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特表2022-525759ピリダジノンTRPC阻害剤の結晶形態
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ピリダジノンTRPC阻害剤の結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20220512BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C07D471/04 118Z
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P13/12
A61P25/04
A61P25/02 101
A61P25/24
A61P25/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555545
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020027689
(87)【国際公開番号】W WO2020210639
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/081985
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517024869
【氏名又は名称】ゴールドフィンチ バイオ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ユエジュン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ウェンフォン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065BB11
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH05
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL03
4C065PP03
4C065PP14
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA21
4C086ZA81
4C086ZC41
4C086ZC54
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、化合物(100)の結晶形態、当該結晶形態を含む医薬組成物、及び当該結晶形態を使用する治療方法に関する。化合物(100)は、腎疾患の治療に有用なTRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネルの阻害剤である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.形態A(2Θ角=4.43±0.2°、11.69±0.2°、17.75±0.2°、及び27.58±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられ、前記特徴付けられたピークは、観測される最高ピークである)、
b.形態E(2Θ角=11.71±0.2°、15.24±0.2°、24.79±0.2°、及び26.15±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられ、前記特徴付けられたピークは、観測される最高ピークである)、
c.形態G(2Θ角=15.34±0.2°、24.58±0.2°、及び25.86±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられ、前記特徴付けられたピークは、観測される最高ピークである)、
d.形態H(2Θ角=13.79±0.2°、23.61±0.2°、27.10±0.2°、及び27.49±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられ、前記特徴付けられたピークは、観測される最高ピークである)、
e.形態B(2Θ角=4.40±0.2°、17.48±0.2°、17.72±0.2°、18.46±0.2°、及び27.49±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられ、前記特徴付けられたピークは、観測される最高ピークである)、ならびに
f.形態C(2Θ角=4.42±0.2°、8.83±0.2°、13.27±0.2°、及び17.72±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられ、前記特徴付けられたピークは、観測される最高ピークである)
から選択される、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの結晶形態。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶形態A。
【請求項3】
2Θ角=4.43±0.2°、8.80±0.2°、9.17±0.2°、11.69±0.2°、12.27±0.2°、13.28±0.2°、14.24±0.2°、14.67±0.2°、15.96±0.2°、16.93±0.2°、17.75±0.2°、19.64±0.2°、20.98±0.2°、22.23±0.2°、22.71±0.2°、24.19±0.2°、25.55±0.2°、27.58±0.2°、27.95±0.2°、及び30.32±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる、請求項2に記載の結晶形態A。
【請求項4】
図1Aと実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項2に記載の結晶形態A。
【請求項5】
237±2℃~256℃±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形態A。
【請求項6】
236.4±1℃、243.5±1℃、及び256.3℃±1℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる、請求項5に記載の結晶形態A。
【請求項7】
請求項1に記載の結晶形態H。
【請求項8】
2Θ角=4.59±0.2°、11.92±0.2°、12.27±0.2°、13.47±0.2°、13.79±0.2°、14.82±0.2°、15.27±0.2°、15.89±0.2°、16.28±0.2°、18.08±0.2°、19.24±0.2°、20.77±0.2°、23.61±0.2°、24.47±0.2°、25.11±0.2°、26.13±0.2°、27.10±0.2°、27.49±0.2°、28.42±0.2°、及び30.49±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる、請求項7に記載の結晶形態H。
【請求項9】
図2Aと実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項7に記載の結晶形態H。
【請求項10】
258°±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項7~9のいずれか1項に記載の結晶形態H。
【請求項11】
74.1℃±1℃、241.4℃±1℃、及び257.0℃±1℃に追加の補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項10に記載の結晶形態H。
【請求項12】
請求項1に記載の結晶形態E。
【請求項13】
2Θ角=11.71±0.2°、14.39±0.2°、15.24±0.2°、15.63±0.2°、17.02±0.2°、17.84±0.2°、18.30±0.2°、19.56±0.2°、20.22±0.2°、20.65±0.2°、23.96±0.2°、24.79±0.2°、及び26.15±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる、請求項12に記載の結晶形態E。
【請求項14】
図3Aと実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項12に記載の結晶形態E。
【請求項15】
78.5°±2℃及び256.7°±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項12~14のいずれか1項に記載の結晶形態E。
【請求項16】
257.9℃±2℃に追加の補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項15に記載の結晶形態E。
【請求項17】
請求項1に記載の結晶形態G。
【請求項18】
2Θ角=7.88±0.2°、11.82±0.2°、12.85±0.2°、14.39±0.2°、14.96±0.2°、15.34±0.2°、15.81±0.2°、16.70±0.2°、17.40±0.2°、19.51±0.2°、19.72±0.2°、20.17±0.2°、20.63±0.2°、23.18±0.2°、23.90±0.2°、24.58±0.2°、25.33±0.2°、25.86±0.2°、26.26±0.2°、及び28.61±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる、請求項17に記載の結晶形態G。
【請求項19】
図4Aと実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項18に記載の結晶形態G。
【請求項20】
80.5°±2℃C及び257.2℃±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項17~19のいずれか1項に記載の結晶形態G。
【請求項21】
258.3℃±2℃に追加の補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによってさらに特徴付けられる、請求項20に記載の結晶形態G。
【請求項22】
請求項2~6のいずれか1項に記載の結晶形態Aと、医薬的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項7~11のいずれか1項に記載の結晶形態Hと、医薬的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項12~16のいずれか1項に記載の結晶形態Eと、医薬的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物。
【請求項25】
請求項17~21のいずれか1項に記載の結晶形態Gと、医薬的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物。
【請求項26】
TRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネル、またはTRPC1、TRPC4、及びTRPC5が任意に組み合わさった四量体を構成するイオンチャネル、のうちの1つ以上の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記方法が、請求項22~25のいずれか1項に記載の医薬組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
腎疾患、または疾患もしくは状態と関連する腎症を治療する方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に対して、請求項22~25のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
前記腎疾患、または前記疾患もしくは状態と関連する腎症が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性腎症、アルポート症候群、高血圧性腎疾患、ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、突発性膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、免疫複合体媒介性MPGN、補体媒介性MPGN、ループス腎炎、感染後糸球体腎炎、菲薄基底膜病、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、アミロイドーシス(原発性)、c1q腎症、急速進行性GN、抗GBM疾患、C3糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症、IgA腎症、IgG4腎症、タンパク尿腎疾患、ミクロアルブミン尿、マクロアルブミン尿腎疾患、移植関連FSGS、移植関連ネフローゼ症候群、移植関連タンパク尿、結節性糸球体腎炎、NASR疾患(モノクローナルIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎)、多発性嚢胞腎疾患、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)、または肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、前糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症、肺動脈性肺高血圧症、がん、胆汁うっ滞性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、もしくはファブリー病のいずれか1つと関連する腎症である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記腎疾患、または前記疾患もしくは状態と関連する腎症が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性腎症、アルポート症候群、高血圧性腎疾患、肥満関連腎症、ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、ループス腎炎、感染後糸球体腎炎、菲薄基底膜病、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、アミロイドーシス(原発性)、c1q腎症、抗GBM疾患、C3糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症、IgA腎症、IgG4腎症、脂質異常症関連腎症、結節性糸球体腎炎、NASR疾患(モノクローナルIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎)、多発性嚢胞腎疾患、またはファブリー病に起因する腎臓合併症である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記腎疾患が、高血圧性腎症、メタボリックシンドロームと関連する腎症、肥満と関連する腎症、脂質異常症と関連する腎症、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、FSGS、または微小変化型ネフローゼ症候群である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記腎疾患が、糖尿病性腎症、FSGS、または微小変化型ネフローゼ症候群である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
疼痛、不安、またはうつ病を治療する方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に対して、請求項22~25のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項33】
請求項2~6のいずれか1項に記載の結晶形態Aを調製する方法であって、前記方法が、
a.ある量の4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを、ある量のDMSO:エタノール(2:1(v/v))に室温で溶解させて過飽和溶液を形成させるステップと、
b.前記4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを沈殿させる上で十分な量のエタノール:HO(1:1(v/v))をステップaの溶液に添加するステップと、
c.ステップbから得られる沈殿物質を単離して前記結晶形態Aを得るステップと、
を含む、前記方法。
【請求項34】
請求項2~6のいずれか1項に記載の結晶形態Aを調製する方法であって、前記方法が、
a.ある量の4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを、ある量のDMSO:エタノール(2:1(v/v))に室温で溶解させて過飽和溶液を形成させるステップと、
b.ステップaの溶液に対して、ある量のエタノール:HO(1:1(v/v))及び結晶形態Aの種晶を添加して前記4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを沈殿させるステップと、
