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特表2022-525579医薬化合物、その製造方法、及び薬剤としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】医薬化合物、その製造方法、及び薬剤としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 243/24 20060101AFI20220511BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C07D243/24 CSP
A61P25/04
A61P25/02
A61K31/5513
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536107
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 UA2019000020
(87)【国際公開番号】W WO2020131000
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】A201812659
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】UA
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521268233
【氏名又は名称】レダー,アナトリー
(71)【出願人】
【識別番号】521268244
【氏名又は名称】ポジガン,ドミトロ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レダー,アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】ポジガン,ドミトロ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZA08
4C084ZA20
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC55
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA08
4C086ZA20
(57)【要約】
本発明は、化合物(I)の結晶形態であって、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される25±0.2°でその最も強い反射を示す結晶形態に関する。本発明は、この結晶形態を製造する方法及びそれを含む医薬組成物にも関する。さらに本発明は、この結晶形態を医薬として使用する方法及び疼痛の治療に使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I):
【化1】
の結晶形態であって、
粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される25±0.2°でその最も強い反射を示す、結晶形態。
【請求項2】
粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される17.8±0.2°、19.4±0.2°、20.9±0.2°、及び27.5±0.2°のうちの1つ以上で、1つ以上の反射をさらに示す、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
粉末X線回折パターンが、2θ値として表される15.1±0.2°で反射を示さない、請求項1又は請求項2に記載の結晶形態。
【請求項4】
融点が186℃~191℃である、請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項5】
融点が187℃~190℃である、請求項1から4のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項で定義された結晶形態を製造する方法であって、
(i)化合物(I)をジメチルスルホキシドに溶解して、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を得るステップと、
(ii)前記化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えて、化合物(I)の懸濁液を得るステップと、
(iii)前記化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させ、請求項1で定義された結晶形態を得るステップ
を含む方法。
【請求項7】
前記化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液が、化合物(I)の飽和ジメチルスルホキシド溶液である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えることが、15℃~25℃の温度で行われる、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させることが、15℃~25℃の温度で行われる、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
1つ以上のさらなる薬学的に活性な薬剤を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
療法で使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
神経障害性疼痛の治療又は予防に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
侵害受容性疼痛の治療又は予防に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
糖尿病性ニューロパチーの治療又は予防に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ヒト又は動物の治療対象における神経障害性疼痛を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは請求項11に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項18】
