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特表2022-525700細胞組成物、その製造方法及びそれを含むアトピーの予防または治療用薬学組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(54)【発明の名称】細胞組成物、その製造方法及びそれを含むアトピーの予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0786 20100101AFI20220511BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20220511BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C12N5/0786
A61K35/16 Z
A61P17/00
A61P37/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503396
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 KR2020003577
(87)【国際公開番号】W WO2020189990
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0029795
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521425331
【氏名又は名称】テラベスト カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】THERABEST CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】(Pangyo Medical Tower, Unjung-dong) 4th Floor, 142, Unjung-ro, Bundang-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do 13466 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】キ, ユン ウーク
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ド ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ダン ベ
(72)【発明者】
【氏名】キム, スー ミン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ヘ キュン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC14
4B065BB19
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB37
4C087BB64
4C087DA19
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB13
(57)【要約】
本発明は、細胞組成物、その製造方法及びそれを含むアトピーの予防または治療用薬学組成物に関するものであり、本発明に係る細胞組成物は、全細胞中のインターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上に増加されたものであり、インターフェロン-ガンマを持続的に生産する細胞の割合が増加することにより、アトピー性皮膚炎を顕著に改善させることができる。また、副作用がなく、安全に長期間使用が可能であるので、アトピー性皮膚炎の免疫学的異常を根本的に治療できると期待される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの末梢血から単核球および自己血漿をそれぞれ分離して得るステップと、
抗CD3抗体で細胞培養容器をコーティングするステップと、
前記単核球を前記細胞培養容器に接種し、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含む培地で培養するステップとを含む、インターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上である細胞組成物の製造方法。
【請求項2】
前記組成物中のNKG2D発現細胞の割合が60%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物は、KSP37(Killer-specific secretory protein of 37 kDa)、GNLY(Granulysin)、CD74(Cluster of Differentiation 74)、ZBP1(Z-DNA-binding protein 1)、CCL5(C-C chemokine receptor type 5)およびHCST(Hematopoietic Cell Signal Transducer)からなる群より選択される1つ以上の遺伝子が末梢血単核球(PBMC)に比べて5倍以上発現されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培養は、3ステップ以上で行われ、
1ステップの培養は、前記単核球を前記抗CD3抗体がコーティングされた前記細胞培養容器に接種し、IL-2、IL-12およびIL-18を含む培地を添加して培養し、
2ステップの培養は、前記1ステップの培養物を前記抗CD3抗体がコーティングされていない前記細胞培養容器に移し、IL-2を含む培地を添加して培養し、
3ステップの培養は、前記2ステップの培養物をIL-2、IL-12およびIL-18を含む培地で培養するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD3抗体の濃度は、1~10μg/mlであり、IL-2は800~1200IU/mg、IL-12は2~6ng/ml、IL-18は20~60ng/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ヒト末梢血単核球の培養物である異種細胞混合物であり、全細胞中のインターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上である、細胞組成物。
【請求項7】
前記細胞組成物は、前記全細胞中の前記インターフェロン-ガンマ発現細胞の前記割合が80%以上である、請求項6に記載の細胞組成物。
【請求項8】
前記細胞組成物は、前記全細胞中のNKG2D発現細胞の割合が60%以上である、請求項6に記載の細胞組成物。
【請求項9】
前記組成物は、KSP37(Killer-specific secretory protein of 37 kDa)、GNLY(Granulysin)、CD74(Cluster of Differentiation 74)、ZBP1(Z-DNA-binding protein 1)、CCL5(C-C chemokine receptor type 5)およびHCST(Hematopoietic Cell Signal Transducer)からなる群より選択される1つ以上の遺伝子が末梢血単核球(PBMC)に比べて5倍以上発現されるものである、請求項6に記載の細胞組成物。
【請求項10】
前記細胞組成物は、総細胞数が1×10~1×1010個である、請求項6に記載の細胞組成物。
【請求項11】
前記細胞組成物は、ヒトの末梢血から分離した単核球を抗CD3抗体、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含む培地で培養して得られたものである、請求項6に記載の細胞組成物。
【請求項12】
前記培養は、3ステップ以上で行われ、
1ステップの培養は、前記単核球を前記抗CD3抗体がコーティングされた細胞培養容器に接種し、IL-2、IL-12およびIL-18を含む培地を添加して培養し、
2ステップの培養は、前記1ステップの培養物を前記抗CD3抗体がコーティングされていない細胞培養容器に移し、IL-2を含む培地を添加して培養し、
3ステップの培養は、前記2ステップの培養物をIL-2、IL-12およびIL-18を含む培地で培養するものである、請求項11に記載の細胞組成物。
【請求項13】
前記抗CD3抗体の濃度は、1~10μg/mlであり、IL-2は800~1200IU/mg、IL-12は2~6ng/ml、IL-18は20~60ng/mlである、請求項11に記載の細胞組成物。
【請求項14】
請求項6~13のいずれか一項に記載の細胞組成物を含むアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞組成物、その製造方法及びそれを含むアトピーの予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)は、乳幼児期に発生し、多い場合に成人期まで持続する、激しい掻痒症と特徴的な皮膚所見を示す慢性炎症性疾患である。アトピー性皮膚炎の原因は、遺伝的背景、免疫学的機序、環境的要因などの様々な因子が複合されていることが知られており、発症機序が非常に複雑で、様々な仮説が存在する。最も有力な仮説の一つは、Th1/Th2細胞の恒常性が破綻してTh2細胞が過剰活性化するというものである。特定のアレルゲン(allergen)によって過剰活性化されたTh2細胞は、IL-4及びIL-31のようなTh2サイトカインを分泌し、分泌されたサイトカインは、B細胞のIgE分泌と肥満細胞(Mast cell)の脱顆粒を誘導して様々な炎症物質を放出させる。
【0003】
