IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワイ−チャージ リミテッドの特許一覧

特表2022-525631レーザビームパワー検出のための光起電セル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】レーザビームパワー検出のための光起電セル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20220511BHJP
【FI】
H01L31/04 240
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556215
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 IL2020050336
(87)【国際公開番号】W WO2020188576
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/821,143
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513314090
【氏名又は名称】ワイ-チャージ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アルパート、 オータル
(72)【発明者】
【氏名】モール、 オリ ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン、 リオール
(72)【発明者】
【氏名】サギ、 ラン
(72)【発明者】
【氏名】コンフォーティ、 エヤル
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151DA03
5F151FA06
5F151HA01
5F151HA11
(57)【要約】
送信器及び受信器を含む無線光送電システムである。送信器はビームを放出するレーザと、当該ビームを受信器へと操舵するスキャンミラーと、当該受信器における検出ユニットから信号を受信して当該ビームパワー及び当該スキャンミラーを制御する制御ユニットとを含む。受信器は、バンドギャップエネルギーが0.75~1.2eVである光起電セルを有し、当該光起電セルはビーム受信表面に複数の導体を備える。レーザ波長の外側の波長の照明をブロックする材料のカバー層が、光起電セルに配置される。カバー層は、その上面及び下面に反射防止コーティングを有してよい。それにより検出ユニットは、受信器に衝突するレーザビームのパワーを表す信号を、当該レーザビームの波長以外の照明から独立して生成する。それにより制御ユニットは、受信器に衝突するレーザパワーを維持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを使用した光無線送電に適合される光パワーを電力に変換するパワー変換デバイスであって、
前記レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルであって、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有する光起電セルと、
前記光起電セルに配置されるカバー層と
を含み、
前記カバー層は、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明の透過を、吸収又は反射のいずれかによって制限して前記レーザビームを前記光起電セルへと透過させるように適合される材料を含み、
前記レーザビームは700nm~1500nmの波長を有し、
前記レーザビームの波長の範囲外の照明の波長が550nm~700nmの範囲内にあり、
前記レーザビームの波長に対する前記カバー層の透過率が、550nm~700nmの範囲内の波長に対する前記カバー層の透過率よりも少なくとも50%高く、
前記パワー変換デバイスは、前記レーザビームの波長での電力への変換効率が、550nmの波長での電力への変換効率の少なくとも2.5倍の高さとなる、パワー変換デバイス。
【請求項2】
前記バンドギャップエネルギーは、前記レーザの波長よりも少なくとも25%だけ長い任意の波長に対する光パワーの電力への変換効率が、前記レーザ波長での変換効率よりも4倍を超えて小さくなるように、前記レーザの波長にチューニングされる、請求項1に記載のパワー変換デバイス。
【請求項3】
前記カバー層はさらに、
前記光起電セルから離れた前記カバー層の表面に配置される第1反射防止コーティングであって、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、前記レーザビームを前記カバー層へと透過させるように適合される第1反射防止コーティング、又は
前記光起電セルの表面と前記カバー層との間に配置される第2反射防止コーティングであって、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、前記レーザビームを前記光起電セルへと透過させるように適合される第2反射防止コーティング
のうちの少なくとも一方を含む、請求項1及び2のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項4】
送信器、受信器及び制御ユニットを含む無線光送電システムのための安全システムであって、
(i)前記送信器は、
ビームを放出するように適合されるレーザと、
前記ビームを前記受信器へと操舵するべく適合されるスキャンミラーと
を含み、
(ii)前記受信器は、
前記レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルであって、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有する光起電セルと、
前記光起電セルに配置されるカバー層と
を含み、
前記カバー層は、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を、吸収又は反射のいずれかによって制限して前記レーザビームを前記光起電セルへと透過させるように適合される材料を含み、
(iii)前記制御ユニットは、前記スキャンミラーの位置を表す第1データを受信し、前記レーザによって放出されたビームのパワーを表す第2データを前記送信器から受信し、前記第1データ及び前記第2データから前記光起電セルに入射する予測パワーを決定し、前記予測パワーと前記光起電セルによって測定される前記受信器に衝突する前記レーザビームのパワーとを比較し、前記予測パワーが前記測定されるパワーから所定レベルを超えて逸脱する場合に起こり得る安全上の問題を示すように適合される、安全システム。
【請求項5】
送信器及び受信器を含む無線光送電システムであって、
ビームを放出するように適合されるレーザと、
前記ビームを前記受信器へと操舵するべく適合されるスキャンミラーと、
前記受信器における検出ユニットから信号を受信し、(i)前記レーザが放出するビームのパワー及び(ii)前記スキャンミラーの位置の少なくとも一方を制御するべく適合される制御ユニットと
を含み、
前記受信器は、前記レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルであって、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有する光起電セルを含み、
前記光起電セルは、前記光起電セルに到達する前記レーザビームのパワーを検出するべく適合され、
前記受信器は、前記光起電セルに配置されるカバー層を含み、
前記カバー層は、
前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を吸収又は反射して、前記レーザビームを前記光起電セルへと透過させるように適合される材料と、
(i)前記光起電セルから離れた前記カバー層の表面に配置される第1反射防止コーティングであって、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、前記レーザビームを前記カバー層へと透過させるように適合される第1反射防止コーティング、又は
(ii)前記光起電セルの表面と前記カバー層との間に配置される第2反射防止コーティングであって、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、前記レーザビームを前記光起電セルへと透過させるように適合される第2反射防止コーティングのうちの少なくとも一方と
を含み、
前記検出ユニットは、前記レーザビームの波長以外の他の照明から独立して前記受信器に衝突するレーザビームのパワーを表す信号を生成し、
前記制御ユニットは、前記受信器に衝突するパワーを維持するべく(i)前記ビーム及び(ii)前記スキャンミラーの位置の少なくとも一方を制御するべく適合される、無線光送電システム。
【請求項6】
レーザビームを使用した光無線送電に適合される光パワーを電力に変換するパワー変換デバイスであって、
0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有するパワー変換デバイスであって、前記一つの接合部へとレーザ光が透過する外部層を有するパワー変換デバイスを含み、
前記外部層は、前記外部層の表面の法線に対して±20°間の任意の方向から前記外部層を通るように照明される場合に少なくとも80%の効率で少なくとも第1波長を前記一つの接合部へと透過させるべく構成され、
前記パワー変換デバイスの変換効率が少なくとも30%であり、前記第1波長が700nm~1500nmの近赤外波長であることと、
前記パワー変換デバイスの外部層は、550nm~700nmの第2波長の入射照明の一部分を反射又は吸収するべく構成され、前記第2波長の照明の60%未満が、前記外部層の表面の法線に対して±20°間の任意の方向から前記外部層を通して照明されたときに前記少なくとも一つの接合部に到達し、前記第2波長に対する前記パワー変換デバイスの変換効率が20%未満であることと、
