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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】QT補正のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/36 20210101AFI20220513BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20220513BHJP
【FI】
A61B5/36
A61B5/352
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021547878
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 FI2020050099
(87)【国際公開番号】W WO2020193843
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】20195214
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519096781
【氏名又は名称】タンペレ・ユニバーシティー・ファウンデーション・エスアール
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポターポフ、イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ラサネン、エサ
(72)【発明者】
【氏名】アールト-セタラ、カトリーナ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG13
4C127GG16
(57)【要約】
QT補正のための方法であって、ECG信号を受信すること、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、複数のQT間隔を抽出すること、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、複数のQT間隔と複数のRR間隔とに基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差する、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び1つ以上の点に対応する1つ以上のQT値の1つを、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、を含む、方法を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置によって、心電図であるECG信号を受信すること、
前記装置によって、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、
複数のQT間隔を抽出すること、
前記装置によって、前記複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、
前記装置によって、前記複数のQT間隔と前記複数のRR間隔とに基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、
前記装置によって、前記第1の確率分布と前記第2の確率分布とが交差する、又は前記第1の確率分布と前記第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び
前記装置によって、1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、前記複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の確率分布は、前記既定のQT間隔よりも前の前記QT間隔が検出された条件で、前記複数のQT間隔のうちの前記既定のQT間隔が検出される確率を定義する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の確率分布は、前記既定のQT間隔よりも前の前記QT間隔が検出され、且つ前記既定のQT間隔又は前記複数のRR間隔のうちの既定のRR間隔よりも前の前記RR間隔が検出された条件で、前記複数のQT間隔のうちの前記既定のQT間隔が検出される確率を定義する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記既定のQT間隔よりも前の前記QT間隔は、前記既定のQT間隔に先行する5個~10個のQT間隔を含む、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記既定のRR間隔よりも前の前記RR間隔は、前記既定のRR間隔に先行する5個~10個のRR間隔を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の見いだされた点に対応する前記1つ以上のQT値を、前記既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補として指定すること、及び
予め定めた心拍数で観察されるQT間隔に最も近いQT間隔候補を選択し、前記補正QT間隔として指定すること、をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記予め定めた心拍数を観察しないことに応じて、前記ECG信号由来のQT及びRRデータを、前記予め定めた心拍数に向けて外挿することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の見いだされた点に対応する前記1つ以上のQT値を、前記既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補に指定すること、及び
