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特表2022-525612縦溝を有する変形可能スリーブを使用したボルト継手
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】縦溝を有する変形可能スリーブを使用したボルト継手
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20220511BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20220511BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F16B19/10 B
F16B5/02 E
F16B5/06 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555471
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020022424
(87)【国際公開番号】W WO2020190647
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/818,968
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507065795
【氏名又は名称】アキュメント インテレクチュアル プロパティーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シファーマン,ゲアリー
(72)【発明者】
【氏名】パーディー,ポール
【テーマコード(参考)】
3J001
3J036
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA03
3J001JC03
3J036AA05
3J036FA01
(57)【要約】
ボルト継手は、変形可能スリーブを冷間成形するよう、装着の間に作用する肩部を含むボルトから形成された「ゼロクリアランス」嵌合をもたらす。ボルト継手は、ボルト受け部材を締め付け部品に結合する。1つ以上のボルト継手が使用されてもよく、ボルトが装着されるにつれて、ボルトの各々の上の肩部は、スリーブの外径が締め付け部品内の抜き穴の内壁に接触するまで、変形可能スリーブを拡張させる。変形可能スリーブの各々は、その内面上に少なくとも1つの溝またはフルートを含み、少なくとも1つの溝またはフルートは、締め付け部品及びボルト受け部材の内壁上でラジアル荷重が減少することをもたらし、スリーブと締め付け部品及びボルト受け部材内に配置された座ぐり孔の両方との間で摩擦が少なくなることをもたらし、それによって、スリーブを変形させるためにより小さい割合のボルトの引張強度能力しか必要とされないことを可能にする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト及びスリーブアセンブリと共に固定された締め付け部品及びボルト受け部材を含むゼロクリアランスボルト継手であって、
上面、及び開口直径を有する開口を有する締め付け部品であって、前記開口は、締め付け部品開口壁を定める、前記締め付け部品と、
ボルト受け部材であって、
前記開口直径に等しい座ぐり孔直径を有する座ぐり孔であって、前記座ぐり孔は、座ぐり孔壁及び座ぐり孔底面を定める、前記座ぐり孔と、
前記座ぐり孔と同軸及び同心円をなす抜き穴であって、前記座ぐり孔は、前記締め付け部品の前記開口と位置合わせされる、前記抜き穴と、
を有する、前記ボルト受け部材と、
ボルト及びスリーブアセンブリであって、
ボルトであって、
前記開口直径の幅よりも大きい前記幅を有するヘッドであって、前記ヘッドは、前記締め付け部品の前記上面と接して係合している、前記ヘッドと、
前記ヘッドから延在するシャフトであって、前記シャフトは、
前記ヘッドから離れて縦方向に間隔を空けられたシャフトネジ部であって、前記ネジ部は、前記ボルト受け部材の前記抜き穴内に延在する、前記シャフトネジ部と、
前記ヘッドと前記シャフトネジ部との間に配置されたシャフト非ネジ部と、
を有する、前記シャフトと、
前記シャフト非ネジ部上に成形された肩部と、
を有する、前記ボルトと、
