(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(54)【発明の名称】脂質封入RNAナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20220510BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220510BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220510BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220510BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220510BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220510BHJP
A61K 38/18 20060101ALN20220510BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20220510BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220510BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220510BHJP
C07C 333/04 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K47/20
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/18
A61K47/14
A61K48/00
A61K31/713
A61K31/7105
B82Y40/00
A61K38/18
C12N15/88 Z
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C07C333/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556498
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020023442
(87)【国際公開番号】W WO2020191103
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513269893
【氏名又は名称】アークトゥラス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Arcturus Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】カルマリ,プリヤ
(72)【発明者】
【氏名】チブクラ,パドマナブ
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,ジョセフ イー
(72)【発明者】
【氏名】バオ,ヤンジエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076CC29
4C076DD49
4C076DD49A
4C076DD55
4C076DD55A
4C076DD63
4C076DD63A
4C076DD70
4C076DD70A
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4C076EE23A
4C076FF36
4C076FF70
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084DB56
4C084MA05
4C084MA38
4C084NA03
4C084NA20
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086NA03
4C086NA20
4H006AA03
4H006AB68
4H006TN50
4H006TN60
(57)【要約】
a)RNAを含む水溶液を、0.1インチ~0.132インチの内径(ID)を有する第1チューブに流す工程;b)脂質を含むエタノール溶液を、0.005インチ~0.02インチのIDを有する第2チューブに、第1チューブを通る水溶液の1/3の流速にて流す工程であって、脂質がカチオン性脂質を含む工程;およびc)エタノール溶液および水溶液を、第1チューブに垂直に接合された第2チューブからなる混合モジュールへ流すことにより、エタノール溶液を水溶液と混合する工程を含む、脂質封入RNAナノ粒子を製造する方法であって、混合工程が、約10v/v%~75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む第1チューブ中を流れる排出溶液を生じ、脂質封入RNAナノ粒子が二層構造を有する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
a)RNAを含む水溶液を、0.1インチ~0.132インチの内径(ID)を有する第1チューブに流す工程;
b)脂質を含むエタノール溶液を、0.005インチ~0.02インチのIDを有する第2チューブに、第1チューブを通る水溶液の1/3の流速にて流す工程であって、脂質がカチオン性脂質を含む工程;および
c)エタノール溶液および水溶液を、第1チューブに垂直に接合された第2チューブからなる混合モジュールへ流すことにより、エタノール溶液を水溶液と混合する工程
を含む、脂質封入RNAナノ粒子を製造する方法であって、
混合工程が、約10v/v%~75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む第1チューブ中を流れる排出溶液を生じ、脂質封入RNAナノ粒子が二層構造を有する、方法。
【請求項2】
排出が、少なくとも200ml/分の流速を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
排出流速が、少なくとも2,000のレイノルズ数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水溶液が、少なくとも10psi、25psi、50psi、75psiまたは100psiの背圧を有する、第1HPLCポンプにより第1チューブを通ってポンプ輸送され、エタノール溶液が、少なくとも40psi、80psi、150psi、300psiまたは400psiの背圧を有する、第2HPLCポンプにより第2チューブを通ってポンプ輸送される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1チューブが、0.132インチのIDを有し、第2チューブが、0.007インチ、0.01インチまたは0.02インチのIDを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水溶液が、少なくとも30ml/分、45ml/分、60ml/分、75ml/分、90ml/分、105ml/分、120ml/分、150ml/分、225ml/分、262.5ml/分、300ml/分または450ml/分の流速でポンプ輸送され;エタノール溶液が、少なくとも10ml/分、15ml/分、20ml/分、25ml/分、30ml/分、35ml/分、40ml/分、50ml/分、60ml/分または75ml/分、87.5ml/分、100ml/分または150ml/分の流速でポンプ輸送される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水溶液、エタノール溶液、排出溶液が、15~20℃にて維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
混合モジュールが、ステンレス鋼製であり、第1チューブに垂直に取り付けられた第2チューブからなり、第1チューブが、壁を貫通する開口部を有し、開口部が、第2チューブの外径のサイズであり、第2チューブ中のエタノール溶液が第1チューブ中の水溶液へ連続的に移動できるように、第2チューブが開口部に篏合している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第3チューブを通って希釈緩衝液をポンプ輸送する工程、および第3チューブを第1チューブに接続するYコネクターの領域で希釈緩衝液を排出溶液に導入することにより、希釈緩衝液を排出溶液と混合して、希釈排出溶液を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
下記:
a)pH約7.4~8.5の約10mM~20mM Tris緩衝液、約45mM~55mM NaClおよび約8%~10%スクロース;または
b)pH約6.0~6.5の40mM~90mMリン酸緩衝液、;および第3希釈緩衝液が約20mMを含み;および、
c)pH約7.4~8.5の20mM~50mM HEPES緩衝液、約50mM~300mM NaCl、約0%~15%スクロース
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
希釈排出溶液が、6.25%エタノール;8.25%エタノール;8.3%エタノール;または12.5%エタノールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
希釈緩衝液が、400~900mL/分の流速にて第3チューブを通ってポンプ輸送される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
第3チューブが、0.25インチのIDを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
カチオン性脂質が、式I:
【化1】
(I)
[式中、
R
5およびR
6が、各々独立して、直鎖または分岐鎖のC
1-C
31アルキル、C
2-C
31アルケニルまたはC
2-C
31アルキニルおよびコレステリルからなる群より選択され;
L
5およびL
6が、各々独立して、直鎖のC
1-C
20アルキルおよびC
2-C
20アルケニルからなる群より選択され;
X
5が、-C(O)O-または-OC(O)-であり;
X
6が、-C(O)O-または-OC(O)-であり;
X
7が、SまたはOであり;
L
7が、存在しないか、または低級アルキルであり;
R
4が、直鎖または分岐鎖のC
1-C
6アルキルであり;および
R
7およびR
8が、各々独立して、水素および直鎖または分岐鎖のC
1-C
6アルキルからなる群より選択される]
で示される構造を有するか、またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
脂質封入RNAナノ粒子が、約100nm未満の平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
脂質封入RNAナノ粒子の脂質部分が、約48モル%~約66モル%のカチオン性脂質、約2モル%~約12モル%のDSPC、約25モル%~約42モル%のコレステロールおよび約0.5モル%~約3モル%のPEG2000-DMGを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比が、約50:1~約3:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
脂質封入RNAナノ粒子が、カチオン性脂質:DOTAP(l,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン):DSPC:コレステロール:PEGを、25:25:10:38.5:1.5、25:25:10:37:3、25:25:10:35:5、20:20:7:51.5:1.5、25:20:10:42:3、20:30:13:32:5、25:20:10:40:5、25:25:13:35.5:1.5、25:30:7:35:3、30:20:13:34:3、30:25:7:33:3、30:30:10:25.8:1.5、15:20:13:49:3、20:20:13:44:3、20:25:13:39:3、15:25:13:44:3、20:25:13:39:3、25:25:13:34:3、30:20:13:34:3または30:30:13:29:3のモル割合で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
脂質封入RNAナノ粒子が、約20w/w%~60w/w%のカチオン性脂質、約5w/w%~30w/w%のヘルパー脂質、約0w/w%~60w/w%のコレステロールおよび約0.5w/w%~15w/w%のポリエチレングリコール-脂質コンジュゲート(PEG)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
RNAが、tRNA(転移RNA)、snRNA(小核RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、siRNA(低分子干渉RNA)および自己複製RNAからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年3月19日出願の米国仮出願第62/820,496号に基づく優先権を主張し、当該出願は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0002】
脂質は、非経腸投与時に標的細胞へ送達するためにRNAを封入する脂質ナノ粒子を形成する能力があるため、リボ核酸(RNA)送達のための材料として用いられる(Zimmermann、2006、Nature、doi:10.1038/nature04688)。
【0003】
脂質封入RNAナノ粒子を製造する様々な方法が知られている。例えば、WO2001/005373は、乱流環境を提供する静的ミキサーを使用したエタノール注入型の製造方法を用いて脂質封入RNAナノ粒子を製造するための技術であって、小胞形成後に治療分子と組み合わせられる、技術を開示する。US2004/0142025は、非乱流混合および一連の連続した段階的希釈を用いて脂質封入RNAナノ粒子を形成するための技術を開示する。US6,843,942は、オリフィスを通過して流れる水溶液中の核酸に、オリフィスを通して、有機溶液パイプ内の脂質を噴霧することにより粒子を形成する非乱流混合方法を開示する。US9,005,654は、乱流混合を用いた脂質ナノ粒子(LNP)へのsiRNAの封入であって、脂質および対抗流としてのRNAが、ほぼ同じ速度で逆のアームからT字型混合チャンバーに入り、小胞を含む45~60%エタノール溶液を生成し、これを回収し、その後さらに希釈する(直接希釈法)、封入を開示する。US9,404,127は、直接希釈法により精製したLNPの大部分が非層状形態、すなわち非二層構造を有することを開示する。
【0004】
粒子径および均一性を最適化しながら、大量生産に確実にスケールアップする能力を含む、脂質封入RNAナノ粒子を形成するための製造方法および装置を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
下記工程:a)RNAを含む水溶液を、0.1インチ~0.132インチの内径(ID)を有する第1チューブに流す工程;b)脂質を含むエタノール溶液を、0.005インチ~0.02インチのIDを有する第2チューブに、第1チューブを通る水溶液の1/3の流速にて流す工程であって、脂質がカチオン性脂質を含む工程;およびc)エタノール溶液および水溶液を、第1チューブに垂直に接合された第2チューブからなる混合モジュールへ流すことにより、エタノール溶液を水溶液と混合する工程を含む、脂質封入RNAナノ粒子を製造する方法であって、混合工程が、約10v/v%~75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む第1チューブ中を流れる排出溶液を生じ、脂質封入RNAナノ粒子が二層構造を有する、方法を開示する。
【0006】
いくつかの実施態様において、排出流速は、少なくとも200ml/分である。別の一実施態様において、複合流は、少なくとも2,000のレイノルズ数を有する。
【0007】
いくつかの実施態様において、水溶液は、好ましくは少なくとも10psi、25psi、50psi、75psiまたは100psiの背圧を有する、第1HPLCポンプにより第1チューブを通ってポンプ輸送される。好ましくは、第1チューブは、0.132インチのIDを有し、水溶液は、少なくとも30ml/分、45ml/分、60ml/分、75ml/分、90ml/分、105ml/分、120ml/分、150ml/分、225ml/分、262.5ml/分、300ml/分または450ml/分の流速でポンプ輸送される。
【0008】
いくつかの実施態様において、エタノール溶液は、好ましくは少なくとも40psi、80psi、150psi、300psiまたは400psiの背圧を有する、第2HPLCポンプにより第2チューブを通ってポンプ輸送される。好ましくは、第2チューブは、0.007インチ、0.01インチまたは0.02インチのIDを有し;エタノール溶液は、少なくとも10ml/分、15ml/分、20ml/分、25ml/分、30ml/分、35ml/分、40ml/分、50ml/分、60ml/分または75ml/分、87.5ml/分、100ml/分または150ml/分の流速でポンプ輸送される。
【0009】
好ましくは、水溶液およびエタノール溶液は、15~20℃にて維持される。
【0010】
いくつかの実施態様において、混合モジュールは、第1チューブに垂直に取り付けられた第2チューブからなり、第1チューブが、壁を貫通する開口部を有し、開口部が、第2チューブの外径のサイズであり、第2チューブ中の第2溶液が第1チューブ中の第1溶液へ連続的に移動できるように、第2チューブが開口部に篏合している。混合モジュールは、好ましくはステンレス鋼チューブからなる。
【0011】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、第3チューブを通って希釈緩衝液をポンプ輸送する工程、およびYコネクターの領域で希釈緩衝液を排出溶液に導入することにより、希釈緩衝液を排出溶液と混合して、希釈排出溶液を生成する工程をさらに含む。好ましくは、希釈緩衝液は、15mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5;10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5;50mMリン酸、pH6.0;20mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.4;または50mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.4を含む。好ましくは、希釈排出溶液は、6.25%エタノール;8.25%エタノール;または12.5%エタノールを含む。
【0012】
いくつかの実施態様において、Yコネクターは、約45°の角度である。好ましくは、Yコネクターは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる。
【0013】
いくつかの実施態様において、希釈緩衝液は、400~900mL/分の流速にて第3チューブを通ってポンプ輸送され、第3チューブは、0.25インチのIDを有する。
【0014】
別の一態様において、本開示の方法により製造される脂質封入RNAナノ粒子を開示する。
【0015】
別の一態様において、RNAを含む脂質封入RNAナノ粒子であって、下記工程:a)RNAを含む水溶液を、0.1インチ~0.132インチの内径(ID)を有する第1チューブに流す工程;b)脂質を含むエタノール溶液を、0.005インチ~0.02インチのIDを有する第2チューブに、第1チューブを通る水溶液の1/3の流速にて流す工程であって、脂質がカチオン性脂質を含む工程;およびc)エタノール溶液および水溶液を、第1チューブに垂直に接合された第2チューブからなる混合モジュールへ流すことにより、エタノール溶液を水溶液と混合する工程を含む製造方法であって、混合工程が、乱流中約10v/v%~75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む第1チューブ中を流れる排出溶液を生じる、製造方法によって製造される、脂質封入RNAナノ粒子を開示する。本明細書に記載の製造方法により製造される脂質封入RNAナノ粒子は、二層構造、すなわち層状形態を有する。好ましくは、脂質封入RNAナノ粒子は、70nm、80nm、90nmまたは100nm未満の平均粒子径;0.09、0.07または0.05未満の多分散指数(PDI)を有し;封入は94%、96%または98%のRNAを超える。好ましくは、バッチサイズは、0.05から少なくとも30g RNAであり、バッチ間の平均粒子径の変動は、10%未満である。
【0016】
さらに別の一態様において、RNAを含む脂質ナノ粒子を製造するための装置であって、該装置が、約0.1インチ~0.132インチのIDを有し、一端が第1HPLCポンプに、他端が混合モジュールに接続された第1チューブであって、第1HPLCポンプが、RNAを含む水溶液を、第1チューブを通って少なくとも150ml/分の流速にてポンプ輸送するように構成された、第1チューブ;第1HPLCポンプに接続されたリザーバーであって、第1リザーバーが水溶液を含む、第1リザーバー;約0.005インチ~0.02インチのIDを有し、一端が第2HPLCポンプに、他端が混合モジュールに接続された第2チューブであって、第2HPLCポンプが、脂質を含むエタノール溶液を、第2チューブを通って50ml/分超の流速にてポンプ輸送するように構成され、第2チューブが、混合モジュールにて第1チューブに垂直に接続された、第2チューブ;第2HPLCポンプに接続された第2リザーバーであって、第2リザーバーがエタノール溶液を含む、第2リザーバーを含み、該装置が、混合モジュール内の領域でエタノール溶液を水溶液に導入することにより、エタノール溶液を水溶液と混合して、排出溶液を生成するように構成され;排出溶液の流れが、乱流を生成する、装置を開示する。
