(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】HER2を標的とする免疫結合体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220511BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220511BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220511BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220511BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20220511BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20220511BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220511BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220511BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 T
A61K39/39
A61P35/00
A61K47/54
A61K47/58
A61K47/68
A61P43/00 121
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555172
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 US2020022645
(87)【国際公開番号】W WO2020190725
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521086291
【氏名又は名称】ボルト バイオセラピューティクス、インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン、シェリー エリン
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ、マイケル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、デイヴィッド ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、アーサー
(72)【発明者】
【氏名】エングルマン、エドガー ジョージ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB01
4C085CC23
4C085DD51
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF17
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA51
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、式:
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、下付き文字nは、約2から約25の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)の免疫結合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。本発明はさらに、該免疫結合体を含む組成物および該免疫結合体を用いて癌を治療する方法を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、下付き文字nは、約2から約25の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
下付き文字rが1から6の整数である、請求項1の免疫結合体。
【請求項3】
下付き文字rが1から4の整数である、請求項1の免疫結合体。
【請求項4】
下付き文字rが1である、請求項1の免疫結合体。
【請求項5】
下付き文字rが2である、請求項1の免疫結合体。
【請求項6】
下付き文字rが3である、請求項1の免疫結合体。
【請求項7】
下付き文字rが4である、請求項1の免疫結合体。
【請求項8】
下付き文字nが6から12の整数である、請求項1~7のいずれか一項の免疫結合体。
【請求項9】
下付き文字nが8から12の整数である、請求項8の免疫結合体。
【請求項10】
免疫結合体が式:
【化2】
【化3】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1の免疫結合体。
【請求項11】
免疫結合体が式:
【化4】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1の免疫結合体。
【請求項12】
免疫結合体が式:
【化5】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1の免疫結合体。
【請求項13】
免疫結合体が式:
【化6】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1の免疫結合体。
【請求項14】
免疫結合体が式:
【化7】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1の免疫結合体。
【請求項15】
「Ab」がトラスツズマブ、そのバイオシミラー、またはそのバイオベターである、請求項1~14のいずれか一項の免疫結合体。
【請求項16】
「Ab」がペルツズマブ、そのバイオシミラー、またはそのバイオベターである、請求項1~14のいずれか一項の免疫結合体。
【請求項17】
「Ab」がトラスツズマブである、請求項15の免疫結合体。
【請求項18】
「Ab」がトラスツズマブのバイオシミラーである、請求項15の免疫結合体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の複数の免疫結合体を含む組成物。
【請求項20】
アジュバント対抗体構築物の平均比が約0.01から約10である、請求項19の組成物。
【請求項21】
アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約10である、請求項20の組成物。
【請求項22】
アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約6である、請求項21の組成物。
【請求項23】
アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約4である、請求項22の組成物。
【請求項24】
アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約3である、請求項23の組成物。
【請求項25】
治療有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の免疫結合体または請求項19~24のいずれか一項に記載の組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項26】
癌がTLR7および/またはTLR8アゴニズムによって誘発される炎症誘発性反応の影響を受けやすい、請求項25の方法。
【請求項27】
癌がHER2発現癌である、請求項25または26の方法。
【請求項28】
癌が乳癌である、請求項25~27のいずれか一項の方法。
【請求項29】
乳癌がHER2過剰発現乳癌である、請求項28の方法。
【請求項30】
癌が胃癌である、請求項25~27のいずれか一項の方法。
【請求項31】
胃癌がHER2過剰発現胃癌である、請求項30の方法。
【請求項32】
癌が胃食道接合部腺癌である、請求項25~27、30、または31のいずれか一項の方法。
【請求項33】
癌を治療するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の免疫結合体または請求項19~24のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2019年3月15日付で出願された米国仮特許出願番号62/819,356号の優先権を主張し、かかる仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出され、以下のように2020年3月10日に作成された「747235_ST25.txt」と名付けられた1つの28,602バイトのASCII(Text)ファイルとして特定されるコンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍増殖には免疫回避を促進する突然変異の獲得が必要であることが現在では十分に認識されている。それでも、腫瘍形成は、エクスビボ刺激後に宿主免疫系により容易に認識される、突然変異した抗原、すなわちネオアンチゲンの蓄積をもたらす。免疫系がネオアンチゲンを認識することができない理由およびしくみは、解明され始めている。Carmiらによるパイオニア的研究(Nature、521:99-104(2015))は、抗体-腫瘍免疫複合体を介して、活性化した樹状細胞にネオアンチゲンを送達することによって、免疫無知が克服され得ることを示した。これらの研究では、腫瘍内注射による腫瘍結合抗体と樹状細胞アジュバントとの同時送達は、強固な抗腫瘍免疫をもたらした。アクセス不可能な腫瘍に到達し、および/または癌患者および他の対象のための治療選択肢を拡張するために、抗体および樹状細胞アジュバントの送達のための新規組成物および方法が必要とされている。本発明は、そのような組成物および方法を提供する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、式:
【0005】
【0006】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、下付き文字nは、約2から約25の整数であり、および「Ab」は、蛋白質ヒト上皮増殖因子受容体2(「HER2」)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]の免疫結合体(immunoconjugate)、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
本発明は、本明細書において記載される複数の免疫結合体を含む組成物を提供する。
【0008】
本発明は、治療有効量の本明細書において記載される免疫結合体または組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、対象における癌を治療する方法を提供する。
図面のいくつかのビューの簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、HCC1954ヒト乳管癌腫瘍細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。共刺激分子CD40(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)の蛍光強度の中央値を、フローサイトメトリーによって測定し、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について示す。
【
図1B】
図1Bは、HCC1954ヒト乳管癌腫瘍細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。共刺激分子CD86(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)の蛍光強度の中央値を、フローサイトメトリーによって測定し、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について示す。
【
図1C】
図1Cは、HCC1954ヒト乳管癌腫瘍細胞を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。TNFα分泌を、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について、サイトカインビーズアレイ(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)によって測定した。
【
図1D】
図1Dは、JIMT-1ヒト乳管癌腫瘍細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。共刺激分子CD40(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)の蛍光強度の中央値を、フローサイトメトリーによって測定し、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について示す。
【
図1E】
図1Eは、JIMT-1ヒト乳管癌腫瘍細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。共刺激分子CD86(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)の蛍光強度の中央値を、フローサイトメトリーによって測定し、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について示す。
【
図1F】
図1Fは、JIMT-1ヒト乳管癌腫瘍細胞を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。TNFα分泌を、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について、サイトカインビーズアレイ(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)によって測定した。
【
図1G】
図1Gは、COLO 205ヒト結腸腺癌細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。共刺激分子CD40(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)の蛍光強度の中央値を、フローサイトメトリーによって測定し、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について示す。
【
図1H】
図1Hは、COLO 205ヒト結腸腺癌細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。共刺激分子CD86(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)の蛍光強度の中央値を、フローサイトメトリーによって測定し、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について示す。
【
図1I】
図1Iは、COLO 205ヒト結腸腺癌細胞株を使用した、骨髄性APC腫瘍共培養における骨髄活性化に対する免疫結合体Aの効果を示す。TNFα分泌を、トラスツズマブ(点線、円)、トラスツズマブ+化合物7(破線、三角形)または免疫結合体A(実線、四角)について、サイトカインビーズアレイ(生存可能なCD45+CD11c+HLA-DR+上でゲートされた細胞)によって測定した。
【
図2A】
図2Aは、免疫結合体BがCD14のダウンレギュレーションによって示される骨髄分化を誘発することを示す。
【
図2B】
図2Bは、免疫結合体BがCD40のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
【
図2C】
図2Cは、免疫結合体BがCD86のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
【
図2D】
図2Dは、免疫結合体Bとの18時間のインキュベーション後の骨髄細胞からのTNFα分泌を示す。
【
図3A】
図3Aは、免疫結合体CがCD14のダウンレギュレーションによって示される骨髄分化を誘発することを示す。
【
図3B】
図3Bは、免疫結合体CがCD40のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
【
図3C】
図3Cは、免疫結合体CがCD86のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
