IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンセルム(アンスティチュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル)の特許一覧 ▶ ウニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワジェームの特許一覧

特表2022-525670細胞死を検出するための超高感度方法
<>
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図1
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図2
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図3
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図4
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図5
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図6
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図7
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図8
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図9
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図10
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図11
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図12
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図13
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図14
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図15
  • 特表-細胞死を検出するための超高感度方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】細胞死を検出するための超高感度方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20220511BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220511BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20220511BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20220511BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/06
C12Q1/6888 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556536
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 FR2020050571
(87)【国際公開番号】W WO2020188216
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1902755
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.Igepal
4.Tergitol
(71)【出願人】
【識別番号】514282002
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】511307616
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワジェーム
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL SABATIER TOULOUSE III
【住所又は居所原語表記】118,ROUTE DE NARBONNE,F‐31400 TOULOUSE,FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロレル,アンリク
(72)【発明者】
【氏名】ラカゼットゥ,エリク
(72)【発明者】
【氏名】トゥリオル,クリスチアン
(72)【発明者】
【氏名】イアコヴォニ,ジャソン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、qPCR/定量的PCR、もしくはddPCR/デジタル液滴PCRを含むPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術、または少量のDNAを検出するための任意の他の技術(ナノストリングなど)を使用して、細胞死を検出するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞サンプル中の細胞死を定量化するための方法であって、
核由来のゲノムDNA断片上に存在する少なくとも1つの配列が、前記サンプルの細胞質抽出物から増幅されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
以下を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法:
-前記細胞サンプルからの細胞質抽出物の入手;
-前記細胞質抽出物中の少なくとも1つの配列の増幅;
-前記細胞質抽出物中に検出されたゲノムDNAの定量化。
【請求項3】
前記細胞質抽出物は、前記細胞サンプルを溶解緩衝液または低張緩衝液とインキュベートすることによって得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの配列は、ゲノム当たり1コピー中に存在するDNA配列であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの配列は、ゲノム当たり少なくとも2回存在するDNA配列であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの配列は、反復DNA配列であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反復DNA配列の少なくとも1つは、SINEおよびLINEから選択されることを特徴とする、請求項6に線の方法。
【請求項8】
定量的PCR、液滴デジタルPCR、ナノストリング技術、および多重化PCRから選択される、PCR技術または少量のDNAを検出するための技術によって、増幅が実施されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
定量的PCR、液滴デジタルPCR、または多重化PCRによって、前記増幅が実施されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9に記載の方法により、前記細胞サンプル中の細胞死を検出することを含む、細胞死に対する処理の有効性をモニターするための方法。
【請求項11】
請求項1~9に記載の方法により、前記細胞サンプル中の細胞死を検出することを含む、細胞死の過程を含む病状を診断する方法。
【請求項12】
以下を含む、化合物をスクリーニングする方法:
-少なくとも1つの化合物を用いた、細胞サンプルの処理;
-請求項1~9に記載の方法による、前記サンプル中の細胞死の検出。
【請求項13】
以下を含む、細胞サンプル中の細胞死を検出するためのキット:
-原形質膜を特異的に溶解または透過することが可能な、溶解緩衝液または低張緩衝液;
-ゲノムDNAを増幅する少なくとも1対のプライマー。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術:qPCR、すなわち定量的PCR;ddPCR、すなわち液滴デジタルPCRなど、または少量のDNAを検出するための任意の他の技術(ナノストリングなど)の使用によって細胞死を検出するための方法に関する。
【0002】