c.ステップbから得られる沈殿物質を単離して前記結晶形態Aを得るステップと、
を含む、前記方法。
【請求項35】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、結晶形態Aの試料と医薬的に許容可能な医薬品添加物とを組み合わせることを含む、前記方法。
【請求項36】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、
a.結晶形態Aを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.前記溶液から前記医薬組成物を調製するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項37】
前記溶液からの前記医薬組成物の前記調製が、前記溶液を噴霧乾燥させること、及び前記噴霧乾燥された溶液を製剤化して固体剤形にすること、を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項35~37のいずれか1項に記載の方法によって調製される医薬組成物。
【請求項39】
請求項7~11のいずれか1項に記載の結晶形態Hを調製する方法であって、前記方法が、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンをイソプロピルアルコール:酢酸イソプロピル(1:1(v/v))に懸濁するステップと、
b.ステップaの懸濁液を、撹拌しながら少なくとも24時間、45℃~55℃の温度に加熱するステップと、
c.ステップbから得られる不溶性物質を単離して前記結晶形態Hを得るステップと、
を含む、前記方法。
【請求項40】
請求項7~11のいずれか1項に記載の結晶形態Hを調製する方法であって、前記方法が、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを45℃~55℃の温度でDMSO:イソプロピルアルコール(2:1(v/v))に溶解させるステップと、
b.ステップaから得られる溶液を、孔径0.45ミクロンのPTFE膜に通して濾過するステップと、
c.ステップbから得られる濾液に対して、(i)ステップaにおいて使用されるイソプロピルアルコールの量の30~50%の量のイソプロピルアルコール、及び(ii)結晶形態Hを添加し、45℃~55℃の温度で少なくとも5分間撹拌するステップと、
d.ステップcから得られる溶液に対して、温度を45℃~55℃に維持しつつ撹拌しながら少なくとも4時間にわたってイソプロピルアルコール:HO(1:1(v/v))を添加して4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの懸濁液を得るステップであって、ステップc及びステップdにおいて添加されるイソプロピルアルコールの量が、ステップaにおいて添加されるイソプロピルアルコールの量とほぼ等しい、前記ステップと、
e.ステップdから得られる懸濁液を、撹拌せずに45℃~55℃の温度で少なくとも2時間維持するステップと、
f.ステップeから得られる沈殿物質を単離して前記結晶形態Hを得るステップと、
を含む、前記方法。
【請求項41】
請求項7~11のいずれか1項に記載の結晶形態Hを調製する方法であって、前記方法が、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを65℃~75℃の温度でDMSOに溶解させるステップと、
b.ステップaから得られる溶液を、孔径0.45ミクロンのPTFE膜に通して濾過するステップと、
c.ステップbから得られる濾液に対して、(i)ステップAにおいて使用されるDMSOの体積の約10%である量のイソプロピルアルコール:HO(1:1(v/v))、及び(ii)結晶形態Hを添加するステップと、
d.ステップcから得られる濾液に対して、温度を65℃~75℃に維持しつつ撹拌しながら少なくとも5時間にわたって追加量のイソプロピルアルコール:HO(1:1(v/v))を添加して4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの懸濁液を得るステップであって、ステップc及びステップdにおいて添加されるイソプロピルアルコールの総量が、ステップaにおいて使用されるDMSOの体積の約半分である、前記ステップと、
e.ステップdの懸濁液を、少なくとも2時間撹拌しながら室温に冷却するステップと、
f.ステップeの懸濁液を、撹拌せずに少なくともさらに45分間室温で維持するステップと、
g.ステップfから得られる沈殿物質を単離して前記結晶形態Hを得るステップと、
を含む、前記方法。
【請求項42】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、結晶形態Hの試料と医薬的に許容可能な医薬品添加物とを組み合わせることを含む、前記方法。
【請求項43】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、
a.結晶形態Hを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.前記溶液から前記医薬組成物を調製するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項44】
前記溶液からの前記医薬組成物の前記調製が、前記溶液を噴霧乾燥させること、及び前記噴霧乾燥された溶液を製剤化して固体剤形にすること、を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項42~44のいずれか1項に記載の方法によって調製される医薬組成物。
【請求項46】
請求項12~16のいずれか1項に記載の結晶形態Eを形成させる方法であって、前記方法が、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを室温でDMF/HO(1:9(v/v))に懸濁してスラリーを形成させるステップと、
b.前記懸濁液を真空乾燥させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項47】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、結晶形態Eの試料と医薬的に許容可能な医薬品添加物とを組み合わせることを含む、前記方法。
【請求項48】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、
a.結晶形態Eを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.前記溶液から前記医薬組成物を調製するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項49】
前記溶液からの前記医薬組成物の前記調製が、前記溶液を噴霧乾燥させること、及び前記噴霧乾燥された溶液を製剤化して固体剤形にすること、を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項47~49のいずれか1項に記載の方法によって調製される医薬組成物。
【請求項51】
請求項17~21のいずれか1項に記載の結晶形態Gを形成させる方法であって、前記方法が、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを、aが0.8以上の溶媒に室温で懸濁してスラリーを形成させるステップと、
b.前記懸濁液を真空乾燥させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項52】
前記溶媒が、アセトニトリルと水との1:1(v/v)混合物である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、結晶形態Gの試料と医薬的に許容可能な医薬品添加物とを組み合わせることを含む、前記方法。
【請求項54】
4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法であって、前記方法が、
a.結晶形態Gを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.前記溶液から前記医薬組成物を調製するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項55】
前記溶液からの前記医薬組成物の前記調製が、前記溶液を噴霧乾燥させること、及び前記噴霧乾燥された溶液を製剤化して固体剤形にすること、を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項53~55のいずれか1項に記載の方法によって調製される医薬組成物。
【請求項57】
1つ以上のTRPC1イオンチャネルが1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び/またはTRPC5イオンチャネルと組み合わさったものを含むヘテロ四量体形態の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記方法が、請求項22~25、請求項38、請求項45、請求項50、または請求項56のいずれか1項に記載の医薬組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項58】
1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び1つ以上のTRPC5イオンチャネルを含むヘテロ四量体形態の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記方法が、請求項22~25、請求項38、請求項45、請求項50、または請求項56のいずれか1項に記載の医薬組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項59】
前記対象が、腎疾患(巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性腎症、アルポート症候群、高血圧性腎疾患、ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、突発性膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、免疫複合体媒介性MPGN、補体媒介性MPGN、ループス腎炎、感染後糸球体腎炎、菲薄基底膜病、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、アミロイドーシス(原発性)、c1q腎症、急速進行性GN、抗GBM疾患、C3糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症、IgA腎症、IgG4腎症、タンパク尿腎疾患、ミクロアルブミン尿、マクロアルブミン尿腎疾患、移植関連FSGS、移植関連ネフローゼ症候群、移植関連タンパク尿、結節性糸球体腎炎、NASR疾患(モノクローナルIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎)、多発性嚢胞腎疾患、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)、または肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、前糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症、肺動脈性肺高血圧症、がん、胆汁うっ滞性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、もしくはファブリー病のいずれか1つと関連する腎症など)、疼痛(神経障害性疼痛または内臓痛など)、不安、あるいはうつ病に罹患している、請求項57~58のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年4月10日出願の国際出願第PCT/CN19/81985号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、化合物100の結晶多形、当該結晶多形を含む医薬組成物、及び当該結晶多形を使用して医薬組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク尿は、血液中のタンパク質の過剰量が尿中に漏出する状態である。タンパク尿は、24時間で尿中への30mgのタンパク質喪失(ミクロアルブミン尿と呼ばれる)から300mg/日超のタンパク質喪失(マクロアルブミン尿と呼ばれる)にまで進行した後、24時間で3.5グラム以上、または正常量の25倍のタンパク質喪失レベルに達し得る。タンパク尿は、腎臓の糸球体に機能不全がある場合に生じ、体内での体液蓄積(浮腫)を引き起こす。長期のタンパク質漏出は腎不全につながることが示されている。ネフローゼ症候群(NS)疾患は、広く認められる末期腎疾患症例の約12%を占め、米国における年間費用は30億ドルを超える。毎年小児10万人当たりおよそ5人がNSと診断され、現在、小児10万人当たり15人がNSに罹患している。治療にポジティブに応答する患者の場合、再発頻度は極めて高い。ネフローゼ症候群の小児の90%が治療に応答するが、推定では75%が再発する。腎疾患(例えば、タンパク尿)を治療するまたはその発症リスクを低減するより有効な方法が必要とされている。
【0004】
哺乳類TRPチャネルタンパク質は、アミノ酸配列の相同性に基づいて6つのサブファミリー(TRPC、TRPV、TRPM、TRPA、TRPP、及びTRPML)に分類することができる6回膜貫通カチオン透過性チャネルを形成する。最近のTRPチャネルの研究からは、TRPチャネルが多くの基本的な細胞機能に関与しており、多くの疾患の病態生理学において重要な役割を果たしていると考えられることが示されている。多くのTRPは、腎臓でネフロンの異なる部分に沿って発現し、これらのチャネルが遺伝性だけでなく後天性の腎臓障害に関与していることを示唆する証拠が増えている。TRPC6、TRPM6、及びTRPP2は、それぞれ遺伝性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、二次低カルシウム血症を伴う低マグネシウム血症(HSH)、及び多発性嚢胞腎疾患(PKD)に関与すると考えられている。TRPC5は、FSGS及び糖尿病性腎症にも関与している(J Clin Invest.2013 Dec 2;123(12):5298-5309.10.1172/JCI71165、Zhou et al.,Science 358,1332-1336(2017)。
【0005】
TRPC5は、生得的な恐怖応答の制御の根底をなす機構に寄与することも報告されている(J Neurosci.2014 Mar 5;34(10):3653-3667)。
【0006】
したがって、TRPC5のさらなる阻害剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの態様では、本発明は、下記のものから選択される4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの結晶形態を対象とする:
形態A(無水物であり、2Θ角=4.43±0.2°、11.69±0.2°、17.75±0.2°、及び27.58±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる)、
形態H(無水物であり、2Θ角=13.79±0.2°、23.61±0.2°、及び27.10±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる)、
形態E(水和物であり、2Θ角=11.71±0.2°、15.24±0.2°、24.79±0.2°、及び26.15±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる)、または
形態G(水和物であり、2Θ角=15.34±0.2°、24.58±0.2°、及び25.86±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる)。
【0008】
いくつかの態様では、本発明は、下記のものから付加的に選択される4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの結晶形態を対象とする:
形態B(無水物であり、2Θ角=4.40±0.2°、17.48±0.2°、17.72±0.2°、及び27.49±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる)、または
形態C(水和物であり、2Θ角=4.42±0.2°、8.83±0.2°、13.27±0.2°、及び17.72±0.2°に位置する粉末X線回折ピークによって特徴付けられる)。
【0009】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Aを含む医薬組成物を対象とする。