現在までは、アトピー性皮膚炎の治療において、抗炎症剤であるコルチコステロイド(Corticosteroid)のような物質を用いて、免疫細胞の全体的な活性を抑制する方法を用いているだけである。この方法は、持続期間が非常に短いだけでなく、激しい副作用を伴っているため、適切な治療方法としては推奨されていない。また、近年開発された低分子及び抗体治療剤の場合は、一つの炎症物質に結合する受容体を遮断する程度であるため、アトピーのように複雑な炎症シグナルシステムを媒介とした慢性皮膚炎を治療するのには限界があり、別の経路によるアトピーの再発危険を避けることが容易ではない。最近では、Th1サイトカインの一種であるIFN-γタンパク質を用いてTh2細胞の活性を抑制することにより、アトピー性皮膚炎を改善しようとする試みがあったが、IFN-γタンパク質は、体内半減期が極めて短いので治療効果に限界がある。
【0004】
そこで、アトピーの病因に基づいてTh1/Th2免疫システムの均衡化による根本的な治療アプローチによって治療効果を極大化することが非常に重要であり、副作用を誘発しないアトピー性皮膚炎治療薬の開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上である細胞組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、前記細胞組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、前記細胞組成物を含むアトピーの予防または治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.ヒトの末梢血から単核球及び自己血漿をそれぞれ分離して得るステップと、抗CD3抗体で細胞培養容器をコーティングするステップと、前記単核球を前記細胞培養容器に接種し、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含む培地で培養するステップとを含む、インターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上である細胞組成物の製造方法。
【0009】
2.前記項目1において、前記組成物中のNKG2D発現細胞の割合が60%以上である、方法。
【0010】
3.前記項目1において、前記組成物は、KSP37(Killer-specific secretory protein of 37 kDa)、GNLY(Granulysin)、CD74(Cluster of Differentiation 74)、ZBP1(Z-DNA-binding protein 1)、CCL5(C-C chemokine receptor type 5)およびHCST(Hematopoietic Cell Signal Transducer)からなる群より選択される一つ以上の遺伝子が末梢血単核球(PBMC)に比べて5倍以上発現されるものである、方法。
【0011】
4.前記項目1において、前記培養は3ステップ以上で行われ、1ステップの培養は、前記単核球を抗CD3抗体がコーティングされた細胞培養容器に接種し、IL-2、IL-12およびIL-18を含む培地を添加して培養し、2ステップの培養は、前記1ステップの培養物を抗CD3抗体がコーティングされていない細胞培養容器に移し、IL-2を含む培地を添加して培養し、3ステップの培養は、前記2ステップの培養物をIL-2、IL-12およびIL-18を含む培地で培養するものである、方法。
【0012】
5.前記項目1において、前記抗CD3抗体の濃度は、1~10μg/mlであり、IL-2は800~1200IU/mg、IL-12は2~6ng/ml、IL-18は20~60ng/mlである、方法。
【0013】
6.ヒト末梢血単核球の培養物である異種細胞混合物であり、全細胞中のインターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上である、細胞組成物。
【0014】
7.前記項目6において、前記細胞組成物は、全細胞中のインターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が80%以上である、細胞組成物。
【0015】
8.前記項目6において、前記細胞組成物は、全細胞中のNKG2D発現細胞の割合が60%以上である、細胞組成物。
【0016】
9.前記項目6において、前記組成物は、KSP37(Killer-specific secretory protein of 37 kDa)、GNLY(Granulysin)、CD74(Cluster of Differentiation 74)、ZBP1(Z-DNA-binding protein 1)、CCL5(C-C chemokine receptor type 5)およびHCST(Hematopoietic Cell Signal Transducer)からなる群より選択される一つ以上の遺伝子が末梢血単核球(PBMC)に比べて5倍以上発現されるものである、細胞組成物。
【0017】
10.前記項目6において、前記細胞組成物は、全細胞数が1×10~1×1010個である、細胞組成物。
【0018】
11.前記項目6において、前記細胞組成物は、ヒトの末梢血から分離した単核球を抗CD3抗体、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含む培地で培養して得られたものである、細胞組成物。
【0019】
12.前記項目11において、前記培養は3ステップ以上で行われ、1ステップの培養は、前記単核球を抗CD3抗体がコーティングされた細胞培養容器に接種し、IL-2、IL-12およびIL-18を含む培地を添加して培養し、2ステップの培養は、前記1ステップの培養物を抗CD3抗体がコーティングされていない細胞培養容器に移し、IL-2を含む培地を添加して培養し、3ステップの培養は、前記2ステップの培養物をIL-2、IL-12およびIL-18を含む培地で培養するものである、細胞組成物。
【0020】
13.前記項目11において、前記抗CD3抗体の濃度は、1~10μg/mlであり、IL-2は800~1200IU/mg、IL-12は2~6ng/ml、IL-18は20~60ng/mlである、細胞組成物。
【0021】
14.前記項目6~13のいずれかに記載の細胞組成物を含むアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学組成物。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る細胞組成物は、全細胞中のインターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上に増加したものであり、インターフェロン-ガンマを持続的に生産する細胞の割合が増加することにより、アトピー性皮膚炎を顕著に改善させることができる。また、副作用がなく、安全に長期間使用が可能であり、アトピー性皮膚炎の免疫学的異常を根本的に治療できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、OVA感作アトピー性皮膚炎モデルの実験スケジュールを示すものである。
図2図2は、本発明の細胞組成物の細胞表現型を分析した結果である。
図3図3は、本発明の細胞組成物の細胞表現型を分析した結果である。
図4図4は、本発明の細胞組成物の細胞培養期間によるインターフェロン-ガンマの分泌蓄積量を測定したものである。
図5図5は、本発明の細胞組成物において、細胞培養期間別に分泌する特定の活性因子の分泌量の変化を測定したものである。
図6図6は、本発明の細胞組成物を体外刺激して活性させた後、Ksp37、GLNY、CD74、HCST、ZBP1、CCL5の日付別の発現量を確認したものである。
図7図7は、本発明の細胞組成物を体外刺激して活性させた後、Ksp37、GLNY、CD74、HCST、ZBP1、CCL5の日付別の発現量を確認したものである。
図8a図8aは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図8b図8bは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図8c図8cは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図8d図8dは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図8e図8eは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図9a図9aは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の皮膚バリアの改善に対するEBIの効果を示すものである。
図9b図9bは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の皮膚バリアの改善に対するEBIの効果を示すものである。
図9c図9cは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の皮膚バリアの改善に対するEBIの効果を示すものである。
図9d図9dは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の皮膚バリアの改善に対するEBIの効果を示すものである。
図10a図10aは、オボアルブミン(OVA)で誘導された炎症反応に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図10b図10bは、オボアルブミン(OVA)で誘導された炎症反応に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図10c図10cは、オボアルブミン(OVA)で誘導された炎症反応に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図10d図10dは、オボアルブミン(OVA)で誘導された炎症反応に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図11a図11aは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたサイトカインの発現に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図11b図11bは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたサイトカインの発現に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図11c図11cは、オボアルブミン(OVA)で誘導されたサイトカインの発現に対するEBIの抑制効果を示すものである。
