(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】微粒子を含まないオレフィンポリマーを生成するための触媒系
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20220511BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555861
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020022556
(87)【国際公開番号】W WO2020190681
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エドモンド、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ペルト、ステファン リー
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA00
4J128AB00
4J128AC04
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4J128GA24
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】
【解決手段】 嵩密度が比較的高く、微粒子の量が飛躍的に減少したオレフィンポリマーが生成される。本ポリマーは、選択性制御剤を含有する触媒系を使用して生成される。一実施形態では、選択性制御剤はジイソブチルジメトキシシランである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンポリマーを生成するためのプロセスであって、
ガス相重合反応器内で、チーグラー-ナッタ触媒系の存在下でオレフィンを重合することを含み、前記触媒系が、固体触媒成分、選択性制御剤、及び任意選択で活性制限剤を含み、前記固体触媒成分が、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含み、前記選択性制御剤が、以下の化学構造を有するシランを含み、
【化1】
式中、R
1がC1~C6アルキル基であり、R
2がC3~C8分岐鎖アルキル基である、プロセス。
【請求項2】
前記選択性制御剤がジイソブチルジメトキシシランを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記触媒系が前記活性制限剤を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記活性制限剤が、ミリスチン酸イソプロピル、吉草酸ペンチル、又はこれらの混合物を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記触媒系が、第2の選択性制御剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第2の選択性制御剤がプロピルトリエトキシシランを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒系が、予備重合されていない触媒系である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
R
1がメチル基である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記マグネシウム部分がハロゲン化マグネシウムを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒系が共触媒を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記共触媒が、トリエチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記固体触媒成分が、有機リン化合物、有機ケイ素化合物、及びエポキシ化合物を更に含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記内部電子供与体がアリールジエステルを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記オレフィンが、プロピレンホモポリマーを生成するためのプロピレンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリプロピレンホモポリマーが、約0.38g/ccより大きい嵩密度を有し、1重量%未満の微粒子を含有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記オレフィンが、プロピレン及びエチレンコポリマーを形成するためのプロピレン及びエチレンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記プロセスにより異相ポリマーが生成される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記異相ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンランダムコポリマーを含む第1のポリマー相を含み、前記異相ポリマーが、前記第1のポリマー相と組み合わされた第2のポリマー相を更に含み、前記第2のポリマー相が、エラストマープロピレンエチレンコポリマーを含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第1のポリマー相が前記ガス相重合反応器内に形成され、前記第2のポリマー相が第2の反応器内に形成され、前記触媒系が、前記第1の反応器及び前記第2の反応器の両方において活性を維持する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記プロピレンホモポリマーが、約0.38g/ccより大きい嵩密度を有し、1重量%未満の微粒子を含有する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項21】
前記オレフィンが、ターポリマーを形成するための3つのオレフィンモノマーの混合物を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記プロピレンホモポリマーが、約0.38g/ccより大きい嵩密度を有し、1重量%未満の微粒子を含有する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記選択性制御剤が、前記ガス相重合反応器の流動床に直接添加される、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記選択性制御剤が、前記ガス相重合反応器の流動床と連通しているサイクルループに添加される、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含む、固体触媒成分と、
アルキルアルミニウム化合物を含む、共触媒と、
ジイソブチルジメトキシシランを含む、選択性制御剤と、
任意選択で、活性制限剤と、を含む、予備重合されていない触媒系。
【請求項26】
前記触媒系が前記活性制限剤を含み、前記活性制限剤が、カルボン酸エステルを含み、1つ以上の選択性制御剤との関係において、約90:10~約50:50のモル比で前記触媒系中に存在する、請求項25に記載の予備重合されていない触媒系。
【請求項27】
前記触媒系が第2の選択性制御剤を含み、前記第2の選択性制御剤がシランを含む、請求項25又は26に記載の予備重合されていない触媒系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/818,925号に基づき、その優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンポリマーは、数多くの多様な用途及び分野で使用される。ポリオレフィンポリマーは、例えば、容易に加工することができる熱可塑性ポリマーである。ポリオレフィンポリマーはまた、再生し再利用することができる。ポリオレフィンポリマーは、石油化学物質から得られ、豊富に入手可能であるエチレン及びアルファオレフィンなどの炭化水素から形成される。