外部スリーブ直径を定めたスリーブ外面、及び前記肩部に接触するスリーブ内面を有するスリーブであって、前記スリーブは、
スリーブ第1端部と、
前記スリーブ第1端部とは反対のスリーブ第2端部と、
内部スリーブ直径を有する前記スリーブ内面を定めたスリーブ貫通孔であって、前記スリーブ内面は、前記肩部に接触する、前記スリーブ貫通孔と、
前記スリーブ内で一体的に成形された少なくとも1つの縦溝であって、前記少なくとも1つの縦溝は、前記スリーブ第1端部と前記スリーブ第2端部との間で少なくとも部分的に延在する、前記少なくとも1つの縦溝と、
を有する、前記スリーブと、
を含む、前記ボルト及びスリーブアセンブリと、
を備え、前記ボルト及びスリーブアセンブリは、前記スリーブ外面と前記締め付け部品開口壁及び前記ボルト受け部材座ぐり孔壁の両方との間でゼロクリアランス嵌合があるように、前記スリーブが前記締め付け部品の前記開口内、及び前記ボルト受け部材の前記座ぐり孔内に位置付けられるとき、前記締め付け部品及び前記ボルト受け部材を共に固定して、前記ボルト継手を成形する、
前記ボルト継手。
【請求項2】
前記スリーブ第2端部は、前記ボルト受け部材座ぐり孔の前記底面と隣接して係合する、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項3】
前記スリーブ第1端部は、前記肩部に接触し、前記スリーブ第2端部は、前記ボルトネジ部に接触する、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項4】
前記外部スリーブ直径は、前記締め付け部品開口直径及び前記ボルト受け部材座ぐり孔直径の両方よりも小さく、それによって、前記締め付け部品開口及び前記ボルト受け部材座ぐり孔の両方の中への前記スリーブの挿入を可能にする、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項5】
前記スリーブ内面上に成形された前記少なくとも1つの縦溝は、より小さい接触領域をもたらし、よって、従来のボルト肩部と前記少なくとも1つの縦溝を有さない従来のスリーブとの間のより高いレベルの摩擦とのより大きな接触領域よりも、前記ボルト肩部と前記スリーブ内面との間の装着の間の摩擦のレベルが減少することをもたらす、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項6】
前記より小さい接触領域は、装着の間に前記締め付け部品開口及び前記ボルト受け部材座ぐり孔内に前記スリーブを変形させるために十分である荷重が前記ボルトに付加されるとき、前記スリーブの前記内面と前記ボルト肩部との間で所望のレベルの摩擦が達成されることを可能にする、請求項5に記載のボルト継手。
【請求項7】
前記ボルト及び前記スリーブ内面の両方の間の前記減少したレベルの摩擦はまた、前記スリーブ外面と前記締め付け部品開口壁及び前記ボルト受け部材座ぐり孔壁の両方との間でゼロクリアランスをもたらすよう、装着工程の間に溝を有さない従来のスリーブを変形させるために必要とされるよりも、前記スリーブを変形させるために必要な前記ボルトに付加される引張荷重を減少させる、請求項5に記載のボルト継手。
【請求項8】
装着の間の前記スリーブ内面と前記ボルト肩部との間の前記減少したレベルの摩擦は更に、前記少なくとも1つの縦溝を有さない従来のスリーブに付加されるアキシアル荷重よりも、前記ボルト受け部材の前記座ぐり孔底面に反して押し込む前記スリーブに付加されるアキシアル荷重が少なくなることを結果としてもたらす、請求項5に記載のボルト継手。
【請求項9】
前記ボルト継手は、前記締め付け部品開口と前記ボルト受け部材座ぐり孔との間の不一致に対応すると共に、前記スリーブと前記締め付け部開口壁及び前記座ぐり孔壁の両方との間でのゼロクリアランスを維持する、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項10】
前記ボルト受け部材に対する前記締め付け部品の滑りは、前記ボルト継手が運用荷重に供されるときに最小にされ、運用荷重は、前記ボルト継手の耐用年数の間に、装着の後に前記ボルト継手に付加される予測荷重である、請求項9に記載のボルト継手。
【請求項11】
前記少なくとも1つの溝は、装着工程の間のスリーブの変形の間にずれた材料に対する空間を含む、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項12】