図12a図12aは、オボアルブミン(OVA)による掻痒症の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図12b図12bは、オボアルブミン(OVA)による掻痒症の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図12c図12cは、オボアルブミン(OVA)による掻痒症の改善に対するEBIの効果を示すものである。
図13図13は、アトピー性皮膚炎の誘導マウスにおける、本発明の細胞組成物投与群の皮膚改善効果を確認したものである。
図14図14は、細胞組成物の投与経路による体重の変化を確認したものである。
図15図15は、本発明の細胞組成物の投与による経皮の厚さの減少を確認したものである。
図16図16は、本発明の細胞組成物の投与による経皮の厚さの減少を確認したものである。
図17図17は、本発明の細胞組成物の投与による炎症反応の減少効果を確認したものである。
図18図18は、本発明の細胞組成物の投与による炎症反応の減少効果を確認したものである。
図19図19は、本発明の細胞組成物の投与による血液中のIgEの減少を確認したものである。
図20図20は、本発明の細胞組成物の投与による皮膚組織内のアトピー性皮膚炎関連のサイトカイン及びかゆみ(itching)関連の遺伝子の変化を確認したものである。
図21図21は、本発明の細胞組成物のリンパ節におけるインターフェロン-ガンマの分泌量を確認したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明は、細胞組成物の製造方法に関するものである。
【0026】
本発明の細胞組成物の製造方法は、ヒトの末梢血から単核球及び自己血漿をそれぞれ分離して得るステップを含む。
【0027】
末梢血から単核球を分離する方法としては、公知の方法を用いることができる。通常、フィコール(Ficoll)方法を用いるが、フィコールは、砂糖とエピクロロヒドリンを互いに重合させた化合物であり、一般的に約40万分子量のものを用いる。フィコールは水に溶かすと、低粘度で高密度に至る溶液に変化するため、細胞、ウイルスおよび細胞小器官などを分離するための密度勾配を形成させる物質として使用する。末梢血単核球は、血液中に含まれている赤血球、顆粒性白血球(granulocytes)および死んだ細胞に比べて軽く、血漿(plasma)よりは重いので分離が可能である。
【0028】
前記単核球は、前記細胞組成物の適用対象である個体の自己血液から分離されて培養されたものであってもよい。自己血液から分離された単核球を用いると、不要な自己免疫反応が排除され、炎症などの副作用なしに効率的にアトピー性皮膚炎を治療できる。
【0029】
本発明の細胞組成物の製造方法は、前記単核球を抗CD3抗体、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含む培地で培養するステップを含む。
【0030】
前記培地が抗CD3抗体を含む場合、抗CD3抗体は培地にコーティングされたものであってもよい。抗CD3抗体が培地にコーティングされた場合、前記培地は、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上をさらに含むことができる。
【0031】
前記培地は、抗CD3抗体、IL-2、IL-12およびIL-18を含むことができる。より具体的には、抗CD3抗体は培地にコーティングされ、前記細胞培養用培地にIL-2、IL-12およびIL-18をさらに含むことができる。
【0032】
抗CD3抗体は、CD3に結合する特性を有する抗体であれば制限なく用いることができる。抗CD3抗体は、0.1~100μg/mlの範囲で含むことができ、好ましくは0.5~50μg/ml、より好ましくは1~10μg/mlの範囲で含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
インターロイキンは、リンパ球や単球及びマクロファージなどの免疫担当細胞が生産するタンパク質性の生物活性物質の総称である。本発明では、インターロイキン類のサイトカインとして、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含むことができる。IL-2は、100~2000IU/mlの範囲で含むことができ、好ましくは500~1500IU/ml、より好ましくは800~1200IU/ml含むことができるが、これらに限定されるものではない。IL-12は、0.5~10ng/mlの範囲で含むことができ、好ましくは1~8ng/ml、より好ましくは2~6ng/ml含むことができるが、これらに限定されるものではない。IL-18は、1~100ng/mlの範囲で含むことができ、好ましくは10~80ng/ml、より好ましくは20~60ng/mlの範囲で含むことができるが、これらに限定されるものではない。インターロイキン類は、これらに限定されず、通常の技術者に公知の他のインターロイキン類もまた、本発明の目的に合致する限り、制限なく用いることができる。
【0034】
前記培地は、L-グルタミン(glutamine)をさらに含むことができる。前記L-グルタミンの濃度は特に限定されず、例えば0.5~5mMであってもよく、好ましくは1~3mMであってもよい。
【0035】
前記培地は、その他に単核球の培養のために通常使用される成分をさらに含むことができる。例えば、グリシン(Glycine)、L-アルギニン(L-Arginine)、L-アスパラギン(L-Asparagine)、L-アスパラギン酸(L-Aspartic acid)、L-シスチン2HCl(LCystine 2HCl)、L-グルタミン酸(L-Glutamic Acid)、L-ヒスチジン(L-Histidine)、L-ヒドロキシプロリン(L-Hydroxyproline)、L-イソロイシン(LIsoleucine)、L-ロイシン(L-Leucine)、L-リジン塩酸塩(L-Lysine hydrochloride)、L-メチオニン(L-Methionine)、L-フェニルアラニン(L-Phenylalanine)、L-プロリン(L-Proline)、L-セリン(L-Serine)、L-スレオニン(L-Threonine)、L-トリプトファン(LTryptophan)、L-チロシン二ナトリウム二水和物(L-Tyrosine disodium salt dihydrate)、L-バリン(L-Valine)、ビオチン(Biotin)、塩化コリン(Choline chloride)、D-パントテン酸カルシウム(D-Calcium pantothenate)、葉酸(Folic Acid)、ナイアシンアミド(Niacinamide)、パラ-アミノベンゾ酸(Para-Aminobenzoic Acid)、ピリドキシン塩酸塩(Pyridoxine hydrochloride)、リボフラビン(Riboflavin)、チアミン塩酸塩(Thiamine hydrochloride)、ビタミンB12(Vitamin B12)、i-イノシトール(i-Inositol)、硝酸カルシウム(Calcium nitrate)、硫酸マグネシウム(Magnesium Sulfate)、塩化カリウム(Potassium Chloride)、重炭酸ナトリウム(Sodium Bicarbonate)、塩化ナトリウム(Sodium Chloride)、第一リン酸ナトリウム水和物(Sodium Phosphate dibasic anhydrous)、D-グルコース(DGlucose)、グルタチオン(Glutathione)、HEPES、フェノールレッド(Phenol Red)などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、前記培地は、血清または血漿と単核球の増殖を支持する追加の増殖因子を添加して培養したものであってもよい。培地に添加する血清または血漿の種類は特に限定されず、市販の各種動物由来のものを使用できるが、ヒト由来として自身由来のものがより好ましい。例えば、サイトカインの組み合わせや、単核球の増殖を刺激するレクチン類などを添加するなど、通常の技術者に知られている方法を用いることができる。
【0037】
また、培地は、血清または血漿と単核球の増殖を支持する追加の増殖因子をさらに含むものであってもよく、血清または血漿自体を含むものであってもよい。培地に添加する血清または血漿の種類は特に限定されず、市販の各種動物由来のものを使用できるが、ヒト由来として自身由来(自己)のものが好ましく、例えばヒトAB血清(human AB serum)または自己血漿(auto plasma)であってもよい。
【0038】
前記培養は、複数のステップで行うことができる。例えば、2ステップまたは3ステップ以上で行うことができる。
【0039】
2ステップ以上で行う場合には、例えば、1ステップで培養された単核球を2ステップで新たな培地に移して培養することができる。2ステップ以上で行う場合には、1ステップの培地は、血漿(自己)、抗CD3抗体、L-グルタミン(glutamine)、IL-2、IL-12およびIL-18を含み、2ステップの培地は、血漿(自己)、L-グルタミン(glutamine)、IL-2を含むことができる。より具体的には、1ステップの培地は、抗CD3抗体およびIL-2、IL-12、IL-18を含み、2ステップの培地はIL-2を含み、抗CD3抗体、IL-12、IL-18を含まなくてもよい。