〔従来技術〕
細胞死は、細胞レベルおよび分子レベルでの構造の修飾を伴う、生命機能の不可逆的な停止である。この細胞死の過程は、多くの相対的に異なる方法で起こり得る(Gallouzziらの、Cell Death Differ,2018)。
【0003】
主に、アポトーシスを介した細胞死、すなわち細かく調節された一連の事象に従って起こる調節された細胞死と、死のシグナル(酸化ストレス、外因性ストレス、DNA損傷、ウイルス感染など)に応答して開始される細胞死、または各細胞が多かれ少なかれ決定された寿命を有する、組織恒常性の維持に関与するプログラムされた細胞死との区別がなされるであろう。
【0004】
その部分の壊死による死は、例えば凍結、高温、機械的損傷などのような、一般に「偶発的に」引き起こされる細胞プロセスの結果生じる。アポトーシスまたは壊死による応答の選択はまた、攻撃の強さに依存し得る。
【0005】
機構的には、アポトーシスによる死の間、以下が観察される:膜の変質、酵素シグナル(カスパーゼタンパク質の活性化など)、核および細胞質の濃縮、クロマチンの縮合、ミトコンドリア損傷、ならびに核DNAのヌクレオソーム間断片への断片化。興味深いことに、ほとんどの抗腫瘍薬は、アポトーシス現象を誘導し得る。
【0006】
対照的に、壊死細胞の形態学的基準は異なる。細胞膜が破壊されると、細胞に大量の水分が流入し、細胞内小器官が破壊される。その結果、リソソームおよびペルオキシソームから溶菌酵素が放出され、細胞の消化、DNAの分解、および細胞死に至る。
【0007】
アポトーシスまたは壊死によって細胞死に至る経路は、それぞれの機構の点で非常に異なっているが、これらの経路のそれぞれにおいて以下が観察されている:一本鎖や二本鎖の切断によるDNAの分解、およびヌクレオソーム間断片に徐々に分解されるか(アポトーシス)、またはランダムに徐々に分解される(壊死)高分子量DNA断片の生成。
【0008】
アポトーシスを検出するための方法は、それらがi)原形質膜の変質、ii)カスパーゼの活性化、iii)ミトコンドリア損傷、またはiv)DNAの断片化、を検出するかどうかに依存して、4つの主要な原理に分類され得る。
【0009】
カスパーゼの活性化に関して、カスパーゼによる切断のテトラペプチド部位の、蛍光レポーターまたは発光レポーターへの融合によって、カスパーゼ活性を測定することが可能である(Promega製のCaspase-Glo(登録商標)キットを挙げることができる)。この方法は迅速であり、使用が簡単であり、多数の供給者によって提供されるという利点を有する。しかしながら、この方法は高価であり、分光蛍光光度計またはルミノメーターを必要とし、カスパーゼ依存性アポトーシスの検出のみを可能にする。
【0010】
原形質膜の変質の検出のために、原形質膜の外層に露出したホスファチジルセリンの検出も、多数の供給者によって提案されている(Biolegend(登録商標)製のPacific Blue(商標)Annexin Vを挙げることができる)。原理は、アネキシンV(カルシウム依存的にホスファチジルセリンに特異的に結合するタンパク質)を、前記タンパク質の検出を可能にする、異なる(主に蛍光性の)レポーターと組み合わせて使用することである。分析は、フローサイトメトリー(FACS)または顕微鏡によって行う。この広く提案されている方法は、蛍光色素の幅広い選択を提供し、アポトーシス細胞および壊死細胞を検出することを可能にする。しかしながら、この方法はフローサイトメーターを必要とし、フローサイトメトリーにおける接着細胞のアポトーシスの定量化は、非常にデリケートである。顕微鏡の使用は、この問題を克服することができる。しかしながら、定量化はより困難である。したがって、この方法は、接着細胞にはあまり適していない。
【0011】
DNAの断片化を検出する方法の中で、まず、ゲル電気泳動後に挿入剤により可視化して、断片化DNAを可視化する方法を挙げることができる。原理は、ゲノムDNAの抽出、次いでアガロースゲル電気泳動(Apoptotic DNA Ladder Kit)による断片の分離にある。この方法は低コストであり、特定の高価な装置を必要としないという利点を有するが、この方法は極めて感度が低い。
【0012】
ELISAによってヒストンに結合した細胞質DNAを定量化するための方法、ならびにDNAおよびヒストンに対する抗体の使用についても言及する(Roche社のCell Death Detection ELISAキット)。この方法は、例えば、米国特許第5637465号に記載されている。実施するのは非常に簡単であるが、この方法は比較的手間がかかる。この方法は高コストにもかかわらず、その感度および検出範囲は制限される。
【0013】
Hooker et al., 2012 (Nucl Acids Res, 40(15)e113)、Hooker et al., 2009 (J Cell Mol Med, 13(5):948-958)およびStaley et al., 1997 (Cell Death Differ, 4:66-75)には、ヌクレアーゼの活性化後に形成される、平滑末端を有する断片を増幅することを可能にする「定量的ライゲーション媒介PCR」を用いて断片化DNAを検出する方法が記載されている。この手間がかかる方法は、複数のステップを必要とする。
【0014】
最後に、Botezatu et al., 2000 (Clin Chem 46(8):1078-1084)、Umetani et al., 2006 (Clin Chem 52(6):1062-1069)、Lou et al., Int J Mol Med 35: 72-80)、Fawzy et al., 2016 (J Egypt Natl Canc Inst, 28: 235-242)には、循環(すなわち遊離の)ゲノムDNAを検出/定量化するための方法、具体的には細胞死から生じるゲノムDNAを検出するための方法が記載されている。これらの方法は、定量的PCRによる反復「Alu」配列の増幅を含む。この方法において、DNAサンプルは、血清および血漿サンプルである。
【0015】
したがって、感度が高く、簡単かつ迅速であり、適度なコストを有し、接着細胞または懸濁液中の細胞、さらには組織に対しても作用する、細胞死を検出するための方法を開発する必要性が依然として存在する。
【0016】
〔発明の開示〕
本発明は、細胞質に存在する核由来のゲノムDNA断片の検出に基づく、細胞死を検出するための方法に関する。具体的には、本発明者らは、細胞質中の核由来のゲノムDNA断片の検出を可能にする、非常に感度の高い方法を開発した。
【0017】
PCRによってDNA断片を検出するための従来技術の方法とは異なり、DNA断片は全細胞抽出物(核+細胞質)中で、または血漿などの生物学的流体中で検出および定量化され、検出は細胞質抽出物において行われる。この細胞質抽出物は、核膜を透過性にすることなく細胞膜を溶解または透過性にするために、細胞サンプルを溶解緩衝液または低張緩衝液とインキュベートすることによって得られる。
【0018】
細胞質抽出物からの検出は、先行技術の方法と比較して、より迅速で、実施がより簡単で、より安価な方法を得ることを可能にする。
【0019】
細胞質抽出物は、細胞質含有物のすべてまたは一部に相当する。細胞死の過程が引き起こされると、細胞質抽出物は、死の過程が開始されなかった細胞と比較して、核由来のゲノムDNAに富む。
【0020】
細胞質中に存在する核由来のゲノムDNA断片の検出は、ゲノム中の少なくとも1つのコピーに存在する区域の増幅/検出によって測定される。したがって、これらのゲノムDNA断片は、有利にサンプル中で検出および定量化され得る。回収されたDNA断片の量は、サンプル中で死の過程が開始された細胞の量に比例し、したがって、この過程を検出および定量化することを可能にする。
【0021】
ゲノム中に存在する反復配列を標的とする特異的プライマーを用いた、細胞質中のゲノムDNA断片の検出は、本発明に係る方法の感度を増大させる。得られた比較結果は、当該感度が、既に市販されている既存の従来の方法で得られた感度よりも高いことを確かにする。
【0022】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することによって明らかになるであろう。
【0023】
図1は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたHepG2細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
【0024】