【0017】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の装置は、好ましくは、第2チューブが、第1チューブの壁を貫通して、第1チューブの内部へ部分的に伸びるか;または第2チューブが、第1チューブの壁まで伸びて、第1チューブに接合する、混合モジュールを有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、脂質ナノ粒子の製造方法の一実施態様のフローチャート図を示す。脂質をエタノールに溶解させ、RNAを酸性緩衝水溶液(例えばクエン酸緩衝液)に溶解させ、両方ともろ過滅菌した。本明細書に記載の方法により溶液を混合して、粒子を形成させ、PDIおよび粒子径(PS)を分析した。粒子を濃縮し、タンジェンシャルフローろ過(TFF)により精製して、エタノールおよび未結合RNAを除去し、PDIおよびPSを再度モニターした。その後、測定した総RNA濃度に従って、粒子濃度を調製した。粒子をろ過滅菌し、充填し、仕上げ、凍結した。
【0019】
【
図2】
図2は、粒子径を含む、例示的な脂質RNA製剤の表を示す。
【0020】
【
図3】
図3は、粒子径およびバッチサイズを含む、例示的な脂質RNA製剤の表を示す。
【0021】
【
図4】
図4は、脂質封入RNAナノ粒子を製造するための装置を示す。RNAを含む水溶液は、HPLCポンプにより、0.03インチID PEEKチューブ、0.05インチID PEEKコネクター、0.0625インチシリコンチューブ、および0.122インチIDシリコンチューブ、および0.132インチIDステンレス鋼の領域を含む、チューブを通って輸送される。脂質を含む有機溶液は、HPLCポンプにより、例えば0.03インチID PEEKチューブ、0.02インチID PEEKコネクター、0.01インチIDステンレス鋼の領域を含むチューブを通って輸送される。有機溶液は、混合領域において90°の角度で水溶液にポンプ輸送される。0.122インチIDシリコンチューブは、混合した脂質-RNA排出物を、希釈領域の希釈緩衝液と45°の角度で合流する0.25インチIDポリプロピレンチューブに輸送する。希釈領域の希釈緩衝液と45°の角度で合流するチューブは、希釈工程のための45°の角度のチューブの1、2、3または4つの希釈領域を含むために、段階希釈し得る。希釈工程後、希釈した粒子を15~20℃に維持したステンレス鋼製のジャケット付き容器に収集する。粒子を、ダイアフラムまたは遠心ポンプを用いるタンジェンシャルフローろ過によって、さらに処理する。
【0022】
【
図5】
図5は、より詳細な混合モジュールを示す。緩衝液中の核酸は、第1(例えば、0.100~0.132インチID)ステンレス鋼チューブの注入アームを通って輸送される。エタノール中の脂質は、第1チューブに垂直に取り付けられた第2(例えば、0.005~0.010インチID)ステンレス鋼チューブを通って輸送される。第1チューブの壁の穴は、第2チューブから第1チューブの内部への液体の輸送を可能にする。混合により生じた脂質封入RNAナノ粒子は、第1チューブの排出アームを通って出る。
【0023】
【
図6A】
図6Aは、実施例1に記載の製造方法の拡張性を示す。粒子径は、0.05g、0.5g、1g、3g、15gおよび30gRNAのバッチで80nm以下のままであった。
【0024】
【
図6B】
図6Bは、実施例1に記載の製造方法に製造した脂質ナノ粒子の再現性を示す。粒子径は、1つの15gバッチおよび3つの30gバッチで80nm未満のままであった。
【0025】
【
図7】
図7は、脂質封入RNAナノ粒子のクライオTEM画像を示す。左の画像は、RNA負荷ナノ粒子を示し、その大部分は、球形の単層構造である。倍率52000×、スケールバー200nm。右の画像は、高倍率110,000×、スケールバー100nmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
主題技術の様々な構成が、主題技術の様々な構成が実例として示され、説明される本開示から当業者に容易に明らかになることが理解される。認識されるように、主題技術は、他の異なる構成が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて主題技術の範囲から逸脱することなく、他のさまざまな点で改変することができる。したがって、要約、図面および詳細な説明は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【0027】
本願出願人は、乱流を用いて、脂質と一本鎖または二本鎖リボ核酸(ssRNAまたはdsRNA)を混合して、層状形態を有する、すなわち二層構造を含む、100nm未満のほぼ単分散の粒子を提供する脂質封入RNAナノ粒子を製造する、製造方法を発見した。当該製造方法は、30g超のRNAに拡張可能である。本明細書に記載の製造方法により製造される、RNAを含む脂質封入RNAナノ粒子は、インビトロでのRNA送達に有用であり、動物モデルにおける静脈内投与時の安全性および有効性を改善する。
【0028】
一態様において、下記工程:a)RNAを含む水溶液を、0.1インチ~0.132インチの内径(ID)を有する第1チューブに流す工程;b)脂質を含むエタノール溶液を、0.005インチ~0.02インチのIDを有する第2チューブに、第1チューブを通る水溶液の1/3の流速にて流す工程であって、脂質がカチオン性脂質を含む工程;およびc)エタノール溶液および水溶液を、第1チューブに垂直に接合された第2チューブからなる混合モジュールへ流すことにより、エタノール溶液を水溶液と混合する工程を含む、脂質封入RNAナノ粒子を製造する方法であって、混合工程が、約10v/v%~75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む第1チューブ中を流れる排出溶液を生じ、脂質封入RNAナノ粒子が二層構造を有し、脂質が、式I:
【化1】
(I)
[式中、R
5およびR
6は、各々独立して、直鎖または分岐鎖のC
1-C
31アルキル、C
2-C
31アルケニルまたはC
2-C
31アルキニルおよびコレステリルからなる群より選択され;L
5およびL
6は、各々独立して、直鎖のC
1-C
20アルキルおよびC
2-C
20アルケニルからなる群より選択され;X
5は、-C(O)O-または-OC(O)-であり;X
6は、-C(O)O-または-OC(O)-であり;X
7は、SまたはOであり;L
7は、存在しないか、または低級アルキルであり;R
4は、直鎖または分岐鎖のC
1-C
6アルキルであり;およびR
7およびR
8は、各々独立して、水素および直鎖または分岐鎖のC
1-C
6アルキルからなる群より選択される]
で示されるカチオン性脂質またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む、方法を開示する。
【0029】
別の一態様において、本明細書に示す方法により製造される脂質封入RNAナノ粒子を開示する。
【0030】
さらに別の一態様において、下記工程:a)RNAを含む水溶液を、0.1インチ~0.132インチの内径(ID)を有する第1チューブに流す工程;b)脂質を含むエタノール溶液を、0.005インチ~0.02インチのIDを有する第2チューブに、第1チューブを通る水溶液の1/3の流速にて流す工程であって、脂質がカチオン性脂質を含む工程;およびc)エタノール溶液および水溶液を、第1チューブに垂直に接合された第2チューブからなる混合モジュールへ流すことにより、エタノール溶液を水溶液と混合する工程を含む製造方法であって、混合工程が、約10v/v%~75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む第1チューブ中を流れる排出溶液を生じ、脂質封入RNAナノ粒子が二層構造を有し、脂質が、式Iで示されるカチオン性脂質を含む、製造方法によって製造される、脂質封入RNAナノ粒子を開示する。
【0031】
いくつかの実施態様において、第1チューブ中を流れる排出溶液は、約10v/v%~約50v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む。
【0032】
いくつかの実施態様において、第1チューブ中を流れる排出溶液は、約16v/v%~約50v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む。
【0033】
いくつかの実施態様において、第1チューブ中を流れる排出溶液は、約10v/v%、15v/v%、20v/v%、25v/v%、30v/v%、35v/v%、40v/v%、44v/v%、50v/v%、55v/v%、60v/v%、70v/v%または75v/v%エタノール中のRNAおよび脂質の乱流を含む。
【0034】
いくつかの実施態様において、排出は、少なくとも200ml/分の流速を有する。
【0035】
いくつかの実施態様において、排出流速は、少なくとも2,000のレイノルズ数を有する。
【0036】
いくつかの実施態様において、水溶液は、第1HPLCポンプにより第1チューブを通ってポンプ輸送される。
【0037】
いくつかの実施態様において、水溶液は、少なくとも10psi、25psi、50psi、75psiまたは100psiの背圧を有して、ポンプ輸送される。
【0038】
いくつかの実施態様において、第1チューブは、0.132インチのIDを有する。
【0039】
いくつかの実施態様において、水溶液は、少なくとも30ml/分、45ml/分、60ml/分、75ml/分、90ml/分、105ml/分、120ml/分、150ml/分、225ml/分、262.5ml/分、300ml/分または450ml/分の流速でポンプ輸送される。
【0040】
いくつかの実施態様において、RNAを含む水溶液は、pH約3.0~4.5の約2mM~50mMクエン酸緩衝液を含む。
【0041】
いくつかの実施態様において、RNAを含む水溶液は、約10mM~200mM NaClをさらに含む。
【0042】
いくつかの実施態様において、エタノール溶液は、第2HPLCポンプにより第2チューブを通ってポンプ輸送される。
【0043】
いくつかの実施態様において、エタノール溶液は、少なくとも40psi、80psi、150psi、300psiまたは400psiの背圧を有して、ポンプ輸送される。
【0044】
いくつかの実施態様において、第2チューブは、0.007インチ、0.01インチまたは0.02インチのIDを有する。
【0045】
いくつかの実施態様において、エタノール溶液は、少なくとも10ml/分、15ml/分、20ml/分、25ml/分、30ml/分、35ml/分、40ml/分、50ml/分、60ml/分または75ml/分、87.5ml/分、100ml/分または150ml/分の流速でポンプ輸送される。
【0046】
いくつかの実施態様において、第1および第2混合物は、15~20℃にて維持される。
【0047】
いくつかの実施態様において、混合モジュールは、第1チューブに垂直に取り付けられた第2チューブからなり、第1チューブが、壁を貫通する開口部を有し、開口部が、およそ第2チューブの外径のサイズであり、第2チューブ中の第2溶液が第1チューブ中の第1溶液へ連続的に移動できるように、第2チューブが開口部に篏合している。
【0048】
いくつかの実施態様において、混合モジュールは、ステンレス鋼チューブからなる。
【0049】
いくつかの実施態様において、方法は、第3チューブを通って希釈緩衝液をポンプ輸送する工程、およびYコネクターの領域で希釈緩衝液を排出溶液に導入することにより、希釈緩衝液を排出溶液と混合して、希釈排出溶液を生成する工程をさらに含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、方法は、第3チューブを通って第1希釈緩衝液をポンプ輸送する工程、および第1Yコネクターの領域で第1希釈緩衝液を排出溶液に導入することにより、第1希釈緩衝液を排出溶液と混合して、第1希釈排出溶液を生成する工程をさらに含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、第1希釈緩衝液は、pH約7.4~8.5の約10mM~20mM Tris緩衝液、約45mM~55mM NaClおよび約8%~10%スクロースを含む。
【0052】
いくつかの実施態様において、第1希釈緩衝液は、pH約7.4~8.5の約10mM~20mM Tris緩衝液、約45mM~55mM NaClおよび約8%~10%スクロースを含み、RNAは、siRNAである。
【0053】
いくつかの実施態様において、方法は、第4チューブを通って第2希釈緩衝液をポンプ輸送する工程、および第2Yコネクターの領域で第2希釈緩衝液を第1希釈排出溶液に導入することにより、第2希釈緩衝液を第1希釈排出溶液と混合して、第2希釈排出溶液を生成する工程をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施態様において、第1希釈緩衝液は、pH約6.0~6.5の約40mM~90mMリン酸緩衝液を含み;第2希釈緩衝液は、pH約7.4~8.5の約20mM~50mM HEPES緩衝液、約50mM~300mM NaCl、約0%~15%スクロースを含む。
【0055】
いくつかの実施態様において、第2希釈緩衝液は、pH約7.4~8.5の約20mM~50mM HEPES緩衝液、約50mM~300mM NaCl、約0%~15%スクロースを含む。
【0056】
いくつかの実施態様において、第2希釈緩衝液は、約25mM~100mM NaClをさらに含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、第1希釈緩衝液は、pH約6.0~6.5の約40mM~90mMリン酸緩衝液を含み、RNAは、mRNAである。
【0058】
いくつかの実施態様において、第1希釈緩衝液は、pH約6.0~6.5の約40mM~90mMリン酸緩衝液;および第2希釈緩衝液は、pH約7.4~8.5の約20mM~50mM HEPES緩衝液、約50mM~300mM NaCl、約0%~15%スクロースを含み、RNAは、mRNAであるを含む。
【0059】
いくつかの実施態様において、希釈緩衝液は、pH約7.0~8.5の、約5~25mM Tris、15~75mM NaCl、約3~12%スクロース;pH約5.5~8.0の約5~20mM Tris、約20~70mM NaCl、約3~12%スクロース、pH約7.0~8.5;約20~65mMリン酸;pH約7.0~8.5の約10~30mM HEPES、約25~75mM NaCl、約5~12%スクロース;またはpH約7.0~8.5の約25~65mM HEPES、約25~65mM NaCl、約3~12%スクロースを含む。いくつかの実施態様において、希釈緩衝液は、pH7.5の15mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース;pH7.5の10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース;pH約7.4~8.0の45mMリン酸、pH6.0;20mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロース;またはpH約7.4~8.0の50mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロースを含む。いくつかの実施態様において、希釈緩衝液は、pH7.5の15mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース;pH7.5の10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース;pH6.0の45mMリン酸;pH7.4~8.0の20mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロース;またはpH7.4~8.0の50mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロースを含む。
【0060】
いくつかの実施態様において、希釈排出溶液は、6.25%エタノール;8.25%エタノール;8.3%エタノール;または12.5%エタノールを含む。
【0061】
いくつかの実施態様において、Yコネクターは、約45°の角度で接合されている。
【0062】
いくつかの実施態様において、Yコネクターは、ポリエーテルエーテルケトンからなる。
【0063】
いくつかの実施態様において、希釈緩衝液は、400~900mL/分の流速にて第3チューブを通ってポンプ輸送される。
【0064】
いくつかの実施態様において、第3チューブは、0.25インチのIDを有する。
【0065】
いくつかの実施態様において、脂質ナノ粒子に封入されたRNAは、脂質と混合したRNAの少なくとも70%、75%、80%または85%である。
【0066】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子中の脂質は、RNAと混合した脂質の少なくとも70%、75%、80%または85%である。
【0067】
いくつかの実施態様において、X7は、Sである。
【0068】
いくつかの実施態様において、R7およびR8は、各々独立して、メチル、エチルおよびイソプロピルからなる群より選択される。
【0069】
いくつかの実施態様において、L5およびL6は、各々独立して、C1-C10アルキルである。いくつかの実施態様において、L5は、C1-C3アルキルであり、L6は、C1-C5アルキルである。いくつかの実施態様において、L6は、C1-C2アルキルである。いくつかの実施態様において、L5およびL6は各々、直鎖のC7アルキルである。いくつかの実施態様において、L5およびL6は各々、直鎖のC9アルキルである。
【0070】
いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、アルケニルである。いくつかの実施態様において、R6は、アルケニルである。いくつかの実施態様において、R6は、C2-C9アルケニルである。いくつかの実施態様において、R5およびR6のアルケニルは、各々独立して、1つの二重結合を含む。いくつかの実施態様において、R5およびR6は各々、アルキルである。いくつかの実施態様において、R5は、分岐鎖のアルカンである。いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、C9アルキル、C9アルケニルおよびC9アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、C11アルキル、C11アルケニルおよびC11アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、C7アルキル、C7アルケニルおよびC7アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施態様において、R5は、-CH((CH2)pCH3)2または-CH((CH2)pCH3)((CH2)p-1CH3)であり、式中、pは、4~8である。いくつかの実施態様において、pは、5であり、L5は、C1-C3アルキルである。いくつかの実施態様において、pは、6であり、L5は、C3アルキルである。いくつかの実施態様において、pは、7である。いくつかの実施態様において、pは、8であり、L5は、C1-C3アルキルである。いくつかの実施態様において、R5は、-CH((CH2)pCH3)((CH2)p-1CH3)からなり、式中、pは、7または8である。
【0071】
いくつかの実施態様において、R4は、エチレンまたはプロピレンである。いくつかの実施態様において、R4は、n-プロピレンまたはイソブチレンである。
【0072】
いくつかの実施態様において、L7は、存在せず、R4は、エチレンであり、X7は、Sであり、R7およびR8は各々、メチルである。いくつかの実施態様において、L7は、存在せず、R4は、n-プロピレンであり、X7は、Sであり、R7およびR8は各々、メチルである。いくつかの実施態様において、L7は、存在せず、R4は、エチレンであり、X7は、Sであり、R7およびR8は各々、エチルである。
【0073】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化2】
【化3】
【化4】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物からなる群より選択される。
【0074】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化5】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0075】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化6】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0076】
いくつかの実施態様において、脂質は、
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物からなる群より選択される。
【0077】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化12】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0078】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化13】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0079】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化14】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0080】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化15】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0081】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化16】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0082】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、
【化17】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0083】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子が、約100nm未満の平均粒子径を有する。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子が、約55nm~約85nmの平均粒子径を有する。