【0003】
ポリオレフィンポリマーの一種であるポリプロピレンポリマーは、概して、プロピレンモノマーに基づく直鎖構造を有する。ポリプロピレンポリマーは、様々な異なる立体特異的構成を有し得る。ポリプロピレンポリマーは、例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックであり得る。アイソタクチックポリプロピレンが恐らく最も一般的な形態であり、高結晶質であり得る。生成され得るポリプロピレンポリマーとしては、ホモポリマー、変性ポリプロピレンポリマー、及びポリプロピレンターポリマーを含むポリプロピレンコポリマーが挙げられる。ポリプロピレンを変性させること、又はプロピレンを他のモノマーと共重合することにより、特定の用途に所望される特性を有する様々な異なるポリマーを生成することができる。例えば、ポリプロピレンコポリマーは、ポリマーの衝撃強度を大幅に向上させるエラストマー特性を有するように生成することができる。
【0004】
オレフィン系ポリマーに対する世界的な需要は、これらのポリマーの用途がより多様になり、より精巧になるにつれて成長を続ける。チーグラー-ナッタ触媒組成物が、オレフィン系ポリマーの生成のために知られている。チーグラー-ナッタ触媒組成物は、典型的には、遷移金属ハロゲン化物(すなわち、チタン、クロム、バナジウム)を含有する触媒、有機アルミニウム化合物などの共触媒、及び任意選択で外部電子供与体を含む。チーグラー-ナッタ触媒によるオレフィン系ポリマーは、典型的には、狭い範囲の分子量分布を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オレフィン系ポリマーの新たな用途が絶えず出現すること、及びオレフィンポリマーに対する需要が増加していることを考慮すると、オレフィンポリマーの生成においてのみならず、得られるポリマー特性にも改善が必要とされる。例えば、オレフィンポリマーの生成中に直面する1つの問題は、生成後にポリマー樹脂を効率的に取り扱い、移動させる能力である。例えば、異なる重合プロセスにより、流動特性が最適ではなく、かつ/又は比較的高レベルの微粒子を含有し得るポリマー樹脂が生成され得る。その結果、ポリマーは、反応器から取り出すこと、又はある反応器から次の反応器に移動させることが困難であるだけでなく、ポリマーの生成中に使用される設備を汚染する可能性がある。
【0006】
本開示は、概して、改善されたポリマー触媒系、並びに本触媒系を使用して、ポリプロピレンポリマー、ポリエチレンポリマー、これらのコポリマー、及びこれらのターポリマーなどのオレフィンポリマーを生成するためのプロセスを対象とする。本開示の触媒系は、微粒子が飛躍的に減少した、より高い嵩密度を有するポリマーを予想外に生成することが見出されている。その結果、取り扱いがより容易であり、設備の汚染の可能性がより低いオレフィンポリマーを、より高い速度で生成することができる。
【0007】
一実施形態では、例えば、本開示は、オレフィンポリマーを生成するためのプロセスを対象とする。本プロセスは、1つ以上のオレフィンモノマーを、ガス相重合反応器内で、チーグラー-ナッタ触媒系の存在下で重合することを含む。本触媒系は、予備重合されていない触媒系であることができ、固体触媒成分、少なくとも1つの選択性制御剤、及び任意選択で活性制限剤を含むことができる。固体触媒成分は、ハロゲン化マグネシウムなどのマグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含み得る。一実施形態では、内部電子供与体はアリールジエステルを含んでもよい。
【0008】
本開示に従い、選択性制御剤は、以下の化学構造を有するシランを含み、
【化1】
式中、R
1は、メチル基などのC1~C6アルキル基である。一方でR
2は、C3~C8分岐鎖アルキル基である。一実施形態では、例えば、選択性制御剤はジイソブチルジメトキシシランである。従来、選択性制御剤は重合プロセスにそれほど大きな効果を有しなかったが、上記の選択性制御剤は、本開示のプロセスで使用すると、ポリマー形態及び生成に飛躍的に影響し得ることが発見された。
【0009】
一実施形態では、選択性制御剤は、活性制限剤と併用される。活性制限剤は、カルボン酸エステルを含んでもよい。例えば、活性制限剤は、ミリスチン酸イソプロピル、吉草酸ペンチル、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0010】
本触媒系はまた、共触媒を含み得る。共触媒は、トリエチルアルミニウムなどの炭化水素アルミニウム化合物を含んでもよい。
【0011】
また別の実施形態では、本触媒系は、上記の選択性制御剤に加えて、第2の選択性制御剤を含んでもよい。第2の選択性制御剤は、アルコキシシランを含んでもよい。例えば、第2の選択性制御剤は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0012】
一実施形態では、触媒成分は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び有機ケイ素化合物を更に含み得る。
【0013】
一実施形態では、本開示のプロセスを使用して、ポリプロピレンホモポリマーを生成することができる。ポリプロピレンホモポリマーは、例えば、約0.38g/ccより大きい嵩密度を有し得る。ポリプロピレンホモポリマーはまた、1重量%未満の量の微粒子を含有し得る。本明細書で使用する場合、「微粒子」は、例えば、Hillenbrand,Inc.所有のProcess Equipment Groupの一部門として営業しているRotexから市販されているGRADE X2000粒径分析器を使用して120メッシュ未満である粒径を有する粒子を指す。
【0014】
ホモポリマーに加えて、本開示のプロセスを使用して、プロピレン及びエチレンコポリマーなどのコポリマーを生成することもできる。一実施形態では、例えば、本触媒系を使用して、異相ポリマーを生成することができる。異相ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンランダムコポリマーを含む第1のポリマー相を含んでもよい。ポリマーは、第1のポリマー相と組み合わされた第2のポリマー相を更に含んでもよい。第2のポリマー相は、エラストマープロピレンエチレンコポリマーを含んでもよい。一実施形態では、第1のポリマー相は第1の反応器内に形成されてもよく、第2のポリマー相は第2の反応器内に形成されてもよい。本開示の触媒系は、第1の反応器及び第2の反応器の両方において活性を維持し得る。
【0015】
また別の実施形態では、本開示の触媒系を使用して、3つ以上のオレフィンモノマーからターポリマーを生成することができる。
【0016】
本開示に従い作製されたコポリマー及びターポリマーは、概して約0.38g/ccより大きい嵩密度を有し得、1重量%未満の微粒子を含有し得る。
【0017】
本開示はまた、予備重合されていないチーグラー-ナッタ触媒系を対象とする。本触媒系は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含む、上記の固体触媒成分を含む。本触媒系は、トリエチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物を含む共触媒を更に含む。本開示に従い、本触媒系は、ジイソブチルジメトキシシランを含む選択性制御剤を含む。選択性制御剤は、カルボン酸エステルを含んでもよい活性制限剤とともに存在し得る。活性制限剤は、1つ以上の選択性制御剤とともに、約90:10~約50:50、例えば、約85:15~約55:45のモル比で存在し得る。
【0018】