【0010】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Hを含む医薬組成物を対象とする。
【0011】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Eを含む医薬組成物を対象とする。
【0012】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Gを含む医薬組成物を対象とする。
【0013】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Bを含む医薬組成物を対象とする。
【0014】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Cを含む医薬組成物を対象とする。
【0015】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、結晶形態Aの試料と医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることを含む。
【0016】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、
a.結晶形態Aを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.溶液から医薬組成物を調製するステップと、
を含む。
【0017】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、結晶形態Hの試料と医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることを含む。
【0018】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、
a.結晶形態Hを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.溶液から医薬組成物を調製するステップと、
を含む。
【0019】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、結晶形態Eの試料と医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることを含む。
【0020】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、
a.結晶形態Eを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.溶液から医薬組成物を調製するステップと、
を含む。
【0021】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、結晶形態Gの試料と医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることを含む。
【0022】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、
a.結晶形態Gを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.溶液から医薬組成物を調製するステップと、
を含む。
【0023】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、結晶形態Bの試料と医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることを含む。
【0024】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、
a.結晶形態Bを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、
b.溶液から医薬組成物を調製するステップと、
を含む。
【0025】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、結晶形態Cの試料と医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることを含む。
【0026】
いくつかの態様では、本発明は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの医薬組成物を調製する方法を対象とし、この方法は、a.結晶形態Cを溶媒に溶解して溶液を形成させるステップと、b.溶液から医薬組成物を調製するステップと、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明は、TRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネル、またはTRPC1、TRPC4、及びTRPC5が任意に組み合わさった四量体を構成するイオンチャネル、のうちの1つ以上の阻害を、それを必要とする対象において行う方法を対象とし、この方法は、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの結晶形態を含む医薬組成物を有効量で対象に投与することを含む。こうした実施形態の態様のいくつかでは、イオンチャネルはヘテロ四量体形態であり、このヘテロ四量体形態は、1つ以上のTRPC1イオンチャネルが1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び/またはTRPC5イオンチャネルと組み合わさったものを含む。こうした実施形態の態様のいくつかでは、イオンチャネルはヘテロ四量体形態であり、このヘテロ四量体形態は、1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び1つ以上のTRPC5イオンチャネルを含む。
【0028】
いくつかの態様では、本発明は、腎疾患、または状態もしくは疾患と関連する腎症を治療する方法を対象とし、この方法は、それを必要とする対象に対して、4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの結晶形態を含む医薬組成物を治療有効量で投与することを含む。
【0029】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Aを調製する方法を対象とし、この方法は、
a.ある量の4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを、ある量のDMSO:エタノール(2:1(v/v))に室温で溶解させて過飽和溶液を形成させるステップと、
b.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを沈殿させる上で十分な量のエタノール:HO(1:1(v/v))をステップaの溶液に添加するステップと、
c.ステップbから得られる沈殿物質を単離して結晶形態Aを得るステップと、
を含む。
【0030】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Aを調製する方法を対象とし、この方法は、
a.ある量の4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを、ある量のDMSO:エタノール(2:1(v/v))に室温で溶解させて過飽和溶液を形成させるステップと、
b.ステップaの溶液に対して、ある量のエタノール:HO(1:1(v/v))及び結晶形態Aの種晶を添加して4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを沈殿させるステップと、
c.ステップbから得られる沈殿物質を単離して結晶形態Aを得るステップと、
を含む。
【0031】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Hを調製する方法を対象とし、この方法は、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンをイソプロピルアルコール:酢酸イソプロピル(1:1(v/v))に懸濁するステップと、
b.ステップaの懸濁液を、撹拌しながら少なくとも24時間、45℃~55℃の温度に加熱するステップと、
c.ステップbから得られる不溶性物質を単離して結晶形態Hを得るステップと、
を含む。
【0032】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Hを調製する方法を対象とし、この方法は、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを45℃~55℃の温度でDMSO:イソプロピルアルコール(2:1(v/v))に溶解させるステップと、
b.ステップaから得られる溶液を、孔径0.45ミクロンのPTFE膜に通して濾過するステップと、
c.ステップbから得られる濾液に対して、(i)ステップaにおいて使用されるイソプロピルアルコールの量の30~50%の量のイソプロピルアルコール、及び(ii)結晶形態Hを添加し、45℃~55℃の温度で少なくとも5分間撹拌するステップと、
d.ステップcから得られる溶液に対して、温度を45℃~55℃に維持しつつ撹拌しながら少なくとも4時間にわたってイソプロピルアルコール:HO(1:1(v/v))を添加して4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの懸濁液を得るステップであって、ステップc及びステップdにおいて添加されるイソプロピルアルコールの量が、ステップaにおいて添加されるイソプロピルアルコールの量とほぼ等しいステップと、
e.ステップdから得られる懸濁液を、撹拌せずに45℃~55℃の温度で少なくとも2時間維持するステップと、
f.ステップeから得られる沈殿物質を単離して結晶形態Hを得るステップと、
を含む。
【0033】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Hを調製する方法を対象とし、この方法は、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを65℃~75℃の温度でDMSOに溶解させるステップと、
b.ステップaから得られる溶液を、孔径0.45ミクロンのPTFE膜に通して濾過するステップと、
c.ステップbから得られる濾液に対して、(i)ステップAにおいて使用されるDMSOの体積の約10%である量のイソプロピルアルコール:HO(1:1(v/v))、及び(ii)結晶形態Hを添加するステップと、
d.ステップcから得られる濾液に対して、温度を65℃~75℃に維持しつつ撹拌しながら少なくとも5時間にわたって追加量のイソプロピルアルコール:HO(1:1(v/v))を添加して4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの懸濁液を得るステップであって、ステップc及びステップdにおいて添加されるイソプロピルアルコールの総量が、ステップaにおいて使用されるDMSOの体積の約半分であるステップと、
e.ステップdの懸濁液を、少なくとも2時間撹拌しながら室温に冷却するステップと、
f.ステップeの懸濁液を、撹拌せずに少なくともさらに45分間室温で維持するステップと、
g.ステップfから得られる沈殿物質を単離して結晶形態Hを得るステップと、
を含む。
【0034】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Eを形成させる方法を対象とし、この方法は、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを室温でDMF/HO(1:9(v/v))に懸濁してスラリーを形成させるステップと、
b.懸濁液を真空乾燥させるステップと、
を含む。
【0035】
いくつかの態様では、本発明は、結晶形態Gを形成させる方法を対象とし、この方法は、
a.4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを、aが0.8以上の溶媒に室温で懸濁してスラリーを形成させるステップと、
b.懸濁液を真空乾燥させるステップと、
を含む。
【0036】
図面を提供する目的は例示であり、限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】化合物100の結晶形態Aの実験的なXRPDパターンを示す。
図1B】化合物100の結晶形態Aについての実験的な熱重量分析(TGA)データ及び示差走査熱量測定(DSC)データを示す。
図2A】化合物100の結晶形態Hの実験的なXRPDパターンを示す。
図2B】DMSO/IPA/HO系での結晶化によって得られた化合物100の結晶形態Hについての実験的な示差走査熱量測定(DSC)データを示す。
図2C】化合物100を50℃でIPA/IPAc(1:1(v/v))中に含めてスラリー化することによって得られた化合物100の結晶形態Hについての実験的なTGAデータ及びDSCデータを示す。
図3A】化合物100の結晶形態Eの実験的なXRPDパターンを示す。
図3B】化合物100の結晶形態Eについての実験的なTGAデータ及びDSCデータを示す。
図4A】化合物100の結晶形態Gの実験的なXRPDパターンを示す。
図4B】化合物100の結晶形態Gについての実験的なTGAデータ及びDSCデータを示す。
図5A】化合物100の結晶形態Bの実験的なXRPDパターンを示す。
図5B】化合物100の結晶形態Bについての実験的なTGAデータ及びDSCデータを示す。
図6A】化合物100の結晶形態Cの実験的なXRPDパターンを示す。
図6B】化合物100の結晶形態Cについての実験的なTGAデータ及びDSCデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、
化合物100
【0039】
【化1】
の結晶多形を特徴とする。化合物100は、TRPC1、TRPC4、及びTRPC5の阻害剤であり、この阻害剤については、WO20/061162、US2020/0102301、2019年9月18日出願の米国特許出願第16/575,161号、2018年9月18日出願の同第62/732,728号、及び201年12月17日出願の同第62/780,553号に記載されており、これらの文献は全て、参照によって本明細書に援用される。
【0040】
化合物100の結晶形態を使用することで、この化合物の物理化学的特性を調節/改善することができ、調節/改善できる物理化学的特性には、限定されないが、固体特性(例えば、結晶性、吸湿性、融点、または水和)、医薬特性(例えば、溶解性/溶出速度、安定性、または適合性)、ならびに結晶化特徴(例えば、純度、収率、または形態)が含まれる。
【0041】
一態様では、本発明は、図1Aと実質的に同様の粉末X線回折(XRPD)パターンで特徴的なピークを有する化合物100の結晶形態Aを特徴とする。
【0042】
別の態様では、本発明は、表1に示される2シータ値(°2θ)に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Aを特徴とする。
【0043】
表1、表2、表3、及び表4、ならびに図1A図2A図3A、及び図4A中の各ピークの相対強度ならびに2シータ値は、結晶形態が同じであったとしても、ある特定の条件の下では変化またはシフトし得る。当業者なら、所与の結晶形態が、図1A図2A図3A、及び図4Aまたは表1、表2、表3、及び表4のうちの1つに記載のものと同じ結晶形態であるかどうかを、それらのXRPDデータを比較することによって容易に決定できるであろう。一方のデータセット中のピークの1つ以上が、もう一方のデータセット中の対応ピークの2θ値の±0.2°以内に位置する場合、本明細書に記載のように、XRPDデータセットは、別のXRPDデータセットと「実質的に同様」である。
【0044】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.43±0.2°、11.69±0.2°、17.75±0.2°、及び27.58±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Aを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0045】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.43±0.2°、8.80±0.2°、9.17±0.2°、11.69±0.2°、12.27±0.2°、13.28±0.2°、14.24±0.2°、14.67±0.2°、15.96±0.2°、16.93±0.2°、17.75±0.2°、19.64±0.2°、20.98±0.2°、22.23±0.2°、22.71±0.2°、24.19±0.2°、25.55±0.2°、27.58±0.2°、27.95±0.2°、及び30.32±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Aを特徴とする。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、237±2℃~256℃±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Aを特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明は、236.4±1℃、243.5±1℃、及び256.3℃±1℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Aを特徴とする。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、図2Aと実質的に同様の粉末X線回折(XRPD)パターンで特徴的なピークを有する化合物100の結晶形態Hを特徴とする。
