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特表2022-525562フコシル化阻害用化合物及びそれらの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(54)【発明の名称】フコシル化阻害用化合物及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/48 20060101AFI20220510BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220510BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/382 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20220510BHJP
【FI】
C12Q1/48
C12P21/08
C12N5/00
A61K31/122
A61K31/05
A61K31/135
A61K31/136
A61K31/282
A61K31/255
A61K31/11
A61P35/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K31/352
A61K31/353
A61K31/7024
A61K31/382
A61K31/473
A61K33/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504030
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 US2020022896
(87)【国際公開番号】W WO2020190834
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/819,724
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Triton
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521434920
【氏名又は名称】スコア・ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・イー・ジョーンズ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ61
4B063QQ67
4B063QQ89
4B063QR06
4B063QR41
4B063QR50
4B063QS28
4B063QS36
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD01
4B064CD04
4B064CD30
4B064DA01
4B065AA90X
4B065BB04
4B065BD25
4B065CA25
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BB01
4C086BC17
4C086BC27
4C086EA03
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA10
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC20
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA18
4C206CB09
4C206CB18
4C206FA31
4C206FA32
4C206JA09
4C206JB16
4C206KA01
4C206KA04
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA10
4C206ZA96
4C206ZB15
4C206ZB26
4C206ZC20
(57)【要約】
本開示は、概括的には、フコシル化阻害用化合物及びそれらの使用方法及びフコシル化が低減された抗体の産生方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコシルトランスフェラーゼの阻害方法であって、前記フコシルトランスフェラーゼを、エピカテキンモノガラート(ECG)、エピカテキン-3-モノガラート(ECGC)、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポールの化合物、もしくはそれらを含む組成物、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む前記方法。
【請求項2】
前記フコシルトランスフェラーゼが細胞中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞が抗体を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が組換え抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、以下の標的、すなわち、IL8、ErbB、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HER1、HER2、HER3、HER4、TGF、TGFB1、TGFB2、TGFB3、TGFB4、VEGF、VEGFR1、Flt-1、VEGFR2、Flk-1/KDR、VEGFR3、Flt4、RANK、TNFRSFIIA、SLAMF、SLAMF1、SLAMF2、SLAMF3、SLAMF4、SLAMF5、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、PDGFRα、PDGFRβ、KIR3DL3、KIR3DP1、KIR3DL4、KIR3DL2、MIC、MICA、MICB、TNF、LTα、LTβ、FASL、4-IBBL、OX40L、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7、DR8、CTLA4、PD1、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、TIM1、TIM2、TIM3、LAG、LAG3、CD2、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD30、CD33、CD38、CD39、CD52、CD70、CD73、CD94、CD134、CD137、CD252、CD340、GalNAc-O-ser/thr、Neu5Acα2-6GalNAcα-O-ser/thr、SSEA-、SSEA-2、SSEA-3、SSEA-4、Gal-Gal-NAc、ルイスY、シアリルルイスX、シアリルルイスA、-グロボ(-Globo)、-イソグロボ(-Isoglobo)、-ガングリオ、-イソガングリオ、-ラクト、-ネオラクト、ラクトガングリオ、-ムコ、-初乳(-Neogala)、-モル(-Mollu)、-関節(-Arthro)、-Schisto、-Spirometo、GD1、GD2、GD3、GM1、GM2、フコシルGm1、Neu5GcGm3、及びポリシアル酸の1種以上に結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞によって産生される抗体が、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カロツキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、クラウディキシマブ(claudiximab)、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エノブリツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イファボツズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブベドチン、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブテシリン、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、ウブリツキシマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、またはそれらのバイオシミラーである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
細胞中のタンパク質のフコシル化の阻害方法であって、前記細胞を、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポールの化合物、もしくはそれらを含む組成物、またはそれらの任意の組み合わせと接触させて、前記タンパク質のフコシル化を阻害することを含む前記方法。
【請求項8】
前記化合物または前記組成物が、フコシルトランスフェラーゼを阻害することによってフコシル化を阻害する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞をインビトロもしくはインビボで前記化合物または前記組成物と接触させる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質が抗体である、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、低張性緩衝液、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、DMSO、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、サポニン、TritonX-100、Tween-20、Tween-80、ジギトニン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ベータ溶血性細胞溶解素、ストレプトリシン-O(SLO)、パーフリンゴリシン-O(PFO)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の細胞浸透剤を含む、請求項7~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK293細胞、またはPER.C6細胞である、請求項7~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