前記パワー変換デバイスの外部層は、300nm~550nmの少なくとも第3波長を吸収又は反射するべく構成され、前記外部層の表面の法線に対して±20°間の任意の方向から前記外部層を通して照射されたときに前記少なくとも一つの接合部に到達する前に、前記第3波長のパワーの少なくとも50%が吸収され、前記第3波長に対する前記パワー変換デバイスの変換効率が10%未満であることと、
1500nm~2000nmの第4波長に対する前記パワー変換デバイスの変換効率が5%未満であることと
の少なくとも一つである、パワー変換デバイス。
【請求項7】
光パワービームを電力に変換するパワー変換デバイスであって、
前記光パワービームを吸収するべく適合されるpn接合部を有する半導体デバイスと、
前記半導体デバイスと電気的に接触する上部導体及び下部導体であって、前記上部導体は前記半導体デバイスの上面の一部分を覆う、上部導体及び下部導体と、
前記半導体デバイスの上面に配置される光学層であって、前記光学層は上部容積及び下部容積を含み、前記下部容積は前記半導体デバイスの上面と光学的に接触し、前記半導体デバイスの前記上部導体と光学的に接触し、前記上部容積は空気と光学的に接触する、光学層と
を含み、
前記上部導体は、前記上部導体に衝突する光の少なくとも30%を反射するように適合され、
前記光学層は、前記光パワービームに対する光学密度が2未満であり、
前記上部導体は、前記上部導体によって反射された光の少なくとも25%を、sin-1(1/下部容積の屈折率)よりも大きな角度に向けるように適合される、パワー変換デバイス。
【請求項8】
前記導体によって反射された光の少なくとも一部分が、前記上部容積の上面から全内部反射を受ける角度で反射される、請求項7に記載のパワー変換デバイス。
【請求項9】
前記光学層の前記上部体積は、屈折率が近似的に1の媒体から入来する前記光パワービームの反射を低減するように適合される反射防止コーティングである、請求項7及び8のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項10】
前記光学層の前記上部容積はスクラッチ抵抗性コーティングである、請求項7から9のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項11】
前記上面に対する法線に対して少なくとも-10度~+10度の角度にわたって前記光パワービームの反射を低減するようにさらに適合される、請求項9に記載のパワー変換デバイス。
【請求項12】
前記上部導体によりカバーされる前記上部層のカバー比率は少なくとも4%である、請求項7から11のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項13】
前記導体は金属から作られる、請求項7から12のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項14】
前記導体は少なくとも部分的にアルミニウム、金、銀又は銅を含む、請求項13のパワー変換デバイス。
【請求項15】
前記半導体デバイスの前記上面へ少なくともsin-1(1/前記下部容積の屈折率)の角度で整列している前記導体の部分の幾何学的突起の面積は、前記半導体デバイスの面積に、前記上部導体によって覆われる前記上面のカバー比率を乗じたものの少なくとも25%である、請求項7から14のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項16】
前記パワー変換デバイスからのレーザ反射は拡散性である、請求項7から15のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項17】
前記パワー変換デバイスからの拡散性の反射は、少なくとも1.5ミリラジアンの視角を有する、請求項16に記載のパワー変換デバイス。
【請求項18】
メートル単位で測定された前記半導体デバイスの面積に、ジュールの二乗単位で測定された前記接合部のバンドギャップを乗じて、ワット単位で測定された前記セルの設計最大電力の三乗を乗じたものが、P×(バンドギャップ)A<214×10-30のように、214×10-30未満となる、請求項7から17のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項19】
前記上部導体は、指形状輪郭を有する導電性グリッドを含む、請求項7から18のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項20】
前記上部導体は、三角形の形状輪郭を有する導電性グリッドを含む、請求項7から18のいずれか一項に記載のパワー変換デバイス。
【請求項21】
レーザビームを使用した光無線送電に適合される光パワーを電力に変換するパワー変換デバイスであって、
前記レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルを含み、
前記光起電セルは、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部と、前記接合部に配置されるカバー層とを有し、
前記カバー層は、550nm~700nmの範囲内の波長を有する照明の吸収又は反射の少なくとも一方を行い、前記光起電セルに向けて前記レーザビームを透過させるべく適合される材料を含み、
前記レーザビームは700nm~1500nmの波長を有し、
前記レーザビームの前記波長に対する前記カバー層の透過率が、550nm~700nmの範囲内の波長に対する前記カバー層の透過率よりも少なくとも50%高く、
前記パワー変換デバイスは、前記レーザビームの前記波長での電力への変換効率が、波長550nmでの電力への変換効率の少なくとも2.5倍の大きさとなる、パワー変換デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電セルの分野に関し、詳しくは、無線電力システムにおいてレーザパワーソースからのビームを電気エネルギーに変換するべく適合される光起電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
PVセルとして知られる光起電セルは、光(可視又は不可視)を電気エネルギーに変換するべく多くのシステムにおいて設計されて使用される。無線電力供給システムにおいて、光起電セルは、送信器からセルに向けられるレーザ光を使用可能な電気に変換するべく使用される。かかるシステムにおいて、セルが受信するレーザ光の量を正確に測定することは、ビームの正しい目標を維持すること、システムの安全な動作を維持すること、光起電力セルが生成するパワーを使用可能な安定した電力に効率的に変換することのような、多くの理由のために重要である。
【0003】
典型的な光起電セルにおいて、光は、一以上のpn接合を使用して電気エネルギーに変換され、2つの電極を使用して当該セルから抽出される。下部電極は通常金属コーティングがされ、典型的に、上部電極には以下の2つのオプションが存在する。
(i)典型的にアルミニウム、銀又は金からなる金属グリッド。この金属グリッドは、直列抵抗は低いが当該グリッド自体に当たる光の一部を反射するので、当該セルへの入射を防止する。
(ii)インジウムスズ酸化物(ITO)のような、連続的なほぼ透明の導電性コーティング。この導電性コーティングは、当該セルに入射する光のほとんどを透過させるが、金属グリッド構造物よりも抵抗が高いので抵抗損失が高い。
【0004】
金属グリッドによれば、当該金属グリッドからの反射ゆえに抵抗損失と光学的損失との間のトレードオフが存在するのが典型的である。抵抗損失はV/Rによって測定される。ここで、Vはセルの電圧であり、Rは直列抵抗である。この抵抗損失は、セルの金属カバー率が増加するにつれて減少するが、光学的損失は、「シェーディング効果」として知られるように、セルの金属カバー率が増加するにつれて増加する。これらの2つの因子間には最適なバランスが存在するのが典型的である。このバランスは典型的に、光起電(Photovoltaic(PV))セルの予測されるセル照明及び電流に依存する。
【0005】
非特許文献1には、44.5%の日光から電気への変換効率を達成するPVセルが開発されたと記載されている。
【0006】
Greenらによれば(非特許文献2)、オランダのアムステルダムで2014年9月に開かれた第29回PV Solar Energy Conference and Exhibitionで発表された非特許文献3に公表されるように、報告された最高のPV効率は46%であった。
【0007】
非特許文献4には、導体グリッドから離れる光を集中させることによってグリッド損失を最小化するように設計される複合ガラス「レンズレット」が提案されている。かかる複合レンズレットパターンは、金属グリッドに対する正確な配置を必要とし、広くは使用されていない。
【0008】
かかる複合「レンズレット」光学系が使用されない限り、抵抗損失とシェーディング損失との間には通常のトレードオフが存在するので、典型的に光学的損失は2%~10%の範囲の結果となり、高濃度セルに対して同様の抵抗損失となる。
【0009】
現在入手可能なPV光学系をカバーする非特許文献5によるレビューおいて、金属グリッドに対する正確な配置を必要とする複合構造光学系を使用することなく、導体比率と光学的シェーディングとの間のトレードオフが解消すれば、光起電セルにおいてセル効率の3%~20%の改善が可能となるであろうことが述べられている。
【0010】
非特許文献6には、シェーディング損失を最小限にするシステムが記載されている。典型的に平坦な矩形形状の導電体よりもむしろ、丸みを帯びた指形状の導体の使用が提案されている。指形状により、PV素子表面から反射された入射光の多くは、PV素子表面へと戻され吸収される。