【0084】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、少なくとも約50%のRNAを封入する。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、少なくとも約85%のRNAを封入する。
【0085】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびホスファチジルコリン(PC)からなる群より選択されるヘルパー脂質をさらに含む。いくつかの実施態様において、ヘルパー脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。
【0086】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、コレステロールをさらに含む。
【0087】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートをさらに含む。いくつかの実施態様において、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-DMGである。いくつかの実施態様において、PEG-DMGは、PEG2000-DMG(ジミリストイルグリセロール)である。
【0088】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の脂質部分は、約48モル%~約66モル%のイオン化可能なカチオン性脂質、約2モル%~約12モル%のDSPC、約25モル%~約42モル%のコレステロール、および約0.5モル%~約3モル%のPEG2000-DMGを含む。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の脂質部分は、約50モル%~約61モル%のイオン化可能なカチオン性脂質、約5モル%~約9モル%のDSPC、約29モル%~約38モル%のコレステロール、および約1モル%~約2モル%のPEG2000-DMGを含む。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の脂質部分は、約56モル%~約58モル%のイオン化可能なカチオン性脂質、約6モル%~約8モル%のDSPC、約31モル%~約34モル%のコレステロール、および約1.25モル%~約1.75モル%のPEG2000-DMGを含む。
【0089】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約50:1~約3:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約50:1~約5:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約50:1~約10:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約40:1~約20:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約35:1~約25:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約28:1~約32:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子の総脂質:RNAの重量比は、約29:1~約31:1である。
【0090】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、カチオン性脂質:DOTAP:DSPC:コレステロール:PEGを、25:25:10:38.5:1.5、25:25:10:37:3、25:25:10:35:5、20:20:7:51.5:1.5、25:20:10:42:3、20:30:13:32:5、25:20:10:40:5、25:25:13:35.5:1.5、25:30:7:35:3、30:20:13:34:3、30:25:7:33:3、30:30:10:25.8:1.5、15:20:13:49:3、20:20:13:44:3、20:25:13:39:3、15:25:13:44:3、20:25:13:39:3、25:25:13:34:3、30:20:13:34:3または30:30:13:29:3のモル割合で含む。
【0091】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約20w/w%~60w/w%のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約90w/w%未満のカチオン性脂質を含む。
【0092】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約5w/w%~30w/w%のヘルパー脂質を含む。
【0093】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約0w/w%~60w/w%のコレステロールを含む。
【0094】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約0.5w/w%~15w/w%のポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0095】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約5w/w%~25w/w%の中性脂質を含む。
【0096】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約0w/w%~30w/w%のリン脂質を含む。
【0097】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のコレステロール:RNAのモル比は、約1.5:1~9:1である。
【0098】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のPEG:mRNAのモル比は、約0.5:1~5:1である。
【0099】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のヘルパー脂質:RNAのモル比は、約0.25:1~4:1である。
【0100】
いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のカチオン性脂質:RNAのモル比は、約1:1~7:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、約10w/w%~98w/w%の式Iで示されるカチオン性脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のカチオン性脂質:RNAのモル比は、約5.4:1~15.4:1である。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のカチオン性脂質のモル%および/またはカチオン性脂質:RNAの比率は、
図2に示すとおりである。いくつかの実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子のカチオン性脂質の組成および/または脂質モル%は、
図3に示すとおりである。
【0101】
いくつかの実施態様において、RNAは、tRNA(転移RNA)、snRNA(小核RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、siRNA(低分子干渉RNA)および自己複製RNAからなる群より選択される。
【0102】
いくつかの実施態様において、平均粒子径は、70nm、80nm、90nmまたは100nm未満である。
【0103】
いくつかの実施態様において、多分散指数は、0.05、0.07または0.09未満である。
【0104】
いくつかの実施態様において、RNA封入率は、90%、94%、96%または98%を超える。
【0105】
いくつかの実施態様において、バッチサイズは、0.05~100g RNAである。いくつかの実施態様において、バッチサイズは、0.05~30g RNAである。
【0106】
いくつかの実施態様において、バッチ間の平均粒子径の変動は、10%未満である。
【0107】
天然および修飾ヌクレオチド
好ましくは、本明細書に記載のmRNAは、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。核酸モノマーの例は、非天然、修飾および化学修飾ヌクレオチドを含み、当該技術分野で公知のあらゆるそのようなヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、塩基部分または糖部分のいずれかにて人工的に修飾し得る。天然では、ほとんどのポリヌクレオチドは、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む、「未修飾」または「天然」ヌクレオチドであるヌクレオチドを含む。これらの塩基は、典型的には、1'の位置でリボースまたはデオキシリボースに固定されている。化学修飾ヌクレオチドを含むmRNAポリヌクレオチドの使用は、mRNAの発現、発現速度、半減期および/または発現タンパク質濃度を改善することが示されている。化学修飾ヌクレオチドを含むmRNAポリヌクレオチドはまた、タンパク質の局在化を最適化するのに有用であり、これにより、有害な生物学的応答、例えば免疫応答および/または分解経路を回避する。
【0108】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、5-ヒドロキシシチジン、5-アルキルシチジン、5-ヒドロキシアルキルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-アルコキシシチジン、5-アルキニルシチジン、5-ハロシチジン、2-チオシチジン、N4-アルキルシチジン、N4-アミノシチジン、N4-アセチルシチジンおよびN4,N4-ジアルキルシチジンを含む。
【0109】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、5-ヒドロキシシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-メトキシシチジン、5-プロピニルシチジン、5-ブロモシチジン、5-ヨードシチジン、2-チオシチジン;N4-メチルシチジン、N4-アミノシチジン、N4-アセチルシチジンおよびN4,N4-ジメチルシチジンを含む。
【0110】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、5-ヒドロキシウリジン、5-アルキルウリジン、5-ヒドロキシアルキルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシアルキルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-アルコキシウリジン、5-アルキニルウリジン、5-ハロウリジン、2-チオウリジンおよび6-アルキルウリジンを含む。
【0111】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシメチルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-メトキシウリジン(本明細書では「5MeOU」とも称する)、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-フルオロウリジン、5-ヨードウリジン、2-チオウリジンおよび6-メチルウリジンを含む。
【0112】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルバモイルメチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチルウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-タウリノメチルウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン、2'-O-メチルシュードウリジン、2-チオ-2'O-メチルウリジンおよび3,2'-O-ジメチルウリジンを含む。
【0113】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、N6-メチルアデノシン、2-アミノアデノシン、3-メチルアデノシン、8-アザアデノシン、7-デアザアデノシン、8-オキソアデノシン、8-ブロモアデノシン、2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイル-アデノシン、N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイル-アデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイル-アデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイル-アデノシン、N6-アセチル-アデノシン、7-メチル-アデニン、2-メチルチオ-アデニン、2-メトキシ-アデニン、アルファ-チオ-アデノシン、2'-O-メチル-アデノシン、N6,2'-O-ジメチル-アデノシン、N6,N6,2'-O-トリメチル-アデノシン、1,2'-O-ジメチル-アデノシン、2'-O-リボシルアデノシン、2-アミノ-N6-メチル-プリン、1-チオ-アデノシン、2'-F-アラ-アデノシン、2'-F-アデノシン、2'-OH-アラ-アデノシンおよびN6-(19-アミノ-ペンタオキサノナデシル)-アデノシンを含む。
【0114】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、Nl-アルキルグアノシン、N2-アルキルグアノシン、チエノグアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシン、8-ブロモグアノシン、O6-アルキルグアノシン、キサントシン、イノシンおよびNl-アルキルイノシンを含む。
【0115】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、Nl-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、チエノグアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシン、8-ブロモグアノシン、O6-メチルグアノシン、キサントシン、イノシンおよびNl-メチルイノシンを含む。
【0116】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例は、シュードウリジンを含む。シュードウリジンの例は、Nl-アルキルシュードウリジン、Nl-シクロアルキルシュードウリジン、N1-ヒドロキシシュードウリジン、N1-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、Nl-フェニルシュードウリジン、Nl-フェニルアルキルシュードウリジン、Nl-アミノアルキルシュードウリジン、N3-アルキルシュードウリジン、N6-アルキルシュードウリジン、N6-アルコキシシュードウリジン、N6-ヒドロキシシュードウリジン、N6-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N6-モルホリノシュードウリジン、N6-フェニルシュードウリジンおよびN6-ハロシュードウリジンを含む。シュードウリジンの例は、Nl-アルキル-N6-アルキルシュードウリジン、Nl-アルキル-N6-アルコキシシュードウリジン、Nl-アルキル-N6-ヒドロキシシュードウリジン、Nl-アルキル-N6-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、Nl-アルキル-N6-モルホリノシュードウリジン、Nl-アルキル-N6-フェニルシュードウリジンおよびNl-アルキル-N6-ハロシュードウリジンを含む。これらの例において、アルキル、シクロアルキルおよびフェニル置換基は、非置換であってもよく、またはアルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノまたはニトロ置換基でさらに置換されてもよい。
【0117】
シュードウリジンの例は、Nl-メチルシュードウリジン(本明細書では「N1MPU」とも称する)、Nl-エチルシュードウリジン、Nl-プロピルシュードウリジン、Nl-シクロプロピルシュードウリジン、Nl-フェニルシュードウリジン、Nl-アミノメチルシュードウリジン、N3-メチルシュードウリジン、N1-ヒドロキシシュードウリジンおよびN1-ヒドロキシメチルシュードウリジンを含む。
【0118】
核酸モノマーの例は、修飾および化学修飾ヌクレオチドを含み、当該技術分野で公知のあらゆるそのようなヌクレオチドを含む。
【0119】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、当該技術分野で公知のあらゆるそのようなヌクレオチドを含み、例えば、2'-O-メチルリボヌクレオチド、2'-O-メチルプリンヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロリボヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロピリミジンヌクレオチド、2'-デオキシリボヌクレオチド、2'-デオキシプリンヌクレオチド、ユニバーサル塩基ヌクレオチド、5-C-メチル-ヌクレオチドおよび逆位デオキシ脱塩基モノマー残基を含む。
【0120】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、3'-末端安定化ヌクレオチド、3'-グリセリルヌクレオチド、3'-逆位脱塩基ヌクレオチドおよび3'-逆位チミジンを含む。
【0121】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)、2'-O,4'-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオチド、2'-メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2'-メチル-チオ-エチル、2'-デオキシ-2'-フルオロヌクレオチドおよび2'-O-メチルヌクレオチドを含む。例示的な実施態様において、修飾モノマーは、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)である。
【0122】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2',4'-拘束2'-O-メトキシエチル(cMOE)および2'-O-エチル(cEt)修飾DNAを含む。
【0123】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2'-アミノヌクレオチド、2'-O-アミノヌクレオチド、2'-C-アリルヌクレオチドおよび2'-O-アリルヌクレオチドを含む。
【0124】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、N6-メチルアデノシンヌクレオチドを含む。
【0125】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、修飾塩基5-(3-アミノ)プロピルウリジン、5-(2-メルカプト)エチルウリジン、5-ブロモウリジン;8-ブロモグアノシンまたは7-デアザアデノシンを有するヌクレオチドモノマーを含む。
【0126】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2'-O-アミノプロピル置換ヌクレオチドを含む。
【0127】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2'-R、2'-OR、2'-ハロゲン、2'-SRまたは2'-アミノとのヌクレオチドの2'-OH基の置き換えを含み、ここでRは、H、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり得る。
【0128】
上記の塩基修飾の例は、糖修飾および結合修飾を含む、ヌクレオシドまたはヌクレオチド構造の更なる修飾と組み合され得る。特定の修飾または化学修飾ヌクレオチドモノマーは、天然で見出され得る。
【0129】
好ましいヌクレオチド修飾は、N1-メチルシュードウリジンおよび5-メトキシウリジンを含む。
【0130】
5'キャップ
すべての真核生物(および一部のウイルス)に存在するmRNA(または自己複製RNA)の5'末端のキャップ構造は、インビボでmRNAを安定化するのに重要である。天然に存在するキャップ構造は、グアニン塩基の位置N7でメチル化されているリボグアノシン残基を含む。この7-メチルグアノシン(m7G)は、mRNA分子の5'末端にある5'-から5'-トリリン酸鎖を介して結合する。5'末端にm7Gpppフラグメントが存在することは、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護し、核から細胞質へのmRNAの輸送を促進し、翻訳開始複合体の構築に重要な役割を果たすため、mRNAの成熟に不可欠である(Cell 9:645-653, (1976); Nature 266:235, (1977); Federation of Experimental Biologists Society Letter 96:1-11, (1978); Cell 40:223-24, (1985); Prog. Nuc. Acid Res. 35:173-207, (1988); Ann. Rev. Biochem. 68:913-963, (1999); J Biol. Chem. 274:30337-3040, (1999))。
【0131】
キャップ構造を持つmRNAのみが、キャップ依存翻訳で活性であり;mRNAの「断頭」により、タンパク質合成のテンプレート活性がほぼ完全に失われる(Nature, 255:33-37, (1975); J. Biol. Chem., vol. 253:5228-5231, (1978); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 72:1189-1193, (1975))。
