(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(54)【発明の名称】耳に装着可能な再生装置のためのオーディオシステムおよび信号処理方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20220512BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R3/00 310
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556994
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020057466
(87)【国際公開番号】W WO2020193315
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505325040
【氏名又は名称】アーエムエス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ams AG
【住所又は居所原語表記】TOBELBADER STRASSE 30, 8141 PREMSTAETTEN, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マカッチョン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ジェザー ホースト
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA05
5D220AB00
(57)【要約】
耳に装着可能な再生装置(HP)のためのオーディオシステムは、スピーカ(SP)と、スピーカ(SP)から出力される音を感知する誤差マイクロフォン(FB_MIC)と、音制御プロセッサと、を含む。プロセッサは、スピーカ(SP)を介した検出信号または検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視し、誤差マイクロフォン(FB_MIC)からの誤差信号を記録し、誤差信号の処理に基づいて、再生装置(HP)がユーザに装着されている第1の状態であるか、または再生装置(HP)がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ(SP)と周囲音を優位に感知するフィードフォワードマイクロフォン(FF_MIC)と前記スピーカ(SP)から出力される音を感知する誤差マイクロフォン(FB_MIC)とを備える耳に装着可能な再生装置(HP)のためのオーディオシステムであって、前記オーディオシステムは、雑音キャンセリングを実行するように構成され、
- 前記フィードフォワードマイクロフォン(FF_MIC)からの雑音信号を記録し、前記雑音信号を検出信号として使用し、
- 前記検出信号をフィードフォワードフィルタでフィルタリングし、
- 前記スピーカ(SP)を介して、フィルタリングされた前記検出信号の再生を制御し、
- 前記誤差マイクロフォン(FB_MIC)からの誤差信号を記録し、
- 前記誤差信号の処理に基づいて、前記再生装置(HP)がユーザに装着されている第1の状態であるか、または前記再生装置(HP)がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断する
ように構成される音制御プロセッサを備える、オーディオシステム。
【請求項2】
前記音制御プロセッサは、前記誤差信号および前記検出信号の関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、前記第1の状態および/または前記第2の状態を判断するように構成される、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記音制御プロセッサは、前記誤差信号と前記雑音信号または前記検出信号との関数としての前記雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、前記第2の状態を判断するように構成される、請求項1または2に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記誤差マイクロフォン(FB_MIC)および/または前記フィードフォワードマイクロフォン(FF_MIC)で音声信号が録音されているかどうかを判断する音声活動検出器をさらに備え、前記音制御プロセッサは、前記音声信号が録音されていると判断された場合、前記第1の状態および/または前記第2の状態の判断を一時停止する、請求項2または3に記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記音制御プロセッサは、前記誤差信号と前記雑音信号または前記検出信号との間のエネルギー比を判断することにより、前記雑音キャンセリングの性能を評価するように構成される、請求項2から4のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記音制御プロセッサは、前記スピーカ(SP)を介して音楽信号が追加再生される場合、前記エネルギー比を判断する際に、前記音楽信号のエネルギーレベルを考慮するように構成される、請求項5に記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記フィードフォワードフィルタのフィルタ応答は一定である、および/または、少なくとも前記再生装置の状態を判断する間、前記音制御プロセッサによって一定に保たれる、請求項2から6のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項8】
前記音制御プロセッサは、
- 前記誤差信号に基づいて、前記フィードフォワードフィルタのフィルタ応答を調整し、
- 少なくとも1つの予め定められた周波数における前記フィードフォワードフィルタの前記フィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断する
ように構成される、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項9】
前記音制御プロセッサは、前記少なくとも1つの予め定められた周波数における前記フィードフォワードフィルタのフィルタ応答が応答閾値を超えた場合、前記第2の状態と判断するように構成される、請求項8に記載のオーディオシステム。
【請求項10】
前記音制御プロセッサは、予め定義された周波数範囲における前記フィードフォワードフィルタの前記フィルタ応答の、少なくともフィルタ勾配およびフィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、前記フィルタ勾配および/または前記フィルタ利得を評価することによって、前記第2の状態と判断するように構成される、請求項8または9に記載のオーディオシステム。
【請求項11】
前記音制御プロセッサは、以下の、
- 前記フィルタ勾配が閾値勾配値を超えることと、
- 前記フィルタ利得が閾値利得値を超えることと、
の少なくとも1つが当てはまる場合に、前記第2の状態を判断するように構成される、請求項10に記載のオーディオシステム。
【請求項12】
スピーカ(SP)と前記スピーカ(SP)から出力される音を感知する誤差マイクロフォン(FB_MIC)とを備える耳に装着可能な再生装置(HP)のためのオーディオシステムであって、前記オーディオシステムは、
- スピーカ(SP)を介した検出信号または前記検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視し、
- 誤差マイクロフォン(FB_MIC)からの誤差信号を記録し、
- 前記誤差信号の処理に基づいて、前記再生装置(HP)は、前記再生装置(HP)がユーザによって装着されている第1の状態であるか、または前記再生装置(HP)がユーザによって装着されていない第2の状態であるかを判断する
ように構成される音制御プロセッサを備える、オーディオシステム。
【請求項13】
前記音制御プロセッサは、前記検出信号と前記誤差信号との間の位相差の評価に基づいて、前記第1の状態を判断するように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項14】
前記音制御プロセッサは、前記検出信号と前記誤差信号との間の位相差が、1つ以上の予め定義された周波数において位相閾値を超えた場合、前記第1の状態と判断するように構成される、請求項13に記載のオーディオシステム。
【請求項15】
前記検出信号は、識別信号であり、前記音制御プロセッサは、
- スピーカ(SP)を介して前記識別信号の再生を制御および/または監視し、
- 前記識別信号を調整可能なフィルタでフィルタリングし、
- フィルタリングされた前記識別信号と前記誤差信号との間の差に基づいて、特に、前記調整可能なフィルタが、スピーカ(SP)と誤差マイクロフォン(FB_MIC)との間の音響伝達関数を近似するように、前記調整可能なフィルタを調整し、
- 少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における前記調整可能なフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、前記第2の状態を判断する
ように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項16】
前記識別信号は、
- 音楽信号、
- ペイロードオーディオ信号、
- 周囲音を優位に感知するマイクロフォン(FF_MIC)から記録される雑音信号をフィルタリングしたもの、
のいずれか、または、その組み合わせである、請求項15に記載のオーディオシステム。
【請求項17】
前記音制御プロセッサは、さらなる予め定められた周波数範囲における前記調整可能なフィルタのフィルタ応答の、少なくとも識別フィルタ勾配および識別フィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、前記識別フィルタ勾配および/または前記識別フィルタ利得を評価することによって、前記第2の状態を判断するように構成される、請求項15または16に記載のオーディオシステム。
【請求項18】
前記音制御プロセッサは、前記第2の状態と判断された場合、前記オーディオシステムを低電力モードの動作に制御し、前記第1の状態と判断された場合、前記オーディオシステムを通常モードの動作に制御するように構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項19】