【0011】
先行技術のPVセル導体を最適化するべく、最適化画面がPV設計者によって使用される。そのようなグリッド計算機の一例が以下に示される。
https://www2.pvlighthouse.com.au/calculators/Grid%20calculator/Grid%20calculator.aspx
【0012】
かかるグリッド計算機を使用する場合、ユーザは、導電指の異なる形状(矩形、三角形、楕円形、疑似矩形)と、異なる材料、幅及び高さとを選ぶことができる。しかしながら、ユーザは、光学カバー層を選ぶことができないので、かかるコーティングを最適化することができない。このツールを使用してグリッドを最適化することにより、異なるセルの金属カバー率間の異なるトレードオフの比較が可能になる。同じウェブサイトが、シェーディング損失を、「シェーディング損失とは、光が太陽光セルに入射するのを防止する太陽光セルの上面に金属が存在することによって引き起こされる」と定義する。シェーディング損失は、当該上面の透明度によって決定される。この透明度は、平坦な上面に対しては、金属によりカバーされる上面の割合として定義される。透明度は、当該表面上の金属線の幅と当該金属線の間隔によって決定される。重要な実用上の限界は、特定のメタライゼーション技術に関連付けられる最小線幅である。同一の透明度であれば、狭い線幅の技術が指間隔を密にすることができるので、エミッタ抵抗損失が低減される。
【0013】
導体グリッドを最適化する現行の通常のアプローチは、非特許文献7からも学ぶことができる。当該オンライン参考文献の62ページには、「バスバーの最適幅(Wb)は、当該バスバーの抵抗損失がそのシャドーイング損失と等しいときに生じる」と述べられており、かかる損失を軽減するための業界周知の異なる方法が示されている。セル内の光トラッピングを増加させるための異なるオプションが説明されるが、反射光を再利用するためのオプションは言及されていない。
【0014】
しかしながら、かかる参考文献に記載されるPVセルが高効率を与える一方、これらのPVセルは一般に、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換するときの最大効率のために最適化されている。これは、レーザビームのパワーを電気エネルギーに変換することとは異なる技術要件を有し得る。
【0015】
したがって、先行技術のシステム及び方法の欠点の少なくともいくつかを克服する無線送信レーザビームを電力に変換する光起電力セルが必要とされている。
【0016】
本明細書の本セクション及び他セクションに言及される各刊行物の開示は、その全体がそれぞれ参照によりここに組み入れられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】“GaSb-Based Solar Cells for Full Solar Spectrum Energy Harvesting” by Lumb et al, published in Adv. Energy Mater. 2017, 1700345 (2017)
【非特許文献2】Prog. Photovolt: Res. Appl. 2017; 25:3-13, published online 28 November 2016 in Wiley Online Library (wileyonlinelibrary.com). DOI: 10.1002/pip.2855
【非特許文献3】“Comparison of direct growth and wafer bonding for the fabrication of GaInP/GaAs dual-junction solar cells on silicon” by T.N.D Tibbits et al
【非特許文献4】“Reduction of front-metallization grid shading in concentrator cells through laser micro-grooved cover glass” by Garcia-Linares, published in AIP Conference Proceedings 1679, 060001 (2016); doi: 10.1063/1.4931535
【非特許文献5】“Optics for concentrating photovoltaics: Trends, limits and opportunities for materials and design”, published in Renewable and Sustainable Energy Reviews, 60 (2016), pp.394-407 (2016))のK. Shanks
【非特許文献6】“Shading losses of solar-cell metal grids” to A. W. Blakers, published in the Journal of Applied Physics, Vol 71, 5237 (1992)
【非特許文献7】“Applied Photovoltaics”, by Stuart R. Wenham et al, 3rd edition copyrighted 2012
【発明の概要】
【0018】
本開示は、無線レーザパワー送信システム内で使用される新規な例示的システムを記載する。このシステムは、レーザビームのパワーを電気エネルギーに変換するときに使用されるカバー層を有するPVセルを含む。本開示に記載される構成は、以下のいくつかの目的を同時に達成することによって、光起電効率の改善、安全性の向上、及びこれらのPVセルを使用して行われるパワー測定の正確性を求める。
a)金属指カバー率とシェーディング(シャドーイング)との間の依存性の低減。
b)セルからの反射光量の低減。
c)反射光の電気エネルギーへの再利用。
d)導体の直列抵抗における抵抗損失の低減。
e)異なる角度から照明されるときの光起電セルを使用したレーザパワー測定の正確性の改善。
f)屋外、屋内又は熱源近くのような異なる照明条件において使用されるときの光起電セルを使用したレーザパワー測定の正確性の改善。
g)指向性送信レーザパワーがその意図された受信器に意図されたパワーレベルで到達していることの確認。すなわち、不合理なレベルのパワーが経路中に「迷い込んで」いないことの確認。
【0019】
多くの場合、無線レーザパワー送信システムのビーム照準メカニズム、及び/又はシステムの安全メカニズムは、光起電セルが受信するレーザパワーの正確な測定に依存する。例えば、PVからの最大電力が生成されるまでずっとレーザの照準が調整される場合、セルがある瞬間に照明されるが次の瞬間には照明されない場合のように、時間の一部分での測定にバイアスを与え得る太陽光によって正確な照準が損なわれ得る。安全性がパワー測定に依存するシステムにおいて、異なる方向からの照明は、同様のパワー測定結果を与えるように最適化されるべきであり、太陽光又は熱源が、小さな安全限界を超えて測定結果にバイアスを与えてはならない。本開示のデバイスは、測定が照明方向から、及びシステムを照明し得る異なる波長の他光源から、本質的に独立であることを許容する。
【0020】
光起電セルによって反射された光が前面及び導体の双方から収集され、金属グリッドによってカバーされないセル領域に向けられる場合、金属グリッドのカバー率を増加させることにより抵抗損失を減少させることが可能であり、同時にシェーディング効果を低減し、ビームの方向から、さらにはビーム均一性からも独立した態様での発生電力に基づく正確な光パワー推定が許容される。先行技術セルにおいてのような狭い導体を使用し、ビームが当該セルの一部分のみを照明する場合、当該狭い導体は、均一な照明の場合よりも大きな抵抗損失を生じるので、電力又は電流に基づく光パワー推定が不正確となる。他方、本説明の構成によれば、抵抗損失が低くなり得るので、電力測定に基づく光パワー推定が正確になる。
【0021】
しかしながら、光は、異なる方向から光起電セルに印加されてグリッドにより、グリッドの周期構造により引き起こされるのが典型的なブラッグ反射の数次を含み得る複合パターンで反射される。この効果は多くの問題をもたらす。第一に、反射光の損失により効率が低下する。第二に、反射光には安全上の危険性がある。第三に、反射光の量は照明方向に依存するので、光起電セルによる光パワー測定は不正確であり、安全性及び照準目的のための有用性が低くなる。多くの場合、システムの安全メカニズムは、光起電セルが受信するレーザパワーの正確な測定に依存する。
【0022】
ビーム方向変更時のPV再配向を含まない、すなわちPVが電力を最大にするべく自動的に傾斜することがない、典型的な無線電力システムにおいて、レーザは、ほぼ任意の方向からセルを照明することができる。かかるシステムは典型的に、セルの表面に対する法線から60度までで動作する。その結果、導体から反射された光は異なる角度に反射され、セルの法線から±70度程度又はそれ以上に広がり、主反射は入来ビームと反対の角度になる。ビームがPVのいずれの側からも入来できるように対称的な視野が維持される場合、当該視野の内側に位置する収集システムはいずれも、(光学素子の支持構造も含めて)透明でなければならず、そうでなければ、それらの方向から光を収集するセルの能力を妨げることになる。
【0023】
効率的な収集システムはまた、効率的であるためには、この視野内の様々な方向のかなりの部分をカバーしなければならないので、ビームが一方向から入射し、他方向に向けて反射ビームを発生する場合、収集システムが当該他方向の反射ビームを途中で捕捉して収集するためには、当該収集システムは不透明であるから、不可避的に、当該他方向から入来する入射光をブロックしなければならない。換言すれば、供用される視野の点で表現すると、当該視野に含まれる入射角はいずれも、何らかの方向に反射を生成する。この方向へ向かう光(又は反射光)を再利用する場合、不透明な収集システムを反射の方向に配置することにより、この方向を視野から有効に排除する必要がある。