フコシル化が低下した抗体の産生方法であって、前記抗体を産生する細胞を、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポールの化合物、もしくはそれらを含む組成物、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む前記方法。
【請求項14】
前記細胞をインビトロもしくはインビボで前記化合物または前記組成物と接触させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物または前記組成物がフコシルトランスフェラーゼを阻害する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が前記細胞から分泌される、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記化合物または前記組成物を、前記抗体の前記分泌の前に前記フコシルトランスフェラーゼと接触させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記産生される抗体のフコシル化のレベルが、前記化合物または前記組成物と接触していない細胞から産生される抗体と比較して低下している、請求項13~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記化合物または前記組成物が、低張性緩衝液、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、DMSO、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、サポニン、TritonX-100、Tween-20、Tween-80、ジギトニン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ベータ溶血性細胞溶解素、ストレプトリシン-O(SLO)、パーフリンゴリシン-O(PFO)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の細胞浸透剤を含む、請求項13~17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK293細胞、またはPER.C6細胞である、請求項13~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
グリコシル化パターンが変化した抗体の産生方法であって、前記抗体を産生する細胞を、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポールの化合物、もしくはそれらを含む組成物、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む前記方法。
【請求項22】
前記細胞をインビトロまたはインビボで前記組成物と接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物または前記組成物がフコシルトランスフェラーゼを阻害する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が前記細胞から分泌される、請求項21~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記化合物または前記組成物を、前記抗体の前記分泌の前に前記細胞と接触させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
産生される抗体のグリコシル化パターンが、前記組成物と接触していない細胞から産生される抗体と比較して変化している、請求項21~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記化合物または前記組成物が、低張性緩衝液、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、DMSO、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、サポニン、TritonX-100、Tween-20、Tween-80、ジギトニン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ベータ溶血性細胞溶解素、ストレプトリシン-O(SLO)、パーフリンゴリシン-O(PFO)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の細胞浸透剤を含む、請求項21~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK293細胞、またはPER.C6細胞である、請求項21~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせ、及び細胞を含む組成物。
【請求項30】
前記細胞が組換え抗体を産生する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記細胞が、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK293細胞、もしくはPER.C6細胞である、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
細胞培養培地をさらに含む、請求項29~31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
1種以上の抗生物質をさらに含む、請求項29~32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
1種以上の選別剤をさらに含む、請求項29~33のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
前記細胞から産生及び分泌される組換え抗体をさらに含む、請求項29~34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせ、及び抗体を含む組成物。
【請求項37】
前記抗体が、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カロツキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、クラウディキシマブ(claudiximab)、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エノブリツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イファボツズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブベドチン、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブテシリン、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、ウブリツキシマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、またはそれらのバイオシミラーである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせを含む無細胞培地。
【請求項39】
抗体をさらに含む、請求項38に記載の培地。
【請求項40】
前記抗体が、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カロツキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、クラウディキシマブ(claudiximab)、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エノブリツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イファボツズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブベドチン、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブテシリン、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、ウブリツキシマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、またはそれらのバイオシミラーである、請求項38に記載の無細胞培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概括的には、抗体などのタンパク質のフコシル化を阻害するための化合物、及びそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
L-フコースは、6-デオキシ-L-ガラクトースまたは単にフコースとも呼ばれ、動物の一部のN-及びO-結合型グリカンならびに糖脂質の成分である単糖である。フコースは通常、血液型抗原、セレクチン、及び抗体に結合したグリカンを含むグリカンの末端修飾として付加される。タンパク質のフコシル化は哺乳動物の発生に関与すると考えられており、また、タンパク質の異常なフコシル化はヒトの疾患に関連していると提案されており、これはがんや関節リウマチにおける上方制御を含む。フコシル化を除去することによって、抗体の結合及び活性が改善されることがあきらかになっている。したがって、フコシル化を阻害するために使用することができる化合物が必要とされている。本実施形態はこのニーズならびに他のニーズを満たす。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態において、フコシルトランスフェラーゼの阻害方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、フコシルトランスフェラーゼを、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、上記フコシルトランスフェラーゼは抗体を産生する細胞中に存在する。