図2は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたOCI-AML3細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
【0025】
図3は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたOCI-AML3細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
【0026】
図4は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたMDA-MB-231細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
【0027】
図5は、従来技術のCaspase・Glo3/7法に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0028】
図6は、従来技術のフローサイトメトリー法(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0029】
図7は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCR(直接溶解)によって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0030】
図8は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0031】
図9は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCR(直接溶解)によって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0032】
図10は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度および飽和閾値の比較を表す。
【0033】
図11は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0034】
図12は、単離された細胞に対する、本発明に係るddPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
【0035】
図13は、ゲノム当たり1コピー中に存在する配列を標的とする1対のプライマーを用いて、異なる細胞株の細胞質抽出物において実現される細胞死の活性化のレベルを表す。
【0036】
図14は、ゲノム当たり2コピー中に存在する配列を標的とする1対のプライマーを用いて、異なる細胞株の細胞質抽出物において実現される細胞死の活性化のレベルを表す。
【0037】
図15は、ゲノム当たり1コピー中に存在する配列をそれぞれ標的とする2対のプライマーを用いて、OCI-AML3細胞株に由来する細胞質抽出物において実現される細胞死の活性化のレベルを表す。
【0038】
図16は、細胞質画分中のDNA断片の量の増加を示し、前記DNA断片は、本発明に係る方法において記載される溶解緩衝液で抽出した後に得られ、キャピラリー電気泳動によって検出され、このDNA断片の量の増加は、細胞死を誘導する薬物(スタウロスポリン)で処理されていない細胞(MDA NT)と比較すると、スタウロスポリンによって処理された細胞(MDA 50およびMDA 100)においてのみ見られる。
【0039】
〔詳細な説明〕
図面および以下の説明は、主に、特定の性質の要素を含む。したがって、それらは、本発明をより良く理解するために役立つだけでなく、必要に応じて、その定義にも寄与することができる。
【0040】
したがって、本発明は、核由来のゲノムDNA断片上に存在する少なくとも1つの配列が、細胞サンプル中の細胞質抽出物から増幅されることを特徴とする、前記サンプル中の細胞死を定量化するための方法に関する。
【0041】
具体的には、本発明者らは、核由来のゲノムDNA断片が細胞死の過程で細胞の細胞質中に位置するという、核由来のゲノムDNA断片の異常な存在を有利に利用した。したがって、核由来の断片化ゲノムDNAは、細胞の細胞質抽出物から検出され得る。
【0042】
本発明の目的に関する用語「細胞死」は、アポトーシスによる細胞死および/または壊死による細胞死を意味すると理解される。
【0043】
用語「ゲノムDNA断片」または「断片化ゲノムDNA」は、細胞死の過程で生成される、核由来のDNAの断片を意味すると理解される。
【0044】
細胞サンプルは、in vitro培養における細胞のサンプル(例えば、接着細胞もしくは懸濁液中の細胞)、循環腫瘍細胞を含むサンプル、精製された循環腫瘍細胞を含むサンプル、循環細胞を含む血液サンプル、または任意の他のサンプル(例えば、血漿サンプル、尿サンプル、もしくは唾液サンプル)であってもよい。
【0045】
一実施形態によれば、細胞サンプル中の細胞死を定量化するための方法は以下を含む:
-細胞サンプルからの細胞質抽出物の入手;
-前記細胞質抽出物中の少なくとも1つの配列の増幅;
-前記細胞質抽出物中において検出された、ゲノムDNAの定量化。
【0046】
用語「細胞質抽出物」は、核膜を変質させずに原形質膜を特異的に透過させた後、遠心分離することにより回収される、シトソールとも呼ばれる細胞の細胞質の可溶部分を意味するものと理解される。細胞質抽出物およびそれを得るための方法は、当業者に公知であり、先行技術、例えば、Suzuki, Keiko et al. "REAP: A two minute cell fractionation method." BMC research notes vol. 3 294. 10 Nov. 2010, doi:10.1186/1756-0500-3-294 or in Gary Zieve and Sheldon Penman, Small RNA species of the HeLa cell: Metabolism and subcellular localization Cell, May 1976, Pages 19-31に記載されている。
【0047】
典型的には、細胞質抽出物は、細胞サンプルを溶解緩衝液または低張緩衝液とインキュベートすることによって得られる。
【0048】
サンプルを溶解緩衝液とインキュベートすることにより、核膜を透過性にすることなく、原形質膜を溶解または透過性にすることが可能になるので有利である。
【0049】
したがって、本発明の目的に関する、用語「溶解緩衝液」は、核膜を透過性にすることなく、原形質膜を溶解または透過性にすることを可能にする任意の緩衝液を意味すると理解される。
【0050】
当業者は、適切な溶解緩衝液を選択することができる。典型的には、米国特許第5637465号に記載されているような、非イオン性界面活性剤を使用することができる。
【0051】
当業者はまた、核膜を透過性にすることなく、原形質膜を溶解または透過性にすることを可能にするのに適した緩衝液の濃度をどのように選択するかを知っている。
【0052】
典型的には、核膜を透過性にすることなく、原形質膜を溶解または透過性にすることを可能にするのに適した緩衝液の濃度を決定するために、当業者によって抗DNA抗体が使用され得る。
【0053】
死の過程が開始されなかった細胞を、界面活性剤の濃度を増加させて処理した後、これらの細胞を抗DNA抗体の存在下に置く。この抗体の核排除によって、核膜の完全性を確認し、さらに界面活性剤の最適濃度を決定することが可能となる。高すぎる濃度の界面活性剤は、核膜を透過性にし、抗体が核に浸透することを可能にし、したがって核DNAを検出することを可能にする。この方法は、核に位置するタンパク質を検出するための方法に基づいてモデル化される(Postfixation detergent treatment for immunofluorescence suppresses localization of some integral membrane proteins. Goldenthal KL, Hedman K, Chen JW, August JT, Willingham MC. J Histochem Cytochem. 1985 Aug; 33(8):813-20)。
【0054】
例として、溶解緩衝液は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、塩化ナトリウム、ジギトニンもしくはサポニンのようなサポニン、Tween-20、NP40、Tergitol、Triton X-100、Igepal CA630、Empigen、または組み合わせから選択してもよい。