【0024】
本発明の目的は、かかるシステムを導入し、当該システムの効率、照準正確性及び安全性を改善することにある。
【0025】
一つの例示的実装例において、PVにおける複数の導体の形状は、当該導体が広いパターンで光を反射するように選択される。典型的な構造は、主に、製造能力と、入射光の予測される視野、すなわち光が入来し得る角度とに依存するが、一般的な概念として、共通の平坦面、正方形又は矩形の導体グリッドが好ましくない一方、丸い及び三角形のグリッドが有利となる。
【0026】
本システムは、シェーディング損失を防止するべく最適の形状にされた複数の導体を有するPVを使用することができる。PVにおける当該複数の導体の形状は、それらが広いパターンで光を反射するように選択することができる。例えば、当該複数の導体は、丸まった指形状、又は三角形状としてよい。これにより、導体からの反射光が、吸収PVセルへと向けられるか、又はセルを覆うカバー層によって完全に内部反射されるので、システムの効率が向上する。これによりさらに、目に損傷を与え得るような危険な反射光がPVセルから反射されることが防止される。導体から反射された光が拡散されることにより、均一な態様で反射されることがないからである。
【0027】
本開示のPV構成は、カバー層が、そのインタフェイス面の両方の反射防止(AR)コーティング、すなわちカバー層と外側空気との間の外側ARコーティング、及びカバー層とPVセル材料の光吸収面との間の内側ARコーティング、によりコーティングされ得る点で、先行技術のPVとは著しく異なる。
【0028】
外側反射防止(AR)コーティングは、本質的に、赤外線が典型的なレーザビームの波長のみを透過させ、衝突する他のすべての波長、すなわち外部照明に存在する可能性が高くPVセルのレーザ波長測定する能力に影響を与える波長、を反射するように適合される。すなわち、ARコーティングは、例えば中及び遠赤外線又はUVの波長のような、PVセルが鈍感な波長を反射する必要はない。レーザ波長での測定に影響を与えることがないからである。
【0029】
加えて、カバー層は、ビームの波長以外の波長を吸収する材料を含むべきである。その結果、ARコーティングにより反射されない波長がいずれもカバー層によって吸収されるようになってPVセルのpn接合部に到達しないので、レーザパワー透過率の量の不正確な読みがもたらされることがない。よって、PVセルの上層もまた、カバー層自体と同様に、ARコーティングによって反射されなかったことにより半導体PVセル材料自体の上層に入射し得る可視波長に対して吸収性である必要がある。これは、十分に低いバンドギャップを有するPVセル材料の上層を選択することによって達成される。
【0030】
レーザビームの波長以外の波長がPV吸収セルのpn接合に到達するのをブロックする一つの目的は、受信器が送信器のための安全パワーメーターとして作用しているとき、この受信器は、衝突するレーザビームの量の正確な読みを与える必要があるということである。すなわち、他の入射照明は、この測定を妨害してはならないので、吸収PVセルに衝突する前にブロックされるべきである。
【0031】
さらに、カバー層は高い屈折率を有する必要がある。これにより、全内部反射(TIR)の臨界角を下げ、カバー層に入射して当該表面及び導体から反射されるレーザビームができるだけ多く捕捉するためである。この効果については以下で詳しく説明する。これは、吸収PVセルに到達する照明の量を最大にすることを目的とする。導体から反射されるビームの一部分がカバー層から再反射されることにより、カバー層がなかった場合に生じていたであろうPVセルからの漏洩を防止することができるからである。
【0032】
これはまた、PVセル表面と導体との間のカバー層の内部での多重反射、及びカバー層の上部からの全内部反射の後にPVセルから出る光がいずれも、異なる「ランダムな」方向及び位置になるという利点を有する。これは、ビームを均一な態様で反射する従来技術のPV構成とは対照的である。
【0033】
カバー層の底部となる吸収PV層の上部もまた、カバー層から衝突する光のPVセル材料への吸収を最大にするARコーティングによって覆われてよい。
【0034】
さらなる実装例によれば、そして二重反射防止被覆カバー層により与えられる利点を使用すれば、送信器、受信器及び制御ユニットを含む無線光送電システムが記載される。ここで、
a)送信器は、ビームを放出するように適合されるレーザと、当該ビームを受信器に向けて操舵するように適合されるスキャンミラーとを含み、
b)受信器は、バンドギャップエネルギーが0.75eV~1.2eVの少なくとも一つの接合部を有する光起電セルと、当該受信器に衝突するレーザビームのパワーを、当該レーザビームの波長の範囲外の波長の照明から独立して検出するように適合される検出ユニットとを含み、
c)制御ユニットは、検出ユニットから信号を受信し、(i)レーザが放出するビームのパワー、及び(ii)スキャンミラーの位置のうちの少なくとも一方と相互作用するように適合される。
【0035】
検出ユニットはその後、受信器に衝突するレーザビームのパワーを表す信号を生成する。この信号は有利なことに、レーザビームの波長の外側の波長の照明から独立である。
【0036】
制御ユニットはその後、この信号を使用して、2つの機能的に別個の態様で動作することができる。一実装例において、制御ユニットは、この信号を使用して、(i)ビームのパワー、及び(ii)「スキャン」ミラーの位置のうちの少なくとも一方を制御し、これらが受信器に最適な照準出力を与えるように調整されるようにする。これは、システムの究極的な標的すなわち受信器において最適なパワー入力を与えるようにシステムを積極的に制御又は「調整」するように動作する、制御システムの従来の役割である。
【0037】
用語「スキャンミラー」は、ここでは、任意の可動ミラーを示すために使用される。この用語は、周囲をスキャンするというよりもむしろ、位置が固定されたミラー、又は荷電ビームの照準を受信器に向けるべくゆっくりと動き、その照準を維持するミラーを含むことを意図し、機能が異なる「スキャン」ミラーの代替的な記載となる。
【0038】
第2の構成によれば、制御システムは、レーザパワービームが損傷を引き起こし得る意図しない方向に偏向されないことを確実にするべく、安全検証システムとして動作することもできる。このシステムは、レーザビームが所定パワーのビームを受信器に向けているはずであるが、受信器はそのパワーのすべて又は一部を受信しておらず、ビームパワーの少なくとも一部が意図しない方向に偏向されていることを示す状況について警告する。これは、制御システムが通常動作する役割とは逆の役割で、すなわちシステムの制御というよりはむしろシステム状態の検証を目的として、制御システムを使用することによって達成される。このモードにおいて、制御システムは、送信器における測定によりレーザが与えるように指示されている又は実際に与えている出力パワーに関する当該レーザからのデータを入力し、ビームが照準を合わせている方向に関するスキャンミラーからのデータを入力する。これらのデータはその後、制御器において結合され、そこで受信された実際のレーザパワーに関する検出器ユニットにおいて生成された信号と比較される。これらの2組のデータから予測されるレーザパワー間の所定の誤差又は損失のマージンよりも大きい偏差を、進行方向のビーム送信に関する、又はビーム経路内の障害物の存在が意図されたビームを減少若しくは偏向させることに関する安全警告状態を発動するべく使用することができる。
【0039】
カバー層
【0040】
カバー層は、導体上に有利に塗布することができ、このカバー層は、典型的には1.5を超え、好ましくは1.6若しくは1.65を超える高い屈折率を有するか、又は2を超える屈折率の半導体コーティング層を有するが、確実に1.3を超える屈折率を有する。
【0041】
一実装例において、カバー層は、ガラス層により覆われたポリマー層又は誘電体層からなる。カバー層は、均一な構成の光学層であるが、典型的には、上部体積及び下部体積を有し、多くの異なる透明層又は半透明層からなってもよく、以下の特性を有する。
【0042】
光学カバー層の上部容積は、典型的には空気である周囲環境と接触しているが、他の材料と接触してもよい。上部容積は多くの場合、カバー層の軟質の内部容積よりも保護的な硬質ガラス層である。加えて、内部光線が全内部反射を受ける確率を高めるべく、上部容積は主要容積よりも高い屈折率を有するように選択され得る。光学カバー層の下部は、PVの表面(典型的にはARコーティングを含む)及び上述した導体の双方と接触する。カバー層は、入来ビーム波長に対して可能な限り透明とする必要があり、ビームの波長に対して2未満の光学密度を必要とし、1未満又は0.5未満の光学密度が好ましい。いくつかの材料は、0.1未満又は0.01未満の光学密度を許容してもよいが、それにもかかわらず、カバー層は、ビームの波長を除く他の波長のほとんどをブロック、吸収又は反射するように構成する必要がある。これにより、太陽光又は他の照明源から入来し得る他の波長がpn接合部に到達するのが防止される。よって、これらの波長に対して少なくとも0.5の光学密度を有する必要がある。PVの上部は通常、ARコーティングにより覆われる。ARコーティングは典型的に、先行技術のPVにおいて、空気(約1の屈折率)とPV(典型的には2~4の屈折率)との間の反射を最小化するように適合される。
【0043】