【0004】
いくつかの実施形態において、細胞中のタンパク質のフコシル化の阻害方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、上記細胞を、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物と接触させて、上記タンパク質のフコシル化を阻害することを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、フコシル化が低下した抗体の産生方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、抗体を産生する細胞を、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、上記細胞をインビトロまたはインビボで上記組成物と接触させる。いくつかの実施形態において、上記抗体は上記細胞から分泌される。いくつかの実施形態において、化合物を上記抗体の上記分泌の前にフコシルトランスフェラーゼと接触させる。
【0006】
いくつかの実施形態において、グリコシル化パターンが変化した抗体の産生方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、上記抗体を産生する細胞を、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、上記細胞をインビトロまたはインビボで上記組成物と接触させる。いくつかの実施形態において、上記抗体は上記細胞から分泌される。いくつかの実施形態において、化合物を上記抗体の上記分泌の前にフコシルトランスフェラーゼと接触させる。本明細書に記載のいずれかの方法に従って産生された抗体などのタンパク質に関する「グリコシル化パターンが変化した」とは、本明細書に記載の組成物または化合物と接触していない同一の細胞から産生されたタンパク質と比較して、グリコシル化パターンが異なるタンパク質をいう。
【0007】
いくつかの実施形態において、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせ、及び細胞を含む組成物が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせ、及び抗体を含む組成物が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態において、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせを含む無細胞培地が提供される。いくつかの実施形態において、上記培地は抗体をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プルプロガリンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図2】ヘキサクロロフェンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図3】アクリフラビナムを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図4】エピカテキンモノガラートを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図5】エピカテキン-3-モノガラートを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図6】エピカテキン-3,5-ジガラートを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図7】テアフラビンモノガラートを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図8】タンニン酸を使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図9】メタサイクリンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図10】ミトキサントロン塩酸塩を使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図11】ヒカントンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図12】乳酸エスクリジンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図13】オーリントリカルボン酸を使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図14】カルボプラチンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図15】シスプラチンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図16】ジオメチンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図17】スラミンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図18】ヘマチンを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図19】ゴシポールを使用したフコシル化の阻害のグラフを示す図である。
図20】エピカテキンモノガラート(ECG)による抗体フコシル化の低減を示す図である。
図21】エピカテキン-3-モノガラート(ECGC)による抗体フコシル化の低減を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、別段の指示がない限り、用語「約」とは、「約」が修飾する値の±5%を意味することを意図する。したがって、約100は95~105を意味する。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による明確な別段の指示がない限り、複数形の指示物を包含する。
【0013】
本明細書では、用語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含まれる(comprised)」などの「含む(comprising)」の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」及び「有する(has)」などの「有する(having)」の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」及び「含む(including)」などの「含む(including)」の任意の形態)、または「含む(containing)」(ならびに「含む(contains)」及び「含む(contain)」などの「含む(containing)」の任意の形態)は、包括的すなわち開放型であり、記載されていないさらなる要素または方法のステップを排除しない。用語「含む(comprising)」を用いるいずれの組成物または方法も、かかる組成物または方法を、記載された成分もしくは要素「からなる(consisting)」、「からなる(consisting of)」、または「から本質的になる(consisting essentially of)組成物をも記述することも理解する必要がある。
【0014】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、ならびに抗体フラグメントを含む免疫グロブリンまたは抗体分子を包含する。いくつかの実施形態において、上記抗体は組換え抗体である。「組換え抗体」とは、特定の抗体を産生するように遺伝子改変された細胞から発現される抗体をいう。組換え抗体を産生する方法は公知であり、かかる任意の方法を使用することができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、抗体とは、特定の抗原または標的分子に対する結合特異性を示すポリペプチドをいう。インタクトな抗体は、2つの軽鎖及び2つの重鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。通常、それぞれの軽鎖は1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンイソ型の重鎖間で異なる。それぞれの重鎖及び軽鎖は、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。それぞれの重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(V)を有し、それに続いていくつかの定常ドメインを有する。それぞれの軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(V)を有し、他方の末端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の最初の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。いずれの脊椎動物種の抗体の軽鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2種の明確に異なる型式、すなわち、カッパ型及びラムダ型の一方に帰属することができる。いくつかの実施形態において、上記抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM型抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は、IgA、IgA、IgG、IgG、IgG、及びIgG型抗体である。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記抗体は抗体フラグメントである。