【0040】
3ステップ以上で行う場合には、例えば前記2ステップの培養後、培養物を新たな培地に移して培養することができる。1ステップの培地は、血漿(自己)、抗CD3抗体、L-グルタミン、IL-2、IL-12およびIL-18を含み、2ステップの培地は、血漿(自己)、L-グルタミン、IL-2を含み、3ステップの培地は、血漿(自己)、L-グルタミン、IL-2、IL-12およびIL-18を含むことができる。より具体的には、1ステップの培地は、抗CD3抗体およびIL-2、IL-12、IL-18を含み、2ステップの培地は、IL-2を含み、抗CD3抗体、IL-12、IL-18を含まなくてもよく、3ステップの培地は、IL-2、IL-12、IL-18を含み、抗CD3抗体を含まなくてもよい。
【0041】
抗CD3抗体、L-グルタミン、IL-2、IL-12およびIL-18は、前述した範囲内の濃度で含むことができ、先に例示した培地を用いることができる。
【0042】
培養は、一般的な細胞培養方法、例えばCOインキュベーター中で行うことができる。COの濃度は、例えば1~10%、具体的には3~7%であってもよく、温度は30~40℃、具体的には35~38℃であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
培養は、単核球が十分に活性、増殖するまで行うことができ、例えば3日~20日、具体的には8日~16日間行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
培養効率の改善のために、培養中に細胞数の増加に合わせて培地を追加することが好ましい。培地追加の周期は、培養液の劣化を防止するために、例えば1~10日、具体的には1~7日に1回ずつ追加できるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の方法により得られる細胞組成物は、末梢血由来の単核球を培養して得られた異種細胞混合物であり、いくつかの表現型の細胞を含むことができる。
【0046】
その表現型は、例えば、CD3(+)CD56(-)細胞(T細胞)、CD3(+)CD56(+)細胞(NKT細胞)、CD3(-)CD56(+)細胞(NK細胞)などであってもよい。
【0047】
本発明の方法により得られる細胞組成物は、インターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上である。
【0048】
インターフェロン-ガンマ発現細胞は、その細胞中でインターフェロンガンマを発現する細胞(IFN-γ(+)細胞またはIFN-γreleasing cell)である。前記細胞組成物は、全細胞中のインターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が非常に高いので、アトピー性皮膚炎の個体に投与した場合、アトピー性皮膚炎の症状を改善させることができる。
【0049】
前記細胞組成物は、インターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上であり、具体的には60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。その上限は特に限定されず、100%未満であってもよく、具体的には90%以下であってもよい。
【0050】
前記細胞組成物は、NKG2D発現細胞の割合が60%以上であってもよい。
【0051】
NKG2D発現細胞は、その細胞中でNKG2Dを発現する細胞(NKG2D(+)またはNKG2D releasing cell)である。前記細胞組成物は、全細胞中のNKG2D発現細胞の割合が高いので、重要な免疫バランス調節の役割を果たすTh1細胞で主に発現する高いNKG2D数値から、アトピー性皮膚炎に対して高い治療効果を示す。
【0052】
前記細胞組成物は、NKG2D発現細胞の割合が60%以上であり、具体的には60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。その上限は特に限定されず、100%未満であってもよく、具体的には90%以下であってもよい。
【0053】
前記細胞組成物は、IL-4およびIL-13発現細胞の割合がそれぞれ10%未満であってもよい。具体的には、8%未満、7%未満であってもよい。前記細胞組成物は、全細胞中のIL-4およびIL-13発現細胞の割合が低く、アトピーを誘発するサイトカインであるIL-4およびIL-13の分泌量が低いので、アトピーの予防及び治療に有効である。
【0054】
前記細胞組成物は、全細胞数が例えば1×10~1×1010個、具体的には1×10~1×1010個であってもよい。
【0055】
本発明の方法により得られる細胞組成物は、免疫活性に関与する遺伝子発現を増加させることができる。前記免疫活性に関与する遺伝子は、KSP37(Killer-specific secretory protein of 37 kDa)、GNLY(Granulysin)、CD74(Cluster of Differentiation 74)、ZBP1(Z-DNA-binding protein 1)、CCL5(C-C chemokine receptor type 5)およびHCST(Hematopoietic Cell Signal Transducer)からなる群より選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0056】
細胞組成物は、前記遺伝子の発現がPBMCに比べて5倍以上、10倍以上増加したものであってもよい。例えば、GNLYの発現が60倍以上増加したものであってもよい。
【0057】
KSP37は、FGFBP2(Fibroblast Growth Factor Binding Protein 2)としても知られており、Th1/Tc1細胞特異的な分泌タンパク質である。NK細胞、γ/δT細胞、エフェクター(effector)CD8 T細胞およびTh1細胞のサブセット(subset)によって生成され、血清に分泌される。ほとんどのKsp37発現細胞は、パーフォリン(perforin)を発現しているが、これはKsp37が細胞毒性リンパ球-媒介免疫の主要な過程に関与していることを示唆する。
【0058】
GNLYは、T細胞活性化タンパク質(T-Cell Activation Protein)519としても知られており、パーフォリンおよびグランザイム(granzymes)と共に細胞毒性細胞(CTL)とNK細胞の細胞分解顆粒に存在する細胞溶解性および炎症性のタンパク質である。GNLYは、サポシン(saposin)-類似タンパク質(SAPLIP)ファミリーの構成員であり、幅広い抗菌活性と腫瘍細胞に対する強力な細胞毒性作用を示し、抗原提示細胞を活性化させ、免疫アラーミン(immune alarmin)の役割を果たす。GNLYは、細胞毒性T細胞とNK細胞が感染した細胞に付着するときに放出され、T細胞、単核球、および他の炎症細胞の化学誘引物質として作用する。また、RANTES、IL-1、IL-6、IL-10およびIFN-γを含む様々なサイトカインの発現を刺激するので、免疫バランスを誘導することができ、標的細胞を殺傷する生物学的機能により、アトピー性皮膚内で破損を受けて変形した炎症細胞を除去し、アトピー性皮膚炎の症状を改善することができる。
【0059】
CD74は、コーディングされたタンパク質に結合されるとき、生存経路および細胞増殖を開始するサイトカインマクロファージ移動抑制因子(cytokine macrophage migration inhibitory factor、MIF)に対する細胞表面受容体として作用する。MIFは、皮膚の炎症を誘導する前炎症性サイトカインであり、損傷した細胞から分泌され得、高移動性グループタンパク質B1(high-mobility group protein B1)のような損傷関連の分子を放出させる。さらに、MIFはT細胞活性化および浸潤を増加させることができる。
【0060】
HCST(=DAP10)は、CD8+T細胞で発現するNKG2Dシグナルの伝達に関与するアダプター分子であり、NKG2DとHCSTの結合は、ITAM(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif)のリン酸化を誘導し、Syk(spleen tyrosine kinase)とZap70(Zeta-chain-associated protein kinase 70)の信号カスケード(cascade)を誘導して、インターフェロン-ガンマのようなTh1サイトカインを分泌する免疫活性に関与するタンパク質である。
【0061】
ZBP1は、活性化されると、インターフェロン-ベータを調節することにより、細胞質パターン-認識システム(cytosolic pattern-recognition system)に影響を及ぼして免疫反応を活性化させる。ZBP1の遺伝子の活性および発現の増加は、細胞壊死(Necroptosis)の活性化と関連がある。細胞壊死はウイルスに感染した細胞を除去したり、ウイルスが広がるのを抑制するものであり、細胞壊死のとき、細胞内のDAMPs(DNA、HSPs、MSUなど)が細胞外に放出される。このとき、一部のDAMPsは樹状細胞(dendritic cells、DCs)を刺激する。この刺激によって成熟されたDCsは、T細胞を活性化させる。これにより、ZBP1が関与する細胞壊死によってウイルス感染した細胞を除去するだけでなく、DCsを成熟させ、T細胞を活性化させて免疫活性を誘導することができる。
【0062】
CCL5は、Th1細胞活性を誘導し、インターフェロン-ガンマと共に作用する場合には、NK細胞の増殖と活性を誘導することができる。
【0063】
このように、アトピーは免疫機能障害によって引き起こされた免疫不均衡によるものであって、Th2が過度に活性化されて発生するものであるが、本発明の方法で得られた細胞組成物は、Th2増殖を抑制し、Th1細胞を活性化して免疫システムを均衡化させ、アトピーを改善することができる。
