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特表2022-525613強化された触媒ウォッシュコート接着用結合剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】強化された触媒ウォッシュコート接着用結合剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20220511BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220511BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220511BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B01J23/10 A ZAB
B01J35/04 301Z
B01D53/94 222
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555474
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020022274
(87)【国際公開番号】W WO2020186000
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/818,378
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19175283.1
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イー
(72)【発明者】
【氏名】スン,イーポン
(72)【発明者】
【氏名】リーダー,ドナルド エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ブライアン ティー
(72)【発明者】
【氏名】ムンディン,アンドレアス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ゼール,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】シュレレート,ダフィト
(72)【発明者】
【氏名】リー,ハオ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AA18
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3G091AB03
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4G169FC08
(57)【要約】
本開示は、異なる平均粒子を有する複数の結合剤材料で形成された結合剤組成物を提供し、結合剤組成物は、基材上のウォッシュコートの接着を改善するのに有用である。関連する粘度を大幅にまたは実質的に増加させることなく、結合剤濃度の増加に関連して接着を改善することができる。そのような結合剤組成物は、第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含むことができ、第1の平均粒径と第2の平均粒径との比率は、約2以上である。本開示は、結合剤組成物を組み込んだ触媒組成物、触媒物品、および排出システムをさらに提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤組成物であって、
第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、
第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含み、
前記第1の平均粒径と前記第2の平均粒径との比率が、約2以上である、結合剤組成物。
【請求項2】
前記第1の結合剤材料および第2の結合剤材料が、アルミナ含有材料、シリカ含有材料、ジルコニア含有材料、セリア含有材料、ランタナ含有材料、イットリア含有材料、およびそれらの組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項3】
前記第1の結合剤材料が、アルミナ含有材料であり、前記第2の結合剤材料が、ジルコニア含有材料である、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項4】
第3の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第3の結合剤材料をさらに含み、前記第1の平均粒径と前記第3の平均粒径との比率が、約2以上である、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項5】
前記第1の平均粒径が、約50nm~約1000nmである、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項6】
前記第2の平均粒径が、約10nm~約500nmである、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項7】
前記第1の結合剤材料および前記第2の結合剤材料が、約0.01~約0.5の濃度比で存在する、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項8】
前記第1の結合剤材料および前記第2の結合剤材料の一方または両方が、触媒作用を有する、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項9】
ウォッシュコートスラリーであって、
液体媒体と、
請求項1~8のいずれか一項に記載の結合剤組成物と、を含む、ウォッシュコートスラリー。
【請求項10】
前記結合剤組成物が、約0.01~約1.0g/inの量で存在し、前記ウォッシュコートスラリーが、約300s-1で約100cP以下の粘度を有する、請求項9に記載のウォッシュコートスラリー。
【請求項11】
前記ウォッシュコートスラリーが、約300s-1で約50cP以下の粘度を有する、請求項10に記載のウォッシュコートスラリー。
【請求項12】
触媒材料をさらに含む、請求項9に記載のウォッシュコートスラリー。
【請求項13】
ガス流に適合された複数のチャネルを有する触媒基材を備える触媒物品であって、各チャネルが、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の結合剤組成物を含む触媒コーティングに接着した壁面を有する、触媒物品。
【請求項14】
前記触媒コーティングが、前記結合剤組成物と組み合わせた触媒材料を含む、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記触媒基材が、壁流フィルタ基材またはフロースルー基材を備えるハニカムである、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記触媒コーティングが、少なくとも約1.0g/inの充填量で前記基材上に存在する、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記触媒基材が、前記触媒コーティングの第1のコーティング層を含み、前記触媒コーティングの前記第1のコーティング層の少なくとも一部を覆う全体的に異なる組成の第2のコーティング層を含む、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項18】
以下の条件の一方または両方が満たされる、請求項17に記載の触媒物品:
前記第1の結合剤材料が、前記触媒コーティングの前記第1のコーティング層の総乾燥利得の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、
前記第2の結合剤材料が、前記触媒コーティングの前記第1のコーティング層の総乾燥利得の約7重量%~約20重量%の量で存在する。
【請求項19】
排気ガス流を処理するための排出物処理システムであって、前記排出物処理システムが、
i.排気ガス流を生成するエンジンと、
ii.前記エンジンの下流に位置決めされ、かつ前記排気流と流体連通している請求項13~請求項18のいずれか一項に記載の触媒物品と、を備える、排出物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月14日に出願された米国仮出願第62/818378号、および2019年5月20日に出願された欧州出願第19175283.1号の全体に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、触媒を形成するのに有用な組成物の分野、ならびにそのような組成物を含む触媒物品、ならびにそのような触媒物品を調製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
長い年月にわたり、窒素酸化物(NO)の有害な成分が大気汚染を引き起こしてきた。NOは、内燃エンジン(例えば、自動車およびトラック)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、石炭によって加熱を行う発電所)、ならびに硝酸生成プラントなどからの排気ガスに含有される。
【0004】