用語「抗体フラグメント」とは、当該のインタクトな抗体の一部、一般的には、当該のインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を意味する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント、ダイアボディ、単鎖抗体分子、ならびに、複数の標的または同一の標的の異なるエピトープに結合する多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記抗体は、抗体-薬物複合体である。用語「抗体-薬物複合体」とは、当該薬物に結合した抗体または抗体フラグメントを意味する。抗体-薬物複合体の例としては、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブラブタンシン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、ポラツズマブベドチン、サシツズマブゴビテカン、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、及びイノツズマブオゾガマイシンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0018】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫された動物の血清に由来する抗体分子の異種集団である。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495 497 (1975);米国特許第4,376,110号;Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1987, 1992);Harlow and Lane ANTIBODIES: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory (1988);及びColligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)を参照されたく、それらの引用文献の内容は全体が本明細書に援用される。かかる抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、及びそれらの任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスのものであってよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチュ、またはインビボで培養することができる。インビボまたはインサイチュでの高力価のmAbの産生は、現在好ましい産生方法となっている。
【0019】
本明細書では、用語「モノクローナル抗体」(mAb)とは、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体(または抗体フラグメント)を意味する。モノクローナル抗体は通常、単一の抗原決定基を指向する。修飾語「モノクローナル」は、当該の抗体の性格が実質的に均質であることを示し、いずれかの特定の方法による該抗体の産生を要するものではない。例えば、マウスmAbは、Kohler et al., Nature 256:495-497 (1975)のハイブリドーマ法によって作製することができる。アクセプター抗体(ヒトを始めとする、但しヒトに限定されない、別の哺乳動物などの)に由来する軽鎖及び重鎖定常領域に関連する、ドナー抗体(マウスなどの、但しマウスに限定されない)に由来する軽鎖及び重鎖可変領域を含むキメラmAbは、米国特許第4,816,567号に開示される方法または任意のその他の方法によって調製することができる。非ヒトドナー免疫グロブリン(マウスなどの、但しマウスに限定されない)に由来するCDR及び1種以上のヒト免疫グロブリンに由来する分子の残りの免疫グロブリン由来部分を有し、任意選択で結合親和性を維持するための変化したフレームワーク支持残基を有するヒト化mAbは、Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86:10029-10032 (1989)及びHodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)に開示される技法によって得ることができる。抗体をヒト化する方法は慣用的であり、本明細書に記載の方法にとって重要ではない。
【0020】
本明細書では、用語「と組み合わせて」とは、記載される複数の薬剤を、混合物中で一緒に、複数の単剤として同時に、もしくは任意の順序で複数の単剤として逐次に、細胞、動物、または標的に投与する、あるいはそれらに接触させることができることを意味する。
【0021】
本明細書では、用語「接触させる」とは、2種の構成要素を互いに近接させることをいう。いくつかの実施形態において、上記構成要素を、共に混合するか、または単に同一の容器中に入れてもよい。組成物も、別の構成要素(例えば、対象、細胞など)に投与される場合、当該の他の構成要素と接触させると見なすことができる。投与は、注射、ピペットによる添加、及び他の慣用的な投与方法によって行うことができる。
【0022】
本明細書では、酵素活性に関する用語「阻害する」とは、当該酵素の活性を任意の測定可能な量の幅で低下させることを意味する。
【0023】
本明細書では、タンパク質修飾に関する用語「低下させる」とは、当該の修飾の量を測定可能な量の幅で低下させることを意味する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は当該化合物の塩である。いくつかの実施形態において、上記塩は上記化合物の薬学的に許容される塩である。本明細書では、語句「薬学的に許容される塩(複数可)」は、酸性基または塩基性基の塩を含むが、これらに限定はされない。塩基性である化合物は、さまざまな無機酸及び有機酸と多種多様な塩を形成することができる。かかる塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を製造するために使用することができる酸は、硫酸塩、チオ硫酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、重炭酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、エシル酸塩、ナプシジシレート(napsydisylate)、トシル酸塩、ベシル酸塩、オルトリン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフタレン酸塩))を含む、但しこれらに限定されない、非毒性の酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩を形成する酸である。アミノ部分を含む化合物は、上述の酸に加えて、さまざまなアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成することができる。酸性である化合物は、さまざまな薬理学的に許容されるカチオンを有する塩基塩を形成することができる。かかる塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄の塩が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明はまた、本明細書に記載の化合物が1つ以上の第三級アミン部分を有する場合、該化合物の第四級アンモニウム塩も包含する。
【0025】
用語「抗原」とは抗体が結合する標的をいう。
【0026】
タンパク質または抗体に関する用語「精製された」とは、その自然環境または細胞環境において、当該分子と関連する他の物質を実質的に含まないタンパク質または抗体をいう。例えば、精製されたタンパク質は、該タンパク質が由来する細胞または組織由来の細胞物質または他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、試料であって、その中の単離されたタンパク質が、それを分析するのに十分に純粋であるか、または少なくとも70%~80%(w/w)の純度、少なくとも80%~90%(w/w)の純度、90~95%の純度;且つ少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%(w/w)の純度である上記試料をいう。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って産生される抗体は、産生された後にさらに精製される。
【0027】
本明細書に提示する実施形態は、例えば、タンパク質のフコシル化を低減するために使用することができる組成物及び方法を提供する。タンパク質の文脈における「フコシル化の低下」とは、一般に、α(1,2)、α(1,3)、α(1,4)、及びα(1,6)結合を介したグリカンへのフコースの付加の低下をいう。抗体の文脈におけるフコシル化とは、抗体のN-結合型グリカンの還元末端におけるN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)をいう。抗体の文脈における「フコシル化の低減」とは、未処理の抗体と比較した、抗体のN-結合型グリカンの還元末端においてN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)に結合したフコース分子の低減いう。
【0028】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は細胞性免疫の機序であり、この機序により免疫系のエフェクター細胞が特定の抗体に結合した標的細胞を活発に溶解する。ADCCは、免疫応答の一部として、抗体が作用して感染や疾患を制限し且つ封じ込める機序の1つである。モノクローナル抗体であって、該抗体のグリコシル化パターンにおいてフコースの量が低下している上記モノクローナル抗体は、通常のフコシル化された抗体と比較して大幅に高いADCC活性を示すことが明らかになっている。いずれかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、低フコース抗体またはフコースをもたない抗体のADCCが向上することの背後にある機序は、当該の抗体の修飾されたFc領域の標的細胞のFcγRに対する親和性の増加によって媒介されるように思われる。したがって、本明細書で提供される化合物、組成物、及び方法は、より高いADCC活性を有する抗体を提供することができる。