【
図3D】
図3Dは、免疫結合体Cとの18時間のインキュベーション後の骨髄細胞からのTNFα分泌を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、式:
【0011】
【0012】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、下付き文字nは、約2から約25の整数であり、および「Ab」は、ヒト上皮増殖因子受容体2(「HER2」)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
1つ以上の式:
【0014】
【0015】
のアジュバントに連結されたHER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物を含む、本発明の抗体アジュバント免疫結合体は、従来の抗体結合体よりも優れた薬理学的特性を示す。ポリエチレングリコールベースのリンカー(「PEGリンカー」)は、免疫結合体の適切な精製および単離を提供し、1つ以上のアジュバント部分および抗体構築物の機能を維持し、免疫結合体の理想的な薬物動態(「PK」)特性を生み出すための好ましいリンカーである。本発明の抗体アジュバント免疫結合体のさらなる実施態様および利点は、本明細書における説明から明らかになるであろう。
【0016】
定義
本明細書において使用するとき、用語「免疫結合体」は、リンカーを介してアジュバント部分に共有結合で結合された抗体構築物を指す。
【0017】
本明細書において使用するとき、語句「抗体構築物」は、(i)抗原結合ドメインおよび(ii)Fcドメインを含む抗体または融合蛋白質を指す。
【0018】
本明細書において使用するとき、用語「抗体」は、HER2に特異的に結合しそれを認識する、免疫グロブリン遺伝子またはその断片に由来する抗原結合領域(相補性決定領域(CDR)を含む)を含むポリペプチドを指す。
【0019】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一の対のポリペプチド鎖で構成されており、各対は、ジスルフィド結合によって結合した1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖は、構造ドメインで構成され、これらは、免疫グロブリンドメインと呼ばれる。これらのドメインは、サイズおよび機能によって異なるカテゴリー、例えば、軽鎖および重鎖上の可変ドメインまたは領域(それぞれ、VLおよびVH)、並びに軽鎖および重鎖上の定常ドメインまたは領域(それぞれ、CLおよびCH)に分類される。各鎖のN末端は、約100から110個以上のアミノ酸の可変領域を定義付け、抗原認識に主に関与する、すなわち、抗原結合ドメインであるパラトープと呼ばれる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、これは次に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義する。IgG抗体は、4つのペプチド鎖で構成される約150kDaの大きな分子である。IgG抗体は、約50kDaの2つの同一のクラスのγ重鎖および約25kDaの2つの同一の軽鎖、すなわち四量体四次構造を含有する。2つの重鎖は、互いに、そしてそれぞれジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている。得られる四量体は、一緒になってY字状形状を形成する2つの同一の半体を有する。枝の各端部は、同一の抗原結合ドメインを含有する。ヒトにおいては、血清中のそれらの豊富さの順に命名される4つのIgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)が存在する(すなわち、IgG1が最も豊富である)。典型的には、抗体の抗原結合ドメインは、癌細胞への結合の特異性および親和性において最も重要であろう。
【0020】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして、またはさまざまなペプチダーゼでの分解によって産生される多数の十分に特徴付けられた断片として存在し得る。すなわち、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下で抗体を分解して、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に結合された軽鎖であるFabの二量体であるF(ab)’2を産生する。F(ab)’2は、穏和な条件下で還元され、ヒンジ領域内のジスルフィド結合が切断され、それによって、F(ab)’2二量体がFab’モノマーに変換されてもよい。Fab’モノマーは、本質的にヒンジ領域の部分を有するFabである(例えば、Fundamental Immunology(Paul,editor,7th edition,2012)を参照されたい)。さまざまな抗体断片は、インタクトな抗体の分解に関連して定義されるが、そのような断片は、化学的にまたは組み換えDNA方法を使用してのいずれかで、改めて合成されてもよい。すなわち、本明細書において使用するとき、抗体という用語はまた、全抗体の修飾により産生された抗体断片、または組み換えDNA方法を使用して改めて合成された抗体断片(例えば、単鎖Fv)、若しくはファージディスプレイライブラリーを使用して同定された抗体断片(例えば、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)を参照されたい)のいずれも含む。
【0021】
用語「抗体」は、具体的には、所望の生物活性を示す、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含む。
【0022】
本明細書において使用するとき、用語「エピトープ」は、抗原結合ドメインが結合する(すなわち、抗原結合ドメインのパラトープで)抗原の任意の抗原決定基またはエピトープ決定基を意味する。抗原決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。
【0023】
本明細書において使用するとき、「HER2」は、蛋白質ヒト上皮増殖因子受容体2(配列番号1)、または配列番号1と最少で約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する抗原を指す。
【0024】
配列のパーセント(%)同一性は、例えば、100×[(同一位置)/最小(TGA,TGB)](式中、TGAおよびTGBは、TGAおよびTGBを最小化するアラインメントにおけるペプチド配列AおよびBにおける残基および内部ギャップ位置の数の合計である)として計算することができる。例えば、Russell et al.,J.Mol Biol.,244:332-350(1994)を参照されたい。
【0025】
本明細書において使用するとき、用語「アジュバント」は、アジュバントに曝露された対象において免疫応答を誘発することができる物質を指す。語句「アジュバント部分」は、例えば、リンカーを介して、本明細書において記載される抗体構築物に共有結合で結合された、アジュバントを指す。アジュバント部分は、免疫結合体を対象に投与した後、抗体構築物に結合されたまま、または抗体構築物からの切断(例えば、酵素的切断)後に、免疫応答を誘発することができる。
【0026】
本明細書において使用するとき、用語「Toll様受容体」および「TLR」は、病原体関連分子パターンを認識し、自然免疫における主要なシグナル伝達要素として作用する、高度に保存された哺乳類蛋白質の1つのファミリーの任意のメンバーを指す。TLRポリペプチドは、ロイシンリッチ反復を有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびTLRシグナル伝達に関与する細胞内ドメインを含む、特徴的構造を共有する。
【0027】
用語「Toll様受容体7」および「TLR7」は、公的に利用可能なTLR7配列、例えば、ヒトTLR7ポリペプチドについてのGenBankアクセッション番号AAZ99026、またはネズミTLR7ポリペプチドについてのGenBankアクセッション番号AAK62676と、少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上の配列同一性を共有する核酸またはポリペプチドを指す。
【0028】
用語「Toll様受容体8」および「TLR8」は、公的に利用可能なTLR7配列、例えば、ヒトTLR8ポリペプチドについてのGenBankアクセッション番号AAZ95441、またはネズミTLR8ポリペプチドについてのGenBankアクセッション番号AAK62677と、少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上の配列同一性を共有する核酸またはポリペプチドを指す。
【0029】
「TLRアゴニスト」は、TLR(例えば、TLR7および/またはTLR8)に直接または間接的に結合して、TLRシグナル伝達を誘導する物質である。TLRシグナル伝達におけるいずれの検出可能な差も、アゴニストがTLRを刺激または活性化することを示すことができる。シグナル伝達の差異は、例えば、標的遺伝子の発現における、シグナル伝達成分のリン酸化における、核内因子-κB(NF-κB)などの下流要素の細胞内局在における、ある成分(IL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)などの)と他の蛋白質若しくは細胞内構造との関連性における、またはキナーゼ(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)などの)などの成分の生化学的活性における変化として、明白にされ得る。
【0030】
本明細書において使用するとき、「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベターを指す。
【0031】
本明細書において使用するとき、用語「バイオシミラー」は、以前に承認された抗体構築物(例えば、トラスツズマブ)と同様の活性特性を有する承認された抗体構築物を指す。
【0032】
本明細書において使用するとき、用語「バイオベター」は、以前に承認された抗体構築物(例えば、トラスツズマブ)の改良である承認された抗体構築物を指す。バイオベターは、以前に承認された抗体構築物に対して、1つ以上の修飾(例えば、変更されたグリカンプロファイル、または固有のエピトープ)を有することができる。
【0033】
本明細書において使用するとき、用語「アミノ酸」は、ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質に組み込まれ得る任意のモノマー単位を指す。アミノ酸は、天然に生じるα-アミノ酸およびそれらの立体異性体、並びに非天然(非天然に生じる)アミノ酸およびそれらの立体異性体を含む。与えられたアミノ酸の「立体異性体」は、同じ分子式および分子内結合を有するが、結合および原子の異なる三次元配置を有する異性体(例えば、L-アミノ酸および対応するD-アミノ酸)を指す。アミノ酸は、グリコシル化(例えば、N-連結グリカン、O-連結グリカン、ホスホグリカン、C-連結グリカン、またはグリピエーション)または脱グリコシル化され得る。
【0034】
天然に生じるアミノ酸は、遺伝コードによってコードされたアミノ酸、並びに後に修飾されるそれらのアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンである。天然に生じるα-アミノ酸は、限定されることなく、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびそれらの組合せを含む。天然に生じるα-アミノ酸の立体異性体は、限定されることなく、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、およびそれらの組合せを含む。
【0035】
非天然(非天然に生じる)アミノ酸は、限定されることなく、天然に生じるアミノ酸と同様の様式で機能する、L-またはD-配置のいずれかである、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体、合成アミノ酸、N-置換グリシン、およびN-メチルアミノ酸を含む。例えば、「アミノ酸類似体」は、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基に結合している炭素)を有するが、修飾された側鎖基または修飾されたペプチド骨格を有する非天然アミノ酸、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、およびメチオニンメチルスルホニウムであり得る。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に生じるアミノ酸と同様の様式で機能する化学的化合物を指す。
【0036】
アミノ酸は、本明細書において、一般に知られている3文字記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかによって参照されてもよい。
【0037】
本明細書において使用するとき、用語「リンカー」は、化合物または材料中の2つ以上の部分を共有結合で結合する官能基を指す。例えば、連結部分は、免疫結合体中の抗体構築物にアジュバント部分を共有結合で結合するために役立つことができる。
【0038】
本明細書において使用するとき、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、および「治療すること(treating)」は、軽減;寛解;症状の減少、または症状、傷害、病的状態、若しくは状態を患者にとってより忍容可能なものにすること;症状の進行速度の低減;症状または状態の頻度または持続時間の軽減;または、いくつかの状況では、症状の発症の予防;などの、任意の客観的または主観的パラメータを含む、傷害、病的状態、状態(例えば、癌)、または症状(例えば、認知障害)の治療または改善における成功の任意の兆候を指す。症状の治療または改善は、例えば、身体検査の結果を含む、任意の客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0039】
用語「癌」、「新生物」、および「腫瘍」は、本明細書においては、細胞が細胞増殖に対する制御の有意な喪失に特徴付けされる異常な増殖表現型を示すような、自律的で無秩序な増殖を示す細胞を指すのに使用される。本発明の文脈における検出、分析、および/または治療の対象の細胞は、癌細胞(例えば、癌を有する個体からの癌細胞)、悪性癌細胞、前転移性癌細胞、転移性癌細胞、および非転移性癌細胞を含む。事実上全ての組織の癌が知られている。語句「癌の負担」は、対象における癌細胞の量または癌の体積を指す。従って、癌の負担を減らすことは、対象における癌細胞の数または癌細胞の体積を減らすことを指す。本明細書において使用される用語「癌細胞」は、癌細胞である(例えば、個体が治療され得る任意の癌からの、例えば、癌を有する個体から単離された)、または癌細胞に由来する、例えば、癌細胞のクローン、任意の細胞を指す。例えば、癌細胞は、確立された癌細胞株に由来することができる、癌を有する個体から単離された初代細胞であり得る、癌を有する個体から単離された初代細胞からの子孫細胞であり得る、等々。いくつかの実施態様においては、この用語はまた、細胞内部分、細胞膜部分、または癌細胞の細胞溶解物などの癌細胞の一部を指すことができる。癌腫、肉腫、神経膠芽腫、黒色腫、リンパ腫、および骨髄腫などの固形腫瘍、ならびに白血病などの循環癌を含む、多くの種類の癌が当業者に知られている。
【0040】
本明細書において使用するとき、用語「癌」は、最小限の残存病変を含み、原発性および転移性の両方の腫瘍を含む、固形腫瘍癌(例えば、肺、前立腺、乳房、胃、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓、神経膠芽腫、髄芽腫、平滑筋肉腫、頭頸部扁平上皮癌腫、黒色腫、および神経内分泌)および液体癌(例えば、血液癌);癌腫;軟部組織腫瘍;肉腫;奇形腫;黒色腫;白血病;リンパ腫;および脳癌を含むがこれらに限定されない任意の形態の癌を含む。HER2を発現するいずれの癌も、本対象の方法および組成物によって治療されるのに適した癌である。本明細書において使用するとき、「HER2発現」は、細胞の表面上にHER2受容体を有する細胞を指す。例えば、細胞は、細胞の表面上に約20,000から約50,000のHER2受容体を有し得る。本明細書において使用するとき、「HER2過剰発現」は、約50,000を超えるHER2受容体を有する細胞を指す。例えば、対応する非癌細胞と比較して、2、5、10、100、1,000、10,000、100,000、または1,000,000倍の数のHER2受容体の細胞(例えば、約100万または200万のHER2受容体)。HER2は、乳癌の約25%から約30%において過剰発現していると見積もられている。