本開示のセルの場合、下部ARコーティングは、ビームの波長に対するPV(屈折率2~4)と光学カバー層(屈折率1.5~2)との間のレーザ波長の反射を最小限にするように設計する必要があるが、同時に、これよりも短い波長及び長い波長をセルから離れるように反射する必要もある。双方のARコーティングを使用して、不要な波長を除去することができる。カバー層の上部は、空気(屈折率約1)とカバー層の上部との間のビームの反射を最小限にする一方で他の波長の反射を増加させるように適合されるARコーティングによって覆われてよい。
【0044】
カバー層は、PN接合部をレーザビーム自体ではない光から「遮蔽」する。これは、安全性及び照準測定精度にとって重要である。これは、そのような望ましくない光を吸収することによって、又はPVセルからそれを反射することによって、達成され得る。上述したように、カバー層のARコーティングがレーザ帯域の外側の外部照明を反射するので、カバー層は反射されないものをさらに吸収する。多くの場合、PN接合部は非常に長い波長に対して非効率的なので、かかる波長をブロックする必要がなくなる。
【0045】
グリッド自体の全体的な構造
【0046】
グリッド線の密度は、以下で説明するように、様々なパラメータに応じて選択する必要がある。
【0047】
グリッド線間の間隔が、動作波長を、カバー層の屈折率の2倍で割った値よりも大きい場合に有利となる。
d>λ/2n
ここで、dは導体線間の間隔、λは真空中の動作波長、nはカバー層の屈折率である。
【0048】
また、グリッド線間の間隔が真空中での動作波長の100倍よりも小さい場合にも有利となる。
d<100λ
【0049】
また、光学カバー層が、動作波長に対して最小の吸収であっても短い波長を吸収するように選択されることも好ましい。
【0050】
導体を拡散コーティングにより被覆すれば、上記寸法拘束を緩和することができる。
【0051】
物理学の説明
【0052】
先行技術の光起電セルのグリッドから光が反射される場合、その光は未知の角度で反射されるので、通常は回復不能である。入来ビームを妨害しないであろう光収集システムの構築は、不可能ではないにしても困難である。同時に、先行技術の光起電セルを直射日光の下に置く場合、太陽光の100mW/cmが電力に変換され、レーザパワーの読み取りが不正確になり、安全性及び照準動作に影響を与え得る。
【0053】
本開示の光起電セルは、先行技術のPVセルの上記欠点の多くを克服する4つの別個の設計特徴を利用する。
1.入来ビームは、使用されるカバー層の高屈折率ゆえに低減された視野で導体に当たる。スネルの法則によれば、ビーム角はsin(θ1)=n1/n2×sin(θ2)だけ低減されるので、カバー層内の最大視野よりも大きな角度で反射された光は、視野をブロックすることなく当該セルに向かって反射されるように操作され得る。
2.グリッド構造は、その密なグリッド線により、及び各導体の構造により、入来ビームの視野外で反射される光の量を増加させる役割を果たす。
3.カバー層は、収集及び反射のシステムとしての役割を果たす。ビームの大部分がカバー層による内部全反射を受け、光起電セルに向かって戻るように反射されるからである。
4.太陽光は、カバー層及びその関連ARコーティングによって吸収/反射されるので、パワー測定値に影響を与えることがない。
【0054】
カバー層の使用と上述した特徴とにより、レーザビームの光学的損失を低減することができる。光の一部を再利用する能力により、導体のカバーエリアの増加による抵抗損失の減少と、セルのフィルファクタの増加、並びに最大電力点電圧及び電流の増加とが許容されるので、デバイスをさらに改善することができる。
【0055】
光起電セルへの効率的反射を容易にするべく、カバー層の厚さは、光起電セルの幅未満とする必要がある。厚い場合、カバー層の側面から光が逃げてしまう。
【0056】
上記設計特徴はすべて、先行技術に記載された通常のシェーディングと比較して多くの「シェーディング」を有するグリッドを構築することを可能にする。
【0057】
単一の導体線の形状は、グリッドからの高次反射を最大限にするように選択する必要があり、これは典型的に、上述したとおりである。
【0058】
上部容積は、空気に対する、又は水若しくは真空のような予測される周囲材料に対する、ARコーティングを有する必要がある。
【0059】
赤外レーザによりセルを照明する場合の利点
【0060】
ここに記載されている特徴は特に、赤外レーザを電気エネルギーに変換するように設計される光起電セルにとって有用である。これは、かかるセルが与えるいくつかの利点による。
【0061】
第一に、かかるセルは典型的に、従来型太陽光セルが典型的にさらされる一太陽条件と比較して、単位面積当たり10倍から100倍のパワーによって照明される。CPVセルと比較して、本設計は広い視野を有し、太陽光に対する効率を意図的に減少させている。
【0062】
第二に、赤外レーザは低エネルギー光子に依存し、これは、通常の太陽光スペクトル最適化セルと比較して低電圧及び高電流を生成するpn接合部において低いバンドギャップを必要とする。電流が高いので、抵抗損失が顕著になる。
【0063】
かかるセルにおけるpn接合部は、十分に低いバンドギャップを有する材料を選択することによって、レーザビームの波長よりも長い長波長光子を「無視」するようにチューニングされる。その結果、加熱素子又は白熱灯のような熱源の近くに受信器が配置された場合、パワー、電流、電圧のような出力パラメータは、長波長赤外光子による影響をはるかに受けにくくなる。
【0064】
第三に、セルのエリア全体にわたって典型的に均一な太陽光放射とは異なり、レーザ放射は、集中したスポットを形成し、セルを「充填不足」にする傾向がある。レーザビームは一般に、多くの場合にガウス又は高次ガウスの減衰パワー曲線を有する近似的に円形、楕円形又は矩形形状を有する。不均一なパワー曲線は導体厚さの最適化を複雑にし、スキャンミラーによりPVが中心とされたパワー曲線が典型的に意味するのは、光パワーの大部分が集中しているセルの中心で生成された電子が高電流を生成することにより、存在する光パワーが少ないセルの周縁近くで吸収される光子に必要な導体と比較して、大きな厚さの導体ひいては低抵抗の導体が必要とされるということである。
【0065】
第四に、高パワーレーザのセルからの鏡面反射は、安全上の懸念をもたらす可能性があり、ブロックし又は拡散させることのいずれかが必要となる。いずれにせよ、本開示のセルからの反射は、低パワーであり、安全上の懸念を著しく低減する。
【0066】
無線パワービーム放射システムを使用してセルを照明する場合の利点
【0067】
電流セルは、無線電力システムのコンポーネントとして使用される場合に多くの利点を有する。典型的に、かかるシステムは、1~100ワット時の容量を有する電池を備えた携帯型電子デバイスに電力を与えることができる。典型的に、必要な充電電力は0.5~10Wのオーダーであり、これは、使用される1~30Wの充電ビームを必要とする。
【0068】
ビームの典型的な直径は数mmであり、ビームが小さくなるほど、1~10mの範囲に焦点を合わせ続けることが困難となる。よって、ビームの2~10%の非拡散反射は、顕著なリスク(20mW~1W)を伴う。したがって、導体が反射する光の総量を低減するのと同時に、その光を拡散させることが不可欠となる。セルからの反射を低減することも不可欠である。本セルは、通常2~10%の代わりに、典型的に1%までの反射を与える。
【0069】
したがって、本開示に記載のデバイスの例示的な実装によれば、レーザビームを使用した光無線送電に適合される電力に光パワーを変換するパワー変換デバイスが与えられ、このパワー変換デバイスは、
(i)レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルであって、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有する光起電セルと、
(ii)当該光起電セルに配置されるカバー層と
を含み、当該カバー層は、当該レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明の透過を、吸収又は反射のいずれかによって制限して当該レーザビームを当該光起電セルへと透過させるように適合される材料を含み、
当該レーザビームは700nm~1500nmの波長を有し、
当該レーザビームの波長の範囲外の照明の波長が550nm~700nmの範囲内にあり、
当該レーザビームの波長に対する当該カバー層の透過率が、550nm~700nmの範囲内の波長に対する当該カバー層の透過率よりも少なくとも50%高く、当該パワー変換デバイスは、当該レーザビームの波長での電力への変換効率が、550nmの波長での電力への変換効率の少なくとも2.5倍の高さとなる。
【0070】
かかるパワー変換デバイスにおいて、レーザの波長よりも少なくとも25%だけ長い任意の波長に対する光パワーの電力への変換効率が、当該レーザ波長での変換効率よりも4倍を超えて小さくなるように、バンドギャップエネルギーをレーザの波長にチューニングすることができる。上述したデバイスのいずれにおいても、カバー層はさらに、
(i)光起電セルから離れた当該カバー層の表面に配置される第1反射防止コーティングであって、当該レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、当該レーザビームを当該カバー層へと透過させるように適合される第1反射防止コーティング、又は
(ii)光起電セルの表面とカバー層との間に配置される第2反射防止コーティングであって、当該レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、当該レーザビームを当該光起電セルへと透過させるように適合される第2反射防止コーティングのうちの少なくとも一方を含んでよい。
【0071】
本開示に記載のなおもさらなる実装は、送信器、受信器及び制御ユニットを含む無線光送電システムの安全システムに対する。ここで、
(i)当該送信器は、
ビームを放出するように適合されるレーザと、
当該ビームを受信器へと操舵するべく適合されるスキャンミラーと
