>100倍)している2電子オキシドレダクターゼであり、直接腫瘍死滅の有望な標的として出てきている。NQO1は、その特異性により、腫瘍選択的様式で治療のために利用することができる。薬物イソブチルデオキシニボキノン(IB-DNQ)は、NQO1
+ヒト固形癌に対して有意な抗腫瘍効果を示した。しかし、IB-DNQ媒介性腫瘍特異的DNA損傷および細胞死が免疫系と何らかの相互作用を有するかどうかはまだ不明である。IB-DNQが選択的にNQO1
+腫瘍を標的とし、免疫応答を誘発するかどうかを判定するために、本発明者らは、複数のマウス癌細胞株をスクリーニングして、インビトロでのIB-DNQの抗腫瘍効果を調査した。
図21A~Bに示すとおり、IB-DNQはNQO1
+マウス腫瘍細胞株(TC-1、Ag104Ld、MC38、およびB16過剰発現NQO1)を選択的に死滅させ、この効果はジクマロール(DIC、かなり特異的なNQO1阻害剤)またはNQO1のノックアウトによって抑制することができる(
図21B)。さらに、IB-DNQへの1時間曝露後の高いROSレベル(
図21C)およびIB-DNQへの4時間曝露後のDNA損傷(全または二本鎖切断)(
図21D~E)が、NOQ1
+マウス癌細胞において観察された。さらなる検定は、IB-DNQ存在下で、アネキシン-V
+によって示されるアポトーシス細胞死が観察されることを示した(
図21F)。これらの結果は、IB-DNQが、インビトロで強力な腫瘍特異的ROS産生および広範なDNA損傷を通じてNQO1
+腫瘍細胞死を選択的に誘導することを示した。
【0200】
マウスにおけるIB-DNQの抗腫瘍効果は宿主免疫系を必要とする。現在まで、IB-DNQ処置の腫瘍細胞死に対する効果に焦点を当てたほとんどの研究は、癌細胞の自律的機構を標的としている。ここで、本発明者らはIB-DNQ媒介性抗腫瘍効果は、免疫応答の活性化に関与するとの仮説を立てた。IB-DNQの抗腫瘍効果における免疫応答の役割を調べるために、本発明者らは、免疫適格および免疫不全マウスで、MC38皮下同系腫瘍モデルを定着させた。腫瘍接種後7日目に、IB-DNQを、腫瘍担持WT C57BL/6またはNOD.Cg-Prkdc
scid Il2rgt
m1Wjl/SzJ(NSG)マウスに、腫瘍内投与した(
図22A~B)。驚くことに、腫瘍は、腫瘍担持WT群で4回のIB-DNQ処置後に退縮し、20%の治癒画分を伴った。対照的に、IB-DNQ処置NSGマウスの腫瘍は、媒体と比較して、腫瘍サイズの最小限の低減しか示さなかった。これらの結果は、IB-DNQ媒介性抗腫瘍効果が免疫応答に関与していることを示した。適応免疫に対するIB-DNQの効果をさらに試験するために、MC38およびTC-1腫瘍細胞を、WTおよびRag1 KO(Rag1
-/-)C57BL/6マウスに皮下移植した(
図22C~D)。示すとおり、かつ予想どおり、Rag1 KOはIB-DNQの抗腫瘍効果を遮断し、腫瘍は劇的に増殖して、インビボでIB-DNQの強力な抗腫瘍効果に適応免疫系が必要であることを示唆した。さらに、インビトロ試験と一致して、腫瘍サイズが処置開始時にわずかに減少したにもかかわらず、NQO1 KO MC38マウスモデルにおいてIB-DNQ処置効果は消失し(
図22E~F)、NQO1がIB-DNQ媒介性抗腫瘍効果に必須かつ十分であることを示した。
【0201】
IB-DNQ処置は腫瘍微小環境におけるCD45
+免疫細胞集団に影響をおよぼす。腫瘍負荷を制御するためにどの免疫細胞サブセットが必須か、および腫瘍微小環境がIB-DNQによっていかに変化するかを試験するために、本発明者らは、IB-DNQ処置後のMC38腫瘍の免疫微小環境を調査した。示すとおり、対照腫瘍と比較して、IB-DNQ処理腫瘍においてCD8
+およびCD4
+ T細胞の有意な増加が認められた(
図23A~B)。さらに、IB-DNQは、MHC II
+ DCの割合を有意に増大させたが、マクロファージ浸潤には影響をおよぼさなかった(
図23A~B)。これらの結果は、CD8
+およびCD4
+ T細胞がIB-DNQの抗腫瘍効果に必須の役割を果たす可能性があることを示唆した。T細胞に対するIB-DNQの直接的な影響を排除するために、IB-DNQの致死量への曝露後にCD8
+ T細胞増殖(
図23C)および生存(
