(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ダブルペロブスカイト
(51)【国際特許分類】
C09K 11/61 20060101AFI20220512BHJP
C01G 5/00 20060101ALI20220512BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20220512BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220512BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220512BHJP
C09K 11/89 20060101ALI20220512BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20220512BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20220512BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20220512BHJP
H01L 51/44 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C09K11/61
C01G5/00 A
H05B33/14 Z
H05B33/10
C09K11/08 A
C09K11/89
C09K11/66
C09K11/00 F
C09K11/88
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555376
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2020050626
(87)【国際公開番号】W WO2020188252
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュスティーノ、フェリシアーノ
(72)【発明者】
【氏名】スネイス、ヘンリー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠弥
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロナキス、ヨルゴス
【テーマコード(参考)】
3K107
4H001
5F151
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107DD57
4H001CA02
4H001CF01
4H001XA01
4H001XA03
4H001XA06
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA16
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA29
4H001XA34
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA47
4H001XA48
4H001XA52
4H001XA53
4H001XA55
4H001XA56
4H001XA79
4H001XA80
4H001XA82
4H001XB62
4H001XB72
5F151AA11
(57)【要約】
本発明は、化合物を含む光電子材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、B
n+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、B
m+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、B
n+は1つ以上の第2Bカチオン、B
m+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光電子材料に関する。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を含む光電子材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、B
n+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、B
m+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、B
n+は1つ以上の第2Bカチオン、B
m+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光電子材料。
【請求項2】
光電子材料が光起電材料または電界発光材料である、請求項1記載の光電子材料。
【請求項3】
1つ以上の第1カチオン、B
n+の少なくとも1つまたは1つ以上の第2カチオン、B
m+の少なくとも1つが、Nが3~5の整数である電子配置Nd
10(N+1)s
0を有し、必要に応じて1つ以上の第1カチオン、B
n+の少なくとも1つおよび1つ以上の第2カチオン、B
m+の少なくとも1つが電子配置Nd
10(N+1)s
0を有する、請求項1または2記載の光電子材料。
【請求項4】
nが1または2であり、およびmが6または7であり、必要に応じてnが1であり、およびmが7である、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項5】
化合物のバンドギャップが3.0 eV未満であるか、または測定した光ルミネセンスピークが3.0 e.V未満であるか、または光吸収の開始が3.0 e.V未満であり、必要に応じて化合物のバンドギャップが1.0 eV~2.5 eVである、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項6】
1つ以上の第1カチオン、B
n+が貴金属カチオンおよび/またはアルカリ金属カチオンを含み、必要に応じて1つ以上の第1カチオン、B
n+がLi
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、Cu
+、Ag
+、Au
+およびHg
+の1つ以上を含み、好ましくは1つ以上の第1カチオン、B
n+がAg
+を含む、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項7】
1つ以上の第2カチオン、B
m+が+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含み、好ましくは1つ以上の第2カチオン、B
m+がI
7+を含む、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項8】
1つ以上の第1カチオン、B
n+がAg
+を含み、および1つ以上の第2カチオン、B
m+がI
7+を含む、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項9】
1つ以上のカチオン、Aが1つ以上のジカチオンを含む、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項10】
1つ以上のカチオン、Aが1つ以上の無機ジカチオンを含み、必要に応じて該1つ以上の無機ジカチオンがBa
2+、Sr
2+、Ca
2+、Mg
2+、Pb
2+、Cd
2+およびMn
2+から選ばれる、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項11】
1つ以上のカチオン、Aが1つ以上の有機ジカチオンを含み、必要に応じて該1つ以上の有機カチオンがジアンモニウムカチオンであり、好ましくは該1つ以上の有機カチオンがエチレンジアンモニウムカチオン([H
3N(CH
2)
2NH
3]
2+)を含む、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項12】
1つ以上のカルコゲンアニオン、XがO
2-、S
2-、Se
2-またはTe
2-を含み、好ましくは該1つ以上のカルコゲンアニオン、XがO
2-またはS
2-を含む、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項13】
化合物が、式(I):
[A]
2[B
n+][B
m+][X]
6 (I);
式中:[A]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、の化合物である、いずれかの先行する請求項記載の光電子材料。
【請求項14】
化合物が、式(II):
[A]
2p+2[B
n+]
p[B
m+]
p[X]
6p+2 (II)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、の化合物である、請求項1~12のいずれか1項記載の光電子材料。
【請求項15】
化合物が、式(III):
[A
4+]
2[A
2+]
2q-2[B
n+]
q[B
m+]
q[X]
6q+2 (III);
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;[A
4+]は1つ以上のテトラカチオンであり;[A
2+]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、の化合物である、請求項1~12のいずれか1項記載の光電子材料。
【請求項16】
化合物が、式(IV):
[A
+]
4[A
2+]
2r[B
n+]
r[B
m+]
r[X]
6r+2 (IV);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;[A
+]は1つ以上のモノカチオンであり;[A
2+]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、の化合物である、請求項1~12のいずれか1項記載の光電子材料。
【請求項17】
化合物が、式(IA):
A
2B
n+B
m+X
6 (IA);
式中Aはジカチオンであり;B
n+は第1Bカチオンであり;B
m+は第2Bカチオンであり;およびXはカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、の化合物である、請求項1~13のいずれか1項記載の光電子材料。
【請求項18】
化合物がSr
2AgIO
6、Sr
2NaIO
6、Ba
2NaIO
6またはBa
2AgIO
6であり、好ましくは化合物がBa
2AgIO
6である、請求項1~13および17のいずれか1項記載の光電子材料。
【請求項19】
(ix)1つ以上のカチオン、A;
(x)1つ以上のモノカチオン、B
+、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg
+である;
(xi)1つ以上のヘプタカチオン、B
7+;および
(xii)1つ以上のカルコゲンアニオン、X
を含む化合物。
【請求項20】
該1つ以上のヘプタカチオン、B
7+の1つがハロゲンヘプタカチオンであり、好ましくは該1つ以上のヘプタカチオン、B
7+の1つがI
7+である、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
- 1つ以上のカチオン、Aが請求項9~11のいずれか1項で定義した通りであり;および/または
- 1つ以上のカルコゲンアニオン、Xが請求項12で定義した通りである、
請求項19または請求項20記載の化合物。
【請求項22】
化合物が、式(I):
[A]
2[B
+][B
7+][X]
6 (I);
式中:[A]は1つ以上のジカチオンであり;[B
+]は1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg
+であり;[B
7+]は1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンである、の化合物である;または化合物が、式(II):
[A]
2p+2[B
+]
p[B
7+]
p[X]
6p+2 (II)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A]は1つ以上のジカチオンであり;[B
+]は1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg
+であり;[B
7+]は1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンである、の化合物である;または化合物が、式(III):
[A
4+]
2[A
2+]
2q-2[B
+]
q[B
7+]
q[X]
6q+2 (III);
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;[A
4+]は1つ以上のテトラカチオンであり;[A
2+]は1つ以上のジカチオンであり;[B
+]は1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg
+であり;[B
7+]は1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンである、の化合物である、または化合物が、式(IV):
[A
+]
4[A
2+]
2r[B
+]
r[B
7+]
r[X]
6r+2 (IV);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;[A
+]は1つ以上のモノカチオンであり;[A
2+]は1つ以上のジカチオンであり;[B
+]は1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上の第1カチオンの1つはAg
+であり;[B
7+]は1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンである、の化合物である;または化合物が、式(IA)
A
2AgB
7+X
6 (IA);
式中Aはジカチオンであり;B
7+はヘプタカチオンであり;およびXはカルコゲンアニオンである、の化合物である、
請求項19~21のいずれか1項記載の化合物。
【請求項23】
化合物がSr
2AgIO
6またはBa
2AgIO
6、好ましくはBa
2AgIO
6である、請求項19~22のいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
化合物を含む光触媒材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、B
n+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、B
m+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、B
n+は1つ以上の第2Bカチオン、B
m+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光触媒材料。
【請求項25】
- 1つ以上のジカチオン、Aが請求項9~11のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上の第1カチオン、B
n+が請求項3、4、6および8のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上の第2カチオン、B
m+が請求項3、4、7および8のいずれか1項で定義した通りであり;および/または
- 1つ以上のカルコゲンアニオン、Xが請求項12で定義した通りである、
請求項24記載の光触媒材料。
【請求項26】
化合物が、式(I):
[A]
2[B
n+][B
m+][X]
6 (I);
式中:[A]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1または2であり、mは6または7であり、およびn + m = 8である、の化合物である;または化合物が、式(II):
[A]
2p+2[B
n+]
p[B
m+]
p[X]
6p+2 (II)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1または2であり、mは6または7であり、およびn + m = 8である、の化合物である;または化合物が、式(III):
[A
4+]
2[A
2+]
2q-2[B
n+]
q[B
m+]
q[X]
6q+2 (III);
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;[A
4+]は1つ以上のテトラカチオンであり;[A
2+]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1または2であり、mは6または7であり、およびn + m = 8である、の化合物である;または化合物が、式(IV):
[A
+]
4[A
2+]
2r[B
n+]
r[B
m+]
r[X]
6r+2 (IV);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;[A
+]は1つ以上のモノカチオンであり;[A
2+]は1つ以上のジカチオンであり;[B
n+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[B
m+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1または2であり、mは6または7であり、およびn + m = 8である、の化合物である;または化合物が、式(IA):
A
2B
n+B
m+X
6 (IA);
式中Aはジカチオンであり;B
n+は第1Bカチオンであり;B
m+は第2Bカチオンであり;およびXはカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1または2であり、mは6または7であり、およびn + m = 8である、の化合物である、
請求項24または25記載の光触媒材料。
【請求項27】
半導体材料を含む半導体デバイスであって、該半導体材料が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、B
n+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、B
m+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、B
n+は1つ以上の第2Bカチオン、B
m+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + m = 8である、
を含む化合物を含む、半導体デバイス。
【請求項28】
- 1つ以上のジカチオン、Aが請求項9~11のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上の第1カチオン、B
n+が請求項3、4、6および8のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上の第2カチオン、B
m+が請求項3、4、7および8のいずれか1項で定義した通りであり;および/または
- 1つ以上のカルコゲンアニオン、Xが請求項12で定義した通りであり;および/または
- 化合物が請求項13~18のいずれか1項で定義した通りである、
請求項27記載の半導体デバイス。
【請求項29】
半導体デバイスがトランジスタまたは光電子デバイスであり、必要に応じて半導体デバイスが光起電デバイス、発光デバイスまたは光検出器から選ばれる光電子デバイスである、請求項27または28記載の半導体デバイス。
【請求項30】
半導体デバイスが:少なくとも1つのn-型層を含むn-型領域;少なくとも1つのp-型層を含むp-型領域;およびn-型領域とp-型領域との間に配置された:半導体材料の層を含む、請求項27~29のいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項31】
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、B
n+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、B
m+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、B
n+は1つ以上の第2Bカチオン、B
m+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + m = 8である、
を含む化合物を製造するためのプロセスであって;
1つ以上の第1Bカチオン、B
n+および1つ以上の第2Bカチオン、B
m+を含む前駆体化合物を、1つ以上のカチオン、Aを含む組成物で処理して該化合物を得ることを含む、
プロセス。
【請求項32】
前駆体化合物が固体であり、1つ以上の第1Bカチオン、B
n+および1つ以上の第2Bカチオン、B
m+を含む該固体前駆体化合物を溶媒中に溶解して、1つ以上の第1BカチオンB
n+および1つ以上の第2Bカチオン、B
m+を含む溶液を得、そして該溶液を1つ以上のカチオン、Aを含む組成物と接触させて化合物を得ることを含む、請求項31記載のプロセス。
【請求項33】
前駆体化合物または組成物、あるいは前駆体化合物および組成物が1つ以上のカルコゲンアニオン、Xを含む、請求項31または32記載のプロセス。
【請求項34】
1つ以上の第1Bカチオン、B
n+および1つ以上の第2Bカチオン、B
m+を含む溶液をエバポレートして前駆体化合物を得ることを含む、請求項31~33のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項35】
1つ以上のカチオン、Aを含む組成物が1つ以上のカチオン、Aを含む溶液である、請求項31~33のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項36】
化合物を回収することを含み、必要に応じて該化合物を回収することが、溶媒除去工程を含み、そして必要に応じて化合物を乾燥することをさらに含む、請求項31~35のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項37】
- 1つ以上のカチオン、Aが請求項9~11のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上の第1Bカチオン、B
n+が請求項3、4、6および8のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上の第2Bカチオン、B
m+が請求項3、4、7および8のいずれか1項で定義した通りであり;
- 1つ以上のカルコゲンアニオン、Xが請求項12で定義した通りであり;および/または
- 化合物が請求項13~18のいずれか1項で定義した通りである、
請求項31~36のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項38】
化合物を含む光ルミネセント材料であって、該化合物が請求項1~23のいずれか1項で定義した通りである、光ルミネセント材料。
【請求項39】
化合物を含む電子材料であって、該化合物が請求項1~23のいずれか1項で定義した通りである、電子材料。
【請求項40】
