(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(54)【発明の名称】TNF-アルファ抗体の高濃度水性製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220510BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220510BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220510BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220510BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220510BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220510BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220510BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220510BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/26
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/14
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P25/00
A61P17/06
C07K16/24 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556832
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2020056908
(87)【国際公開番号】W WO2020187760
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520097009
【氏名又は名称】アルヴォテック エイチエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】エドワルド エリン
(72)【発明者】
【氏名】ハーダーソン ホルドゥル ケイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF36
4C076GG42
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB17
4C085EE01
4C085EE07
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明はアダリムマブの安定な水性製剤、特に、高濃度(例えば約100mg)のアダリムマブ、トレハロースまたはスクロース、非イオン性界面活性剤を含み、低濃度の緩衝剤を含むか全く含まず、イオン性等張化剤もアミノ酸安定剤も含まない安定な水性製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約90mg/ml~約125mg/mlの抗TNFα抗体;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤;および
(d)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤であって、
製剤がイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤がアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度が約240mOsm/kg~約420mOsm/kgであり;製剤が約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
【請求項2】
抗TNFα抗体がアダリムマブである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
約100mg/mlのアダリムマブ、約250mMのトレハロース、および約0.1%のポリソルベート20を含むか、または
約100mg/mlのアダリムマブ、約250mMのスクロース、および約0.1%のポリソルベート20を含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
約20mMの酢酸緩衝剤を含むか、または約20mMのコハク酸緩衝剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
イオン性賦形剤を本質的に含まない、請求項1~4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
次の基準:
(a)約2℃~約8℃で約3カ月である長期貯蔵下で安定;
(b)約2℃~約8℃で約6カ月である長期貯蔵下で安定;
(c)約2℃~約8℃で約12カ月である長期貯蔵下で安定;および/または
(d)約14日である室温貯蔵下で安定
の1つ以上を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
安定性が次の基準:
(a)約2℃~約8℃で少なくとも約12カ月貯蔵したときの、凝集のほぼ同等以下の増加;
(b)約25℃で少なくとも1カ月貯蔵したときの、凝集のほぼ同等以下の増加;
(c)約2℃~約8℃で少なくとも12カ月貯蔵したときの、相対パーセント酸化学種のほぼ同等以下の増加;および/または
(d)約25℃で少なくとも1カ月貯蔵したときの、相対パーセント酸化学種のほぼ同等以下の増加
の1つ以上により決定され、
ここで、製剤がコントロールと比較されており;前記コントロールが製剤とほぼ同じ濃度でアダリムマブを含み、好ましくは製剤が約100mg/mlのアダリムマブを含み、コントロールが約100mg/mlのアダリムマブ、230mMのマンニトール、0.1%(w/v)のポリソルベート80を含み、約5.2のpHを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
安定性が次の基準:
(a)アダリムマブに対するモノマーピークの相対割合が製剤を約2℃~約8℃で少なくとも6カ月貯蔵した後約98%以上であり、ここでモノマーピークの前記相対割合はSEC-HPLCにより決定される;
(b)アダリムマブに対するモノマーピークの相対割合が製剤を約25℃で少なくとも1カ月貯蔵した後約98%以上であり、ここでモノマーピークの前記相対割合はSEC-HPLCにより決定される;
(c)アダリムマブに対する相対的酸性化学種ピークが製剤を約2℃~約8℃で少なくとも12カ月貯蔵した後約25%以下であり、ここで前記相対的酸性化学種ピークはCEX-HPLCにより決定される;および/または
(d)アダリムマブに対する相対的酸性化学種ピークが製剤を約25℃で少なくとも3カ月貯蔵した後約25%以下であり、ここで前記相対的酸性化学種ピークはCEX-HPLCにより決定される
の1つ以上により決定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース、または約250nMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mMの酢酸緩衝剤
を含む水性製剤であって、
イオン性等張化剤を本質的に含まず;アミノ酸安定剤を本質的に含まず;約pH5~約pH6である、水性製剤。
【請求項10】
本質的に
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース、または約250mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mMの酢酸緩衝剤
からなる水性製剤であって、
約pH5~約pH6である、水性製剤。
【請求項11】
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロースまたは約250mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤であって、
イオン性賦形剤を本質的に含まず;約pH5~約pH6である、水性製剤。
【請求項12】
本質的に
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロースまたは約250mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
からなる水性製剤であって、
約pH5~約pH6である、水性製剤。
【請求項13】
次のストレス条件:
(a)約25℃で約3カ月;
(b)約2~約8℃で約3カ月;および/または
(c)約40℃で約3カ月
の1つ以上への曝露の後安定であると決定されている、請求項1~5および9~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
安定性が所定のレベルの摂動、好ましくは所定のレベルの
(a)SEC-HPLCにより評価して約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積;
(b)CEX-HPLCにより評価して約25%以下のアダリムマブの相対的酸性化学種ピーク面積;
(c)CE-SDS(非還元)により評価して約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ);
(d)CD-SDS(還元)により評価して約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピーク;および/または
(e)光遮蔽粒子計数法により評価して約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子および/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出される
の1つ以上の摂動を参照することにより決定される、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
安定性がコントロールを参照することにより決定され、ここで前記コントロール製剤は約100mg/mlのアダリムマブ、230mMのマンニトール、0.1%(w/v)のポリソルベート80を含み、約5.2のpHを有しており;前記コントロールが製剤と同じ1つ以上のストレス条件に曝露され、好ましくは安定性がコントロールを参照することにより決定され、ここで前記コントロールは市販のHumira(登録商標)製剤であり;前記コントロールが製剤と同じ1つ以上のストレス条件に曝露される、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
製剤のpHが約pH5.5である、請求項1~15のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の製剤を製剤化する方法であって、
(1)抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の第1の溶液を、
(a)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;および
(b)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む第2の溶液に交換するステップであって、
ここで第2の溶液はイオン性等張化剤を本質的に含まず;第2の溶液はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;第2の製剤は約5.0~約6.0のpH、好ましくは約5.5のpHを有し、交換後の抗TNFα抗体の濃度は約90mg/ml~約125mg/mlである、ステップと;
(2)ステップ(1)の溶液を非イオン性界面活性剤で希釈して約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤の濃度を得るステップ
を含む方法。
【請求項18】
第2の溶液が:
約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース
を含み、
第2の溶液がイオン性賦形剤を本質的に含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗TNFα抗体がアダリムマブである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか1項に記載の方法により得ることができる製剤。
【請求項21】
前記製剤が単一用量のプレフィルドインジェクションペン、単一用量の予め充填されたシリンジ、または単一用量の予め充填されたバイアルの形態であるか、または使い捨てのバッグの形態である、請求項1~16および20のいずれか1項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は16の図を含んでおり、そのうちのいくつかは多数の部分を含んでいる。
図1~15はカラーである。
本発明はアダリムマブの安定な水性製剤、特に、高濃度(例えば約100mg)のアダリムマブ、トレハロースまたはスクロース、非イオン性界面活性剤を含み、低濃度の緩衝剤を含むか全く含まず、イオン性等張化剤を含まず、かつアミノ酸安定剤を含まない安定な水性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書を通じて従来技術のいかなる考察も、かかる従来技術が広く知られているかまたは当分野で共通の一般知識の一部を形成することを承認したものと考えてはならない。
市販品のHumira(登録商標)はD2E7として知られている抗TNFα抗体を含む。D2E7はおよそ148キロダルトンの分子量を有する1330のアミノ酸からなるヒトTNFαに特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。D2E7の軽鎖可変領域のアミノ酸配列および重鎖可変領域のアミノ酸配列は米国特許第6,090,382号(その
図1A、1B、2A、2B、ならびに配列番号1および2参照)に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。D2E7は通常、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞のような哺乳動物細胞発現系で組換えDNA技術により生産される。D2E7はTNFαに特異的に結合し、そのp55およびp75細胞表面TNF受容体との相互作用をブロックすることによってTNFαの生物学的機能を中和する。
【0003】
D2E7は関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中等~重度の慢性乾癬、および若年性特発性関節炎を治療するのに使用される。
抗体、例えばD2E7またはそれとバイオシミラーな抗体の製剤は、投与前に最小の操作を要する形態で調製することができ、これは投与中の人為ミスを最小限にでき、および/または家庭での投与に適している。例えば、処置時に水の添加を含まない製剤、例えば単回投与用の水性製剤を含むガラスバイアル、単回投与用の水性製剤を含む予め充填されたシリンジ、水性製剤を含むプレフィルドインジェクションペン(pre-filled injection pen)、など。
治療レジメンの一部として投与される抗体(例えばD2E7またはそれとバイオシミラーな抗体)を含む製剤は1回より多く(例えば毎週、毎月2回、毎月)投与され、および/または高い抗体濃度(例えば、50mg/ml、100mg/ml、125mg/ml)で投与される。
アダリムマブの安定な水性製剤に対するニーズが存在したままである。
従来技術の不利益の少なくとも1つを克服もしくは改善し、または有用な代替手段を提供することが本発明の1つの目的である。
【発明の概要】
【0004】
驚くべきことに、高濃度のアダリムマブをトレハロースまたはスクロース、界面活性剤と共に含み、緩衝剤を少し含むかまたは全く含まない水性製剤が安定性を示すことが見出された。特に、本明細書に開示される製剤は長期貯蔵下で安定である。
第1の態様において、本発明は、
(a)約90mg/ml~約125mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.05%~約0.15%の非イオン性界面活性剤;および