ヒト又は動物の治療対象における侵害受容性疼痛を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは請求項11に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項19】
ヒト又は動物の治療対象における糖尿病性ニューロパチーを治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項10若しくは請求項11に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物(I):
【0002】
【化1】
の結晶形態であって、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される25±0.2°でその最も強い反射を示す結晶形態に関する。本発明は、前記結晶を製造する方法に及び前記結晶形態を含む医薬組成物も関する。さらに本発明は、この結晶形態を医薬として使用する方法及び疼痛の治療に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化合物(I)(7-ブロモ-3-プロポキシ-5-(2-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロベンゾ-[e]-[1,4]-ジアゼピン-2-オン)は、本技術分野で知られている化合物である。例として、7-ブロモ-3-プロポキシ-5-(2-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロベンゾ-[e]-[1,4]-ジアゼピン-2-オン及びその合成のための方法は、ウクライナ特許第108246号(「Use of 3-alkoxy-1,2-dihydro-3H-1,4-benzdiazepin-2-ones as highly active analgesic agents」、Pavlovskii V、Semenishina K、Andronaty S、Kabanova T、Khalimova O、Reder A、出願第a 2013 01685号、2015年4月10日に公開された特許、公報番号7)に記載されている。
【0004】
WO 2018/067102は、胃粘膜における欠損の形成(潰瘍誘発作用)を生じることなく神経障害性疼痛を抑制し、抗痙攣特性を有する薬物としての医化学、特に7-ブロモ-5-(o-クロロフェニル)-3-プロポキシ-1,2-ジヒドロ-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンの使用に関する。
【0005】
製薬目的で化合物が使用される場合、その化合物の結晶状態は重要となり得る。非晶質固体と比べて、結晶性化合物の固体物性は変化する可能性があり、このことは、製薬的使用に対するその適合性に影響を与える可能性がある。
【0006】
多形性とは、2つ以上の結晶形態で存在する固体物質の性能であり、結晶形態のそれぞれは、その結晶格子中に、分子の異なる配向及び/又は異なる立体配座を有する。各結晶状態又は「多形」は、結晶構造における差異によって、独自の物理化学的特性を示す。
【0007】
さらに多形形態は、化合物の技術的特性に影響を与える異なる機械的特性、例えば、流動性及び緻密性を有することがある。化合物の安定性及び保存期間も、その多形体によって異なることがある。
【0008】
多形は、様々な方法でそれぞれを識別することが可能である。多形は分光学的特性を明確に示し、それらは、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、及び13C-NMR分光法を使用して決定され得る。各結晶形態は、様々な形式でX線を屈折させるという事実を考慮すると、粉末X線回析(XPD)も、多形を特徴付けるために使用することができる。さらに熱的方法、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量分析法(TTA)は、特定の多形における独自の情報を提供することができる。
【0009】
ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載されている化合物(I)は、本明細書において「形態I」と表記される特定の結晶構造を有することが見出されている。図1は、ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載されている結晶性化合物の粉末X線回析パターンを示す。図1に示される通り、2θ値として表される、最も強い反射は、約19°である。図2は、ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載されている結晶性化合物のサンプルに関するDSCサーモグラムを示す。図2に示される通り、およそ195℃の温度で吸熱転移が観察される。このため、形態Iの融点は約195℃である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術の任意の欠点の少なくともいくつかを克服するか、又は商業的に有用なその代替物を提供することは、本発明の1つの目的である。
【0011】
化合物(I)の既知の結晶形態に比べて増強された鎮痛効果又は同程度の鎮痛効果を有する結晶形態を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0012】
化合物(I)の既知の結晶形態又はその組成物に比べて増強されたバイオアベイラビリティ又は同程度のバイオアベイラビリティを示す結晶形態を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0013】
化合物(I)の既知の結晶形態又はその組成物に比べて軽減された毒性又は同程度の毒性を示す結晶形態を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される25±0.2°でその最も強い反射を示す化合物(I):