【0055】
一実施形態によれば、溶解緩衝液は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、塩化ナトリウム、およびジギトニンの混合物である。
【0056】
これらの緩衝液は、核膜を透過性にすることなく、原形質膜を溶解または透過性にすることを可能にする。
【0057】
一実施形態では、溶解緩衝液は、50mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、5mMのエチレンジアミン四酢酸、150mMの塩化ナトリウム、および50μg/mlのジギトニンの混合物である。
【0058】
一実施形態によれば、細胞質抽出物は、以下の工程によって得ることができる:
-溶解緩衝液または低張緩衝液との、細胞サンプルのインキュベーション。
【0059】
-溶解した細胞サンプルの遠心分離または濾過。
【0060】
遠心分離または濾過の工程は、上清と細胞片の残部とに分離することを可能にする。
【0061】
「細胞質抽出物の画分」は、細胞質抽出物のアリコート画分に相当する。
【0062】
一実施形態によれば、細胞質抽出物の画分は、以下の工程によって得ることができる:
-溶解緩衝液または低張緩衝液との、細胞サンプルのインキュベーション;
-溶解した細胞サンプルの遠心分離または濾過;
-遠心分離または濾過の工程の後に得られる上清中の細胞質抽出物のアリコート画分の回収。
【0063】
一実施形態によれば、細胞質抽出物画分を得るための方法は、さらに、前記回収されたアリコート画分を少なくとも水で5倍、好ましくは水で10倍に、希釈する工程を含んでいてもよい。
【0064】
典型的には、希釈工程は、定量化方法がPCRによる定量化のための方法である場合に適用され得る。
【0065】
有利なことに、本発明者らは、核ゲノム上の1コピー中に存在する配列を標的とするプライマーを用いて、細胞質抽出物上の細胞死を検出することが可能であることを実証した。
【0066】
したがって、一実施形態によれば、本発明による細胞死を定量化するための方法は、前記少なくとも1つの配列が前記ゲノムDNA断片上の1コピー中に存在するDNA配列であることを特徴とする。
【0067】
本発明に係る細胞死を定量化するための方法は、また、核ゲノム中、2コピー以上中に存在する配列を標的とするプライマーを用いて、細胞質抽出物において細胞死を検出することを可能にする。
【0068】
例として、本発明に係る方法は、核ゲノム中、2コピー中に存在する配列を標的とするプライマーを用いて、細胞質抽出物において細胞死を検出することを可能にする。
【0069】
したがって、一実施形態によれば、本発明に係る細胞死の定量化するための方法は、前記少なくとも1つの配列が前記ゲノムDNA断片上の少なくとも2コピー中に存在するDNA配列であることを特徴とする。
【0070】
本発明に係る方法の感度は、反復DNA配列を細胞質ゲノムDNAの量を検出および定量化するためのマーカーとして使用する場合、前記反復DNA配列の数に比例して増加する。
【0071】
一実施形態によれば、本発明に係る細胞死を定量化するための方法は、前記少なくとも1つの配列が反復DNA配列であることを特徴とする。
【0072】
ゲノムDNAは、典型的には短鎖散在反復配列(small interspersed nuclear element、SINE)または長鎖散在反復配列(long interspersed nuclear element、LINE)であり得る反復配列を含む。
【0073】
SINEの中から、Alu、MIR、およびMIR3配列を選択し得る。
【0074】
LINEの中から、LINE1配列を選択し得る。
【0075】
したがって、一実施形態によれば、本発明に係る細胞死を定量化するための方法は、前記少なくとも1つの反復DNA配列がAlu、MIR、およびMIR3などのSINE、ならびにLINE1などのLINEから選択されることを特徴とする。
【0076】
本発明者らは、また、各対のプライマーが核ゲノム中に存在するDNA配列を標的とするプライマーのいくつかの対を用いて、細胞質抽出物において細胞死を検出することが可能であることを実証した。
【0077】
したがって、一実施形態によれば、本発明に係る細胞死を定量化するための方法は、いくつかの異なる配列が同時に増幅されることを特徴とする。
【0078】
当業者は、ゲノムDNA配列の検出および定量化を可能にする、任意のタイプの技術を使用することができる。
【0079】
ゲノムDNA断片の検出/定量化は、定量的PCR技術、または当業者に公知の少量のDNAを検出するための任意の他の技術によって実施され得る。
【0080】
一実施形態によれば、断片化ゲノムDNAの定量化および検出は、定量的PCR(qPCR)によって行われる。qPCRの原理は、挿入剤またはプローブ(Taqman(登録商標))を使用して、サンプル中に存在するDNA鋳型の量をリアルタイムで決定する可能性に基づく。放出される蛍光は、PCR反応の間に生成されるアンプリコンの量に正比例する。
【0081】
当業者は、qPCR技術を実施するための任意の装置を使用することができるであろう。例として、Roche(登録商標)社のLight Cycler 480リアルタイムPCRリーダーシステムを使用し得る。
【0082】
したがって、本発明に係る細胞死の定量化方法は、検出/定量化がqPCRによって行われることを特徴とする。
【0083】
一実施形態によれば、ゲノムDNA断片の定量化は、水滴デジタルPCR(ddPCR)によって行われる。ddPCRは、各サンプルを20,000の1nl液滴へ分割することに基づく、マイクロ流体PCRである。
【0084】
一実施形態によれば、ゲノムDNA断片の定量化は、ナノストリング技術によって行われる。ナノストリングの原理は、2つの鍵となる工程に基づいている。上流では、2つのプローブが目的の各標的に対して特異的に設計される。キャプチャプローブと呼ばれるプローブの1つは、計数用の支持体上に目的の分子を固定化するために使用される、ビオチンに結合される。「レポーター」と呼ばれる2つ目のプローブは、目的の分子に特異的である。それは、4つの異なる色からなる一連の6つの蛍光色素を含み、その配列は、目的の各分子に特異的であるバーコードを規定する。前記バーコードは、この技術の超高感度を可能にし、したがって、少量の生物学的物質を分析する可能性を可能にする(LABEX DEEP Nanostring platform)。
【0085】
一実施形態によれば、ゲノムDNA断片の定量化は、多重PCRまたは多重化によって行われる。多重PCRの実施に関して、ゲノム中に存在するいくつかの配列を同時に増幅するために、いくつかの対のプライマーのセットが使用される。
【0086】
一実施形態によれば、単一の配列は、例えば、センスプライマー5’CGCCTGGATCATGTCAAGTCA3’(配列番号1)およびアンチセンスプライマー5’AGGCTAAGTTAGGGCCTCTGC’(配列番号2)、またはセンスプライマー5’AACATAAGCTGAGGCCAGCCT3’(配列番号3)およびアンチセンスプライマー5’GTGTCTACTGCCAACCTGTGC3’(配列番号4)を使用して、検出および定量化される。
【0087】
一実施形態によれば、2コピー中に存在する配列は、センスプライマー5’TCTCCACAACACTTAGTGGACAGT3’(配列番号5)およびアンチセンスプライマー5’AGAGGAGGTGGTAGCTGGAGA3’(配列番号6)を使用して、検出および定量化される。
【0088】
一実施形態によれば、多重化は、例えば、配列番号1および配列番号2のプライマー対と、配列番号3および配列番号4のプライマー対を同時に使用して行うことができる。
【0089】
一実施形態によれば、Alu配列は、センスプライマー5’AGGTGAAACCCCGTCTCTACT3’(配列番号7)およびアンチセンスプライマー5’CCATTCTCCTGCCTCAGCCT3’(配列番号8)を使用して、検出および定量化される。
【0090】
一実施形態によれば、LINE1配列は、センスプライマー5’GTCAGTGTGGCGATTCCTCAG3’(配列番号9)およびアンチセンスプライマー5’AGTAATGGGATGGCTGGGTCAA3’(配列番号10)を使用して、またはセンスプライマー5’AACAACAGGTGCTGGAGAGGA3’(配列番号11)およびアンチセンスプライマー5’ATCGCCACACTGACTTCCACA3’(配列番号12)を使用して、検出および定量化される。
【0091】
一実施形態によれば、核酸の前記サンプルにおいて増幅された核酸の量は、対照サンプルの増幅された核酸の量と比較される。