光電子材料として、好ましくは光起電材料としてまたは電界発光材料としての、請求項1~23のいずれか1項で定義した化合物の使用。
【請求項41】
光ルミネセント材料としての、請求項1~23のいずれか1項で定義した化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、化合物、ならびに当該化合物を含む光電子材料、光触媒材料、半導体デバイス、光ルミネセント材料および電子材料に関する。本発明はまた、当該化合物を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ペロブスカイトは、最も一般的な結晶の1つであり、そしてトランジスタ、太陽電池、発光デバイス、メモリ、触媒、および超伝導体などの広範な範囲の用途のために使用されている。ペロブスカイトファミリーの中で、ハライドペロブスカイトは、ここ数年にわたってとてつもなく大きな科学的および技術的興味を引き付けており、そして新興の太陽光発電装置の分野に革命をもたらす。鉛-ハライドペロブスカイトに基づく太陽電池は、記録破りの23%を超える電力変換効率を最近達成し、最先端の銅-インジウム-ガリウム-セレニド(CIGS)および薄膜シリコン技術を上回った(Best Research-Cell Efficiencies. http://www.nrel.gov/を参照)。さらに、ハライドペロブスカイトデバイスの安定性に対する初期の懸念は、20%を超える安定した効率に達するデバイスで軽減された(Turren-Cruz, S.-H.; Hagfeldt, A.; Saliba, M. Science 2018, 362, 449-453を参照)。この大幅な進歩にも関わらず、Pbを環境にやさしい毒性の低い元素で置き換えることが望ましいであろう。この目的のために、ハライドダブルペロブスカイトは最近考案され、そして潜在的な鉛非含有代替物として合成された(Volonakis, G.; Filip, M. R.; Haghighirad, A. A.; Sakai, N.; Wenger, B.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 1254-1259; Slavney, A. H.; Hu, T.; Lindenberg, A. M.; Karunadasa, H. I. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 2138-2141; McClure, E. T.; Ball, M. R.; Windl, W.; Woodward, P. M. Chem. Mater. 2016, 28, 1348-1354; Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Milot, R. L.; Sio, W. H.; Filip, M. R.; Wenger, B.; Johnston, M. B.; Herz, L. M.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 772-778)。合成されたダブルペロブスカイトの中で、Cs2BiAgBr6は1.9 eVの最も低いバンドギャップを有する(Slavney, A. H.; Hu, T.; Lindenberg, A. M.; Karunadasa, H. I. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 2138-2141; McClure, E. T.; Ball, M. R.; Windl, W.; Woodward, P. M. Chem. Mater. 2016, 28, 1348-1354; Filip, M. R.; Hillman, S.; Haghighirad, A. A.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 2579-2585)。しかし、このバンドギャップは間接的である。Cs2AgInCl6は、唯一の直接ギャップ半導体であるが、バンドギャップは比較的大きい3.3 eVである(Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Milot, R. L.; Sio, W. H.; Filip, M. R.; Wenger, B.; Johnston, M. B.; Herz, L. M.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 772-778; Locardi, F.; Cirignano, M.; Baranov, D.; Dang, Z.; Prato, M.; Drago, F.; Ferretti, M.; Pinchetti, V.; Fanciulli, M.; Brovelli, S.; De Trizio, L.; Manna, L. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 12989-12995; Luo, J.; Li, S.; Wu, H.; Zhou, Y.; Li, Y.; Liu, J.; Li, J.; Li, K.; Yi, F.; Niu, G.; Tang, J. ACS Photonics 2018, 5, 398-405)。従って、例えば光起電材料としてまたは電界発光材料として;半導体として;例えばトランジスタにおいて電荷を伝導するために使用され得る電子材料として;および光ルミネセント材料として光電子工学における用途のために低い(3 eV未満)直接バンドギャップを有する鉛非含有ペロブスカイトを同定する必要が存在する。
【0003】
合理的な設計戦略に基づいて、最近、鉛-ベースの化合物の顕著な光電子特性に合致するため、非毒性ハライドダブルペロブスカイトは1価カチオンとしてのインジウム(In)と3価カチオンとしてのSbまたはBiとを組み合わさなければならないことが示された(Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 3917-3924を参照)。しかし、これらの化合物はまだ合成されていない。
【0004】
歴史的に、酸化物ABO3ペロブスカイトおよびA2BB’O6ダブルペロブスカイトは、ハライドペロブスカイトの出現のずっと以前に、1世紀超にわたって調査されてきた。例えば銅酸化物は、数十年間高温超電導体のための原型的な系であった(Bednorz, J. G.; Muller, K. A. Z. Phys. B 1986, 64, 189-193)が、マンガン-ベースの酸化物ペロブスカイトは巨大磁気抵抗を示す最も優れた材料である(Jin, S.; Tiefel, T. H.; McCormack, M.; Fastnacht, R. A.; Ramesh, R.; Chen, L. H. Science 1994, 264, 413-415)。概して、現存するペロブスカイトの大多数(68%)は酸化物である(Luo, X.; Oh, Y. S.; Sirenko, A.; Gao, P.; Tyson, T. A.; Char, K.; Cheong, S.-W. Appl. Phys. Lett. 2012, 100, 172112; Kim, H. J.; Kim, U.; Kim, H. M.; Kim, T. H.; Mun, H. S.; Jeon, B.-G.; Hong, K. T.; Lee, W.-J.; Ju, C.; Kim, K. H.; Char, K. Appl. Phys. Express 2012, 5, 061102; Shin, S. S.; Yeom, E. J.; Yang, W. S.; Hur, S.; Kim, M. G.; Im, J.; Seo, J.; Noh, J. H.; Seok, S. I. Science 2017, 356, 167-171)が、ハライドは公知の化合物のわずか16%を占めるにすぎない(Filip, M. R.; Giustino, F. Proc. Natl. Acad. Sci. 2018, 115, 5397-5402; Volonakis, G.; Filip, M. R.; Haghighirad, A. A.; Sakai, N.; Wenger, B.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 1254-1259; Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Milot, R. L.; Sio, W. H.; Filip, M. R.; Wenger, B.; Johnston, M. B.; Herz, L. M.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 772-778; Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 3917-3924を参照)。
【0005】
Nechacheら(Nechache et al., Bandgap tuning of multiferrooic oxide solar cells, Nature Photonics, 2014, 61~67頁)は、マルチフェロイック酸化物太陽電池を開示する。Sleightら(Sleight et al., Compounds of Post-Transition Elements with the Ordered Perovskite Structure, 1963, Inorganic Chemistry p292)は、多数のダブルペロブスカイト化合物の合成を記載する。De Hairら(De Hair et al., Vibrational Spectra and Force Constants of Periodates with Ordered Perovskite Structure, J. inorg. Nucl. Chem, 1974, vol. 36, pp 313-315)は、多数のダブルペロブスカイト化合物の振動スペクトルを記載する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、半導体材料および/または光活性(例えば光電子)材料として有用であり、そして先行技術に関連する不利益を有しない化合物を提供する。特に、本発明は、(i)直接バンドギャップを有し、(ii)光電子用途に適した大きさのバンドギャップを有し、(iii)容易に入手可能な、環境にやさしい非毒性の材料から製造され、そして(iv)容易に入手可能な出発原料から、簡単な低温経路によって、例えば、溶液処理によって合成され得る化合物を提供する。本発明者らは、特に光電子材料、光ルミネセント材料、光触媒材料および半導体材料としての有用性を有する新しいファミリーの化合物を開発した。Cs2AgInCl6が効率的な発光材料であるという最近の発見に従い、本発明者らは、その化合物とカルコゲンダブルペロブスカイトなどの他のダブルペロブスカイトとの間の関係を調査した。カルコゲンペロブスカイトとハライドペロブスカイトとの間の関連性は、Bサイトでのカチオンの電子価(electronic valency)にあることが見い出された。調査したダブルペロブスカイトの光吸収および光ルミネセンスが記載されている。本発明者らは、驚くべきことに、Cs2AgInCl6のカルコゲンアナログがCs2AgInCl6よりも有意に低いバンドギャップを有することを見い出した。例えばBa2AgIO6のバンドギャップは、可視領域にある1.9eVであることが示され、本願発明のカルコゲンアナログ材料が光電子材料として非常に有望であることを示す。従って、Ba2AgIO6を含むカルコゲンダブルペロブスカイトは、可視におけるバンドギャップおよびCs2AgInCl6と類似のバンド構造を有し、そしてそれゆえ光電子材料、光ルミネセント材料、光触媒材料および半導体材料を含む広範な種々の用途を有する化合物として同定された。この新たなクラスの材料はまた、鉛(および他の有毒な重金属)の使用を完全に回避することを可能とし、著しい環境的利益を提供する。材料は、鉛非含有ペロブスカイト太陽光発電装置を最適化する強力な可能性を有する。新規ダブルペロブスカイトはまた、酸化に対して安定である。
【0007】
従って、本発明は、化合物を含む光電子材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光電子材料を提供する。
【0008】
本発明はまた:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上のモノカチオン、B+、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg+である;
(iii)1つ以上のヘプタカチオン、B7+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X
を含む化合物を提供する。
【0009】
本発明はまた、化合物を含む光触媒材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光触媒材料を提供する。
【0010】
本発明はまた、半導体材料を含む半導体デバイスであって、該半導体材料が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + m = 8である、
を含む化合物を含む、半導体デバイスを提供する。
【0011】
本発明はまた、化合物を含む光ルミネセント材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光ルミネセント材料を提供する。
【0012】
本発明はまた、化合物を含む電子材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、電子材料を提供する。
【0013】
本発明はまた、化合物を含む半導体であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、半導体を提供する。
【0014】
本発明者らはまた、新たに開発した低温溶液処理経路を経由する、本明細書中で定義した化合物への(すなわちBa2AgIO6を含むカルコゲンアナログ材料への)成功した合成経路を開発した。本発明者らは、前駆体化合物を組成物1つ以上のカチオン、Aで処理する前に、まず前駆体化合物を合成することが不可欠であることを見い出した。本発明者らは、先行技術において記載されたBおよびAカチオンの全てを含む溶液が単純に混合される方法が所望の化合物を生成しないことを見い出した。代わりに、所望の化合物よりもむしろ、BおよびXイオンのみを含む化合物、例えば以下の式Vに従う化合物が典型的には形成される。本発明者らは、驚くべきことに、この前駆体化合物がまず形成され、次いで1つ以上のカチオン、Aで処理されるプロセスが、生成物として所望の化合物を提供することを見い出した。
【0015】
従って、本発明は、
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + m = 8である、
を含む化合物を製造するためのプロセスであって;
1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む前駆体化合物を、1つ以上のカチオン、Aを含む組成物で処理して該化合物を得ることを含む、プロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、B = Na、Agを有するBa
2BIO
6酸化物ダブルペロブスカイトの結晶構造の原子図を示す。
図1(b)は、Ba
2NaIO
6、Ba
2AgIO
6およびCs
2AgInCl
6のDFT-PBE0電子帯構造を示す。有効質量が薄灰色で示される。エネルギー軸は価電子帯の上端(valence band top)に参照される。
【
図2】
図2は、Ag 4d-軌道(左パネル)およびO 2p-軌道(右パネル)の寄与を示すBa
2AgIO
6のDFT-PBE0電子帯構造を示す。
【
図3】
図3(a)は、酸化物(左)、ハライド(右)、シングル(上)およびダブル(下)ペロブスカイトを含むアナログのファミリーの略図である。Bサイトカチオンがd
10s
0原子価を有する化合物に焦点が当てられる。
図3(b)は、シングルペロブスカイトBaSnO
3、そのハライドアナログCsCdCl
3のDFT-PBE0電子帯構造を示し、そして(c)はそのダブルペロブスカイトアナログBa
2InSbO
6およびBa
2CdTeO
6のDFT-PBE0電子帯構造を示す。Fm3m格子に対応するスーパーセルでのBaSnO
3についてのバンド折り畳み効果もまた示される。
【
図4】
図4(a)は、O 2p軌道のエネルギー準位と比較して、Ag、Cd、In、Sn、Sb、TeおよびIの4d-軌道の全電子エネルギー準位を示す。
図4(b)は、Ba
2CdTeO
6およびBa
2AgIO
6酸化物ダブルペロブスカイトについての、価電子帯の上端での電子波動関数の二乗係数を示す。
【
図5】
図5は、合成したAgIO
4についてのX-線回折パターンを示す。実線は、無機結晶構造データベース(#52380)に報告された参照AgIO
4化合物のパターンである。差し込み図は、合成したAgIO
4黄色粉末の画像を示す。
【
図6】
図6(a)は、合成されたままのBa
2AgIO
6(点)のX-線回折パターン、およびDFT-PBE最適化した構造(実線)のシミュレートしたパターンを示す。差し込み図は、合成されたままの粉末の写真である。矢印は、AgI不純物に暫定的に割り当てられるピークを示す。
図6(b)は、Ba
2AgIO
6についてのUV-可視吸収および光ルミネセンススペクトルを示す。差し込み図は、対応するTaucプロットを示す。
図6(c)は、Ba
2AgIO
6の時間分解光ルミネセンス崩壊および対応する双指数関数フィットを示す。
【
図7】
図7は、以下に記載する比較合成例からの生成物の粉末X-線回折スペクトルを示す。
【
図8】
図8は、Ba
2AgIO
6ダブルペロブスカイトの立方格子、正方格子および斜方格子の原子スケールモデルおよびフォノンバンド構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
本明細書中で使用される用語「光電子材料」は、(i)光を吸収し、これは次いで自由電荷担体を発生し得る;または(ii)電子および正孔の両方の電荷を受容し、これらは続いて再結合しそして光を放出し得るのいずれかの材料をいう。このような材料はまた、「光活性材料」とも呼ばれ得る。光電子/光活性材料は、半導体材料の例であり得る。
【0018】
本明細書中で使用される用語「光起電材料」は、光を吸収し、次いで自由電荷担体を発生する材料をいう。
【0019】
本明細書中で使用される用語「電界発光材料」は、電子および正孔の両方の電荷を受容し、これらは続いて再結合しそして光を放出する材料をいう。
【0020】
本明細書中で使用される用語「光ルミネセント材料」は、光子を吸収しそして光励起を行い、次いで光子を放出することができる材料をいう。光電子放出材料は、バンドギャップよりも高いエネルギーの光を吸収し、そしてバンドギャップでのエネルギーで光を再放出する材料である。
【0021】
本明細書中で使用される用語「電子材料」は、電荷を伝導することができる材料をいう。電子材料は、正孔導体材料、電子輸送材料、または電子および正孔を輸送することができる材料であり得る。電子材料は、典型的にはトランジスタにおける使用に適している。
【0022】
本明細書中で使用される用語「半導体」および「半導体材料」は、両方とも導体の電気伝導度と誘電体の電気伝導度との間の中間の大きさの電気伝導度を有する材料をいう。半導体または半導体材料は、負(n)-型半導体、正(p)-型半導体または真性(i)半導体であり得る。半導体または半導体材料は、0.5~3.5 eV、例えば、0.5~2.5 eVまたは1.0~2.0 eV(300 Kで測定した場合)のバンドギャップを有し得る。用語「半導体」および「半導体材料」は、本明細書中で同じ意味を有し、そして互いに交換可能で使用され得る。本明細書中で定義した化合物は、典型的には半導体である。
【0023】
本明細書中で使用される用語「半導体デバイス(semiconductor device)」および「半導体デバイス(semiconducting device)」は、半導体材料を含む機能性部品を含むデバイスをいう。半導体デバイスの例は、光起電デバイス、太陽電池、光検出器、光ダイオード、光センサ、発色デバイス、トランジスタ、感光性トランジスタ、光トランジスタ、固体トライオード、バッテリー、バッテリー電極、キャパシタ、スーパーキャパシタ、発光デバイスおよび発光ダイオードを含む。用語「半導体デバイス(semiconductor device)」および「半導体デバイス(semiconducting device)」は、本明細書中で同じ意味を有し、そして互いに交換可能で使用され得る。
【0024】
本明細書中で使用される用語「光電子デバイス」は、光を発生し、制御し、検出し、または放出するデバイスをいう。光は、任意の電磁放射を含むことが理解される。光電子デバイスの例は、光起電デバイス、光ダイオード(太陽電池を含む)、光トランジスタ、光電子増倍管、フォトレジスタ、発光デバイス、電界発光デバイス、発光ダイオードおよび電荷注入レーザーを含む。しばしば、本明細書中で言及される「光電子デバイス」は、光起電デバイスまたは電界発光デバイスである。
【0025】
本明細書中で使用される用語「結晶性」は、拡張3D結晶構造を有する化合物である結晶性化合物を示す。結晶性化合物は、典型的には結晶の形態、または多結晶性化合物の場合、微結晶(すなわち、1 μm以下の粒子径を有する多数の結晶)の形態である。結晶は、一緒になってしばしば層を形成する。結晶性材料の結晶は、任意の大きさであり得る。結晶が1 nmから1000 nmまでの範囲の1つ以上の寸法を有する場合、それらはナノ結晶と記載され得る。本明細書中で定義した化合物は、一般的に結晶性化合物である。それらは、典型的には結晶性半導体である。
【0026】
本明細書中で使用される用語「モノカチオン」は、単一の正電荷を有する任意のカチオン、すなわち、式A+、式中Aは任意の化学部分、例えば、金属原子または有機部分である、のカチオンをいう。本明細書中で使用される用語「ジカチオン」は、2重の正電荷を有する任意のカチオン、すなわち、式A2+、式中Aは任意の化学部分、例えば、金属原子または有機部分である、のカチオンをいう。本明細書中で使用される用語「トリカチオン」は、3重の正電荷を有する任意のカチオン、すなわち、式A3+、式中Aは任意の化学部分、例えば、金属原子である、のカチオンをいう。本明細書中で使用される用語「テトラカチオン」は、4重の正電荷を有する任意のカチオン、すなわち、式A4+、式中Aは任意の化学部分、例えば、金属原子である、のカチオンをいう。本明細書中で使用される用語「ヘプタカチオン」は、+7の電荷を有する任意のカチオン、すなわち、式A7+、式中Aは任意の化学部分、例えば、金属原子またはハロゲン原子である、のカチオンをいう。
【0027】
本明細書中で使用される用語「n-型領域」は、1つ以上の電子輸送(すなわち、n-型)材料の領域をいう。同様に、用語「n-型層」は、電子輸送(すなわち、n-型)材料の層をいう。電子輸送(すなわち、n-型)材料は、例えば、単一の電子輸送化合物または元素材料であり得る。電子輸送化合物または元素材料は、ドープされていなくてもよく、または1つ以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0028】
