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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】C9樹脂の接触水素化方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/04 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
C08F8/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518761
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2020086585
(87)【国際公開番号】W WO2021169016
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010128078.7
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512314075
【氏名又は名称】▲寧▼波工程学院
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】胡 敏杰
(72)【発明者】
【氏名】黄 輝
(72)【発明者】
【氏名】徐 衛紅
(72)【発明者】
【氏名】李 穎
(72)【発明者】
【氏名】張 皓荐
(72)【発明者】
【氏名】肖 勲文
(72)【発明者】
【氏名】王 斌
(72)【発明者】
【氏名】房 江華
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA15P
4J100CA03
4J100HA04
4J100HB02
4J100HB13
4J100HB16
4J100HE41
4J100JA01
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れて、水素ガスを導入して還元し、2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する、ことを特徴とするC9樹脂の接触水素化方法に関する。この発明では、固定床の前段及び後段に、同一の触媒反応条件下で反応可能な異なる触媒を入れており、2種の異なる触媒が果たす作用の重点は異なるが、両者は同一の条件下で活性を発揮することができ、かつ相補的な作用を有するので、2種類の触媒の相乗的な作用によって、良好な触媒反応効果が得られると共に、生産プロセスが簡略化され、生産コストが低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、水素ガスを導入して還元し、
2)前処理後のC9樹脂を前記固定床内で接触水素化する、
ことを特徴とするC9樹脂の接触水素化方法。
【請求項2】
前記Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、ケイ酸ナトリウム飽和溶液を5~7mol/Lの硝酸でpH1~2に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.1~1:0.5、Zr:Yのモル比が1:0.05~1:0.3である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの水溶液を入れて、調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量をケイ酸ナトリウムの重量の5~10%にし、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9~10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を100~150℃で3~5時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において500~700℃で3~5時間焼成するステップを含み、
前記Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、ケイ酸ナトリウム飽和溶液を5~7mol/Lの硝酸でpH1~2に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.03~1:0.1、Ni:Gdのモル比が1:0.01~1:0.08である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの水溶液を入れて、調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量をケイ酸ナトリウムの重量の5~10%にし、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9~10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を100~150℃で3~5時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において500~700℃で3~5時間焼成するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のC9樹脂の接触水素化方法。
【請求項3】
前記Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒及びNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の水素ガス還元条件は、高純度の水素ガスを導入して、還元温度350~500℃、還元時間5~10時間で還元することである、
ことを特徴とする請求項1に記載のC9樹脂の接触水素化方法。
【請求項4】
前記接触水素化の条件は、反応温度が250~450℃、反応圧力が10~25MPa、体積空間速度が0.1~1.0h-1、水素とC9樹脂の体積比が400:1~900:1である、
ことを特徴とする請求項1に記載のC9樹脂の接触水素化方法。
【請求項5】
前記C9樹脂の前処理の条件は、シクロヘキサン又はエチルシクロヘキサンを用いて溶解度5~20wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土又は珪藻土の濾過カラムに通すことである、
ことを特徴とする請求項1に記載のC9樹脂の接触水素化方法。
【請求項6】
前記Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒及びNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒は、表面積が90~150m/gであり、50~100nmの孔径が10~20%を占める、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のC9樹脂の接触水素化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油樹脂の接触水素化に関し、特に、C9樹脂の接触水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C9樹脂は、分解によりエチレンを生成する際に得られる副生成物である。C9樹脂の接触水素化により、樹脂中の二重結合及び一部のベンゼン環が飽和し、樹脂の重合過程で残留したハロゲン元素が脱離されるため、樹脂の色度、光熱安定性、酸化安定性及び耐紫外線性を改善し、製品品質を向上させ、用途を広げることができる。接着剤やシーリング剤の用途の発展に伴い、特に透明感圧テープ、屋外用シーリング剤、使い捨ての衛生用品、医療用テープ、トラフィックペイント、ポリオレフィン改質剤への使用には、色味が浅く、臭気がなく、安定性がよい石油樹脂が求められており、そのひとつにC9樹脂がある。このため、水素化C9樹脂に対する市場の需要は急速に増加しており、C9樹脂の接触水素化技術の発展も進んでいるが、C9樹脂の水素化後の製品の品質を左右する鍵は、触媒の選択にある。