最大確率を有するQT間隔候補を選択し、前記補正QT間隔として指定すること、をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の見いだされた点に対応する前記1つ以上のQT値を、前記既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補に指定すること、及び
少なくともQT間隔候補の確率、前記QT間隔候補と予め定めた心拍数で観察されるQT間隔との間の距離、及び前記QT間隔候補と前記既定のQT間隔との間の距離に基づいて、関係を形成すること、
前記関係を最小化するQT間隔候補を選択し、前記補正QT間隔として指定すること、をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記補正QT間隔を表示用に提供すること、
心電図記録に基づいて決定される結果を表示用に提供すること、及び
前記補正QT間隔が、予め定めた第1の閾値より小さいか、又は予め定めた第2の閾値より大きい場合に、アラームを鳴らすこと、の1つ以上をさらに含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ECG信号を受信すること、
複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、
複数のQT間隔を抽出すること、
前記複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を計算すること、
前記複数のQT間隔と前記複数のRR間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、
前記第1の確率分布と前記第2の確率分布とが交差する、又は前記第1の確率分布と前記第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び
1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、前記複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、
を実行するための手段を含む、装置。
【請求項12】
前記手段は、請求項2から請求項10までのいずれか1項に記載の方法を実行するようにさらに構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記手段は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、前記少なくとも1つのメモリと前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記装置を動作させるように構成される、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、装着可能なモニタリング装置又は心電図モニタリング装置である、請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つのプロセッサ上で実行される場合、装置に、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な例示的な実施形態は、心電図のQT補正のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図検査法は、心臓の電気活動を記録する方法である。心電図(ECG)は、心電図記録により作成される電圧と時間のグラフである。ECG信号は、心臓の心房の脱分極を表すP波、心臓の心室の脱分極を表すQRS複合波、及び心室の再分極を表すT波等の認識可能な構成要素を有する。QT間隔は、Q波の開始からT波の終了までの時間として算出される。QT時間の長短の程度が大きすぎると、心臓の機能不全に関連がある。しかしながら、QT時間は、心拍数(HR:heart rate)とともに変化し、このため、状況に依存する。例えば、安静や運動の量、及び不安のレベルは、HRに影響し、このため、QT時間にも影響し得る。したがって、QT時間は、60拍/分の心拍数(bpm)に等しいHRに対して正規化される。この正規化により、心臓病学においてリクスの基礎的な測定尺度である、いわゆる補正QT時間(QTc)が生じる。
【0003】
Bazettの式やFridericiaの式等の既存のQT補正式は、特に、高い及び/又は低い心拍数では不正確であるとみなされている。
【0004】
したがって、QT補正を改良する解決法へのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
上述の問題は、方法と、該方法を実行する技術装置とを提供することで、軽減される。様々な態様は、方法と、装置と、該装置に記憶されるコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品と、を含み、これらは、独立請求項記載の項目により特徴付けられる。様々な例示的な実施形態は、従属請求項に開示される。
【0006】
第1の態様によれば、方法であって、ECG信号を受信すること、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、複数のQT間隔を抽出すること、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、複数のQT間隔と複数のRR間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差する、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、を含む、方法を提供する。
【0007】
ある実施形態によれば、第1の確率分布は、既定のQT間隔よりも前のQT間隔が検出された条件で、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔が検出される確率を定義する。
【0008】
ある実施形態によれば、第2の確率分布は、既定のQT間隔よりも前のQT間隔が検出され、且つ既定のQT間隔又は複数のRR間隔の既定のRR間隔よりも前のRR間隔が検出された条件で、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔が検出される確率を定義する。