(d)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤を提供し、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度は約240mOsm/kg~約420mOsm/kgであり;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。
【0005】
第2の態様において、本発明は、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
を含む水性製剤を提供し、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。
【0006】
第3の態様において、本発明は、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
を含む水性製剤を提供し、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。
【0007】
第4の態様において、本発明は、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤を提供し、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。
【0008】
第5の態様において、本発明は、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤を提供し、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。
緩衝剤を低濃度で含むか全く含まないように調製され、さらにイオン性等張化剤を本質的に含まずアミノ酸安定剤を本質的に含まない水性製剤は長期貯蔵条件下(例えば約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月、約6カ月、約12カ月、または約24カ月)または室温貯蔵条件下(例えば約20℃~約25℃で少なくとも約14日)で驚くほど安定である。
水性製剤は、対象(患者)への自己投与用に、または医療専門家により対象(患者)に投与するために製剤化することができる。好ましくは、水性製剤は、限定されないがプレフィルドインジェクションペン、予め充填されたシリンジ、および予め充填されたバイアル(例えば、予め充填されたガラスバイアル)を含めた単一用量の体裁で製剤化される。水性製剤はまた、単回使用バッグ(例えば、薬学的に許容されるプラスチックバッグ、およびバイオ医薬品グレードバッグなど)中にバルクで貯蔵することもできる。
水性製剤は対象(患者)への投与に適した水、例えば注射用の水(WFI)または同様な薬学的に許容される水を含むと理解されたい。
【0009】
定義
文脈上明らかに他に解すべき場合を除き、本明細書および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などは排他的または網羅的な意味合いとは対照的に包括的な意味合いで;すなわち、「含むが、限定されない」という意味で解すべきである。本明細書に記載されている水性製剤に関連して、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」およびその文法上の変化形は製剤のpHを目標のpHに調節するのに必要とされる水またはpH調節剤の存在を除外しないと理解されたい。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているとき、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈上明らかに他のものを指示する場合を除き複数の指示対象を含む。さらに、特許請求の範囲は任意選択の要素を除外して記載されている可能性があることに留意されたい。
【0011】
本明細書で使用されるとき用語「約」は当技術分野の習慣に従って1以上の標準偏差以内を意味することができる。あるいは、「約」は20%まで、10%まで、または5%までの範囲を意味することができる。一定の実施形態において、「約」は10%までを意味することができる。例えば、本明細書に記載されている水性製剤に関連して、約100mg/mlのアダリムマブを含む水性製剤は、90mg/ml~110mg/mlのアダリムマブを有する水性製剤を包含する。本明細書および特許請求の範囲に特定の値が記載されているとき、「約」の意味はその特定の値の許容される誤差範囲内であると仮定される。
【0012】
本明細書で使用されるとき用語「アダリムマブ」は米国特許第6,090,382号で定義されているD2E7という抗TNFα抗体およびD2E7とバイオシミラーな(例えば市販品Humira(登録商標)のD2E7とバイオシミラーな)抗TNFα抗体を包含する。Humira(登録商標)に含まれるD2E7抗体の配列は当技術分野で知られている。Humira(登録商標)のアダリムマブの軽鎖および重鎖の配列を報告しているhttps://www.drugbank.ca/drugs/DB00051参照。
図16参照。市販品のHumira(登録商標)に含まれる抗体とバイオシミラーな抗TNFα抗体はアメリカ食品医薬品局の要件に従って「adalimumab-xxxx」と指定され、ここで「xxxx」はアダリムマブの起源を示すと理解される。バイオシミラーなアダリムマブは市販品(Humira(登録商標))に含まれるアダリムマブとの生理化学的および機能的類似性により評価されると理解される。Liu et al., BioDrugs (2016) 30:321-338; Magnenat et al., MABS (2017) 9(1):127-139参照。D2E7とバイオシミラーな抗体には、限定されないが、D2E7のアミノ酸配列においてその抗体の生物学的機能(例えばTNFα-結合性、FcγRIIIa、など)に有意に影響を及ぼすことがない1つまたは2つの変更(アミノ酸の欠失、付加、および/または置換)を有する抗体、および市販品Humira(登録商標)のD2E7と異なるグリコシル化プロファイルを有する抗体が含まれる。Humira(登録商標)の抗TNFα抗体D2E7は、各々がおよそ24キロダルトン(kDa)の分子量を有する2つの軽鎖および各々がおよそ49kDaの分子量を有する2つのIgG1重鎖を有する組換えヒトIgG 1モノクローナル抗体である。各々の軽鎖は214のアミノ酸残基からなり、各々の重鎖は451のアミノ酸残基からなる。したがって、Humira(登録商標)の抗TNFα抗体D2E7は1330のアミノ酸を有し、およそ148kDaの合計分子量を有する。バイオシミラーな抗体はまたバイオベターな候補といってもよい。バイオシミラーな抗体またはバイオベターな候補は規制機関によるバイオシミラーな認可が求められている抗体であると当技術分野において理解されている。好ましくは、本明細書に記載されている水性製剤中のアダリムマブはHumira(登録商標)のD2E7抗体と同じ1330のアミノ酸残基を有する抗体である。
図16参照。
【0013】
用語「TNF-アルファ」(略してTNFαと記載されることもある)は、本明細書で使用されるとき、17kD分泌型として、および非共有結合した17kD分子の三量体で構成される生物学的に活性な形態である26kD膜結合型として存在するヒトサイトカインをいうことが意図されている。TNF-アルファの構造はさらに、例えば、Pennica, D., et al. (1984) Nature 312:724-729; Davis, J. M., et al. (1987) Biochemistry 26:1322-1326;およびJones, E. Y., et al. (1989) Nature 338:225-228に記載されている。用語TNF-アルファは、標準的な組換え発現法により調製されるかまたは商業的に購入することができる組換えヒトTNF-アルファ(rTNFα)を含めて意味する。
【0014】
用語「抗体」は、本明細書で使用されるとき、ジスルフィド結合により相互に連結された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖で構成される免疫グロブリン分子をいう。各々の重鎖は重鎖可変領域(本明細書では略してHCVRまたはVHと記載される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は3つのドメインCH1、CH2およびCH3からなる。各々の軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書では略してLCVRまたはVLと記載される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域はさらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより良く保存された領域が点在する。各々のVHおよびVLはアミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。
【0015】
5種類の脊椎動物重鎖:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューがある。各々の重鎖は1つの可変領域および3つの定常領域からなる。5つの重鎖の種類が脊椎動物抗体の5つのクラス(アイソタイプ):IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを定める。各々のアイソタイプは、それぞれ、(a)2つのアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー重鎖、および(b)2つのカッパまたは2つのラムダ軽鎖から構成されている。各々のクラスの重鎖は両方の種類の軽鎖と連携するが、所与の分子の2つの軽鎖は両方共カッパまたは両方共ラムダである。IgD、IgE、およびIgGは一般に「遊離の」ヘテロ四量体糖タンパク質として存在する。IgAおよびIgMは一般に「J」鎖ポリペプチドで結合した数個のIgAまたは数個のIgMヘテロ四量体を含む複合体に存在する。いくつかの脊椎動物アイソタイプは、定常領域配列の差により互いに区別されるサブクラスに分類される。例えば、4つのヒトIgGサブクラスIgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびに2つのIgAサブクラスIgAlおよびIgA2がある。これらおよび上に具体的に記載されていない他の5つ全てが本明細書で使用される用語「抗体」の意味に含まれる。
【0016】
本明細書で使用されるとき、用語「緩衝剤」は、例えば、溶液中でその溶液のpHを維持するための量の酸または塩基を中和することができる弱酸およびその塩、または弱塩基およびその塩をいう。代表的な緩衝剤には、限定されないが、酢酸緩衝剤(アセテート/酢酸)、コハク酸緩衝剤(スクシネート/コハク酸)、などがある。十分に理解されているように、緩衝剤は緩衝剤成分を強酸(例えばHCl)または強塩基(例えばNaOH)と混合して緩衝剤を標的のpHに調節することにより調製され、それにより緩衝剤は残留濃度の塩イオン、例えば塩化物イオン、ナトリウムイオンを含み得る。用語緩衝剤は、本明細書で使用されるとき、アダリムマブの自己緩衝能を含まない。本明細書で使用されるとき、緩衝剤の濃度とは、溶液中の緩衝剤の全成分(酸および共役塩基または、代わりに、塩基および共役酸)の合わせた濃度(例えば、「酢酸緩衝剤」の場合溶液中の酢酸塩および酢酸の合わせた濃度、「コハク酸緩衝剤」の場合溶液中のコハク酸塩およびコハク酸の合わせた濃度)をいう。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「非イオン性界面活性剤」は親水性の頭部基および電荷をもたない疎水性の尾部を含む化合物をいう。代表的な非イオン性界面活性剤には、限定されないが、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン水添ひまし油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどがある。本明細書に記載されている水性製剤に含めるのに特に適した非イオン性界面活性剤には、約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の濃度のポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、などがある。約0.1%(w/v)の濃度のポリソルベート20は本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「w/v」または「(w/v)」は溶液の容積(ml)当たりの溶質の質量(g)を意味するために使用されている。「%(w/v)」は溶液の容積(ml)当たりの溶質の質量(g)×100を意味するために使用されている。
【0019】
本明細書に記載されている安定な水性製剤は「イオン性等張化剤を本質的に含まない」。イオン性等張化剤は当技術分野で公知であり、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの無機塩を含む。例えば、本明細書に記載されている安定な水性製剤は塩化ナトリウム(NaCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、などのようなイオン性等張化剤を本質的に含まないことができる。「イオン性等張化剤を本質的に含まない」安定な水性製剤は、例えば、前記安定な水性製剤中に含まれることになるアダリムマブの生産および/または精製中存在し得るイオン性等張化剤を除去するように製剤化される;イオン性等張化剤の添加なしに製剤化される;などである。イオン性等張化剤を除去する方法は特に限定されず、例えば、透析、脱塩カラム、透析ろ過、などのような公知の方法を含むと理解される。さらに、かかる方法は除去される目標の物質を一定の割合で残すことが知られていると理解される。本発明において、「イオン性等張化剤を本質的に含まない」安定な水性製剤は、イオン性等張化剤が特定の除去方法の限界まで除去されるイオン性等張化剤を除去する方法により調製された製剤を含む。一定の実施形態において、「イオン性等張化剤を本質的に含まない」とは、約0.1%(w/v)未満の1種以上のイオン性等張化剤の各々をいう。一定の実施形態において、「イオン性等張化剤を本質的に含まない」とは、約0.01%(w/v)未満の1種以上のイオン性等張化剤の各々をいう。イオン性賦形剤を本質的に含まない安定な水性製剤は、緩衝剤(酢酸緩衝剤またはコハク酸緩衝剤)の存在下または緩衝剤の非存在下で目標のpH、例えば約5.0~約6.0のpHを達成するためのpH調節剤、例えば塩酸(HCl)または水酸化ナトリウム(NaOH)の添加を除外しないと理解される。
【0020】
本明細書に記載されている安定な水性製剤は「アミノ酸安定剤を本質的に含まない」。アミノ酸安定剤は当技術分野で公知であり、メチオニン、グリシン、アルギニン、などがある。用語「アミノ酸安定剤」は、製剤に添加される外因性のアミノ酸をいい、アダリムマブのアミノ酸残基または、例えば、製剤中のアダリムマブの分解から誘導されるアミノ酸残基を包含しない。「アミノ酸安定剤を本質的に含まない」安定な水性製剤は、例えば、前記安定な水性製剤中に含まれることになるアダリムマブの生産および/または精製中に存在し得るアミノ酸安定剤を除去するように製剤化される;アミノ酸安定剤の添加なしに製剤化される;などである。アミノ酸安定剤を除去する方法は特に限定されず、例えば、透析、脱塩カラム、透析ろ過、などのような公知の方法があることが分かる。本発明において、「アミノ酸安定剤を本質的に含まない」安定な水性製剤は、アミノ酸安定剤が特定の除去方法の限界まで除去されるアミノ酸安定剤を除去する方法により調製された製剤を含む。一定の実施形態において、「アミノ酸安定剤を本質的に含まない」とは、約0.1%(w/v)未満の1種以上のアミノ酸安定剤の各々をいう。一定の実施形態において、「アミノ酸安定剤を本質的に含まない」とは、約0.01%(w/v)未満の1種以上のアミノ酸安定剤の各々をいう。
【0021】