【0003】
C9樹脂は、原料成分が複雑である(通常、発色基、ゲル、S、Cl等の不純物が多い)。樹脂の水素化触媒は主に貴金属と非貴金属の2種類の触媒に分けられる。貴金属触媒は主に、パラジウム系及びパラジウム-白金系触媒であり、これらの系の触媒は活性が高く、開始温度が低く、歩留まりが高く、品質が良いという利点があるが、硫黄等の被毒物質に対して敏感であり、非常に被毒、失活しやすいという欠点がある。非貴金属触媒は主に、珪藻土又はアルミナ-珪藻土に担持されたニッケル系触媒、ニッケル-タングステン系又は硫化ニッケル-モリブデン系触媒であり、このタイプの触媒は高い硫黄耐性を有するが、これらの触媒の欠点は、触媒活性が高いこと、製品の臭素価が依然と高いこと、水素化分解が顕著なこと、製品の樹脂の収率が80%程度しかないこと、軟化点が120℃から90℃に低下すること、触媒寿命が短いことである。このため、従来技術では、異なる触媒を採用し、C9樹脂を多段で接触水素化していた。
【0004】
中国特許CN102924659Aには、一段目の触媒が、主に原料樹脂中の硫黄を除去するためのNi/Alであり、二段目の触媒が、主に水素化脱色処理のための貴金属Pt-Pd/Al水素化触媒である、二段固定床による樹脂の水素添加方法が開示されている。これにおいて、一段目の水素化脱硫の水素化反応圧力は、2.0~6.0MPa、反応温度は250~350℃、液時空間速度は1~5h-1であり、二段目の水素化脱色の水素化反応圧力は6.0~12.0MPa、反応温度は250~350℃、液時空間速度は1~5h-1であって、固定床の高圧接触水素化処理が採用されている。この方法は、二段触媒の利点を十分に活かして、貴金属触媒の寿命を向上させている。しかし、欠点として、触媒活性の点で依然改良の余地があること、Alを担体としているため、触媒の担体への分散が不均一になって触媒反応効果が劣ること、二段の触媒が異なる加圧条件を採用しているため、同一の固定床で完了できず、生産効率が低く、かつ実動過程では圧力干渉があって、最終的なC9樹脂の品質に影響すること、が挙げられる。
【0005】
以上を総括すると、現在のところ、C9樹脂の水素化触媒には、担体に対する触媒の分散が不均一で、触媒反応効果が劣る等の問題がある。よって、触媒効率が高く、かつプロセスが簡単なC9樹脂の接触水素化方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術の現状に対して、色度がよく、臭素価が低く、プロセスが簡単なC9樹脂の接触水素化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が上述の技術的課題を解決するために採用した手段は、以下の通りである。
【0008】
本発明は、1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、水素ガスを導入して還元し、2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する、ことを特徴とするC9樹脂の接触水素化方法である。
【0009】
好ましくは、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、ケイ酸ナトリウム飽和溶液を5~7mol/Lの硝酸でpH1~2に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.1~1:0.5、Zr:Yのモル比が1:0.05~1:0.3である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの水溶液を入れて、調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量をケイ酸ナトリウムの重量の5~10%にし、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9~10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を100~150℃で3~5時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において500~700℃で3~5時間焼成するステップを含み、
Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、ケイ酸ナトリウム飽和溶液を5~7mol/Lの硝酸でpH1~2に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.03~1:0.1、Ni:Gdのモル比が1:0.01~1:0.08である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの水溶液を入れて、調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量をケイ酸ナトリウムの重量の5~10%にし、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9~10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を100~150℃で3~5時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において500~700℃で3~5時間焼成するステップを含む。
【0010】
好ましくは、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒及びNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の水素ガス還元条件は、高純度の水素ガスを導入して、還元温度350~500℃、還元時間5~10時間で還元することである。
【0011】
好ましくは、接触水素化の条件は、反応温度が250~450℃、反応圧力が10~25MPa、体積空間速度が0.1~1.0h-1、水素とC9樹脂の体積比が400:1~900:1である。
【0012】
好ましくは、C9樹脂の前処理の条件は、シクロヘキサン又はエチルシクロヘキサンを用いて溶解度5~20wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土又は珪藻土の濾過カラムに通すことである。
【0013】
好ましくは、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒及びNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒は、表面積が90~150m/gであり、50~100nmの孔径が10~20%を占める。
【発明の効果】
【0014】
従来技術と比較して、本発明の利点は以下の通りである。
【0015】
1)固定床の前段及び後段に、同一の触媒反応条件下で反応可能な異なる触媒を入れている。Zr-Mo-Y/シリカゲル触媒は、C9樹脂中の硫黄とハロゲン元素の大部分を脱離することができ、一定の臭素除去効果も有している。一方、Ni-Nd-Gd/シリカゲル触媒は、高度水素添加を主な作用とし、また、他のヘテロ原子を脱離する作用もあるので、C9樹脂中に残留する硫黄と窒素を引き続き除去することができる。2種類の異なる触媒が果たす作用の重点は異なるが、両者は同一の条件下で活性を発揮することができ、かつ相補的な作用を有するので、2種類の触媒の相乗的な作用によって、良好な触媒反応効果が得られると共に、生産プロセスが簡略化され、生産コストが低減される。
【0016】
2)Zr-Mo-Y/シリカゲル触媒及びNi-Nd-Gd/シリカゲル触媒を沈殿法により作製することで、金属触媒をシリカゲルの表面に均一に分散させることができる。共沈触媒の表面積は90~150m/gであり、50~100nmの孔径が10~20%を占め、均一に分散した金属触媒がC9樹脂と十分に接触するため、触媒の使用量が減少すると共に、触媒反応効率が向上する。