本開示の他の特性及び態様を以下でより詳細に考察する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、以下の実施例に示す結果の一部のグラフ表示である。
【0020】
【
図2】
図2は、以下の実施例に示す結果の一部のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本考察は、例示的な実施形態のみの説明であり、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことを当業者は理解されたい。
【0022】
概して、本開示は、ポリオレフィンポリマー、特にポリプロピレンポリマーを生成するための触媒系を対象とする。本開示はまた、本触媒系を使用してオレフィンを重合及び共重合する方法を対象とする。概して、本開示の触媒系は、特定の選択性制御剤と組み合わされた固体触媒成分を含む。選択性制御剤は、概して、以下の化学構造を有し、
【化2】
【0023】
式中、R1はC1~C6アルキル基であり、R2はC3~C8分岐鎖アルキル基である。例えば、一実施形態では、選択性制御剤はジイソブチルジメトキシシランである。上の選択性制御剤は、予備重合されていないチーグラー-ナッタ触媒系で使用すると、嵩密度が高く、微粒子の量が飛躍的に減少したポリマーを生成することが発見された。このため、ポリマーをより効率的に生成することができ、容易に取り扱うことができる。本開示の触媒系は、流動床を含む反応器などのガス相反応器での使用に特によく適している。
【0024】
本開示の触媒系により、多くの利益及び利点がもたらされる。特に、オレフィンホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーなどのポリマーを、より高い速度で生成することができ、またより効率的に生成することができる。生成されるポリマー樹脂又は粉末は、微粒子の減少及び高い嵩密度値を理由に、反応器又は設備の汚染の可能性がはるかに少ない。
【0025】
特別な利点として、上の利点が、エラストマー特性を有するポリマーを含むポリプロピレンランダムコポリマーなどのオレフィンコポリマーを生成するためのポリマープロセスにも結び付けられることが発見された。例えば、コポリマー粉末を生成する場合、本開示の触媒系により、嵩密度がより高い、及び/又はより速い生成速度を可能にするために分圧がより高いポリマーを生成することができる。本触媒系は、多くの従来の触媒系と比較して触媒生産量が多いコポリマーを生成することができる。加えて、本開示の触媒系は、良好な形態を維持しながら、より高いエチレン含量を有するポリプロピレンランダムコポリマーを生成することができる。複数の反応器で作製されたインパクトポリマーを生成するとき、ポリマー樹脂は、ポリマーの取り扱いを飛躍的に改善し、粘着質となることを防止し、汚染を低減することができる、微粒子がより少ない状態で、第1の反応器から第2の反応器へと通過し得る。
【0026】
最終的に、本開示の触媒系で使用される選択性制御剤により、優れた流動特性を有するポリマー樹脂が生成される。この選択性制御剤は、例えば、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含む広範囲のポリマー製品にわたって、微粒子を減少させると同時に嵩密度を増加させることが見出されている。加えて、微粒子レベルを増加させることなく、多種多様なメルトフローレートで異なるポリマーを生成できることが発見された。例えば、微粒子の量が予想外に少ないがメルトフローレートが高いポリマーを生成することができる。上で示したように、本開示の選択性制御剤は、ケイ素核から延びるバランスのとれたアルキル基を有するシランである。未確認ではあるが、本開示の選択性制御剤は、形態が改善したポリマーを生成するために、触媒系の動態を加減又は調節すると考えられる。この効果は、過去に使用された選択性制御剤が類似の効果を示していないという点で驚くべきものである。
【0027】
本開示の選択性制御剤は、固形触媒成分を含む触媒系の一部である。固体触媒成分は、(i)マグネシウムと、(ii)周期表IV族~VIII族の元素の遷移金属化合物と、(iii)ハロゲン化物、オキシハライド、並びに/又は(i)及び/若しくは(ii)のアルコキシドと、(iv)(i)、(ii)、及び(iii)の組み合わせとを含み得る。好適な触媒化合物の非限定的な例としては、ハロゲン化物、オキシハライド、及びマグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
一実施形態では、触媒成分の調製は、混合マグネシウム及びチタンアルコキシドのハロゲン化を伴う。
【0029】
様々な実施形態では、触媒成分は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(MagTi)、又は安息香酸塩含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)である。一実施形態では、触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水塩化マグネシウム及び/若しくはそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、並びに/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシド若しくはアリールオキシドが挙げられる。一実施形態では、MagMo前駆体は、マグネシウムジ(C1~4)アルコキシドである。更なる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0030】
別の実施形態では、触媒成分は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgdTi(ORe)fXgを有し、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカル又はCOR’であり、式中、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、各ORe基は、同じであるか又は異なり、Xは独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。前駆体は、アルコールをその調製時に使用される反応混合物から除去することによる制御された沈殿によって調製される。ある実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、とりわけクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤は、四臭化チタン、四塩化チタン、又は三塩化チタン、特に四塩化チタンを含む。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去することで、形態及び表面積が特に望ましい固体前駆体が沈殿する。更に、得られる前駆体は、粒径が特に均一である。
【0031】
別の実施形態では、触媒前駆体は、安息香酸塩含有塩化マグネシウム材料(「BenMag」)である。本明細書で使用する場合、「安息香酸塩含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸塩内部電子供与体を含有する触媒(すなわち、ハロゲン化触媒成分)であり得る。BenMag材料はまた、チタンハロゲン化物などのチタン部分を含んでもよい。安息香酸塩内部供与体は不安定であり、触媒及び/又は触媒合成中に他の電子供与体によって置き換えられ得る。好適な安息香酸塩基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸メチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-クロロ安息香酸エチルが挙げられる。一実施形態では、安息香酸塩基は安息香酸エチルである。ある実施形態では、BenMag触媒成分は、安息香酸塩化合物の存在下での、任意の触媒成分(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であってもよい。