前記音制御プロセッサは、前記再生装置(HP)が前記第2の状態である場合にのみ、前記再生装置(HP)が前記第1の状態であるか否かを判断し、前記再生装置(HP)が前記第1の状態である場合にのみ、前記再生装置(HP)が前記第2の状態であるか否かを判断するように構成される、請求項1から18のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項20】
前記再生装置は、ヘッドフォンまたはイヤフォンまたは携帯電話である、請求項1から19のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項21】
スピーカ(SP)と前記スピーカ(SP)から出力される音を感知する誤差マイクロフォン(FB_MIC)とを備える耳に装着可能な再生装置(HP)のための信号処理方法であって、
- スピーカ(SP)を介した検出信号または前記検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視するステップと、
- 前記誤差マイクロフォン(FB_MIC)からの誤差信号を記録するステップと、
- 前記誤差信号の処理に基づいて、前記再生装置(HP)がユーザに装着されている第1の状態であるか、または前記再生装置(HP)がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断するステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
本開示は、スピーカとマイクロフォンを備えた耳に装着可能な再生装置、例えばヘッドフォンのためのオーディオシステムおよび信号処理方法に関するものである。
【0002】
現在、イヤフォンをはじめとするかなりの数のヘッドフォンには、雑音キャンセリング技術が搭載されている。例えば、このような雑音キャンセリング技術は、アクティブ雑音キャンセリングや周囲雑音キャンセリングと呼ばれ、いずれもANCと略される。ANCは一般的に、周囲雑音を録音し、それを処理して雑音対策信号を生成し、その信号をヘッドフォンのスピーカから再生される有用なオーディオ信号と組み合わせる。ANCは、ハンドセットや携帯電話といった他のオーディオ装置にも採用することができる。
【0003】
様々なANCアプローチは、フィードバック(FB)マイクロフォン、フィードフォワード(FF)マイクロフォン、またはフィードバックとフィードフォワードマイクロフォンとの組み合わせを使用する。
【0004】
FFとFB ANCとは、システムの所与の音響特性に基づいてフィルタを調整することによって実現される。
【0005】
ハイブリッド型の雑音キャンセリングヘッドフォンが一般的に知られている。例えば、鼓膜に音響的に直接結合されたボリュームの内部に、慣例的にヘッドフォンのドライバの前部に近い位置にマイクロフォンを配置する。これは、フィードバック(FB)マイクロフォンと呼ばれている。第2のマイクロフォン、フィードフォワード(FF)マイクロフォンは、ヘッドフォンのドライバから音響的に切り離されるように、ヘッドフォンの外側に配置される。
【0006】
しかし、ANCを搭載していないヘッドフォンも未だ存在する。ANCの有無にかかわらず、いずれのタイプのヘッドフォンも、動作時に電力を消費する何らかの処理用部品または他の電子部品を含むことがある。例えば、ワイヤレスヘッドフォンでは、部品に電力を供給するために二次電池を使用する。
【0007】
多くのヘッドフォンやイヤフォンには、何らかの形でオフイヤ検出機能が搭載されている。すなわち、ヘッドフォンが耳に掛かっている(オンイヤ)か耳に掛かっていない(オフイヤ)か、あるいはヘッドフォンがユーザによって装着されているかいないかを検出する。最近のヘッドフォンはワイヤレス化が進んでおり、バッテリの消費と再生時間とが非常に重要になっている。そのため、ヘッドフォンが頭から外れたときに、音楽再生やBluetooth(登録商標)接続などの機能を無効にしてバッテリの消耗を防ぐために、オフイヤ検出が望まれている。
【0008】
これは、例えば、光学式近接センサ、圧力センサ、静電容量式センサを含むいくつかの手段によってなされうる。これらはすべて、この目的のためだけに装置にセンサを追加し、そのセンサが効果的に機能するようにセンサをパッケージ化するように装置を設計する必要があり、審美性および製造時のコスト増加に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
達成すべき目的は、ヘッドフォン、イヤフォン、モバイルハンドセットなどの耳に装着可能な再生装置の装着状態を検出するための改良された概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。改良された概念の実施形態および発展は、従属請求項に定義される。
【0011】
本開示では、例えば、ヘッドフォンの内側と外側の2つのマイクロフォンを使用して、ヘッドフォンが耳に入っているまたは耳に装着されているかどうかを検出する方法を提唱する。従来のハイブリッド雑音キャンセリングヘッドフォンには、これらの2つのマイクロフォンがすでに存在するので、本開示のハイブリッド雑音キャンセリングヘッドフォンへの適用は、追加の部品を加えることなく、オフイヤ検出を追加することである。なお、以下ではヘッドフォンまたはイヤフォンを参照するが、これは、ヘッドフォンまたはイヤフォン、携帯電話などのモバイルハンドセットのような耳に装着可能な再生装置の一般的な例となっている。ヘッドフォンまたはイヤフォンの場合、ヘッドフォンまたはイヤフォンの本体とユーザの頭部との間の音漏れが変化するように装着されるようにヘッドフォンやイヤフォンが設計されてもよい。
【0012】
従来の雑音キャンセリングヘッドフォンは、例えば、ドライバの前後に空気のボリュームがある。前方のボリュームは、外耳道のボリュームで部分的に補われる。前方のボリュームには、通常、音響抵抗体で覆われたベントがある。また、後方のボリュームにも音響抵抗体を伴うベントがある。多くの場合、前方のボリュームのベントは、前方のボリュームと後方のボリュームを音響的に結合する。各チャンネルには、左右に2つのマイクロフォンが設置されてもよい。誤差マイクロフォンまたはフィードバック(FB)マイクロフォンは、ドライバに近接して配置され、ドライバからの音と周囲環境からの音とを検出する。フィードフォワード(FF)マイクロフォンは、周囲音と無視しうるドライバからの音とを検出するように、ユニットの後面から外側に向けて配置されている。
【0013】
この配置では、フィードフォワードとフィードバックという2つの形式の雑音キャンセリングが行われる。どちらのシステムでも、マイクロフォンとドライバの間にフィルタが設置される。本開示の主な用途は、適応型雑音キャンセリングシステムに関するもので、これらのフィルタの特性を誤差マイクロフォンの周囲雑音レベルに応じて変化させ、漏れを補う。しかし、音楽信号などの既知の信号や既知の雑音信号がスピーカから出力されている場合、任意の雑音キャンセリングヘッドフォン、または非雑音キャンセリングヘッドフォンにも適用することができる。
【0014】
本開示では、適応型雑音キャンセリングとは、前方の空気ボリュームからの音漏れの変化に応じて、雑音対策信号をリアルタイムで変更する、すなわち適応させるプロセスを意味する。
【0015】
本開示は、雑音キャンセリングヘッドフォンまたはイヤフォンに適用すると、特に、ヘッドフォンが耳に装着されているかどうかを検出するための追加のセンサが不要になる。これにより、ヘッドフォンのBOM(部品表)のコストが削減され、追加のセンサを配置しなければならないという設計上の制約を取り除くことができる。
【0016】
ワイヤレスヘッドフォンは電力効率が良いことが望ましく、頭から外してスイッチを切る、または低電力モードにしないと、電池切れになってしまうというリスクがある。また、耳の中に/耳に装着したときに、デバイスを起動したり、低電力モードから通常の動作モードに移行したりするためには、オンイヤ/オフイヤ検出が望ましい。
【0017】
さらに、適応型雑音キャンセリングヘッドフォンでは、イヤフォンが耳に装着されたかどうかを検出することで、耳から外れたときにANCフィルタ関数を適応させないようにすることによって、システムの安定性を保つことができる。
【0018】
通常、適応型雑音キャンセリングシステムは、特定の基準点における雑音を最小化する。ヘッドフォンの場合、これは外耳道のボリューム、鼓膜、またはほとんどの場合、FB雑音キャンセリングマイクロフォンになる。ヘッドフォンを頭から外すと、音響状況が大きく変わり、適応アルゴリズムが不安定になったり、極端な雑音キャンセリングパラメータが設定されたりして、ヘッドフォンを頭に戻したときに、適応を続けられるようになる前までかなりの雑音ブーストが聞こえることがある。ヘッドフォンが頭から外されたときに適応システムを一時停止するために、オンイヤ/オフイヤ検出を使用することができる。そのため、オフイヤ検出のための音響的アプローチは、コスト増となる可能性のある追加の近接センサなどの使用を回避するのに役立つ。
【0019】
本開示による改良された概念によると、雑音キャンセリングヘッドフォンに既に存在する音響部品を使用して、ヘッドフォンが頭部に装着されているか否かを検出することができる。
【0020】
例えば、耳に装着する再生装置において、スピーカと、スピーカから出力される音を感知する誤差マイクロフォンと、を備えるオーディオシステムが開示されている。誤差マイクロフォンは、FB ANC用のフィードバックマイクロフォンであってもよい。誤差マイクロフォンは、スピーカから出力される音を優位に感知してもよいが、周囲環境からの音も感知する。スピーカから出力される音を優位に感知することは、例えば、周囲音が、実際の漏れの状況に応じて副次的に多かれ少なかれ記録されるように、再生装置内の誤差マイクロフォンをそれぞれスピーカに対して配置することによって達成されうる。
【0021】
オーディオシステムは、スピーカを介した検出信号または検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視し、誤差マイクロフォンからの誤差信号を記録し、誤差信号の処理に基づいて、再生装置がユーザに装着されている第1の状態であるか、または再生装置がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断するように構成される音制御プロセッサを備える。
【0022】
