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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(54)【発明の名称】密閉断熱タンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20220510BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20220510BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220510BHJP
   B67D 9/02 20100101ALI20220510BHJP
【FI】
F17C3/04 A
F17C13/00 302E
B63B25/16 103
B67D9/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556240
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020057882
(87)【国際公開番号】W WO2020188107
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1902958
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デラノー セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クレモン ロマン
【テーマコード(参考)】
3E083
3E172
【Fターム(参考)】
3E083BB11
3E083BB16
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB12
3E172BB13
3E172BB17
3E172BC05
3E172BD02
3E172BD05
3E172CA10
3E172CA30
3E172CA33
3E172CA37
3E172DA13
3E172DA15
3E172DA17
3E172DA23
(57)【要約】
タンク壁を備える密閉断熱タンクであって、タンク壁は、二次断熱バリア(1)、二次密閉メンブレン(2)、一次断熱バリア(3)及び一次密閉メンブレン(4)を備える。複数の一次アンカー部材(12)が、一次断熱バリア(3)の少なくとも1つの一次断熱パネル(11)と相互作用する。一次アンカー部材(12)は、ベース(30)と、二次密閉メンブレン(2)の開口を通るステム(31)と、ステム(31)に取り付けられ、一次断熱パネル(11)を支持するよう構成されたベアリング素子(16,54)と、ステム(31)に係合し、二次密閉メンブレン(2)に密閉して固定されるカラー(37)を備えるシールワッシャ(34)と、シールワッシャ(34)とステムとの間の相対的な移動を可能にするようシールワッシャ(34)とステムとを密閉接続する変形可能なシール部(42)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク壁を備える密閉断熱タンクであって、
前記タンク壁は、前記タンク壁の厚さ方向に、前記密閉断熱タンクの外部から前記密閉断熱タンクの内部に連続して、支持壁に固定されるよう構成された二次断熱バリア(1)と、前記二次断熱バリア(1)に載置される二次密閉メンブレン(2)と、前記二次密閉メンブレン(2)に載置される一次断熱バリア(3)と、前記一次断熱バリア(3)に載置され、前記密閉断熱タンク内に収容される製品と接触するよう構成された一次密閉メンブレン(4)と、を備え、
前記一次断熱バリア(3)は、複数の並置された一次断熱パネル(11)を備え、
前記密閉断熱タンクは、前記支持壁上に直接又は間接的に保持されるよう構成された複数の一次アンカー部材(12)をさらに備え、
前記一次アンカー部材(12)は、各々、前記複数の一次断熱パネル(11)のうちの少なくとも1つの一次断熱パネル(11)と相互作用して、該少なくとも1つの一次断熱パネル(11)を前記二次密閉メンブレン(2)上に保持するよう構成され、
前記一次アンカー部材(12)は、
前記支持壁上に直接又は間接的に保持されるよう構成されたベース(30)と、
前記ベース(30)から一次密閉メンブレン(4)に向かって前記タンク壁の前記厚さ方向に延在するステム(31)であって、前記二次密閉メンブレン(2)の開口を通るステム(31)と、
前記ステム(31)に取り付けられるベアリング素子(16,54)であって、前記一次断熱パネル(11)を前記二次密閉メンブレン(2)上に保持するように前記一次断熱パネル(11)を支持するよう構成されたベアリング素子(16,54)と、
前記ベアリング素子(16)と前記二次密閉メンブレン(2)の前記開口との間で前記ステム(31)に係合するシールワッシャ(34)であって、前記ステム(31)が通る中央開口(36)を有し、前記二次密閉メンブレン(2)の前記開口の周囲において前記二次密閉メンブレン(2)に密閉するように固定されるシールワッシャ(34)と、
前記シールワッシャ(34)と前記ステム(31)との間の相対的な移動を可能にするよう前記シールワッシャ(34)と前記ステム(31)とを密閉接続する変形可能なシール部(42)と、を備える、密閉断熱タンク。
【請求項2】
前記シールワッシャ(34)の前記中央開口(36)の横方向の寸法は、前記中央開口(36)内に係合する前記ステム(31)の一部の前記横方向の寸法よりも大きく、これにより、前記ステム(31)が前記シールワッシャ(34)の前記中央開口(36)内で前記タンク壁の前記厚さ方向に垂直な方向に移動することが可能となるよう構成されている、請求項1に記載の密閉断熱タンク。
【請求項3】
前記一次アンカー部材(12)が、前記ステム(31)に設けられたストッパをさらに備え、
前記ストッパは、前記ベアリング素子(16)と前記シールワッシャ(34)との間で前記ステム(31)上に配置され、
前記ストッパは、前記シールワッシャ(34)に対向するストップ面(47)を有し、これにより、前記シールワッシャ(34)が前記ステム(31)に対して前記タンク壁の前記厚さ方向に前記一次密閉メンブレン(4)に向かって移動するのを止めるよう構成されている、請求項1又は2に記載の密閉断熱タンク。
【請求項4】
前記ステム(31)はショルダ部(48)を備え、
前記ショルダ部(48)の外面(49)が前記ストップ面(47)を形成するよう、前記ショルダ部(48)が、前記ステム(31)から横方向に、前記シールワッシャ(34)の前記中央開口(36)を超えて突出する、請求項3に記載の密閉断熱タンク。
【請求項5】
前記一次アンカー部材(12)は、前記ステム(31)に取り付けられるベル部(43)をさらに備え、
前記ベル部(43)は、取付部(44)及び保護部(45)を備え、
前記取付部(44)は、前記ステム(31)が通る中央通路を有し、
前記保護部(45)は、前記取付部(44)から前記シールワッシャ(34)に向かって、前記タンク壁の前記厚さ方向に延在し、
前記保護部(45)は中空であり、
前記変形可能なシール部(42)は、前記保護部(45)内に収容される、請求項1~4の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項6】
前記保護部(45)における前記取付部(44)の反対側にある外側端部によって、前記シールワッシャ(34)に対向する前記ストップ面(47)が形成される、請求項3を引用する請求項5に記載の密閉断熱タンク。
【請求項7】
前記ベル部(43)は前記ステム(31)に固定される、請求項5又は6に記載の密閉断熱タンク。
【請求項8】
前記ベル部と隣接する前記一次断熱パネルとの間のギャップにおいて前記ベル部の周囲に配置される伝達ウェッジをさらに備える、請求項5~7の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項9】
前記シールワッシャ(34)は平坦部(85)を備え、前記ベル部(43)は平坦部(89)を備え、
前記平坦部(85)及び前記平坦部(89)は、締結具によって把持されるよう構成され、前記ステム(31)と前記シールワッシャ(34)とが、前記変形可能なシール部(42)のねじれを生じさせることなく、一緒に回転するよう構成されている、請求項5~8の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項10】
前記変形可能なシール部は変形可能な蛇腹部(42)を備え、
前記変形可能な蛇腹部(42)は中空であり、前記ステム(31)の周囲に前記ステム(31)の軸方向に沿って延在し、
前記蛇腹部(42)の第1の軸方向端部は、前記ステム(31)に密閉するよう固定され、
前記蛇腹部(42)の第2の軸方向端部は、前記シールワッシャ(34)に密閉するよう固定される、請求項1~9の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項11】
前記蛇腹部(42)は少なくとも3つのひだを有する、請求項10に記載の密閉断熱タンク。
【請求項12】
前記蛇腹部(42)はフレア形状を有し、
前記シールワッシャ(34)に固定される前記蛇腹部(42)の前記第2の軸方向端部の周囲寸法は、前記ステム(31)に固定される前記蛇腹部(42)の前記第1の軸方向端部の周囲寸法よりも大きい、請求項10又は11に記載の密閉断熱タンク。
【請求項13】
前記一次アンカー部材(12)の前記ベース(30)は前記二次断熱バリア(1)に固く固定される、請求項1~12の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項14】
前記ステム(31)における前記ベース(30)の反対側にある内側端部にはねじ山が設けられており、
前記一次アンカー部材(12)が、ねじ山付きの前記内側端部にねじ留めされるナット(32)をさらに備え、
前記ベアリング素子(16,54)が、前記ナット(32)と前記一次アンカー部材(12)の前記ベース(30)との間に挿入され、
前記変形可能なシール部が、前記ベアリング素子(16,54)と前記シールワッシャ(34)との間に挿入される、請求項1~13の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項15】
弾性ワッシャ(33)が、前記ナット(32)と前記ベアリング素子(16,54)との間に挿入される、請求項14に記載の密閉断熱タンク。