本明細書中で使用される用語「p-型領域」は、1つ以上の正孔輸送(すなわち、p-型)材料の領域をいう。同様に、用語「p-型層」は、正孔輸送(すなわち、p-型)材料の層をいう。正孔輸送(すなわち、p-型)材料は、単一の正孔輸送化合物または元素材料、あるいは2つ以上の正孔輸送化合物または元素材料の混合物であり得る。正孔輸送化合物または元素材料は、ドープされていなくてもよく、または1つ以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0029】
本明細書中で使用される用語「ペロブスカイト」は、CaTiO3の構造に関連する3次元結晶構造を有する材料またはCaTiO3の構造に関連する構造を有する材料の層を含む材料をいう。CaTiO3の構造は、式ABX3によって表され得、式中AおよびBは異なる大きさのカチオンであり、およびXはアニオンである。単位格子において、Aカチオンは(0,0,0)にあり、Bカチオンは(1/2, 1/2, 1/2)にあり、そしてXアニオンは(1/2, 1/2, 0)にある。Aカチオンは、通常Bカチオンよりも大きい。当業者は、A、BおよびXが変化する場合、異なるイオンサイズはペロブスカイト材料の構造をCaTiO3によって採用される構造から対称性がより低い歪んだ構造へと歪ませ得ることを理解する。対称性はまた、材料がCaTiO3の構造に関連する構造を有する層を含む場合、より低い。ペロブスカイト材料の層を含む材料はよく知られている。例えば、K2NiF4-型構造を採用する材料の構造は、ペロブスカイト材料の層を含む。当業者は、ペロブスカイト材料が式[A][B][X]3、式中[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、および[X]は少なくとも1つのアニオンである、によって表され得ることを理解する。ペロブスカイトが1つよりも多いAカチオンを含む場合、異なるAカチオンは、秩序的な方法でまたは無秩序な方法でAサイトを超えて分布し得る。ペロブスカイトが1つよりも多いBカチオンを含む場合、異なるBカチオンは、秩序的な方法でまたは無秩序な方法でBサイトを超えて分布し得る。ペロブスカイトが1つよりも多いXアニオンを含む場合、異なるXアニオンは、秩序的な方法でまたは無秩序な方法でXサイトを超えて分布し得る。1つよりも多いAカチオン、1つよりも多いBカチオンまたは1つよりも多いXカチオンを含むペロブスカイトの対称性は、CaTiO3の対称性よりも低い。層状ペロブスカイトについて、化学量論は、A、BおよびXイオンの間で変化し得る。例として、[A]2[B][X]4構造は、Aカチオンが3Dペロブスカイト構造内で適合するにはあまりにも大きすぎるイオン半径を有する場合、採用され得る。用語「ペロブスカイト」はまた、ルドルスデン-ポッパー相を採用するA/M/X材料を含む。ルドルスデン-ポッパー相は、層状成分および3D成分の混合物を有するペロブスカイトをいう。このようなペロブスカイトは、結晶構造An-1A’2MnX3n+1、ここでAおよびA’は異なるカチオンであり、そしてnは1~8、または2~6の整数である、を採用し得る。用語「ペロブスカイト」はまた、ディオン-ジェイコブソン相を採用するA/M/X材料を含む。ディオン-ジェイコブソン相は、層状成分および3D成分の混合物を有するペロブスカイトをいう。このようなペロブスカイトは、結晶構造Aq-1A’BqX3q+1、ここでAおよびA’は異なるカチオンであり、そしてqは1~8、または2~6の整数である、を採用し得る。用語「混合2Dおよび3D」ペロブスカイトは、AMX3およびAn-1A’2MnX3n+1ペロブスカイト相の両方の領域またはドメインがその中に存在するペロブスカイトフィルムをいうために使用される。
【0030】
本明細書中で使用される用語「ハライド」は、周期律表のVIII族の元素の1価のアニオンを示す。「ハライド」は、フルオリド、クロリド、ブロミドおよびヨージドを含む。
【0031】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖飽和炭化水素基をいう。アルキル基は、C1-20アルキル基、C1-14アルキル基、C1-10アルキル基、C1-6アルキル基またはC1-4アルキル基であり得る。C1-10アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルである。C1-6アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。C1-4アルキル基の例は、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、t-ブチル、s-ブチルまたはn-ブチルである。用語「アルキル」が炭素の数を特定する接頭辞なしで使用される場合、それは、典型的には、1~6個の炭素(およびこれはまた本明細書中で参照される任意の他の有機基に適用する)を有する。
【0032】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」は、飽和または部分不飽和環状炭化水素基をいう。シクロアルキル基は、C3-10シクロアルキル基、C3-8シクロアルキル基またはC3-6シクロアルキル基であり得る。C3-8シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシ-1,3-ジエニル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。C3-6シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含む。
【0033】
本明細書中で使用される用語「アリール」は、環部分に6~14個の炭素原子、典型的には6~10個の炭素原子を含む単環式、二環式または多環式芳香族環をいう。例は、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、アントレセニル(anthrecenyl)およびピレニル基を含む。本明細書中で使用される用語「アリール基」は、ヘテロアリール基を含む。本明細書中で使用される用語「ヘテロアリール」は、典型的には1つ以上のヘテロ原子を含む環部分に6~10個の原子を含む単環式または二環式ヘテロ芳香族環をいう。ヘテロアリール基は、一般にO、S、N、P、SeおよびSiから選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む5-または6-員環である。それは、例えば、1つ、2つまたは3つのヘテロ原子を含み得る。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、キノリルおよびイソキノリルを含む。
【0034】
本明細書中で使用される用語「アルキレン基」は、1~20個の炭素原子(特に指示しない限り)を有する炭化水素化合物の2つの水素原子を、両方とも同じ炭素原子から除去するか、または2つの異なる炭素原子のそれぞれから1つを除去するかのいずれかによって得られる置換または無置換の2座部分をいい、これは、脂肪族または脂環式であり得、およびこれは、飽和、部分不飽和、または完全不飽和であり得る。従って、用語「アルキレン」は、以下で議論するサブクラスのアルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレンなどを含む。典型的には、それは、C1-10アルキレン、例えばC1-6アルキレンである。典型的には、それは、C1-4アルキレン、例えば、メチレン、エチレン、i-プロピレン、n-プロピレン、t-ブチレン、s-ブチレンまたはn-ブチレンである。それはまた、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレンおよびそれらの種々の分岐鎖異性体であり得る。アルキレン基は、例えば、アルキルについて上記で特定したように、置換または無置換であり得る。典型的には、置換アルキレン基は、1、2または3個の置換基、例えば1または2個を有する。
【0035】
この文脈において、接頭辞(例、C1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7など)は、炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を示す。例えば、本明細書中で使用される用語「C1-4アルキレン」は、1~4個の炭素原子を有するアルキレン基に関連する。アルキレン基の群の例は、C1-4アルキレン(「低級アルキレン」)、C1-7アルキレン、C1-10アルキレンおよびC1-20アルキレンを含む。
【0036】
直線飽和C1-7アルキレン基の例は、nが1~7の整数である-(CH2)n-、例えば、-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-(エチレン)、-CH2CH2CH2-(プロピレン)、および-CH2CH2CH2CH2-(ブチレン)を含むが、これらに限定されない。分岐飽和C1-7アルキレン基の例は、-CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH2CH3)-、-CH(CH2CH3)CH2-、および-CH2CH(CH2CH3)CH2-を含むが、これらに限定されない。
【0037】
直線部分不飽和C1-7アルキレン基の例は、-CH=CH-(ビニレン)、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-CH2-、-CH=CH-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH=CH-、および-CH=CH-CH2-CH2-CH=CH-を含むが、これらに限定されない。
【0038】
分枝部分不飽和C1-7アルキレン基の例は、-C(CH3)=CH-、-C(CH3)=CH-CH2-、および-CH=CH-CH(CH3)-を含むが、これらに限定されない。
【0039】
1つ以上の二重結合を含む部分不飽和アルキレン基は、アルケニレン基と呼ばれ得る。1つ以上の三重結合を含む部分不飽和アルキレン基は、アルキニレン基(例えば-C≡C-、CH2-C≡C-、および-CH2-C≡C-CH2-)と呼ばれ得る。
【0040】
脂環式飽和C1-7アルキレン基の例は、シクロペンチレン(例、シクロペンタ-1,3-イレン)、およびシクロヘキシレン(例、シクロヘキサ-1,4-イレン)を含むが、これらに限定されない。脂環式部分不飽和C1-7アルキレン基の例は、シクロペンテニレン(例、4-シクロペンテン-1,3-イレン)、シクロヘキセニレン(例、2-シクロヘキセン-1,4-イレン;3-シクロヘキセン-1,2-イレン;2,5-シクロヘキサジエン-1,4-イレン)を含むが、これらに限定されない。このような基はまた、「シクロアルキレン基」とも呼ばれ得る。
【0041】
本明細書中で使用される用語「アリーレン基」は、本明細書中で定義されるアリール基の2つの水素原子を、両方とも同じ炭素原子から除去するか、または2つの異なる炭素原子のそれぞれから1つを除去するかのいずれかによって得られる置換または無置換の2座部分をいう。従って、用語「アリーレン」は、フェニレン、ナフチレン、インデニレン、インダニレン、アントレセニレン(anthrecenylene)およびピレニレン基、およびまたピリジレン、ピラジニレン、ピリミジニレン、ピリダジニレン、フラニレン、チエニレン、ピラゾリジニレン、ピロリレン、オキサゾリレン、オキサジアゾリレン、イソキサゾリレン、チアジアゾリレン、チアゾリレン、イソチアゾリレン、イミダゾリレン、ピラゾリレン、キノリレンおよびイソキノリレンなどのヘテロアリーレン基を含む。
【0042】
置換された有機基の文脈において本明細書中で使用される用語「置換された」は、C1-10アルキル、アリール(本明細書中で定義した通り)、シアノ、アミノ、ニトロ、C1-10アルキルアミノ、ジ(C1--10)アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール(C1--10)アルキルアミノ、アミド、アシルアミド、ヒドロキシ、オキソ、ハロ、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1-10アルコキシ、アリールオキシ、ハロ(C1--10)アルキル、スルホン酸、チオール、C1-10アルキルチオ、アリールチオ、スルホニル、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸およびホスホン酸エステルから選ばれる1つ以上の置換基を有する有機基をいう。置換されたアルキル基の例は、ハロアルキル、パーハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキルおよびアルカリール基を含む。基が置換されている場合、それは1つ、2つまたは3つの置換基を有し得る。例えば、置換された基は1つまたは2つの置換基を有し得る。
【0043】
本明細書中で使用される用語「アンモニウム」は、4級窒素を含む有機カチオンを示す。アンモニウムカチオンは、式R1R2R3R4N+のカチオンである。R1、R2、R3、およびR4は置換基である。R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、典型的には水素から、または必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアミノから独立して選ばれ;任意の置換基は、好ましくはアミノまたはイミノ置換基である。通常、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、水素、および必要に応じて置換されたC1-10アルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルキル、C3-10シクロアルケニル、C6-12アリールおよびC1-6アミノから独立して選ばれ;存在する場合、任意の置換基は、好ましくはアミノ基であり;特に好ましくはC1-6アミノである。好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、水素、および無置換のC1-10アルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルキル、C3-10シクロアルケニル、C6-12アリールおよびC1-6アミノから独立して選ばれる。特に好ましい実施態様において、R1、R2、R3、およびR4は、水素、C1-10アルキル、およびC2-10アルケニルおよびC1-6アミノから独立して選ばれる。さらに好ましくは、R1、R2、R3、およびR4は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC1-6アミノから独立して選ばれる。
【0044】
用語「から実質的になる」は、それが実質的に含む成分ならびに他の成分を含有する組成物をいい、但し、他の成分は組成物の必須の特性に実質的に影響を与えない。典型的には、ある特定の成分から実質的になる組成物は、95 wt%以上のそれらの成分または99 wt%以上のそれらの成分を含有する。
【0045】
光電子材料
本発明は、化合物を含む光電子材料であって、該化合物が:
(i)1つ以上のカチオン、A;
(ii)1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光電子材料を提供する。
【0046】
典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なる元素(単数または複数)である。典型的には、化合物は結晶性化合物である。
【0047】
典型的には、光電子材料は光起電材料または電界発光材料である。1つの実施態様において、光電子材料は光起電材料である。別の実施態様において、光電子材料は電界発光材料である。
【0048】
典型的には、1つ以上の第1カチオン、Bn+の少なくとも1つまたは1つ以上の第2カチオン、Bm+の少なくとも1つは、Nが3~5の整数である電子配置Nd10(N+1)s0を有する。例えば、1つ以上の第1カチオン、Bn+の少なくとも1つまたは1つ以上の第2カチオン、Bm+の少なくとも1つは、電子配置3d104s0、または配置4d105s0または配置5d106s0を有し得る。1つ以上の第1Bカチオン、Bn+の少なくとも1つは、Nが3~5の整数である電子配置Nd10(N+1)s0を有し得る。1つ以上の第2Bカチオン、Bm+の少なくとも1つは、Nが3~5の整数である電子配置Nd10(N+1)s0、例えば配置3d104s0、または配置4d105s0または配置5d106s0を有し得る。典型的には、1つ以上の第1カチオン、Bn+の少なくとも1つおよび1つ以上の第2カチオン、Bm+の少なくとも1つは、電子配置Nd10(N+1)s0を有する。
【0049】
典型的には、nは、1および6を含めて1~6の整数であり、または1および5を含めて1~5の整数であり、または1および4を含めて1~4の整数であり、または1および3を含めて1~3の整数である。典型的にはnは1または2である。典型的には、mは、2および7を含めて2~7の整数であり、または3および7を含めて3~7の整数であり、または4および7を含めて4~7の整数であり、または5および7を含めて5~7の整数である。好ましくはmは6または7である。従って、典型的には、nは、1および6を含めて1~6の整数であり、そしてmは、2および7を含めて2~7の整数であり、またはnは、1および5を含めて1~5の整数であり、そしてmは、3および7を含めて3~7の整数であり、またはnは、1および4を含めて1~4の整数であり、そしてmは、4および7を含めて4~7の整数であり、またはnは、1および3を含めて1~3の整数であり、そしてmは、5および7を含めて5~7の整数である。典型的には、nは1または2であり、そしてmは6または7である。好ましくは、nは1であり、そしてmは7である。
【0050】
典型的には、化合物のバンドギャップは3.0 eV未満であり、または測定した光ルミネセンスピークは3.0 eV未満であるか、または光吸収の開始は3.0 eV未満である。1つの実施態様において、化合物のバンドギャップは3.0 eV未満であり、測定した光ルミネセンスピークは3.0 eV未満であり、そして光吸収の開始は3.0 eV未満である。典型的には、化合物のバンドギャップは、1.0 eV~2.9 eV、または1.25~2.8 eV、または1.5~2.7 eVである。典型的には、化合物のバンドギャップは、1.0 eV~2.5 eV、または1.2~2.25 eV、または1.3~2.0 eVである。ここで、バンドギャップは、典型的には直接バンドギャップ、または準直接バンドギャップをいう。好ましくは、それは直接バンドギャップをいう。準直接バンドギャップとは、バンドギャップが間接的であるが、間接ギャップと直接ギャップとの間のエネルギー差が0.1 eVよりも小さいことを意味する。
【0051】
Bカチオン
典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、1つ以上のモノカチオン、典型的には1つ以上の無機モノカチオン、典型的には1つ以上の金属モノカチオンである。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、貴金属カチオンおよび/またはアルカリ金属カチオンを含む。貴金属は、典型的にはルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、レニウム(Re)および銅(Cu)から選ばれる。アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、およびセシウム(Cs)を含む、周期律表の1族の金属である。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Ag+、Au+およびHg+の1つ以上を含む。好ましくは1つ以上の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含む。
【0052】
1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、単一のカチオンを含み得、または電荷n+の複数のカチオンを含み得る。例えば、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、電荷n+の2つのカチオンまたは電荷n+の3つのカチオンを含み得る。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+の少なくとも1つはAg+である。1つ以上の第1Bカチオン、Bn+が電荷n+の複数のカチオンを含む場合、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、Ag+およびNa+、またはAg+およびAu+、またはAg+およびCu+、またはAg+およびK+、またはCu+およびNa+、またはCu+およびK+、またはAu+およびNa+またはAu+およびK+を含み得るかまたはこれらからなり得る。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、Ag+およびNa+、またはAg+およびAu+、またはAg+およびCu+またはAg+およびK+を含むかまたはこれらからなる。
【0053】
典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、1つ以上のヘプタカチオンであるかまたはこれを含む。典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含む。ハロゲンは、周期律表の17族の元素であり、そしてフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)およびアスタチン(At)を含む。典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれ、典型的には臭素またはヨウ素である+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含む。好ましくは、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、ヨウ素をI7+として含む。
【0054】
1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、単一のカチオンを含み得、または電荷m+の複数のカチオンを含み得る。例えば、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、電荷m+の2つのカチオンまたは電荷m+の3つのカチオンを含み得る。典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+の少なくとも1つはI7+である。1つ以上の第2Bカチオン、Bm+が電荷m+の複数のカチオンを含む場合、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+はI7+およびBr7+を含み得る。
【0055】