【0048】
さらに別の態様では、本発明は、表2に示される2シータ値(°2θ)に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Hを特徴とする。
【0049】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=13.79±0.2°、23.61±0.2°、及び27.10±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Hを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0050】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=13.79±0.2°、23.61±0.2°、27.10±0.2°、及び27.49±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Hを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0051】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.59±0.2°、11.92±0.2°、12.27±0.2°、13.47±0.2°、13.79±0.2°、14.82±0.2°、15.27±0.2°、15.89±0.2°、16.28±0.2°、18.08±0.2°、19.24±0.2°、20.77±0.2°、23.61±0.2°、24.47±0.2°、25.11±0.2°、26.13±0.2°、27.10±0.2°、27.49±0.2°、28.42±0.2°、及び30.49±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Hを特徴とする。
【0052】
さらに別の態様では、本発明は、258°±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Hを特徴とする。より具体的には、本発明は、74.1℃±1℃、241.4℃±1℃、及び257.0℃±1℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Hを特徴とする。
【0053】
さらに別の態様では、本発明は、図3Aと実質的に同様の粉末X線回折(XRPD)パターンで特徴的なピークを有する化合物100の結晶形態Eを特徴とする。
【0054】
さらに別の態様では、本発明は、表3に示される2シータ値(°2θ)に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Eを特徴とする。
【0055】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=11.71±0.2°、15.24±0.2°、24.79±0.2°、及び26.15±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Eを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0056】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=11.71±0.2°、14.39±0.2°、15.24±0.2°、15.63±0.2°、17.02±0.2°、17.84±0.2°、18.30±0.2°、19.56±0.2°、20.22±0.2°、20.65±0.2°、23.96±0.2°、24.79±0.2°、及び26.15±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Eを特徴とする。
【0057】
さらに別の態様では、本発明は、78.5℃±2℃及び256.7℃±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Eを特徴とする。いくつかの実施形態では、257.9℃±2℃に追加の補外開始温度が存在する。
【0058】
さらに別の態様では、本発明は、図4Aと実質的に同様の粉末X線回折(XRPD)パターンで特徴的なピークを有する化合物100の結晶形態Gを特徴とする。
【0059】
さらに別の態様では、本発明は、表4に示される2シータ値(°2θ)に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Gを特徴とする。
【0060】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=15.34±0.2°、24.58±0.2°、及び25.86±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Gを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0061】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=7.88±0.2°、11.82±0.2°、12.85±0.2°、14.39±0.2°、14.96±0.2°、15.34±0.2°、15.81±0.2°、16.70±0.2°、17.40±0.2°、19.51±0.2°、19.72±0.2°、20.17±0.2°、20.63±0.2°、23.18±0.2°、23.90±0.2°、24.58±0.2°、25.33±0.2°、25.86±0.2°、26.26±0.2°、及び28.61±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Gを特徴とする。
【0062】
さらに別の態様では、本発明は、80.5°±2℃C及び257.2℃±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Gを特徴とする。いくつかの実施形態では、258.3℃±2℃に追加の補外開始温度が存在する。
【0063】
さらに別の態様では、本発明は、図5Aと実質的に同様の粉末X線回折(XRPD)パターンで特徴的なピークを有する化合物100の結晶形態Bを特徴とする。
【0064】
さらに別の態様では、本発明は、表5に示される2シータ値(°2θ)に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Bを特徴とする。
【0065】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.40±0.2°、17.48±0.2°、17.72±0.2°、18.46±0.2°、及び27.49±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Bを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0066】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.40±0.2°、8.74±0.2°、9.13±0.2°、11.67±0.2°、12.51±0.2°、13.10±0.2°、13.64±0.2°、14.03±0.2°、16.26±0.2°、16.93±0.2°、17.48±0.2°、17.72±0.2°、18.46±0.2°、20.51±0.2°、21.89±0.2°、23.97±0.2°、24.79±0.2°、27.49±0.2°、27.86±0.2°、及び31.76±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Bを特徴とする。
【0067】
さらに別の態様では、本発明は、254.5°±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Bを特徴とする。いくつかの実施形態では、256.3±2℃に追加の補外開始温度が存在する。
【0068】
さらに別の態様では、本発明は、図6Aと実質的に同様の粉末X線回折(XRPD)パターンで特徴的なピークを有する化合物100の結晶形態Cを特徴とする。
【0069】
さらに別の態様では、本発明は、表6に示される2シータ値(°2θ)に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Cを特徴とする。
【0070】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.42±0.2°、8.83±0.2°、13.27±0.2°、及び17.72±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Cを特徴とする。いくつかの実施形態では、示されるこれらの特徴的なピークは、このXRPDパターン中の最高ピークである。
【0071】
さらに別の態様では、本発明は、2シータ値(°2θ)=4.42±0.2°、8.83±0.2°、10.52±0.2°、13.27±0.2°、16.58±0.2°、16.97±0.2°、17.72±0.2°、21.18±0.2°、22.21±0.2°、及び24.49.±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有する化合物100の結晶形態Cを特徴とする。
【0072】
さらに別の態様では、本発明は、49.6℃±2℃及び257.9℃±2℃に補外開始温度を有する示差走査熱量測定パターンによって特徴付けられる化合物100の結晶形態Cを特徴とする。いくつかの実施形態では、258.9℃±2℃に追加の補外開始温度が存在する。
【0073】
本明細書で使用されるXRPDデータの収集は、LynxEye検出器を備えたD8 ADVANCE X線回折装置(Bruker)を使用して行うことができる。XRPD分析では、ステップ時間を0.3秒として3~40°(2θ)で試料をスキャンした。管電圧及び管電流は、それぞれ40KV及び40mAとした。XRPDピーク位置の測定誤差は、典型的には、±0.2度2シータ(°2θ)である。代替的には、XRPDデータの収集は、下記のパラメーターを使用して、PANalyticalのEmpyrean粉末X線回折装置及びX’Pert3粉末X線回折装置を使用して行うことができる:
【0074】
【表1】
【0075】
本明細書で使用される示差走査熱量測定(DSC)データの収集は、Discovery DSC 250(TA Instruments,US)を使用して行うことができる。量り取った試料をDSCピンホールパンに入れ、重量を正確に記録する。この試料を10℃/分で最終温度に加熱する。一方のデータセット中の特徴値の1つ以上が、もう一方のデータセット中の対応特徴値の±3℃以内である場合、本明細書で使用されるように、DSCデータセットは、別のDSCデータセットと「実質的に同様」である。
【0076】
本明細書で使用される熱重量分析(TGA)データの収集は、Discovery TGA 55(TA Instruments,US)を使用して行うことができる。予め風袋重量を測定した開放型のアルミニウムパンに試料を入れ、自動で重量測定し、TGA加熱炉に挿入することができる。試料を10℃/分で最終温度に加熱することができる。
【0077】
代替的には、TGAデータ及びDSCデータの収集は、下記のパラメーターを使用して、それぞれTA InstrumentsのTA Q500/Q5000/5500 TGA及びTA InstrumentsのTA Q200/Q2000/2500 DSCを使用して行うことができる:
【0078】
【表2】
【0079】
別の態様では、本発明は、上記の結晶形態の実施形態のいずれか1つで、実質的に純粋なものを特徴とする。本明細書で使用される「実質的に純粋」という用語は、所与の結晶形態に関して使用される場合、結晶形態の純度が少なくとも約90%であることを指す。このことは、その結晶形態に含まれるその他の形態の化合物100の含量が約10%を超えないことを意味する。より好ましくは、「実質的に純粋」という用語は、化合物100の結晶形態の純度が少なくとも約95%であることを指す。このことは、その結晶形態の化合物100に含まれるその他の形態の化合物100の含量が約5%を超えないことを意味する。さらにより好ましくは、「実質的に純粋」という用語は、化合物100の結晶形態の純度が少なくとも約97%であることを指す。このことは、その結晶形態の化合物100に含まれるその他の形態の化合物100の含量が約3%を超えないことを意味する。本明細書で使用される「約」という用語は、当業者の理解と近しいものとして定義される。非限定的な一実施形態では、「約」という用語は、試薬または溶媒の量または体積に関して使用される場合、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0080】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の結晶形態を使用して化合物100含有組成物(医薬組成物など)を調製するプロセスを特徴とする。
【0081】
本発明の組成物及び方法は、治療を必要とする対象の治療に利用され得る。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳類(ヒトまたは非ヒト哺乳類など)である。組成物または化合物は、対象(ヒトなど)に投与される場合、好ましくは、医薬組成物(例えば、本発明の化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む)として投与される。医薬的に許容可能な担体は、当該技術分野でよく知られており、そうした担体には、例えば、水溶液(水もしくは生理学的に緩衝された生理食塩水など)または他の溶媒もしくは媒体(グリコール、グリセロール、油(オリーブ油など)、もしくは注射用有機エステルなど)が含まれる。好ましい実施形態では、そのような医薬組成物が、ヒトへの投与向けである場合、具体的には侵襲的な投与経路(すなわち、上皮バリアを介する輸送または拡散を回避する経路(注射または植込など))向けのものである場合、水溶液は、パイロジェンフリーであるか、または実質的にパイロジェンフリーである。医薬品添加物は、例えば、薬剤の放出が遅延するように選択され得る。医薬組成物は、単位剤形に含めることができ、こうした単位剤形は、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成用の凍結乾燥物、粉末、溶液、またはシロップなどである。いくつかの態様では、組成物は、錠剤またはカプセルである。
【0082】
医薬的に許容可能な担体は、生理学的に許容可能な薬剤を含み得、こうした薬剤は、例えば、化合物(本発明の化合物など)の安定化、その溶解性の向上、またはその吸収の促進が生じるように働くものである。そのような生理学的に許容可能な薬剤には、例えば、糖質(グルコース、スクロース、もしくはデキストランなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸もしくはグルタチオンなど)、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは医薬品添加物が含まれる。生理学的に許容可能な薬剤を含めて、医薬的に許容可能な担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。
【0083】
「医薬的に許容可能」という語句は、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、健全な医学的判断の下で、対象の組織と接触させて使用する上で化合物、材料、組成物、及び/または剤形が適しており、合理的な利益/リスク比に見合うものであることを指すために本明細書で用いられる。
【0084】