したがって、オーディオシステムでは、2つの主要な処理が行われる。1つはヘッドフォンが耳から外れたこと(第2の状態)を検出する処理であり、もう1つはヘッドフォンが耳に装着されたこと(第1の状態)を検出する処理である。
【0023】
再生を制御および/または監視することによって、音制御プロセッサは結果的に、スピーカによって出力される信号を制御するか、または少なくとも出力される信号にアクセスすることができる。
【0024】
いくつかの実装では、オーディオシステムは、雑音キャンセリングを実行するように構成される。例えば、再生装置は、周囲音を優位に感知し、好ましくは、スピーカによって出力される音の無視できる部分のみを感知するフィードフォワードマイクロフォンをさらに備える。音制御プロセッサは、フィードフォワードマイクロフォンからの雑音信号を記録し、その雑音信号を検出信号として使用し、フィードフォワードフィルタで検出信号をフィルタリングし、スピーカを介したフィルタリングされた検出信号の再生を制御するようにさらに構成される。
【0025】
ヘッドフォンが耳から外れたことを検出するために、適応型雑音キャンセリングアルゴリズム、特にフィードフォワードフィルタの結果フィルタ応答が分析されてもよく、結果フィルタ応答が特定の基準を満たした場合に耳から外れた状態がトリガされる。これは、例えば、結果的なフィルタ応答が、オンイヤの場合を指示する予想される音響応答と許容可能な許容範囲内で一致しない場合である。例えば、音制御プロセッサは、誤差信号に基づいてフィードフォワードフィルタのフィルタ応答を調整し、少なくとも1つの予め定められた周波数でのフィードフォワードフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて第2の状態を判断するように構成される。例えば、音制御プロセッサは、少なくとも1つの予め定められた周波数におけるフィードフォワードフィルタのフィルタ応答が応答閾値を超えた場合に、第2の状態と判断するように構成される。
【0026】
いくつかの実装では、音制御プロセッサは、予め定義された周波数範囲におけるフィードフォワードフィルタのフィルタ応答の、少なくともフィルタ勾配およびフィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、フィルタ勾配および/またはフィルタ利得を評価することによって、第2の状態を判断するように構成される。例えば、音制御プロセッサは、フィルタ勾配が閾値勾配値を超えた場合、フィルタ利得が閾値利得値を超えた場合の少なくとも1つが当てはまる場合に、第2の状態と判断するように構成される。
【0027】
予め定義された周波数範囲の下限は40Hzから100Hzの間であり、予め定義された周波数範囲の上限は100Hzから800Hzの間であってもよい。
【0028】
非適応型イヤフォンの場合は、誤差マイクロフォンとFFマイクロフォンのエネルギーの比率を監視することによってANC性能を分析する。ANC性能が特に低い場合は、ヘッドフォンが耳から外れていると考えられる。この場合、音声活動検出器を使用して、ANC性能の値を計算するときに発話が存在しないことを確認してもよい。例えば、音制御プロセッサは、誤差信号と雑音信号または検出信号との関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、第2の状態を判断するように構成される。
【0029】
ヘッドフォンが耳に装着されていることを検出するために、FFマイクロフォンに対する誤差マイクロフォンの位相が監視される。これは、オンイヤおよびオフイヤ時の音響負荷の違いによるドライバ応答の広範な差分を利用する。予め設定された領域でドライバ応答の位相が設定された閾値を超えた場合、イヤフォンが耳に戻ったと判断される。
【0030】
例えば、音制御プロセッサは、検出信号と誤差信号との間の位相差の評価に基づいて、第1の状態を判断するように構成される。そのような実装のいくつかでは、音制御プロセッサは、検出信号と誤差信号との間の位相差が、1つ以上の予め定められた周波数で位相閾値を超えた場合に、第1の状態と判断するように構成される。位相差の評価は、周波数領域で行われてもよい。
【0031】
オンイヤの位相監視の手法をオフイヤでの場合にも適用することは理にかなっているようにも思われる。しかし、これは発話がある場合に信頼性に欠ける可能性がある。誤差マイクロフォンとFFマイクロフォンでの骨伝導発話信号の不均衡により、位相情報の信頼性が低下する可能性がある。しかし、オフイヤの場合、骨伝導発話信号は無視できる。
【0032】
同様に、オフイヤ検出方法をすべての状況でオンイヤ検出に適用することはできない。なぜなら、検出は、適応型ヘッドフォンの適応動作に依存し、オフイヤ検出の結果として適応動作が一時停止するからである。非適応型オーディオシステムでは、ANCパフォーマンスの監視をオンイヤ検出に使用することが可能である。したがって、例えば、音制御プロセッサは、誤差信号および雑音信号または検出信号の関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、第1の状態を判断するように構成される。
【0033】
オフイヤ状態がトリガされ、適応が一時停止されると、音楽再生やBluetooth接続などの他の機能も無効にすることができる。オンイヤ状態を検出するためには、音響部品と雑音キャンセリングプロセッサとを動作させる必要があるが、これは低消費電力モードで動作させることができる。このモードには、低いサンプリングレートでの動作が含まれる。これには、人間の聴覚の上限閾値の2倍の周波数よりも実質的に低くてもよい、より低いサンプルレートでマイクロフォンまたはADCにクロックを供給することが含まれる。(すなわち、有用なマイクロフォン情報およびICを介した有用な信号は、通常の使用で許容される動作のための帯域幅よりも低い制限された帯域幅を持ってもよい。)例えば、マイクロフォンのデータのサンプリングレートを8kHzに低減することができる。
【0034】
音楽が再生されている場合、オフイヤ検出はより複雑になる。非適応型ヘッドフォンの場合、音楽のエネルギーレベルは、ドライバ応答に対してオフセットされた後に計算され、誤差マイクロフォンから除去されてもよい。ANCの近似値は以下のとおりである。
【数1】
【0035】
すべての値がエネルギーレベルであると仮定し、errは誤差信号、Musは既知の音楽信号、DFBMは誤差マイクロフォンでのドライバ応答、FFはFFマイクロフォンでのエネルギーを表している。このANCの近似値は、2つの状態(オンイヤ/オフイヤ)をトリガするものであるため、その計算が厳密でないことは許容される。
【0036】
音楽を再生する適応型ヘッドフォンでは、ドライバ応答の近似値で畳み込んだ音楽信号を誤差マイクロフォン信号から差し引くことができる。ドライバ応答の近似値が適応される。これは、音楽が非常に大きな音である場合を除いて、許容されうる。この場合、適応されたドライバ応答フィルタを、耳から外れる限界にある既知のドライバ応答と比較することによって、オフイヤ検出を計算することができる(以下に詳細に説明する)。この後者のプロセスは、誤差マイクロフォンが存在する場合、ANCのないヘッドフォンにも使用できる。
【0037】
ほとんどの場合で音声が存在する場合、音声活動検出器は、音声が検出されたときにオフイヤ検出を一時停止する必要がある。
【0038】
例えば、オーディオシステムは、誤差マイクロフォンおよび/またはフィードフォワードマイクロフォンで音声信号が録音されているかどうかを判断するための音声活動検出器をさらに備え、音制御プロセッサは、音声信号が録音されていると判断された場合、第1および/または第2の状態の判断を一時停止するように構成される。
【0039】
いくつかの実装では、音制御プロセッサは、誤差信号と雑音信号または検出信号との間のエネルギー比を判断することによって、雑音キャンセリングの性能を評価するように構成される。例えば、音制御プロセッサは、音楽信号がスピーカを介して追加で再生される場合、エネルギー比を判断する際に、音楽信号のエネルギーレベルを考慮するように構成される。
【0040】
いくつかの実装では、フィードフォワードフィルタのフィルタ応答は一定であり、および/または、少なくとも再生装置の状態を判断する間、音制御プロセッサによって一定に保たれる。これにより、雑音キャンセリング性能の評価の精度が向上しうる。
【0041】
いくつかのさらなる実装では、検出信号は識別信号であり、音制御プロセッサは、スピーカを介した識別信号の再生を制御および/または監視し、識別信号を調整可能なフィルタでフィルタリングし、フィルタリングされた識別信号と誤差信号との差に基づいて調整可能なフィルタを調整し、例えば、調整可能なフィルタがスピーカと誤差マイクロフォンとの間の音響伝達関数を近似するように調整し、少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における調整可能なフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断するように構成される。
【0042】
識別信号は、音楽信号、ペイロードオーディオ信号、周囲音を優位に感知するマイクロフォンから記録される雑音信号をフィルタリングしたもの、のいずれか、またはこれらの組み合わせであってもよい。後者のマイクロフォンは、FF ANCマイクロフォンとしても利用可能である。
【0043】
フィルタ応答の評価は、上述した適応型フィードフォワードフィルタのフィルタ応答の評価と同様に、例えば、上述したように特に予め定められた周波数または指定された周波数範囲において、利得および/または勾配を評価することによって行うことができる。
【0044】
例えば、音制御プロセッサは、少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における調整可能なフィルタのフィルタ応答が識別応答閾値を超えた場合、第2の状態と判断するように構成される。
【0045】
いくつかの実装では、音制御プロセッサは、さらなる予め定められた周波数範囲における調整可能なフィルタのフィルタ応答の、少なくとも識別フィルタ勾配および識別フィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、識別フィルタ勾配および/または識別フィルタ利得を評価することによって、第2の状態を判断する。例えば、音制御プロセッサは、識別フィルタ勾配が識別閾値勾配値を超えた場合、識別フィルタ利得が識別閾値利得値を超えた場合、の少なくとも1つが当てはまる場合に、第2の状態と判断するように構成される。
【0046】