【0041】
癌腫は、上皮組織に起因する悪性腫瘍である。上皮細胞は、体の外面を覆い、内部の空洞を裏打ちし、腺組織の裏打ちを形成する。癌腫の例は、腺癌腫(乳房、膵臓、肺、前立腺、胃、胃食道接合部、および結腸の癌などの腺(分泌)細胞で始まる癌)副腎皮質癌腫、肝細胞癌腫;腎細胞癌腫;卵巣癌腫;上皮内癌腫;乳管癌腫;乳房の癌腫;基底細胞癌腫;扁平上皮癌腫;移行上皮癌腫;結腸癌腫;鼻咽頭癌腫;多房性嚢胞性腎細胞癌腫;オート麦細胞癌腫;大細胞肺癌腫;小細胞肺癌腫;非小細胞肺癌腫;などを含むが、これらに限定されない。癌腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常は二次転移として)、肺、乳房、および皮膚に見られるかもしれない。
【0042】
軟部組織腫瘍は、結合組織に由来するまれな腫瘍の非常に多様なグループである。軟部組織腫瘍の例は、胞巣状軟部肉腫;血管腫様線維性組織球腫;コンドロミオキシド線維腫;骨格軟骨肉腫;骨格外粘液型軟骨肉腫;明細胞肉腫;線維形成性の小さな円形細胞腫瘍;隆起性皮膚線維肉腫;子宮内膜間質腫瘍;ユーイング肉腫;線維腫症(デスモイド);線維肉腫、乳児;消化管間質腫瘍;骨巨細胞腫瘍;腱鞘巨細胞腫;炎症性筋線維芽細胞腫瘍;子宮平滑筋腫;平滑筋肉腫;脂肪芽細胞腫;典型的な脂肪腫;紡錘細胞または多形性脂肪腫;非定型脂肪肉腫;軟骨脂肪腫;高分化型脂肪肉腫;粘液型/円形細胞脂肪肉腫;多形性脂肪肉腫;粘液様悪性線維性組織球腫;高悪性度の悪性線維性組織球腫;粘液線維肉腫;悪性末梢神経鞘腫瘍;中皮腫;神経芽細胞腫;骨軟骨腫;骨肉腫;原始神経外胚葉性腫瘍;胞巣状横紋筋肉腫;胚性横紋筋肉腫;良性または悪性神経鞘腫;滑膜肉腫;エヴァンの腫瘍;結節性筋膜炎;デスモイド型線維腫症;孤立性線維性腫瘍;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);血管肉腫;類上皮血管内皮腫;腱鞘巨細胞腫(TGCT);色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS);線維性骨異形成症;粘液線維肉腫;線維肉腫;滑膜肉腫;悪性末梢神経鞘腫瘍;神経線維腫;軟部組織の多形腺腫;並びに線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞、および神経鞘細胞に由来する新生物を含むが、これらに限定されない。
【0043】
肉腫は、間葉系起源の細胞、例えば、軟骨、脂肪、筋肉、血管、線維組織、または他の結合若しくは支持組織を含む骨または体の軟部組織に発生するまれなタイプの癌である。異なるタイプの肉腫は、癌がどこで形成するかに基づく。例えば、骨肉腫は骨で形成し、脂肪肉腫は脂肪で形成し、横紋筋肉腫は筋肉で形成する。肉腫の例は、アスキン腫瘍;肉腫ボトリオイデス;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;悪性血管内皮腫;悪性神経鞘腫;骨肉腫;および軟部組織肉腫(例えば、肺胞軟部肉腫;血管肉腫;嚢胞肉腫フィロデス皮膚線維肉腫隆起(DFSP);デスモイド腫瘍;線維形成性小円形細胞腫瘍;類上皮肉腫;骨格外軟骨肉腫;骨格外骨肉腫;線維肉腫;消化管間質腫瘍(GIST);血管周囲細胞腫;血管肉腫(より一般的には「血管肉腫」と呼ばれる);カポジ肉腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST);神経線維肉腫;滑膜肉腫;および未分化多形性肉腫)を含むが、これらに限定されない。
【0044】
奇形腫は、例えば、髪、筋肉および骨を含む、いくつかの異なるタイプの組織(例えば、内胚葉、中胚葉、および外胚葉の3つの胚葉のいずれかおよび/または全てに由来する組織を含み得る)を含有するかもしれない胚細胞腫瘍のタイプである。奇形腫は、女性の卵巣、男性の睾丸、および子供の尾骨で最も頻繁に生じる。
【0045】
黒色腫は、メラノサイト(色素メラニンを作る細胞)で始まる癌の一形態である。黒色腫は、ほくろ(皮膚黒色腫)で始まるかもしれないが、目や腸などの他の色素性組織でも始まり得る。
【0046】
白血病は、骨髄などの造血組織で始まり、多数の異常な血球が産生されて血流に入ることを引き起こす癌である。例えば、白血病は、通常は血流中で成熟する骨髄由来細胞に起因し得る。白血病は、病気がいかに速く進展および進行するか(例えば:急性対慢性)並びに影響を受ける白血球の種類(例えば:骨髄性対リンパ性)によって名付けられている。骨髄性(myeloid)白血病は、骨髄性(myelogenous)白血病または骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病は、リンパ芽球性白血病またはリンパ球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞は、腫らみ得るリンパ節に集まるかもしれない。白血病の例は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ性白血病(CLL)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
リンパ腫は、免疫系の細胞で始まる癌である。例えば、リンパ腫は、通常はリンパ系で成熟する骨髄由来細胞に起因し得る。リンパ腫には、2つの基本的なカテゴリーが存在する。リンパ腫の1つのカテゴリーは、リードシュテルンベルク細胞と呼ばれるタイプの細胞の存在によって特徴付けられるホジキンリンパ腫(HL)である。現在、6つのタイプのHLが認識されている。ホジキンリンパ腫の例は、結節性硬化症の古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞性CHL、リンパ球枯渇CHL、リンパ球に富むCHL、および結節性リンパ球優位型HLを含む。
【0048】
リンパ腫の他のカテゴリーは、免疫系細胞の癌の大きく多様なグループを含む非ホジキンリンパ腫(NHL)である。非ホジキンリンパ腫は、さらに、緩徐な(ゆっくり増殖する)過程を有する癌と、攻撃的な(速く増殖する)過程を有する癌に分けることができる。現在、61のタイプのNHLが認識されている。非ホジキンリンパ腫の例は、エイズ関連リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小非切断細胞リンパ腫)、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾ガンマデルタT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻T細胞リンパ腫、小児リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、形質転換リンパ腫、治療関連T細胞リンパ腫、およびウォルデンストロームマクログロブリン血症を含むが、これらに限定されない。
【0049】
脳腫瘍は、脳組織の任意の癌を含む。脳腫瘍の例は、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫など)、髄膜腫、下垂体腺腫、および前庭性シュワン腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
癌の「病的状態」は、患者の幸福を損なう全ての現象を含む。これは、限定されることなく、異常または制御不能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常な機能への干渉、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症性または免疫学的応答の抑制または悪化、新生物、前癌状態、悪性腫瘍、およびリンパ節などの周囲または離れた組織若しくは器官の浸潤を含む。
【0051】
本明細書において使用するとき、語句「癌再発」および「腫瘍再発」、並びにそれらの文法的変形は、癌の診断後の腫瘍性または癌性細胞のさらなる増殖を指す。特に、癌性組織においてさらなる癌性細胞増殖が生じるとき、再発が生じるかもしれない。同様に、「腫瘍の拡散」は、腫瘍の細胞が局所的なまたは離れた組織および器官に広がるときに生じ、従って、腫瘍の拡散は、腫瘍の転移を含む。「腫瘍浸潤」は、腫瘍の増殖が局所的に拡散し、圧縮、破壊、または正常な器官機能の阻害によって関与する組織の機能を損なうときに生じる。
【0052】
本明細書において使用するとき、用語「転移」は、元の癌性腫瘍の器官に直接繋がっていない器官または身体部分における癌性腫瘍の増殖を指す。転移は、元の癌性腫瘍の器官に直接繋がっていない器官または身体部分における検出不可能な量の癌性細胞の存在である微小転移を含むと理解されるであろう。転移はまた、元の腫瘍部位からの癌細胞の離脱、並びに身体の他の部分への癌細胞の移動および/または浸潤などのプロセスのいくつかのステップとして定義され得る。
【0053】
本明細書において使用するとき、語句「有効量」および「治療有効量」は、そのために投与される治療効果を生む免疫結合体などの物質の用量を指す。正確な用量は、治療の目的に依存し、既知の技術を用いて当業者により確認可能であろう(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3、1992);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、11th Edition(McGraw-Hill,2006);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、22nd Edition,(Pharmaceutical Press,London,2012)を参照されたい)。
【0054】
本明細書において使用するとき、用語「受容者」、「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」は、交換可能に使用され、診断、治療(treatment)、または治療(therapy)が望まれる任意の哺乳動物対象(例えば、ヒト)を指す。治療(treatment)の目的での「哺乳動物」は、ヒト、家畜(domestic animal)および家畜(farm animal)、並びに犬、馬、猫、牛、羊、山羊、豚、ラクダなどの動物園、スポーツ、またはペット動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。特定の実施態様においては、哺乳動物はヒトである。
【0055】
この発明の文脈における語句「相乗的アジュバント」または「相乗的組合せ」は、それらが組み合わされて、単独で投与されるそれぞれと比較して免疫に対する相乗効果を誘発する、受容体アゴニスト、サイトカイン、およびアジュバントポリペプチドなどの2つの免疫モジュレーターの組合せを含む。特に、本明細書において開示される免疫結合体は、本請求の範囲のアジュバントおよび抗体構築物の相乗的な組合せを含む。投与時のこれらの相乗的組合せは、例えば、抗体構築物またはアジュバントが他の部分の非存在下で投与されるときと比較して、免疫に対するより大きな効果を誘発する。さらに、抗体構築物またはアジュバントのいずれかが単独で投与されるときと比較して、減少した量の免疫結合体が投与されるかもしれない(抗体構築物の総数または免疫結合体の一部として投与されるアジュバントの総数によって測定される)。
【0056】
本明細書において使用するとき、用語「投与する」は、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、病巣内、鼻腔内、若しくは皮下投与、経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、髄腔内投与、または遅延放出用装置、例えば、ミニ浸透圧ポンプの対象への移植を指す。
【0057】
数値を修飾するために本明細書において使用される用語「約」および「周辺」は、数値を取り囲む近い範囲を示す。すなわち、「X」が値である場合、「約X」または「X周辺」は、0.9Xから1.1X、例えば0.95Xから1.05Xまたは0.99Xから1.01Xの値を示す。「約X」または「X周辺」への言及は、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、および1.05Xを具体的に示す。従って、「約X」および「X周辺」は、例えば「0.98X」のクレーム限定に対する書面による説明のサポートを教示および提供することが意図される。
【0058】
抗体アジュバント結合体
本発明は、式:
【0059】
【0060】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、下付き文字nは、約2から約25(例えば、約2から約16、約6から約25、約6から約16、約8から約25、約8から約16、約6から約12、または約8から約12)の整数であり、および「Ab」は、ヒト上皮増殖因子受容体2(「HER2」)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。「Ab」は、例えば、トラスツズマブおよびペルツズマブなどの、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する任意の適切な抗体構築物であり得る。特定の実施態様においては、「Ab」は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベターである。例えば、「Ab」は、MYL-14010、ABP 980、BCD-022、CT-P6、EG12014、HD201、ONS-1050、PF-05280014、オントゥルザント(Ontruzant)、サイピューティング(Saiputing)、ハーツマ(Herzuma)、またはHLX02であり得る。好ましい実施態様においては、「Ab」は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)である。
【0061】
一般に、本発明の免疫結合体は、下付き文字「r」で示されるように、各アジュバントがPEGリンカーを介して抗体構築物に連結された約1から約10のアジュバントを含む。PEGリンカーを介して抗体構築物に連結されたアジュバントのそれぞれは、抗体構築物のリジン残基のアミンで抗体構築物に接合されている。一つの実施態様においては、PEGリンカーを介して抗体構築物に連結された単一のアジュバントが存在するように、rは、1である。いくつかの実施態様においては、rは、約2から約10(例えば、約2から約9、約3から約9、約4から約9、約5から約9、約6から約9、約3から約8、約3から約7、約3から約6、約4から約8、約4から約7、約4から約6、約5から約6、約1から約6、約1から約4、約2から約4、または約1から約3)である。従って、免疫結合体は、PEGリンカーを介して連結された1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアジュバントを有することができる(すなわち、下付き文字「r」が当該数字であり得る)。好ましい実施態様においては、免疫結合体は、PEGリンカーを介して連結された1、2、3、または4個のアジュバントを有する(すなわち、下付き文字「r」が当該数字であり得る)。抗体構築物に対する望ましいアジュバントの比(すなわち、下付き文字「r」の値)は、治療の所望の効果に応じて当業者によって決定され得る。
【0062】