【0132】
真核生物のmRNAの別の構成要素は、転写物の位置1(キャップ1)、場合によっては転写物の位置1と2(キャップ2)に2'-O-メチルヌクレオシド残基が存在することである。mRNAの2'-O-メチル化は、インビボでのmRNA翻訳のより高い効力を提供し(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:3952-3956 (1980))、5'がキャップされたmRNAのヌクレアーゼ安定性をさらに改善する。キャップ1(およびキャップ2)を有するmRNAは、細胞が真正なmRNA 5'末端を認識し、場合によっては、感染性の遺伝的要素から発せられる転写産物を区別できるようにする識別マークである(Nucleic Acid Research 43: 482-492 (2015))。
【0133】
5'キャップの構造およびそれを製造する方法のいくつかの例は、WO2015/051169A2、WO2015/061491、US2018/0273576、および米国特許第8,093,367号、第8,304,529号および第10,487,105号に示されている。いくつかの実施態様において、5'キャップは、当該技術分野で公知のm7GpppAmpGである。いくつかの実施態様において、5'キャップは、当該技術分野で公知のm7GpppGまたはm7GpppGmdである。5'キャップ構造の実施態様の構造式を以下に示す。
【0134】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップI)
【化18】
(キャップI)
[式中、B
1は、天然または修飾核酸塩基であり;R
1およびR
2は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;nは、0、1、2または3であり;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わす]
の構造を有する5'キャップを含む。いくつかの実施態様において、Gは、グアニンであり、いくつかの実施態様において、nは、0である。いくつかの実施態様において、B
1は、Aまたはm6Aであり、R
1は、OCH
3であり;Gは、グアニンであり、m
7Gは、7-メチルグアニンであり、Aは、アデニンであり、m
6Aは、N
6-メチルアデニンである。
【0135】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップII)
【化19】
(キャップII)
[式中、B
1およびB
2は、各々独立して、天然または修飾核酸塩基であり;R
1、R
2およびR
3は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有する5'キャップを含む。いくつかの実施態様において、Gは、グアニンであり、いくつかの実施態様において、nは、0である。いくつかの実施態様において、B
1は、Aまたはm6Aであり、R
1は、OCH
3であり;Gは、グアニンであり、m
7Gは、7-メチルグアニンであり、Aは、アデニンであり、m
6Aは、N
6-メチルアデニンである。
【0136】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップIII)
【化20】
(キャップIII)
[式中、B
1、B
2およびB
3は、各々独立して、天然または修飾核酸塩基であり;R
1、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有する5'キャップを含む。いくつかの実施態様において、Gは、グアニンであり、いくつかの実施態様において、B
1は、Aまたはm6Aであり、R
1は、OCH
3であり;Gは、グアニンであり、m
7Gは、7-メチルグアニンであり、Aは、アデニンであり、m
6Aは、N
6-メチルアデニンである。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0137】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップIV)
【化21】
(キャップIV)
[式中、R
1、R
2およびR
3は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7GpppG 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、5'キャップは、m
7GpppGであり、式中 R
1、R
2およびR
3は各々、OHであり、nは1であり、L
1はホスフェートである。いくつかの実施態様において、nは、1である。いくつかの実施態様において、R
1およびR
2は各々、OHであり、R
3は、OCH
3であり、各Pは、ホスフェートであり、これによりホスホジエステル結合が形成され、mRNAは、その5'末端にて結合する本開示のmRNAであり、nは1であり、L
1はホスフェートである。
【0138】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップV)
【化22】
(キャップV)
[式中、R
1、R
2およびR
3は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7Gpppm
7G 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、nは、0である。
【0139】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、m
7Gpppm
7GpN、5'キャップ類似体を含み、Nは、天然または修飾ヌクレオチドであり、5'キャップ類似体は、式(キャップVI)
【化23】
(キャップVI)
[式中、B
3は、天然または修飾核酸塩基であり;R
1、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有する。いくつかの実施態様において、Gは、グアニンであり、いくつかの実施態様において、B
1は、Aまたはm6Aであり、R
1は、OCH
3であり;Gは、グアニンであり、m
7Gは、7-メチルグアニンであり、Aは、アデニンであり、m
6Aは、N
6-メチルアデニンである。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0140】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップVII)
【化24】
(キャップVII)
[式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7Gpppm
7GpG 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0141】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップVIII)
【化25】
(キャップVIII)
[式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7Gpppm
7Gpm
7G 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0142】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップIX)
【化26】
(キャップIX)
[式中、R
1、R
2およびR
3は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7GpppA 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0143】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、m
7GpppApN 5'キャップ類似体を含み、Nは、天然または修飾ヌクレオチドであり、5'キャップは、式(キャップX)
【化27】
(キャップX)
[式中、B
3は、天然または修飾核酸塩基であり;R
1、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有する。いくつかの実施態様において、B
3は、G、m
7G、Aまたはm
6Aであり;Gは、グアニンであり、m
7Gは、7-メチルグアニンであり、Aは、アデニンであり、m
6Aは、N
6-メチルアデニンである。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0144】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップXI)
【化28】
(キャップXI)
[式中、R
1、R
2およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7GpppAmpG 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、式キャップXIの化合物は、m
7GpppAmpGであり、式中、R
1、R
2およびR
4は各々、OHであり、nは、1であり、L
1は、ホスフェート結合である。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0145】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップXII)
【化29】
(キャップXII)
[式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7GpppApm
7G 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0146】
いくつかの実施態様において、明細書に記載のmRNAは、式(キャップXIII)
【化30】
(キャップXIII)
[式中、R
1、R
2およびR
4は、各々独立して、ハロゲン、OHおよびOCH
3より選択され;各Pは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートからなる群より選択され;mRNAは、その5'末端で連結しているmRNAを表わし;nは、0、1、2または3であり;L
1は、ホスフェート、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェートであり、R
1、R
2およびR
4の少なくとも1つは、OHである]
の構造を有するm
7GpppAmpm
7G 5'キャップ類似体を含む。いくつかの実施態様において、nは、1である。
【0147】
RNAは、US2018/0105551A1(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されている5'トリヌクレオチドキャップ構造を含み得る。
【0148】
天然RNAは、ホスフェート骨格を有し得る。本明細書に記載のRNAは、ペプチド核酸、ホスホチオネート、ホスホルアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはメチルホスホネート結合を含む、他のタイプの骨格および塩基を含み得る。
【0149】
カチオン性脂質
脂質製剤は、好ましくは、カチオン性リポソームまたは脂質ナノ粒子を形成するのに適したカチオン性脂質を含む。カチオン性脂質は、負に帯電した膜に結合して取り込みを誘導できるので、核酸送達のために広く研究されている。一般的に、カチオン性脂質は、正の親水性ヘッドグループ、2つ(またはそれ以上)の親油性テールまたはステロイド部分、およびこれら2つのドメイン間のコネクターを含む両親媒性物質である。好ましくは、カチオン性脂質は、ほぼ生理学的pHで正味の正電荷を帯びている。カチオン性リポソームは、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴおよびsiRNA/低分子ヘアピンRNA-shRNAを含むオリゴヌクレオチドに対して、伝統的に最も一般的に用いられている非ウイルス送達システムである。カチオン性脂質、例えばDOTAP(l,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)およびDOTMA(N-[l-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルフェート)は、静電相互作用によって負に帯電した核酸と複合体またはリポプレックスを形成し、高いインビトロトランスフェクション効率を提供する。
【0150】
本開示の脂質製剤およびそれを製造する方法において、カチオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)(N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドおよびl,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリドとしても知られる)、N-(l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、l,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、l,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、l,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、l,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、l,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、l,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、l-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、l,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド(DLin-TMA.Cl)、l,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド(DLin-TAP.Cl)、l,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-l,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-l,2-プロパンジオール(DOAP)、l,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエチル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][l,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、l,l'-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-l-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[l,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,3l-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-l-アミン(MC3 Ether)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-l-アミン(MC4 Ether)、またはそのあらゆる組合せであり得る。他のカチオン性脂質は、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウム臭化物(DDAB)、3P-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、l,2-ジレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、l,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(l,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)および2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソラン(XTC)を含むがこれらに限定されない。また、例えば、LIPOFECTIN(DOTMAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)およびLipofectamine(DOSPAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)などのカチオン性脂質の市販の調製物を用い得る。
【0151】
他の適切なカチオン性脂質は、WO09/086558、WO09/127060、WO10/048536、WO10/054406、WO10/088537、WO10/129709およびWO2011/153493;米国特許出願公開第2011/0256175号、第2012/0128760号および第2012/0027803号;米国特許第8,158,601号;およびLove et al., PNAS, 107(5), 1864-69, 2010に開示されており、これらの内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0152】
他の適切なカチオン性脂質は、別の脂肪酸基および他のジアルキルアミノ基を有するものを含み、アルキル置換基が異なるもの(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-およびN-プロピル-N-エチルアミノ-)を含む。これらの脂質は、アミノ脂質と称されるカチオン性脂質のサブカテゴリーの一部である。本明細書に記載の脂質製剤のいくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、アミノ脂質である。一般的に、飽和アシル鎖が少ないアミノ脂質は、特に複合体のサイズをろ過滅菌の目的で約0.3μm未満にする必要がある場合に、より簡単にサイズを変更できる。炭素鎖長がC14~C22の範囲の不飽和脂肪酸を含むアミノ脂質を用い得る。他の足場を用いて、アミノ基と、アミノ脂質の脂肪酸または脂肪アルキル部分を分離し得る。
【0153】
いくつかの実施態様において、脂質製剤およびそれを製造する方法は、特許出願PCT/EP2017/064066による式Iを有するカチオン性脂質を含む。本明細書において、PCT/EP2017/064066の開示もまた、出典明示により本明細書の一部とする。
【0154】
いくつかの実施態様において、本開示のアミノまたはカチオン性脂質は、イオン化可能であり、少なくとも1つのプロトン化可能または脱プロトン化可能基(「イオン化可能なカチオン性脂質」)を有し、その結果、脂質は、生理学的pH(例えば、pH7.4)以下のpHにて正に帯電し、第2pH、好ましくは生理学的pH以上のpHにて中性である。もちろん、pHの関数としてのプロトンの付加または除去は平衡プロセスであり、帯電したまたは中性の脂質への言及は優勢な種の性質を指し、すべての脂質が帯電した形または中性の形態で存在することを必要としないことが理解されよう。1つ以上のプロトン化可能または脱プロトン化可能基を有するか、双イオン性である脂質は、本開示における使用から除外されない。特定の実施態様において、プロトン化可能な脂質は、約4~約11の範囲のプロトン化可能基のpKaを有する。いくつかの実施態様において、イオン化可能なカチオン性脂質は、約5~約7のpKaを有する。いくつかの実施態様において、イオン化可能なカチオン性脂質のpKaは、約6~約7である。
【0155】
いくつかの実施態様において、脂質製剤およびそれを製造する方法は、式I:
【化31】
(I)
[式中、R
5およびR
6は、各々独立して、直鎖または分岐鎖のC
1-C
31アルキル、C
2-C
31アルケニルまたはC
2-C
31アルキニルおよびコレステリルからなる群より選択され;L
5およびL
6は、各々独立して、直鎖のC
1-C
20アルキルおよびC
2-C
20アルケニルからなる群より選択され;X
5は-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-R
6が形成されるか、または-OC(O)-であり、これにより-OC(O)-R
6が形成され;X
6は-C(O)O-これにより-C(O)O-R
5が形成されるか、または-OC(O)-であり、これにより-OC(O)-R
5が形成され;X
7は、SまたはOであり;L
7は、存在しないか、または低級アルキルであり;R
4は、直鎖または分岐鎖のC
1-C
6アルキルであり;およびR
7およびR
8は、各々独立して、水素および直鎖または分岐鎖のC
1-C
6アルキルからなる群より選択される]
で示されるイオン化可能なカチオン性脂質またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む。
【0156】
いくつかの実施態様において、X7は、Sである。
【0157】
いくつかの実施態様において、X5は-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-R6が形成され、X6は-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-R5が形成される。
【0158】
いくつかの実施態様において、R7およびR8は、各々独立して、メチル、エチルおよびイソプロピルからなる群より選択される。
【0159】
いくつかの実施態様において、L5およびL6は、各々独立して、C1-C10アルキルである。いくつかの実施態様において、L5は、C1-C3アルキルであり、L6は、C1-C5アルキルである。いくつかの実施態様において、L6は、C1-C2アルキルである。いくつかの実施態様において、L5およびL6は各々、直鎖のC7アルキルである。いくつかの実施態様において、L5およびL6は各々、直鎖のC9アルキルである。
【0160】
いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、アルケニルである。いくつかの実施態様において、R6は、アルケニルである。いくつかの実施態様において、R6は、C2-C9アルケニルである。いくつかの実施態様において、アルケニルは、1つの二重結合を含む。いくつかの実施態様において、R5およびR6は各々、アルキルである。いくつかの実施態様において、R5は、分岐鎖のアルキルである。いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、C9アルキル、C9アルケニルおよびC9アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、C11アルキル、C11アルケニルおよびC11アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施態様において、R5およびR6は、各々独立して、C7アルキル、C7アルケニルおよびC7アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施態様において、R5は、-CH((CH2)pCH3)2または-CH((CH2)pCH3)((CH2)p-1CH3)であり、式中、pは、4~8である。いくつかの実施態様において、pは、5であり、L5は、C1-C3アルキルである。いくつかの実施態様において、pは、6であり、L5は、C3アルキルである。いくつかの実施態様において、pは、7である。いくつかの実施態様において、pは、8であり、L5は、C1-C3アルキルである。いくつかの実施態様において、R5は、-CH((CH2)pCH3)((CH2)p-1CH3)からなり、式中、pは、7または8である。
【0161】
いくつかの実施態様において、R4は、エチレンまたはプロピレンである。いくつかの実施態様において、R4は、n-プロピレンまたはイソブチレンである。
【0162】
いくつかの実施態様において、L7は、存在せず、R4は、エチレンであり、X7は、Sであり、R7およびR8は各々、メチルである。いくつかの実施態様において、L7は、存在せず、R4は、n-プロピレンであり、X7は、Sであり、R7およびR8は各々、メチルである。いくつかの実施態様において、L7は、存在せず、R4は、エチレンであり、X7は、Sであり、R7およびR8は各々、エチルである。
【0163】
いくつかの実施態様において、X7は、Sであり、X5は-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-R6が形成され、X6は-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-R5が形成され、L5およびL6は、各々独立して、直鎖のC3-C7アルキル、L7は、存在せず、R5は、-CH((CH2)pCH3)2であり、R6は、C7-C12アルケニルである。いくつかの好ましい実施態様において、pは、6であり、R6は、C9アルケニルである。
【0164】
いくつかの実施態様において、脂質製剤およびそれを製造する方法は、
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
からなる群より選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。
【0165】
いくつかの実施態様において、脂質製剤は、下記表1に示す脂質#1~脂質#9からなる群より選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含み得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0166】
いくつかの実施態様において、脂質製剤は、
【化40】
より選択される構造を有するイオン化可能なカチオン性脂質、またはその医薬的に許容される塩を含む。
【0167】
いくつかの好ましい実施態様において、脂質製剤は、
【化41】
の構造を有するイオン化可能なカチオン性脂質、またはその医薬的に許容される塩を含む。
【0168】
一実施態様において、本明細書に記載の任意の1以上の脂質は、明示的に除外され得る。
【0169】
ヘルパー脂質およびステロール
本開示のmRNA-脂質製剤およびそれを製造する方法は、中性ヘルパー脂質、非カチオン性脂質、非カチオン性ヘルパー脂質、アニオン性脂質、アニオン性ヘルパー脂質または中性脂質と称し得るヘルパー脂質を含み得る。脂質製剤、特にカチオン性リポソームおよび脂質ナノ粒子は、ヘルパー脂質が製剤中に存在する場合、細胞取り込みを増加させることが見出された(Curr. Drug Metab. 2014; 15(9):882-92)。例えば、いくつかの研究では、カチオン性脂質より融合性(すなわち、融合を促進する)である中性および双性イオン脂質、例えば1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)および1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)は、脂質-核酸複合体の多形性の特徴に影響を及ぼし、層状相からヘキサゴナル相への移行を促進し、これにより細胞膜の融合および破壊を誘発することが示されている(Nanomedicine (Lond). 2014 Jan; 9(1):105-20)。また、ヘルパー脂質の使用は、毒性および免疫原性などの多くの一般的なカチオン性脂質を用いることによる潜在的な有害な影響を減らすのに役立つ。
【0170】
本開示の脂質製剤およびそれを製造する方法に適した非カチオン性脂質の非限定的な例としては、リン脂質、例えばレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、およびこれらの混合物が挙げられる。他のジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質もまた用い得る。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10-C24炭素鎖を有する脂肪酸、例えばラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルに由来するアシル基である。
【0171】
非カチオン性脂質の更なる例は、ステロール、例えばコレステロールおよびその誘導体を含む。ある研究では、ヘルパー脂質として、コレステロールは、核酸と接触する脂質層の電荷の間隔を広げ、電荷分布を核酸の分布とより厳密に一致させると結論付けた(J. R. Soc. Interface. 2012 Mar 7; 9(68): 548-561)。コレステロール誘導体非限定的な例としては、極性類似体、例えば5α-コレスタノール、5α-コプロスタノール、コレステリル-(2'-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4'-ヒドロキシ)-ブチルエーテルおよび6-ケトコレスタノール;非極性類似体、例えば5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5α-コレスタノンおよびデカン酸コレステリル;およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施態様において、コレステロール誘導体は、極性類似体、例えばコレステリル-(4'-ヒドロキシ)-ブチルエーテルである。
【0172】
いくつかの実施態様において、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、1つ以上のリン脂質およびコレステロールまたはその誘導体の混合物を含むかまたはそれらからなる。他の実施態様において、脂質製剤中に存在する中性脂質は、1つ以上のリン脂質、例えば、コレステロール非含有脂質製剤を含むかまたはそれらからなる。さらに他の実施態様において、脂質製剤中に存在する中性脂質は、コレステロールまたはその誘導体、例えば、リン脂質非含有脂質製剤を含むかまたはそれらからなる。
【0173】
ヘルパー脂質の他の例としては、非リン含有脂質、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、レチノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキル-アリールスルフェートポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウム臭化物、セラミドおよびスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0174】
いくつかの実施態様において、ヘルパー脂質は、脂質製剤中に存在する総脂質の約2モル%~約20モル%、約3モル%~約18モル%、約4モル%~約16モル%、約5モル%~約14モル%、約6モル%~約12モル%、約5モル%~約10モル%、約5モル%~約9モル%または約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%、約6モル%、約7モル%、約8モル%、約9モル%、約10モル%、約11モル%または約12モル%(または任意のその分数またはその範囲内)を含む。
【0175】
脂質製剤およびそれを製造する方法におけるコレステロールまたはコレステロール誘導体は、脂質製剤中に存在する総脂質の最大約40モル%、約45モル%、約50モル%、約55モル%または約60モル%を含み得る。いくつかの実施態様において、コレステロールまたはコレステロール誘導体は、脂質製剤中に存在する総脂質の約15モル%~約45モル%、約20モル%~約40モル%、約25モル%~約35モル%または約28モル%~約35モル%;または約25モル%、約26モル%、約27モル%、約28モル%、約29モル%、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%または約37モル%を含む。
【0176】
いくつかの実施態様において、混合物中のリン成分は、脂質製剤中に存在する総脂質の約2モル%~約20モル%、約3モル%~約18モル%、約4モル%~約16モル%、約5モル%~約14モル%、約6モル%~約12モル%、約5モル%~約10モル%、約5モル%~約9モル%または約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%、約6モル%、約7モル%、約8モル%、約9モル%、約10モル%、約11モル%または約12モル%(または任意のその分数またはその範囲内)を含む。
【0177】
脂質製剤およびそれを製造する方法に存在するヘルパー脂質のパーセンテージは、目標量であり、製剤中に存在するヘルパー脂質の実際の量は、例えば±5モル%変動し得る。
【0178】
カチオン性脂質化合物またはイオン化可能なカチオン性脂質化合物を含む脂質製剤は、モルベースで、約30~70%のカチオン性脂質化合物、約25~40%のコレステロール、約2~15%のヘルパー脂質および約0.5~5%のポリエチレングリコール(PEG)脂質を含み得て、これは製剤中に存在する総脂質のパーセントである。いくつかの実施態様において、組成は、約40~65%のカチオン性脂質化合物、約25~35%のコレステロール、約3~9%のヘルパー脂質および約0.5~3%のPEG-脂質であり、これは製剤中に存在する総脂質のパーセントである。
【0179】
製剤は、例えば8~30%の核酸化合物、5~30%のヘルパー脂質および0~20%のコレステロール;4~25%のカチオン性脂質、4~25%のヘルパー脂質、2~25%のコレステロール、10~35%のコレステロール-PEGおよび5%のコレステロール-アミン;または2~30%のカチオン性脂質、2~30%のヘルパー脂質、1~15%のコレステロール、2~35%のコレステロール-PEGおよび1~20%のコレステロール~アミン;または最大90%のカチオン性脂質および2~10%のヘルパー脂質、または100%さえものカチオン性脂質を含む、脂質粒子製剤であり得る。
【0180】
脂質コンジュゲート
本明細書に記載の脂質封入RNAナノ粒子は、脂質コンジュゲートをさらに含み得る。コンジュゲート脂質は、粒子の凝集を防止するという点で有用である。適切なコンジュゲート脂質は、PEG-脂質コンジュゲート、カチオン性ポリマー-脂質コンジュゲート、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。さらに、脂質送達ビヒクルは、リガンド(例えば、抗体、ペプチドおよび炭水化物)をその表面または結合したPEG鎖の末端に結合させることにより、特異的標的化に用い得る(Front Pharmacol. 2015 Dec 1; 6:286)。
【0181】
好ましい実施態様において、脂質コンジュゲートはPEG脂質である。コーティングまたは表面リガンドとしてポリエチレングリコール(PEG)を脂質製剤に含めることは、PEG化と呼ばれる手法であり、ナノ粒子を免疫系から保護し、細網内皮系(RES)の取り込みから逃れるのに役立つ(Nanomedicine (Lond). 2011 Jun; 6(4):715-28)。PEG化は、物理的、化学的および生物学的メカニズムによって脂質製剤とそのペイロードを安定化するために広く用いられている。界面活性剤様PEG脂質(例えば、PEG-DSPE)は、脂質製剤に入り、表面に水和層および立体障壁を形成し得る。PEG化の程度に基づいて、表面層は一般にブラシ様層とキノコ様層の2つのタイプに分け得る。PEG-DSPEで安定化させた製剤では、PEGは低いPEG化度(通常は5モル%未満)でキノコ型の立体構造を取り、PEG-DSPEの含有量が特定のレベルを超えるとブラシ型の立体構造に移行する(Journal of Nanomaterials. 2011;2011:12)。PEG化の増加は、脂質製剤の循環半減期の著しい増加をもたらすことが示されている(Annu. Rev. Biomed. Eng. 2011 Aug 15; 13():507-30; J. Control Release. 2010 Aug 3; 145(3):178-81)。
【0182】
PEG脂質の適切な例としては、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質に結合したPEG(PEG-PE)、セラミドとコンジュゲートしたPEGG、コレステロールとコンジュゲートしたPEGGまたはその誘導体、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0183】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンPEG繰り返し単位の線状の水溶性ポリマーである。PEGは、分子量によって分類され、モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシネート(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルスクシネート(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH2)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(MePEG-TRES)、モノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)、および末端メトキシ基の代わりに末端ヒドロキシル基を含む化合物(例えば、HO-PEG-S、HO-PEG-S-NHS、HO-PEG-NH2)を含む。
【0184】
本明細書に記載のPEG-脂質コンジュゲートのPEG部分は、約550ダルトンから約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含み得る。特定の例において、PEG部分は、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン)の平均分子量を有する。好ましい実施態様において、PEG部分は、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。平均分子量は、終点を含む、記載された範囲内の任意の値または部分値であり得る。
【0185】
特定の例において、PEGは、所望により、アルキル、アルコキシ、アシルまたはアリール基で置換し得る。PEGは、脂質と直接コンジュゲートしてもよく、またはリンカー部分を介して脂質と連結してもよい。例えば、エステル非含有リンカー部分およびエステル含有リンカー部分を含む、PEGを脂質に結合させるのに適した任意のリンカー部分を用い得る。好ましい実施態様において、リンカー部分は、エステル非含有リンカー部分である。適切なエステル非含有リンカー部分は、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、ウレア(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCH2CH2C(O)-)、スクシナミジル(-NHC(O)CH2CH2C(O)NH-)、エーテル、およびこれらの組合せ(例えばカルバメートリンカー部分とアミドリンカー部分の両方を含むリンカー)を含むがこれらに限定されない。好ましい実施態様において、カルバメートリンカーを用いて、PEGを脂質に結合させる。
【0186】
他の実施態様において、エステル含有リンカー部分を用いて、PEGを脂質に結合させる。適切なエステル含有リンカー部分は、例えば、炭酸(-OC(O)O-)、スクシノイル、リン酸エステル(-O-(O)POH-O-)、スルホン酸エステル、およびこれらの組合せを含む。
【0187】
様々な鎖長および飽和度の様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGとコンジュゲートして脂質コンジュゲートを形成し得る。このようなホスファチジルエタノールアミンは市販されているか、または当業者に公知の従来技術を用いて単離または合成し得る。炭素鎖長がC10~C20の範囲の飽和または不飽和脂肪酸を含むホスファチジルエタノールアミンが好ましい。モノまたはジ不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合物を含むホスファチジルエタノールアミンも用い得る。適切なホスファチジルエタノールアミンは、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)を含むがこれらに限定されない。
【0188】
いくつかの実施態様において、PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲートまたはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲートである。これらの実施態様において、PEGは、好ましくは、約750または約2,000ダルトンの平均分子量を有する。特定の実施態様において、PEGの末端ヒドロキシル基は、メチル基で置換されている。
【0189】
上記に加えて、他の親水性ポリマーをPEGの代わりに用い得る。PEGの代わりに用い得る適切なポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル、メタクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、および誘導体化セルロース、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0190】
いくつかの実施態様において、脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、脂質製剤中に存在する総脂質の約0.1モル%~約2モル%、約0.5モル%~約2モル%、約1モル%~約2モル%、約0.6モル%~約1.9モル%、約0.7モル%~約1.8モル%、約0.8モル%~約1.7モル%、約0.9モル%~約1.6モル%、約0.9モル%~約1.8モル%、約1モル%~約1.8モル%、約1モル%~約1.7モル%、約1.2モル%~約1.8モル%、約1.2モル%~約1.7モル%、約1.3モル%~約1.6モル%または約1.4モル%~約1.6モル%(または任意のその分数またはその範囲内)を含む。他の実施態様において、脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、脂質製剤およびそれを製造する方法に存在する総脂質の約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%または5%(または任意のその分数またはその範囲内)を含む。量は、エンドポイントを含む、記載された範囲内の任意の値またはサブ値であり得る。
【0191】
本開示の脂質製剤およびそれを製造する方法に存在する脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)のパーセンテージは、目標量であり、製剤中に存在する脂質コンジュゲートの実際の量は、例えば±0.5モル%変動し得る。当業者は、脂質コンジュゲートの濃度が、用いられる脂質コンジュゲート、および脂質製剤が融合性になる割合に応じて変化し得ることを理解する。
【0192】
脂質封入RNAナノ粒子の形成
図1は、脂質封入RNAナノ粒子を製造する本明細書に記載の方法の代表的なフローチャートの例である。
【0193】
混合層の配置は、0.1インチ超の内径(ID)、好ましくは0.132インチ超のIDを有する水溶液を輸送するための第1チューブ;0.005インチ超のID、好ましくは0.01インチ超のIDからなるエタノール溶液を輸送するための第2チューブからなり、ここで、第2(有機)チューブは、第1(水性)チューブと垂直角またはそれに近い角度で交差する。混合中の排出流速は、少なくとも200ml/分、好ましくは少なくとも300ml/分である。
【0194】
本明細書に記載の方法は、例えば、適正製造規範(GMP)の下で調製され、緩衝液、例えばクエン酸を含む水溶液に可溶化された、治療用RNAを含むRNA水溶液を提供する。本発明の方法はまた、1つ以上の脂質、例えば、GMPの下で合成され、水混和性有機溶媒に脂質を可溶化することにより生成された、臨床グレードの脂質を含む有機溶液を提供する。本明細書に記載の方法において、水混和性有機溶媒は、好ましくは、低級アルカノール、例えばエタノールである。好ましくは、両方の溶液はフィルター滅菌され、それらの濃度が調整される。
【0195】
有機脂質溶液は、核酸を含む水溶液と混合されて、層状形態を有する、すなわち脂質二重層を含む脂質封入RNAナノ粒子を形成する。一態様において、核酸は、脂質封入RNAナノ粒子に封入され、層状構造を形成する。
【0196】
本明細書に記載の方法は、混合環境において、好ましくは混合モジュールにおいて垂直に、脂質溶液を水溶液に連続的に導入することに関する。混合は、脂質溶液を水溶液で20%、22.5%、25%、27.5%または30%エタノール、好ましくは25%エタノールに希釈し、乱流中で脂質封入RNAナノ粒子を形成させる。