NO含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の触媒還元を伴う。2つのプロセスがある:(1)一酸化炭素、水素、または低級炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス。選択的還元プロセスでは、少量の還元剤で高度の窒素酸化物除去が達成され得る。
【0005】
そのような触媒還元を提供するのに有用な触媒物品は、典型的には、触媒材料を、しばしばウォッシュコート組成物の形態で、基材に適用することによって調製される。触媒物品の耐久性を確保するために、ウォッシュコート組成物が、最小限の損失で触媒物品の使用寿命を通して実質的に基材に接着したままであることが有益である。
【0006】
触媒ウォッシュコートと基材との間の結合強度を強化するために、1つ以上の結合剤がウォッシュコート組成物に添加され得る。しかしながら、結合剤を使用することによって基材へのウォッシュコートの結合を改善することは、問題となる可能性がある。ウォッシュコート組成物中の全体的な結合剤含有量を増加させると、組成物の総粘度が大幅に増加する可能性があり、これは次に、基材に沿ったウォッシュコート組成物の均一なコーティングを妨げる可能性がある。次いで、コーティングの不均一性は、時間の経過と共にウォッシュコートの損失につながる。他方、ウォッシュコート組成物中の全体的な結合剤含有量を減少させると、基材へのウォッシュコートの結合強度が望ましくないほど低下する可能性がある。次いで、結合強度が低下すると、時間の経過と共にウォッシュコートの損失につながる。したがって、好適な損失プロファイルを達成するために正しい結合剤含有量に到達することは困難である可能性があり、触媒物品の形成に使用するための追加の結合剤組成物の分野での必要性が残っている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、触媒物品を形成するのに有用な組成物を対象としている。組成物は、異なる平均粒径を有する複数の結合剤を含み、複数の結合剤は、定義された比率で存在する。複数の結合剤を含む組成物は、基材上への触媒ウォッシュコートの接着を強化するのに有益である。本明細書に記載されるような複数の結合剤の組み合わせは、特に、ウォッシュコート粘度の望ましくない増加を引き起こすことなく、利用することができる総結合剤含有量を増加させることができる。同様に、複数の結合剤の組み合わせは、それと共に基材に接着されるウォッシュコートの粘弾性挙動を改善することができる。
【0008】
1つ以上の実施形態では、本開示は、定義された比率およびサイズで複数の結合剤材料を含む結合剤組成物に関することができる。例えば、結合剤組成物は、第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含むことができ、第1の平均粒径と第2の平均粒径との比率は、約2以上である。さらなる実施形態では、結合剤組成物は、任意の数および順序で組み合わせることができる以下のステートメントのうちの1つ以上に関連して定義することができる。
【0009】
第1の結合剤材料および第2の結合剤材料は、アルミナ含有材料、シリカ含有材料、ジルコニア含有材料、セリア含有材料、ランタナ含有材料、イットリア含有材料、およびそれらの組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0010】
第1の結合剤材料は、アルミナ含有材料であり、第2の結合剤材料は、ジルコニア含有材料である。
【0011】
結合剤組成物は、第3の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第3の結合剤材料をさらに含み、第3の平均粒径と第1の平均粒径との比率は、約2以上であり、第2の平均粒径と第3の平均粒径との比率は、約2以上である。
【0012】
結合剤組成物は、第3の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第3の結合剤材料をさらに含み、第1の平均粒径と第3の平均粒径との比率は、約2以上である。
【0013】
第1の平均粒径は、約50nm~約1000nmである。
【0014】
第2の平均粒径は、約10nm~約500nmである。
【0015】
第1の結合剤材料および第2の結合剤材料は、約0.01~約0.5の濃度比で存在する。
【0016】
第1の結合剤材料および第2の結合剤材料の一方または両方は、触媒作用を有する。
【0017】
1つ以上の実施形態では、本開示は、ウォッシュコートスラリーに関することができる。例えば、そのようなウォッシュコートスラリーは、本明細書に別段の記載があるように、液体媒体と、結合剤組成物と、を含むことができる。さらなる実施形態では、ウォッシュコートスラリーは、任意の数および順序で組み合わせることができる以下のステートメントのうちの1つ以上に関連して定義することができる。
【0018】
結合剤組成物は、約0.01~約1.0g/inの量で存在し、ウォッシュコートスラリーは、約300s-1で約100cP以下の粘度を有する。
【0019】
ウォッシュコートスラリーは、約300s-1で約50cP以下の粘度を有する。
【0020】
ウォッシュコートスラリーは、触媒材料をさらに含む。
【0021】
1つ以上の実施形態では、本開示は、触媒物品に関することができる。例えば、触媒物品は、ガス流に適合された複数のチャネルを有する触媒基材を備えることができ、各チャネルは、本明細書に別段の記載があるように、結合剤組成物を含む触媒コーティングに接着した壁面を有する。さらなる実施形態では、触媒物品は、任意の数および順序で組み合わせることができる以下のステートメントのうちの1つ以上に関連して定義することができる。
【0022】
触媒コーティングは、結合剤組成物と組み合わせた触媒材料を含む。
【0023】
触媒基材は、壁流フィルタ基材またはフロースルー基材を備えるハニカムである。
【0024】
触媒コーティングは、少なくとも約1.0g/inの充填量で基材上に存在する。
【0025】
触媒基材は、触媒コーティングの第1のコーティング層を含み、触媒コーティングの第1のコーティング層の少なくとも一部を覆う全体的に異なる組成の第2のコーティング層を含む。
【0026】
以下の条件の一方または両方を満たすことができる:第1の結合剤材料は、触媒コーティングの第1のコーティング層の総乾燥利得の約0.1重量%~約5重量%の量で存在し、第2の結合剤材料は、触媒コーティングの第1のコーティング層の総乾燥利得の約7重量%~約20重量%の量で存在する。
【0027】
1つ以上の実施形態では、本開示は、排気ガス流を処理するための排出物処理システムに関することができる。例えば、排出物処理システムは、排気ガス流を生成するエンジンと、本明細書に別段の記載があるように、エンジンの下流に位置決めされ、排気流と流体連絡している、触媒物品と、を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、これらは、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の成分を指す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0029】
図1】本発明に従ってウォッシュコート組成物を含み得るハニカム型基材担体の斜視図である。
図2図1に対して拡大され、かつモノリシックフロースルー基材を表す図1の基材担体の端面に平行な平面に沿って切り取られた部分断面図であり、図1に示される複数のガス流路の拡大図である。
図3図1のハニカム型基材担体が、壁流フィルタ基材モノリスを表す、図1に対して拡大された断面の破断図である。
図4】本発明のウォッシュコート組成物を利用した排出物処理システムの概略図である。
図5】本発明のウォッシュコート組成物を利用してサイドバイサイドコーティングを形成する排出物処理システムの概略図である。
図6】本発明のウォッシュコート組成物を利用した排出物処理システムの概略図である。
図7】本発明のウォッシュコート組成物を利用し、かつ任意選択の粒子フィルタを含む排出物処理システムの概略図である。
図8】第2の結合剤(y軸)および第1の結合剤(x軸)が、ベースラインに対して正規化された充填量である、第1の結合剤の粒子および第2の結合剤の粒子の相対充填量に基づく本開示の実施形態による例示的なウォッシュコート組成物の粘度(cP)を示す等高線図である。
図9】第2の結合剤(y軸)および第1の結合剤(x軸)が、ベースラインに対して正規化された充填量である、ウォッシュコートを形成するために使用される組成物を作製する際に使用される第1の結合剤の粒子および第2の結合剤の粒子の相対充填量に基づく本開示の実施形態による例示的なウォッシュコートの損失百分率を示す等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
これより、以下で本開示をより十分に説明する。しかしながら、この開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0031】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示物を含む。
【0032】
本明細書全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を説明し、釈明するために使用される。例えば、「約」という用語は、例えば、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下などの、±5%以下を指し得る。全ての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾される。もちろん、「約」という用語によって修飾される値には、特定の値が含まれる。