1つの実施態様において、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含み、そして1つ以上の第2Bカチオン、Bm+はI7+を含む。従って、化合物は、Ag+である単一の第1BカチオンおよびI7+である単一の第2Bカチオンを含み得る。化合物は、複数の第1Bカチオン、Bn+および複数の第2Bカチオン、Bm+を含み得、ここで複数の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含み、そして複数の第2Bカチオン、Bm+はI7+を含む。
【0056】
Aカチオン
典型的には、1つ以上のカチオン、Aは1つ以上のジカチオンを含む。1つの実施態様において、1つ以上のカチオン、Aは1つ以上のジカチオンからなる。別の実施態様において、1つ以上のカチオン、Aは、異なる電荷の1つ以上のジカチオンおよび1つ以上のカチオンからなる。例えば、1つ以上のカチオン、Aは、1つ以上のジカチオンおよび1つ以上のモノカチオン、または1つ以上のジカチオンおよび1つ以上のトリカチオン、または1つ以上のジカチオンおよび1つ以上のテトラカチオンからなり得る。
【0057】
1つ以上のカチオン、Aは、単一のジカチオンを含み得るか、または複数のジカチオンを含み得る。例えば、1つ以上のカチオン、Aは、2つのジカチオンまたは3つのジカチオンを含み得る。
【0058】
典型的には、1つ以上のカチオン、Aは、1つ以上の無機ジカチオンまたは1つ以上の有機ジカチオンを含む。1つ以上のカチオン、Aは、1つ以上の無機ジカチオンおよび1つ以上の有機ジカチオンを含み得る。
【0059】
1つ以上の無機ジカチオンは、アルカリ土類金属ジカチオン、遷移金属ジカチオンまたはポスト遷移金属ジカチオンから選ばれ得る。典型的には、1つ以上の無機ジカチオンは1つ以上のアルカリ土類金属ジカチオンを含む。典型的には、1つ以上の無機ジカチオンは、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、Pb2+、Cd2+およびMn2+から選ばれる。
【0060】
1つ以上のカチオン、Aは1つ以上の有機ジカチオンを含み得る。例えば、1つ以上の有機カチオンはジアンモニウムカチオンであり得る。
【0061】
ジアンモニウムカチオンは、典型的には式:
[(NR2
3)-R1-(NR2
3)]2+
式中R1はアルキレン基、シクロアルキレン基またはアリーレン基から選ばれ、および式中各R2は独立してアルキル基および水素から選ばれる、を有する。典型的には、R1はC1-10アルキレン基、C3-6シクロアルキレン基およびC6-10アリーレン基から選ばれ、そして各R2は独立してC1-6アルキル基および水素から選ばれる。例えば、R1はC1-6アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレンであり得、そしてR2は水素であり得る。従って、ジアンモニウムカチオンはエチレンジアンモニウムカチオン([H3N(CH2)2NH3]2+)であり得る。従って、該1つ以上の有機カチオンはエチレンジアンモニウムカチオン([H3N(CH2)2NH3]2+)を含む。
【0062】
1つ以上のAカチオンがモノカチオンである場合、モノカチオンは、典型的には無機モノカチオン、典型的には金属モノカチオンである。例えば、モノカチオンは、アルカリ金属カチオン、例えばNa+、K+、Rb+またはCs+から選ばれるアルカリ金属カチオン、典型的にはCs+であり得る。あるいは、1つ以上のAカチオンがモノカチオンである場合、モノカチオンは、典型的にはアンモニウム基を含む有機モノカチオンであり得る。例えば、1つ以上のAカチオンは、C1-10アルキルアンモニウムカチオン、典型的にはC1-6アルキルアンモニウムカチオン、例えばヘキシルアンモニウムカチオン、ペンチルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、プロピルアンモニウムカチオン、エチルアンモニウムカチオンまたはメチルアンモニウムカチオンを含み得る。1つ以上のAカチオンは、ホルムアミジニウムカチオン(H2N-C(H)=NH2)+を含み得る。
【0063】
1つ以上のAカチオンがテトラカチオンである場合、テトラカチオンは、典型的には無機テトラカチオン、典型的には金属テトラカチオンである。例えば、テトラカチオンは、遷移金属テトラカチオンまたはp-ブロック金属テトラカチオン、例えばTi4+、Sn4+、Hf4+ Zr4+およびGe4+から選ばれるテトラカチオンであり得る。
【0064】
Xアニオン
典型的には、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、O2-(オキシド)、S2-(スルフィド)、Se2-(セレニド)またはTe2-(テルリド)を含む。典型的には、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、O2-、S2-またはSe2-、好ましくはO2-またはS2-を含む。
【0065】
1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは単一のカルコゲンアニオンを含み得る。例えば、化合物は、O2-(オキシド)、S2-(スルフィド)、Se2-(セレニド)またはTe2-(テルリド)から、典型的にはO2-、S2-またはSe2-から、例えばO2-またはS2-から選ばれる単一のカルコゲンアニオン、X、例えばO2-を含み得る。
【0066】
1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは複数のカルコゲンアニオンを含み得る。例えば、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは2つの異なるカルコゲンアニオンを含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、O2-(オキシド)、S2-(スルフィド)、Se2-(セレニド)またはTe2-(テルリド)から選ばれる2つのカルコゲンアニオンを含み得る。典型的には2つのカルコゲンアニオンは、O2-およびS2-、またはO2-およびSe2-である。
【0067】
ダブルペロブスカイト
1つの実施態様において、化合物はダブルペロブスカイトである。従って、典型的には化合物は、式(I):
[A]2[Bn+][Bm+][X]6 (I);
式中:[A]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0068】
1つの実施態様において、化合物は、式(IA):
A2Bn+Bm+X6 (IA);
式中Aは本明細書中で定義した通りのジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;および式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0069】
典型的には、化合物はBa2AgIO6である。Ba2AgIO6はまた、Ba2IAgO6とも呼ばれ得、そしてこれら2つは、B-カチオンサイトにAg+およびI7+イオンを有する同じ化合物をいうことが理解される。
【0070】
別の実施態様において、化合物はBa2AgIO6ではない。本明細書中で定義した本発明の実施態様のいずれかにおいて、化合物はBa2AgIO6以外であり得る。
【0071】
式(I)に従う化合物は、式IB、IC、IDまたはIE:
[A1
xA2
1-x]2Bn+Bm+X6 (IB);
A2[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]Bm+X6 (IC);
A2Bn+[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]X6 (ID);
A2Bn+Bm+[X1
xX2
1-x]6 (IE);
式中:A1およびA2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8であり;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
に従う化合物であり得る。
【0072】
典型的には、化合物は、[BaxSr1-x]AgIO6、[BaxPb1-x]AgIO6、Ba2[AgxCu1-x]IO6、Ba2[AgxNa1-x]IO6、Ba2[AgxAu1-x]IO6、Ba2Ag[IxBr1-x]O6、Ba2Ag[IxBr1-x]O6、Ba2AgI[OxS1-x]6、またはBa2AgI[OxSe1-x]6であり、xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である。
【0073】
式IまたはIA-IEの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IまたはIA-IEの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IまたはIA-IEにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。
【0074】
当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。
【0075】
従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含み、そして特に本明細書中で定義した通りの式IおよびIA-IEの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。これは、例えば、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xが酸化物アニオンを含む本明細書中で定義した通りの式IおよびIA-IEの化合物の酸化物アニオン欠損変形体を含む。
【0076】
本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%未満のカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0077】
この文脈において、0%のカルコゲンアニオン空孔を有する化合物は、化合物中のカルコゲンアニオンサイトの1つ1つがカルコゲンアニオンによって占有されている化合物である。一方、x%のカルコゲンアニオン空孔を有する化合物、ここでxは0よりも大きくかつ100未満の数である、は、化合物中のカルコゲンアニオンサイトのx%が空であり、そして化合物中のカルコゲンアニオンサイトの他の(100-x)%の1つ1つがカルコゲンアニオンによって占有されている化合物である。従って、2%のカルコゲンアニオン空孔を有する化合物は、化合物中のカルコゲンアニオンサイトの2%が空であり、そして化合物中のカルコゲンアニオンサイトの他の98%の1つ1つがカルコゲンアニオンによって占有されている化合物である。
【0078】
層状ペロブスカイト
別の実施態様において、化合物はルドルスデン-ポッパー相である。従って、典型的には、化合物は、式II:
[A]2p+2[Bn+]p[Bm+]p[X]6p+2 (II)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0079】
1つの実施態様において、式IIの化合物は、式IIA:
A2p+2Bn+
pBm+
pX6p+2 (IIA)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;Aは本明細書中で定義した通りのジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0080】
典型的には化合物は、Ba4AgIO8、Ba6Ag2I2O14またはBa8Ag3I3O20、例えばBa4AgIO8である。
【0081】
式(II)に従う化合物は、式IIB、IIC、IIDまたはIIE:
[A1
xA2
1-x]2p+2Bn+
pBm+
pX6p+2 (IIB)、
A2p+2[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]pBm+
pX6p+2 (IIC)、
A2p+2Bn+
p[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]pX6p+2 (IID)、
A2p+2Bn+
pBm+
p[X1
xX2
1-x]6p+2 (IIE)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;A1およびA2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8であり;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0082】
例えば、化合物は、Ba2p+2[AgxNa1-x]pIpO6p+2、式中pは1および5を含めて1~5の整数であり、および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、である式IICの化合物であり得る。例えば、化合物は、式Ba6[AgxNa1-x]I2O14またはBa8[AgxNa1-x]3I3O20、式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、の化合物、例えばBa6AgNaI2O14、またはBa8Ag2NaI3O20であり得る。
【0083】
式II、IIA、IIB、IIC、IIDおよびIIEにおいて、pは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、pは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0084】
式IIまたはIIA-IIEの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IIまたはIIA-IIEの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IIまたはIIA-IIEにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に本明細書中で定義した通りの式IIまたはIIA-IIEの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0085】
別の実施態様において、化合物はディオン-ジェイコブソン相である。従って、典型的には、化合物は、式III:
[A4+]2[A2+]2q-2[Bn+]q[Bm+]q[X]6q+2 (III);
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A4+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のテトラカチオンであり;[A2+]は1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0086】
1つの実施態様において、式IIIの化合物は、式IIIA:
A4+
2A2+
2q-2Bn+
qBm+
qX6q+2 (IIIA)
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;A4+は本明細書中で定義した通りのAテトラカチオン;A2+は本明細書中で定義した通りのAジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0087】
例えば、化合物は、Zr2AgIO8、Hf2AgIO8、Sn2AgIO8、Zr2Ba2Ag2I2O14、Hf2Ba2Ag2I2O14およびSn2Ba2Ag2I2O14から選ばれる式IIIAの化合物であり得る。
【0088】
式IIIに従う化合物は、式IIIB、IIIC、IIID、IIIEまたはIIIF:
[(A1)4+
x(A2)4+
1-x]2A2+
2q-2Bn+
qBm+
qX6q+2 (IIIB)、
A4+
2[(A1)2+
x(A2)2+
1-x]2q-2Bn+
qBm+
qX6q+2 (IIIC)、
A4+
2A2+
2q-2[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]qBm+
qX6q+2 (IIID)、
A4+
2A2+
2q-2Bn+
q[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]qX6q+2 (IIIE)、
A4+
2A2+
2q-2Bn+
qBm+
q[X1
xX2
1-x]6q+2 (IIIF)、
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;(A1)4+および(A2)4+は2つの異なるAテトラカチオンを表し;(A2)2+および(A2)2+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8であり;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0089】
式III、IIIA、IIIB、IIIC、IIID、IIIEおよびIIIFにおいて、qは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、qは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0090】
式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IIIまたはIIIA-IIIFにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に本明細書中で定義した通りの式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0091】
1つの実施態様において、化合物は、式IV:
[A+]4[A2+]2r[Bn+]r[Bm+]r[X]6r+2 (IV);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;[A+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり;[A2+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0092】
1つの実施態様において、式IVの化合物は、式IVA:
A+
4A2+
2rBn+
rBm+
rX6r+2 (IVA);
式中:A+は本明細書中で定義した通りのAモノカチオンであり;A2+は本明細書中で定義した通りのAジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0093】
例えば、式IVAの化合物は、Cs4Ba2AgIO8、Rb4Ba2AgIO8、[CH3NH3]4Ba2AgIO8または[H2N-C(H)=NH2]4Ba2AgIO8から選ばれ得る。典型的には、化合物はCs4Ba2AgIO8である。
【0094】
式IVに従う化合物は、式IVB、IVC、IVD、IVEまたはIVF:
[(A1)+
x(A2)+
1-x]4A2+
2rBn+
rBm+
rX6r+2 (IVB);
A+
4[(A1)2+
x(A2)2+
1-x]2rBn+
rBm+
rX6r+2 (IVC);
A+
4A2+
2r[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]rBm+
rX6r+2 (IVD);
A+
4A2+
2Bn+
r[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]rX6r+2 (IVE);
A+
4A2+
2rBn+
rBm+
r[X1
xX2
1-x]6r+2 (IVF);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;(A1)+および(A2)+は2つの異なるAモノカチオンを表し;(A2)2+および(A2)2+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8であり;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0095】
式IV、IVA、IVB、IVC、IVD、IVEおよびIVFにおいて、rは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、rは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0096】
式IVまたはIVA-IVFの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IVまたはIVA-IVFの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IVまたはIVA-IVFにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に本明細書中で定義した通りの式IVまたはIVA-IVFの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多く1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0097】
従って、光電子材料における化合物は、本明細書中で定義した通りの化合物、例えば以下で定義した通りの本発明の化合物、または本発明の光触媒について定義した通りの化合物または本発明の半導体デバイスについて定義した通りの化合物であり得る。
【0098】
化合物
本発明はまた:
(v)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカチオン、A;
(vi)1つ以上のモノカチオン、B+、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg+である;
(vii)本明細書中で定義した通りの1つ以上のヘプタカチオン、B7+;および
(viii)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X
を含む化合物を提供する。
【0099】
1つ以上のモノカチオン、B+は、本明細書中で定義した通りの任意のBモノカチオンをさらに含み得る。例えば、1つ以上のモノカチオン、B+は、Ag+である単一のモノカチオンを含み得、または1つ以上のモノカチオン、B+は、複数のモノカチオンを含み得、ここで該モノカチオンの1つはAg+である。例えば、1つ以上のモノカチオン、B+は、2つのモノカチオンまたは3つのモノカチオンを含み得、ここで該2つまたは3つのモノカチオンの1つはAg+である。
【0100】
典型的には、1つ以上のモノカチオン、B+が複数のモノカチオンを含む場合、1つ以上のモノカチオン、B+は貴金属カチオンおよび/またはアルカリ金属カチオンを含む。貴金属は、典型的にはルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、レニウムおよび銅から選ばれる。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを含む、周期律表の1族の金属である。典型的には、1つ以上の第1モノカチオン、B+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Au+およびHg+の1つ以上を含む。例えば、1つ以上のモノカチオン、B+は、Ag+およびNa+、またはAg+およびAu+、またはAg+およびCu+またはAg+およびK+を含み得る。