【0092】
用語「対照サンプル」は、細胞死の過程が開始されていない細胞サンプルを意味すると理解される。
【0093】
典型的には、「対照サンプル」の増幅された核酸の量と比較した、前記「サンプル」中の増幅された核酸の量の増加は、細胞死を示す。
【0094】
本発明に係る細胞の細胞質中のDNA断片の検出による細胞死の定量化は、病状の診断、細胞死に対する処理の効果のモニタリング、病状の予後の取得、化合物のスクリーニングの実施、および細胞培養の条件の最適化を可能にする。
【0095】
したがって、本発明は、また、本発明に係る方法による細胞サンプル中の細胞死の検出を含む、細胞死に対する処理の有効性および/または効果をモニターするための方法に関する。
【0096】
この方法は、in vitro、in vivo、およびex vivo条件に適用される。
【0097】
典型的には、本発明は、処理に対する患者の反応をモニターすることを可能にする。細胞死の検出および定量化は、処理の有効性またはその欠如を示す。患者に由来するサンプルの増幅された核酸の量は、対照サンプルの増幅された核酸の量と比較され得、前記対照サンプルは、処理の実施前に得た患者に由来するサンプル、または病状を患っていない被験者に由来するサンプルであり得る。一般に、増幅された核酸の量の増加は、処理の有効性と同義であり、一方、有意な変動の欠如は、処理の失敗と同義であり得る。
【0098】
本発明は、また、本発明に係る方法による細胞サンプル中の細胞死の検出を含む、細胞死の過程を伴う病状を診断するための方法に関する。
【0099】
典型的には、細胞サンプル中の細胞死の活性化のレベルは、細胞死の過程を伴う病状を示す。患者に由来するサンプルの増幅された核酸の量は、対照サンプルの増幅された核酸の量と比較され得、前記対照サンプルは、病状を患っていない被験者に由来するサンプルであり得る。
【0100】
本発明は、また、本発明に係る方法による細胞サンプル中の細胞死の検出を含む、細胞死の過程を伴う病状の予後診断のための方法に関する。
【0101】
本発明は、また、以下を含む、化合物をスクリーニングするための方法に関する:
-1つ以上の化合物による細胞サンプルの処理;
-本発明に係る方法による前記サンプル中の細胞死の検出。
【0102】
本発明に係る方法は、細胞死を誘発する化合物を決定することを可能にする。
【0103】
本発明の対象はまた、以下を含む、細胞サンプル中の細胞死の検出のためのキットである:
-原形質膜を特異的に溶解または透過性にすることができる、溶解緩衝液または低張緩衝液;
-ゲノムDNAを増幅する少なくとも1対のプライマー。
【0104】
有利なことに、溶解緩衝液は、核膜を透過性にすることなく、原形質膜を溶解または透過性にすることを可能にする。
【0105】
溶解緩衝液およびプライマーは、上記の通りである。
【0106】
細胞サンプルは、in vitro培養の細胞のサンプル(例えば、接着細胞または懸濁液中の細胞)、循環腫瘍細胞を含むサンプル、精製された循環腫瘍細胞を含むサンプル、循環細胞を含む血液サンプル、または細胞死の過程が開始された細胞を含む任意のサンプル(例えば、血漿サンプル、尿サンプル、もしくは唾液サンプル)から選択され得る。
【0107】
同様に有利なことに、プライマーは、研究される種に特異的である。
【0108】
〔実施例〕
以下の実施例では、以下に詳述する材料および方法を使用した:
<方法>
所与のサンプル中の細胞死を測定するためのプロトコルを開発した。
【0109】
細胞死を引き起こす薬物によって処理されていない、または処理された細胞を起点とし、該細胞を、その分解の結果生じるDNAの小断片を培地中に放出するために、緩衝液を使用して溶解する。
【0110】
遠心分離または濾過の工程は、その分解の結果生じるDNAの断片を含む上清と、細胞片の残部とに分離することを可能にする。上清のアリコート画分、すなわち、細胞死を定量化するために使用される方法に応じて希釈され得る、細胞質抽出物の画分を、回収する。次いで、ゲノム全体に分散した反復配列を特異的に増幅するプライマーを使用して、またはゲノム上の1コピーもしくは2コピー中の配列を標的とするプライマーを使用して、サンプルに対してPCRを実施する。
【0111】
あるいは、細胞死を定量化するための該方法は、培養培地中で直接的に溶解された細胞から得られた、細胞質抽出物に対して実施され得る。
【0112】
細胞死を定量化するための方法が完了した後すぐに、結果を所定の対照条件と比較して分析する。最終結果は、2~3時間で得ることができる。
【0113】
<プライマー>
単一配列の検出および定量化を可能にするプライマー:
5’CGCCTGGATCATGTCAAGTCA3’(配列番号1)および
5’AGGCTAAGTTAGGGCCTCTGC3’(配列番号2)、
または
5’AACATAAGCTGAGGCCAGCCT3’(配列番号3)および
5’GTGTCTACTGCCAACCTGTGC3’(配列番号4)。
【0114】
ゲノム当たり2コピー存在する配列の検出および定量化を可能にするプライマー:
5’TCTCCACAACACTTAGTGGACAGT3’(配列番号5)および
5’AGAGGAGGTGGTAGCTGGAGA3’(配列番号6)。
【0115】
Alu反復配列の検出および定量化を可能にするプライマー:
5’AGGTGAAACCCCGTCTCTACT3’(配列番号7)
5’CCATTCTCCTGCCTCAGCCT3’(配列番号8)。
【0116】
LINE1反復配列の検出および定量化を可能にするプライマー:
5’GTCAGTGTGGCGATTCCTCAG3’(配列番号9)および
5’AGTAATGGGATGGCTGGGTCAA3’(配列番号10)
または
5’AACAACAGGTGCTGGAGAGGA3’(配列番号11)および
5’ATCGCCACACTGACTTCCACA3’(配列番号12)。
【0117】
<セル培養>
OCI-AML3細胞(懸濁液中)は、急性骨髄性白血病から得られる。それらを、ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)および10%ウシ胎仔血清(FCS-Gibco)が補充されたRPMI-1640培地(Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%COで培養する。
【0118】
HepG2(接着)細胞は、ヒト肝癌から得られる。それらを、ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)および10%ウシ胎仔血清(FCS-Gibco)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地-高グルコース培地(DMEM-Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%COで培養する。
【0119】
MDA-MB-231(接着)細胞は、上皮性乳腺腫瘍細胞である。それらを、ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)および10%ウシ胎仔血清(FCS-Gibco)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地-高グルコース培地(DMEM-Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%CO2で培養する。
【0120】
MOLM14細胞(懸濁液中)は、急性骨髄性白血病から得られる。それらを、ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)および10%ウシ胎仔血清(FCS-Gibco)が補充されたRPMI-1640培地(Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%CO2で培養する。
【0121】
HeLa細胞を、ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)および10%ウシ胎仔血清(FCS-Gibco)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地-低グルコース培地(DMEM-Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%CO2で培養した。
【0122】
<接種および処理>
懸濁液中の細胞(例えば、OCI-AML3)を、200,000細胞/mlで6ウェルプレートに接種する。次いで、細胞を、未処理のままにするか、または異なる濃度の異なる薬物で処理し、そして16時間インキュベートする。