【0015】
【化2】
の結晶形態を提供する。
【0016】
明確に反対する指示がない限り、本明細書で定義される各態様又は実施形態は、任意の他の態様(複数可)又は実施形態(複数可)と組み合わされてもよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴又は任意の他の複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の結晶形態を製造する方法であって、
(i)化合物(I)をジメチルスルホキシドに溶解して、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を得るステップと、
(ii)この化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えて、化合物(I)の懸濁液を得るステップと、
(iii)化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させて、本明細書に記載の結晶形態を得るステップ
を含む方法を提供する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の結晶形態及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、療法で使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、医薬として使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、神経障害性疼痛の治療又は予防に使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、侵害受容性疼痛の治療又は予防に使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、糖尿病性ニューロパチーの治療又は予防に使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、ヒト又は動物の治療対象における神経障害性疼痛を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、ヒト又は動物の治療対象における侵害受容性疼痛を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、ヒト又は動物の治療対象における糖尿病性ニューロパチーを治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明に記載の化合物の他の好ましい実施形態は、本明細書全体を通して、また特に実施例において見られる。
【0028】
本発明者らは驚くべきことに、本発明の結晶形態が、化合物(I)の既知の結晶形態に比べて増強された鎮痛効果又は同程度の鎮痛効果を有することを見出した。
【0029】
本発明者らは驚くべきことに、本発明の結晶形態が、化合物(I)の既知の結晶形態又はその組成物に比べて増強されたバイオアベイラビリティ又は同程度のバイオアベイラビリティを示すことを見出した。
【0030】
本発明者らは驚くべきことに、本発明の結晶形態が、化合物(I)の既知の結晶形態又はその組成物に比べて同程度の毒性を示すことを見出した。
【0031】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の結晶形態は、その結晶構造によって、上記で検討した有利な効果を示す傾向があると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載の結晶性化合物(形態I/比較例1)の粉末X線回析パターンを示す図である。
図2】ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載の結晶性化合物(形態I/比較例1)のDSCサーモグラムを示す図である。
図3】実施例1の結晶形態(形態II)の粉末X線回析パターンを示す図である。
図4】実施例1の結晶形態(形態II)のDSCサーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において他に定義しない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び専門用語は、当業者に一般的に理解されている意味を有するものとする。前記用語の意味及び範囲は明確であるべきであるが、何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書で提供される定義は、任意の辞書又は外部の定義に優先する。
【0034】
本発明は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される25±0.2°でその最も強い反射を示す、化合物(I):
【0035】
【化3】
の結晶形態を提供する。
【0036】
明確に反対の記述がない限り、全ての粉末X線回析パターンは銅放射線を使用して決定される。
【0037】
好ましくは、前記結晶形態は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される17.8±0.2°、19.4±0.2°、20.9±0.2°、及び27.5±0.2°のうちの1つ以上で、1つ以上の反射をさらに示す。より好ましくは、前記結晶形態は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される17.8±0.2°、19.4±0.2°、20.9±0.2°、及び27.5±0.2°のうちの2つ以上で、2つ以上の反射をさらに示す。またより好ましくは、前記結晶形態は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される17.8±0.2°、19.4±0.2°、20.9±0.2°、及び27.5±0.2°のうちの3つ以上で、3つ以上の反射をさらに示す。最も好ましくは、前記結晶形態は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値として表される17.8±0.2°、19.4±0.2°、20.9±0.2°、及び27.5±0.2°の全てで、4つの反射をさらに示す。