【請求項16】
前記一次アンカー部材(12)は、前記ステム(31)から横方向に突出するアンカーショルダ部(40)を有し、
前記アンカーショルダ部(40)は、前記厚さ方向に垂直な面内に延在するアンカー面(41)を形成し、
前記アンカー面(41)は前記ベアリング素子(16,54)に対向し、
前記変形可能なシール部が、前記アンカー面(41)に密閉するよう固定される、請求項1~15の何れか一項に記載の密閉断熱タンク。
【請求項17】
二重船体(72)と、前記二重船体内に配置される請求項1~16の何れか一項に記載のタンクと、を備える、低温液体製品を輸送するための運搬船(70)。
【請求項18】
請求項17に記載の運搬船(70)と、
前記運搬船の前記二重船体内に設置された前記タンク(71)を浮体又は陸上貯蔵設備(77)に接続するよう配された断熱パイプライン(73,79,76,81)と、
前記浮体若しくは陸上貯蔵設備から前記運搬船の前記タンクへ又は前記運搬船の前記タンクから前記浮体若しくは陸上貯蔵設備への前記断熱パイプラインを介する低温液体製品の流れを生じさせるためのポンプと、を備える、低温液体製品を輸送するための輸送システム。
【請求項19】
請求項17に記載の運搬船(70)に対して積み降ろしを行うための方法であって、
浮体若しくは陸上貯蔵設備(77)から前記運搬船(71)の前記タンクに又は前記運搬船(71)の前記タンクから浮体若しくは陸上貯蔵設備(77)に、断熱パイプライン(73,79,76,81)を介して低温液体製品を送ることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンを有する密閉断熱タンクの分野に関する。特に、本発明は、例えば-50℃から0℃の温度を有する液化石油ガス(別名LPG)を輸送するためのタンク又は大気圧で-162℃付近の液化天然ガス(LNG)を輸送するためのタンクのような、低温で液化ガスを貯蔵及び/又は輸送するための密閉断熱タンクの分野に関する。これらのタンクは陸上又は浮体構造物に設置することができる。浮体構造物の場合、タンクは、液化ガスの輸送、又は浮体構造物を推進するための燃料として用いられる液化天然ガスの収容を意図したものであってもよい。
【背景技術】
【0002】
一実施形態では、液化ガスはLNG、即ち大気圧で約-162℃の温度で貯蔵された高いメタン含有量を有する混合物である。他の液化ガス、特にエタン、プロパン、ブタン又はエチレンも考えられる。液化ガスは、圧力下で貯蔵することもでき、例えば2バールから20バールの相対圧力、特に2バールに近い相対圧力で貯蔵することもできる。
【0003】
WO2014096600は、液化天然ガス貯蔵用の密閉断熱タンクを開示しており、該密閉断熱タンクは支持構造内に配置され、多層構造の壁を備えており、即ち、タンクの外部から内部に向かって、支持構造に固定される二次断熱バリアと、二次断熱バリアによって支持された二次密閉メンブレンと、二次密閉メンブレン上に置かれた一次断熱バリアと、一次断熱バリアによって支持され、タンク内に貯蔵された液化天然ガスと接触するよう構成された一次密閉メンブレンと、を有する。
【0004】
一次断熱バリア及び二次断熱バリアの各断熱バリアは、並置されしたがってそれぞれの密閉メンブレンの支持面を形成する略平行六面体形状の断熱パネルのセット、それぞれ一次断熱パネル及び二次断熱パネルである、を含む。断熱パネルは、支持構造に固定され、一次断熱パネルと二次断熱パネルのコーナーに配置されるアンカー装置によって、支持構造上に固定される。したがって、各アンカー装置は、4つの隣接する二次断熱パネルのコーナーと及び4つの隣接する一次断熱パネルのコーナーと相互作用して、これらを支持構造に保持する。
【0005】
WO2013104850には、一次断熱バリアの断熱パネルのコーナーが二次断熱バリアの断熱パネルのコーナーと整列して配置されていない多層構造を備える密閉断熱タンクが記載されている。このようなタンクでは、一次断熱パネルと相互作用する一次アンカー装置が二次断熱パネルに固定されるプレートに固定される。したがって、一次アンカー装置及び一次断熱パネルは二次断熱パネルによって支持構造に固定される。
【0006】
すべての場合において二次断熱パネルは変形及び/又は移動しやすい。具体的には、二次断熱パネルは熱勾配を受け、これによって差動収縮現象により曲がる場合がある。さらに支持構造の変形によって二次断熱パネルの変形及び/又は移動が生じる。これは特に支持構造が浮体構造物の内側船体で構成される場合に生じる。また、この船体がバラストコンパートメントを画定する場合、バラストコンパートメント内のバラスト液の移動によっても支持構造のかなりの変形、したがって支持構造上に固定された二次断熱パネルの変形及び/又は移動が生じやすい。
【0007】
さらに、タンク内に収容された液体の移動によって、特に一次密閉メンブレンがコルゲーションのような突出部を含む場合に一次密閉メンブレン上に応力が生じることがある。これらの応力は、一次密閉メンブレンが固定された一次断熱パネルに伝わり一次断熱パネルを横方向に移動させる傾向がある。その結果、一次アンカー装置に応力が集中する。
【0008】
しかしながら、一次アンカー装置は、二次密閉メンブレンの密閉性を確実にするために二次密閉メンブレンに密閉するよう溶接されたカラーを含む。このカラーは、対応する一次断熱パネル又は複数の一次断熱パネルと相互作用するベアリング素子を担持するスタッドに固く固定される。二次断熱パネルの変形及び/若しくは移動、並びに/又は一次断熱パネルの移動が生じると、一次アンカー装置と二次密閉メンブレンとの間のこの接続部によってカラーと二次密閉メンブレンとの間の溶接部に応力が集中して生じやすく、これによって溶接部及び二次密閉メンブレンが損傷する可能性がある。
【0009】
特に、二次断熱パネルに固定される一次アンカー装置の場合、二次断熱パネルの変形及び/又は移動によって一次アンカー装置が移動する。一次アンカー装置のこの移動はスタッドに固く固定されたカラーに伝わり、カラーと二次密閉メンブレンとの間の密閉接続部に応力を生じさせる。このような応力によって、二次密閉メンブレン及び/又はカラーと二次密閉メンブレンとの間の密閉接続部が損傷し、その結果、二次密閉メンブレンの密閉性が損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の基礎を形成する思想は、二次密閉メンブレンと一次断熱パネルの一次アンカー部材との間の接続部における応力の集中を制限することである。本発明の基礎を形成する思想は、一次アンカー部材と二次密閉メンブレンとの間に柔軟な密閉接続部を形成することである。したがって、本発明の基礎を形成する思想は、二次密閉メンブレンと一次アンカー部材との間の相対的な移動を可能にすることである。本発明の基礎を形成する思想は、一次アンカー部材が、例えば二次アンカー部材と結合して作製されることによって支持構造に直接固定されているか、又は例えば二次断熱パネルに固定されることによって支持構造に間接的に固定されているかのいずれであっても、上記移動を可能にすることである。したがって、本発明の基礎を形成する別の思想は、一次アンカー部材が固定された二次断熱パネルと二次密閉メンブレンとの間の相対的な移動を可能にすることである。
【0011】
一実施形態では、本発明は、タンク壁を備える密閉断熱タンクを提供し、タンク壁は、タンク壁の厚さ方向に、密閉断熱タンクの外部から密閉断熱タンクの内部に連続して、支持壁に固定されるよう構成された二次断熱バリアと、二次断熱バリアに載置される二次密閉メンブレンと、二次密閉メンブレンに載置される一次断熱バリアと、一次断熱バリアに載置されるとともに密閉断熱タンク内に収容される製品と接触するよう構成された一次密閉メンブレンと、を備え、一次断熱バリアは複数の並置された一次断熱パネルを備え、密閉断熱タンクは支持壁上に直接又は間接的に保持されるよう構成された複数の一次アンカー部材をさらに備え、一次アンカー部材は各々、複数の一次断熱パネルのうちの少なくとも1つの一次断熱パネルと相互作用して、この少なくとも1つの一次断熱パネルを二次密閉メンブレン上に保持するよう構成され、一次アンカー部材の1つ、複数又は各々は、支持壁上に直接又は間接的に保持されるよう構成されたベースと、ベースから一次密閉メンブレンに向かってタンク壁の厚さ方向に延在するステムであって、二次密閉メンブレンの開口を通るステムと、ステムに取り付けられるベアリング素子であって、一次断熱パネルを二次密閉メンブレン上に保持するように一次断熱パネルを支持するよう構成されたベアリング素子と、ベアリング素子と二次密閉メンブレンの開口との間でステムに係合するシールワッシャであって、ステムが通る中央開口を有し、二次密閉メンブレンの開口の周囲において二次密閉メンブレンに例えばシールワッシャのカラーによって密閉するように固定されるシールワッシャと、シールワッシャとステムとの間の相対的な移動を可能にするようシールワッシャとステムとを密閉接続する変形可能なシール部と、を備える。
【0012】
上記の特徴により、二次密閉メンブレンと一次アンカー部材との間の相対的な移動が、二次密閉メンブレンに又は一次アンカー部材と二次密閉メンブレンとの間の密閉接続部に損傷を与えるリスクなしに、可能となる。特に、変形可能なシール部によって、一方側において一次アンカー部材のステムとの間に、そして他方側においてシールワッシャとの間に、柔軟な密閉接続部が形成され、これにより二次密閉メンブレンの密閉性が保証される。したがって、このような一次アンカー部材によって、二次断熱パネル及び/又は一次断熱パネルと二次密閉メンブレンとの間の相対的な移動が、二次密閉メンブレンに又は一次アンカー部材と二次密閉メンブレンとの間の密閉接続部に損傷を与えるリスクなしに、可能となる。
【0013】
一実施形態では、上記のタンクは以下の特徴のうちの1つ又は複数を備えてもよい。
【0014】
上記の一次アンカー部材はタンク壁の全体にわたって用いられてもよく、あるいはバラスト領域などのタンク壁の局所的な部分においてのみ用いられてもよい。一実施形態では、タンク壁はこのタンク壁の重力方向の高さを画定する鉛直コンポーネントを有し、タンク壁は上記の一次アンカー部材を複数有し、各一次アンカー部材が、上述のように、ベースと、ステムと、ベアリング素子と、シールワッシャと、変形可能なシール部とを備え、複数の一次アンカー部材はタンク壁の下側部分に配置され、例えばタンク壁の高さの下側2/3に配置される。