【0123】
接着細胞(例えば、MDA-MB-231、HepG2)を、48ウェルプレート中の250μlの培地に、20,000~30,000細胞/ウェルで接種する。次いで、細胞を、未処理のままにするか、または異なる濃度の異なる薬物で処理し、そして24時間インキュベートする。
【0124】
<qPCR>
qPCRの実施のために、得られた細胞質画分を水で10倍希釈する。
使用したキットは、SYBR qPCR Premix Ex Taq II(Takara)である。サンプルを予め水で1/10に希釈した。一度、マスターミックスを調製し(以下の表に記載するように)、6μlをPCRプレートの各ウェルに分配する。次いで、4μlのサンプルを添加する。PCRは、Light Cycler 480リアルタイムPCRリーダーシステム(Roche)において行う。増幅プログラムは、以下の通りである:95℃で30秒間、続いて95℃で5秒間および60℃で20秒間の2ステップからなるサイクルを40サイクル。
【0125】
【表1】
【0126】
<Caspase・Glo>
未処理細胞(NT)、および細胞死を誘導するために処理した細胞(TTT)を、これらのアッセイに使用した。NTおよびTTT条件のそれぞれにおいて、100,000-10,000-1000-100または10個の細胞を、96ウェルプレートの50μlの培地中に移す(トリプリケートで)。次に、50μlのCaspase・Glo3/7試薬を添加する。1時間インキュベートした後、カスパーゼ3および7による基質の切断の結果生じる発光を、ルミノメーターを用いて決定する。
【0127】
<アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)標識-Biolegend>
未処理細胞(NT)、および細胞死を誘導するために処理した細胞(TTT)細胞を、これらのアッセイに使用した。
【0128】
細胞をPBSで洗浄し、次いで1×10細胞/mlの1×結合緩衝液に再懸濁する。200μlのこの細胞懸濁液に、10μlのAnnexin V Pacific Blueおよび10μlのヨウ化プロピジウム(Biolegendキット)を添加し、次いでこれを暗所および周囲温度で15分間インキュベートする。300gで5分間遠心分離した後、上清を穏やかに吸引し、500μlの1×結合緩衝液を添加する。
【0129】
次いで、これらの細胞を、処理の効果、およびアポトーシス状態の細胞数を決定するために、フローサイトメトリーにおいて使用した。これらの細胞は、次にPCRを実施するために、それらのアネキシンVおよびヨウ化プロピジウムの状態に依存して選別される。
【0130】
<ddPCR(液滴デジタルPCR)>
各ddPCR反応は、約20,000の1nl量の液滴で、最適に行われる。
【0131】
サンプル、およびddPCR混合物の調製
未処理細胞および細胞死を誘導するために処理した細胞から得た細胞質抽出物をサンプルとして使用した。
【0132】
ddPCR反応混合物(24μl)は、11μlの2×「EvaGreen ddPCR Supermix」(Bio-Rad)、0.22μlのプライマー(センスおよびアンチセンス、それぞれ最終200nM)、4μlのサンプル、および6.78μlの水を必要とする。
【0133】
液滴の生成
液滴は、DG8カートリッジ(Bio-Rad)のウェルにおいて、20μlのddPCR混合物および20μlの油を乳化することによって、QX200DropletGenerator(Bio-Rad)により生成される。次いで、液滴/油混合物を96ウェルプレートに移し、「PX1 PCRプレートシーラー」(Bio-Rad)を用いて密封する。
【0134】
増幅
増幅は、プログラムに従ってT100サーマルサイクラー(Bio-Rad)において実施される:酵素活性化:95℃で5分間;40サイクル:95℃で30秒間の変性、次いで60℃で1分間の伸長。シグナル安定化:4℃で5分間、次いで90℃で5分間。
【0135】
液滴読み取り
次いで、プレートをQX200液滴リーダー(Bio-Rad)によって読み取る。次いで、結果をエクスポートし、データを、QuantaSoftソフトウェア(Bio-Rad)を用いて分析する。
【0136】
〔実施例1:培養中の接着細胞(HepG2およびMDA-MB-231)または懸濁液中の細胞(OCI-AML3)における細胞死の検出〕
<培養中のHepG2接着細胞>
図1は、本発明による方法において、種々の溶解緩衝液を用いて得られたHepG2細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを示す。
【0137】
30,000個の細胞を接種し、次いで、未処理のままにするか、または1μMのドキソルビシンで18時間処理する。次いで、細胞を、異なる界面活性剤:0.075%のTween-20、0.0075%のTritonX-100、0.037%のEmpigen、および0.33%のTergitolを含む緩衝液中で溶解する。細胞質抽出物を遠心分離し、次いで、上清の画分を回収し、水で希釈する(10×)。次いで、qPCRを前記画分に対して実施する。
【0138】
配列番号9および配列番号10のプライマー対を、0.33%のTergitolを用いて細胞を溶解した後に得られた細胞質抽出物の画分に対して使用した。配列番号7および配列番号8のプライマー対を、0.075%のTween-20、0.0075%のTritonX-100、および0.037%のEmpigenを用いて細胞を溶解した後に得られた細胞質抽出物の画分に対して使用した。
【0139】
<懸濁液中のOCI-AML3細胞>
図2は、本発明による方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたOCI-AML3細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを示す。
【0140】
細胞を、未処理のままにするか、または1μMのドキソルビシンで18時間処理する。5000個の細胞の遠心分離後、後者を、異なる界面活性剤:0.1%のTergitol、0.1%のEmpigen、150μg/mlのジギトニン、0.1%のNP40を含む緩衝液中で溶解し、次いで、配列番号9および配列番号10のプライマー対を使用して、細胞質抽出物の画分上に対してqPCRを実施する。
【0141】
図3は、本発明による方法において、異なる界面活性剤を用いて生成された溶解緩衝液を用いて得られた、OCI-AML3細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを示す。
【0142】
5000個の細胞を、未処理のままにするか、または1μMのドキソルビシンで18時間処理し、次いで、異なる界面活性剤:0.1%のTergitol、0.5%のNP40、0.01%のTritonX-100、50μg/mlのジギトニンを含む緩衝液中で直接的に溶解する。次いで、配列番号7および配列番号8のプライマー対を使用して、細胞質抽出物の画分上に対してqPCRを実施する。提供される実施例の結果は、3つの独立した実施例の手段である。
【0143】
<培養中のMDA-MB-231接着細胞>
図4は、本発明に係る方法における、異なる界面活性剤を用いて生成された溶解緩衝液を使用して得られたMDA-MB-231細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを示す。
【0144】
20,000個の細胞を、未処理のままにするかまたは1μMのドキソルビシンで18時間処理し、次いで、異なる界面活性剤:0.1%のTergitol、0.5%のIgepal CA630、0.01%のTritonX-100、および0.5% Tween-20を含む緩衝液中で直接的に溶解する。次いで、配列番号7および配列番号8のプライマー対を使用して、細胞質抽出物の画分に対してqPCRを実施する。
【0145】
本発明に係る方法は、細胞死を検出することを有利に可能にし、したがって、接着細胞および懸濁液中の細胞のサンプルにおける、細胞死の活性化のレベルを測定することを可能にする。
【0146】
〔実施例2:従来技術のCaspase・Glo3/7法と比較した、本発明に係るPCRにより細胞死を検出するための方法の感度の決定〕
MOLM14細胞を、1μMのエトポシドで16時間処理する。細胞死は、Caspase・Glo技術を用いて、10~10,000細胞の範囲の細胞のサンプルにおいて決定される。並行して、qPCRを、配列番号7および配列番号8のプライマー対を用いて、同一数の細胞(10~10,000個の細胞)に由来する細胞質抽出物に対してqPCRを実施する。図5に示される実施例の結果は、3つの独立した実施例の手段である。