【0009】
ある実施形態によれば、既定のQT間隔よりも前のQT間隔は、既定のQT間隔に先行する5個~10個のQT間隔を含む。
【0010】
ある実施形態によれば、既定のRR間隔よりも前のRR間隔は、既定のRR間隔に先行する5個~10個のRR間隔を含む。
【0011】
ある実施形態によれば、該方法は、1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値を、既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補として指定すること、及び予め定めた心拍数で観察されるQT間隔に最も近いQT間隔候補を選択し、補正QT間隔として指定すること、をさらに含む。
【0012】
ある実施形態によれば、該方法は、予め定めた心拍数を観察しないことに応じて、ECG信号由来のQT及びRRデータを、予め定めた心拍数に向けて外挿することをさらに含む。
【0013】
ある実施形態によれば、該方法は、1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値を、既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補に指定すること、及び最大確率を有するQT間隔候補を選択し、補正QT間隔として指定すること、をさらに含む。
【0014】
ある実施形態によれば、該方法は、1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値を、既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補に指定すること、及び
少なくとも、QT間隔候補の確率、QT間隔候補と所定の心拍数で観察されるQT間隔との間の距離、及びQT間隔候補と既定のQT間隔との間の距離に基づいて、関係を形成すること、
該関係を最小化するQT間隔候補を選択し、補正QT間隔として指定すること、をさらに含む。
【0015】
ある実施形態によれば、該方法は、補正QTを表示用に提供すること、心電図記録に基づいて決定される結果を表示用に提供すること、補正QT間隔が、予め定めた第1の閾値より小さいか、又は予め定めた第2の閾値より大きい場合に、アラームを鳴らすこと、の1つ以上をさらに含む。
【0016】
第2の態様によれば、装置であって、ECG信号を受信すること、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、複数のQT間隔を抽出すること、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、複数のQT間隔と複数のRR間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差する、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、を実行するための手段を含む、装置を提供する。
【0017】
ある実施形態によれば、該手段は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、少なくとも1つのメモリとコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより、装置を動作させるように構成される。
【0018】
ある実施形態によれば、該装置は、装着可能なモニタリング装置又は心電図モニタリング装置である。
【0019】
第3の態様によれば、コンピュータプログラムであって、少なくとも1つのプロセッサ上で実行される場合、少なくとも、ECG信号を受信すること、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、複数のQT間隔を抽出すること、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、複数のQT間隔と複数のRR間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差する、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、を装置に実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラムを提供する。
【0020】
以下で、様々な例示的な実施形態を、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、ECG信号を例示する。
図2図2は、ECG信号内のRR間隔とQT間隔を例示する。
図3図3は、QT補正に対する装置のブロック図を例示する。
図4図4は、QT補正のための方法のフローチャートを例示する。
図5図5は、ある範囲のQT値に対する確率分布を例示する。
図6図6は、QT補正の結果を例示する。
図7図7は、QT補正の結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、ECG信号100を例示する。ECG信号は、いくつかの構成要素に分解可能である。P波102、104、106は、心房の脱分極を表し、QRS複合波112、114、116は、心室の脱分極を表し、T波122、124、126は、心室の再分極を表す。Q波132、134、136は、P波後の下方偏向である。R波142、144、146、すなわちRピークは、上方偏向として後続し、S波152、154、156は、R波後の下方偏向である。
【0023】
図2は、ECG信号200内のRR間隔202、204、206、208、210、212とQT間隔220、222、224、226、228、230を、例示する。RR間隔は、連続するRピーク間の時間として算出される心拍間隔である。QT間隔は、Q波の開始からT波の終了までの時間として算出される。
【0024】
QT間隔とRR間隔は、心拍数に依存し、心拍数は他方で、対象者の年齢、性別、及び/又は生理学的状態等の様々な因子に依存する。ここで、生理学的状態は、安静、睡眠、運動、不安等を意味し得る。患者間の及び/又は異なる心拍数に対するQT間隔の持続時間を普遍的に評価するために、QT間隔を補正する必要がある。