【0038】
好ましくは、本明細書に記載の結晶形態の粉末X線回析パターンは、2θ値として表される15.1±0.2°で反射を示さない。
【0039】
好ましくは、前記結晶形態の融点は186℃~191℃である。より好ましくは、前記結晶形態の融点は187℃~190℃である。またより好ましくは、前記結晶形態の融点は187.5℃~189.5℃である。最も好ましくは、前記結晶形態の融点は約188℃~約189℃である。
【0040】
明確に反対する記述がない限り、融点は示差走査熱量測定法(DSC)を使用して決定される。
【0041】
本発明は、本明細書に記載の結晶形態を製造する方法であって、
(i)化合物(I)をジメチルスルホキシドに溶解し、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を得るステップと、
(ii)この化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加え、化合物(I)の懸濁液を得るステップと、
(iii)化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させ、本明細書に記載の結晶形態を得るステップ
を含む方法を提供する。
【0042】
ステップ(i)における化合物(I)は任意の形態であってもよい。例えば、ステップ(i)における化合物(I)は非晶質であるか、又は形態Iのような結晶形態であってもよく、ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載の製法に従って調製される場合、これは化合物(I)の結晶形態である。好ましくは、ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載の製法に従って調製される場合、ステップ(i)における化合物(I)は化合物(I)の結晶形態である。
【0043】
好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液は、化合物(I)の飽和ジメチルスルホキシド溶液である。
【0044】
好ましくは、化合物(I)をジメチルスルホキシドに溶解するステップは、5~15mlのジメチルスルホキシド当たり0.5g~1.5gの化合物(I)を溶解することを含む。より好ましくは、化合物(I)をジメチルスルホキシドに溶解するステップは、8~12mlのジメチルスルホキシド当たり0.75g~1.25gの化合物(I)を溶解することを含む。より好ましくは、化合物(I)をジメチルスルホキシドに溶解するステップは、9~11mlのジメチルスルホキシド当たり0.9g~1.1gの化合物(I)を溶解することを含む。
【0045】
好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えること(ステップ(ii))は、15℃~25℃の温度で行われる。より好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えること(ステップ(ii))は、17℃~23℃又は18℃~22℃、最も好ましくは19℃~21℃の温度で行われる。
【0046】
好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えること(ステップ(ii))は、100KPa~103KPaの圧力で行われる。より好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えること(ステップ(ii))は、100.5KPa~102.5KPa、またより好ましくは101KPa~102KPaの圧力で行われる。最も好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えること(ステップ(ii))は、約101.325KPa(大気圧)で行われる。
【0047】
好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えるステップ(ステップ(ii))は、50ml~150mlの水当たり5ml~15mlの前記溶液を加えることを含む。より好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えるステップ(ステップ(ii))は、75ml~125mlの水当たり7.5ml~12.5mlの前記溶液を加えることを含む。最も好ましくは、化合物(I)のジメチルスルホキシド溶液を水に加えるステップ(ステップ(ii))は、90ml~110mlの水当たり9ml~11mlの前記溶液を加えることを含む。
【0048】
好ましくは、化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させること(ステップ(iii))は、15℃~25℃の温度で行われる。より好ましくは、化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させること(ステップ(iii))は、17℃~23℃又は18℃~22℃、最も好ましくは19℃~21℃の温度で行われる。
【0049】
好ましくは、化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させること(ステップ(iii))は、100KPa~103KPaの圧力で行われる。より好ましくは、化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させること(ステップ(iii))は、100.5KPa~102.5KPa、より好ましくは101KPa~102KPaの圧力で行われる。最も好ましくは、化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)を析出させること(ステップ(iii))は、約101.325KPa(大気圧)で行われる。
【0050】
好ましくは、ステップ(ii)で得られた懸濁液は、懸濁された化合物(I)がステップ(iii)で析出される前に、少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも15分間、より好ましくは少なくとも20分間、最も好ましくは約30分間混合/撹拌される。