【0015】
一実施形態では、タンク壁は第1のタンク壁であり、上記タンクは第2のタンク壁をさらに備え、第1のタンク壁と第2のタンク壁が上記タンクの縁を形成し、第1のタンク壁は上記の一次アンカー部材を複数有し、各一次アンカー部材が、上述のように、ベースと、ステムと、ベアリング素子と、シールワッシャと、変形可能なシール部とを備え、複数の一次アンカー部材が、タンクの縁から所定閾値以下だけ距離を置いた場所に配置される。例えば、所定閾値は5つの断熱パネル分の幅に対応し、複数の一次アンカー部材は、例えば5つの連続する一次断熱パネルを上記縁に垂直な方向に保持するよう配置される。
【0016】
タンクの底部に位置するタンク壁の一部は、例えば輸送されている液体の重量により、あるいは実際には例えばコファダム壁に固定されている横方向のタンク壁の場合には運搬船内のバラストにより、特に高い応力にさらされる。同様に、タンクの縁領域もまた運搬船のバラスト内の水によって生じる圧力を含む特に高い応力にさらされる。これらの応力は、一方側において一次断熱バリア及び/又は二次断熱バリアとの間、他方側においてタンクの底部及び/又は縁の二次密閉メンブレンとの間の相対的な移動を引き起こしやすい。したがって、上記の一次アンカー部材の配置により、一次アンカー部材と二次密閉メンブレンとの間の接続部の柔軟性によって、二次密閉メンブレンが損傷するリスクが制限される。
【0017】
一次断熱パネルはさまざまな方法で製造することができる。一実施形態では、一次断熱パネルは平行六面体形状である。
【0018】
一実施形態では、一次断熱パネルは、底プレートと、カバープレートと、底プレートとカバープレートとの間に挿入される断熱ライニングとを備える。
【0019】
ベアリング素子は一次断熱パネルのさまざまな部分を支持することができる。一実施形態では、ベアリング素子は一次断熱パネルを直接支持し、例えば一次断熱パネルの底プレートを支持する。一実施形態では、ベアリング素子は、例えばベアリング素子と一次断熱パネルの要素、例えば一次断熱パネルの底プレートとの間に挿入されたウェッジを介して、一次断熱パネルを間接的に支持する。
【0020】
一実施形態では、一次断熱パネルのコーナーは凹部を備え、この凹部はタンクの内部に向くベアリング面を露出する。一実施形態では、一次アンカー部材のベアリング素子は直接又は間接的に一次断熱パネルのベアリング面を支持する。一実施形態では、凹部はカバープレート及び断熱ライニングに形成される。一実施形態では、ベアリング面は、断熱ライニング及びカバープレートに形成された凹部から突出する底プレートの一部によって形成される。一実施形態では、ベアリング面は、ベアリング素子と、断熱ライニング及びカバープレートに形成された凹部から突出する底プレートの一部との間に配置されるウェッジによって形成される。
【0021】
一実施形態では、一次アンカー部材は、例えばコーナーが隣接する4つのパネルなどの隣接する一次断熱パネルのコーナーと相互作用して、これら隣接する一次断熱パネルを支持壁に固定する。
【0022】
シールワッシャはさまざまな方法で二次密閉メンブレンに固定することができる。一実施形態では、シールワッシャ又はカラーは二次密閉メンブレン上に密閉するよう溶接される。
【0023】
一実施形態では、変形可能なシール部は、シールワッシャがタンク壁の厚さ方向にステムに沿ってスライドできるようにタンク壁の厚さ方向に変形可能である。
【0024】
一実施形態では、シールワッシャの中央開口の横方向の寸法は中央開口内に係合するステムの一部の横方向寸法よりも大きく、これにより、ステムがシールワッシャの中央開口内でタンク壁の厚さ方向に垂直な方向に移動することが可能となるよう構成されている。このようなシールワッシャは、シールワッシャがステムに対してタンク壁の厚さ方向に垂直な方向に自由に移動することを可能にする。より具体的には、上記一次アンカー部材はステムに取り付けられ、一次断熱パネル又は複数の一次断熱パネルと相互作用するベアリング素子に対して、シールワッシャと二次密閉メンブレンとの間の密閉接続部の移動を可能にする。したがって、一次アンカー部材を用いることでタンク壁の厚さ方向に垂直な平面内の二次断熱パネル及び/又は一次断熱パネルのいかなる移動も、二次密閉メンブレンには伝達されず、したがって、異なる収縮、支持壁の変形又はタンク内の液体の移動に関連する応力が低減され、二次密閉メンブレン又はシールワッシャと二次密閉メンブレンとの間の密閉接続部が損傷するリスクが制限される。
【0025】
一実施形態では、一次アンカー部材がステムに設けられたストッパをさらに備え、ストッパはベアリング素子とシールワッシャとの間でステム上に配置され、ストッパはシールワッシャに対向するストップ面を有し、これにより、シールワッシャがステムに対してタンク壁の厚さ方向に一次密閉メンブレンに向かって移動するのを止めるよう構成されている。
【0026】
上記特徴により、タンク壁の厚さ方向の二次密閉メンブレンの変形がシールワッシャと二次密閉メンブレンの開口との間の密閉接続部において制限される。特に、二次断熱バリアに過度の圧力が生じた場合、あるいは二次絶断熱バリアが変形した場合に、二次密閉メンブレンがタンク壁の厚さ方向に変形するのを防ぐ。具体的には、シールワッシャは二次密閉メンブレンの開口の周囲で二次密閉メンブレンに密閉するよう固定されるため、二次密閉メンブレンをタンクの内部に向かって移動させる傾向がある力の場合、シールワッシャとの密閉接続部における二次密閉メンブレンの局所的な変形がストップ面に当接するシールワッシャによって阻止される。したがって、例えば穿孔により二次密閉メンブレンが損傷するリスクが低減される。さらに、この二次密閉メンブレンの局所的な変形の制限により、変形可能なシール部が損傷するリスクを制限することが可能となる。
【0027】
一実施形態では、ステムはショルダ部を備え、ショルダ部の外面がストップ面を形成するよう、ショルダ部がステムから横方向にシールワッシャの中央開口を超えて突出する。このようなストッパは製造が簡単で追加の部品を必要としない。
【0028】
一実施形態では、一次アンカー部材はステムに取り付けられたベル部をさらに備え、ベル部は取付部及び保護部を備え、取付部はステムが通る中央通路を有し、保護部は取付部からシールワッシャのカラーに向かってタンク壁の厚さ方向に延在し、保護部は中空であり、変形可能なシール部は保護部内に収容される。このような、一次アンカー部材のステムを囲むベル部によって、ステム及び変形可能なシール部を保護することができる。
【0029】
一実施形態では、ベル部の取付部はタンク壁の厚さ方向に垂直な面内に延在するプラトー部を備え、プラトー部はベル部を貫通する通路を備える。
【0030】
一実施形態では、変形可能なシール部は全体がベル部の保護部内に収容される。したがって、変形可能なシール部は、例えば一次アンカー部材をタンクに取り付ける際にベル部によって保護される。一実施形態では、変形可能なシール部はベル部の取付部の通路とシールワッシャとの間においてステムに固定される。
【0031】
一実施形態では、ベル部の保護部における取付部と反対側の端部は径方向外側に延在するリップを備え、リップの外面はストップ面を形成し、これにより、シールワッシャがタンク壁の厚さ方向に移動することを阻止するよう構成されている。
【0032】
一実施形態では、保護部における取付部と反対側の外側端部はシールワッシャと対向するストップ面を形成し、これにより、シールワッシャがタンク壁の厚さ方向に移動することを阻止するよう構成されている。
【0033】
一実施形態では、ベル部はステムに固定される。したがって、ストップ面は、ステムに対して固定された位置にある保護部によって形成されることとなり、これにより、シールワッシャのステムに対する移動が阻止される。一実施形態では、ベル部の取付部はステムに溶接される。
【0034】
一実施形態では、変形可能なシール部は変形可能な蛇腹部を備え、変形可能な蛇腹部は中空であり、ステムの周囲にステムの軸方向に沿って延在し、蛇腹部の第1の軸方向端部はステムに密閉するよう固定され、蛇腹部の第2の軸方向端部はシールワッシャに密閉するよう固定される。このような蛇腹部のかたちの変形可能なシール部は、製造が簡単であり、変形可能なシール部の十分な密閉変形を可能にする。そのような蛇腹部は多くの材料から作製することができる。一実施形態では、蛇腹部はステンレス鋼から作製される。そのようなステンレス鋼からなる蛇腹部は弾性変形を可能にするのに十分薄い。一実施形態では、蛇腹部は、厚さが0.1mmから0.5mm、例えば0.1mmから0.3mmのステンレス鋼から作製される。
【0035】
一実施形態では、蛇腹部は、直径が同じ又は増大する複数のひだを有し、したがって、複数のひだによって形成される蛇腹部の中央部は実質的に回転柱の形状を有する。
【0036】
一実施形態では、蛇腹部は、少なくとも3つ、好ましくは3つから32個、理想的には6つから24個のひだ又はコルゲーションを有する。
【0037】
一実施形態では、蛇腹部はフレア形状を有し、シールワッシャに固定される蛇腹部の第2の軸方向端部の周囲寸法は、ステムに固定される蛇腹部の第1の軸方向端部の周囲寸法よりも大きい。
【0038】
一実施形態では、蛇腹部は、直径がステムに固定される端部からシールワッシャに固定される端部に向かって増大する複数のひだを有する。したがって、これら複数のひだによって形成される蛇腹部の一部は円錐形状を有し、当該円錐形状はシールワッシャに固定される端部の位置において直径が最大となる。
【0039】
一実施形態では、シールワッシャは、タンク壁の厚さ方向に垂直な面内に延在する内面を有する。一実施形態では、当該内面は、例えばベル部の又はステムの一部を形成するストップ面と相互作用するようにストップ面に対向するよう配置され、これにより、シールワッシャがステムに対してタンクの厚さ方向に移動するのを阻止するよう構成されている。
【0040】
一実施形態では、変形可能なシール部はシールワッシャの内面の径方向外側部分においてシールワッシャの内面に固定される。
【0041】
一実施形態では、シールワッシャはシールワッシャの内面から突出するリブを備え、変形可能なシール部はこのリブに密閉するよう固定される。一実施形態では、シールワッシャのリブはシールワッシャ内面の径方向内側部分から延在する。
【0042】
一実施形態では、タンクは複数の二次アンカー部材を含み、各二次アンカー部材は支持壁に固定されるよう構成されるとともに、二次アンカー部材が支持壁に固定されたときに二次断熱バリアを支持壁の方向に支持するように二次断熱バリアと相互作用するよう構成される。