本明細書で使用される「医薬的に許容可能な担体」という語句は、医薬的に許容可能な材料、組成物、または媒体(液体または固体の賦形剤、希釈剤、医薬品添加物、溶媒、または封入材料など)を意味する。各担体は、製剤のその他の成分と適合し、対象に無害であるという意味において「許容可能」でなくてはならない。医薬的に許容可能な担体として働き得る材料のいくつかの例としては、(1)糖(ラクトース、グルコース、及びスクロースなど)、(2)デンプン(コーンスターチ及びジャガイモデンプンなど)、(3)セルロース及びその誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなど)、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)医薬品添加物(ココアバター及び坐剤ワックスなど)、(9)油(ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油など)、(10)グリコール(プロピレングリコールなど)、(11)ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなど)、(12)エステル(オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど)、(13)寒天、(14)緩衝剤(水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど)、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、ならびに(21)医薬製剤において用いられる他の無毒な適合物質が挙げられる。
【0085】
本発明の医薬組成物(調製物)は、好ましくは、経口的に対象に投与される。
【0086】
製剤は、単位剤形中に好都合に存在し得、薬学の分野でよく知られる任意の方法によって調製され得る。単一の剤形を得るために担体材料と組み合わせられ得る活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与様式によって異なることになる。単一の剤形を得るために担体材料と組み合わせられ得る活性成分の量は、一般に、その量の化合物によって治療効果が得られる量とされる。一般に、この量は、活性成分が100パーセントに占めるパーセントで表すと、その範囲は約0.5パーセント~約99パーセント、好ましくは約0.75パーセント~約40パーセント、最も好ましくは約0.8パーセント~約12.5パーセントとなる。
【0087】
こうした製剤または組成物を調製する方法は、本発明の結晶形態を、担体及び任意選択の1つ以上の副成分と結び付けるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を、液体担体もしくは微粉化固体担体またはこれら両方と均一かつ密に結び付け、その後、必要に応じてこの製造物を成形することによって調製される。
【0088】
経口投与向けの固体剤形(カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒、ならびに同様のもの)を調製するには、1つ以上の医薬的に許容可能な担体(クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムもしくは溶媒など)、及び/または下記のもののいずれかと活性成分が混合される:(1)賦形剤または増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、結晶セルロース、及び/またはケイ酸など)、(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/またはアカシアなど)(3)保湿剤(グリセロールなど)、(4)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、及び架橋カルボキシメチルセルロース塩など)、(5)溶液流動遅延剤(パラフィンなど)、(6)吸収促進剤(四級アンモニウム化合物など)、(7)湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなど)、(8)吸着剤(カオリン及びベントナイト粘土など)、(9)滑沢剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びそれらの混合物など)、(10)複合体化剤(修飾シクロデキストリン及び非修飾シクロデキストリンなど)、(11)着色剤、(12)流動促進剤(コロイド状二酸化ケイ素など)、ならびに(12)親水性ポリマー。カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤、及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤も含み得る。同様の型の固体組成物は、医薬品添加物(ラクトースまたは乳糖など)ならびに高分子量ポリエチレングリコール及び同様のものを使用して、軟充填ゼラチンカプセル及び硬充填ゼラチンカプセルにおける賦形剤としても用いられ得る。
【0089】
錠剤は、任意選択で1つ以上の副成分と共に、圧縮または成形によって調製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムもしくは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械において成形することによって調製され得る。
【0090】
選択される用量レベルは、様々な因子に依存することになり、こうした因子には、用いられる特定の化合物もしくは化合物の組み合わせ、またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時刻、用いられる特定の化合物(複数可)の排泄速度、治療期間、用いられる特定の化合物(複数可)と併用される他の薬物、化合物、及び/または材料、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、全体的健康状態、及びこれまでの病歴、ならびに医学分野でよく知られる同様の因子が含まれる。
【0091】
当該技術分野の技能を有する医師または獣医師は、必要な医薬組成物の治療有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、そうした医師または獣医師なら、所望の治療効果の達成に必要なレベルよりも低いレベルに医薬組成物または化合物の開始用量を定め、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増やしていくことができる。「治療有効量」は、化合物が所望の治療効果を誘発する上で十分な濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、及び病歴に応じて異なることが一般に理解されている。有効量に影響を与える他の因子には、限定されないが、対象の状態の重症度、治療される障害、化合物の安定性、及び望まれる場合は、本発明の化合物と共に投与される別の型の治療剤が含まれ得る。薬剤を複数回投与することによって、送達される総用量を増やすことができる。有効性及び用量を決定するための方法は当業者に知られている(Isselbacher et al.(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed.,1814-1882(参照によって本明細書に援用される))。
【0092】
一般に、本発明の組成物及び方法において使用される活性化合物の適切な1日用量は、その化合物量が、治療効果を得る上で有効な最小用量となるものである。そのような有効用量は、一般に、上記の因子に依存することになる。
【0093】
望まれる場合、有効な1日用量の活性化合物は、1日を通じて適切な間隔で別々に投与される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の数の分割用量として投与することができ、この投与は、任意選択で、単位剤形において行われる。本発明のある特定の実施形態では、活性化合物は、1日に2回または3回投与され得る。好ましい実施形態では、活性化合物は、1日に1回投与されることになる。
【0094】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、単独で使用されるか、または別の型の治療剤と共同投与され得る。本明細書で使用される「共同投与」という語句は、先に投与された治療化合物が体内で依然として有効である間に第2の化合物の投与が行われるように、2つ以上の異なる治療化合物の投与が任意の形態で行われることを指す(例えば、2つの化合物は対象において同時に有効であり、このことは、それら2つの化合物の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療化合物は、同じ製剤または別々の製剤において同時または連続的に投与され得る。ある特定の実施形態では、異なる治療化合物は、互いに1時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、または1週間以内に投与され得る。したがって、そのような治療を受ける対象は、異なる治療化合物の併用効果による恩恵を受け得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物を、1つ以上の追加の治療剤(複数可)と共同投与することで、本発明の化合物または1つ以上の追加の治療剤(複数可)をそれぞれ個々に投与する場合と比較して有効性が改善される。ある特定のそのような実施形態では、共同投与によって相加効果が得られ、ここでの相加効果は、本発明の化合物及び1つ以上の追加の治療剤(複数可)を個々に投与して得られる効果のそれぞれの合計を指す。
【0096】
ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を形成させるためのプロセスは、a.本発明の結晶形態(結晶形態A、結晶形態H、結晶形態E、結晶形態G、結晶形態B、または結晶形態Cなど)を溶媒に溶解させて溶液を形成させること、及びb.溶液から医薬組成物を調製すること、を含む。いくつかの態様では、溶液から医薬組成物を調製することは、溶液を噴霧乾燥させること、及び噴霧乾燥された溶液を製剤化して固体剤形にすること、を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、当該プロセスによって調製される医薬組成物を対象とする。いくつかの実施形態では、結晶形態は、形態Aである。いくつかの実施形態では、結晶形態は、形態Hである。いくつかの実施形態では、結晶形態は、形態Eである。いくつかの実施形態では、結晶形態は、形態Gである。いくつかの実施形態では、結晶形態は、形態Bである。いくつかの実施形態では、結晶形態は、形態Cである。
【0097】
本明細書に記載の本発明の任意のプロセスにおいて、本明細書に記載の任意の結晶形態(本出願の任意の態様、実施形態、または実施例に記載の任意の結晶形態を含む)を使用することができる。
【0098】
治療方法
非選択的Ca2+透過性一過性受容体電位(TRP)チャネルは、アクチンリモデリング及び細胞遊走を含む多様な細胞プロセスにおいて細胞内環境に細胞外キューを伝達するセンサーとして機能する(Greka et al.,Nat Neurosci 6,837-845,2003;Ramsey et al.,Annu Rev Physiol 68,619-647,2006;Montell,Pflugers Arch 451,19-28,2005;Clapham,Nature 426,517-524,2003)。アクチン細胞骨格の動的再構成は、時空間的に調節されたCa2+の流入に依存し(Zheng and Poo,Annu Rev Cell Dev Biol 23,375-404,2007;Brandman and Meyer,Science 322,390-395,2008;Collins and Meyer,Dev Cell 16,160-161,2009)、低分子GTPアーゼであるRhoA及びRac1がこれらの変化の主要なモジュレーターとして機能している(Etienne-Manneville and Hall,Nature 420,629-635,2002;Raftopoulou and Hall,Dev Biol 265,23-32,2004)。RhoAは、ストレスファイバー及び接着斑形成を誘導し、Rac1はラメリポディア形成を媒介する(Etienne-Manneville and Hall,Nature 420,629-635,2002)。一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCのメンバー5(TRPC5)は、TRPC6と協働してCa2+流入、アクチンリモデリング、及び腎臓ポドサイト及び線維芽細胞の細胞運動性を調節するように作用する。TRPC5媒介性Ca2+流入がRac1活性を増大させるのに対して、TRPC6媒介性Ca2+流入はRhoA活性を促進する。TRPC6チャネルの遺伝子サイレンシングは、ストレスファイバーを消失させ、斑紋接触を減らし、運動性で遊走性の細胞表現型をもたらす。これに対し、TRPC5チャネルの遺伝子サイレンシングは、ストレスファイバー形成を救済して収縮性の細胞表現型をもたらす。本明細書に記載の結果は、TRPC5及びTRPC6チャネルがRac1及びRhoAへの結合差異を通じて細胞骨格動態の厳密に調節されたバランスを制御する保存的なシグナル伝達機序を明らかにしている。
【0099】
アクチン細胞骨格のCa2+依存的リモデリングは、細胞の遊走を促進する動的プロセスである(Wei et al.,Nature 457,901-905,2009)。RhoA及びRac1は、遊走細胞における細胞骨格再構成に関与するスイッチとして機能する(Etienne-Manneville and Hall,Nature 420,629-635,2002)、Raftopoulou and Hall,Dev Biol 265,23-32,2004)。Rac1の活性化は運動性細胞表現型を媒介し、一方RhoA活性は収縮型表現型を促進する(Etienne-Manneville and Hall,Nature 420,629-635,2002)。Ca2+は、低分子GTPアーゼの制御に中心的な役割を果たしている(Aspenstrom et al.,Biochem J 377,327-337,2004)。Ca2+の空間的及び時間的に制限されたフリッカーは、細胞の移動の前端付近で濃縮される(Wei et al.,Nature 457,901-905,2009)。したがって、Ca2+マイクロドメインは、前端での重要な事象としてRac1活性のローカルバーストを加え合わせている(Gardiner et al.,Curr Biol 12,2029-2034,2002、Machacek et al.,Nature 461,99-103,2009)。これまでのところ、GTPアーゼ調節に関与するCa2+流入源は大部分が解明されていない。TRP(一過性受容体電位)チャネルは、線維芽細胞及び神経細胞の成長円錐0における細胞遊走にリンクされた時間的及び空間的に限定されたCa2+シグナルを生成する。具体的には、TRPC5チャネルは、ニューロンの成長円錐ガイダンス1の既知の調節因子であり、ニューロンにおけるそれらの活性は、PI3K及びRac1活性に依存している(Bezzerides et al.,Nat Cell Biol 6,709-720,2004)。
【0100】
ポドサイトは、腎臓糸球体の後腎間葉系に由来するニューロン様細胞であり、腎臓濾過装置の形成に不可欠である(Somlo and Mundel, Nat Genet.24,333-335,2000、Fukasawa et al.,J Am Soc Nephrol 20,1491-1503,2009)。ポドサイトは、環境キューに細胞骨格適応の巧妙に精緻化されたレパートリーを有する(Somlo and Mundel,Nat Genet 24,333-335,2000;Garg et al.,Mol Cell Biol 27,8698-8712,2007;Verma et al.,J Clin Invest 116,1346-1359,2006;Verma et al.,J Biol Chem 278,20716-20723,2003;Barletta et al.,J Biol Chem 278,19266-19271,2003;Holzman et al.,Kidney Int 56,1481-1491,1999;Ahola et al.,Am J Pathol 155,907-913,1999;Tryggvason and Wartiovaara,N Engl J Med 354,1387-1401,2006;Schnabel and Farquhar,J Cell Biol 111,1255-1263,1990;Kurihara et al.,Proc Natl Acad Sci USA 89,7075-7079,1992)。ポドサイト傷害の初期の事象は、アクチン細胞骨格の調節不全(Faul et al.,Trends Cell Biol 17,428-437,2007;Takeda et al.,J Clin Invest 108,289-301,2001;Asanuma et al.,Nat Cell Biol 8,485-491,2006)及びCa2+ホメオスタシス(Hunt et al.,J Am Soc Nephrol 16,1593-1602,2005;Faul et al.,Nat Med 14,931-938,2008)を特徴とする。これらの変化は、タンパク尿の発症、尿空間へのアルブミンの喪失、そして最終的には腎不全と関連している(Tryggvason and Wartiovaara,N Engl J Med 354,1387-1401,2006)。血管活性ホルモンであるアンジオテンシンIIは、ポドサイトのCa2+流入を誘導し、長期治療はストレスファイバーの喪失をもたらす(Hsu et al.,J Mol Med 86,1379-1394,2008)。Ca2+流入と細胞骨格再構成との結び付きは認識されているものの、細胞の形状及び運動性を調節する細胞外キューをポドサイトが感知し伝達する機序については、依然として解明されていない。TRPカノニカル6(TRPC6)チャネルの変異は、ポドサイト傷害と結び付けられている(Winn et al.,Science 308,1801-1804,2005;Reiser et al.,Nat Genet 37,739-744,2005;Moller et al.,J Am Soc Nephrol 18,29-36,2007;Hsu et al.,Biochim Biophys Acta 1772,928-936,2007)が、このプロセスを調節する具体的な経路についてはほとんど分かっていない。さらに、TRPC6は、TRPCチャネルファミリーの他の6つのメンバーと密接な類似性を共有している(Ramsey et al.,Annu Rev Physiol 68,619-647,2006;Clapham,Nature 426,517-524,2003)。TRPC5チャネルはTRPC6チャネル活性に拮抗し、異なる低分子GTPアーゼへの結合差異を通じて細胞骨格動態の厳密に調節されたバランスを制御する。