上述の実施形態と同様に、さらなる予め定められた周波数範囲の下限値は40Hzから100Hzの間であり、さらなる予め定められた周波数範囲の上限値は100Hzから800Hzの間であってもよい。
【0047】
いくつかの実装では、音制御プロセッサは、第2の状態と判断された場合、オーディオシステムを低電力動作モードに制御し、第1の状態と判断された場合、通常動作モードに制御するように構成される。
【0048】
いくつかの実装では、再生装置が第2の状態である場合にのみ、再生装置が第1の状態であるかどうかが判断され、再生装置が第1の状態である場合にのみ、再生装置が第2の状態であるかどうかが判断される。
【0049】
オーディオシステムは、再生装置を含んでもよい。例えば、音制御プロセッサは、再生装置の筐体に含まれる。
【0050】
耳に装着可能な再生装置の装着状態を検出するための改良された概念は、スピーカと、スピーカから出力される音を感知する(例えば、優位に感知する)誤差マイクロフォンと、を備える耳に装着可能な再生装置の信号処理方法にも実装することができる。
【0051】
例えば、本方法は、スピーカを介した検出信号または検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視することと、誤差マイクロフォンからの誤差信号を記録することと、誤差信号の処理に基づいて、再生装置がユーザに装着されている第1の状態であるか、または再生装置がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断することと、を含む。
【0052】
本方法のさらなる実施形態は、上述したオーディオシステムの様々な実装から当業者には容易に明らかになる。
【0053】
様々な実施形態において、ヘッドフォン、イヤフォン、またはヘッドマウントデバイスは、ドライバの後面が後部空気ボリュームによって囲まれ、ドライバの前面が前部空気ボリュームによって囲まれてもよい、筐体に取り付けられたドライバと、音響抵抗体を介して前部ボリュームを周囲環境に音響的に結合する前部ベントと、後方のボリュームと周囲環境とを音響的に結合するリアベントと、周囲環境の音を検出するフィードフォワードマイクロフォンと、ドライバの前面に近接して配置され、周囲環境の音とドライバの音を検出する誤差マイクロフォンと、を備える。例えば、フィードフォワードマイクロフォンからの信号を電子的にフィルタリングして、誤差マイクロフォンの位置で周囲雑音を減衰させるドライバからの信号を生成し、誤差マイクロフォンの信号は、前記電子フィルタの特性を制御することができる。これにより、電子フィルタの特性が監視され、少なくとも1つの予め定められた特性と比較され、少なくとも予め定められた特性を超えると、どのように誤差信号が電子フィルタを制御するかを変更するオフイヤモードに入る。
【0054】
オフイヤモードでは、2つのマイクロフォンの間の位相差が監視され、位相差が予め定義された閾値を超えたときにオンイヤ状態となり、以前のように誤差信号によって電子フィルタの特性が制御されるようになっている。
【0055】
ヘッドフォンは、ヘッドフォン本体と頭部との間に音漏れがある状態で装着されるように設計されてもよい。
【0056】
ヘッドフォンは、ドライバの前のボリュームと外耳道との間に音響シールを作成してもよい。
【0057】
音響用のメッシュが後面のベントを覆ってもよい。
【0058】
オフイヤモードに入ると、誤差マイクロフォンが電子フィルタの制御を停止してもよい。
【0059】
いくつかの実装では、誤差マイクロフォンの信号は、追加のフィルタを通過してドライバから出力され、追加のフィードバック雑音キャンセリングシステムを作成する。
【0060】
オフイヤモードでは、動作が遅くなる、または消費電力が小さくなってもよい。
【0061】
様々な実施形態において、ヘッドフォン、イヤフォン、またはヘッドマウントデバイスは、筐体であって、それによりドライバの後面は後部空気ボリュームによって囲まれ、ドライバの前面は前部空気ボリュームによって囲まれる、筐体に取り付けられたドライバと、音響抵抗体を介して前部ボリュームを周囲環境に音響的に結合することができる前部ベントと、後部ボリュームを周囲環境に音響的に結合することができる後部ベントと、前部ドライバの面に近接して配置され、周囲環境からの音およびドライバからの音を検出する誤差マイクロフォンと、を備える。
【0062】
ヘッドフォンドライバから希望オーディオ信号を再生し、誤差マイクロフォンで検出された信号を使ってドライバ応答に近い類似性を担持する電子フィルタを適応させ、電子フィルタの特性が監視され、予め定義された特性と比較され、予め定義された特性を超えた場合、誤差信号がどのように電子フィルタを制御するかを変更するオフイヤモードに入る。
【0063】
オフイヤモードでは、既知の信号と誤差マイクロフォンの間の位相差を監視し、位相差が予め定義された閾値を超えたときにオンイヤ状態が定義され、以前のように誤差信号が電子フィルタの特性を制御する。
【0064】
希望オーディオ信号は、FFマイクロフォンからの信号を増幅、フィルタリングしたものであってもよい。
【0065】
上述したすべての実施形態において、ANCは、デジタルおよび/またはアナログフィルタの両方で実行することができる。すべてのオーディオシステムは、フィードバックANCも含むことができる。様々な信号の処理および記録は、好ましくはデジタル領域で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
改良された概念は、図面を用いて以下でより詳細に説明される。同じまたは類似の機能を有する要素には、図面を通して同じ参照番号が付けられている。したがって、それらの説明は、以下の図面では必ずしも繰り返されない。
【0067】
【
図2】
図2は、一般的な適応型ANCシステムのブロック図である。
【
図3】
図3は、「リーキー」タイプのイヤフォンの例示的な表現である。
【
図4】
図4は、周囲音源からの複数の音経路を伴う、ユーザが装着するヘッドフォンの例である。
【
図5】
図5は、ANC対応のハンドセットの例示的な表現を示す。
【
図6】
図6は、再生デバイスの異なる装着状態や漏れ状態の位相図である。
【
図7】
図7は、調整可能な識別フィルタを備えたシステムのブロック図である。
【
図8】
図8は、調整可能な識別フィルタを備えたさらなるシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、本例ではオーバイヤ型またはサークマール型ヘッドフォンとして設計されたヘッドフォンHPの形態であるANC対応再生装置の概略図である。ヘッドフォンHPの一部のみを示しているが、これは単一のオーディオチャンネルに対応する。しかしながら、ステレオヘッドフォンへの拡張は、本開示および後続の開示について、当業者には明らかであろう。ヘッドフォンHPは、スピーカSPを搭載した筐体HSと、フィードバック雑音マイクロフォンまたは誤差マイクロフォンFB_MICと、周囲雑音マイクロフォンまたはフィードフォワードマイクロフォンFF_MICと、を備える。誤差マイクロフォンFB_MICは、特に、スピーカSPから再生された音と周囲雑音との両方を記録するように指示または配置されている。好ましくは、誤差マイクロフォンFB_MICは、スピーカ音が記録のための優位なソースとなり得るように、スピーカに近接して、例えば、スピーカSPの縁部に近接して、またはスピーカの膜に近接して配置される。周囲雑音/フィードフォワードマイクロフォンFF_MICは、特に、ヘッドフォンHPの外側からの周囲雑音を主に録音するように方向づけまたは配置されている。それでも、スピーカ音の無視できる部分がマイクロフォンFF_MICに到達してもよい。
【0069】
実行されるANCの種類に応じて、フィードバックANCのみが実行される場合、周囲雑音マイクロフォンFF_MICは省略されてもよい。誤差マイクロフォンFB_MICは、ヘッドフォンHPがユーザに装着されているときに、ヘッドフォンHPの装着状態、それぞれの漏れ状態の判断の基礎となる誤差信号を提供するために、改良された概念に従って使用されてもよい。
【0070】
図1の実施形態では、音制御プロセッサSCPは、様々な種類の信号処理動作を実行するためにヘッドフォンHP内に配置されているが、その例については以下の開示において説明する。また、音制御プロセッサSCPは、ヘッドフォンHPの外部、例えば、モバイルハンドセットまたは電話機に配置された外部デバイス、或いは、ヘッドフォンHPのケーブル内に配置されてもよい。
【0071】
図2は、一般的な適応型ANCシステムのブロック図である。このシステムは、誤差マイクロフォンFB_MICとフィードフォワードマイクロフォンFF_MICとを備え、両者の出力信号は音制御プロセッサSCPに提供される。フィードフォワードマイクロフォンFF_MICで録音された雑音信号は、さらにフィードフォワードフィルタに提供され、雑音対策信号を生成してスピーカSPを介して出力される。誤差マイクロフォンFB_MICでは、スピーカSPから出力される音が周囲雑音と結合し、ANC後の周囲雑音の残りの部分を含む誤差信号として記録される。この誤差信号は、音制御プロセッサSCPによって、フィードフォワードフィルタのフィルタ応答の調整に用いられる。
【0072】
図3は、周囲環境と外耳道ECとの間に音漏れがあることを特徴とするイヤフォン、すなわち「リーキー」タイプのイヤフォンの例を示している。特に、周囲環境と外耳道ECの間には音経路が存在しており、図面では「音漏れ」と表記している。
【0073】
図4は、複数の音経路を伴う、ユーザが装着するヘッドフォンHPの構成例を示す。
図4に示したヘッドフォンHPは、雑音キャンセリング機能付きオーディオシステムの耳に装着可能な再生装置の一例であり、例えば、インイヤヘッドフォンまたはイヤフォン、オンイヤヘッドフォンまたはオーバイヤヘッドフォンなどを含みうる。ヘッドフォンの代わりに、耳に装着可能な再生装置は、携帯電話または類似の装置でもよい。
【0074】
この例のヘッドフォンHPは、ラウドスピーカSPと、フィードバック雑音マイクロフォンFB_MICと、任意選択で、例えばフィードフォワード雑音キャンセリングマイクロフォンとして設計された周囲雑音マイクロフォンFF_MICと、を備える。ヘッドフォンHPの内部処理の詳細は、概要を分かりやすくするためにここでは示さない。
【0075】