【0033】
本開示は、一般に、複数の結合剤を含むことができる組成物を提供する。組成物は、1つ以上の触媒を含み得、1つ以上の触媒は、複数の結合剤のうちの1つ以上を含み得るか、または結合剤に加えて存在し得る。本開示は、ウォッシュコート組成物、触媒物品、およびそのような触媒物品を備える触媒システムをさらに提供する。1つ以上の実施形態では、そのような物品およびシステムは、三元変換(TWC)触媒組成物、ディーゼル酸化触媒(DOC)、SCR、ならびに/またはアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むことができる。したがって、特定の実施形態では、本組成物は、本明細書に別段の記載があるように、フロースルー基材上の1つのコーティングまたは複数のコーティングとして提供することができる。さらなる実施形態では、本組成物は、本明細書に別段の記載があるように、壁流基材上の1つのコーティングまたは複数のコーティングとして提供することができる。
【0034】
以下の用語は、本出願の目的のために、以下に記載されるそれぞれの意味を有するものとする。
【0035】
本明細書で使用される場合、「触媒」または「触媒組成物」という用語は、反応を促進する材料を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプならびにフィルタおよび触媒などの任意の汚染物軽減物品は、エンジンの下流にある。
【0037】
本明細書で使用される場合、「流」という用語は、広義的には、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを指す。「ガス流」または「排気ガス流」という用語は、リーンバーンエンジンの排気などのガス状成分の流れを意味し、これは、液滴、固体微粒子などの同伴非ガス状構成要素を含有し得る。リーンバーンエンジンの排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物、不完全燃焼生成物、窒素酸化物、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、典型的には、触媒組成物を含有する複数の粒子を含有するウォッシュコートの形態のモノリシック材料を指し、モノリシック材料上に触媒材料が置かれている。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の特定の固形分(例えば10%~80重量%)の粒子を含有するスラリーを調製し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に細孔性である、ハニカム型担体部材などの基材材料に適用される触媒または他の材料の薄い接着性のコーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、基材上に触媒組成物を含有するウォッシュコートを含み得る。
【0041】
「軽減する」という用語は量の減少を意味し、「軽減」という用語は、何らかの手段により引き起こされる量の減少を意味する。
【0042】
1つ以上の実施形態では、本開示は、結合剤組成物を提供する。結合剤組成物は、複数の異なる結合剤材料から形成される。したがって、結合剤組成物は、少なくとも第1の結合剤材料と、第2の結合剤材料と、を含むことができる。さらなる実施形態では、さらなる結合剤材料が使用され得、そのような結合剤材料は、例えば、第3の結合剤材料、第4の結合剤材料と呼ばれ得、以下同様である。結合剤材料は、1つ以上の態様で異なり得る。例えば、結合剤材料は、材料の化学的性質に関連して異なり得る。他の例では、結合剤材料は、結合剤材料が形成される粒子の平均サイズなどの1つ以上の物理的特性に関連して異なり得る。特定の実施形態では、結合剤材料は、化学構造および1つ以上の物理的特性の両方において異なり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示による結合剤組成物が、第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される結合剤材料と、を少なくとも含む場合、特に望ましい効果を達成することができるということが見出された。第3の結合剤材料、第4の結合剤材料、またはさらに多くの結合剤材料が使用される実施形態では、第3の結合剤材料は、第3の平均粒径を有する複数の粒子から形成することができ、第4の結合剤材料は、第4の平均粒径を有する複数の粒子から形成することができ、以下同様である。
【0044】
本明細書で使用される場合、結合剤粒径は、D50粒径であり得るか、または結合剤粒径は、平均粒径であり得る。「平均粒径」という用語は、測定された全ての粒子の粒径の合計を粒子の総数で割ったものとして定義される。粒径は、当技術分野における任意の好適な手段を使用して計算することができる。例えば、粒径は、レーザー回折、動的光散乱(もしくは光子相関分光法)、沈降、画像分析、音響分光法を使用して測定することができ、または他の任意の当技術分野で認められた方法が使用され得る。結合剤成分の粒径は、CILAS 1064レーザー粒径アナライザーを使用して、0.04~500ミクロンの測定範囲でメーカーが推奨する液体モード法に従って測定することができる。<40nmの粒子の場合、粒径は、Malvern Zetasizer Proを使用して測定することができ、これは、「NIBS」光学系による動的光散乱を使用した、凝集体の検出ならびに小サンプルまたは希薄サンプル、および非常に低濃度または高濃度のサンプルの測定を強化するための高性能2角度粒子および分子サイズアナライザーである。
【0045】
結合剤粒子が形成される材料は、その特に所望の用途に応じて変動し得る。例えば、触媒物品の調製のために、触媒活性も示す結合剤材料を利用することが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、結合剤組成物に使用される1つ以上の結合剤材料は、触媒材料であり得るか、そうでなければ機能的役割を提供することができる。同様に、使用される結合剤材料は、基材への特定の触媒材料の結合を改善するのに特に好適であり得る。いくつかの実施形態では、希土類金属酸化物を結合剤材料として利用することができる。例示的な実施形態では、第1の結合剤材料および第2の結合剤材料(ならびに任意選択で、第3の結合剤材料またはさらにさらなる結合剤材料)は、アルミナ含有材料、シリカ含有材料、ジルコニア含有材料、セリア含有材料、ランタナ含有材料、イットリア含有材料、およびそれらの組み合わせからなる群から独立して選択することができる。さらなる例示的な実施形態では、本開示の組成物で使用される結合剤材料は、セリア、ジルコニア、イットリア、ランタナ、およびそれらの組み合わせから形成される結合剤を含むことができる。
【0046】
一実施形態では、第1の結合剤材料は、アルミナ含有材料であり、第2の結合剤材料は、ジルコニア含有材料である。一実施形態では、結合剤組成物は、第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含み、第1の平均粒径と第2の平均粒径との比率は、約2以上であり、第1の結合剤材料は、アルミナ含有材料であり、第2の結合剤材料は、ジルコニア含有材料である。別の実施形態では、結合剤組成物は、第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含み、第1の平均粒径と第2の平均粒径との比率は、約2以上であり、第1の結合剤材料は、アルミナ含有材料であり、第2の結合剤材料は、ジルコニア含有材料であり、第1の平均粒子はサイズは、約50nm~約1000nmであり、第2の平均粒径は、約10nm~約500nmである。さらに別の実施形態では、結合剤組成物は、第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含み、第1の平均粒径と第2の平均粒径との比率は、約2以上であり、第1の結合剤材料は、アルミナ含有材料であり、第2の結合剤材料は、ジルコニア含有材料であり、第1の平均粒子はサイズは、約50nm~約1000nmであり、第2の平均粒径は、約10nm~約500nmであり、第1の結合剤材料および第2の結合剤材料は、約0.01~約0.5の濃度比で存在する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される結合剤材料は、個々の結合剤材料の平均粒径に基づいて特定の比率で組み合わされる。本明細書で特に明記しない限り、個々の結合剤材料に関連する「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、明確にするためにのみ使用され、「第1の結合剤材料」および「第2の結合剤材料」またはさらなる個々の結合剤材料についてなされた記述は、交換可能であることが理解される。
【0048】
非限定的な例として、第1の結合剤材料についての平均粒径と第2の結合剤材料についての平均粒径との比率は、約2以上であり得る。言い換えれば、第1の結合剤材料の平均粒径は、第2の結合剤材料の平均粒径よりも少なくとも2倍(またはそれ以上)大きくなり得る。さらなる実施形態では、第1の結合剤材料の第1の平均粒径と第2の結合剤材料の第2の平均粒径との比率は、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約5以上、または約6以上であり得る。さらなる例示的な実施形態では、第1の結合剤材料の第1の平均粒径と第2の結合剤材料の第2の平均粒径との比率は、約1~約7、約1~約5、約1.5~約4、または約2~約3であり得る。
