(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(54)【発明の名称】疾患の治療のための、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子の皮下投与
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220510BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220510BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220510BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220510BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220510BHJP
A61M 5/19 20060101ALI20220510BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/42
A61K9/51
A61K47/26
A61P35/00
A61K47/36
A61K31/436
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61M5/19
A61J1/05 351A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556556
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 US2020023366
(87)【国際公開番号】W WO2020191053
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508061974
【氏名又は名称】アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,ニール ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,シヘ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C047AA27
4C047CC04
4C047CC14
4C047HH06
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC07
4C066CC08
4C066DD08
4C066EE15
4C066FF05
4C066LL06
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD67
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C076EE41
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZC01
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZC01
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を、皮下投与するための組成物およびデバイスを提供する。本出願はまた、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を、個体に皮下投与することによる、疾患の治療方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を、個体に皮下投与することを含む、個体における疾患の治療方法であって、医薬組成物のmTOR阻害剤の分量は、それぞれの投与について約0.1mg/m
2から約10mg/m
2の用量である、方法。
【請求項2】
医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量が、約1mg/m
2から約10mg/m
2の用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量が、約5mg/m
2の用量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物がさらに糖類を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
医薬組成物が週1回以下で投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が週1回投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物が3週間に2回投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
疾患が癌である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
疾患がミトコンドリア病である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
個体がヒトである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
個体の標的組織に有効量のmTOR阻害剤を送達する方法であって、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を皮下投与することを含む、方法。
【請求項12】
mTOR阻害剤がリムス薬(limus drug)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
リムス薬がラパマイシンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
医薬組成物がさらに糖類を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量が、約0.1mg/m
2から10mg/m
2の用量である、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
標的組織が個体の脳組織である、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
個体に皮下投与するのに適切な、a)mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子、およびb)糖類を含む、医薬組成物。
【請求項18】
糖類が、アルギン酸塩、デンプン、ラクトース、プルラン、ヒアルロン酸、キトサン、グルコース、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン、スクロース、N-アセチル-D-ガラクトサミン、マルトース、またはトレハロースから成る群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
糖類がスクロースである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
糖類がトレハロースである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物におけるmTOR阻害剤の濃度が、少なくとも約5mg/mlである、請求項17~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
医薬組成物におけるmTOR阻害剤の濃度が、少なくとも約50mg/mlである、請求項17~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
医薬組成物におけるナノ粒子の平均直径が、約120nm以下である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、または請求項17~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ナノ粒子がアルブミンによってコーティングされたmTOR阻害剤を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、または請求項17~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
アルブミンがヒトアルブミンである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、または請求項17~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
mTOR阻害剤がリムス薬である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、または請求項17~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
mTOR阻害剤がラパマイシンである、請求項26に記載の方法または医薬組成物。
【請求項28】
mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を、個体に皮下投与するための装置であって、以下:
a)乾燥形態の医薬組成物を含む薬物チャンバー、および再構成溶液を含む溶液チャンバー;
b)薬物チャンバーと溶液チャンバーを分離する、取り外し可能な仕切り
を含む、装置であって、仕切りの除去によって、乾燥した医薬組成物と再構成溶液の混合が生じ、それによって再構成された医薬組成物が形成される、装置。
【請求項29】
前記装置が、シリンジの端に付加された注射針、および再構成された医薬組成物をシリンジから排出することができるプッシャを含む、シリンジである、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
医薬組成物がさらに糖類を含む、請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
mTOR阻害剤がリムス薬である、請求項28~30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
mTOR阻害剤がラパマイシンである、請求項28~31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
疾患の治療に用いるための、請求項28~32のいずれか1項に記載の装置を含む、キット。
【請求項34】
癌またはミトコンドリア病を治療するための、キットの使用説明書をさらに含む、請求項33に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は米国仮出願第62/820,842号(2019年3月19日出願)、表題「疾患の治療のための、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子の皮下投与」;および米国仮出願第62/820,838号(2019年3月19日出願)、表題「肺高血圧の治療のための方法および組成物」の優先権の利益を主張し;これらのそれぞれは、全ての目的において、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を皮下投与するための組成物および装置、並びにその方法に関する。本願はさらに、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を、皮下投与することを含む、個体の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)は、細胞の生存、増殖、ストレス、および代謝などの様々な細胞プロセスを制御することが知られている、タンパク質キナーゼである。ラパマイシンなどのmTORの多くの阻害剤は、特定の癌などの様々な障害の治療に効果的である。ラパマイシンなどの多くのmTOR阻害剤は、水溶性が低いことが知られており、そのため界面活性剤および溶媒などの賦形剤が必要である。これらの賦形剤は、特に皮下投与など、非経口的に投与される場合、刺激、炎症、および効力の低下を引き起こしうる。
【0004】
したがって、当技術分野において、安定である、および/または皮下投与などの投与によって、許容できない毒性効果を生じない、mTOR阻害剤を含むナノ粒子の改良された製剤が必要とされている。凍結乾燥などで乾燥され、より容易に構成および/または送達されうるmTOR阻害剤を含むナノ粒子の製剤の開発もまた、必要とされている。最後に、当技術分野において、投与前に、乾燥組成物の誤操作のリスクを軽減することが必要とされている。
【0005】
本明細書において引用される全ての文献、特許、特許出願、および公開特許公報の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を、個体に皮下投与することを含む、個体における疾患の治療方法を提供し、ここで、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量は、それぞれの投与について、約0.1mg/m2から約10mg/m2の用量である。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量は、それぞれの投与について、約1mg/m2から約10mg/m2の用量である。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量は、約5mg/m2の用量である。
【0007】
本明細書に記載される方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、医薬組成物はさらに糖類を含む。
【0008】
本明細書に記載される方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、医薬組成物は週1回以下で投与される。いくつかの実施態様において、医薬組成物は週1回投与される。いくつかの実施態様において、医薬組成物は3週間に2回投与される。
【0009】
本明細書に記載される方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、疾患は癌である。本明細書に記載される方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、疾患はミトコンドリア病である。
【0010】
本明細書に記載される方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、個体はヒトである。
【0011】
本出願はまた、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を皮下投与することを含む、個体の標的組織に有効量のmTOR阻害剤を送達する方法を提供する。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。いくつかの実施態様において、医薬組成物はさらに糖類を含む。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、約0.1mg/m2から約10mg/m2の用量を含む。いくつかの実施態様において、標的組織は個体の脳組織である。
【0012】
本明細書に記載の方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、医薬組成物におけるナノ粒子の平均直径は、約120nm以下である。本明細書に記載の方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、ナノ粒子はアルブミンによってコーティングされたmTOR阻害剤を含む。本明細書に記載の方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、アルブミンはヒトアルブミンである。本明細書に記載の方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はリムス薬である。本明細書に記載の方法のいずれか1つによるいくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。
【0013】
本願はまた、a)mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子、およびb)糖類を含む、個体への皮下投与に適した医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、糖類は、アルギン酸塩、デンプン、ラクトース、プルラン、ヒアルロン酸、キトサン、グルコース、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン、スクロース、N-アセチル-D-ガラクトサミン、マルトース、またはトレハロースから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、糖類はスクロースである。いくつかの実施態様において、糖類はトレハロースである。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の濃度は、少なくとも約5mg/mlである。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の濃度は、少なくとも約50mg/mlである。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるナノ粒子の平均直径は、約120nm以下である。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるナノ粒子は、アルブミンによってコーティングされたmTOR阻害剤を含む。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるアルブミンはヒトアルブミンである。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤はリムス薬である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。
【0014】
本出願はまた、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を、個体に皮下投与するための装置を提供し、当該装置はa)乾燥形態の医薬組成物を含む薬物チャンバー、および再構成溶液を含む溶液チャンバー;および薬物チャンバーと溶液チャンバーを分離する、取り外し可能な仕切りを含み、ここで、仕切りの除去によって、乾燥した医薬組成物と再構成溶液の混合が生じ、それによって再構成された医薬組成物が形成される。いくつかの実施態様において、前記装置は、シリンジの端に付加された注射針、および再構成された医薬組成物をシリンジから排出することができるプッシャを含む、シリンジである。いくつかの実施態様において、当該装置の医薬組成物は、さらに糖類を含む。当該装置のいくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はリムス薬である。当該装置のいくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。
【0015】
本出願はまた、疾患の治療に使用するための、本明細書に記載の装置のいずれかを含むキットを提供する。いくつかの実施態様において、キットはさらに、癌を治療するためのキットの説明書をさらに含む。いくつかの実施態様において、キットはさらに、ミトコンドリア病を治療するための当該キットの使用説明書を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、投与後0から24時間の間に、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一用量の皮下(SC)または静脈内(IV)投与の後にラットから採取された全血サンプルにおける、ラパマイシン濃度を示す。