を含み、
(ii)当該受信器は、
レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルであって、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有する光起電セルと、
当該光起電セルに配置されるカバー層と
を含み、当該カバー層は、当該レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を、吸収又は反射のいずれかによって制限して当該レーザビームを当該光起電セルへと透過させるように適合される材料を含み、
(iii)当該制御ユニットは、スキャンミラーの位置を表す第1データを受信し、当該レーザによって放出されたビームのパワーを表す第2データを当該送信器から受信し、第1データ及び第2データから当該光起電セルに入射する予測パワーを決定し、当該予測パワーと当該光起電セルによって測定される当該受信器に衝突するレーザビームのパワーとを比較し、当該予測パワーが当該測定されるパワーから所定レベルを超えて逸脱する場合に起こり得る安全上の問題を示すように適合される。
【0072】
本願のさらに他の実施形態によれば、送信器及び受信器を含む無線光送電システムが与えられ、
当該送信器は、
ビームを放出するように適合されるレーザと、
当該ビームを受信器へと操舵するべく適合されるスキャンミラーと、
当該受信器における検出ユニットから信号を受信し、(i)当該レーザが放出するビームのパワー及び(ii)当該スキャンミラーの位置の少なくとも一方を制御するべく適合される制御ユニットと
を含み、
当該受信器は、
当該レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルを含み、当該光起電セルは、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有し、当該光起電セルは当該光起電セルに到達するレーザビームのパワーを検出するべく適合され、
当該受信器は、当該光起電セルに配置されるカバー層であって、当該レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を吸収又は反射して当該レーザビームを当該光起電セルへと透過させるべく適合される材料を含むカバー層と、
(i)前記光起電セルから離れた前記カバー層の表面に配置される第1反射防止コーティングであって、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、前記レーザビームを前記カバー層へと透過させるように適合される第1反射防止コーティング、又は
(ii)前記光起電セルの表面と前記カバー層との間に配置される第2反射防止コーティングであって、前記レーザビームの波長の範囲外の波長を有する照明を反射し、前記レーザビームを前記光起電セルへと透過させるように適合される第2反射防止コーティングのうちの少なくとも一方と
を含み、
当該検出ユニットは、当該レーザビームの波長以外の他の照明から独立して当該受信器に衝突するレーザビームのパワーを表す信号を生成し、当該制御ユニットは、当該受信器に衝突するパワーを維持するべく(i)当該ビーム及び(ii)当該スキャンミラーの位置の少なくとも一方を制御するべく適合される。
【0073】
本開示に記載されるレーザビームを使用する光無線送電のために適合される光パワーを電力に変換するなおもさらなるパワー変換デバイスは、
0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部を有するパワー変換デバイスであって、当該一つの接合部へとレーザ光が透過する外部層を有するパワー変換デバイスを含み得る。当該外部層は、当該外部層の表面の法線に対して±20°間の任意の方向から当該外部層を通るように照明される場合に少なくとも80%の効率で少なくとも第1波長を当該一つの接合部へと透過させるべく構成され、ここで、
(i)当該パワー変換デバイスの変換効率が少なくとも30%であり、当該第1波長が700nm~1500nmの近赤外波長であることと、
(ii)当該パワー変換デバイスの外部層は、550nm~700nmの第2波長の入射照明の一部分を反射又は吸収するべく構成され、その結果、第2波長の照明の60%未満が、当該外部層の表面の法線に対して±20°間の任意の方向から当該外部層を通して照明されたときに当該少なくとも一つの接合部に到達し、第2波長に対する当該パワー変換デバイスの変換効率が20%未満であることと、
(iii)当該パワー変換デバイスの外部層は、300nm~550nmの少なくとも第3波長を吸収又は反射するべく構成され、その結果、当該外部層の表面の法線に対して±20°間の任意の方向から当該外部層を通して照射されたときに当該少なくとも一つの接合部に到達する前に、第3波長のパワーの少なくとも50%が吸収され、第3波長に対する当該パワー変換デバイスの変換効率が10%未満であることと、
(iv)1500nm~2000nmの第4波長に対するパワー変換デバイスの変換効率が5%未満であることと
の少なくとも一つである。
【0074】
本開示に記載されるように、光パワービームを電力に変換するパワー変換デバイスのさらなる他の実施形態は、
(i)当該光パワービームを吸収するべく適合されるpn接合部を有する半導体デバイスと、
(ii)当該半導体デバイスと電気的に接触する上部導体及び下部導体であって、当該上部導体は当該半導体デバイスの上面の一部分を覆う上部導体及び下部導体と、
(iii)当該半導体デバイスの上面に配置される光学層であって、当該光学層は上部容積及び下部容積を含み、当該下部容積は当該半導体デバイスの上面と光学的に接触し、当該半導体デバイスの当該上部導体と光学的に接触し、当該上部容積は空気と光学的に接触する、光学層と
を含んでよく、
(a)当該上部導体は、当該上部導体に衝突する光の少なくとも30%を反射するように適合され、
(b)当該光学層は、当該光パワービームに対する光学密度が2未満であり、
(c)当該上部導体は、当該上部導体によって反射された光の少なくとも25%を、sin-1(1/下部容積の屈折率)よりも大きな角度に向けるように適合される。
【0075】
かかるパワー変換デバイスにおいて、導体によって反射された光の少なくとも一部分は、上部体積の上面から内部全反射を受ける角度で反射されてよい。光学層自体の上部体積は、屈折率が近似的に1の媒体から入来する光パワービームの反射を低減するように適合される反射防止コーティングとしてよい。光学層の上部容積はさらに、スクラッチ抵抗性コーティングとしてよい。反射防止コーティングの場合、上面に対する法線に対して少なくとも-10度~+10度の角度にわたって当該光パワービームの反射を低減するようにさらに適合してよい。
【0076】
加えて、上述したパワー変換デバイスのいずれにおいても、上部導体によって覆われる上面のカバー比率は、少なくとも4%としてよい。導体自体は金属製であってよく、少なくとも部分的にアルミニウム、金、銀又は銅を含んでよい。
【0077】
さらに、上述したパワー変換デバイスにおいて、当該半導体デバイスの上面へ少なくともsin-1(1/下部容積の屈折率)の角度で整列している当該導体の部分の幾何学的突起の面積は、当該半導体デバイスの面積に、上部導体によって覆われる上面のカバー比率を乗じたものの少なくとも25%としてよい。
【0078】
かかるパワー変換デバイスのさらなる他の実装によれば、パワー変換デバイスからのレーザ反射を拡散させることができる。かかる場合において、パワー変換デバイスからの拡散反射は、少なくとも1.5ミリラジアンの視角を有し得る。さらに、m単位で測定された半導体デバイスの面積に、ジュールの二乗単位で測定された接合部のバンドギャップを乗じて、ワット単位で測定された当該セルの設計最大電力の三乗を乗じたものが、P×(バンドギャップ)A<214×10-30のように、214×10-30未満となる。
【0079】
上述したパワー変換デバイスのいずれにおいても、上部導体は、指形状の輪郭又は三角形状の輪郭を有する導電性グリッドを含み得る。
【0080】
最後に、本開示に記載のさらなる他の実装によれば、レーザビームを使用した光無線送電に適合される電力に光パワーを変換するパワー変換デバイスが与えられ、このパワー変換デバイスは、
レーザビームを受信するべく適合される表面に複数の導体を有する光起電セルであって、0.75eV~1.2eVのバンドギャップエネルギーを有する少なくとも一つの接合部と、当該接合部の上に配置されるカバー層とを有する光起電セルを含み、ここで、
当該カバー層は、550nm~700nmの範囲内の波長を有する照明の吸収又は反射の少なくとも一方を行い、当該光起電セルに向けて当該レーザビームを透過させるべく適合される材料を含み、当該レーザビームは700nm~1500nmの波長を有し、
当該レーザ光の波長に対する当該カバー層の透過率が、550nm~700nmの範囲内の波長に対する当該カバー層の透過率よりも少なくとも50%高く、
当該パワー変換デバイスは、当該レーザビームの波長での電力への変換効率が、波長550nmでの電力への変換効率の少なくとも2.5倍の大きさとなる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
本発明は、図面と併用することにより、以下の詳細な説明からさらに完全に理解及び理解されるであろう。
【0082】
図1】先行技術の光起電セルの典型的な構造を模式的に示す。
図2図1に示されるタイプの先行技術の矩形グリッド光起電セルにおける入射ビームのブラッグ反射の最初の2つの次数を模式的に示す。
図3】光起電セルの表面からの典型的な多次反射の表現を示す。少なくとも20次の反射が可視である。
図4A-4C】PVセルにおいて使用される模式的な代替的なグリッド輪郭と、各輪郭によって生成される反射ビームパターンの模式的な表現とを示す。