締め付け部品開口壁及び少なくとも1つの縦溝を有する前記スリーブを有する前記ボルト継手内のボルト受け部材座ぐり孔壁に及ぼされたラジアル荷重は、前記少なくとも1つの縦溝を有さないスリーブを有するボルト継手内に及ぼされたラジアル荷重よりも小さい、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項13】
減少したラジアル荷重は、少なくとも1つの縦溝を有さない従来のスリーブを有するボルト継手内の摩擦のレベルよりも、前記スリーブと前記締め付け部品及び前記ボルト受け部材座ぐり孔の両方との間で摩擦のレベルが少なくなることを結果としてもたらす、請求項12に記載のボルト継手。
【請求項14】
前記ボルト継手を成形するための前記締め付け部品及び前記ボルト受け部材内の前記ボルト及びスリーブアセンブリの装着の間、少なくとも1つの縦溝を有さないスリーブを有する従来のボルトスリーブアセンブリを装着するために必要とされるよりも、前記スリーブを変形させるために、より小さい割合のボルトの引張強度能力しか必要とされない、請求項12に記載のボルト継手。
【請求項15】
前記スリーブを変形させるためにより前記より小さい割合のボルトの引張強度能力しか必要とされないことは、M8ボルトよりも小さいボルトサイズの製造を可能にする、請求項14に記載のボルト継手。
【請求項16】
前記スリーブの前記内面上の縦方向の並列した配列に1つよりも多い溝が間隔を空けられる、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項17】
前記変形可能スリーブは更に、前記スリーブの縦方向の中心軸に対して相互から離れて等しく間隔を空けられた複数の溝を含む、請求項16に記載のボルト継手。
【請求項18】
前記少なくとも1つの縦溝は、放射状に狭く、軸方向に深い、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項19】
前記少なくとも1つの縦溝は、放射状に広く、軸方向に浅い、請求項1に記載のボルト継手。
【請求項20】
1.前記ボルト受け部材の前記抜き穴は、ネジ止めされ、前記ボルトの前記ネジ部は、前記ボルト受け部材の前記抜き穴とネジで係合するか、または
2.前記ボルト受け部材の前記抜き穴は、ネジ止めされず、前記ボルトの前記ネジ部は、前記抜き穴を通じて延在し、ネジ付きナットとネジで係合するか
のいずれかである、請求項1に記載のボルト継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(優先権主張)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年3月15日出願の米国仮出願第62/818,968号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本出願は概して、ボルト継手に関し、特に、ボルト受け部材及び締め付け部品を含む高せん断力荷重継手において使用されるゼロクリアランスボルト継手に関する。この解決策は、いずれかの高せん断力荷重継手において使用されてもよい。
【0003】
しかしながら、一般的に、ボルト継手は、締め付け部品が相互に移動することを防止することが出来ない。これは、ボルトを継手から取り出すのに十分な摩擦を生じさせる、継手が滑ることをボルトが防止することが可能ではないからである。
【0004】
例えば、ボルト継手が使用されている1つの用途として、ボルト受け部材を締め付け部品に接合するときがある。しかしながら、一般的に、ボルト継手は、締め付け部品に対するボルト受け部材の移動を防止することが出来ず、よって、締め付け部品の滑りが発生することがある。ボルト受け部材を締め付け部品に接合する現在の方法では、締め付け部品上の複数の抜き穴及びボルト受け部材上の複数のねじ穴の適合円形パターンを利用する。この設計は、製造工場の穴位置許容度能力に関する懸念事項を生じさせている。
【0005】