本明細書に記載されている安定な水性製剤は「イオン性賦形剤を本質的に含まない」ことができる。イオン性賦形剤には、各々本明細書に定義されているイオン性等張化剤、アミノ酸安定剤、および緩衝剤が含まれる。「イオン性賦形剤を本質的に含まない」安定な水性製剤は、例えば、前記安定な水性製剤中に含まれることになるアダリムマブの生産および/または精製中に存在し得るようなイオン性賦形剤を除去するように製剤化される;アミノ酸安定剤の添加なしに製剤化される;などである。アダリムマブの緩衝能力はイオン性賦形剤を本質的に含まない安定な水性製剤において除外されないと理解される。緩衝剤を除去するように、または緩衝剤なしに製剤化されたイオン性等張化剤を本質的に含まず、アミノ酸安定剤を本質的に含まない安定な水性製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まない安定な水性製剤である。アダリムマブの緩衝能力はイオン性賦形剤を本質的に含まない安定な水性製剤において除外されないと理解される。イオン性賦形剤を除去する方法は特に限定されず、例えば、透析、脱塩カラム、透析ろ過、などのような公知の方法を含むと理解される。本発明において、「イオン性賦形剤を本質的に含まない」安定な水性製剤は、イオン性賦形剤が特定の除去方法の限度まで除去されるイオン性賦形剤を除去する方法により調製された製剤を含む。一定の実施形態において、「イオン性賦形剤を本質的に含まない」とは、約0.1%(w/v)未満の1種以上のイオン性賦形剤の各々をいう。一定の実施形態において、「イオン性賦形剤を本質的に含まない」とは、約0.01%(w/v)未満の1種以上のイオン性賦形剤の各々をいう。イオン性賦形剤を本質的に含まない安定な水性製剤は緩衝剤(酢酸緩衝剤またはコハク酸緩衝剤)の存在下または緩衝剤の非存在下で目標のpH、例えば約5.0~約6.0のpHを達成するためのpH調節剤、例えば塩酸(HCl)または水酸化ナトリウム(NaOH)の添加を除外しないと理解される。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「安定な」は、アダリムマブの低レベルの劣化(例えば物理的劣化、例えば凝集、断片化、脱アミド、酸化、グリコシル化の変化、など、および/または生物学的劣化、例えば活性の低下)を有するアダリムマブを含む水性製剤を記載する。製剤の安定性の決定は、製剤を1つ以上のストレス条件に曝露した後製剤が検出可能なレベルの摂動がないかまたは許容されるレベルの摂動を示すかどうかを決定することで評価できる。摂動は、1つ以上のストレス条件に曝露した後の水性製剤中の成分、特にアダリムマブの変化をいい、限定されないが、1つ以上の目に見えるまたは肉眼では見ることができない粒子の変化、製剤に含まれるアダリムマブの酸性化学種の変化(例えば脱アミド)、製剤に含まれるアダリムマブの塩基性化学種の変化、製剤に含まれるアダリムマブの酸化、製剤に含まれるアダリムマブのグリコシル化の変化、製剤に含まれるアダリムマブの凝集の変化、などを含む。摂動または摂動のレベルは、水性製剤中の抗体の劣化を評価するための当技術分野で公知の方法、例えば、限定されないがサイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)(非還元および還元状態)、光遮蔽粒子計数法(particle count light obscuration)を含む方法によって決定することができる。一定の実施形態において、摂動または摂動のレベルは水性製剤に含まれるアダリムマブの生物学的な活性の変化を検出することをさらに含み得る。生物学的活性の変化は当技術分野で公知の方法、例えば、限定されないが、相対解離定数(KD)表面プラズモン共鳴(SPR)などにより決定することができる。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「ストレス条件」は、限定されないが製剤のある温度での所与の時間、例えば約2℃~約8℃で少なくとも約1カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約12カ月、または少なくとも約24カ月;約25℃で少なくとも約1カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、または少なくとも約12カ月;約40℃で少なくとも約1カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、または少なくとも約12カ月の貯蔵すること(貯蔵または維持);または振盪、酸化、加熱、凍結、および/または混合のような条件への曝露を含む。
【0024】
一定の実施形態において、安定性はコントロールを参照して決定され得る。一定の実施形態において、コントロールは、ストレス条件に曝露する前に、摂動が分析されるストレス条件に曝露されていないストレスを受けていないコントロールであり得る。例えば、ストレスを受けていないコントロールは、ゼロの時点(例えば貯蔵の前、振盪の前、など)でストレスを受けていないコントロールの摂動が評価される安定性分析を受ける水性製剤と同じバッチに由来し得る。一定の実施形態において、コントロールは、1つ以上のストレス条件への曝露後に許容されるレベルの摂動を示すことが前もって決定されている水性製剤であり得る。一定の実施形態において、コントロールは当技術分野で日常的に行われるように市販の製剤、好ましくはHumira(登録商標)であり得る。Liu et al., BioDrugs (2016) 30:321-338; Magnenat et al., MABS (2017) 9(1):127-139参照。また、実施例9の方法も参照。市販の製剤は、限定されないが、単一用量のプレフィルドインジェクションペン、予め充填されたシリンジまたはバイアルを含む体裁であり得る。
【0025】
一定の実施形態において、安定性は摂動の所定のレベルを参照して決定され得る。所定のレベルの摂動は凝集体の割合、酸性化学種の割合、肉眼では見ることができない粒子の割合を含み得る。例えば、製剤は本明細書で規定されたストレス条件への曝露後、SEC-HPLCにより評価してアダリムマブの相対的なモノマーピーク面積が約98%以上であるとき安定であると決定され得る。製剤は本明細書で規定されたストレス条件への曝露後CEX-HPLCにより評価してアダリムマブの相対的な酸性化学種のピーク面積が約25%以下であるとき安定であると決定され得る。製剤は本明細書で規定されたストレス条件への曝露後、光遮蔽粒子計数法により評価して約10μm以上のサイズの約6000個以下の粒子が検出される場合および/または約25μm以上のサイズの約600個以下の粒子が検出される場合安定であると決定され得る。製剤は本明細書で規定されたストレス条件への曝露後CE-SDS(非還元)により評価して相対的な「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)が約90%以上であるとき安定であると決定され得る。製剤は本明細書で規定されたストレス条件への曝露後CE-SDS(還元)により評価して相対的な重鎖(HC)ピークが約60%~約72%であるかおよび/または相対的な軽鎖(LC)ピークが約30%~約36%であるとき安定であると決定され得る。
【0026】
一定の実施形態において、水性製剤は、1つ以上のストレス条件への曝露がコントロールと比較してより少ない摂動を示すか、またはそれ以上の摂動を示さないとき安定であると考えられる。関連の実施形態において、水性製剤は、1つ以上のストレス条件への曝露が同じ1つ以上のストレス条件に曝露されたコントロールと比較してより少ない摂動を示すか、またはそれ以上の摂動を示さないとき安定であると考えられる。関連の実施形態において、水性製剤は、1つ以上のストレス条件への曝露がストレスを受けていないコントロールと比較してより少ない摂動を示すか、またはそれ以上の摂動を示さないとき安定であると考えられる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、水性製剤中の摂動のレベルに関する用語「許容されるレベル」は、その水性製剤をその意図された薬学用途に適さなくすることがないレベルを含む。例えば、ある水性製剤に対する摂動のレベルに関して許容されるレベルとは、限定されないが、同じストレス条件に曝露された市販の製剤に存在するものを超えても下回ってもいない摂動またはいかなるストレス条件にも曝露されない市販の製剤に存在するものを超えても下回ってもいない摂動を含む。一定の実施形態において、摂動の許容されるレベルとして、SEC-HPLCにより評価してアダリムマブの相対的なモノマーのピーク面積が約98%以上である場合;CEX-HPLCにより評価してアダリムマブの相対的な酸性化学種のピーク面積が約25%以下である場合;光遮蔽粒子計数法により評価して約10μm以上のサイズの約6000個以下の粒子が検出される、および/または約25μm以上のサイズの約600個以下の粒子が検出される場合;CE-SDS(非還元)により評価して相対的な「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)が約90%以上である場合;および/またはCE-SDS(還元)により評価して相対的な重鎖(HC)ピークが約60%~約72%および/または相対的な軽鎖(LC)ピークが約30%~約36%である場合がある。
【0028】
本明細書で使用される用語「長期貯蔵」とは、限定されないが、約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約12カ月、および/または少なくとも約24カ月を含む。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「室温貯蔵」とは、限定されないが、約20℃~約25℃で約14日を含む。
【0030】
以下、ほんの一例として次の通りの添付の図面を参照して本発明の実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1-1】A及びBは、様々な濃度および無機塩の化学種の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例1参照。A:主ピークに対して決定された全ての融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの決定された融解温度の平均であり、エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。左から右へ:5mM、25mM、125mMのMgCl
2、5mM、25mM、125mMのNaCl、5mM、25mM、125mMのNa
2S
2O
5、5mM、25mM、125mMのKCl、5mM、25mM、125mMのCaCl
2、塩なし(WFI)。B~F:試験した各々の塩化学種に対する融解曲線:MgCl
2(B)、NaCl(C)、KCl(D)、Na
2S
2O
5(E)、CaCl
2(F)。場合によっては、第2の集団またはショルダーがより低い温度で融解曲線に現れる。これら2つのピークは高Tm(主ピーク)および低Tm(ショルダーまたは第2の集団)といわれる。いずれも、各々のサンプルに対して表1に記載される。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの融解曲線の平均曲線である。
【
図1-2】C及びDは、様々な濃度および無機塩の化学種の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例1参照。A:主ピークに対して決定された全ての融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの決定された融解温度の平均であり、エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。左から右へ:5mM、25mM、125mMのMgCl
2、5mM、25mM、125mMのNaCl、5mM、25mM、125mMのNa
2S
2O
5、5mM、25mM、125mMのKCl、5mM、25mM、125mMのCaCl
2、塩なし(WFI)。B~F:試験した各々の塩化学種に対する融解曲線:MgCl
2(B)、NaCl(C)、KCl(D)、Na
2S
2O
5(E)、CaCl
2(F)。場合によっては、第2の集団またはショルダーがより低い温度で融解曲線に現れる。これら2つのピークは高Tm(主ピーク)および低Tm(ショルダーまたは第2の集団)といわれる。いずれも、各々のサンプルに対して表1に記載される。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの融解曲線の平均曲線である。
【
図1-3】E及びFは、様々な濃度および無機塩の化学種の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例1参照。A:主ピークに対して決定された全ての融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの決定された融解温度の平均であり、エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。左から右へ:5mM、25mM、125mMのMgCl
2、5mM、25mM、125mMのNaCl、5mM、25mM、125mMのNa
2S
2O
5、5mM、25mM、125mMのKCl、5mM、25mM、125mMのCaCl
2、塩なし(WFI)。B~F:試験した各々の塩化学種に対する融解曲線:MgCl
2(B)、NaCl(C)、KCl(D)、Na
2S
2O
5(E)、CaCl
2(F)。場合によっては、第2の集団またはショルダーがより低い温度で融解曲線に現れる。これら2つのピークは高Tm(主ピーク)および低Tm(ショルダーまたは第2の集団)といわれる。いずれも、各々のサンプルに対して表1に記載される。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの融解曲線の平均曲線である。
【
図2-1】A及びBは、様々な濃度および糖類/ポリオール化学種の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例2参照。A:主ピーク(Tm)に対して決定された全ての融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの決定された融解温度の平均であり、エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。左から右へ:5mM、25mM、125mMのマンニトール、5mM、25mM、125mMのソルビトール、5mM、25mM、125mMのスクロース、5mM、25mM、125mMのトレハロース、5mM、25mM、125mMのグリセロール、糖類/ポリオールなし。B~F:試験した各々の糖類/ポリオール化学種に対する融解曲線:マンニトール(B)、ソルビトール(C)、スクロース(D)、トレハロース(E)、グリセロール(F)。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの融解曲線の平均曲線である。これらの場合、第2の集団またはショルダーはより低い温度で融解曲線に現れない。全ての融解温度は表2に記載される。
【
図2-2】C及びDは、様々な濃度および糖類/ポリオール化学種の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例2参照。A:主ピーク(Tm)に対して決定された全ての融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの決定された融解温度の平均であり、エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。左から右へ:5mM、25mM、125mMのマンニトール、5mM、25mM、125mMのソルビトール、5mM、25mM、125mMのスクロース、5mM、25mM、125mMのトレハロース、5mM、25mM、125mMのグリセロール、糖類/ポリオールなし。B~F:試験した各々の糖類/ポリオール化学種に対する融解曲線:マンニトール(B)、ソルビトール(C)、スクロース(D)、トレハロース(E)、グリセロール(F)。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの融解曲線の平均曲線である。これらの場合、第2の集団またはショルダーはより低い温度で融解曲線に現れない。全ての融解温度は表2に記載される。
【
図2-3】E及びFは、様々な濃度および糖類/ポリオール化学種の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例2参照。A:主ピーク(Tm)に対して決定された全ての融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの決定された融解温度の平均であり、エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。左から右へ:5mM、25mM、125mMのマンニトール、5mM、25mM、125mMのソルビトール、5mM、25mM、125mMのスクロース、5mM、25mM、125mMのトレハロース、5mM、25mM、125mMのグリセロール、糖類/ポリオールなし。B~F:試験した各々の糖類/ポリオール化学種に対する融解曲線:マンニトール(B)、ソルビトール(C)、スクロース(D)、トレハロース(E)、グリセロール(F)。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの融解曲線の平均曲線である。これらの場合、第2の集団またはショルダーはより低い温度で融解曲線に現れない。全ての融解温度は表2に記載される。