【0147】
本発明に係る方法を、従来技術の方法(Caspase・Glo)と比較することにより、本発明に係る方法の、改善された感度およびより低い検出閾値を有利に実証することが可能になる。
【0148】
〔実施例3:従来技術のフローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)と比較した、本発明に係る細胞死を検出するための方法の感度の決定〕
<未処理、または漸増濃度のエトポシドで処理された、OCI-AML3細胞>
遠心分離後に溶解した細胞から得られた細胞質抽出物に対するqPCR。
【0149】
OCI-AML3細胞を、未処理(NT)のままにするか、または漸増濃度のエトポシド(0~7.5~15もしくは30μM)で16時間処理する。
【0150】
細胞を、供給者の推奨に従ってPacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識し、次いで、フローサイトメトリー(MACSQuant VYB-Miltenyi Biotec)によって分析する。陽性アポトーシス細胞(アネキシンV)の割合を測定する。
【0151】
並行して、配列番号9および配列番号10の1対のプライマーを用いて、遠心分離後に溶解した10,000個の細胞から得られた細胞質抽出物に対してqPCRを実施する。結果を図6に示している。
【0152】
培養培地中で直接的に溶解した細胞から得られた、細胞質抽出物に対して実施されるqPCR。
【0153】
OCI-AML3細胞を、未処理(NT)のままにするか、または漸増濃度のエトポシド(0~7.5~15または30μM)で16時間処理する。
【0154】
細胞を、供給者の推奨に従ってPacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識し、次いで、フローサイトメトリー(MACSQuant VYB-Miltenyi Biotec)によって分析する。陽性アポトーシス細胞(アネキシンV)の割合を測定する。
【0155】
並行して、配列番号9および配列番号10の1対のプライマーを用いて、遠心分離後に培養培地中で直接的に溶解した10,000個の細胞から得られた細胞質抽出物に対してPCRを実施する。結果を図7に示している。
【0156】
<未処理のまま、または漸増濃度のボルテゾミブを用いて処理したOCI-AML3細胞>
遠心分離後に溶解した細胞から得られた細胞質抽出物に対するqPCR。
【0157】
OCI-AML3細胞を、未処理(NT)のままにするか、または漸増濃度のボルテゾミブ(0~0.125または0.25μM)で16時間処理する。
【0158】
細胞を、供給者の推奨に従ってPacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識し、次いで、フローサイトメトリー(MACSQuant VYB-Miltenyi Biotec)によって分析する。陽性アポトーシス細胞(アネキシンV)の割合を測定する。
【0159】
並行して、配列番号9および配列番号10の1対のプライマーを用いて、遠心分離後に溶解した10,000個の細胞から得られた細胞質抽出物に対してPCRを実施する。結果を図8に示している。
【0160】
培養培地中で直接的に溶解した細胞から得られた、細胞質抽出物に対して実施されるqPCR
OCI-AML3細胞を、未処理(NT)のままにするか、または漸増濃度のボルテゾミブ(0~0.125または0.25μM)で16時間処理する。
【0161】
細胞を、供給者の推奨に従ってPacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識し、次いで、フローサイトメトリー(MACSQuant VYB-Miltenyi Biotec)によって分析する。陽性アポトーシス細胞(アネキシンV)の割合を測定する。
【0162】
並行して、配列番号9および配列番号10の1対のプライマーを用いて、遠心分離後に培養培地中で直接的に溶解した10,000個の細胞から得られた細胞質抽出物に対してPCRを実施する。結果を図9に示している。
【0163】
<未処理のまま、または漸増濃度のエトポシドを用いて処理したMOLM14細胞>
遠心分離後に溶解した細胞から得られた細胞質抽出物に対するqPCR。
【0164】
MOLM14細胞を、未処理(NT)のままにするか、または漸増濃度のエトポシド(0~0.62~1.25~2.5~5または10μM)で16時間処理する。
【0165】
[182]細胞を、供給者の推奨に従ってPacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識し、次いで、フローサイトメトリー(MACSQuant VYB-Miltenyi Biotec)によって分析する。陽性アポトーシス細胞(アネキシンV)の割合を測定する。
【0166】
並行して、配列番号7および配列番号8の1対のプライマーを用いて、遠心分離し後に溶解した10,000細胞から得られた細胞質抽出物に対してPCRを実施する。
【0167】
本発明によるPCRを使用する方法の感度は、フローサイトメトリーの感度よりもはるかに高い。さらに、フローサイトメトリーを使用する方法は、2.5μMのエトポシドの濃度から開始して検出プラトーに達するが、PCR法においてはそうではない。結果を図10に示している。
【0168】
本発明に係る方法と従来技術の方法(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)との比較は、本発明に係る方法の改善された感度およびより低い飽和性を有利に実証することを可能にする。
【0169】
該方法は、また、培養培地中での溶解の直後に、細胞死を検出することを可能にし、これは、従来技術よりもはるかに高い感度で行われる。
【0170】
<1μMのドキソルビシンで処理したOCI-AML3細胞>
OCI-AML3細胞を、未処理のままにするか、または1μMのドキソルビシンで16時間処理する。
【0171】
細胞を、Pacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識する。1000個の、処理または未処理の二重陰性細胞(dn集団-アネキシンV陰性-ヨウ化プロピジウム陰性)を選別する。これらの結果を図11Aに示す。
【0172】
配列番号9および配列番号10のプライマー対を使用して、これらの1000個の、処理(TTT)または未処理(NT)の(AV-/PI-)細胞に由来する細胞質抽出物に対してPCRを実施する。提示された実施例の結果は、3つの独立した実施例の手段である。結果を図11Bに示している。
【0173】
本発明に係る方法は、細胞における細胞死の出現を検出することを可能にし、前記細胞は、本発明に有利に働く感度閾値の観点において、従来技術の試験によって、アネキシンV/ヨウ化プロピジウム標識について二重陰性であると考えられる。
【0174】
<単離細胞>
MOLM14細胞を、未処理のままにするか、または2.5μMのエトポシドで16時間処理する。
【0175】
細胞を、Pacific Blue(商標)Annexin Vキット(Biolegend)を使用して標識する。各サブ集団について、1つの細胞を選別し、そして、配列番号9および配列番号10のプライマー対を使用して、細胞質抽出物に対してddPCR(液滴デジタル)を実施する。細胞死の活性化のレベルを決定し、ヨウ化プロピジウム/アネキシンV標識について陰性の未処理細胞の細胞質抽出物から得られた、シグナルと比較する。
【0176】
図12に示す結果は、5~6個の細胞で得られた結果の平均を示す。
【0177】
本発明に係る方法は、細胞サンプル上の細胞死を検出することを可能にし、したがって、先行技術の方法と比較して最適化された感度を提供する。
【0178】
〔実施例4:ゲノム上の1コピーまたは2コピー中に存在する配列を標的とするプライマーを使用して、異なる細胞株からの細胞質抽出物において実現される細胞死の検出〕
図13は、横軸(MDA-MB-231、Molm14、HeLa、OCI-AML3)に示した細胞株からの、細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
【0179】