【0101】
タンパク尿
タンパク尿は、尿中にタンパク質が存在する病的状態である。アルブミン尿はタンパク尿の一タイプである。ミクロアルブミン尿は、腎臓が少量のアルブミンを尿中に漏出する場合に生じる。適切に機能している身体では、アルブミンは腎臓によって血流中に保持されているため、通常は尿中に存在しない。ミクロアルブミン尿は、24時間の尿採取(20~200μg/分)から診断されるか、またはより一般的には少なくとも2回の濃度上昇(30~300mg/L)から診断される。ミクロアルブミン尿は糖尿病性腎症の前兆となり得る。これらの値よりも高いアルブミンレベルはマクロアルブミン尿と呼ばれる。例えば、ある特定の疾患(例えば、糖尿病性腎症)を有する対象は、ミクロアルブミン尿からマクロアルブミン尿へと進行し、腎疾患が進行期に達すると腎症の範囲(3.5g超/24時間)に達する。
【0102】
タンパク尿の原因
タンパク尿は、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、糖尿病性腎症、ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、進行性(半月体形成性)糸球体腎炎、及び膜性糸球体腎炎を含む複数の状態と関連し得る。
【0103】
A.巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、腎臓の濾過系(糸球体)を攻撃する疾患であり、重篤な瘢痕病変を引き起こす。FSGSはネフローゼ症候群として知られる疾患の多くの原因の1つであり、ネフローゼ症候群は血液中のタンパク質が尿中に漏出する(タンパク尿)ときに生じる。
【0104】
FSGS患者が利用可能な治療は非常に少ない。多くの患者はステロイドレジメンによる治療を受けるが、その多くは非常に苛酷な副作用を伴う。一部の患者では免疫抑制薬に加えて血圧薬に正に応答することが示されており、これらの薬剤は尿中のタンパク質レベルを低下させることが示されている。これまでのところ、一般的に受け入れられている有効な治療または療法はなく、FSGSを治療するためのFDA承認薬は存在しない。したがって、タンパク尿を低減または阻害するためのより有効な方法が望まれる。
【0105】
B.IgA腎症
IgA腎症(IgA腎炎、IgAN、ベルガー病、または咽頭炎併発性糸球体腎炎とも呼ばれる)は、糸球体腎炎(腎臓の糸球体の炎症)の一形態である。IgA腎症は、世界全体で最も一般的な糸球体腎炎である。原発性IgA腎症は、糸球体中のIgA抗体の沈着を特徴とする。糸球体のIgA沈着を伴う他の疾患もあり、最も一般的なものはヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)であり、これはIgA腎症の全身形態と考えられている。ヘノッホ・シェーンライン紫斑病は特徴的な紫斑性皮膚発疹、関節炎、及び腹痛を呈し、若年成人(16~35歳)でより一般的に起こる。HSPはIgA腎症よりも良性の予後を伴う。IgA腎症では、20年の期間中に25~30%の症例で慢性腎不全への緩慢な進行が認められる。
【0106】
C.糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、キンメルスチール・ウィルソン症候群及び毛細血管内糸球体腎炎としても知られており、腎糸球体の毛細血管のアンジオパチーによって引き起こされる進行性の腎疾患である。糖尿病性腎症は、ネフローゼ症候群及びびまん性糸球体硬化を特徴とする。糖尿病性腎症は長年の糖尿病に起因し、透析の主な原因となる。糖尿病性腎症の経過における最初期の検出可能な変化は、糸球体の肥厚である。この段階では、腎臓は尿中に通常よりも多くの血清アルブミンを漏出し始める可能性がある。糖尿病性腎症が進行するにつれて、結節性糸球体硬化によって破壊される糸球体の数が増え、尿中に排出されるアルブミンの量が増加する。
【0107】
D.ループス腎炎
ループス腎炎は、全身性エリテマトーデスの合併症である腎臓障害である。ループス腎炎は、抗体及び補体が腎臓に蓄積すると生じ、炎症を引き起こす。ループス腎炎はしばしばタンパク尿を引き起こし、急速に腎不全に進行する場合がある。窒素老廃物が血流中に蓄積する。全身性エリテマトーデスは、間質性腎炎を含めた腎臓の内部構造の様々な障害を引き起こす。ループス腎炎は、10,000人中およそ3人が罹患する。
【0108】
E.膜性増殖性糸球体腎炎I/II/III
膜性増殖性糸球体腎炎は、腎糸球体メサンギウムの沈着及び基底膜の肥厚によって引き起こされる糸球体腎炎の一タイプであり、補体を活性化し、糸球体を損傷する。膜性増殖性糸球体腎炎には3つのタイプがある。I型は、腎臓に沈着する免疫複合体によって引き起こされ、古典的補体経路に関連していると考えられている。II型はI型に似ているが、補体代替経路に関連すると考えられている。III型は極めて稀であり、上皮下沈着物及びI型疾患の典型的な病理所見が混在することを特徴とする。
【0109】
F.進行性(半月体形成性)糸球体腎炎
進行性(半月体形成性)糸球体腎炎(PG)は、腎臓の症候群であり、治療せずに放置すると数ヵ月以内に急速に急性腎不全へと進行し、死亡に至る。PGは、50%の症例でグッドパスチャー症候群、全身性エリテマトーシス、またはウェゲナー肉芽腫症などの基礎疾患を伴い、残りの症例は特発性である。根底にある原因にかかわらず、PGは腎臓の糸球体への重大な傷害を伴い、糸球体の多くが特徴的な三日月形の瘢痕を有する。PG患者は、血尿、タンパク尿、場合によっては血圧上昇及び浮腫を有する。臨床像はネフローゼ症候群と一致しているものの、タンパク尿の程度は、ネフローゼ症候群に結び付く範囲の3g/24時間を超えることがある。疾患を治療しないと、腎機能の低下に伴って尿量減少(乏尿)に進行することがある。
【0110】
G.膜性糸球体腎炎
膜性糸球体腎炎(MGN)は緩やかに進行する腎臓疾患であり、罹患するのは主に30歳~50歳までの患者、通常はコーカサス人である。膜性糸球体腎炎はネフローゼ症候群に発展し得る。MGNは循環性免疫複合体によって引き起こされる。現在の研究では、免疫複合体の大部分は、抗体が糸球体の基底膜に対しin situで抗原に結合することによって形成されることが示されている。この抗原は、基底膜に内在する場合もあれば、体循環から沈着する場合もある。
【0111】
H.アルポート症候群
アルポート症候群は、小児5,000~10,000人におよそ1人が罹患する遺伝性疾患であり、糸球体腎炎、末期腎臓病、及び聴力喪失を特徴とする。アルポート症候群は目も冒すことがあるが、後に水晶体に変化が生じた場合を除き、通常は視力には影響しない。血尿は一般的に見られる。タンパク尿は、腎臓病が進行するにつれて現れる特徴の1つである。
【0112】
I.高血圧性腎疾患
高血圧性腎疾患(高血圧性腎硬化症(HNもしくはHNS)または高血圧性腎症(HN))は、慢性的高血圧に起因する腎臓への損傷を指す医学的状態である。HNは、良性及び悪性の2タイプに分類される。良性腎硬化症は60歳以上の人によく見られるが、悪性腎硬化症は稀であり、拡張期血圧が130mmHgを超える高血圧患者の1~5%が罹患する。慢性腎臓病の徴候及び症状(食欲不振、悪心、嘔吐、掻痒、眠気または錯乱、体重減少、及び口内の不快な味を含む)が発生し得る。慢性的高血圧は腎組織の損傷を引き起こし、腎組織には小血管、糸球体、腎尿細管、及び間質組織が含まれる。組織は硬化して肥厚する(これは腎硬化症として知られている)。血管の狭窄は、組織に送られる血液量が少なくなり、そのため組織に到達する酸素の量が少なくなることを意味し、その結果組織死(虚血)が生じる。
【0113】
J.ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は、腎臓の損傷に起因する一連の症状である。ネフローゼ症候群は、タンパク尿、低血中アルブミンレベル、高血中脂質、及び顕著な腫脹を含む。他の症状としては、体重増加、疲労感、泡沫尿を挙げることができる。合併症としては、血栓、感染症、及び高血圧を挙げることができる。原因としては、複数の腎疾患、例えば、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、及び微小変化型ネフローゼ症候群が挙げられる。また、糖尿病またはループスの合併症として生じることもある。根底にある機序は、典型的には腎臓の糸球体への損傷を伴う。診断は、典型的には尿検査、場合により腎生検に基づいて行われる。ネフローゼ症候群は、尿中に赤血球が認められないという点で腎炎症候群とは異なる。ネフローゼ症候群は、大量のタンパク尿(1日に体表面積1.73m2当たり3.5g超、または小児では1時間に体表面積1平方メートル当たり40mg超)、低アルブミン血症(2.5g/dl未満)、高脂血症、及び顔面から始まる浮腫を特徴とする。脂肪尿(尿中脂質)も生じることがあるが、ネフローゼ症候群の診断には必須ではない。低ナトリウム血症は、ナトリウム排泄率が低い場合にも生じる。ネフローゼ症候群の遺伝子形態は、典型的にはステロイド及び他の免疫抑制治療に抵抗性を示す。治療の目標は、尿タンパク喪失及び腫脹を制御し、小児が成長できるように十分な栄養を供給し、合併症を予防することである。この障害を制御するために早期かつ積極的な治療が使用される。
【0114】
K.微小変化型ネフローゼ症候群
微小変化型ネフローゼ症候群(特にMCD、微小変化型糸球体症、ニル病としても知られる)は、腎臓に影響を及ぼし、ネフローゼ症候群を引き起こす疾患である。微小変化型ネフローゼ症候群の臨床徴候は、タンパク尿(タンパク質、主にアルブミンの異常な尿中排泄)、浮腫(水分貯留の結果としての軟部組織の腫脹)、体重増加、及び低アルブミン血症(低血清アルブミン)である。これらの徴候を総称してネフローゼ症候群と称する。微小変化型ネフローゼ症候群の最初の臨床徴候は、通常は浮腫及びそれに伴う体重増加である。腫脹は軽度のこともあるが、患者は下半身の浮腫、眼窩周囲浮腫、陰嚢/陰唇領域腫脹を呈し得、重症例では全身浮腫を呈し得る。高齢者の場合、患者は急性腎傷害(罹患成人の20~25%)及び高血圧も呈し得る。疾患過程のために、微小変化型ネフローゼ症候群患者は血栓及び感染症のリスクも有する。
【0115】
L.膜性腎症
膜性腎症とは、糸球体基底膜(GBM)上に免疫複合体が沈着することを指し、GBMの肥厚を伴う。原因は通常は不明(特発性)であるが、副次的な原因としては、薬物、感染症、自己免疫障害、及びがんが挙げられる。所見としては、良性の尿沈渣を伴う浮腫及び重度タンパク尿の潜行性発症、腎機能正常、ならびに血圧正常または上昇が挙げられる。膜性腎症は、腎生検によって診断される。自然寛解が一般的である。進行のリスクが高い患者の治療には、通常、コルチコステロイド及びシクロホスファミドまたはクロラムブシルを用いる。
【0116】
M.感染後糸球体腎炎
急性増殖性糸球体腎炎は、糸球体の障害(糸球体腎炎)、すなわち腎臓の小血管の障害である。これは細菌感染の一般的な合併症であり、典型的には、Streptococcus細菌12型、4型、及び1型(膿痂疹)による皮膚感染であるが、連鎖球菌咽頭炎後にも生じ、これは感染後または連鎖球菌感染後糸球体腎炎としても知られている。この腎炎は、将来的なアルブミン尿のリスク因子となり得る。成人においては、腎臓の問題が発生した時点にも依然として感染の徴候及び症状が存在することがあり、感染関連糸球体腎炎または細菌感染関連糸球体腎炎という用語も使用される。急性糸球体腎炎による死亡は、全世界で1990年には24,000例見られたものが、2013年には19,000例に減少した。急性増殖性糸球体腎炎(連鎖球菌感染後糸球体腎炎)は、連鎖球菌が(通常は咽頭または皮膚に)感染してから通常3週間後に感染し、抗体及び補体タンパク質が産生されるまでに時間を要することによって生じる。感染すると腎臓の血管が炎症を起こし、これによって腎臓臓器の尿濾過能力が妨げられる[要引用]。急性増殖性糸球体腎炎は小児に最も一般的に見られる。
【0117】
N.菲薄基底膜病
菲薄基底膜病(TBMD、良性家族性血尿及び菲薄基底膜腎症(またはTBMN)としても知られる)は、IgA腎症と共に、他の症状を伴わない血尿における最も一般的な原因である。この疾患の唯一の異常所見は、腎臓の糸球体の基底膜が薄くなることである。その重要性は、患者が生涯にわたり正常な腎機能を維持し、予後が良好であるという事実にある。ほとんどの菲薄基底膜病患者は、尿検査で偶発的に顕微鏡的血尿が発見される。血圧、腎機能、及び尿タンパク排泄は通常正常であり、少数の患者に軽度のタンパク尿(1.5g/日未満)及び血圧上昇が認められる。明らかな血尿及び腰腹痛があれば、腎結石または腰腹痛血尿症候群などの他の原因について迅速に調べるべきである。また、全身症状は認められないため、聴覚障害または視覚障害がある場合は、アルポート症候群などの遺伝性腎症について迅速に調べるべきである。TBMD患者の一部は、アルポート症候群の原因となる遺伝子のキャリアであると考えられている。
【0118】
O.メサンギウム増殖性糸球体腎炎
メサンギウム増殖性糸球体腎炎は、主にメサンギウムに関連する糸球体腎炎の一形態である。動物モデルにおいてインターロイキン-10がこれを阻害するといういくらかの証拠がある[2]。世界保健機関(WHO)ではII型ループス腎炎として分類されている。腎糸球体中のメサンギウム細胞は、エンドサイトーシスを使用して循環免疫グロブリンを取り込み、これを分解する。この正常なプロセスは、メサンギウム細胞の増殖及び基質沈着を促進する。そのため、循環免疫グロブリン濃度の上昇時(すなわち、ループス及びIgA腎症)は、糸球体内のメサンギウム細胞及び基質の数が増加すると予想される。これは腎炎症候群の特徴である。
【0119】
P.アミロイドーシス(原発性)
アミロイドーシスは、アミロイド線維として知られる異常タンパク質が組織内に蓄積する疾患群である。[4]症状はタイプに依存し、しばしば変化する。[2]症状としては、下痢、体重減少、疲労感、舌の腫大、出血、しびれ感、立位時の失神感、足の腫脹、または脾臓の腫大が挙げられる。[2]アミロイドーシスには約30の異なるタイプがあり、各々が特定のタンパク質のミスフォールディングに起因する。[5]遺伝性のものもあれば、後天性のものもある。[3]限局性及び全身性形態に分類される。[2]全身性疾患で最も一般的な4つのタイプが、軽鎖(AL)、炎症型(AA)、透析(Aβ2M)、遺伝性、及び高齢型(ATTR)である。原発性アミロイドーシスとは、付随する臨床状態が同定されないアミロイドーシスを指す。
【0120】
Q.c1q腎症
c1q腎症は稀少な糸球体疾患であり、免疫蛍光顕微鏡上で特徴的なメサンギウムC1q沈着が認められる。この腎症は組織学的に定義され、分かっていることは少ない。光学顕微鏡的特徴は均一でなく、微小変化型ネフローゼ症候群(MCD)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、及び増殖性糸球体腎炎を含む。臨床像も多様であり、小児及び成人共に無症候性血尿またはタンパク尿から明らかな腎炎またはネフローゼ症候群まで及ぶ。診断時の血圧上昇及び腎機能不全は一般的な所見である。最適な治療は明確ではなく、通常は根底にある光学顕微鏡的病変を指針とする。コルチコステロイドが治療の主力であり、免疫抑制剤はステロイド抵抗性の症例にのみ用いられる。ネフローゼ症候群及びFSGSが存在することで、MCD患者の良好な転帰とは対照的に有害な転帰が予想されるように思われる。(Devasahayam,et al.,“C1q Nephropathy:The Unique Underrecognized Pathological Entity,”Analytical Cellular Pathology,vol.2015,Article ID 490413,5 pages,2015.https://doi.org/10.1155/2015/490413.)