図5】本開示に関連する光起電セルの特徴を示し、使用される用語を図示する。
図6A-6B】高屈折率カバー層の、光起電セルに衝突する入来ビーム角度の入射への影響を示す。
図7A】本開示に係る光起電セルに衝突する代表的な光線への、カバー層、及び導体指の形状の影響を示す。
図7B】本開示に係る光起電セルの一実装を示す。カバー層の両側に反射防止コーティングが付加されている。
図7C-7D】コリメート光ビームと眼のレンズに衝突する拡散光ビームとの間の視角の差異を模式的に示す。
図8A-8B】光起電セルからの反射を模式的に示し、これは人間の眼に衝突するときに、反射されたコリメートビームの経路をたどる。
図8C】本開示の一実施形態における光起電セルのカバー層から漏洩する少数の代表的な反射拡散ビームの経路を図式化する。
図9】レーザビームが所定パワーのビームを受信器の方向に向けていると想定される状況の警告を与える安全制御システムを示す。この受信器は、まだ当該パワーの全部又は一部を受信しておらず、当該ビームが意図しない方向に向けられていることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
ここで、光起電セルの典型的な構造を模式的に示す図1を参照する。光起電セルは、p型半導体13が、n型半導体11に取り付けられ又は場合によってはn型半導体11に近接するが依然として他層によって分離されたものから作られてpn接合部12を形成する。完全な金属の接点がセル14の背面に配置され、グリッド(又は同様の構造物)15の形態の部分的な金属接点が当該セルの前面に配置される。これにより、光が導体間の空間を貫通することが許容される。入射照明が、負荷を通る電流16を生成する。
【0084】
ここで図2を参照すると、先行技術の矩形グリッド光起電セル21での入射ビーム23のブラッグ反射の最初の2つの次数が模式的に示される。光起電セル21の金属グリッド22に衝突する入来ビーム23は、ビーム21におけるパワーの約2~10%が、ブラッグパターンにある導体グリッド22によって反射される。これには、図2に示されるゼロ次24及び1次25のようないくつかの次数が含まれる。
【0085】
ここで図3を参照すると、先行技術の光起電セルの表面32からの、かかる典型的な多次反射31が示される。少なくとも20次の反射が可視である。各「次数」におけるパワーは、照明の角度に非常に大きく依存し、安全性及び照準の問題を引き起こす。全反射はゼロ次反射から約5度にわたり、ゼロ次反射は最も強い反射である。反射の次数が高いほど、次数が低い場合に比べて含まれるパワーが小さくなる。これは特に、光学カバー層の臨界角を上回る高次モードへの反射が好ましい本発明のセルとは異なる。
【0086】
ここで図4A図4B及び図4Cを参照する。PVセルにおいて使用される代替的なグリッド輪郭が模式的に示される。図4Aは、矩形導体のグリッドからの反射を示す。この反射は、入来ビーム角度に対向する角度で生成される。図4Bは、三角形反射器からの反射率を示す。この三角形反射器は、ビームを2つの広角ビームに分割し、小さな視野(FOV)で良好に機能する。図4Cは、広い角度にわたって広がる丸みのある導体からの反射を示す。好ましい実装(図4A図4Cには示さず)は、拡散性の上部層により覆われた導体であり、これは、放射を非常に広いパターンで広げ得る。
【0087】
図4B及び図4Cに示される構造、並びに導体上の拡散性コーティングは、グリッドからの高次反射を高めるので、反射光の「再利用」を高める。理解すべきことだが、完全な幾何学的形状を製造することは一般的に不可能であり、かかる図示は単純な例としての役割を果たす。拡散性の、円形の、又は三角形の形状のような、広いFOVにわたって光を広げるパターンを選択することが好ましい。しきい角度よりも大きい反射器傾斜を有する三角形のような、光の顕著なパーセンテージを広い角度に反射する形状が好ましい。導体は典型的に、入射する光の少なくとも30%を反射する金属のような反射性材料から作られる。典型的には、アルミニウム、銀又は金のような光の少なくとも90%を反射する材料が選択される。導体は、拡散性コーティングにより覆われてよい。
【0088】
ここで図5を参照すると、本開示において使用される用語が説明される。反射光の角度依存性が、導体52の他に背面電極及びpn接合部を有するPV51における指形状導体に対する入射光の関数として示される。角度55は、導体上の点56において指導体の表面に接する線57と法線58との交差によって形成される局所角度である。導体52によってPVの上面59に投影されるエリアがPVの下に示され、番号53が付されている。角度がしきい値未満である導体52の一部によってPV表面上に投影されるエリアがPVの下に示され、番号54が付される。
【0089】
ここで図6A及び図6Bを参照すると、本願において提案されるように、高屈折率カバー層を有しない既知のPVセル62の入来ビーム角度61aと、高屈折率カバー層63を有するセル64の入来ビーム角度61bとの差異が示される。それぞれが、図6Aのビーム61a又は図6Bのビーム61bのいずれかの光ビームによって照明される。ビーム61bは、透明コーティング層であり光学カバー層と称されるカバー層63を通過する。光学カバー層63の上部は、ビーム61bの反射を低減する反射防止コーティングとしてよく、当該反射の大部分が光学カバー層63に入ることが許容される。光学カバー層63の下面65は、セル64のPN接合部の上部及びセル64の導体(図示せず)の双方と接触している。光学カバー層63の下部65とセル64との間に反射防止コーティングが存在する。これは、光学カバー層63の下部65の屈折率からセル64の上部へと横断するときに光ビーム61bの反射を低減するように適合される。光学カバー層63は、典型的に高屈折率であり、パワーの少なくとも80%が通過することを許容する光学密度を有するのが好ましく、光学ビーム61bに対して測定されたときに2未満の光学密度を有する。光ビーム61bは、コーティング層63の高屈折率ゆえに、61bに平行なビーム61aがセル62に入射する角度と比べて小さい入射角度でセル64の上面に到達する。コーティング層63の厚さは、セル64の幅未満とするべきである。
【0090】
ここで図7Aを参照すると、カバー層78が追加された図5において上で示されたものと同様の光起電セル71が示される。この図は、PV構造物に衝突したときに入射ビームが取り得る異なる経路を示す。ビーム79a、79b、79c及び79gが、同じ導体カバー率を有する既知のPVセルに存在する場合に、セル71によって吸収されることが示される。他方、ビーム79dは、導体72の側面によって反射されるように示され、セル71によって即時に吸収される。ビーム79eは、先行技術の矩形導体に衝突した場合に起こることと同様の態様で、導体72の上部によって反射されてデバイスから漏洩するように示される。すなわち、当該反射は失われ、電気エネルギーに変換されない。ビーム79fは、先行技術のPVセルにおいてビームが失われる結果になる角度で導体から反射されるように示される。しかしながら、電流PVがカバー層78により覆われているので、ビーム79fは、カバー層78の上面の内側に、当該上面境界に対する臨界角よりも大きな入射角で衝突し、ひいてはビーム79f’としてPV表面に向かって戻るように反射され、失われる代わりに、図7Aに典型的に示されるような付加的な反射の後でさえ、セルによって吸収される。光学導体72は、先行技術のセルにおける同様の導体よりも幅が広いので、先行技術の導体と比較して低抵抗及び高反射となる。光学導体72の形状は、光学カバー層78の下部の屈折率に基づいて計算される臨界角の80%を超える角度で傾斜した当該導体の部分の投影面積を最大限にするように設計される。かかる角度での反射は、最終的にセルに再び到達するので、当該セルにより吸収されて電力に変換される確率が高くなる。導体72は典型的に、80から90%を超える反射率を有するが、場合によっては、これよりも低い反射率を有し得る。導体72は、アルミニウム、銀、金、モリブデン、銅、ニッケル、又はタングステンのような金属から作られてよく、オパールコーティングのような拡散性コーティングによりコーティングされてもよい。代替的に、導体は、その上に堆積された小さな反射構造物又は粒子を有してよい。複数の導体72は、当該導体からの反射が、光学カバー層78の下部の屈折率に基づいて計算される臨界角の80%を超える次数まで最大化されるように間隔が空けられる。かかる間隔は典型的に、0.5波長/屈折率を超え、100波長未満である。
【0091】
図7A及び先の図5並びにそれに続く図7B及び図8Cにおける導体が指形状として示されているが、これらの導体はまた、図4Bの三角形の形状のような、カバー層78内にビームの多数の内部反射を与える任意の他の適切な輪郭を有し得ることも理解されるべきである。
【0092】
ここで、本開示による図7AのPVセルを示す図7Bを参照すると、カバー層78の上面及び下面に反射防止コーティング73、74が加えられる。
【0093】
ここで図7Cを参照すると、見かけの光源の視角の顕著性が示される。これは、空間内の一点から見たときに、見かけの光源によって張られる角度である。具体的に、人間の眼の解像度は、典型的な網膜光受容体が近似的に1.1ミリラジアンの周囲環境の視角を見るようにされる。この計算は、単一の網膜光受容体細胞の外側セグメントが半径約25ミクロンであり、人間の眼の有効焦点距離が水性環境で約17ミリメートルであり、空気中で約22ミリメートルに相当するという事実に由来する。1.1ミリラジアンの視角を有する光源は、単一の網膜細胞に焦点を合わせることができるので、光源からの全パワーは、同じ細胞によって吸収され得る。これよりも小さい視角を有する光源は、依然として単一の光受容体によって吸収される。しかしながら、光学品質が低い結果、大きな視角を有する光源は、小さなスポットに焦点を合わせることができない。すなわち、かかる光源を単一の生物細胞に合焦させることは不可能であり、その結果、大きな視角を有する光源がもたらす危険性は小さくなる。換言すれば、単一の網膜細胞が約4×10-6ステラジアンを占有する。1.5ステラジアンの視角を有する拡散光源からの放射は、少なくとも2つの網膜細胞にわたって分布すると予測されるので、網膜リスクが近似的に半分となり、安全である。