【0101】
典型的には、1つ以上のヘプタカチオン、B7+は、+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含む。ハロゲンは、周期律表の17族の元素であり、そしてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素およびアスタチンを含む。典型的には、1つ以上のヘプタカチオン、B7+は、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれ、典型的には臭素またはヨウ素である+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含む。好ましくは、1つ以上のヘプタカチオン、B7+は、ヨウ素をI7+として含む。
【0102】
1つ以上のヘプタカチオン、B7+は、単一のヘプタカチオンを含み得、または複数のヘプタカチオンを含み得る。例えば、1つ以上のヘプタカチオン、B7+は、2つのヘプタカチオンまたは3つのヘプタカチオンを含み得る。典型的には、1つ以上のヘプタカチオン、B7+の少なくとも1つはI7+である。1つ以上のヘプタカチオン、B7+が複数のヘプタカチオンを含む場合、1つ以上のヘプタカチオン、B7+はI7+およびBr7+を含み得る。
【0103】
1つの実施態様において、本発明の化合物は、単一の第1Bカチオン、Ag+および単一の第2BカチオンI7+を含み得る。化合物は、複数の第1Bカチオン、Bn+および複数の第2Bカチオン、Bm+を含み得、ここで複数の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含み、そして複数の第2Bカチオン、Bm+はI7+を含む。
【0104】
1つ以上のカチオン、Aおよび1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、本明細書中で定義した通りであり、例えば光電子材料について上記で定義した通りである。
【0105】
1つの実施態様において、化合物はダブルペロブスカイトである。従って、典型的には化合物は、式(I):
[A]2[B+][B7+][X]6 (I);
式中:[A]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[B+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg+であり;[B7+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンである、
の化合物である。
【0106】
1つの実施態様において、化合物は、式(IA):
A2AgB7+X6 (IA);
式中Aは本明細書中で定義した通りのジカチオンであり;B7+は本明細書中で定義した通りのヘプタカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンである、の化合物である。典型的には、B7+はI7+である。従って、典型的には化合物はBa2AgIO6である。別の実施態様において、化合物はBa2AgIO6ではない。本明細書中で定義した本発明の実施態様のいずれかにおいて、化合物はBa2AgIO6以外であり得る。
【0107】
式(I)に従う化合物は、式IB、IC、IDまたはIE:
[A1
xA2
1-x]2AgB7+X6 (IB);
A2[AgxB+
1-x]B7+X6 (IC);
A2Ag[(B1)7+
x(B2)7+
1-x]X6 (ID);
A2AgB7+[X1
xX2
1-x]6 (IE);
式中:A1およびA2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;B+は本明細書中で定義した通りのBモノカチオン、B+を表し;(B1)7+および(B2)7+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるヘプタカチオン、B7+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
に従う化合物であり得る。
【0108】
典型的には、化合物は、[BaxSr1-x]AgIO6、[BaxPb1-x]AgIO6、Ba2[AgxCu1-x]IO6、Ba2[AgxNa1-x]IO6、Ba2[AgxAu1-x]IO6、Ba2Ag[IxBr1-x]O6、Ba2Ag[IxBr1-x]O6、Ba2AgI[OxS1-x]6、またはBa2AgI[OxSe1-x]6、式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、である。
【0109】
式IまたはIA-IEの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IまたはIA-IEの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IまたはIA-IEにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明の化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記で定義した通りの式IまたはIA-IEの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した式の1つの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多く1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0110】
別の実施態様において、化合物はルドルスデン-ポッパー相である。従って、典型的には、化合物は、式II:
[A]2p+2[B+]p[B7+]p[X]6p+2 (II)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[B+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg+であり;[B7+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンである、
の化合物である。
【0111】
1つの実施態様において、式IIの化合物は、式IIA:
A2p+2AgpB7+
pX6p+2 (IIA)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;Aは本明細書中で定義した通りのジカチオンであり;B7+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンである。典型的には、B7+はI7+である。従って、典型的には化合物は、Ba4AgIO8、Ba6Ag2I2O14またはBa8Ag3I3O20、例えばBa4AgIO8である。
【0112】
式IIに従う化合物は、式IIB、IIC、IIDまたはIIE:
[A1
xA2
1-x]2p+2AgpB7+
pX6p+2 (IIB)、
A2p+2[AgxB+
1-x]pB7+
pX6p+2 (IIC)、
A2p+2Agp[(B1)7+
x(B2)7+
1-x]pX6p+2 (IID)、
A2p+2AgpB7+
p[X1
xX2
1-x]6p+2 (IIE)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;A1およびA2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;B+は本明細書中で定義した通りのBモノカチオンを表し;(B1)7+および(B2)7+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるヘプタカチオン、B7+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
に従う化合物であり得る。
【0113】
例えば、化合物は、Ba2p+2[AgxNa1-x]pIpO6p+2、式中pは1および5を含めて1~5の整数であり、および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、である式IICの化合物であり得る。例えば、化合物は、式Ba6[AgxNa1-x]I2O14またはBa8[AgxNa1-x]3I3O20、式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、の化合物、例えばBa6AgNaI2O14、またはBa8Ag2NaI3O20であり得る。
【0114】
式II、IIA、IIB、IIC、IIDおよびIIEにおいて、pは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、pは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0115】
式IIまたはIIA-IIEの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IIまたはIIA-IIEの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IIまたはIIA-IIEにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明の化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記で定義した通りの式IIまたはIIA-IIEの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した式の1つの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多く1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0116】
別の実施態様において、化合物はディオン-ジェイコブソン相である。従って、典型的には、化合物は、式III:
[A4+]2[A2+]2q-2[B+]q[B7+]q[X]6q+2 (III);
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;[A4+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のテトラカチオンであり;[A2+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[B+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上のモノカチオンの1つはAg+であり;[B7+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンである、
の化合物である。
【0117】
1つの実施態様において、式IIIの化合物は、式IIIA:
A4+
2A2+
2q-2B+
qB7+
qX6q+2 (IIIA)
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;A4+は本明細書中で定義した通りのAテトラカチオン;A2+は本明細書中で定義した通りのAジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nおよびmは第1および第2Bカチオンの酸化状態を表し、および式中nは1および7を含めて1~7の正の整数であり、mは1および7を含めて1~7の正の整数であり、およびn + m = 8である、
の化合物である。
【0118】
例えば、化合物は、Zr2AgIO8、Hf2AgIO8、Sn2AgIO8、Zr2Ba2Ag2I2O14、Hf2Ba2Ag2I2O14およびSn2Ba2Ag2I2O14から選ばれる式IIIAの化合物であり得る。
【0119】
式IIIに従う化合物は、式IIIB、IIIC、IIID、IIIEまたはIIIF:
[(A1)4+
x(A2)4+
1-x]2A2+
2q-2AgqB7+
qX6q+2 (IIIB)、
A4+
2[(A1)2+
x(A2)2+
1-x]2q-2AgqB7+
qX6q+2 (IIIC)、
A4+
2A2+
2q-2[(AgxB+
1-x]qB7+
qX6q+2 (IIID)、
A4+
2A2+
2q-2Agq[(B1)7+
x(B2)7+
1-x]qX6q+2 (IIIE)、
A4+
2A2+
2q-2AgqB7+
q[X1
xX2
1-x]6q+2 (IIIF)、
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;(A1)4+および(A2)4+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAテトラカチオンを表し;(A2)2+および(A2)2+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;B+は本明細書中で定義した通りのモノカチオンを表し;(B1)7+および(B2)7+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるヘプタカチオン、B7+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0120】
式III、IIIA、IIIB、IIIC、IIID、IIIEおよびIIIFにおいて、qは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、qは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0121】
式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IIIまたはIIIA-IIIFにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明の化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記で定義した通りの式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した式の1つの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多く1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0122】
1つの実施態様において、化合物は、式IV:
[A+]4[A2+]2r[B+]r[B7+]r[X]6r+2 (IV);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;[A+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり;[A2+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[B+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり、ここで該1つ以上の第1カチオンの1つはAg+である;[B7+]は1つ以上のヘプタカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンである、
の化合物である。
【0123】
1つの実施態様において、式IVの化合物は、式IVA:
A+
4A2+
2rAgrB7+
rX6r+2 (IVA);
式中:A+は本明細書中で定義した通りのAモノカチオンであり;A2+は本明細書中で定義した通りのAジカチオンであり;B7+は本明細書中で定義した通りのヘプタカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンである、
の化合物である。
【0124】
例えば、式IVAの化合物は、Cs4Ba2AgIO8、Rb4Ba2AgIO8、[CH3NH3]4Ba2AgIO8または[H2N-C(H)=NH2]4Ba2AgIO8から選ばれ得る。典型的には、化合物はCs4Ba2AgIO8である。
【0125】
式IVに従う化合物は、式IVB、IVC、IVD、IVEまたはIVF:
[(A1)+
x(A2)+
1-x]4A2+
2rAgrB7+
rX6r+2 (IVB);
A+
4[(A1)2+
x(A2)2+
1-x]2rAgrB7+
rX6r+2 (IVC);
A+
4A2+
2r[Agx(B2)n+
1-x]rB7+
rX6r+2 (IVD);
A+
4A2+
2Agr[(B1)7+
x(B2)7+
1-x]rX6r+2 (IVE);
A+
4A2+
2rAgrB7+
r[X1
xX2
1-x]6r+2 (IVF);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;(A1)+および(A2)+は2つの異なるAモノカチオンを表し;(A2)2+および(A2)2+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;B+は本明細書中で定義した通りのモノカチオンを表し;(B1)7+および(B2)7+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるヘプタカチオン、B7+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0126】
式IV、IVA、IVB、IVC、IVD、IVEおよびIVFにおいて、rは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、rは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0127】
式IVまたはIVA-IVFの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IVまたはIIIA-IVFの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IVまたはIVA-IVFにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明の化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記で定義した通りの式IVまたはIVA-IVFの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した式の1つの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多く1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0128】
光触媒
本発明はまた、化合物を含む光触媒材料であって、該化合物が:
(i)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカチオン、A;
(ii)本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(iii)本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(iv)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
を含む、光触媒材料を提供する。典型的には、nは1であり、そしてmは7である。
【0129】
従って、光触媒材料における化合物は、本明細書中で定義した通りの化合物、例えば本発明の光電子材料について定義した通りの化合物、ここでnは1または2であり、そしてmは6または7である、本発明の化合物または本発明の半導体デバイスについて定義した通りの化合物、ここでnは1または2であり、そしてmは6または7である、であり得る。
【0130】
1つの実施態様において、化合物はダブルペロブスカイトである。従って、典型的には化合物は、式(I):
[A]2[Bn+][Bm+][X]6 (I);
式中:[A]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0131】
1つの実施態様において、化合物は、式(IA):
A2Bn+Bm+X6 (IA);
式中Aは本明細書中で定義した通りのジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;および式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0132】
典型的には化合物は、Ba2AgIO6である。別の実施態様において、化合物はBa2AgIO6ではない。本明細書中で定義した本発明の実施態様のいずれかにおいて、化合物はBa2AgIO6以外であり得る。
【0133】
式(I)に従う化合物は、式IB、IC、IDまたはIE:
[A1
xA2
1-x]2Bn+Bm+X6 (IB);
A2[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]Bm+X6 (IC);
A2Bn+[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]X6 (ID);
A2Bn+Bm+[X1
xX2
1-x]6 (IE);
式中:A1およびA2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しく、および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
に従う化合物であり得る。
【0134】
典型的には、化合物は、[BaxSr1-x]AgIO6、[BaxPb1-x]AgIO6、Ba2[AgxCu1-x]IO6、Ba2[AgxNa1-x]IO6、Ba2[AgxAu1-x]IO6、Ba2Ag[IxBr1-x]O6、Ba2Ag[IxBr1-x]O6、Ba2AgI[OxS1-x]6、またはBa2AgI[OxSe1-x]6、式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、である。
【0135】
式IまたはIA-IEの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IまたはIA-IEの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IまたはIA-IEにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記式IまたはIA-IEの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0136】
別の実施態様において、化合物はルドルスデン-ポッパー相である。従って、典型的には、化合物は、式II:
[A]2p+2[Bn+]p[Bm+]p[X]6p+2 (II)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;[A]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0137】