【
図3-1】A及びBは、様々なpH値における様々な緩衝剤の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例3参照。A:試験したpHの関数としての融解温度のグラフ:クエン酸(B)、酢酸(C)、リン酸-クエン酸(D)、トリス(E)、コハク酸(F)。融解温度は各々のサンプルの主ピークに対して決定された4つの値の平均である。エラーバーはx軸上で±0.1pH単位に固定され、y軸上ではマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された4つの値の標準偏差である。近似曲線は4因子多項式であり、視覚的ガイドを意図したものに過ぎない。B~F:試験した各々のpHおよび緩衝剤条件の融解曲線である。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの曲線の平均である。場合によっては(より低いpH値で)、第2の集団またはショルダーがより低い温度で融解曲線に現れる。各々の曲線についてたった1つの融解温度が決定された。これは、主ピーク(Tm)を決定することが、実験のこの部分の目的であったアダリムマブの熱安定性の明白なpH依存性を明らかにするのに充分であったからである。決定されたTm値を表3に記載する。
【
図3-2】C及びDは、様々なpH値における様々な緩衝剤の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例3参照。A:試験したpHの関数としての融解温度のグラフ:クエン酸(B)、酢酸(C)、リン酸-クエン酸(D)、トリス(E)、コハク酸(F)。融解温度は各々のサンプルの主ピークに対して決定された4つの値の平均である。エラーバーはx軸上で±0.1pH単位に固定され、y軸上ではマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された4つの値の標準偏差である。近似曲線は4因子多項式であり、視覚的ガイドを意図したものに過ぎない。B~F:試験した各々のpHおよび緩衝剤条件の融解曲線である。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの曲線の平均である。場合によっては(より低いpH値で)、第2の集団またはショルダーがより低い温度で融解曲線に現れる。各々の曲線についてたった1つの融解温度が決定された。これは、主ピーク(Tm)を決定することが、実験のこの部分の目的であったアダリムマブの熱安定性の明白なpH依存性を明らかにするのに充分であったからである。決定されたTm値を表3に記載する。
【
図3-3】E及びFは、様々なpH値における様々な緩衝剤の存在下でのアダリムマブの融解温度。実施例3参照。A:試験したpHの関数としての融解温度のグラフ:クエン酸(B)、酢酸(C)、リン酸-クエン酸(D)、トリス(E)、コハク酸(F)。融解温度は各々のサンプルの主ピークに対して決定された4つの値の平均である。エラーバーはx軸上で±0.1pH単位に固定され、y軸上ではマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された4つの値の標準偏差である。近似曲線は4因子多項式であり、視覚的ガイドを意図したものに過ぎない。B~F:試験した各々のpHおよび緩衝剤条件の融解曲線である。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの曲線の平均である。場合によっては(より低いpH値で)、第2の集団またはショルダーがより低い温度で融解曲線に現れる。各々の曲線についてたった1つの融解温度が決定された。これは、主ピーク(Tm)を決定することが、実験のこの部分の目的であったアダリムマブの熱安定性の明白なpH依存性を明らかにするのに充分であったからである。決定されたTm値を表3に記載する。
【
図4】可変のpHおよび緩衝剤条件下300rpmで4日振盪後の濁度(320nmでの吸光度)測定。実施例4参照。各々の値は3つの測定の平均である。エラーバーはx軸上がマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差、およびx軸上が0.1pH単位である。緩衝剤なしの条件(WFI)はここにはプロットされていないがこの場合0.4のO.D.を生じた。近似曲線は直線状であり、視覚的ガイドを意図したものに過ぎない。
【
図5-1】Aは、5.2の固定されたpHにおける4種の緩衝剤の存在下でのアダリムマブ融解温度の緩衝剤濃度依存性。実施例5参照。A:可変の濃度の4種の緩衝剤中のアダリムマブの融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの融点決定の平均である。先の緩衝剤実験(
図4)に関して、主ピークのみが決定された。エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。B~E:試験した各々のpHおよび緩衝剤条件の融解曲線:酢酸(B)、コハク酸(C)、クエン酸(D)、リン酸-クエン酸(E)。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの曲線の平均である。決定されたTmを表4に記載する。
【
図5-2】B及びCは、5.2の固定されたpHにおける4種の緩衝剤の存在下でのアダリムマブ融解温度の緩衝剤濃度依存性。実施例5参照。A:可変の濃度の4種の緩衝剤中のアダリムマブの融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの融点決定の平均である。先の緩衝剤実験(
図4)に関して、主ピークのみが決定された。エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。B~E:試験した各々のpHおよび緩衝剤条件の融解曲線:酢酸(B)、コハク酸(C)、クエン酸(D)、リン酸-クエン酸(E)。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの曲線の平均である。決定されたTmを表4に記載する。
【
図5-3】D及びEは、5.2の固定されたpHにおける4種の緩衝剤の存在下でのアダリムマブ融解温度の緩衝剤濃度依存性。実施例5参照。A:可変の濃度の4種の緩衝剤中のアダリムマブの融解温度の棒グラフ。各々の値は4つの融点決定の平均である。先の緩衝剤実験(
図4)に関して、主ピークのみが決定された。エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.S関数により決定された標準偏差である。B~E:試験した各々のpHおよび緩衝剤条件の融解曲線:酢酸(B)、コハク酸(C)、クエン酸(D)、リン酸-クエン酸(E)。各々の曲線は各々のサンプルに対して集めた4つの曲線の平均である。決定されたTmを表4に記載する。
【
図6】アダリムマブの撹拌安定性に対するポリソルベートの効果。実施例6参照。棒グラフは0.1%(w/v)のポリソルベート20およびポリソルベート80の存在下または非存在下での300rpmの振盪4日後の濁度(320nm吸光度)測定を示す。ポリソルベート条件は3回実行し測定した。エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差を示す。
【
図7】A及びBは、アダリムマブの安定性に対するL-アルギニンの効果。実施例7参照。A:50または200mMのL-アルギニンの存在下でのアダリムマブの融解曲線。各々の融解曲線は4つの曲線の平均である。B:4日振盪実験後の濁度(320nm吸光度)測定を示す。200mMのL-アルギニン条件は3回実行し測定した。エラーバーはマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差を示す。
【
図8】A及びBは、HCl(オレンジ色の線-約pH7~約pH4、負のμl値として示す)およびNaOH(青色の線-約pH7~約pH9)を含む水中のアダリムマブの滴定。実施例8参照。A:108mg/mlのアダリムマブで行った滴定。B:1mg/mlのアダリムマブで行った滴定。各々の出発容積は5mlであり、示されている0.2または0.002M濃度のHClおよびNaOHを一度に50μl加えた。
【
図9-1】A及びBは、SEC-HPLC凝集体決定。A:0、1、3、6および12カ月に測定された2℃~8℃に対する相対的なモノマーピーク。B:0、1、3、および6カ月に測定された25℃に対する相対的なモノマーピーク。C:0、1、および3カ月に測定された40℃に対する相対的なモノマーピーク。実施例9参照。
【
図9-2】Cは、SEC-HPLC凝集体決定。A:0、1、3、6および12カ月に測定された2℃~8℃に対する相対的なモノマーピーク。B:0、1、3、および6カ月に測定された25℃に対する相対的なモノマーピーク。C:0、1、および3カ月に測定された40℃に対する相対的なモノマーピーク。実施例9参照。
【
図10-1】A及びBは、MFI肉眼では見ることができない粒子決定。A:0、3、6、および12カ月で測定された2℃~8℃の全粒子濃度(粒子/ml)。B:0、3、および6カ月で測定された25℃の全粒子濃度(粒子/ml)。C:0および3カ月で測定された40℃の全粒子濃度(粒子/ml)。実施例9参照。
【
図10-2】Cは、MFI肉眼では見ることができない粒子決定。A:0、3、6、および12カ月で測定された2℃~8℃の全粒子濃度(粒子/ml)。B:0、3、および6カ月で測定された25℃の全粒子濃度(粒子/ml)。C:0および3カ月で測定された40℃の全粒子濃度(粒子/ml)。実施例9参照。
【
図11-1】A及びBは、CEX-HPLCによる荷電化学種決定。A:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的主ピーク面積。B:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的主ピーク面積。C:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的酸性化学種ピーク。D:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的酸性化学種ピーク面積。E:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的塩基性化学種ピーク。F:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的塩基性化学種ピーク面積。実施例9参照。
【
図11-2】C及びDは、CEX-HPLCによる荷電化学種決定。A:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的主ピーク面積。B:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的主ピーク面積。C:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的酸性化学種ピーク。D:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的酸性化学種ピーク面積。E:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的塩基性化学種ピーク。F:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的塩基性化学種ピーク面積。実施例9参照。
【
図11-3】E及びFは、CEX-HPLCによる荷電化学種決定。A:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的主ピーク面積。B:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的主ピーク面積。C:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的酸性化学種ピーク。D:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的酸性化学種ピーク面積。E:0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃の相対的塩基性化学種ピーク。F:0、1、3および6カ月で測定された25℃の相対的塩基性化学種ピーク面積。実施例9参照。
【
図12-1】A及びBは、CE-SDS(非還元)およびCE-SDS(還元)によるサイズ変異体決定。A:0、1、3、6、および12カ月で測定された非還元CE-SDSによる2℃~8℃の相対的IgGピーク面積。B:0、1、3、および6カ月で測定された非還元CE-SDSによる25℃の相対的IgGピーク面積。C:0、1、および3カ月で測定された非還元CE-SDSによる40℃の相対的IgGピーク面積。D:0、1、3、6、および12カ月で測定された還元CE-SDSによる2℃~8℃の相対的IgGピーク面積。E:0、1、3、および6カ月で測定された還元CE-SDSによる25℃の相対的IgGピーク面積。F:0、1、および3カ月で測定された還元CE-SDSによる40℃の相対的IgGピーク面積。
【
図12-2】C及びDは、CE-SDS(非還元)およびCE-SDS(還元)によるサイズ変異体決定。A:0、1、3、6、および12カ月で測定された非還元CE-SDSによる2℃~8℃の相対的IgGピーク面積。B:0、1、3、および6カ月で測定された非還元CE-SDSによる25℃の相対的IgGピーク面積。C:0、1、および3カ月で測定された非還元CE-SDSによる40℃の相対的IgGピーク面積。D:0、1、3、6、および12カ月で測定された還元CE-SDSによる2℃~8℃の相対的IgGピーク面積。E:0、1、3、および6カ月で測定された還元CE-SDSによる25℃の相対的IgGピーク面積。F:0、1、および3カ月で測定された還元CE-SDSによる40℃の相対的IgGピーク面積。
【
図12-3】E及びFは、CE-SDS(非還元)およびCE-SDS(還元)によるサイズ変異体決定。A:0、1、3、6、および12カ月で測定された非還元CE-SDSによる2℃~8℃の相対的IgGピーク面積。B:0、1、3、および6カ月で測定された非還元CE-SDSによる25℃の相対的IgGピーク面積。C:0、1、および3カ月で測定された非還元CE-SDSによる40℃の相対的IgGピーク面積。D:0、1、3、6、および12カ月で測定された還元CE-SDSによる2℃~8℃の相対的IgGピーク面積。E:0、1、3、および6カ月で測定された還元CE-SDSによる25℃の相対的IgGピーク面積。F:0、1、および3カ月で測定された還元CE-SDSによる40℃の相対的IgGピーク面積。
【
図13】0、6カ月(2℃~8℃)および6カ月(25℃)の時点で測定された製剤のオスモル濃度(mOsm/kg)。図中3つのバーの各々の組で、時点は左から右へ0、6カ月(2℃~8℃)および6カ月(25℃)である。実施例9参照。
【
図14】0、1、3、6および12カ月で測定された2℃~8℃のTNF-アルファSPRによる相対的平均KD。実施例9参照。
【
図15】0、4、および12週で測定された2℃~8℃のFcγRIIIa SPRによる相対的平均KD。実施例9参照。
【
図16】https://www.drugbank.ca/drugs/DB00051に記載されている市販品Humira(登録商標)に含まれるアダリムマブの軽鎖および重鎖のアミノ酸配列。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい実施形態の詳細な説明
抗体のプレフォーミュレーション研究は、ストレス、例えば熱ストレス、撹拌ストレスに対して抗体製剤を安定化するかまたは、代わりに不安定化する所与の成分の能力に関する情報を提供し得る。しかしながら、かかるプレフォーミュレーション研究は所与の成分の、安定化または不安定化をもたらす影響を完全に決定するわけではないし、個別のプレフォーミュレーション研究が、成分の組合せの、安定化または不安定化をもたらす影響を捉えるわけでもない。矛盾する情報がプレフォーミュレーション研究で生じることもある。
【0033】