図23D)を判定した。事実、IB-DNQはCD8
+ T細胞アポトーシスおよび抗CD3/抗CD28刺激細胞増殖に影響がなかった。
【0202】
IB-DNQ媒介性抗腫瘍効果はCD8
+およびCD4
+ T細胞に依存する。IB-DNQの効果におけるCD4
+およびCD8
+ T細胞の役割を調べるために、CD4
+および/またはCD8
+ T細胞枯渇後のIB-DNQの抗腫瘍効果を調べた。予想通り、CD4
+およびCD8
+ T細胞枯渇はIB-DNQの抗腫瘍効果を完全に消失させた(
図24E~F)が、驚くことに、CD4
+またはCD8
+ T細胞枯渇単独ではIB-DNQの効果は部分的に遮断され(
図24A~D)、CD8
+およびCD4
+ T細胞の両方がIB-DNQ媒介性腫瘍退縮に必要であることを示した。
【0203】
IB-DNQは腫瘍ICDおよび樹状細胞媒介性T細胞交差提示を誘導する。本発明者らの以前の研究は、いくつかの化学放射線療法による腫瘍処置が腫瘍の抗原性および免疫原性を促進する腫瘍細胞免疫原性細胞死(ICD)を誘導することを示唆した。ICDを介して瀕死の腫瘍細胞の免疫原性は、腫瘍の制御を担う抗腫瘍CD8 T細胞へのDCによる抗原の交差提示にとって好都合である。CD8
+ T細胞がIB-DNQ抗腫瘍効果に必須な役割を果たしていることを考慮し、それによりIB-DNQは腫瘍におけるICDを誘導して、CD8
+ T細胞への抗原提示につながる可能性がある。この仮説を試験するために、ICDの特徴の1つであるHMGB1をIB-DNQ処理後にチェックした。事実、IB-DNQの標的となったMC38およびB16 NQO1
+細胞は高レベルのHMGB1を分泌し、一方、IB-DNQによって細胞死を誘導できなかったMC38 NQO1
-/-およびB16(NQO1欠損)細胞は少ないHMGB1を分泌した(
図25A)。1型インターフェロン(IFN)はT細胞の最適な交差提示に必須であるため、1型IFNがIB-DNQによって媒介されるT細胞応答に関与しているかどうかを判定した。示すとおり、IFN-αおよびIFN-βの発現は、対照と比較して、IB-DNQ処理を行った腫瘍で有意に増加した(
図25B~C)。一方、IFN-γによって示される抗原特異的T細胞応答も観察された(
図25D~E)。腫瘍抗原(照射した腫瘍細胞)存在下で、IFN-γによって示されるT細胞はIB-DNQ処理群において劇的に増加した(
図25D)。同様に、OT-1ペプチドによるIFN-γ ELISPOT検定で、IB-DNQ処理群においてOT-1特異的T細胞の数が有意に増加した(
図25E)。合わせると、これらの結果は、IB-DNQが交差提示のためのICDを誘導し、T細胞を活性化して腫瘍増殖を抑制することを示した。
【0204】
IB-DNQは古典的な免疫記憶の代わりに自然免疫記憶を誘導する。IB-DNQ媒介性抗腫瘍応答が長期の保護T細胞免疫をもたらすかどうかを調査するために、IB-DNQ処置後に完全MC38腫瘍拒絶反応を起こしたマウスに、MC38細胞(3×10
6)で再チャレンジした。興味深いことに、すべてのIB-DNQ治癒マウスは、再チャレンジした腫瘍を拒絶し(
図26A~B)、IB-DNQ処置後に記憶T細胞が生成される可能性を示唆した。さらに記憶T細胞の生成を判定するために、CD44
+によって示される記憶T細胞を治癒マウスで調べた。再チャレンジした腫瘍の拒絶の30日後、治癒マウスとは異なる器官を単離し、単一細胞をフローサイトメトリーで分析した。驚くことに、CD44
+CD8
+またはCD44
+CD4
+いずれの記憶T細胞も、脾臓およびLN(
図26C~D)ならびに他の器官(示していないデータ)では認められなかった。記憶B細胞も調べたが、記憶T細胞と同様の結果が認められた(データは示していない)。興味深いことに、CD44
+DCの有意な増加が治癒マウスで観察された(
図26E)。いくつかの研究は、CD44がDC-T細胞の緊密結合体の形成に重要であり、DC上のCD44がT細胞活性化に影響し得ることを示唆した。本発明者らの結果は、抗原(照射またはIB-DNQ処理腫瘍細胞)存在下で、腫瘍担持LN(TDLN)または無腫瘍LN(TF-LN)のいずれかからのCD44
+DCが対照と比較して刺激され、一方TF-LN群はより有意な増加を示した(
図26F)。一方で、T細胞増殖は、脾臓から分離したCD8