【0121】
R.抗GBM病
抗糸球体基底膜(GBM)病は、グッドパスチャー病としても知られ、腎臓及び肺の小血管の炎症を引き起こす稀少な状態である。抗糸球体基底膜(GBM)抗体は主に腎臓及び肺を攻撃するが、倦怠感、体重減少、疲労、発熱、及び悪寒などの全身症状も一般的に見られ、同様に関節の痛み及び疼痛も見られる。この状態を有する患者の60~80%は肺及び腎臓の異常を経験し、20~40%は腎臓のみの異常、10%未満は肺のみの異常を有する。肺の症状は通常腎臓の症状に先行し、通常、喀血、胸痛(全症例の50%未満)、咳、及び息切れが症状に含まれる。腎臓の症状には、通常、血尿、タンパク尿、原因不明の四肢または顔面の腫脹、大量の血中尿素、及び高血圧が含まれる。GPSは、血液の形質細胞による抗GBM抗体の異常な産生を引き起こす。抗GBM抗体は肺胞及び糸球体基底膜を攻撃する。これらの抗体は、反応性エピトープを基底膜に結合し、補体カスケードを活性化して、標識細胞を死滅させる。T細胞も関与している。当該疾患は、概してII型過敏反応と考えられている。
【0122】
尿タンパク質レベルの測定
尿中タンパク質レベルは、当技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。最近まで、正確なタンパク質測定には24時間の尿収集が必要だった。24時間の収集では、患者は容器に排尿し、トイレに行くたびに冷蔵保管する。患者は、朝の最初のトイレの後から尿の収集を開始するように指示を受ける。その日の残りの尿は全て容器に収集する。翌朝、患者は起床してから最初の尿を追加して収集が完了する。
【0123】
より最近になって、研究者は、単一の尿試料から必要な情報が得られることを見出した。より新しい方法では、尿試料中のアルブミン量を、正常な筋肉が分解してできた老廃物であるクレアチニンの量と比較する。この測定値は、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)と呼ばれる。尿試料がクレアチニン1グラム当たり30ミリグラム(30mg/g)超のアルブミンを含む場合、問題がある可能性の警告となる。臨床検査値が30mg/gを超える場合、1~2週間後に別のUACR試験を実施するものとする。第2の検査でも高レベルのタンパク質が示される場合、腎機能低下の徴候である持続的なタンパク尿を有するため、腎機能を評価するための追加検査を受けるものとする。
【0124】
血中のクレアチニンの量を測定する検査では、対象の腎臓が効率的に老廃物を除去しているかどうかも示される。血中の過剰なクレアチニンは腎損傷の徴候である。医師は、クレアチニン測定値を使用して腎臓がどれだけ効率的に血液を濾過しているかを推定することができる。この計算は、推算糸球体濾過量(またはeGFR)と呼ばれる。慢性腎疾患は、eGFRが毎分60ミリリットル(mL/分)未満である場合に認められる。
【0125】
TRPC5
TRPCは、動物の一過性受容体電位カチオンチャネルのファミリーである。TRPC5は、哺乳類一過性受容体電位イオンチャネルのTRPCファミリーのサブタイプである。TRPC5の例を3つ挙げるとすれば、ヒト(Gen Bank受入番号NM_012471.2及び同NP_036603.1;Gene ID 7224)、マウス(Gen Bank受入番号NM_009428.2及び同NP_033454.1;Gene ID 22067)、ならびにラット(Gen Bank受入番号NM_080898.2及びNP_543174.1;Gene ID 140933)である。
【0126】
TRPC1
TRPC1は、多数のヒト細胞型及び動物細胞型の細胞膜上に位置するイオンチャネルである。TRPC1は、非特異的なカチオンチャネルであり、このことは、ナトリウムイオン及びカルシウムイオンの両方がTRPC1を通過し得ることを意味する。TRPC1は、小胞体貯蔵カルシウムの枯渇またはホスホリパーゼC系と共役する受容体の活性化に応じてカルシウム流入を媒介すると考えられている。HEK293細胞では、内在性TRPC1チャネルの単位電流と電圧との関係性はほぼ直線的であり、その傾きから得られるコンダクタンスは約17pSである。TRPC1チャネルの推定逆転電位は+30mVである。TRPC1タンパク質は哺乳類の脳全体に広く発現しており、皮質辺縁系でのその発現パターンはTRPC4及びTRPC5と類似している。最も高い密度でTRPC1タンパク質が見られる領域は、外側中隔(TRPC4が高密度発現する領域)ならびに海馬及び前頭前皮質(TRPC5が高密度発現する領域)である。
【0127】
TRPC4
TRPC4は、一過性受容体電位カチオンチャネルのメンバーである。このタンパク質は、Gαi共役型受容体、Gαq共役型受容体、及びチロシンキナーゼによって活性化される非選択的なカルシウム透過性カチオンチャネルを形成し、内皮透過性、血管拡張、神経伝達物質放出、及び細胞増殖を含めて、複数のプロセスにおいて役割を担う。この非選択的カチオンチャネルTrpC4は、脳の皮質辺縁領域に大量に存在することが示されている。さらに、腹側被蓋野及び黒質の中脳ドーパミン作動性ニューロン中にはTRPC4 mRNAが存在する。trpc4遺伝子を欠失させると、社会的探索課題における社交性のレベルが低下する。こうした結果は、多くの異なる障害における社会的不安の制御においてTRPC4が役割を担う得ることを示唆している。TRPC4は、TRPC1及びTRPC5と相互作用することが示されている。
【0128】
したがって、本発明は、TRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネル、またはTRPC1、TRPC4、及びTRPC5が任意に組み合わさった四量体を構成するイオンチャネル、のうちの1つ以上の阻害を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の化合物100の医薬組成物を有効量で対象に投与することを含む。「TRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネルが任意に組み合わさった四量体を構成するイオンチャネル」は、TRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネルの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、阻害対象のイオンチャネルは、1つ以上のTRPC1イオンチャネルが1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び/またはTRPC5イオンチャネルと組み合わさったものを含むヘテロ四量体形態である。いくつかの実施形態では、阻害対象のイオンチャネルは、1つ以上のTRPC1イオンチャネルが1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び/またはTRPC5イオンチャネルと組み合わさったものを含むヘテロ四量体形態である。いくつかの実施形態では、阻害対象のイオンチャネルは、1つ以上のTRPC4イオンチャネル及び1つ以上のTRPC5イオンチャネルを含むヘテロ四量体形態である。ヘテロ四量体形態は、TRPC1イオンチャネル、TRPC4イオンチャネル、及びTRPC5イオンチャネルの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ヘテロ四量体形態は、TRPC1:TRPC4:TRPC4:TRPC5、TRPC1:TRPC1:TRPC5:TRPC5、TRPC4:TRPC4:TRPC5:TRPC5、またはTRPC4:TRPC5:TRPC5:TRPC5である。
【0129】
いくつかの実施形態では、TRPC1、TRPC4、及びTRPC5が任意に組み合わさった四量体を構成するイオンチャネルの阻害を必要とする対象は、腎疾患、疾患もしくは状態と関連する腎症、疼痛、不安、またはうつ病に罹患している。いくつかの実施形態では、疼痛は、神経障害性疼痛及び内臓痛から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、化学療法抵抗性乳癌、アドリアマイシン抵抗性乳癌、化学療法抵抗性結腸直腸癌、髄芽腫、及び腫瘍血管新生から選択される。
【0130】
ある特定の実施形態では、本発明は、腎疾患、疾患もしくは状態と関連する腎症、疼痛、不安、またはうつ病から選択される疾患または状態の治療またはその重症度もしくは発症リスクの低減を行うための方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に対して、本明細書に記載の4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンの結晶形態を含む医薬組成物を治療有効量で投与することを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、腎疾患であるか、または下記のものから選択される状態もしくは疾患と関連する神経障害である。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性腎症、アルポート症候群、高血圧性腎疾患、ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、突発性膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、免疫複合体媒介性MPGN、補体媒介性MPGN、ループス腎炎、感染後糸球体腎炎、菲薄基底膜病、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、アミロイドーシス(原発性)、c1q腎症、急速進行性GN、抗GBM疾患、C3糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症、IgA腎症、IgG4腎症、タンパク尿腎疾患、ミクロアルブミン尿、マクロアルブミン尿腎疾患、移植関連FSGS、移植関連ネフローゼ症候群、移植関連タンパク尿、結節性糸球体腎炎、NASR疾患(モノクローナルIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎)、多発性嚢胞腎疾患、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)、または肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、前糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症、ファブリー病、肺動脈性肺高血圧症、胆汁うっ滞性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、もしくはがんのいずれか1つと関連する腎症。
【0132】
ある実施形態では、腎疾患、または状態もしくは疾患と関連する神経障害は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性腎症、アルポート症候群、高血圧性腎疾患、肥満関連腎症、ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、ループス腎炎、感染後糸球体腎炎、菲薄基底膜病、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、アミロイドーシス(原発性)、c1q腎症、抗GBM疾患、C3糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症、IgA腎症、IgG4腎症、慢性腎疾患と関連する脂質異常症、結節性糸球体腎炎、NASR疾患(モノクローナルIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎)、多発性嚢胞腎疾患、ファブリー病と関連する腎症、またはメタボリックシンドロームと関連する腎症である。
【0133】
いくつかの実施形態では、腎疾患は、タンパク尿腎疾患である。いくつかの実施形態では、腎疾患は、ミクロアルブミン尿またはマクロアルブミン尿腎疾患である。
【0134】
いくつかの実施形態では、治療すべき疾患または状態は、肺動脈性肺高血圧症と関連する腎症である。
【0135】
いくつかの実施形態では、治療すべき疾患または状態は、神経障害性疼痛及び内臓痛から選択される疼痛である。
【0136】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、化学療法抵抗性乳癌、アドリアマイシン抵抗性乳癌、化学療法抵抗性結腸直腸癌、髄芽腫、及び腫瘍血管新生から選択されるがんと関連する腎症である。
【0137】