【0064】
また、本発明は、細胞組成物に関するものである。
【0065】
本発明の細胞組成物は、末梢血由来の単核球を培養して得られた異種細胞混合物であり、いくつかの表現型の細胞を含むことができる。
【0066】
その表現型は、例えば、CD3(+)CD56(-)細胞(T細胞)、CD3(+)CD56(+)細胞(NKT細胞)、CD3(-)CD56(+)細胞(NK細胞)などであってもよい。
【0067】
本発明の細胞組成物は、ヒト末梢血単核球の培養物である異種細胞混合物であり、全細胞中のインターフェロン-ガンマ細胞の割合が60%以上である。
【0068】
前記細胞組成物は、インターフェロン-ガンマ発現細胞の割合が60%以上であり、具体的には、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。その上限は特に限定されず、100%未満であってもよく、具体的には90%以下であってもよい。
【0069】
前記細胞組成物は、NKG2D発現細胞の割合が60%以上であり、具体的には、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。その上限は特に限定されず、100%未満であってもよく、具体的には90%以下であってもよい。
【0070】
前記細胞組成物は、インターフェロン-ガンマの分泌量が増加するので、アトピー性皮膚炎の治療に有効である。
【0071】
前記細胞組成物は、IL-4およびIL-13発現細胞の割合がそれぞれ10%未満であってもよい。具体的には、8%未満、7%未満であってもよい。前記細胞組成物は、全細胞中のIL-4およびIL-13発現細胞の割合が低く、アトピーを誘発するサイトカインであるIL-4およびIL-13の分泌量が低いので、アトピーの予防および治療に有効である。
【0072】
前記細胞組成物は、全細胞数が例えば1×10~1×1010個、具体的には1×10~1×1010個であってもよい。
【0073】
前記細胞組成物は、ヒトの末梢血から分離した単核球を、抗CD3抗体、IL-2、IL-12およびIL-18からなる群より選択される1つ以上を含む培地で培養して得られたものであってもよい。
【0074】
そのほかの培地の組成及び培養方法などは、前述の通りである。
【0075】
また、本発明はアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0076】
本発明は、前記細胞組成物を含んでインターフェロン-ガンマの分泌量が多いので、アトピー性皮膚炎の予防または治療に有効である。
【0077】
細胞組成物に関する事項は、前述の通りである。
【0078】
本発明の薬学組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるではない。本発明の薬学組成物は、前記成分のほか、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。薬学的に許容される担体及び製剤として好適なものは、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。本発明の薬学組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、健康状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性などの要因によって様々であり、普通の熟練した医師は目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。なお、本発明の薬学組成物の投与量はこれに限定されず、1日当たり0.01-2000mg/kg(体重)であってもよい。
【0079】
本発明の薬学組成物は経口または非経口で投与でき、非経口で投与される場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与できる。本発明の薬学組成物は、適用される疾患の種類によって投与経路が決定されることが好ましい。例えば、本発明の薬学組成物は、発毛の促進または脱毛の予防および治療に使用されるので、皮膚に局所的に適用される方法で投与されることが好ましい。
【0080】
本発明の薬学組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態で製造したり、又は多容量容器内に内入して製造することができる。このとき、製形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明することとする。
【0082】
実験材料
実験動物としては、雄6週齢のBalb/Cをラオンバイオ(yongin、Korea)から供給を受けて、実験当日まで固形飼料(抗生剤無添加)と水を十分に供給し、温度23±2℃、湿度55±10%、12時間-12時間(light-dark cycle)の環境で1週間適応させた後に実験に使用した。動物実験の全過程は、NIH(National Institutes of Health)の実験動物管理規定(Principle of Laboratory Animal Care)と中央大学の動物実験倫理委員会の承認を受けて行われた。
【0083】
実施例
実験方法
1.体外増強免疫細胞(Ex-vivo Boosted Imuune cell、EBI)の培養
血液を常温で保温した後、2000RPMで3分間(Ace:4、Dec:3)2回遠心分離した。上澄み液の血漿を新しい50mlチューブに収集し、血球層も新しい50mlチューブに集める。血漿を56℃の水槽で30分間不活性化処理した後、2000RPMで3分間(Ace:4、Dec:3)遠心分離した。上澄み液を新しい50mlチューブに集めて血漿として使用した。50mlチューブに集めておいた血球層は1:1の割合でALyS505N-0培地を加えて希釈した。15mlチューブにフィコール4mlを入れて、その上に血液-培地混合物(Blood-media mix)を8ml載せた後、400RCFで30分間(Ace:4、Dec:0)遠心分離した。上位層の血漿(約3ml)を捨てて、血漿とフィコール層との間のPBMC層を最大限に分離して、50mlチューブに移し、総体積50mlに合わせて滅菌生理食塩水を入れた後、2000RPMで3分間(Ace:4、Dec:3)遠心分離した。上澄み液を除去した後、10mlのRBC溶解バッファ(Lysis buffer)を用いてセルを溶解した後、振りながら3分間反応させた。反応が終わると、滅菌生理食塩水を用いて総体積を50mlにした後、2000RPMで3分間(Ace:4、Dec:3)遠心分離した。その後、上澄み液を除去し、ALyS505N-0培地1mlに細胞を溶解した後、セルカウントして総細胞数を計算した。
【0084】
T25フラスコに抗CD3抗体(BD、Mouse anti-human、#555329)5μl、10xHBSS 500μl、滅菌生理食塩水4.5mlを入れてフラスコをコーティングした(37℃、4時間)。CD3コーティングされたT25フラスコにコーティング溶液を除去し、滅菌生理食塩水を用いて二回洗浄した。洗浄したT25フラスコにPBMC 1x10細胞/5mlをシーディングした後、血漿(自己)500μl、L-グルタミン(2mM)50μl、IL-2(1000IU/ml)2.8μl、IL-12(3ng/ml)1.5μl、IL-18(30ng/ml)1.5μl、ALyS505N-0培地4.5mlを添加し、37℃、5%COの条件下で培養した。
【0085】
EBIの培養には、フラスコおよびバックを用いた。フラスコを用いた培養時、前記方法で製造されたT25フラスコでPBMCシーディング3日目に血漿(自己)500μl、L-グルタミン(2mM)50μl、IL-2(1,000IU/ml)2.8μl、ALyS505N-0培地4.5mlを添加した。シーディング4日目にT75フラスコに移し、血漿(自己)1ml、L-グルタミン(2mM)100μl、IL-2(1,000IU/ml)5.6μl、ALyS505N-0培地9mlを添加した。シーディング5日目に血漿(自己)2ml、L-グルタミン(2mM)200μl、IL-2(1,000IU/ml)11.2μl、ALyS505N-0培地18mlを添加した。シーディング6日目にT150フラスコに移し、L-グルタミン(2mM)400μl、IL-2(1,000IU/ml)22.4μl、IL-12(3ng/ml)12μl、IL-18(30ng/ml)12μl、ALyS505N-0培地40mlを添加した。シーディング7日目にL-グルタミン(2mM)500μl、IL-2(1,000IU/ml)28μl、IL-12(3ng/ml)15μl、IL-18(30ng/ml)15μl、ALyS505N-0培地50mlを添加した。
【0086】
シーディング8日目に培養バックにIL-2(200IU/ml)を5ml入れ、バックをマッサージした。培養バッグの1/3ポイントをクランプで固定した後、約30mlの培地を取っておいた。T150フラスコの細胞をスクレーパを用いて剥がした後、バックに移した。取っておいた培地を用いてフラスコを洗浄し、バックに入れた。1つの培養器チャンバーに1つのバックのみを入れて平らにした(37℃、5%CO)。シーディング10日目にバックマッサージした後、バックの2/3ポイントをクランプで固定し、1/3ポイントのクランプを除去した。シーディング12日目にバックマッサージした後、バックの2/3ポイントのクランプを除去した。シーディング14日目にバックマッサージした後、ラッチに固定させた。細胞を収穫するチューブライン(tube line)を70%EtOHで拭いて、250ml、50mlチューブを用いて細胞を収穫した後、2000RPMで3分間(Ace:4、Dec:3)遠心分離した。上澄み液の一部を50mlチューブに入れておき、培養培地を用いて50mlチューブに細胞を集めて総体積50mlとし、2000RPMで3分間(Ace:4、Dec:3)遠心分離した。上澄み液を除去した後、培養培地1mlに細胞ペレットを溶解し、セルカウントを行った。