熱安定性に焦点を当てたプレフォーミュレーション研究は、無機塩および緩衝剤のようなイオン性化学種がアダリムマブの安定性を不安定化する可能性を示唆した。実施例1、4および5ならびに
図1、3、および5参照。しかし、撹拌ストレス(振盪)に焦点を当てたプレフォーミュレーション研究は、L-アルギニンが安定化をもたらす効果を有することを示した。実施例7および
図7参照。
【0034】
プレフォーミュレーション研究は、トレハロースおよびスクロースのような糖類に対するアダリムマブ製剤の適合性を示唆し、トレハロース製剤による増大した安定性の可能性を示した。実施例2および
図2参照。
【0035】
熱融解に焦点を当てたプレフォーミュレーション研究は、アダリムマブがpHに対して感受性であり、pHが増大すると、特に約pH6以上で安定性が増大する傾向があることを示唆した。実施例3および
図3参照。
撹拌ストレス(振盪)に焦点を当てたプレフォーミュレーション研究は低いpHの、安定化をもたらす可能性を示した。実施例4、
図4参照。この観察はより高いpHが安定化をもたらした実施例3、
図3で観察されたのと反対であった。
【0036】
撹拌ストレス(振盪)に焦点を当てたプレフォーミュレーション研究はポリソルベート80およびポリソルベート20が安定化をもたらす可能性を示し、ポリソルベート20を含む製剤の安定性が高められる傾向を示した。実施例6および
図6参照。
一般的な傾向はプレフォーミュレーション試験で観察することができるが、かかる研究は矛盾する傾向を提供することがある。したがって、プレフォーミュレーション研究単独では、一般に、長期貯蔵下の製剤(例えば約2℃~約8℃で約3カ月、約6カ月、約12カ月、約24カ月、またはそれ以上貯蔵した製剤)の安定性に関する確固たる結論が可能にならない。同様に、例えば単一の種類の賦形剤の、安定化/不安定化をもたらす傾向を調べたプレフォーミュレーション研究では、一般に、多数の種類の賦形剤を含む長期貯蔵下の製剤の安定性に関する確固たる結論が可能にならない。
【0037】
最終的に製剤の安定性はより長い継続時間の研究後の研究された製剤の分析、例えば少なくとも3カ月、6カ月、またはそれ以上後の分析で明らかとなろう。
【0038】
驚くべきことに、アダリムマブが賦形剤の非存在下で高い安定性を示すことが見出された。ほとんどの賦形剤の添加は一般に不安定化をもたらし、安定性に対して正の影響がほとんどないか、または不安定化をもたらすかのいずれかであることが見出された。いくつかの賦形剤、例えばトレハロース、スクロースは十分に容認され、かかる賦形剤の使用が許容されることが発見された。驚くべきことに、トレハロースまたはスクロース中に高濃度(例えば少なくとも約100mg/ml)のアダリムマブを含むアダリムマブの水性製剤は、製剤が約0.1%(w/v)のポリソルベート20を含み、pH約5~約6の緩衝剤を少し含むか全く含まず、他のイオン性賦形剤が製剤に加えられていない(具体的にはイオン性等張化剤もアミノ酸安定剤もない)とき安定であることが見出された。
【0039】
1つの実施形態において、
(a)約90mg/ml~約125mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤;および
(d)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度は約240mOsm/kg~約420mOsm/kgであり;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHは本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約20mM以下の酢酸緩衝剤を含む。さらなる関連の実施形態において、安定な水性製剤は約20mMの酢酸緩衝剤および約250mMのトレハロースを含む。さらなる関連の実施形態において、安定な水性製剤は約20mMの酢酸緩衝剤および約250mMのスクロースを含む。代替の関連する実施形態において、安定な水性製剤は約20mM以下のコハク酸緩衝剤を含む。さらなる関連の実施形態において、安定な水性製剤は約20mMのコハク酸緩衝剤および約250mMのトレハロースを含む。さらなる関連の実施形態において、安定な水性製剤は約20mMのコハク酸緩衝剤および約250mMのスクロースを含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、摂動の所定のレベルは約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、摂動の所定のレベルは約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、摂動の所定のレベルは、約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、摂動の所定のレベルは約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、摂動の所定のレベルは約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0040】
1つの実施形態において、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約25mM以下の酢酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度は約240mOsm/kg~約420mOsm/kgであり;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHが本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約250mMのトレハロースおよび約20mMの酢酸緩衝剤を含む。代替の関連する実施形態において、安定な水性製剤は約250mMのスクロースおよび約20mMの酢酸緩衝剤を含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0041】
1つの実施形態において、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度は約240mOsm/kg~約420mOsm/kgであり;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHが本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約250mMのトレハロースおよび約20mMのコハク酸緩衝剤を含む。代替の関連する実施形態において、安定な水性製剤は約250mMのスクロースおよび約20mMのコハク酸緩衝剤を含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0042】
1つの実施形態において、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHが本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約2℃~約8℃で少なくとも6カ月の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約25℃で少なくとも約14日の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は250mMのトレハロースおよび20mMの酢酸緩衝剤を含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0043】
1つの実施形態において、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHが本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約2℃~約8℃で少なくとも6カ月の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約25℃で少なくとも約14日の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は250mMのスクロースおよび20mMの酢酸緩衝剤を含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0044】
1つの実施形態において、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHは本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約2℃~約8℃で少なくとも6カ月の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約25℃で少なくとも約14日の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は250mMのトレハロースを含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0045】
1つの実施形態において、
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む安定な水性製剤が提供され、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である。約5.5のpHが本明細書に記載されている水性製剤に特に適している。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約2℃~約8℃で少なくとも6カ月の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は約25℃で少なくとも約14日の貯蔵条件下で安定である。関連の実施形態において、安定な水性製剤は250mMのスクロースを含む。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約2℃~約8℃で少なくとも約3カ月貯蔵した後に決定され得る。関連の実施形態において、水性製剤の安定性は製剤を約25℃で少なくとも約1カ月貯蔵した後に決定され得る。一定の実施形態において、安定性はSEC-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積である。一定の実施形態において、安定性はCEX-HPLCによる製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約25%以下の相対的酸性化学種ピーク面積である。一定の実施形態において安定性は光遮蔽粒子計数法による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子が検出されることおよび/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出されることである。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(非還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ)である。一定の実施形態において、安定性はCE-SDS(還元)による製剤の分析および所定のレベルの摂動によって決定される。一定の実施形態において、所定のレベルの摂動は約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピークである。
【0046】
製剤のオスモル濃度
本明細書に記載されている製剤のオスモル濃度は約240mOsm/kg~420mOsm/kgであり得る。一定の実施形態において、本明細書に記載されている製剤のオスモル濃度は約300mOsm/kg~400mOsm/kgである。
オスモル濃度を決定する方法は必ずしも限定されることがなく、当技術分野で公知の任意の方法を含むことができる。オスモル濃度を測定する代表的な方法は凝固点降下である。
【0047】
製剤のpH
本明細書に記載されている水性製剤のpHは約pH5.0~約pH6.0であり得る。本明細書に記載されている水性製剤に特に適したpHは約5.2~約5.8のpHである。一定の実施形態において、水性製剤のpHは約pH5.5である。
安定な水性製剤を調製する方法
アダリムマブ製剤は水性の抗体製剤を製造する公知の方法により調製することができる。
【0048】
例えば、安定性研究のために小規模で製剤を調製する一般的な方法は次の通りである:アダリムマブを精製し、水中に約130mg/mlの濃度で限外ろ過/透析ろ過する(UF/DF)。ストック溶液、例えば2M酢酸、1.375Mトレハロース、1.75スクロース、20%(w/v)ポリソルベート20を調製する。加えて、ストック1M(または代わりに)0.5MのNaOHおよび1M(または代わりに0.5M)HCl溶液をpH調節用に調製する。次いで小規模製剤の各々のストック成分を秤量してビーカーに入れ、成分を穏やかに撹拌しながら最終の希釈前に必要に応じてpH調節して意図した容積にする。
本明細書に記載されている水性製剤を調製する一般的な方法は、
(1)抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の第1の溶液を、
(a)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;および
(b)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む第2の溶液に交換するステップであって、
ここで、第2の溶液はイオン性等張化剤を本質的に含まず;第2の溶液はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;第2の製剤は約5~約6のpHを有し;交換後の抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の濃度は約90mg/ml~約125mg/mlである、ステップと;
(2)ステップ(1)の溶液を非イオン性界面活性剤で希釈して約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤の濃度を得る
ステップと
を含む。関連の方法において、ステップ(2)の前の抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の濃度は約100mg/mlである。
【0049】
本明細書に記載されている水性製剤を調製する一般的な方法は、
(1)抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の第1の溶液を、
(a)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;および
(b)約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤
を含む第2の溶液に交換するステップであって、
ここで、交換後の抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の濃度は約90mg/ml~約125mg/mlであり、第2の溶液はイオン性賦形剤を本質的に含まない、ステップと、
(2)ステップ(1)の溶液を非イオン性界面活性剤で希釈して約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤の濃度を得るステップと
を含む。関連の方法において、ステップ(2)の前の抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の濃度は約100mg/mlである。
【0050】
安定性を決定する方法
貯蔵された(または貯蔵中の)製剤は貯蔵前またはストレス条件への曝露前適切な容器内に含まれることが理解される。適切な容器には、注射による水性製剤の投与に適した容器、例えばガラスバイアル、予め充填されたシリンジ、およびプレフィルドインジェクションペンがある。代替の実施形態において、水性製剤はバルク貯蔵に適した容器、例えば使い捨てのバッグ、使い捨てのプラスチックバッグなどを始めとする、最終の製品(例えばプレフィルドインジェクションペン)を生成し得る容器内に貯蔵され得る。容器、例えば使い捨てのバッグ、などは薬剤規格を満たし、またはその他薬学的に許容されるもしくはバイオ医薬品グレードであることが分かる。
【0051】
製剤中のアダリムマブは劣化し得、例えば限定されないが脱アミド、酸化、変性、断片化、凝集、および/または脱グリコシル化を起こし得る。製剤の安定性は当技術分野で公知の1つ以上の技術により評価し得る。例えば、Liu et al., BioDrugs (2016) 30:321-338 Magnenat et al., MABS (2017) 9(1):127-139参照。これらの各々はアダリムマブの劣化を評価するための公知の技術を記載している。実施例9に記載されている方法も参照。