【0043】
一実施形態では、一次アンカー部材のベースは二次アンカー部材に固定される。
【0044】
一実施形態では、一次アンカー部材のベースは二次断熱バリアに固く固定される。この場合、一次アンカー部材は二次断熱バリアによって支持壁に保持される。
【0045】
一実施形態では、二次断熱バリアは複数の並置される二次断熱パネルを備える。一実施形態では、1つ又は複数の二次断熱パネルは、底プレート、カバープレート、及び底プレートとカバープレートとの間に挿入された断熱ライニングを備え、二次密閉メンブレンは断熱ライニングの反対側のカバープレートの内面に載置される。一実施形態では、1つ又は複数の二次断熱パネルは当該二次断熱パネルのカバープレートと底プレートとの間に挿入される中間プレートを備え、二次断熱パネルの断熱ライニングは、底プレートと中間プレートとの間に挿入される外側断熱ライニングと、中間プレートとカバープレートとの間に挿入される内側断熱ライニングとを備える。
【0046】
一実施形態では、二次断熱バリアはアンカープレートを備え、一次アンカー部材のベースはアンカープレートに固定されている。一実施形態では、アンカープレートは二次断熱パネルのカバープレートに形成された凹部に収容され、アンカープレートはカバープレートの内面と同一平面にある内面を有する。
【0047】
一実施形態では、アンカープレートはねじ山付き開口を備え、ベースは外側ねじ山付き端部を有し、一次アンカー部材のベースは、ベースのねじ山付き端部をアンカープレートのねじ山付き開口にねじ留めすることによってアンカープレートに固定される。
【0048】
一実施形態では、ステムにおけるベースと反対側の内側端部にはねじ山が設けられており、一次アンカー部材は内側ねじ山付き端部にねじ込まれるナットを含み、ベアリング素子はナットと一次アンカー部材のベースとの間に挿入される。
【0049】
一実施形態では、変形可能なシール部はベアリング素子とシールワッシャとの間に挿入される。
【0050】
一実施形態では、1つ又は複数の弾性ワッシャはナットとベアリング素子との間に挿入される。
【0051】
一実施形態では、一次アンカー部材はステムから横方向に突出するアンカーショルダ部を有し、アンカーショルダ部は上記厚さ方向に垂直な面内に延在するアンカー面を形成し、アンカー面はベアリング素子に対向し、変形可能なシール部がアンカー面に密閉して固定される。
【0052】
一実施形態では、ステムに固定される変形可能シールの内側端部はベル部の取付部とアンカーショルダ部の平坦なアンカー面との間に挿入される。
【0053】
一実施形態では、ベル部はタンク壁の厚さ方向に自由に移動することができる。一実施形態では、ベル部の移動の自由度は、一方側においてステムに取り付けられたナット又は必要に応じて弾性ワッシャ若しくは複数の弾性ワッシャによって、そして他方側においてアンカーショルダ部のアンカー面によって、制限される。
【0054】
一実施形態では、ステムに固定された変形可能シールの内側軸方向端部は、アンカーショルダ部のアンカー面と、ステムに取り付けられたナット又は必要に応じて弾性ワッシャと、の間に挿入される。
【0055】
一実施形態では、二次密閉メンブレン及び/又は一次密閉メンブレンは鉄とニッケルの合金から作製され、例えば典型的に1.2×10-6-1から2×10-6-1の膨張係数を有する合金である。一実施形態では、二次密閉メンブレン及び/又は一次密閉メンブレンは鉄とマンガンの合金から作製され、例えば典型的に約7×10-6-1から約9×10-6-1の膨張係数を有する鉄とマンガンの合金から作製される。二次密閉メンブレン及び/又は一次密閉メンブレンは、隆起した縁を有する複数のストレーキを備え、これらは並置されてこれらの隆起した縁を介して対で溶接される。
【0056】
一実施形態では、一次密閉メンブレン及び/又は二次密閉メンブレンは、互いに溶接された、好ましくは矩形の複数の金属プレートを備える。一実施形態では、一次密閉メンブレン及び/又は二次密閉メンブレンは、第1の方向に延在する第1の一連の平行コルゲーションと、第2の方向に延在する第2の一連の平行コルゲーションとを含み、第1の方向と第2の方向は互いに交わる(secantes)。
【0057】
一実施形態では、伝達ウェッジは、ベル部の周囲において、ベル部と隣接する一次断熱パネルとの間、例えばベル部と隣接する一次断熱パネルの底プレートとの間のギャップに配置される。これらの特徴により、アンカー部材と相互作用する断熱パネルの横方向の移動が伝達ウェッジを介してベル部、ステム、そしてステムの支持体、例えば二次断熱バリアに伝達され、これにより、シールワッシャと密閉メンブレンとの間の密閉接続部に損傷を与えるリスクなしに、一次断熱パネルによって加えられる横方向の力を吸収することが可能となる。
【0058】
一実施形態では、伝達ウェッジは、タンク壁の厚さ方向で考える厚さが一次断熱パネルの底プレートの厚さよりも小さい。したがって、一次断熱パネルが横方向に移動すると底プレートのみが伝達ウェッジに当接し、一次断熱パネルと伝達ウェッジとの間の力の良好な伝達が保証される。
【0059】
一実施形態では、伝達ウェッジは外側部分及びプラトー部を含み、外側部分はタンク壁の厚さ方向にシールワッシャの周囲に延在し、プラトー部はベル部を囲む中央開口を有し、外側部分及びプラトー部によって、シールワッシャがクリアランスを空けて収容されるハウジングが形成され、これにより、ウェッジはシールワッシャと干渉せずに横方向の力をベル部に伝達することができる。
【0060】
一実施形態では、伝達ウェッジはプラトー部から延在してベル部を囲む内側部分をさらに備える。
【0061】
一実施形態では、伝達ウェッジの外側部分は円筒形状である。一実施形態では、この外側部分はステムと同軸である。
【0062】
一実施形態では、伝達ウェッジは、伝達ウェッジの外側部分から径方向に延在する、タンク壁の厚さ方向に平行なウイング部、好ましくは複数のウイング部を備える。一実施形態では、この1つ又は複数のウイング部は2つの隣接する一次断熱パネルの間に収容される。
【0063】
一実施形態では、伝達ウェッジはパネル間に空いている空間よりも小さい。したがって、パネル間へのウェッジの取り付けが容易となる。
【0064】
一実施形態では、シールワッシャは平坦部を含み、ベル部は平坦部を含み、これら平坦部は、アンカー部材がその支持体、例えば二次断熱バリアにねじ込まれる際に変形可能なシール部にねじれを生じさせることなくステムとシールワッシャとが一緒に回転するよう、締結具によって把持されるよう構成されている。一実施形態では、シールワッシャは平坦部を含み、ステムは平坦部を含み、これら平坦部は、変形可能なシール部にねじれを生じさせることなくステムとシールワッシャとが一緒に回転するように、締結具によって把持されるよう構成されている。
【0065】
上記のタンクは、例えばLNGを貯蔵するための陸上貯蔵設備の一部を形成することができ、あるいは、沿岸又は深海の浮体構造物、特にLNG運搬船、浮体貯蔵及び再ガス化ユニット(FSRU)、リモート浮体生産及び貯蔵ユニット(FPSO)などに設置することができる。このようなタンクはあらゆるタイプの運搬船の燃料タンクとしても使用することができる。
【0066】
一実施形態では、本発明はまた、二重船体と、二重船体内に配置される上記のタンクと、を備える低温液体製品を輸送するための運搬船を提供する。
【0067】
一実施形態では、本発明はまた、上記の運搬船に対して積み降ろしを行うための方法を提供し、この方法は、浮体若しくは陸上貯蔵設備から運搬船のタンクに又は運搬船のタンクから浮体若しくは陸上貯蔵設備に断熱パイプラインを介して低温液体製品を送ることを含む。
【0068】
一実施形態では、本発明はまた、低温液体製品を輸送するための輸送システムを提供し、このシステムは、上記の運搬船と、運搬船の船体内に設置されたタンクを浮体又は陸上貯蔵設備に接続するよう配された断熱パイプラインと、浮体若しくは陸上貯蔵設備から運搬船のタンクへ又は運搬船のタンクから浮体若しくは陸上貯蔵設備への断熱パイプラインを介する低温液体製品の流れを生じさせるためのポンプと、を備える。
【0069】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な例示としてのみ提供される本発明のいくつかの特定の実施形態の以下の説明においてより良く理解され、他の目的、詳細、特徴、及び利点がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】密閉断熱タンクの壁の一部を切り取った上方からの部分図であり、一次密閉メンブレンは示されていない。
図2図1に示す断面A-Aを通る図1のタンク壁の断面図である。
図3】隣接する2つの一次断熱パネルを固定する一次アンカー部材を示す図2の領域Bの詳細図である。
図4図3のアンカー部材の概略斜視図である。
図5図4に示す一次アンカー部材の概略斜視図であり、ベル部は示されていない。
図6】第2の実施形態による一次アンカー部材の断面図である。
図7】第3の実施形態による一次アンカー部材の断面図である。
図8】第4の実施形態による一次アンカー部材の断面図である。
図9】LNG運搬船のタンクとこのタンクを積み降ろしするためのターミナルを、一部を切り取った状態で概略的に示す図である。
図10】第5の実施形態による一次アンカー部材の概略斜視図である。
図11】2つの一次断熱パネルと相互作用する図10の一次アンカー部材の断面図である。
図12図11のアンカー部材の概略斜視図である。
図13】第6の実施形態による一次アンカー部材の断面図であり、一次アンカー部材は伝達ウェッジを備えている。
図14図13の一次アンカー部材を上方から見た図である。
図15】二次密閉メンブレンの一部が載置される二次断熱バリアの一部を通る断面も含む概略斜視図であり、二次断熱バリアは一次アンカー部材を受けるよう構成されたアンカープレートを備えている。
図16】一次アンカー部材の一部と、一次アンカー部材のこの一部を図15の二次断熱バリアのアンカープレートに取り付けるための工具の概略斜視図である。