【0025】
図3は、QT補正のための装置300のブロック図を例示する。該装置は、例えば、サーバ、コンピュータ又はスマートフォンであり得る。その代わりとして、該装置は、ホルタ装置又は大型ECGモニタ等のECGモニタリング装置であるか、又はそれを具備し得る。その代わりとして、該装置は、例えば、スポーツウォッチ、スマートリング、又は装着可能なモニタリング装置のユーザの心臓の電気活動を表す信号を測定して、QT間隔を該信号から決定することが可能な任意の装着可能な心拍数モニタ等の、装着可能なモニタリング装置であり得る。該装置は、ユーザインターフェース302及び/又は通信インターフェース308経由で、命令、パラメータ等のユーザ入力を受信可能である。命令の実施例は、アラームをリセットするための命令を含む。ユーザインターフェースは、ボタン及び/又はタッチスクリーン等により、ユーザ入力を受信可能である。その代わりとして、ユーザインターフェースは、ユーザ入力を、通信接続経由で、インターネット、パソコン又はスマートフォンから受信可能である。通信接続は、インターネット、移動体通信ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、Bluetooth(登録商標)、又は他の現代及び将来のネットワーク等であり得る。該装置は、データと、プロセッサ304が、本明細書に開示の方法の様々な実施形態を実行可能なコンピュータプログラムコードと、を記憶するためのメモリ306を含み得る。信号解析器310は、本明細書に開示の方法の要素を実装するように構成可能である。信号解析器は、処理信号、例えば、ECG信号を、メモリから受信し得るし、又は心臓の電気活動を表す信号を測定し、QT間隔を該信号から決定することが可能な心拍数モニタリング装置から受信し得る。該方法の要素は、装置に存在するソフトウェア・コンポーネントとして実装可能である。該装置は、モニタリング装置等から処理信号を受信し、信号をメモリに記憶可能である。モニタリング装置は、上述の通り、任意のECGハードウェアであり得る。コンピュータプログラム製品は、非一時的コンピュータ可読媒体上に組立可能である。該装置は、ECG信号等のデータの取り扱い、受信、送信のための回路及び電子機器等の手段を含み得る。
【0026】
少なくともいくつかの実施形態において、ユーザインターフェース302は、代替的に又は追加的に、装置のユーザに情報を出力可能又は表示可能であることを理解すべきである。ユーザインターフェースの実施例は、スピーカ、ディスプレイ、タッチスクリーン、光源及びプリンタの1つ以上又はそれらの組み合わせを含む。ユーザインターフェースが表示する情報は、アラーム、心電図、QT値及び補正QT間隔から1つ以上を含み得る。アラームは、視覚アラーム、可聴アラーム又はそれらの組み合わせであり得る。可聴アラームの実施例は、音を含む。視覚アラームの実施例は、記号や、アラーム表示のために色を赤等に設定可能な光源等の、グラフィカルユーザインターフェース要素を含む。
【0027】
装置300、例えば、心電図モニタリング装置は、ユーザインターフェースにより、補正QT間隔とともに、該装置により実行される心電図記録に基づいて決定される1つ以上の結果をさらに表示させ得ることを理解すべきである。このように、装置のユーザには、心電図記録の結果及び/又は装置と継続して相互作用するために装置が鳴らす任意のアラームを正しく評価するための一助となり得る。心電図記録の結果は、ユーザインターフェースにより表示可能である。心電図記録の結果の実施例は、心電図、QT値、洞調律、洞頻脈、洞徐脈、心房細動、心房粗動、心室頻拍、心室細動及び/又は心拍数を含むか、又は少なくとも示す。ある実施例において、補正QT間隔が、QT値とともに表示される場合、ユーザには、補正QT間隔に基づいて、QT値を正しく解釈するための一助となり得る。別の実施例において、補正QT間隔を表示することは、ユーザには、装置が鳴らすアラームを解釈し、アラームをリセットするか又はリセットしないための命令を入力することを決定するための一助となり得、装置を継続して使用しやすくできる。
【0028】
QT補正のための方法を提供する。図4は、QT補正のための方法400のフローチャートを例示する。該方法は、ECG信号を受信すること410を含む。該方法は、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること420を含む。該方法は、複数のQT間隔を抽出すること430を含む。該方法は、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること440を含む。該方法は、複数のQT間隔と複数のRR間隔とに基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること450を含む。該方法は、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差する、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、所定の差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと460を含む。該方法は、1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること470を含む。
【0029】
ある実施例において、見いだされた点は、第1の確率分布が、第2の確率分布と略同一又は同一である、交点である。
【0030】
その代わりとして、見いだされた点は、下記に記載通り、第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、所定の差の閾値より小さい、点である。
【0031】