【0017】
【
図2】
図2は、投与後0から168時間の間に、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一用量の皮下(SC)または静脈内(IV)投与の後にラットから採取された全血サンプルにおける、ラパマイシン濃度を示す。
【0018】
【
図3】
図3は、投与後0から24時間の間に、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一用量の皮下(SC)または静脈内(IV)投与の後にラットから採取された全血サンプルにおける、ラパマイシン濃度を示す。
【0019】
【
図4】
図4は、計算された曲線下面積(AUC)によって示される、ラットにおける単一用量の皮下(subQ)または静脈内(IV)投与後の、nab-ラパマイシン(ABI-009)のバイオアベイラビリティを示す。
【0020】
【
図5】
図5は、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一用量の皮下(subQ)または静脈内(IV)投与後24または168時間の、ラットの骨髄(上)または脳(下)におけるラパマイシンの濃度を示す。
【0021】
【
図6】
図6は、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一用量の皮下(subQ)または静脈内(IV)投与後24または168時間の、ラットの心臓(上)または肝臓(下)におけるラパマイシンの濃度を示す。
【0022】
【
図7】
図7は、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一用量の皮下(subQ)または静脈内(IV)投与後24または168時間の、ラットの肺(上)または膵臓(下)におけるラパマイシンの濃度を示す。
【0023】
【
図8】
図8は、1.7mg/kg、9.5mg/kg、または17mg/kgの用量における、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単一皮下用量の投与後24、72、および120時間の、ラットの脳または全血における、ラパマイシンの経時濃度の比較を示す。
【0024】
【
図9】
図9は、異なる治療群間で、ラットの皮膚において評価した組織病理スコアの比較を示す。
【0025】
【
図10】
図10は、群1(0.9%生理食塩水)のラットからの皮膚の代表的なヒストグラム画像である。組織学的病変は、皮下組織(SC)内の混合炎症性細胞(黒矢印)の集合体に限られる。真皮(D)および表皮(E)を示す。
【0026】
【
図11】
図11は、群2(0.9%生理食塩水中のHSA)のラットからの代表的な皮膚のヒストグラム画像である。皮下組織(SC)において、多巣性混合炎症性細胞凝集(黒矢印)が可視である。表皮(E)および真皮(D)は目立たない。
【0027】
【
図12】
図12は、群3(ABI-009、1.7mg/kg)のラットからの代表的な皮膚のヒストグラム画像である。皮下組織(SC)において、最小混合炎症性細胞浸潤(黒矢印)が可視である。表皮(E)および真皮(D)が示されている。
【0028】
【
図13】
図13は、群4(ABI-009、5mg/kg)のラットからの代表的な皮膚のヒストグラム画像である。皮下組織(SC)において、散在する混合炎症性細胞浸潤(右矢印)および最小壊死部位(左矢印)が存在する。表皮(E)および真皮(D)は目立たない。
【0029】
【
図14】
図14は、群4(ABI-009、10mg/kg)のラットからの代表的な皮膚のヒストグラム画像である。皮下(SC)混合炎症性細胞浸潤(右矢印)および壊死部位(左矢印)を記録する。表皮(E)および真皮(D)は目立たない。
【0030】
【
図15】
図15は、1.7mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgでABI-009を投与したラットにおける、ラパマイシンの血液濃度の平均値を表す。
【0031】
【
図16】
図16は、生理食塩水(群1)、ABI-009(静脈内経路;群2)、ラパミューン(経口投与;群3)、およびABI-009(皮下経路;群4)による処理の0~15日後における、ヒト肝細胞癌マウス異種移植モデルの、腫瘍増殖の結果を示す。
【0032】
【
図17】
図17は、生理食塩水(群1)、ABI-009(静脈内経路;群2)、ラパミューン(経口投与;群3)、およびABI-009(皮下経路;群4)による処理の0~15日後における、ヒト肝細胞癌マウス異種移植モデルにおいて、マウスの体重変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本明細書において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物などの、本明細書において記載される組成物を皮下投与するための方法が提供される。別の局面において、本明細書において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を皮下投与することによって、脳、骨髄、心臓、肝臓、肺、または膵臓組織などの標的組織に、有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を送達するための方法が提供される。別の局面において、本明細書において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を皮下投与することを含む、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の血中濃度を維持するための方法が提供される。
【0034】
また、本明細書において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を皮下投与することを含む、疾患の治療方法が提供される。いくつかの実施態様において、疾患は癌である。いくつかの実施態様において、癌を有する個人は、mTOR活性化異常を有することに基づいた治療のために選択される。いくつかの実施態様において、疾患はミトコンドリア病である。
【0035】
また、本明細書において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む、個人への皮下投与に適切な医薬組成物などの組成物、並びにそのような組成物を投与する方法が提供される。ある局面において、組成物は、乾燥形態の組成物の溶解性を向上させるため、および/または組成物の安定性を向上させるための1つ以上の薬剤を含みうる。さらなる薬剤は、糖類を含みうる。糖類は、乾燥形態の組成物を水溶液に添加した後の溶解速度などの、溶解度の向上、および/または組成物の安定性の促進に有効な分量で存在しうる。
【0036】
別の局面において、本明細書において、本明細書に記載される医薬組成物を皮下投与するための装置が提供される。当該装置は、乾燥形態の医薬組成物を含む薬物チャンバーと、再構成溶液を含む溶液チャンバーを含む。当該装置はさらに、薬物チャンバーと溶液チャンバーを分離する取り外し可能な仕切りを含み、ここで、仕切りの除去または作動によって、乾燥した医薬組成物と再構成溶液の混合が生じる、または可能になり、それによって再構成医薬組成物が形成される。装置はシリンジであってもよく、プッシャをさらに含みうる。組成物の再構成の後、装置は、組成物を個体に皮下投与することができるか、あるいはそのように適合させることができる。また、本明細書において、本明細書に記載される装置を用いたmTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を皮下投与するための方法が提供される。
【0037】
定義
本明細書に記載される本発明の局面および実施態様は、局面および実施態様「から成る」、および/または「実質的にそれらから成る」ことを含むことが理解される。
【0038】
本明細書で記載されるように、アルブミンは、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)に「関連」しうる、例えば、組成物はアルブミン関連mTOR阻害剤を含む。「関連」または「関連した」は、本明細書において一般的な意味で使用され、水性組成物において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の挙動および/または性質に影響を与えるアルブミンをいう。例えば、アルブミンが、アルブミンを含まない組成物と比較して、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を水性溶媒中により容易に懸濁可能にする場合に、アルブミンおよびmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は「関連」すると考えられる。別の例として、アルブミンが水性懸濁液中でmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を安定化させる場合に、アルブミンとmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は関連する。例えば、アルブミンおよびmTOR阻害剤は、粒子またはナノ粒子中に存在することができ、これは本明細書においてさらに記載される。
【0039】
「組成物」への一般的な言及は、本明細書に記載される任意の医薬組成物を含みうる。
【0040】
本明細書において用いられる用語「有効量」は、特定の障害、病状、または疾患を治療する、例えば、その症状の1つ以上を改善、緩和、軽減、および/または遅延させるのに十分な、化合物または組成物の分量をいう。当技術分野において理解されるように、「有効量」は、1つ以上の用量であってもよい、すなわち、単一または複数の用量が目的の治療エンドポイントを達成するために必要でありうる。有効量は、1つ以上の治療剤を投与する文脈において考慮される場合があり、ナノ粒子組成物(例えば、ラパマイシンおよびアルブミンを含む組成物)は、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて、望ましい、または有益な結果が得られ得る、または得られる場合に、有効量であるとみなされうる。
【0041】
本明細書において用いられる「nab」(登録商標)は、アルブミン結合ナノ粒子を表し、「nab-ラパマイシン」は、ラパマイシンのアルブミン安定化ナノ粒子製剤である。Nab-ラパマイシンは、以前記載されていたnab-シロリムスとしても知られている。例えば、WO2008/109163 A1、WO2014/151853、WO2008/137148 A2、およびWO2012/149451 A1を参照されたく、これらのそれぞれは、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0042】
本明細書において用いられるように、「薬学的に許容可能な」または「薬理学的に適合可能な」は、生物学的に、またはその他の望ましくないものではない物質を意味し、例えば、当該物質は、重大な望ましくない生物学的効果を生じずに、あるいはそれが含まれる組成物の任意の他の成分と、有害な方法で相互作用しないで、患者に投与される医薬組成物に組み込まれうる。薬学的に許容可能な担体または賦形剤は、好ましくは、毒物学および製造試験の必要な基準を満たしており、および/または米国食品医薬品局によって作成された不活性成分ガイドに含まれている。
【0043】
本明細書で用いられる「治療」または「治療する」は、臨床的結果などの有益な、または所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のための、有益な、または所望の臨床的結果としては、限定されないが、以下の1つ以上が挙げられる:疾患によって生じる1つ以上の症状を軽減すること、疾患の程度を緩和すること、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防または遅延)、疾患の拡大(例えば、転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患の再発率の軽減、疾患の進行の遅延または鈍化、疾患状態の改善、疾患の(部分的または全体的な)寛解の提供、疾患の治療に必要な1つ以上の他の薬物の用量の減少、疾患の進行の遅延、クオリティ・オブ・ライフの向上、および/または生存の延長。いくつかの実施態様において、治療前の同じ対象における対応する症状と比較して、または治療を受けていない他の対象における対応する症状と比較して、治療は、癌に関連する1つ以上の症状の重症度を少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%のいずれかで、減少させる。また、「治療」には、癌の病理学的影響の軽減も含まれる。本発明の方法は、治療のこれらの任意の1つ以上の局面を企図する。
【0044】
用語「再発」、「ぶり返し」、「再発した」は、疾患が消失したという臨床的評価後の、癌または疾患の再発を意味する。遠位転位または局所的再発の診断は、再発とみなすことができる。
【0045】
用語「難治性」または「抵抗性」は、治療に応答しない癌または疾患をいう。
【0046】
本明細書に記載される本発明の実施態様は、実施態様「から成る」および/または「実質的にそれらから成る」ものを含むことが理解される。
【0047】
本明細書における「約」の値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する変動を含む(および記載する)。例えば、「約X」と言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0048】
本明細書において用いられる、値またはパラメーター「ではない」との言及は、一般に、値またはパラメーター「以外」を意味し、記載する。例えば、当該方法が種類Xの癌の治療に使用されないとは、当該方法がX以外の種類の癌の治療に用いられることを意味する。
【0049】
本明細書および付属の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「or」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、複数形を含む。
【0050】
皮下投与方法
本明細書において、ラパマイシンおよびアルブミンなどのmTOR阻害剤を含む、医薬組成物などの組成物の、皮下投与方法が提供される。
【0051】
いくつかの実施態様において、当該方法は、有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を、個体の脳、骨髄、心臓、肝臓、肺、または膵臓組織などの標的組織に送達するための方法であって、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む、医薬組成物などの組成物を、皮下投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施態様において、個体は脳などの標的組織において腫瘍を有する。
【0052】
いくつかの実施態様において、当該方法は、有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を個体の脳に送達するための方法であって、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む、医薬組成物などの組成物を、皮下投与することを含む方法を提供し、ここで、有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を脳に送達するための、ナノ粒子中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の用量は、約0.1mg/m2から約10mg/m2の任意の量、およびその中の値および範囲である。
【0053】
いくつかの実施態様において、当該方法は、個体においてmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の血中濃度を維持することを含み、当該方法は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む、医薬組成物などの組成物を皮下投与することを含む。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の血中濃度は、少なくとも1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、75ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、または200ng/mlの任意の量、およびその中の値および範囲である。いくつかの実施態様において、個体は腫瘍を有する。
【0054】
いくつかの実施態様において、本明細書において、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を個体に皮下投与することを含む、個体における疾患の治療方法が提供される。いくつかの実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の量は、それぞれの投与について、約0.1mg/m2から約10mg/m2、例えば、約1mg/m2から約10mg/m2の用量である。例示的な限定されない実施態様において、医薬組成物におけるmTOR阻害剤の分量は、それぞれの投与について、約5mg/m2の用量である。
【0055】
いくつかの実施態様において、組成物中のmTOR阻害剤の分量は、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物が個体に皮下投与される場合に、毒性学的効果(例えば、臨床的に許容可能な毒性のレベルを超える効果)を誘発する量以下であるか、あるいは潜在的な副作用が制御または許容されうる量である。いくつかの実施態様において、毒物学的効果は、医薬組成物の皮下投与に関連する発疹である。
【0056】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の濃度は、約0.1mg/mlから約100mg/mlの間、例えば、約0.1mg/mlから約50mg/ml、約0.1mg/mlから約50mg/ml、約0.1mg/mlから約40mg/ml、約0.1mg/mlから約10mg/ml、または約0.1mg/mlから約5mg/ml、約5mg/mlから約100mg/ml、約5mg/mlから約50mg/ml、約5mg/mlから約40mg/ml、約7.5mg/mlから約100mg/ml、約7.5mg/mlから約50mg/ml、約7.5mg/mlから約40mg/mlなどの間の任意の量、並びにその中の値および範囲である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物における、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の濃度は、少なくとも5mg/ml、7.5mg/ml、10mg/ml、または20mg/mlのいずれかである。