【0087】
2.培養期間による細胞表現型の測定
(1)細胞の活性化
検体(培養期間別EBI)を常温で400xgで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、細胞数を2X10個/mlにした後、培養液500μlで細胞を浮遊させた。マイクロチューブ(Microtube)に培養液500μlを入れ、下記のように試薬を添加して活性化溶液を調製した。24-ウェルプレートの1つのウェルに細胞浮遊液500μlを入れ、製造された活性化溶液500μlを入れた。5%CO、37℃の条件のCO培養器で4時間反応させた。ウェルの細胞浮遊液を15mlチューブに移して、1XPBS 4mlを添加して洗浄した後、400xgで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、FCM染色バッファ5mlを添加して洗浄した後、400xgで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、FCM染色バッファ200μlを添加して細胞を懸濁した。
【0088】
(2)表面抗原染色
FCMチューブを検体(培養期間別EBI)当たりに2つずつ用意し、それぞれのチューブをisoチューブ、サンプル(sample)チューブという。各チューブにCD45-FITC抗体を2μl入れた。各チューブに(1)の細胞懸濁液を100μlずつ分注した後、マイクロピペットでよく混ぜた。常温の暗所に30分間放置して染色した。放置が終わると、各チューブにFCM染色バッファー1mlを添加した後、常温で400xgで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、各チューブにFCM染色バッファ100μlを添加してペレットを懸濁させた。各チューブにIC固定バッファ100μlを添加した後、常温の暗所で20分以上反応させた(このとき、1時間を超えないようにする。)。
【0089】
(3)細胞内染色(Intracelluar straining)
10X透過化バッファー(Permeabilization buffer)を蒸留水で10倍希釈して1X透過化バッファーを製造した。各チューブに1X透過化バッファー1mlを添加した後、常温で400xgで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、各チューブに1X透過化バッファー100μlを添加してペレットを懸濁させた。IsoチューブにはIsotype抗体を、sampleチューブにはFCM抗体を添加した。各チューブを弱く混ぜて(vortexing)、常温の暗所に30分間放置して染色した。放置が終わると、各チューブに1X透過化バッファー1mlを添加した後、常温で400xgで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、各チューブにFCM染色バッファ300~400μlを添加してペレットを懸濁させた。測定時にはisoチューブ、sampleチューブの順に測定した。
【0090】
3.サイトカインの分析
サイトカインの分析は、ヒト・サイトカイン・アレイ(human cytokine array)(ca.ARY005B)を用いて、10個以上のサイトカインの量を同時に測定した。分析バッファ2mlを準備した4ウェルマルチディッシュに処理し、ロッキングシェーカー(Rocking shaker)で1時間反応させた。1mlのサンプルを準備した分析バッファに処理し、最終の体積を1.5mlとした。15μlのヒトサイトカインアレイ検出抗体カクテル(human cytokine array detection antibody cocktail)を処理して混合した後、常温で1時間反応させた。メンブレン(Membrane)を注意しながら除去し、1x洗浄バッファー1mlで洗浄(rinsing)した。ストレプトアビジン(Streptoavidin)-HRPを分析バッファ5mlで希釈し、2mlの希釈されたストレプトアビジン(streptavidin)-HRPを各ウェルに処理した。X-rayフィルムで10分間メンブレン(membrane)を露出させ、各サイトカインの量を測定した。
【0091】
4.アトピー性皮膚炎オボアルブミン(OVA)感作アトピーモデル
7週齢の雌Balb/cマウスにオボアルブミン(OVA、grade V、Sigma、St.Louis、MO、USA)20μgと、免疫アジュバント(immunologic adjuvant)である水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)(Alum、Sigma)1mgを生理食塩水(saline)に希釈し、週に一度2週間腹腔投与して、アトピー性皮膚炎感作を誘導した。OVA腹腔投与から2週間後、OVAの100μgを除毛した背中の皮膚に1×1cmのパッチ(patch)で1週間感作後2週間休息を3回繰り返して局所部位に皮膚炎を誘導した。OVA感作2週間後からEBI(1×10cells/animal)と陽性対照群シクロスポリンA(Cyclosporin A)(CsA、2mg/kg)を尾静脈注射法(tail i.v. injection)で6週間注射した。
【0092】
ノーマル(NOR)群とOVA群では生理食塩水(100μl)を注射した。実験が終わった後、血液を採血し、背中の皮膚を摘出した(図1)。
【0093】
5.官能評価試験(皮膚病変の評価)
アトピー性皮膚炎で一般的に用いられる臨床的肉眼評価法として、アトピー性皮膚炎の重症度の程度を、下記5つの項目によってそれぞれ評価した点数の合計で表す。評価項目は、紅斑(erythema)、かゆみと皮膚乾燥(pruritus&dry skin)、浮腫と血腫(edema&excoriation)、ただれ(erosion)、および苔癬化(lichenification)などである。それぞれの項目について、症状がない(0点)、症状が弱い(1点)、普通(2点)、症状が激しい(3点)で採点した後、5項目の点数を合算することにより、最低0点(何の症状もない状態)から最高15点(すべての項目の症状が激しい状態)の間で評価点数を付与する。
【0094】
皮膚の状態は、実験終了直後、デジタルカメラ(Canon、Tokyo、Japan)を用いて写真を撮って調査した。
【0095】
6.かゆみ抑制力の評価
EBIの投与がアトピー性皮膚炎による痒み抑制力に与える影響を評価するために、実験終了前日に引っ掻き傷のパターン(scratching behavior)を測定した。マウスは、個体ごとに隔離して観察し、マウスの後ろ足が背中に上がって床につけるまでの行動を1回とカウントした。また、連続動作は1回とみなし、少しでも中断後に再び掻く場合は、それぞれを回数に含めた。
【0096】
7.組織学的検査
1)ヘマトキシリン・エオシン染色
アレルゲンの皮膚露出によって誘導される炎症反応を確認するために、ヘマトキシリン・エオシン染色で形態学的分析を行った。実験終了後、実験動物の背中の組織を10%中性バッファホルマリン(Neutral Buffered Formalin(NBF))に固定し、低濃度から高濃度のエタノール溶液で段階的な脱水過程を経た後、パラフィンブロックを作成した。各組織ブロックを5μmの厚さで薄切してスライドに組織切片を付けた後、各組織スライドをキシレン(xylene)で脱パラフィンを行った後、アルコールに含水させた。ヘマトキシリン試薬をスライドに1分、エオシン試薬は3分間処理して染色した。染色が終わってから脱水させて封入し、光学顕微鏡(DM750、Leica、Wetzlar、Germany)を用いて観察した。
【0097】
2)トルイジンブルー(Toluidine blue)染色
トルイジンブルー(Toluidine blue)染色によって採取したマウスの耳組織に脱顆粒された肥満細胞の数を測定するために、10%NBFに組織を固定した後、パラフィンブロックを作成した。各組織ブロックは、5μmの厚さで切片を作り、脱パラフィン過程とアルコールへの含水過程を経て蒸留水で洗浄した。洗浄が完了した切片は、トルイジンブルー(pH0.5)で1時間染色した後、3~4回蒸留水で洗浄した。その後、脱水と透明過程を経て封入した後、光学顕微鏡(DM750、Leica、Wetzlar、Germany)で脱顆粒された肥満細胞の数を測定した。
【0098】
3)免疫組織化学染色法
マウスの皮膚組織を10%NBFに固定した後、パラフィンブロックを作成した。各組織ブロックを5μmの厚さで薄切してスライドに組織切片を付けた後、各組織スライドをキシレン(xylene)で脱パラフィンを行った後、アルコールに含水させた。その後、5%正常血清(normal serum)に1時間ブロッキング(blocking)した。その後、スライドを皮膚バリア改善フィラグリン(filaggrin)、ロリクリン(loricrin)、インボルクリン(involucrin)、オクルディン(occludin)、TRPA1、およびPGP9.5抗体でそれぞれ4℃でオーバーナイト(overnight)処理した。PBSTで洗浄後、2次抗体であるビオチンラビット抗-ヤギ(biotinylated rabbit anti-goat)IgG(1:100、Santa Cruz Biotec)に室温で24時間反応させ、アビジン-ビオチン複合キット(avidin-biotin complex kit(Vector Lab、USA))に室温で1時間反応させた。0.05%3,3'-ジアミノベンジジン(3,3'- diaminobenzidine)と0.01%HClを含む0.05M tris-HCl緩衝溶液(pH7.4)で発色させた後、ヘマトキシリンで対照染色した。Anti-TRPA1とanti-PGP9.5は、FITCが結合された2次抗体と共に1時間処理した。蛍光画像は、共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)(LSM700、ZEISS、Jena、Germany)を用いて得た。