【0197】
脂質封入RNAナノ粒子の形成後、混合物を緩衝液で7.5%、10%、12.5%または15%、好ましくは12.5%未満のエタノールに連続希釈し、これにより、脂質封入RNAナノ粒子がさらに安定化され、核酸の封入を増加させる。
【0198】
脂質封入RNAナノ粒子は、タンジェンシャルフローろ過、好ましくは中空糸フィルターにより濃縮する。濃縮した脂質封入RNAナノ粒子を、限外ろ過ステップに供して、アルカノールを除去し、緩衝液で置き換える。核酸濃度は希釈により調整する。得られた製剤をフィルター滅菌し、バイアルに充填する。このプロセスは、
図1に示すステップを用いて、以下でさらに詳しく説明する。
【0199】
脂質の可溶化およびRNAの溶解
一実施態様において、本明細書に記載の方法により製造される脂質封入RNAナノ粒子は、RNAと脂質の多分子集合体の形態であり、ここでRNAは、カチオン性脂質とのイオン対形成によって少なくとも部分的に封入される。
【0200】
本明細書に記載の方法により作製されたRNAを含む脂質封入ナノ粒子の好ましいサイズは、直径が約50~200nmであり、好ましくは平均サイズ(例えば、直径)が約70nm~約150nmであり、より好ましくは平均サイズが約100nm未満である、サイズ分布を有する。
【0201】
特定の態様において、本明細書に記載の脂質ナノ粒子は、ヘルパー脂質;コレステロール;PEG-脂質;およびイオン化可能なカチオン性脂質の4つの成分を含む。好ましくは、ヘルパー脂質はDSPCであり、PEG-脂質はPEG-DMGであり、イオン化可能なカチオン性脂質はイオン化可能なカチオン性脂質である。特定の実施態様において、脂質が可溶化される有機溶媒濃度は、約45%v/v~約90%v/vである。特定の好ましい態様において、有機溶媒は低級アルカノールである。適切な低級アルカノールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、それらの異性体およびこれらの組合せを含む。溶媒は、好ましくは、約50~90%v/vの濃度のエタノールである。好ましくは、脂質は、約1mL/g~約5mL/gの容量を占める。
【0202】
脂質は、例えば適切な温度にてオーバーヘッドスターラーを用いて、可溶化される。一態様において、溶液の総脂質濃度は約49.4mg/mLである。特定の好ましい態様において、RNAは水溶液(例えば、緩衝液)に含まれ、最終濃度に希釈される。好ましくは、最終濃度は、クエン酸緩衝液中で約0.55mg/mLであり、pHは約3.5である。
【0203】
RNAは、好ましくは、二本鎖RNA(dsRNA)、mRNAまたは自己複製RNAである。dsRNAのサイズは、10塩基対から数百塩基の間、好ましくは30塩基対未満、最も好ましくは25塩基対未満である。mRNAのサイズは、一本鎖で10から数千塩基である。
【0204】
脂質封入RNAナノ粒子の形成ステップ
有機溶液および水溶液を調製した後、以下に詳細に説明する装置を用いてそれらを一緒に混合する。簡単には、装置は、RNA水溶液を輸送するための第1チューブと、有機脂質溶液を輸送するための第2チューブとからなり、ここで、第2チューブは、混合モジュール内で第1チューブと垂直に交差する。2つの溶液は、別々のHPLCポンプによりそれぞれのチューブを通ってポンプ輸送され、混合モジュール内で垂直に第1チューブの領域で混合される。好ましくは、RNA水溶液は、有機脂質溶液よりも2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.25倍または3.5倍、好ましくは3.0倍の速度でポンプ輸送される。混合領域で2つの溶液を混合すると、脂質封入RNAナノ粒子が形成される。
【0205】
混合モジュールの領域における第1チューブのポンプ速度およびサイズは、乱流を伴う混合方法を提供する。流体力学において、乱流(turbulenceまたはturbulent flow)は、圧力および流速の無秩序な変化を特徴とする流体運動である。これは、流体が平行な層を流れ、それらの層間に乱れがない場合に発生する層流とは対照的である。乱流は常に極めて不規則であり、乱流で容易に利用できるエネルギーの供給は、流体混合物の均質化(混合)を加速する傾向がある。流れの中での混合の強化ならびに質量、運動量およびエネルギー輸送の速度の増加に関与する特性は、「拡散性」と呼ばれる。乱流の他の特性には、乱流が渦伸長と呼ばれる強力な3次元渦生成メカニズムを有することによる「回転性」と、運動エネルギーが粘性せん断応力によって内部エネルギーに変換されるときに乱流が急速に散逸するための「散逸」が含まれる。乱流混合は、小包をより近くまたはより離れた関係にし、より細かく分割して混合し得る、流体内の小包の小規模な(親フローと比較して)ランダムな動きによって支配される。脂質溶液と水溶液を混合するための本明細書に記載の製造方法は、95%を超える封入効率で、それらの形成と同時に形成される脂質ナノ粒子へのRNAの封入を提供する。
【0206】
脂質ナノ粒子は、典型的には、室温で形成されるが、本開示によれば、脂質ナノ粒子は、高温で形成され得る。緩衝液組成に関する一般的な要件はない。実際、本開示の製造方法および装置は、エタノール中の脂質を水溶液中のRNAと混合することによって脂質小胞を製造し得る。
【0207】
一実施態様において、脂質ナノ粒子は、有機溶媒、例えばエタノールに溶解した脂質が、緩衝水溶液と混合することによって段階的に希釈されるとき、最初に混合モジュール内で水流と脂質流を一緒に混合して最終濃度、好ましくは25~40%になるときに形成される。得られた脂質、溶媒、溶質の濃度は、小胞形成方法全体を通して一定に保ち得る。
最初の形成に続いて、最初の脂質-RNA混合物は、緩衝液の添加により、好ましくは約6.0%、6.25%、7.0%、7.5%、10%、12.5%または15%の有機溶媒、最も好ましくは6.25%、6.25%、7.0%、7.5%、10%または12.5%にさらに希釈される。
【0208】
本明細書に記載の連続方法は、完全に拡張可能である。一態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、メンブレンエクストルーション、ソニケーションまたはマイクロフルイダイザーなどの機械的エネルギープロセスなしで、約80nm未満の平均直径を有するように形成される。
【0209】
脂質封入RNAナノ粒子
本明細書に記載の脂質封入RNAナノ粒子は、脂質分子のナノ粒子または二重層を含む。
カチオン性脂質(例えば、イオン化可能なカチオン性脂質)に加えて、脂質封入RNAナノ粒子は、中性脂質またはポリマーを含む。
【0210】
いくつかの実施態様において、RNAは、脂質ナノ粒子の脂質部分内に完全に封入され、その結果、脂質封入RNAナノ粒子中のRNAは、水溶液中でヌクレアーゼ分解に対して耐性がある。他の実施態様において、本明細書に記載の脂質封入RNAナノ粒子は、ヒトなどの哺乳類に対して実質的に無毒である。脂質封入RNAナノ粒子は、典型的には、30nm~150nm、40nm~150nm、50nm~150nm、60nm~130nm、70nm~110nmまたは70nm~90nmの平均直径を有する。本明細書に記載の脂質封入RNAナノ粒子はまた、典型的には、1:1~100:1、1:1~50:1、2:1~25:1、3:1~20:1、5:1~15:1、5:1~10:1、10:1~14:1または9:1~20:1の脂質:RNA比(質量/質量比)を有する。いくつかの実施態様において、組成物の総脂質:RNAの重量比は、約50:1~10:1である。いくつかの実施態様において、組成物の総脂質:RNAの重量比は、約40:1~20:1である。いくつかの実施態様において、組成物の総脂質:RNAの重量比は、約35:1~25:1である。いくつかの実施態様において、組成物の総脂質:RNAの重量比は、約28:1~32:1である。
【0211】
好ましい実施態様において、脂質粒子は、RNA、カチオン性脂質(例えば、本明細書に記載の1つ以上のカチオン性脂質またはその塩)、リン脂質および粒子の凝集を防止するコンジュゲート脂質(例えば、1つ以上のPEG-脂質コンジュゲート)を含む。脂質封入RNAナノ粒子はまた、コレステロールも含み得る。脂質封入RNAナノ粒子は、1つ以上のポリペプチドを発現する少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の異なるRNAを含み得る。
【0212】
脂質封入RNAナノ粒子では、RNAは、粒子の脂質部分内に完全に封入され、これによりRNAをヌクレアーゼ分解から保護し得る。好ましい実施態様において、脂質封入RNAナノ粒子は、粒子の脂質部分内に完全に封入され、これによりRNAをヌクレアーゼ分解から保護するRNAを含む。特定の例において、脂質粒子中のRNAは、粒子を37℃で少なくとも20、30、45または60分間ヌクレアーゼに曝露した後でも実質的に分解されない。他の特定の例において、脂質粒子中のRNAは、血清中の粒子を37℃で少なくとも30、45もしくは60分間または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34もしくは36時間インキュベートした後でも実質的に分解されない。他の実施態様において、RNAは、脂質封入RNAナノ粒子のカチオン性脂質と複合体を形成している。本開示の製剤の利点の1つは、脂質封入RNAナノ粒子が、ヒトなどの哺乳類に対して実質的に無毒であることである。
【0213】
他の実施態様において、本開示は、複数の核酸-脂質粒子を含む核酸-脂質粒子組成物を提供する。
【0214】
脂質粒子は、粒子の脂質部分内に完全に封入されたRNAを含み、その結果、粒子の30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、80%~100%、90%~100%、30%~95%、40%~95%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、80%~95%、85%~95%、90%~95%、30%~90%、40%~90%、50%~90%、60%~90%、70%~90%、80%~90%、または少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%(または任意のその分数またはその範囲内)が、その中に封入されたRNAを有する。
【0215】
脂質封入RNAナノ粒子の使用目的に応じて、成分の比率を変えることができ、特定の製剤の送達効率を、当該技術分野で公知のアッセイを用いて測定できる。
【0216】
脂質封入RNAナノ粒子の希釈
有機脂質溶液をRNA水溶液に混合した後、遊離RNAを除去する前に脂質封入RNAナノ粒子の懸濁液をさらに希釈すると、RNA封入の程度を高めることができる。一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を8.25%に低下するために、2容量の15mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5であり得る。別の一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を6.25%に低下するために、3容量の10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5であり得る。別の一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を12.5%に低下するために、1容量の50mMリン酸緩衝液、pH6.0であり得る。別の一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を8.3%に低下するために、2容量の50mMリン酸緩衝液、pH6.0であり得る。別の一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を6.25%に低下するために、3容量の50mMリン酸緩衝液、pH6.0であり得る。別の一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を6.25%に低下するために、3容量の20mM HEPES、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.4であり得る。別の一実施態様において、緩衝液は、エタノール濃度を6.25%に低下するために、1~3容量の50mMリン酸緩衝液、pH6.0、3容量の10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5であり得る。
【0217】
その後、希釈した脂質封入RNAナノ粒子を、所望により、15~20℃に維持された容器に収集し、10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5での第2の希釈工程または濃縮工程前に数分から2時間、インキュベートされる。
【0218】
試料濃度
希釈した脂質封入RNAナノ粒子は、例えば、所望により蠕動ポンプまたは4ピストンダイアフラムポンプまたは遠心ポンプ(磁気浮上の原理に基づく)を介して、中空糸膜(mPES Kros membranes, Spectrum Laboratories, Inc., Rancho Dominguez, California)を用いたタンジェンシャルフローろ過(TFF)により濃縮できる。このような濃縮技術の方法は当該技術分野で知られており、当業者には容易に明らかである。
【0219】
遊離RNAの除去および緩衝液の置き換え
濃縮後、7~10容量の110mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5に対してダイアフィルトレーションを行い、有機溶媒および非結合RNAを除去し得る。好ましくは、ダイアフィルトレーション緩衝液を、生成物の温度が15~20℃に維持されるように熱交換器を介して加える。製剤をさらに濃縮して、製剤化したRNAの総濃度が3mg/mLを超えるようにし得る。
【0220】
ろ過滅菌
その後、脂質封入RNAナノ粒子の製剤中のRNA濃度を、IPRP-HPLC(イオンペア逆相-高速液体クロマトグラフィー)で測定し、製剤中のグリセロールの最終濃度が5%になるように、グリセロールを含む10mM Tris、50mM NaCl、9%スクロース、pH7.5で希釈して約2mg/mL(1.85~2.3mg/mL)に調整する。ダイアフィルトレーションした脂質封入RNAナノ粒子を、脂質濃度56~69mg/mLで0.2μmの滅菌グレードフィルター(PES)を通してろ過滅菌する。
【0221】
無菌充填
その後、ろ過した製剤を、無菌的にガラスバイアルに充填し、栓をして、キャップをして、-20または-70±5℃に置く。
【0222】
装置
本明細書の説明は、上記の製造方法を実施するための装置を提供する。
図4は、本明細書の説明の一実施態様による装置の代表的な概略図の例である。
【0223】
RNAを含む水溶液は、HPLCポンプにより、例えば0.03インチID PEEKチューブ、0.05インチID PEEKコネクター、0.0625インチシリコンチューブ、および0.122インチIDシリコンチューブ、および0.132インチIDステンレス鋼の領域を含む、チューブを通って輸送される。脂質を含む有機溶液は、HPLCポンプにより、例えば0.03インチID PEEKチューブ、0.02インチID PEEKコネクター、0.01インチIDステンレス鋼の領域を含むチューブを通って輸送される。有機溶液は、混合モジュールにおいて90°の角度で水溶液にポンプ輸送される。したがって、脂質を含む有機溶液は、水溶液の流れに垂直な流れで水溶液に導入される。流れ方向の直角でのこの導入は、
図5に示すような混合モジュールで生じ、RNAの脂質ナノ粒子封入が粒子径、分散および封入効率に関して許容可能な方法で形成されることを確実するように、注意深く調整された条件下で乱流混合をもたらす。その後、混合した脂質-RNAを含むチューブは、例えば希釈領域の希釈緩衝液と45°の角度で合流する0.25インチIDポリプロピレンチューブにより、脂質封入RNAナノ粒子を第2混合領域に輸送し、希釈した脂質封入RNAナノ粒子を、15~20℃に維持したステンレス鋼製のジャケット付き容器に収集する。粒子を、例えばダイアフラムまたは遠心ポンプを用いるタンジェンシャルフローろ過によって、さらに処理する。
【0224】
一実施態様において、混合領域は、有機脂質溶液が、好ましくは約90°の角度で、RNA水溶液の流れに送達される混合モジュールである。RNA水溶液を輸送する第1の0.132インチ(3.35mm)IDステンレス鋼チューブには、両端の中間の壁に穴がある。第2の0.01インチID、0.0625インチODのチューブは、第2チューブから第1チューブの内部への液体の輸送を可能にする第1チューブの壁の穴に嵌め込むことによって垂直に取り付けられる(
図5を参照)。好ましい態様において、明確に定義された形状および再現可能なサイズの脂質封入RNAナノ粒子は、好ましくは有機脂質溶液の流速の3倍であるRNA水溶液の流速を用いて調製される。明確に定義された形状および再現可能なサイズを有する小胞はまた、例えば、場合によっては十分な混合を確実にするために、流体ラインの流量を変更することによっても調製される。
【0225】
図5は、一実施態様による混合モジュールおよび関連する流体力学を示す。以前のシステムと比較して、本開示は、乱流および増加したせん断速度を提供する。例えば、本開示は、混合環境において、約0.1L/分~約0.3L/分の流速(両方のフローライン)で約500/秒~約3300/秒のせん断速度を有する乱流(N
re>2000)を有利に提供する。
約0.3L/分。
【0226】
本明細書の説明は、中空繊維膜(mPES Kros membranes, Spectrum Laboratories, Inc., Rancho Dominguez, California)および4ピストンダイアフラムポンプまたは遠心ポンプを用いるタンジェンシャルフローろ過を有する装置を提供する。
【0227】
医薬組成物
本明細書に記載の脂質封入RNAナノ粒子は、医薬組成物の構成要素として有用である。これらの組成物は、典型的には、脂質封入RNAナノ粒子に加えて、医薬的に許容される担体を含む。医薬的に許容される担体の詳細な説明は、Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN:0683306472(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)で利用可能である。
【0228】
本明細書に記載の医薬組成物は、淡水(例えば、注射用水)または緩衝液、例えばリン酸緩衝液、Tris緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液またはクエン酸緩衝液中の脂質ナノ粒子を含み得る。緩衝塩は典型的には、5~20mMの範囲で含まれる。
【0229】
本明細書に記載の医薬組成物は、5.0~9.5、例えば6.0~8.0のpHを有し得る。
【0230】
本明細書に記載の医薬組成物は、等張を得るために、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含む得る。ナトリウム塩は、10±2mg/ml、例えば約9mg/mlの濃度のNaClであり得る。
【0231】
本明細書に記載の医薬組成物は、金属イオンキレート剤を含み得る。これらは、ホスホジエステル加水分解を加速し得るイオン、例えばEDTA、EGTA、BAPTAまたはペンテト酸の1つ以上を除去することにより、RNAの安定性を延長できる。このようなキレート剤は、好ましくは、10~500μM、例えば0.1mMの濃度である。クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムはまた、有利には緩衝活性も提供しながら、キレート剤として作用し得る。
【0232】
本明細書に記載の医薬組成物は、好ましくは、200mOsm/kg~400mOsm/kg、例えば240~360mOsm/kgまたは290~310mOsm/kgの浸透圧を有する。
【0233】
本明細書に記載の医薬組成物は、好ましくは、1つ以上の防腐剤、例えばチオメルサールまたは2-フェノキシエタノールを含む。水銀を含まない組成物が最も好ましい。
【0234】
本明細書に記載の医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0235】
本明細書に記載の医薬組成物は、好ましくは非発熱性であり、例えば、用量あたり1EU未満(エンドトキシン単位、標準測定値)、好ましくは用量あたり0.1EU未満である。
【0236】
本明細書に記載の医薬組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
【0237】
本明細書に記載の医薬組成物は、単位用量形態で製造し得る。いくつかの実施態様において、単位用量は、0.1~1.0mL、例えば約0.5mLの容量を有し得る。
【0238】
組成物は、注射剤として、溶液または懸濁液のいずれかとして、製造し得る。組成物は、例えば吸入器によって、微細なスプレーを用いて、肺投与用に製造し得る。組成物は、例えばスプレーまたは液滴として、鼻腔、耳または眼への投与用に調製製造し得る。
【0239】
医薬組成物は、免疫学的に有効な量の脂質ナノ粒子、および必要に応じて他の任意の成分を含む。
【0240】
本明細書に記載の医薬組成物はまた、脊椎動物の対象体に組成物を投与するのに用い得る、送達デバイス、例えば注射器、ネブライザー、噴霧器、吸入器または皮膚パッチによる投与に適する。
【0241】
本明細書に記載の脂質封入RNAナノ粒子は、リボソームを含まない。
【0242】
定義
対象とする関心のある1つ以上の値に適用される用語「おおよそ」または「約」は、記載された参照値と同様である値を指す。特定の実施態様において、用語「およそ」または「約」は、他に断らない限りまたは文脈から明らかでない限り、記載された値の±10%以内に入る値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。可能な値)。
【0243】