【0051】
好ましくは、化合物(I)の懸濁液中に懸濁された化合物(I)は、30分間~10時間、好ましくは1時間~7時間、より好ましくは1時間~5時間、最も好ましくは2時間~4時間の時間に渡って析出される(ステップ(iii))。
【0052】
好ましくは、前記製法は、化合物(I)の結晶形態がステップ(iii)で析出された後、化合物(I)の結晶形態を濾過することをさらに含む。好ましくは、前記製法は、化合物(I)の結晶形態がステップ(iii)で析出された後、化合物(I)の結晶形態を真空濾過することをさらに含む。
【0053】
好ましくは、前記製法は、ステップ(iii)で得られた化合物(I)の結晶形態を水で洗浄することをさらに含む。代替方法として、好ましくは、ステップ(iii)で得られた化合物(I)の結晶形態は濾過され、続いて水で洗浄される。
【0054】
好ましくは、前記製法は、ステップ(iii)で得られた化合物(I)の結晶形態を乾燥させることをさらに含む。代替方法として、好ましくは、ステップ(iii)で得られた化合物(I)の結晶形態は濾過され、続いて乾燥される。代替方法として、より好ましくは、ステップ(iii)で得られた化合物(I)の結晶形態は濾過され、続いて水で洗浄され、その後乾燥される。好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、100℃~140℃、より好ましくは110℃~130℃、最も好ましくは115℃~125℃の温度で乾燥される。
【0055】
本発明は、本明細書に記載の結晶形態及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0056】
適当な薬学的に許容される賦形剤、例えば、油脂、水、生理食塩水、アルコール(例えば、エタノール)、グリセロール、ポリオール、グルコース水溶液、増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味剤、着色剤、調味料又は芳香剤、濃縮剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒又は可溶化剤、保存効果を得るための化学物質、浸透圧を変更するための塩、コーティング剤又は抗酸化剤、例えばラクトース又はグルコースなどの糖類、トウモロコシ、コムギ、又はコメのデンプン、例えばステアリン酸などの脂肪酸、例えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は無水リン酸カルシウムなどの無機塩、例えばポリビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールなどの合成ポリマー、例えばステアリルアルコール又はベンジルアルコールなどのアルコール、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの合成セルロース誘導体、例えばゼラチン、タルク、植物油、及びアラビアゴムなどの他の従来使用される添加剤は当業者によって知られているであろう。
【0057】
好ましくは、前記医薬組成物は、1つ以上のさらなる薬学的に活性な薬剤を含む。
【0058】
本発明は、療法で使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0059】
本発明は、医薬として使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0060】
本発明は、神経障害性疼痛の治療又は予防に使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。好ましくは、神経障害性疼痛は中枢神経障害性疼痛である。あるいは、好ましくは、神経障害性疼痛は末梢神経障害性疼痛である。
【0061】
本発明は、侵害受容性疼痛の治療又は予防に使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0062】
本発明は、神経障害性疼痛の治療又は予防に使用するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0063】
神経障害性疼痛の治療又は予防のための医薬を製造するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の使用も提供される。好ましくは、神経障害性疼痛は中枢神経障害性疼痛である。あるいは、好ましくは、神経障害性疼痛は末梢神経障害性疼痛である。
【0064】
糖尿病性ニューロパチーの治療又は予防のための医薬を製造するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の使用も提供される。
【0065】
侵害受容性疼痛の治療又は予防のための医薬を製造するための本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の使用も提供される。
【0066】
本発明は、ヒト又は動物の治療対象における神経障害性疼痛を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、神経障害性疼痛は中枢神経障害性疼痛である。あるいは、好ましくは、神経障害性疼痛は末梢神経障害性疼痛である。
【0067】
本発明は、ヒト又は動物の治療対象における侵害受容性疼痛を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0068】
本発明は、ヒト又は動物の治療対象における糖尿病性ニューロパチーを治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする治療対象に、本明細書に記載の結晶形態又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0069】