【0099】
8.血中の総IgEの測定
採血したマウスの血液1.5mLをチューブに入れて4℃、3,000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液は、測定前まで-70℃で保管した。血中IgEは、酵素結合免疫吸着法(Enzyme Linked Immunosorbent Assay、ELISA)を用いて測定した。マウスIgEイライザセット(Mouse IgE ELISA Set(BD Biosciences、San Jose、CA、USA))を用いて、各試料を1次抗体が処理された96ウェルプレートに入れた後、使用液(working solution)で4回洗浄した。洗浄後、2次抗体であるHRP-共役ヤギ抗マウスIgE(conjugated goat anti mouse IgE)(1:10,000)に1時間処理した後、発色試薬(color development reagent)で発色した。発色完了後、停止液(stop solution)で反応を停止させた後、ELISAを用いて450nmにおける吸光度を測定した。
【0100】
9.ELISA
血清およびリンパ内サイトカイン(IL-1β、IL-4、IL-5、IL-6、IL-17、TNF-α、CCL2)の分析のために、分離された血清及びリンパにおいて、Quansys Q-Plex(商標) マウス・サイトカイン・アレイ(DonginBio、Seoul、Korea)を用いて、各サイトカインの含有量を分析した。プレート(plate)にキャプチャー(capture)抗体をコーティングバッファー(0.1M sodium Carbonate、PH9.5)に希釈させ、シールテープで密封し、4℃で一晩付着させた。200μlの検体希釈液(assay diluent)を各ウェルに分注し、プレートシェーカー(plate shaker)で1時間ブロッキングし、濃度別のサイトカイン標準液と血清を各ウェルに100μlずつ分注し、さらに室温で2時間反応させた。反応が終わってから、検出抗体溶液を100μlずつ分注して1時間、その後、アビジン-HRP溶液(Avidin-HRP solution)を30分間反応させた。最後の洗浄過程を除く各ステップ間のすべてのプレートの洗浄は、洗浄緩衝液(wash buffer)(0.05%PBS-Tween 20)を用いて4回行った。最後の洗浄は、洗浄緩衝液(wash buffer)を用いて5回行い、洗浄が終わってから発色のために100μlのTMB基質(substrate)を各ウェルに分注し、20分間反応させた。停止液(stop solution)(2NH2SO4)を100μl分注して反応を終了させた後、マイクロプレートリーダー(microplate reader)を用いて、450nmの波長の吸光度を測定した値から、各サイトカインの含有量を分析した。
【0101】
血清は1/2に希釈させた。リンパは上澄み液を収集し、マルチプレックス・アレイ(multiplex array)を製造業者の指示に従って行った。50μlの抗原標準またはサンプルを二重(duplicate)で各ウェルに分注した。1時間インキュベートした後、プレートを洗浄緩衝液(wash buffer)で洗浄し、検出混合物(detection mix)と共に1時間培養し、ストレプトアビジン(straptavidin)-HRP 1Xで15分間室温で反応させた。ウェルを洗浄した後に基質AとBを添加し、プレートの画像をChemiDoc XRSシステム(Bio-Rad Laboratories)で測定し、Quansys画像解析ソフトウェアで分析した。サイトカインデータを標準化するために、Qubit(登録商標)2.0蛍光測定器(LifeTechnologies)上のQubit(登録商標)タンパク質分析キットを用いてタンパク質濃度を決定し、サイトカインのレベルを総タンパク質のpg/mlで示した。
【0102】
10.RNA抽出及びリアルタイム(Real-time)PCR
アトピー性皮膚炎に関与するサイトカインの遺伝子発現の変化をリアルタイム(real-time)PCRを用いて比較分析した。総RNAは、Tri-RNA試薬(Reagent)(Favorgen biotech、Taiwan)を用いて、分離された皮膚組織および培養された細胞から抽出した。全RNA鋳型から一本鎖cDNAの合成は、PrimeScriptTM RT Master Mix(Takara、Tokyo、Japan)で行った。生成されたcDNAをCFX-96(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)と共にqPCR 2x PreMIX SYBR(Enzynomics、Seoul、Korea)を用いてリアルタイムPCRを行った。すべての遺伝子を増幅するのに使用されたPCRは、95℃で10分間変性(denaturation)過程を経た後、40サイクル(95℃で10秒、60℃で15秒、72℃で30秒)の条件下で行った。合計40回行った。発現データは、ΔCt定量化方法を用いてサイクル臨界値(Ct)で計算した。GAPDHを用いて定量化した。
【0103】
11.免疫ブロット分析(Immunoblot assay)
分離された皮膚組織をPRO-PREP(iNtRON、Seongnam、Korea)に溶解させた後、14,000gで20分間遠心分離して得られた上澄み液を実験に使用した。タンパク質の濃度は、BCAキット(Fisher Scientific、hampton、NH、USA)を用いて定量した。分離された上澄み液(総タンパク質量30μg)を8~12%gel SDS-PAGEを用いて電気泳動で分離されたタンパク質は、PVDFメンブレイン(Millipore、Danvers、MA、USA)にトランスファー(transfer)した。トランスファーしたPVDFメンブレイン(membrane)を5%脱脂粉乳に1時間ブロッキング(blocking)した後、1次抗体(filaggrin、loricrin、involucrin、PAR2、TSLP、TSLPR、TRPA1、β-actin)をメンブレインと4℃で12時間反応させ、TBSTで洗浄した後、1次抗体に対する特異的な2次抗体を室温で1時間反応させた。メンブレインを洗浄した後、ECL溶液(Millipore)で発色し、ChemiDoc(商標) XRS+System(Bio-RAD、Hercules、CA、USA)を用いて測定した。
【0104】
12.統計解析
実験の結果は、mean±standard error mean(SEM)で示した。有意性の検定は、一元配置分散分析(One way analysis of variance、ANOVA)で行い、集団間の事後検定は、Turkey’s HDS法を用い、Pの値が0.05以下であるものを統計学的に有意なものとみなした。
【0105】
実験の結果
1.培養期間による細胞表現型の評価
実施例による細胞組成物の細胞表現型を確認するために、各培養期間別の細胞のサンプルを一部採取して表現型を分析し、NKG2A、NKG2D抗体を使用した。
その結果を図2及び図3に示す。
【0106】
インターフェロン-ガンマを発現する細胞(IFN-γ(+)cell、IFN-γreleasing cell)の割合は、下記表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
NKG2Dを発現する細胞(NKG2D(+)cell)の割合は、下記表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
NKG2Aを発現する細胞(NKG2A(+)cell)の割合は、下記表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
IL-4を発現する細胞(IL-4(+)cell)の割合は、下記表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
IL-13を発現する細胞(IL-13(+)cell)の割合は、下記表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
表1~表5を参照すると、EBIはインターフェロン-ガンマ及びNKG2Dを発現する細胞の割合が非常に高く、IL-4およびIL-13を発現する細胞の割合が低いので、アトピー性皮膚炎の予防および治療に効果的であることが分かる。
【0117】
2.インターフェロン-ガンマ生産量の測定
図4及び下記表6は、培養期間による細胞外インターフェロン-ガンマ分泌蓄積量を測定したものである。培養期間によって分泌量が増加することが分かる。
【0118】
【表6】
【0119】
3.サイトカインの分析
本発明の細胞組成物の培養期間別に分泌する特定の活性因子の分泌量の変化を測定した(図5)。
【0120】
免疫細胞の移動および活性に関与する様々な免疫因子の数値が1000倍以上増加し、7日以後にIL8、IL16、IL18の分泌が急激に増加することが確認できた。これは、本発明の細胞組成物は、免疫活性細胞分泌因子の分泌の増加によって、アトピー性皮膚炎で一般的に知られている過剰活性化されたTh2細胞(免疫抑制を担当)を抑制できる環境を誘導することができ、アトピー性皮膚炎に薬効があるものと判断された。
【0121】
4.RNAシークエンシング(sequencing)
アトピー免疫細胞活性の3日目、7日目、14日目に6つの遺伝子(Ksp37、GLNY、CD74、HCST、ZBP1、CCL5)に対して日付別の発現量を確認した(図6及び7)。
【0122】
特に、GLNYはEBIで14日目に60倍以上増加したことが分かった。EBIは、前記遺伝子を過剰発現することで免疫活性を誘導し、アトピー性皮膚炎を改善することができる。
【0123】
表7及び表8は、それぞれKsp37、GLNY、CD74の日付別の発現量に対するRNAシークエンシング及びリアルタイムPCRの結果である。
【0124】
表9及び表10は、それぞれHCST、ZBP1、CCL5の日付別の発現量に対するRNAシークエンシング及びqPCRの結果である。