2つ以上の部分に関して用いられる場合、用語「結合した(associated with)」、「コンジュゲートした(conjugated)」、「連結した(linked)」、「結合した(attached)」および「つながれた(tethered)」は、部分が、直接または連結剤として機能する1つ以上の更なる部分を介して互いに物理的に結合(associated)または接続(connected)して、構造が用いられる条件、例えば生理学的条件下で部分が物理的に結合したままであるのに十分に安定な構造を形成することを意味する。「結合(association)」は、厳密には直接共有化学結合によるものである必要はない。「結合した(associated)」実体が物理的に結合したままであるように、イオン結合もしくは水素結合、またはハイブリダイゼーションベースの接続が十分に安定していることを示唆することもある。
【0244】
請求項において、「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」などの冠詞は、反対するものと特に断らない限りまたは文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味し得る。群の1つ以上の構成要素間に「または」を含む請求項または明細書は、反対するものと特に断らない限りまたは文脈から明らかでない限り、群の構成要素の1つ、2つ以上またはすべてが、所与の物または方法に存在するか、用いられるか、またはその他の関連性がある場合に満たされるとみなされる。本開示は、群の正確に1つの構成要素が、所与の物または方法に存在するか、用いられるか、またはその他の関連性がある実施態様を含む。本開示は、群の2つ以上またはすべての構成要素が、所与の物または方法に存在するか、用いられるか、またはその他の関連性がある実施態様を含む。
【0245】
本明細書で用いる用語「アシル」は、本明細書で定義するカルボニル基を介して親分子基に結合する、本明細書で定義する水素またはアルキル基(例えば、ハロアルキル基)を表し、ホルミル(すなわち、カルボキシアルデヒド基)、アセチル、トリフルオロアセチル、プロピオニル、ブタノイルなどが例示される。例示的な非置換アシル基は、1~7、1~11または1~21個の炭素を含む。いくつかの実施態様において、アルキル基は、本明細書に記載するように、1、2、3または4つの置換基でさらに置換される。
【0246】
本明細書で用いる用語「アルケニル」は、他に明記されない限り、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む炭素数2~20(例えば、2~6または2~10個の炭素)の一価の直鎖または分枝鎖基を表し、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニルなどが例示される。アルキルには、シス異性体とトランス異性体の両方が含まれる。アルキル基は、本明細書で定義するアミノ、アリール、シクロアルキルまたはヘテロシクリル(例えばヘテロアリール)、または本明細書に記載の例示的なアルキル置換基のいずれかより独立して選択される1、2、3または4つの置換基で所望により置換され得る。
【0247】
用語「アルコキシ」は、他に明記されない限り、式-ORの化学置換基を表し、ここで、RはC1-20アルキル基(例えば、C1-6またはC1-10アルキル)である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n-プロポキシおよびイソプロポキシ)、t-ブトキシなどを含む。いくつかの実施態様において、アルキル基は、本明細書で定義する1、2、3または4つの置換基(例えば、ヒドロキシまたはアルコキシ)でさらに置換され得る。
【0248】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、他に明記されない限り、炭素数1~20(例えば、1~10または1~6)の直鎖および分枝鎖飽和基の両方を含む。アルキル基は、メチル、エチル、n-およびイソ-プロピル、n-、sec-、イソ-およびtert-ブチル、ネオペンチルなどが例示される。用語「低級アルキル」は、鎖が直鎖または分枝であり得る鎖中に1~6つの炭素を有する基を意味する。適切なアルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびヘキシルが含まれる。
【0249】
本明細書で用いる用語「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含む炭素数2~20(例えば、2~4、2~6または2~10個の炭素)の一価の直鎖または分枝鎖基を表し、エチニル、1-プロピニルなどが例示される。アルキル基は、本明細書で定義するアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール)、または本明細書に記載の例示的なアルキル置換基のいずれかより独立して選択される1、2、3または4つの置換基で所望により置換され得る。
【0250】
用語「両親媒性(amphipathic)脂質」または「両親媒性(amphiphilic)脂質」は、脂質材料の疎水性部分が疎水相に配向し、親水性部分が水相に配向する物質を意味する。親水性の特性は、炭水化物、リン酸、カルボン酸、スルファト、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシルおよび他の同様の基などの極性または荷電基の存在に由来する。疎水性は、長鎖の飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、および1つ以上の芳香族基、脂環式基または複素環式基で置換されたそのような基を含むがこれらに限定されない非極性基を含めることによって付与し得る。両親媒性化合物の例には、リン脂質、アミノ脂質およびスフィンゴ脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0251】
用語「アニオン性脂質」は、生理学的pHにて負に帯電している脂質を意味する。これらの脂質は、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)を含むがこれらに限定されない。
【0252】
「アンチセンス」は、DNAおよび/またはRNAの機能に干渉するポリヌクレオチドである。これは、発現の抑制をもたらし得る。
【0253】
「水溶液」は、全体的または部分的に水を含む組成物を指す。
【0254】
用語「背圧」は、導管を通る流体の所望の流れに逆行する抵抗または力を指し、摩擦損失および圧力降下をもたらす。流体は方向付けられ、高圧領域から離れて低圧領域に向かって流れる傾向がある。
【0255】
用語「含む」は、開放型であることを意図し、追加の要素またはステップを含めることを許可するが、必要としない。したがって、本明細書で用語「含む」を用いる場合、用語「からなる」も包含され、開示される。
【0256】
用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む物、ならびに特定の成分を特定の量で組み合わせることから直接的または間接的に生じるあらゆる物を意味する。
【0257】
用語「市販の化学物質」および本明細書に記載の実施例で用いられる化学物質は、標準的な商業的供給源から入手でき、このような供給源としては、例えば、Acros Organics(Pittsburgh, Pa.)、Sigma-Adrich Chemical(Milwaukee, Wis.)、Avocado Research(Lancashire, U.K.)、Bionet(Cornwall, U.K.)、Boron Molecular(Research Triangle Park, N.C.)、Combi-Blocks(San Diego, Calif.)、Eastman Organic Chemicals, Eastman Kodak Company(Rochester, N.Y.)、Fisher Scientific Co.(Pittsburgh, Pa.)、Frontier Scientific(Logan, Utah)、ICN Biomedicals, Inc.(Costa Mesa, Calif.)、Lancaster Synthesis(Windham, N.H.)、Maybridge Chemical Co.(Cornwall, U.K.)、Pierce Chemical Co.(Rockford, Ill.)、Riedel de Haen(Hannover, Germany)、Spectrum Quality Product, Inc.(New Brunswick, N.J.)、TCI America(Portland, Oreg.)およびWako Chemicals USA, Inc.(Richmond, Va.)が挙げられる。
【0258】
核酸配列の「発現」なる用語は、以下の事象の1つ以上複数を指す:(1)DNA配列からのRNAテンプレートの生成(例えば、転写による);(2)RNA転写産物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5'キャップ形成および/または3'エンドプロセッシングによる);(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳;(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0259】
「完全に封入された」は、遊離RNAを著しく分解する血清またはヌクレアーゼアッセイへの曝露後に、核酸-脂質粒子中のRNAが有意に分解されないことを意味する。完全に封入された場合、通常は遊離核酸の100%が分解される処理において、粒子中の核酸の25%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の核酸が分解される。「完全に封入された」はまた、インビボ投与時に核酸-脂質粒子がそれらの構成要素に急速に分解しないことも意味する。
【0260】
核酸との関連で、完全な封入は、核酸と結合したときに蛍光が増強される色素を用いる膜不透過性の蛍光色素排除アッセイを実施することによって決定し得る。封入は、色素をリポソーム製剤に添加し、得られた蛍光を測定し、少量の非イオン性界面活性剤を添加したときに観察される蛍光と比較することによって決定する。界面活性剤を介したリポソーム二重層の破壊により、封入された核酸が放出され、膜不透過性色素と相互作用できるようになる。核酸の封入は、E=(I0-I)/I0として計算し得て、式中、IおよびI0は、界面活性剤の添加前後の蛍光強度を指す。
【0261】
「遺伝子」は、ポリペプチドまたは前駆体(例えば、単純ヘルペスウイルス)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、完全長コード配列によって、または完全長のポリペプチドまたはその断片の所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、コード配列の任意の部分によってコードされ得る。
【0262】
用語「疎水性脂質」は、長鎖の飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、および所望により1つ以上の芳香族基、脂環式基または複素環式基で置換されたそのような基を含むがこれらに限定されない非極性基を有する化合物を意味する。適切な例としては、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパンおよび1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0263】
「免疫学的に有効な」量または用量は、対象において免疫学的反応を誘発し、これにより対象において免疫が構築されるのに十分な量または用量である。免疫は、例えば、特定の感染症に対する十分な抗体が対象において検出されるかを決定するための抗体力価試験によって確認できる。
【0264】
「層状形態」は、二層構造を指す。本明細書に記載の脂質粒子の層状形態、二層構造は、分析技術を用いて、例えばクライオTEM画像法によって決定し得る。
【0265】
用語「脂質」は、脂肪酸のエステルを含み、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする有機化合物を意味する。脂質は通常、少なくとも3つのクラスに分類される:(1)「単純な脂質」、これには油脂とワックスが含まれる;(2)「複合脂質」、これにはリン脂質および糖脂質が含まれる;(3)「誘導脂質」、例えばステロイド。
【0266】
用語「脂質コンジュゲート」は、粒子の凝集を防止するコンジュゲート脂質を意味する。このような脂質コンジュゲートは、PEG-脂質コンジュゲート、例えばジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールに結合したPEG、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEGおよびセラミドに結合したPEG、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミドオリゴマー、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。PEGまたはPOZは、脂質に直接結合させてもよく、リンカー部分を介して脂質に結合させてもよい。PEGまたはPOZを脂質に結合させるのに適した任意のリンカー部分を用い得て、例えば、非エステル含有リンカー部分およびエステル含有リンカー部分が挙げられる。特定の好ましい実施態様において、アミドまたはカルバメートなどの非エステル含有リンカー部分が用いられる。
【0267】
用語「脂質送達ビヒクル」は、治療用核酸(例えば、mRNA)を対象とする標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達するために用い得る脂質製剤を意味する。脂質送達ビヒクルは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、粒子の凝集を防止するコンジュゲート脂質(例えば、PEG-脂質)、および所望によりコレステロールから形成され得る核酸-脂質粒子であり得る。典型的には、治療用核酸(例えば、mRNA)は、粒子の脂質部分に封入され、これにより粒子を酵素分解から保護し得る。
【0268】
「脂質ナノ粒子」は、RNAがカチオン性脂質とのイオンペアリングによって少なくとも部分的に封入された、単層または多層構造のいずれかとして脂質二重層を含むリポソームを含むがこれらに限定されない化合物を送達するために用い得るあらゆる脂質組成物である。脂質ナノ粒子がリポソームであるとき、それは水性内部を有するとみなされる。
他の脂質ナノ粒子は、脂質層(二重層または単層であり得る)が封入された物質(例えば、核酸)と直接結合している固体内部を有する。
【0269】
「脂質封入」は、RNA(または別の核酸)がRNase介在性加水分解または色素のインターカレーションにアクセスできない、完全封入、部分封入またはその両方がなされた化合物を提供する脂質製剤を指し得る。
【0270】
用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、対象とするタンパク質またはポリペプチドをコードし、翻訳されて、インビトロ、インビボ、インサイチュまたはエクスビボでコードされた対象とするタンパク質またはポリペプチドを生成できるあらゆるポリヌクレオチドを指す。
【0271】
用語「中性脂質」は、選択したpHにて非荷電または中性の双性イオン形態のいずれかで存在する脂質種を意味する。生理学的pHにて、このような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシドおよびジアシルグリセロールが挙げられる。
【0272】
用語「非カチオン性脂質」は、本明細書に記載の両親媒性脂質、中性脂質またはアニオン性脂質を意味する。
【0273】
用語「核酸」は、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーを意味する。当該用語は、公知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基または結合を含む核酸を含み、これらは、合成、天然および非天然であり、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。このような類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2'-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0274】
用語「ヌクレオチド」は、当該技術分野で周知の天然塩基(標準)または修飾塩基を有するヌクレオチドを含むことを意味する。このような塩基は一般的に、ヌクレオチド糖部分の1'の位置にある。ヌクレオチドは一般に、塩基、糖およびリン酸基を含む。ヌクレオチドは、糖、リン酸および/または塩基部分で非修飾または修飾され得る(相互交換可能にヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、非標準ヌクレオチドおよびその他とも呼ばれる;例えば、上記のUsmanとMcSwiggen;Ecksteinら、国際公開第92/07065号;Usmanら、国際公開第93/15187号;上記のUhlmanとPeyman(すべて出典明示により本明細書の一部とする)参照)。Limbach, et al, Nucleic Acids Res. 22:2183, 1994に要約されているように、当該技術分野で公知の修飾核酸塩基のいくつかの例がある。核酸分子に導入し得る塩基修飾の非限定的な例のいくつかとしては、イノシン、プリン、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、シュードウラシル、2,4,6-トリメトキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば、5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5-ハロウリジン(例えば、5-ブロモウリジン)または6-アザピリミジンまたは6-アルキルピリミジン(例えば、6-メチルウリジン)、プロピン、およびその他(Burgin, et al., Biochemistry 35:14090, 1996; Uhlman & Peyman、上記)が挙げられる。この態様における「修飾塩基」は、1'位置にあるアデニン、グアニン、シトシンおよびウラシル以外のヌクレオチド塩基またはそれらの同等物を意味する。
【0275】
「有機脂質溶液」は、脂質を有する有機溶媒を全体的または部分的に含む組成物を指す。有機脂質溶液は、好ましくはアルカノール、最も好ましくはエタノールを含む。
【0276】
語句「医薬的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題や合併症がなく、合理的なベネフィット/リスク比に見合って、ヒトおよび動物の組織と接触して用いるのに適する化合物、材料、組成物および/または投与形態を指すために本明細書で用いられる。
【0277】
本明細書で用いる語句「医薬的に許容される添加剤」は、本明細書に記載の化合物以外であって、患者において実質的に無毒性かつ非炎症性であるという特性を有するあらゆる成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解させることができるビヒクル)を指す。添加剤は、例えば、付着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、賦形剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング剤、香味剤、香料、流動化剤(流動促進剤)、滑沢剤、防腐剤、印刷用インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味剤および水和水を含み得る。例示的な添加剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、α化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、クエン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンCおよびキシリトールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0278】
語句「医薬的に許容される塩」は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって)親化合物が修飾された、開示化合物の誘導体を指す。医薬的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸性塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などが挙げられるこれらに限定されない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに無毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、およびアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンを含むがこれらに限定されないアミンカチオンなどが挙げられる。本開示の医薬的に許容される塩は、例えば、無毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の無毒性の塩を含む。本開示の医薬的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成し得る。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離した酸または塩基形態を化学量論量の適切な塩基または酸と水もしくは有機溶媒または2つの混合物中で反応させることによって製造し得て、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418, Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. H. Stahl and C. G. Wermuth (eds.), Wiley-VCH, 2008, and Berge et al., Journal of Pharmaceutical Science, 66, 1-19 (1977)で見つけられ、これらの各々は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0279】