本開示又はその好ましい実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は1つ以上の要素が存在することを意味する意図がある。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は包括的であることを意図し、列挙された要素以外に追加の要素が存在する可能性があることを意味する意図がある。
【0070】
前述の発明を実施するための形態は、説明及び例示の目的で提供されており、添付された特許請求の範囲を限定する意図はない。本明細書に例示される現時点で好ましい実施形態における多くの変形は、当業者にとって明白であり、添付された特許請求の範囲及びそれに相当する範囲内のものである。
【0071】
本発明のこれら及び他の態様は、付随の図を参照してこれより説明されるであろう。
【0072】
[実施例]
実験の項
粉末X線回析試験は、≪Siemens D500≫回折計(銅放射線、二次ビームにおけるグラファイトモノクロメータ、Bragg-Brentanoジオメトリー)を使用して行われた。
【0073】
単結晶X線試験は、室温(約20℃)及び大気圧(約101.325KPa)にて、回折計≪Xcalibur3≫(モリブデン放射線、グラファイトモノクロメータ、CCD≪Sapphire3≫検出器、ω-スキャン、2θмакс=50°)で行われた。
【0074】
サーモグラフィー試験は、加熱速度5℃/分及び加熱範囲20~210℃にて、示差走査熱量計DSC Q2000「Thermo Sientific」で実施された。
【0075】
結晶サイズに関する情報は、回折計Mastersizer 3000「Malvent」で得られ、物質は、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を含有する分散剤に投入され、超音波下に5分間置かれ、レーザー減光は8~13%である。
【0076】
微粉化は、当該分野で知られている方法を用いて、実験室のTube Mill control(IKA、Germany)で行われた。
【0077】
[実施例]
以下の非限定的な例は本発明をさらに例証する。
【0078】
比較例1
化合物(I)をウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載される通りに調製した。
【0079】
この化合物(I)のサンプルを、≪Siemens D500≫回折計(銅放射線、二次ビームにおけるグラファイトモノクロメータ、Bragg-Brentanoジオメトリー)で、銅放射線を使用した粉末X線回析を使用して分析した。この化合物(I)の粉末X線回析パターンを図1に示す。具体的には、最も強い反射は2θ値として表される約19°でみられる。ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載される通りに調製された化合物(I)は、本明細書で「形態I」と表記される特定の結晶構造を有する。
【0080】
同じ化合物(I) (形態I)のサンプルを、示差走査熱量測定法(DSC)を使用して分析した。DSCサーモグラムを図2に示す。図2に示される通り、およそ195℃の温度で吸熱転移が観察される。このため、形態Iの融点は約195℃である。
【0081】
単結晶X線試験も化合物Iの形態Iに対して行った。この結果を以下の表1に示す。潤滑剤非添加の擦り合わせガラス栓で密封されたサンプル瓶中のエチルアルコールにあらかじめ溶解した形態I(比較例1)である化合物(I)のサンプルを長期間等温(20℃)蒸発(およそ1ヵ月)させることによって、形態Iの結晶を得た。
【0082】
[実施例1]
ウクライナ特許第108246号及びWO 2018/067102に記載される通りに調製された化合物(I)のサンプルをジメチルスルホキシドに溶解する。具体的には、室温(約20℃)で、ジメチルスルホキシド10ml当たり化合物(I)のサンプル1gを溶解する。得られた溶液を、激しい撹拌下の水にゆっくりと室温で加え(水100ml当たり溶液10ml)、形成された懸濁液を30分間混合する。その後、撹拌を停止して析出のために懸濁液を3時間静置する。分散された析出物を濾紙を使用して真空濾過し、精製水(毎回100ml)で3回洗浄して、120℃の乾燥及び加熱チャンバー(universal drying and heating chamber FD-115、Binder Gmbh、Germanyから入手可能)内で乾燥させる。
【0083】
得られた結晶サンプルを、≪Siemens D500≫回折計(銅放射線、二次ビームにおけるグラファイトモノクロメータ、Bragg-Brentanoジオメトリー)で、銅放射線を使用した粉末X線回折を使用して分析した。得られたサンプルの粉末X線回析パターンを図3に示す。具体的には、最も強い反射は2θ値として表される約25±0.2°でみられる。この結晶形態は形態IIとして表記される。
【0084】
形態IIのサンプルを示差走査熱量測定法(DSC)を使用して分析した。このDSCサーモグラムを図4に示す。図4に示される通り、およそ188℃の温度で吸熱転移が観察される。このため、形態IIの融点は約188℃である。
【0085】
単結晶X線試験も化合物Iの形態IIに対して行った。単結晶X線試験のためのサンプルを調製するため、潤滑剤非添加の擦り合わせガラス栓で密封されたサンプル瓶中のイソブチルアルコールにあらかじめ溶解した形態II(実施例1)である化合物(I)のサンプルを長期間等温(20℃)蒸発(およそ1ヵ月)させることによって、形態IIの結晶を得た。以下の表1に示される通り、形態IIは、結晶格子のパラメータ、a=10.9301(9)A、b=19.7560(14)A、c=8.5894(8)A、β=108.165(11)及び格子体積1762.3(3)A3を有する単斜空間群Ccに結晶化する。
【0086】
化合物Iの2つの多形形態の主な結晶学的データの比較を表1に示す。
【0087】
実施例1と比較例1の比較
化合物Iの形態I及び形態IIに関する基本的な結晶学的データ及び構造の精密化(単結晶データ)。
【0088】
【表1】
【0089】
[例2]
化合物(I)の多形形態における平均致死量(LD50)の決定
前記化合物の急性毒性を量的に特徴付ける指標-集団の50%に致死作用をもたらす物質の用量(LD50)に基づいて、物質を特定の毒性クラスへ予備的に割り当てる。実験動物の種類のうちの1種におけるこの指標の決定は、他の種における指標の推定を可能にし、治験の第I相における用量限界の根拠とすることができる。