1つの実施形態において、製剤は1つ以上の以下の技術、凝集体分析のためのサイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SE-HPLC);劣化したタンパク質サイズ変異体を分析するための還元または非還元条件下のキャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS);光遮蔽;目に見える粒子を評価するための目視検査;および/または荷電化学種の変化を評価するためのカチオン交換-高性能液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)により分析される。かかる分析は当技術分野で公知である。例えばLiu et al., BioDrugs (2016) 30:321-338 Magnenat et al., MABS (2017) 9(1):127-139参照。
【0052】
本明細書中で引用した全ての参考文献、例えば特許、特許出願、刊行物、およびデータベースは、具体的に組み込まれるか否か前もって述べられていてもいなくても、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
本発明は以下の実施形態に関する:
1.(a)約90mg/ml~約125mg/mlの抗TNFα抗体;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤;および
(d)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度は約240mOsm/kg~約420mOsm/kgであり;製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
2.(a)約90mg/ml~約125mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤;および
(d)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む安定な水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤のオスモル濃度は約300mOsm/kg~約400mOsm/kgであり;製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
3.約100mg/mlのアダリムマブおよび/または約250mMのトレハロースを含む、実施形態1または実施形態2の製剤。
4.約100mg/mlのアダリムマブおよび/または約250mMのスクロースを含む、実施形態1または実施形態2の製剤。
5.約0.1%(w/v)のポリソルベート20を含む、実施形態1~4のいずれか1つの製剤。
6.約20mMの酢酸緩衝剤または約20mMのコハク酸緩衝剤を含む、実施形態1~5のいずれか1つの製剤。
7.約20mMの酢酸緩衝剤を含む、実施形態1~5のいずれか1つの製剤。
8.約10mMの酢酸緩衝剤を含む、実施形態1~5のいずれか1つの製剤。
9.イオン性賦形剤を本質的に含まない、実施形態1~5のいずれか1つの製剤。
10.約100mg/mlのアダリムマブ、約250mMのトレハロース、および約0.1%のポリソルベート20を含む、実施形態1または実施形態2の製剤。
11.約100mg/mlのアダリムマブ、約250mMのスクロース、および約0.1%のポリソルベート20を含む、実施形態1または実施形態2の製剤。
12.以下の基準の1つ以上を満たす、実施形態1~11のいずれか1つの製剤:
(a)約2℃~約8℃で約3カ月である長期貯蔵下で安定である;
(b)約2℃~約8℃で約6カ月である長期貯蔵下で安定である;
(c)約2℃~約8℃で約12カ月である長期貯蔵下で安定である;および/または
(d)約14日である室温貯蔵下で安定である。
13.安定性が以下の基準の1つ以上により決定される、実施形態1~12のいずれか1つの製剤:
(a)約2℃~約8℃で少なくとも約12カ月貯蔵したときの、凝集のほぼ同等以下の増大;
(b)約25℃で少なくとも1カ月貯蔵したときの、凝集のほぼ同等以下の増大;
(c)約2℃~約8℃で少なくとも12カ月貯蔵したときの、相対パーセント酸化学種のほぼ同等以下の増加;および/または
(d)約25℃で少なくとも1カ月貯蔵したときの、相対パーセント酸化学種のほぼ同等以下の増加;
ここで、製剤はコントロールに対して比較されており;前記コントロールはアダリムマブを製剤とほぼ同一濃度で含む。
14.製剤が約100mg/mlのアダリムマブを含み、コントロールが約100mg/mlのアダリムマブ、230mMのマンニトール、0.1%(w/v)のポリソルベート80からなり、コントロールが約5.2のpHを有する、実施形態13の製剤。
15.凝集がSEC-HPLCにより決定され、および/または相対的酸化学種がCEX-HPLCにより決定される、実施形態13または実施形態14の製剤。
16.安定性が以下の基準の1つ以上により決定される、実施形態1~15のいずれか1つの製剤:
(a)アダリムマブに対するモノマーピークの相対割合が製剤を約2℃~約8℃で少なくとも6カ月貯蔵した後約98%以上であり、ここで前記モノマーピークの相対割合はSEC-HPLCにより決定される;
(b)アダリムマブに対するモノマーピークの相対割合が製剤を約25℃で少なくとも1カ月貯蔵した後約98%以上であり、ここで前記モノマーピークの相対割合はSEC-HPLCにより決定される;
(c)アダリムマブに対する相対的酸性化学種ピークが製剤を約2℃~約8℃で少なくとも12カ月貯蔵した後約25%以下であり;ここで前記相対的酸性化学種ピークはCEX-HPLCにより決定される;および/または
(d)アダリムマブに対する相対的酸性化学種ピークが製剤を約25℃で少なくとも3カ月貯蔵した後約25%以下であり;ここで前記相対的酸性化学種ピークはCEX-HPLCにより決定される。
17.(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
18.250mMのトレハロースおよび20mMの酢酸緩衝剤を含む、実施形態17の製剤。
19.本質的に
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
からなる水性製剤であって、
ここで、製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
20.トレハロース濃度が約250mMであり、酢酸緩衝剤濃度が約20mMである、実施形態19の製剤。
21.(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
22.約250mMのスクロースおよび約20mMの酢酸緩衝剤を含む、実施形態21の製剤。
23.本質的に
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mM以下の酢酸緩衝剤
からなる水性製剤であって、
ここで、製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
24.スクロース濃度が約250mMであり、酢酸緩衝剤濃度が約20mMである、実施形態23の製剤。
25.(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
26.250mMのトレハロースを含む、実施形態25の製剤。
27.本質的に
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのトレハロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
からなる水性製剤であって、
ここで、製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
28.トレハロース濃度が約250mMである、実施形態27の製剤。
29.(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
30.約250mMのスクロースを含む、実施形態29の製剤。
31.本質的に
(a)約100mg/mlのアダリムマブ;
(b)約200mM~約275mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
からなる水性製剤であって、
ここで、製剤は約pH5.0~約pH6.0である、製剤。
32.スクロース濃度が約250mMである、実施形態31の製剤。
33.次のストレス条件:
(a)約25℃約3カ月;
(b)約2℃~約8℃約3カ月;
(c)約2℃~約8℃約6カ月;および/または
(d)約40℃約3カ月
の1つ以上への曝露後安定であると決定された、実施形態1~11および17~32のいずれか1つの製剤。
34.安定性が摂動の所定のレベルを参照することにより決定される、実施形態33の製剤。
35.摂動の所定のレベルが
(a)SEC-HPLCにより評価して約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積;
(b)CEX-HPLCにより評価して約25%以下のアダリムマブの相対的酸性化学種ピーク面積;
(c)CE-SDS(非還元)により評価して約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ);
(d)CD-SDS(還元)により評価して約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピーク;および/または
(e)光遮蔽粒子計数法により評価して約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子および/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出される
の1つ以上である、実施形態34の製剤。
36.安定性がコントロールを参照することにより決定され、前記コントロールが約100mg/mlのアダリムマブ、230mMのマンニトール、0.1%(w/v)のポリソルベート80を含み、約5.2のpHを有し;前記コントロールが製剤と同じ1つ以上のストレス条件に曝露される、実施形態33の製剤。
37.安定性がコントロールを参照して決定され、前記コントロールが市販されているHumira(登録商標)であり;前記コントロールが製剤と同じ1つ以上のストレス条件に曝露される、実施形態33の製剤。
38.室温貯蔵安定性を示す、実施形態1~37のいずれか1つの製剤。
39.長期貯蔵安定性を示す、実施形態1~37のいずれか1つの製剤。
40.長期貯蔵安定性が約2℃~約8℃で少なくとも3カ月である、実施形態39の製剤。
41.長期貯蔵安定性が約2℃~約8℃で少なくとも6カ月である、実施形態39の製剤。
42.約pH5.5である、実施形態1~41のいずれか1つの製剤。
43.実施形態1~41のいずれか1つの製剤を製剤化する方法であって、
(1)抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の第1の溶液を
(a)約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロース;および
(b)約25mM以下の酢酸緩衝剤または約25mM以下のコハク酸緩衝剤
を含む第2の溶液に交換するステップであって、
ここで、第2の溶液はイオン性等張化剤を本質的に含まず;第2の溶液はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;第2の製剤は約5.0~約6.0のpHを有し、交換後の抗TNFα抗体(好ましくはアダリムマブ)の濃度は約90mg/ml~約125mg/mlである、ステップと;
(2)ステップ(1)の溶液を非イオン性界面活性剤で希釈して約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)の非イオン性界面活性剤の濃度を得るステップと
を含む方法。
44.第2の溶液が約200mM~約275mMのトレハロースまたは約200mM~約275mMのスクロースを含み;第2の溶液がイオン性賦形剤を本質的に含まない、実施形態43の方法。
45.抗TNFα抗体がアダリムマブである、実施形態43または実施形態44の方法。
46.第2の溶液のpHが約5.5である、実施形態43~45のいずれか1つの方法。
47.実施形態43~46のいずれか1つの方法によって得られた製剤。
48.単一用量のプレフィルドインジェクションペン、単一用量の予め充填されたシリンジ、または単一用量の予め充填されたバイアルの形態である、実施形態1~42および47のいずれか1つの製剤。
49.単一用量のプレフィルドインジェクションペンの形態である、実施形態1~42および47のいずれか1つの製剤。
50.使い捨てのバッグの形態である、実施形態1~42および47のいずれか1つの製剤。
51.(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mMの酢酸緩衝剤
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.5である、水性製剤。
52.本質的に
(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mMの酢酸緩衝剤
からなる水性製剤であって、
製剤が約pH5.5である、水性製剤。
53.(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mMの酢酸緩衝剤
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性等張化剤を本質的に含まず;製剤はアミノ酸安定剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.5である、水性製剤。
54.本質的に
(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのスクロース;
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20;および
(d)約20mMの酢酸緩衝剤
からなる水性製剤であって、
製剤が約pH5.5である、水性製剤。
55.(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.5である、水性製剤。
56.本質的に
(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのトレハロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
からなる水性製剤であって、
製剤が約pH5.5である、水性製剤。
57.(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
を含む水性製剤であって、
ここで、製剤はイオン性賦形剤を本質的に含まず;製剤は約pH5.5である、水性製剤。
58.本質的に
(a)90~110mg/mlのアダリムマブ;
(b)約250mMのスクロース;および
(c)約0.1%(w/v)のポリソルベート20
からなる水性製剤であって、
製剤が約pH5.5である、水性製剤。
59.製剤が次のストレス条件:
(a)約25℃約3カ月;
(b)約2℃~約8℃約3カ月;
(c)約2℃~約8℃約6カ月;および/または
(d)約40℃約3カ月
の1つ以上への曝露後安定であると決定された、実施形態51~58のいずれか1つの製剤。
60.安定性が摂動の所定のレベルを参照することによって決定される、実施形態59の製剤。
61.摂動の所定のレベルが
(a)SEC-HPLCにより評価して約98%以上のアダリムマブの相対的モノマーピーク面積;
(b)CEX-HPLCにより評価して約25%以下のアダリムマブの相対的酸性化学種ピーク面積;
(c)CE-SDS(非還元)により評価して約90%以上の相対的「IgG」ピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全なままのアダリムマブ);
(d)CD-SDS(還元)により評価して約60%~約72%の相対的重鎖(HC)ピークおよび/または約30%~約36%の相対的軽鎖(LC)ピーク;および/または
(e)光遮蔽粒子計数法により評価して約6000個以下の約10μm以上のサイズの粒子および/または約600個以下の約25μm以上のサイズの粒子が検出される