一般に、本発明の免疫結合体は、下付き文字「n」で示されるように、約2から約25(例えば、約2から約16、約6から約25、約6から約16、約8から約25、約8から約16、約6から約12、または約8から約12)のエチレングリコール単位を含む。従って、本発明の免疫結合体は、少なくとも2つのエチレングリコール基(例えば、少なくとも3つのエチレングリコール基、少なくとも4つのエチレングリコール基、少なくとも5つのエチレングリコール基、少なくとも6つのエチレングリコール基、少なくとも7つのエチレングリコール基、少なくとも8つのエチレングリコール基、少なくとも9つのエチレングリコール基、または少なくとも10個のエチレングリコール基)を含み得る。従って、免疫結合体は、約2つから約25個のエチレングリコール単位、例えば、約6つから約25個のエチレングリコール単位、約6つから約16個のエチレングリコール単位、約8つから約25個のエチレングリコール単位、約8つから約16個のエチレングリコール単位、約8つから約12個のエチレングリコール単位、または約8つから約12個のエチレングリコール単位を含み得る。特定の実施態様においては、免疫結合体は、ジ(エチレングリコール)基、トリ(エチレングリコール)基、テトラ(エチレングリコール)基、5つのエチレングリコール基、6つのエチレングリコール基、7つのエチレングリコール基、8つのエチレングリコール基、9つのエチレングリコール基、10個のエチレングリコール基、11個のエチレングリコール基、12個のエチレングリコール基、13個のエチレングリコール基、14個のエチレングリコール基、15個のエチレングリコール基、16個のエチレングリコール基、24個のエチレングリコール基、または25個のエチレングリコール基を含む。好ましい実施態様においては、免疫結合体は、6つのエチレングリコール基、8つのエチレングリコール基、10個のエチレングリコール基、または12個のエチレングリコール基(すなわち、約6つのエチレングリコール基から約12個のエチレングリコール基)を含む。
【0063】
PEGリンカーは、抗体構築物のリジン残基のアミンを介してHER2(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、およびそれらのバイオベター)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物に連結され得る。従って、本発明の免疫結合体は、以下の式:
【0064】
【0065】
(式中、
【0066】
【0067】
は、抗体構築物のリジン残基を表す残基
【0068】
【0069】
を有する、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物であり、ここで、
【0070】
【0071】
は、リンカーへの接続点を表す)によって表され得る。
【0072】
アジュバントは、PEGリンカーを介して抗体構築物の任意の適切な残基に連結され得るが、望ましくは、抗体構築物の任意のリジン残基に連結される。例えば、アジュバントは、PEGリンカーを介して、Kabatナンバリングシステムを使用してナンバリングされる、抗体構築物の軽鎖のK103、K107、K149、K169、K183、および/またはK188のうちの1つ以上に連結され得る。あるいは、またはさらに、アジュバントは、PEGリンカーを介して、Kabatナンバリングシステムを使用してナンバリングされる、抗体構築物の重鎖のK30、K43、K65、K76、K136、K216、K217、K225、K293、K320、K323、K337、K395、および/またはK417のうちの1つ以上に連結され得る。一般に、アジュバントは主に、PEGリンカーを介して、抗体構築物の軽鎖のK107若しくはK188、または抗体構築物の重鎖のK30、K43、K65、若しくはK417で連結される。特定の実施態様においては、アジュバントは、PEGリンカーを介して、抗体構築物の軽鎖のK188、および任意に抗体構築物の1つ以上の他のリジン残基で連結される。
【0073】
本明細書において記載される免疫結合体は、抗原提示細胞(APC)の予想外に増加した活性化応答を提供することができる。この増加した活性化は、インビトロまたはインビボで検出することができる。いくつかの実施態様においては、増加したAPC活性化は、特定のレベルのAPC活性化を達成するための短縮された時間の形で検出することができる。例えば、インビトロアッセイにおいて、%APC活性化は、それ以外は同一の濃度および条件下で、非結合抗体構築物およびアジュバントの混合物でのAPC活性化と同じまたは同様のパーセンテージを得るのに必要な時間の約1%、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%以内で、免疫結合体を用いて同等の用量で達成することができる。いくつかの実施態様においては、免疫結合体は、短縮された時間でAPC(例えば、樹状細胞)および/またはNK細胞を活性化することができる。例えば、いくつかの実施態様においては、非結合抗体構築物およびアジュバントの混合物は、2、3、4、5、1-5、2-5、3-5、または4-7日の混合物とのインキュベーション後にAPC(例えば、樹状細胞)および/若しくはNK細胞を活性化し、並びに/または樹状細胞の分化を誘導することができるところ、対照的に、本明細書において記載される免疫結合体は、それ以外は同一の濃度および条件下で、4時間、8時間、12時間、16時間、または1日以内に活性化および/または分化を誘導することができる。あるいは、増加したAPC活性化は、APC活性化のある量(例えば、パーセントAPC)、レベル(例えば、好適なマーカーのアップレギュレーションのレベルによって測定される)または速度(例えば、活性化に必要なインキュベーション時間によって検出される)を達成するために必要な免疫結合体の低下した濃度の形で検出することができる。
【0074】
いくつかの実施態様においては、本発明の免疫結合体は、それ以外は同一の条件下で、非結合抗体構築物およびアジュバントの混合物と比較して、約5%を超える活性の増加を提供する。他の実施態様においては、本発明の免疫結合体は、それ以外は同一の条件下で、非結合抗体構築物およびアジュバントの混合物と比較して、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、または約70%を超える活性の増加を提供する。活性の増加は、任意の好適な手段によって評価することができ、それらの多くは、当業者に知られており、骨髄活性化、サイトカイン分泌による評価、またはそれらの組合せを含み得る。
【0075】
いくつかの実施態様においては、本発明は、式:
【0076】
【0077】
【0078】
(式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、「Ab」は、ヒト上皮増殖因子受容体2(「HER2」)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である)の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0079】
特定の実施態様においては、本発明は、式:
【0080】
【0081】
【0082】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、「Ab」は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、およびそれらのバイオベターである。例えば、「Ab」は、MYL-14010、ABP 980、BCD-022、CT-P6、EG12014、HD201、ONS-1050、PF-05280014、オントゥルザント(Ontruzant)、サイピューティング(Saiputing)、ハーツマ(Herzuma)、またはHLX02である]の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0083】
好ましい実施態様においては、本発明は、式:
【0084】
【0085】
【0086】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、「Ab」は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)である]の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0087】
アジュバント
本発明の免疫結合体は、式:
【0088】
【0089】
(式中、破線
【0090】
【0091】
は、アジュバント部分のリンカーへの接合点を表す)のアジュバント部分を含む。
【0092】
本明細書において記載されるアジュバント部分は、TLRアゴニストである。
【0093】
抗原結合ドメインおよびFcドメイン
本発明の免疫結合体は、HER2に結合する抗原結合ドメインを含む抗体構築物を含む。いくつかの実施態様においては、抗体構築物は、Fcドメインをさらに含む。特定の実施態様においては、抗体構築物は、抗体である。特定の実施態様においては、抗体構築物は、融合蛋白質である。
【0094】
抗原結合ドメインは、一本鎖可変領域断片(scFv)であり得る。合成ペプチドを介して軽抗体鎖のVドメインに連結した抗体重鎖の可変(V)ドメインを含む短縮型Fab断片である一本鎖可変領域断片(scFv)は、通常の組換えDNA技術を使用して生成できる。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製できる。
【0095】
本発明の一つの実施態様は、HER2(配列番号1)を特異的に認識してそれに結合する抗体構築物または抗原結合ドメインを提供する。抗体構築物または抗原結合ドメインは、抗HER2抗体の抗原結合ドメインの1つ以上の可変領域(例えば、2つの可変領域)を含み得、各可変領域は、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0096】
本発明の一つの実施態様は、トラスツズマブのCDR領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインを提供する。これに関して、抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1(第1の可変領域のCDR1)、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2(第1の可変領域のCDR2)、および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3(第1の可変領域のCDR3)を含む第1の可変領域、並びに配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR1(第2の可変領域のCDR1)、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2(第2の可変領域のCDR2)、および配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR3(第2の可変領域のCDR3)を含む第2の可変領域を含み得る。これに関して、抗体構築物は、(i)配列番号2~4の全て、(ii)配列番号5~7の全て、または(iii)配列番号2~7の全てを含むことができる。好ましくは、抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号2~7の全てを含む。
【0097】
本発明の一つの実施態様においては、トラスツズマブのCDR領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインは、トラスツズマブのフレームワーク領域をさらに含む。これに関して、トラスツズマブのCDR領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列(第1の可変領域のフレームワーク領域(「FR」)1)、配列番号9のアミノ酸配列(第1の可変領域のFR2)、配列番号10のアミノ酸配列(第1の可変領域のFR3)、配列番号11のアミノ酸配列(第1の可変領域のFR4)、配列番号12のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR1)、配列番号13のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR2)、配列番号14のアミノ酸配列(第2の可変領域領域のFR3)、および配列番号15のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR4)をさらに含む。これに関して、抗体構築物または抗原結合ドメインは、(i)配列番号2~4および8~11の全て、(ii)配列番号5~7および12~15の全て;または(iii)配列番号2~7および8~15の全てを含むことができる。
【0098】
本発明の一つの実施態様は、トラスツズマブの一方または両方の可変領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインを提供する。これに関して、第1の可変領域は、配列番号16を含み得る。第2の可変領域は、配列番号17を含み得る。従って、本発明の一つの実施態様においては、抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号16、配列番号17、または配列番号16および17の両方を含む。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号16~17の両方を含む。
【0099】
本発明の一つの実施態様は、ペルツズマブのCDR領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインを提供する。これに関して、抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1(第1の可変領域のCDR1)、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2(第1の可変領域のCDR2)、および配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3(第1の可変領域のCDR3)を含む第1の可変領域、並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1(第2の可変領域のCDR1)、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2(第2の可変領域のCDR2)、および配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR3(第2の可変領域のCDR3)を含む第2の可変領域を含み得る。これに関して、抗体構築物は、(i)配列番号18~20の全て、(ii)配列番号21~23の全て、または(iii)配列番号18~23の全てを含むことができる。好ましくは、抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号18~23の全てを含む。
【0100】
本発明の一つの実施態様においては、ペルツズマブのCDR領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインは、ペルツズマブのフレームワーク領域をさらに含む。これに関して、ペルツズマブのCDR領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号24のアミノ酸配列(第1の可変領域のフレームワーク領域(「FR」)1)、配列番号25のアミノ酸配列(第1の可変領域のFR2)、配列番号26のアミノ酸配列(第1の可変領域のFR3)、配列番号27のアミノ酸配列(第1の可変領域のFR4)、配列番号28のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR1)、配列番号29のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR2)、配列番号30のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR3)、および配列番号31のアミノ酸配列(第2の可変領域のFR4)をさらに含む。これに関して、抗体構築物または抗原結合ドメインは、(i)配列番号18~20および24~26の全て、(ii)配列番号21~23および27~31の全て;または(iii)配列番号18~21および24~31の全てを含むことができる。
【0101】
本発明の一つの実施態様は、ペルツズマブの一方または両方の可変領域を含む抗体構築物または抗原結合ドメインを提供する。これに関して、第1の可変領域は、配列番号32を含み得る。第2の可変領域は、配列番号33を含み得る。従って、本発明の一つの実施態様においては、抗体構築物または抗原結合ドメインは、配列番号32、配列番号33、または配列番号32および33の両方を含む。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号32~33の両方を含む。
【0102】