図17】二次断熱バリアがアンカープレートに取り付けられベル部が追加された後の図16の一次アンカー部材を通る断面を含む概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本明細書の残りの部分では、用語「外側」及び「内側」は、本明細書で与えられる定義によればタンクの内部を基準とした別の要素の相対位置を示すために使用される。したがって、タンクの内部に近いか又はタンクの内部に面する要素は、タンクの外部の近くに配置されるか又はタンクの外部に面する外側要素とは対照的に、内側要素として説明される。同様に、「縁において径方向」又は「径方向外側」との表現は、円形要素を画定する軸から距離を置いた部分を意味し、この軸に近い部分を意味する「径方向内側」との表現と反対の表現である。さらに、表現「横方向」は、タンク壁の厚さ方向に垂直な平面内の方向での要素の移動又は延在方向を説明するために使用される。
【0072】
液化天然ガス(LNG)のような液化流体を貯蔵するための密閉断熱タンクは、多層構造を有する複数のタンク壁を備えている。図1及び図2は密閉断熱タンクのこのような壁の一部を示す。これらの図1及び図2において、タンクの壁は、厚さ方向にタンクの外部から内部に連続して、支持壁(図示せず)上に保持された二次断熱バリア(以下、二次断熱バリア1)と、二次断熱バリア1に載置された二次密閉メンブレン2と、二次密閉メンブレン2に載置された一次断熱バリア(以下、一次断熱バリア3)と、タンク内に収容された液化天然ガスと接触するように構成された一次密閉メンブレン4と、を含む。支持構造は特に運搬船の船体又は二重船体によって形成されてもよい。支持構造は、通常は多面体形状であるタンクの一般的な形状を画定する複数の支持壁を備え、各タンク壁はそれぞれの支持壁上に固定される。
【0073】
二次断熱バリア1は二次アンカー部材(図示せず)によって支持壁上に固定された複数の二次断熱パネル5を備える。二次断熱パネル5は略平行六面体形状であり、平行な列に配置されている。マスチック(図示せず)のビーズが二次断熱パネル5と支持壁との間に敷設されて、支持壁と平坦な基準面との間のギャップを形成する。マスチックのビーズと支持壁との間にクラフト紙を挿入してマスチックのビーズが支持壁に付着するのを防止することができる。あるいは、マスチックのビーズを支持壁と直接接触させることで支持壁への付着力によって二次断熱パネル5が固定される。
【0074】
図2に示す二次断熱パネル5の構造は、底プレート7と、カバープレート8と、底プレート7とカバープレート8との間に挿入される断熱ライニング9とからなる。底プレート7及びカバープレート8は例えば合板からなる。断熱ライニング9は、例えば底プレート7とカバープレート8との間に挟まれた断熱ポリマー発泡体の層である。断熱ライニング9は底プレート7とカバープレート8とに接着接合されている。断熱ポリマー発泡体は特に、オプションで繊維で強化された、ポリウレタンをベースとする発泡体であってもよい。
【0075】
二次断熱パネル5は、二次アンカー部材を受け入れるための凹部を備える。このような凹部は例えば、底プレート7のコーナー部を露出させるように断熱ライニング9及びカバープレート8内に形成される。二次アンカー部材は、支持壁上に固定されたベースとタンク壁の厚さ方向に延在するステムとを備える。ベースは例えば中空であり、ステムが通る開口を備え、中空のベースに収容されたステムの端部にナットがねじ込まれて、ステムがベースに、したがって支持壁に固定された状態が維持される。別の実施形態では、二次アンカー部材は内側船体に溶接されたステムの形態をとることができる。
【0076】
一実施形態では、凹部はコーナーゾーンに配置される。底プレート7のコーナー部は二次アンカー部材のステムの通過を可能にするノッチを有する。二次ベアリングプレートがステムに係合されて、ベースと反対側のステムの内側端部にねじ込まれたナットによってステム上に保持される。この二次ベアリングプレートは、例えば4つの隣接する二次断熱パネル5などの隣接する二次断熱パネル5の底プレート7のコーナー部を支持(圧迫)してこれら二次断熱パネル5を支持壁に固定するよう構成されている。一代替例では、二次ベアリングプレートは、底プレート7のコーナー部を支持するバッテンベアリングを介して二次断熱パネル5を支持してもよい。
【0077】
別の代替例では、凹部は二次断熱パネル5の2つの側面上に配置され、二次アンカー部材は、二次断熱パネル5の幅方向又は長さ方向において2つの隣接する二次断熱パネル5の間の上記の凹部内に配置される。
【0078】
カバープレート8は、その内面、即ち断熱ライニング9と反対側の面の上に、溶接支持体6を受け入れるための溝を備える。
【0079】
二次断熱パネル5及び二次アンカー部材の構造について一例を上述した。したがって別の実施形態では二次断熱パネル5は例えばWO2012/127141に記載されている構造などの別の一般的な構造を有することができる。この場合、二次断熱パネル7は、底プレートと、カバープレートと、底プレートとカバープレートとの間でタンク壁の厚さ方向に延在し、パーライト、グラスウール又はロックウールのような断熱ライニングで満たされた複数のコンパートメントを区画する支持ウェブと、からなるボックスのかたちで作製される。
【0080】
別の実施形態では、二次断熱パネルは、底プレートと、カバープレートと、底プレートとカバープレートとの間に挿入される中間プレートとを備える。断熱ライニングは、底プレートと中間プレートとの間に挿入される断熱ライニングの第1の層と、中間プレートとカバープレートとの間に挿入される断熱ライニングの第2の層とを備える。断熱ライニングの第1の層は、例えば底プレートと中間プレートとに接着接合される。断熱ライニングの第2の層は、例えば中間プレートとカバープレートとに接着接合される。本実施形態では、凹部はカバープレートと断熱ライニングの第2の層のみに形成されてもよく、この際、二次ベアリングプレートは中間プレートの露出部分を支持する。さらに、ステムを通すためのノッチが、中間プレート、断熱ライニングの第1の層及び底プレートに形成される。このような二次断熱パネルは例えばWO2014/096600に記載されている。
【0081】
一実施形態では、二次断熱パネルは、例えば上述のマスチックのビーズによって支持壁に接着結合される。この場合、二次アンカー部材及びこれらを受け入れる凹部を省略することが可能である。
【0082】
図1に戻ると、二次密閉メンブレン2は、隆起した縁を有する金属製のストレーキ10の連続的な層を含むことがみてとれる。ストレーキ10は、二次断熱パネル5のカバープレート8に形成された溝内に固定される平行溶接支持体6上において、隆起した縁によって溶接される。ストレーキ10は、例えば典型的に1.2×10-6-1から2×10-6-1の膨張係数を有するInvar(登録商標)で作製された鉄とニッケルの合金である。また、典型的に約7×10-6-1から約9×10-6-1の膨張係数を有する鉄とマンガンの合金を使用することもできる。
【0083】
一次断熱バリア5は、後述する一次アンカー部材12によって支持壁上に固定される複数の一次断熱パネル11を備える。一次断熱パネル11は略平行六面体形状を有し、一次断熱バリア3を形成するように並置されている。さらに、これらの幅、長さ又は厚さに関する寸法は、二次断熱パネル5の寸法と同一であっても異なっていてもよい。特に、これらのタンク壁の厚さ方向の厚さは、二次断熱パネル5の厚さよりも小さくてもよい。一次断熱パネル11は各々、これらが載置される二次断熱パネル5に対してオフセットして配置される。したがって、一次断熱パネル11の隣接するコーナーは、一次断熱パネル11が載置される二次断熱パネル5のカバープレート8に沿ってグループ化される。
【0084】
一次断熱パネル11は二次断熱パネル5の構造と同様の多層構造を有することができる。したがって図示の例では、一次断熱パネル11は、タンク壁の厚さ方向に順に、例えば合板からなる底プレート13と、一次断熱ライニング14と、例えば合板からなるカバープレート15とを備えている。一次断熱ライニングは、例えば、オプションで繊維で強化された、例えばポリウレタンをベースとする発泡体などの断熱ポリマー発泡体の層である。断熱ライニング14は好ましくは底プレート13とカバープレート15とに接着接合されている。
【0085】
一次断熱パネル11は、底プレート13が一次断熱ライニング14及びカバープレート15に対して突出するように自身のコーナーゾーンに凹部を備える。したがって、底プレート13は、一次断熱パネル11のコーナーゾーンにおいて、一次アンカー部材12の一次ベアリングプレート16と相互作用するよう構成されたベアリングゾーンを形成する。図3に示す実施形態では、ウェッジ17が底プレート13に追加されており、このウェッジ17はベアリングゾーンの形状と同様の形状を有し、一次断熱パネル11を固定するために一次ベアリングプレート16と相互作用する。
【0086】
一次断熱パネル11の底プレート13は二次密閉メンブレン2のストレーキ10の隆起した縁を受け入れるための溝18を備える。カバープレート15は、図1に示す一次密閉メンブレン4を固定するためのアンカーストリップ19を含む。これらのアンカーストリップ19はカバープレート15の内面に形成されたカウンターボアに収容される。一次断熱パネル11は、カバープレート15及び一次断熱ライニング14の内側部分に形成された緩和スロット20をさらに備えることができる。このような緩和スロット20は、カバープレート15と一次断熱ライニング14との間の収縮差が原因で生じる一次断熱パネル11の変形又は損傷を防止する目的を有する。このような緩和スロット20はまたコルゲーション21の撓みを可能にし、したがって、以下に記載されるようなコルゲーション21を備える一次密閉メンブレン4の場合には一次密閉メンブレン4及び一次断熱バリア3に応力が生じることを防止する。
【0087】
一次断熱パネル11の構造について一例を上述した。したがって別の実施形態では一次断熱パネル11は例えばWO2012/127141に記載される構造などの別の一般的な構造を有することができる。
【0088】
別の実施形態では、一次断熱バリア3は、これらがタンク内のどこに取り付けられるかに応じて、少なくとも2つの異なるタイプの構造、例えば上述の2つの構造を有する一次断熱パネルを備える。
【0089】
一次密閉メンブレン4は、互いに垂直な2つの一連のコルゲーション21を有する矩形金属シートの連続層を含む。知られているように、矩形金属シートはそれらの縁に沿って小さなオーバーラップ領域を形成するように互いに溶接される。矩形金属シートは、好ましくは、幅及び長さに関する寸法が、コルゲーション間の間隔の整数倍に等しく、また、一次断熱パネル11の寸法の整数倍に等しい。
【0090】