米国特許第7,717,659号には、「ゼロクリアランス」嵌合をもたらすために、変形可能スリーブを冷間成形するために、先細肩部を有するボルトを使用することによって成形されるボルト継手が開示されている。特に、ボルトが締め付け部品及びボルト受け部材内に装着されるにつれて、ボルト上の先細肩部は、スリーブの外径が締め付け部品内の抜き穴の内壁に接触するまで、変形可能スリーブを拡張させる。締め付け部品内の抜き穴及びボルト受け部材内の不一致に対応すると共に、ゼロクリアランス嵌合を維持するための、スリーブと締め付け部品内の抜き穴の内壁との間に十分な摩擦が常に存在するわけではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態の目的は、例えば、高せん断力荷重継手を接合するために使用することができるゼロクリアランスボルト継手を提供することである。
【0007】
本発明の実施形態の別の目的は、継手が付加された運用荷重に供される間、不一致に適合し、ボルト受け部材に対する締め付け部品の滑りを最小にする、第1の締め付け部品をボルト受け部材に固定する手段として使用することができるゼロクリアランス高せん断力荷重ボルト継手を提供することである。
【0008】
簡潔に、及び先述の目的のうちの少なくとも1つに従って、本発明の実施形態は、「ゼロクリアランス」嵌合をもたらすために、変形可能スリーブを冷間成形するために、肩部を有するボルトを使用することによって成形されるボルト継手を提供する。このボルト継手は、継手部品の間の不一致または穴位置誤差に対応するために、単一の穴の用途または複数の穴の用途において使用されてもよい。不一致/穴位置誤差は、複数のボルト位置を有する継手においてより大きな問題である。各変形可能スリーブは、ボルト及びスリーブの間で摩擦が少なくなるようにスリーブ内面上に少なくとも1つの溝またはフルートを含み、その結果装着工程の間にスリーブを変形させるために必要なラジアル荷重を減少させ、ボルト受け部材の座ぐり孔の床上のアキシアル荷重をも減少させる。変形可能スリーブを変形させるためのより低いラジアル荷重及びアキシアル荷重は、少なくとも1つの縦溝を有さない従来のスリーブよりも、締め付け部品及びボルト受け部材材料、並びに関連する壁厚みなどのジオメトリに対するより多くの選択肢を可能にする。
【0009】
本発明の構造及び動作の編成及び方式は、それらの更なる目的及び利点と共に、添付図面と併用して以下の説明を参照することによって最良に理解することができ、添付図面では、同様の参照符号は、同様の要素を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a図1aは、本発明の実施形態に係る、装着の前にボルト上に配置されたスリーブを示す側面図である。
図1b図1bは、装着前にボルト上に配置されたスリーブを示す端面図である。
図2a図2aは、実施形態に係る、軸方向に深く、且つ放射状に狭い溝を有する、図1に示されたスリーブの上面斜視図である。
図2b図2bは、図2aに示されたスリーブの上面図である。
図2c図2cは、図2bに示されたスリーブの線2c-2cにおける側断面図である。
図3a図3aは、実施形態に係る、軸方向に狭く、且つ放射状に浅い溝を有する、図1に示されたスリーブの上面斜視図である。
図3b図3bは、図3aに示されたスリーブの上面図である。
図3c図3cは、図2bに示されたスリーブの線3c-3cにおける側断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る、ボルト継手の形態の(すなわち、装着の後)、図1のボルト及びスリーブを示す。
図5図5は、図4に示された実施形態と非常に類似するが、ボルトのネジ部がボルト受け部材内の逃がし穴(すなわち、非ネジ孔)を通じて延在し、ネジ付きナットに係合する、本発明の代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は異なる形式にある実施形態を許容することができ、図面において示され、本明細書で詳細に説明されると共に、本説明の理解によるそれらの実施形態は、原理の例示であると考えられ、本明細書で例示及び説明される発明を限定することを意図していない。
【0012】
本発明は、例えば、第1の締め付け部品及びボルト受け部材を含む高せん断力荷重継手を固定するための手段として使用することができるゼロクリアランスボルト継手を対象としており、ゼロクリアランスボルト継手は、高せん断力荷重継手が予測運用荷重に供される間、不一致に対応し、ボルト受け部材に対する締め付け部品の滑りを最小にする。標準的な運用荷重は、ボルト継手の耐用年数の間、装着の後にボルト継手に付加される予測荷重である。