【0057】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物における有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は、以下の範囲のいずれかである:約0.1mg/m2から約5mg/m2、約5mg/m2から約10mg/m2、約10mg/m2から約20mg/m2、約10から約30mg/m2、約10から約45mg/m2、約10から約60mg/m2、約20から約30mg/m2、約20から約45mg/m2、約20から約60mg/m2、約30から約45mg/m2、約30から約60mg/m2、または約45から約60mg/m2、それぞれが包括的である。例示的な限定されない実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物における有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は、約0.1mg/m2から約10mg/m2の間である。別の例示的な限定されない実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物における有効量のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は、約1mg/m2から10mg/m2の間、例えば、5mg/m2などである。
【0058】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)を投与するための投与頻度としては、限定されないが、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週休みなく、4週間のうち3回(28日サイクルの1日目、8日目、および15日目など)、3週間に1回、2週間に1回、または3週間に2回が挙げられる。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)は、約2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、または8週間に1回投与される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)は、少なくとも1週間に約1x、2x、3x、4x、5x、6x、または7x(すなわち毎日)のいずれかで投与される。いくつかの実施態様において、それぞれの投与の間隔は、約6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、20日、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日のいずれか未満である。いくつかの実施態様において、それぞれの投与の間隔は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、または12ヶ月のいずれかより大きい。いくつかの実施態様において、投与スケジュールに中断はない。いくつかの実施態様において、それぞれの投与間隔は、約1週間以下である。
【0059】
TOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)の投与は、約1ヶ月から最大約7年などの長期間にわたって延長されうる。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72、または84ヶ月の期間にわたって投与される。
【0060】
記載される組成物のいずれかにおける補助剤およびアジュバントは、例えば、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、芳香剤、乳化剤、および分散剤を含みうる。微生物の作用の予防は、一般に、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤によって提供される。等張化剤もまた含まれうる。注入可能な剤形の持続吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の使用によってもたらされうる。補助剤はまた、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、および抗酸化剤、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエンなどを含みうる。
【0061】
上記の例示的な投与レジメンなどの、任意の投与レジメンによる治療は、複数のサイクル(1、2、3、4、5、6サイクル以上など、例えば、約1~10サイクル、1~7サイクル、1~5サイクル、1~4サイクル、1~3サイクルなど)を繰り返しうる。いくつかの実施態様において、特定の投与レジメンは、少なくとも2、3サイクル以上などにわたり繰り返される。いくつかの実施態様において、特定の投与レジメンによる治療は、少なくとも2、3サイクル以上にわたって、継続的に(すなわち間隔なしに)繰り返される。
【0062】
いくつかの実施態様において、2つの連続するサイクルの間に間隔がある。いくつかの実施態様において、間隔は少なくとも、約1、2、3、または4週間である。いくつかの実施態様において、間隔は少なくとも、約1、2、3、4、5、6ヶ月、またはそれ以上である。いくつかの実施態様において、間隔は、個体が体重を増加することができるおよその期間である(例えば、個体は、間隔後の治療の開始前の体重の、約または少なくとも約90%、92%、95%、97%の体重を有する)。
【0063】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は1回のみ投与される。
【0064】
皮下投与のための装置
本願は、薬物、例えば、mTOR阻害剤/アルブミンナノ粒子の皮下投与が、静脈内投与と比較して、より良好な耐容性およびバイオアベイラビリティ特性を示すことを実証する。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物は、乾燥形態、例えば凍結乾燥形態において保管されうる。投与のための乾燥組成物を調製するために、水などの水溶液で再構成することが必要である。本出願のある局面は、安定な、固定用量の乾燥組成物を、再構成溶液に近接して保持する装置を提供する。当該装置は、限られた操作によって、乾燥組成物を予測可能かつ再現可能に再構築し、次いで装置を用いて組成物を皮下投与することを可能にする、仕切りを含む。この装置は、例えば、組成物の取り扱い時間を短縮し、ユーザーエラーの機会を減少させ、再構成プロセスの再現性および一貫性を確保することによって、乾燥組成物の取り扱いを向上させる。これらの利点は、例えば、再構成溶液を乾燥組成物に手動で添加するステップを除去し、再構成組成物をシリンジに添加するステップを完全に除去することによって得られる。
【0065】
したがって、本明細書において、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物などの組成物を、皮下投与するためのデバイスが提供される。本明細書に記載されるデバイスは、特に、乾燥形態の組成物を順次再構成し、次いで再構成組成物を投与することによって、乾燥形態の組成物を皮下投与するのに適切である。ある局面において、装置は、本明細書に記載されるものなどの医薬組成物の乾燥形態、例えば、医薬組成物の凍結乾燥形態などを含む薬物チャンバー、および再構成溶液を含む溶液チャンバーを含む。別の局面において、装置は薬物チャンバーと溶液チャンバーを分離する仕切りを含む。仕切りの除去、または仕切りの作動により、乾燥した医薬組成物および再構成溶液の混合が可能になる、および/または生じ、それによって再構成医薬組成物が形成される。再構成医薬組成物は、ヒトなどの個体への皮下投与に適切でありうる。いくつかの実施態様において、装置は、溶液チャンバーおよび薬物チャンバーを含むシリンジである。いくつかの実施態様において、シリンジはさらに、装置から再構成溶液を排出することができる、プッシャを含む。いくつかの実施態様において、シリンジはさらに、皮下投与に適切な皮下注射針などの、シリンジの端部に付加した注射針を含む。
【0066】
さらに本明細書において、装置内に含まれる、皮下投与のための組成物が提供され、ここで、組成物は医薬組成物の凍結乾燥形態を含み、装置は、再構成溶液を含む溶液チャンバー、および(医薬組成物を含む)薬物チャンバーと再構成溶液を分離する仕切りを含み、ここで、仕切りの除去または作動によって、乾燥医薬組成物と再構成溶液の混合が可能になる、および/または生じ、それによって再構成医薬組成物が形成される。
【0067】
装置の仕切りは、いくつかの実施態様において、仕切りの意図しない除去または作動を防止するためのガードを含みうる。いくつかの実施態様において、ガードは、仕切りの除去または作動の前に、装置から除去される。いくつかの実施態様において、ガードが作動すると、仕切りの除去または作動を可能になる。
【0068】
いくつかの実施態様において、装置は、注射に適切な針を含むシリンジである。いくつかの実施態様において、装置は注射に適切な針と結合するように適合された、シリンジである。シリンジのプッシャを押すと、針を介して再構成されたシリンジが排出される。
【0069】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を、皮下投与するための装置が提供され、当該装置は、医薬組成物の乾燥形態を含む薬物チャンバー、再構成溶液を含む溶液チャンバー、薬物チャンバーと溶液チャンバーを分離する取り外し可能な仕切りを含み、ここで、仕切りの除去によって、乾燥医薬組成物と再構成溶液の混合が生じ、それによって再構成医薬組成物が形成され、ここで、ナノ粒子中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の用量は、約0.2mgから約100mg、約0.2mgから約10mg、約10mgから約20mg、約20mgから約30mg、約30mgから約40mg、約40mgから約50mg、約50mgから約60mg、約60mgから約70mg、約70mgから約80mg、約80mgから約90mg、約90mgから約100mgのいずれかであり、それぞれは包括的である。
【0070】
いくつかの実施態様において、装置は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物を皮下投与するために提供され、当該医薬組成物は糖類を適宜含み、装置は、乾燥形態の医薬組成物を含む薬物チャンバー、再構成溶液を含む溶液チャンバー、薬物チャンバーと溶液チャンバーを分離する取り外し可能な仕切りを含み、ここで、仕切りの除去により、乾燥した医薬組成物と再構成溶液の混合が生じ、それによって再構成医薬組成物が形成され、ここで、ナノ粒子におけるmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の用量は、約0.2mgから約100mg、約0.2mgから約10mg、約10mgから約20mg、約20mgから約30mg、約30mgから約40mg、約40mgから約50mg、約50mgから約60mg、約60mgから約70mg、約70mgから約80mg、約80mgから約90mg、約90mgから約100mgのいずれかであり、それぞれは包括的である。いくつかの実施態様において、糖類は、アルギン酸塩、デンプン、ラクトース、プルラン、ヒアルロン酸、キトサン、グルコース、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン、スクロース、N-アセチル-D-ガラクトサミン、マルトース、またはトレハロースから成る群から選択される。
【0071】
また、本明細書において、本明細書に記載される装置を用いた、本明細書に記載される組成物を皮下投与する方法が提供される。非限定的な例示的な実施態様において、組成物は、ラパマイシンおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む、医薬組成物の乾燥形態を含む。非限定的な例示的な実施態様において、皮下投与方法は、医薬組成物を皮下投与するための個体を選択し、仕切りを除去または作動し、乾燥組成物と再構成溶液が再構成医薬組成物を形成するために、指摘された時間待機すること、針を個体に適切な角度で挿入すること、適切な力でプッシャを押すこと、および個体から針を除去することを含む。
【0072】
治療される疾患
本明細書に記載される組成物、方法、およびデバイスは、ヒトなどの個体において疾患を治療するのに有用でありうる。いくつかの実施態様において、疾患は、肺高血圧、中枢神経系障害、ミトコンドリア病、または癌のうちの1つ以上である。
【0073】
I.肺高血圧
肺高血圧(PH)は、肺動脈圧の上昇を特徴とする症候群である。PHは血行動態学的に、30mmHgを超える収縮期肺動脈圧として、または25mmHgを超える平均肺動脈圧の評価として定義される。Zaiman et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 33:425-31 (2005)を参照されたい。
【0074】
本明細書に記載のいずれか1つの方法によるいくつかの実施態様において、治療される疾患は、肺高血圧症を含む。いくつかの実施態様において、肺高血圧症は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)、遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH)、薬物および毒素誘導性PAH、結合組織病関連PAH、および先天性心疾患関連PAHのいずれかである。
【0075】
いくつかの実施態様において、肺高血圧症は、重度肺動脈性肺高血圧症である。いくつかの実施態様において、肺高血圧症は、世界保健機構[WHO]機能分類II、III、またはIVの肺動脈性肺高血圧症である。いくつかの実施態様において、肺高血圧症は、WHO機能分類IIの肺動脈性肺高血圧症である。いくつかの実施態様において、肺高血圧症は、WHO機能分類IIIの肺動脈性肺高血圧症である。いくつかの実施態様において、肺高血圧症は、WHO機能分類IVの肺動脈性肺高血圧症である。
【0076】
中枢神経系障害
中枢神経系疾患は、中枢神経系障害としても知られているが、中枢神経系(CNS)を集合的に形成する、脳または脊髄の構造または機能に影響を与える一連の神経学的障害である。
【0077】
いくつかの実施態様において、CNS障害は神経膠腫である。いくつかの実施態様において、CNS障害は神経膠芽腫である。いくつかの実施態様において、CNS障害はてんかんである。いくつかの実施態様において、CNS障害は皮質異形成(例えば、限局性皮質異形成)である。いくつかの実施態様において、CNS障害は結節性硬化症、脳腫瘍、脆弱X症候群、ダウン症、レット症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病から成る群から選択される。
【0078】
いくつかの実施態様において、CNS障害はてんかんである。いくつかの実施態様において、個体はてんかん手術を受けた。いくつかの実施態様において、個体はてんかん手術後30日以内に少なくとも5回の発作を有するか、あるいはてんかん手術後に1週間発作がない状態を有していない。いくつかの実施態様において、当該方法はさらに、有効量の抗てんかん剤を個体に投与することを含む。
【0079】
いくつかの実施態様において、CNS障害は神経膠芽腫である。いくつかの実施態様において、神経膠芽腫は再発性神経膠芽腫である。いくつかの実施態様において、神経膠芽腫は新たに診断された神経膠芽腫である。いくつかの実施態様において、個体はナノ粒子の投与開始前に、新たに診断された神経膠芽腫の外科的切除を受けている。
【0080】
ミトコンドリア病
ミトコンドリアは、ほとんどの真核細胞に存在する細胞小器官である。ミトコンドリアは、ATPの生成に加えて、細胞の恒常性、シグナル伝達経路、およびステロイド合成などの、他の細胞機能にも関与する。
【0081】
ミトコンドリア関連障害(すなわち、ミトコンドリア病)を有する個人は、限定されないが、運動失調、腎障害、肝障害、代謝疾患、ミオパチー、ニューロパチー、脊髄症、脳症、酸化的リン酸化障害、老化障害、自閉症スペクトラム障害、慢性炎症性疾患、糖尿病、および脂肪酸酸化障害を有する個体などを、本明細書に開示される方法によって治療することができる。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、ミトコンドリアDNA変異関連障害を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、X染色体変異関連障害を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、核DNA変異関連障害を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、母性遺伝性リー症候群などのリー症候群を有する。いくつかの実施態様において、リー症候群は小児発症リー症候群、若年期発症リー症候群、または成年期発症リー症候群である。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、MELAS症候群を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、NARP症候群を有する。
【0082】
代謝障害、限定されないが、細胞のグルコース消費に関連する障害(例えば、1つ以上の組織における、異常に高い細胞のグルコース消費)、インスリン抵抗性関連障害、低血糖、自己免疫性低血糖、I型糖尿病、II型糖尿病、およびメタボリック症候群などを有する個体は、本明細書に記載される方法によって治療することができる。
【0083】
本明細書に記載の方法は、以下の目的のうちいずれか1つ以上のために用いることができる:ミトコンドリア関連障害を有する個人において、1つ以上の症状を軽減すること、ミトコンドリア関連障害を有する個人において、1つ以上の症状を緩和すること、ミトコンドリア関連障害を有する個人において、1つ以上の症状を予防すること、ミトコンドリア関連障害を有する個人において、1つ以上の症状を治療すること、ミトコンドリア関連障害を有する個人において、1つ以上の症状を改善すること、およびミトコンドリア関連障害を有する個人において、1つ以上の症状の発症を遅延させること。
【0084】
本明細書において用いられる用語「ミトコンドリア関連障害」および「ミトコンドリア病」は、ミトコンドリアの機能不全によって引き起こされる任意の疾患または障害をいう。ミトコンドリア関連障害は、複雑な様々な症状を引き起こしうる。ミトコンドリア関連障害の症状としては、例えば、筋力低下、筋けいれん、発作、食物逆流、学習障害、難聴、低身長、眼筋の麻痺、糖尿病、心臓の問題、および卒中様エピソードが挙げられる。ミトコンドリア関連障害の症状は、生命を脅かすものからほとんど知覚できないものまで重症度の範囲がありうる。
【0085】
ミトコンドリア関連障害を有する個体は、遺伝子型、表現型の発現、および/または1つ以上の症状に基づいて、ミトコンドリア関連障害の1つ以上のサブセットに分類することができる。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、以下の1つ以上を有する:運動失調、腎障害、肝障害、代謝障害、ミオパチー、ニューロパチー、脊髄症、脳症、酸化的リン酸化障害、老化障害、自閉症スペクトラム障害、慢性炎症性疾患、または脂肪酸酸化障害。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、以下の1つ以上を有する:運動失調、腎障害、肝障害、代謝障害、ミオパチー、ニューロパチー、脊髄症、脳症、または酸化的リン酸化障害。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、以下の1つ以上を有する:老化障害、自閉症スペクトラム障害、慢性炎症性疾患、糖尿病、または脂肪酸酸化障害。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、少なくとも1つの運動失調を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、少なくとも脊髄症および脳症を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、少なくともニューロパチー、脊髄症、および脳症を有する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリア関連障害を有する個体は、少なくともミオパチーおよびニューロパチーを有する。