+ T細胞を照射した腫瘍細胞と共培養した場合、有意に増加しなかった(
図26G)。しかし、未処置脾臓から分離したCD8
+ T細胞を、抗原存在下で、腫瘍担持または無腫瘍マウスからのLN細胞と共培養した場合、T細胞増殖は有意に刺激され(
図26H)、TF-LN中のCD44
+DCがT細胞活性化および増殖において重要な役割を果たす可能性を示した。合わせると、これらの結果はすべて、IB-DNQ抗腫瘍効果が古典的な免疫記憶の代わりに自然免疫記憶(記憶様樹状細胞応答など)を誘導する可能性があることを示唆した。
【0205】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現は、大きい腫瘍負荷を有するマウスで増加する。他の研究グループからの以前の研究は、腫瘍微小環境におけるPD-L1発現のI型IFN誘導性アップレギュレーションが、複数の処置に対して獲得した腫瘍抵抗性の主な理由の1つであることを示している。本発明者らの以前の研究は、IB-DNQ処置が腫瘍微小環境におけるI型IFNシグナル伝達のアップレギュレーションをもたらすことを示している(
図25B~C)。IB-DNQ処置がTMEでPD-L1発現を増加させるかどうかを判定するために、本発明者らは、小さい腫瘍(50mm
3)または進行腫瘍(150mm
3)を担持する2つのマウスモデルを確立した。腫瘍を、フローサイトメトリー分析のために、最後のIB-DNQ注射の24時間後に採取した。事実、PD-L1発現は、腫瘍負荷が大きいマウスのCD45
+免疫細胞ではIB-DNQ処置(12mg/kg、i.v.)によって有意に増加する(
図27A)が、腫瘍負荷が小さいマウスでは増加しないことが判明した(
図27B)。これらの知見は、IB-DNQ処置がTME内のPD-L1レベルのアップレギュレーションを引き起こし、進行したNQO1
+腫瘍に対するIB-DNQ+PD-L1阻害剤の併用療法の処置ウィンドウにつながることを示唆している。
【0206】
IB-DNQはチェックポイント遮断抵抗性を克服する。十分に定着した腫瘍は、固有の抵抗メカニズムの影響を受け、完全な腫瘍拒絶を達成することは困難である。大きい定着腫瘍がIB-DNQまたはPD-L1遮断処置単独に感受性であるかどうかを調べるために、本発明者らはC57BL/6 WTマウス(12mg/kgのIB-DNQ、i.v.または100μgの抗PD-L1、i.p.)において、小さい(約50mm
3)および大きい(約150mm
3)腫瘍負荷を生成した。腫瘍体積および長期生存率をモニターした。完全な腫瘍拒絶は、IB-DNQまたは抗PD-1単独の処置後に、小さい腫瘍担持マウスでのみ達成されたが、大きい定着腫瘍担持マウスでは達成されなかった(
図28A~D)。これまでの研究(
図27)に基づいて、本発明者らは、IB-DNQが免疫チェックポイント遮断療法と相乗作用して、十分に定着したNQO1
+腫瘍を効果的に死滅させることを提唱する。この仮説を試験するために、本発明者らは、大きい定着MC38腫瘍担持マウスでIB-DNQ(12mg/kg、i.v.)処置を、抗PD-L1処置(100μg、i.p.)と組み合わせた。進行MC38腫瘍は、IB-DNQまたは抗PD-L1単独に対して中程度の応答を示すにすぎないことがわかった(
図28E~F)。まったく対照的に、併用群のマウスは、強い腫瘍制御および退縮を示した(
図28E~F)。特に、腫瘍担持マウスの40%は、全身処置による併用処置後に腫瘍を完全に拒絶した。これらの知見は、TME内でのPD-L1の増加がIB-DNQへの最初の応答後の大きい腫瘍の腫瘍再発に寄与しており、IB-DNQと免疫チェックポイント遮断との併用療法は、進行した、チェックポイント抵抗性腫瘍を根絶することを示唆した。
【0207】
実施例3-考察