【0032】
別の実施形態では、固体触媒成分は、マグネシウム部分、チタン部分、エポキシ化合物、有機リン化合物、有機ケイ素化合物、及び内部電子供与体から形成され得る。例えば、一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び炭化水素溶媒を含む混合物中に溶解させることができる。得られた溶液を、有機ケイ素化合物の存在下でチタン化合物を用いて、また任意選択で内部電子供与体を用いて処理して、固体沈殿物を形成することができる。次に、固体沈殿物を、更なる量のチタン化合物を用いて処理し得る。触媒を形成するために使用するチタン化合物は、以下の化学式を有することができ、
Ti(OR)gX4-g
式中、各Rは、独立して、C1~C4アルキルであり、Xは、Br、Cl、又はIであり、gは、0、1、2、3、又は4である。
【0033】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素は、モノマー又はポリマー化合物である。有機ケイ素化合物は、1分子内部又はその他の分子間に-Si-O-Si-基を含有してもよい。有機ケイ素化合物のその他の実例としては、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシランが挙げられる。このような化合物は、個々で使用しても、これらの組み合わせとして使用してもよい。有機ケイ素化合物は、アルミニウムアルコキシド及び内部電子供与体と組み合わせて使用してもよい。
【0034】
上で言及したアルミニウムアルコキシドは、式Al(OR’)3のものであってもよく、式中、各R’は、個々に最大20個の炭素原子を有する炭化水素である。これは、各R’が、個々に、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチルなどである場合を含んでもよい。
【0035】
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物の例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びフッ化マグネシウムが挙げられる。一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、塩化マグネシウムである。
【0036】
例示的なエポキシ化合物としては、限定されないが、以下の式のグリシジル含有化合物が挙げられ、
【化3】
【0037】
式中、「a」は、1、2、3、4、又は5であり、Xは、F、Cl、Br、I、又はメチルであり、Raは、H、アルキル、アリール、又はシクリルである。一実施形態では、アルキルエポキシドは、エピクロロヒドリンである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、ハロアルキルエポキシド又は非ハロアルキルエポキシドである。
【0038】
いくつかの実施形態に従い、エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカン、7,8-エポキシ-2-メチルオクタデカン、2-ビニルオキシラン、2-メチル-2-ビニルオキシラン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-7-オクテン、1-フェニル-2,3-エポキシプロパン、1-(1-ナフチル)-2,3-エポキシプロパン、1-シクロヘキシル-3,4-エポキシブタン、1,3-ブタジエンジオキシド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、シクロペンテンオキシド、シクロオクテンオキシド、α-ピネンオキシド、2,3-エポキシノルボルナン、リモネンオキシド、シクロデカンエポキシド、2,3,5,6-ジエポキシノルボルナン、スチレンオキシド、3-メチルスチレンオキシド、1,2-エポキシブチルベンゼン、1,2-エポキシオクチルベンゼン、スチルベンオキシド、3-ビニルスチレンオキシド、1-(1-メチル-1,2-エポキシエチル)-3-(1-メチルビニルベンゼン)、1,4-ビス(1,2-エポキシプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、1,2-エポキシ-4-フルオロブタン、1-(2,3-エポキシプロピル)-4-フルオロベンゼン、1-(3,4-エポキシブチル)-2-フルオロベンゼン、1-(2,3-エポキシプロピル)-4-クロロベンゼン、1-(3,4-エポキシブチル)-3-クロロベンゼン、4-フルオロ-1,2-シクロヘキセンオキシド、6-クロロ-2,3-エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-フルオロスチレンオキシド、1-(1,2-エポキシプロピル)-3-トリフルオロベンゼン、3-アセチル-1,2-エポキシプロパン、4-ベンゾイル-1,2-エポキシブタン、4-(4-ベンゾイル)フェニル-1,2-エポキシブタン、4,4’-ビス(3,4-エポキシブチル)ベンゾフェノン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキサノン、2,3-エポキシ-5-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3-アセチルスチレンオキシド、4-(1,2-エポキシプロピル)ベンゾフェノン、グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルへキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチル3,4-エポキシブチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル4-tert-ブチルフェニルエーテル、グリシジル4-クロロフェニルエーテル、グリシジル4-メトキシフェニルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル4-インドリルエーテル、グリシジルN-メチル-α-キノロン-4-イルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-ジグリシジルオキシベンゼン、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン、ポリ(オキシプロピレン)トリオールトリグリシジルエーテル、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-メトキシシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-メトキシスチレンオキシド、1-(1,2-エポキシブチル)-2-フェノキシベンゼン、ギ酸グリシジル、酢酸グリシジル、酢酸2,3-エポキシブチル、酪酸グリシジル、安息香酸グリシジル、ジグリシジルテレフタレート、ポリ(アクリル酸グリシジル)、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、アクリル酸グリシジルと別のモノマーとのコポリマー、メタクリル酸グリシジルと別のモノマーとのコポリマー、1,2-エポキシ-4-メトキシカルボニルシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-(1,2-エポキシエチル)安息香酸エチル、3-(1,2-エポキシブチル)安息香酸メチル、3-(1,2-エポキシブチル)-5-フェニル安息香酸メチル、N,N-グリシジル-メチルアセトアミド、N,N-エチルグリシジルプロピオンアミド、N,N-グリシジルメチルベンズアミド、N-(4,5-エポキシペンチル)-N-メチル-ベンズアミド、N,N-ジグリシルアニリン、ビス(4-ジグリシジルアミノフェニル)メタン、ポリ(N,N-グリシジルメチルアクリルアミド)、1,2-エポキシ-3-(ジフェニルカルバモイル)シクロヘキサン、2,3-エポキシ-6-(ジメチルカルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(ジメチルカルバモイル)スチレンオキシド、4-(1,2-エポキシブチル)-4’-(ジメチルカルバモイル)ビフェニル、4-シアノ-1,2-エポキシブタン、1-(3-シアノフェニル)-2,3-エポキシブタン、2-シアノスチレンオキシド、及び6-シアノ-1-(1,2-エポキシ-2-フェニルエチル)ナフタレン、からなる群から選択される。