【0029】
特定の化合物またはそれらの塩は本明細書で参照される。表1にこれらの化合物の化学構造を示す。示した化合物の薬学的に許容される塩などの、これらの化合物の塩も包含される。いくつかの実施形態において、これらの塩はこれらの化合物のHCl塩である。
【0030】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書では、1種以上の上記化合物を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、本組成物は、1種以上の上記化合物及び細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記細胞は真核細胞または原核細胞である。いくつかの実施形態において、上記細胞はタンパク質を産生する能力を有する。いくつかの実施形態において、上記細胞は組換え遺伝子改変細胞である。「組換え遺伝子改変細胞」は、トランスフェクション、形質導入、または感染によるなどして、当該細胞にとって外因性である核酸物質で改変された細胞である。いくつかの実施形態において、上記細胞は、抗体をコードする核酸分子で安定に形質導入またはトランスフェクトされている。いくつかの実施形態において、上記細胞は抗体を産生する。
【0032】
さまざまな細胞または細胞型を使用することができる。本組成物中に存在することができる、または本明細書で提供される方法のいずれにおいて使用することができる細胞の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK293細胞、PER.C6細胞などである。
【0033】
いくつかの実施形態において、本組成物は細胞培養培地をさらに含む。いくつかの実施形態において、本組成物は選別剤を含む。いくつかの実施形態において、本組成物は1種以上の抗生物質を含む。選別剤は、特定の核酸分子でトランスフェクトまたは形質導入された細胞を選別するために使用される抗生物質などの薬剤である。さまざまな選別剤を使用することができる。例としては、Geneticin(商標)(G418;(2R,3S,4R,5R,6S)-5-アミノ-6-[(1R,2S,3S,4R,6S)-4,6-ジアミノ-3-[(2R,3R,4R,5R)-3,5-ジヒドロキシ-5-メチル-4-メチルアミノオキサン-2-イル]オキシ-2-ヒドロキシシクロヘキシル]オキシ-2-(1-ヒドロキシエチル)オキサン-3,4-ジオール)、ハイグロマイシンb(O-6-アミノ-6-デオキシ-L-グリセロ-D-ガラクト-ヘプトピラノシリデン-(1-2-3)-O-β-D-タロピラノシル(1-5)-2-デオキシ-N3-メチル-D-ストレプタミン)、ネオマイシン、ブラスチシジン(4-アミノ-1-[4-({(3S)-3-アミノ-5-[[アミノ(イミノ)メチル](メチル)アミノ]ペンタノイル}アミノ)-2,3,4-トリデオキシ-β-D-エリスロ-ヘキサ-2-エノピラヌロノシル]ピリミジン-2(1H)-オン)、マイコフェノール酸((E)-6-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1H-2-ベンゾフラン-5-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸)、Zeocin(商標)(2-({2-[2-{[(6-アミノ-2-{3-アミノ-1-[(2,3-ジアミノ-3-オキソプロピル)アミノ]-3-オキソプロピル}-5-メチル-4-ピリミジニル)カルボニル]アミノ}-3-[(5-{[1-({2-[4-({4-[(ジアミノメチレン)アミノ]ブチル}カルバモイル)-4’,5’-ジヒドロ-2,4’-ビ-1,3-チアゾール-2’-イル]エチル}アミノ)-3-ヒドロキシ-1-オキソ-2-ブタニル]アミノ}-3-ヒドロキシ-4-メチル-5-オキソ-2-ペンタニル)アミノ]-1-(1H-イミダゾール-5-イル)-3-オキソプロポキシ]-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル}オキシ)-3,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルカルバマート)、及びプロマイシン(3’-デオキシ-N,N-ジメチル-3’-[(O-メチル-L-チロシル)アミノ]アデノシン)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される1種以上の化合物及び抗体を含む組成物。いくつかの実施形態において、上記抗体は、細胞から分泌及び/または産生される抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カロツキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、クラウディキシマブ(claudiximab)、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エノブリツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イファボツズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブベドチン、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブテシリン、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、ウブリツキシマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、またはそれらのバイオシミラーである。
【0035】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される組成物は、無細胞または実質的に無細胞である。組成物中に存在する細胞の数が、50,000未満、40,000未満、30,000未満、20,000未満、10,000未満、または5,000未満の場合、当該組成物は実質的に無細胞である。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載される1種以上の化合物またはそれらの塩を含む無細胞培地を含む。上記無細胞培地はまた、本明細書に記載されるいずれかの他の成分を含んでいてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記抗体は、HER1またはEGFRとも呼ばれるErbB1、HER2またはHER2/neuとも呼ばれるErbB2、HER3とも呼ばれるErbB3、及びHER4とも呼ばれるErbB4などのErbBタンパク質に結合することができる抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は、TGFB1、TGFB2、TGFB3、及びTGFB4などの、但しこれらに限定されないトランスフォーミング増殖因子タンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、VEGFR1、Flt-1、VEGFR2、Flk-1/KDR、VEGFR3、及びFlt4などの、但しこれらに限定されない血管内皮増殖因子タンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、TRANCE受容体またはTNFRSFIIAとしても知られる核因子カッパベータの受容体活性化因子(RANK)に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、SLAMF1、SLAMF2、SLAMF3、SLAMF4、SLAMF5、SLAMF6、SLAMF7、及びSLAMF8などの、但しこれらに限定されないシグナル伝達リンパ球活性化分子ファミリー(SLAMFの)タンパク質に関連するタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、PDGFRα及びPDGFRβなどの、但しこれらに限定されない血小板由来増殖因子受容体タンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、KIR3DL3、KIR3DP1、KIR3DL4、及びKIR3DL2などの、但しこれらに限定されないキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーのタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、MICA及びMICBなどの、但しこれらに限定されない主要組織適合遺伝子複合体クラスI鎖関連タンパク質(MIC)に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、LTアルファ、LTベータ、FASL、4-IBBL、OX40L、及びTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)などの、但しこれらに限定されない腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7、及びDR8などの、但しこれらに限定されない細胞死受容体(DR)ファミリーのタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、CTLA4などの、但しこれに限定されない細胞傷害性Tリンパ球抗原ファミリーのタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、PD1などの、但しこれらに限定されないプログラム細胞死受容体に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、及びCD66fなどの、但しこれらに限定されない癌胎児性抗原ファミリーのタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、T細胞免疫グロブリン及び、TIM1、TIM2、TIM3、及びTIM4などの、但しこれらに限定されないムチンドメインファミリーの受容体に