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
【表9】
【0128】
【表10】
【0129】
5.オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の改善に対するEBIの効果
BALB/cマウスを対象とし、OVA皮膚感作でアトピー性皮膚炎の類似病変が誘発されたマウスにEBI(1x10cells/head)を6週間静脈注射し、アトピー性皮膚炎の改善に対する効果を確認した。
【0130】
図8に示すように、EBI投与群では、皮膚病変の形態、皮膚の厚さなど、アトピー性皮膚炎の臨床的特徴が改善される優れた効果を示した。
【0131】
正常マウスに比べてOVAで誘発された対照群の場合には、皮膚バリアの崩壊および炎症を伴う皮膚学的症状(乾燥、紅斑、ただれ、浮腫/血腫、苔癬)と表皮の厚さが深刻化したのに対し、EBIを投与した実験群では、症状が改善される効果を示した(図8A~8D)。この評価後、皮膚組織学的な改善効果を調べるために、H&Eで皮膚組織を染色して顕微鏡で検鏡した結果、OVAで誘発された対照群は正常群に比べて表皮の厚さと皮膚バリアの崩壊が非常に増加した。表皮(epidermis)と真皮(dermis)が浮腫で顕著に拡張し、表皮の脱落と厚さの増加を確認することができた。これに対して、EBI投与群では、対照群に比べて皮膚組織学的な特徴が改善される効果を示した。過角化症(hyperkeratosis)、異常角化症(parakeratosis)は全体的に減少し、表皮(epidermis)の厚さも減少したことにより、表皮過剰形成(hyperplasia)および表皮海綿化(spongiosis)も減少した。また、炎症性反応によって厚くなった真皮(dermis)の厚さも薄くなり、退化した毛包も新たに形成されていることが分かった(図8A、8B)。
【0132】
また、EBI投与群では、対照群に比べてアトピー性皮膚炎の重症度の程度(AD severity score)が改善され(図8C)、掻く行動が相対的に減少してそう痒感が顕著に減少した(図8D)。体重の変化を測定して動物への影響を観察した結果、EBIの投与はマウスの体重に影響を与えなかった(図8E)。
【0133】
6.オボアルブミン(OVA)で誘導されたアトピー性皮膚炎の皮膚バリアの改善に対するEBIの効果
表皮水分損失量(TEWL)がEBIの投与によって非常に改善されることを確認した(図9A)。また、表皮細胞の過剰増殖の変化を調べるために、ケラチン1(K1)遺伝子の発現の変化を測定した結果、EBIが投与されたマウスで明らかな減少を示した(図9B)。つまり、EBIがOVA誘導によるアトピー類似病変において、表皮細胞の増殖能を抑制させる効果を持っていることを示す。そして、皮膚バリアの改善効果を測定するために、皮膚バリアを構成しているタンパク質の変化を観察した。アトピー性皮膚炎が発生すると、皮膚バリアを構成するタンパク質の発現が減少し、最終的にはバリアの損傷が発生し、水分損失と抗原(allergen)による浸透、感染のリスクが増加することになる。フィラグリン(Filaggrin)、インボルクリン(involucrin)、ロリクリン(loricrin)は皮膚表皮層を構成している主要なタンパク質であり、皮膚バリアの改善において重要なものである。また、オクルディン(occludin)は、タイトジャンクション(tight junction)タンパク質の一つであり、アトピー性皮膚炎のような皮膚疾患で減少することになる。EBIの投与により、OVAで誘発されたアトピー性皮膚炎の類似病変が改善され、これらのタンパク質の発現が増加したことを確認した(図9B~9D)。EBIの投与は、CsAの投与とともに乾燥症状を改善させ、皮膚バリアを保護することにより、効果的にアトピー性皮膚炎の症状を緩和させるものと考えられる。
【0134】
7.オボアルブミン(OVA)で誘導された炎症反応の抑制に対するEBIの効果
トルイジンブルー(Toluidine blue)染色により、肥満細胞(mast cell)などの炎症反応に関わる現象を、組織の青黒い部分から確認することができた(図10A)。OVA誘導後、7週目(49日)の組織を確認した結果、OVA群で真皮(dermis)周辺に肥満細胞が多く浸潤しており、表皮(epidermis)の厚さも厚くなっているのに対して、EBI投与群では、対照群に比べて肥満細胞の浸潤が減少していることが観察された(図10A及び10B)。
【0135】
また、OVA誘導アトピー性皮膚炎モデルにおけるOVA感作群の血清総IgE濃度(647.5ng/mL)は、正常対照群(NOR、220.0ng/mL)に比べて大幅に増加した。このIgEの増加は、CsAとEBIの投与により、それぞれ328.0ng/mLと320.5ng/mLのレベルに有意に減少し、有意な効果を示した(図10C及び10D)。
【0136】
8.オボアルブミン(OVA)で誘導されたサイトカイン発現抑制に対するEBIの効果
EBI-Mのアレルギー皮膚反応及びIgE抑制効果がTh2免疫反応と関連があるかを確認するために、OVAに感作されたマウスから皮膚組織を分離し、Th2サイトカインのmRNA発現レベルを確認した。実験の結果、NOR群に比べてOVA処理群では、Th2分化誘導サイトカインTSLP、IL-25、IL-33、Th2及びTh17関連のサイトカインの発現が顕著に増加した。これに対して、CsA及びEBI投与マウスでは、IL-4が46.8%、IL-13が47.3%、TSLPが53.1%、IL-33が49.2%減少するなど、有意に抑制された。陽性対照群であるCsA処理群もそれぞれ33.6、35.4、45.8、57.9%減少し、Th2サイトカインを抑制することを示した(図11A)。また、血清およびリンパに存在する炎症性サイトカインの分析の結果、IL-1β、IL-4、IL-5、TNF-α、IL-17、IL-6、およびCCL2(MCP-1)がEBI投与によって非常に減少した(図11B及び11C)。したがって、EBIはTh2細胞に関連するサイトカインの発現を抑制させ、肥満細胞の浸潤およびIgEの生成抑制などによってアトピー性皮膚炎の症状を緩和させるものと考えられる。
【0137】
9.オボアルブミン(OVA)による掻痒症の改善に対するEBIの効果
OVAで誘発させたアトピー性皮膚炎の類似病変皮膚において、掻痒症の改善に与えるEBIの効果を観察するために、掻痒症に関与すると知られている様々なサイトカインおよび因子の発現を調べた。EBIを投与したマウスでは、IL-31シグナリング(signaling)に関連する遺伝子の発現が減少することを確認できる(図12A)。また、かゆみの刺激は、ヒスタミン-依存性経路とヒスタミン-非依存性経路の2つに分けられるが、EBI投与の結果として、H1R、TRPV1、TRPA1、TGF5、NK1R、MrgpA3、およびTSLP、TSLPRなどのかゆみ刺激シグナリングに関連する遺伝子の発現が顕著に減少することを確認した(図12A)。この結果は、タンパク質の発現レベルからも確認された(図12B)。
【0138】
TSLPもまた、アトピー性皮膚炎に関連するかゆみ媒介体であり、ヒスタミン-非依存性経路によってかゆみが誘発される。TSLPは、c神経線維にカルシウムを蓄積するが、このとき、TRPA1の活性化が求められ、神経の活性化はかゆみを誘発する。EBIの投与は、このような皮膚表皮内の神経線維にTRPA1の発現を減少させることにより、そう痒感を減少させていることを確認した(図12C)。また、TRPA1免疫反応神経細胞数の減少と一致するように、皮膚でPGP9.5に免疫反応を示す神経線維の分布が対照群に比べてEBI投与群で顕著に減少した(図12C)。
【0139】
10.PBMC投与群とEBI投与群との比較
OVA誘導アトピー性皮膚炎モデルを対象とし、EBIの場合には、細胞数1x10/headを週1回、合計6回静脈投与した。S.Cグループの場合には、1x10/headを週1回、合計6回皮下投与した。PBMCの場合には、1x10/headを週1回、合計6回静脈投与した。
【0140】
(1)アトピー性皮膚炎の改善効果の確認
その結果は図13に示す。
インターフェロン-ガンマを分泌しないPBMC群と比較して、インターフェロン-ガンマおよびNKG2Dの発現率が高いEBI群では、皮膚改善の効果が優れることが分かる。
【0141】
(2)細胞組成物の投与による体重変化の確認
その結果は図14に示す。すべての実験群において、目につく体重変化はなかった。
【0142】
(3)細胞組成物の投与による経皮厚さの減少効果の確認
その結果は図15及び16に示す。PBMC群と比較して、インターフェロン-ガンマおよびNKG2Dの発現率が高いEBI群では、すべての投与経路において経皮の厚さが減少した。
【0143】
(4)炎症反応の減少効果の確認
その結果は図17及び18に示す。インターフェロン-ガンマを分泌しないPBMC群と比較して、インターフェロン-ガンマおよびNKG2D発現率が高いEBI投与群では、すべての投与経路において肥満細胞が減少し、炎症反応が減少した。
【0144】
(5)血液中のIgEの減少の確認
その結果は図19に示す通りである。インターフェロン-ガンマを分泌しないPBMC投与群と比較して、インターフェロン-ガンマおよびNKG2Dの発現率が高いEBI投与群では、すべての投与経路においてIgEが減少した。
【0145】
(6)皮膚組織内アトピー性皮膚炎に関連するサイトカイン及びかゆみ(itching)に関連する遺伝子の発現の分析
PBMC投与群と比較して、インターフェロン-ガンマおよびNKG2D発現率が高いEBI投与群では、すべての投与経路において炎症性サイトカイン及びかゆみに関連する遺伝子の発現が減少し、1x10個の細胞を含むEBI投与群で最も効果的であることが分かる(図20)。また、インターフェロン-ガンマは、リンパ節内で高い分泌量を示した(図21)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】