【0039】
有機リン化合物の一例として、トリアルキルリン酸エステルなどのリン酸エステルを使用してもよい。このような化合物は、次式によって表すことができ、
【化4】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、メチル、エチル、及び直鎖又は分岐鎖(C
3~C
10)アルキル基からなる群から選択される。一実施形態では、トリアルキルリン酸エステルは、トリブチルリン酸エステルである。
【0040】
また別の実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加物を、噴霧結晶化プロセスによって形成してもよい。このプロセスでは、容器の上部に20~80℃の温度で不活性ガスを伝えながら、MgCl2-nROH溶融物(式中、nは1~6である)を容器の内側に噴霧する。溶融物液滴を、不活性ガスが-50~20℃の温度で導入される結晶化領域に移し、溶融物液滴を球状の凝集していない固体粒子に結晶化する。次に、球状のMgCl2粒子を所望のサイズに分類する。望ましくないサイズの粒子は再利用することができる。触媒合成に好ましい実施形態では、球状MgCl2前駆体は、平均粒径(Malvern d50)が、約15~150ミクロン、好ましくは20~100ミクロン、最も好ましくは35~85ミクロンである。
【0041】
触媒成分をハロゲン化によって固体触媒に変換してもよい。ハロゲン化には、触媒成分を内部電子供与体の存在下でハロゲン化剤と接触させることが含まれる。ハロゲン化により、触媒成分に存在するマグネシウム部分がハロゲン化マグネシウム担体に変換され、ここにチタン部分(ハロゲン化チタンなど)が堆積する。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、ハロゲン化中に、内部電子供与体が、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム部分及びチタン部分のそれぞれのハロゲン化物への変換を促進し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の結晶サイズを調節すると考えられる。このため、内部電子供与体を提供することにより、立体選択性が向上した触媒組成物が得られる。
【0042】
ある実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORe)fXhを有するハロゲン化チタンであり、式中、Re及びXは上で定義したとおりであり、fは0~3の整数であり、hは1~4の整数であり、f+hは4である。ある実施形態では、ハロゲン化剤はTiCl4である。更なる実施形態では、ハロゲン化は、ジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの塩素化又は非塩素化芳香族液体の存在下で行う。更に別の実施形態では、ハロゲン化は、40~60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiCl4を含む、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物を使用することにより行う。
【0043】
反応混合物をハロゲン化中に加熱することができる。触媒成分とハロゲン化剤とを、まず、約10℃未満、例えば約0℃未満、例えば約-10℃未満、例えば約-20℃未満、例えば約-30℃未満の温度で接触させる。初期温度は、概して、約-50℃超、例えば約-40℃超である。次に、混合物を、0.1~10.0℃/分の速度で、又は1.0~5.0℃/分の速度で加熱する。内部電子供与体を、ハロゲン化剤と触媒成分との間の初期接触期間後に追って添加してもよい。ハロゲン化の温度は、20℃~150℃(又はそれらの間の任意の値又は部分範囲)、又は0℃~120℃である。ハロゲン化は、5~60分、又は10~50分の期間、内部電子供与体が実質的に存在しない状態で継続してもよい。
【0044】
触媒成分、ハロゲン化剤、及び内部電子供与体を接触させる方法は様々であり得る。ある実施形態では、触媒成分を、まず、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族化合物を含有する混合物と接触させる。得られた混合物を撹拌し、所望であれば加熱してもよい。次に、前駆体を単離又は回収することなく、内部電子供与体を同じ反応混合物に添加する。前述のプロセスは、自動化プロセス制御によって制御される様々な成分を添加した単一の反応器内で行ってもよい。
【0045】
一実施形態では、触媒成分は、ハロゲン化剤と反応させる前に、内部電子供与体と接触させる。
【0046】
触媒成分を内部電子供与体と接触させる時間は、少なくとも-30℃、又は少なくとも-20℃、又は少なくとも10℃の温度から、最大150℃、又は最大120℃、又は最大115℃、又は最大110℃までの温度で、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも1時間である。
【0047】
一実施形態では、触媒成分、内部電子供与体、及びハロゲン化剤は、同時に、又は実質的に同時に添加する。
【0048】
ハロゲン化手順は、所望に応じて、1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返してもよい。ある実施形態では、得られた固体材料を、反応混合物から回収し、少なくとも約-20℃、又は少なくとも約0℃、又は少なくとも約10℃の温度から、最大約150℃、又は最大約120℃、又は最大約115℃までの温度で、少なくとも約10分、又は少なくとも約15分、又は少なくとも約20分、最大約10時間、又は最大約45分、又は最大約30分の間、同じ(又は異なる)内部電子供与体成分の非存在下(又は存在下)で、塩素化芳香族化合物中のハロゲン化剤混合物と1回以上接触させる。
【0049】
前述のハロゲン化手順の後、得られた固体触媒組成物を、例えば濾過することにより最終プロセスで用いた反応媒体から分離させて、湿性濾過ケーキを生成する。次に、湿性濾過ケーキを希釈液ですすぐか又は洗浄して、未反応のTiCl4を除去してもよく、また所望の場合、乾燥させて残留液を除去してもよい。典型的には、得られた固体触媒組成物を、液体炭化水素、例えば、イソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、又はオクタンなどの脂肪族炭化水素である「洗浄液」で1回以上洗浄する。固体触媒組成物は、その後、更なる貯蔵又は使用のために、炭化水素、特に鉱油などの比較的重質な炭化水素中で、分離させて乾燥させるか又はスラリー化することができる。
【0050】
一実施形態では、得られた固体触媒組成物は、チタン含量が、全固体重量を基準として、約1.0重量パーセント~約6.0重量パーセント、又は約1.5重量パーセント~約4.5重量パーセント、又は約2.0重量パーセント~約3.5重量パーセントである。固体触媒組成物中のチタンとマグネシウムとの重量比は、好適には、約1:3~約1:160、又は約1:4~約1:50、又は約1:6~1:30である。ある実施形態では、内部電子供与体は、内部電子供与体とマグネシウムとのモル比が約0.005:1~約1:1、又は約0.01:1~約0.4:1で触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントは、触媒組成物の全重量を基準とする。