【0086】
癌の治療方法
本明細書に記載される方法は、1つ以上の遺伝子(TSC1、TSC2、RPS6、PTEN、TP53、RB1、ATRX、またはFAT1など)において、mTOR活性化異常を有する癌を有する個体を治療するために用いられうる。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常を有する個人における癌の治療方法が存在する。癌を有する個体は、1つ以上の遺伝子(TSC1、TSC2、RPS6、PTEN、TP53、RB1、ATRX、またはFAT1など)において、mTOR活性化異常を有することに基づいて、本明細書に記載の方法による治療のために選択されうる。いくつかの実施態様において、個体は、TSC2においてmTOR活性化異常を有することに基づいて、治療のために選択される。
【0087】
いくつかの実施態様において、個体における癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)は、mTOR阻害剤および担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物を個体に皮下投与することなどの、本明細書に記載される方法によって治療することができ、ここで、個体は、TSC2においてmTOR活性化異常を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、個体における癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)は、mTOR阻害剤および担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物を個体に皮下投与することなどの、本明細書に記載の方法によって治療することができ、ここで、個体はTSC2においてmTOR活性化異常を有する。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2における変異を含む。いくつかの実施態様において、変異は、スプライス部位変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、およびミスセンス変異から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、一塩基多型(SNV)を含む。いくつかの実施態様において、SNVは、C1503T、C2743G、C5383T、C3755G、G760T、C3442T、G880A、T707C、A4949Gから成る群から選択される変異、または1405-1409、1960-1970、4999、5002、3521、5208、5238-5255位における1つ以上のいずれかのアミノ酸の欠失を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2のコピー数多型を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、機能喪失型変異である。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化変異は、TSC2の異常な発現量を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2によってコードされるタンパク質の異常な活性化量を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2の異型接合の喪失を含む。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はリムス薬である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンまたはその誘導体である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。いくつかの実施態様において、担体タンパク質はアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)である。いくつかの実施態様において、それぞれの投与のための組成物中のmTOR阻害剤の用量は、約0.1mg/m2から約100mg/m2(例えば、約0.1mg/m2から約10mg/m2、約10mg/m2から約50mg/m2、約50mg/m2から約100mg/m2、約75mg/m2から約100mg/m2)である。いくつかの実施態様において、当該方法は、約2週間にわたり毎週個体にナノ粒子組成物を皮下投与し、次いで約1週間の休止期間を伴うことを含む。いくつかの実施態様において、癌は、膵神経内分泌腫瘍、子宮体癌、乳癌、リンパ脈管筋腫症(LAM)、前立腺癌、肝細胞癌、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、子宮体癌、卵巣癌、婦人科系癌、肉腫、血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)、ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、癌はPEComaである。いくつかの実施態様において、個体は、癌の性質に関係なく、TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、個体はTSC1異常(例えば、TSC1変異)を有していない。
【0088】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤および担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物を、個体に皮下投与することなどの、個体において癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)を治療する方法が、本明細書において提供され、ここで、個体はTSC2異常(例えば、TSC2変異)を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤および担体タンパク質を含むナノ粒子を含む、有効量の組成物を個体に皮下投与することなどの、個体において癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)を治療する方法が、本明細書において提供され、ここで、個体は、a)TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有すること、およびb)RPS6異常(例えば、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量(例えば、S235、S236、S240、および/またはS244残基におけるリン酸化))を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤および担体タンパク質を含むナノ粒子を含む、有効量の組成物を個体に皮下投与することなどの、個体において癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)を治療するための方法が、本明細書において提供され、ここで、個体は、a)TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有すること、およびb)TSC1変異を有していないことに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤および担体タンパク質を含むナノ粒子を含む、有効量の組成物を個体に皮下投与することなどの、個体において癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)を治療する方法が、本明細書において提供され、ここで、個体は、a)TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有すること、b)TSC1変異を有していないこと、およびc)RPS6異常(例えば、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量(例えば、S235、S236、S240、および/またはS244残基におけるリン酸化))を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、RPS6におけるmTOR活性化異常は、リン酸化されたS6(pS6)(例えば、S235、S236、S240、および/またはS244残基におけるリン酸化)の活性化状態を含む。いくつかの実施態様において、変異は、スプライス部位変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、およびミスセンス変異から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はリムス薬である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンまたはその誘導体である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。いくつかの実施態様において、担体タンパク質はアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)である。いくつかの実施態様において、それぞれの投与のための組成物中のmTOR阻害剤の用量は、約0.1mg/m2から約100mg/m2(例えば、約0.1mg/m2から約10mg/m2、約10mg/m2から約50mg/m2、約50mg/m2から約100mg/m2、約75mg/m2から約100mg/m2)である。いくつかの実施態様において、当該方法は、ナノ粒子組成物を約2週間の間毎週、次いで約1週間の休止期間を伴って、個体に皮下投与することを含む。いくつかの実施態様において、癌は、膵神経内分泌腫瘍、子宮体癌、乳癌、リンパ脈管筋腫症(LAM)、前立腺癌、肝細胞癌、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、子宮体癌、卵巣癌、婦人科系癌、肉腫、血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)、ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、癌はPEComaである。いくつかの実施態様において、個体は、癌の性質に関係なく、TSC2異常およびRPS6異常を有することに基づいて、治療のために選択される。
【0089】
いくつかの実施態様において、ラパマイシンまたはその誘導体、およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を、個体に皮下投与することなどの、個体における癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)の治療方法が本明細書において提供され、ここで、個体は、a)TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有すること、およびb)RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量(例えば、S235、S236、S240、および/またはS244残基におけるリン酸化)を有することに基づいて、治療のために選択され、ここで、それぞれの投与について組成物中のラパマイシンまたはその誘導体の用量は、約0.1mg/m2から約100mg/m2(例えば、約0.1mg/m2から約10mg/m2、約10mg/m2から約25mg/m2、約25mg/m2から約100mg/m2、約50mg/m2から約100mg/m2、約75mg/m2から約100mg/m2)であり、ここで、組成物は、約2週間の間毎週、次いで約1週間の休止期間を伴って、皮下投与される。
【0090】
いくつかの実施態様において、ラパマイシンまたはその誘導体、およびアルブミンを含むナノ粒子などの組成物を、個体に皮下投与することなどの、個体において癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、PEComa、例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)を治療する方法が、本明細書において提供され、ここで、個体は、a)TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有すること、b)TSC1変異を有しないこと、およびc)RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量(例えば、S235、S236、S240、および/またはS244残基におけるリン酸化)を有することに基づいて、治療のために選択され、ここで、それぞれの投与について、組成物中のラパマイシンまたはその誘導体の用量は、約10mg/m2から約100mg/m2(例えば、約25mg/m2から約100mg/m2、約50mg/m2から約100mg/m2、約75mg/m2から約100mg/m2)であり、ここで、組成物は、約2週間の間毎週、次いで約1週間の休止期間を伴って、皮下投与される。
【0091】
いくつかの実施態様において、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量は、リン酸化S6(pS6)の陽性状態である。いくつかの実施態様において、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量は、対照組織と比較して、癌においてS6のリン酸化量が増加している。いくつかの実施態様において、対照組織は、個体の非癌性組織に由来する。いくつかの実施態様において、対照組織は、癌を有さない別の個体の対応する組織に由来する。
【0092】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)および担体タンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む、有効量の組成物を、個体集団に皮下投与することなどの、異なる癌(例えば、進行性および/または悪性癌、例えば、局所的に進行した手術不能な癌、例えば、固形腫瘍)を有する個体集団を治療する方法が、本明細書に提供され、ここで、個体のそれぞれは、TSC2異常(例えば、TSC2変異)を有する。いくつかの実施態様において、個体はTSC1変異を有していない。
【0093】
いくつかの実施態様において、TSC2変異を有する癌を有することに基づく治療のために、個体を選択する方法が本明細書において提供され、ここで、当該治療は、ラパマイシンまたはその誘導体、およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に皮下投与することを含み、ここで、それぞれの投与について、組成物中のラパマイシンまたはその誘導体の用量は適宜、約10mg/m2から約100mg/m2(例えば、約25mg/m2から約100mg/m2、約50mg/m2から約100mg/m2、約75mg/m2から約100mg/m2)であり、ここで、組成物は適宜、約2週間の間毎週、次いで約1週間の休息期間を伴って、皮下投与される。いくつかの実施態様において、個体はTSC1変異を有しない。
【0094】
本出願によって補完される方法によって治療される癌は、TSC1、TSC2、TP53、RB1、ATRX、FAT1、PTEN、およびRPS6から成る群から選択される任意の遺伝子において、1つ以上のmTOR活性化異常を有する任意の癌でありうる。いくつかの実施態様において、癌は、TSC1、TSC2、TP53、およびRPS6から成る群から選択される任意の1つの遺伝子において、1つ以上のmTOR活性化異常を有する。いくつかの実施態様において、癌は、RPS6において少なくとも1つのmTOR活性化異常を有し、TSC1、TSC2、またはTP53において少なくとも1つのmTOR活性化異常を有する。いくつかの実施態様において、癌は、RPS6において少なくとも1つのmTOR活性化異常を有し、TSC1またはTSC2において、少なくとも1つのmTOR活性化異常を有する。
【0095】
いくつかの実施態様において、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、癌は血液癌である。
【0096】
いくつかの実施態様において、癌は進行性である。いくつかの実施態様において、癌は悪性である。いくつかの実施態様において、癌は手術不能な局所的に進行した癌である。
【0097】
いくつかの実施態様において、癌は、膵神経内分泌腫瘍、子宮体癌、乳癌、リンパ脈管筋腫症(LAM)、前立腺癌、肝細胞癌、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、子宮体癌、卵巣癌、婦人科系癌、肉腫、血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)、ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫から成る群から選択される。
【0098】
いくつかの実施態様において、癌はPEComaである。いくつかの実施態様において、癌は進行性PEComaである。いくつかの実施態様において、癌は進行性および悪性PEComaである。いくつかの実施態様において、PEComaは子宮原発性PEComaである。いくつかの実施態様において、PEComaは後腹膜原性PEComaである。いくつかの実施態様において、PEComaは腎臓原発性PEComaである。いくつかの実施態様において、PEComaは肺原発性PEComaである。いくつかの実施態様において、PEComaは骨盤原発性PEComaである。
【0099】
TSC2はツベリンとしても知られている、結節性硬化症2タンパク質、タンパク質ホスファターゼ1調節サブユニット160、TSC4、PPP1R160、およびLAMである。TSC2タンパク質は、mTORC1シグナル伝達を負に調節することによって、TSC1との複合体の一部として機能する。いくつかの実施態様において、野生型TSC2遺伝子の核酸配列は、ヒトゲノムGRCh38.p2アセンブリに従って、染色体16の前鎖上のヌクレオチド2047936位からヌクレオチド2088712位までの、Genbank登録番号NC_000016.10によって特定する。野生型TSC2遺伝子は、42個のエクソンを含む。TSC2遺伝子の変異は、42個のエクソンのいずれか1つ、または任意の組み合わせ上に生じるか、あるいはTSC2遺伝子の任意のイントロンまたは非コード領域において生じうる。
【0100】
いくつかの実施態様において、野生型TSC2タンパク質のアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_000539.2によって特定する。いくつかの実施態様において、野生型TSC2タンパク質のアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_001070651.1によって特定する。いくつかの実施態様において、野生型TSC2タンパク質のアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_001107854.1によって特定する。
【0101】