「リボ核酸」または「RNA」は、少なくとも2つのリボヌクレオチドを含むポリマーを指す。「リボヌクレオチド」は、糖リボース、塩基およびリン酸基を含む。ヌクレオチドはリン酸基を介して結合している。「塩基」は、天然化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび天然類似体をさらに含むプリンおよびピリミジン、ならびにプリンおよびピリミジンの合成誘導体を含み、これらは、例えばアミン、アルコール、チオール、カルボン酸およびハロゲン化アルキルを含むがこれらに限定されない新しい反応性基を配置する修飾を含むがこれらに限定されない。
【0280】
RNAは、オリゴヌクレオチドRNA、tRNA(転移RNA)、snRNA(小核RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、siRNA(低分子干渉RNA)、自己複製RNA、リボザイム、キメラ配列、またはこれらの群の誘導体の形態であり得る。RNAは、(任意の5'キャップ構造に加えて)修飾核酸塩基を有する1つ以上のヌクレオチドを含み得て、m5C(5-メチルシチジン)、m5U(5-メチルウリジン)、m6A(N6-メチルアデノシン)、s2U(2-チオウリジン)、Um(2'-O-メチルウリジン)、m1A(1-メチルアデノシン);m2A(2-メチルアデノシン);Am(2'-O-メチルアデノシン);ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン);i6A(N6-イソペンテニルアデノシン);ms2i6A(2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン);io6A(N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン);t6A(N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);ms2t6A(2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);m6t6A(N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);hn6A(N6.-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);Ar(p)(2'-O-リボシルアデノシン(ホスフェート));I(イノシン);m11(1-メチルイノシン);m'Im(1,2'-O-ジメチルイノシン);m3C(3-メチルシチジン);Cm(2T-O-メチルシチジン);s2C(2-チオシチジン);ac4C(N4-アセチルシチジン);f5C(5-ホンニルシチジン);m5Cm(5,2-O-ジメチルシチジン);ac4Cm(N4アセチル2TOメチルシチジン);k2C(リシジン);m1G(1-メチルグアノシン);m2G(N2-メチルグアノシン);m7G(7-メチルグアノシン);Gm(2'-O-メチルグアノシン);m22G(N2,N2-ジメチルグアノシン);m2Gm(N2,2'-O-ジメチルグアノシン);m22Gm(N2,N2,2'-O-トリメチルグアノシン);Gr(p)(2'-O-リボシルグアノシン(ホスフェート));yW(ウィブトシン);o2yW(ペルオキシウィブトシン);OHyW(ヒドロキシウィブトシン);OHyW*(修飾が不十分なヒドロキシウィブトシン);imG(ウィオシン);mimG(メチルグアノシン);Q(クォイオシン);oQ(エポキシクォイオシン);galQ(ガルタクトシル-クォイオシン);manQ(マンノシル-クォイオシン);preQo(7-シアノ-7-デアザグアノシン);preQi(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン);G*(アルカエオシン);D(ジヒドロウリジン);m5Um(5,2'-O-ジメチルウリジン);s4U(4-チオウリジン);m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン);s2Um(2-チオ-2'-O-メチルウリジン);acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン);ho5U(5-ヒドロキシウリジン);mo5U(5-メトキシウリジン);cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸);mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル);chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン));mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル);mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン);mcm5Um(S-メトキシカルボニルメチル-2-O-メチルウリジン);mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン);nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン);mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン);mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン);mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン);ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン);ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2'-O-メチルウリジン);cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン);cnmm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-L-O-メチルウリジン);cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン);m62A(N6,N6-ジメチルアデノシン);Tm(2'-O-メチルイノシン);m4C(N4-メチルシチジン);m4Cm(N4,2-O-ジメチルシチジン);hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン);m3U(3-メチルウリジン);cm5U(5-カルボキシメチルウリジン);m6Am(N6,T-O-ジメチルアデノシン);rn62Am(N6,N6,O-2-トリメチルアデノシン);m2'7G(N2,7-ジメチルグアノシン);m2'2'7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン);m3Um(3,2T-O-ジメチルウリジン);m5D(5-メチルジヒドロウリジン);f5Cm(5-ホルミル-2'-O-メチルシチジン);m1Gm(1,2'-O-ジメチルグアノシン);m'Am(1,2-O-ジメチルアデノシン)イリノメチルウリジン);tm5s2U(S-タウリノメチル-2-チオウリジン));imG-14(4-デメチルグアノシン);imG2(イソグアノシン);またはac6A(N6-アセチルアデノシン)、ヒポキサンチン、イノシン、8-オキソ-アデニン、その7-置換誘導体、ジヒドロウラシル、シュードウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-アミノウラシル、5-(C1-C6)-アルキルウラシル、5-メチルウラシル、5-(C2-C6)-アルケニルウラシル、5-(C2-C6)-アルキニルウラシル、5-(ヒドロキシメチル)ウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシシトシン、5-(C1-C6)-アルキルシトシン、5-メチルシトシン、5-(C2-C6)-アルケニルシトシン、5-(C2-C6)-アルキニルシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、N2-ジメチルグアニン、7-デアザグアニン、8-アザグアニン、7-デアザ-7-置換グアニン、7-デアザ-7-(C2-C6)アルキニルグアニン、7-デアザ-8-置換グアニン、8-ヒドロキシグアニン、6-チオグアニン、8-オキソグアニン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,4-ジアミノプリン、2,6-ジアミノプリン、8-アザプリン、置換7-デアザプリン、7-デアザ-7-置換プリン、7-デアザ-8-置換プリン、または塩基性ヌクレオチドが挙げられる。
【0281】
RNAは、例えば米国特許第8,314,227号、第9,051,570号、第9,303,260号、第9,297,009号および第9,340,789号、および米国特許出願公開第2016/0168567号(その全体として本明細書に組み込まれる)に開示されている、1つ以上のUNA分子を含み得る。
【0282】
RNAまたは自己複製RNAは、1つ以上の修飾ピリミジン核酸塩基、例えばシュードウリジンおよび/または5-メチルシトシン残基含み得る。
【0283】
「自己複製RNA」は、タンパク質がなくても哺乳類から細胞に放出されると、それ自体の転写によって(それ自体を生成するアンチセンスコピーによって)複数の子RNAの生成をもたらすことができるRNAを指す。自己複製RNA分子は通常、細胞への放出時に直接翻訳できるプラス鎖分子であり、この翻訳は、放出されたRNAのアンチセンス転写物とセンス転写物の両方を生成するRNA依存性RNAポリメラーゼを提供する。子RNA、および同一線上のサブゲノム転写物は、コードされたタンパク質(例えば、抗原または免疫原)の発現をその場で提供するためにそれ自体で翻訳され得て、または翻訳されてタンパク質発現をオンサイトで提供するために翻訳されるRNAと同じ意味の更なる転写物を提供するために転写され得る。この転写シークエンスの全体的な結果は、導入されたRNAレプリコンの数の大きな増幅であり、このようにして、コードされたタンパク質はトランスフェクトされた細胞の主な産物になる。自己複製RNAの例は、WO2012/006369およびUS2018/0104359に記載されており、その内容は参照により組み込まれる。
【0284】
「乱流」は、混合領域の形状、ならびにRNAを含む水溶液および脂質混合物を含むエタノール溶液の流速の観点で本明細書において定義する。混合中、レイノルズ数は少なくとも2000であり、レイノルズ数Reは次のように定義される。
Re=DVρ/μ
式中、ρは水中の0~25%のエタノールを含む溶液の密度(g/cm3)であり、Vはチューブに対する溶液の速度(cm/s)であり、DはチューブのID(cm)であり、μは溶液の動的粘度(g/(cm・s))である。Tilton, Fluid and Particle Dynamics, PERRY’S CHEMICAL ENGINEERS’ HANDBOOK (Green ed., 8th ed. 2008)(全体として組み込まれる)の頁6~51。乱流への遷移は、レイノルズ数Reが2000~2500の範囲で発生する(Tilton、6~14)。例えば、ID=0.132インチのチューブにおける300ml/分の流速では、Reは2,100(D=0.30cm、V=70cm/秒、ρ=96g/cm3およびμ=0.01g/(cm・秒)である(Poling, Physical and Chemical Data, in PERRY'S, 頁2~117および2~448)。チューブの速度プロファイルを考慮すると、半径R(D/2)の円管内の半径位置rの関数としての中心線速度vは次のように定義される。
v=2V(1-r2/R2)
式中、最大速度は放物線プロファイルの有効速度の2倍である(Tilton、6~11)。例えば、300ml/分の流速では、チューブの中心のレイノルズ数は4,200である。このため、少なくともチューブの中心で、かなりの程度まで壁に向かって乱流が発生する流速を決定することが可能である。
【実施例】
【0285】
実施例1:粒子径に対する流速の影響
図1に示すように、0.55mg/mLの濃度のsiRNAを含むリザーバーおよび49.4mg/mLの濃度の総脂質を含む別のリザーバーを準備した。
【0286】
脂質組成物を、カチオン性脂質:DSPC:コレステロール:PEG-DMGが48~60:5~10:28~38:0.5~3.0モル%の範囲で製剤化した。総脂質とRNAの比率は、25:1~30:1(wt:wt)であった。
【0287】
脂質溶液を、25~87.5ml/分の流速で0.01インチ脂質注入口を有するチューブを通ってHPLCポンプにより混合モジュールを通ってリザーバーからポンプ輸送した。siRNA溶液を、0.132インチsiRNA注入口を有するチューブを通ってHPLCポンプによりモジュールを通ってリザーバーからポンプ輸送した。siRNAの流速は脂質の流速の3倍であり、混合物の排出は25%EtOH溶液であった。排出溶液をさらに緩衝液で希釈し、遊離RNAおよびエタノールをタンジェンシャルフローろ過(TFF)により除去した。
図1、4および5は、全体的な製造方法を概略的に示し、
図1は、製造の工程を概説し、
図4は、装置の概略を示し、
図5は、本開示の混合モジュールの図を提供する。
【0288】
平均粒子径(nm)、多分散度指数(PDI)および封入率を含む脂質封入RNAナノ粒子の様々な特性を測定した。試験したすべての条件で、製剤の収率は80%超であった。結果を表2に示す。
【表2】
【0289】
結果は、脂質およびRNAの流速を増加させると、PDIを<0.1に維持し、封入を約99%に維持しながら、平均粒子径を減少させることを示した。
【0290】
実施例2:製造方法の拡張性および再現性
実施例1の条件に従って、バッチ容量1L~220Lに対して300ml/分の複合流速を用いた。
結果を表3に示す。
【表3】
【0291】
結果は、乱流を用いた本明細書に記載の製造方法が1.8Lから220Lまで拡張縮小できることを示している。重要な物理化学的および生物学的特性は、拡張縮小によって変化しない。
図7は、生成された粒子が220Lバッチでサイズが均一であり、単層形態であることを示すクライオTEM(透過型電子顕微鏡法)顕微鏡写真を提供する。
【0292】
本明細書に記載の製造方法の拡張性を、実施例1に記載の条件を用いて、300ml/分の流速で0.05から30gまで処理されるRNAの量を変化させ、粒子径、PDIおよび封入率を測定することにより測定した。結果を
図6Aに示す。結果は、0.5gから30gへのスケールアップ中に粒子径が70~80nmを維持したことを示している。
【0293】
製造方法の再現性を、30gのRNA脂質ナノ粒子のいくつかのバッチを個別に調製することにより測定した。結果を
図6Bに示す。結果は、70~80nmの粒子径が得られたバッチ間の再現性を示している。
【0294】
最終的な製剤収率は、1.8~220Lのすべてのスケールで80%超であった。
【0295】
Balb/cマウスの尾静脈にiv注射による、本明細書に記載の製造方法によって220Lバッチで製造した粒子の効果。結果を表4に示す。
【表4】
【0296】
結果は、乱流により製造した脂質封入RNAナノ粒子が、少なくとも20mg/kgまでの用量で忍容性あるを示している。
【0297】
実施例3:siRNA濃度変化の影響
実施例1の方法を、75ml/分の脂質流速、225ml/分のsiRNA流速および300ml/分の全体流速にて用いた。希釈前のsiRNAの製造工程中での濃度を0.083mg/mlから0.41mg/mlまで変化させ、脂質の濃度を比例的に増加させて、RNA:脂質比を維持した。結果を表5に示す。
【表5】
【0298】
結果は、RNAの製造工程中での濃度は、RNAの粒子径または封入率を変化させることなく変更できることを示した。
【0299】
実施例4:モジュールサイズの影響
実施例1の条件に従って、0.03のRNA:脂質(wt:wt)の比を用いた。表6の結果に示すように、モジュールの注入口直径を変化させた影響を、全体流速を40から600ml/分まで変化させて測定した。注入口圧力をモニターし、得られた脂質封入RNA粒子のサイズPDIおよび封入率を測定した。
【表6】
【0300】
結果は、組成を変化させずに、混合モジュールの脂質および/またはsiRNAの注入口のIDを変化させるだけで、99%以上の封入効率および80%以上の収率で様々なサイズのナノ粒子を生成できることを示している。
【0301】
実施例5:mRNAまたは自己複製RNAを含む脂質封入RNAナノ粒子の製造
実施例1の条件に従って、0.01インチの脂質注入口および0.132インチのsiRNA注入口、75ml/分の脂質流速、225ml/分のmRNA流速、300ml/分の全体流速のモジュールを用いた。RNA/総脂質(wt/wt)比を0.025から0.035に保ちながら、265kDa~3,858kDa RNAの様々なサイズの1本鎖mRNAを用いた。用いたRNAは、レプリコン領域を含むmRNAまたは自己複製RNAであった。
【表7】
【0302】
表7に示す結果は、約0.8~12キロベース(kb)のmRNAを、本明細書に記載の製造方法を用いて約95~97%の封入でパッケージ化できることを示している。得られた粒子のサイズは、5.5kbを超えるmRNAの長さでのみ増加する。
【0303】
実施例6:mRNAまたは自己複製RNAを含む脂質封入RNAナノ粒子の生成
実施例1の条件に従って、0.01インチの脂質注入口および0.132インチのsiRNA注入口、75ml/分の脂質流速、225ml/分のmRNA流速、300ml/分の全体流速のモジュールを用いた。RNA/総脂質(wt/wt)比を0.025から0.035に保ちながら、265kDa~3,858kDa RNAの様々なサイズの1本鎖mRNAを用いた。用いたRNAは、レプリコン領域を含むmRNAまたは自己複製RNAであった。
【0304】
実施例6:インビボでの脂質封入ナノ粒子の生物活性
EPO mRNAまたはFVII siRNAのいずれかを含む脂質封入RNAナノ粒子を、本明細書に記載の製造方法を用いて製剤化し、続いてそれぞれBalb/cマウス(6~8週齢)に注射した。その後、マウスの血清または血漿中のエリスロポエチン(EPO)タンパク質およびFVIIタンパク質のレベルを評価して、これらのナノ粒子の生物活性を測定した。
【0305】
脂質ライブラリーの肝臓指向性インビボスクリーニングを用いて、肝実質を構成する細胞である肝細胞における高レベルのsiRNA介在性遺伝子サイレンシングを促進する一連の化合物を試験した。血液凝固因子である第VII因子は、肝臓への機能的なsiRNA送達をアッセイするのに適した標的遺伝子である。この因子は特に肝細胞で産生されるため、遺伝子サイレンシングは、細網内皮系の細胞(例えば、クッパー細胞)への送達とは対照的に、実質への送達の成功を示す。さらに、第VII因子は分泌タンパク質であり、血清中で容易に測定でき、動物を安楽死させる必要がない。mRNAレベルでのサイレンシングは、タンパク質のレベルを測定することにより簡単に決定できる。これは、タンパク質の半減期が短い(2~5時間)ためである。第VII因子に向けられたsiRNAを含む組成物を製剤化した。雌性C57BL/6マウス(6~8週齢)をFVII siRNAノックダウン(KD)試験に用いた。
【0306】
実施例1の製造方法に従った。マウスでのインビボ生物活性を上記のとおり測定した。結果を表8に示す。
【表8】
【0307】
結果は、EPO mRNAを介した発現およびFVII発現のFVII siRNAを介したノックダウン(KD)の両方が、本明細書に記載の製造方法を用いて製剤化したEPO mRNAまたはFVII siRNAのいずれかを含む脂質封入RNAナノ粒子において強力であることを示した。
【0308】
実施例7:異なる脂質組成を用いた脂質封入mRNA粒子のインビボ生物活性
EPO mRNAを含む脂質組成を変化させた脂質封入RNAナノ粒子を、本明細書に記載の製造方法を用いてそれぞれ製剤化した。イオン化可能なカチオン性脂質を変化させた:表1の脂質1を脂質2、脂質3および脂質9と比較した。イオン化可能なカチオン性脂質の構造を以下に示す。製剤の組成を表9に示す。
【化42】
【0309】
血清中のEPOタンパク質発現(ng/ml)を、雌性Balb/cマウス(6~8週齢)に0.3mg/kgのmRNAを単回投与した後に測定した。PBSネガティブコントロールは2ng/mlのEPO発現を示した。比較結果を表9に示す。
【表9】
【0310】
結果は、粒子径は同等であったが、EPOタンパク質の発現は、イオン化可能なカチオン性脂質および組成が異なる脂質封入EPO mRNAナノ粒子間で大幅に異なることを示した。
本明細書に記載の製造方法を用いて、製造したすべての脂質封入EPOmRNAナノ粒子は強力であった。試験した組成について、85%超の収率が観察された。
【0311】
さらなる考慮事項
前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な構成を実施できるようにするために提供する。主題技術を実施する他の多くの方法が存在し得る。本明細書に記載されている様々な機能および要素は、主題技術の範囲から逸脱することなく、示されているものとは異なって分割し得る。これらの構成に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理を他の構成に適用し得る。したがって、主題技術の範囲から逸脱することなく、当業者によって、主題技術に多くの変更および修正を行い得る。
【0312】
詳細な説明には多くの具体的な内容が含まれているが、これらは主題技術の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に主題技術の様々な例および実施態様を例示するものとして解釈されるべきである。主題技術の範囲には、上記で詳細に説明されていない他の実施態様が含まれることを理解されたい。本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される主題技術の方法および装置の構成、操作および詳細において、他の様々な修正、変更および変形を行い得る。また、本開示の範囲内に含まれるために、本開示の異なる実施態様によって解決可能である(または達成可能なすべての利点を有する)すべての問題に対処するためのデバイスまたは方法は必要ではない。本明細書における「得る(can)」およびその派生物の使用は、肯定的な能力とは対照的に、「可能性がある」または「任意に」の意味で理解されなければならない。
【国際調査報告】