本発明の実施態様の範囲に含まれるのは、本明細書において記載される抗体構築物または抗原結合ドメインの機能的変異体である。本明細書において使用される用語「機能的変異体」は、親抗体構築物または抗原結合ドメインと実質的または有意な配列同一性または類似性を有する抗原結合ドメインを有する抗体構築物を指し、この機能的変異体は、それがその変異体である抗体構築物または抗原結合ドメインの生物学的活性を保持する。機能的変異体は、例えば、HER2を発現する標的細胞を親抗体構築物または抗原結合ドメインと同様の程度、同じ程度に、またはより高い程度で認識する能力を保持する、本明細書において記載される抗体構築物または抗原結合ドメイン(親抗体構築物または抗原結合ドメイン)の変異体を包含する。
【0103】
抗体構築物または抗原結合ドメインに関して、機能的変異体は、例えば、アミノ酸配列において少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上、抗体構築物または抗原結合ドメインと同一であり得る。
【0104】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親抗体構築物または抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含み得る。あるいは、またはさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親抗体構築物または抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含み得る。この場合において、非保存的アミノ酸置換が機能的変異体の生物学的活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性が親抗体構築物または抗原結合ドメインと比較して増加しているように、機能的変異体の生物学的活性を増強し得る。
【0105】
本発明の抗体構築物または抗原結合ドメインのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は、当技術分野において知られており、特定の物理的および/または化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じまたは類似の化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されているアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性/負に帯電した極性アミノ酸の代わりに置換された酸性/負に帯電した極性アミノ酸(例えば、AspまたはGlu)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸の代わりに置換された非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Val等)、別の塩基性/正に帯電した極性アミノ酸の代わりに置換された塩基性/正に帯電した極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Arg等)、極性側鎖を有する別の非荷電アミノ酸の代わりに置換された極性側鎖を有する非荷電アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)、ベータ分岐側鎖を有する別のアミノ酸の代わりに置換されたベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ile、Thr、およびVal)、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸の代わりに置換された芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp、およびTyr)等であり得る。
【0106】
抗体構築物または抗原結合ドメインは、他の成分、例えば、他のアミノ酸が抗体構築物または抗原結合ドメインの機能的変異体の生物学的活性を実質的に変化させないように、本質的に本明細書において記載される特定のアミノ酸配列または複数の配列からなり得る。
【0107】
本発明の実施態様の抗体構築物および抗原結合ドメイン(機能的部分および機能的変異体を含む)は、任意の長さであり得る、すなわち、抗体構築物(またはその機能的部分若しくは機能的変異体)がそれらの生物学的活性、例えば、HER2に特異的に結合する、哺乳動物における癌細胞を検出する、または哺乳動物における癌を治療若しくは予防する能力等を保持する限り、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、抗体構築物または抗原結合ドメインは、長さにおいて50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、またはそれ以上のアミノ酸などの、約50から約5,000アミノ酸長であり得る。
【0108】
本発明の実施態様の抗体構築物および抗原結合ドメイン(本発明の機能的部分および機能的変異体を含む)は、1つ以上の天然に生じるアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含むことができる。そのような合成アミノ酸は、当技術分野において知られており、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、アルファ-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、ベータ-フェニルセリン ベータ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、アルファ-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、アルファ-アミノシクロペンタンカルボン酸、アルファ-アミノシクロヘキサンカルボン酸、アルファ-アミノシクロヘプタンカルボン酸、アルファ-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、アルファ,ガンマ-ジアミノ酪酸、アルファ,ベータ-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびアルファ-tert-ブチルグリシンを含む。
【0109】
本発明の実施態様の抗体構築物(機能的部分および機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えば、ジスルフィド架橋を介して環化するか、若しくは酸付加塩に変換するか、および/または任意に二量体化若しくは重合し得る。
【0110】
いくつかの実施態様においては、抗体構築物は、定義されたサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、またはIgA2)のモノクローナル抗体である。抗体の組合せが使用される場合、抗体は同じサブクラス由来または異なるサブクラス由来であり得る。典型的には、抗体構築物はIgG1抗体である。異なる相対比率での異なるサブクラスのさまざまな組合せが、当業者によって得られ得る。いくつかの実施態様においては、特定のサブクラスまたは異なるサブクラスの特定の組合せは、癌治療または腫瘍サイズの低減に特に効果的であり得る。従って、本発明のいくつかの実施態様は、抗体がモノクローナル抗体である免疫結合体を提供する。いくつかの実施態様においては、モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0111】
いくつかの実施態様においては、抗体構築物または抗原結合ドメインは、非癌細胞上の対応するHER2抗原よりも高い親和性で、癌または免疫細胞上のHER2に結合する。例えば、抗体構築物または抗原結合ドメインは、非癌上の対応する野生型HER2の認識と比較して、癌または免疫細胞上に見い出される多型を含有するHER2を優先的に認識するかもしれない。いくつかの実施態様においては、抗体構築物または抗原結合ドメインは、非癌細胞よりも高い活性で癌細胞に結合する。例えば、癌細胞は、より高密度のHER2を発現することができ、それにより、多価抗体の癌細胞へのより高い親和性の結合を提供する。
【0112】
いくつかの実施態様においては、抗体構築物または抗原結合ドメインは、非癌抗原に有意には結合しない(例えば、抗体は、HER2よりも少なくとも10、100、1,000、10,000、100,000、または1,000,000倍低い親和性(高いKd)で1つ以上の非癌抗原に結合する)。いくつかの実施態様においては、対応する非癌細胞は、過剰増殖性またはいずれにしても癌性ではない同じ組織または起源の細胞である。HER2は、他の細胞と比較して癌細胞に特異的である必要はなくまたは癌細胞中で豊富である必要さえない(例えば、HER2は他の細胞によって発現され得る)。すなわち、語句「癌細胞の抗原に特異的に結合する抗体構築物」において、用語「特異的に」は、抗体構築物の特異性を指し、その特定の細胞型におけるHER2の存在の独自性を指すのではない。
【0113】
修飾されたFc領域
いくつかの実施態様においては、免疫結合体中の抗体は、修飾されたFc領域を含有し、ここで、修飾は、1つ以上のFc受容体へのFc領域の結合を調節する。
【0114】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。Fc受容体には3つの主要なクラス:(1)IgGに結合するFcγR、(2)IgAに結合するFcαR、および(3)IgEに結合するFcεRがある。FcγRファミリーは、FcγI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16A)、およびFcγRIIIB(CD16B)などのいくつかのメンバーを含む。Fcγ受容体は、IgGに対するその親和性において異なり、またIgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)に対して異なる親和性を有する。
【0115】
いくつかの実施態様においては、免疫結合体中の抗体(例えば、少なくとも2つのアジュバント部分に接合された抗体)は、Fc領域において1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失、および/または置換)を含有し、これにより、Fc領域の突然変異を欠く天然抗体と比較して、1つ以上のFc受容体(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)、および/またはFcγRIIIB(CD16b))への調節された結合(例えば、結合の増加または結合の減少)をもたらす。いくつかの実施態様においては、免疫結合体中の抗体は、抗体のFc領域のFcγRIIBへの結合を低減させるFc領域における1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失、および/または置換)を含有する。いくつかの実施態様においては、免疫結合体中の抗体は、Fc領域の突然変異を欠く天然抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、および/またはFcRγIIIA(CD16a)への同じ結合を維持または結合を増加させながら、抗体のFcγRIIBへの結合を低減させる抗体のFc領域における1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失、および/または置換)を含有する。いくつかの実施態様においては、免疫結合体中の抗体は、抗体のFc領域のFcγRIIBへの結合を増加させるFc領域における1つ以上の修飾を含有する。
【0116】
いくつかの実施態様においては、調節された結合は、抗体の天然Fc領域と比較した抗体のFc領域における突然変異によって提供される。突然変異は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらの組合せにおいてあり得る。「天然Fc領域」は、「野生型Fc領域」と同義であり、天然に見い出されるFc領域のアミノ酸配列と同一であるか、または天然抗体(例えば、トラスツズマブ)に見い出されるFc領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1 Fc領域、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、および天然配列ヒトIgG4 Fc領域、並びにそれらの天然に生じる変異体を含む。天然配列Fcは、Fcのさまざまなアロタイプを含む(例えば、Jefferis et al.,mAbs,1(4):332-338(2009)を参照されたい)。
【0117】
いくつかの実施態様においては、1つ以上のFc受容体への調節された結合をもたらすFc領域の突然変異は、以下の突然変異:SD(S239D)、SDIE(S239D/I332E)、SE(S267E)、SELF(S267E/L328F)、SDIE(S239D/I332E)、SDIEAL(S239D/I332E/A330L)、GA(G236A)、ALIE(A330L/I332E)、GASDALIE(G236A/S239D/A330L/I332E)、V9(G237D/P238D/P271G/A330R)、およびV11(G237D/P238D/H268D/P271G/A330R)の1つ以上、並びに/または以下のアミノ酸:E233、G237、P238、H268、P271、L328およびA330での1つ以上の突然変異を含み得る。Fc受容体結合を調節するための追加のFc領域修飾は、例えば、米国特許出願公開第2016/0145350号並びに米国特許第7,416,726号および第5,624,821号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0118】
いくつかの実施態様においては、免疫結合体の抗体のFc領域は、天然の非修飾Fc領域と比較して、Fc領域の変更されたグリコシル化パターンを有するように修飾される。
【0119】
ヒト免疫グロブリンは、各重鎖のCγ2ドメインのAsn297残基でグリコシル化されている。このN-結合オリゴ糖は、コアの七糖であるN-アセチルグルコサミン4マンノース3(GlcNAc4Man3)から構成されている。エンドグリコシダーゼまたはPNGase Fでの七糖の除去は、活性化させるFcγRに対する抗体結合親和性を大幅に減少させ、エフェクター機能の低下につながり得る抗体Fc領域のコンフォメーション変化につながることが知られている。コア七糖は、しばしばガラクトース、二等分GlcNAc、フコース、またはシアル酸で修飾され、これらは、活性化させるおよび抑制性FcγRへのFcの結合に異なる影響を与える。さらに、α2,6-シアル化はインビボで抗炎症活性を増強するが、一方で脱フコシル化はFcγRIIIa結合の改善並びに抗体依存性細胞毒性および抗体依存性食作用の10倍の増加につながることが実証されてきた。従って、特定のグリコシル化パターンは、炎症性エフェクター機能を制御するために使用され得る。
【0120】
いくつかの実施態様においては、グリコシル化パターンを変更するための修飾は、突然変異である。例えば、Asn297での置換。いくつかの実施態様においては、Asn297はグルタミンに変異している(N297Q)。FcγR調節シグナル伝達を調節する抗体で免疫応答を制御する方法は、例えば、米国特許第7,416,726号並びに米国特許出願公開第2007/0014795号および第2008/0286819号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
いくつかの実施態様においては、免疫結合体の抗体は、非天然に生じるグリコシル化パターンを有する操作されたFab領域を含有するように修飾されている。例えば、ハイブリドーマは、FcRγIIIa結合およびエフェクター機能の増加を可能にする特定の突然変異を有するアフコシル化mAb、脱シアル化mAbまたは脱グリコシル化Fcを分泌するように遺伝子操作され得る。いくつかの実施態様においては、免疫結合体の抗体は、アフコシル化されるように操作されている。
【0122】
いくつかの実施態様においては、免疫結合体中の抗体構築物の全Fc領域が、抗体のFab領域が非天然Fc領域に接合されるように、異なるFc領域と交換されている。例えば、通常はIgG1 Fc領域を含むトラスツズマブのFab領域は、IgG2、IgG3、IgG4、またはIgAに接合され得、または通常はIgG4 Fc領域を含むニボルマブのFab領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、またはIgG2に接合され得る。いくつかの実施態様においては、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、記載されたFcドメインの安定性を調節する、IgG4 Fc内のS228P突然変異などの1つ以上のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施態様においては、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、FcRへのFc結合を調節する、本明細書において記載される1つ以上のアミノ酸修飾を含む。