【0049】
第3の結合剤材料が結合剤組成物に含まれる実施形態では、第3の結合剤材料の平均粒径は、第1の結合剤材料の平均粒径よりも小さくてもよく、または第3の結合剤材料の平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、第3の結合剤材料の第3の平均粒径と第1の結合剤材料の第1の平均粒径との比率は、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約4以上、または約5以上、例えば、約1~約7、約1.5~約6、または約2~約5であり得る。さらに、第2の結合剤材料の第2の平均粒径と第3の結合剤材料の第3の平均粒径との比率は、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約4以上、または約5以上、例えば、約1~約5、約1~約5、約1.5~約4、または約2~約3であり得る。
【0050】
第3の結合剤材料が結合剤組成物に含まれる実施形態では、第3の結合剤材料の平均粒径は、第1の結合剤材料の平均粒径よりも小さくてもよく、または第3の結合剤材料の平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、第1の結合剤材料の第1の平均粒径と第3の結合剤材料の第3の平均粒径との比率は、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約4以上、または約5以上、例えば、約1~約7、約1.5~約6、または約2~約5であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2の結合剤材料は、2つ以上の異なる結合剤材料の組み合わせであり、それぞれが平均粒径を有する。そのような実施形態では、第2の結合剤材料は、平均粒径を有するであろう。
【0052】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの結合剤材料は、約50nm~約1000nm、約50nm~約750nm、約50nm~約500nm、約50nm~約400nm、約50nm~約300nm、または約50nm~約250nmの平均粒径を有することができる。そのような範囲の粒子を有する結合剤材料は、いくつかの実施形態では、比較的大きい平均粒径を有する粒子と呼ばれ得る。
【0053】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの結合剤材料は、10nm~約750nm、約10nm~約500nm、約10nm~約250nm、約10nm~約150nm、約15nm~約150nm、または約20nm~約120nmの平均粒径を有することができる。そのような範囲の粒子を有する結合剤材料は、いくつかの実施形態では、比較的小さい平均粒径を有する粒子と呼ばれ得る。
【0054】
例示的な実施形態では、第1の結合剤材料は、第1の平均サイズを有する複数の粒子から形成することができ、第2の結合剤材料は、第2の平均サイズを有する複数の粒子から形成することができる。第1の平均サイズは、第2の平均サイズよりも比較的大きくすることができ、第2の平均サイズは、次に、第1の平均サイズよりも比較的小さくすることができる。好ましくは、第1の結合剤粒子の絶対平均サイズおよび第2の結合剤粒子の絶対平均サイズと無関係に、第1の結合剤材料の粒子および第2の結合剤材料の粒子の相対サイズは、本明細書に別段の記載があるような比率を示す。
【0055】
第3の結合剤材料は、存在する場合、上記の比率による第1の結合剤材料粒子よりもサイズが大きい複数の粒子であり得るか、または上記の比率による第2の結合剤材料粒子よりもサイズが小さい複数の粒子であり得る。あるいは、第3の結合剤材料は、存在する場合、全体のサイズ比が上記の比率に従っている限り、第1の結合剤材料粒子よりもサイズが小さく、かつ第2の結合剤材料粒子よりもサイズが大きくなるようなサイズの複数の粒子であり得る。より詳細には、結合剤材料粒子の相対平均サイズは、B1が第1の結合剤材料の平均粒径であり、B2が第2の結合剤材料の平均粒径であり、B3が第3の結合剤材料の平均粒径である以下のいずれかに従い得、相対平均サイズは、上記に別段の記載があるような比率内にある:B1>B2、またはB2>B1、またはB1>B2>B3、またはB2>B1>B3、またはB2>B3>B1、またはB3>B2>B1、またはB3>B2>B1、またはB1>B3>B2。1つの特定の実施形態では、B1>B2、またはB1>B2>B3、またはB1>B3>B2である。
【0056】
サイズ比に加えて、いくつかの実施形態では、結合剤組成物は、存在する個々の結合剤材料の濃度の比率に関連して定義することができる。特定の実施形態では、比較的小さい平均粒径を有する結合剤材料が、比較的大きい平均粒径を有する結合剤材料よりも高い濃度で存在することが望ましい場合がある。例えば、比較的大きい平均粒径を有する結合剤材料および比較的小さい平均粒径を有する結合剤材料は、約0.01~約0.95、約0.01~約0.9、約0.01~約0.8、約0.02~約0.6、約0.02~約0.5、または約0.3~約0.5の濃度比で存在することができる。そのような濃度比は、連続的に比較的大きいまたは連続的に比較的小さい平均粒径を有する使用される各追加の結合剤材料に適用することができる。
【0057】
比較的小さい平均粒径を有するより高い濃度の結合剤材料を提供することは、種々の理由で有利であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、比較的小さい平均粒径を有するより高い濃度の結合剤粒子を有することは、使用することができる結合剤材料の総量を増加させるために有利であり得る。結合剤材料の総量が多いほど、触媒ウォッシュコートと触媒基材との間の増加した結合強度を提供することができる。同様に、比較的小さい平均粒径を有するより高い濃度の結合剤粒子を有することは、触媒ウォッシュコートを触媒基材に適用するのに使用されるウォッシュコートスラリーの粘度を維持またはさらに低下させるのに有利であり得る。これは、基材の長さに沿ったウォッシュコートの均一性を改善し、したがって、基材上の望ましくない厚さの触媒コーティングの領域および/または基材上の望ましくない厚さの触媒コーティングの領域を有することを回避するのに有利であり得る。したがって、本開示の結合剤組成物の使用法は、結合剤ウォッシュコートの粘度を同時に維持またはさらに低下させると同時に、結合剤量の増加を可能にすることができる。これは、操作ウィンドウを拡大して、基材への触媒の接着を強化するのに有益であり得る。
【0058】
さらなる実施形態では、本開示は、本明細書に別段の記載があるように、液体媒体および結合剤組成物から形成されるウォッシュコートスラリーを提供することができる。ウォッシュコートスラリーで使用される液体媒体は、特に水性媒体であり得、具体的には水であり得る。結合剤組成物に使用される2つ以上の結合剤材料を形成する結合剤材料粒子は、ウォッシュコートスラリー中に単独で、または専用の触媒材料と組み合わせて存在することができる。「専用触媒材料」という句は、触媒物品を形成する際の触媒として使用するために特に存在し、かつ触媒材料としても機能する結合剤組成物に使用される任意の結合剤材料とは別の触媒材料を示すことができる。
【0059】
ウォッシュコートスラリーで使用される結合剤組成物は、望ましい低粘度を維持しながら、定義された量で存在することができる。好ましくは、結合剤組成物は、基材上に特定の結合剤充填量を提供するのに十分な濃度でウォッシュコートスラリー中に存在する。ウォッシュコートスラリー中に存在する材料(例えば、結合剤材料および/または触媒材料)の量を説明する際に、ウォッシュコートでコーティングされた基材の単位体積あたりの成分の重量の単位を使用することが便利である。したがって、単位、立方インチあたりのグラム(「g/in」)、および立方フィートあたりのグラム(「g/ft」)は、本明細書において、基材部材の空隙の体積を含む基材部材の体積あたりの成分重量を意味すべく使用される。1つ以上の実施形態では、結合剤組成物は、約0.01g/in~約1.0g/in、約0.05g/in~約0.95g/in、約0.1g/in~約0.9g/in、約0.15g/in~約0.8g/in、または約0.2g/in~約0.5g/inの充填量でウォッシュコートスラリー中に存在することができる。いくつかの実施形態では、結合剤含有量は、スラリー全体の固形分に基づく濃度として定義することができる。例えば、結合剤組成物を含むウォッシュコート組成物は、ウォッシュコートスラリーの合計重量に基づいて、約10重量%~約60重量%、約15重量%~約50重量%、または約20重量%~約40重量%の個体を含むことが望ましい場合がある。好ましくは、結合剤組成物は、ウォッシュコートスラリーの総固形分の約1重量%~約50重量%、約1.5重量%~約35重量%、または約2重量%~約20重量%を構成する。したがって、いくつかの実施形態では、結合剤組成物は、ウォッシュコートスラリーの総重量に基づいて、約0.1重量%~約12重量%、約0.2重量%~約10重量%、または約0.4重量%~約8重量%のウォッシュコートスラリーを構成することができる。一実施形態では、ウォッシュコートスラリーは、本明細書に別段の記載があるように、液体媒体と、結合剤組成物と、を含み、結合剤組成物は、約0.01~約1.0g/inの量で存在し、ウォッシュコートスラリーは、約300s-1で約100cP以下の粘度を有する。