適切な自然センシングの欠如は、T細胞標的免疫療法を制限する可能性がある(Patel et al., 2018; Qiao et al., 2017; Gajewski et al., 2013)。本発明者らは、いくつかの腫瘍標的指向遺伝子毒性物質を介した免疫原性自然センシングの誘導が抗腫瘍免疫を誘導し、免疫チェックポイント遮断抵抗性を克服する可能性があるとの仮説を立てた。ここで、いくつかの同種免疫適格マウスモデルおよびヒト疾患を密接に再現する免疫再構成ヒト異種移植モデルを使用して、NQO1生体内活性化可能β-ラパコン(β-lap)の抗腫瘍効果を評価した。本発明者らは、β-lapがインビボで、主に自然および適応免疫に依存する、印象的な抗腫瘍効果を有することを示した。本発明者らは、NQO1による活性化の後、β-lapが腫瘍選択的細胞死を引き起こし、適応抗腫瘍免疫のための自然センシングを誘導することを発見した。機構的に、腫瘍β-lapは、HMGB1の放出によって免疫原性細胞死および腫瘍免疫原性の増大を引き起こした。これは、自然免疫応答を活性化し、TLR4/MyD88依存的様式でI型IFNシグネチャを誘導し、これは抗腫瘍T細胞適応免疫を刺激し、腫瘍増殖を抑制した。重要なことに、β-lapは免疫療法抵抗性を克服した。抗PDL1 mAbと組み合わせると、β-lapはCD8 T細胞浸潤および抗原特異的T細胞応答をさらに増強し、大きい定着したチェックポイント遮断抵抗性腫瘍を根絶した。
【0208】
前臨床および臨床試験において、チェックポイント遮断は本質的に免疫系から「ブレーキ」を取り除き、局所免疫活性を活性化し、所望のT細胞応答を誘導するために一定の「燃料」と共に投与されない限り、抵抗性を破るには不十分であることが証明されている(Salmon et al., 2016; Kleponis et al., 2015; Kamphorst et al., 2017)。T細胞チェックポイント免疫療法と組み合わせて自然免疫センシングを刺激することは、1つの答えであり得る。腫瘍の自然免疫センシングは、抗原取り込みおよび提示、宿主PRR経路、I型IFN産生、ならびにT細胞の交差提示を介して起こるようである(Woo et al., 2015)。通常、自然免疫細胞は、DC活性化またはエフェクターT細胞分化を支持するサイトカインの産生を通じて、直接的または間接的に腫瘍制御に寄与し得る。しかし、腫瘍はまた、PRRシグナル伝達を抑制するか、またはPRRシグナルを破壊し、適応免疫応答を刺激するのではなく癌抑制炎症を促進するために機能が損なわれた先天性細胞を蓄積することによって、免疫クリアランスを回避する(Lee et al., 2009; Hernandez et al., 2016; Givennikov et al., 2010)。したがって、腫瘍微小環境における適切な自然センシングの有無は、実際には、チェックポイント遮断療法の成功の重要な決定因子となり得る。
【0209】
免疫原性自然センシングを誘導し、腫瘍微小環境を再構築する1つのアプローチは、癌処置に既に広く使用されている化学療法などの遺伝子毒性物質を使用することである(Patel et al., 2018; Emens et al., 2015; Pfirschke et al., 2016)。癌療法による瀕死腫瘍細胞は、特異的な自然センシング経路を介して免疫細胞の活性化のためのDAMPを発現または放出し、腫瘍関連抗原に対する抗腫瘍免疫応答を誘発し得る。事実、免疫チェックポイント遮断と化学療法との組み合わせが臨床試験で広く試験されている(Garg et al., 2017; Langer et al., 2016; Gandhi et al., 2018; Weiss et al., 2017)。しかし、従来の化学療法薬の使用における大きな制限の1つは、選択性の欠如および非標的組織、特に適応免疫系に対する関連有害毒性から生じる。NQO1は、正常組織の5~200倍のレベルで複数の腫瘍タイプで発現される2電子オキシドレダクターゼであり、潜在的な治療標的である(Huang et al., 2016; Li et al., 2016)。β-Lapは、NQO1によって触媒されて活性酸素種(ROS)を生成し得る、NQO1標的薬物の新しいクラスである(Huang et al., 2016; Doskey et al., 2016)。事実、本発明者らは、β-lapがインビトロおよびインビボの両方でNQO1を高発現する腫瘍を選択的に死滅させ、この死滅効果はNQO1をノックアウトすると消失することを見出し、この薬物の理想的な選択性を示した。長い間、遺伝子毒性物質は主に癌細胞自律機構を介して、すなわち、増殖を直接阻害するか、または悪性細胞の消滅を引き起こすことによって、その効果を発揮すると考えられていたが、蓄積する証拠は、数十年にわたり診療所でうまく使用されてきた複数の化学療法剤も免疫原性細胞死(ICD)を誘発し、新規抗癌免疫応答を引き出すことを示している(Sistigu et al., 2014)。