一次アンカー部材12について図3から図5を参照して以下に記載する。図3は、図2で参照符号Bを用いて示される一次アンカー部材12の詳細図を示す。図4及び図5ではナット32及びベアリングプレート16は示していない。図3から図5には1つの一次アンカー部材12が示されており、このアンカー部材についての以下の記載は密閉断熱タンクに組み込まれた一次アンカー部材12のうちの1つ、複数又はすべてに同様に適用される。
【0091】
上で記載したように、図1から図5に示す実施形態では一次断熱パネル11は二次断熱パネル5によって支持壁に固定される。このために二次断熱パネル5のカバープレート8はアンカープレート22を備える。このアンカープレート22はカバープレート8に形成された凹部23に収容される。
【0092】
凹部23は、第1の直径を有する内側部分24と、第2の直径を有する外側部分25とを有する。第2の直径は第1の直径よりも大きく、これにより、凹部23の外側部分25が、内側部分24を包囲するカバープレート8の一部と断熱ライニング9との間に挿入される横方向補強材を形成するように構成されている。
【0093】
アンカープレート22は凹部23と相補的な形状を有する。アンカープレート22の内面26は、二次断熱パネル5のカバープレート8の内面27と同一平面上にある。したがってアンカープレート22はカバープレート8と共に、二次密閉メンブレン2が載置される実質的に連続した平坦な表面を形成する。また、アンカープレート22の外側部分28が凹部23の外側部分25に収容され、したがってカバープレート8と断熱ライニング9との間に挿入される。アンカープレート22は、好ましくは、二次断熱パネルの断熱ライニング9に接着接合される。これによりタンク壁の厚さ方向へのアンカープレート22の移動が阻止される。このアンカープレート22はねじ山付き中央ハウジング29をさらに備える。
【0094】
一次アンカー部材12は、ベース30、ステム31、一次ベアリングプレート16及びナット32を備える。
【0095】
ベース30は外側ねじ山を有し、アンカープレート22の中央ハウジング29にねじ込まれる。換言すると、一次アンカー部材12のベース30はアンカープレート22に固定される。
【0096】
ステム31は、ベース30からタンク壁の厚さ方向にタンクの内部に向かって延在する。ステム31は、二次密閉メンブレン2に形成された開口を通る。図1から図3に示すように、このステム31は2つの一次断熱パネル11のコーナー同士を分け隔てる空間に延在する。
【0097】
一次ベアリングプレート16は中央通路60を有する。この一次ベアリングプレート16はステム31に係合する。一次ベアリングプレート16は、一次アンカー部材12が相互作用する一次断熱パネル11の底プレート13の突出部分上に配置されたウェッジ17を支持する。さらに、ステム31におけるベース30と反対側の内側端部にはねじ山が設けられており、ナット32がステム31のこの内側端部にねじ込まれて一次ベアリングプレート16がウェッジ17に押しつけられる。図3に示す実施形態では、弾性ワッシャ33、例えばベルビルワッシャが一次ベアリングプレート16とナット32との間に挿入されている。
【0098】
ステム31が通る二次密閉メンブレン2の開口における二次密閉メンブレン2の密閉性を保証するために、一次アンカー部材12はシールワッシャ34をさらに備える。
【0099】
このシールワッシャ34は、中央開口36を有する環状体35を備える。シールワッシャ34は、環状体35の径方向外側面の外側部分から径方向外側に延在するカラー37をさらに備える。また、環状体35の内面38はタンク壁の厚さ方向に突出するリブ39を備える。このリブ39は内面38の径方向内側部分から延在する。カラー37は例えば環状体35の周縁部によって形成される。
【0100】
シールワッシャ34は、シールワッシャ34の中央開口36を通るステム31に係合する。シールワッシャ34は、二次密閉メンブレン2と一次ベアリングプレート16との間に挿入される。シールワッシャ34における中央開口36の直径は、該中央開口36を通るステム31の部分の直径よりも大きい。したがって、横方向のクリアランス、即ちタンク壁の厚さ方向に垂直な方向のクリアランスによって、環状体35の中央開口36を区画する径方向内面とステム31とが離隔される。このクリアランスにより、シールワッシャ34がステム31に対して、したがって一次ベアリングプレート16に対して横方向に移動することが可能となる。
【0101】
不図示の実施形態では、中央開口は円形ではなく、少なくとも1つの横方向の寸法が、ステム31の前記少なくとも1つの横方向における寸法よりも大きい。したがってこのような実施形態では、前記少なくとも1つの横方向のクリアランスによって中央開口36がステムから離隔され、シールワッシャがステム31に対して前記少なくとも1つの横方向に移動することが可能となる。
【0102】
カラー37は二次密閉メンブレン2の開口の周りで二次密閉メンブレン2に密閉するよう固定される。これは例えば溶接によって達成される。
【0103】
一次アンカー部材12は、ステム31から径方向外側に突出するアンカーショルダ部40を含む。このアンカーショルダ部40は、シールワッシャ34と一次ベアリングプレート16との間に挿入される。アンカーショルダ部40は、タンク壁の厚さ方向に垂直な面内に延在する平坦なアンカー面41を有する。このアンカー面41はタンクの内部を向いている。
【0104】
一次アンカー部材12は、ステム31とシールワッシャ34とを密閉接続する変形可能なシール部を備える。この変形可能なシール部は蛇腹部42を備える。この蛇腹部42の内側軸方向端部はステム31に密閉するよう固定される。この蛇腹部42の外側軸方向端部はシールワッシャ34に密閉するよう固定される。より詳細には、蛇腹部42の内側軸方向端部は、アンカーショルダ部40のアンカー面41に密閉するよう固定される。蛇腹部42の外側軸方向端部は、環状体35の内面38から突出するリブ39に密閉するよう固定される。蛇腹部42の内側軸方向端部は例えばステム31に溶接される。蛇腹部42の外側軸方向端部は例えばシールワッシャ34に溶接される。
【0105】
この蛇腹部42は、図3に示す実施形態において3つある変形可能なひだ61を有する。不図示の態様では、蛇腹部42のひだ61の数は3つに限定されず、ショルダ部40とカラー37の表面38との間の空間に応じてより多くてもよい。したがって蛇腹部42は、前記空間に応じて、3つから32個のひだ61、理想的には6つのひだ61から24個のひだ61を有することができ、前記空間は例えば20mmから45mmである。蛇腹部42は略円筒形である。蛇腹部42を形成するひだ61は同一の寸法を有する。このような蛇腹部42は例えばステンレス鋼からなる。蛇腹部42が柔軟性を有することを保証するために蛇腹部42の厚さは小さく、好ましくは1mm未満、例えば0.1mmから0.5mm、より具体的には0.1mmから0.3mmである。
【0106】
この蛇腹部42は、ステム31とシールワッシャ34との間の柔軟で変形可能な密閉接続部を形成する。この柔軟で変形可能な接続部はシールワッシャ34とステム31との間のクリアランスと組み合わさって、シールワッシャ34とステム31との間の密閉状態での相対的な移動を可能にする。したがって、シールワッシャ34は二次密閉メンブレン2に密閉するよう固定されており、ステム31は一次ベアリングプレート16と共に一次断熱パネル11を支持するので、二次密閉メンブレン2の損傷又は二次密閉メンブレン2の密閉性の損失のリスクなしに、二次密閉メンブレン2と二次断熱パネル5及び/又は一次断熱パネル11との間で相対的な移動が可能である。特に、ステム31が二次断熱パネルに固定されているとき、二次断熱パネル5の変形及び/又は移動が、この変形及び/又は移動によって二次密閉メンブレン2に又はシールワッシャ34と二次密閉メンブレン2との間の接続部に応力をかけることなく、可能となる。
【0107】
二次断熱パネル5及び/又は一次断熱パネル11と二次密閉メンブレン2との間のこのような相対的な移動は、収縮差、二次断熱バリア1の変形及び/若しくは支持壁の変形、又はタンク内の液体の移動に起因する一次断熱パネル11への応力の結果として生じる場合がある。
【0108】
一方で、例えばタンクの建設中及び一次アンカー部材12の取り付け中に蛇腹部42を保護するために、この一次アンカー部材はベル部43を備える。このベル部43は取付部44と保護部45とを備える。このベル部43は上記及び下記の種々のタイプの蛇腹部42と組み合わせることができる。
【0109】
取付部44は平坦な形状と中央開口とを有する。ベル部43は一次アンカー部材12のステム31に取り付けられ、このステムは取付部44の中央開口を通る。取付部はアンカーショルダ部40と一次ベアリングプレート16との間に挿入される。したがってベル部は、一方側では一次ベアリングプレート16によって、他方側ではアンカー面41によって、タンク壁の厚さ方向に移動することが阻止される。
【0110】
保護部45は中空であり、取付部44の周縁に隣接する内側端部を備える。保護部45はその内側端部から蛇腹部42に沿ってシールワッシャ34の方向に延在し、蛇腹部42は中空の保護部45に収容される。また保護部45は、この保護部45の外側端部がシールワッシャ34のカラー37と一致して配置されるようにフレア状である。したがってベル部43は、アンカー面41上の蛇腹部42の内側端部からリブ39に固定される蛇腹部42の外側端部まで、蛇腹部42を全体的に包囲する。
【0111】
保護部45の外側端部はタンク壁の厚さ方向に垂直な面に延在するリップ46を有する。このリップ46は、カラー37に対向して配置されるストップ面47を形成する。このようなストップ面47は、カラー37、したがってシールワッシャ34のタンクの内部に向かう移動を阻止し、ベル部42自体はその取付部44が一次ベアリングプレート16に当接することによって移動が阻止される。
【0112】
したがって、カラー37は二次密閉メンブレン2に密閉するよう固定されるので、支持壁の変形時又は二次密閉メンブレン2に過度な圧力がかかった時に、一次アンカー部材12における二次密閉メンブレン2の局所的な変形はシールワッシャ34のカラー37がストップ面47に当接することで阻止される。別の実施形態では、ベル部43の取付部44は例えば溶接によってステムに固定される。
【0113】