【0060】
本組成物は、ウォッシュコートスラリーの粘度を望ましくないほど増加させることなく、結合剤充填量の増加を達成することができるという点で特に有益である。例えば、粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用して、室温、約300s-1の剪断速度でセンチポアズ(cP)の単位で測定することができる。いくつかの実施形態では、上記の充填量で本明細書に記載されるような結合剤組成物を含むウォッシュコートスラリーは、約120cP以下、約100cP以下、約80cP以下、約60cP以下、または約50cP以下を有することができる(例えば、下限が1を超える場合)。より詳細には、上記のウォッシュコートスラリーの粘度は、約5cP~約120cP、約5cP~約100cP、約10cP~約80、または約15cP~約60cPであり得る。
【0061】
上記のように、本明細書に記載されるようなウォッシュコートスラリーは、結合剤材料に加えて、1つ以上の触媒材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、結合剤組成物は、例えば、TWC触媒および/または4方向変換(FWC(商標))触媒組成物での使用に好適な1つ以上の触媒組成物と共に使用することができる。TWC機能性を有する触媒組成物は、規制当局および/または自動車製造業者の要件に従って、炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)の酸化ならびにNOx還元に有効な触媒組成物を含むことができる。このようにして、白金、パラジウム、およびロジウムなどの白金族金属成分が提供され、HC、CO、およびNOx変換が達成され、十分な酸素貯蔵成分(OSC)の達成が提供されて、様々なA/F(空気対燃料)比の環境での適切なHC、NOx、およびCO変換を確保する。十分な酸素貯蔵容量は、一般に、自動車メーカーによって定義された完全な耐用年数の経過後、触媒が最小量の酸素を貯蔵および放出できることを意味する。例えば、有用な酸素貯蔵容量は、酸素1リットルあたり少なくとも100mg(1050℃で80時間の発熱エージング後の酸素1リットルあたり約200mgなど)であり得る。好適な酸素貯蔵成分の例には、セリアおよびプラセオジムが含まれ、そのような材料は、混合酸化物として提供される。例えば、セリアは、セリウムとジルコニウムとの混合酸化物、および/またはセリウムと、ジルコニウムと、ネオジムとの混合酸化物によって送達することができる。例えば、プラセオジミアは、プラセオジミウムとジルコニウムとの混合酸化物、および/またはプラセオジムと、セリウムと、ランタンと、イットリウムと、ジルコニウムと、ネオジムとの混合酸化物によって送達することができる。好適なTWC触媒組成物は、例えば、米国特許第8,815,189号、同第9,266,092号、および同第9,981,258号に記載されているものを含むことができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
結合剤組成物は、単独で(結合剤材料のうちの1つ以上が触媒材料としても機能する場合など)または1つ以上の専用触媒材料と組み合わせて、結合剤組成物(単独でもしくは触媒材料と組み合わせて)を触媒基材上に提供することができる触媒物品に利用することができる。1つ以上の実施形態によれば、基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料で構成されてもよく、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を備える。基材は、典型的には、少なくとも結合剤組成物を含むウォッシュコートが適用および接着される複数の壁面を提供し、それによって適用された組成物の担体として作用する。
【0063】
例示的な金属基材は、チタンおよびステンレス鋼ならびに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金などの耐熱性金属および金属合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの1つ以上を含有してもよく、これらの金属の総量は、少なくとも15重量%の合金、例えば、10~25重量%のクロム、3~8重量%のアルミニウム、および20重量%までのニッケルを有利に含んでもよい。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、およびチタンなどの、少量または痕跡量の1つ以上の他の金属を含有してもよい。表面または金属担体は、高温、例えば、1000℃以上で酸化されて、基材の表面上に酸化物層を形成し、合金の耐食性を改善し、金属表面へのウォッシュコート層の接着を容易にし得る。
【0064】
基材の構築に使用されるセラミック材料には、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、ムライト、コージライト-αアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミニウムチタネート、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、およびアルミノシリケートなどが含まれ得る。
【0065】
通路が流体流に開放されるように、基材の入口から出口面まで延在する複数の微細で平行なガス流路を有するモノリシックフロースルー基材などの、任意の好適な基材を用いることができる。入口から出口までの本質的に直線の経路である通路は、通路を通り流れるガスが触媒材料に接触するように、触媒材料がウォッシュコート(例えば、結合剤組成物を含む)としてコーティングされる壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波形状、六角形、楕円形、および円形などの任意の好適な断面形状のものであり得る薄壁チャネルである。そのような構造は、約60~約1200以上の断面1平方インチ(cpsi)あたりのガス入口開口部(すなわち、「セル」)、より一般的には、約300~600cpsiを含有し得る。フロースルー基材の壁の厚さは、様々であり得、典型的な範囲は、0.002~0.1インチである。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsiで6ミルの壁厚、または600cpsiで4ミルの壁厚を有するコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0066】
代替的な実施形態では、基材は、各通路が、基材本体の一端で非多孔性プラグによって閉塞され、交互の通路が反対側の端面で閉塞されている、壁流基材であってもよい。これは、出口に到達するために、ガス流が壁流基材の多孔質壁を通ることを必要とする。そのようなモノリシック基材は、約100~400cpsi、より典型的には、約200~約300cpsiなどの、最大約700またはそれよりも多いcpsiを含有し得る。セルの断面形状は、上記に説明されているように、変動する可能性がある。壁流基材は、典型的には、0.002~0.1インチの壁厚を有する。代表的な市販の壁流基材は、多孔性コーディエライトから構築され、その例は、200cpsiおよび10ミルの壁厚、または300cpsiおよび8ミルの壁厚、ならびに45~65%の壁の多孔度を有する。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素などの他のセラミック材料もまた、壁流フィルタ基材として使用される。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料、または幾何学的形状には限定されないことが理解されるであろう。基材が壁流基材である場合、触媒組成物(例えば、TWC触媒および/またはFWC(商標)触媒)は、壁の表面に配設されることに加えて、多孔性壁の細孔構造に浸透し得る(すなわち、細孔開口部を部分的または完全に塞ぐ)ことに留意されたい。図1および2は、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされているフロースルー基材の形態の例示的な基材2を示している。図1を参照すると、例示的な基材2は、円筒形状を有し、円筒外面4、上流端面6、および端面6と同一の対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図2に見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで担持体2を通して延在し、担持体2を通した、そのガス流路10を介した長手方向の流体、例えば、ガス流の流動を許容するように、流路10は、閉塞されていない。図2でより容易に見られるように、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように、壁12は寸法決めおよび構成されている。示されるように、ウォッシュコート組成物は、必要に応じて、複数の別個の層内で適用され得る。例示される実施形態では、ウォッシュコートは、担持体部材の壁12に接着された別個の底部ウォッシュコート層14および底部ウォッシュコート層14の上にコーティングされた第2の別個の最上部ウォッシュコート層16との両方から構成される。本発明は、1つ以上(例えば、2、3、または4)のウォッシュコート層を用いて実施され得、例示された2層の実施形態に限定されない。