図4に示す構成では、複数の音経路が存在しており、それぞれの音経路は、それぞれの音響応答関数や音響伝達関数で表すことができる。例えば、第1の音響伝達関数DFBMは、スピーカSPとフィードバック雑音マイクロフォンFB_MICとの間の音経路を表しており、ドライバ-フィードバック間応答関数と呼んでもよい。第1の音響伝達関数DFBMは、スピーカSP自身の応答を含んでいてもよい。第2の音響伝達関数DEは、スピーカSP自体の応答を潜在的に含む、ヘッドフォンのスピーカSPとスピーカSPにさらされているユーザの鼓膜EDとの間の音響的な音経路を表しており、ドライバ-耳間応答関数と呼んでもよい。第3の音響伝達関数AEは、周囲音源とユーザの外耳道ECを介した鼓膜EDとの間の音響的な音経路を表しており、周囲-耳間応答関数と呼んでもよい。第4の音響伝達関数AFBMは、周囲音源とフィードバック雑音マイクロフォンFB_MICとの間の音響的な音経路を表しており、周囲-フィードバック間応答関数と呼んでもよい。
【0076】
周囲雑音マイクロフォンFF_MICが存在する場合、第5の音響伝達関数AFFMは、周囲音源と周囲雑音マイクロフォンFF_MICとの間の音響的な音経路を表し、周囲-フィードフォワード間応答関数と呼んでもよい。
【0077】
ヘッドフォンHPの応答関数または伝達関数、特にマイクロフォンFB_MICおよびFF_MICとスピーカSPとの間の応答関数または伝達関数は、フィードバックフィルタ関数Bおよびフィードフォワードフィルタ関数Fとともに使用することができ、これらは動作中に雑音キャンセリングフィルタとしてパラメータ化することができる。
【0078】
耳に装着可能な再生装置の一例としてのヘッドフォンHPは、ハイブリッドANCが実行できるように、マイクロフォンFB_MICおよびFF_MICの両方がアクティブまたは有効になっている状態で具現化されてもよいし、フィードバック雑音マイクロフォンFB_MICのみがアクティブであり、周囲雑音マイクロフォンFF_MICが存在しないか、少なくともアクティブではないFB ANC装置として具現化されてもよい。したがって、以下では、周囲雑音マイクロフォンFF_MICを参照する信号または音響伝達関数が使用される場合、このマイクロフォンは存在するものと仮定され、そうでない場合は任意選択であると仮定される。
【0079】
図4では、概要をわかりやすくするために、マイクロフォン信号の処理や信号の送信は省略している。しかし、ANCを実行するためのマイクロフォン信号の処理は、ヘッドフォンやその他の耳に装着可能な再生装置内に配置されたプロセッサ、またはヘッドフォンから外部に配置された専用の処理ユニットに実装されてもよい。このプロセッサまたは処理ユニットは、音制御プロセッサと呼ばれてもよい。処理ユニットが再生装置に組み込まれている場合、再生装置自体が雑音キャンセリング対応のオーディオシステムを形成することができる。処理が外部で行われる場合、外部の装置またはプロセッサは、再生装置とともに雑音キャンセリング対応オーディオシステムを形成してもよい。例えば、携帯電話や携帯オーディオプレーヤのようなモバイル装置で処理が行われ、そこにヘッドフォンが有線または無線で接続されていてもよい。
【0080】
様々な実施形態において、FBまたは誤差マイクロフォンFB_MICは、例えばams出願第EP17208972.4号に詳述されているように、専用のキャビティ内に配置されてもよい。
【0081】
次に、
図5を参照して、雑音キャンセリング対応オーディオシステムの別の実施例を提示する。この実施例では、システムは、スピーカSP、フィードバックまたは誤差マイクロフォンFB_MIC、周囲雑音またはフィードフォワードマイクロフォンFF_MICを備えた再生装置を含む携帯電話MPのようなモバイル装置と、動作中に特にANCおよび/または他の信号処理を実行するための音制御プロセッサSCPと、によって形成される。
【0082】
図示されていないさらなる実装では、例えば
図1または
図4に示されているようなヘッドフォンHPを携帯電話MPに接続することができ、ヘッドフォンのスピーカで再生されるオーディオ信号を生成するために、マイクロフォンFB_MIC,FF_MICからの信号がヘッドフォンから携帯電話MP、特に携帯電話のプロセッサPROCに送信される。例えば、ヘッドフォンが携帯電話に接続されているかどうかに応じて、ANCは携帯電話の内部コンポーネント、すなわちスピーカおよびマイクロフォンで実行されるか、またはヘッドフォンのスピーカおよびマイクロフォンで実行され、それにより、それぞれの場合で異なるフィルタパラメータのセットが使用される。
【0083】
以下では、改良された概念のいくつかの実装を、特定の使用例と併せて説明する。しかしながら、ある実装について説明した詳細は、他の実装の1つ以上にも適用できることが当業者には明らかであろう。
【0084】
一般的に、以下のステップ、
- 前記スピーカSPを介した前記検出信号または前記検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視するステップと、
- 誤差マイクロフォンFB_MICからの誤差信号を記録するステップと、
- 前記誤差信号の処理に基づいて、前記ヘッドフォンまたは他の再生装置HPが、ユーザによって装着されている第1の状態であるか、ユーザによって装着されていない第2の状態であるかを判断するステップと、
は、例えば、音制御プロセッサSCPで実行される。
【0085】
1.イヤクッション付き適応型ヘッドフォン
本開示の一実施形態では、ユーザの外耳道ボリュームに直接音響的に結合される前方のボリュームと、前方のボリュームに面するドライバSPと、ドライバSPの後面を取り囲む後方のボリュームと、を備えるヘッドフォンがある。後方のボリュームには、ドライバの後部から圧力を逃がすための音響抵抗体を伴うベントが設けられている。また、前方のボリュームには、ドライバの前面で圧力を逃がすための音響抵抗体を伴うベントが設けられていてもよい。誤差マイクロフォンFB_MICは、周囲雑音とドライバの前面からの信号を検出するようにドライバの前面に向けて配置され、フィードフォワードマイクロフォンFF_MICは、周囲雑音を検出するが、ドライバSPからは無視できる信号を検出するようにヘッドフォンの後部に向けて配置されている。イヤクッションは、ドライバの前面を取り囲み、前方のボリュームの一部を構成している。
【0086】
通常の操作では、ヘッドフォンはユーザの頭部に装着され、イヤクッションとユーザの頭部との間に完全または部分的なシールが形成され、それによって前方のボリュームと外耳道ボリュームとが少なくとも部分的に音響的に結合される。
【0087】
フィードフォワードマイクロフォンFF_MIC、誤差マイクロフォンFB_MIC、およびドライバSPは、雑音キャンセリングプロセッサとして機能する音制御プロセッサSCPに接続されている。
図2を参照すると、フィードフォワードマイクロフォンFF_MICによって検出された雑音信号は、FFフィルタを経由して最終的にヘッドフォンスピーカSPに送られ、誤差マイクロフォンポイント、ひいては鼓膜基準点(DRP)でFF雑音キャンセリングが発生するような雑音対策信号を生成する。この雑音信号が検出信号として用いられる。誤差マイクロフォンFB_MICからの誤差信号は、音制御プロセッサSCP内の適応エンジンにルーティングされ、誤差マイクロフォンFB_MICでの雑音キャンセリングを最適化するために、FFフィルタの少なくとも1つの特性を変更することによって、スピーカから出力される雑音対策信号を何らかの仕方で変更する。
【0088】
音制御プロセッサSCPは、少なくとも1つの周波数におけるFFフィルタ応答を定期的に監視し、これを音制御プロセッサSCPのメモリに格納されている予め定義された許容フィルタ応答のセットと比較する。FFフィルタ応答が許容可能なフィルタ応答を超えていると判断された場合、オフイヤ状態、すなわち第2の状態がトリガされ、適応エンジンは誤差マイクロフォン信号に応答してFFフィルタを変更することを停止する。例えば、FFフィルタを低リーク設定にする。
【0089】
例えば、FFフィルタは、ドライバ応答の低周波特性の逆変換を表す部分がある。結果として得られたFFフィルタの応答は、3つの低周波、80Hz、100Hz、130Hzで分析することができる。周波数の数や、そこから選択される周波数範囲については、さまざまな選択が可能である。例えば、予め定義された周波数範囲の下限を40Hzから100Hzの間とし、予め定義された周波数範囲の上限を100Hzから800Hzの間とすることができる。
【0090】
したがって、線形回帰によって、このFFフィルタの勾配と利得とを判断することができる。この例では、メモリに記憶された1つの許容可能なフィルタ応答があり、これは、例えば、耳からほとんど外れているとき、つまり、イヤクッションと頭部との間の音漏れが大きいときのドライバ応答の低周波部分の逆変換の線形回帰を表す勾配と利得とのスカラ値である。FFフィルタの線形回帰の勾配が許容される閾値フィルタの勾配よりも大きくなった場合、または利得が許容される閾値フィルタの利得値よりも大きくなった場合、オフイヤ状態がトリガされる。
【0091】
FFフィルタは、次の伝達関数:
【数2】
に近いものであってもよい。
【0092】
ここでAEは、周囲-耳間伝達関数、AFFMは、周囲-FFマイクロフォン間伝達関数、DEは、ドライバ-耳間伝達関数である。
【0093】
ヘッドフォンがオフイヤ状態、すなわち第2の状態にあるとき、音制御プロセッサSCPは、音楽再生やBluetooth接続などの不要な処理を停止し、低消費電力モードに切り替わる。この低消費電力モードは、より低いレートでのクロック供給処理を含んでもよく、より低いレートでマイクロフォンADCにクロック供給することが含まれてもよい。
【0094】
この第2の状態では、音制御プロセッサSCPは、誤差マイクロフォンとFFマイクロフォンからの信号を監視し、音制御プロセッサSCPは、これら2つの信号の位相差、すなわち検出信号と誤差信号とを計算する。
【0095】
位相計算は、2つの信号のFFTの引数を取り、それらを分割し、FFT分割による複数のビンの平均値がいつ閾値を超えて動くか分析することによって行われてもよい。
【0096】
位相検出は、各時間領域信号をフィルタリングすることによって行われ、フィルタは、少なくとも1つの周波数における、1つまたは複数のDFTまたはGoertzelアルゴリズムの実装であってもよい。各周波数におけるこれらの2つのフィルタリングされた信号の位相応答の分割は、各周波数における位相差を与えることができる。例えば、これらの位相差の平均値を閾値と比較することができる。
【0097】
位相検出は、すべて時間領域で行われてもよい。
【0098】
位相差が閾値を超えた場合、イヤフォンはオンイヤ状態、すなわち第1の状態に戻される。FFフィルタは既知の安定した状態にリセットされ、適応が再び有効にされる。即ち、誤差マイクロフォンFB_MICからの誤差信号はFFフィルタに影響を与え続ける。