本発明は、不安またはうつ病またはがんの治療またはその発症リスクの低減を行う方法も提供し、この方法は、それを必要とする対象に対して、本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)または当該化合物を含む医薬組成物を治療有効量で投与することを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、治療すべき疾患または状態は、移植関連FSGS、移植関連ネフローゼ症候群、移植関連タンパク尿、胆汁うっ滞性肝疾患、多発性嚢胞腎疾患、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)、肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、前糖尿病、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0139】
いくつかの実施形態では、腎疾患、または治療すべき状態もしくは疾患と関連する神経障害は、高血圧性腎症、メタボリックシンドロームと関連する腎症、肥満と関連する腎症、脂質異常症と関連する腎症、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、FSGS、または微小変化型ネフローゼ症候群である。
【0140】
いくつかの実施形態では、腎疾患、または治療すべき状態もしくは疾患と関連する神経障害は、糖尿病性腎症、FSGS、または微小変化型ネフローゼ症候群である。
【0141】
本発明は、不安またはうつ病またはがんの治療またはその発症リスクの低減を行う方法も提供し、この方法は、それを必要とする対象に対して、化合物100または当該化合物を含む医薬組成物を治療有効量で投与することを含む。
【0142】
本発明の方法によって治療すべき対象は、上記の疾患または症状のいずれかを有すると診断されているか、またはその発症リスクを有する対象である。当該方法は、哺乳類、例えば、ヒト及び他の動物、例えば、実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはサル、またはペット及び家畜、例えば、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、もしくはウマを含む様々な対象に有効である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【実施例
【0143】
【表3】
【0144】
実施例1.結晶形態Aの調製
【0145】
方法A
磁気撹拌機に設置した100mLフラスコ中で、1.0gの4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを15mLのDMSO:EtOH(2:1)に懸濁した。スラリーを室温で0.5時間撹拌して完全に溶解させた。15mLのEtOH:HO(1:1)を2.0時間にわたって徐々に添加した。得られた懸濁液を濾過し、15mLのEtOH:HO(1:1)によって洗浄し、減圧下(-0.1Mpa)、50℃で3.5時間乾燥させることで、形態Aとして特徴付けられる0.83gの白色の結晶固体を得た。
【0146】
方法B
【0147】
磁気撹拌機に設置した100mLフラスコ中で、1.0gの4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを15mLのDMSO:EtOH(2:1)に懸濁した。スラリーを室温で0.5時間撹拌して完全に溶解させた。0.3mLのEtOH:HO(1:1)を添加した後、形態Aの種晶を0.03g添加した。得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。次に、撹拌を維持しながら、EtOH:HO(1:1)を室温で徐々に追加で15mL添加した(0.5mL/時間で1時間、次に1mL/時間で1時間、その後に2mL/時間で1時間、残りは5mL/時間)。得られた懸濁液を濾過し、15mLのEtOH:HO(1:1)によって洗浄し、減圧下(-0.1Mpa)、50℃で3.5時間乾燥させることで、形態Aとして特徴付けられる0.7gの白色の結晶固体を得た。
【0148】
このようにして調製した結晶形態の粉末X線回折パターンならびにXRPDピーク及びそれらの相対強度は、それぞれ図1A及び表1に示される。DSCデータ及びTGAデータは図1Bに示される。
【0149】
【表4】
【0150】
実施例2.化合物100結晶形態Hの調製
【0151】
方法A
撹拌棒を入れたHPLCバイアル中で、20mgの4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを0.5mLのIPA/IPAc(1:1(v/v))混合物に懸濁した。得られたスラリーを、バイアルの密封状態を保ちながら50℃で約3日間、磁力で撹拌した(約800rpm)。スラリーを室温で冷却し、遠心分離(10000rpm、2分)によって固体を単離し、室温で24時間乾燥させることで白色の結晶固体を得た。
【0152】
方法B
【0153】
20mLガラスバイアル中で、50℃で1時間撹拌することによって、10mLのDMSO及び5mLのIPAを含む混合物に1.0gの4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを溶解させた。得られた溶液を孔径0.45μMのPTFE膜に通して濾過して透明な溶液を取得し、100mLフラスコに入れた。2mLのIPAを添加した後、形態Hの種晶(方法Aを使用して得たもの)を少量添加してから、103.3mgの形態H(方法Aを使用して得たもの)を追加で添加した。50℃で10分間撹拌を行った後、温度を50℃に維持しながら6時間にわたって6mLのIPA/HO(1:1(v/v))を添加した。撹拌を停止し、懸濁液を50℃でさらに1.5時間維持してから25℃に冷却し、この温度で3時間保持した。次に、スラリーを濾過し、得られた湿潤ケーキを減圧下で12時間乾燥させた。0.77gの形態H(白色の結晶固体)を約67%の収率で得た。
【0154】
方法C
【0155】
20mLガラスバイアル中で、70℃で1時間撹拌することによって1.5gの4-クロロ-5-(4-(4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-5,8-ジヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-7(6H)-イル)ピリダジン-3(2H)-オンを10mLのDMSOに溶解した。得られた溶液を孔径0.45μMのPTFE膜に通して濾過して透明な溶液を取得し、オーバーヘッド撹拌機を設置した100mLフラスコに入れ、300rpm、70℃で撹拌した。0.9mLのIPA/HO(1:1(v/v))混合物を添加した後、形態Hの種晶を少量添加してから、75.3mgの形態H及び9.1mLのIPA/HO(1:1(v/v))を6時間にわたって追加で添加した。IPA/HOの添加が終了してから70℃で1時間撹拌を行った後、撹拌を2時間維持しながら懸濁液を約25℃に冷却し、その後は撹拌せずにさらに1時間この冷却を行った。懸濁液を濾過し、得られた湿潤ケーキを20mLのIPAですすいだ後、真空オーブン中、50℃で12時間乾燥させた。1.28gの形態H(白色の結晶固体)を約80%の収率で得た。
【0156】
このようにして調製した結晶形態の粉末X線回折パターンならびにXRPDピーク及びそれらの相対強度は、それぞれ図2A及び表2に示される。DSCデータは図2Bに示される。
【0157】
【表5】
【0158】
実施例3.化合物100結晶形態Eの調製
約15mgの化合物100をHPLCバイアル中で0.5mLのDMF:HO(1:9(v/v))に懸濁した。懸濁液を室温で3日間撹拌した後、残存する固体を室温で一晩真空乾燥した。代替的には、約15mgの化合物100を、0.5mLのDMSO:HO(1:9(v/v))またはDMF:HO(1:1(v/v))のいずれかに懸濁して結晶形態Eを得た。結晶形態Eへのさらなる別の経路として、実施例7に記載のように結晶形態Cを介する経路を利用した。
【0159】
このようにして調製した結晶形態の粉末X線回折パターンならびにXRPDピーク及びそれらの相対強度は、それぞれ図3A及び表3に示される。DSCデータ及びTGAデータは図3Bに示される。
【0160】
【表6】
【0161】
結晶形態Eについては、3~14日にわたって、異なる相対湿度での安定性も試験した。結果は以下の表3.1に示される。
【0162】
【表7】
相対湿度30%でE型を14日間保管した後にF型が出現したことによって、そのような低い相対湿度ではE型は不安定であることが示された。
【0163】
実施例4.化合物100結晶形態Gの調製
結晶形態Gは、aが0.8以上であるいくつかの溶媒系中で化合物100をスラリー化することによって得ることができる。例えば、アセトニトリル/水(1:1(v/v))中、室温で化合物100をスラリー化して形態Gを得た。
【0164】
このようにして調製した結晶形態の粉末X線回折パターンならびにXRPDピーク及びそれらの相対強度は、それぞれ図4A及び表4に示される。DSCデータ及びTGAデータは図4Bに示される。
【0165】
【表8】
【0166】
実施例5.化合物100結晶形態Bの調製
結晶形態Bは、化合物100をN保護下で244℃に加熱した後、室温に冷却することによって得た。
【0167】
代替的には、約30mgの化合物100を室温で1.5mLの2:1(v/v)THF:ヘプタン混合物に懸濁してスラリーを形成させることによって結晶形態Bを得た。得られた湿潤ケーキを一晩乾燥させることで結晶形態Bを得た。
【0168】
このようにして調製した結晶形態の粉末X線回折パターンならびにXRPDピーク及びそれらの相対強度は、それぞれ図5A及び表5に示される。DSCデータ及びTGAデータは図5Bに示される。
【0169】
【表9】
【0170】
実施例6.化合物100結晶形態Cの調製
結晶形態Cは、化合物100を1,4-ジオキサンに溶解した後、この溶液に対して、貧溶媒であるHOを添加して結晶形態Cを析出させることによって調製した。
【0171】
結晶形態Cは、下記の貧溶媒結晶化手順によっても調製した。約600mgの化合物100結晶形態Aを室温で70mLのTHFに溶解した。この溶液に対して、30mLのヘプタンを添加して物質を沈殿させた。この不溶性物質を湿潤ケーキとして単離し、一晩乾燥させることで結晶形態Cを得た。
【0172】
形態Cの結晶を単離すると、それを下記のプロセスにおいて種晶として使用して結晶形態Cを追加で調製することができる。1000mgの化合物100を21mLの2:1(v/v)THF:HO混合物に室温で懸濁し、そこに形態Cの結晶を3%(w/v)となるように添加した。これらの成分を一晩一緒に混合してスラリーを得た(この混合は、機械的に行うか、または磁気撹拌棒を用いて行った)。得られた湿潤ケーキを乾燥させることで結晶形態Cを得た。
【0173】
このようにして調製した結晶形態の粉末X線回折パターンならびにXRPDピーク及びそれらの相対強度は、それぞれ図6A及び表6に示される。DSCデータ及びTGAデータは図6Bに示される。
【0174】
【表10】
【0175】
実施例7.結晶形態Eを調製するための結晶形態Cの使用
いずれの種晶も添加することなく磁力での撹拌(磁気撹拌棒を使用するもの)を24時間行うことで、湿潤結晶形態C(例えば、上記の形態C調製のいずれかからの乾燥を行う前の湿潤ケーキ)が結晶形態Eに変換された。同様に、機械的な撹拌(振とう機を使用するもの)を24~72時間行うことによっても、湿潤結晶形態C(結晶形態Eの種晶を1%となるように添加したもの)は、そのほとんどが形態Eに変換された。しかしながら、撹拌を3日間行った後でさえ、物質の5%がC型のまま残存していることがXRPD分析によって明らかとなった。機械的な撹拌と比較して磁力での撹拌の方が形態Cから形態Eへの変換を良好に生じさせるようであった。理論に拘束されるものではないが、磁力での撹拌は、物質の形態に影響を及ぼすが故に、形態Cから形態Eへの変換効率を高めるものと本発明者らは考えている。したがって、形態Cを粉砕してその結晶サイズを小さくしてから撹拌すれば、形態Cから形態Eへの変換を増進させ得ることが可能である。
【0176】
本発明の前述の説明は、例示及び説明を与えるものであるが、網羅的であることも、開示のものそのものに本発明を限定することも意図されない。上記の教示内容を踏まえれば改変及び変形が可能であり、本発明を実施することでもそうした改変及び変形を得ることができる。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】