【0067】
図3は、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされている壁流フィルタ基材の形態の例示的な基材2を示している。図3に見られるように、例示的な基材2は、複数の通路52を有する。通路は、フィルタ基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端部54および出口端部56を有する。通路は、入口端部で入口栓58によって、出口端部で出口栓60によって交互に塞がれて、入口54および出口56で対照の市松模様を形成する。ガス流62は、塞がされていないチャネル入口64を通って入り、出口栓60によって止められ、(多孔質である)チャネル壁53を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口栓58を理由に、壁の入口側に戻って通ることができない。本発明で使用される多孔質壁流フィルタは、要素の壁がその上に、またはその中に1つ以上の触媒物質を有するという点で触媒作用を受ける。触媒材料は、要素壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在してもよく、または壁自体が、触媒材料の全てまたは一部で満たされていてもよい。本発明は、壁内または要素の入口壁および/もしくは出口壁上にある触媒材料の1つ以上の層の使用を含む。
【0068】
例えば、一実施形態では、触媒物品は、各層が異なる触媒組成を有する多層の触媒材料を含む。底部層(例えば、図2の層14)は、第1の触媒組成物を含み得、最上部層(例えば、図2の層16)は、第2の触媒組成物を含み得る。第1の触媒組成物および第2の触媒組成物の一方または両方は、本明細書に記載されるような結合剤組成物を含むことができる。図2では、底部層14および最上部層16はそれぞれ、基材の前端または入口端から基材の後端または出口端まで完全に延在することができることが理解される。
【0069】
非限定的な例として、触媒物品を形成する際に本明細書で使用される触媒材料または触媒組成物は、例えば、自動車用触媒で一般的に使用される任意の触媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示による触媒物品は、本明細書に記載されるような結合剤組成物、ならびにTWC触媒、FWC(商標)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、統合LNT-TWC、および/またはアンモニア酸化(AMOx)触媒として触媒物品の利用に好適な1つ以上の触媒組成物を含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、白金族金属(PGM)が使用され得る。特に、パラジウムおよび/またはロジウムが使用され得るが、他のPGMも(または代わりに)使用され得る。さらに、必要に応じて、特定のPGMは、本開示から明示的に除外され得る。存在する場合、PGMは、少なくとも約0.5g/ftまたは少なくとも約1.0g/ftの充填量で、例えば、約20g/ftの最大充填量で存在し得る。したがって、存在する場合、PGMは、最大約20g/ftの量で存在し得る。特定の実施形態では、総PGM充填量は、約0.5g/ft~約20g/ft、約1g/ft~約10g/ft、または約2g/ft~約10g/ftであり得る。特定の実施形態では、本開示の触媒組成物および/または触媒物品は、実質的にPGMを含まないことが望ましい場合がある。この目的のために、触媒組成物は、それが0.1重量%未満のPGMまたは0.01重量%未満のPGMを含む場合、PGMを「実質的に含まなく」てもよい。それは、0.1g/ft未満または0.01g/ft未満のPGM充填量を有していれば同様に、触媒物品は、PGMを「実質的に含まなく」てもよい。好ましくは、「実質的に含まない」は、微量のみが存在することを意味し得る。いくつかの実施形態では、触媒組成物または触媒物品は、必要に応じて、PGMを完全に含まなくてもよい。
【0071】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒(AMOx)が使用され得る。AMOx触媒は、例えば、米国特許公開第2011/0271664号で教示されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。アンモニア酸化(AMOx)触媒は、排気ガス流からアンモニアを除去するのに効果的な、担持された貴金属成分であり得る。貴金属には、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、または金が含まれ得る。例えば、貴金属成分は、貴金属の物理的混合物または化学的もしくは原子的にドープされた組み合わせを含む。例えば、貴金属成分には、白金が含まれる。白金は、AMOx触媒に基づいて、約0.008%~約2重量%の量で存在し得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、基材は、軸方向にゾーン化された構成の別個のウォッシュコートスラリー中に含有される少なくとも2つの層でコーティングされ得る。例えば、同じ基材が、1つの層のウォッシュコートスラリーおよび別の層のウォッシュコートスラリーでコーティングされ得、全体的に異なる組成を有するなど、各層は、異なる。2つの別個のウォッシュコート組成物は、別個の触媒組成物を含み得、実質的に重複しない場合がある。例えば、図4を参照すると、第1の触媒組成物のウォッシュコートを含む第1のウォッシュコートゾーン102および第2の異なる触媒組成物のウォッシュコートを含む第2のウォッシュコートゾーン103は、基材100の長さに沿って並べて配置することができる。特定の実施形態の第1のウォッシュコートゾーン102は、基材100の前端または入口端100aから、基材100の長さの約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%の範囲を通って延在する。第2のウォッシュコートゾーン103は、基材100の後端または出口端100bから、基材100の総軸長の約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。本発明に説明されているように、処理システム内の少なくとも2つの成分の触媒組成物は、同じ基材上にゾーン化され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、図5に見られるように、基材100は、基材100の前端または入口端100aから基材100の後端または出口端100bまで延在する第1のコーティング層106と、基材100の前端または入口端100aに近接して第1のコーティング層106上にコーティングされ、基材100の部分的な長さのみにわたって延在している(すなわち、基材100の後端または出口端100bに到達する前に終結する)第2のコーティング層107とでコーティングされ得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、図6に見られるように、基材100は、基材100の後端または出口端100bに近接し、基材100の長さに沿って部分的にのみ延在する(すなわち、基材100の前端または入口端100aに到達する前に終結する)第1のコーティング層115でコーティングされ得る。基材100は、第2のコーティング層114でコーティングされ得る。図6に見られるように、第2のコーティング層114は、基材100の前端または入口端100aから基材100の後端または出口端100bまで延在する(したがって、第1のコーティング層115の上に完全にコーティングされる)。例として提供された上記の実施形態、および触媒コーティングのさらなる組み合わせが包含されることが理解される。
【0075】
1つ以上の実施形態では、本開示による触媒物品は、具体的には、第1のコーティング層を底部層として、および第2のコーティング層を最上部層としてコーティングされた基材を備え得、第1のコーティング層および第2のコーティング層の一方または両方は、本明細書に記載されるような結合剤組成物を含む。例えば、第1のコーティング層または底部コーティング層は、上記のように、少なくとも第1の結合剤および第2の結合剤(ならびに任意選択で、第3の結合剤)を含み得る。第2のコーティング層または最上部層は、本明細書に記載されるような結合剤組成物を含み得るが、いくつかの実施形態では、第1のコーティング層中に存在するよりも少ない結合剤を含み得る。
【0076】