1つの実施態様において、式IIの化合物は、式IIA:
A2p+2Bn+
pBm+
pX6p+2 (IIA)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;Aは本明細書中で定義した通りのジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0138】
典型的には化合物は、Ba4AgIO8、Ba6Ag2I2O14またはBa8Ag3I3O20、例えばBa4AgIO8である。
【0139】
式(II)に従う化合物は、式IIB、IIC、IIDまたはIIE:
[A1
xA2
1-x]2p+2Bn+
pBm+
pX6p+2 (IIB)、
A2p+2[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]pBm+
pX6p+2 (IIC)、
A2p+2Bn+
p[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]pX6p+2 (IID)、
A2p+2Bn+
pBm+
p[X1
xX2
1-x]6p+2 (IIE)、
式中:pは1および5を含めて1~5の整数であり;A1およびA2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しく;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
に従う化合物であり得る。
【0140】
例えば、化合物は、Ba2p+2[AgxNa1-x]pIpO6p+2、式中pは1および5を含めて1~5の整数であり、そして式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、である式IICの化合物であり得る。例えば、化合物は、式Ba6[AgxNa1-x]I2O14またはBa8[AgxNa1-x]3I3O20、式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、の化合物、例えばBa6AgNaI2O14、またはBa8Ag2NaI3O20であり得る。
【0141】
式II、IIA、IIB、IIC、IIDおよびIIEにおいて、pは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、pは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0142】
式IIまたはIIA-IIEの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IIまたはIIA-IIEの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IIまたはIIA-IIEにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記式IIまたはIIA-IIEの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0143】
別の実施態様において、化合物はディオン-ジェイコブソン相である。従って、典型的には、化合物は、式III:
[A4+]2[A2+]2q-2[Bn+]q[Bm+]q[X]6q+2 (III);
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;[A4+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のテトラカチオンであり;[A2+]は1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0144】
1つの実施態様において、式IIIの化合物は、式IIIA:
A4+
2A2+
2q-2Bn+
qBm+
qX6q+2 (IIIA)
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;A4+は本明細書中で定義した通りのAテトラカチオン;A2+は本明細書中で定義した通りのAジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0145】
例えば、化合物は、Zr2AgIO8、Hf2AgIO8、Sn2AgIO8、Zr2Ba2Ag2I2O14、Hf2Ba2Ag2I2O14およびSn2Ba2Ag2I2O14から選ばれる式IIIAの化合物であり得る。
【0146】
式IIIに従う化合物は、式IIIB、IIIC、IIID、IIIEまたはIIIF:
[(A1)4+
x(A2)4+
1-x]2A2+
2q-2Bn+
qBm+
qX6q+2 (IIIB)、
A4+
2[(A1)2+
x(A2)2+
1-x]2q-2Bn+
qBm+
qX6q+2 (IIIC)、
A4+
2A2+
2q-2[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]qBm+
qX6q+2 (IIID)、
A4+
2A2+
2q-2Bn+
q[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]qX6q+2 (IIIE)、
A4+
2A2+
2q-2Bn+
qBm+
q[X1
xX2
1-x]6q+2 (IIIF)、
式中:qは1および5を含めて1~5の整数であり;(A1)4+および(A2)4+は2つの異なるAテトラカチオンを表し;(A2)2+および(A2)2+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しく;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0147】
式III、IIIA、IIIB、IIIC、IIID、IIIEおよびIIIFにおいて、qは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、qは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0148】
式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IIIまたはIIIA-IIIFにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記式IIIまたはIIIA-IIIFの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0149】
1つの実施態様において、化合物は、式IV:
[A+]4[A2+]2r[Bn+]r[Bm+]r[X]6r+2 (IV);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;[A+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のモノカチオンであり;[A2+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のジカチオンであり;[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0150】
1つの実施態様において、式IVの化合物は、式IVA:
A+
4A2+
2rBn+
rBm+
rX6r+2 (IVA);
式中:A+は本明細書中で定義した通りのAモノカチオンであり;A2+は本明細書中で定義した通りのAジカチオンであり;Bn+は本明細書中で定義した通りの第1Bカチオンであり;Bm+は本明細書中で定義した通りの第2Bカチオンであり;およびXは本明細書中で定義した通りのカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しい、
の化合物である。
【0151】
例えば、式IVAの化合物は、Cs4Ba2AgIO8、Rb4Ba2AgIO8、[CH3NH3]4Ba2AgIO8または[H2N-C(H)=NH2]4Ba2AgIO8から選ばれ得る。典型的には、化合物はCs4Ba2AgIO8である。
【0152】
式IVに従う化合物は、式IVB、IVC、IVD、IVEまたはIVF:
[(A1)+
x(A2)+
1-x]4A2+
2rBn+
rBm+
rX6r+2 (IVB);
A+
4[(A1)2+
x(A2)2+
1-x]2rBn+
rBm+
rX6r+2 (IVC);
A+
4A2+
2r[(B1)n+
x(B2)n+
1-x]rBm+
rX6r+2 (IVD);
A+
4A2+
2Bn+
r[(B1)m+
x(B2)m+
1-x]rX6r+2 (IVE);
A+
4A2+
2rBn+
rBm+
r[X1
xX2
1-x]6r+2 (IVF);
式中:rは1および5を含めて1~5の整数であり;(A1)+および(A2)+は2つの異なるAモノカチオンを表し;(A2)2+および(A2)2+は本明細書中で定義した通りの2つの異なるAジカチオンを表し;(B1)n+および(B2)n+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第1Bカチオン、Bn+を表し;(B1)m+および(B2)m+は本明細書中で定義した通りの2つの異なる第2Bカチオン、Bm+を表し;X1およびX2は本明細書中で定義した通りの2つの異なるカルコゲンアニオン、Xを表し;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1または2であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして6または7であり;およびn + mは8に等しく;および式中xは0より大きくかつ1より小さく、典型的にはここでxは0.05と0.95との間である、
の化合物であり得る。
【0153】
式IVまたはIVA-IVFの化合物は、カルコゲンアニオンXサイトで空孔を含み得る。例えば、XがO2-を含む場合、式IVまたはIVA-IVFの化合物は、酸化物アニオン空孔を含み得る。従って、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xについての化学量論は、上記式IVまたはIVA-IVFにおいて与えられる理想的化学量論よりもわずかに小さくあり得る。当業者が理解するように、カルコゲンアニオンの欠損は、より少ない正電荷がカルコゲンアニオンの負電荷とのバランスをとるために必要であることを意味する。従って、電荷の中性は、化合物中のカチオンの一部が、そうでない場合よりもより低い酸化状態にあり、そしてそれゆえより低い正電荷を有することによって維持され得る。さらにまたはあるいは、電荷の中性は、カチオンの欠損によって、例えば対応するカチオン空孔によって、またはB-サイトカチオンの少数をより低い酸化状態のカチオンで置き換える、例えばI7+をSb5+で置き換えることによって維持され得る。従って、本発明において用いられ得る化合物は、本明細書中で定義した式のいずれかの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体、および特に上記式IVまたはIVA-IVFの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体を含む。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、0%よりも多いカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。本明細書中で定義した通りの化合物のカルコゲンアニオン欠損変形体は、典型的には0%よりも多くかつ10%までのカルコゲンアニオン空孔、例えば0%よりも多くかつ5%未満のカルコゲンアニオン空孔、または0%よりも多くかつ1%までのカルコゲンアニオン空孔を有する該定義した化合物の変形体である。
【0154】
式IV、IVA、IVB、IVC、IVD、IVEおよびIVFにおいて、rは1および4を含めて1~4、または1および3を含めて1~3であり得る。例えば、rは、1、2、3、4または5、典型的には1、2または3から選ばれる整数であり得る。
【0155】
半導体デバイス
本発明はまた、半導体材料を含む半導体デバイスであって、該半導体材料が:
(v)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカチオン、A;
(vi)本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(vii)本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(viii)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + m = 8である、
を含む化合物を含む、半導体デバイスを提供する。
【0156】
従って、半導体デバイスにおける化合物は、本明細書中で定義した通りの化合物、例えば本発明の光電子材料について定義した通りの化合物、本発明の化合物または本発明の光触媒について定義した通りの化合物であり得る。
【0157】
半導体デバイスは、光電子デバイス(例えば光起電デバイス、太陽電池、光検出器、光電子増倍管、フォトレジスタ、電荷注入レーザー、光ダイオード、光センサ、発色デバイス、感光性トランジスタ、フォトトランジスタ、発光デバイス、エレクトロルミネセントデバイス、または発光ダイオード)、トランジスタ、固体トライオード、バッテリー、バッテリー電極、キャパシタまたはスーパーキャパシタであり得る。
【0158】
半導体デバイスは、典型的にはトランジスタまたは光電子デバイスである。典型的には、半導体デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電デバイス、発光デバイス(例えばエレクトロルミネセントデバイス、例えば発光ダイオード)または光検出器から選ばれる光電子デバイスである。
【0159】
半導体材料は、50 wt%以上の本明細書中で定義した通りの化合物を含み得る。半導体材料は、追加の成分を含み得る。特に、半導体材料は、1つ以上のドーパント化合物を含み得る。典型的には、半導体材料は、80 wt%以上の本明細書中で定義した通りの化合物を含む。好ましくは、半導体材料は、95 wt%以上の本明細書中で定義した通りの化合物、例えば99 wt%以上の本明細書中で定義した通りの化合物を含む。半導体材料は、化合物からなり得るか、または化合物から本質的になり得る。
【0160】
半導体材料は、典型的には固体である。典型的には、半導体材料は、結晶性材料を含む。半導体材料は、結晶性または多結晶性であり得る。例えば、半導体材料は多数の化合物の微結晶を含み得る。
【0161】
半導体材料は任意の形態であり得る。典型的には半導体材料は、層の形態、例えば層の形態の光活性、光電子放出または光吸収材料である。半導体材料は、典型的には本明細書中で定義した化合物の層を含む。半導体材料は、本明細書中で定義した通りの化合物の層から本質的になり得る。半導体デバイスは、50 nm以上の厚さを有する、または100 nm以上の厚さを有する該半導体材料(例えば光活性材料)の層を含み得る。
【0162】
典型的には、半導体デバイスは半導体材料の層を含み、この層は好ましくは5 nm~1000 nmの厚さを有する。好ましくは、半導体材料の層は、100 nm~700 nm、例えば200 nm~500 nmの厚さを有する。半導体材料の層は、100 nm~700 nmの厚さを有する化合物の層からなり得るかまたは本質的になり得る。例えば、半導体デバイスは該半導体材料の層を含み得、この半導体材料は本明細書中で定義した通りの化合物を含み、この層は100 nm以上の厚さを有する。いくつかのデバイスにおいて、層は、例えば5 nm~50 nmの厚さを有する薄い増感層であり得る。該半導体材料の層がn-型またはp-型領域との平面ヘテロ接合を形成するデバイスにおいて、該光活性材料の層は100 nm以上の厚さを有し得る。好ましくは、該光活性材料の層は100 nm~700 nm、例えば200 nm~500 nmの厚さを有する。本明細書中で使用される用語「平面ヘテロ接合」は、半導体材料とn-またはp-型領域との間の接合を定義する表面が実質的に平面であり、そして低い粗さ、例えば25 nmx25 nmの面積にわたって20 nm未満の二乗平均平方根粗さ、例えば25 nmx25 nmの面積にわたって10 nm未満、または5 nm未満の二乗平均平方根粗さを有することを意味する。
【0163】
半導体材料は、しばしば半導体デバイス内で光活性成分(例えば光吸収成分または光電子放出成分)として作用する。半導体材料は、あるいは、半導体デバイスにおいてp-型半導体成分、n-型半導体成分、または真性半導体成分として作用し得る。例えば、半導体材料は、トランジスタ、例えば電界効果トランジスタにおいてp-型、n-型または真性半導体の層を形成し得る。例えば、半導体材料は、光電子デバイス、例えば太陽電池またはLEDにおいてp-型またはn-型半導体の層を形成し得る。
【0164】
典型的には、この半導体デバイスは:
少なくとも1つのn-型層を含むn-型領域;
少なくとも1つのp-型層を含むp-型領域;および、n-型領域とp-型領域との間に配置された:
半導体材料の層
を含む。
【0165】
例えば、半導体デバイスはしばしば光電子デバイスであり、この光電子デバイスは:
少なくとも1つのn-型層を含むn-型領域;
少なくとも1つのp-型層を含むp-型領域;および、n-型領域とp-型領域との間に配置された:
本明細書中で定義した通りの該化合物の層を含む(または本明細書中で定義した通りの該化合物の層から本質的になる)半導体材料の該層を含む。n-型層は、典型的にはn-型半導体の層である。p-型層は、典型的にはp-型半導体の層である。
【0166】
n-型領域は、少なくとも1つのn-型層を含む。n-型領域は、n-型層およびn-型励起子阻止層を含み得る。このようなn-型励起子阻止層は、典型的にはn-型層と半導体材料を含む層との間に配置される。n-型領域は、50 nm~1000 nmの厚さを有し得る。例えば、n-型領域は、50 nm~500 nm、または100 nm~500 nmの厚さを有し得る。
【0167】
好ましくは、n-型領域はn-型半導体の緻密層を含む。
【0168】
n-型半導体は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、アモルファスSi、n-型IV族半導体、n-型III-V族半導体、n-型II-VI族半導体、n-型I-VII族半導体、n-型IV-VI族半導体、n-型V-VI族半導体、およびn-型II-V族半導体から選ばれ得、これらのいずれかはドープされていてもよくドープされていなくてもよい。典型的には、n-型半導体(47emiconductor)は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、および金属テルル化物から選ばれる。例えば、n-型領域は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、またはカドミウムの酸化物、または該金属の2つ以上の混合物の酸化物から選ばれる無機材料を含み得る。例えば、n-型層は、TiO2、SnO2、ZnO、SnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO、またはCdOを含み得る。n-型領域は、有機電子輸送材料、例えばC60、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、ビス-PCBM、または3,9-ビス(2-メチレン-(3-(1,1-ジシアノメチレン)-インダノン))-5,5,11,11-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェンを含み得る。n-型領域は、TiO2/フラーレン二重層、SnO/フラーレン二重層またはZnO/フラーレン二重層などの無機/有機二重層を含み得る。
【0169】
典型的には、n-型領域は、SnO2またはTiO2、例えばTiO2またはSnO2の緻密層を含む。しばしば、n-型領域はまた、フラーレンまたはフラーレン誘導体(例えばC60またはフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM))の層を含む。
【0170】
典型的には、n-型領域は、TiO2、SnO2、ZnO、SnO、C60、PCBM、ビス-PCBM、3,9-ビス(2-メチレン-(3-(1,1-ジシアノメチレン)-インダノン))-5,5,11,11-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、またはTiO2/フラーレン二重層、SnO/フラーレン二重層またはZnO/フラーレン二重層などの無機/有機二重層を含む。
【0171】
好ましくは、p-型領域は、p-型半導体の緻密層を含む。
【0172】
適切なp-型半導体は、ポリマーまたは分子正孔輸送体から選ばれ得る。本発明の半導体デバイスにおいて使用されるp-型層は、例えばスピロ-OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b']ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、HTM-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li-TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、テトラセン、MeO-TPD(N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン)、ポリ-TPD(ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビスフェニルベンジジン])、PTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン])またはtBP(tert-ブチルピリジン)を含み得る。p-型領域はカーボンナノチューブを含み得る。通常、p-型材料は、スピロ-OMeTAD、P3HT、PCPDTBTおよびPVKから選ばれる。好ましくは、本発明の光電子デバイスにおいて使用されるp-型層は、スピロ-OMeTADを含む。
【0173】
いくつかの実施態様において、p-型層は無機正孔輸送体を含み得る。例えば、p-型層は、ニッケル、バナジウム、銅またはモリブデンの酸化物;Ga2O3、CuSCN、NiO、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuOまたはCIS;ペロブスカイト;アモルファスSi;p-型IV族半導体、p-型III-V族半導体、p-型II-VI族半導体、p-型I-VII族半導体、p-型IV-VI族半導体、p-型V-VI族半導体、およびp-型II-V族半導体を含む無機正孔輸送体を含み得、この無機材料はドープされていてもよくドープされていなくてもよい。p-型層は、該無機正孔輸送体の緻密層であり得る。
【0174】
典型的には、p-型層は、NiO、Ga2O3、CuSCN、CuI、およびCuO、スピロ-OMeTAD、MeO-TPD、テトラセン、P3HT、ポリ-TPD、またはPTAAから選ばれるp-型材料を含む。