【0013】
図1aは、装着前にボルト20上に配置された変形可能スリーブ10を含むボルト及びスリーブアセンブリ21を示す側面図である。図4は、発明の実施形態に係る、ボルト継手の形態の(すなわち、装着の後)、図1aのスリーブ10及びボルト20を示す。図1bは、ボルト20上に配置されたスリーブ10の端面図である。
【0014】
図1a及び1bに示されるように、ボルト20は、直径60を有するフランジ61を含むヘッド22を有し、ヘッド22は、駆動機構を有し、図1a及び4に示されるようなヘックス外形に限定されない。ボルト20のシャフトは、ボルト20の端部30及びヘッドとシャフトネジ部との間に配置されたシャフト非ネジ部に近接して、ヘッド22から離れて縦方向に間隔を空けられる。
【0015】
図1aに示されるように、肩部44がシャフト非ネジ部上で成形され、肩部44は、直径45を有し、ボルト20のネジ部26とヘッド22との間で全体的に配置される。図示のように、ボルト20上の肩部44は好ましくは、円形に設けられるが、肩部44は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の外形を有してもよい。
【0016】
ボルト20に加えて、ボルト及びスリーブアセンブリ21はまた、実施形態に係る、図1a~2c及び図4に示されるような変形可能スリーブ10を含む。
【0017】
材料に関して、ボルト20は、例えば、ISO898-1スチールから成形されてもよいと共に、スリーブ10は、例えば、AISI1010スチールから成形されてもよい。ボルト20及びスリーブ10の厳密な材料に関わらず、好ましくは、スリーブ10は、ボルト20よりも柔らかい材料から作成される。
【0018】
ここで、スリーブ10の好ましい構造をより詳細に説明する。より具体的に、図2aは、図1a~1bに示されたような変形可能スリーブ10の上面斜視図を示す。図2bは、図2aに示されたスリーブ10の上面図を示す。図2cは、線2c-2cにおける、図2bに示されたスリーブ10の断面図を示す。
【0019】
図2cにおいてより詳細に示されるように、スリーブ10は、スリーブ内径50及びスリーブ外径52を有する。図2a~2cに示されるように、好ましくは、スリーブ10は、スリーブ外径52を定めた外面64及びスリーブ内径50を有するスリーブ内面82を定めた貫通孔を有し、スリーブの内面82は、スリーブ内面82と一体的に成形された1つ以上の溝またはフルート84を含む。好ましくは、スリーブ内面82上の各々の溝またはフルート84は、縦方向に至り、少なくとも部分的に第1のスリーブ端部86から反対の第2のスリーブ端部88へ(図2a~2cを参照)、貫通孔に沿って延在する。図示ように各々の溝またはフルート84が第1のスリーブ端部86から反対の第2のスリーブ端部88へ幅広く延在するが、これは必須ではなく、単なる1つの可能な実施形態である。溝またはフルート84は代わりに、なおも本発明の範囲内で、部分的に第1のスリーブ端部86から反対の第2のスリーブ端部88へ単に延在してもよい。
【0020】
好ましくは、1つよりも多い溝またはフルート84が設けられる場合、それらは、相互に全体的に並列である。例えば、図2a~2bに示されるように、3つ以上の溝またはフルート84が設けられてもよく、その各々は、等しく離れて間隔を空けられる(すなわち、スリーブ10の縦方向の中心軸90(図2cに示される)に対して相互から全体的に120度離れて)。
【0021】
溝またはフルート84は、なおも本発明の範囲内で、可変ジオメトリを有してもよい。
【0022】
例えば、各々の溝もしくはフルート84は、放射状に狭いが、軸方向に深くてもよく(図1b、図2a~2cに示されるように)、または各々の溝もしくはフルート84aは、放射状に広いが、軸方向に浅くてもよい(図3a~3cに示されるように)。それらのジオメトリのいずれかは、発明の異なる実施形態を効果的に形成することができる。厳密なサイズ及び形状に関わらず、溝またはフルートは、好ましくは、スリーブの強度を著しく損なうことなく、摩擦を減少させる機能を有する。更に、各々の溝またはフルートが相互に全体的に同一であることが好ましいが、これは必須ではなく、実際には、各々は、なおも本発明の範囲内で、異なる外形(すなわち、サイズ及び形状)を有してもよい。
【0023】