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、FAG3などの、但しこれに限定されないリンパ球活性化遺伝子(LAG)に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、CD2、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD30、CD33、CD38、CD39、CD52、CD70、CD73、CD94、CD134、CD137、CD252、及びCD340などの、但しこれらに限定されない分化抗原群に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、Tnとしても知られるムチン関連GalNAc-O-ser/thr及びシアリルTnとしても知られるNeu5Acα2-6GalNAcα-O-Ser/Thrなどの、但しこれらに限定されない腫瘍関連炭水化物抗原に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、SSEA-1(ルイスXとしても知られる)、SSEA-2、SSEA-3、及びSSEA-4などの、但しこれらに限定されない発生段階特異的胚抗原に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、Gal-Gal-NAcとしても知られるトムセン・フライデンライヒ抗原に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、ルイスY、シアリルルイスX、シアリルルイスAなどの、但しこれらに限定されないルイス関連抗原に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、-グロボ(-Globo)、-イソグロボ(-Isoglobo)、-ガングリオ、-イソガングリオ、-ラクト、-ネオラクト、ラクトガングリオ、-ムコ、-初乳(-Neogala)、-モル(-Mollu)、-関節(-Arthro)、-Schisto、及び-Spirometoなどの、但しこれらに限定されないシリーズに分類されるグリコスフィンゴ糖脂質の炭水化物構造に結合する。いくつかの実施形態において、上記抗体は、GD1、GD2、GD3、GM1、GM2、フコシルGm1、Neu5GcGm3、及びポリシアル酸などの、但しこれらに限定されないガングリオシドに結合する。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記組成物はまた、1種以上の緩衝剤、安定剤、乳化剤、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上記組成物は水を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記組成物は1種以上の細胞透過性化合物を含む。いくつかの実施形態において上記細胞透過性化合物は、低張性緩衝液;メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、DMSO、及びアルキルトリメチルアンモニウムブロミドなどの有機化合物;サポニン、TritonX-100、Tween-20、Tween-80、ジギトニン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤;ならびに膜孔形成細胞溶解素、例えば、ストレプトリシン-O(SLO)及びパーフリンゴリシン-O(PFO)などのベータ溶血性細胞溶解素;またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、低張性緩衝液、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、DMSO、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、サポニン、TritonX-100、Tween-20、Tween-80、ジギトニン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ベータ溶血性細胞溶解素、ストレプトリシン-O(SLO)、パーフリンゴリシン-O(PFO)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の細胞浸透剤を含む。
【0039】
したがって、いくつかの実施形態において、フコシルトランスフェラーゼの阻害方法が提供される。本明細書では、「フコシルトランスフェラーゼ」とは、タンパク質などの標的上へのフコースの付加を触媒する酵素をいう。フコシルトランスフェラーゼの例としては、FUT8と呼ばれる場合もある、α1,6フコシルトランスフェラーゼが挙げられるが、これに限定はされない。したがって、いくつかの実施形態において、阻害されるフコシルトランスフェラーゼはFUT8である。いくつかの実施形態において、本方法は、フコシルトランスフェラーゼを、プルプロガリン、ヘキサクロロフェン、アクリフラビナム、バイカレイン、エピカテキンモノガラート、エピカテキン-3-モノガラート、エピカテキン-3,5-ジガラート、テアフラビンモノガラート、タンニン酸、メタサイクリン、アントラリン、ミトキサントロン塩酸塩、ヒカントン、乳酸エスクリジン、オーリントリカルボン酸、カルボプラチン、シスプラチン、プリムレチン、クリシン、ジオメチン、スラミン、ヘマチン、ゴシポール、またはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の塩を含む組成物と接触させることを含む。上記フコシルトランスフェラーゼは、細胞中または無細胞系中に存在していてもよい。
【0040】
様々な細胞がフコシルトランスフェラーゼを含むことができる。細胞の例としては、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK293細胞、またはPER.C6細胞が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの細胞は非限定的な例であり、他の細胞型及び細胞株を使用することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物及び化合物と接触させる細胞は抗体を産生する。いくつかの実施形態において、上記抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は、以下の標的、すなわち、IL8、ErbB、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HER1、HER2、HER3、HER4、TGF、TGFB1、TGFB2、TGFB3、TGFB4、VEGF、VEGFR1、Flt-1、VEGFR2、Flk-1/KDR、VEGFR3、Flt4、RANK、TNFRSFIIA、SLAMF、SLAMF1、SLAMF2、SLAMF3、SLAMF4、SLAMF5、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、PDGFRα、PDGFRβ、KIR3DL3、KIR3DP1、KIR3DL4、KIR3DL2、MIC、MICA、MICB、TNF、LTα、LTβ、FASL、4-IBBL、OX40L、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7、DR8、CTLA4、PD1、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、TIM1、TIM2、TIM3、LAG、LAG3、CD2、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD30、CD33、CD38、CD39、CD52、CD70、CD73、CD94、CD134、CD137、CD252、CD340、GalNAc-O-ser/thr、Neu5Acα2-6GalNAcα-O-Ser/Thr、SSEA-、SSEA-2、SSEA-3、SSEA-4、Gal-Gal-NAc、ルイスY、シアリルルイスX、シアリルルイスA、-グロボ(-Globo)、-イソグロボ(-Isoglobo)、-ガングリオ、-イソガングリオ、-ラクト、-ネオラクト、ラクトガングリオ、-ムコ、-初乳(-Neogala)、-モル(-Mollu)、-関節(-Arthro)、-Schisto、-Spirometo、GD1、GD2、GD3、GM1、GM2、フコシルGm1、Neu5GcGm3、及びポリシアル酸の1種以上に結合する。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記細胞によって産生される上記抗体は、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カロツキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、クラウディキシマブ(claudiximab)、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エノブリツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イファボツズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブベドチン、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブテシリン、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、ウブリツキシマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、またはそれらのバイオシミラーである。
【0043】
バイオシミラーは、本明細書に記載の名称が付された抗体と同様または類似の配列を有するが、同一ではない可能性がある抗体である。バイオシミラー抗体はまた、本明細書に記載されるものを含む、既存のFDA認可の基準となる製品と非常に類似しており、臨床上意味のある差異がない抗体であってもよい。バイオシミラーは、基準となる製品と比較して、安全性、純度、及び効力(安全性と有効性)の点で意味のある(有意な)差異がない場合に、臨床上意味のある差異がない。