移動エントロピー方法は、2つの関連するプロセス間の情報伝達を定量化するために使用可能である。移動エントロピーは、送信元プロセスから送信先プロセスまでの、Shannon項で定義される情報伝達を推定する。例えば、移動エントロピーは、RR間隔の時間依存系列(time dependent series)からQT間隔の時間依存系列まで移動される情報の量を推定するために使用可能である。RRからQTまでの一方向移動の推定は、QT間隔に与えられるRR間隔の影響の量に関する。このため、RRからQTまでの移動は、QT間隔のRR間隔への依存度を定量化する。移動量がゼロに等しい場合、QTのRR間隔への依存を除去する。
【0032】
方法400により、QTのRR間隔への依存を除去することを可能にし、したがって、異なる心拍数に対する補正QT間隔を信頼可能に決定できる。ある範囲のQT間隔の値に対する第1の確率分布と第2の確率分布とを推定することにより、第1及び第2の確率分布関数が交わる、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、所定の差の閾値より小さい、QT値候補を見いだすことで、補正QT間隔を決定できる。方法400により、ECGのRR間隔から、時間同期したQT間隔までの情報伝達をゼロに低減することで、QT間隔を補正できる。方法400により、特に、高い及び/又は低い心拍数では不正確と考えられているBazettの式又はFridericiaの式等の従来の式を使わずに、補正QT間隔を決定できる。
【0033】
RRからQTまでの移動に対する移動エントロピーは、下記式で定義される。
【0034】
【数1】
【0035】
QTは、時系列(time series)でのi番目のQT間隔の値である。RRは、時系列でのQTに対応するi番目のRR間隔である。QTi-1 (k)は、k個の先行する心拍(heartbeats)、すなわち心拍iよりも前でかつ心拍iを含まない心拍に対するQT間隔の値である。先行する心拍に対するQT値を、QTi-1、QTi-2、QTi-3、QTi-4、QTi-5、...、QTi-kとして図2に示す。RRi-1 (n)は、n個の先行する心拍、すなわち心拍iよりも前でかつ心拍iを含まない心拍に対するRR間隔の値である。先行する心拍に対するRR値を、RRi-1、RRi-2、RRi-3、RRi-4、RRi-5、...、RRi-nとして図2に示す。従来通り、RRを、図2に示す通り、対応するQTよりも前の心拍間隔とする。RRi+1は、心拍i後のRR間隔である。
【0036】
確率p(QT|QTi-1 (k))は、履歴QTi-1 (k)が観察、又は検出された条件で、QT値が観察、又は検出される確率である。確率p(QT|QTi-1 (k)、RRi-1 (n))は、履歴QTi-1 (k)及びRRi-1 (n)の両方が観察、又は検出された条件で、QT値が観察、又は検出される確率である。
【0037】
該方法は、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出することを含む。第1の確率分布は、確率p(QT|QTi-1 (k))を定義する。ある実施形態によれば、第1の確率分布は、既定のQT間隔よりも前のQT間隔(QTi-1 (k))が検出された条件で、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔(QT)が検出される確率を定義する。既定のQT間隔は、QT230であり得る。既定のQT間隔よりも前のQT間隔は、所定の数(k)のQTi-1228、QTi-2226、QTi-3224、QTi-4222、QTi-5220、...、QTi-kであり得る。
【0038】
該方法は、複数のQT間隔と複数のRR間隔とに基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出することを含む。第2の確率分布は、p(QT|QTi-1 (k)、RRi-1 (n))である。ある実施形態によれば、第2の確率分布は、既定のQT間隔よりも前のQT間隔(QTi-1 (k))と、既定のQT間隔又は複数のRR間隔のうちの既定のRR間隔(RR)よりも前のRR間隔(RRi-1 (n))と、が検出された条件で、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔(QT)を検出する確率を定義する。既定のQT間隔は、QT230であり得る。既定のQT間隔よりも前のQT間隔は、所定の数(k)のQTi-1228、QTi-2226、QTi-3224、QTi-4222、QTi-5220、...、QTi-kであり得る。既定のRR間隔は、RR210であり得る。既定のRR間隔よりも前のRR間隔は、所定の数(n)のRRi-1208、RRi-2206、RRi-3204、RRi-4202、RRi-5201、...、RRi-nであり得る。
【0039】
第1の確率分布と第2の確率分布とにより定義される確率は、カーネル密度推定法を適用することで推定可能である。適用するカーネルは、例えば、ガウスカーネル、ボックスカーネル又は三角カーネルなど、任意の適切なカーネルであり得る。カーネルは、ガウスカーネルを適用する場合、Silvermanの経験則又はScott則等を使用して推定される幅パラメータにより、各点の周りでプロット可能である。その代わりとして、幅は、複数の幅を持つカーネルをデータセットに繰り返しフィッティングし、その後、最良の幅を選択することで、推定可能である。データ点の周りでプロットしたカーネル曲線を総計して、確率分布の推定値が得られる。
【0040】
該方法は、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差するか、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、所定の差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすことを含む。第1の確率分布が、第2の確率分布と同一、又は略同一、又は十分に近い場合、移動エントロピーは、ゼロと略同一で、QTのRR間隔への依存を除去する。第1の確率分布と第2の確率分布とが交差するか、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、所定の差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすことで、補正QT間隔を決定できる。