【0051】
触媒組成物は、固体触媒組成物を単離する前又は後に、以下の手順のうちの1つ以上によって更に処理してもよい。固体触媒組成物は、所望の場合、更なる量のハロゲン化チタン化合物と接触(ハロゲン化)させてもよい。これは、二塩化フタロイル又は塩化ベンゾイルなどの酸塩化物とメタセシス条件下で交換してもよく、すすいでも洗浄してもよく、熱処理してもよく、エージングさせてもよい。前述の追加的な手順は、任意の順序で組み合わせても、別々に用いても、まったく用いなくてもよい。
【0052】
上記のように、触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体の組み合わせを含み得る。触媒組成物は、触媒成分及び内部電子供与体を、内部電子供与体が組み込まれるマグネシウム部分とチタン部分との組み合わせに変換する、前述のハロゲン化手順によって生成する。触媒組成物が形成される触媒成分は、マグネシウム部分前駆体、混合マグネシウム/チタン前駆体、安息香酸塩含有塩化マグネシウム前駆体、マグネシウム、チタン、エポキシ、及びリン前駆体、又は球状前駆体を含む、上記の触媒前駆体のうちのいずれかであり得る。
【0053】
様々な異なる種類の内部電子供与体を固体触媒成分に組み込むことができる。一実施形態では、内部電子供与体は、フェニレン置換ジエステルなどのアリールジエステルである。一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有してもよく、
【化5】
【0054】
式中、R1、R2、R3、及びR4は、各々、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は、分岐鎖若しくは直鎖構造を有するか、又は7~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E1及びE2は、同じか又は異なり、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、1~20個の炭素原子を有するアリール、1~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択でヘテロ原子を含有する不活性官能基からなる群から選択され、X1及びX2は、各々、O、S、アルキル基、又はNR5であり、R5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0055】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、環式、多環式、縮合、又は非環式種、及びこれらの組み合わせを含む、水素原子及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用する場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI、及びVII族に属する非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基は、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基も含む。本明細書で使用する場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用する場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子で置換されているヒドロカルビル基である。ケイ素原子(複数可)は、炭素鎖中にある場合もない場合もある。
【0057】
上記の固体触媒成分に加えて、本開示の触媒系はまた、共触媒を含むことができる。
【0058】
共触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、及びこれらの組み合わせのヒドリド、アルキル、又はアリールを含んでもよい。ある実施形態では、共触媒は、式R3Alで表されるヒドロカルビルアルミニウム共触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり、少なくとも1個のRは、ヒドロカルビルラジカルであり、2個又は3個のRラジカルは、複素環構造を形成する環式ラジカルに結合することができ、各Rは同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビルラジカルである各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキルラジカルは直鎖であっても分岐鎖であってもよく、このようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであってもよく、すなわち、ラジカルは、アルキル基、アリール基、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシルである。
【0059】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ヘキシルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、n-ヘキシルアルミニウムジヒドリド、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウムである。ある実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、及びジ-n-ヘキシルアルミニウムヒドリドから選択される。
【0060】
ある実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウムとチタンとのモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1である。別の実施形態では、アルミニウムとチタンとのモル比は、約45:1である。
【0061】
固体触媒成分及び共触媒は、本開示に従い、選択性制御剤と組み合わされる。従来、選択性制御剤は、典型的には、触媒の立体選択性を向上させ、キシレン可溶性材料を還元するために使用された。それに対して、本開示の選択性制御剤により、ポリマー形態に劇的に影響し、嵩密度が高く微粒子が少ないポリマーが生成されることが見出されている。
【0062】
一実施形態では、本触媒系は、活性制限剤(activity limiting agent、ALA)を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「活性制限剤」(「ALA」)は、昇温(すなわち、約85℃より高い温度)で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の不調を抑制又はさもなければ阻止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー-ナッタ触媒の活性は、反応器の温度が上昇するにつれて増大する。チーグラー-ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点に近い温度で高い活性を維持する。発熱重合反応によって生じた熱は、ポリマー粒子凝集体を形成させる場合があり、最終的にはポリマー生成プロセスを中断させ得る。ALAは、昇温で触媒活性を低下させ、それにより反応器の不調を阻止し、粒子の凝集を低減(又は阻止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0063】