いくつかの実施態様において、野生型TSC2タンパク質をコードするcDNAの核酸配列は、Genbank登録番号NM_000548.3によって特定する。いくつかの実施態様において、野生型TSC2タンパク質をコードするcDNAの核酸配列は、Genbank登録番号NM_001077183.1によって特定する。いくつかの実施態様において、野生型TSC2タンパク質をコードするcDNAの核酸配列は、Genbank登録番号NM_001114382.1によって特定する。
【0102】
いくつかの実施態様において、個体は、TSC2においてmTOR活性化異常を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常はTSC2における変異を含む。いくつかの実施態様において、変異は、スプライス部位変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、およびミスセンス変異から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は一塩基多型(SNV)を含む。いくつかの実施態様において、SNVは、C1503T、C2743G、C5383T、C3755G、G760T、C3442T、G880A、T707C、A4949Gから成る群から選択される変異、または1405-1409、1960-1970、4999、5002、3521、5208、5238-5255位における任意の1つ以上のアミノ酸の欠失を含む。
【0103】
いくつかの実施態様において、変異は2点変異である。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は機能喪失型変異である。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常はホモ接合型欠失を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2のコピー数多型を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2の異常な発現量を含む。いくつかの実施態様において、TSC2におけるmTOR活性化異常は、TSC2によってコードされたタンパク質の異常な活性化量を含む。
【0104】
リボソームタンパク質S6(RPS6)は、S6としても知られている。リボソームは、タンパク質合成を触媒する細胞小器官であり、40S小サブユニットおよび60S大サブユニットから成る。これらのサブユニットは合わせて、4つのRNA種と約80の構造的に異なるタンパク質から構成される。この遺伝子は、40Sサブユニットの構成要素である細胞質リボソームタンパク質をコードしている。このタンパク質は、リボソームタンパク質のS6Eファミリーに属する。これはリボソームにおけるタンパク質キナーゼの主要な基質であり、5つのC末端セリン残基のサブセットが、異なるタンパク質キナーゼによってリン酸化されている。リン酸化は、成長因子、腫瘍増殖剤、および分裂促進因子などの様々な刺激によって誘導される。脱リン酸化は成長停止時に生じる。このタンパク質は、mRNAの特定のクラスの選択的翻訳によって、細胞成長および増殖の制御に寄与しうる。リボソームタンパク質をコードする遺伝子に典型的であるように、この遺伝子の多くの処理された偽遺伝子がゲノム上に散在して存在する。
【0105】
いくつかの実施態様において、野生型RPS6遺伝子の核酸配列は、ヒトゲノムのGRCh38.p13アセンブリに従って、染色体9の前鎖上のヌクレオチド19375715位からヌクレオチド19380236位までの、Genbank登録番号NC_000009.12によって特定する。野生型RPS6遺伝子は、6つのエクソンを含む。RPS6遺伝子の変異は、6つのエクソンのいずれか1つまたは任意の組み合わせ、またはRPS6遺伝子の任意のイントロンまたは非コード領域において生じうる。
【0106】
いくつかの実施態様において、野生型RPS6タンパク質のアミノ酸配列は、Genbank登録番号NM_001010.3によって特定する。
【0107】
いくつかの実施態様において、個体は、RPS6においてmTOR活性化異常を有することに基づいて、治療のために選択される。いくつかの実施態様において、RPS6におけるmTOR活性化異常は、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量(S235、S236、S240、および/またはS244残基におけるリン酸化)を含む。いくつかの実施態様において、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量は、リン酸化S6(pS6)の陽性状態である。いくつかの実施態様において、RPS6によってコードされるタンパク質の異常なリン酸化量は、参照組織と比較して、癌において増加したS6のリン酸化である。いくつかの実施態様において、参照組織は個体の非癌性組織に由来する。いくつかの実施態様において、参照組織は、癌を有さない別の個体における対応する組織に由来する。S6のリン酸化状態は、S6におけるリン酸化された残基に結合する抗体(例えば、Ser235および236においてリン酸化されている場合にのみ、リボソームタンパク質S6の内在量を検出する抗体)を用いた、IHC染色によって評価することができる。いくつかの実施態様において、RPS6の発現量は、免疫組織化学によって評価する。いくつかの実施態様において、RPS6におけるmTOR活性化異常は、RPS6の異常な発現量を含む。
【0108】
mTOR阻害剤
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される方法は、mTOR阻害剤のナノ粒子阻害剤の皮下投与を含む。mTORは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/Akt(タンパク質キナーゼB)経路の下流にあるセリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼであり、細胞の生存、増殖、ストレス、および代謝の重要な調節因子である。mTOR経路の調節不全は、多くのヒトの癌において発見されており、mTOR阻害は、腫瘍の進行に対して有意な阻害性効果を生じた。
【0109】
哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)(ラパマイシンまたはFK506結合性タンパク質12-ラパマイシ関連タンパク質1(FRAP1)の機能的標的としても知られている)は、2つの異なる複合体、mTOR複合体1(mTORC1)およびmTOR複合体2(mTORC2)に存在する、非定型セリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。mTORC1は、mTOR、mTORの調節関連タンパク質(ラプター)、哺乳類致死SEC13タンパク質8(MLST8)、PRAS40、およびDEPTORから構成される(Kim et al. (2002). Cell 110: 163-75; Fang et al. (2001). Science 294 (5548): 1942-5)。mTORC1は、主要な4つのシグナル入力:栄養素(アミノ酸およびホスファチジン酸など)、増殖因子(インスリン)、エネルギーおよびストレス(低酸素症およびDNA損傷など)を統括する。アミノ酸の利用は、RagおよびRagulator(LAMTOR1-3)増殖因子に関する経路によってmTORC1にシグナルが伝えられ、ホルモン(例えば、インスリン)は、Aktを介してmTORC1にシグナルを伝え、これによってTSC2が不活性化され、mTORC1の阻害を防ぐ。あるいは、ATP量が低いと、TSC2のAMPK依存性活性化およびラプターのリン酸化が生じ、mTORC1シグナル伝達タンパク質が減少する。
【0110】
活性mTORC1は、下流標的(4E-BP1およびp70 S6キナーゼ)のリン酸化を介したmRNAの転写、オートファジーの抑制(Atg13、ULK1)、リボソーム生合成、および転写活性化などの下流の数多くの生物学的効果を有し、ミトコンドリアによる代謝または脂肪生成につながる。したがって、mTORC1活性化は、条件が良好な場合には細胞成長を促進し、あるいはストレス時または条件が不利な場合には異化プロセスを促進する。
【0111】
mTORC2は、mTOR、ラパマイシン非感受性mTORコンパニオン(RICTOR)、GβL、および哺乳類ストレス活性化タンパク質キナーゼ相互作用タンパク質1(mSIN1)から構成される。多くの上流シグナルおよび細胞機能について定義されている(上記を参照されたい)mTORC1とは対照的に、mTORC2の生物学について相対的にはほとんど知られていない。mTORC2は、F-アクチンストレスファイバー、パキシリン、RhoA、Rac1、Cdc42、およびタンパク質キナーゼCα(PKCα)の刺激を介して、細胞骨格を制御する。mTORC2成分をノックダウンすると、アクチンの重合化に影響を及ぼし、細胞の形態を乱すことが観察されている(Jacinto et al. (2004). Nat. Cell Biol. 6, 1122-1128; Sarbassov et al. (2004). Curr. Biol. 14, 1296-1302)。これは、mTORC2がタンパク質キナーゼCα(PKCα)のリン酸化、パキシリンのリン酸化、および接着斑への再局在化、並びにRhoAおよびRac1のGTP負荷を促進することによって、アクチン細胞骨格を制御することを示唆している。mTORC2がこれらのプロセスを制御する分子メカニズムは明らかになっていない。
【0112】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はmTORC1の阻害剤である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はmTORC2の阻害剤である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はmTORC1およびmTORC2の両方の阻害剤である。
【0113】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はリムス薬である。リムス薬の例としては、限定されないが、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、デフォロリムス(MK-8669)、ゾタロリムス(ABT-578)、ピメクロリムス、およびタクロリムス(FK-506)が挙げられる。いくつかの実施態様において、リムス薬は、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、デフォロリムス(MK-8669)、ゾタロリムス(ABT-578)、ピメクロリムス、およびタクロリムス(FK-506)から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤は、CC-115またはCC-223などのmTORキナーゼ阻害剤である。
【0114】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシンである。ラパマイシンは、FKBP-12と複合体を形成し、mTORC1に結合することによってmTOR経路を阻害する、マクロライド抗生物質である。
【0115】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシン(シロリムス)、BEZ235(NVP-BEZ235)、エベロリムス(RAD001、Zortress、サーティカン、およびアフィニトールとしても知られている)、AZD8055,テムシロリムス(CCI-779およびトーリセルとしても知られている)、CC-115、CC-223、PI-103、Ku-0063794、INK128、AZD2014、NVP-BGT226、PF-04691502、CH5132799、GDC-0980(RG7422)、トリン1、WAY-600、WYE-125132、WYE-687、GSK2126458、PF-05212384(PKI-587)、PP-121、OSI-027、Palomid529、PP242、XL765、GSK1059615、WYE-354、およびリダフォロリムス(デフォロリムスとしても知られている)から成る群から選択される。
【0116】
BEZ235(NVP-BEZ235)は、mTORC1触媒阻害剤であるイミダゾキノリン誘導体である(Roper J, et al. PLoS One, 2011, 6(9), e25132)。エベロリムスは、ラパマイシンの40-O-(2-ヒドロキシエチル)誘導体であり、シクロフィリンFKBP-12に結合し、またmTORC1と複合体を形成する。AZD8055は、mTORC1のリン酸化(p70S6Kおよび4E-BP1)を阻害する小分子である。テムシロリムスは、FK506結合タンパク質と複合体を形成し、mTORC1複合体に存在する場合、mTORの活性化を阻害する小分子である。PI-103は、ラパマイシン-感受性(mTORC1)複合体の活性化を阻害する小分子である(Knight et al. (2006) Cell. 125: 733-47)。KU-0063794は、Ser2448におけるmTORC1のリン酸化を、用量依存的および時間依存的に阻害する小分子である。INK128、AZD2014、NVP-BGT226、CH5132799、WYE-687は、それぞれmTORC1の小分子阻害剤である。PF-04691502は、mTORC1活性を阻害する。GDC-0980は、クラスI PI3キナーゼおよびTORC1を阻害する、経口により生物学的に利用可能な小分子である。トリン1は、mTORの強力な小分子阻害剤である。WAY-600は、強力な、ATP競合性かつ選択的なmTORの阻害剤である。WYE-125132は、ATP競合性のmTORC1の小分子阻害剤である。GSK2126458は、mTORC1の阻害剤である。PKI-587は、PI3Kα、PI3Kγ、およびmTORの非常に強力な二重阻害剤である。PP-121は、PDGFR、Hck、mTOR、VEGFR2、Src、およびAblのマルチ標的阻害剤である。OSI-027は、mTORC1およびmTORC2の選択的かつ強力な二重阻害剤であり、それぞれ22nMおよび65nMのIC50を有する。Palomid529は、ABCB1/ABCG2への親和性を有さず、脳透過性が良好な、mTORC1の小分子阻害剤である(Lin et al. (2013) Int J Cancer DOI: 10.1002/ijc. 28126(印刷前に電子出版))。PP242は選択的mTOR阻害剤である。XL765は、mTOR、p110α、p110β、p110γ、およびp110δに対する、mTOR/PI3kの二重阻害剤である。GSK1059615は、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kδ、PI3Kγ、およびmTORの新規な二重阻害剤である。WYE-354は、HEK293細胞(0.2μM~5μM)およびHUVEC細胞(10nM~1μM)においてmTORC1を阻害する。WYE-354は、mTORの強力で特異的な、ATP競合性阻害剤である。デフォロリムス(リダフォロリムス、AP23573、MK-8669)は、選択的mTOR阻害剤である。
【0117】
ナノ粒子組成物
本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含む(様々な実施態様において、実質的にそれらから成る、またはそれらから成る)、ナノ粒子を含む。難水溶性薬物(マクロライドなど)のナノ粒子は、例えば、US5916596A;US6506405B1;US6749868B1、US6537579B1、US7820788B2、およびUS8911786B2、またUS2006/0263434A1、US2007/0082838A1、およびW02008/137148A2において開示され、これらのそれぞれは、その全体が引用によって本明細書に援用される。
【0118】
本明細書において、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む医薬組成物などの組成物が開示される。mTOR阻害剤は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)を阻害する化合物から選択される薬剤である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤はラパマイシン(シロリムスとしても知られている)またはその類似体である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンおよびその類似体などのリムス薬である。リムス薬の例としては、限定されないが、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、デフォロリムス(MK-8669)、ゾタロリムス(ABT-578)、ピメクロリムス、およびタクロリムス(FK-506)が挙げられる。いくつかの実施態様において、リムス薬は、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、デフォロリムス(MK-8669)、ゾタロリムス(ABT-578)、ピメクロリムス、およびタクロリムス(FK-506)から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤は、CC-115またはCC-223などのmTORキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシン(シロリムス)、BEZ235(NVP-BEZ235)、エベロリムス(RAD001、Zortress、サーティカン、およびアフィニトールとしても知られている)、AZD8055,テムシロリムス(CCI-779およびトーリセルとしても知られている)、CC-115、CC-223、PI-103、Ku-0063794、INK128、AZD2014、NVP-BGT226、PF-04691502、CH5132799、GDC-0980(RG7422)、トリン1、WAY-600、WYE-125132、WYE-687、GSK2126458、PF-05212384(PKI-587)、PP-121、OSI-027、Palomid529、PP242、XL765、GSK1059615、WYE-354、およびリダフォロリムス(デフォロリムスとしても知られている)から成る群から選択される。
【0119】
いくつかの実施態様において、医薬組成物はさらに、組成物の乾燥形態の溶解を向上させるため、および/または組成物の安定性を向上させるために薬剤を含む。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤は糖類を含む。糖類は、限定されないが、単糖、二糖、多糖、およびそれらの誘導体または修飾体でありうる。糖類は、例えば、マンニトール、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、デキストロース、またはトレハロースのいずれかでありうる。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤はグリシンを含む。そのため、本発明は、ある局面において、a)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子、並びにb)糖類を含む、個体への皮下投与に適切な、医薬組成物を提供する。
【0120】
いくつかの実施態様において、糖類は、糖類を含まないナノ粒子組成物と比較して、組成物中のナノ粒子の安定性を向上させるのに有効な分量で存在する。いくつかの実施態様において、糖類は、糖類を含まない組成物と比較して、ナノ粒子の濾過性を向上させるのに有効な分量で存在する。
【0121】