この組成物のウォッシュコートまたは触媒金属構成要素または他の構成要素の量を説明する際に、触媒基材の単位体積あたりの構成要素重量の単位を使用することが好都合である。したがって、単位、立方インチあたりのグラム(「g/in」)、および立方フィートあたりのグラム(「g/ft」)は、本明細書において、基材の空隙の体積を含む基材の体積あたりの構成要素重量を意味すべく使用される。g/Lなどの体積あたりの重量の他の単位もまた、使用されることがある。モノリシックフロースルー基材などの触媒基材上の触媒組成物の総充填量は、典型的には、約0.1~約6g/in、およびより典型的には約1~約5g/inである。単位体積あたりのこれらの重量は、典型的には、触媒ウォッシュコート組成物での処理の前後に触媒基材を秤量することによって計算され、処理プロセスは、高温での触媒基材の乾燥および焼成を伴うため、これらの重量は、ウォッシュコートスラリーの水の本質的に全てが除去されていることから、本質的に溶媒を含まない触媒コーティングを表すことが留意される。したがって、前述の値は、固体を基材に適用するために使用された元のウォッシュコートスラリー中に存在するあらゆる溶媒または他の液体材料を除去した後の、基材上に存在する固体の乾燥利得または量を表し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、濃度および比率で本明細書に記載されるような第1の結合剤および第2の結合剤(ならびに任意選択で、さらなる結合剤)を利用して、1つ以上のコーティング層で乾燥利得を達成することが有益であり得、第1の結合剤および第2の結合剤(ならびに任意選択の任意のさらなる結合剤)は、総乾燥利得の望ましい重量比を構成する。例えば、特定の実施形態では、比較的大きな平均粒径を有する第1の結合剤は、所与のコーティング層における乾燥利得のより少ない重量百分率(例えば、0重量%~約5重量%、0重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.2重量%~約4重量%、または約0.25重量%~約3重量%)を形成することができ、比較的小さい平均粒径を有する第2の結合剤は、同じ所与のコーティング層における乾燥利得のより大きい重量百分率(例えば、約7重量%~約20重量%、約10重量%~約15重量%)を形成することができる(前述の重量百分率は全て、所与のコーティング層の乾燥利得の総重量に基づく)。さらなる例では、コーティング層の乾燥利得の総重量に基づいてコーティング層中に存在する比較的大きい平均粒径を有する第1の結合剤の重量パーセントは、5重量%未満、3重量%未満、または2.5重量%未満であり得、これは、ゼロを含み得、または少なくとも0.01重量%の最小値で定義することもできる。追加的または代替的に、コーティング層の乾燥利得の総重量に基づいてコーティング層中に存在する比較的小さい平均粒径を有する第2の結合剤の重量パーセントは、7重量%を超え、8重量%を超え、9重量%を超え、または10重量%を超え得る(例えば、最大で約25重量%または約20重量%の最大値)。
【0078】
触媒材料を粉砕して、触媒粒子の混合および均質な材料の形成を強化することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の装置で成し遂げることができる。一実施形態では、粉砕後の触媒材料は、約5~約40ミクロン、好ましくは5~約30ミクロン、より好ましくは約5~約10ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。D90は、粒子の90%がより小さい粒径を有する粒径として定義される。
【0079】
結合剤材料を単独で、または1つ以上の専用の触媒材料と組み合わせて含むウォッシュコートスラリーは、当技術分野で知られているウォッシュコート技術を使用して触媒基材上にコーティングすることができる。一実施形態では、触媒基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、または別様にスラリーでコーティングされる。その後、コーティングされた基材を高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、約10分~3時間)乾燥し、次いで、例えば、700℃未満で典型的には約10分~約8時間加熱することによって焼成する。
【0080】
コーティングされた触媒基材の焼成中の温度は、約700℃未満である。いくつかの実施形態では、焼成温度は、一定期間、約300℃~約700℃、約300℃~約500℃、約350℃~約500℃、約400℃~約500℃、または約450℃~約500℃の範囲である。いくつかの実施形態では、焼成温度は、約700℃、約600℃、約500℃、約450℃、約400℃、または約350℃未満であり、下限は300℃である。いくつかの実施形態では、焼成のための期間は、約10分~約8時間、約1~約6時間、または3時間~約6時間(すなわち、8時間未満、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間、下限は約10分)の範囲である。
【0081】
乾燥および焼成の後に、最終的なウォッシュコートコーティング層は、本質的に溶媒を含まないと考えることが可能である。焼成の後に、触媒負荷は、基材のコーティングされた重量およびコーティングされていない重量の差を計算することによって決定することができる。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることにより修正することが可能である。加えて、ウォッシュコートを生じるためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填水準または厚さに構築することができ、これは、2つ以上のウォッシュコートが適用され得ることを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、触媒組成物は、単層として、または多層で適用することができる。一実施形態では、本明細書に記載されるような結合剤材料と組み合わされた触媒材料は、単層(例えば、図2の層14のみ)に適用することができる。別の実施形態では、本明細書に記載されるような結合剤材料と組み合わせた触媒材料は、多層(例えば、図2の層14および16)に適用することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、焼成されたコーティング基材は、劣化される。劣化は、様々な条件下で行うことができ、本明細書で使用されているように、「劣化」は、ある範囲の条件(例えば、温度、時間、および雰囲気)を包含すると理解される。例示的なエージングプロトコルは、焼成されたコーティングされた基材を10%蒸気中で約50時間650℃の温度に、10%蒸気中で約5時間750℃の温度に、または10%蒸気中で約16時間800℃の温度に供することを伴う。しかしながら、これらのプロトコルは、限定を意図するものではなく、温度はより低くてもより高くてもよく(例えば、限定されないが、400℃以上、例えば400℃~900℃、600℃~900℃、または650℃~900℃の温度を含む)、時間はより短くてもより長くてもよく(例えば、限定されないが、約1時間~約50時間、または約2時間~約25時間の時間を含む)、雰囲気は(例えば、その中に存在する異なる量の蒸気および/または他の成分を有するように)調整することができる。
【0083】
本開示はまた、本明細書に記載されるような1つ以上の組成物を組み込む排出物処理システムを提供する。本明細書に記載されるような結合剤組成物(単独で、または1つ以上の専用触媒材料と組み合わせて)は、排気ガス排出物、例えばガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するための1つ以上の追加の構成要素を備える統合排出物処理システムで使用することができる。
【0084】
1つの例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム32の概略図を図示する図7に例示される。示されるように、ガス状汚染物質を含有する排気ガス流は、排気管36を介してエンジン34からTWC触媒成分38に運ばれ、次いで、管40中で任意選択でTWCでコーティングもされる粒子フィルタ成分42に運ばれる。TWC触媒成分38および粒子フィルタ成分42の一方または両方は、本明細書に記載されるような結合剤組成物を含むことができる。
【0085】
例示的な実施形態は以下の通りである。
【0086】
1.結合剤組成物であって、
第1の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第1の結合剤材料と、
第2の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第2の結合剤材料と、を含み、
第1の平均粒径と第2の平均粒径との比率が、約2以上である、結合剤組成物。
【0087】
2.第1の結合剤材料および第2の結合剤材料が、アルミナ含有材料、シリカ含有材料、ジルコニア含有材料、セリア含有材料、ランタナ含有材料、イットリア含有材料、およびそれらの組み合わせからなる群から独立して選択される、実施形態1の結合剤組成物。
【0088】
3.第1の結合剤材料が、アルミナ含有材料であり、第2の結合剤材料が、ジルコニア含有材料である、実施形態1~2の結合剤組成物。
【0089】
4.第3の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第3の結合剤材料をさらに含み、第3の平均粒径と第1の平均粒径との比率が、約2以上であり、または第2の平均粒径と第3の平均粒径との比率が、約2以上である、実施形態1~3のいずれかの結合剤組成物。
【0090】
4a.第3の平均粒径を有する複数の粒子から形成される第3の結合剤材料をさらに含み、第1の平均粒径と第3の平均粒径との比率が、約2以上である、実施形態1~4のいずれかの結合剤組成物。
【0091】
5.第1の平均粒径が、約50nm~約1000nmである、実施形態1~4aのいずれかの結合剤組成物。
【0092】