不図示の実施形態では、一次断熱パネル11及び二次断熱パネル5は同一の寸法を有し、二次断熱パネル5のコーナーがタンク壁の厚さ方向に一次断熱パネル11のコーナーと整列するように配置されている。このような実施形態では、一次アンカー部材12は二次断熱パネル5にではなく二次アンカー部材に直接固定される。このような構成は、例えば二次断熱パネル5及び一次断熱パネル11のための接合アンカー装置を開示するWO2014096600に記載されており、一次アンカー部材12のベース30が二次アンカー部材の一端に固定される。したがってこの実施形態では、上述のような一次アンカー部材において、一次アンカー部材12のベース30は、二次断熱パネル5のカバープレート8内に収容されたアンカープレート22ではなく、二次アンカー部材の内側端部に固定されたベースプレートに固定される。
【0114】
図6は、第2の実施形態による一次アンカー部材12を示す。図1から図5を参照して上述した要素と同一であるか又は同じ機能を果たす要素には同じ参照符号を付している。
【0115】
この第2の実施形態は、シールワッシャの環状体が面取りされている、即ちタンク壁の厚さ方向に対して傾斜した径方向外面を有する点で、図1から図5に示す実施形態と異なる。
【0116】
図7は、第3の実施形態による一次アンカー部材12を示す。図1から図5を参照して上述した要素と同一であるか又は同じ機能を果たす要素には同じ参照符号を付している。
【0117】
この第3の実施形態は、蛇腹部42がフレア状である点で図1から図5に示す実施形態と異なる。したがって、蛇腹部42を形成するひだ61は、アンカー面41に固定された蛇腹部42の内側軸方向端部からシールワッシャ34に固定された蛇腹部42の外側軸方向端部に向かって増大する寸法を有する。
【0118】
さらにこの第3の実施形態では、シールワッシャ34の環状体35の内面38はリブ39を含まず、内面38は平坦である。第3の実施形態では、蛇腹部42の外側軸方向端部は平坦な内面38に直接固定される。特に、蛇腹部42はフレア形状を有するので、蛇腹部42の外側軸方向端部は内面38の径方向外周縁に固定される。
【0119】
第3の実施形態は、一次アンカー部材12がベル部43を含まない点でも図1から図5を参照して記載した実施形態とは異なる。但しこのようなベル部43を追加することも可能である。
【0120】
この第3の実施形態では、ステム31は横方向に突出するショルダ部48を有する。このショルダ部48は、アンカーショルダ部40とシールワッシャ34との間に挿入される。さらに、このショルダ部48は、少なくとも1つの横方向寸法がシールワッシャ34の中央開口の寸法よりも大きい。したがって、このショルダ部48は、シールワッシャ34の環状体35の内面38に対向する外面49を有する。換言すると、この外面49の周縁部がストップ面47を形成する。したがってこのショルダ部48はシールワッシャ34のストッパとして作用し、シールワッシャ34のタンクの内部に向かう移動を阻止し、二次密閉メンブレン2の局所的な変形を防止する。
【0121】
図8は、第4の実施形態による一次アンカー部材12を示す。図1から図5を参照して上述した要素と同一であるか又は同じ機能を果たす要素には同じ参照符号を付している。
【0122】
この第4の実施形態では、一次アンカープレート16はアンカークロス54に置き換えられている。このアンカークロス54は、WO2014/057221の図7及び図8に示すように、取付部55と、複数のベアリングレッグ56、例えば4つのベアリングレッグ56とを有する。
【0123】
アンカークロス54の取付部55は平坦であり、タンク壁の厚さ方向に垂直な面内に延在する。この取付部55はステム31が通る中央開口を有し、これによりアンカークロス54がステム31に取り付けられるようになっている。
【0124】
各ベアリングレッグ56は、取付部55の周縁に隣接する内側端部を有する。各ベアリングレッグ56は、取付部55から一次断熱パネル11の底プレート13の突出部により形成されるベアリング面57に延在する。ベアリングレッグ56の外側端部は、タンク壁の厚さ方向に垂直な平面内に延在するリップ58を備える。このリップ58はベアリング面57を支持し、これにより一次断熱パネル11が二次密閉メンブレン2上に保持される。
【0125】
このようなアンカークロス54は、図1から図5を参照して上述した保護ベル部43と同様に蛇腹部42をある程度保護する。
【0126】
この第4の実施形態では、蛇腹部42の内側端部は、アンカーショルダ部40の側面59に固定され、この目的のために例えば側面59の外側部分に形成された凹部に固定される。
【0127】
図10から図12は第5の実施形態による一次アンカー部材12を示す。これらの図において、図1から図5を参照して上述した要素と同一であるか又は同じ機能を果たす要素には同じ参照符号を付している。
【0128】
この第5の実施形態ではベル部43の保護部45は円筒状であり、その母線はタンク壁の厚さ方向に平行である。ベル部43の保護部45の外側端部は環状体35の内面38と一致するよう配置されている。換言すると、保護部45の外側端部のリップ46によって形成されるストップ面47は、環状体35の内面38と相互作用してシールワッシャ34のタンク内部への移動を阻止する。カラー37は環状体35から径方向外方にリップ46を越えて突出している。さらに、蛇腹部42の内側軸方向端部は、例えば溶接によって、アンカーショルダ部40の外面、即ちアンカーショルダ部40におけるシールワッシャ34に対向する面に、密閉するよう固定される。
【0129】
液化天然ガス(LNG)がタンク内に貯蔵される場合、タンク内におけるこのLNGの動き、例えば前記タンクが設置される運搬船の動きに関連するLNGの動きにより、一次断熱パネル11に横方向の応力が生じることがある。典型的には、タンク内のLNGの動きは一次密閉メンブレン4のコルゲーション21に横方向の応力を加えることがある。コルゲーション21におけるこの横方向の応力は一次密閉メンブレン4が固定された一次断熱パネル11に伝達される。この応力の影響下では、一次断熱パネル11は横方向に、即ちタンク壁の厚さ方向と垂直な面内にて移動する傾向があり、したがって一次アンカー部材12に応力を加える傾向がある。
【0130】
カラー37は、ベル部43の環状体35から径方向外側にリップ46を越えて突出していることから、一次断熱パネル11が移動すると、一次断熱パネル11の底プレート13がカラー37に当接し得る。このように底プレート13がカラー37に当接すると、カラー37と二次密閉メンブレン2との間の密閉接続部に著しい応力、即ち二次密閉メンブレン2の一体性を危うくする応力が生じる。
【0131】
一次断熱パネル11の横方向の移動に起因する力をシールワッシャ34が拾い上げることを防止するために、この第5の実施形態は伝達ウェッジ62を備える。伝達ウェッジ62は、横方向の力をステム31及びその支持部、例えば二次断熱バリアに伝達することを可能にする。また、ウェッジの横方向寸法は、隣接する一次断熱パネル間のスペースよりも小さく、これにより十分な取り付け公差が許容されるとともに、力を一次断熱パネルからステム31に伝達することが可能となる。
【0132】
この実施形態では伝達ウェッジ62は、ベース63と、包囲部64と、ウイング部65とを備える。
【0133】
ベース63はタンク壁の厚さ方向に垂直に延在する平坦な形状を有する。このベース63は円形であり、ステム31と同軸である。ベース63は中央開口66を有する。この中央開口66は円形であり、ステム31と同軸である。中央開口66の寸法は、ベース63がカラー37から距離を置いて離隔するようカラー37の寸法よりも大きい。
【0134】
ベース63は、カラー37の周囲において二次密閉メンブレン2に載置される。一次アンカー部材12と相互作用する一次断熱パネル11の底プレート13は、ベース63を収容するための外側カウンターボア67を有していてもよい。
【0135】
包囲部64は、中央プラトー部82によって接続された外側スカート部68及び内側スカート部69を備える。
【0136】
外側スカート部68は円筒状壁を有し、その母線はタンク壁の厚さ方向に平行である。この外側スカート部68は、ベース63の内周から、即ちベース63の中央開口66の縁から延在する。外側スカート部68は、タンク壁の厚さ方向に、タンク壁の前記厚さ方向の環状体35の厚さ以上の厚さにわたってタンクの内部に向かって延在する。したがって、外側スカート部68の内側端部は、ベル部43の保護部45と径方向に一致している。
【0137】
中央プラトー部82はタンク壁の厚さ方向に垂直な面内に延在する。この中央プラトー部82は、外側スカート部68の内側端部から径方向内側に延在する。中央プラトー部82は、ベル部の保護部45の外径よりもわずかに大きい内径を有する中央開口83を備える。したがって、中央プラトー部82はベル部43の保護部45を包囲する。
【0138】
内側スカート部69は円筒状壁を有し、その母線はタンク壁の厚さ方向に平行である。この内側スカート部69は、中央プラトー部82の内周から、即ち中央開口83を画定する中央プラトー部82の縁から延在する。内側スカート部69は、ベル部43の保護部45の厚さよりも小さい厚さにわたってタンクの内部に向かって延在する。したがって、内側スカート部69は、ベル部43の保護部45を、保護部45の厚さの一部のみにわたって包囲する。
【0139】
典型的には、包囲部64はカラー37を包囲し、図11及び図12に見られるハウジングを形成し、このハウジング内にカラー37がクリアランスをもって収容されることでカラー37が保護される。
【0140】
したがって、一次断熱パネル11を横方向に移動させる応力を一次断熱パネル11が受けると、この一次断熱パネル11の底プレート13は伝達ウェッジ62に当接し、典型的にはベース63及び/又は外側スカート部68に当接する。伝達ウェッジ62がベル部43を包囲し、伝達ウェッジ62がベル部43から離隔される距離が伝達ウェッジ62がカラー37から離隔される距離よりも小さいことから、伝達ウェッジ62はカラー37に大きな応力を発生させることなくベル部43に当接する。換言すると、一次断熱パネル11のこの横方向の移動から生じる力は、一次断熱パネル11の底プレート13を通って伝わり、これが伝達ウェッジ62に力を及ぼし、そして伝達ウェッジがベル部43及びステム31に力を加える。したがって、伝達ウェッジ62は、一次断熱パネル11の横方向の移動から生じる力がカラー37を通って伝わらないことを保証し、結果としてカラー37と二次密閉メンブレン2との間の密閉接続部における応力を制限する。