【0123】
いくつかの実施態様においては、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾は、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を変化させない。他の実施態様においては、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾はまた、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を増加させる。
【0124】
リンカー
本明細書において開示される免疫結合体のいくつかは、同じアジュバント、同じ抗体構築物、および異なるPEGリンカー長(例えば、PEG6からPEG12対PEG2またはPEG25)を含む免疫結合体よりも精製が容易であり得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本明細書において記載されるPEG6からPEG12の免疫結合体は、精製プロセスを促進するために疎水性および親水性の良好なバランスを提供すると考えられる。本明細書において開示される免疫結合体のいくつかは、同じアジュバント、同じ抗体構築物、および異なるPEGリンカー長(例えば、PEG6からPEG12対PEG2またはPEG25)を含む免疫結合体よりも可溶化が容易であり得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本明細書において記載されるPEG6からPEG12の免疫結合体は、溶解性を維持し、生物学的条件下で効果的であるために疎水性および親水性の良好なバランスを提供すると考えられる。PEG6からPEG12の免疫結合体は、容易に可溶化されるのに十分な親水性を維持しながら、容易に精製および/または単離されるのに十分な疎水性を提供するのに望ましい数のPEGユニットを含むとも考えられる。好ましい実施態様においては、免疫結合体は、PEG10リンカーを含む。
【0125】
免疫結合体組成物
本発明は、本明細書において記載される複数の免疫結合体および任意にそのための担体、例えば、薬学的に許容される担体を含む、組成物、例えば、薬学的に許容される組成物または製剤を提供する。免疫結合体は、組成物において同じであり得、または異なりもし得、すなわち、組成物は、抗体構築物上の同じ位置に連結された同じ数のアジュバントを有する免疫複合体、および/または抗体構築物上の異なる位置に連結された同じ数のアジュバントを有する、抗体構築物上の同じ位置に連結された異なる数のアジュバントを有する、若しくは抗体構築物上の異なる位置に連結された異なる数のアジュバントを有する免疫複合体を含み得る。
【0126】
本明細書において記載されるように、アジュバントは、PEGリンカーを介して、抗体構築物の任意の適切な残基、望ましくは抗体構築物のリジン残基に連結され得る。すなわち、例えば、組成物は、複数の免疫結合体を含むことができ、ここで、各免疫結合体について、1つ以上のアジュバントは、PEGリンカーを介して、Kabatナンバリングシステムを使用してナンバリングされる、抗体構築物の軽鎖のK103、K107、K149、K169、K183、およびK188、並びに抗体構築物の重鎖のK30、K43、K65、K76、K136、K216、K217、K225、K293、K320、K323、K337、K395、およびK417から選択される1つ以上のリジン残基に連結される。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、組成物は一般に、好ましい結合部位の所与のプロファイルを有する平均的なアジュバント対抗体構築物比が存在するような結合部位の分布を有する。いくつかの実施態様においては、リジン連結の合計の少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)は、抗体構築物の軽鎖のK188で発生する。
【0127】
本発明の免疫結合体の組成物は、約0.4、0.6、0.8、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、8、8.2、8.4、8.6、8.8、9、9.2、9.4、9.6、9.8、若しくは10、または前述の値の任意の2つによって囲まれた範囲内の平均アジュバント対抗体構築物比を有することができる。当業者は、抗体構築物に結合されたアジュバントの数が、本発明の複数の免疫結合体を含む組成物において免疫結合体毎に変化し得、すなわち、アジュバント対抗体構築物(例えば、抗体)比を平均として測定できることを認識するであろう。アジュバント対抗体構築物(例えば、抗体)比は、その多くは当技術分野において知られている任意の適切な手段によって評価することができる。
【0128】
いくつかの実施態様においては、組成物は、さらに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。例えば、本発明の免疫結合体は、IV投与または器官の体腔若しくは内腔への投与などの非経口投与用に製剤化することができる。あるいは、免疫結合体は、腫瘍内に注入することができる。注射用組成物は、一般に、薬学的に許容される担体中に溶解した免疫結合体の溶液を含むであろう。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水および塩化ナトリウムなどの1つ以上の塩の等張溶液、例えばRinger溶液がある。加えて、滅菌固定油は、従来、溶媒または懸濁媒体として使用され得る。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を使用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸も同様に、注射剤の調製に使用することができる。これらの組成物は望ましくは無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、おおよその生理学的条件に求められる、pH調整および緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど、などの薬学的に許容される補助物質を含有することができる。
【0129】
組成物は、任意の適切な濃度の免疫結合体を含有することができる。組成物中の免疫結合体の濃度は、広く異なり得、選択される特定の投与モードおよび患者の必要性に従って、主として流体体積、粘度、体重などに基づいて選択されるであろう。特定の実施態様においては、注射用の溶液製剤中の免疫結合体の濃度は、約0.1%(w/w)から約10%(w/w)の範囲であろう。
【0130】
免疫結合体を使用する方法
本発明は、癌を治療する方法を提供する。本方法は、治療有効量の本明細書において記載される免疫結合体(例えば、本明細書において記載される組成物として)を、それを必要とする対象、例えば、癌を有し、癌の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0131】
トラスツズマブおよびペルツズマブ、それらのバイオシミラー、並びにそれらのバイオベターは、癌、特に乳癌、特にHER2過剰発現乳癌、胃癌、特にHER2過剰発現胃癌、および胃食道接合部腺癌の治療において有用であることが知られている。本明細書において記載される免疫結合体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、およびそれらのバイオベターと同じタイプの癌、特に乳癌、特にHER2過剰発現乳癌、胃癌、特にHER2過剰発現胃癌、および胃食道接合部腺癌を治療するために使用することができる。
【0132】
免疫複合体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、およびそれらのバイオベターについて利用される投薬レジメンなどの任意の適切な投薬レジメンを使用して、それを必要とする対象に任意の治療有効量で投与される。例えば、本方法は、約100ng/kgから約50mg/kgの用量を対象に提供するように免疫結合体を投与することを含み得る。免疫結合体の用量は、約5mg/kgから約50mg/kg、約10μg/kgから約5mg/kg、または約100μg/kgから約1mg/kgの範囲であり得る。免疫結合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫結合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫結合体の用量はまた、特定の結合体並びに治癒される癌の種類および重症度に応じて、これらの範囲外であることができる。投与頻度は、1週間あたり単回投与から複数回投与までの範囲であるか、またはより頻繁であり得る。いくつかの実施態様においては、免疫結合体は、1ヶ月あたり約1回から1週間あたり約5回投与される。いくつかの実施態様においては、免疫結合体は、1週間あたり1回投与される。
【0133】
別の実施態様においては、本発明は癌を予防する方法を提供する。本方法は、治療有効量の免疫結合体(例えば、上記の組成物として)を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施態様においては、対象は予防されるべき特定の癌にかかりやすい。例えば、本方法は、約100ng/kgから約50mg/kgの用量を対象に提供するように免疫結合体を投与することを含み得る。免疫結合体の用量は、約5mg/kgから約50mg/kg、約10μg/kgから約5mg/kg、または約100μg/kgから約1mg/kgの範囲であり得る。免疫結合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫結合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫結合体の用量はまた、特定の結合体並びに治療される癌の種類および重症度に応じて、これらの範囲外であることもできる。投与頻度は、1週間あたり単回投与から複数回投与までの範囲であるか、またはより頻繁であり得る。いくつかの実施態様においては、免疫結合体は、1ヶ月あたり約1回から1週間あたり約5回投与される。いくつかの実施態様においては、免疫結合体は、1週間あたり1回投与される。
【0134】
本発明のいくつかの実施態様は、癌が乳癌である、上記の癌を治療する方法を提供する。乳癌は、乳房の異なる領域に由来し得、多くの異なるタイプの乳癌が特徴付けられてきた。例えば、本発明の免疫結合体は、非浸潤性(in situ)乳管癌腫、浸潤性乳管癌腫(例えば、管状癌腫、髄様癌腫、粘液性癌腫、乳頭癌腫、または乳房の篩状癌腫)、非浸潤性(in situ)小葉癌腫、浸潤性小葉癌腫、炎症性乳癌、および他の形態の乳癌を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様においては、乳癌を治療する方法は、HER2に結合することができる抗体構築物(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、およびそれらのバイオベター)を含有する免疫結合体を投与することを含む。
【0135】
本発明のいくつかの実施態様は、癌が胃癌である、上記の癌を治療する方法を提供する。胃(Gastric)(胃(stomach))癌は、胃における異なる細胞に由来し得、腺癌、カルシノイド腫瘍、扁平上皮癌、小細胞癌、平滑筋肉腫、および胃腸間質腫瘍を含む、いくつかのタイプの胃癌が特徴づけられてきた。いくつかの実施態様においては、胃癌を治療する方法は、HER2に結合することができる抗体構築物(例えば、トラスツズマブ)を含有する免疫結合体を投与することを含む。
【0136】
本発明のいくつかの実施態様は、癌が胃食道接合部癌腫である、上記の癌を治療する方法を提供する。この癌腫は、食道が胃を肉にする(meats)領域において発生する。3つのタイプの胃食道接合部癌腫がある。タイプ1においては、癌は、上から下に胃食道接合部の中に増殖する。食道の下端の通常の裏打ちは、突然変異(バレット食道とも呼ばれる)によって置き換えられる。タイプ2においては、癌は、胃食道接合部でそれ自体で増殖する。タイプ3においては、癌は、胃から上向きに胃食道接合部の中に増殖する。いくつかの実施態様においては、胃食道接合部癌腫を治療する方法は、HER2に結合することができる抗体構築物(例えば、トラスツズマブ)を含有する免疫結合体を投与することを含む。
【0137】
いくつかの実施態様においては、癌は、TLR7および/またはTLR8によって誘発される炎症誘発性反応の影響を受けやすい。
【0138】
本開示の非限定的一面の例
本明細書において記載される本発明の実施態様を含む一面は、1つ以上の他の面または実施態様と共に、単独でまたは組み合わせて、有益であるかもしれない。前述の説明を限定することなく、1~33と番号付けされた本開示の特定の非限定的な一面が以下に提供される。この開示を読むと当業者に明らかであろうように、個々に番号付けされた一面のそれぞれは、使用されるかもしれないし、先行するまたは後続する個々に番号付けされた一面の任意のものと組み合わせられるかもしれない。これは、全てのそのような一面の組合せのための支持を提供することが意図されるものであり、以下に明示的に提供される一面の組合せに限定されない。
【0139】
1.式:
【0140】
【0141】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、下付き文字nは、約2から約25の整数であり、および「Ab」は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]の免疫結合体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0142】
2.下付き文字rが1から6の整数である、一面1の免疫結合体。
3.下付き文字rが1から4の整数である、一面2の免疫結合体。
4.下付き文字rが1である、一面3の免疫結合体。
5.下付き文字rが2である、一面3の免疫結合体。
【0143】
6.下付き文字rが3である、一面3の免疫結合体。
7.下付き文字rが4である、一面3の免疫結合体。
8.下付き文字nが6から12の整数である、一面1~7のいずれか一つの免疫結合体。
9.下付き文字nが8から12の整数である、一面8の免疫結合体。
10.免疫結合体が式:
【0144】
【0145】
【0146】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベター)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]、またはその薬学的に許容される塩である、一面1の免疫結合体。
11.免疫結合体が式:
【0147】
【0148】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベター)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]、またはその薬学的に許容される塩である、一面1の免疫結合体。
12.免疫結合体が式:
【0149】
【0150】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベター)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]、またはその薬学的に許容される塩である、一面1の免疫結合体。
13.免疫結合体が式:
【0151】
【0152】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベター)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]、またはその薬学的に許容される塩である、一面1の免疫結合体。
14.免疫結合体が式:
【0153】
【0154】
[式中、下付き文字rは、1から10の整数であり、および「Ab」は、HER2(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)としても知られている)、そのバイオシミラー、またはそのバイオベター)に結合する抗原結合ドメインを有する抗体構築物である]、またはその薬学的に許容される塩である、一面1の免疫結合体。