【0044】
いずれかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、結果として、上記組成物によってフコシルトランスフェラーゼを阻害することにより、上記組成物を使用して細胞中のタンパク質のフコシル化のレベルを低下させることができる。上記細胞によって産生されるタンパク質に対して、上記フコシル化を低減することができる。いくつかの実施形態において、フコシル化が低下する上記タンパク質は抗体である。抗体の非限定的な例が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約95%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約90%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約85%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約80%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約75%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約70%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約65%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約60%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約55%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約50%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約45%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約40%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約35%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約30%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約25%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約20%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約15%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約10%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約1%~約5%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約5%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約10%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約15%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約20%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約25%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約30%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約35%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約40%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約45%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約50%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約55%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約60%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約65%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約70%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約75%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約80%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約85%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約90%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化のレベルを約95%~約99%低減する。いくつかの実施形態において、タンパク質またはタンパク質のプールのフコシル化のレベルは、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または95%低下する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシル化を低減するが、排除はしない。タンパク質のフコシル化の低下は、特定の細胞型から産生されるタンパク質のフコシル化のレベルを基準としており、上記細胞を、本明細書に記載の組成物及び化合物と接触させる。例えば、抗体がCHO細胞から産生され、次いで上記抗体を産生する同様のまたは類似のCHO細胞を、本明細書で提供される組成物及び化合物と接触させる場合、該抗体に対するフコシル化のレベルが低下する。上記低下率は、本明細書に記載の組成物及び化合物と接触していない、上記CHO細胞から産生された抗体との比較である。
【0045】
いくつかの実施形態において、細胞中のタンパク質のフコシル化の阻害または低減方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記細胞を本明細書に提供される組成物または化合物のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、上記細胞をインビトロまたはインビボで上記組成物と接触させる。いくつかの実施形態において、上記組成物は、フコシルトランスフェラーゼを阻害することによってフコシル化を阻害する。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記細胞は本明細書に開示される細胞型のいずれかである。但し、本明細書に提示される細胞型は非限定的な例である。いくつかの実施形態において、上記細胞は抗体を産生する。いくつかの実施形態において、上記抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は、以下の標的、すなわち、IL8、ErbB、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HER1、HER2、HER3、HER4、TGF、TGFB1、TGFB2、TGFB3、TGFB4、VEGF、VEGFR1、Flt-1、VEGFR2、Flk-1/KDR、VEGFR3、Flt4、RANK、TNFRSFIIA、SLAMF、SLAMF1、SLAMF2、SLAMF3、SLAMF4、SLAMF5、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、PDGFRα、PDGFRβ、KIR3DL3、KIR3DP1、KIR3DL4、KIR3DL2、MIC、MICA、MICB、TNF、LTα、LTβ、FASL、4-IBBL、OX40L、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7、DR8、CTLA4、PD1、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、TIM1、TIM2、TIM3、LAG、LAG3、CD2、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD30、CD33、CD38、CD39、CD52、CD70、CD73、CD94、CD134、CD137、CD252、CD340、GalNAc-O-ser/thr、Neu5Acα2-6GalNAcα-O-Ser/Thr、SSEA-、SSEA-2、SSEA-3、SSEA-4、Gal-Gal-NAc、ルイスY、シアリルルイスX、シアリルルイスA、-グロボ(-Globo)、-イソグロボ(-Isoglobo)、-ガングリオ、-イソガングリオ、-ラクト、-ネオラクト、ラクトガングリオ、-ムコ、-初乳(-Neogala)、-モル(-Mollu)、-関節(-Arthro)、-Schisto、-Spirometo、GD1、GD2、GD3、GM1、GM2、フコシルGm1、Neu5GcGm3、及びポリシアル酸の1種以上に結合する。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記抗体は、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カロツキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、クラウディキシマブ(claudiximab)、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エノブリツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イファボツズマブ、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブベドチン、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブテシリン、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、テプロツムマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、ウブリツキシマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、またはそれらのバイオシミラーである。