活性制限剤は、カルボン酸エステルであってもよい。脂肪族カルボン酸エステルは、C4~C30脂肪族酸エステルであってもよく、モノ又はポリ(2つ以上の)エステルであってもよく、直鎖又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、これらの任意の組み合わせであってもよい。C4~C30脂肪族酸エステルはまた、1つ以上の第14族、第15族、又は第16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されてもよい。好適なC4~C30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4~30モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C4~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アリルモノ及びジエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルエステル、並びにC2~100(ポリ)グリコール又はC2~100(ポリ)グリコールエーテルのC4~20モノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。更なる実施形態では、C4~C30脂肪族酸エステルは、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、セバシン酸塩、モノ又はジ酢酸(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ又はジミリスチン酸(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ又はジラウリン酸(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ又はジオレイン酸(ポリ)(アルキレングリコール)、トリ(酢酸)グリセリル、C2~40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、及びこれらの混合物であってもよい。更なる実施形態では、C4~C30脂肪族エステルは、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジ-n-ブチル、及び/又は吉草酸ペンチルである。
【0064】
一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤を、反応器に別々に添加することができる。別の実施形態では、選択性制御剤及び活性制限剤を予め合わせて混合した後で、混合物として反応器に添加することができる。加えて、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、異なる方法で反応器に添加することができる。例えば、一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、流動床反応器などの反応器内に直接添加することができる。あるいは、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、例えばサイクルループを通して供給することにより、反応器容積に間接的に添加することができる。選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、反応器内に供給する前に、サイクルループ内の触媒粒子と組み合わせることができる。
【0065】
一実施形態では、本開示の触媒系は、任意選択で第1の選択性制御剤と併用することができる第2の選択性制御剤を含み得る。第2の選択性制御剤はアルコキシシランを含み得る。一実施形態では、アルコキシシランは、一般式SiRm(OR’)4-m(I)を有することができ、式中、Rは、独立して、各出現時に、水素、又は1つ以上の第14族、第15族、第16族、若しくは第17族のヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基により任意選択で置換されているヒドロカルビル基若しくはアミノ基であり、当該R’は、水素及びハロゲン以外の原子を最大20個含有し、R’は、C1~4アルキル基であり、mは、0、1、2、又は3である。ある実施形態では、Rは、C6~12アリール、アルキル、若しくはアラルキル、C3~12シクロアルキル、C3~12分岐鎖アルキル、又はC3~12環式若しくは非環式アミノ基であり、R’はC1~4アルキルであり、mは1又は2である。一実施形態では、例えば、第2の選択性制御剤は、n-プロピルトリエトキシシランを含んでもよい。
【0066】
上記のような本開示の触媒系は、オレフィン系ポリマーを生成するために使用することができる。このプロセスには、オレフィンを触媒系と重合条件下で接触させることが含まれる。
【0067】
1つ以上のオレフィンモノマーを重合反応器内に導入して、触媒系と反応させ、ポリマー粒子の流動床などのポリマーを形成させることができる。好適なオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、C4~20 α-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなど;C4~20ジオレフィン、例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、及びジシクロペンタジエン;スチレン、o-、m-、及びp-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8~40ビニル芳香族化合物;並びにハロゲン置換C8~40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンが挙げられる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「重合条件」は、触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに好適な、重合反応器内の温度及び圧力パラメータである。重合プロセスは、1つの又は1つより多い反応器内で動作する、ガス相重合プロセス、スラリー重合プロセス、又はバルク重合プロセスであってもよい。
【0069】
一実施形態では、重合は、ガス相重合によって生じる。本明細書で使用する場合、「ガス相重合」は、1つ以上のモノマーを含有する上行する流動化媒体が、触媒の存在下で、流動化媒体によって流動状態で維持されるポリマー粒子の流動床を通過することである。「流動化」、「流動化された」、又は「流動化する」とは、微粉化ポリマー粒子の床が上昇ガス流によって持ち上げられ、撹拌される、ガス-固体接触方法である。流動化は、粒子の床の隙間を通る流体の上方流が粒子重量を超える圧力差及び摩擦抵抗増分に達したときに、粒子の床で生じる。このため、「流動床」は、流動化媒体流によって流動状態で浮遊した複数のポリマー粒子である。「流動化媒体」は、1つ以上のオレフィンガス、任意選択でキャリアガス(H2又はN2など)、及び任意選択で液体(炭化水素など)であり、これはガス相反応器を通って上行するものである。
【0070】
典型的なガス相重合反応器(又はガス相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動床、分配器プレート、入口及び出口パイプ、圧縮器、循環ガス冷却器又は熱交換器、並びに生成物排出系を含む。容器は、反応域及び速度減少域を含み、これらは各々、分配器プレートの上に位置する。床は反応域内に位置する。ある実施形態では、流動化媒体は、プロピレンガスと、少なくとも1つのオレフィンなどの他のガス及び/又は水素若しくは窒素などのキャリアガスとを含む。
【0071】
一実施形態では、接触は、触媒組成物を重合反応器に供給し、オレフィンを重合反応器に導入することによって生じさせる。ある実施形態では、共触媒は、触媒組成物を重合反応器に導入する前に、触媒組成物(プレミックス)と混合することができる。別の実施形態では、共触媒は、触媒組成物とは独立して、重合反応器に添加する。重合反応器への共触媒の独立した導入は、触媒組成物供給と同時に、又は実質的に同時に行うことができる。
【0072】