【0099】
図6を参照すると、ヘッドフォンや再生装置の異なる装着状態における誤差信号と検出信号の位相差を表示した信号図が示されている。例えば、1つの位相差信号は0mmのリークに対応し、別の位相差信号は28mmのリークに対応し、3つ目の位相差信号は、例えば、許容可能な最大リークよりも大きいリークを持つオフイヤ状態に対応する。これらのリークは、カスタマイズされたリークアダプタから得られたものであり、現実的な音響リークの最小値と最大値に相当する。図から分かるように、30Hz以上から400Hz程度までの周波数範囲では、オフイヤ状態での位相差が約180°であるのに対し、他の2つの装着状態では位相差が大きく異なり、とりわけ低くなっている。したがって、例えば、前述の周波数範囲における位相差を、特に位相閾値と比較することによって評価することで、再生装置がオンイヤ状態にあること、またはオンイヤ状態に向かっていることの良好な指標を与えることができる。
【0100】
2.適応型の、音響的に「リーキー」なイヤフォン
別の実施形態では、例えば
図3に示すように、ドライバと後方のボリュームと前方のボリュームとを備えるイヤフォンを採用している。後方のボリュームには、音響抵抗体で減衰される後方ベントがある。また、前方のボリュームには、音響抵抗体で減衰される前方ベントがある。イヤフォンの物理的な形状により、耳に装着したときに、外耳道とイヤフォンの筐体との間で音漏れが生じることがある。この音漏れは、耳の形状やイヤフォンの装着状態によって変化する。FFマイクロフォンFF_MICは、イヤフォンの後面に配置され、周囲雑音を検出するが、ドライバからの有意な信号は検出しない。誤差マイクロフォンFB_MICは、ドライバの信号と周囲雑音の信号とを検出するように、ドライバの前面に近接して配置される。
【0101】
FFマイクロフォンからの雑音信号は、音制御プロセッサSCPによって制御され、FFフィルタに通され、ドライバSPを介して雑音対策信号を出力し、雑音対策信号と周囲雑音との重畳により、少なくとも雑音キャンセリングが行われる。また、誤差マイクロフォンFB_MICからの誤差信号は、シグナルプロセッサに渡され、外耳道壁とイヤフォン本体との間の音漏れに基づいて、雑音対策信号が変化するようにFFフィルタを制御する。本実施形態では、結果として得られるフィルタ応答を少なくとも1つの周波数で分析し、イヤフォンが極めて高い漏れを起こしていることを表す音響応答と比較する。結果のフィルタ応答がこの音響応答を超えると、イヤフォンはオフイヤ状態になる。このオフイヤ状態は、適応を停止して、中程度の音漏れに対するフィルタを設定してもよい。このオフイヤ状態では、両方のマイクロフォンからの信号が少なくとも1つの周波数で再び監視され、位相差が予め定義された閾値を超えると、
図6に関連して第1節で前述したように、イヤフォンはオンイヤ状態に戻される。
【0102】
音声がある場合、オフイヤ検出がなお動作する。ドライバから静かな音楽が再生されている場合、オフイヤ検出がなお実行される。音楽が周囲雑音よりも大幅に大きい場合、以下の第5節に記載されているように、代替のオフイヤ検出メトリックが実行されてもよい。
【0103】
本実施形態では、結果として得られるFFフィルタは、ams特許出願第EP17189001.5号に従って配置することができる。
【0104】
3.非適応型イヤフォン
別の実施形態では、既述のANCヘッドフォンは、適応手段を有さない、すなわちフィードフォワードフィルタの応答に対する定数を特徴としない。FFフィルタは固定されている。この実施形態では、ANC性能の近似値が作られる。ANC性能が期待されるものよりも大幅に悪い場合、再生装置は耳から外れていると仮定する。例えば、誤差マイクロフォンとFFマイクロフォンとのエネルギーレベルを分割することによってANC性能を近似する。
【0105】
その後、ヘッドフォンはオフイヤ状態になる。オンイヤ状態は、例えば
図6に関連して第1節で説明したように、2つのマイクロフォン間の位相差を監視することにより、適応型ヘッドフォンと全く同じ方法または少なくとも同様の方法でトリガすることができる。
【0106】
音声が存在する場合、音声活動検出器は、誤検出を避けるためにオフイヤ検出アルゴリズムを一時停止することができる。音楽が存在する場合、ドライバ応答によってオフセットされた音楽のエネルギーレベルが、誤差マイクロフォンFB_MICにおける信号のエネルギーレベルから差し引かれてもよい。
【0107】
4.ハイブリッドANC搭載ヘッドフォンまたはイヤフォン
本実施形態では、ヘッドフォンは、これまでの実施形態で説明したようなものであってもよいが、FF ANCに加えてFB ANCも備える。FB ANCでは、FBマイクロフォンFB_MICは、適応性があってもなくてもよいFBフィルタを介してドライバに接続される。
【0108】
前述の理由の検出は、ハイブリッドANCを備えたこのような実施形態にも当てはまる。
【0109】
5.音楽によってトリガされる
別の実施形態では、雑音キャンセリング機能を備えていてもいなくても、イヤフォンと外耳道との間の音漏れが変化することによって変化するドライバSPの応答に応じて、フィルタを適応させる。このフィルタは、フィードバック雑音キャンセリングシステムによって減衰される音楽を補償するための音楽補償フィルタの全部または一部として使用してもよいし、漏れによって変化するドライバ応答を補償するために使用してもよい。
【0110】
図7を参照すると、このフィルタの配置が示されている。この場合、このフィルタは、音響的な「ドライバ-誤差マイクロフォン間」伝達関数に合致するように適合される。この実施形態では、ヘッドフォンは、少なくとも誤差マイクロフォンFB_MICを備えており、フィードフォワードマイクロフォンFF_MICの存在も排除されない。ここで、既知の識別信号WIS(例えば、音楽信号やその他のペイロードオーディオ信号)が、基準としてドライバSPから出力される。また、識別信号WISは、適応フィルタでフィルタリングされる。
【0111】
オフイヤの場合は、前述のように、適応したフィルタを監視し分析することによってトリガしてもよい。特に、適応型フィードフォワードフィルタで行われるのと同様の評価が、適応された調整可能なフィルタで行われ、例えば、利得および/または勾配をそれぞれ関連する閾値と比較することによって行われる。
【0112】
この場合、誤差マイクロフォンFB_MICからの誤差信号と、スピーカSPを駆動する既知の識別信号WISとの間の位相差を監視することにより、オンイヤの場合をトリガすることができる。
【0113】
6.静かな周囲雑音かつ音楽なし
本実施形態では、FFマイクロフォンとFBマイクロフォンを備えた適応型または非適応型の雑音キャンセリングイヤフォンが提示される。この場合、マイクロフォンからの任意の有用な信号が、マイクロフォンまたは他の電子的手段からの電子雑音によって部分的にマスクされるように、周囲雑音が極めて静かである可能性がある。つまり、マイクロフォンからの信号には、有用な周囲雑音とランダムな電子雑音との両方がかなりの部分含まれている。さらに、デバイスからは音楽が再生されていないか、信号レベルの低い音楽しか再生されていない。この場合は、例えば、イヤフォンを耳に装着しているが、周囲雑音が無視できて、ドライバから有用な音が再生されていない状態を表している。
【0114】
この場合、マイクロフォンが周囲雑音や音楽再生から使用可能な信号を検出できないため、先に詳述したオンイヤ/オフイヤ検出方法は確実に実行することができない。
【0115】
この場合、上述の第5節と同様の手法を用いることができる。例えば、FFマイクロフォンとドライバ間のフィルタを変更して、FBマイクロフォンで若干の雑音ブーストが発生するようにして、識別信号WISを生成する。
図8を参照すると、識別信号WISを生成するために、FF ANCフィルタを変更する代わりに、FFマイクロフォンFF_MICの雑音信号に専用のブーストフィルタを適用することができる。この識別信号WISは、上述したように、音響的な「ドライバ-誤差マイクロフォン間伝達関数」に合致するように調整フィルタを調整するために使用することができる。
【0116】
このプロセスでは、FBマイクロフォンはドライバからの有用な信号を検出することができるが、FFマイクロフォンからのフィルタリングされた雑音信号WISにはまだ静かな周囲雑音がかなりの部分含まれているため、ドライバからの信号は静かな周囲雑音とほぼコヒーレントであり、ドライバからの無相関の信号を再生するよりもユーザには知覚されにくくなる。
【0117】
この場合、ユーザにはほとんど検出できない有用な識別信号WISがドライバを介して再生され、第5節のように使用されてもよく、既知の識別信号WISがドライバから再生され、イヤフォンが耳に装着されているかいないかを検出する。
【0118】
7.モバイルハンドセット
別の実施形態では、例えば
図5に示すように、FFマイクロフォンFF_MICと誤差マイクロフォンFB_MICとを備えたモバイルハンドセットを実装する。ハンドセットが耳に配置されると、音漏れを伴う部分的に閉じた空気ボリュームが錐体腔内に存在し、いくつかのANCが行われる可能性がある。このような環境では、使用するたびに音漏れの状態が大きく変化するため、ANCには何らかの形態の適応策が必要となる。オンイヤ/オフイヤ検出は、例えば、節1または2に従って行うことができる。
【0119】
適用可能である場合、以上の節で説明された、これらの実施形態のあらゆる組み合わせが可能である。例えば、適応型イヤフォンは、FFフィルタと2つのマイクロフォンの位相差とに基づいてオフイヤ検出を使用してもよいが、周囲雑音レベルが静かな場合や、周囲雑音に対する音楽の割合が高い場合、音楽によってトリガされるように切り替えてもよい。
【0120】
以下の文章では、本開示のさらなる態様が規定されている。個々の態様は、他の態様の特徴への参照を容易にするために列挙されている。
【0121】
1.スピーカとスピーカから出力される音を感知または優位に感知する誤差マイクロフォンとを備える耳に装着可能な再生装置のためのオーディオシステムであって、
- スピーカSPを介した検出信号または検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視し、
- 誤差マイクロフォンからの誤差信号を記録し、
- 誤差信号の処理に基づいて、再生装置がユーザに装着されている第1の状態であるか、または再生装置がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断する