【0175】
半導体材料の層は、典型的にはn-型領域またはp-型領域と平面ヘテロ接合を形成する。半導体材料の層は、典型的にはn-型領域と第1平面ヘテロ接合を、およびp-型領域と第2平面ヘテロ接合を形成する。これは平面ヘテロ接合デバイスを形成する。本明細書中で使用される用語「平面ヘテロ接合」は、1つの領域が他方に侵入しない2つの領域間の接合をいう。これは、接合が完全に滑らかであること、まさに1つの領域が他の領域中の孔に実質的に侵入しないことを要求しない。
【0176】
半導体デバイスは、典型的には1つ以上の第1電極および1つ以上の第2電極をさらに含む。1つ以上の第1電極は、そのような領域が存在する場合、典型的にはn-型領域と接触している。1つ以上の第2電極は、そのような領域が存在する場合、典型的にはp-型領域と接触している。典型的には:1つ以上の第1電極はn-型領域と接触しており、そして1つ以上の第2電極はp-型領域と接触しており;または1つ以上の第1電極はp-型領域と接触しており、そして1つ以上の第2電極はn-型領域と接触している。
【0177】
第1および第2電極は、任意の適切な導電性材料を含み得る。第1電極は、典型的には透明導電性酸化物を含む。第2電極は、典型的には1つ以上の金属を含む。第2電極は、あるいは、グラファイトを含み得る。典型的には、第1電極は典型的には透明導電性酸化物を含み、そして第2電極は典型的には1つ以上の金属を含む。
【0178】
透明導電性酸化物は、典型的にはフッ素ドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウムスズ(ITO)またはアルミニウムドープした酸化亜鉛(AZO)を含み、そして典型的にはITOを含む。第2電極は、典型的には銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、またはタングステンから選ばれる金属を含む。各電極は、単一の層を形成し得、またはパターン化され(patterned)得る。
【0179】
半導体デバイス(例えば光起電デバイス、または発光デバイス)は、以下の層を以下の順序で含み得る:
I.本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1電極;
II.本明細書中で定義した通りの少なくとも1つのn-型層を含むn-型領域;
III.本明細書中で定義した通りの結晶性化合物を含む半導体材料の層;
IV.本明細書中で定義した通りの少なくとも1つのp-型層を含むp-型領域;および
V.本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2電極。
【0180】
半導体デバイス(例えば光起電デバイス、または発光デバイス)は、以下の層を以下の順序で含み得る:
I.透明導電性酸化物、好ましくはFTOを含む1つ以上の第1電極;
II.本明細書中で定義した通りの少なくとも1つのn-型層を含むn-型領域;
III.本明細書中で定義した通りの半導体材料の層;
IV.本明細書中で定義した通りの少なくとも1つのp-型層を含むp-型領域;および
V.金属、好ましくは銀または金を含む1つ以上の第2電極。
【0181】
1つ以上の第1電極は、100 nm~700 nm、例えば100 nm~400 nmの厚さを有し得る。1つ以上の第2電極は、10 nm~500 nm、例えば50 nm~200 nmまたは10 nm~50 nmの厚さを有し得る。n-型領域は、50 nm~500 nmの厚さを有し得る。p-型領域は、50 nm~500 nmの厚さを有し得る。
【0182】
光ルミネセント材料
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物、例えば本発明の光電子材料について定義した通りの化合物、本発明の化合物、本発明の光触媒について定義した通りの化合物または本発明の半導体デバイスにおける半導体材料において定義した通りの化合物を含む光ルミネセント材料を提供する。
【0183】
電子材料
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物、例えば本発明の光電子材料について定義した通りの化合物、本発明の化合物、本発明の光触媒について定義した通りの化合物または本発明の半導体デバイスにおける半導体材料において定義した通りの化合物を含む電子材料を提供する。
【0184】
プロセス
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物を製造するためのプロセスを提供する。本発明は、従って、
(v)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカチオン、A;
(vi)本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオン、Bn+;
(vii)本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオン、Bm+;および
(viii)本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X;
ここで、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は1つ以上の第2Bカチオン、Bm+とは異なり;nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + m = 8である、
を含む化合物を製造するためのプロセスであって;
1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む前駆体化合物を、1つ以上のカチオン、Aを含む組成物で処理して該化合物を得ることを含む、
プロセスを提供する。
【0185】
化合物は、本明細書中で定義した通りの化合物、例えば本発明の光電子材料について定義した通りの化合物、本発明の化合物、本発明の光触媒について定義した通りの化合物または本発明の半導体デバイスにおける半導体材料において定義した通りの化合物であり得る。
【0186】
本発明者らは、前駆体化合物を組成物1つ以上のカチオン、Aで処理する前に、まず前駆体化合物を合成することが不可欠であることを見い出した。本発明者らは、先行技術において記載されたBおよびAカチオンの全てを含む溶液が単純に混合される方法が所望の化合物を生成しないことを見い出した。代わりに、典型的には、所望の化合物よりもむしろ、例えば以下の式Vに従う化合物が形成される。本発明者らは、驚くべきことに、この化合物がまず形成され、次いで1つ以上のカチオン、Aで処理されるプロセスが、生成物として所望の化合物を提供することを見い出した。
【0187】
前駆体化合物は、典型的には固体である。前駆体化合物が固体である場合、プロセスは、典型的には1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む固体前駆体化合物を溶媒中に溶解して1つ以上の第1BカチオンBn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液を得、そして該溶液を1つ以上のカチオン、Aを含む組成物と接触させて化合物を得ることを含む。
【0188】
溶媒は、通常極性溶媒、典型的には極性非プロトン性溶媒である。例えば、溶媒は、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびN-メチル-2-ピロリドンであり得る。
【0189】
典型的には、前駆体化合物または1つ以上のカチオン、Aを含む組成物は、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xを含む。前駆体化合物および1つ以上のカチオン、Aを含む組成物は、両方とも1つ以上のカルコゲンアニオン、Xを含み得る。
【0190】
1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+または1つ以上の第2Bカチオン、Bm+に対する対アニオンとして存在し得る。1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+に対する対アニオンとして存在し得る。1つ以上のカルコゲンアニオン、Xは、1つ以上のカチオン、Aに対する対アニオンとして存在し得る。
【0191】
典型的には、前駆体化合物は、式V:
[Bn+][Bm+][X]4 (V);
式中:[Bn+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第1Bカチオンであり;[Bm+]は本明細書中で定義した通りの1つ以上の第2Bカチオンであり;および[X]は本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオンであり;式中nは第1Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;mは第2Bカチオンの酸化状態を表し、そして1および7を含めて1~7の正の整数であり;およびn + mは8に等しい、
の前駆体化合物である。
【0192】
典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、1つ以上のモノカチオン、典型的には1つ以上の無機モノカチオン、典型的には1つ以上の金属モノカチオンである。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、貴金属カチオンおよび/またはアルカリ金属カチオンを含む。貴金属は、典型的にはルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、レニウムおよび銅から選ばれる。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを含む、周期律表の1族の金属である。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Ag+、Au+およびHg+の1つ以上を含む。好ましくは1つ以上の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含む。
【0193】
典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、1つ以上のヘプタカチオンである。典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含む。ハロゲンは、周期律表の17族の元素であり、そしてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素およびアスタチンを含む。典型的には、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれ、典型的には臭素またはヨウ素である+7の酸化状態の1つ以上のハロゲンカチオンを含む。好ましくは、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+は、ヨウ素をI7+として含む。
【0194】
典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含み、そして1つ以上の第2Bカチオン、Bm+はI7+を含む。従って、化合物は、Ag+である単一の第1BカチオンおよびI7+である単一の第2Bカチオンを含み得る。化合物は、複数の第1Bカチオン、Bn+および複数の第2Bカチオン、Bm+を含み得、ここで複数の第1Bカチオン、Bn+はAg+を含み、そして複数の第2Bカチオン、Bm+はI7+を含む。
【0195】
従って、式Vの前駆体化合物はAgIO4であり得る。
【0196】
プロセスは、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液をエバポレートして前駆体化合物を得ることをさらに含み得る。溶液は、1つ以上のカルコゲンアニオン、Xを含み得る。
【0197】
エバポレーションは、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液を空気中で乾燥させることによって行われ得る。あるいは、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液は、加熱されて溶媒をエバポレートし得る。例えば、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液は、40℃と200℃との間の温度、典型的には60℃と180℃との間の温度、100℃と150℃との間の温度まで、例えば120℃で加熱され得る。
【0198】
1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液は、典型的には1つ以上の第1Bカチオン、Bn+を含む化合物および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む化合物を溶媒中に溶解することによって調製される。典型的には、溶媒は極性溶媒、例えば極性非プロトン性溶媒である。溶媒は、従って水であり得る。
【0199】
1つ以上の第1Bカチオン、Bn+を含む化合物は、典型的には1つ以上の対アニオンを含む。1つ以上の対アニオンは、本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X、または任意の他の適切な対アニオンであり得る。例えば、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+を含む化合物は、Bn+の酸化物、硫化物またはセレン化物、例えばAg+の酸化物、硫化物またはセレン化物であり得る。例えば1つ以上の第1Bカチオン、Bn+を含む化合物は、酸化銀(Ag2O)であり得る。
【0200】
1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む化合物は、典型的には1つ以上の対アニオンを含む。1つ以上の対アニオンは、本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X、または任意の他の適切な対アニオンであり得る。例えば、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む化合物は、Bm+の酸化物、硫化物またはセレン化物であり得る。1つの実施態様において、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む化合物は、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+のオキソアニオンを含む。mが7である場合、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む化合物は、式[Bm+O4]-のオキソアニオン、例えば過ヨウ素酸イオン([IO4]-)、過臭素酸イオン([BrO4]-)または過塩素酸イオン([ClO4]-)を含み得る。例えば1つ以上の第1Bカチオン、Bm+を含む化合物は、過ヨウ素酸(HIO4/H5IO6)であり得る。例えば、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液は、Ag2OおよびH5IO6を水中に溶解することによって調製され得る。
【0201】
典型的には、1つ以上のカチオン、Aを含む組成物は、1つ以上のカチオン、Aを含む溶液である。溶液は、1つ以上のカチオン、Aを含む化合物を溶媒中に溶解することによって生成され得る。典型的には、溶媒は極性溶媒、例えば水などの極性プロトン性溶媒、またはジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、およびN-メチル-2-ピロリドンなどの極性非プロトン性溶媒である。
【0202】
1つ以上のカチオン、Aを含む化合物は、通常1つ以上の対アニオンを含む。1つ以上の対アニオンは、本明細書中で定義した通りの1つ以上のカルコゲンアニオン、X、または任意の他の適切な対アニオンであり得る。
【0203】
多くのこのような対アニオンは当業者に公知である。例えば、A、Bn+またはBm+カチオンに対する1つ以上の対アニオンは、無機アニオン、例えばハライドアニオン、ヒドロキシドアニオン、チオシアネートアニオン(SCN-)、サルフェートアニオン(SO4
2-)、ホスフェートアニオン(PO4
3-)、カーボネートアニオン(CO3
2-)、テトラフルオロボレートアニオン(BF4
-)、または有機アニオンから選ばれ得る。有機アニオンは、ホルメートまたはアセテートなどのカルボキシレートアニオンを含む。
【0204】
従って、典型的には、プロセスは、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む固体前駆体化合物を溶媒中に溶解して1つ以上の第1BカチオンBn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液を得、そして該溶液を1つ以上のカチオン、Aを含む溶液と接触させて化合物を得ることを含む。典型的には、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+および1つ以上の第2Bカチオン、Bm+を含む溶液を1つ以上のカチオン、Aを含む溶液に接触させる場合、化合物は沈殿物または分散物として形成する。
【0205】
典型的には、プロセスは、化合物を回収することを含む。典型的には、化合物を回収することは、溶媒除去工程を含む。溶媒除去工程は、1つ以上の第1Bカチオン、Bn+、1つ以上の第2Bカチオン、Bm+および1つ以上のカチオン、Aを含む溶液の混合物を加熱することを含み得る。加熱は、典型的には40℃~200℃、典型的には60℃と140℃との間、75℃と125℃との間の温度、例えば100℃である。
【0206】
プロセスは、化合物を溶媒、典型的には極性溶媒、例えばアセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒またはエタノールなどの極性プロトン性溶媒で洗浄するさらなる工程を含み得る。プロセスは、化合物を乾燥することをさらに含み得る。化合物は、化合物を空気中で乾燥させることによって乾燥され得る。あるいは、化合物は、加熱されて任意の残留溶媒をエバポレートし得る。例えば、化合物は、30℃と200℃との間、典型的には40℃と150℃との間、50℃と100℃との間の温度まで、例えば約70℃で加熱され得る。
【0207】
化合物の使用
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物の光電子材料としての使用を提供する。従って、本発明は、化合物の光起電材料としてまたは電界発光材料としての使用を提供する。
【0208】
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物の光ルミネセント材料としての使用を提供する。
【0209】
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物の光触媒としての使用を提供する。
【0210】
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物の電子材料としての使用を提供する。
【0211】
本発明はまた、本明細書中で定義した通りの化合物の半導体としての使用を提供する。
【0212】
化合物は、本明細書中で定義した通りの任意の化合物、例えば本発明の光電子材料について定義した通りの化合物、本発明の化合物、本発明の光触媒について定義した通りの化合物または本発明の半導体デバイスにおける半導体材料において定義した通りの化合物であり得る。
【実施例】
【0213】
実施例
本発明の利点は、いくつかの具体例を参照して以下に記載される。
【0214】
計算法
全ての計算は、密度汎関数理論(DFT)内で行った。構造緩和は、PBE交換相関汎関数(Perdew, J. P.; Burke, K.; Ernzerhof, M. Generalized Gradient Approximation Made Simple. Phys. Rev. Lett. 1996, 77, 3865)を用い、VASPコードに組み込まれているProjected Augmented Wave法(PAW - Blochl, P. E. Projector Augmented-Wave Method. Phys. Rev. B 1994, 50, 17953-17979)を採用して行った(Kresse, G.; Furthmuller, J. Efficient Iterative Schemes For ab initio Total-Energy Calculations Using a Plane-Wave Basis Set. Phys. Rev. B 1996, 54, 11169-11186)。波動関数についての動的カットオフエネルギーを450 eVに設定し、そして少なくとも8×8×8のΓ-中心k-点グリッドを用いてブリユアン領域をサンプリングした。力についての収束閾値を0.005 eV/A2に、および全電子エネルギーについて10-8 eVに設定した。電子帯構造を、PBE汎関数1(DFT-PBE)を用い、構造緩和実行と同じパラメーターを用いて計算した。バンドギャップの記載を改善するため、我々はまた、PBE0混成汎関数計算(DFT-PBE0 - Paier, J.; Hirschl, R.; Marsman, M.; Kresse, G. The Perdew-Burke-Ernzerhof Exchange-Correlation Functional Applied to the G2-1 Test Set Using a Plane-Wave Basis Set. J. Chem. Phys. 2005, 122, 234102)を採用し、より粗い6×6×6 Γ-中心k-グリッドを用いた。我々は、続いてPBEバンド構造を厳密に変化させ、混成汎関数で計算したギャップを一致させた。平方波動関数を計算するため、我々は、DFT-PBE内でQuantum-espressoパッケージソフト(Giannozzi, P et al. QUANTUM ESPRESSO: A Modular and Open-Source Software Project for Quantum Simulations of Materials. J. Phys.: Condens. Matter. 2009, 21, 395502.)、ノルム保存擬ポテンシャル(Troullier, N.; Martins, J. L. Efficient Pseudopotentials for Plane-Wave Calculations. Phys. Rev. B 1991, 43, 1993)を用い、そしてこれらをVESTAソフトウェア(Momma, K.; Izumi, F. VESTA: A Three-Dimensional Visualization System for Electronic and Structural Analysis. J. Appl. Cryst. 2008, 41, 653.)を用いてプロットした。有効質量を、0.01(2π/a、aは単位格子の格子定数である)の小さい増加を用い、そしてスピン-軌道結合効果を含むDFT-PBE内で有限差分を用いて計算した。
【0215】