の1つ以上である、実施形態60の製剤。
62.安定性がコントロールを参照することによって決定され、前記コントロールが約100mg/mlのアダリムマブ、230mMのマンニトール、0.1%(w/v)のポリソルベート80を含み、約5.2のpHを有し;前記コントロールが製剤と同じ1つ以上のストレス条件に曝露される、実施形態59の製剤。
63.安定性がコントロールを参照して決定され、前記コントロールが市販のHumira(登録商標)である、実施形態59の製剤。
64.室温貯蔵安定性を示す、実施形態52~58のいずれか1つの製剤。
65.長期貯蔵安定性を示す、実施形態52~58のいずれか1つの製剤。
66.長期貯蔵安定性が約2℃~約8℃で少なくとも3カ月である、実施形態65の製剤。
67.長期貯蔵安定性が約2℃~約8℃で少なくとも6カ月である、実施形態65の製剤。
【0054】
(実施例1~9)
実施例1~9で使用したアダリムマブは市販のHumira(登録商標)に含まれているものに対応するアミノ酸配列をもつIgG1抗体である。実施例1~9で使用したアダリムマブは
図16に示されている軽鎖配列および重鎖配列を含むことが確認されている。
【0055】
(実施例1)
プレフォーミュレーション研究(無機塩-イオン性等張化剤)
無機塩の熱安定性に対する効果を試験した。無機塩は等張化剤として有用であり得るので試験した。
アダリムマブの熱安定性に対する無機塩の効果を試験した。アダリムマブのサンプルを最終濃度0.2mg/ml、1×濃度のSYPROオレンジ色ゲル染色(Invitrogen)および5、25または125mMの、塩の5つの化学種:塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムで調製した。各々のサンプルを96-ウエルプレートの4つのウエルに分配した(各々50μlのサンプル)。遅い段階的ヒートランプ(機械設定4%)を用いてApplied Biosystemsの7500 Real Time PCRサーモサイクラーシステムでタンパク質を加熱した。蛍光を50~95℃の温度範囲にわたって記録した。タンパク質が加熱され変性するにつれて、色素がタンパク質の新たに曝露される疎水性の部分に結合し、その際、蛍光が増大する。この増大する蛍光により融解曲線が生ずる(例えば
図1B参照)。
各々の曲線の融解温度(Tm)はApplied Biosystemsの特化されたProtein Thermal Shift(商標) Software 1.x.を用いて決定した。融解曲線に基づいてTmを決定するのに2つの方法が利用可能である。第1の方法は曲線の屈曲をBoltzmann分布に適合させる。第2のものは融解曲線の導関数を決定し、微分曲線のピークを決定する。水中のアダリムマブの測定において、2つの方法はほぼ同等な結果を生じた。導関数方法はモデルを適合させるその独立性のために好ましい。
導関数方法はまた、単一の測定で1つより多くのTmを決定することも可能にする。無機塩実験の結果を
図1Aおよび表1に示す。
【0056】
【0057】
表1-可変濃度の5つの無機塩化学種の存在下で決定されたアダリムマブ融解温度。各々の値は4つの融解温度の平均である。誤差はマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差である。
【0058】
表1は第2の集団(または主ピーク上のショルダー)がより高い無機塩濃度で存在することを明らかにした(
図1A~1F)。測定された全ての融解曲線がProtein Thermal Shift(商標)ソフトウエアで2つの融点を生じた条件に対して2つのTm値が表1に与えられた。2つの融点(高Tmおよび低Tm)を生じたサンプルで、低Tmは通例高Tmよりずっと低かったが、高TmはWFI条件のTmより少し低いだけだった(例えば125mMのMgCl
2条件に対して、高Tmは72.3℃と測定されるWFI条件のTmと比較して69.9℃である。一方、低Tmは61.7℃である)。
この結果は、2つの違った集団が高塩条件で存在し得ることを示唆する。高Tmで表わされるものはタンパク質全体に対する全体的な効果によって不安定化され、それにより、無機塩が増加するとTmの連続的な低下が起こり得(例えば周囲の増大する誘電定数に起因する水素結合の強度の低下)、一方、低Tmで表わされるものはおそらく何らかの控えめな状態の変化(例えば単一の、安定化をもたらす塩橋の崩壊)を受けている。2つの集団が4つの異なる無機塩条件(MgCl
2、KCl、NaCl、およびCaCl
2)で現れるという事実は、その効果が、無機塩イオンの1つへの結合のような特異的な何かの結果というより、一般的な特性(例えば同一の前から存在する、安定化をもたらす結合の崩壊)であり得るということを示唆する。
非経口タンパク質医薬の製剤に塩を含める1つの目的は注射可能な溶液の張度を等張(約300mOsm/kg)に調節することである。これらの知見は、試験した全ての無機塩が今回のアッセイにおいて通例使用される濃度(100mMのオーダー)で不安定化をもたらす効果を有するので、研究した無機塩のいずれも製剤の張度の主要な調節剤であるには適切でないことを示す。
【0059】
(実施例2)
プレフォーミュレーション研究(ポリオール/糖類)
アダリムマブのサンプルを実施例1に無機塩について記載したのと同様にqPCR測定用に調製した。マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびグリセロールを5、25、および125mMの濃度で含めた。
これらのサンプルの融解温度を
図2に示し、表2に記載する。Tmのいくらかのささいな変動が観察された。最も高い濃度のマンニトールは糖類/ポリオールを含まないコントロールサンプルより0.34℃低い最も低い測定Tmを示す。トレハロースは最も高い濃度でより高いTmの傾向を示す(0mMトレハロースの場合より0.25℃高い)が、その差は測定の単一の標準偏差よりわずかに高いのみである。全体として、このグループの賦形剤のアダリムマブ安定性に対する効果はニュートラルである。
【0060】
【0061】
表2-可変の濃度の糖類/ポリオールの5つの化学種の存在下で決定されたアダリムマブの融解温度。各々の値は4つの融解温度の平均である。誤差はマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差である。
特に、糖類/ポリオールの存在下でのアダリムマブの全ての融解曲線は単一の曲線であり、最も高い濃度でもショルダーを示さない。これはさらにこれらの賦形剤がアダリムマブを不安定化しないことを示唆する。
他の安定化をもたらす利益も観察されているが、等張性の変更は非経口のタンパク質製剤に糖類/ポリオールを含める重大な理由である(例えばキレート性金属イオン、したがって酸化防止剤として役立つ)。実施例1に示されるように、無機塩(イオン性等張化剤)はアダリムマブを不安定化する傾向がある。トレハロース条件およびスクロース条件でのTmの極めてわずかな増大のために、これらの糖類がさらなる研究のための基本の等張性調整剤として提案された。
【0062】
(実施例3)
プレフォーミュレーション研究(緩衝剤およびpH)
5種類の緩衝剤をスクリーニングのために選んだ:クエン酸塩、トリス、コハク酸塩、酢酸塩およびリン酸塩-クエン酸塩。緩衝範囲を理論的なpKa値から評価し、各々の緩衝剤に適当な3つのpH値をその範囲の低い部分、中央部分および高い部分から選んだ。したがって、全部で15の個々の緩衝剤を調製した。
緩衝剤を以下のように調製した。トリス(pH7.1、8.1、および9.1)、コハク酸塩(pH3.5、5、6.5)および酢酸塩(4、4.8、5.6)緩衝剤サンプルは、各々トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、コハク酸、および氷酢酸を所望の濃度に溶かし、必要に応じてHClまたはNaOHストック溶液でpHを調節することにより調製した。クエン酸塩緩衝剤(pH3、5、7)は、クエン酸一水和物およびクエン酸三ナトリウム二水和物を所望の濃度に溶かし、所望のpHに混合することにより(およその比3:7)作製した。クエン酸塩-リン酸塩緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム.2H
2Oを所望の濃度に溶かし、同じ濃度のクエン酸ストックに対して滴定する(およその比2.3:1のリン酸塩:クエン酸塩)ことにより作製した。必要とされる最終の緩衝剤濃度は振盪実験用が25mM、thermofluor(融解温度)実験用が10、25および40mMであった。
アダリムマブの安定性は
図3および表3に明瞭に示されているようにpHに大いに依存することが見出された。
図3Aは融解温度がおよそ4または5~9のpH範囲においてあらゆる条件で一定のままであることを示している。
アダリムマブのpH依存性は
図3B~3Fの融解曲線に明らかな集団を検査すると明瞭に裏付けられる。高いpH(pH5または6より上)で測定された各々の曲線の場合、水と本質的に重なる単一の集団が明らかである(例えばトリスシリーズ融解曲線)。他の場合、pH4.26のクエン酸塩のように第2の集団が明らかとなり、pH2.81のクエン酸塩のような最も低いpHで、より高い温度に集団がない単一の低温融解曲線が明らかである。
興味深いことに、無機塩シリーズ(実施例1)とは違って、不安定化をもたらすpHの効果は、高Tmを低下させ、同じ測定で第2の集団を生じさせるのではないようである。むしろ、効果には2つのモードがあるようであり、Tmは水の条件または低Tmと同じである(例えばリン酸塩-クエン酸塩シリーズ、
図3)。
この知見の意味合いはpHによるアダリムマブの不安定化が無機塩に関するセクション(実施例1)で述べた控えめな状態を通して起こり得、全体的な不安定化ではないということであろう。例えば、より低いpHは塩橋にとって重大なアミノ酸をプロトン化することができ、したがって塩橋を壊し、タンパク質を不安定化することができる(不安定化のメカニズムは異なり得るが、おそらく塩と同じ部位においても)。
【0063】
【0064】
表3-様々なpH値で決定されたアダリムマブの融解温度。各々の値は4つの融解温度の平均である。誤差はマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差である。
【0065】
(実施例4)
プレフォーミュレーション研究(撹拌安定性およびpH)
pHは実施例3に示されているようにタンパク質安定性に対して特に重要な寄与をすると広く考えられるので、可変のpH条件を撹拌(振盪)ストレッサーに対しても試験した。簡潔に言うと、1M緩衝剤ストックおよびアダリムマブを可変のpH値において99mg/mlのアダリムマブおよび25mMの緩衝剤の濃度に混合した。2ミリリットルの各溶液を6Rバイアルに入れ、ストッパーおよびオーバーシールで密封した。次いでバイアルを4日間300rpmで振盪し、またはネガティブコントロールとして振盪することなく冷蔵庫に貯蔵した。各々の実験は追加のコントロールとして振盪ありおよび振盪なしの水中(緩衝剤なし)タンパク質のサンプルも含んでいた。タンパク質濃度は108mg/mlに限定されていたので、所望の緩衝剤濃度に到達するのに1Mストックの緩衝剤が必要であった。コハク酸塩およびリン酸塩-クエン酸塩緩衝剤の溶解度が限定的であるために、これらを振盪アッセイに含めることはできなかった。にもかかわらず、3~9の所望のpH範囲全体が実験で示された。次いでサンプルを濁度測定により分析した。(1mlの経路長のキュベット中320nmでの分光光度計吸光度測定。)
振盪アッセイの知見を
図4に示す。エラーバーは3つの測定値の標準偏差であり、Thermofluorアッセイよりずっと大きい。全体の傾向は明らかであるが、Thermofluorアッセイ(実施例3)の知見と反対のように見える。すなわち、pHが低いほど、アダリムマブは振盪ストレスに対してより回復力があるように見える。したがって、Thermofluorの結果(実施例3)は5より高いpHが、安定化をもたらす条件であることを示しているが、これらの結果はタンパク質が熱安定性のpH範囲の下端で製剤化するべきであることを示唆している。約5.5の名目のpHが提案される。これは実施例3およびこの実施例から結論されるようにアダリムマブの最適な安定性を可能にするが、依然として安定なpH範囲内である生産における許容範囲(例えば±0.5pH)を可能にする。
【0066】
(実施例5)
プレフォーミュレーション研究(緩衝剤)
実施例4はアダリムマブの最適なpH範囲を示しているが、pH5付近の緩衝を達成するには多数の方法がある。試験した緩衝剤の4種はpH5付近で有効であり、それに加えてアダリムマブ自体が自己緩衝性であり、より高い濃度(例えば約100mg/ml以上)で緩衝系を厳密には必要としない(実施例7参照)。例えば、Gokarn et al., J Pharm Sci (2008) 97(8): 3051-3066参照。したがって、今回の実験は、適切な緩衝剤のいずれが、他のものよりまたは緩衝剤を含まない組成物より良好な選択肢となる安定化効果を付与するかどうかを発見することを意図していた。
この実験では、様々な濃度のコハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩-クエン酸塩、および酢酸緩衝剤を5.2の同じpHに調節し、Thermofluorアッセイにより評価した。緩衝剤の濃度は10、25および40mMであった。実施例1と同様に、アダリムマブの最終濃度は0.2mg/ml、SYPROオレンジは1×であった。
結果は、試験した緩衝剤のいずれも、アダリムマブのTmに対して、安定化をもたらすまたは測定できるほど明らかに正の効果を有してはいなかったことを示している(表4、
図5)。むしろ、全ての緩衝剤系がTmにおいて濃度依存性の低下を示す傾向があった。クエン酸塩は最も不安定化をもたらし、酢酸塩で不安定化は最も弱いようであった。
【0067】
【0068】
表4:様々な濃度の緩衝剤で決定されたアダリムマブの融解温度。各々の値は4つの融解温度の平均である。誤差はマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差である。
【0069】
(実施例6)
プレフォーミュレーション研究(非イオン性界面活性剤)
タンパク質非経口製剤中での非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート)の基本的役割は撹拌ストレスに対して保護することである。今回の実験では、振盪アッセイをポリソルベート20およびポリソルベート80の存在下で行った。ポリソルベートはThermofluorアッセイと適合性でなく、したがって補足の熱安定性データを集めることはできなかった。
99mg/mlのアダリムマブおよび0.1%(w/v)のポリソルベート20または80からなる2ミリリットルのサンプルを6Rバイアルに入れ、密封し、300rpm、周囲温度で4日間撹拌した後サンプルの濁度を分析した。ポリソルベートを含まないコントロールサンプルも試験した。
結果(
図6に示す)はいずれのポリソルベートも撹拌ストレスに対して保護するのに極めて有効であることを示している。いずれのポリソルベートの存在下でも、測定された濁度のレベルは研究において振盪しなかったコントロールサンプルとほとんど同じである。しかしながら、ポリソルベート20および80を比較すると、ポリソルベート20はタンパク質を保護するのに測定できるほど明らかにより有効であるようである(3つのサンプルの標準偏差であるエラーバーを上回る)。
【0070】
(実施例7)
プレフォーミュレーション研究(アミノ酸安定剤)
L-アルギニンは最近その凝集に対する安定化をもたらす能力のためにタンパク質製剤に次第に導入されるようになっている。熱ストレスよりもむしろ撹拌ストレスに対する安定化をもたらすことが観察されているが、今回の実験では、Thermofluorおよび振盪アッセイの両方を行った。振盪実験は200mMのL-アルギニンの存在下で実施例4と同様に行った。Thermofluorアッセイは、濃度依存性の効果を判断するために50および200mMのL-アルギニンの存在下で実施例1と同様にして行った。表5に示されているように、Tmの低下から、L-アルギニンの添加はアダリムマブを不安定化する傾向があった。
図7も参照。
【0071】
【0072】
表5-可変濃度のアミノ酸安定剤L-アルギニンで決定されたアダリムマブの融解温度。各々の値は4つの融解温度の平均である。誤差はマイクロソフトエクセルでSTDEV.Sにより決定された標準偏差である。
【0073】
(実施例8)
アダリムマブによる自己緩衝
次の実験を行って、アダリムマブの自己緩衝性挙動の程度、およびそれがpH範囲にわたってどのように変化するのか評価した。