上記フコシル化阻害または低減のレベルは、本明細書に記載の通りであってよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、フコシルトランスフェラーゼの阻害方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記フコシルトランスフェラーゼを本明細書で提供される組成物または化合物のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、上記フコシルトランスフェラーゼは細胞中に存在する。いくつかの実施形態において、上記細胞は本明細書で提供される細胞型のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記細胞は抗体を産生する。いくつかの実施形態において、上記抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は本明細書に開示される抗体のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記抗体は本明細書に提供される標的または抗原のいずれかに結合する。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗体の産生方法が提供される。いくつかの実施形態において、フコシル化が低減された抗体の産生方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体を産生する細胞を、本明細書で提供される組成物及び化合物のいずれかと接触させることを含む。上記細胞をインビトロまたはインビボで上記組成物及び化合物と接触させてもよい。上記抗体を産生する上記細胞はいずれかの特定の細胞型には限定されず、例えば、本明細書で提供される細胞型のいずれかであってよい。いくつかの実施形態において、上記抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は本明細書で提供される抗体のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記抗体は本明細書に開示される抗原のいずれかを指向する。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される任意の方法は、フコシル化が低下した抗体を精製することを含む。抗体は、例えば、カラムクロマトグラフィー、沈殿などにより精製することができる。他の精製方法としては、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、固定化金属キレートクロマトグラフィー、チオフィリック吸着、Melon(商標)Gelクロマトグラフィー、タンパク質A、G、及びL抗体結合リガンド、タンパク質A、G、及びLによる抗体精製などが挙げられるが、これらに限定はされない。これらの精製方法は非限定的であり、他の方法も使用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、グリコシル化パターンが変化した抗体の産生方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記抗体を産生する細胞を、本明細書で提供される組成物または化合物のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、上記組成物をインビトロまたはインビボで上記細胞と接触させる。いくつかの実施形態において、上記細胞は本明細書で提供される細胞型のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗体は本明細書に開示される抗体のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記抗体は本明細書に開示される抗原のいずれかを指向する。
【0052】
本明細書において産生される抗体はまた、対象の様々な疾病の治療方法であって、上記治療方法を開発した対象である、がん、自己免疫疾患などの上記様々な疾病の上記治療方法に使用することもできる。したがって、いくつかの実施形態において、対象の治療方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、治療用抗体を産生する細胞を、本明細書に記載の化合物または組成物と接触させて、フコシル化が低下した治療用抗体を産生させることを含む。治療用抗体の非限定的な例は本明細書に記載される。上記フコシル化が低下した抗体を単離し、それを必要とする対象への投与に好適な医薬組成物または製剤に製剤化することができる。いくつかの実施形態において、上記対象は、がんまたは、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、ベーチェット病、瘻孔形成性疾患、化膿性汗腺炎、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、及び再発性多発性軟骨炎などの自己免疫疾患の治療を受ける。
【0053】
ここで、以下の実施例を参照して本実施形態を説明する。これらの実施例は例示のみを目的として提示するのであり、本実施形態は、これらの実施例に限定されると何ら解釈されるべきものではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるすべての変化形を包含すると解釈されるべきものである。当業者であれば、本質的に同様の結果をもたらすように変更または改変することができる様々な重要ではないパラメータを容易に認識しよう。
【実施例
【0054】
以下の実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法の例示であって、該組成物及び方法をこれらに限定するものではない。当業者に公知の他の適切な改変及び適合化は以下の実施形態の範囲内である。
【0055】
実施例1:選択された化合物によるフコシル化の阻害
この実施例で例示する化合物はFUT8活性を阻害することが見出され、このことにより、この化合物がフコシルトランスフェラーゼを阻害することができることが示された。以下に例示する化合物は、FUT8活性を阻害するのに有効であることが見出しされ、FUT8などのフコシルトランスフェラーゼを含む細胞から産生される抗体のフコシル化を低減することが期待されよう。簡単に説明すると、化合物をフコシルトランスフェラーゼ(FUT-8)及び適宜の基質と混合し、1時間インキュベートした。反応を停止し、検出試薬混合物を添加して、上記基質タンパク質のフコシル化の量を検出した。各化合物の阻害値を表2に示し、図1~19にも示す。
【0056】
【表7】
【0057】
実施例2:フコシルトランスフェラーゼ阻害剤は抗体のフコシル化を低減
この実施例で例示する化合物は、FUT8などのフコシルトランスフェラーゼを含む細胞によって産生される抗体のフコシル化のレベルを低減することが見出された。簡単に説明すると、エピカテキンモノガラート(ECG)、エピカテキン-3-モノガラート(ECGC)、及びオーリントリカルボン酸(ATA)を細胞培養培地に加え、ATCCから入手した、抗IL8 IgGモノクローナル抗体(mAb)を産生するCHO細胞(ATCCCRL-12445)(米国特許第6,025,158号(その全体が本明細書に援用される)にも記載される)に添加した。指定された期間の後、細胞を回収し、上記抗IL8 mAbを標準的な方法により精製した。次いで、精製した抗IL8 mAbを、ジチオスレイトールを添加することにより還元し、FC-MS分析に供して、フコシル化のレベルを測定した。抗IL8 mAbのフコシル化のレベルの低下を図20及び図21に示す。これらの結果は、フコシルトランスフェラーゼを阻害することによって抗体のフコシル化が低下することを示している。さらに、ECGによって、コアフコシル化種が用量依存的に減少することと、同時に非フコシル化種が増加することが示された。ECGの最大濃度(100μM)ではフコシル化の25%の低下が認められた一方、10分の1の低濃度では13%の低下が達成された。10μMのECGCではフコシル化の6%の低下が達成された。この抗体に関しては、ATAでは、試験したどちらの濃度においてもフコシル化レベルが変化しなかった(データ非表示)。これらの結果は、異なる種類のフコシルトランスフェラーゼ阻害剤を使用すると、抗体のフコシル化が低下する可能性があることを示している。
【0058】
本説明は、記載される特定のプロセス、組成物、または方法論に限定されるものではなく、それは、これらのプロセス、組成物、または方法論が変化してもよいからである。説明で使用される用語は、特定のバージョンまたは実施形態を説明することのみを目的としており、本明細書に記載される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。場合により、一般に理解されている意味をもつ用語は、明確にするため及び/または容易に参照できるように本明細書で定義され、本明細書にかかる定義が含まれるということは、必ずしも、当技術分野で一般に理解されているものに対して実質的に異なることを表すと解釈されるべきものではない。但し、矛盾がある場合は、定義を含む特許明細書が優先される。
【0059】
前述のことから、本開示の様々な実施形態は例示の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な改変を行うことができることが理解されよう。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は、限定することを意図するものではない。
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【国際調査報告】