【0017】
3)Zr-Mo-Y/シリカゲル触媒とNi-Nd-Gd/シリカゲル触媒の相乗作用により、C9樹脂中の臭素価を32.5gBr/100gから6.0gBr/100g以下に下げ、ガードナー色数を6.0以下に抑えることができる。これは、触媒がC9樹脂の接触水素化に有効であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1のC9樹脂の接触水素化前の赤外スペクトルである。
図2】本発明の実施例1のC9樹脂の接触水素化後の赤外スペクトルである。
図3】本発明の実施例2のC9樹脂の接触水素化前の赤外スペクトルである。
図4】本発明の実施例2のC9樹脂の接触水素化後の赤外スペクトルである。
図5】本発明の実施例3のC9樹脂の接触水素化前の赤外スペクトルである。
図6】本発明の実施例3のC9樹脂の接触水素化後の赤外スペクトルである。
図7】本発明の実施例4のC9樹脂の接触水素化前の赤外スペクトルである。
図8】本発明の実施例4のC9樹脂の接触水素化後の赤外スペクトルである。
図9】本発明の実施例5のC9樹脂の接触水素化前の赤外スペクトルである。
図10】本発明の実施例5のC9樹脂の接触水素化後の赤外スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳述する。
【実施例1】
【0020】
C9樹脂の接触水素化方法は、以下のステップ1及びステップ2を含む。
【0021】
ステップ1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床内に99.999%の高純度の水素ガスを導入して、還元温度350℃、還元時間10時間で還元する。
【0022】
ここで、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.1、Zr:Yのモル比が1:0.3である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の5%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において500℃で3時間焼成する。
【0023】
ここで、Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH2に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.1、Ni:Gdのモル比が1:0.01である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の10%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において700℃で5時間焼成する。
【0024】
ステップ2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する。
【0025】
シクロヘキサンを用いて溶解度5wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土の濾過カラムに通し、不溶性のゲル、アスファルテン及び少量の遊離重金属を白土に吸着させる。そして、前処理後のC9樹脂溶液を接触水素化する。
【0026】
接触水素化の条件は、反応温度が450℃、反応圧力が10MPa、体積空間速度が0.1h-1、水素とC9樹脂との体積比が400:1である。
【0027】
図2からわかるように、3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークは、図1中の3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークよりも著しく小さい。また、C9樹脂の臭素価は、34gBr/100gから3.2gBr/100gに低下し、ガードナー色数は3.2である。これは、触媒がC9樹脂の接触水素化に有効であることを示している。
【実施例2】
【0028】
C9樹脂の接触水素化方法は、以下のステップ1及びステップ2を含む。
【0029】
ステップ1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床内に99.999%の高純度の水素ガスを導入して、還元温度500℃、還元時間5時間で還元するステップを含む。
【0030】
ここで、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH2に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.5、Zr:Yのモル比が1:0.05である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の10%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において700℃で5時間焼成する。
【0031】
ここで、Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.03、Ni:Gdのモル比が1:0.08である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の5%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において500℃で3時間焼成する。
【0032】
ステップ2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する。
【0033】
エチルシクロヘキサンを用いて溶解度20wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土の濾過カラムに通し、不溶性のゲル、アスファルテン及び少量の遊離重金属を白土に吸着させる。そして前処理後のC9樹脂溶液を接触水素化する。
【0034】
接触水素化の条件は、反応温度が250℃、反応圧力が25MPa、体積空間速度が1.0h-1、水素とC9樹脂との体積比が900:1である。
【0035】
図4からわかるように、3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークは、図3中の3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークよりも著しく小さい。また、C9樹脂の臭素価は34gBr/100gから5.3gBr/100gに低下し、ガードナー色数は5.9である。これは、触媒がC9樹脂の接触水素化に有効であることを示している。
【実施例3】
【0036】
C9樹脂の接触水素化方法は、以下のステップ1及びステップ2を含む。
【0037】
ステップ1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床内に99.999%の高純度の水素ガスを導入して、還元温度400℃、還元時間7時間で還元する。
【0038】
ここで、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1.5に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.2、Zr:Yのモル比が1:0.1である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の7%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9.5に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において600℃で4時間焼成する。
【0039】