実験は、5mlのタンパク質(108mg/ml)を容器に分配し、約9のpHに到達するまで撹拌しながら50μlの0.2M NaOHを一度に滴定することによって行った。酸性滴定は、新鮮な5mlの一定分量のタンパク質から出発し、約4のpHに到達するまで50μlの0.2M HClを一度に加えて同じようにして行った(
図8A)。
結果(
図8に示されている)は、アダリムマブがpHの広い範囲にわたって実質的な緩衝能力を有することを示している。関係性はpH5~7の範囲を除いて実質的に直線状である。さらに、
図8Aの曲線は製剤の製造中必要ならばpHを調節するのに必要とされる酸または塩基の量を示す。例えば、塩基性曲線の傾きは5mlの出発容積に対して0.0053pH単位/μlであり、より大きい容積のアダリムマブのpH調節に必要とされる酸または塩基の容積を推定するために使用することができる。しかしながら、他の賦形剤(例えばスクロースおよびグリセロール)がいくつかの緩衝剤系の緩衝能力に影響を及ぼすことができるので、このアプローチは最終の製剤に対して完全に予測するものではない。
第2の組の滴定を1mg/mlのアダリムマブならびに0.002MのHClおよびNaOHで行った(
図8B)。注目すべきことに、この滴定は108mg/mlのアダリムマブで行ったものと極めて類似している。これは、約100mg/mlのより高い濃度に到達するまでは自己緩衝性製剤が例えば製剤化中pH変動を相殺するのに実際的でないとしても、異なる濃度のmAbタンパク質での相対的な緩衝能力が同等であることを示唆している。
【0074】
結論:プレフォーミュレーション研究
この研究の全体的な目的はある範囲の個々の賦形剤の、安定化または不安定化をもたらす効果を決定すること、タンパク質に対する最大の安定性のpHを決定すること、および安定化製剤を仮定することであった。
必要に応じて振盪アッセイおよび/またはThermofluorアッセイを用いてある範囲の塩、糖類/ポリオール、pH値、緩衝系、および安定剤を試験した。アダリムマブを無機塩および緩衝剤のようなイオン性賦形剤の存在により濃度依存的に断定的に不安定化したが、低い濃度の各々は十分に容認された。また、アダリムマブは5より低いpH値により熱不安定化されたが、5より高い試験した全てのpH値で極めて熱安定性であった。しかしながら、振盪安定性傾向は、撹拌安定性が低下するpHと共に増大することを示唆した。糖類のアダリムマブに対する効果は本質的にニュートラルであった。トレハロースは張度変更に対して最も有益な糖類であると思われた。試験した両方のポリソルベートは撹拌ストレスに対してアダリムマブを安定化するのに非常に有効であったが、ポリソルベート20は明らかにそれ以上であった。最後に、L-アルギニンはアダリムマブの撹拌安定性を増大したが、増大は控えめであり、熱安定性は低下し、この賦形剤は考慮から除外した。
したがって、実施例1~7のプレフォーミュレーション研究で示唆された最上の製剤化候補は、約0.1%(w/v)ポリソルベート20を含み、等張性調節のためのトレハロースを含み、約pH5.5に自己緩衝された約100mg/mlのアダリムマブである。代替の製剤化候補は、約0.1%(w/v)ポリソルベート20を含み、等張性調節のためのスクロースを含み、約pH5.5に自己緩衝された約100mg/mlのアダリムマブを含む。
低濃度の緩衝剤、特定のクエン酸塩およびコハク酸塩は容認されたので、製造プロセスは(自己緩衝ではなく)低濃度の緩衝剤を含み得る。したがって、試験する第2の製剤は最良に容認された緩衝系である酢酸緩衝剤を20mMの低い濃度で含む。最後に、トレハロースの代わりにスクロースを含む同じ製剤もさらなる研究のために提案される。
【0075】
(実施例9)
アダリムマブの製剤(安定性分析)
安定性分析(表6に示す)のために4つの製剤を調製した:
【0076】
【0077】
製剤は以下の一般的な方法に基づいて調製した:精製し、水中に約130mg/mlの濃度に限外ろ過/透析ろ過する(UF/DF)。2M酢酸塩、1.375Mトレハロース、1.75 スクロース、20%(w/v)ポリソルベート20のようなストック溶液を調製する。加えて、pH調節のためにストック1M NaClおよび1M HCl溶液を調製する。次いで各々のストック成分を秤量して成分を穏やかに撹拌しながらビーカーに入れ(添加の順序はタンパク質、糖類、酢酸塩、ポリソルベート、pH調節、水でよい)、必要に応じてpH調節の後意図した容積に最終希釈する。
全ての研究にコントロールを用いた。コントロールのアダリムマブは以下の一般的な方法に基づいて調製した。アダリムマブ(Adalimumb)を精製し、230mMマンニトール溶液および127.5mg/mlの濃度に限外ろ過/透析ろ過する(UF/DF)。20%(w/v)ポリソルベート80および460mMマンニトールのストック溶液を調製する。加えて、ストック1M NaClおよび1M HCl溶液をpH調節のために調製する。次いで各々のストック成分を秤量して成分を穏やかに撹拌しながらビーカーに入れ(添加の順序はタンパク質、糖類、ポリソルベート、pH調節、水でよい)必要に応じてpH調節した後意図した容積に最終希釈した。最終のコントロールは5.2のpHで濃度100mg/mlアダリムマブ、230mMマンニトール、0.1%(w/v)ポリソルベート80を有する。
各々の製剤のサンプルを1mlの長さのステーキドニードルプレフィル用シリンジに充填し(1mlの充填容積)、プランジャーストッパーで栓をする。表6の各々の製剤の132のサンプルならびにコントロールを安定性に供した。
サンプルを2℃~8℃、25℃、および40℃で貯蔵した。安定性を貯蔵0、1カ月、3カ月、6カ月および12カ月後の時点で決定した。12月での決定は2℃~8℃での貯蔵の場合のみ決定した。
製剤A~Dの凝集体決定
凝集体をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により決定した。
サイズ排除方法はバイナリーポンプ、オートサンプラーおよびダイオードアレイ検出器を備えたAgilent Infinity 1260機器を用いて行う。分離はアイソクラチック条件下Tosho BioscienceのTSKゲルSuperSW mAb HR、4μm 300mm×7.8mm、250Aカラムで0.1Mリン酸ナトリウム/0.1M塩化ナトリウム、pH6.2移動相を用いて達成する。試験サンプルはmAb溶液を移動相で5mg/mLに希釈することにより調製する。機器制御、データ収集および報告はEmpower 3ソフトウエア(Waters)を用いて行う。
分析の結果を表7に示す。
図9A~9Cは表7に報告されている各々の貯蔵条件に対する相対的モノマーピーク面積を示す。
【0078】
【0079】
製剤A~Dの肉眼では見ることができない粒子濃度決定
肉眼では見ることができない粒子濃度をマイクロフローイメージング(MFI)で決定した。
マイクロフローイメージングを用いる肉眼では見ることができない粒子測定はBot1オートサンプラーを備えたMFI 5200機器(Protein Simple)を用いて行う。サンプルは希釈しないで(4×0.9mL)測定し、サンプルをLAF条件下でサンプルバイアルに移すことにより気泡または粒子汚染物質を導入しないように特別な注意を払う。機器制御、データ収集および報告はProtein Simple MFIソフトウエアMVSSおよびMVASを用いて行う。
分析の結果を表8に示す。
図10A~10Cは各々の貯蔵条件に対する全粒子濃度を示す。
【0080】
【0081】
製剤A~Dの荷電化学種決定
カチオン交換-高性能液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)により決定した相対的主ピーク、酸化学種ピーク、および塩基性ピーク。
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)はクオータナリポンプ、オートサンプラーおよびダイオードアレイ検出器を備えたAgilent Infinity II 1260生体不活性機器を用いて行う。分離はThermo ScientificのMabPac SCX-10、10μm、250mm×4.0mmカラムで、塩勾配を10mMリン酸ナトリウム、pH7.0の移動相Aおよび10mMリン酸ナトリウム/100mM塩化ナトリウム、pH7.0の移動相Bと共に用いて達成する。試験サンプルは0.1%ポリソルベート80を含む移動相AでmAb溶液を0.5mg/mLに希釈することにより調製する。機器制御、データ収集および報告はEmpower 3ソフトウエア(Waters)を用いて行う。
分析の結果を表9に示す。
図11A~11Fは2℃~8℃および25℃の貯蔵条件に対する相対的な主ピーク、相対的な酸性化学種、および相対的な塩基性化学種を示す。
【0082】
【表9-1】
【表9-2】
製剤A~Dのサイズ変異体決定
相対的なIgGピーク(2つの重鎖および2つの軽鎖を有するアダリムマブ)または相対的な軽鎖および重鎖はそれぞれ還元または非還元条件下でキャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)により決定される。
CE-SDS方法はProtein SimpleのMaurice CE機器を用いて行われる。分離はProtein SimpleのMaurice CE-SDSカートリッジの毛細管で達成される。試験サンプルを調製するために、最初に1%SDSを含む50mMリン酸塩緩衝剤pH6.0でmAb溶液を10mg/mLに希釈する。非還元条件の場合NEMを含有する分離ミックスで10mg/mLサンプルを処理し、還元条件の場合β-メルカプトエタノールを含有する分離ミックスで10mg/mLサンプルを処理する。機器制御およびデータ収集はICEソフトウエアのためのCompass(Protein Simple)を用いて行われ、データ取扱いおよび報告はEmpower 3ソフトウエア(Waters)を用いて行われる。分析の結果を表10(非還元CE-SDS)および表11(還元CE-SDS)に示す。表10で、「IgG」は2つの重鎖および2つの軽鎖を有するアダリムマブであり、「HHL」は2つの重鎖および1つの軽鎖をもつ変異体である。表11で、「HC」は重鎖であり、「LC」は軽鎖であり、「DHC」は脱グリコシル化した重鎖である。
図12A~12Fは、非還元条件(NR CE-SDS)および還元条件(R CE-SDS)下、0、1、3、6、および12カ月で測定された2℃~8℃の貯蔵条件、0、1、3、および6カ月で測定された25℃の貯蔵条件、および0、1、および3カ月で測定された40℃の貯蔵条件に対する相対的なIgGピーク面積を示す。
【0083】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
製剤A~Dの目視検査
サンプルを目で見える粒子について検査した(表12)。
焦点に集めた光線の前でサンプルを回転させて目に見える粒子の反射を最大にするSeidenader V90-T目視検査機を用いてサンプルを検査した。
【0084】
【表12】
*注:時間12週で目に見える粒子は全て同じ特性を有していた。粒子は確認するのが容易であり、シリコーンであり得る。というのは、シリコーンは透明であり、シリンジ内で上昇するからである。同じ粒子はまたいくつかのバッファーシリンジでも検出され、これらがタンパク質粒子でないことを確認する。
いずれのサンプルも「外来」とは示されなかった。
製剤A~Dのオスモル濃度およびpH
オスモル濃度(mOsm/kg)を測定した。
オスモル濃度測定は凝固点浸透圧計であるOsmomat 3000(Gonotech)を用いて行われる。50μLのサンプルを希釈しないで測定する。
pHも決定した。
オスモル濃度およびpHを表13に示し、オスモル濃度を
図13に示す。
【0085】
表13
【表13】
生物学的活性(TNFαへの結合)
貯蔵条件下の製剤に対するアダリムマブの生物学的活性(TNFαへの結合)を決定した。
【0086】
アダリムマブのTNF-αへの結合は表面プラズモン共鳴技術を用いる4つの分離したフローセルからなる金コートしたマイクロ流体流量センサーチップで検出される(Biacore T200、GE Healthcare)。アダリムマブはセンサーチップのあらゆるフローセル2-4の金層表面のプロテインAを介して捕捉される。第1のフローセルはブランクのまま残し、基準フローセルとして使用する。5つの濃度のリガンドTNF-αをセンサー表面の4つのフローセル全てに並行して注入する。注入は基準注入、すなわちリガンドを含有しない緩衝剤により調和させる。緩衝剤注入および基準フローセルの両方のシグナルを現実のシグナルから差し引く(二重参照)。チップ表面上に捕捉されたアダリムマブは特異的にTNF-αに結合する。結合および解離を検出し、金層上の屈折率の変化により生じた表面-プラズモン共鳴シグナルの変化によって定量する。表面上で検出されたシグナルの強度は注入したリガンドの濃度に依存する。TNF-αの結合および解離により生じたシグナル変化の時間経過をセンサーグラムとして記録し、これを用いて動態パラメーターka、kdおよびKDを決定する。相対的な結合の評価のためにサンプルのKD値を基準バッチのKD値で正規化する。
【0087】
表面プラズモン共鳴(SPR)により測定されたTNF-アルファによる相対的平均KDを表14および
図14に示す。
【表14-1】
【表14-2】
生物学的活性(FcγRIIIa結合)
貯蔵条件下の製剤に対してアダリムマブの生物学的活性(FcγRIIIaへの結合)を決定した。
アダリムマブのFcγRIIIaへの結合は表面プラズモン共鳴技術を用いる4つの分離したフローセルからなる金コートしたマイクロ流体流量センサーチップで検出される(Biacore T200、GE Healthcare)。リガンドFcγRIIIaはアミンカップリング化学反応によりセンサーチップのフローセル2-4の官能化された金層表面上に共有結合で固定化される。一方、フローセル1はエタノールアミンにより固定化されたブランクであり、基準フローセルとして使用する。アダリムマブをセンサー表面の4つのフローセル全てに連続して注入する。注入は基準注入、すなわちアダリムマブを含有しない緩衝剤により調和させる。緩衝剤注入および基準フローセルの両方のシグナルを現実のシグナルから差し引く(二重参照)。アダリムマブのFc領域はチップ表面上の固定化されたFcγRIIIaにグリコシル化特異的に結合する。アダリムマブの結合および解離を検出し、金層上の屈折率の変化により生じた表面-プラズモン共鳴シグナルの変化によって定量する。表面上で検出されたシグナルの強度は注入した抗体の濃度に依存する。アダリムマブの結合および解離により生じたシグナル変化をセンサーグラムとして記録し、これを使用して定常状態親和性パラメーターKDを決定する。相対的な結合の評価のためにサンプルのKD値は基準バッチのKD値で正規化される。
表面プラズモン共鳴(SPR)により測定されたFcγRIIIaによる相対的平均KDを表15および
図15に示す。
【0088】
【0089】
酸化/脱アミド
貯蔵条件下の製剤に対してアダリムマブの酸化/脱アミドを決定した(表16および17)。
酸化および脱アミド試験はエレクトロスプレー(ESI)イオン化による正モードのDionex Ultimate3000RSLCナノ液体クロマトグラフィーシステムと組み合わせたBruker micrOTOF質量分析計を用いるLC-MSにより行った。スペクトルは1Hzのスペクトル率の200~2500m/zの質量範囲で記録した。分析のためにペプチドまたはタンパク質のESI-MSのための標準的な方法を適用した。ペプチド分離は1%移動相(MP)Bで10分のアイソクラチック溶出の後の1%~35%MP Bの145分にわたる直線勾配を用いて(カラムで)達成した。MP Aは水中0.1%のギ酸(FA)であり、MP Bは90%水性アセトニトリル(ACN)中0.1%FAであった。流量は8μL/minであり、0.8μgの消化したタンパク質を注入した。サンプル調製ステップは、1)6MグアニジンHClおよび100mMトリス、pH7.8中、還元剤としてのジチオスレイトール(DTT)および酸化防止剤としてのメチオニンによる変性および還元、2)ヨードアセトアミドによるシステインアルキル化、3)透析による100mMトリス、0.8M尿素、pH7.0への緩衝剤交換(Scienova; Xpress Micro Dialyser、12~14kDa)、4)トリプシン活性を高めるCaCl2および酸化防止剤としてのメチオニンの存在下でのトリプシンによる消化、ならびに5)水性のFAによる0.2mg/mLタンパク質および2%(v/v)FA濃度への希釈であった。全てのデータをソフトウエアパッケージデータ解析(バージョン4.4、Bruker Daltonik)で処理した。
【0090】
【0091】
【0092】
消化ペプチドの配列は表18に示すとおりである。
表18
【表18】
【配列表】
【国際調査報告】