ように構成される音制御プロセッサを備える、オーディオシステムである。
【0122】
2.音制御プロセッサは、検出信号と誤差信号との間の位相差の評価に基づいて、第1の状態を判断するように構成される、態様1に記載のオーディオシステムである。
【0123】
3.音制御プロセッサは、検出信号と誤差信号との間の位相差が1つ以上の予め定義された周波数において位相閾値を超えた場合、第1の状態と判断するように構成される、態様2に記載のオーディオシステムである。
【0124】
4.位相差の評価は、周波数領域で行われる、態様2または3に記載のオーディオシステムである。
【0125】
5.雑音キャンセリングを行うように構成される、態様1から4の1つに記載のオーディオシステムである。
【0126】
6.態様5に記載のオーディオシステムであって、再生装置は、周囲音を優位に感知するフィードフォワードマイクロフォンをさらに備え、音制御プロセッサは、
- フィードフォワードマイクロフォンからの雑音信号を記録し、雑音信号を検出信号として使用し
- 検出信号をフィードフォワードフィルタでフィルタリングし、
- スピーカを介したフィルタリングされた検出信号の再生を制御する
ようにさらに構成される、態様5に記載のオーディオシステムである。
【0127】
7.音制御プロセッサは、誤差信号と雑音信号または検出信号との関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、第1の状態を判断するように構成される、態様6に記載のオーディオシステムである。
【0128】
8.音制御プロセッサは、誤差信号と雑音信号または検出信号との関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、第2の状態を判断するように構成される、態様6または7に記載のオーディオシステムである。
【0129】
9.誤差マイクロフォンおよび/またはフィードフォワードマイクロフォンで音声信号が録音されているかどうかを判断する音声活動検出器をさらに備え、音制御プロセッサは、音声信号が録音されていると判断された場合、第1の状態および/または第2の状態の判断を一時停止する、態様7または8に記載のオーディオシステムである。
【0130】
10.音制御プロセッサは、誤差信号と雑音信号または検出信号との間のエネルギー比を判断することにより、雑音キャンセリングの性能を評価するように構成される、態様7から9の1つに記載のオーディオシステムである。
【0131】
11.音制御プロセッサは、スピーカを介して音楽信号が追加再生される場合、エネルギー比を判断する際に、音楽信号のエネルギーレベルを考慮するように構成される、態様10に記載のオーディオシステムである。
【0132】
12.フィードフォワードフィルタのフィルタ応答は一定である、および/または、少なくとも再生装置の状態を判断する間、音制御プロセッサによって一定に保たれる、態様7から11の1つに記載のオーディオシステムである。
【0133】
13.音制御プロセッサは、
- 誤差信号に基づいて、フィードフォワードフィルタのフィルタ応答を調整し、
- 少なくとも1つの予め定められた周波数におけるフィードフォワードフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断するように構成される、
態様6に記載のオーディオシステムである。
【0134】
14.音制御プロセッサは、少なくとも1つの予め定められた周波数におけるフィードフォワードフィルタのフィルタ応答が応答閾値を超えた場合、第2の状態と判断するように構成される、態様13に記載のオーディオシステムである。
【0135】
15.音制御プロセッサは、予め定義された周波数範囲におけるフィードフォワードフィルタのフィルタ応答の、少なくともフィルタ勾配およびフィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、フィルタ勾配および/またはフィルタ利得を評価することによって、第2の状態を判断するように構成される、態様13または14に記載のオーディオシステムである。
【0136】
16.音制御プロセッサは、以下の、
- フィルタ勾配が閾値勾配値を超えることと、
- フィルタ利得が閾値利得値を超えることと、
の少なくとも1つが当てはまる場合に、第2の状態と判断するように構成される、態様15に記載のオーディオシステムである。
【0137】
17.予め定められた周波数範囲の下限値は、40Hz以上100Hz以下であり、予め定められた周波数範囲の上限値は、100Hz以上800Hz以下である、態様15または16に記載のオーディオシステムである。
【0138】
18.フィードフォワードマイクロフォンは、スピーカから出力される音の無視できる部分のみを感知する、態様6から17の1つに記載のオーディオシステムである。
【0139】
19.検出信号は、識別信号であり、音制御プロセッサは、
- スピーカを介した識別信号の再生を制御および/または監視し、
- 識別信号を調整可能なフィルタでフィルタリングし、
- フィルタリングされた識別信号と誤差信号との間の差に基づいて、特に、調整可能なフィルタが、スピーカと誤差マイクロフォンとの間の音響伝達関数を近似するように、調整可能なフィルタを調整し、
- 少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における調整可能なフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断する
ように構成される、態様1から18の1つに記載のオーディオシステムである。
【0140】
20.識別信号は、
- 音楽信号、
- ペイロードオーディオ信号、
- 周囲音を優位に感知するマイクロフォンから記録される雑音信号をフィルタリングしたもの、
のいずれか、または、その組み合わせである、態様19に記載のオーディオシステムである。
【0141】
21.音制御プロセッサは、少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における調整可能なフィルタのフィルタ応答が識別応答閾値を超えた場合に、第2の状態と判断するように構成される、態様19または20に記載のオーディオシステムである。
【0142】
22.音制御プロセッサは、さらなる予め定められた周波数範囲における調整可能なフィルタのフィルタ応答の、少なくとも識別フィルタ勾配および識別フィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、識別フィルタ勾配および/または識別フィルタ利得を評価することによって、第2の状態を判断するように構成される、態様19から21の1つに記載のオーディオシステムである。
【0143】
23.音制御プロセッサは、
- 識別フィルタの勾配が識別閾値勾配値を超えていることと、
- 識別フィルタの利得が識別閾値利得値を超えていることと、
の少なくとも1つが当てはまる場合に、第2の状態と判断するように構成される、態様22に記載のオーディオシステムである。
【0144】
24.さらなる予め定められた周波数範囲の下限値は、40Hz以上100Hz以下であり、さらなる予め定められた周波数範囲の上限値は、100Hz以上800Hz以下である、態様22または23に記載のオーディオシステムである。
【0145】
25.音制御プロセッサは、第2の状態と判断された場合、オーディオシステムを低電力モードの動作に制御し、第1の状態と判断された場合、オーディオシステムを通常モードの動作に制御するように構成される、態様1から24のいずれか1つに記載のオーディオシステムである。
【0146】
26.音制御プロセッサは、再生装置が第2の状態である場合にのみ、再生装置が第1の状態であるか否かを判断し、再生装置が第1の状態である場合にのみ、再生装置が第2の状態であるか否かを判断するように構成される、態様1から25のいずれか1つに記載のオーディオシステムである。
【0147】
27.再生装置を含む、態様1から26の1つに記載のオーディオシステムである。
【0148】
28.音制御プロセッサは、再生装置の筐体に含まれる、態様27に記載のオーディオシステムである。
【0149】
29.再生装置は、ヘッドフォンまたはイヤフォンである、態様1から28の1つに記載のオーディオシステムである。
【0150】
30.ヘッドフォンまたはイヤフォンは、ヘッドフォンまたはイヤフォンの本体とユーザの頭部との間の音漏れが可変であるように装着されるように設計される、態様29に記載のオーディオシステムである。
【0151】
31.再生装置は、携帯電話である、態様1から27の1つに記載のオーディオシステムである。
【0152】
32.スピーカとスピーカから出力される音を感知する誤差マイクロフォンとを備える耳に装着可能な再生装置のための信号処理方法であって、
- スピーカを介した検出信号または検出信号をフィルタリングしたものの再生を制御および/または監視するステップと、
- 誤差マイクロフォンからの誤差信号を記録するステップと、
- 誤差信号の処理に基づいて、再生装置がユーザに装着されている第1の状態であるか、または再生装置がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断するステップと、
を備える方法である。
【0153】
33.第1の状態は、検出信号と誤差信号との間の位相差の評価に基づいて判断される、態様32に記載の方法である。
【0154】
34.検出信号と誤差信号との間の位相差が、1つ以上の予め定められた周波数において位相閾値を超えた場合、第1の状態と判断される、態様33に記載の方法である。
【0155】
35.位相差の評価は、周波数領域で行われる、態様33または34に記載の方法である。
【0156】
36.雑音キャンセリングを行うことをさらに含む、態様32から35の1つに記載の方法である。
【0157】
37.再生装置が、周囲音を優位に感知するフィードフォワードマイクロフォンをさらに備え、
- フィードフォワードマイクロフォンからの雑音信号を記録し、雑音信号を検出信号として使用するステップと、
- 検出信号をフィードフォワードフィルタでフィルタリングするステップと、
- スピーカを介したフィルタリングされた検出信号の再生を制御するステップと、
をさらに備える、態様36に記載の方法である。
【0158】
38.誤差信号と雑音信号または検出信号との関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、第1の状態および/または第2の状態を判断するステップをさらに含む、態様37に記載の方法である。
【0159】
39.