残念なことに、ほとんどのICD誘導剤は、腫瘍選択性の欠如および重度の免疫抑制(急速に分裂する免疫細胞集団の枯渇)のために、治療用量で重度の副作用を有する。重要なことに、β-lapは、NQO1を過剰発現する腫瘍に対するその理想的な標的効果がなく、細胞傷害性免疫に対する免疫抑制のない、他の化学療法剤とそれ自体を区別した。本発明者らは、腫瘍浸潤CD8 β-lapは、腫瘍致死量でさえも、天然および活性化CD8 T細胞に対する細胞傷害効果がないことを証明した。新しい問題は、NQO1生体内活性化可能なβ-lap媒介性の腫瘍特異的細胞死が、免疫系と何らかの相互作用を有するかどうか;この「標的指向」化学療法薬が免疫原性細胞死を引き起こし、自然センシングを誘発するかどうかである。現在、本発明者らは、β-lap誘導性NQO1+腫瘍退縮が宿主CD8+ T細胞に大きく依存し:薬物はこれらの細胞を欠くマウス(Rag1-/-マウスならびに抗CD8抗体枯渇野生型マウス)の腫瘍進行を制御できないことを見出した。本発明者らはさらに、β-lapは免疫原性細胞死を誘導し、HMGB1/TLR4経路を介した自然センシングを活性化し、腫瘍微小環境におけるI型IFNシグナル伝達を増大させて、Batf3 DCのT細胞交差提示および抗腫瘍性適応免疫応答活性化を促進することを証明した。
【0210】
腫瘍負荷の低減および腫瘍免疫原性の増大は、免疫療法を改善するための2つの鍵となる因子であると考えられる(Zappasodi et al., 2018)。特に、β-lapはHMGB1依存性免疫原性を促進し、自然免疫応答と適応免疫応答とを橋渡しするための自然センシングを活性化し、かつ腫瘍量を著しく縮小し、したがって免疫療法との組み合わせのための有望なパートナーである。事実、本発明者らは、β-lapが抗PD-L1免疫療法との組み合わせにより、大きい定着したチェックポイント遮断抵抗性MC38およびB16腫瘍をなんとか根絶し、生存率を劇的に増加させることを示した。さらに、併用療法は、β-lapまたは抗PDL1単剤療法と比較して、腫瘍微小環境における腫瘍浸潤リンパ球および腫瘍抗原特異的T細胞ならびにCD8/Treg比を劇的に増大させることを証明した。化合物の最適用量ならびにこれらの組み合わせの投与計画および順序付けを探求するために、さらなる作業が必要である。
【0211】
全体として、本試験は、独特の標的化学療法薬であるβ-lapが、協調した自然および適応免疫を通じて抗腫瘍効果をいかに誘導するか、およびβ-lap処置が免疫療法にとって理想的な微小環境をいかに設定するかについての新しい洞察を提供した。β-lapは現在、NQO1+固形腫瘍患者において、単剤療法または他の化学療法薬との併用で試験中である。本試験は、β-lapの自然センシング能力が、免疫療法に対する正常な応答のためにNQO1+患者を準備し得ることを指摘している。
【0212】
本明細書において用いてきた用語および表現は、説明の用語として用いており、限定のものではなく、そのような用語および表現の使用において、示し、記載する特徴またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、特許請求する本開示の範囲内で様々な改変が可能であることが理解される。したがって、本開示を好ましい態様によって具体的に開示してきたが、本明細書において開示する概念の例示的態様ならびに任意の特徴、改変および変種が当業者によって行われてもよいこと、ならびにそのような改変および変種は添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。本明細書において提供される特定の態様は、本開示の有用な態様の例であり、当業者であれば、本開示を本記載に示す装置、装置構成要素、方法段階の多くの変種を用いて実施し得ることが明白であろう。当業者には理解されるとおり、本発明の方法に有用な方法および装置は多くの任意の組成および加工要素および段階を含み得る。
【0213】
V. 参照文献
以下の参照文献は、本明細書において示すものを補う例示的な手順またはその他の詳細を提供する程度に、特に参照により本明細書に組み入れられる。
【国際調査報告】