【0090】
化合物(I)の種々の多形形態における平均致死量を推定するため、(等張塩化ナトリウム溶液で安定化した懸濁液の形態の)それらを実験動物(マウス)に漸増用量で経口投与し(臨床使用で予想される投与経路の1つの例)、投与後14日間を通して、管理された実験群における致死作用を観察した。平均用量を算出するために、観察期間の終了までの前記動物の死亡率/生存率を使用した。
【0091】
形態I及び形態IIのサンプルのLD50値は、形態Iでは1121±190mg/kgであり、形態IIでは1475±402mg/kgであることがわかった。この2つのLD50値は統計的な有意差がなく、それに基づいて、使用される用量において、化合物(I)(プロポキサゼパム(propoxazepam))の2つの同質異像は同程度の毒性を有すると結論付けることができる。経口投与された異なる多形形態におけるLD50値に基づいて、前記化合物は、その同質異像にかかわらず、毒性クラスIV(低毒性化合物)に割り当てることができる。
【0092】
[例3]
温痛覚のモデルにおける化合物(I)の結晶形態の鎮痛活性(「テールフリック」試験)
ラットに収束光線を使用して、ラットの尾「テールフリック」モデルにおける抗侵害受容(鎮痛)活性を評価した。潜時は、尾が光線源から離れることによって決定され、秒で表記された。指標が4~12秒である潜伏期の初期値に関して動物を無作為化した。抗侵害受容性効果の大きさは、潜伏期の長さ(疼痛感受性閾値、PST)の延長によって示された。PSTの初期の指標と試験化合物の投与2時間後のその変化を比較した。最小二乗法を使用して、ED50(ラットのこのモデルにおける鎮痛活性の平均有効用量)の算出を行った。
【0093】
化合物(I)の3つのサンプルを調製し、「テールフリック」試験に使用した。
【0094】
第1のサンプルを、比較例1のサンプル、すなわち形態Iをその天然の粗結晶状態で使用して調製した。具体的には、比較例1の粗結晶サンプルを生理食塩液に分散し、Tween80を用いて安定化させた。この結晶構造(形態I)は未変化のままである。
【0095】
より小さな平均粒径を有する形態Iのサンプルを調製するために、第2のサンプルを、比較例1の粗結晶サンプルを微粉化する(機械的に粉砕する)ことによって調製した。具体的には、微粒子化サンプルを生理食塩液に分散し、Tween80を用いて安定化させた。この結晶構造(形態I)は未変化のままである。
【0096】
第3のサンプルは、実施例1の分散されたサンプル、すなわち結晶形態IIの化合物(I)である。具体的には、実施例1のサンプルを生理食塩液に分散し、Tween80を用いて安定化させた。この結晶構造(形態II)は未変化のままである。第3のサンプルは、並列比較のために第2のサンプルと同等の平均粒子径を有する。
【0097】
結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示される通り、形態IIの平均有効用量の値(0.17mg/kg)は、粗結晶形態I(1.82mg/kg)より大幅に低い。平均粒子サイズが実質的に同じ(粒子の90体積%<約50ミクロン)であるにもかかわらず、形態IIの平均有効用量の値(0.17mg/kg)も、微粒子化形態I(1.06mg/kg)より大幅に低い。
【0100】
したがってこれらの結果から、侵害受容性疼痛に関して、形態II(実施例1)は、形態I(比較例1)に比べて驚くべきことにより高いバイオアベイラビリティを示すことが示される。
【0101】
[例4]
マウスの酢酸誘発疼痛(痙攣)のモデルにおける化合物(I)の結晶形態の鎮痛活性
内臓及び身体の急性深部痛(侵害受容性疼痛)を再現するため、「酢酸誘発疼痛(痙攣)」の方法をマウスに用いた。試験化合物の投与2時間後、マウスに0.75%酢酸溶液(0.1ml/体重10gの用量)を腹腔内投与した。病理学的状態をモニターした後の1分目~20分目(両端値含む)の痙攣回数を計数した。ED50(マウスのこのモデルにおける鎮痛活性に関する平均有効用量)の算出は、最小二乗法を使用して行われた。
【0102】
化合物(I)の2つのサンプルを調製し、「テールフリック」試験に使用した。
【0103】
第1のサンプルは、形態Iの分散されたサンプルである。室温(約20℃)及び大気圧(約101.325KPa)にて、比較例1(形態I)の熱い(65℃)飽和エチルアルコール溶液を水に加えることによって、これを調製した。分散された形態Iの粒径(D(50))は約29μmである。
【0104】
第2のサンプルは、実施例1の分散されたサンプル、すなわち結晶形態IIの化合物(I)である。実施例1を生理食塩液に分散し、Tween-80を用いて安定化させることによって、このサンプルを調製する。この結晶構造は未変化のままである。分散された形態IIの粒径(D(50))は約24.3μmである。
【0105】
結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
表3に示される通り、分散された形態IIの平均有効用量の値(0.89mg/kg)は、分散された形態I(1.87mg/kg)より大幅に低い。したがってこの疼痛モデル(すなわち侵害受容性疼痛の治療)に関して、形態IIは、驚くべきことに形態Iの2倍を上回る活性を有する。したがってこれらの結果から、侵害受容性疼痛に関して、形態II(実施例1)は、形態I(比較例1)に比べて驚くべきことにより高いバイオアベイラビリティを示すことが示される。
【0108】
例えば、上記及びWO 2018/067102に示される通り、化合物(I)は鎮痛特性を示すことが知られている。実施例3及び4の結果から、化合物(I)の形態IIは、神経障害性(中枢性及び末梢性)及び糖尿病性ニューロパチーに関して、同程度の改善されたバイオアベイラビリティを示すであろうことが示唆される。
【0109】
以下の本質的な特徴によって、我々はこのような技術的な結果を得ること-神経障害性疼痛の治療及び予防、侵害受容性疼痛の予防における使用のための、化合物(I)の結晶形態及び医薬組成物を得る簡単な方法を開発することができるようになる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】