Ba
2AgIO
6の合成
我々は、超音波処理浴中、25 mMのAg
2O(Sigma-Aldrich, 99%)および50 mMのH
5IO
6(Sigma-Aldrich, 99%)を3 mLの水および1 mLの硝酸に完全に溶解した。我々は、続いて溶液をペトリ皿に移し、そして全ての溶液が乾燥するまで120℃で加熱した。この時点で、我々は黄色AgIO
4結晶の形成を確認した-
図5を参照。我々は、超音波処理浴中、数分の超音波処理により、30 mMのAgIO
4を3 mLのアセトニトリルに、および60 mMのBa(OH)
2を5 mLの水に溶解した。我々は、20℃でAgIO
4の溶液をBa(OH)
2溶液に注入し、そして混合溶液内に茶色沈殿物が直ちに形成した。我々は、最後に分散物をボックスオーブン中100℃で2 h加熱し、生成物をアセトニトリルおよびEtOHで洗浄し、そして70℃で2 h乾燥した。
【0216】
比較合成例
A.W. Sleight and R. Ward, Inorg. Chem., 1964, 3 (2), pp 292-292に記載のBa(OH)
2、Ag
2Oおよび過ヨウ素酸の間の反応を行うために、我々は、8 mMのAg
2Oおよび16 mMのH
5IO
6を40 mLのギ酸および10 mLの水に加えた。我々は、次いで160 mMのBa(OH)
2を10 mLの水に溶解した。我々は、Ba(OH)
2溶液をAg
2OおよびH
5IO
6溶液に注入し、そして混合溶液内に白色沈殿物が直ちに形成した。我々は、白色沈殿物を有する混合溶液を水浴中、90℃で12 h保持し、茶色粉末が形成した。我々は、生成物を水およびEtOHで洗浄し、そして70℃で2 hr乾燥した。生成物を粉末X-線回折を用いて分析し(
図7を参照)、そして所望のBa
2AgIO
6ダブルペロブスカイト標的生成物と一致すると見い出せなかった。
【0217】
Sleightらに記載の手順の我々の再現がBa2AgIO6生成物を生成しなかったという事実は、De Hairら[De Hair et al., Vibrational Spectra and Force Constants of Periodates with Ordered Perovskite Structure, J. inorg. Nucl. Chem, 1974, vol. 36, pp 313-315]の開示と一致する。De Hairらは、Sleightら(第313頁、第2欄の実験項を参照)に記載のようにBa2AgIO6の調製を報告する。しかし、De Hairは、Ba2AgIO6について黄色を報告し、これはBa2AgIO6ではなくAgIO4の形成を示す(我々の上記のBa2AgIO6の合成を参照、この第1工程は「黄色AgIO4結晶」の生成を記載する)。Ba2AgIO6についてDe Hairらの表1に与えられたXRDセル定数がSleightらから取った値であり、これはDe Hairらが製造した材料のいかなる独立したXRD特性評価も行わなかったことを示すことにも留意されたい。従って、De Hairらは、Ba2AgIO6の製造に関してSleightらの情報を超える追加の情報を提供しない。
【0218】
実験方法
吸収について、我々はVarian Cary 300 UV-Vis分光光度計を用いた。定常状態PL(SSPL)および時間分解PL(TRPL)スペクトルは、蛍光寿命分光計(Fluo Time 300, PicoQuant FmbH)で記録した。測定は、405 nmの励起(LDH-D-C-405M)で、それぞれSSPLおよびTRPLについて40 MHzおよび10 MHzの繰り返し率で行った。PLシグナルを集め、そして格子モノクロメーター(Princeton Instruments, SP-2558)へと向け、そして光子計数検出器(MPDからのPDMシリーズ)で検出した。
【0219】
結果と考察
我々は、PBE汎関数を用いる密度汎関数理論(DFT)を採用し(Perdew, J. P.; Burke, K.; Ernzerhof, M. Phys. Rev. Lett. 1996, 77, 3865を参照)、
図1aに示すようにF m3m空間群内にありそして岩塩配置に配置したNaおよびIを有するBa
2NaIO
6を最適化した。緩和した格子定数は8.41Åであり、8.34Åの測定値(Kubel, F.; Wandl, N.; Pantazi, M.; D’Anna, V.; Hagemann, H. Z. Anorg. Allg. Chem 2013, 639, 892-898を参照)とよく一致している。次に、我々は、NaをAgで置き換えそして構造を再最適化することへと進む。Ba
2AgIO
6のDFTPBE格子定数は、8.56Åであると見い出される。我々は、Materials Projectデータベースにおける任意の化合物への全ての分解経路について全エネルギー差を計算することによって、Ba
2AgIO
6の安定性を検査し(Jain, A.; Ong, S. P.; Hautier, G.; Chen, W.; Richards, W. D.; Dacek, S.; Cholia, S.; Gunter, D.; Skinner, D.; Ceder, G.; Persson, K. A. APL Mater. 2013, 1, 011002を参照)、そしてこのダブルペロブスカイトが分解に対して安定であることを見い出す。我々は、混成汎関数を用いて電子構造を調査し、DFT-PBE内で周知のバンドギャップの過小評価を克服する。我々の最近の研究において、我々は、PBE0混成汎関数が類似のダブルペロブスカイトの測定したバンドギャップとよく一致することを見い出し、従って、我々はまた、以下においてPBE0を用いる(Volonakis, G.; Filip, M. R.; Haghighirad, A. A.; Sakai, N.; Wenger, B.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 1254-1259; Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Milot, R. L.; Sio, W. H.; Filip, M. R.; Wenger, B.; Johnston, M. B.; Herz, L. M.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 772-778; Ha, V.-A.; Waroquiers, D.; Rignanese, G.-M.; Hautier, G. Appl. Phys. Lett. 2016, 108, 201902を参照)。
【0220】
図1bは、最適化したBa
2NaIO
6およびBa
2AgIO
6についてのDFT-PBE0電子帯構造を示す。Na
IをAg
Iで置き換えることは、バンドギャップをかなり(ほぼ3 eV)狭めることにつながり、そして同時にバンドはより分散性になる。DFT-PBE0内で、Ba
2AgIO
6の電子バンドギャップは1.9 eVであり、これは十分可視範囲内である。バンドの極値付近でのバンド分散の尺度は、電子および正孔の有効質量であり、これらは
図1bに示される。電子質量は、比較的低く、それぞれBa
2NaIO
6およびBa
2AgIO
6について0.5 m
eおよび0.3 m
eである。正孔の場合、NaをAgで置き換えることは、有効質量を1 m
eから0.4 m
eへと減少させる。両方の化合物について価電子帯の上端(vbt)に存在するフラットバンドは、正孔の有効質量の計算には考慮されないが、その存在は、[100]、[010]、および[001]方向に沿った正孔輸送を妨げると予想される。
【0221】
Ba
2AgIO
6のバンドギャップは、我々の計算において準直接(quasi-direct)であり、XでのvbtがΓでのvbtよりもわずか5 meVしか高くない位置でかつΓでの伝導帯の下端(conduction band bottom)(cbb)にあることが見い出される。この差異の小ささを考慮すると、電子-電子および電子-フォノン効果のより精密な多体計算が直接バンドギャップを生成するであろうことが可能である(Onida, G.; Reining, L.; Rubio, A. Rev. Mod. Phys. 2002, 74, 601-659; Giustino, F. Rev. Mod. Phys. 2017, 89, 015003を参照)。我々はまた、Γでの光学遷移が禁制であり、これがハライドダブルペロブスカイトCs
2AgInCl
6と共通の特徴であることを見い出す。(Luo, J.; Li, S.; Wu, H.; Zhou, Y.; Li, Y.; Liu, J.; Li, J.; Li, K.; Yi, F.; Niu, G.; Tang, J. ACS Photonics 2018, 5, 398-405; Meng, W.; Wang, X.; Xiao, Z.; Wang, J.; Mitzi, D. B.; Yan, Y. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 2999-3007を参照)。類似性は、光学遷移の性質に限定されず、
図1bに示すように、Ba
2AgIO
6およびCs
2AgInCl
6の全体のバンド構造は著しく類似している。これらの類似性は偶然の一致ではなく、理由を見てみよう。Ba
2AgIO
6およびCs
2AgInCl
6は、B/B’-サイトにカチオンとしてそれぞれAg
I/I
VIIおよびAg
I/In
IIIを有する。全てのこれらのカチオンは、被占4d-状態および空5s-状態を有する同じ原子価:d
10s
0を共有する。それゆえ、単純なイオン描写において、我々は、4d-状態は価電子帯に寄与すると予想するが、5s-状態は伝導帯にあるべきである。この予想と一致して、Ba
2AgIO
6のvbtは、Cs
2AgInCl
6の価電子帯がAg 4d-軌道およびCl 3p-軌道から生じるのと同じように、
図2に示すようにO 2p-軌道と混成するAg 4d-軌道からなる(Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Milot, R. L.; Sio, W. H.; Filip, M. R.; Wenger, B.; Johnston, M. B.; Herz, L. M.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 772-778を参照)。同じことがcbbに当てはまり、これは両方の化合物について5s-軌道を含む。さらに、Ba
2AgIO
6のvbtでのAg 4d
x2-y2軌道とO 2-p
x,y軌道との混成の結果として、
図1bに示すように非分散バンドが出現する。この混成は、
図S2に示すように2次元で制限される波動関数を引き起こす。我々は、Cs
2AgInCl
6の場合について正確に同じ特徴を観察した。これらの強い類似性は、一方がハライドでありそして一方が酸化物であるにもかかわらず、B/B’-サイトでの原子の原子価が、両方の化合物の電子構造を制御することを示す。以下において、我々は、この概念を一般化して、シングルおよびダブルペロブスカイトについてハライド/酸化物アナログを同定する。
【0222】
AB
IVO
3ペロブスカイトの全てのダブルペロブスカイトアナログを同定するため、我々は、スプリット-カチオン(split-cation)アプローチに従い、そしてA
2B
IIIB’
VO
6、A
2B
IIB’
VIO
6、およびA
2B
IB’
VIIO
6などの構造を検討する。
図3aにおける説明図に従い、我々は、これらのアナログをそれぞれ第一列、第二列および第三列ダブルペロブスカイトと呼ぶ。この枠組み内で、Ba
2InSbO
6、Ba
2CdTeO
6、およびBa
2AgIO
6は、それぞれBaSnO
3の第一列、第二列、および第三列ダブルペロブスカイトアナログである。設計により、全てのこれらの化合物は、Sn
IVと同様にd
10s
0電子配置においてそれらのB-サイトカチオンを有するBaSnO
3と等電子である。Ba
2AgIO
6について我々が上記で議論したことに基づき、我々は今、B-サイトでの電子配置を採用して酸化物をハライドペロブスカイトと結合する。例えば、BaSnO
3のアナログは、その+2酸化状態のCdが同じd
10s
0電子配置を有するので、CsCdCl
3である。従って、それらの電子帯構造は、類似していると予想され、そしてこれは計算によって確認される。
図2bを参照。このようなAB
IIX
3ハライドペロブスカイトについて、B-サイトカチオンの+2酸化は、可能なハライドダブルペロブスカイトアナログを第一列のみに制限する。従って、CsCdCl
3のダブルペロブスカイトアナログはCs
2AgInCl
6である。
図3aに図で説明されるこのリンクは、我々がこの研究の第一部において議論したように、Cs
2AgInCl
6およびBa
2AgIO
6の電子構造がとても類似している理由を説明する。
【0223】
シングルおよびダブルペロブスカイトの電子構造を有意義に比較するため、我々は、ダブルペロブスカイトのfcc格子に相当しそして2つのABO
3単位を含むシングルペロブスカイトABO
3立方格子のスーパーセルを検討する。この説明において、ダブルペロブスカイトのバンド構造は、シングルペロブスカイトバンドの折り畳みバージョンである。このバンド折り畳み効果は、BaSnO
3の場合について
図3cに示される。BaSnO
3の折り畳みバンド構造は、
図1bおよび3cに示す、全てのそのダブルペロブスカイトアナログBa
2InSbO
6、Ba
2CdTeO
6、Ba
2AgIO
6のバンド構造、ならびにハライドダブルペロブスカイトCs
2AgInCl
6のバンド構造に非常に類似していることが明らかである。折り畳むと、BaSnO
3の間接バンドギャップは直接ギャップになるが、Γでの直接遷移は明らかに禁制のままである。この機構は、直接ギャップダブルペロブスカイトCs
2AgInCl
6およびBa
2AgIO
6についてΓでの光学遷移が本質的に禁制である理由を説明する。より一般的には、それらのd
10s
0電子配置においてB-サイトカチオンを有するペロブスカイトについて、間接ギャップシングルペロブスカイトのアナログは、常に禁制直接ギャップを有するダブルペロブスカイトであろう。
【0224】
BaSnO3、Ba2AgIO6、およびCs2AgInCl6の間の密接な類似性を考慮して、我々は、共通の親化合物BaSnO3の全ての可能なアナログを探す。この目的のため、我々は、ICSDを用い、そして今まで合成されたd10s0電子配置を有する全てのシングルおよびダブルペロブスカイトを集める。ハライドシングルペロブスカイトCsCdCl3、CsCdBr3、CsHgCl3、CsCdBr3、およびCsHgI3は、1892および1894まで遡ってWellsにより合成された(Wells, H. L. Amer. Journ. Sc. 1892, 44, 221; Wells, H. L.; Walden, P. T. Z. Anorg. Chem. 1894, 5, 266-272)。同時期に、彼はまた鉛ハライドペロブスカイトCsPbX3の最初の合成を報告した(X = Cl,Br,I - Wells, H. L. Z. Anorg. Chem. 1893, 3, 195-210)。ダブルペロブスカイトBa2CdTeO6およびBa2InSbO6が合成され、そして可能な透明導電性酸化物として研究され、そしてそれらのバンドギャップは、BaSnO3のバンドギャップと同じ範囲内であると報告された(Vasala, S.; Karppinen, M. Prog. Solid State Chem. 2015, 43, 1-36; Sleight, A. W.; Ward, R. Inorg. Chem. 1964, 3, 292-292)。
【0225】
図3bおよび3cに示すように、実験的格子パラメーターを用いたBaSnO
3アナログであるBa
2CdTeO
3、Ba
2InSb
3、およびBaSnO
3についてのDFT-PBE0計算は、実験と同様にそれぞれ3.4 eV、3.2 eVおよび3.1 eVの大きいギャップを生じ、そして全ての化合物について類似のバンド構造を生じる。しかし、我々が
図1bにおいてBa
2AgIO
6と比較する場合、我々は、この場合において、ギャップ1.9 eVが全ての他の場合よりもかなり小さいことを知る。Ba
2AgIO
6のこの特異で興味深い特徴は、以下のように説明され得る。BaSnO
3において、伝導帯の下端は、Sn-5sおよびO-2sの反結合s-s
*軌道によって形成され、そして価電子帯の上端は、非結合O-2p軌道からなる。我々がダブルペロブスカイト格子中の2つのSn
IV原子をIn
III/Sb
V、Cd
II/Te
VI、またはAg
I/I
VIIのいずれかの組み合わせで置き換える場合、被占4d軌道の原子エネルギーレベルは
図4aに示すように変化する。Ba
2AgIO
6を除く全てのダブルペロブスカイトにおいて、O-2pエネルギーはd状態のエネルギーを超え、それゆえvbtの性質は、BaSnO
3と同様に非結合O-2p軌道である。我々がAgに達する場合、4d軌道のエネルギーはO-2pレベルを偶然超え、それゆえBa
2AgIO
6のvbtが混成したAg-4dおよびO-2p状態によって形成される。この遷移は、vbtでの電子波動関数において明白であり、これらは
図4bに示される。ここで我々は、Ba
2CdTeO
6において非結合O-2p軌道のみがvbtにあり、一方、Ba
2AgIO
6についてvbtはまたAg 4d-軌道を含むことが理解できる。これは、バンドギャップを減少させそしてバンドをより分散性にする効果を有し、そしてこの化合物を全てのd
10s
0酸化物ペロブスカイトの中でも傑出したものにするBa
2AgIO
6の特有の特性である。
【0226】
Ba
2AgIO
6の合成および特性評価
Ba
2AgIO
6がCs
2AgInCl
6に似ているバンド構造および十分可視範囲内であるバンドギャップを有することが確立されており、我々は実験合成および特性評価を進める。この目的のため、我々は、最初に黄色AgIO
4結晶を形成し(
図5を参照)、そして続いて補足情報に詳述するようにBa
2AgIO
6を形成するための新規2工程溶液プロセスに従った。
図6aの差し込み図は、得られる茶色粉末を示す。構造を特徴付けるために、我々は、
図6aに示すように、そのX-線回折(XRD)パターンを測定した。我々は、XRDデータを、8.56Åの我々のDFT-PBE予測値と十分一致している8.45Åの格子定数を有するダブルペロブスカイト格子に一致させることができた。さらに、我々がシミュレートしたXRDパターンをDFTPBE構造と比較する場合、我々は、実験データとの非常に良好な一致を得た。
図6aにおける赤線を参照。これは、我々がダブルペロブスカイトBa
2AgIO
6を形成したことを確認する。我々は、これが酸化物ペロブスカイトが低温溶液プロセスによって形成される稀な出来事であることに留意する。
図6bにおいて、我々は、合成したBa
2AgIO
6粉末の光吸収および光ルミネセンス(PL)測定を示す。Taucプロットを用い、我々は1.93 eVの光学バンドギャップを推定する。この値は、1.9 eVの我々が予測したPBE0ギャップとよく一致する。我々はまた、幅広い光ルミネセンスシグナルを観察し、これは613 nmを中心とし、そして吸収の開始と一致する。PLの広がりは、おそらく欠損の存在および/または乏しい結晶性に関連するが、PLピークの位置は、それが直接バンドギャップエネルギーと一致するので、バンド間再結合(band-to-band recombination)による発光を示唆していると思われる。最後に、
図6cにおいて、我々は、時間分解PLデータを示す。二重指数フィット(double exponential fit)は、0.55 nsの速い時間スケールおよび3.24 nsのより遅い時間スケールを生じる。これらの値は、Cs
2BiAgCl
6、Cs
2BiAgBr
6、およびCs
2AgInCl
6などのハライドダブルペロブスカイトについて決定された値よりもわずかに速い(Volonakis, G.; Filip, M. R.; Haghighirad, A. A.; Sakai, N.; Wenger, B.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 1254-1259; Volonakis, G.; Haghighirad, A. A.; Milot, R. L.; Sio, W. H.; Filip, M. R.; Wenger, B.; Johnston, M. B.; Herz, L. M.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 772-778; Filip, M. R.; Hillman, S.; Haghighirad, A. A.; Snaith, H. J.; Giustino, F. J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 2579-2585; Steele, J. A. et al. Adv. Mater. 2018, 30, 1804450)。我々は、このような比較的狭いバンドギャップおよび低い有効質量がBa
2AgIO
6を典型的にはワイドバンドギャップおよび重い有効質量を示す酸化物ペロブスカイトの中でも傑出したものにすることに留意する。
【0227】
熱力学的安定性
我々は、立方晶、正方晶および斜方晶格子内のフォノンバンド構造を計算することによってBa
2AgIO
6の構造の熱力学的安定性を評価する。立方格子中に八面体傾斜は存在しないが、八面体は、
図8の上部パネルに示すように、正方格子内でX-Y平面内で、および斜方格子内で全ての方向に沿って傾斜することが可能である。立方格子について、我々は、仮想的なフォノンモードの存在を報告し(
図8の左下)、これらは格子の熱力学的不安定性の指標である。関連したフォノンモードは、八面体の面内傾斜に関連する。従って、これらのモードは、正方格子について正の周波数へとシフトし、そして斜方晶構造について正のままである。それ故、我々は、低温ではBa
2AgIO
6は相転移して正方晶格子、および/または斜方晶格子に到達すると予想する。
【0228】
結論
要約すると、この研究において、我々は、酸化物ペロブスカイトとハライドシングルおよびダブルペロブスカイトとの間の関連性を確立した。ハライド/酸化物アナログを同定するための鍵は、これらの化合物の電子構造を制御するB-サイトカチオンの原子価である。この新しい概念を用いて、我々は、以前に報告されたハライドダブルペロブスカイトCs2AgInCl6がBaSnO3のアナログであることを実証し、そして我々は、酸化物ダブルペロブスカイトBa2AgIO6を可視中にバンドギャップを有する半導体として初めて同定した。我々は、溶液を介するBa2AgIO6の新規な合成経路を報告し、そしてその結晶学的特性および光学特性の特性評価を初めて報告した。我々は、我々の計算と一致して、おおよそ1.9 eVのギャップおよび同じエネルギーでの幅広い光ルミネセンスシグナルを見い出した。我々は、新しい半導体Ba2AgIO6が混合酸化物/ハライドペロブスカイト太陽電池、新規な酸化物ベースの発光デバイス、および光触媒などの光電子用途の有望な候補であると考える。この化合物の電子特性および光学特性の同調性は、カチオンおよびアニオンの置換によって達成され得た。
【国際調査報告】