【0041】
図5は、ある範囲のQT値に対する確率分布510、520を例示する。第1の確率分布510は、破線で示す。第2の確率分布520は、実線で示す。確率分布510、520の交点532、534、536は、例えば、図示又は代数計算により見いだされ得る。
【0042】
交点は、RRと無関係のQT値を示す。交点532、534、536にそれぞれ対応するQT値であるQTc1、QTc2、QTc3は、QT間隔候補に指定可能である。QT間隔候補の1つは、QT間隔iに対する補正QT間隔として指定可能である。
【0043】
補正QT間隔として指定されるQT間隔候補を選択するための代替方法が存在する。
【0044】
例えば、所定の心拍数HR0で観察されるQT間隔に最も近いQT間隔候補を選択し、補正QT間隔として指定可能である。一般的に、HR0は、医療関係者が頻繁に使用する60bpmに準拠した、安静時の心拍数に該当する。心拍数60bpmは、RR間隔1000msに相当する。心拍数60bpm又はRR間隔1000msで観察されるQT間隔に最も近いQT間隔候補を選択し、補正QT間隔として指定可能である。この方法は、近接法と称される場合がある。HR0で観察されるQT間隔を、QT0として指定することとする。任意の所定の心拍数を、正規化に利用可能であることを理解されたい。
【0045】
HR0が、測定データで観測されない場合、HR0は、外挿を使用して推定可能である。例えば、データを、60bpm等の所定の心拍数HR0に向けて又は1000msのRR間隔に向けて外挿するために、多項式外挿を使用して、QT0を見いだすことが可能である。例えば、次数2の多項式外挿法(polynomial extrapolation with degree of 2)を適用可能である。QTとRRとの間の関係は、二相性であり、したがって、外挿法では2の次数の使用が適する。しかしながら、他の任意の適切な外挿も使用可能である。
【0046】
別の実施例として、最大確率を有するQT間隔候補を選択して、補正QT間隔として指定可能である。図5の実施例において、QTcは、QT値が、交点QTcとQTcで、QT値と比較して、最高の確率を有する交点を表す。最大確率に基づいてQT間隔候補を選択することは、この値がより頻繁に発生することで正当化される。
【0047】
別の実施例として、補正QT間隔は、QT0近接(ΔQT0)、QT候補の確率(PQTc)、補正距離(ΔQT、下記参照)等の多くの因子からの寄与を組み合わせた複合的な関係を使用して選択可能である。この手法において、他の因子が、この関係に含まれるように見いだされ得ることに留意されたい。この場合、補正QT間隔は、これらすべての因子の全体的な正の寄与を最大化する間隔である。例えば、補正QT間隔は、下記式で算出可能である(他の関係も、着想可能である)。
【0048】
【数2】
【0049】
Cは、定数であり、ΔQT0(QTc)=|QTc-QT0|、ΔQT(QTc)=|QTc-QT|であり、PQTc(QTc)は、QT間隔候補QTcの確率である。ユーザは自由に、任意の非負値をとり得る定数Cを変更することで、補正距離ΔQTの割合として、QT0-近接ΔQT0の寄与度を決定できる。提案された関係を最小化することで、3つの因子から個々の寄与度のバランスをとる、すなわち、ΔQT0を最小化し、ΔQTとPQTcとを最大化するQTcを算出する。
【0050】
最小確率540は、図5に示す通り、最小閾値であって、それを越えてQTc値を求めるべき最小閾値として予め決定可能である。言い換えれば、確率が低すぎると、あり得ないものとして拒絶され得る。図5の実施例において、QTc1は、最小確率の閾値が予め決定されれば、拒絶される。最小確率を決定することで、補正QT間隔を決定する精度や信頼性が向上する。
【0051】
上述の通り、差の閾値は、点を見いだすのに適用可能である。すなわち、2つの確率密度関数510、520が、互いに十分近く、関数同士の差が閾値より小さければ、この点は、交点として見なされ得る。第1の確率分布と第2の確率分布の交点は、第1の確率分布が、第2の確率分布と同一又は略同一、又は十分近いことに基づいて決定可能である。これにより、第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、差の閾値より小さい、状況が対象になる。差の閾値は、例えば、ユーザにより事前に定義され得、第1の及び/又は第2の確率分布の最大観測確率の割合で表され得る。閾値5%、10%、又は15%は、最大観測確率の割合の例である。差の閾値を交点の決定に適用する場合、交点が多いほど、見いだされ得る候補値が増加する。したがって、確率分布推定の誤差は、QTcの候補値をより変動させることで低減される。
【0052】
ある実施形態によれば、既定のQT間隔よりも前のQT間隔は、既定のQT間隔に先行する5~10個のQT間隔を含む。言い換えれば、kに対する値、すなわち、先行するQT間隔の数は、例えば、5~10であり得る。しかしながら、kに対する値は、例えば、1、2、3、4、11、12、13、14、15等の10前後であり得る。確率計算で考慮する先行するQT間隔が多いほど、補正の精度はより高くなり得る。しかしながら、特定数の先行するQT間隔後、精度は、データサイズが有限である制限により、もはや有意に変化しない。
【0053】
ある実施形態によれば、既定のRR間隔よりも前のRR間隔は、既定のRR間隔に先行する5~10個のRR間隔を含む。言い換えれば、nに対する値、すなわち、先行するRR間隔の数は、例えば、5~10であり得る。しかしながら、nに対する値は、例えば、1、2、3、4、11、12、13、14、15等の10前後であり得る。確率計算で考慮する先行するRR間隔が多いほど、補正の精度はより高くなり得る。しかしながら、特定数の先行するRR間隔後、精度は、データサイズが有限である制限により、もはや有意に変化しない。
【0054】
nに対する値は、kに対する値と異なる場合がある。
【0055】