ここで、Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1.5に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.06、Ni:Gdのモル比が1:0.05である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の6%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9.7に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において550℃で4時間焼成する。
【0040】
ステップ2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する。
【0041】
シクロヘキサンを用いて溶解度15wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土の濾過カラムに通し、不溶性のゲル、アスファルテン及び少量の遊離重金属を白土に吸着させる。そして、前処理後のC9樹脂溶液を接触水素化する。
【0042】
接触水素化の条件は、反応温度が350℃、反応圧力が18MPa、体積空間速度が0.6h-1、水素とC9樹脂との体積比が600:1である。
【0043】
図6からわかるように、3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークは、図5中の3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークよりも著しく小さい。また、C9樹脂の臭素価は34gBr/100gから1.3gBr/100gに低下し、ガードナー色数は0.6である。これは、触媒がC9樹脂の接触水素化に有効であることを示している。
【実施例4】
【0044】
C9樹脂の接触水素化方法は、以下のステップ1及びステップ2を含む。
【0045】
ステップ1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床内に99.999%の高純度の水素ガスを導入して、還元温度500℃、還元時間8時間で還元する。
【0046】
ここで、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.3、Zr:Yのモル比が1:0.09である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の6%である。調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9.5に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において650℃で5時間焼成する。
【0047】
ここで、Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH2に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.08、Ni:Gdのモル比が1:0.06である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウム水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の8%である。調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において600℃で4時間焼成する。
【0048】
ステップ2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する。
【0049】
シクロヘキサンを用いて溶解度10wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土の濾過カラムに通し、不溶性のゲル、アスファルテン及び少量の遊離重金属を白土に吸着させる。そして、前処理後のC9樹脂溶液を接触水素化する。
【0050】
接触水素化の条件は、反応温度が400℃、反応圧力が20MPa、体積空間速度が0.7h-1、水素とC9樹脂との体積比が700:1である。
【0051】
図8からわかるように、3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークは、図7中の3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークよりも著しく小さい。また、C9樹脂の臭素価は34gBr/100gから0.6gBr/100gに低下し、ガードナー色数は0.7である。これは、触媒がC9樹脂の接触水素化に有効であることを示している。
【実施例5】
【0052】
C9樹脂の接触水素化方法は、以下のステップ1及びステップ2を含む。
【0053】
ステップ1)固定床の前半にZr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床の後半にNi-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒を入れ、固定床内に99.999%の高純度の水素ガスを導入して、還元温度450℃、還元時間6時間で還元する。
【0054】
ここで、Zr-Mo-Y/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1.5に調整し、Zr:Moのモル比が1:0.3、Zr:Yのモル比が1:0.02である硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウム水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ジルコニウム、硝酸モリブデン及び硝酸イットリウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の9%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH10に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において600℃で5時間焼成する。
【0055】
ここで、Ni-Nd-Gd/シリカゲル共沈触媒の作製は、以下のステップを含む。ケイ酸ナトリウム飽和溶液を6mol/Lの硝酸でpH1に調整し、Ni:Ndのモル比が1:0.08、Ni:Gdのモル比が1:0.07である硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの水溶液を入れる。調製した溶液中の硝酸ニッケル、硝酸ネオジム及び硝酸ガドリニウムの重量は、ケイ酸ナトリウムの重量の6%である。そして、調製した溶液を飽和炭酸ナトリウム溶液でpH9.5に調整して沈殿を形成し、沈殿物を遠心方法で分離し、分離した沈殿物を脱イオン水で中性になるまで洗浄してから、沈殿物を125℃で4時間乾燥させ、乾燥後の沈殿物をマッフル炉において550℃で4時間焼成する。
【0056】
ステップ2)前処理後のC9樹脂を固定床内で接触水素化する。
【0057】
エチルシクロヘキサンを用いて溶解度15wt%でC9樹脂を溶解し、溶液を白土の濾過カラムに通し、不溶性のゲル、アスファルテン及び少量の遊離重金属を白土に吸着させる。そして、前処理後のC9樹脂溶液を接触水素化にする。
【0058】
接触水素化の条件は、反応温度が300℃、反応圧力が20MPa、体積空間速度が0.8h-1、水素とC9樹脂との体積比が700:1である。
【0059】
図10からわかるように、3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークは、図9中の3041cm-1における炭素-炭素二重結合上の炭素-水素結合の吸収ピークよりも著しく小さい。また、C9樹脂の臭素価は34gBr/100gから1.5gBr/100gに低下し、ガードナー色数は1.7である。これは、触媒がC9樹脂の接触水素化に有効であることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】