- 誤差信号に基づいて、フィードフォワードフィルタのフィルタ応答を調整するステップと、
- 少なくとも1つの予め定められた周波数におけるフィードフォワードフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断するステップと、
をさらに含む、態様37に記載の方法である。
【0160】
40.検出信号は、識別信号であり、
- スピーカを介した識別信号の再生を制御および/または監視するステップと、
- 識別信号を調整可能なフィルタでフィルタリングするステップと、
- フィルタリングされた識別信号と誤差信号との間の差に基づいて、特に、調整可能なフィルタが、スピーカと誤差マイクロフォンとの間の音響伝達関数を近似するように、調整可能なフィルタを調整するステップと、
- 少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における調整可能なフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断するステップと、
を備える、態様32から39の1つに記載の方法である。
【符号の説明】
【0161】
HP ヘッドフォン
SP スピーカ
FB_MIC 誤差またはフィードバックマイクロフォン
FF_MIC フィードフォワードマイクロフォン
EC 外耳道
ED 鼓膜
F フィードフォワードフィルタ関数
DFBM ドライバ-フィードバック間応答関数
DE ドライバ-耳間応答関数
AE 周囲-耳間応答関数
AFBM 周囲-フィードバック間応答関数
AFFM 周囲-フィードフォワード応答関数
ECM 外耳道マイクロフォン
MP 携帯電話
【手続補正書】
【提出日】2021-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピー
カと周囲音を優位に感知するフィードフォワードマイクロフォ
ンと前記スピー
カから出力される音を感知する誤差マイクロフォ
ンとを備える耳に装着可能な再生装
置のためのオーディオシステムであって、前記オーディオシステムは、雑音キャンセリングを実行するように構成され、
- 前記フィードフォワードマイクロフォ
ンからの雑音信号を記録し、前記雑音信号を検出信号として使用し、
- 前記検出信号をフィードフォワードフィルタでフィルタリングし、
- 前記スピー
カを介して、フィルタリングされた前記検出信号の再生を制御し、
- 前記誤差マイクロフォ
ンからの誤差信号を記録し、
- 前記誤差信号の処理に基づいて、前記再生装
置がユーザに装着されている第1の状態であるか、または前記再生装
置がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断する
ように構成される音制御プロセッサを備える、オーディオシステム。
【請求項2】
前記音制御プロセッサは、前記誤差信号および前記検出信号の関数としての雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、前記第1の状態および/または前記第2の状態を判断するように構成される、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記音制御プロセッサは、前記誤差信号と前記雑音信号または前記検出信号との関数としての前記雑音キャンセリングの性能の評価に基づいて、前記第2の状態を判断するように構成される、請求項1または2に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記誤差マイクロフォ
ンおよび/または前記フィードフォワードマイクロフォ
ンで音声信号が録音されているかどうかを判断する音声活動検出器をさらに備え、前記音制御プロセッサは、前記音声信号が録音されていると判断された場合、前記第1の状態および/または前記第2の状態の判断を一時停止する、請求項2または3に記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記音制御プロセッサは、前記誤差信号と前記雑音信号または前記検出信号との間のエネルギー比を判断することにより、前記雑音キャンセリングの性能を評価するように構成される、請求項2から4のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記音制御プロセッサは、前記スピー
カを介して音楽信号が追加再生される場合、前記エネルギー比を判断する際に、前記音楽信号のエネルギーレベルを考慮するように構成される、請求項5に記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記フィードフォワードフィルタのフィルタ応答は一定である、および/または、少なくとも前記再生装置の状態を判断する間、前記音制御プロセッサによって一定に保たれる、請求項2から6のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項8】
前記音制御プロセッサは、
- 前記誤差信号に基づいて、前記フィードフォワードフィルタのフィルタ応答を調整し、
- 少なくとも1つの予め定められた周波数における前記フィードフォワードフィルタの前記フィルタ応答の評価に基づいて、第2の状態を判断する
ように構成される、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項9】
前記音制御プロセッサは、前記少なくとも1つの予め定められた周波数における前記フィードフォワードフィルタのフィルタ応答が応答閾値を超えた場合、前記第2の状態と判断するように構成される、請求項8に記載のオーディオシステム。
【請求項10】
前記音制御プロセッサは、予め定義された周波数範囲における前記フィードフォワードフィルタの前記フィルタ応答の、少なくともフィルタ勾配およびフィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、前記フィルタ勾配および/または前記フィルタ利得を評価することによって、前記第2の状態と判断するように構成される、請求項8または9に記載のオーディオシステム。
【請求項11】
前記音制御プロセッサは、以下の、
- 前記フィルタ勾配が閾値勾配値を超えることと、
- 前記フィルタ利得が閾値利得値を超えることと、
の少なくとも1つが当てはまる場合に、前記第2の状態を判断するように構成される、請求項10に記載のオーディオシステム。
【請求項12】
前記音制御プロセッサは、前記検出信号と前記誤差信号との間の位相差の評価に基づいて、前記第1の状態を判断するように構成される、請求項1から
11のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項13】
前記音制御プロセッサは、前記検出信号と前記誤差信号との間の位相差が、1つ以上の予め定義された周波数において位相閾値を超えた場合、前記第1の状態と判断するように構成される、請求項
12に記載のオーディオシステム。
【請求項14】
前記検出信号は、識別信号であり、前記音制御プロセッサは、
- スピー
カを介して前記識別信号の再生を制御および/または監視し、
- 前記識別信号を調整可能なフィルタでフィルタリングし、
- フィルタリングされた前記識別信号と前記誤差信号との間の差に基づいて、特に、前記調整可能なフィルタが、スピー
カと誤差マイクロフォ
ンとの間の音響伝達関数を近似するように、前記調整可能なフィルタを調整し、
- 少なくとも1つのさらなる予め定められた周波数における前記調整可能なフィルタのフィルタ応答の評価に基づいて、前記第2の状態を判断する
ように構成される、請求項1から
13のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項15】
前記識別信号は、
- 音楽信号、
- ペイロードオーディオ信号、
- 周囲音を優位に感知するマイクロフォ
ンから記録される雑音信号をフィルタリングしたもの、
のいずれか、または、その組み合わせである、請求項
14に記載のオーディオシステム。
【請求項16】
前記音制御プロセッサは、さらなる予め定められた周波数範囲における前記調整可能なフィルタのフィルタ応答の、少なくとも識別フィルタ勾配および識別フィルタ利得によって定義される線形回帰を判断し、前記識別フィルタ勾配および/または前記識別フィルタ利得を評価することによって、前記第2の状態を判断するように構成される、請求項
14または
15に記載のオーディオシステム。
【請求項17】
前記音制御プロセッサは、前記第2の状態と判断された場合、前記オーディオシステムを低電力モードの動作に制御し、前記第1の状態と判断された場合、前記オーディオシステムを通常モードの動作に制御するように構成される、請求項1から
16のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項18】
前記音制御プロセッサは、前記再生装
置が前記第2の状態である場合にのみ、前記再生装
置が前記第1の状態であるか否かを判断し、前記再生装
置が前記第1の状態である場合にのみ、前記再生装
置が前記第2の状態であるか否かを判断するように構成される、請求項1から
17のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項19】
前記再生装置は、ヘッドフォンまたはイヤフォンまたは携帯電話である、請求項1から
18のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項20】
スピー
カと周囲音を優位に感知するフィードフォワードマイクロフォンと前記スピー
カから出力される音を感知する誤差マイクロフォ
ンとを備える耳に装着可能な再生装
置のための信号処理方法であって、
- 前記フィードフォワードマイクロフォンからの雑音信号を記録し、前記雑音信号を検出信号として使用するステップと、
- 前記検出信号をフィードフォワードフィルタでフィルタリングするステップと、
- スピー
カを介した
フィルタリングされた前記検出信
号の再生を制
御するステップと、
- 前記誤差マイクロフォ
ンからの誤差信号を記録するステップと、
- 前記雑音信号と前記誤差信号との少なくとも1つに基づいて、雑音キャンセリングを行うステップと、
- 前記誤差信号の処理に基づいて、前記再生装
置がユーザに装着されている第1の状態であるか、または前記再生装
置がユーザに装着されていない第2の状態であるかを判断するステップと、
を備える方法。
【国際調査報告】