従来、多くのガス相重合プロセスは、予備重合工程を用いて行われていた。予備重合には、少量のオレフィンモノマーを触媒系と接触させて少量のポリマーを生成することが含まれる。しかしながら、本開示の触媒系は、触媒系の動態の改善に起因して、予備重合工程なしで使用することができる。予備重合工程を排除することにより、プロセスの複雑性を低減することに加えて、ポリマーのスループットを改善することができる。
【0073】
一実施形態では、重合プロセスには、予備活性化工程が含まれてもよい。予備活性化には、触媒組成物を共触媒並びに選択性制御剤及び/又は活性制限剤と接触させることが含まれる。得られた予備活性化触媒流を、続いて重合反応域に導入し、オレフィンモノマーと接触させて、重合させる。任意選択で、追加量の選択性制御剤及び/又は活性制限剤を加えてもよい。
【0074】
本プロセスには、選択性制御剤(及び任意選択で活性制限剤)を触媒組成物と混合することが含まれ得る。選択性制御剤は、触媒組成物とオレフィンとが接触する前に、共触媒と複合体化させ、触媒組成物(プレミックス)と混合することができる。別の実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、重合反応器に独立して添加することができる。一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、サイクルループを通して反応器に供給することができる。
【0075】
様々な異なる種類のポリマーを、本開示の触媒系を使用して生成することができる。例えば、本触媒系を使用して、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及びポリプロピレンターポリマーを生成することができる。本触媒系はまた、エラストマー特性を有する耐衝撃性ポリマーを生成するために使用することができる。
【0076】
ゴム様又はエラストマー特性を有する耐衝撃性ポリマーは、典型的には、触媒が高い活性レベルを維持することが望ましい2つの反応器系で作製される。一実施形態では、例えば、重合は、直列に接続した2つの反応器内で実施する。プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを、活性プロピレン系ポリマーを形成するために、第1の反応器内に形成させ得る。その後、第1の重合反応器からの活性プロピレン系ポリマーを第2の重合反応器内に導入し、第2の重合条件下で、少なくとも1つの第2のコモノマーと第2の反応器内で接触させて、プロピレンインパクトコポリマーを形成させる。一実施形態では、本プロセスには、活性プロピレン系ポリマーを、重合条件下の第2の重合反応器内でプロピレン及びエチレンと接触させ、プロピレン/エチレンコポリマーの不連続相を形成させることが含まれる。
【0077】
上記のように、第1相ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーを含み得る。しかしながら、代替的な実施形態では、第1相ポリマーは、ポリプロピレンのランダムコポリマーを含んでもよい。
【0078】
ランダムコポリマーは、例えば、プロピレンと、エチレンなどのアルファ-オレフィンとのコポリマーであり得る。ポリプロピレンランダムコポリマーは、ポリプロピレン組成物中にマトリックスポリマーを形成し、アルファオレフィンを、約12重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量、例えば約4重量%未満の量、及び概して、約0.5重量%超の量、例えば約1重量%超の量、例えば約1.5重量%超の量、例えば約2重量%超の量で含有し得る。
【0079】
第2相ポリマーは、プロピレンとアルファ-オレフィンとのコポリマーである。しかしながら、第2相ポリマーは、エラストマー又はゴム様の特性を有する。このため、第2相ポリマーは、ポリマーの耐衝撃性を飛躍的に改善することができる。
【0080】
ポリマー組成物中に分散相を形成する第2相ポリマーは、アルファ-オレフィン又はエチレンを、概して、約10重量%超の量、例えば約12重量%超の量、例えば約14重量%超の量、及び概して、約30重量%未満、例えば約20重量%未満、例えば約17重量%未満で含有する。
【0081】
上記のように、本開示の触媒系により、嵩密度が比較的高く、微粒子の含有量が飛躍的に減少した、様々な異なるポリマーを生成することができる。例えば、ポリプロピレンホモポリマー、例えば、3.5重量%を超えるエチレンを含有するポリプロピレンランダムコポリマー、及びポリプロピレンターポリマーは、本開示に従い、すべて、1%未満の微粒子、例えば、約0.8%未満の微粒子、例えば約0.5%未満の微粒子、例えば更には約0.4%未満の微粒子を含有するように生成することができる。上記のポリマーの各々はまた、比較的高い嵩密度を有し得る。嵩密度は、例えば、約0.38g/cc、例えば約0.4g/cc超、例えば約0.42g/cc、例えば約0.45g/cc超であり得る。嵩密度は、概して、約0.6g/cc未満、例えば約0.55g/cc未満である。
【実施例】
【0082】
様々な異なるポリマーを、本開示の触媒系を使用して生成した。より具体的には、W.R.Grace and Companyから入手したLYNX 1010触媒を本開示の選択性制御剤と組み合わせて、ポリプロピレン-エチレンランダムコポリマー及びターポリマーを生成した。反応器により、圧縮器及び冷却器をサイクルガスラインに接続した状態でガス相流動床において重合を行った。
【0083】
ポリプロピレン樹脂粉末を、流動床反応器内で、共触媒としてのトリエチルアルミニウムと組み合わせたLYNX 1010触媒を使用して生成した。触媒系には、本開示に従う選択性制御剤、すなわちジイソブチルジメトキシシランを更に含めた。ミリスチン酸イソプロピルを活性制限剤として添加した。ジイソブチルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピルとの比は4:1であった。
【0084】
比較を目的として、ポリプロピレンポリマーも、上記のようにLYNX 1010触媒を使用して生成した。しかしながら、これらの比較例では、異なる選択性制御剤を使用した。
【0085】
ポリマー粉末は、反応器条件を変化させ、エラストマーポリマーを生成するために直列に第2の反応器を使用して、様々なメルトフローレート、キシレン可溶分、及びエチレンゴム含量にわたって生成した。生成したポリマーの嵩密度及び微粒子を測定し、同じ触媒を用いたが異なる選択性制御剤を使用した類似条件下で生成したポリマーと比較した。
【0086】
【0087】
流動床反応器を以下の条件で操作した。
Al/Tiモル比:150
反応器温度:75℃
床重量:68~72kg
ガス空塔速度:1.54~1.6ft/秒
【0088】
図1及び2は、実験中に得られた結果を図示する。示されるように、本開示に従い作製されたポリプロピレンポリマーは、概して0.38g/ccより大きい嵩密度を有し、同じ触媒粒子を用いたが異なる選択性制御剤を使用して生成した他のポリマーよりも高い嵩密度を有した。
図2に示すように、1重量%未満の微粒子を含有するポリマーが、本開示に従い生成された。
図2に示されるデータには、ポリプロピレンホモポリマーの生成に関するデータも含まれる。
【0089】
本発明に対するこれら及び他の修正及び変形は、添付の特許請求の範囲においてより具体的に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施されてもよい。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的に又は部分的に交換されてもよいことを理解されたい。更に、当業者であれば、前述の説明はあくまで例でしかなく、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されている本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【国際調査報告】