図3a~3cに関して、スリーブ10aは、図2a~2cを参照して示されたスリーブ10と同一であるが、しかしながら、溝またはフルート84aは、放射状に広いが、軸方向に浅い。図2a~2cに示された同様の要素と類似する要素の各々に対して付加された接尾辞「a」を有する、図3a~3cに示されるスリーブ10aについての同様の要素に対して、同様の参照符号が参照される。
【0024】
より具体的に、図3aは、図1に示されたようなスリーブ10aの上面斜視図を示す。図3bは、図3aに示されたスリーブ10aの上面図を示す。図3cは、線3c-3cにおける、図3bに示されたスリーブ10aの断面図を示す。
【0025】
図1a~1bは、ボルト20が装着される前のスリーブ10の状態を示す。図4は、装着の後のスリーブ10及びボルト20の装着を示す。
【0026】
一実施形態では、スリーブ外面と締め付け部品開口壁及びボルト受け部材座ぐり孔壁の両方との間でゼロクリアランス嵌合があるように、変形可能スリーブが第1の締め付け部品の開口内及びボルト受け部材の座ぐり孔内に位置付けられるとき、ボルト及びスリーブアセンブリは、第1の締め付け部品及びボルト受け部材を共に固定して、ボルト継手を成形する。
【0027】
より具体的に、図4におけるボルト継手を参照して、図4は、第1の締め付け部品58及びボルト受け部材42を共に固定し、それによって、ボルト継手を成形するように装着されたボルト及びスリーブアセンブリの側断面図である。ボルト20の装着の間、ボルト20のヘッド22は回転し、図4に示されるように、ボルト20のネジ部26をボルト受け部材42内に設けられたねじ穴40などの抜き穴の内にネジ止めさせる。ネジ部26がねじ穴40内にネジ止めされるにつれて、ボルト20の肩部44は、スリーブ10を冷間成形し、それによって、スリーブ外面64を第1の締め付け部品58の開口壁62及びボルト受け部材42の座ぐり孔43の座ぐり孔壁63に接触可能に係合させ、それによって、それらの間で「ゼロクリアランス」嵌合をもたらす。ボルト受け部材42を第1の締め付け部品58に完全に接合または固定するために、例として図4に示される1つの継手のみであるにも関わらず、別の実施形態では、複数のボルト継手が使用されてもよい。
【0028】
締め付け部品58に関して、図4は、開口直径を有する第1の締め付け部品内で抜き穴を定めた開口56を示す、上面を有する第1の締め付け部品58のセクションを示す。そこに設けられた座ぐり孔壁63及び底面41を有する座ぐり孔43を有するボルト受け部材42に関して。
【0029】
加えて、図4に示されるように、ボルト受け部材座ぐり孔43は、座ぐり孔直径47を有し、座ぐり孔直径47は、ボルト受け部材42と締め付け部品58とが接触する平面であるせん断面72から離れて間隔を空けられた点においてねじ穴40が始まるように、締め付け部品58内で対応する開口56と効果的に合致する。実施形態では、第1の締め付け部品58の開口直径54は、ボルト受け部材42の座ぐり孔直径47と同一である。図4に示される発明の実施形態では、ボルト及びスリーブアセンブリ21は、第1の締め付け部品58及びボルト受け部材42として定められた受け構造内に変形される。
【0030】
代替的な実施形態が図5に示される。図5に示される実施形態は、図4に示された実施形態と非常に類似する。従って、同様の部品を識別するために同様の参照符号が使用される。図5に示される実施形態と、図4に示され、以上説明した実施形態との間の唯一の差は、図5に示される実施形態が、ボルト受け部材の抜き穴が、図4に示されたようなねじ穴40ではなく、逃がし穴40a(すなわち、非ネジ孔)であることである。図5に示される実施形態では、ボルトのネジ部は、ボルト受け部材内で逃がし穴40aを通じて幅広く延在し、ネジ付きナットとネジで係合する。図5に示される実施形態では、ボルト受け部材は、効果的に第2の締め付け部材であり、参照符号32により識別される。
【0031】
実施形態に関わらず、溝またはフルート84は、好ましくは、特定の用途に従って、すなわち、受け構造内にスリーブ10を変形させるために必要とされる荷重を考慮して、スリーブとボルト肩部との間の所望のレベルの摩擦を達成し、溝またはフルート84の間で表面85の所望の表面領域を有するように形状付けられ、そのような大きさとされる。
【0032】