いくつかの実施態様において、糖類は、医薬組成物の溶解度を向上させるのに有効な分量で存在する。いくつかの実施態様において、溶解度の向上は、再構成溶液の添加の後、ナノ粒子組成物の乾燥形態の溶解速度を向上させることを含む。
【0122】
いくつかの実施態様において、糖類は、ナノ粒子組成物を皮下投与した場合、投与後の副作用の発生率または重症度を軽減する分量で存在する。例えば、いくつかの実施態様において、副作用は発疹であり、組成物は、mTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子であり、糖類は、ナノ粒子組成物の皮下投与の後、発疹の発症率を減少させる分量で存在する。
【0123】
いくつかの実施態様において、医薬組成物はmTOR阻害剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物中のアルブミン対mTOR阻害剤の重量比は、約0.01:1から約100:1である。いくつかの実施態様において、組成物はmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物中のアルブミン対mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、約18:1以下(例えば、約1:1から約18:1、約2:1から約15:1、約3:1から約12:1、約4:1から約10:1、約5:1から約9:1、および約9:1のいずれか)である。いくつかの実施態様において、組成物は、ラパマイシン、またはその誘導体、およびアルブミンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物中のアルブミン対ラパマイシンまたはその誘導体の重量比は、約18:1以下(例えば、約1:1から約18:1、約2:1から約15:1、約3:1から約12:1、約4:1から約10:1、約5:1から約9:1、および約9:1のいずれか)である。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は、アルブミンでコーティングされている。
【0124】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の粒子(ナノ粒子など)は、約1000、900、800、700、600、500、400、300、200、150、120、および100nmのいずれか以下の直径の平均値または中央値を有する。いくつかの実施態様において、粒子の平均直径または中央値は、約200nm以下である。いくつかの実施態様において、粒子の平均直径または中央値は、約20nmから約400nmの間である。いくつかの実施態様において、粒子の平均直径または中央値は、約40nmから約200nmの間である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば約100nmである。いくつかの実施態様において、粒子の平均直径は、120nm以下である。いくつかの実施態様において、粒子の平均直径は、約100-120nm、例えば、約100nmである。いくつかの実施態様において、粒子は無菌濾過可能である。平均粒子径の決定方法は、当技術分野において既知であり、例えば、動的光散乱法(DLS)は、マイクロメートル以下の大きさの粒子のサイズ決定において、習慣的に用いられている。International Standard ISO22412 Particle Size Analysis - Dynamic Light Scattering, International Organisation for Standardisation (ISO) 2008 and Dynamic Light Scattering Common Terms Defined, Malvern Instruments Limited, 2011.いくつかの実施態様において、粒子径は、組成物中のナノ粒子の重量加重平均粒子径(Dv50)として測定される。
【0125】
本明細書に記載される組成物は、mTOR阻害剤の安定な水性懸濁液、例えば、約0.1から約200mg/ml、約0.1から約150mg/ml、約0.1から約100mg/ml、約0.1から約50mg/ml、約0.1から約20mg/ml、約1から約10mg/ml、約2mg/mlから約8mg/ml、約4から約6mg/ml、および約5mg/mlのいずれかの濃度における、mTOR阻害剤の安定な水性懸濁液でありうる。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤の濃度は、少なくとも約0.2mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、または200mg/mlのいずれかである。
【0126】
いくつかの実施態様において、組成物は、再構成、再懸濁、または再水和して、一般にmTOR阻害剤およびアルブミンなどのナノ粒子の安定な水性懸濁液を形成することのできる、(凍結乾燥などの)乾燥組成物である。いくつかの実施態様において、組成物は、乾燥組成物を再構成または再懸濁させることによって得られる、液体(水性など)組成物である。いくつかの実施態様において、組成物は、乾燥(凍結乾燥など)することができる中間体液体(水性など)組成物である。
【0127】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、それによってコーティングされている)。いくつかの実施態様において、組成物は、ナノ粒子および非ナノ粒子の両方の形態(例えば、溶液の形態、または可溶性アルブミン/ナノ粒子複合体の形態)におけるmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含み、ここで、組成物中の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%のいずれかのmTOR阻害剤は、ナノ粒子の形態である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は、ナノ粒子の約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%のいずれか以上を占める。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は、非ポリマー性マトリックスを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は、ポリマー材料(ポリマー性マトリックスなど)を実質的に含まない、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)のコアを含む。
【0128】
いくつかの実施態様において、組成物は、組成物のナノ粒子および非ナノ粒子部分の両方においてアルブミンを含み、ここで、組成物中の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%のいずれかのアルブミンは、組成物中の非ナノ粒子部分に存在する。
【0129】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物中のアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)およびmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、約18:1以下、例えば、約15:1以下など、例えば、約10:1などである。いくつかの実施態様において、組成物中のアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)およびmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、約1:1から約18:1、約2:1から約15:1、約3:1から約13:1、約4:1から約12:1、約5:1から約10:1のいずれか1つの範囲内である。いくつかの実施態様において、組成物のナノ粒子部分におけるアルブミンおよびmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:9、1:10、または1:15以下のいずれかである。いくつかの実施態様において、組成物中のアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)およびmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、以下のいずれか1つである:約1:1から約18:1、約1:1から約15:1、約1:1から約12:1、約1:1から約10:1、約1:1から約9:1、約1:1から約8:1、約1:1から約7:1、約1:1から約6:1、約1:1から約5:1、約1:1から約4:1、約1:1から約3:1、約1:1から約2:1、約1:1から約1:1。
【0130】
本明細書に記載のナノ粒子は、乾燥製剤(凍結乾燥組成物など)で存在するか、あるいは、再構成溶液などの生体適合性媒体中に懸濁して存在しうる。適切な生体適合性媒体としては、限定されないが、水、緩衝水性媒体、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アミノ酸の適宜緩衝溶液、タンパク質の適宜緩衝溶液、糖の適宜緩衝溶液、ビタミンの適宜緩衝溶液、合成ポリマーの適宜緩衝溶液、脂質含有エマルジョンなどが挙げられる。
【0131】
いくつかの実施態様において、薬学的に許容可能な担体は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含む。アルブミンは、天然由来のもの、または合成的に調製したものでもよい。いくつかの実施態様において、アルブミンはヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンである。いくつかの実施態様において、アルブミンは組み換えアルブミンである。
【0132】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、Mr 65Kの高可溶性球状タンパク質であり、585個のアミノ酸から成る。HSAは、血漿中の最も豊富なタンパク質であり、ヒト血漿のコロイド浸透圧の70-80%を占める。HSAのアミノ酸配列は、計17個のジスルフィド架橋、1つの遊離チオール(Cys34)、および1つのトリプトファン(Trp214)を含む。HSA溶液の静脈内使用は、血液量減少性ショックの予防および治療(例えば、Tullis, JAMA, 237: 355-360, 460-463, (1977)およびHouser et al., Surgery, Gynecology and Obstetrics, 150: 811-816 (1980)を参照されたい)、新生児高ビリルビン血症の治療における交換輸血との併用(例えば、Finlayson, Seminars in Thrombosis and Hemostasis, 6, 85-120, (1980)を参照されたい)について適応する。ウシ血清アルブミンなどの、他のアルブミンが意図される。そのような非ヒトアルブミンの使用は、例えば、獣医学(飼育動物および農業の文脈など)などの、非ヒト哺乳動物におけるこれらの組成物の使用の文脈において適切でありうる。ヒト血清アルブミン(HSA)は、多くの疎水性結合部位(HSAの内因性リガンドである脂肪酸の合計8個)を有し、様々な薬物、特に中性および負に帯電した疎水性化合物に結合する(Goodman et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th ed, McGraw-Hill New York (1996))。2つの高親和性結合部位は、HSAのサブドメインIIAおよびIIIAにおいて提示され、極性リガンド機能の付着点として機能する表面近くに帯電リシンおよびアルギニン残基を有する、非常に細長い疎水性ポケットである(例えば、Fehske et al., Biochem. Pharmcol., 30, 687-92 (198a), Vorum, Dan. Med. Bull., 46, 379-99 (1999), Kragh-Hansen, Dan. Med. Bull., 1441, 131-40 (1990), Curry et al., Nat. Struct. Biol., 5, 827-35 (1998), Sugio et al., Protein. Eng., 12, 439-46 (1999), He et al., Nature, 358, 209-15 (199b), and Carter et al., Adv. Protein. Chem., 45, 153-203 (1994)を参照されたい)。ラパマイシンおよびプロポフォールは、HSAに結合することが示されている(例えば、Paal et al., Eur. J. Biochem., 268(7), 2187-91 (200a), Purcell et al., Biochim. Biophys. Acta, 1478(a), 61-8 (2000), Altmayer et al., Arzneimittelforschung, 45, 1053-6 (1995), and Garrido et al., Rev. Esp. Anestestiol. Reanim., 41, 308-12 (1994)を参照されたい)。
【0133】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される組成物は、クレモフォール(またはポリオキシエチル化ヒマシ油、例えば、クレモフォールEL(登録商標)(BASF))などの、界面活性剤を実質的に含まない(含まないなど)。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)は、界面活性剤を実質的に含まない(含まないなど)。mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)が個体に投与される場合、組成物中のクレモフォールまたは界面活性剤の分量が、個体において1つ以上の副作用を引き起こすのに十分でない場合、組成物は「クレモフォールを実質的に含まない」、あるいは「界面活性剤を実質的に含まない」。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)は、約20%、15%、10%、7.5%、5%、2.5%、または1%のいずれか1つ未満の有機溶媒または界面活性剤を含む。いくつかの実施態様において、アルブミンはヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンである。いくつかの実施態様において、アルブミンは組み換えアルブミンである。
【0134】
本明細書に記載される組成物中のアルブミンの分量は、組成物中の他の成分に応じて変化する。いくつかの実施態様において、組成物は、水性懸濁液において、例えば、安定なコロイド懸濁液(ナノ粒子の安定な懸濁液など)の形態において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を安定化させるのに十分な分量においてアルブミンを含む。いくつかの実施態様において、アルブミンは、水性溶媒中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の沈降速度を低下させる分量である。粒子含有組成物の場合、アルブミンの分量はまた、mTOR阻害剤のナノ粒子のサイズおよび密度に依存する。
【0135】
mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)は、少なくとも約0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60、または72時間のいずれかなどの長期間にわたって、水性溶媒中に懸濁化されているままである場合(目に見える沈殿または沈降がないなど)、水性懸濁液中で「安定化」される。懸濁液は一般に、必ずしもではないが、個体(ヒトなど)への投与に適切である。懸濁液の安定性は一般に(必ずしもではないが)、保管温度(室温(20-25℃など)、または冷蔵条件(4℃など)など)において評価する。例えば、懸濁液の調整の約15分後において、肉眼で見える、あるいは1000倍において光学顕微鏡を用いて観察した場合に、凝結または粒子の凝集を示さない場合、懸濁液は保管温度において安定である。安定性はまた、約40℃以上の温度などの加速試験条件下で評価することができる。
【0136】
いくつかの実施態様において、アルブミンは、特定の濃度において、水性懸濁液中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を安定化するのに十分な分量で存在する。例えば、組成物中のmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の濃度は、約0.1から約100mg/ml、例えば、約0.1から約50mg/ml、約0.1から約20mg/ml、約1から約10mg/ml、約2mg/mlから約8mg/ml、約4から約6mg/ml、または約5mg/mlのいずれかなどである。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の濃度は、少なくとも約1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかである。いくつかの実施態様において、組成物が界面活性剤(クレモフォールなど)を含まない、または実質的に含まないように、アルブミンは、界面活性剤(クレモフォールなど)の使用を回避する分量で存在する。
【0137】
いくつかの実施態様において、組成物は液体形態において、約0.1%から約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)、または約50%(w/v))のアルブミンを含む。いくつかの実施態様において、組成物は液体形態において、約0.5%から約5%(w/v)のアルブミンを含む。
【0138】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物におけるアルブミン対mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、mTOR阻害剤が細胞に結合するか、あるいは細胞によって輸送されるのに十分な分量である。アルブミン対mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、異なるアルブミンおよびmTOR阻害剤の組み合わせについて最適化する必要があるが、一般に、アルブミン対mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)(w/w)の重量比は、約0.01:1から約100:1、約0.02:1から約50:1、約0.05:1から約20:1、約0.1:1から約20:1、約1:1から約18:1、約2:1から約15:1、約3:1から約12:1、約4:1から約10:1、約5:1から約9:1、または約9:1である。いくつかの実施態様において、アルブミン対mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、約18:1以下、15:1以下、14:1以下、13:1以下、12:1以下、11:1以下、10:1以下、9:1以下、8:1以下、7:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、および3:1以下のいずれかである。いくつかの実施態様において、組成物中のアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)対mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の重量比は、以下のいずれかである:約1:1から約18:1、約1:1から約15:1、約1:1から約12:1、約1:1から約10:1、約1:1から約9:1、約1:1から約8:1、約1:1から約7:1、約1:1から約6:1、約1:1から約5:1、約1:1から約4:1、約1:1から約3:1、約1:1から約2:1、約1:1から約1:1。