【0094】
ここで図7Cを詳細に参照すると、PV71aが、当該PVを拡散態様で照明する光の一部分を反射する。PV71aの前方の窓の表面から100mmに配置されたレンズ75は、当該光ビームを当該レンズの焦点における光点77に収束させる。PV71aがTEM00レーザと同様の高品質光ビームを反射するとすれば、レンズ75は、当該光を回折制限スポットに合焦させる。像の上部と、レンズの中心と、像の下部との間に張られる角度70は0に近い。
【0095】
他の可能なシナリオが図7Dに示される。ここで、PV71aは、当初のレーザビームの光学的品質を保存する代わりに、像を拡散的に反射している。かかる場合、レンズ75は回折制限スポットを生成せず、むしろPV71aの像76を生成し、角度70は明らかに大きくなる。
【0096】
レンズ75は典型的に、PVセルのまわりを、PVセルに近づき及びPVセルから遠ざかるように動くことによってビームの最小視角のポイントを位置決めし、所定距離でのビームの視角を決定する。
【0097】
上記の要件に加え、PVが照明レベルの変化に応答することが重要である。ビームパワーが高いほど、光起電セルは、光レベルの検出に基づく安全システムを許容するべく応答性が高くなければならない。PVの応答性を高くするには、セルの構造が、以下の式に従って、意図されたパワーレベルに整合するように適合される必要があることが見出されている。
1027×(バンドギャップ)A/d<214/P
【0098】
ここで、dは光起電セルにおいてビームの光子を吸収する層の厚さであり、メートル単位で測定される。
【0099】
バンドギャップは、pn接合部のバンドギャップエネルギーであり、ジュール単位で測定される。
【0100】
Aはメートル単位で測定される光起電セルの面積である。
【0101】
使用するセルが大きすぎる場合、セルの応答性が低下し、照明レベルの変化に対して十分な速さで応答できなくなる。
【0102】
dは通常300ミクロン未満の厚さであり、常に1000ミクロン未満の厚さであるから、これは以下のように単純化することができる。
1030×(バンドギャップ)A<214/P
【0103】
または、使いやすい形態では以下のようになる。
×(バンドギャップ)A<213×10-30
【0104】
ここで図8A及び図8Bを参照する。図8Aは、既知の特性を有する基準PVセル81aを示し、図8Bは、反射されたコリメートレーザ光の人間の眼への影響を示す。図8Aにおいて、光ビーム84はPVセル81aを照明し、光の大部分はセル81aによって吸収される一方、入射ビームの一部は当該セルによって眼85に向けて反射される。セル81aは、典型的には、当該セルに衝突する光の約2~10%を反射し、ほとんどが1次反射となる。ここで、平坦な表面に当たる光は、反射のようなミラーを生成し、入射角は戻り角に等しい。反射された光は、人間の眼85のレンズ88によって収集されていくつかの別個の小さな線を形成する。これらの線は、網膜86上の導体の像である。
【0105】
図8Bに示されるように、角膜及びレンズは、コリメートビームからの光89のストリップを小さな点に集束させ得るので、大きな局所的損傷をもたらす可能性がある。コリメートされたビームからの反射の発散が最小限であり、当該ビームが角膜87及びレンズ88の双方により屈折されるので、図7Cに示されるような、敏感な眼組織に収束し得る光エネルギーの強力なビームの集束という結果となる。かかる集束ビームは、ビームが網膜86に衝突する点80において損傷80をもたらす顕著な可能性を有する。
【0106】
ここで、本開示の実装に係るPVセル81bを模式的に示す図8Cを参照する。PVセル81aとは対照的に、PVセル81bは、非矩形の高度に凸状輪郭の導体82b及びカバー層83を使用する。セル81bは、一般に光の約10%までを反射する導体82bを含み、この導体は典型的な矩形導体よりも幅が広いが、導体82bは一定角度でビームを反射するので、一次反射の大部分は、光学カバー層の全内部反射角度より上にあり、したがって、当該セルに向かって戻るように反射され、ここで、その約90%が吸収される。当初のビームの約0.04%~2%が導体によって2回目に反射され、これらの光線89bは、光学カバー層83の外側で反射され得るが、ここでは拡散態様で反射される。眼のレンズ88は、拡散放出光89bのうちの少量を収集し、網膜上にセル81bの像を形成し得る。しかしながら、その像は単位面積当たりのパワーが著しく小さいので、網膜に対する危険性も著しく小さい。眼による光の最高収集は、最小の距離に存在する。人間の眼の最小焦点距離は約100~150mmであるから、最も危険な収集位置は当該セルから近似的に100~150mmの距離に存在する。
【0107】
図8Aにおける基準PVセルからの反射光を、図8Cに模式的に描かれる本開示の実装と比較すると、ビーム84は、セル81aに衝突するように示されたのと同じ角度からセル81bに接近する。対照的に、図8Cにおいて、ビームは、カバー層83を横切った後、カバー層83の下部の反射率に基づいて計算されるように、臨界角の80%を上回る角度で導体82bによって反射される。反射光線は、セル81aと比較してより高い効率でセル81bによって吸収され、最終的に光学カバー層83の上部を通って放出されるビームのパーセンテージは、導体82aによって反射されるパーセンテージと比較して低い。さらに、光学カバー層83の上部から放出された光線89bは拡散し、それぞれが異なる方向に放出される。したがって、図8Cにおいて眼85に衝突する光のパワーは、図8Aにおいて眼85により収集される光のパワーと比較して低くなる。図8Cにおいて、これらの光線は同じ方向に進行していないので、同じ位置に収束することがなく、それゆえ図7Dに示されるように眼85の網膜上に、網膜に対する危険性がはるかに低い拡散像を形成する。
【0108】
ここに記載されているデバイスは典型的に、1cm×1cmのサイズのセルが、拡散された後方反射を反射することを可能にするので、TEM00レーザのビームの導体からの反射は、当該セルの表面から100mmに配置されたf=25mmのレンズによって集束されたときに、その1/eの直径に張られる少なくとも1.5mRadの、典型的にはそれよりはるかに大きな、最小の像を形成する。したがって、網膜に対する危険性がはるかに少ない。さらに、ビームを拡散させることによって、本発明のセル構成は、レーザ源から受信した典型的には中心重み付けされたビームを、集中度が小さくかつ均一にすることを可能にする。すなわち、照明の均一性が改善されることにより、電流が短い距離からセルの周縁にある電流コレクタに流れることが可能となり、セルの完全な利用が可能となる。本発明のセルはまた、金属導電指を厚くすることができるので、抵抗損失を低くする結果となり、これは高光束の場合に有利な特徴となり、大部分のレーザパワー変換器の場合に当てはまる。
【0109】
ここで図9を参照すると、典型的にはレーザである送信器95が受信器91の方向に所定パワーのビームを向けているように想定されるが、当該受信器はそのパワーの全部又は一部を受信しておらず、当該ビームが意図しない方向に向けられていることを示す状況の場合に警告を与えるように構成される安全制御システム90が示される。制御システム90は、送信されたレーザビームが、その意図された受信器に到達していないか、又は正しい受信器に到達しているがパワーが過度に減少しているかにより、周囲に危険をもたらす可能性があることを表示又は警告する。制御器ユニット97は、送信器95に配置されることが最も有利であるが、図9に示されるように、システムにおける他の場所に、又は送信器がサービスを与える空間に配置されてもよく、受信器にある検出ユニット91から信号入力92を受信する。これは一般に、受信器にあるPVセルである。PVセルからの電力出力93からサンプリングされ得る信号92は、太陽光94のような他の光源からの顕著なレベルのパワーがPVセル91に降りかかり得る状況においても、レーザ波長を有する照明の、PVセルに降りかかるパワーレベルの当該部分を表す。制御ユニット97はまた、送信器にあるレーザ電源95からの信号も受信するように構成される。かかる信号は、レーザによってスキャンミラー96の位置から放出されるレーザビームのパワーを示す信号を示し、これらのシステムコンポーネントの設定は双方とも、ビーム化されたレーザパワーを受信器に供給するための動作要件によって決定される。レーザパワー設定及びミラースキャン位置が、所定パワーレベルが検出器ユニットから予測されることを示す場合であって、制御ユニットへの実際の入力が、所定量を超えることにより予測されるレベルを下回るパワーレベルを示す場合、当該ビームの一部が妨害されていて意図された受信器ターゲットに到達していないと仮定されるので、システムによる安全警告が発動される。
【0110】
理解すべきことだが、制御システムはまた、検出器ユニットにより測定されたパワーに応じて、スキャンミラーの設定を最適化し、レーザビームを受信器PVに集中したままにし、及び意図されたレーザパワーを供給するようにレーザを制御するべく、その従来の態様、すなわち逆方向で動作することもできる。
【0111】
当業者にわかることだが、本発明は、上で特に示されかつ述べられたものに限られない。むしろ、本発明の範囲は、上述された様々な特徴のコンビネーション及びサブコンビネーションの双方、並びに上記説明を読んで当業者に想到されるが先行技術には存在しない変形例及び修正例を含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
【国際調査報告】