好ましくは、装着の前に、スリーブ10の内径50(図2cを参照)は、肩部44の外径45(図1a及び4を参照)よりも小さくし、その結果、ボルト20が装着されるとき、すなわち、ボルト受け部材42に対して、ボルト20の肩部44は、スリーブ10を変形させる。好ましくは、スリーブ10のスリーブ外径52(図2cを参照)は、締め付け部品58の対応する開口56の開口直径54(図4を参照)及びボルト受け部材42のボルト受け部材座ぐり孔43の座ぐり孔直径47の両方よりも小さく、その結果、締め付け部品58内の締め付け部品開口56及びボルト受け部材座ぐり孔43にスリーブ10を挿入することができる。加えて、好ましくは、ボルト20のヘッド部22の直径60(図1a及び4を参照)は、締め付け部品58内の締め付け部品抜き穴56の内径54よりも大きい。従って、図4に示されるように、装着されるとき、ボルト20のヘッド22は、締め付け部品58の上面に対向して位置する。
【0033】
加えて、溝84も、装着の間のスリーブ10の変形の間にずれた材料に対する空間89(図4を参照)を設ける。結果として、本実施形態は、締め付け部品58の開口壁62及びボルト受け部材42の座ぐり孔壁63の両方に対するラジアル荷重が減少すること、並びにボルト受け部材42の座ぐり孔43の底面41(図4に示された)に対するアキシアル荷重が減少することを可能にする。ラジアル荷重及びアキシアル荷重が減少することにより、溝のないスリーブを有するボルト継手において使用されるよりも、締め付け部品及びボルト受け部材においてより低い強度の材料が使用されることが可能になる。
【0034】
スリーブ10の内面82上の溝またはフルート84(図2a~2cに示された)は、従来のボルトの肩部89と溝を有さない従来のスリーブとの間のより高いレベルの摩擦とのより大きな接触領域よりも、装着の間にボルト20の肩部44とスリーブ10との間の摩擦が少なくなることを結果としてもたらす、そこに成形された溝84を有さないスリーブよりも小さい接触領域を生成する。よって、スリーブ10の内面82上で成形された溝84は、所望のレベルの摩擦が達成されることを可能にし、すなわち、装着の間に締め付け部品開口56及びボルト受け部材座ぐり孔43内にスリーブ10を変形させるのに十分な荷重がボルトに付加されるとき、スリーブ10の内面82とボルト肩部44との間の摩擦を少なくすることが出来る。
【0035】
ボルト及びスリーブの両方の間での減少した摩擦は、スリーブと締め付け部品開口壁及びボルト受け部材座ぐり孔壁の両方との間でゼロクリアランスをもたらすよう、装着工程の間に溝を有さない従来のスリーブを変形させるために必要とされるよりも、溝を有するスリーブを変形させるために必要なボルトに付加される引張荷重をも減少させる。
【0036】
スリーブ10とボルト肩部44との間での減少した摩擦はまた、溝を有さない従来のスリーブに付加されるアキシアル荷重よりも、ボルト受け部材42の座ぐり孔43の底面41に反して押し込む、スリーブ10に付加されるアキシアル荷重が少なくなることを結果としてもたらす。また、装着の間にスリーブ10を変形させるために、より小さい割合のボルトの引張強度能力しか必要とされない。スリーブを変形させるためにより小さい割合のボルトの引張強度能力しか必要とされないことは、ボルト及び溝を有さない従来のスリーブを有するスリーブアセンブリにより可能であったよりも、M8ボルトよりも小さいなど、より小さいボルトサイズの製造を可能にする。したがって、ボルトの強度のより多くが、運用荷重を締め付け部品に付加するために利用可能である。
【0037】
実施形態では、ボルト継手は、締め付け部品開口56とボルト受け部材座ぐり孔43との間の不一致に対応すると共に、スリーブ10と締め付け部分開口壁62及び座ぐり孔壁63の両方との間でゼロクリアランスを維持する。
【0038】
発明の実施形態では、ボルト継手は、高せん断力荷重継手が標準的な運用荷重に供される間、ボルト受け部材42に対する締め付け部品58の滑りを最小にする高せん断力荷重継手である。
【0039】
以上、発明の特定の実施形態が示され、及び説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は様々な修正を考案することができることが想定されよう。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
図5
【国際調査報告】