【0141】
図10から図12に示す実施形態では、伝達ウェッジ62は、隣接する一次断熱パネル11に対する伝達ウェッジ62の位置決めを容易にする4つのウイング部65をさらに備える。これらの位置決めウイング部65は、包囲部64の周囲に一定の間隔で周方向に分布されている。これらのウイング部65は、タンク壁の厚さ方向に平行な包囲部64から径方向に延在する。ウイング部65の各々は、一次アンカー部材12と相互作用する2つの一次断熱パネル11の間に収容される。これらのウイング部65は、一次断熱パネル11の各々を別々に分けるコンパートメントを仕切る。
【0142】
不図示の実施形態では、外側スカート部68は、一次断熱パネル11の底プレート13を越えてタンクの内部に向かって延在する。したがって、一次断熱パネル11が横方向に移動すると、断熱ライニング14もまた外側スカート部68に当接し、一次断熱パネル11の横方向の移動から生じる力を伝達ウェッジ62に伝えるよう構成されている。
【0143】
図13及び図14は第6の実施形態による一次アンカー部材12を示す。
【0144】
この第6の実施形態は、ベル部43の保護部45の外側端部がカラー37と一致するよう配置される点で図10から図12を参照して示した第5の実施形態とは異なる。さらに、保護部45の外側端部のリップ46は径方向にカラー37を越えて突出している。これにより、保護部45の外側端部のリップ46で形成されたストップ面47がカラー37の内面と相互作用し、シールワッシャ34のタンク内部への移動を阻止する。
【0145】
この実施形態では、伝達ウェッジ62はブロック84によって形成される。このブロック84は中央開口を備える。この中央開口の内径は、ブロック84がベル部43の保護部45を包囲するように、ベル部43の保護部45の外径よりもわずかに大きい。
【0146】
タンク壁の厚さ方向のブロック84の厚さは、隣接する一次断熱パネル11の底プレート13の厚さよりも小さく、ブロック84の内面がタンク壁の厚さ方向において底プレート13の内面の外側に配置されるように構成されている。さらに、図13に示す実施形態では、ブロック84はベル部43の保護部45のリップ46の内面に置かれる。
【0147】
ブロック84の外周側面は、一次アンカー部材12と相互作用する一次断熱パネル11の底プレート13に形成された凹部と略相補的な形状を有する。換言すると、一次断熱パネル11の底プレート13をブロック84から離隔する距離は実質的に取付クリアランスに相当する。したがって、一次断熱パネル11の横方向の移動は、ほぼその移動の開始から、ブロック84の外周側面を押圧することとなる。
【0148】
したがって、一次断熱パネル11が横方向に移動すると、この一次断熱パネル11の底プレート13が伝達ウェッジ62に、より具体的にはブロック84の外周側面に当接し、伝達ウェッジは、実質的にカラー37に応力を加えることなく、ベル部43及びステム31に当接する。このように、一次断熱パネル11が伝達ウェッジ62に加える応力は、カラー37と二次密閉メンブレン2との間の接続部を実質的に通らずにステム31に伝達される。
【0149】
一次アンカー部材を取り付ける方法の一例を図15から図17を参照して以下に説明する。図15から図17及び以下の説明において、既に上述した要素と同一であるか又は同一の機能を満たす要素には同一の参照符号を付している。
【0150】
図1から図5を参照する上記の説明と同様に、アンカープレート22は、二次断熱パネル5のカバープレート8に形成された凹部23に収容される。アンカープレート22の内面26は、二次断熱パネル5のカバープレート8の内面27と同一平面上にある。アンカープレート22は、一次アンカー部材12のベース30を収容するねじ山付き中央ハウジング29をさらに備える。
【0151】
好ましくは、一次アンカー部材12は少なくとも部分的に予め製造されている。一次アンカー部材12の予め製造された(プレハブ)部分は例えば、図16に示すように、ベース30と、ステム31と、内側軸方向端部がアンカーショルダ部40に固定される蛇腹部42と、蛇腹部の外側軸方向端部が固定されるシールワッシャ34とを備える。
【0152】
但し、このようなプレハブ式の一次アンカー部材12では、シールワッシャ34は蛇腹部42を介してステム31と一体的に回転する。したがって、ねじ山付き中央ハウジング29にベース30をねじ留めするようにステム31が回転すると、シールワッシャ34も回転する。しかしながら、このシールワッシャ34の回転は、シールワッシャ34の外面と二次密閉メンブレン2との間に、特にベース30をハウジング29にねじ留めする動作の終わりにおいて、摩擦を生じさせる可能性がある。このような摩擦は蛇腹部42のねじれを生じさせ、これにより蛇腹部42が損傷し、結果として蛇腹部42の密閉性が損なわれる。
【0153】
ベース30をハウジング29にねじ留めする際の蛇腹部42のねじれを防止するために、シールワッシャ34の本体35は、その側面に、カラー37と本体35の内面38と接続する平坦部85を備える。同様に、アンカーショルダ部40も平坦部86を備える。好ましくは、シールワッシャ34の平坦部85とアンカーショルダ部40の平坦部86は同じ平面内に延在する。
【0154】
一次アンカー部材12を取り付ける方法は、平坦部85及び86に相補的な内面88を含むソケットレンチ87を使用することを含む。さらに、ソケットレンチ87の高さは、好ましくは、ステム31の高さよりも高く、少なくともステムの内側軸方向端部とシールワッシャ34の平坦部85との間の距離以上である。したがって、レンチの内面88と平坦部85及び86との間の相補性により、レンチ87の回転によって、ステム31、したがってベース30とシールワッシャ34の両方が回転することとなる。図16において、アンカーショルダ部40及び本体35は6つの平坦部85及び86を備えるが、平坦部の数及び寸法は異なるものでもよく、一次アンカー部材12はレンチ87の内面88に相補的な1つ、2つ又はそれ以上の平坦部85及び86を備えていてもよく、これにより、シールワッシャ34及びアンカーショルダ部、したがってステム31及びベース30が、レンチ87の使用時に一緒に回転するようになっている。
【0155】
一次アンカー部材12のプレハブ部分をアンカープレート22に装着するために、プレハブ部分はソケットレンチ87に挿入される。次に、ベース30をハウジング29にねじ留めするために、レンチ87が回転される。シールワッシャ34はステム31と一緒に回転されるので、シールワッシャ34と二次密閉メンブレン2との間の摩擦による蛇腹部42のねじれは生じない。
【0156】
ベース30がハウジング29内に完全にねじ込まれると、図17に示すように、ステム31の上にベル部43を追加してもよい。あるいは、この場合、アンカー部材のプレハブ部分もまた例えば溶接によってステム31に固定されたベル部43を有してもよい。
【0157】
図17に示すこの代替例では、ベル部43は、アンカーショルダ部40の平坦部86と同様の平坦部89を含む。さらに、シールワッシャ34、より具体的には平坦部85は、径方向にベル部43のリップ46を越えて配置される。したがって、レンチ87の内面88は、蛇腹部42のねじれを生じないようにシールワッシャ34を回転させる際に、ベル部43の平坦部と、ベース30をハウジング29にねじ留めするためのシールワッシャ34の平坦部と、と相互作用する。
【0158】
密閉断熱タンクを製造するための上述の技術は、異なる種類の貯蔵タンク、例えば陸上設備又はLNG運搬船等の浮体構造物上にLNG貯蔵タンクを構築するために使用することができる。
【0159】
図9を参照すると、LNG運搬船70の切り取り図は、運搬船の二重船体72に搭載された略プリズム形状の密閉断熱タンク71を示す。タンク71の壁は、タンク内に収容されるLNGと接触するように構成された一次密閉バリアと、一次密閉バリアと運搬船の二重船体72との間に配置される二次密閉バリアと、一次密閉バリアと二次密閉バリアとの間及び二次密閉バリアと二重船体72との間にそれぞれ配置された二つの断熱バリアとを含む。
【0160】
運搬船の上甲板上に配置される積み降ろしパイプライン73を、それ自体知られている方法で適切なコネクタによって海上又は港湾ターミナルに接続して、タンク71から又はタンク71にLNG貨物を移送することができる。
【0161】
図9は、積み降ろしステーション75と、水中パイプ76と、陸上設備77とを備える海上ターミナルの一例を示す。積み降ろしステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備える固定沖合設備である。可動アーム74は、積み降ろしパイプライン73に接続され得る断熱可撓性パイプの束79を保持する。方向付け可能な可動アーム74は全サイズのLNG運搬船に適合するように調整することができる。接続パイプ(図示せず)がタワー78の内側に延在する。積み降ろしステーション75は、陸上設備77からLNG運搬船70に又はLNG運搬船70から陸上設備77への積み降ろしを可能にする。この設備は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプ76を介して積み降ろしステーション75に接続される接続パイプ81とを備えている。水中パイプ76は、積み降ろしステーション75と陸上設備77との間の液化ガスの長距離、例えば5kmにわたる移送を可能にし、これにより、積み降ろし作業中にLNG運搬船70を沿岸から遠く離れた距離に保つことが可能になる。
【0162】
液化ガスの輸送に必要な圧力を生成するために、運搬船70に搭載されたポンプ及び/又は陸上設備77に備わるポンプ及び/又は積み降ろしステーション75に備わるポンプが使用される。
【0163】
本発明は、いくつかの特定の実施形態に関連して記載したものの、それらが本発明の範囲内にある場合には決してそれらに限定されず、記載した手段のすべての技術的均等物及びそれらの組み合わせを含むことは明らかである。
【0164】
「含む」又は「備える」との動詞及びそれらの活用形の使用は、特許請求の範囲に記載されているもの以外の要素又は工程の存在を除くものではない。
【0165】
特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は、特許請求の範囲の限定として解釈されるべきではない。
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【国際調査報告】