【0139】
いくつかの実施態様において、アルブミンは、重大な副作用なしに、組成物を個体(ヒトなど)に投与することを可能にする。いくつかの実施態様において、アルブミン(ヒト血清アルブミンまたはヒトアルブミンなど)は、ヒトへのmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の皮下投与の1つ以上の副作用を軽減するのに有効な分量である。用語、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)の皮下投与などの、投与の「1つ以上の副作用を軽減する」は、mTOR阻害剤によって引き起こされる1つ以上の望ましくない効果、並びにmTOR阻害剤の送達に用いられるビヒクル(リムス薬を注入に適したものにする溶媒など)の送達によって生じる副作用を軽減、緩和、除去、または回避することをいう。そのような副作用としては、例えば、骨髄抑制、神経毒性、過敏症、炎症、静脈刺激、静脈炎、疼痛、皮膚炎、末梢ニューロパチー、好中球減少性発熱、アナフィラキシー反応、静脈血栓症、血管外漏出、およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、これらの副作用は単なる例示であり、リムス薬(ラパマイシンなど)に関連する他の副作用または副作用の組み合わせは軽減することができる。
【0140】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は200nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm(例えば約100nm)以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば約100nmである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm(例えば約100nm)以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば約100nmである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子の平均直径または中央値は約10から約150nmである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子の平均直径または中央値は約40から約120nmである。
【0141】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約100-120nm、例えば約100nmである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約100-120nm、例えば約100nmである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子であり、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子の平均直径または中央値は約10から約150nmである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子の平均直径または中央値は約40から約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約100-120nm、例えば約100nmである。
【0142】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1または約8:1である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば約100nmである。
【0143】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nmの平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ラパマイシンおよびヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1または約8:1である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば約100nmである。
【0144】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含む、ナノ粒子を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含む、ナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約10nmから約150nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は、約40nmから約120nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は、約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は、約10nmから約150nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約40nmから約120nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば、約100nmである。
【0145】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約10nmから約150nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約40nmから約120nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm(例えば、約100nm)以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約10nmから約150nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約40nmから約120nmの平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば、約100nmである。
【0146】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされる)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nmの平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm以下)の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびラパマイシンの重量比は、約9:1または約8:1である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば約100nmである。
【0147】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nmの平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)に関連する(例えば、コーティングされている)ラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびラパマイシンの重量比は約9:1または約8:1である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば、約100nmである。
【0148】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約100-120nm、例えば約100nmである。
【0149】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約100-120nm、例えば、約100nmである。
【0150】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されるmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されたmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以上の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nmの平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびラパマイシンの重量比は、約9:1または約8:1である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は、約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約100-120nm、例えば、約100nmである。
【0151】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は、約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、アルブミン(ヒトアルブミンまたはヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているmTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nmの平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびmTOR阻害剤の重量比は約9:1以下(約9:1または約8:1など)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmTOR阻害剤ナノ粒子組成物は、ヒトアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)によって安定化されているラパマイシンを含むナノ粒子を含み、ここで、組成物はさらに糖類を含み、ここで、ナノ粒子は約150nm以下(例えば、約100nm)の平均直径を有し、ここで、組成物中のアルブミンおよびラパマイシンの重量比は、約9:1または約8:1である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約10nmから約150nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約40nmから約120nmである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の平均直径または中央値は約100-120nm、例えば、約100nmである。
【0152】
いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物はnab-ラパマイシンを含む。いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物はnab-ラパマイシンである。Nab-ラパマイシンは、直接注入可能な生理学的溶液中に分散することができる、ヒトアルブミンUSPによって安定化されているラパマイシンの製剤である。ヒトアルブミンおよびラパマイシンの重量比は約8:1から約9:1である。0.9%塩化ナトリウム注射または5%デキストロース注射など適切な水性媒体中に分散されている場合、nab-ラパマイシンはラパマイシンの安定なコロイド状懸濁液を形成する。コロイド懸濁液中のナノ粒子の平均粒子径は、約100ナノメートルである。HSAは水に容易に溶解するため、nab-ラパマイシンは、例えば、約2mg/mlから約8mg/ml、または約5mg/mlなど、希釈(0.1mg/mlのラパマイシンまたはその誘導体)から濃縮(20mg/mlのラパマイシンまたはその誘導体)までに及ぶ幅広い濃度範囲において再構成することができる。
【0153】
ナノ粒子組成物の方法は当技術分野において既知である。例えば、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)およびアルブミン(ヒト血清アルブミンまたはヒトアルブミンなど)を含むナノ粒子は、高剪断力(例えば、超音波処理、高圧均質化など)の条件下で調製することができる。これらの方法は、例えば、米国特許第5,916,596号;6,506,405号;6,749,868号、6,537,579号、7,820,788号、および8,911,786号、および米国特許公開第2007/0082838号、2006/0263434号、およびPCT出願第WO08/137148号において開示されている。
【0154】
簡単に言えば、mTOR阻害剤(ラパマイシンなど)を有機溶媒中に溶解し、当該溶液をアルブミン溶液に加えることができる。混合物を高圧均質化に付す。有機溶媒を次いで蒸発によって除去することができる。得られた分散液をさらに凍結乾燥することができる。適切な有機溶媒としては、例えば、ケトン、エステル、エーテル、塩素化溶媒、および当技術分野において既知の他の溶媒が挙げられる。例えば、有機溶媒は塩化メチレンまたはクロロホルム/エタノール(例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1の比)でありうる。
【0155】
mTOR阻害剤ナノ粒子組成物における他の成分
本明細書に記載されるナノ粒子は、他の薬剤、担体、賦形剤、希釈剤、または安定化剤を含む組成物中に存在することができる。例えば、ナノ粒子の負のゼータ電位を増加させることによって安定性を向上させるために、いくらかの負に帯電した成分を添加しうる。そのような負に帯電した成分としては、限定されないが、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸、および他から成る胆汁酸の胆汁酸塩;以下のホスファチジルコリンなどの、レシチン(卵黄)に基づくリン脂質などのリン脂質:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルコリン、およびジパルミトイルホスファチジルコリンが挙げられる。他のリン脂質は、L-α-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、および他の関連する化合物などである。負に帯電した界面活性剤または乳化剤、例えば硫酸コレステリルナトリウムなどはまた、添加剤としても適切である。
【0156】
いくつかの実施態様において、組成物はヒトへの投与に適切である。いくつかの実施態様において、組成物は、獣医学の文脈において、飼育動物および農業動物などの哺乳動物への投与に適切である。いくつかの実施態様において、組成物は再構成後に投与に適切である。
【0157】
適切な担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、限定されないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水溶液、シロップ、メチルセルロース、メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油が挙げられる。製剤はさらに、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、および/または防腐剤を含みうる。
【0158】
皮下投与に適切な製剤としては、水性および非水性等張無菌注入溶液が挙げられ、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、目的の受容者の血液に適合する製剤にするための溶質、並びに懸濁化剤、可溶化剤、濃化剤、安定化剤、および防腐剤を含みうる水性および非水性無菌懸濁液を含むことができる。この製剤は、アンプルおよびバイアルとして、単位用量または複数用量の密封容器において提示されてもよく、使用直前に無菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要とする、凍結乾燥条件において保管することもできる。即時溶液および懸濁液は、前述の種類の無菌散剤、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0159】
いくつかの実施態様において、組成物は約4.5から約9.0の範囲のpH、例えば、約5.0から約8.0、約6.5から約7.5、および約6.5から約7.0のいずれかのpH範囲などを有するように製剤化される。いくつかの実施態様において、組成物のpHは、約6以上、例えば約6.5、7、または8(約8など)のいずれか以上などに製剤化される。組成物はまた、グリセロールなどの適切な帳性変更剤の添加によって、血液と等張であるように製造されうる。
【0160】
キット
いくつかの実施態様において、様々な目的、例えば、個体における疾患の治療のために有用なキットが本明細書において提供される。本発明のキットは、皮下投与に適切なmTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)(または単位剤形および/または製品)を含む1つ以上の容器を含み、いくつかの実施態様において、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物を皮下投与するための装置をさらに含む。いくつかの実施態様において、キットはさらに、本明細書に記載のいずれかの方法に従った使用のためも説明書を含む。キットは、治療に適切な個体の選択の説明をさらに含みうる。本発明のキットにおいて提供される説明書は一般に、ラベルまたは添付文書において記載された文書(例えば、キットに含まれる紙シート)であるが、機械読み取り可能な説明書(例えば、磁気または光記憶ディスクに保持された説明書)もまた許容可能である。
【0161】
本発明のキットは、適切なパッケージ中に存在する。適切なパッケージとしては、限定されないが、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟性のあるパッケージ(例えば、密封されたマイラー(登録商標)またはビニール袋)などが挙げられる。キットは適宜、緩衝液および解釈可能な情報としてさらなる成分を提供しうる。したがって、本願はまた、バイアル(密封されたバイアルなど)、ボトル、ジャー、柔軟性のあるパッケージなどの製品を提供する。
【0162】
mTOR阻害剤ナノ粒子組成物の使用に関する説明は一般に、意図される治療のための用量、用量スケジュール、および投与経路などの情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)、またはサブ単位剤形でありうる。例えば、週1回、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週、3週、4週、6週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9か月、またはそれ以上のいずれかの長期間にわたって、個体に有効な治療を提供するために、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)の十分な用量を含むキットが提供されうる。キットはまた、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物(ラパマイシン/アルブミンナノ粒子組成物など)の複数の単位用量、および使用説明書を含んでもよく、薬局、例えば病院薬局および調剤薬局における保管および使用に十分な分量においてパッケージされている。