MDA-MB-231細胞を、未処理(NT)のままにするか、または200nMのスタウロスポリンで24時間処理(TTT)する。Molm14細胞を、未処理(NT)のままにするか、または0.5μMのドキソルビシンで16時間処理(TTT)する。HeLa細胞を、未処理(NT)のままにするか、または400nMのスタウロスポリンで24時間処理(TTT)する。OCI-AML3細胞を、未処理(NT)のままにするか、または1μMのドキソルビシンで16時間処理(TTT)する。溶解緩衝液の作用後、配列番号1および配列番号2のプライマー対を使用して、10倍希釈した細胞質抽出物に対してqPCRを実施する。
【0180】
図14は、横軸(MDA-MB-231、Molm14、HeLa、OCI-AML3)に示した細胞株からの、細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
【0181】
MDA-MB-231細胞を、未処理(NT)のままにするか、または200nMのスタウロスポリンで24時間処理(TTT)する。Molm14細胞を、未処理(NT)のままにするか、または0.5μMのドキソルビシンで16時間処理(TTT)する。HeLa細胞を、未処理(NT)のままにするか、または400nMのスタウロスポリンで24時間処理(TTT)する。OCI-AML3細胞を、未処理(NT)のままにするか、または1μMのドキソルビシンで16時間処理(TTT)する。溶解緩衝液の作用および遠心分離後、配列番号5および配列番号6のプライマー対を使用して、10倍希釈した細胞質抽出物に対してqPCRを実施する。
【0182】
有利なことに、本発明に係る方法は、ゲノム上の1コピー中に存在するDNA配列の検出および増幅によって、細胞死を検出することを可能にする。
【0183】
〔実施例5:多重化によって、細胞質抽出物において実現される細胞死の検出〕
図15は、OCI-AML3細胞株の細胞質抽出物において実現される、細胞死の活性化のレベルを表す。
【0184】
細胞を、未処理(NT)のままにするか、または10μMのアラキチン[シタラビン]で24時間処理(TTT)する。遠心分離後、細胞を溶解する。次いで、配列番号1および配列番号2のプライマー対と、配列番号3および配列番号4のプライマー対とを同時に使用して、10倍希釈した細胞質抽出物に対してqPCRを実施する。
【0185】
本発明に係る細胞死を検出する方法は、多重化技術によって有利に実施することができる。
【0186】
したがって、有利なことに、本発明者らは、感度が高く、簡単かつ迅速であり、適度なコストを有し、接着細胞または懸濁中の細胞に作用する、細胞死を検出するための方法を開発した。この方法は、従来技術の方法と比較して、感度が増し、検出閾値がはるかに低く、飽和性がより低い。
【0187】
〔実施例6:細胞質画分中のDNAフラグメントの存在の検出(前記DNAフラグメントは、細胞死を誘導する薬物(スタウロスポリン)によって処理された細胞または未処理のままの細胞(NT)において、本発明に係る方法において記載される溶解緩衝液での抽出後に得られ、キャピラリー電気泳動によって検出される。)〕
MDA-MB-231細胞を、DMEM高グルコース培地(10%FCS、P/S)35ml当たり300万細胞の量で、6個のT175sに接種した。翌日、MDA-MB-231細胞を、50nMおよび100nMのスタウロスポリンで処理した。2個の未処理T175sの培地を交換した。処理の24時間後、T175sに添加した2mlの溶解緩衝液を用いて、MDA-MB-231細胞を、周囲温度で15分間溶解し、次いで、2mlをチューブに移して、2000gで5分間遠心した。次いで、上清をRNaseA(20μg/ml)、次いでプロテイナーゼK(100ug/mlで使用)で処理し、70℃で15分間置いた。溶解緩衝液は、50mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、5mMのエチレンジアミン四酢酸、150mMの塩化ナトリウム、および50μg/mlのジギトニンの混合物である。
【0188】
次いで、1/10容量の酢酸ナトリウム(NaAc)(3M、pH5.2)を添加した。DNAを1容量のイソプロパノールで沈殿させた。サンプルを周囲温度で15分間放置した後、+4℃で、20,000gで20分間遠心分離した。上清を吸引し、ペレットを75%エタノールで洗浄した。ペレットを乾燥させ、次いでpH8の30μlのTEに再懸濁し、断片分析器で分析した。
【0189】
未処理、または50もしくは100nMのスタウロスポリンで24時間処理した、MDA-MB231細胞の細胞質画分中のDNAの存在を分析したところ、図16に示されているとおりであった。
【0190】
細胞死のマーカーであるDNA断片は、前記細胞の死を誘導する薬物(スタウロスポリン)で処理した細胞サンプルの細胞質画分中に検出される。細胞死を誘導する処理を受けていない細胞サンプルの細胞質画分には、断片化DNAがあったとしても、ほとんど存在しない。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1図1は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたHepG2細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
図2図2は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたOCI-AML3細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
図3図3は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたOCI-AML3細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
図4図4は、本発明に係る方法において、種々の界面活性剤を用いて得られたMDA-MB-231細胞の細胞質抽出物において実現された細胞死の活性化のレベルを表す。
図5図5は、従来技術のCaspase・Glo3/7法に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図6図6は、従来技術のフローサイトメトリー法(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図7図7は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCR(直接溶解)によって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図8図8は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図9図9は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCR(直接溶解)によって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図10図10は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度および飽和閾値の比較を表す。
図11図11は、フローサイトメトリー(アネキシンV、ヨウ化プロピジウム標識)に対する、本発明に係るqPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図12図12は、単離された細胞に対する、本発明に係るddPCRによって細胞死を検出するための方法の感度の比較を表す。
図13図13は、ゲノム当たり1コピー中に存在する配列を標的とする1対のプライマーを用いて、異なる細胞株の細胞質抽出物において実現される細胞死の活性化のレベルを表す。
図14図14は、ゲノム当たり2コピー中に存在する配列を標的とする1対のプライマーを用いて、異なる細胞株の細胞質抽出物において実現される細胞死の活性化のレベルを表す。
図15図15は、ゲノム当たり1コピー中に存在する配列をそれぞれ標的とする2対のプライマーを用いて、OCI-AML3細胞株に由来する細胞質抽出物において実現される細胞死の活性化のレベルを表す。
図16図16は、細胞質画分中のDNA断片の量の増加を示し、前記DNA断片は、本発明に係る方法において記載される溶解緩衝液で抽出した後に得られ、キャピラリー電気泳動によって検出され、このDNA断片の量の増加は、細胞死を誘導する薬物(スタウロスポリン)で処理されていない細胞(MDA NT)と比較すると、スタウロスポリンによって処理された細胞(MDA 50およびMDA 100)においてのみ見られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2022525670000001.app
【国際調査報告】