15.「Ab」がトラスツズマブ、そのバイオシミラー、またはそのバイオベターである、一面1~14のいずれか一つの免疫結合体。
【0155】
16.「Ab」がペルツズマブ、そのバイオシミラー、またはそのバイオベターである、一面1~14のいずれか一つの免疫結合体。
17.「Ab」がトラスツズマブである、一面15の免疫結合体。
18.「Ab」がトラスツズマブのバイオシミラーである、一面15の免疫結合体。
19.一面1~18のいずれか一つに記載の複数の免疫結合体を含む組成物。
20.アジュバント対抗体構築物の平均比が約0.01から約10である、一面19の免疫結合体。
【0156】
21.アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約10である、一面20の免疫結合体。
22.アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約6である、一面21の免疫結合体。
23.アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約4である、一面22の免疫結合体。
24.アジュバント対抗体構築物の平均比が約1から約3である、一面23の免疫結合体。
25.治療有効量の一面1~18のいずれか一つに記載の免疫結合体または一面19~24のいずれか一つに記載の組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療する方法。
【0157】
26.癌がTLR7および/またはTLR8アゴニズムによって誘発される炎症誘発性反応の影響を受けやすい、一面25の方法。
27.癌がHER2発現癌である、一面25または26の方法。
28.癌が乳癌である、一面25~27のいずれか一つの方法。
29.乳癌がHER2過剰発現乳癌である、一面28の方法。
30.癌が胃癌である、一面25~27のいずれか一つの方法。
【0158】
31.胃癌がHER2過剰発現胃癌である、一面30の方法。
32.癌が胃食道接合部腺癌である、一面25~27、30、または31のいずれか一つの方法。
33.癌を治療するための、一面1~18のいずれか一つに記載の免疫結合体または一面19~24のいずれか一つに記載の組成物の使用。
【実施例】
【0159】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を制限するいかなる趣旨にも解釈されるべきではない。
【0160】
実施例1:化合物2の合成
【0161】
【0162】
室温でジメチルホルムアミド(DMF、100mL)中の6-ブロモ-2,4-ジクロロ-3-ニトロキノリン(5.6g、17.4mmol、1当量)および固体K2CO3(3.6g、26mmol、1.5当量)の溶液に、ニートの2,4-ジメトキシベンジルアミン(3.5g、20.1mmol、1.2当量)を加えた。混合物を15分間撹拌し、水(300mL)を加え、次いで混合物を5分間撹拌した。得られた固体を濾取し、次いで酢酸エチル(100mL)に溶解した。溶液を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、分離し、乾燥させ(Na2SO4)、次いで濾過し、真空中で濃縮した。褐色の固体を1:1のヘキサン/ジエチルエーテル(150mL)でトリチュレートし、濾過して、6-ブロモ-2-クロロ-4-(2,4-ジメトキシベンジル)アミノ-3-ニトロキノリン(6.9g、15.3mmol、88%)を黄色の固体として得た。化合物は、さらに精製することなく使用した。
【0163】
実施例2:化合物3の合成
【0164】
【0165】
NiCl2・6H2O(0.36g、1.5mmol、0.1当量)を、0℃でメタノール(200mL)中の6-ブロモ-2-クロロ-4-(2,4-ジメトキシベンジル)アミノ-3-ニトロキノリン(6.9g、15.3mmol、88%)に加えた。水素化ホウ素ナトリウム(ペレット、1.42g、38mmol、2.5当量)を加え、反応物を0℃で1時間撹拌し、次いで室温に温め、さらに15分間撹拌した。約5のpHが得られるまで、氷酢酸(5mL)を加えた。溶媒を真空中で蒸発させ、粗固体を酢酸エチル(150mL)に再溶解し、次いで珪藻土の床を通して濾過して黒色の不溶性物質を除去した。酢酸エチルを、真空中で除去した。暗褐色の固体をエーテル(75mL)でトリチュレートし、次いで濾過して、3-アミノ-6-ブロモ-2-クロロ-4-(2,4-ジメトキシベンジル)アミノキノリン(5.81g、13.7mmol、90%)を黄褐色の固体として得た。化合物は、さらに精製することなく使用した。
【0166】
実施例3:化合物4の合成
【0167】
【0168】
ニートの吉草酸クロリド(2.0mL、2.0g、16mmol、1.2当量)を、室温で撹拌しながら、トリエチルアミン(2.1g、2.8mL、20mmmol、1.5当量)を含有するジクロロメタン(100mL)中の3-アミノ-6-ブロモ-2-クロロ-4-(2,4-ジメトキシベンジル)アミノキノリン(5.75g、13.6mmmol、1当量)の溶液に加えた。混合物を水(150mL)、ブライン(150mL)で洗浄し、分離し、次いで乾燥し(Na2SO4)、濾過し、そして濃縮した。固体をエーテルでトリチュレートし、濾過し、次いで真空下で乾燥させた。N-(6-ブロモ-2-クロロ-4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)キノリン-3-イル)ペンタンアミドを、褐色の固体として得た(5.8g、11.4mmol、84%)。化合物は、さらに精製することなく使用した。
【0169】
実施例4:化合物5の合成
【0170】
【0171】
100mLのビーカーにおいて、N-(6-ブロモ-2-クロロ-4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)キノリン-3-イル)ペンタンアミド(5.8g、11.4mmol、1当量)および2-クロロ安息香酸(0.90g、5.7mmol、0.5当量)の混合物を、50mLのトルエン中で2時間煮沸した。トルエンを、容量が25mLに達するたびに50mLまで加えた。2,4-ジメトキシベンジルアミン(9.5g、57mmol、5当量)を加え、反応物を120℃で2時間維持した。反応物を室温に冷却し、水(80mL)次いで酢酸(3.5mL)を加えた。上澄みをデカントし、粗生成物を水(80mL)で洗浄した。湿った固体をメタノール(100mL)でトリチュレートして、8-ブロモ-2-ブチル-N,1-ビス(2,4-ジメトキシベンジル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(4.80g、7.7mmol、68%)をオフホワイトの固体として得た。化合物はさらに精製することなく使用した。
【0172】
実施例5:化合物6の合成
【0173】
【0174】
8-ブロモ-2-ブチル-N,1-ビス(2,4-ジメトキシベンジル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(0.31g、0.5mmol、1当量)およびtert-ブチルピペラジン-1-カルボキシレート(0.19g、1mmol、2当量)の混合物をトルエン(2mL)中で混合し、次いでアルゴンで脱気した。Pd2dba3(45mg、0.05mmol、0.1当量)、トリ-tert-ブチルホスフィンテトラフルオロボレート(29mg、0.10mmol、0.2当量)およびナトリウムtert-ブトキシド(144mg、1.5mmol、3当量)を加えた。混合物を、蓋付きバイアル中で110℃で30分間加熱した。混合物を冷却し、次いで酢酸エチル(50mL)と水(50mL)との間で分配した。有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(20g)上で精製し、次いで50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出して、tert-ブチル4-(2-ブチル-1-(2,4-ジメトキシベンジル)-4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(0.28g、0.39mmol、78%)をオフホワイトの固体として得た。 LC/MS[M+H]725.40(計算値); LC/MS[M+H]725.67(実測値)。
【0175】
実施例6:化合物7の合成
【0176】
【0177】
tert-ブチル4-(2-ブチル-1-(2,4-ジメトキシベンジル)-4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(0.28g、0.39mmol、1当量)をTFA(3mL)に溶解し、5分間加熱還流した。TFAを真空中で除去し、粗生成物をアセトニトリルに溶解し、濾過し、次いで濃縮して、2-ブチル-8-(ピペラジン-1-イル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミンのTFA塩(0.16g、0.37mmol、95%)をオフホワイトの固体として得た。 LC/MS[M+H]325.21(計算値); LC/M [M+H]325.51(実測値)。
【0178】
実施例7:化合物8の合成
【0179】
【0180】
窒素でフラッシュされた40mLのバイアル中に、塩化オキサリル(1.84g、1.24mL、14.5mmol、2.5当量)次いでジクロロメタン(10mL)を加えた。溶液を、-78℃に冷却した。ジクロロメタン(9mL)中のDMSO(2.26g、2.05mL、29mmol、5当量)の溶液を滴下し、混合物を15分間撹拌した。ジクロロメタン(9mL)中のtert-ブチル1-ヒドロキシ-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-オエート(3.4g、5.8mmol、1当量)の溶液を滴下し、混合物を-78℃で30分間撹拌した。トリエチルアミン(4.4g、6.0mL、43.5mmol、7.5当量)を滴下した。この混合物を-78℃で30分間撹拌し、次いで30分かけて室温まで温めた。DMF(30mL)中の2-ブチル-8-(ピペラジン-1-イル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン塩酸塩(2.1g、5.8mmol、1当量)およびナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(5.5g、26mmol、4.5当量)を含有する100mLの丸底フラスコに、tert-ブチル1-オキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-オエート(理論量5.8mmol、1当量)をゆっくりと加え、反応物を室温で1時間撹拌した。ジクロロメタンを減圧下で除去し、次いで20%Na2CO3(20mL)を加え、混合物を15分間激しく撹拌した。溶媒の全てを除去し、固形物を10%メタノール/ジクロロメタン中に懸濁して超音波処理し、次いで珪藻土を通して濾過した。フィルターケーキを10%メタノール/ジクロロメタンで洗浄し、合わせた濾液を濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(80g REDISEP(商標)ゴールドシリカカラム)による精製を、2~20%MeOH/ジクロロメタン+0.1%トリエチルアミン(55mL/分)グラジエントを使用して28分かけて実施した。純粋な画分を合わせて濃縮し、tert-ブチル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-オエート(3.9g、4.4mmol、75%)をわずかに金色のシロップとして得た。含有する不純な画分を再精製し、次いで合わせて最終質量(4.26g、4.8mmol、83%)を得た。 LC/MS[M+H]893.55(計算値); LC/MS[M+H]893.98(実測値)。
【0181】
実施例8:化合物9の合成
【0182】
【0183】
tert-ブチル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-オエート(4.26g、4.8mmol)を3M HCl水溶液およびジオキサンの1:1混合物(100mL)に溶解し、60℃で60分間加熱した。加水分解が完了した後、溶媒を減圧下で除去した。得られた1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-酸塩酸塩をアセトニトリル(75mL)を用いて4回共沸させ、次いでアセトニトリル(75mL)に懸濁し、4000rpmで4分間遠心分離した。このプロセスを、繰り返した。固体をアセトニトリルの入った100mLの丸底フラスコに移し、減圧下で濃縮して、黄色の吸湿性固体(4.0g、4.6mmol、95%)を得て、これを次の反応においてそのまま使用した。 LC/MS[M+H]837.49(計算値); LC/MS[M+H]837.84(実測値)。
【0184】
実施例9:化合物10の合成
【0185】
【0186】
1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-酸塩酸塩(4.0g、4.6mmol、1当量)を含有する250mLの丸底フラスコに、無水DMF(50mL)中の2,3,5,6-テトラフルオロフェノール(1.64g、10mmol、2.4当量)およびEDC(2.0g、11mmol、2.3当量)の懸濁液を加え、混合物を室温で30分間撹拌させた。次いで混合物を、50℃で30分間加熱した。DMFのほとんど(~90%)を、浴温を50℃に設定して減圧下でトルエン(80mL)を用いた共沸によって除去した。この粗物質にジエチルエーテル(100mL)を加え、ペースト状の固体を激しく攪拌した。上澄みを、廃棄した。このプロセスを、繰り返した。粗物質を、40mLの酢酸エチル/アセトン/酢酸/水(6:2:1:1)に溶解した。粗溶液を2つの等しい部分に分割し、それぞれを40gのREDISEP(商標)ゴールドシリカカラム(Teledyne Isco、Lincoln、Nebraska)上で、イソクラティック溶離液の酢酸エチル/アセトン/酢酸/水(6:2:1:1)を使用して精製し、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサトリトリアコンタン-33-オエート(3.34g、3.4mmol、74%)をオレンジ色のペーストとして得た。 LC/MS[M+H]985.49(計算値); LC/MS[M+H]985.71(実測値)。
【0187】
実施例10:化合物11の合成
【0188】
【0189】
2-ブチル-8-(ピペラジン-1-イル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミンを、実施例7に記載の手順に従ってtert-ブチル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘンイコサン-21-オエートに変換した。 LC/MS[M+H]717.45(計算値); LC/MS[M+H]717.75(実測値)。
【0190】
実施例11:化合物12の合成
【0191】
【0192】
tert-ブチル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘンイコサン-21-オエートを、実施例8に記載の手順に従って1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘンイコサン-21-酸に変換した。 LC/MS[M+H]661.39(計算値); LC/MS[M+H]661.60(実測値)。
【0193】
実施例12:化合物13の合成
【0194】
【0195】
1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘンイコサン-21-酸を、実施例9に記載の手順に従って2,3,5,6-テトラフルオロフェニル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘンイコサン-21-オエートに変換した。 LC/MS[M+H]809.39(計算値); LC/MS[M+H]809.62(実測値)。
【0196】
実施例13:化合物14の合成
【0197】
【0198】
2-ブチル-8-(ピペラジン-1-イル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミンを、実施例7に記載の手順に従ってtert-ブチル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36-ドデカオキサノナトリアコンタン-39-オエートに変換した。 LC/MS[M+H]981.61(計算値); LC/MS[M+H]981.86(実測値)。