図6は、QT補正の結果を例示する。この実施例において、健康な対象者のECGを測定した。引き続き、QTとRR間隔の時系列をECGから抽出した。一点鎖線650は、未加工の補正されていないQT間隔を表す。実線610は、本明細書開示の方法に起因する補正QT間隔を表す。破線620は、Bazett法による補正QT間隔を表す。点線630は、Fridericia法による補正QT間隔を表す。QT範囲640は、健康な対象者に対する補正QTの正常範囲を表す。このため、図6に示し得る通り、Bazett法とFridericia法は、QT値を過大評価する傾向がある。QT補正に対する最も困難な領域は、心拍数信号605が示す通り、心拍数が高い又は変化する領域である。QT信号610、620、630の時間インデックスは、心拍数信号605の時間インデックスに対応する。最終的に、QT補正線610は、補正QTがRR間隔と無関係であることを確認する特徴的な平坦性を有する。
【0056】
図7は、QT補正の結果を一例として示す。この実施例において、QT間隔の短縮に至る病状のある対象者のECGを計測した。一点鎖線750は、未加工の補正されていないQT間隔を表す。実線710は、本明細書開示の方法に起因する補正QT間隔を表す。破線720は、Bazett法による補正QT間隔を表す。点線730は、Fridericia法による補正QT間隔を表す。QT範囲740は、健康な対象者に対する補正QTの正常範囲を表す。このため、図7に示し得る通り、Bazett法とFridericia法は、QT値を過大評価する傾向があり、短いQTを持つ対象者の有害な状況は、検出されない。実線710で示す補正QTは、正常範囲740にないが、正常よりも短いQT間隔を正確に示す。信号705は、心拍数信号を表す。QT信号710、720、730の時間インデックスは、心拍数信号705の時間インデックスに対応する。
【0057】
補正QTは、例えば、ユーザインターフェース、例えば、装置のディスプレイ上でユーザに表示可能である。補正QT間隔が異常な場合、警報信号は、ユーザの注意を引くために利用可能である。本明細書で報告された装置が、各心拍に対する補正QTを推定しているため、平均補正QT又は他の概要は、ユーザに提示されて、実用的効果を向上可能である。心臓の再分極の時間を表すQT時間は、心拍数依存性であり、補正QT時間が、性別や突然変異(mutation)に依存する特定の限界を越えると、個体は、潜在的に致命的な不整脈を有するリスクが増加する。このため、臨床用途においても、QT時間を調整して、正確なQT値を得て、個体が、不整脈のリスク増加にあるかを検出しなければならない。このため、補正QTは、個体の心臓の再分極時間が正常であるかを評価し、長時間QT症候群又は短時間QT症候群等の、再分極時間に影響する可能性がある病気を検出するために使用可能である。カリウム濃度等の血清電解質レベルの異常はまた、再分極時間に影響するので、それらは、ECG記録と補正QT分析とで観察され得る。さらに、すでに市販されているいくつかの薬剤は、いくつかの個体の心臓の再分極時間を延長するので、そのような状況での正確なQT間隔を検出し、それらの脆弱な患者においてそのような薬剤の使用を避けることは臨床上重要である。
【0058】
装置は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み得、少なくとも1つのメモリとコンピュータプログラムコードは、ECG信号を受信すること、複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、複数のQT間隔を抽出すること、複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、複数のQT間隔と複数のRR間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、第1の確率分布と第2の確率分布とが交差する、又は第1の確率分布と第2の確率分布との間の差が、所定の差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び1つ以上の点に対応する1つ以上のQT値の1つを、複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、を少なくとも1つのプロセッサにより、該装置に実行させるように構成可能である。
【0059】
該装置は、1つ以上の交点に対応する1つ以上のQT値を、既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補として指定すること、及び所定の心拍数で観察されるQT間隔に最も近いQT間隔候補を選択して、補正QT間隔として指定すること、を実行するように構成可能である。
【0060】
該装置は、所定の心拍数を観察しないことに応じて、ECG信号由来のQT及びRRデータを、所定の心拍数に向けて外挿することを実行するように構成可能である。
【0061】
該装置は、1つ以上の交点に対応する1つ以上のQT値を、既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補として指定すること、及び最大確率を有するQT間隔候補を選択して、補正QT間隔として指定すること、を実行するように構成可能である。
【0062】
該装置は、1つ以上の交点に対応する1つ以上のQT値を、既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補として指定すること、少なくともQT間隔候補の確率、QT間隔候補と所定の心拍数で観察されるQT間隔との間の距離、及びQT間隔候補と既定のQT間隔との間の距離に基づいて関係を形成すること、該関係を最小化するQT間隔候補を選択し、補正QT間隔として指定すること、を実行するように構成可能である。
【0063】
該装置は、補正QT間隔を表示用に提供すること、心電図記録に基づいて決定される結果を表示用に提供すること、補正QT間隔が、所定の第1の閾値より小さいか、又は所定の第2の閾値より大きい場合に、アラームを鳴らすこと、の1つ以上を実行するように構成可能である。
【0064】
本発明は、上記記載の実施形態のみに限定されないが、添付の請求項の範囲内で変更可能であることは明らかである。
【0065】
本明細書記載の実施形態は、少なくとも心臓の電気活動のモニタリングにおいて、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図であるECG信号を受信すること、