6.第2の平均粒径が、約10nm~約500nmである、実施形態1~5のいずれかの結合剤組成物。
【0093】
7.第1の結合剤材料および第2の結合剤材料が、約0.01~約0.5の濃度比で存在する、実施形態1~6のいずれかの結合剤組成物。
【0094】
8.第1の結合剤材料および第2の結合剤材料の一方または両方が、触媒作用を有する、実施形態1~7のいずれかの結合剤組成物。
【0095】
9.ウォッシュコートスラリーであって、
液体媒体と、
実施形態1~8のいずれか1つによる結合剤組成物と、を含み、ウォッシュコートスラリー。
【0096】
10.結合剤組成物が、約0.01~約1.0g/inの量で存在し、ウォッシュコートスラリーが、約300s-1で約100cP以下の粘度を有する、実施形態9のウォッシュコートスラリー。
【0097】
11.ウォッシュコートスラリーが、約300s-1で約50cP以下の粘度を有する、実施形態9~10のウォッシュコートスラリー。
【0098】
12.触媒材料をさらに含む、実施形態9~11のいずれかのウォッシュコートスラリー。
【0099】
13.ガス流に適合された複数のチャネルを有する触媒基材を備える触媒物品であって、各チャネルが、実施形態1~8のいずれか1つによる結合剤組成物を含む触媒コーティングに接着した壁面を有する、触媒物品。
【0100】
14.触媒コーティングが、結合剤組成物と組み合わせた触媒材料を含む、実施形態13の触媒物品。
【0101】
15.触媒基材が、壁流フィルタ基材またはフロースルー基材を備えるハニカムである、実施形態13~14の触媒物品。
【0102】
16.触媒コーティングが、少なくとも約1.0g/inの充填量で前記基材上に存在する、実施形態13~15のいずれかの触媒物品。
【0103】
17.触媒基材が、触媒コーティングの第1のコーティング層を含み、触媒コーティングの第1のコーティング層の少なくとも一部を覆う全体的に異なる組成の第2のコーティング層を含む、実施形態13~16のいずれかの触媒物品。
【0104】
18.以下の条件の一方または両方が満たされる、実施形態13~17のいずれかの触媒物品:
第1の結合剤材料が、触媒コーティングの第1のコーティング層の総乾燥利得の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、
第2の結合剤材料が、触媒コーティングの第1のコーティング層の総乾燥利得の約7重量%~約20重量%の量で存在する。
【0105】
19.排気ガス流を処理するための排出物処理システムであって、排出物処理システムが、
i.排気ガス流を生成するエンジンと、
ii.エンジンの下流に位置決めされ、かつ排気流と流体連通している実施形態13~18のいずれか1つによる触媒物品と、を備える、排出物処理システム。
【0106】
20.ウォッシュコートの総質量損失が、6%未満である、実施形態13~18のいずれか1つの触媒物品。
【0107】
21.結合剤組成物が、ウォッシュコートの一部である場合、ウォッシュコートの総質量損失が、6%未満である、実施形態1~8のいずれか1つの結合剤組成物。
【0108】
22.スラリーが、基材上にコーティングされる場合、ウォッシュコートの総質量損失が、6%未満である、実施形態9~12のいずれか1つのウォッシュコートスラリー。
【実施例
【0109】
本発明の態様は、以下の実施例によってさらに完全に例示され、これらは、本発明の特定の態様を記載するために例示されるのであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0110】
ウォッシュコート組成物の特性およびウォッシュコート組成物を使用して形成されたコーティングの性能に対する結合剤成分の様々な比率の影響を評価するために試験を実行した。ウォッシュコート組成物は、約78nmの平均粒径を有する複数のアルミナ粒子から形成された第1の結合剤、約28nmの平均粒径を有する複数のセリア/ジルコニア粒子から形成された第2の結合剤、および/または約24nmの平均粒径を有するジルコニア/イットリア粒子を利用して調製した。すなわち、第2の結合剤は、複数のセリア/ジルコニア粒子もしくは複数のジルコニア/イットリア粒子であったか、または第2の結合剤は、複数のセリア/ジルコニア粒子と複数のジルコニア/イットリア粒子との組み合わせであった。結合剤成分の平均粒径は、Malvern Zetasizer Proを使用した動的光散乱によって測定した。
【0111】
試験サンプルごとに、第1のウォッシュコート組成物(底部コートとして使用するため)を、結合剤および触媒から形成された約2.172g/inの総固形分を有するスラリーとして調製した。第1のウォッシュコート組成物は、以下の表に示される固体充填量において、第1の比較的大きい平均粒径を有する粒子および第2の比較的小さい平均粒径を有する粒子の両方を含んだ。第2のウォッシュコート組成物(最上部コートとして使用するため)もまた、結合剤および触媒から形成された約1.366g/inの総固形分を有するスラリーとして調製した。第2のウォッシュコート組成物は、0.025g/in(第2のウォッシュコートの総固形分の1.83重量%)の固体充填量で第1の結合剤粒子(すなわち、比較的大きい平均粒径を有する)を含んだが、比較的小さい平均粒径を有する第2の結合剤粒子のいずれも含まなかった。(基材の底部コーティングとして使用するための)第1のウォッシュコート組成物の粘度は、同様に以下の表に示される。
【0112】
試験サンプルごとの第1のウォッシュコート組成物および第2のウォッシュコート組成物は、フロースルー基材を定義された深さまでスラリーに浸漬することと、真空を適用して、基材の第1の端部から基材の第2の端部までの方向に基材の少なくとも部分的な長さに沿ってフロースルー基材のセルにスラリーを引き上げることと、真空を除去することと、フロースルー基材を180°回転させることと、スラリーが実質的に基材の全長にコーティングされるように、フロースルー基材のセルを通して、基材の第1の端部から基材の第2の端部に直接エアブラストを適用することと、によって、セル密度が600セル/平方インチで壁厚が約4.3mmのコーディエライト材料で作製されたフロースルー基材に適用した。フロースルー基材をコーティングするための好適な方法は、米国特許第7,521,087号に提供されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。この方法は、コーティングスラリーの浴を含有する容器に基材の端部を部分的に浸漬し、コーティングスラリーを浴から中空基材の内部に上向きに引き込むのに十分な強度および時間で、部分的に浸漬された基材に真空を適用することによって、中空基材の内部をウォッシュコート組成物でコーティングすることを伴う。次のステップでは、基材を回転させ、スラリーに浸漬された基材の端部に空気を吹き付けて、その内部にウォッシュコート組成物を分配する。上記の方法に従って第1のウォッシュコート組成物を使用して底部コーティングを適用し、乾燥させてから、上記の方法に従って第2のウォッシュコート組成物を使用して最上部コーティングを適用した。
【0113】
コーティングされたフロースルー基材は、様々な比率で結合剤を含む触媒コーティングの性能を評価するためにウォッシュコート損失試験に供した。厳しい多段階ウォッシュコート接着試験を結合剤パッケージを含む触媒で行った。触媒は、それぞれ3つのセグメント(最上部、中間、底部)に分割され、各セグメントを、熱衝撃ステップ、超音波ウォーターバスステップ、およびエアブローステップに供して、様々な条件下での触媒ウォッシュコートの接着性を評価した。特に、触媒セグメントは、約850℃での加熱/クエンチサイクル後に試験した。ウォッシュコート接着力(WCA)は、ウォッシュコート損失として下の表に示され、これは、ウォッシュコート接着力の損失率を表す(上記の処理に供される前後の触媒セグメントの質量の差に基づく)。6%未満のこれらの条件下でのウォッシュコートの総質量パーセント損失は、堅牢なWCAを示していた。
【0114】
比較的大きい平均サイズの粒子で形成された第1の結合剤材料および比較的小さい平均サイズの粒子で形成された第2の結合剤材料の相対充填量に基づく第1のウォッシュコート組成物の粘度を示す等高線図を図8に提供する。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用して、室温で約300s-1の剪断速度で測定した。この図は、第1の結合剤粒子および第2の結合剤粒子の定義された比率を使用して、好ましい低粘度が達成されることを示している。第1の結合剤粒子および第2の結合剤粒子の相対充填量に基づくウォッシュコート損失百分率を示す等高線図を図9に提供する。この図は、第1の結合剤粒子および第2の結合剤粒子の定義された比率を使用して、好ましい、低いウォッシュコート損失が達成されることを示している。
【0115】
上記の一般的な手順に従って、以下の例を調製した。
【表1】
【0116】
本開示の主題の多くの修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面で提示される教示の利益を有する、この主題が属する当業者に想起されるであろう。したがって、本開示が、本明細書で開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語が用いられるが、それらは、一般的かつ説明的な意味で使用されているにすぎず、限定を目的とするものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】