【0199】
実施例14:化合物15の合成
【0200】
【0201】
tert-ブチル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36-ドデカオキサノナトリアコンタン-39-オエートを、実施例8に記載の手順に従って1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36-ドデカオキサノナトリアコンタン-39-酸に変換した。化合物は、さらに精製することなく使用した。
【0202】
実施例15:化合物16の合成
【0203】
【0204】
1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36-ドデカオキサノナトリアコンタン-39-酸を、実施例9に記載の手順に従って2,3,5,6-テトラフルオロフェニル1-(4-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36-ドデカオキサノナトリアコンタン-39-オエートに変換した。 LC/MS[M+H]1073.54(計算値); LC/MS[M+H]1073.81(実測値)。
【0205】
実施例16:免疫結合体Aの合成
【0206】
【0207】
この実施例は、抗体構築物としてトラスツズマブ(Tras)を用いた免疫結合体Aの合成を実証する。
【0208】
トラスツズマブを、G-25 SEPHADEX(商標)脱塩カラム(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を使用して、100mMホウ酸、50mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含有するpH8.3の結合緩衝液に緩衝液交換した。次いで、溶出液を、緩衝液を使用してそれぞれ6mg/mlに調整し、滅菌濾過した。6mg/mlのトラスツズマブを30℃に予熱し、7モル当量の化合物10と急速に混合した。反応を30℃で16時間進行させ、免疫結合体Aを、2回の連続したpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水中で平衡化したG-25脱塩カラムにかけることによって反応物から分離した。アジュバント-抗体比(DAR)を、XEVO(商標) G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続したACQUITY(商標) UPLC Hクラス(Waters Corporation,Milford,Massachusetts)上のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって決定した。免疫複合体Aは、2.5のDARを有していた。
【0209】
実施例17:免疫結合体Bの合成
【0210】
【0211】
この実施例は、抗体構築物としてトラスツズマブ(Tras)を用いた免疫結合体Bの合成を実証する。
【0212】
トラスツズマブを、G-25 SEPHADEX(商標)脱塩カラム(Sigma-Aldrich)を使用して、100mMホウ酸、50mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含有するpH8.3の結合緩衝液に緩衝液交換した。次いで、溶出液を、緩衝液を使用してそれぞれ6mg/mlに調整し、滅菌濾過した。6mg/mlのトラスツズマブを30℃に予熱し、8.5モル当量の化合物13と急速に混合した。反応を30℃で16時間進行させ、免疫結合体Bを、2回の連続したpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水中で平衡化したG-25SEPHADEXTM脱塩カラム(Sigma-Aldrich)にかけることによって反応物から分離した。アジュバント-抗体比(DAR)を、XEVO(商標) G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続したACQUITY(商標) UPLC Hクラス(Waters Corporation,Milford,Massachusetts)上のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって決定した。免疫複合体Bは、2.37のDARを有していた。
【0213】
実施例18:免疫結合体Cの合成
【0214】
【0215】
この実施例は、抗体構築物としてトラスツズマブ(Tras)を用いた免疫結合体Cの合成を実証する。
【0216】
トラスツズマブを、G-25 SEPHADEX(商標)脱塩カラム(Sigma-Aldrich)を使用して、100mMホウ酸、50mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含有するpH8.3の結合緩衝液に緩衝液交換した。次いで、溶出液を、緩衝液を使用してそれぞれ6mg/mlに調整し、滅菌濾過した。6mg/mlのトラスツズマブを30℃に予熱し、6モル当量の化合物16と急速に混合した。反応を30℃で16時間進行させ、免疫結合体Cを、2回の連続したpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水中で平衡化したG-25脱塩カラムにかけることによって反応物から分離した。アジュバント-抗体比(DAR)を、XEVO(商標) G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続したACQUITY(商標) UPLC Hクラス(Waters Corporation,Milford,Massachusetts)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって決定した。免疫複合体Cは、2.15のDARを有していた。
【0217】
実施例19.インビボでの免疫結合体活性の評価
【0218】
この実施例は、免疫結合体A、免疫結合体B、および免疫結合体Cが骨髄活性化を誘発するのに効果的であり、従って癌の治療に有用であることを示す。
【0219】
ヒト抗原提示細胞の単離. ヒト骨髄性抗原提示細胞(APC)は、CD14、CD16、CD40、CD86、CD123、およびHLA-DRに対するモノクローナル抗体を含有するROSETTESEP(商標)ヒト単球濃縮カクテル(Human Monocyte Enrichment Cocktail)(Stem Cell Technologies、バンクーバー、カナダ)を使用した密度勾配遠心分離により、健康な献血者(Stanford Blood Center、パロアルト、カリフォルニア)から得られたヒト末梢血からネガティブに選択した。その後、未成熟APCは、CD14、CD16、CD40、CD86、CD123、およびHLA-DRに対するモノクローナル抗体を含有するCD16枯渇のない、EASYSEP(商標)ヒト単球濃縮キット(Human Monocyte Enrichment Kit)(Stem Cell Technologies)を使用したネガティブ選択により、>97%の純度に精製した。
【0220】
腫瘍細胞の調製. 3つの腫瘍細胞株を使用した:HCC1954、JIMT-1、およびCOLO 205。HCC1954(American Type Culture Collection (ATCC),Manassas,Virginia)は、リンパ節転移のない原発性ステージIIA、グレード3の浸潤性乳管癌腫に由来した。HCC1954は、上皮細胞特異的マーカーである上皮糖タンパク質2およびサイトケラチン19については陽性であり、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)の発現については陰性である。HCC1954は、HER2を過剰発現する(酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって決定されるように)。JIMT-1(DSMZ,Braunschweig,Germany)は、術後放射線照射後の乳管癌(グレード3浸潤性、ステージIIB)を有する女性の胸水に由来した。JIMT-1は、「中」レベルの過剰発現であると考えられるレベルでHER2を過剰発現するが、HER2阻害薬(例えばトラスツズマブ)には反応しない。COLO 205(ATCC)は、結腸の癌腫を有する男性の腹水に由来した。COLO 205は、癌胎児性抗原(CEA)、ケラチン、インターロイキン10(IL-10)を発現し、比較的「低」レベルの過剰発現でHER2を過剰発現すると考えられる。
【0221】
各細胞株からの腫瘍細胞を、0.1%ウシ胎児血清(FBS)を含むPBS中に1~10×106細胞/mLで別々に再懸濁した。続いて、細胞を、1μMの最終濃度を得るために2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)とともにインキュベートした。反応物を、2分後、10%FBSを含む10mLの完全培地の添加を介してクエンチし、完全培地で2回洗浄した。細胞は、使用前に、2%パラホルムアルデヒド中で固定し、PBSで3回洗浄するか、生存したままにしておいた。
【0222】
APC-腫瘍共培養. 2×10
5のAPCを、5:1と10:1との間のエフェクター対標的(腫瘍)細胞比のCFSE標識腫瘍細胞とともに(例えば、
図1A~1I)またはなしで(例えば、
図2A~3D)、10%FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、並びに、示された場合、さまざまな濃度の非結合HER2抗体、本発明の免疫結合体A、免疫結合体B、および免疫結合体C(上記の実施例に従って調製された)を補充したiscove改変ダルベッコ培地(IMDM)(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を含有する96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)中でインキュベートした。細胞および無細胞上清を、18時間後にフローサイトメトリーまたはELISAを介して分析した。
【0223】
このアッセイの結果を、図、例えば、HCC1954細胞株上の免疫結合体Aについては
図1A(CD40)および
図1B(CD86)に、JIMT-1細胞株上の免疫結合体Aについては
図1D(CD40)および
図1E(CD86)に、並びにCOLO 205細胞株上の免疫結合体Aについては
図1G(CD40)および
図1H(CD86)に示す。
【0224】
図2Aは、免疫結合体BがCD14のダウンレギュレーションによって示される骨髄分化を誘発することを示す。
図2Bは、免疫結合体BがCD40のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
図2Cは、免疫結合体BがCD86のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
図3Aは、免疫結合体CがCD14のダウンレギュレーションによって示される骨髄分化を誘発することを示す。
図3Bは、免疫結合体CがCD40のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
図3Cは、免疫結合体CがCD86のアップレギュレーションによって示される骨髄活性化を誘発することを示す。
【0225】
CD40およびCD86などのT細胞刺激分子の発現は、効果的なT細胞活性化に必要であるが、APCはまた、炎症誘発性サイトカインの分泌を通して続く免疫応答の性質に影響を与える。従って、刺激後にヒトAPCにおいてサイトカイン分泌を誘発する免疫結合体の能力を調査した。データは、免疫結合体で刺激した細胞が高レベルのTNFαを分泌したことを示す。HCC1954細胞株と共培養した免疫結合体Aについては
図1Cを、JIMT-1細胞株と共培養した免疫結合体Aについては
図1Fを、およびCOLO 205細胞株と共培養した免疫結合体Aについては
図1Iを参照されたい。
図2Dは、免疫結合体Bとの18時間のインキュベーション後の骨髄細胞からのTNFα分泌を示す。
図3Dは、免疫結合体Cとの18時間のインキュベーション後の骨髄細胞からのTNFα分泌を示す。
【0226】
実施例20.免疫結合体Bおよび免疫結合体Cの薬物動態(PK)特性の評価
【0227】
この実施例は、免疫結合体Bおよび免疫結合体Cが好ましいPK特性を有することを示す。
【0228】
カニクイザル(Macaca fascicularis)に、10mg/kgの免疫結合体B、免疫結合体C、スキーム1に示す免疫結合体D、免疫結合体E、免疫結合体F、または免疫結合体Gを投与し、PK特性を投与後28日間評価した
【0229】
【0230】
トラスツズマブPKアッセイは、HCA169抗イディオタイプmAbでトラスツズマブを捕捉し、ペルオキシダーゼ標識HCA176(HCA176P)で検出するように構成された。抗体薬物結合体アッセイは、HCA169抗イディオタイプmAbでトラスツズマブを捕捉し、A103に対するウサギmAbで検出した後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgGで検出するように構成された。免疫結合体Bおよび免疫結合体Cは、免疫結合体D、免疫結合体E、免疫結合体F、および免疫結合体Gと比較して、両方のPKアッセイにおいてより高い血清レベルを示した。
【0231】
本明細書において引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照により組み込まれることが個別にかつ具体的に示され、その全体が本明細書において記載されているかのように、同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」および「an」および「the」および「少なくとも1つの」並びに類似の指示対象の使用は、本明細書において別途示されない限りまたは文脈と明確に矛盾しない限り、単数および複数の両方をカバーするものと解釈されるべきである。1つ以上の項目のリストに伴われる用語「少なくとも1つ」(例えば、「AおよびBの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別途示されない限りまたは文脈と明確に矛盾しない限り、列挙された項目から選択される1つの項目(A若しくはB)、または列挙された項目の2つ以上の任意の組合せ(AおよびB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、別途記載のない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別途示されない限り、単に、範囲内に入る各別個の値に個別に言及する簡略化方法として役立つことが意図され、それぞれの別個の値は、本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書において記載される全ての方法は、本明細書において別途示されない限りまたは文脈によって明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書において提供される任意のおよび全ての実施例、または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明確化することが意図されるものであり、別途特許請求の範囲で請求されない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に必須の非請求のいかなる要素を示すものとしても解釈されるべきではない。
【0233】
本発明者らに既知の本発明を実施するための最良の様式を含む、本発明の好ましい実施態様が、本明細書において記載されている。これらの好ましい実施態様の変形例は、前述の説明を読むと、当業者には明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者が適宜そのような変形例を使用することを期待しており、本発明者らは、本明細書において具体的に記載されているのとは別の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、この発明は、適用可能な法律によって認められるように本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての修飾物および均等物を含む。さらに、本明細書において別途示されない限りまたは文脈によって明確に矛盾しない限り、その全ての可能な変形例における上記の要素の任意の組合せが、本発明に包含される。
【配列表】
【国際調査報告】