複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、
複数のQT間隔を抽出すること、
前記複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を算出すること、
前記複数のQT間隔と前記複数のRR間隔とに基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、
前記第1の確率分布と前記第2の確率分布とが交差する、又は前記第1の確率分布と前記第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び
1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、前記複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の確率分布は、前記既定のQT間隔よりも前の前記QT間隔が検出された条件で、前記複数のQT間隔のうちの前記既定のQT間隔が検出される確率を定義する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の確率分布は、前記既定のQT間隔よりも前の前記QT間隔が検出され、且つ前記既定のQT間隔又は前記複数のRR間隔のうちの既定のRR間隔よりも前の前記RR間隔が検出された条件で、前記複数のQT間隔のうちの前記既定のQT間隔が検出される確率を定義する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記既定のQT間隔よりも前の前記QT間隔は、前記既定のQT間隔に先行する5個~10個のQT間隔を含む、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記既定のRR間隔よりも前の前記RR間隔は、前記既定のRR間隔に先行する5個~10個のRR間隔を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の見いだされた点に対応する前記1つ以上のQT値を、前記既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補として指定すること、及び
予め定めた心拍数で観察されるQT間隔に最も近いQT間隔候補を選択し、前記補正QT間隔として指定すること、をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記予め定めた心拍数を観察しないことに応じて、前記ECG信号由来のQT及びRRデータを、前記予め定めた心拍数に向けて外挿することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の見いだされた点に対応する前記1つ以上のQT値を、前記既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補に指定すること、及び
最大確率を有するQT間隔候補を選択し、前記補正QT間隔として指定すること、をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の見いだされた点に対応する前記1つ以上のQT値を、前記既定のQT間隔に対する1つ以上のQT間隔候補に指定すること、及び
少なくともQT間隔候補の確率、前記QT間隔候補と予め定めた心拍数で観察されるQT間隔との間の距離、及び前記QT間隔候補と前記既定のQT間隔との間の距離に基づいて、関係を形成すること、
前記関係を最小化するQT間隔候補を選択し、前記補正QT間隔として指定すること、をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記補正QT間隔を表示用に提供すること、
心電図記録に基づいて決定される結果を表示用に提供すること、及び
前記補正QT間隔が、予め定めた第1の閾値より小さいか、又は予め定めた第2の閾値より大きい場合に、アラームを鳴らすこと、の1つ以上をさらに含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ECG信号を受信すること、
複数の心拍(RR)間隔を抽出すること、
複数のQT間隔を抽出すること、
前記複数のQT間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第1の確率分布を計算すること、
前記複数のQT間隔と前記複数のRR間隔に基づいて、ある範囲のQT値に対する第2の確率分布を算出すること、
前記第1の確率分布と前記第2の確率分布とが交差する、又は前記第1の確率分布と前記第2の確率分布との間の差が予め定めた差の閾値より小さい、1つ以上の点を見いだすこと、及び
1つ以上の見いだされた点に対応する1つ以上のQT値の1つを、前記複数のQT間隔のうちの既定のQT間隔に対する補正QT間隔として指定すること、
を実行するための手段を含む、装置。
【請求項12】
前記手段は、請求項2から請求項10までのいずれか1項に記載の方法を実行するようにさらに構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記手段は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、前記少なくとも1つのメモリと前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記装置を動作させるように構成される、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、装着可能なモニタリング装置又は心電図モニタリング装置である、請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
装置の少なくとも1つのプロセッサ上で実行される場合に、前記装置に、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】