【0163】
キットはさらに、mTOR阻害剤ナノ粒子組成物を含む装置をさらに含みうる。説明書はさらに、装置の使用説明を含みうる。
【実施例】
【0164】
本願は、本願の例示的な実施態様として提供される、以下の限定されない実施例を参照することによってより理解されうる。以下の実施例は、実施態様を完全に説明するために提示されているが、しかしながら、出願の広い範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。本明細書において、本願のいくつかの実施態様が示され、記載されている場合、そのような実施態様が例としてのみ示されていることが明らかであるだろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に生じうる。本明細書に記載される実施態様への様々な変更が、本明細書に記載される方法の実施において用いられ得ることが理解されるべきである。
【0165】
実施例1:Sprague Dawley(SD)ラットにおけるABI-009の皮下および静脈内投与後の薬物動態研究
雌のSDラットは、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単回用量の皮下(すなわち、「SC」または「subQ」)または静脈内(IV)投与を受けた。研究デザインは、以下の表1にまとめた。生理食塩水対照(ビヒクル)と比較して、任意の時点において皮下注射部位において、投与後の炎症または毒性は観察されなかった。
【表1】
【0166】
ABI-009の皮下または静脈内注入の後、全血中のラパマイシン濃度を異なる時点において測定した。全血採取の結果を、以下の表2および3にまとめる。
【表2】
【表3】
【0167】
驚くべきことに、以下の表4にまとめられるように、静脈内投与と比較して、総曲線下面積(AUC)によって示されるように、皮下投与はバイオアベイラビリティを向上させた。わずか0.56mg/kg ABI-009の皮下投与は、IV ABI-009(1.7mg/kg)の1/3倍の用量と同様の薬物曝露をもたらした。さらに、皮下投与は達成された最大濃度(Cmax)を減少させ、最大濃度に達するまでの時間(Cmax時間)を遅延させた。血中のラパマイシンのピーク量およびAUCは、皮下 ABI-009用量が多いほど上昇した。
【表4】
【0168】
実施例2:ラットにおける投与後のABI-009の生体内分布
ABI-009の皮下(subQ)または静脈内(IV)経路による投与の24時間または168時間後のいずれかにおいて、実施例1において、前記のラットから組織を採取した(試験デザインについて表1を参照されたい)。投与の24または168時間後の特定のラット組織のラパマイシン濃度を、
図5(骨髄および脳)、
図6(心臓および肺)、および
図7(肺および膵臓)に示す。
【0169】
皮下投与経路は、骨髄、脳、心臓、肝臓、肺、および膵臓などの、試験された全ての臓器への有意な分布を生じた。臓器分布のパターンは皮下および静脈内で類似していたが、0.56mg/kgの用量における皮下投与は、1.7mg/kgの用量における静脈内投与と同様の組織分布を生じることができた。心臓、肝臓、肺、および膵臓などの十分に灌流された臓器において、24および168時間の間にラパマイシン濃度の有意な低下があった。しかしながら、脳内濃度は24および168時間で比較的安定であった。
【0170】
ラパマイシンの脳および血液分布の違いをさらに明確にするために、さらなる実験をラットで行った。ラットに、1.7mg/kg、9.5mg/kg、または17mg/kgの用量で、nab-ラパマイシン(ABI-009)の単回用量を皮下投与した。ラットを24、72、および120時間において犠死させ、全血および脳組織を回収した。それぞれのサンプルについて、ラパマイシン濃度をそれぞれの時点において測定した。
図5に示されるように、脳のラパマイシン濃度の用量依存性上昇が観測された。驚くべきことに、17mg/kgの高用量でも、ラパマイシンの血中濃度は急速にベースラインに近づいたが、脳のラパマイシン濃度は、最低用量においても120時間全体にわたって十分に維持されていた。
図8もまた参照されたい。
【0171】
実施例3:糖を含むnab-ラパマイシンナノ粒子製剤
nab-ラパマイシン(ABI-009)の製剤は、スクロースの製剤およびトレハロースの製剤など、糖を含む場合と含まない場合で製剤化される。製剤は凍結乾燥され、次いで1mg/mlから40mg/mlのラパマイシンの様々な濃度において、水によって再構成される。次いで、製剤を再び凍結乾燥し、40℃で15日間インキュベートした。
【0172】
インキュベーション後、製剤を水によって再構成し、同時又はその後、アルブミンオリゴマーおよびポリマーおよび再構成時間についてアッセイする。
【0173】
減少したアルブミンオリゴマーおよびポリマー、および/または迅速な再構成を示す製剤は、皮下投与のための向上された製剤として選択される。
【0174】
実施例4:SDラットにおけるABI-009の反復皮下投与後の毒性試験
研究の目的は、SDラットにおける反復ABI-009 SC注入後の、注射部位における全体的な安全性および局所毒性を評価することである。毒性を決定するために臨床的苦痛の徴候を観察した。注入部位からの皮膚サンプルを、炎症の徴候および組織病理による壊死について分析した。
【0175】
体重160-180gの15匹の雌Sprague Dawley(SD)ラットを研究に使用した。ABI-009を生理食塩水に溶解し、ストック溶液(10mg/ml)を調製し、次いでさらにHSA 0.9%生理食塩水溶液中で希釈し、皮下投与の準備をした(体積:1.0ml/kg)。
【0176】
A.研究デザイン
ラットをそれぞれの3匹ずつの5つの群に分けた。ラットを秤量し、表5に特定するように、4週間4日ごとに皮下投与した(7回注射)。
【表5】
SC=皮下注射
【0177】
動物を全体的な毒性の臨床症状について毎日観察し、局所注入部位を皮下注射に対する反応について観察した。
【0178】
ABI-009(群3、4、および5)を投与された動物について、それぞれの注入の前に全血サンプルを回収し、トラフラパマイシン量を分析した。
【0179】
全ての動物を4週間後に安楽死させ、局所注射部位からの皮膚サンプルを、局所毒性の徴候について、組織病理によって観察した。
【0180】
B.実験手順
1.投与溶液調製
ビヒクル対照は、0.9%生理食塩水溶液および0.9%生理食塩水溶液中のHSAから成る。試験製品ABI-009(製造ロット#C345-001、Fisherロット#51394.2)のアルブミン:ラパマイシン比である9:1に基づいて、HSA溶液の最終濃度は90mg/mlである。ABI-009(C345-001)のそれぞれのバイアルは、97.4mgのラパマイシンおよび874mgのヒトアルブミンを含む。HSA生理食塩水は、20%グリフォルス・アルブミンストック溶液(200mg/ml)から希釈する。
【0181】
ABI-009投与溶液の場合、最初に10mg/mlのストックABI-009溶液を作成し、次いでHSA-生理食塩水溶液を用いて、投与溶液について目的の濃度に希釈する。100mgのABI-009のバイアルを、10mlの0.9%生理食塩水に溶解して、10mg/mlの溶液を調製した。
【0182】
5mg/mlのABI-009溶液は、0.6mlのストック溶液(10mg/ml)を0.6mlのHSA-0.9%生理食塩水によって希釈して、群4について5.0mg/mlの溶液を調製することによって調製した。1.7mg/mlのABI-009溶液は、群4(5.0mg/ml)からの0.3mlのABI-009溶液を0.6mlのHSA-0.9%生理食塩水によって希釈して、群3について1.7mg/mlの溶液を調製することによって調製した。
【0183】
2.投与
ラットに麻酔をかけ、秤量し、表6に従って4週間にわたり4日おきに、ABI-009溶液、HSA溶液、および生理食塩水を皮下(SC)注射によって投与した(7回注射)。
【表6】
【0184】
ラットは1日1回、皮下注射に対する反応について、全体的な毒性の臨床的徴候および局所注射部位を調べた。毒性を決定するために、臨床的苦痛の徴候を観察した。立毛、体重減少、嗜眠、退院、神経学的症状、罹病率、注入部位の発赤および炎症、並びに動物の行動について異常であると考えられる任意の他の徴候。SC注射の前後に、全てのラットの注射部位の写真を撮影した。
【0185】
3.サンプル回収および分析
ABI-009(群3、4、および5)によって処理したラットについては、ラットに麻酔をし、各投与の前に予め冷却したK2EDTAチューブにサンプリングのため採血した(1回目の投与以外)。全血を採取し、ラベルを貼ったエッペンドルフチューブにおいて-80℃で保管し、トラフ ラパマイシン量を分析した。
【0186】
全ての動物は、29日目(第4週25日目のABI-009投与の96時間後)の最終的な安楽死時点において安楽死させた。安楽死の最終時点において、トラフ ラパマイシン濃度の分析のために全血サンプルを回収した。脳、肺、肝臓、心臓、膵臓、および骨髄を回収し、生理食塩水で洗浄して血液を除去し、2つの部分に分けて、個別にラベルを付したチューブにおいて瞬間冷凍し、-80℃で保管した。ABI-009投与群(群3、4、および5)からの凍結血液サンプルを、ドライアイス上でBASi社に輸送する。トラフ ラパマイシン血中濃度は、LC/MS/MS法によってBASi社により解析した。
【0187】
最終的な安楽死の時点において、組織病理によって炎症の徴候についてH&E染色による組織学的分析のために、SC投与部位の皮膚およびより下層の真皮層を切除した。15個のホルマリン固定ラット皮膚サンプルを、組織病理学的測定に付し、規定通りに処理した。それぞれのブロックから1つのスライドを切片化し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)によって染色した。スライドは、光学顕微鏡を用いて、獣医学的病理学の認定専門医によって評価した。組織学的病変は、0~5の重症度で評価した(0=存在しない/正常、1=最小、2=軽度、3=中程度、4=顕著な、5=重度)。異なる群の中央値のスコアをt検定によって分析した。
【0188】
C.結果
1.全身毒性
臨床的苦痛の徴候を毎日観察して、毒性を決定した。立毛、体重減少、嗜眠、退院、神経学的症状、罹病率、注射部位の発赤および炎症、並びに動物の行動について異常であると考えられる任意の他の徴候。ラットは、当該治療レジメン(1.7-10mg/kg、7回投与)において、生理食塩水、HSA、およびABI-009の投与後は正常であり、研究の間、臨床的ストレスの徴候はなかった。
【0189】
研究の間、体重減少はなく(<20%)、全ての治療群は体重が増加した(表7)。結果は、1.7-10.0mg/kgの用量範囲において、ラットがABI-009の皮下注射に耐えたことを示した。
【表7】
【0190】
2.局所的毒性
SC投与領域からの15個のホルマリン固定ラット皮膚サンプルを、組織病理学的測定に付した。皮膚サンプルの組織病理学的知見では、血管周囲領域における炎症性細胞の壊死および混合浸潤物が見られ;いずれの病変も皮下組織において観察された。
【0191】
壊死は限局性であり、正常細胞の減少、好中球浸潤、出血、およびのフィブリン滲出領域、並びに隣接する線維増殖の変動によって特徴付けられる。壊死は、5mg/kg(群4、最小の壊死を有する1匹の動物)および10mg/kg(群5、軽度から顕著な壊死を有する3匹全ての動物)の用量レベルにおいて、ABI-009によって処理した動物からのサンプルにおいてのみ観察され、ここで、生理食塩水(群1)、HSA(群2)、および1.7mg/kgにおけるABI-009(群3)は壊死を生じなかった。表8および
図9を参照されたい。10mg/kgの最高用量におけるABI-009のみが、HSA群と比較して、有意に増加した壊死スコアを示した(P=0.02、t-test)。
【表8】
【0192】
表皮下血管周囲領域における混合炎症性細胞の浸潤は、リンパ球、形質細胞、マクロファージ、場合によって多核巨細胞の浸潤および凝集によって、並びに好中球の数の変動によって特徴付けられる。混合炎症性細胞浸潤は、全ての治療群において観察され、HSA(群2)および10mg/kgにおけるABI-009(群5)によって処理した動物において、最も高い中央値スコアを有した。1.7mg/kgにおける低用量のABI-009注射について(群3)、中央値スコアは、生理食塩水の注射を受けた対照群(群1)と同様であった。表8および
図9を参照されたい。生理食塩水対照(P=0.01、t検定)と比較して、HSA群(群2)において観察された高い混合炎症性細胞浸潤は、局所炎症が主にヘテロタンパク質ヒト血清アルブミンの注射によって主に引き起こされたことを示唆している。
【0193】
各群のラットについて、代表的な組織画像を
図10~14において示した。
【0194】
ABI-009治療群については、ABI-009用量の増加に伴って、局所毒性において用量関連増加が存在した。ABI-009 1.7mg/kgの最低用量において、局所注入部位の組織学は、生理食塩水対照群と類似し;壊死および皮下組織炎症性細胞浸潤は、10mg/kgの用量レベルにおいてABI-009処理した動物において最も重度であった。
【0195】
3.トラフ ラパマイシン血液濃度
ABI-009処理群について、それぞれの注射の前(5、9、13、17、21、25、29日目)にトラフ ラパマイシン血液サンプルを回収し(1日目の1回目の投与を除く)、LC/MS/MS法を用いてBASiによって分析した。それぞれのトラフ濃度を表9に示す。SC注射4日後のほとんどのトラフ ラパマイシン血中濃度は、2-20ng/mlの範囲で一貫していた。ABI-009 10mg/kg群(群5)における2つのサンプルは、明らかに外れ値であった。この観察の理由は解明することはできない。しかしながら、異常に高いトラフ濃度は、皮下組織において中程度から顕著な壊死も示していた、ABI-009の最高用量群においてのみ生じ、このことは皮膚病変がABI-009の通常の吸収を阻害し、薬物滞留の延長をもたらすことを示唆する。
【表9】
【0196】
それぞれのABI-009治療群について、トラフ血中ラパマイシン濃度は一般に安定であったため、研究に時間経過に伴う有意な薬物蓄積はなかった。ABI-009の用量の増加に伴い、トラフ血中ラパマイシン濃度の中央値の用量依存的な増加が存在した。ABI-009 1.7mg/kg群と比較して、ABI-009 5mg/kg群(P=0.06)および10mg/kg群(P=0.01)において、高いトラフ濃度が観測された(
図15)。
【0197】
まとめると、ラットは現在の用量レジメン(1.7-10mg/kg、7回投与)において、ABI-009投与後に正常であり、研究の間に観察された体重減少も存在しなかった。組織病理学的結果は、ABI-009の最高用量(10mg/kg)において、中程度から顕著な壊死を伴う、毒性の用量関連局所的徴候を示した。混合炎症細胞の浸潤は、ヘテロタンパク質HSAによって引き起こされる可能性がある。1.7mg/kg(溶液濃度1.7mg/ml)のABI-009は、生理食塩水対照と同様に、局所注射反応を示した。反復SC注射後の有意な薬物蓄積はなかった。トラフ血中ラパマイシン濃度は、より高いABI-009の用量で上昇した。
【0198】
結果から、ラットが皮下注射による1.7-10.0mg/kgの範囲にわたり、複数の用量のABI-009に対して全身的に耐性を有することが示された。局所的には、1.7mg/mlの濃度におけるABI-009溶液は、十分に耐性があった。この投与量について観察された有害な作用は存在しなかった。
【0199】
実施例5:nab-ラパマイシンの抗腫瘍活性試験
ヒト肝細胞癌異種移植マウスモデルにおいて、経口経路(ラパミューン)によるラパマイシンの抗腫瘍活性と、静脈内または皮下経路によるnab-ラパマイシン(ABI-009)の抗腫瘍活性を比較するために、研究を行った。
【0200】
ATCC(登録商標)(CRL-2233(登録商標))から得られた、(液体窒素による)凍結SNU-398(TSC2-欠損ヒト肝臓肝細胞癌細胞)を解凍することによって、ヒト癌細胞をマウスへの注射のために調製した。10%ウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を含む75cm2フラスコ中に細胞を分散させ、湿潤5%CO2において、37℃でインキュベートした。80%の細胞コンフルエンスにおいて、細胞を新たな培地を含む150cm2フラスコに増殖させた。細胞を増殖させて、マウスの脇腹ごとに1x107(マウスごとに2x107)個の細胞の標的を得た。
【0201】
20匹の無胸腺ヌードマウスを、上部フィルターを備えたケージにおいて飼育した。20%マトリゲル(登録商標)を含む0.1mlリン酸緩衝生理食塩水中で、癌細胞を両方の脇腹(脇腹ごとに1x107個)に皮下注射した。
【0202】
治療1日目は、腫瘍の存在によって開始する(腫瘍平均~100-150mm3)。動物を4つの群に分類した。
【0203】
群1は5匹のマウスを含み、6週間にわたり週2回、生理食塩水を静脈内経路によって受けた。
【0204】
群2は5匹のマウスを含み、6週間にわたり週2回、ABI-009を7.5mg/kgで静脈内経路によって受けた。総ラパマイシン用量は、15mg/kg/wkであった。
【0205】
群3は5匹のマウスを含み、6週間にわたり週5回、ラパミューンを3mg/kgで経口投与によって受けた。総ラパマイシン用量は15mg/kg/wkであった。
【0206】
群4は3匹のマウスを含み、6週間にわたり週2回、ABI-009を7.5mg/kgで皮下経路によって受けた。総ラパマイシン用量は、15mg/kg/wkであった。
【0207】
測定(マウス体重および腫瘍測定)は、所定の犠死時点および6週間後の終了まで、または腫瘍が2,000mm3の最大体積に達する時まで、週3回(月曜日、水曜日、および金曜日)行う。苦痛の徴候は毎日記録される。腫瘍を摘出し保管する。腫瘍の摘出と同時に血液サンプルを回収する。
【0208】
結果:研究は進行中である。各群の予備的な腫瘍体積の結果(中央値および標準誤差、SEM)を、以下の表10にまとめる。生理食塩水(群1)と比較した腫瘍増殖阻害(TGI)およびTGI対食塩水のp値もまた、表10に記載する。結果は
図16にもまとめる。
【表10】
【0209】
15mg/kg/週のラパマイシン経口溶液(群3)は、生理食塩水対照と比較して、中程度の腫瘍成長阻害(TGI 33.2%、P=有意ではない)が生じた。ABI-009の静脈内投与の同等の各週用量(群2)は、経口ラパミューンよりも有意に大きなTGIをもたらした(TGI66.7%対生理食塩水対照、P=0.0016対経口ラパミューン)。しかしながら、皮下経路によるABI-009(群4)は、最も大きな腫瘍成長阻害を生じた(TGI 89.8%、P=0.0001対生理食塩水対照、P<0.0001対経口ラパミューン)。
【0210】
どの治療群においても、毒性の徴候は観察されなかった。どの治療群においても、大きな体重減少(>10%)は観察されなかった。生理食塩水対照群(群1)において、15日目までにわずかな体重減少が観察されたが、各治療群(群2~4)は15日目までに体重を維持した、あるいは体重が増加した。体重の結果を
図17にまとめる。
【0211】
結論として、静脈内または皮下経路によって投与されたABI-009は、同等の各週用量の経口ラパミューンと比較して、TSC2欠損 SNU-398ヒト肝細胞癌異種移植マウスモデルにおいて、有意に大きな抗腫瘍活性を生じた。皮下経路によるABI-009は、静脈内経路によるABI-009と比較しても、驚くほど有効であった。いずれの治療群においても、大きな毒性または体重減少は観察されなかった。
【国際調査報告】